(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-25
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】フライアッシュの改質方法
(51)【国際特許分類】
C04B 18/08 20060101AFI20221128BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20221128BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20221128BHJP
B09B 3/30 20220101ALI20221128BHJP
【FI】
C04B18/08 Z ZAB
B09B3/40
B09B5/00 N
B09B3/30
(21)【出願番号】P 2020508234
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2019009767
(87)【国際公開番号】W WO2019181619
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2018050837
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】柿囿 兼一
(72)【発明者】
【氏名】大村 昂平
(72)【発明者】
【氏名】関 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】河野 武史
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-000780(JP,A)
【文献】特開2007-160189(JP,A)
【文献】特開昭59-000367(JP,A)
【文献】特開2008-126117(JP,A)
【文献】特開2002-274906(JP,A)
【文献】特開平10-045444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
B07B 4/08
B07B 11/06
B09B 3/00-3/80
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未燃カーボンを含むフライアッシュ原粉を780~1000℃の温度に加熱して該フライアッシュ原粉に含まれる未燃カーボン量を低減させる加熱工程;
前記加熱工程で得られた未燃カーボン量が低減された熱処理フライアッシュを冷却分級装置に導入して細粉と粗粉とに分離する冷却分級工程;
を含み、
前記冷却分級工程において使用される冷却分級装置は、下方から分級用気流を導入し、該装置内に導入された冷却分級用気流を上方から排出する基本構造を有しており、
前記冷却分級装置内に投入された前記熱処理フライアッシュを、前記冷却分級用気流と接触させ、該熱処理フライアッシュに含まれる細粉を上昇させて装置外に排出させ且つ該熱処理フライアッシュに含まれる粗粒を装置内に滞留させることにより、細粉と粗粒との分離及び冷却とを行い、
前記冷却分級装置から排出された前記細粉は、集塵装置を用いて回収し、前記粗粒は、該冷却分級装置から回収することを特徴とするフライアッシュの改質方法。
【請求項2】
前記冷却分級装置内での分級を、散水下で行う請求項1に記載のフライアッシュの改質方法。
【請求項3】
前記加熱工程により、未燃カーボン量を3質量%未満に低減させる、請求項1に記載のフライアッシュの改質方法。
【請求項4】
前記加熱工程での加熱を、未燃カーボン量が低減された熱処理フライアッシュ中に含まれる最大直径が150μm以上の塊状粒子の含有量が50質量%を超えないように行う、請求項3に記載のフライアッシュの改質方法。
【請求項5】
前記冷却分級工程において、分級により得られる前記細粉の45μmふるい残分が34質量%以下となるように分級点を設定する請求項1に記載のフライアッシュの改質方法。
【請求項6】
前記冷却分級工程において、分級により得られる粗粒は、45μmふるい残分が34質量%以下となるまで粉砕する請求項5に記載のフライアッシュの改質方法。
【請求項7】
前記集塵装置から回収された細粉と、前記粗粒を粉砕して得られた粉砕粉末とを混合する、請求項6に記載のフライアッシュの改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライアッシュの改質方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フライアッシュをセメントやコンクリートの混合材として使用する場合、一般にフライアッシュに含まれる未燃カーボンが少ないものが好適とされる。
