(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】洗浄機能付き撹拌装置
(51)【国際特許分類】
B01F 27/90 20220101AFI20221129BHJP
B01F 35/13 20220101ALI20221129BHJP
【FI】
B01F27/90
B01F35/13
(21)【出願番号】P 2018199752
(22)【出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】三條 翔太
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-070631(JP,U)
【文献】特開昭49-094579(JP,A)
【文献】特開昭59-230652(JP,A)
【文献】特開2004-351361(JP,A)
【文献】特開平10-015066(JP,A)
【文献】特開平11-235522(JP,A)
【文献】特開昭63-202328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-35/95
B05B 1/00-1/36
B08B 3/00-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部に撹拌翼を有する回転軸からなる撹拌装置であって、前記回転軸には洗浄液を該回転軸の遠心力により飛散させる飛散部が設けられて
おり、前記飛散部は、上端部から下端部に向かって縮径する漏斗状部材からなり、該下端部において前記回転軸に外嵌されており、前記漏斗状部材は、その内壁面に放射状に延在する複数本の溝部が周方向に均等な間隔をあけて設けられており、前記複数本の溝部は、各々半径方向に対して回転方向の後方側に傾斜していることを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
被撹拌流体が装入され、外側に回転駆動手段を備えた容器と、該回転駆動手段の回転駆動力によって回転して該被撹拌流体を撹拌する請求項
1に記載の撹拌装置とからなる撹拌容器であって、前記飛散部が該容器内の液位より上方に位置していることを特徴とする撹拌容器。
【請求項3】
前記容器は円筒形状を有し、前記漏斗状部材の上端部の外径は、前記円筒容器の内径の1/10~1/5で且つ前記回転軸の直径の2倍以上であることを特徴とする、請求項
2に記載の撹拌容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄機能付き撹拌装置に関し、特に、混合槽や反応槽などの撹拌機を備えた撹拌容器の内壁面や測定機器表面に付着した物質を容易に除去することが可能な洗浄機能付き撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス液を取り扱うプラントの実操業においては、該プロセス液に対して液体状や固体状の添加物を混合して目的成分を浸出させたり沈殿物を生成させたりする様々な処理が行われている。このようなプロセス液の処理には攪拌装置を備えた撹拌容器が一般的に用いられている。撹拌容器には、例えば特許文献1に記載されているように、混合や沈殿物生成等の各種操作における最適な条件の範囲内に調整するため、例えば温度計、pH計、ORP計などの液相に浸漬して測定する測定端子が一般的に設けられている。
【0003】
一方、研究現場においては、実操業における運転条件のベースとなる適切な混合条件や沈殿物生成条件等を探索するため、温度範囲を様々に変更したり添加剤の種類や量を変更したりして繰り返し試験することが行われている。そのため、研究現場においても撹拌装置を備えた撹拌容器が一般的に用いられている。このような研究現場で用いる撹拌容器にも、混合や沈殿物生成等の各種操作における最適な条件を測定するため、温度計、pH計、ORP計などの液相に浸漬して測定する測定端子が設けられている。
【0004】
