(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】透過率可変装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1347 20060101AFI20221129BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20221129BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G02F1/1347
G02F1/13363
G02F1/13 505
(21)【出願番号】P 2020516474
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(86)【国際出願番号】 KR2018012987
(87)【国際公開番号】W WO2019088640
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2017-0143741
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リム、ウン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ベルヤエフ、セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】オー、ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジュン スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ホン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ギム、ミン ジュン
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0276960(US,A1)
【文献】特開2008-233412(JP,A)
【文献】特開2006-267825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1347
G02F 1/13363
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重なって配置されている第1
ゲストホスト層および第2ゲストホスト層を含む透過率可変装置であって、
前記第1
ゲストホスト層および
前記第2ゲストホスト層の間に位相差素子をさらに含み、
前記第1
ゲストホスト層および
前記第2ゲストホスト層はそれぞれ液晶ホストおよび二色性染料ゲストを含み、
透過モードと遮断モード間をスイッチングすることができ、
前記遮断モードで前記第1
ゲストホスト層および
前記第2ゲストホスト層の
前記液晶ホストの光軸は、水平配向され、
前記遮断モードで前記第1
ゲストホスト層および
前記第2ゲストホスト層の
前記液晶ホストの光軸は、当該ゲストホスト層の平面の法線方向から観察時に互いに平行であり、
前記遮断モードで前記法線方向と垂直な方向から観察した前記第1
ゲストホスト層および
前記第2ゲストホスト層の水平配向された液晶ホストのチルト方向は互いに交差しており、前記互いに交差しているチルト方向がなす角度のうち小さい角度が
4度~10度の範囲内にあり、
前記遮断モードは、電圧印加状態で具現される、透過率可変装置。
【請求項2】
前記遮断モードで前記ゲストホスト層の前記法線方向と垂直な方向から観察した時に、互いに交差している前記チルト方向がなす角度のうち小さい角度が
5度~10度の範囲内にある、請求項1に記載の透過率可変装置。
【請求項3】
前記透過モードで前記第1
ゲストホスト層および
前記第2ゲストホスト層の
前記液晶ホストの光軸が70度~90度の範囲内のプレチルト角を有する垂直配向状態である、請求項1または2に記載の透過率可変装置。
【請求項4】
前記第1
ゲストホスト層および
前記第2ゲストホスト層のそれぞれの両面に存在する配向膜をさらに含む、請求項1から3の何れか一項に記載の透過率可変装置。
【請求項5】
前記配向膜はラビング配向膜であり、
前記第1
ゲストホスト層および
前記第2ゲストホスト層の間に存在する前記配向膜は、互いに同じ方向にラビング処理された配向膜であり、
前記第1ゲストホスト層の前記第2ゲストホスト層に向かう方向の反対方向に存在する前記配向膜と前記第2ゲストホスト層の前記第1ゲストホスト層に向かう方向の反対方向に存在する
前記配向膜は、前記第1
ゲストホスト層および
前記第2ゲストホスト層の間に存在する前記配向膜の配向方向反対方向にラビング処理された配向膜である、請求項4に記載の透過率可変装置。
【請求項6】
前記配向膜は斜め照射処理された光配向膜であり、
前記第1
ゲストホスト層および
前記第2ゲストホスト層の間に存在する前記配向膜は、互いに同じ方向に斜め照射された配向膜であり、
前記第1ゲストホスト層の前記第2ゲストホスト
層に向かう方向の反対方向に存在する前記配向膜と前記第2ゲストホスト層の前記第1ゲストホスト層に向かう方向の反対方向に存在する前記配向膜は、前記第1
ゲストホスト層および
前記第2ゲストホスト層の間に存在する前記配向膜の斜め照射方向の反対方向に斜め照射処理された配向膜である、請求項4に記載の透過率可変装置。
【請求項7】
前記位相差素子の550nmの波長の光に対する面上位相差が200nm~350nmの範囲内であり、厚さ方向位相差が-300nm~300nmの範囲内である、請求項1から6のいずれか一項に記載の透過率可変装置。
【請求項8】
前記位相差素子の遅相軸と前記ゲストホスト層の液晶ホストの水平配向時の光軸がなす角度が35度~55度の範囲内である、請求項1から7のいずれか一項に記載の透過率可変装置。
【請求項9】
前記位相差素子は、非液晶高分子フィルムまたは液晶高分子フィルムである、請求項1から8の何れか一項に記載の透過率可変装置。
【請求項10】
互いに対向配置されている第1
基板および第2基板と、互いに対向配置されている第3
基板および第4基板をさらに含み、前記第1ゲストホスト層が前記第1
基板および
前記第2基板の間に位置し、前記第2ゲストホスト層が前記第3
基板および
前記第4基板の間に存在し、前記第2
基板および第3基板が互いに対向して配置されており、前記第2
基板および
前記第3基板の550nmの波長の光に対する面上位相差の合計値が200nm~350nmの範囲内である、請求項1から9の何れか一項に記載の透過率可変装置。
【請求項11】
互いに対向配置されている第1
基板および第2基板と、互いに対向配置されている第3
基板および第4基板をさらに含み、前記第1ゲストホスト層が前記第1
基板および
前記第2基板の間に位置し、前記第2ゲストホスト層が前記第3
基板および
前記第4基板の間に存在し、前記第2
基板および
前記第3基板が互いに対向して配置されており、前記第2
基板および
前記第3基板の間に位相差素子が存在する、請求項1から10の何れか一項に記載の透過率可変装置。
【請求項12】
前記第2基板、前記位相差素子および前記第3基板の550nmの波長の光に対する面上位相差の合計値が200nm~350nmの範囲内である、請求項11に記載の透過率可変装置。
【請求項13】
順次配置された第1基板、第2基板および第3基板をさらに含み、前記第1
基板および
前記第2基板の間に前記第1ゲストホスト層が存在し、前記第2