【0003】
しかし、一般に石炭火力発電所から発生したフライアッシュ中の未燃カーボン量は様々であり、多いもので15質量%存在し、混合材として好適なものは一部に限られるのが現状である。
【0004】
未燃カーボン量が低減されたフライアッシュ(改質フライアッシュ)を得るためには、フライアッシュを加熱し未燃カーボンを燃焼除去する方法がある(例えば、特許文献1,2)。
【0005】
しかしながら、フライアッシュを加熱して未燃カーボンを燃焼除去することにより、上記のような混合材に適した改質フライアッシュを、工業的に効率よく得ることは非常に難しい。
【0006】
即ち、フライアッシュから未燃カーボンを燃焼除去するためには、700℃以上の温度に加熱する必要がある。700℃よりも低い温度では、未燃カーボンを除去するのに極めて時間がかかるからである。また、加熱温度を高くするほど、短時間で未燃カーボン量を大きく低減できるのであるが、この温度が高くなると、フライアッシュ粒子同士の融着による塊状化が始まり、温度が高いほど塊状物の割合が増加してしまい、また、その冷却にも長時間要することとなる。このため、塊状物の生成を極力抑えるために、加熱温度は780℃以下に設定するのがよく、従って、未燃カーボンを除去するための加熱温度は700~780℃の範囲が最適なのであるが、このような限定された温度に加熱することは非常に困難である。
【0007】
何故ならば、未燃カーボンと酸素との反応(燃焼反応)は発熱を伴い、しかも、フライアッシュの加熱と共に、この未燃カーボン量が変動するからである。即ち、未燃カーボン量が変動することによって、加熱炉内に適切な量の酸素が供給されなかったり、加熱炉内の温度が変動したりする。また、加熱に供されるフライアッシュに含まれる未燃カーボン量も一定ではない。例えば、未燃カーボン量が多いフライアッシュが加熱されたときには、必要以上に温度が高温となってしまう。
【0008】
このように、未燃カーボン含量が一定でない多様なフライアッシュを加熱するため、その加熱温度を700~780℃のように非常に限定された範囲に設定することは極めて困難である。特に加熱に供するフライアッシュ原粉の切り替わりのタイミングで炉内の熱バランスが崩れやすく、温度が上がり過ぎたり、下がり過ぎたりすることが多い。また、酸素の供給量が不足して未燃カーボンが十分に低減されないといった問題も生じる。原料の切り替わり頻度が高いと、最適条件を模索している間に原料が切り替わってしまい、結果的に混合材として好適な製品がほとんど得られないといった事態が生じる可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-126117号公報
【文献】特開平11-060299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、未燃カーボン量の多様なフライアッシュを短時間で確実に未燃カーボン量を低減させて改質し、かつ改質後のフライアッシュの全量を、比較的簡単な方法により混合材として使用できるフライアッシュの改質方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を行った。そして、塊状物を含む改質フライアッシュであっても、冷却を兼ねて風力分級を行うことにより、効率よく冷却できることができ、混合材として好適な性状の改質フライアッシュを得ることが可能なことを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明によれば、
未燃カーボンを含むフライアッシュ原粉を780~1000℃の温度に加熱して該フライアッシュ原粉に含まれる未燃カーボン量を低減させる加熱工程;
前記加熱工程で得られた未燃カーボン量が低減された熱処理フライアッシュを冷却分級装置に導入して細粉と粗粉とに分離する冷却分級工程;
を含み、
前記冷却分級工程において使用される冷却分級装置は、下方から分級用気流を導入し、該装置内に導入された冷却分級用気流を上方から排出する基本構造を有しており、
前記冷却分級装置内に投入された前記熱処理フライアッシュを、前記冷却分級用気流と接触させ、該熱処理フライアッシュに含まれる細粉を上昇させて装置外に排出させ且つ該熱処理フライアッシュに含まれる粗粒を装置内に滞留させることにより、細粉と粗粒との分離及び冷却とを行い、
前記冷却分級装置から排出された前記細粉は、集塵装置を用いて回収し、前記粗粒は、該冷却分級装置から回収することを特徴とするフライアッシュの改質方法が提供される。
【0013】
本発明の改質方法においては、以下の態様を好適に採用することができる。