上記の撹拌容器では、撹拌により飛散した液体が、撹拌容器の液位より上側の気相部分に露出する内壁だけでなく、撹拌容器の天井部分、測定端子及び撹拌軸において液体に浸漬していない部分などにも付着する場合があり、これをそのまま放置しておくと品質がばらついたり、正確な試験結果が得られなかったりするおそれがある。また、該撹拌容器を用いて回分式(バッチ式)で多品種少量生産を行うプラントでは、各バッチ処理ごとに取り扱うプロセス液が異なる場合があるので、収率の向上やコンタミネーション防止のためにバッチ処理が完了したときに該付着物を除去して回収することが望ましい。
【0005】
回分式で毎回同じプロセス液を取り扱う場合は、付着物が常にプロセス液とほぼ同じであれば特に問題は生じないが、例えば添加物の混合を伴う回分式処理の場合、混合操作の初期に飛散したものが付着していると、この付着物が次バッチのプロセス液に混入した場合は所望の添加物濃度にならない恐れがある。また、沈殿物を生成する処理の場合、該沈殿物生成反応の初期に飛散したものが付着していると、この付着物が次バッチのプロセス液に混入した場合は、該付着物によって次バッチのプロセス液中の溶質濃度が増大するので、予定していた沈殿物生成反応条件で沈殿物を生成することができなくなる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、撹拌容器を用いて回分式で多品種少量生産を行う場合や研究現場で適切な条件を探索する場合、あるいは撹拌容器を用いて連続式でプロセス液を処理する場合であっても、ロット切り替えなどにより取り扱うプロセス液を変更する場合は、バッチ処理完了後やロット切り替え時に上記付着物を除去するのが好ましい。しかしながら、例えば研究現場で使用する撹拌容器は、通常は実操業で使用するものよりもサイズが小さいため付着物を除去しにくいうえ、撹拌容器の気相部分には、撹拌軸や測定端子が存在しているため、内壁面や天井部分の付着物を除去するには大変手間がかかることが問題になっていた。
【0008】
研究現場で用いる撹拌容器は、一般に上部が開放した円筒容器と、該開放部分を覆う蓋部と、該円筒容器に受け入れた被撹拌流体を撹拌する役割を担う撹拌機とから構成されており、該蓋部には撹拌機の撹拌軸や測定端子を挿通するための複数の貫通孔が設けられている。この撹拌容器の蓋部には更に固体添加剤を投入するための貫通孔が設けられることもある。従って洗ビンの先端部をこれら貫通孔のいずれかから差し込んで洗浄水を吹き付けることである程度洗浄することは可能である。
【0009】
しかしながら、このように洗ビンによる洗浄は洗浄作業を行う作業者によって個人差が生じるおそれがある。また、できるだけ個人差が生じないようにするには撹拌容器を分解して洗浄するのが好ましいが、この場合は撹拌機のモーターを停止し、必要に応じてこれら撹拌機や測定端子を取り外してから蓋部を上方に又は傾けて持ち上げて取り外す必要があり、極めて煩雑な手間を要していた。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、撹拌機のモーターを停止させたり容器を分解したりする必要なく撹拌容器の内側を洗浄することが可能な洗浄機能付き撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る撹拌装置は、下端部に撹拌翼を有する回転軸からなる撹拌装置であって、前記回転軸には洗浄液を該回転軸の遠心力により飛散させる飛散部が設けられており、前記飛散部は、上端部から下端部に向かって縮径する漏斗状部材からなり、該下端部において前記回転軸に外嵌されており、前記漏斗状部材は、その内壁面に放射状に延在する複数本の溝部が周方向に均等な間隔をあけて設けられており、前記複数本の溝部は、各々半径方向に対して回転方向の後方側に傾斜していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撹拌機のモーターを停止させたり容器を分解したりすることなく撹拌容器の内側を洗浄することができるので、その工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一具体例の洗浄機能付き撹拌装置を具備した撹拌容器の縦断面図である。
