(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】装飾部材
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20221129BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20221129BHJP
C23C 14/14 20060101ALI20221129BHJP
A45D 33/18 20060101ALN20221129BHJP
A45D 33/00 20060101ALN20221129BHJP
B32B 27/00 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
B32B7/023
C23C14/08 J
C23C14/14 D
A45D33/18 B
A45D33/00 650A
B32B27/00 E
(21)【出願番号】P 2020540374
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(86)【国際出願番号】 KR2019004295
(87)【国際公開番号】W WO2019199063
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0041562
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0132104
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン チャン
(72)【発明者】
【氏名】キム、キ ファン
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ナンスラ
(72)【発明者】
【氏名】ション、ジョン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ピルソン
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533678(JP,A)
【文献】特開2006-350355(JP,A)
【文献】特開2011-140136(JP,A)
【文献】特開2008-201104(JP,A)
【文献】特開2009-131998(JP,A)
【文献】特開2002-192644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G02B 5/00-5/32
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射層、および前記光反射層上に備えられた光吸収層を含む色発現層と、前記色発現層の一面上に備えられた基材と、を含み、
前記光吸収層は銅酸化物(Cu
aO
x)を含み、
前記光吸収層の何れか一地点に対して成分分析を行った時に、下記式1で表されるωが0.001以上0.6以下であり、下記式1で表されるT
xが0.01以上0.5以下であり、下記式1で表されるσ
xが0.4以上1.1以下であり、
前記色発現層または基材がパターン層を含み、前記パターン層は、非対称構造の断面を有する凸
部形状を含
み、
前記凸部の第1傾斜面の傾斜角と第2傾斜面の傾斜角との差は30度~70度である、装飾部材。
[式1]
【数1】
[式2]
【数2】
[式3]
【数3】
(前記式1中、T
xは、前記f(T
1)で表される関数のT
1による関数値であり、nは1以上の正の整数であり、σ
xは前記式3で表され、
前記式2中、T
1は、前記成分分析を行った前記光吸収層の何れか一地点を含む光吸収層の厚さであり、T
0は60nmであり、
前記式3中、前記aは銅(Cu)の元素含量比を意味し、xは酸素(O)の元素含量比を意味し、aおよびxは、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ0超過1未満の値であり、a+x=1である。)
【請求項2】
前記光吸収層のCIE Lch色空間(color space)内で色相角(Hue-angle)h*が、315°~360°および0°~150°の範囲内である、請求項1に記載の装飾部材。
【請求項3】
前記光反射層は、インジウム(In)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ネオジム(Nb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、金(Au)、および銀(Ag)から選択される1種または2種以上の材料;その酸化物;その窒化物;その酸窒化物;炭素および炭素複合体からなる群から選択される1種または2種以上の材料を含む単一層または多層である、請求項1または2に記載の装飾部材。
【請求項4】
前記光吸収層は、400nmの波長で屈折率が0~8である、請求項1から3のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項5】
前記光吸収層は、400nmの波長で消衰係数が0超過4以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項6】
前記光吸収層は、厚さが異なる2以上の地点を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項7】
前記色発現層は、カラーフィルムをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項8】
△E*ab>1の異色性を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項9】
前記基材は、化粧品容器用プラスチック射出物またはガラス基材を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項10】