基板および
前記第3基板の間に前記第2ゲストホスト層が存在し、前記第2基板の550nmの波長の光に対する面上位相差が200nm~350nmの範囲内である、請求項1から9の何れか一項に記載の透過率可変装置。
【請求項14】
左目用レンズと右目用レンズ、および前記左目用レンズと右目用レンズを支持するフレームを含むアイウェアであって、
前記左目用レンズおよび右目用レンズはそれぞれ請求項1から13の何れか一項に記載された透過率可変装置を含む、アイウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年10月31日付提出された大韓民国特許出願第10-2017-0143741号に基づいた優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は透過率可変装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
主に液晶化合物であるホスト物質(host material)と二色性染料ゲスト(dichroic dye guest)の混合物を適用した、いわゆるGHセル(Guest host cell)を使った透過率可変装置は公知とされている(例えば、特許文献1)。
【0004】
このような透過率可変装置は、サングラスなどのメガネ類(eyewear)や建物の外壁、車両のサンルーフなどを含む多様な用途に適用されている。最近ではいわゆる増強現実(AR、Augmented Reality)の体験のためのメガネ類にも前記透過率可変素子の適用が検討されている。
【0005】
このような透過率可変装置は、GHセル内の二色性染料ゲストの配向を調節して透過率を調節することになる。
【0006】
前記のような透過率可変装置が有する問題点は、脆弱な視野角特性である。例えば、2個のGHセルを重ねた後に各GHセルの光軸を交差させて遮断状態を具現すると、水平方向の視野角特性は対称となるものの、垂直方向の視野角特性は一方に偏るという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
(特許文献1)ヨーロッパ公開特許第0022311号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、透過率可変装置に関するものであって、一例示において全方位の視野角で対称性が確保された透過率可変装置およびその用途を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願は透過率可変装置に関するものである。用語透過率可変装置は、高い透過率の状態と低い透過率の状態の間をスイッチングできるように設計された装置を意味し得る。後述するように、少なくとも2個のゲストホスト(Guest-Host)セル(以下、GHセル)を含む構造において、前記各GHセル内の二色性染料の配向を調節することによって前記状態間のスイッチングが可能となり得る。
【0010】
本出願で前記高い透過率の状態は透過状態と呼称され得、低い透過率の状態は遮断状態と呼称され得る。前記透過状態は、例えば、前記装置の垂直光に対する直進光透過率が40%以上である状態を意味し得、遮断状態は前記装置の垂直光に対する直進光透過率が10%以下である状態を意味し得る。前記で垂直光は、前記透過率可変装置がフィルムまたはシート形態である場合には前記フィルムまたはシート表面の法線方向と並んでいる方向に入射する光であり、垂直光の直進光透過率は、前記フィルムまたはシート表面に入射した垂直光のうち、同様に前記法線方向と並んでいる方向に透過した光の百分率である。
【0011】
透過状態での垂直光の直進光透過率は、他の例示で約100%以下、約95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下または60%以下や、45%以上、50%以上または55%以上であり得る。前記遮断状態での垂直光の直進光透過率は、他の例示で約8%以下、7%以下、6%以下または約5.5%以下であり得、また、0%以上、1%以上、2%以上、3%以上または4%以上であり得る。
【0012】
本出願の透過率可変装置は、前記のような透過率特性と共に全方位視野角においても対称性が確保され得る。
【0013】
前記透過率は可視光波長領域、すなわち400~700nmの波長範囲内のいずれか一つの波長の光に対する数値であるか、あるいは前記全波長の光に対する数値の平均値であり得る。
【0014】
前記言及した透過状態での直進光透過率は前記透過率可変装置の当該透過率が最も高い状態での透過率であり、遮断状態での直進光透過率は前記透過率可変装置の当該透過率が最も低い状態での透過率である。
【0015】
例示的な透過率可変装置は、第1GHセルおよび第2GHセルを含むことができる。本出願で用語GHセルは、ホスト(host)物質と二色性染料(dichroic dye)ゲスト物質の混合物を含む部位を含むセルであって、前記混合物で二色性染料ゲストの配向を調節して光の透過率を調節できるセルを意味する。前記でホスト物質としては一般的に液晶化合物が適用される。以下、本明細書で液晶化合物であるホスト物質は、液晶ホストと呼称され得る。また、ホスト物質と二色性染料ゲスト物質の混合物を含む部位は本明細書でGH層と呼称され得る。したがって、前記第1および第2GHセルはそれぞれ第1および第2GH層を含むことができる。
【0016】
本出願で前記第1および第2GH層は、互いに重なった状態で装置内に含まれている。したがって、前記第1GH層を透過した光は第2GH層に入射され得、その反対に第2GH層を透過した光も第1GH層に入射され得る。
【0017】
図1は、前記のように互いに重なっている第1GH層10および第2GH層20の状態を模式的に示した図面である。このような構造は本明細書でダブルセル(double cell)構造と呼称され得る。
図1に示したように、前記第1および第2GH層10、20の間には後述する位相差素子30が存在し得る。
【0018】
本出願で第1および第2GH層は、それぞれ液晶化合物を少なくとも含むことができる。前記液晶化合物はホスト物質として含まれ得る。液晶化合物としては、特に制限なく用途により適合した種類を選択することができる。一つの例示において、液晶化合物としてはネマティック液晶化合物を使うことができる。前記液晶化合物は、非反応性液晶化合物であり得る。非反応性液晶化合物は、重合性基を有さない液晶化合物を意味し得る。前記で重合性基としては、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、ビニル基またはエポキシ基などが例示され得るが、これに制限されず、重合性基として知られている公知の官能基が含まれ得る。
【0019】
GH層に含まれる液晶化合物は正の誘電率異方性または負の誘電率異方性を有し得る。本出願で用語「誘電率異方性」とは、液晶化合物の異常誘電率(εe、extraordinary dielectric anisotropy、長軸方向の誘電率)と正常誘電率(εo、ordinary dielectric anisotropy、短軸方向の誘電率)の差を意味し得る。液晶化合物の誘電率異方性は、例えば±40以内、±30以内、±10以内、±7以内、±5以内または±3以内の範囲内であり得る。液晶化合物の誘電率異方性を前記範囲で調節すれば液晶素子の駆動効率の側面で有利となり得る。
【0020】
