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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
C08G59/68
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019545586
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2018035789
(87)【国際公開番号】W WO2019065776
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2017191769
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一生
(72)【発明者】
【氏名】引田 二郎
(72)【発明者】
【氏名】千坂 博樹
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-149914(JP,A)
【文献】特開2016-194576(JP,A)
【文献】特開昭51-012940(JP,A)
【文献】Mohamed S.Gomaa et al.,Synthesis and Biological Evaluation of 3-(1H-Imidazol-and Triazol-1-yl)-2,2-dimethyl-3-[4-(naphthalen-2-ylamino)phenyl]propyl Derivatives as Small Molecule Inhibitors of Retinoic Acid 4-Hydroxylase(CYP26),Journal of Medicinal Chemistry,米国,2011年08月15日,54,6803-6811
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物を含む組成物であって、
【化1】
(式(1)中、Xm+はm価の対カチオンを表し、Rは置換基を有していてもよい芳香族基を表し、Rは置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、Rは、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、又は有機基を表し、mは1以上の整数を表し、nは0以上3以下の整数を表し、RはRと結合して環状構造を形成していてもよい。)
エポキシ基を有する化合物を更に含み、かつアルカリ可溶性樹脂を含まない組成物
【請求項2】
硬化性組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
m価の対カチオンXm+が、非環式若しくは環式の含窒素脂肪族カチオン、含窒素芳香族カチオン又は金属カチオンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物として好適な組成物、及び上記組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化合物等の硬化性化合物と、硬化剤や硬化触媒とを含む硬化性組成物は、接着剤用途、種々の電子部品の封止用途、繊維強化複合材料のマトリックス形成用途等の種々の用途において広く使用されている。かかる硬化性組成物について、硬化性(例えば、得られる硬化物の耐熱性)を更に向上させることが求められている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、特許文献2には、マイグレーションや配線表面の酸化の抑制効果に優れる金属表面処理液を与える特定構造のイミダゾール化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-074890号公報
【文献】国際公開第2016/031928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、得られる硬化物の耐熱性等により例示される硬化性に優れ、硬化性組成物として好適な組成物及び上記組成物の硬化物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、同一又は異なる条件において、組成物の硬化性を促進する残基を分子内に複数有する新規化合物が、得られる硬化物の耐熱性等により例示される組成物の硬化性を向上し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の第1の態様は、
下記式(1)で表される化合物を含む組成物である。
【化1】
(式(1)中、Xm+はm価の対カチオンを表し、Rは置換基を有していてもよい芳香族基を表し、Rは置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、Rは、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、又は有機基を表し、mは1以上の整数を表し、nは0以上3以下の整数を表し、RはRと結合して環状構造を形成していてもよい。)
本発明の第2の態様は、第1の態様の組成物の硬化物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は、得られる硬化物の耐熱性等により例示される硬化性に優れ、硬化性組成物として好適である。
本発明によれば、耐熱性に優れる硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
また、本明細書において、「~」は特に断りがなければ以上から以下を表す。
【0010】
≪組成物≫
<下記式(1)で表される化合物>
第1の態様に係る組成物は、下記式(1)で表される化合物を含む。
【化2】
(式(1)中、Xm+はm価の対カチオンを表し、Rは置換基を有していてもよい芳香族基を表し、Rは置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、Rは、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、又は有機基を表し、mは1以上の整数を表し、nは0以上3以下の整数を表し、RはRと結合して環状構造を形成していてもよい。)
【0011】
m価の対カチオンXm+は、非環式若しくは環式の含窒素脂肪族カチオン、含窒素芳香族カチオン又は金属カチオンであることが好ましい。mは1以上3以下の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
上記環式の含窒素脂肪族カチオンとしては、環を構成する原子として窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、酸素原子、イオウ原子等)を含んでいてもよい。
上記非環式若しくは環式の含窒素脂肪族カチオンとしては、下記式(2)~(4)のいずれかで表されることが好ましい。
【化3】
(式(2)中、R11~R14はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよい複素環基を表し、R11~R14から選択される少なくとも2つは連結して環を形成していてもよい。)
【0012】
式(2)中、置換基を有してもよいアルキル基としては、炭素原子数1以上30以下のアルキル基が好ましい。置換基を有してもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1-エチルペンチル基、トリフルオロメチル基、2-エチルヘキシル基、フェナシル基、1-ナフトイルメチル基、2-ナフトイルメチル基、4-メチルスルファニルフェナシル基、4-フェニルスルファニルフェナシル基、4-ジメチルアミノフェナシル基、4-シアノフェナシル基、4-メチルフェナシル基、2-メチルフェナシル基、3-フルオロフェナシル基、3-トリフルオロメチルフェナシル基、及び3-ニトロフェナシル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、炭素原子数5以上30以下のシクロアルキル基が好ましい。置換基を有してもよいシクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0013】
置換基を有してもよいアルケニル基としては、炭素原子数2以上10以下のアルケニル基が好ましい。置換基を有してもよいアルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、及びスチリル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアルキニル基としては、炭素原子数2以上10以下のアルキニル基が好ましい。置換基を有してもよいアルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロピニル基、及びプロパルギル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアリール基としては、炭素原子数6以上30以下のアリール基が好ましい。置換基を有してもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アンスリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基、5-ナフタセニル基、1-インデニル基、2-アズレニル基、9-フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o-、m-、及びp-トリル基、キシリル基、o-、m-、及びp-クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、及びオバレニル基等が挙げられる。
【0014】
置換基を有してもよいアラルキル基としては、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基が好ましい。置換基を有してもよいアラルキル基の具体例としては、、ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-α-ナフチルエチル基、及び2-β-ナフチルエチル基等が挙げられる。
置換基を有してもよい複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、芳香族あるいは脂肪族の複素環が好ましい。置換基を有してもよいアラルキル基の具体例としては、、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3-b]チエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H-ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H-インドリル基、インドリル基、1H-インダゾリル基、プリニル基、4H-キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH-カルバゾリル基、カルバゾリル基、β-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、及びチオキサントリル基等が挙げられる。