前記化粧品容器用プラスチック射出物は、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、エチレン-ビニルアセテートコポリマー(EVA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(polyamide)、およびスチレン-アクリロニトリル共重合体(Styrene-Acrylonitrile copolymer:SAN)のうち1種以上を含む、請求項9に記載の装飾部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年4月10日付で韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10‐2018‐0041562号および2018年10月31日付で韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10‐2018‐0132104号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は装飾部材に関するのである。
【背景技術】
【0003】
化粧品容器、種々のモバイル機器、家電製品は、製品の機能以外にも、製品のデザイン、例えば、色相、形態、パターンなどが、顧客の製品の価値付与において大きい役割をしている。デザインによって、製品の選好度および価格も左右されている。
【0004】
一例として、化粧品コンパクト容器の場合、様々な色相と色感を様々な方法により実現して製品に適用している。ケース素材自体に色を付与する方式や、色と模様を実現した装飾フィルムをケース素材に付着してデザインを付与する方式が用いられている。
【0005】
従来の装飾フィルムにおいて、色相の発現は、印刷、蒸着などの方法により実現しようとしていた。異種の色相を単一面に表現する場合には、2回以上印刷しなければならず、立体パターンに多様な色を加えようとする場合は、現実的に実現が困難であった。また、従来の装飾フィルムは、見る角度によって色相が固定されており、やや変化があるとしても、色感差の程度に限定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国特許出願公開第10-2010-0135837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は、装飾部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願は、光反射層、および前記光反射層上に備えられた光吸収層を含む色発現層と、前記色発現層の一面上に備えられた基材と、を含み、前記光吸収層は銅酸化物(Cu
aO
x)を含み、前記光吸収層の何れか一地点に対して成分分析を行った時に、下記式1で表されるωが0.001以上0.6以下である、装飾部材を提供する。
[式1]
【数1】
[式2]
【数2】
[式3]
【数3】
【0009】
前記式1中、Txは、前記f(T1)で表される関数のT1による関数値であり、nは1以上の正の整数であり、σxは前記式3で表され、
前記式2中、T1は、前記成分分析を行った前記光吸収層の何れか一地点を含む光吸収層の厚さであり、T0は60nmであり、
前記式3中、前記aは銅(Cu)の元素含量比を意味し、xは酸素(O)の元素含量比を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書の一実施態様に係る装飾部材は、銅酸化物を含み、且つ各元素の含量が特定の割合に調節された光吸収層を備えることで、ウォームトーン(warm tone)の色相を呈することができる。
【0011】
本出願は、見る方向によって異なる色を呈する異色性を有し、前記異色性の視認性が改善された装飾部材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本明細書の一実施態様に係る装飾部材を示した図である。
【
図2】光吸収層と光反射層を区別する方法について示した図である。
【
図3】光吸収層の一地点およびそれを含む光吸収層の厚さについて示した図である。
【
図4】光吸収層と光反射層での光の干渉原理について説明する図である。
【
図5】本明細書の一実施態様に係る装飾部材を示した図である。
【
図6】本明細書の一実施態様に係る装飾部材を示した図である。
【
図7】本明細書の一実施態様に係る装飾部材を示した図である。
【
図8】本明細書の一実施態様に係る装飾部材を示した図である。
【
図9】本明細書の一実施態様に係る装飾部材を示した図である。
【
図10】本明細書の一実施態様に係る装飾部材を示した図である。
【
図11】本明細書の一実施態様に係る装飾部材を示した図である。
【
図12】本明細書の一実施態様に係る装飾部材を示した図である。
【
図13】本明細書の一実施態様に係る装飾部材を示した図である。
【
図14】パターン層の形態について示した図である。
【
図15】パターン層の形態について示した図である。
【
図16】パターン層の形態について示した図である。
【
図17】パターン層の形態について示した図である。
【
図18】パターン層の形態について示した図である。
【
図19】パターン層の形態について示した図である。
【
図20】パターン層の形態について示した図である。
【
図21】パターン層の形態について示した図である。
【
図22】パターン層の形態について示した図である。
【
図23】パターン層の形態について示した図である。
【
図24】パターン層の形態について示した図である。
【
図25】パターン層の形態について示した図である。
【
図26】パターン層の形態について示した図である。
【
図27】パターン層の形態について示した図である。
【
図28】パターン層の形態について示した図である。
【
図29】パターン層の形態について示した図である。
【
図30】パターン層の形態について示した図である。
【
図31】パターン層の形態について示した図である。
【
図34】評価例(色相評価)による色相を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本明細書について詳細に説明する。