GH層内に存在する液晶化合物の屈折率異方性は、目的とする物性、例えば、透過率可変装置の透過特性、コントラスト比率などを考慮して適切に選択され得る。用語「屈折率異方性」とは、液晶化合物の異常屈折率(extraordinary refractive index)と正常屈折率(ordinary refractive index)の差を意味し得る。液晶化合物の屈折率異方性は、例えば0.1以上、0.12以上または0.15以上~0.23以下、0.25以下または0.3以下の範囲内にあり得る。
【0021】
特に別途に言及しない限り、本明細書で用語屈折率は約550nmの波長の光を基準とした屈折率である。
【0022】
また、本明細書で言及する物性のうち測定温度および/または圧力がその物性値に影響を及ぼす場合には、特に別途に言及しない限り、当該物性は常温および/または常圧で測定した物性を意味する。
【0023】
本出願で用語常温は加温または減温されていない自然そのままの温度であり、例えば、約10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、25℃または23℃程度の温度を意味し得る。
【0024】
本出願で用語常圧は、特に減圧または加圧していない時の圧力であって、通常大気圧と同じ1気圧程度であり得る。
【0025】
GH層は二色性染料をさらに含むことができる。前記染料はゲスト物質として含まれ得る。二色性染料は、例えば、ホスト物質の配向によって装置の透過率を制御する役割をすることができる。本出願で用語「染料」とは、可視光領域、例えば、400nm~700nmの波長範囲内で少なくとも一部または全体の範囲内の光を集中的に吸収および/または変形させることができる物質を意味し得、用語「二色性染料」は前記可視光領域の少なくとも一部または全体の範囲で光の異方性吸収が可能な物質を意味し得る。
【0026】
二色性染料としては、例えば、いわゆるホストゲスト(host guest)効果によって液晶化合物の整列状態にしたがって整列され得る特性を有すると知られている、公知の染料を選択して使うことができる。このような二色性染料の例としては、いわゆるアゾ染料、アントラキノン染料、メチン染料、アゾメチン染料、メロシアニン染料、ナフトキノン染料、テトラジン染料、フェニレン染料、クアテリレン染料、ベンゾチアジアゾール染料、ジケトピロロピロール染料、スクアレン染料またはピロメテン染料などがあるが、本出願で適用可能な染料は前記に制限されるものではない。二色性染料としては、例えば、黒色染料(black dye)を使うことができる。このような染料としては、例えば、アゾ染料またはアントラキノン染料などで公知とされているが、これに制限されるものではない。
【0027】
二色性染料は、二色比(dichroic ratio)、すなわち二色性染料の長軸方向に平行な偏光の吸収を前記長軸方向に垂直な方向に平行な偏光の吸収で割り算した値が5以上、6以上または7以上である染料を使うことができる。前記染料は可視光領域の波長範囲内、例えば、約380nm~700nmまたは約400nm~700nmの波長範囲内で少なくとも一部の波長またはいずれか一つの波長で前記二色比を満足することができる。前記二色比の上限は、例えば20以下、18以下、16以下または14以下程度であり得る。
【0028】
二色性染料のGH層内の比率は、目的とする物性、例えば、透過率可変特性により適切に選択され得る。例えば、二色性染料は0.01重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、または1.0重量%以上の割合でGH層内に含まれ得る。二色性染料のGH層内の比率の上限は、例えば、2重量%以下、1.9重量%以下、1.8重量%以下、1.7重量%以下、1.6重量%以下、1.5重量%以下、1.4重量%以下、1.3重量%以下、1.2重量%以下または1.1重量%以下であり得る。
【0029】
前記GH層は前記成分にさらに必要であれば、公知のGH層の形成に使われる任意の添加物質をさらに含むことができる。
【0030】
ダブルセル内のGH層はそれぞれまたは同時に約0.5以上の異方性度Rを有することができる。
【0031】
前記異方性度Rは、液晶ホストの配向方向(alignment direction)に平行に偏光した光線の吸光度E(p)および液晶ホストの配向方向に垂直に偏光した光線の吸光度E(s)から得られる数値であり、文献Polarized Light in Optics and Spectroscopy、 D. S. Kliger et al.、 Academic Press、 1990に記載された方式で測定することができる。
【0032】
前記異方性度Rは他の例示で、約0.55以上、0.6以上または0.65以上であり得る。前記異方性度Rは例えば、約0.9以下、約0.85以下、約0.8以下、約0.75以下または約0.7以下であり得る。
【0033】
このような異方性度RはGHセルの種類、例えば、液晶化合物(ホスト)の種類、異方性染料の種類および比率、GHセルの厚さなどを制御して達成することができる。
【0034】
前記範囲内の異方性度Rを通じて、より低エネルギーを使いながらも、透過状態と遮断状態での透過率の差が大きくなってコントラスト比率が高くなるフィルムの提供が可能となり得る。
【0035】
前記GH層をそれぞれ含む第1および第2GHセルは、互いに重なって前記透過率可変装置内に含まれていてもよい。前記GH層内で前記液晶ホストは配向された状態で存在することができる。このような液晶ホストの配向にしたがって前記二色性染料ゲストも配向されていてもよい。例えば、前記GHセルはそれぞれ光軸を有することができる。前記で光軸は、例えば、液晶ホスト物質の方向子(director)の平均配向方向を意味する。前記で方向子の配向方向はネマティック液晶化合物のように棒(rod)状の液晶化合物の場合、その長軸方向を意味し、ディスコティック液晶のように円板状の化合物の場合、当該円板平面の法線方向を意味し得る。GHセルでの光軸の意味および当該光軸を決定する方式は公知であり、本出願では前記のような公知の内容が適用され得る。
【0036】
例えば、前記光軸は、通常的に配向膜の配向方向により決定され、GHセルについては次のような方式で測定することができる。例えば、GHセルを水平配向させた状態で前記GHセルの一面に線形偏光子を配置し、前記偏光子を360度回転させながら透過率を測定して確認することができる。すなわち、前記状態でGHセルまたは線形偏光子側に光を照射しながら他側で輝度(透過率)を測定することによって、光軸方向を確認することができる。例えば、前記偏光子を360度回転させる過程で透過率が最小となる時に、前記偏光子の吸収軸と垂直をなす角度または水平をなす角度を光軸の方向と規定することができる。
【0037】
一例示において、前記透過率可変装置内の第1および第2GHセルの光軸は、電圧印加状態または電圧無印加状態でそれぞれのGHセルに対して垂直または平行となり得る。すなわち、前記GHセル内のGH層の液晶ホストは電圧印加または無印加状態で垂直配向されていてもよく、水平配向されていてもよい。
【0038】