【
図2】
図1の洗浄機能付き撹拌装置の斜視図である。
【
図3】本発明の一具体例の攪拌装置が有する漏斗状部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の洗浄機能付き撹拌装置及びこれを備えた撹拌容器の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の一具体例の洗浄機能付き撹拌装置10は、フッ素樹脂、ステンレス鋼などからなる回転軸11と、該回転軸11の下端部に設けられたプロペラ型、タービン型、パドル型等の撹拌翼12とからなり、好適には円筒形状を有する容器20に取り付けられる。この容器20では、プロセス液や研究用試料などの液体やスラリーを所定の液位まで受け入れて、浸出や沈殿物生成などの化学反応、混合、培養などの各種の単位操作が行われる。その際、撹拌装置10によって被撹拌流体である上記液体やスラリーが撹拌される。
【0014】
この容器20は、例えば上部が開放した円筒胴部21と、該円筒胴部21の該開放部分を塞ぐ取り外し自在な蓋部22とからなる。この円筒胴部21には図示しない液排出ノズル、液供給ノズル、オーバーフローノズル等の各種ノズル、撹拌効率を高めるバッフル板、液温調整用の冷媒や熱媒が循環する蛇管やジャケット等が設けられる場合がある。
【0015】
一方、蓋部22には、その略中央部の外側に上記撹拌装置10を回転駆動するモーターなどの回転駆動手段23が搭載されている。この回転駆動手段23の駆動軸に上記撹拌装置10の回転軸11が連結されるため、該蓋部22には該回転軸11を挿通させる貫通孔が設けられている。また、該蓋部22には温度計、pH計、ORP計、DO計などの測定端子24を挿通させる貫通孔も設けられている。この蓋部22には更に液体や粉体等の供給用のノズル又は開口部、サンプリング用のノズル又は開口部、メンテナンス用のハンドホール等が設けられる場合がある。
【0016】
上記のような構造を有する容器20に所定の液位まで液体を受け入れて上記の回転駆動手段23の回転駆動力による撹拌装置10の回転で撹拌を行った場合、該円筒胴部21の内壁面のうち該液位よりも上方の気相部に曝される部分、蓋部22の下面、撹拌装置10の回転軸11や測定端子24において該気相部に曝される部分には、撹拌により飛散した液体が付着する。なお、一般的には上記液位の高さは、円筒胴部21の直胴部の高さの20~80%程度である。
【0017】
上記の内壁面等に付着した液体や該液体由来の付着物を洗浄液で除去するため、該撹拌装置10の回転軸11には該回転軸11の回転により生じる遠心力により洗浄液を周囲に飛散させる飛散部13が設けられている。この飛散部13は、容器20の外部から供給される水などの洗浄液を、撹拌装置10の回転軸11の遠心力で少なくとも容器20の胴部21の内壁面にまで到達させることができるものであれば特に限定はないが、撹拌翼12の安定的な回転が維持されるように回転軸11に対して回転対称な形状を有しているのが好ましく、
図2に示すような漏斗形状を有しているのが好ましい。
【0018】
以下、この
図2に示す漏斗形状の飛散部13について具体的に説明する。この
図2の飛散部13は、上端部から下端部に向かって徐々に縮径する漏斗部13aと、該漏斗部13aの下端部から下方に同心円状に延在する円筒部13bとからなり、この円筒部13bを上記回転軸11に外嵌させることで該回転軸11に取り付けられている。この漏斗部13aの材質は特に限定はないが、フッ素樹脂、ステンレス鋼等の耐食性材料で形成されるのが好ましい。一方、円筒部13bは漏斗部13aと同じ材質で一体成型してもよいが、上記回転軸11の外周面に摺接自在に外嵌されるように、可撓性部材で形成してもよい。