【0014】
本明細書において、「または」とは、他に定義しない限り、挙げられたものなどを選択的にまたは全て含む場合、すなわち、「および/または」の意味を表す。
【0015】
本明細書において、「層」とは、該当層が存在する面積を70%以上覆っているものを意味する。好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上覆っているものを意味する。
【0016】
本明細書において、ある層の「厚さ」とは、該当層の下面から上面までの最短距離を意味する。
【0017】
本明細書において、装飾部材が呈する色相は、光源の分光特性と物体の反射率、観察者の色彩視感効率によって定義されることができる。
【0018】
客観的な色の表現のためには、標準光源および標準観測者による色の測定が必要であり、色空間の座標で色を表現する。装飾部材の色相は、視覚的に均一な色空間を提供するCIE Lab(L*a*b*)座標またはLch座標で示すことができる。L*は明度、+a*は赤色度(redness)、-a*は緑色度(greenness)、+b*は黄色度(yellowness)、-b*は青色度(blueness)を表し、C*およびh*については後述する。前記色空間で、観察位置による全体色差は
【数4】
で表されることができる。
【0019】
前記色の測定では、分光光度計(CM-2600d、コニカミノルタ社製)を利用することができるが、分光光度計を用いて試料の反射率を分光し、各波長毎の反射率を示すことができ、これから、分光反射率グラフおよび変換された色座標を得ることができる。この際、8度の視野角(viewing angle)でデータを得て、装飾部材の異色性を確認するために、装飾部材に水平な方向と垂直な方向に計測する。
【0020】
前記視野角(viewing angle)は、装飾部材の色発現層の表面の法線方向への直線(d1)と、前記分光光度計と測定しようとする装飾部材の一地点を通過する直線(d2)とが成す角度であって、一般に0度~90度の範囲を有する。
【0021】
視野角が0度であるということは、装飾部材の色発現層の表面の法線方向と同一の方向で測定することを意味する。
【0022】
本明細書において、「光吸収層」と「光反射層」は、互いに相対的な物性を有する層であって、前記光吸収層は、前記光反射層に比べて光吸収度が高い層を意味し、前記光反射層は、前記光吸収層に比べて光反射度が高い層を意味し得る。
【0023】
前記光吸収層および光反射層は、それぞれ単一層で構成されてもよく、2層以上の多層で構成されてもよい。
【0024】
本明細書において、光吸収層と光反射層は、その機能によって命名されたものである。特定の波長を有する光に対して、光を相対的に多く反射する層を光反射層と表現し、光を相対的に少なく反射する層を光吸収層と表現することができる。
【0025】
図1は、本明細書の一実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示した図である。
図1には、色発現層100と基材101を含む装飾部材を示している。色発現層100は、光反射層201および光吸収層301を含む。
図1には、基材101が色発現層100の光吸収層301側に備えられていることを示したが、光反射層201側に備えられてもよい。
【0026】
図2を参照して、光吸収層および光反射層について説明する。
図2の装飾部材には、光が入って来る方向を基準として、各層(layer)がL
i-1層、L
i層、およびL
i+1層の順に積層されており、L
i-1層とL
i層との間に界面(interface)I
iが位置し、L
i層とL
i+1層との間に界面I
i+1が位置する。
【0027】
薄膜干渉が起こらないように、各層に垂直な方向に特定波長を有する光を照射した時に、界面Iiでの反射率は、下記数学式1で表することができる。
[数学式1]
【数5】
【0028】
前記数学式1中、ni(λ)は、i番目の層の波長(λ)による屈折率を意味し、ki(λ)は、i番目の層の波長(λ)による消衰係数(extinction coefficient)を意味する。消衰係数は、特定波長で対象物質が光をどれくらい強く吸収するかを定義する尺度であって、定義は上述のとおりである。
【0029】
前記数学式1を適用し、各波長で計算された界面I
iでの波長毎の反射率の和をR
iとしたときに、R
iは下記の数学式2のとおりである。
[数学式2]
【数6】
【0030】
以下、上述の光反射層および光吸収層を含む装飾部材について説明する。
【0031】
本明細書は、光反射層、および前記光反射層上に備えられた光吸収層を含む色発現層と、前記色発現層の一面上に備えられた基材と、を含み、
前記光吸収層は銅酸化物(Cu
aO
x)を含み、
前記光吸収層の何れか一地点に対して成分分析を行った時に、下記式1で表されるωが0.001以上0.6以下である、装飾部材を提供する。
[式1]
【数7】
[式2]
【数8】
[式3]
【数9】
【0032】
前記式1中、Txは、前記f(T1)で表される関数のT1による関数値であり、nは1以上の正の整数であり、σxは前記式3で表され、
前記式2中、T1は、前記成分分析を行った前記光吸収層の何れか一地点を含む光吸収層の厚さであり、T0は60nmであり、
前記式3中、前記aは銅(Cu)の元素含量比を意味し、xは酸素(O)の元素含量比を意味する。例えば、前記一地点の銅(Cu)および酸素(O)の含量がそれぞれ50%である場合、aおよびxはそれぞれ0.5で表されることができる。
【0033】
本明細書において、特定元素の含量比とは、前記成分分析を行った前記光吸収層の何れか一地点の、特定元素の原子百分率(atomic percent、at%)を意味し得る。
【0034】
本明細書の一実施態様に係る装飾部材は、光吸収層が銅酸化物(CuaOx)を含み、銅酸化物の各元素の含量比を調節し、光吸収層の厚さを特定範囲に調節することで、光吸収層を介して暖かい色(warm tone)が観察されることができる。この際、前記銅酸化物の各元素の含量比と光吸収層の厚さに関する関係式を、前記式1で表されるウォームトーンパラメータ(warm tone parameter)ωで示すことができる。前記ウォームトーンパラメータは、ωwで表されることができる。前記ωwの下付き文字wは、warm toneを意味する。