一つの例示において、前記2個のGH層の液晶ホストがすべて水平配向される場合、前述した遮断のすべてが具現され得る。本明細書で用語垂直、直交、水平または平行は、実質的な垂直、直交、水平または平行を意味するものであって、例えば、垂直または直交の意味には、90度から±10度以内、±9度以内、±8度以内、±7度以内、±6度以内、±5度以内、±4度以内、±3度以内、±2度以内、±1度以内または±0.5度以内の偏差がある場合を含み、水平または平行の意味には180度から±10度以内、±9度以内、±8度以内、±7度以内、±6度以内、±5度以内、±4度以内、±3度以内、±2度以内、±1度以内または±0.5度以内の偏差がある場合を含む。前記で光軸がGHセルに対して垂直とは、前記GHセルの表面と前記光軸がなす角度が垂直または直交する場合であり、光軸がGHセルに対して水平とは前記GHセルの表面と前記光軸が互いに水平または平行であることを意味し得る。
【0039】
一例示において、前記2個のGH層の液晶ホストがすべて水平配向されている遮断モードで前記第1および第2GH層の液晶ホストの光軸は、前記GH層平面の法線方向から観察時には互いに平行であり得る。また、前記法線方向と垂直な方向から観察した時(すなわち側面から観察した時)には、前記遮断モードで水平配向されている液晶ホストのチルト方向(tilt direction)は互いに交差していてもよい。すなわち、第1GH層の液晶ホストのチルト方向と第2GH層の液晶ホストのチルト方向は互いに交差(cross)する。前記の側面観察時にも透過率可変装置は多様な方向から観察され得るが、このような方向のうち少なくとも一方向から側面観察時に前記交差したチルト方向が確認され得る。
【0040】
前記でGH層平面の法線方向から観察するとは、例えば、フィルムまたはシート状のGH層の場合、その厚さ方向、すなわち主表面と主表面を連結する最短距離方向に観察する場合を意味する。
【0041】
図2は、前記厚さ方向から観察する場合に第1GH層の光軸(点線)と第2GH層の光軸(実線)の配置を示したものであって、図面のように前記両者は略平行となっている。
【0042】
前記でGH層平面の法線方向と垂直な方向から観察するとは、例えば、フィルムまたはシート状のGH層の場合、前記厚さ方向と垂直な方向、すなわち側面から観察する場合を意味する。
【0043】
図3は、互いに重なっている第1GHセル10と第2GHセル20を側面から観察した場合であり、
図3のように第1GHセル10の液晶ホストのチルト方向(実線)と第2GHセル20のチルト方向(点線)は、この場合、互いに交差(cross)する。
【0044】
図3には前述した位相差素子30および配向膜41、42、43、44も共に表示されている。
【0045】
前記のような配向を通じて全方向で視野角の対称性が確保される装置が具現され得る。
【0046】
例えば、電圧無印加状態でGHセルの光軸が前記GHセルに対して直交する場合に、電圧の印加によって前記光軸が前記GHセルに対して平行となるように配向されながら、前記のような配向状態が具現され得、その反対に電圧無印加状態でGHセルの光軸が前記GHセルに対して平行な場合に、前記配向状態を維持していてから、電圧の印加によって前記光軸が前記GHセルに対して直交するように配向され得る。前記のように、電圧無印加時に液晶ホストが垂直配向されている場合には、いわゆる通常透過モード(Normally Transparent Mode)の素子が具現され、電圧無印加時に液晶ホストが水平配向される場合に通常遮断モード(Normally Black Mode)の素子が具現される。透過率可変装置を通常透過モードに設計するか、それとも通常遮断モードに設計するかは、使われる液晶ホストの種類、配向膜および/または電極層の位置により決定され得る。
【0047】
図3のように、互いに交差している第1および第2GH層のチルト方向がなす角度のうち小さい角度は、0.5度~10度の範囲内であり得る。前記角度は、他の例示において、1度以上、2度以上、3度以上、4度以上または5度以上であるか、9度以下、8度以下、7度以下または6.5度以下程度であり得る。
【0048】
前記で交差したチルト方向がなす角度のうち小さい角度は、例えば、
図4に示したように、互いに交差した2個のチルト方向によって形成される角度のうち小さい角度Aを意味する。本明細書で前記角度Aを測定する方式は特に制限されない。前記角度は例えば、個別GH層またはGHセルに対して液晶ホストの水平配向時のチルト角度を確認した後に、両GH層またはGHセルに対して確認された数値を通じて前記角度を取得することができる。この時、個別GH層またはGHセルに対してチルト角度を確認する方式は公知であり、例えば、Crystal Rotation Methodなどの方式が適用され得、他の例示においては配向膜の配向方向(rubbing方向など)に沿ってpolar angle方向の位相差または透過率を換算して、傾いた角度を確認する方式も可能である。
【0049】
本出願で前記のような配向状態を具現する方式は特に制限されず、例えば、液晶ホストを水平配向させる時に、チルト角(tilt angle)を付与できると知られている公知の方式を応用して前記配向状態を具現することができる。
【0050】
例えば、
図3に示したように、前記第1および第2GHセルは、それぞれ前記第 1GH層10および第2GH層20の両側に配置された2枚の配向膜41、42、43、44をさらに含むことができるが、このような場合にその配向膜の状態を調整して前記配置を達成することができる。
【0051】
例えば、前記各配向膜41、42、43、44がラビング配向膜である場合、前記第1および第2GH層10、20の間に存在する配向膜42、43としては、互いに同じ方向にラビング処理された配向膜を使い、前記第1GH層10を基準として前記第2GH層20の反対方向に存在する配向膜41と前記第2GH層20を基準として前記第2GH層10の反対方向に存在する配向膜44としては、前記第1および第2GH層10、20の間に存在する配向膜42、43の配向方向の反対方向にラビング処理された配向膜を使う場合に、前記のような配向状態の具現が可能である。
図3で各配向膜41、42、43、44の前記のようなラビング方向は、各配向膜内に矢印で表示されている。
【0052】
以下、前記各配向膜41、42、43、44は、便宜上第1配向膜41、第2配向膜42、第3配向膜43および第4配向膜44と呼称され得る。
【0053】
また、例えば、前記各配向膜41、42、43、44が光配向膜である場合に、前記光配向膜として斜め照射処理された光配向膜を使うものの、前記第1および第2GH層10、20の間に存在する配向膜42、43としては、互いに同じ方向に斜め照射された配向膜を使い、前記第1GH層10を基準として前記第2GH層20の反対方向に存在する配向膜41と前記第2GH層20を基準として前記第2GH層10の反対方向に存在する配向膜44としては、前記第1および第2GH層10、20の間に存在する配向膜42、43の斜め照射方向の反対方向に斜め照射処理された配向膜を使う場合に前記のような配向状態の具現が可能である。斜め照射された光配向膜を通じて水平配向時にチルト角を付与する方式は公知であり、このような方式はすべて本発明に適用され得る。
【0054】
前記のような方式でラビングの強度や斜め照射時の傾き角度および/または照射量などの制御を通じて、前述した配置の構造の達成が可能である。
【0055】
一方、一例示において、前記GH層の液晶ホストが垂直配向される場合に、前記液晶ホストは所定範囲のプレチルト角を有するように設計されていてもよい。
【0056】
すなわち、セルの光軸がそれぞれのGHセルに対して垂直な状態、すなわち前記GHセル内の液晶ホストが垂直配向された状態で所定範囲のプレチルト角とプレチルト方向を有するように設計され得る。
【0057】