【0019】
上記飛散部13は、この円筒部13bにおいて回転軸11にネジ留め、接着、溶接、ロウ付けなどにより固定するのが好ましく、これらの固定法の中では、ネジ留め等により取り外し自在に取り付けるのが、洗浄部位を適宜調整できるのでより好ましい。なお、この回転軸11において円筒部13bが外嵌される部分にシールテープを巻き付けてもよく、これにより取り外し自在に固定できるうえ、洗浄水が漏斗部13aの下端部から漏れるのを防ぐことができる。
【0020】
上記飛散部13に容器20の外部から洗浄液を供給する方法としては、使用していない貫通孔やノズル、あるいは回転軸11の挿通用の蓋部22の貫通孔の隙間から洗ビンなどの注水器Sの注水部を差し込んで、漏斗部13aの上部開口部から洗浄水を直接流し込めばよい。なお、回転軸11の回転が比較的低速の場合は、回転軸11のうち蓋部22の上方に突出する部分に洗浄水を注水し、回転軸11の外周面を伝って洗浄水を流下させて漏斗部13aに注ぎ込むようにしてもよい。あるいは、容器20の外部の洗浄液供給源に接続した洗浄液供給配管を蓋部22を挿通させて回転軸11に沿って延在させ、その先端部から漏斗部13aに洗浄液を供給してもよい。
【0021】
上記の漏斗部13aの高さやその上端部の外径、その傾斜面の傾斜角度は、回転軸11の回転数や飛散部13の取り付け位置等を考慮したうえで、遠心力で飛散した洗浄液が容器20内の飛散部13から最も遠い部位まで到達するように設計するのが好ましい。特に、複数の測定端子が設けられる場合は、それらによって洗浄液の到達が阻害される部分にも洗浄液が行き渡るように、より勢いよく洗浄液を飛散させるのが好ましい。
【0022】
一般的には、漏斗部13aの上端部の外径は、容器20の内径の1/10~1/3程度が好ましく、1/8~1/5程度がより好ましい。この場合、漏斗部13aの上端部の外径は、回転軸11の直径の2倍以上であるのが好ましく、5倍以上であるのがより好ましい。また、漏斗部13aの傾斜面は、回転軸11に対して15~60°傾斜しているのが好ましく、30°傾斜しているのがより好ましい。更に、漏斗部の上端部と蓋部22の下面との間は、少なくとも漏斗部の深さの10%で離間するように取り付けるのが好ましい。
【0023】
かかる構成により、モーターなどの回転駆動手段23を停止させることなく、また蓋部22の取り外しなどの容器20の分解を行うことなく、容器20の内壁面や測定端子24等において付着物が残留しやすい部分を容易に洗浄することができる。なお、洗浄液の混入により容器20内のプロセス液の濃度が薄まることが懸念される場合は、例えばプロセス液の溶媒と同じ液を洗浄液に用い、該洗浄液の混入量に見合うようにあらかじめプロセス液の濃度を高めに調製しておけばよい。
【0024】
上記漏斗部13aの内側の傾斜面の形状には特に限定はないが、
図3(a)に示すように、内壁面に放射状に延在する複数本の溝部13cを、周方向に均等な間隔をあけて設けるのが好ましい。これにより、洗浄液に遠心力を及ぼしやすくなり、該洗浄液をより勢いよく飛散させることが可能になる。上記の複数本の溝部は、
図3(b)に示すように、各々半径方向に対して矢印で示す回転方向の後方側に傾斜させてもよい。これにより、より一層勢いよく洗浄液を飛散させることができる。なお、本発明の実施形態の撹拌装置10を処理前又は処理後の液体がない状態の容器20の洗浄用として用いてもよく、この場合は容器20の内壁全面に加えて底部や撹拌翼など撹拌容器の内側全体を洗浄することになる。
【実施例】
【0025】
図1に示すように、漏斗部13a及び円筒部13bからなる飛散部13を有する撹拌装置10を備えた円筒容器20を用意し、その内部にスラリーを受け入れて撹拌装置10で撹拌することで、該スラリーに含まれる固形分の浸出処理を行った。具体的には、容器20の円筒胴部21には外径約70mmの250mLビーカーを採用し、蓋部22はシリコン樹脂製の円板を用いた。この円板の中央部に撹拌装置10の回転軸11の挿通用の最も小さな孔径の第1貫通孔を穿孔した。この第1貫通孔の周りに、該第1貫通孔より大きな孔径を有する温度計端子挿通用の2個の第2貫通孔と、該第2貫通孔より大きな孔径を有するORP計端子挿通用の2個の第3貫通孔と、最も大きい孔径のpH計端子挿通用の2個の第4貫通孔とを穿孔した。