【0035】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層の何れか一地点(x)で、前記式1で表されるωが0.05以上0.6以下、0.1以上0.5以下、または0.1以上0.4以下であることができる。前記数値範囲を満たす場合、光吸収層を介して暖かい色(warm tone、ウォームトーン)が観察されることができ、暖かい色のうち、ユーザが所望する色を容易に呈することができる。
【0036】
本明細書において、前記「光吸収層の何れか一地点」とは、光吸収層の表面または内部における何れか一地点を意味し得る。
【0037】
本明細書の一実施態様において、前記Txは、前記式2で表される厚さパラメータである。光吸収層は、厚さが変わるに伴って暖かい色(ウォームトーン、warm tone)または冷たい色(クールトーン、cool tone)が交互に現れるが、厚さの一定の周期(T0)に従って色の変化が現れる。この際、Txは、前記光吸収層の厚さの一定の周期(T0)に対する、何れか一地点での光吸収層の厚さ(T1)の割合を意味し得る。例えば、厚さの一定の周期が60nmであると、光吸収層の厚さが30nm、90nm、および150nmである時のTx値は、0.5と等しい。
【0038】
前記式2中、T1は、前記光吸収層の何れか一地点を含む光吸収層の厚さである。T1は、光吸収層の何れか一地点を選択したときに、一地点を含む光吸収層の厚さを意味する。装飾部材の断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)などにより観察すると、光反射層と光吸収層との間に界面が確認され、成分分析により、銅酸化物を含む層が光吸収層であることを確認することができる。この際、光吸収層の何れか一地点を選択し、何れか一地点を含む光吸収層の厚さを計算して、T1として適用することができる。
【0039】
前記式2は、光吸収層の厚さ(T
1)による周期関数f(T
1)を表す。周期T
0によって、同一のf(T
1)値が現れることを意味する。これを
図35に示した。
図35によると、
【数10】
の範囲で現れるf(T
1)が、一定の周期(T
0)で繰り返して現れる。例えば、T
1=0.5T
0である時のf(0.5T
0)と、T
1=0.5T
0+T
0である時のf(1.5T
0)の際には、値が0.5と等しい。
【0040】
本明細書の一実施態様において、前記aおよびxは、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ0超過1未満の値を有することができる。
【0041】
本明細書の一実施態様において、前記a+x=1であることができる。
【0042】
前記厚さT1は、前記光吸収層の何れか一地点を含み、且つ前記光吸収層の表面方向に垂直な方向への断面において、前記光吸収層の厚さ方向への長さを意味し得る。
【0043】
図3に、前記光吸収層の一地点および厚さを決定する方法を示した。光吸収層の何れか一地点(
図3の赤色点)を選択したときに、この地点の成分分析により式3で表される含量比パラメータを計算し、この地点を通る線分のうち、光吸収層の表面方向に垂直な線分の幅を計算することで、厚さ(T
1)を計算することができる。
【0044】
また、前記T1は、光吸収層の形成時に、蒸着に用いられるプロセス圧力、プラズマガスに対する反応性ガスの流量、電圧、蒸着時間、または温度を調節することで達成することができる。
【0045】
本発明の装飾部材は、光吸収層の厚さ変化に従って、クールトーンまたはウォームトーンが一定の周期で繰り返して現れる。この際、T0を「ウォームトーンが繰り返して現れる光吸収層の厚さの周期」と表現することができる。
【0046】
前記光吸収層の成分分析は、透過X線成分分析を利用することである。具体的に、前記透過X線成分分析は、X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、XPS)であることができる。
【0047】
前記式3中、前記aは銅(Cu)の元素含量比を意味し、xは酸素(O)の元素含量比を意味する。前記光吸収層の各元素の元素含量比は、この技術が属する分野で一般に用いられる方法により測定可能であり、X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、XPS)または電子分光化学分析機(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis:ESCA、Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いることができる。
【0048】
本明細書の一実施態様において、前記厚さパラメータTxは、0.01以上0.5以下、好ましくは0.1以上0.5以下、より好ましくは0.16以上0.5以下であることができる。前記数値範囲を満たす場合、装飾部材から暖かい色(ウォームトーン、warm tone)がより明らかに観察されることができる。
【0049】
本明細書の一実施態様において、前記含量比パラメータσxは、0.1以上3以下、0.1以上1.5以下、好ましくは0.3以上1.5以下、より好ましくは0.4以上1.1以下であることができる。前記数値範囲を満たす場合、装飾部材から暖かい色(ウォームトーン、warm tone)がより明らかに観察されることができる。前記元素間の割合は、銅酸化物の蒸着時にガス分率を調節することで達成することができる。
【0050】