【0015】
前述した置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよい複素環基の水素原子は更に他の置換基で置換されていてもよい。
【0016】
そのような置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、及びtert-ブトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、及びp-トリルオキシ基等)、オルガノキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基等)、アシル基(アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びメトキサリル基等)、アルキルスルファニル基(メチルスルファニル基、及びtert-ブチルスルファニル基等)、アリールスルファニル基(フェニルスルファニル基、及びp-トリルスルファニル基等)、アルキルアミノ基(メチルアミノ基、及びシクロヘキシルアミノ基等)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、及びピペリジノ基等)、アリールアミノ基(フェニルアミノ基、p-トリルアミノ基等)、アルキル基(メチル基、エチル基、tert-ブチル基、及びドデシル基等)、アリール基(フェニル基、p-トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、及びフェナントリル基等)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホンアミド基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロソ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、トリアルキルアンモニウム基、ジメチルスルホニウミル基、及びトリフェニルフェナシルホスホニウミル基等が挙げられる。
【0017】
式(2)中、R11~R14から選択される少なくとも2つが連結して環を形成する場合、連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基又はそれらを連結してなる2価の基が挙げられる。当該連結基の炭素原子数は1以上10以下が好ましい。R11~R14から選択される少なくとも2つから形成される環は、環を構成する原子として酸素原子を含んでいてもよい。
【0018】
(R21=C(NR22 (3)
(式(3)中、R21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、R22はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、-C(=NR23)-NR23 (3個のR23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基)、又は、=C(-NR24 (4個のR24はそれぞれ独立に水素原子又は有機基)を表す。)
【0019】
21~R23についてのアルキル基としては、炭素原子数1以上10以下のアルキル基が好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、及び1-エチルペンチル基等が挙げられる。
21~R23についてのシクロアルキル基としては、炭素原子数5以上30以下のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
24についての有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、及びアリール基等が挙げられる。
式(3)で表されるカチオンとしては、1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウムカチオン、1-メチルビグアニジウムカチオン、1-n-ブチルビグアニジウムカチオン、1-(2-エチルヘキシル)ビグアニジウムカチオン、1-n-オクタデシルビグアニジウムカチオン、1,1-ジメチルビグアニジウムカチオン、1,1-ジエチルビグアニジウムカチオン、1-シクロヘキシルビグアニジウムカチオン、2-エチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジウムカチオン、1-ベンジルグアニジウムカチオン、1,3-ジベンジルグアニジウムカチオン、1-ベンジル-2,3-ジメチルグアニジウムカチオン、及び1-フェニルグアニジウムカチオン等が挙げられる。これらのカチオンの中では、1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウムカチオンが好ましい。
【0020】
【化4】
(式(4)中、R31はそれぞれ独立に水素原子又は有機基を表し、sは2以上6以下の整数を表す。)
31についての有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アラルキル基、及び上記アリール基は、それぞれ、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、及びtert-ブトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、及びp-トリルオキシ基等)、オルガノキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基等)、アシル基(アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びメトキサリル基等)、アルキルスルファニル基(メチルスルファニル基、及びtert-ブチルスルファニル基等)、アリールスルファニル基(フェニルスルファニル基、及びp-トリルスルファニル基等)、アルキルアミノ基(メチルアミノ基、及びシクロヘキシルアミノ基等)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、及びピペリジノ基等)、アリールアミノ基(フェニルアミノ基、及びp-トリルアミノ基等)、アルキル基(メチル基、エチル基、tert-ブチル基、及びドデシル基等)、アリール基(フェニル基、p-トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、及びフェナントリル基等)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホンアミド基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロソ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、トリアルキルアンモニウム基、ジメチルスルホニウミル基、及びトリフェニルフェナシルホスホニウミル基等が挙げられる。
sは3以上5以下の整数であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。
【0021】
対カチオンXm+についての含窒素芳香族カチオンとしては、下記式(5)~(13)のいずれかで表されるカチオンが好ましい。
【化5】
(式中、Rは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、
41、R43、R45、R46、R47、R48、R50、R51及びR52はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、
42、R44及びR49はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、R41~R52はそれぞれ独立にハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよく、
41及びR42は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR41は互いに結合して環を形成していてもよく、R43及びR44は互いに結合して環を形成していてもよく、2つのR43は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR45は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR46は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR47は互いに結合して環を形成していてもよく、R48及びR49は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR48は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR50は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR51は互いに結合して環を形成していてもよく、少なくとも2つのR52は互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0022】
41~R52についてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
及びR41~R52についてのアルキル基としては、直鎖アルキル基であっても、分岐鎖アルキル基であってもよい。当該アルキル基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上20以下が好ましく、1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましい。
及びR41~R52についてのアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチル-n-ヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基が挙げられる。
【0023】
41~R52についてのシクロアルキル基としては、炭素原子数5以上30以下のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
41~R52についてのアルケニル基としては、炭素原子数2以上10以下のアルケニル基が好ましい。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、及びスチリル基等が挙げられる。
41~R52についてのアルキニル基としては、炭素原子数2以上10以下のアルキニル基が好ましい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロピニル基、及びプロパルギル基等が挙げられる。
【0024】
mが2以上の整数である場合、m価の対カチオンXm+についての非環式若しくは環式の含窒素脂肪族カチオンとしては、下記式(14)~(16)のいずれかで表されるカチオンが好ましい。