液晶ホストのプレチルト角は、前述した液晶ホストの方向子の方向が前記GH層の平面となす角度を意味し得る。
【0058】
一例示において、前記プレチルト角は約70度~90度の範囲内であり得る。前記でプレチルト角が90度である場合は、液晶ホストが実質的に完全に垂直配向された状態を意味し得る。
【0059】
第1および第2GHセルの液晶ホストがすべて90度未満のプレチルト角を有する場合、第1GHセルのプレチルト方向と第2GHセルのプレチルト方向は互いに略平行となり得る。
【0060】
プレチルト方向はプレチルトされた液晶ホストをGH層平面に投影させた状態での方向を意味し得る。
【0061】
GHセル内の液晶ホストのプレチルト角と方向を前記のように制御する方式は特に制限されず、例えば、前述した配向膜を使って制御することができる。
【0062】
すなわち、一つの例示において、本出願の透過度可変装置で前記配向膜の配向方向の制御を通じて、前記プレチルト角およびプレチルト方向を調節することができる。
【0063】
前記プレチルト角度は、液晶分子の方向子が配向膜、GH層またはGHセル(以下、配向膜など)の表面と水平な面に対してなす角度または配向膜などの表面法線方向となす角度を意味し得る。
【0064】
本明細書で配向膜のプレチルト角は、液晶ホストのプレチルト角と同じ意味で使われ得、配向膜のプレチルト方向は液晶ホストのプレチルト方向と同じ意味で使われ得る。
【0065】
一つの例示において、前記第1~第4配向膜はプレチルト角が70度~90度または70度以上かつ90度未満の範囲を有することができる。プレチルト角度が前記範囲内である場合、初期透過度が優秀な透過度可変装置を提供することができる。前記プレチルト角は一例示において、約71度以上、72度以上、約73度以上、約74度以上、約75、約76、約77、約78度以上、約79度以上、約80度以上、約81度以上、約82度以上、約83度以上、約84度以上、約85度以上、約86度以上または約87度以上であり得、約88.5度以下または約88度以下であり得る。
【0066】
一つの例示において、前記第1配向膜のプレチルト角度は、前記配向膜などの水平な面を基準として時計回り方向または反時計回り方向に測定した角度であり、第2配向膜のプレチルト角度は、それとは逆方向、すなわち第1配向膜のプレチルト角度が時計回り方向に測定された場合に反時計回り方向または第1配向膜のプレチルト角度が反時計回り方向に測定された場合に時計回り方向に測定された角度であるか、同じ方向に測定された角度であり得る。
【0067】
また、前記第3配向膜のプレチルト角度は前記配向膜などと水平な面を基準として時計回り方向または反時計回り方向に測定した角度であり、第4配向膜のプレチルト角度はそれとは逆方向、すなわち第3配向膜のプレチルト角度が時計回り方向に測定された場合に反時計回り方向または第3配向膜のプレチルト角度が反時計回り方向に測定された場合に時計回り方向に測定された角度であるか、同じ方向に測定された角度であり得る。
【0068】
前記プレチルト方向は、液晶分子の方向子が配向膜の水平な面に射影された方向を意味し得る。
【0069】
前記第1および第2配向膜のプレチルト方向と第3および第4配向膜のプレチルト方向は互いに水平となり得る。
【0070】
前記言及したプレチルト角度および方向は、一例示において、前記各GHセルのGH層が垂直配向状態である場合に、各GH層で測定されるプレチルト角および方向であり得る。
【0071】
前述した説明において各配向膜41、42、43、44は、ラビング配向膜または光配向膜であり得る。ラビング配向膜の場合、配向方向はラビング方向によって決定され、光配向膜の場合は、照射される光の偏光方向などによって決定される。前記配向膜のプレチルト角度およびプレチルト方向は、配向条件、例えばラビング配向時のラビング条件や圧力条件、あるいは光配向条件、例えば、光の偏光状態、光の照射角度、光の照射強度などを適切に調節して具現することができる。
【0072】
例えば、配向膜がラビング配向膜である場合、前記プレチルト角度は前記ラビング配向膜のラビング強度などを制御して達成することができ、プレチルト方向は前記ラビング配向膜のラビング方向を制御して達成することができ、このような達成方式は公知の方式である。また、光配向膜の場合、配向膜材料、配向に適用される偏光の方向、状態乃至は強度などによって達成され得る。
【0073】
ラビング配向膜を使う場合、第1および第2配向膜のラビング方向は前述したように互いに逆方向であり、第3および第4配向膜のラビング方向も互いに逆方向であり得る。
【0074】
前記ラビング方向はプレチルト角の測定を通じて確認することができるが、一般的に液晶はラビング方向に従って倒れながらプレチルト角を発生させるため、プレチルト角を測定することによって前記ラビング方向の測定が可能となり得る。
【0075】
前記のようなプレチルト角および方向の設定を通じて、透過状態でより高い透過率と遮断状態でより低い透過率を具現するとともに、全方向で視野角特性が対称であるデバイスの具現が可能となり得る。
【0076】
本出願の透過率可変装置でそれぞれのGHセルは、前記のような構成でGH層を含む限り、具体的な構成は特に制限されない。
【0077】
本出願の透過率可変装置は、前記のような2個のGHセルを少なくとも含み、また、当該2個のGHセルの間に配置された位相差素子をさらに含む。これに伴い、透過モードで光は第1GHセル、前記位相差素子および第2GHセルを順次透過したりあるいは第2GHセル、前記位相差素子および第1GHセルを順次透過することができる。
【0078】
本出願で適用され得る前記位相差素子の具体的な種類は特に制限されない。一例示において、前記位相差素子としては、λ/2位相遅延特性を有する位相差素子を使うことができる。前記でλ/2位相遅延特性を有する位相差素子は、直線偏光された光が入射すると、前記入射光を前記入射光と略垂直または直交する直線偏光された光に転換させて出射させることができる素子である。前記位相差素子は、例えば、約550nmの波長の光に対する面上位相差が200nm~350nmの範囲内または220nm~320nmの範囲内であり得る。前記で位相差素子の面上位相差は、位相差素子の遅相軸方向の屈折率nxと進相軸方向の屈折率nyの差(nx-ny)を当該位相差素子の厚さ(d)と積算して求められる数値(d×(nx-ny))である。
【0079】
一方、前記位相差素子は550nm波長の光に対する厚さ方向位相差が-300nm~300nmの範囲内であり得る。前記で位相差素子の厚さ方向位相差は、位相差素子の厚さ方向の屈折率nzと進相軸方向の屈折率nyの差(nz-ny)を当該位相差素子の厚さdと積算して求められる数値(d×(nz-ny))である。前記厚さ方向位相差は他の例示において、-280nm以上、-260nm以上、-240nm以上、-220nm以上、-200nm以上、-180nm以上、-160nm以上、-140nm以上、-120nm以上、-100nm以上、-80nm以上、-60nm以上、-40nm以上、-20nm以上、-10nm以上、-5nm以上、0nm以上、20nm以上、40nm以上、60nm以上、80nm以上または90nm以上や、280nm以下、260nm以下、240nm以下、220nm以下、200nm以下、180nm以下、160nm以下、140nm以下、120nm以下、100nm以下、80nm以下、60nm以下、40nm以下、20nm以下、10nm以下または5nm以下程度であってもよい。
【0080】