具体的に、X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、XPS)または電子分光化学分析機(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis:ESCA、Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて、光吸収層の表面および厚さ方向へのサーベイスキャン(survey scan)を進行して定性分析した後、ナロースキャン(narrow scan)により定量分析を進行する。この際、下記表1の条件でサーベイスキャンおよびナロースキャンを得て、定性、定量分析を進行する。Peak backgroundはsmart方式を用いる。
【0051】
【0052】
また、前記成分分析は、装飾部材の積層の前に、光吸収層と同一の組成を有する光吸収層の切片を製造し、成分分析を行うことができる。または、装飾部材の構造が基材/パターン層/光反射層/光吸収層である場合、装飾部材の最外郭を上述の方法により分析することができる。また、装飾部材の断面写真を観察し、視覚的に光吸収層を確認することができる。例えば、装飾部材の構造が基材/パターン層/光反射層/光吸収層である場合、装飾部材の断面写真から、各層の間に界面が存在することを確認することができるが、最外郭層が光吸収層に該当する。
【0053】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層のCIE Lch色空間(color space)内で、色相角(Hue-angle)h*は、315°~360°および0°~150°の範囲、320°~360°および0°~105°の範囲、320°~360°および0°~103°の範囲内であることができる。
【0054】
色相角h*が上記の範囲である場合、装飾部材からウォームトーン(warm tone)が観察されることができる。ウォームトーンとは、CIE Lch色空間で前記数値範囲を満たすものを意味する。ウォームトーンに該当する色相を
図32に、クールトーンに該当する色相を
図33にそれぞれ示した。
【0055】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層のCIE Lch色空間(color space)内でのLは、0~100、または30~100であることができる。
【0056】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層のCIE Lch色空間(color space)内でのc*は、0~100、1~80、または1~60であることができる。
【0057】
本明細書において、前記CIE Lch色空間はCIE Lab色空間であって、ここで、カルテシアン座標(Cartesian Coordinates)のa*、b*の代りに、円筒座標系(cylinder coordinates)のc*(彩度、相対色飽和度(relative color saturation)、L*(L軸からの距離)、およびh*(色相角、CIE Lab色相環での色相角)を用いた。
【0058】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、400nmの波長で屈折率(n)が0~8であることが好ましく、0~7であってもよく、0.01~3であってもよく、2~2.5であってもよい。屈折率(n)は、sin θa/sin θb(θaは、光吸収層の表面から入射される光の角であり、θbは、光吸収層の内部での光の屈折角である)により計算されることができる。
【0059】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、380nm~780nmの波長範囲で屈折率(n)が0~8であることが好ましく、0~7であってもよく、0.01~3であってもよく、2~2.5であってもよい。
【0060】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、400nmの波長で消衰係数(k)が0超過4以下であり、0.01~4であることが好ましく、0.01~3.5であってもよく、0.01~3であってもよく、0.1~1であってもよい。消衰係数(k)は、-λ/4πI(dI/dx)(ここで、光吸収層内で経路単位長さ(dx)、例えば、1m当たりの光の強度の減少分率dI/Iにλ/4πを乗じた値であり、この際、λは光の波長である。
【0061】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、380nm~780nmの波長範囲で消衰係数(k)が0超過4以下であり、0.01~4であることが好ましく、0.01~3.5であってもよく、0.01~3であってもよく、0.1~1であってもよい。400nm、または380nm~780nmの可視光線全波長領域で消衰係数(k)が前記範囲であるため、可視光線範囲内で光吸収層の役割を果たすことができる。
【0062】
上記のように特定の消衰係数および屈折率を有する光吸収層が色を発現する原理と、従来の基材に染料を添加して色を発現する装飾部材の色発現の原理は異なる。例えば、樹脂中に染料を添加して光を吸収する方式を利用する場合と、上述のような消衰係数を有する材料を使用する場合は、光を吸収するスペクトルが異なる。樹脂中に染料を添加して光を吸収する場合、吸収波長帯が固定され、コーティング厚さの変化に伴って吸収量が変化する現象のみが発生する。また、所望の光吸収量を得るために、光吸収量を調節するために最小数マイクロメートル以上の厚さ変化が必要である。これに対し、消衰係数を有する材料では、厚さが数もしくは数十ナノメートルの規模で変化しても、吸収する光の波長帯が変わる。
【0063】
また、従来の樹脂に染料を添加する場合、染料による特定色のみが発現されるため、種々の色相を呈することができない。これに対し、本発明の光吸収層は、樹脂ではない特定材料を用いることで、染料を添加しなくても、光の干渉現象によって色を多様に呈することができる利点がある。
【0064】
前記実施態様によると、光吸収層では、光の入射経路および反射経路で光吸収がなされ、また、光は光吸収層の表面、および光吸収層301と光反射層201との界面でそれぞれ反射し、2つの反射光が強め合う干渉または弱め合う干渉をすることになる。
【0065】