(1)前記冷却分級装置内での分級を、散水下で行うこと。
(2)前記加熱工程により、未燃カーボン量を3質量%未満に低減させること。
(3)前記加熱工程での加熱を、未燃カーボン量が低減された熱処理フライアッシュ中に含まれる最大直径が150μm以上の塊状粒子の含有量が50質量%を超えないように行うこと。
(4)前記冷却分級工程において、分級により得られる前記細粉の45μmふるい残分が34質量%以下となるように分級点を設定すること。
(5)前記冷却分級工程において、分級により得られる粗粒は、45μmふるい残分が34質量%以下となるまで粉砕すること。
(6)前記集塵装置から回収された細粉と、前記粗粒を粉砕して得られた粉砕粉末とを混合すること。
【発明の効果】
【0014】
本発明の改質方法では、加熱温度が780~1000℃と高温で且つ幅広い範囲に設定されているため、未燃カーボン量が異なるようなフライアッシュ原粉についても、比較的短時間で連続的かつ安定的に、セメントやコンクリートの混合材として好適な改質フライアッシュを得ることができる。
【0015】
特に、本発明では高温でフライアッシュを加熱するため、加熱装置で加熱されて未燃カーボン量が低減されたフライアッシュ(熱処理フライアッシュ)は、大きな粒径の塊状粒子を含んでいる塊状物となっているが、この熱処理フライアッシュを高温に保持されたままの状態で、冷却分級装置に導入して、冷却分級用気流を用いて冷却と同時に風力分級を行い、大きな塊状粒子を含む粗粒と、細粉とに分離する。即ち、この冷却分級装置は、冷却分級用気流(例えば空気)を下方から供給し、このような気流に熱処理フライアッシュを接触させ、冷却され易い細粉を持ち上げて該装置から排出する一方で、冷却し難い粗粒は、装置内に滞留される。即ち、冷却され易い細粉は、冷却分級用気流と接触しながら速やかに装置が排出され、冷却され難い粗粒は、装置内に滞留して冷却分級用気流に常に接触した状態に保持される。このため、冷却を効率よく、短時間で行うことができる。即ち、分級せずに、大きな塊状物のままでの冷却では、冷却効率が悪く、冷却に著しく長時間を要してしまう。
【0016】
さらに、本発明では、未燃カーボン量が低減された熱処理フライアッシュは、分級により得られた微粉及び分級により得られた粗粒の粉砕品ごとに分けて回収されるが、両者を混合することにより、熱処理により未燃カーボン量が低減されたフライアッシュの全量を、セメントやコンクリートの混合材として効率よく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図1の方法を実施するために使用される冷却分級装置の概略構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して、本発明においては、未燃カーボンを含むフライアッシュ原粉を、加熱装置1で加熱して未燃カーボン量を低減し(加熱工程)、未燃カーボン量が低減された熱処理フライアッシュは、高温に維持された状態で、冷却分級装置3に導入されて冷却及び分級が行われる(冷却分級工程)。この冷却分級により得られた細粉は集塵装置5により回収され(微粉回収工程)、冷却分級により得られた粗粒は、粉砕装置7に導入され(粉砕工程)、所定の粒度に粉砕された後、回収される。このようにして回収された微粉及び粉砕品は、そのまま使用に供することもできるが、通常、混合装置7で両者を混合して、セメント或いはコンクリートの混合材製品として出荷される。
【0019】
フライアッシュ原粉;
上述した改質処理に供するフライアッシュ原粉は、石炭火力発電所などの石炭を燃焼する設備において発生する一般的なフライアッシュである。かかるフライアッシュ原粉は、石炭や、石炭以外の燃料、その他可燃系廃棄物が混焼されて発生したフライアッシュであってもよい。
また、このフライアッシュ原粉に含まれる粒子の最大直径は、通常、150μmよりも小さく、100μm以上である。
【0020】
このようなフライアッシュ原粉には、一般に1~15質量%程度の量で未燃カーボンが含まれている。この未燃カーボンが多いと、フライアッシュをセメントやコンクリートの混合材(以下、単に混合材と呼ぶことがある)として使用した場合に問題を生じる。例えば、未燃カーボン含有量が多いと、モルタルやコンクリートの表面に未燃カーボンが浮き出し、黒色部が発生するおそれがある。また、フライアッシュと共に混合される化学混和剤などの薬剤が未燃カーボンに吸着してしまい、薬剤の機能が損なわれることもある。
本発明は、特に、未燃カーボン量が3質量%を超えるフライアッシュ、特に5質量%を超えるフライアッシュの改質に適用される。
【0021】
加熱工程;