【化6】
(上記式中、Rは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R53及びR55は、それぞれ独立にアルキル基又はシクロアルキル基を表し、R54はアルキレン基、シクロアルキレン基又はそれらを連結してなる2価の基を表し、R56はアルキレン基を表し、R53~R56はそれぞれ独立にハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよく、少なくとも2つのR53は互いに結合して環を形成していてもよく、R53及びR54は互いに結合して環を形成していてもよく、2つのR55は互いに結合して環を形成していてもよい。)
の具体例及び好ましい例としては、上述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
及びR53~R55についてのアルキル基としてはR及びR41~R52についてのアルキル基として上述した具体例及び好ましい例と同様の基が挙げられる。
53~R55についてのシクロアルキル基としてはR41~R52についてのシクロアルキル基としては上述した具体例及び好ましい例と同様の基が挙げられる。
56についてのアルキレン基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基が挙げられ、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0025】
mが2以上の整数である場合、m価の対カチオンXm+についての含窒素芳香族カチオンとしては、分子中に2,2-ビピリジニウム骨格、3,3-ビピリジニウム骨格、4,4-ビピリジニウム骨格、2,2-ビピラジニウム骨格、4,4-ビキノリニウム骨格、4,4-ビイソキノリニウム骨格、4-[2-(4-ピリジニウム)ビニル]ピリジニウム骨格又は4-[4-(4-ピリジニウム)フェニル]ピリジニウム骨格を有する2価以上のカチオンが挙げられる。
【0026】
対カチオンXm+についての金属カチオンとしては、典型金属元素、遷移金属元素及び半金属元素からなる群より選択される金属原子のカチオン又は上記金属原子を含む原子団のカチオンであることが好ましい。
上記典型金属元素としては、アルカリ金属元素(周期表1族のうち水素を除く元素からなる金属元素、例えば、ナトリウム、及びカリウム)、アルカリ土類金属元素(周期表2族の元素からなる金属元素、例えば、マグネシウム)、周期表12族の元素からなる金属元素(例えば、亜鉛)、周期表13族のうちホウ素を除く元素からなる金属元素(例えば、アルミニウム)、周期表14族のうち炭素、ケイ素を除く元素からなる金属元素(例えば、スズ)、周期表15族のうち窒素、リン、及びヒ素を除く元素からなる金属元素(例えば、アンチモン)、並びに周期表16族のうち酸素、硫黄、セレン、及びテルルを除く元素からなる金属元素(例えば、ポロニウム)が挙げられる。
上記遷移金属元素としては、周期表3~11族の元素からなる金属元素(例えば、ハフニウム)が挙げられる。
上記半金属元素としては、ホウ素、ケイ素、砒素、セレン、及びテルル等が挙げられる。
上記金属原子を含む原子団のカチオンとしては、金属原子と非金属原子の両方を含む原子団等が挙げられ、具体的には、[ZrO]2+、[(CO)Al]2+、及び[(n-CSn-O-Sn(n-C2+等が挙げられる。
【0027】
式(1)中、Rは、置換基を有してもよい芳香族基を表す。置換基を有してもよい芳香族基は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基でもよく、置換基を有してもよい芳香族複素環基でもよい。
【0028】
芳香族炭化水素基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。芳香族炭化水素基は、単環式の芳香族基であってもよく、2以上の芳香族炭化水素基が縮合して形成されていてもよく、2以上の芳香族炭化水素基が単結合により結合して形成されていてもよい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、及びフェナンスレニル基が好ましい。
【0029】
芳香族複素環基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。芳香族複素環基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。芳香族複素環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びベンゾイミダゾリル基が好ましい。
【0030】
フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホン酸エステル基、アミノ基、アンモニオ基、及び有機基が挙げられる。フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が複数の置換基を有する場合、当該複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
芳香族基が有する置換基が有機基である場合、当該有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、及びアラルキル基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
【0032】
芳香族基が隣接する炭素原子上に置換基を有する場合、隣接する炭素原子上に結合する2つの置換基はそれが結合して環状構造を形成してもよい。環状構造としては、脂肪族炭化水素環や、ヘテロ原子を含む脂肪族環が挙げられる。
【0033】
芳香族基が有する置換基が有機基である場合に、当該有機基に含まれる結合は本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、有機基は、酸素原子、窒素原子、珪素原子等のヘテロ原子を含む結合を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、アミノ結合(-NR-:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)ウレタン結合、イミノ結合(-N=C(-R)-、-C(=NR)-:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、及びアゾ結合等が挙げられる。
【0034】
有機基が有してもよいヘテロ原子を含む結合としては、式(1)で表されるイミダゾール化合物の耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、アミノ結合(-NR-:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)ウレタン結合、イミノ結合(-N=C(-R)-、-C(=NR)-:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、及びスルフィニル結合が好ましい。
【0035】
有機基が炭化水素基以外の置換基である場合、炭化水素基以外の置換基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。炭化水素基以外の置換基の具体例としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアルミ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0036】
フェニル基、多環芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基が有する置換基としては、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数1以上12以下のアリール基、炭素原子数1以上12以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上12以下のアリールオキシ基、炭素原子数1以上12以下のアリールアミノ基、及びハロゲン原子が好ましい。
【0037】
としては、式(1)で表される化合物を安価且つ容易に合成でき、上記化合物の水や有機溶剤に対する溶解性が良好であることから、それぞれ置換基を有してもよいフェニル基、フリル基、及びチエニル基が好ましい。
【0038】
式(1)中、Rは、置換基を有してもよいアルキレン基である。アルキレン基が有していてもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。アルキレン基が有していてもよい置換基の具体例としては、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。アルキレン基は、直鎖アルキレン基であっても、分岐鎖アルキレン基であってもよく、直鎖アルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上20以下が好ましく、1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましい。なお、アルキレン基の炭素原子数には、アルキレン基に結合する置換基の炭素原子を含まない。
【0039】
アルキレン基に結合する置換基としてのアルコキシ基は、直鎖アルコキシ基であっても、分岐鎖アルコキシ基であってもよい。置換基としてのアルコキシ基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上3以下が特に好ましい。
【0040】
アルキレン基に結合する置換基としてのアミノ基は、モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基であってもよい。モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基は、直鎖アルキル基であっても分岐鎖アルキル基であってもよい。モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上3以下が特に好ましい。
【0041】
として好適なアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、n-プロパン-1,3-ジイル基、n-プロパン-2,2-ジイル基、n-ブタン-1,4-ジイル基、n-ペンタン-1,5-ジイル基、n-ヘキサン-1,6-ジイル基、n-ヘプタン-1,7-ジイル基、n-オクタン-1,8-ジイル基、n-ノナン-1,9-ジイル基、n-デカン-1,10-ジイル基、n-ウンデカン-1,11-ジイル基、n-ドデカン-1,12-ジイル基、n-トリデカン-1,13-ジイル基、n-テトラデカン-1,14-ジイル基、n-ペンタデカン-1,15-ジイル基、n-ヘキサデカン-1,16-ジイル基、n-ヘプタデカン-1,17-ジイル基、n-オクタデカン-1,18-ジイル基、n-ノナデカン-1,19-ジイル基、及びn-イコサン-1,20-ジイル基が挙げられる。
【0042】