本明細書において、光吸収層の表面で反射される光は表面反射光、光吸収層と光反射層との界面で反射される光は界面反射光と表現されることができる。
図4に、このような作用原理の模式図を示した。
図4には、基材101が光反射層201側に備えられた構造が例示されているが、かかる構造に限定されず、基材101の位置は、他の位置に配置されてもよい。
【0066】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、単一層であってもよく、2層以上の多層であってもよい。
【0067】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、金属、メタロイド、および金属やメタロイドの酸化物、窒化物、酸窒化物、および炭化物からなる群から選択される1つまたは2つ以上を含むことができる。前記金属またはメタロイドの酸化物、窒化物、酸窒化物、または炭化物は、当業者が設定した蒸着条件などによって形成することができる。光吸収層は、光反射層と同一の金属、メタロイド、2種以上の合金または酸窒化物を含んでもよい。
【0068】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層の厚さ(T1)は、最終構造で所望の色相によって決定可能であり、例えば、1nm以上300nm以下、1nm以上35nm以下、71nm以上105nm以下、または141nm以上175nm以下であることができる。
【0069】
本明細書の一実施態様において、前記光反射層としては、光を反射することができる材料であれば特に限定されないが、光反射率は材料によって決定され、例えば、50%以上の光反射率で色相実現が容易である。光反射率はエリプソメータ(ellipsometer)を用いて測定することができる。
【0070】
本明細書の一実施態様において、前記光反射層は、金属層、金属酸化物層、金属窒化物層、金属酸窒化物層、または無機物層であることができる。前記光反射層は、単一層で構成されてもよく、2層以上の多層で構成されてもよい。
【0071】
本明細書の一実施態様において、前記光反射層は、インジウム(In)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ネオジム(Nb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、金(Au)、および銀(Ag)から選択される1種または2種以上の材料;その酸化物;その窒化物;その酸窒化物;炭素;および炭素複合体からなる群から選択される1種または2種以上の材料を含む単一層または多層であることができる。
【0072】
本明細書の一実施態様において、前記光反射層は、前記材料から選択される2つ以上の合金、その酸化物、窒化物、または酸窒化物を含むことができる。
【0073】
本明細書の一実施態様において、前記光反射層は、炭素または炭素複合体を含むインクを利用して製造されることで、高抵抗の反射層を実現することができる。前記炭素または炭素複合体としては、カーボンブラック、CNTなどが挙げられる。
【0074】
本明細書の一実施態様において、前記炭素または炭素複合体を含むインクは、上述の材料またはその酸化物、窒化物、または酸窒化物を含むことができ、例えば、インジウム(In)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ネオジム(Nb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、金(Au)、および銀(Ag)から選択される1種または2種以上の酸化物を含むことができる。前記炭素または炭素複合体を含むインクを印刷した後、硬化工程をさらに行うことができる。
【0075】
本明細書の一実施態様において、前記光反射層は、2種以上の材料を含む場合、2種以上の材料を1つの工程、例えば、蒸着または印刷の方法により形成してもよいが、1種以上の材料で先に層を形成した後、さらに1種以上の材料で、その上に層を形成する方法が利用されることができる。例えば、インジウムやスズを蒸着して層を形成した後、炭素を含むインクを印刷してから硬化させることで、光反射層を形成することができる。前記インクには、チタン酸化物、シリコン酸化物のような酸化物がさらに含まれることができる。
【0076】
本明細書の一実施態様において、前記光反射層の厚さは、最終構造で所望の色相によって決定可能であり、例えば、1nm以上100nm以下、10nm以上90nm以下、または30nm以上90nm以下であることができる。
【0077】
(光吸収層の構造)
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、光吸収層の形成時に蒸着条件などを調節することで、様々な形状を有することができる。
【0078】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、厚さが異なる2以上の地点を含む。
【0079】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、厚さが異なる2以上の領域を含む。
【0080】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、傾斜面を含むことができる。
【0081】
前記実施態様に係る構造の例示を
図5および
図6に示した。
図5および
図6は、光反射層201および光吸収層301が積層された構造を例示した図である(基材を省略)。
図5および
図6によると、前記光吸収層301は、互いに異なる厚さを有する2以上の地点を有する。
図5によると、A地点とB地点での光吸収層301の厚さが異なる。
図6によると、C領域とD領域での光吸収層301の厚さが異なる。
【0082】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、上面が、傾斜角が0度超過90度以下の傾斜面を有する領域を1つ以上含み、前記光吸収層は、何れか1つの傾斜面を有する領域での厚さと異なる厚さを有する領域を1つ以上含む。前記傾斜面とは、光吸収層の上面に含まれる何れか1つの直線と、光反射層に平行な直線とが成す角度を、前記傾斜面と定義することができる。例えば、