前記位相差素子は前記のような位相差範囲を有する限り、断層構造であるか、2層以上の積層構造であり得る。
【0081】
また、位相差素子の波長分散特性も正常波長分散(normal wavelength dispersion)、扁平波長分散(flat wavelength dispersion)または逆波長分散(reverse wavelength dispersion)特性を有することができる。
【0082】
前記のような位相差素子は、その遅相軸方向が前記GHセルの光軸が前記GHセルに対して水平の場合に、前記光軸と約35度~55度の範囲内、約40度~50度の範囲内または約45度となるように配置され得る。前記のような位相差素子の遅相軸と前述したGHセルの光軸の関係によって透過率の可変が可能であり、特に傾斜方向から観察時にも高いコントラスト比が確保される透過率可変装置の提供が可能である。
【0083】
本出願で前記位相差素子の具体的な種類は、前記のような面上位相差、すなわちλ/2位相遅延特性を有する限り特に制限されず、これは単一層であるか2層以上の積層構造を有することができる。例えば、2枚のλ/4位相遅延特性を有する素子を積層して前記λ/2位相遅延特性を有する素子を具現することもできる。位相差素子が2層以上の積層構造を有しつつ、前記λ/2位相遅延特性を示す場合、積層構造内の各層の遅相軸の方向は互いに平行であってもよく、平行でなくてもよいが、全体的に第1または第2GH層を透過した直線偏光の偏光方向を90度回転させて透過させることができる方向に設定され得る。
【0084】
一つの例示において、前記位相差素子は、非液晶高分子フィルムまたは液晶高分子フィルムであり得る。前記で液晶高分子フィルムは、いわゆるRM(Reactive Mesogen)として知られている反応性液晶化合物を配向および重合させて製造されたフィルムであり、非液晶高分子フィルムは、前記液晶高分子フィルムの他に光学的異方性を有する高分子フィルムであって、一軸または二軸延伸などの処理を通じて光学的異方性を示すようになった高分子フィルムを意味し得る。このような非液晶高分子フィルムとしては、TAC(triacetyl cellulose)フィルム;ノルボルネン誘導体などのCOP(cyclo olefin copolymer)フィルム;PMMA(poly(methyl methacrylate)等のアクリルフィルム;PC(polycarbonate)フィルムまたはPET(polyethyleneterephtalate)フィルムなどのポリエステルフィルム;PE(polyethylene)またはPP(polypropylene)等のオレフィンフィルム;PVA(polyvinyl alcohol)フィルム;DAC(diacetyl cellulose)フィルム;Pac(Polyacrylate)フィルム;PES(poly ether sulfone)フィルム;PEEK(polyetheretherketon)フィルム;PPS(polyphenylsulfone)、PEI(polyetherimide)フィルム;PEN(polyethylenemaphthatlate)フィルム;PI(polyimide)フィルム;PSF(polysulfone)フィルム;またはPAR(polyarylate)等が例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0085】
本出願の透過率可変装置は前述した通り、第1および第2GH層を含むGHセルおよび位相差素子を含む限り、多様な構造で具現され得る。
【0086】
一例示において、前記透過率可変装置は互いに対向配置されている第1および第2基板と、同様に互いに対向配置されている第3および第4基板とを含むことができる。このような場合が
図5に図示されている。
図5のように、前記のように第1~第4基板101、102、103、104を含む透過率可変装置では、前記第1基板101と第2基板102の間に前記第1GH層10が存在し、前記第3基板103と第4基板104の間に前記第2GH層20が存在することができる。前記構造で第2基板102と第3基板103が互いに向かい合うように配置されていてもよい。
図6に示したように、前記
図5の構造では前記第2および第3基板102、103の間に前述した位相差素子が存在することができる。あるいは他の例示において、
図5に示された構造で別途の位相差素子が存在せず、第2基板102と第3基板103が共に前記位相差素子を構成することもできる。このような場合、前記第2および第3基板102、103はそれぞれλ/4波長位相遅延特性を示す基板であり、そのような2個の基板が互いに積層されてλ/2位相遅延特性を示す層が構成され得る。
図6のような構造では第2および第3基板102、103は等方性基板であり得る。
【0087】
図5および
図6に示された構造において、第1GH層10と第2GH層20の間に存在する第2および第3基板102、103の面上位相差の合計または第2および第3基板102、103と位相差素子30の面上位相差の合計は、前述したλ/2位相遅延特性を示すことができる範囲内であり得る。前記で面上位相差の合計は光学的合計を意味する。
【0088】
他の例示において、前記透過率可変装置は、
図7に示したように、互いに順次配置された第1基板101、第2基板102および第3基板103を含み、前記第1および第2基板101、102の間に前記第1GH層10が存在し、前記第2および第3基板102、103の間に前記第2GH層20が存在することができる。このような場合は
図7に示したように、2個のGHセルが一つの基板(第2基板102)を共有する構造である。このような構造の場合に共有される前記第2基板が前述したλ/2位相遅延特性を示すことができる。
【0089】
前記透過率可変装置は前記例示した構造の他にも、できる限り2個の重なったGH層の間に前述したような位相差素子が存在できるものであれば多様な構造で構成され得る。
【0090】
以上で説明した構造で前記基板としては特に制限なく公知の素材が使われ得る。例えば、基板としては、ガラスフィルム、結晶性または非結晶性シリコンフィルム、石英またはITO(Indium Tin Oxide)フィルムなどの無機フィルムやプラスチックフィルムなどを使うことができる。
【0091】
プラスチック基板としては、TAC(triacetyl cellulose)基板;ノルボルネン誘導体基板などのCOP(cyclo olefin copolymer)基板;PMMA(poly(methyl methacrylate)基板;PC(polycarbonate)基板;PE(polyethylene)基板;PP(polypropylene)基板;PVA(polyvinyl alcohol)基板;DAC(diacetyl cellulose)基板;Pac(Polyacrylate)基板;PES(poly ether sulfone)基板;PEEK(polyetheretherketon)基板;PPS(polyphenylsulfone)、PEI(polyetherimide)基板;PEN(polyethylenemaphthatlate)基板;PET(polyethyleneterephtalate)基板;PI(polyimide)基板;PSF(polysulfone)基板;PAR(polyarylate)基板または非晶質フッ素樹脂などを含む基板を使用できるがこれに制限されるものではない。このような基板の厚さは特に制限されず、適切な範囲で選択され得る。