上記のフライアッシュ原粉は、加熱装置1に導入され、加熱によって、未燃カーボンを燃焼させて、その量を低減させる。例えば、加熱後の未燃カーボン量が通常3質量%未満、好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下となるように加熱が行われる。
【0022】
尚、フライアッシュが含有する未燃カーボン量の測定方法は公知であり、例えば、以下の方法が知られている。
(a)燃焼させて発生したCO2・COガスを赤外線検出する方法;
(b)強熱減量を測定し、該強熱原料から未燃カーボン量を推定する方法;
(c)メチレンブルー吸着量に基づいて算出する方法;
(d)密かさ比重試験による方法;
(e)マイクロ波を照射して未燃カーボン量を推定する方法;
従って、適宜サンプリングして、上記の方法により、加熱装置1に導入されるフライアッシュ原粉及び加熱装置1の出口部分で加熱されたフライアッシュ(改質フライアッシュ)の未燃カーボン量を測定し、これらの測定値に基づいて、加熱温度や加熱時間が設定される。
【0023】
本発明においては、加熱装置1による加熱温度を780~1000℃、好ましくは800~950℃の範囲に設定される。このように高温で且つ幅広い温度領域で加熱を行うため、加熱装置1に導入するフライアッシュの未燃カーボン量が頻繁に変動した場合においても、安定して連続して加熱を行うことができる。
尚、加熱温度が上記範囲よりも低温である場合には、未燃カーボン量が所定の範囲まで低減するのに長時間要し、効率が低下する。また、上記温度よりも高温に加熱すると、フライアッシュの粒子同士の融着が極端に大きな塊状物となり、配管等での詰まりが生じたり、加熱装置1の壁面に融着するなどの不都合を生じてしまう。また、フライアッシュの化学的変質が進み、混合材として使用しがたくなることもある。
【0024】
ところで、本発明では、上記のような高温領域でフライアッシュ原粉が加熱されるため、フライアッシュの粒子同士の融着が生じ、どうしても細粉と同時に大きな塊状粒子、例えば最大径が150μm以上の大きな粒子が生成する。加熱に供されるフライアッシュに含まれる粒子の最大径は150μmよりも小さいため、この加熱により、このような塊状粒子が生成することが確認できる。即ち、加熱温度が高い程、また加熱時間が長い程、塊状化が進み、より大きな塊状粒子が多く生成する。このため、本発明では、後述する冷却分級が必要となるのであるが、必要以上に塊状化が進行すると、分級や粉砕に手間がかかり、効率が低下する。このため、本発明では、前述した範囲に未燃カーボン量が低減されることを条件として、最大径が150μm以上の大きな塊状粒子の量が、50質量%を超えないように、特に30質量%を超えないように、加熱温度及び時間を設定することが好適である。
【0025】
また、本発明において、上記のような加熱に使用する加熱装置1としては、一般的な加熱炉を使用することができるが、工業的観点から、ロータリーキルン、ローラーハースキルン、トンネルキルン、流動層炉、旋回気流式焼成炉などが好適に使用される。また、780℃~1000℃の範囲での温度の制御が容易であり、連続的に多量に処理可能な点で、外熱式のロータリーキルンが最も好ましい。ロータリーキルンを用いた場合、他の加熱方式に比べて塊状化が起きやすいが、本発明の方法を適用する有効性は高い。
【0026】
冷却分級工程;
本発明では、上記のような加熱によって未燃カーボン量が低減された熱処理フライアッシュを、高温の状態で冷却分級装置3に導入する。即ち、加熱装置1から出た改質フライアッシュの塊状物は、細粉を含んだまま、配管内等での自然冷却はされるものの、高温状態のまま、冷却分級装置3に導入され、細粉と粗粒とに分級される。即ち、熱処理フライアッシュは加熱保持されているわけではないので、冷却分級装置3までの配管内で数十℃~300℃程度の温度降下を生じるが、少なくとも300℃以上の高温に保持されており、このような高温状態のまま、この冷却分級装置3で、塊状物に含まれる細粉と粗粒(粒径の大きき塊状粒子を含む)とに分離し、同時に、細粉及び粗粒の冷却を行うわけである。換言すれば、熱処理フライアッシュは後述するような冷却されにくい粗粒を含むため、自然冷却で300℃を下回る温度となるには極めて長い時間が必要であり、本発明においては、このような低温になるのを待たずに、冷えにくい粗粒を分離しながら重点的に冷却するものである。加熱装置1から冷却分級装置3への輸送効率を高くすると、上記温度低下は起きにくくなる。その観点から、冷却分級装置3に導入される時点での熱処理フライアッシュの温度が、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃以上、特に好ましくは550℃以上であるような効率で輸送する。