図5の光吸収層の上面の傾斜角は、約20度であることができる。
【0083】
前記光反射層の上面の傾斜度のような表面特性は、前記光吸収層の上面と同一であることができる。例えば、光吸収層の形成時に蒸着方法を利用することで、光吸収層の上面が、光反射層の上面と同一の傾斜度を有することができる。しかし、
図5の光吸収層の上面の傾斜度は、光反射層の上面の傾斜度とは異なる。
【0084】
図7に、上面が傾斜面を有する光吸収層を含む装飾部材の構造を例示した。基材101、光反射層201、および光吸収層301が積層された構造であって、光吸収層301のE領域での厚さt1とF領域での厚さt2が異なる。図面符号401はカラーフィルムである。
【0085】
図7は、互いに向かい合う傾斜面、すなわち、断面が三角形である構造を有する光吸収層について示した図である。
図7のように、互いに向かい合う傾斜面を有するパターンの構造では、同一の条件で蒸着を行っても、三角形構造の2つの面で光吸収層の厚さが異なる。したがって、1回の工程だけで、厚さが異なる2以上の領域を有する光吸収層を形成することができる。これにより、光吸収層の厚さによって発現色相が異なることになる。この際、光反射層の厚さが一定以上であると、色相の変化に影響を与えない。
【0086】
図7には、基材101が光反射層201側に備えられた構造が例示されているが、このような構造に限定されず、基材101の位置は、上述の説明のように他の位置に配置されてもよい。
【0087】
また、
図7の基材101は、光反射層201と接する面が平坦面であるが、基材101の光反射層201と接する面は、光反射層201の上面と同一の勾配を有するパターンを有してもよい。これを
図8に示した。この場合、基材のパターンの勾配差によって、光吸収層の厚さにも差が生じ得る。しかし、これに限定されず、他の蒸着方法を利用して基材と光吸収層が異なる勾配を有するようにしても、パターンの両側で光吸収層の厚さが異なるようにして、後述の異色性を示すことができる。
【0088】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、厚さが次第に変わる領域を1つ以上含む。
図9に、光吸収層301の厚さが次第に変わる構造を例示した。
【0089】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、上面が、傾斜角が0度超過90度以下の傾斜面を有する領域を1つ以上含み、前記傾斜面を有する少なくとも1つ以上は、光吸収層の厚さが次第に変わる構造を有する。
図9に、上面が傾斜面を有する領域を含む光吸収層の構造を例示した。
図9のG領域とH領域は、両方とも光吸収層の上面が傾斜面を有し、光吸収層の厚さが次第に変わる構造を有する。
【0090】
本明細書において、前記光吸収層の厚さが変わる構造とは、前記光吸収層の厚さ方向への断面が、光吸収層の厚さが最も小さい地点および光吸収層の厚さが最も大きい地点を含み、前記光吸収層の厚さが、光吸収層の厚さが最も小さい地点から光吸収層の厚さが最に大きい地点の方向に増加することを意味する。この際、前記光吸収層の厚さが最も小さい地点および光吸収層の厚さが最も大きい地点は、光吸収層の光反射層との界面上のある地点を意味し得る。
【0091】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層は、傾斜角が1度~90度の範囲内である第1傾斜面を有する第1領域を含み、上面が、前記第1傾斜面と傾斜方向が異なるかまたは傾斜角が異なる傾斜面を有するか、上面が水平である2つ以上の領域をさらに含むことができる。この際、前記第1領域および前記2つ以上の領域での光吸収層の厚さは、何れも互いに異なることができる。
【0092】
(基材)
本明細書の一実施態様において、前記装飾部材は、前記色発現層の一面上に備えられた基材を含む。
【0093】
本明細書の一実施態様において、前記光反射層201の前記光吸収層301に対向する面、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の何れか1つ以上に備えられた基材101を含む。例えば、前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面(
図10(a))、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面(
図10(b))に基材が備えられることができる。
【0094】
本明細書の一実施態様において、前記基材は、化粧品容器用プラスチック射出物またはガラス基材を含むことができる。より具体的に、前記プラスチック射出物は、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、エチレン-ビニルアセテートコポリマー(EVA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(polyamide)、およびスチレン-アクリロニトリル共重合体(Styrene-Acrylonitrile copolymer、SAN)のうち1種以上を含むことができるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0095】
また、前記プラスチック射出物は、屈曲(特定パターン)のない平板状のプラスチック射出物であってもよく、屈曲(特定パターン)のある形態のプラスチック射出物であってもよい。
【0096】