【0026】
この第1貫通孔に、下端部に4枚の撹拌翼12を有する回転軸11を下側から挿通し、その上端部を上記ビーカーの上方に設けた支持具で支持されているモーターの回転駆動軸に連結した。また、第2貫通孔~第4貫通孔に、それぞれ温度計、ORP計及びpH計を1本ずつ上方から挿入して液に浸漬する深さにセットした。漏斗部13a及び円筒部13bはフッ素樹脂製で一体成形されており、漏斗部13aは、高さ24mm、上端部の外径20mm、傾斜面の回転軸11に対する傾斜角30°であった。漏斗部13aの内面は
図3(b)に示すように半径方向に対して回転方向の後方側に傾斜した4本の溝13cを設けた。
【0027】
上記の円筒部13bを回転軸11に外嵌させ、漏斗部13aの上端部と蓋部22の下面とが10mm離間するように位置を調整した。その際、回転軸11において該円筒部13bが外嵌される部分にPTFE製のシールテープを巻き付けて飛散部13を固定すると共に、漏斗部13a内の洗浄液が下端部から容易に漏れないようにした。このようにして組み立てた攪拌容器を、約70℃の一定の温度に保持されている温水バス内に浸漬させた。そして、容器20内に液体試料としての純水と、固体試料としてのNi含有物とをそれぞれ秤量して装入した。そして撹拌装置10を約650rpmで回転させながら、浸出用添加剤として濃度64質量%の硫酸を添加した。これにより、pHを1.5、ORPを約100mVとなるように調整し、終点のORP値275mVに落ち着いてから更に10分間保持した。
【0028】
この10分の保持時間経過後、洗浄操作として撹拌装置10のモーターの回転を止めることなく撹拌を継続しながら回転軸11が挿通されている蓋部22の第1貫通孔の隙間から洗ビンSの先端部を差し込んで、純水10ccを該飛散部13の漏斗部13aに直接注入したところ、洗浄水は洗ビンSで注水するや否や一瞬で飛散し、1回の浸出処理に対して合計10回の洗浄を行っても、所要時間は合計数秒程度だった。処理後に容器20内を目視にて確認したところ、容器20の壁面の上縁部、蓋部22の下面、及び温度計等の測定端子24に付着していた付着物は良好に洗浄除去されていた。
【0029】
その後、容器20内で処理された浸出液及び残渣を回収し、浸出液をICP-OES装置(Agilent 5100SVDV)で分析したところNi濃度は20g/Lであり、また、残渣を化学分析したところ、残渣中のNi品位は0.25%であり、これらのデータから容器20に装入した試料に含まれていたNiのほぼ100%が回収されていることを確認できた。
【0030】
比較のため、飛散部13を用いた洗浄を行わなかった以外は上記と同様に浸出処理を行った。洗浄作業においては、撹拌容器10のモーターを停止してから該モーターを支持具ごと移動させた後、蓋部22を持ち上げて容器20の上端部や測定端子などに付着した液を洗ビンSを使用して洗浄水を吹き付けて除去する作業が必要となり、所要時間は1分程度を要した。1回の浸出処理に対して合計10回の洗浄を行ったため、合計10分程度の洗浄時間を要した。
【0031】
上記の結果から、本発明の要件を満たす飛散部を備えた撹拌装置を使用することにより、撹拌装置のモーターを停止することなく、また、蓋部を取り外すことなく容器内壁を洗浄でき、特に洗浄しにくい容器内壁の上端部や測定端子の裏側等を確実に洗浄できることが分かる。また、従来の分解洗浄に比べて洗浄時間を短縮できることも分かる。
【符号の説明】
【0032】
10 撹拌装置
11 回転軸
12 撹拌翼
13 飛散部
13a 漏斗部
13b 円筒部
13c 溝
20 容器
21 円筒胴部
22 蓋部
23 回転駆動手段
24 測定端子
S 洗ビン