分級せずに冷却を先に行うと、加熱装置1から排出された熱処理フライアッシュは、比表面積の大きい細粉と比表面積の小さい塊状粒子が共存しているため、全体を所定温度まで冷却しようとすると、一部の冷えにくい塊状粒子が冷め切るまで全体を冷却しつづける必要があり、冷却効率が悪く、冷却に著しく長時間かかってしまう。即ち、本発明では、冷却効率の悪い塊状粒子を多く含む粗粒と、比表面積が大きくて冷却効率の良好な細粉とを分離しながら、粗粒を重点的に冷却することにより、効率よく、冷却を行うことができる。
【0027】
冷却分級装置3は、風力分級により分級を行うものであるが、分級のために使用する気流により冷却を行うという構造を有している。
【0028】
このような冷却分級装置3の概略構造を示す
図2を参照して、この装置3は、中空の筒状体であり、底壁部は、下方から上方に向かって拡径した傾斜壁となっており、この傾斜壁は、ストレートな直胴部に連なり、この直胴部は、上方の頂部壁に連なっている。この頂壁部は、底壁部の傾斜壁とは異なり、上方に向かって縮径した傾斜壁の形態を有している。
【0029】
図2示されているように、底壁部には、冷却用気流を導入するための気流導入口11が形成されており、ストレートな胴部の上部には、原料投入口13が設けられており、頂部壁には、気流排出口としても機能する細粉取出口15が形成されている。また、直胴部には、粗粒取出口17が設けられており、直胴部と底壁部との境界部分の近傍において、この中空の筒状体の内部空間は、分散板19によって仕切られている。さらに、上部壁には、散水ノズル21が設けられている。
【0030】
即ち、冷却分級用の気体(通常は空気)が気流導入口11から導入され、
図2に示されているように、冷却用気体の上昇気流Zが装置3内に形成される。
ところで、上記の分散板19は、多数の小さな孔が多数均一に分布しているものであり、この分散板19を通って、偏流せずに上昇気流Zが導入されることとなる。
【0031】
一方、前述した熱処理フライアッシュは、例えば480℃以上の高温に維持されており、このような高温の熱処理フライアッシュは、上記の原料投入口13から投入され、分散板19を通った上昇気流Zと接触し、これにより、冷却と分級とが行われることとなる。即ち、原料投入口13から投入された熱処理フライアッシュの内、重量の軽い細粉は、この上昇気流Zに乗って、冷却されながら排出口15から排出される。一方、重量の重い粗粒は、分散板19上に堆積し、装置3内に滞留することとなり、一定量以上となると、オーバーフローして粗粉取出口17から排出されることとなる。
【0032】
上記の説明から理解されるように、冷却し易い細粉は、上記の上昇気流Zによって冷却されながら、上昇気流Zに随伴して装置3外に排出されるが、冷却し難い粗粒は、細粉と分離して、装置3内に滞留し、絶えず上昇気流Zに曝されて冷却されることとなる。従って、冷却を効率よく、短時間で行うことができる。
例えば、機械搬送式の冷却装置では、細粒と粗粒とが入り混じった状態で冷却しようとすると、冷却されにくい粗粒に合わせた条件を用いなければならない。しかしながら、上記のような冷却分級装置3では、径の小さい細粉は装置3内の上層部に移動して比較的短時間で装置3外に排出され、径が大きい粗粒は、粒子は装置3内の下層部へ移動して比較的長時間装置内に滞在した後に排出されるため、細粉の冷却と粗粒の冷却とに必要なだけの冷却時間を容易に確保することができ、効率よく冷却を行うことができる。
また、機械搬送式の冷却装置の多くは間接冷却であるため、冷却効率が悪く、伝熱面積を多くするために、装置が大型化してしまう。しかるに、本発明で使用する冷却分級装置3は、冷却効率の高い直接冷却であり、しかも装置内に一様に気流Zを導入して粒子を流動化することにより、粒子と気体との接触面積が大きくなるため、装置の小型化を図ることができる。
さらに、上記の装置3では、冷却と同時に分級を行うことで、フライアッシュの改質工程を簡素化することができる。
【0033】
尚、上記のような細粉及び粗粒は、それぞれ、200℃以下、特に100℃以下に冷却されることが、その後の工程で使用される装置に耐熱仕様を取り入れる必要がなく、コスト等の点で有利である。
【0034】
ところで、冷却分級装置3に投入される熱処理フライアッシュを冷却するための気体としては、特に制限されるものではないが、通常は、空気が使用され、空気を気流導入口11から吹き込んで上昇気流Zを形成するが、このような気体の温度は、常温程度でよく、格別の冷却装置により冷却する必要はなく、そのまま上昇気流Zの形成に使用され、上記のような温度に細粉及び粗粒を冷却することができる。ただ、冷却に時間がかかる場合には、装置3の上部に設けられている散水ノズル21から冷却水を噴霧することにより冷却時間を短縮することができる。例えば、装置3内に投入される熱処理フライアッシュの蓄熱量が大きい場合に、このような冷却水の噴霧が必要となるが、散水量が多いと粒子が保有する水分濃度が上がり、造粒して流動不良を起こすおそれが高い。このため、結露が起きない程度に装置3内の温度制御を行うことが好適である。また、散水量はフライアッシュ1トン当たり1L~100L程度とすることができる。