は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホン酸エステル基、又は有機基であり、nは0以上3以下の整数である。nが2以上3以下の整数である場合、複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
が有機基である場合、当該有機基は、Rについて、芳香族基が置換基として有していてもよい有機基と同様である。
【0044】
が有機基である場合、有機基としては、アルキル基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1以上8以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基がより好ましい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アンスリル基、及びフェナンスレニル基が好ましく、フェニル基、及びナフチル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。芳香族複素環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、及びベンゾイミダゾリル基が好ましく、フリル基、及びチエニル基がより好ましい。
【0045】
がアルキル基である場合、アルキル基のイミダゾール環上での結合位置は、2位、4位、及び5位のいずれも好ましく、2位がより好ましい。Rが芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基である場合、これらの基のイミダゾール上での結合位置は、2位が好ましい。
【0046】
上記式(1)で表される化合物の中では、安価且つ容易に合成可能であり、水や有機溶剤に対する溶解性に優れる点から、下記式(1-1)で表される化合物が好ましく、式(1-1)で表され、Rがメチレン基である化合物がより好ましい。
【0047】
【化7】
(式(1-1)中、X、R、R、m及びnは、式(1)と同義であり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホン酸エステル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホン酸エステル基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基であり、ただし、R、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。R、R、R、R、及びRのうち少なくとも2つが結合して環状構造を形成してもよい。RはRと結合して環状構造を形成してもよい。)
【0048】
、R、R、R、及びRが有機基である場合、当該有機基は、式(1)におけるRが置換基として有する有機基と同様である。R、R、R、及びRは、上記化合物の溶媒に対する溶解性の点から水素原子であるのが好ましい。
【0049】
中でも、R、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つは、下記置換基であることが好ましく、Rが下記置換基であるのが特に好ましい。Rが下記置換基である場合、R、R、R、及びRは水素原子であるのが好ましい。
-O-R
(Rは水素原子又は有機基である。)
【0050】
が有機基である場合、当該有機基は、式(1)におけるRが置換基として有する有機基と同様である。Rとしては、アルキル基が好ましく、炭素原子数1以上8以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0051】
上記式(1-1)で表される化合物の中では、下記式(1-1-1)で表される化合物が好ましい。
【化8】
(式(1-1-1)において、X、R、R、R、R、R、及びR、m及びnは、R、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つが水素原子以外の基であること以外は、式(1)と同義である。)
【0052】
式(1-1-1)で表される化合物の中でも、R、R、R、R、及びRのうち少なくとも1つが、前述の-O-Rで表される基であることが好ましく、Rが-O-Rで表される基であるのが特に好ましい。Rが-O-Rで表される基である場合、R、R、R、及びRは水素原子であることが好ましい。
【0053】
式(1)で表される化合物の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化9】
【化10】
【化11】
【0054】
(含有量)
上記組成物における上記式(1)で表される化合物の含有量としては特に制限はない。上記組成物における上記式(1)で表される化合物の含有量は、組成物(溶剤を除く)全体に対して、例えば、1質量%以上80質量%以下が好ましく、2質量%以上40質量%以下がより好ましく、3質量%以上30質量%以下が更に好ましく、3質量%以上15質量%以下が特に好ましい。
【0055】
(上記式(1)で表される化合物の製造方法)
上記式(1)で表される化合物の製造方法としては特に制限はないが、例えば、下記式(10)で表される化合物と、m価の対カチオンXm+を形成し得る塩基とを溶媒の存在下、又は不存在下に中和反応させることにより上記式(1)で表される化合物を製造することができる。
【化12】
(式(10)中、R、R、R及びnは、式(1)と同義であり、具体例及び好ましい例も同様である。)
【0056】
m価の対カチオンXm+を形成し得る塩基としては、非環式若しくは環式の含窒素脂肪族化合物、含窒素芳香族化合物又は金属原子若しくは上記金属原子を含む原子団であることが好ましい。
m価の対カチオンXm+を形成し得る塩基としては、上記式(2)~(4)のいずれかで表される非環式若しくは環式の含窒素脂肪族カチオン、上記式(5)~(13)のいずれかで表される含窒素芳香族カチオン、上記式(14)~(16)のいずれかで表される含窒素脂肪族カチオン、又は典型金属元素、遷移金属元素及び半金属元素からなる群より選択される金属原子のカチオン若しくは上記金属原子を含む原子団のカチオンを形成し得る塩基であることがより好ましい。
【0057】
上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを溶媒中にて中和反応させる方法としては、加熱下ないし非加熱下において、例えば、極性溶媒中、上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを混合する方法等が挙げられる。
上記極性溶媒としては、アルコールが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及びtert-ブタノール等が挙げられる。
加熱下において、上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを上記溶媒に溶解して混合することができる。加熱温度は、例えば、40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上である。加熱時の温度の上限としては特に制限はないが、上記溶媒の沸点以下であることが好ましい。
非加熱下では、上記式(10)で表される化合物又は上記塩基が溶媒に溶解し難い場合がある。この場合、塩形成が進行するに従い、反応液中の不溶物の量が低減し得る。
【0058】
上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを溶媒の不存在下に中和反応させる方法は、上記式(10)で表される化合物と、上記塩基とを接触させることができる方法であれば特に限定されない。具体的な方法としては、例えば、常温において、個体である上記式(10)で表される化合物と、個体若しくは液体である上記塩基とを、乳鉢等を用いて粉砕ないしすりつぶしながら混合する方法等が挙げられる。
【0059】
また、上記式(10)で表される化合物と上記塩基との割合(モル比)としては特に制限はないが、式(10)で表される化合物のモル数をM1とし、m価の対カチオンXm+を与える上記塩基のモル数をM2とする場合に、M1/(M2/m)の値として、20/80~80/20であることが好ましく、30/70~70/30であることがより好ましい。
【0060】
また、Xm+がナトリウムカチオン、カリウムカチオンである上記式(1)で表される化合物と、ナトリウムカチオン及びカリウムカチオン以外のm価の対カチオンXm+を形成し得る塩基とを混合して塩交換を行うことにより、Xm+がナトリウムカチオン及びカリウムカチオン以外の上記式(1)で表される化合物を製造することもできる。
【0061】
<硬化性化合物>
第1の態様に係る組成物は、硬化性化合物を含むことが好ましい。
硬化性化合物は、加熱や露光等の硬化のための操作が行われるまで、組成物中で安定して存在可能なものであれば特に限定されず、従来から知られる種々の硬化性化合物を使用することができる。
【0062】
硬化性化合物としては、組成物中での安定性や硬化反応性に優れ、耐熱性が良好な硬化物を与えることから、オキシラン環若しくはオキセタン環を有する化合物及びビニルエーテル化合物よりなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることが好ましく、オキシラン環若しくはオキセタン環を有する化合物であることがより好ましい。
オキシラン環又はオキセタン環を有する化合物の中では、安価で入手が容易である点や、より硬化反応性に優れることから、オキシラン環を有する化合物、すなわち、エポキシ基を有する化合物(以下、単に「エポキシ化合物」ともいう。)であることが好ましい。
【0063】
エポキシ化合物としては、エポキシ基を有する限り特に限定されない。エポキシ化合物は、従来から硬化性組成物に配合されているエポキシ基を有する種々の化合物から選択できる。エポキシ基を有する化合物は、非重合体であるエポキシ基を有する低分子化合物であってもよく、エポキシ基を有する重合体であってもよい。以下、エポキシ化合物に関して、エポキシ基を有する非重合体と、エポキシ基を有する重合体とについて順に説明する。
【0064】
(エポキシ基を有する非重合体)
エポキシ基を有する非重合体としては、従来から硬化性組成物に配合されている、種々の被重合体型のエポキシ化合物から適宜選択できる。エポキシ化合物の好適な例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;ダイマー酸グリシジルエステル、及びトリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0065】
第1の態様に係る組成物が硬化性組成物である場合、上記硬化性組成物を用いて形成される硬化物が機械的特性に優れる点から、芳香族基を含まない脂肪族エポキシ化合物も好ましい。脂肪族エポキシ化合物の中では、透明性及び硬度に優れる硬化物を与えることから、脂環式エポキシ基を有する脂肪族エポキシ化合物が好ましい。