【0092】
前記基板には電極層が存在することができる。例えば、透過率可変装置に含まれる基板の表面中で、前記GH層に向かう表面のうち少なくとも一表面、例えば、
図5および
図6の構造で第1~第4基板の4個の内側の表面のうち少なくとも一つの表面または
図7の構造で第1および第3基板101、103の内側の表面と第2基板102の両側の表面のうちいずれか一つの表面には電極層が存在することができる。本出願で用語基板の内側の表面は、基板の両表面のうちGH層と近い表面を意味する。
【0093】
一例示において、
図5および
図6の構造で第1基板101の内側の表面と第2基板102の内側の表面のうち少なくともいずれか一つの表面および第3基板103の内側の表面と第4基板104の内側の表面のうち少なくともいずれか一つの表面には電極層が存在することができ、必要な場合に各GHセルに垂直電界を印加できるように前記第1~第4基板のすべての内側の表面に電極層が存在することができる。また、
図7の構造では、第1基板101の内側の表面と第2基板102の第1GH層10に向かう表面のうち少なくともいずれか一つの表面と第3基板103の内側の表面と第2基板102の第2GH層20に向かう表面のうち少なくともいずれか一つの表面には電極層が存在することができ、必要な場合に各GHセルに垂直電界を印加できるように前記第1および第3基板のすべての内側の表面と第2基板の両側の表面に電極層が存在することもできる。
【0094】
電極層は、公知の素材を使って形成することができ、例えば、前記電極層は、伝導性高分子、伝導性金属、伝導性ナノワイヤーまたはITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化物などを含むことができる。電極層は、透明性を有するように形成され得る。この分野では、透明電極層を形成できる多様な素材および形成方法が公知とされており、このような方法はすべて適用され得る。必要な場合に、基板の表面に形成される電極層は、適切にパターン化されていてもよい。
【0095】
前記基板には前述した配向層である液晶配向層が存在することができる。前記液晶配向層も前記基板の内側の表面、すなわちGH層に向かう表面に形成されていてもよい。基板に前述した電極層が存在する場合には、前記液晶配向層は前記電極層の表面に形成されてもよく、あるいは電極層と基板の間に形成されてもよい。例えば、透過率可変装置に含まれる基板の内側の表面のうち少なくとも一表面、例えば、
図5および
図6の構造で第1~第4基板の4個の内側の表面のうち少なくとも一つの表面または
図7の構造で第1および第3基板101、103の内側の表面と第2基板102の両側の表面のうちいずれか一つの表面には液晶配向層が存在することができる。
【0096】
一例示において、
図5および
図6の構造で第1基板101の内側の表面と第2基板102の内側の表面のうち少なくともいずれか一つの表面および第3基板103の内側の表面と第4基板104の内側の表面のうち少なくともいずれか一つの表面には液晶配向層が存在することができ、必要な場合に前記第1~第4基板のすべての内側の表面に液晶配向層が存在することができる。また、
図7の構造では第1基板101の内側の表面と第2基板102の第1GH層10に向かう表面のうち少なくともいずれか一つの表面と第3基板103の内側の表面と第2基板102の第2GH層20に向かう表面のうち少なくともいずれか一つの表面には液晶配向層が存在することができ、必要な場合に前記第1および第3基板のすべての内側の表面と第2基板の両側の表面に液晶配向層が存在することもできる。
【0097】
前記配向層としては前述した通り、特に制限なくこの分野で公知とされている多様な水平配向層または垂直配向層が適用され得る。
【0098】
前記透過率可変装置は、前述したGHセルおよび位相差素子に追加として必要な他の要素を含むことができる。このような要素としては、反射防止層やハードコーティング層などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0099】
前記のような透過率可変装置は多様な用途に適用され得る。透過率可変装置が適用され得る用途には、ウィンドウまたはサンルーフなどのような建物、容器または車両などを含む密閉された空間の開口部やアイウェア(eyewear)等が例示され得る。前記でアイウェアの範囲には、一般的なメガネ、サングラス、スポーツ用ゴーグル乃至はヘルメットまたは増強現実体験用機器などのように、観察者がレンズを通じて外部を観察できるように形成されたすべてのアイウェアが含まれ得る。
【0100】
本出願の透過率可変装置が適用され得る代表的な用途にはアイウェアがある。最近サングラス、スポーツ用ゴーグルや増強現実体験用機器などは、観察者の正面視線とは傾斜するようにレンズが装着される形態のアイウェアが市販されている。本出願の透過率可変装置の場合、前述した通り、傾斜角でも高いコントラスト比を確保することができるため、前記のような構造のアイウェアにも効果的に適用され得る。
【0101】
本出願の透過率可変装置がアイウェアに適用される場合にそのアイウェアの構造は特に制限されない。すなわち、公知のアイウェア構造の左目用および/または右目用レンズ内に前記透過率可変装置が装着されて適用され得る。
【0102】
例えば、前記アイウェアは、左目用レンズと右目用レンズ、および前記左目用レンズと右目用レンズを支持するフレームを含むことができる。
【0103】
図8は、前記アイウェアの例示的な模式図であって、前記フレーム12および左目用と右目用レンズ14を含むアイウェアの模式図であるが、本出願の透過率可変装置が適用され得るアイウェアの構造は
図8に制限されるものではない。
【0104】
前記アイウェアで左目用レンズおよび右目用レンズはそれぞれ前記透過率可変装置を含むことができる。このようなレンズは、前記透過率可変装置だけを含んでもよく、その他の構成を含んでもよい。
【0105】
前記アイウェアは多様なデザインを有することができ、例えば、前記フレームは前記アイウェアを観察者が装着した時に、前記観察者の正面視線方向と前記透過率可変装置表面の法線がなす角度が15度~40度の範囲内となるように傾斜して形成されていてもよい。このようなアイウェアとしては、スポーツ用ゴーグルや増強現実体験用機器などが例示され得る。
【発明の効果】
【0106】
本出願の透過率可変装置は透過状態および遮断状態の間をスイッチングすることができ、透過状態での高い透過率と遮断状態での高い遮断率を示し、傾斜角でも優秀なコントラスト比を示し、全方向で対称的な視野角特性を示すことができる。このような本出願の透過率可変装置は、透過率の調節が必要な多様な建築用または車両用素材や、増強現実体験用またはスポーツ用ゴーグル、サングラスまたはヘルメットなどのアイウェイ(eyewear)を含む多様な用途に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【
図8】本出願の透過率可変装置が適用されたアイウェアの模式図。
【
図9】本願実施例1の電圧対透過率特性を示した図面。
【
図10】それぞれ本願比較例1および2の電圧対透過率特性を示した図面。
【
図11】それぞれ本願比較例1および2の電圧対透過率特性を示した図面。
【
図13】それぞれ本願実施例2および3の特性を確認した結果。
【
図14】それぞれ本願実施例2および3の特性を確認した結果。
【発明を実施するための形態】
【0108】