上記冷却により、回収されるフライアッシュの温度を200℃以下、好ましくは150℃以下、特に好ましくは100℃以下にする。
【0035】
また、上記の上昇気流Zを利用しての分級(即ち、風力分級)では、分級点は、気体の流量及び流速に依存し、流量が多く、また流速が速い程、分級点は大きくなり、大きな粒径の粒子を排出することができる。従って、これを利用して、分級点が設定される。
【0036】
また、分級装置3による分級点は特に限定されないが、例えばフライアッシュのJIS規格では45μmふるい残分を規定しているため、この45μmふるい残分を目処にして設定することが好ましい。具体的には、微粒分における45μmふるい残分が34質量%以下、20質量%以下となるように分級点を設定することが好ましい。JIS規格で定められたフライアッシュのうち、最も汎用的なJIS II種規格は45μmふるい残分が40質量%以下であるが、本発明において34質量%以下としたのは、JISだけでなく諸外国のフライアッシュ規格にも同時に適合させることを目的としたものである。(例えば、米国、台湾、インドでは、45μmふるい残分が34質量%以下である。)
【0037】
また、混合材として好適な改質フライアッシュを得るという観点から、分級により得られる微粉の体積換算でのメディアン径D50が30μm以下、好ましくは20μm以下となるよう設定することも好ましい。一般に混合材に用いられるフライアッシュの累積体積50%径D50(メディアン径)は10~40μmであり、これと同等のメディアン径とすることが可能である。このとき細粉および粗粒の回収率は、投入される熱処理フライアッシュの粒子の焼結度合いにより異なるが、一般的には粗粒が50質量%以下となる。
尚、上記のメディアン径D50は、例えばレーザー回折式粒度分布計よって測定される。
【0038】
細粉回収工程;
冷却分級装置3での分級により分離され且つ冷却されているフライアッシュの細粉は、熱処理によって未燃カーボン量が低減された改質フライアッシュであり、集塵装置5により回収される。
このような細粉の回収に用いる集塵装置5としては、電気集塵機、バグフィルター、サイクロン等の工業的に使用されるものであれば特に問題ない。集塵装置5で回収された細粉は、そのまま混合材として使用することが可能である。
【0039】
粗粒粉砕工程;
上記の冷却分級装置3内でのオーバーフローによって該装置3から取り出された粗粒は、そのままセメントクリンカー製造原料等の用途に使用することも可能であるが、セメントやコンクリートの混合材として使用するためには、粉砕する必要がある。粒径が著しく粗大であり、しかも数cm~十数cmを超えるような巨大な塊状粒子を含んでいる場合が多いからである。このため、前述した細粉と同様、45μmふるい残分が34質量%以下、特に20質量%以下となるまで粉砕する。このとき、粉砕後のメディアン径D50は30μm以下、特に20μm以下となっていることが好ましい。
【0040】
粉砕装置としては、特に制限されず、工業的に使用されているチューブミル、振動ミル、ローラーミル、ロールクラッシャー、ハンマークラッシャーなどを使用することができる。
【0041】
混合工程;
集塵装置5から回収された細粉や、粉砕装置から回収された粗粒の粉砕物は、何れも改質フライアッシュとして、そのままセメントやコンクリートの混合材として使用することもできるが、未燃カーボン量が大幅に減じられている改質フライアッシュの品質の均一性という点で、両者を混合装置9に導入して混合して製品とすることが好ましい。
【0042】
このような混合装置9は特に制限されず、一般的な粉体の混合に使用されている混合装置を使用することができ、例えば、撹拌式混合機や圧縮エアを用いた噴流混合機を使用することができ、また、ブレンディングサイロ、連続式粉体輸送機、空気圧送設備内での混合も可能である。
【0043】
このようにして得られた改質フライアッシュは、未燃カーボン量が低減され、かつ適切な粉末度に調整されており、公知の方法によりセメント混合材又はコンクリート混合材として使用される。
【符号の説明】
【0044】
1:加熱装置
3:冷却分級装置
5:集塵装置
7:粉砕装置
9:混合装置
11:気体導入口
13:原料投入口
15:細粉取出口
17:粗粒取出口
19:分散板
21:散水ノズル