脂環式エポキシ基を有する脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β-メチル-δ-バレロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、及びエポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、トリシクロデセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂や、下記式(A1)~(A5)で表される化合物が挙げられる。これらの脂環式エポキシ化合物の具体例の中では、透明性に優れ、高硬度の硬化物を与えることから、下記式(A1)~(A4)で表される脂環式エポキシ化合物が好ましく、下記式(A1)~(A2)で表される脂環式エポキシ化合物がより好ましい。これらの脂環式エポキシ化合物は単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0066】
【化13】
(式(A1)中、Zは単結合、-O-、-O-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CH-、-C(CH-、-CBr-、-C(CBr-、-C(CF-、及び-Ra19-O-CO-からなる群より選択される2価の基であり、Ra19は炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、Ra1~Ra18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0067】
【化14】
(式(A2)中、Ra1~Ra18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra2及びRa10は、互いに結合してもよい。Ra13及びRa16は互いに結合して環を形成してもよい。ma1は、0又は1である。)
【0068】
上記式(A2)で表される脂環式エポキシ化合物としては、上記式(A2)におけるma1が0である化合物に該当する、下記式(A2-1)で表される化合物が好ましい。
【化15】
(式(A2-1)中、Rc1~Rc12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra2及びRa10は互いに結合して環を形成してもよい。)
【0069】
【化16】
(式(A3)中、Ra1~Ra10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra2及びRa8は、互いに結合してもよい。)
【0070】
【化17】
(式(A4)中、Ra1~Ra12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra2及びRa10は、互いに結合してもよい。)
【0071】
【化18】
(式(A5)中、Ra1~Ra12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0072】
式(A1)中、Ra19は、炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、メチレン基又はエチレン基であるのが好ましい。
【0073】
式(A1)~(A5)中、Ra1~Ra18が有機基である場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子等が挙げられる。
【0074】
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。有機基の炭素原子数は1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上5以下が特に好ましい。
【0075】
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、及び3-n-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、α-ナフチルエチル基、及びβ-ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0076】
ハロゲン化炭化水素基の具体例は、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2-クロロシクロヘキシル基、3-クロロシクロヘキシル基、4-クロロシクロヘキシル基、2,4-ジクロロシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、3-ブロモシクロヘキシル基、及び4-ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2-ブロモフェニル基、3-ブロモフェニル基、4-ブロモフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;2-クロロフェニルメチル基、3-クロロフェニルメチル基、4-クロロフェニルメチル基、2-ブロモフェニルメチル基、3-ブロモフェニルメチル基、4-ブロモフェニルメチル基、2-フルオロフェニルメチル基、3-フルオロフェニルメチル基、4-フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基である。
【0077】
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例は、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、及び4-ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2-ヒドロキシシクロヘキシル基、3-ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4-ヒドロキシシクロヘキシル基等のヒドロキシシクロアルキル基;2-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、2,3-ジヒドロキシフェニル基、2,4-ジヒドロキシフェニル基、2,5-ジヒドロキシフェニル基、2,6-ジヒドロキシフェニル基、3,4-ジヒドロキシフェニル基、及び3,5-ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2-ヒドロキシフェニルメチル基、3-ヒドロキシフェニルメチル基、及び4-ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、及びn-イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、2-n-プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1-n-ブテニルオキシ基、2-n-ブテニルオキシ基、及び3-n-ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、p-トリルオキシ基、α-ナフチルオキシ基、β-ナフチルオキシ基、ビフェニル-4-イルオキシ基、ビフェニル-3-イルオキシ基、ビフェニル-2-イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α-ナフチルメチルオキシ基、β-ナフチルメチルオキシ基、α-ナフチルエチルオキシ基、及びβ-ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-n-プロポキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、3-エトキシ-n-プロピル基、3-n-プロポキシ-n-プロピル基、4-メトキシ-n-ブチル基、4-エトキシ-n-ブチル基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n-プロポキシメトキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-n-プロポキシエトキシ基、3-メトキシ-n-プロポキシ基、3-エトキシ-n-プロポキシ基、3-n-プロポキシ-n-プロポキシ基、4-メトキシ-n-ブチルオキシ基、4-エトキシ-n-ブチルオキシ基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、及び4-メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2-メトキシフェノキシ基、3-メトキシフェノキシ基、及び4-メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α-ナフトイル基、及びβ-ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、及びn-デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α-ナフトキシカルボニル基、及びβ-ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、α-ナフトイルオキシ基、及びβ-ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基である。
【0078】
a1~Ra18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上5以下のアルコキシ基からなる群より選択される基が好ましく、特に上記組成物を用いて得られる硬化物が機械的特性に優れる点からRa1~Ra18が全て水素原子であるのがより好ましい。
【0079】
式(A2)~(A5)中、Ra1~Ra18は、式(A1)におけるRa1~Ra18と同様である。式(A2)及び式(A4)において、Ra2及びRa10が、互いに結合する場合、式(A2)において、Ra13及びRa16が、互いに結合する場合、及び式(A3)において、Ra2及びRa8が、互いに結合する場合に形成される2価の基としては、例えば、-CH-、-C(CH-が挙げられる。
【0080】
式(A1)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(A1-a)、式(A1-b)、及び式(A1-b)で表される脂環式エポキシ化合物や、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン[=2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン]等を挙げることができる。
【化19】
【0081】
式(A2)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(A2-a)、及び式(A2-b)で表される脂環式エポキシ化合物が挙げられる。
【化20】
【0082】
式(A3)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、Sスピロ[3-オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタン-6,2’-オキシラン]等が挙げられる。
式(A4)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジペンテンジオキシド、リモネンジオキシド、及び1-メチル-4-(3-メチルオキシラン-2-イル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等が挙げられる。