以下、実施例および比較例を通じて本出願の透過率可変装置を具体的に説明するが本出願の範囲は下記の透過率可変装置によって制限されるものではない。
【0109】
実施例1
表面にITO(Indium Tin Oxide)電極層と垂直配向膜が順次形成された2枚のCOP(cycloolefin polymer)フィルムの間にGH層を形成して第1GHセルを製造した。前記でGHセルのセルギャップは約12μm程度とした。前記で垂直配向膜はプレチルト角が約89度である配向膜を使用した。配向膜は、ポリイミド系列の垂直配向膜を前記ITO電極層上にバーコーティングでコーティングし、130℃で約30分の間維持した後、ラビング布でラビング処理して約200nmの厚さに形成した。この時、前記2枚のCOPフィルム上の配向膜に対する前記ラビング方向が互いに逆方向となるように積層した。また、前記GH層は、液晶化合物として、誘電率異方性が約-4.9であり、屈折率異方性が約0.132程度であるネマティック液晶と、二色性染料として、二色比が約6.5~8程度である黒色染料が98.7:1.3の重量比率(ネマティック液晶:二色性染料)と混合されたGH混合物を適用して形成した。前記と同様に製造された第2GHセルと前記第1GHセルを
図3のように重ね、その間に550nm波長に対する面上位相差が約275nmであるCOP(cycloolefin polymer)フィルムを位置させて透過率可変素子を製造した。この時、前記COP(cycloolefin polymer)フィルムは、逆波長特性を有するものとして、450nm波長の光に対する面上位相差(Re(450))と550nm波長の光に対する面上位相差(Re(550))の比率(Re(450)/Re(550))が約0.8程度であるフィルムを適用した。
図3に示した通り、第1GH層10と第2GH層20の間に存在する配向膜42、43は、互いにラビング方向が同一となるように積層した。前記装置は、第1および第2GHセルの液晶ホストが電圧無印加時に垂直配向状態であり、電圧が印加されると、前記液晶ホストが水平配向される類型の装置である。また、
図3に示した通り、側面観察時に前記水平配向で第1および第2GH層10、20のそれぞれの液晶ホストのチルト方向は互いに交差したし、このとき
図4に示した角度Aは約6度程度であった。前記でチルト方向が互いに交差する角度は、単一GH層に対してチルト角度を確認した後に2個のGH層で確認されたチルト角度を合算して確認した。前記単一GH層に対してチルト角度を確認する方式は公知であり、本実施例では公知とされているCrystal Rotation Methodにより確認した。また、前記COPフィルムの遅相軸が前記水平配向された液晶ホストの光軸と略45度をなすようにした。
【0110】
実施例2
第1および第2GHセルの間に導入される位相差素子(
図3の30)として、550nm波長に対する面上位相差が約275nmであり、扁平波長特性を有し、Nz(=(nx-nz)/(nx-ny)、前記でnxは遅相軸方向の屈折率、nyは進相軸方向の屈折率、nzは厚さ方向の屈折率である)が約1.2であるCOP(cycloolefin polymer)フィルムと厚さ方向位相差(Rth=d×(nz-ny))が約180~200nmの範囲内である垂直配向液晶層の積層フィルムを位置させたことを除いては、実施例1と同様にして透過率可変素子を製造した。
【0111】
実施例2
第1および第2GHセルの間に導入される位相差素子(
図3の30)として、550nm波長に対する面上位相差が約275nmであり、逆波長特性を有するものとして、450nm波長の光に対する面上位相差(Re(450))と550nm波長の光に対する面上位相差(Re(550))の比率(Re(450)/Re(550))が約0.8程度であるZeon社のCOP(cycloolefin polymer)フィルムと厚さ方向位相差(Rth=d×(nz-ny))が約100nm程度である垂直配向液晶層の積層フィルムを位置させたことを除いては、実施例1と同様にして透過率可変素子を製造した。
【0112】
比較例1
GHセルの合着時に、第1および第2GH層の光軸が水平配向された場合に互いに略90度で交差するように合着し、GHセルの間に面上位相差が約275nmであるCOP(cycloolefin polymer)フィルムを位置させていないことを除いては、実施例1と同様にして素子を製作した。
【0113】
比較例2
位相差素子であるCOPフィルムを適用せず、第1および第2GHセルがすべて水平配向時に各液晶ホストの光軸が互いに垂直となるように前記GHセルを積層したことを除いては、実施例1と同様にして透過率可変装置を製造した。前記のような素子に対して第1および第2GHセルの水平配向時の光軸を確認した結果、両者は互いに同じ方向にチルト(tilt)して、交差しなかった。
【0114】
試験例1.
実施例1と比較例1および2の透過率可変装置にD65光源の光を照射して直進光透過率を評価した。前記透過率は、透過率可変装置の中心から右側の水平方向を0度とし、左側の水平方向を180度としたときに、前記中心方向(正面)、0度方向、90度方向、180度方向および270度方向での透過率を測定して、正面と上下左右方向の透過率をすべて測定した。この時、正面透過率の測定時には極角(polar angle)を0度とし、他の透過率の測定時には極角(polar angle)を23度とした。
【0115】
実施例と比較例の装置はいずれも電圧無印加状態で高透過率を示す通常透過モードであったし、電圧の印加につれて透過率が減少したし、約28Vの電圧印加時に最小透過率を示した。前記各装置の印加電圧による透過率とコントラスト比を整理すると、下記の表の通りである。下記で表1は実施例1に対する測定結果であり、表2および表3はそれぞれ比較例1および2に対する測定結果である。コントラスト比(CR)は、電圧の印加量を変化させながら透過率を測定した時に確認される最大透過率Tc対比最小透過率Tの比率(Tc/T)である。
【0116】
図9~
図11はそれぞれ本願実施例1、比較例1および2の電圧対透過率特性を示した図面である。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
前記結果および
図9~
図11の結果から本願実施例の場合、傾斜角で上下、左右同等の水準の透過率特性を示し、電圧対透過率グラフも同等の水準と示され、階調の反転も発生していないことが分かる。
【0121】
その反面、比較例1の場合、傾斜角で左右の透過率および電圧対透過率グラフは同等の水準であるが、上下の透過率特性と電圧対透過率グラフが異なり、下部視野角で階調の反転が発生した。
【0122】
また、比較例2の場合、傾斜角で上下左右の透過率および電圧対透過率グラフがすべて異なり、下部視野角で階調の反転が発生した。
【0123】
一方、
図12は実施例1の視野角特性を評価した結果を示すグラフであって、それから実施例1の場合、上下および左右で対称性が安定的に確保されることを確認することができる。
【0124】
試験例2.
図13および
図14はそれぞれ実施例2および3の視野角特性を評価した結果を示すグラフであって、それから追加的な補償構造(垂直配向液晶層)の導入を通じて、より対称的な視野角特性を具現できることを確認することができる。
【符号の説明】
【0125】
10:第1GH層
20:第2GH層
30:位相差素子
41、42、43、44:配向膜、配向層
101、102、103、104:基板
14:左目用または右目用レンズ
12:フレーム