式(A5)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0083】
(エポキシ基を有する重合体)
エポキシ基を有する重合体は、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体であってもよく、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等の反応性を有する官能基を有する重合体に対して、例えばエピクロルヒドリンのようなエポキシ基を有する化合物を用いてエポキシ基を導入した重合体であってもよい。また、1,2-ポリブタジエンのような側鎖に不飽和脂肪族炭化水素基を有する重合体の部分酸化物もエポキシ基を有する重合体として好適に使用することができる。かかる部分酸化物は、側鎖に含まれる不飽和結合の酸化により生成したエポキシ基を含む。
【0084】
入手、調製、重合体中のエポキシ基の量の調整等が容易であることから、エポキシ基を有する重合体としては、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体と、側鎖に不飽和脂肪族炭化水素基を有する重合体の部分酸化物とが好ましい。
【0085】
(エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物の重合体)
エポキシ基を有する重合体の中では、調製が容易であることや、硬化性組成物の基材への塗布性等の点から、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体か、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体が好ましい。
【0086】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、鎖状脂肪族エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであっても、後述するような、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。また、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、芳香族基を含んでいてもよい。硬化性組成物を用いて形成される硬化物の透明性の点から、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの中では、鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルや、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
【0087】
芳香族基を含み、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、4-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、2-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、及び2-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0088】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの例としては、エポキシアルキル(メタ)アクリレート、及びエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレート等のような、エステル基(-O-CO-)中のオキシ基(-O-)に鎖状脂肪族エポキシ基が結合する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステルが有する鎖状脂肪族エポキシ基は、鎖中に1又は複数のオキシ基(-O-)を含んでいてもよい。鎖状脂肪族エポキシ基の炭素原子数は、特に限定されないが、3以上20以下が好ましく、3以上15以下がより好ましく、3以上10以下が特に好ましい。
【0089】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキル(メタ)アクリレート;2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシ-n-プロピル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、5-グリシジルオキシ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート、6-グリシジルオキシ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0090】
脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば下記式(a2-1)~(a2-15)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、下記式(a2-1)~(a2-5)で表される化合物が好ましく、下記式(a2-1)~(a2-3)で表される化合物がより好ましい。
【0091】
【化21】
【0092】
【化22】
【0093】
【化23】
【0094】
上記式中、Ra20は水素原子又はメチル基を示し、Ra21は炭素原子数1以上6以下の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Ra22は炭素原子数1以上10以下の2価の炭化水素基を示し、n1は0以上10以下の整数を示す。Ra21としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Ra22としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0095】
エポキシ基を有する重合体としては、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、及びエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体のいずれも用いることができるが、エポキシ基を有する重合体中の、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位の含有量は、例えば、50質量%以上であり、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
【0096】
エポキシ基を有する重合体が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体である場合、他の単量体としては、不飽和カルボン酸、エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。硬化性組成物の保存安定性や、硬化性組成物を用いて形成される硬化物のアルカリ等に対する耐薬品性の点からは、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体は、不飽和カルボン酸に由来する単位を含まないのが好ましい。
【0097】
不飽和カルボン酸の例としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アミド;クロトン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、これらジカルボン酸の無水物が挙げられる。
【0098】
エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、t-オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(メタ)アクリレート;クロロエチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート;脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステルの中では、硬化性組成物を用いて形成される硬化物の透明性の点から、脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0099】
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルにおいて、脂環式骨格を構成する脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。
【0100】
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば下記式(a3-1)~(a3-8)で表される化合物が挙げられる。これらの中では、下記式(a3-3)~(a3-8)で表される化合物が好ましく、下記式(a3-3)又は(a3-4)で表される化合物がより好ましい。
【0101】
【化24】
【0102】
上記式中、Ra23は水素原子又はメチル基を示し、Ra24は単結合又は炭素原子数1以上6以下の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Ra25は水素原子又は炭素原子数1以上5以下のアルキル基を示す。Ra24としては、単結合、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Ra25としては、メチル基、エチル基が好ましい。
【0103】
(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N-アリール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-アリール(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0104】
アリル化合物の例としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0105】
ビニルエーテル類の例としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0106】
ビニルエステル類の例としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0107】
スチレン類の例としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0108】
(側鎖に不飽和脂肪族炭化水素基を有する重合体の部分酸化物)
側鎖に不飽和脂肪族炭化水素を有する重合体は特に限定されないが、入手や合成が容易であること等から、側鎖にビニル基を有する1,2-ポリブタジエンが好ましい。1,2-ポリブタジエンを部分的に酸化することによって、側鎖にオキシラニル基とビニル基とを有する、エポキシ化ポリブタジエンが得られる。このようなエポキシ化ポリブタジエンにおけるオキシラニル基の比率は、オキシラニル基とビニル基との総モル数に対して10モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましく、10モル%以上40モル%以下がより好ましい。エポキシ化ポリブタジエンとしては、日本曹達株式会社より市販される、JP-100、及びJP-200を好適に使用することができる。
【0109】
以上説明した、エポキシ基を有する重合体の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、ポリスチレン換算の質量平均分子量として、3,000以上30,000以下が好ましく、5,000以上15,000以下がより好ましい。
【0110】
(ビニルエーテル化合物)
硬化性化合物としてはビニルエーテル化合物等も用いることができる。
ビニルエーテル化合物は、分子内に1以上のビニルエーテル基を含む有機化合物であれば特に限定されない。ビニルエーテル基が結合する母核である1価又は多価の有機基は、炭化水素基であってもよく、ヘテロ原子を含む有機基であってもよい。ヘテロ原子としては、O、S、N、P、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0111】
ビニルエーテル化合物としては、合成や入手の容易さや、硬化物の透明性や機械的特性の点から、ビニルエーテル基を1つ含むモノビニルエーテル化合物又はビニルエーテル基を2つ含むジビニルエーテル化合物が好ましく、ジビニルエーテル化合物がより好ましい。
【0112】
モノビニルエーテル化合物の具体例としては、エチルビニルエーテル、n-プロピル-ビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、n-ペンチルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル、n-デシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチル-n-ヘキシルビニルエーテル、2-メトキシエチルビニルエーテル、及び2-エトキシエチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル又はアルコキシアルキルビニルエーテル;2-ビニロキシエタノール、2-ビニロキシプロパノール、3-ビニロキシプロパノール、2-ビニロキシブタノール、4-ビニロキシブタノール、6-ビニロキシヘキサノール、2-(ビニロキシエトキシ)エタノール、2-(ビニロキシエトキシエトキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、及びポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等の水酸基含有脂肪族ビニルエーテル;1-クロロ-2-ビニロキシエタン、1-クロロ-3-ビニロキシプロパン、1-クロロ-4-ビニロキシ-n-ブタン、1-クロロ-6-ビニロキシ-n-ヘキサン、1-クロロ-2-(ビニロキシエトキシ)-n-プロパン、1-クロロ-2-(ビニロキシエトキシ)プロパン、及び1-クロロ-2-(ビニロキシエトキシエトキシ)エタン等のハロゲン含有ビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、4-ビニロキシトルエン、3-ビニロキシトルエン、2-ビニロキシトルエン、1-ビニロキシ-4-クロロベンゼン、1-ビニロキシ-3-クロロベンゼン、1-ビニロキシ-2-クロロベンゼン、1-ビニロキシ-2,3-ジメチルベンゼン、1-ビニロキシ-2,4-ジメチルベンゼン、1-ビニロキシ-2,5-ジメチルベンゼン、1-ビニロキシ-2,6-ジメチルベンゼン、1-ビニロキシ-3,4-ジメチルベンゼン、1-ビニロキシ-3,5-ジメチルベンゼン、1-ビニロキシナフタレン、2-ビニロキシナフタレン、4-ビニロキシ-1,1’-ビフェニル、3-ビニロキシ-1,1’-ビフェニル、2-ビニロキシ-1,1’-ビフェニル、ベンジルビニルエーテル、6-ビニロキシテトラリン、及び5-ビニロキシテトラリン等の芳香族ビニルエーテルが挙げられる。
【0113】
ジビニルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、1,3-プロパンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル1,5-ペンタンジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,8-オクタンジオールジビニルエーテル、及び1,10-デカンジオールジビニルエーテル等の鎖状脂肪族ジビニルエーテル;1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、及び2-ビニルオキシ-5-(ビニルオキシメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の環状脂肪族ジビニルエーテル;1,4-ジビニロキシベンゼン、1,3-ジビニロキシベンゼン、1,2-ジビニロキシベンゼン、1,4-ジビニロキシナフタレン、1,3-ジビニロキシナフタレン、1,2-ジビニロキシナフタレン、1,5-ジビニロキシナフタレン、1,6-ジビニロキシナフタレン、1,7-ジビニロキシナフタレン、1,8-ジビニロキシナフタレン、2,3-ジビニロキシナフタレン、2,6-ジビニロキシナフタレン、2,7-ジビニロキシナフタレン、4,4’-ジビニロキシビフェニル、3,3’-ジビニロキシビフェニル、2,2’-ジビニロキシビフェニル、3,4’-ジビニロキシビフェニル、2,3’-ジビニロキシビフェニル、2,4’-ジビニロキシビフェニル、ビスフェノールAジビニルエーテル、1,4-ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、1,3-ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、1,2-ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、及びナフタレン-1,4-ビスメタノールジビニルエーテル等の芳香族ジビニルエーテルが挙げられる。
【0114】
上記のビニルエーテル化合物の中でも好適なものとしては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【化25】
【0115】
(硬化性化合物の含有量)
第1の態様に係る組成物における、硬化性化合物の含有量は、組成物中の有機溶剤以外の成分の質量の合計に対して、例えば40質量%以上98質量%以下であり、45質量%以上96質量%以下が好ましく、50質量%以上95質量%以下がより好ましい。
【0116】
(重合開始剤)
第1の態様に係る組成物は、重合開始剤を含んでいても含んでいなくてよく、重合開始剤としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤の含有量としては特に制限はない。重合開始剤の含有量は、第1の態様に係る組成物の固形分100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0117】
(重合性化合物)
第1の態様に係る組成物は、重合性化合物を含んでいても含んでいなくてよく、重合性化合物としては、単官能モノマー、多官能モノマー等が挙げられる。
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0118】
一方、多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0119】
重合性化合物の含有量としては特に制限はない。重合性化合物の含有量は、第1の態様に係る組成物の固形分に対して1質量%以上70質量%以上が好ましく、3質量%以上50質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下が更に好ましい。
【0120】
(有機溶剤)
第1の態様に係る組成物は有機溶剤を含んでいても含んでいなくてよい。有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ピリジン、及びN,N,N’,N’-テトラメチルウレア等の含窒素極性有機溶剤等が挙げられる。
また、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、モノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサン等の環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;等も挙げることができる。
これらの有機溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0121】
有機溶剤の含有量は特に制限はない。有機溶剤の含有量は第1の態様に係る組成物の固形分濃度が1質量%以上50質量%以下である量が好ましく、5質量%以上30質量%以下である量がより好ましい。
【0122】
(その他成分)
上記組成物は、必要に応じて、各種の樹脂又は添加剤を含有していてもよい。樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂又は露光若しくは加熱されることで現像液(アルカリ現像液又は溶剤現像液)に対する溶解性が高まる樹脂等が挙げられる。またエチレン性不飽和基を有するものであってもよく、エチレン性不飽和基を有さないものであってもよい。添加剤としては、着色剤、分散剤、増感剤、硬化促進剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、及び界面活性剤等が挙げられる。
樹脂の含有量は、第1の態様に係る組成物が、溶媒を除く組成物全体に対して、例えば、10質量%以上90質量%以下の範囲で適宜調整すればよく、好ましくは20質量%以上80質量%以下である。
各種添加剤の添加量は、第1の態様に係る溶剤を除く組成物全体に対して、例えば、0.001質量%以上60質量%以下の範囲で適宜調整すればよく、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下である。
【0123】
(第1の態様に係る組成物の調製方法)
第1の態様に係る組成物は、上記の各成分を撹拌機で混合することにより調製される。なお、調製される第1の態様に係る組成物が均一なものとなるよう、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
(用途)
第1の態様に係る組成物は、硬化性組成物であることが好ましい。
第1の態様に係る組成物が硬化性組成物である場合、上記組成物を硬化させる際の温度及び時間は、硬化が十分に進行する限り特に限定されないが、例えば、100℃以上160℃以下程度の温度、3分以上10分以下程度の時間で、上記組成物を硬化することができる。なお、上記組成物は低温で硬化可能であるが、高温で硬化させることもできる。
第1の態様に係る組成物は、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子等の電子部品用の保護膜、帯電防止膜、層間絶縁膜、平坦膜、絶縁膜を形成するための組成物として用いることができる。
【0124】
≪硬化物≫
第2の態様に係る硬化物は、第1の態様の組成物の硬化物である。
第2の態様に係る硬化物は、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子等の電子部品用の保護膜、帯電防止膜、層間絶縁膜、平坦膜、絶縁膜として用いることができる。
硬化物が膜である場合、厚さは、10nm以上30000nm以下であることが好ましく、50nm以上1500nm以下であることがより好ましく、100nm以上1000nm以下であることが更に好ましい。
【実施例
【0125】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0126】
〔合成例1〕上記式(1)で表される化合物の合成1
【化26】
50ml三つ口フラスコに化合物A(2.00g,8.12mmol)とメタノール(20g)とを加えた。フラスコ内を窒素置換した後、ウォーターバスにて60℃にて加温し、化合物Aをメタノールに溶解させた。次に、上記スキームに従いジアザビシクロウンデセン(DBU;1.24g,8.12mmol)を滴下し、化合物AとDBUとを60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応液を室温(25℃)まで冷却した。その後、反応液から、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物1)を得た。(収量=3.27g,収率=95%,黄色粘調液体)
H-NMR(重DMSO,400MHz):カチオンδ(ppm)=3.48(CH,2H),3.40(CH,2H),3.15(CH,2H),2.65(CH,2H),1.82(CH,2H),1.70-1.45(CH,6H)、
アニオンδ(ppm)=7.70(CH,1H),7.22(Ph,2H),7.15(CH,1H),6.85(Ph,2H),6.80(CH,1H),5.63(CH,1H),3.70(CH,3H),2.85-2.65(CH,2H)
【0127】
〔合成例2〕上記式(1)で表される化合物の合成2
【化27】
50ml三つ口フラスコに化合物A(2.00g,8.12mmol)とメタノール(20g)とを加えた。フラスコ内を窒素置換した後、ウォーターバスにて60℃にて加温し、化合物Aをメタノールに溶解させた。次に、上記スキームに従いジアザビシクロノネン(DBN;1.11g,8.12mmol)を滴下し、化合物AとDBNとを60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した。その後、反応液から、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物2)を得た。(収量=2.91g,収率=90%,黄色粘調液体)
H-NMR(重DMSO,400MHz):カチオンδ(ppm)=3.55(CH,2H),3.40-3.25(CH,4H),2.81(CH,2H),2.00(CH,2H),1.88(CH,2H)
アニオンδ(ppm)=7.70(CH,1H),7.22(Ph,2H),7.15(CH,1H),6.85(Ph, 2H),6.80(CH,1H),5.63(CH,1H),3.70(CH,3H),2.85-2.65(CH,2H)
【0128】
〔合成例3〕上記式(1)で表される化合物の合成3
【化28】
50ml三つ口フラスコに化合物A(2.00g,8.12mmol)とメタノール(20g)とを加えた。フラスコ内を窒素置換した後、ウォーターバスにて60℃にて加温し、化合物Aをメタノールに溶解させた。次に、イミダゾール(IM;0.55g,8.12mmol)を加え、化合物AとIMとを60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した。その後、反応液から、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物3)を得た。(収量=2.43g,収率=95%,白色固体)
H-NMR(重DMSO,400MHz):カチオンδ(ppm)=7.03(CH,2H),7.65(CH,1H)
アニオンδ(ppm)=7.86(CH,1H),7.35(3H),6.99(3H),5.70(CH,1H),3.71(CH,3H),3.35-3.16(CH,2H)
【0129】
原料の化合物A単体、イミダゾール単体、及び得られた化合物3について、それぞれ、X線回折測定装置((株)リガク社製;商品名「全自動水平型多目的X線回折測定装置SmartLab」)を用いて、以下の条件下に、X線回折パターンの測定を行った。得られた化合物3は、原料の各単体のいずれとも異なる反射パターンを示したことから、単なる混合物ではなく、塩であると判断される。
使用X線:回転対陰極型X線発生源由来CuKα線、45kV-200mA
走査速度(2θ):4.0°/min
発散スリット:(2/3)°
散乱スリット:(2/3)°
その他の条件は、パッケージ測定「汎用測定>汎用(集中法)」の標準条件設定による。
【0130】
〔合成例4〕上記式(1)で表される化合物の合成4
【化29】
20mlナスフラスコに化合物A(1.60g,6.50mmol)とテトラヒドロフラン(3g)とを加えた。ナスフラスコ内を窒素置換した後、オイルバスにて60℃にて加温し、テトラヒドロフランに化合物Aを溶解させた。次に、上記スキームに従い7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD;1.00g,6.50mmol)を滴下し、化合物AとMTBDとを60℃で30分反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した。その後、反応液から、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物4)を得た。(収量=2.5g,収率=95%,黄色粘調液体)
H-NMR(重DMSO,500MHz):カチオンδ(ppm)=9.20(NH,1H),3.27-3.22(6H),3.17-3.15(2H),2.90(CH3,3H),1.92-1.89(2H),1.81-1.79(2H)
アニオンδ(ppm)=7.67(CH,1H),7.21(2H),7.12(1H),6.84(2H),6.79(1H),5.62(CH,1H),3.71(CH,3H),2.73-2.61(CH,2H)
【0131】
〔合成例5〕上記式(1)で表される化合物の合成5
【化30】
20mlナスフラスコに化合物A(1.50g,6.09mmol)とメタノール(9g)とを加えた。ナスフラスコ内を窒素置換した後、オイルバスにて60℃にて加温し、化合物Aをメタノールに溶解させた。次に、上記スキームに従い1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン(TBD;0.85g,6.09mmol)を滴下し、化合物AとTBDとを60℃で30分反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した。その後、反応液から、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物5)を得た。(収量=2.2g,収率=95%,黄色固体)
H-NMR(重DMSO,500MHz):カチオンδ(ppm)=10.48(NH,2H),3.22-3.17(4H),3.10-3.07(4H),1.86-1.81(4H)
アニオンδ(ppm)=7.71(CH,1H),7.25(2H),7.17(1H),6.86(2H),6.80(1H),5.65(CH,1H),3.71(CH,3H),2.87-2.73(CH,2H)
【0132】
〔合成例6〕上記式(1)で表される化合物の合成6
【化31】
20mlナスフラスコに化合物A(1.50g,6.09mmol)とメタノール(9g)とを加えた。ナスフラスコ内を窒素置換した後、オイルバスにて60℃にて加温し、化合物Aをメタノールに溶解させた。次に、上記スキームに従い1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG;0.7g,6.09mmol)を滴下し、化合物AとTMGとを60℃で30分反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した。その後、反応液から、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式(1)で表される化合物(化合物6)を得た。(収量=2.2g,収率=100%,黄色固体)
H-NMR(重DMSO,500MHz):カチオンδ(ppm)=2.84(6H)
アニオンδ(ppm)=7.67(CH,1H),7.21(2H),7.12(1H),6.85(2H),6.79(1H),5.62(CH,1H),3.71(CH,3H),2.28-2.64(CH,2H)
【0133】
〔合成例7〕上記式(1)で表される化合物の合成7
【化32】
20mlナスフラスコに化合物A(1.00g,4.06mmol)とメタノール(9g)とを加えた。ナスフラスコ内を窒素置換した後、オイルバスにて60℃にて加温し、化合物Aをメタノールに溶解させた。次に、上記スキームに従いイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(0.72g,4.06mmol)を滴下し、化合物Aとイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホランとを60℃で30分反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した。その後、反応液から、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を留去することにより、上記式で表される化合物(化合物7)を得た。(収量=1.7g,収率=98%,黄色固体)
H-NMR(重DMSO,500MHz):カチオンδ(ppm)=2.63(9H),2.61(9H),
アニオンδ(ppm)=7.65(CH,1H),7.18(2H),7.10(1H),6.84(2H),6.84(1H),5.61(CH,1H),3.71(CH,3H),2.28-2.64(CH,2H)
【0134】
〔組成物の調製〕
下記表1に示した配合比(質量部)で下記エポキシ化合物、式(1)で表される化合物、及び比較化合物を混合し実施例1及び比較例1の組成物を調製した。
【表1】
【化33】
【0135】
〔耐熱性評価〕
実施例1及び比較例1の組成物を用いて耐熱性評価を行った。
実施例1及び比較例1の組成物を、ガラス基板に塗布して200℃で(5分間)加熱し膜厚1μmの硬化膜を得た。
得られた硬化膜を一度室温まで冷ました後、再び、室温から200℃まで昇温して、膜の状態を確認した。
比較例1の硬化膜は140℃付近で膜が融解し始めたが、実施例1の硬化膜は融解が起こらず、示差走査熱量計(商品名:DSC-50、島津製作所製)による観測においても吸熱ピークが現れなかったため、耐熱性の良好な硬化膜が得られていると考えられる。