前記プラスチック射出物は、プラスチック成形方法により製造されることができる。前記プラスチック成形方法としては、圧縮成形、射出成形、空気吹込成形、熱成形、熱溶融成形、発砲成形、ロール成形、強化プラスチック成形などが挙げられる。前記圧縮成形は、材料を型枠に入れて加熱した後、圧力を加える成形方法であり、これは、最も古い成形法であって、通常、フェノール樹脂などのような熱硬化性樹脂の成形に用いられることができる。前記射出成形は、プラスチック溶融液を輸送機で押し出し、ノズルを介して型枠に充填する成形方法であり、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の両方を成形可能であって、最も多く用いられる成形法と言える。現在、化粧品ケースとして用いられる樹脂はSANである。前記空気吹込成形は、型枠の中央にプラスチックパリソンを入れて空気を吹き込みながら製品を成形する方法であり、プラスチック瓶や小さい容器を製作する成形法であって、製品の製造速度が非常に速い。
【0097】
本明細書の一実施態様において、前記ガラス基材としては、透過率が80%以上のガラスを用いることができる。
【0098】
本明細書の一実施態様において、前記基材の厚さは、必要に応じて選択可能であり、例えば、50μm~200μmの範囲を有することができる。
【0099】
本明細書の一実施態様において、前記装飾部材は、前記基材上に、光反射層、および前記光反射層上に備えられた光吸収層を形成するステップにより製造されることができる。より具体的に、前記装飾部材は、基材上に蒸着工程などにより光吸収層および光反射層を順に形成するか、基材上に蒸着工程などにより光反射層および光吸収層を順に形成することにより製造することができるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0100】
(カラーフィルム)
本明細書の一実施態様において、前記色発現層はカラーフィルムをさらに含む。
【0101】
本明細書の一実施態様において、前記装飾部材は、前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面、前記光吸収層と前記光反射層との間、または前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に、カラーフィルムをさらに含む。前記カラーフィルムは、基材の役割を果たすこともできる。例えば、基材として使用可能なものに、染料または顔料を添加することでカラーフィルムとして用いられることができる。
【0102】
本明細書の一実施態様において、前記カラーフィルムは、前記カラーフィルムが備えられていない場合に比べて、前記カラーフィルムが存在する場合に、前記色発現層の色座標CIE L*a*b*におけるL*a*b*の空間での距離である色差△E*abが1を超えるようにするものであれば特に限定されない。
【0103】
色の表現はCIE L*a*b*で表現可能であり、色差は、L*a*b*の空間での距離(△E
*ab)を利用して定義されることができる。具体的に、
【数11】
であり、0<△E
*ab<1の範囲内では、観察者が色差を認知することができない[参考文献:Machine Graphics and Vision 20(4):383-411]。したがって、本明細書では、カラーフィルムの追加による色差を△E
*ab>1と定義することができる。
【0104】
図11は、カラーフィルムを含む色発現層を示した図であって、
図11の(a)に、光反射層201、光吸収層301、およびカラーフィルム401が順に積層された構造、
図11の(b)に、光反射層201、カラーフィルム401、および光吸収層301が順に積層された構造、
図11の(c)に、カラーフィルム401、光反射層201、および光吸収層301が順に積層された構造を例示した。
【0105】
本明細書の一実施態様において、前記基材が前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムが前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に位置する場合、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光反射層との間、または前記基材の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられることができる。他の一例として、前記基材が前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムが前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に位置する場合、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光吸収層との間、または前記基材の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられることができる。
【0106】
本明細書の一実施態様において、前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に基材が備えられ、カラーフィルムがさらに備えられる。
図12の(a)には、カラーフィルム401が光吸収層301の光反射層201側の反対面に備えられた構造、
図12の(b)には、カラーフィルム401が光吸収層301と光反射層201との間に備えられた構造、
図12の(c)には、カラーフィルム401が光反射層201と基材101との間に備えられた構造、
図12の(d)には、カラーフィルム401が基材101の光反射層201側の反対面に備えられた構造を示している。
図12の(e)には、カラーフィルム401a、401b、401c、401dが、それぞれ光吸収層301の光反射層201側の反対面、光吸収層301と光反射層201との間、光反射層201と基材101との間、および基材101の光反射層201側の反対面に備えられた構造を例示しているが、これらにのみ限定されるものではなく、カラーフィルム401a、401b、401c、401dのうち1~3個は省略されてもよい。
【0107】
本明細書の一実施態様において、前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に基材が備えられ、カラーフィルムがさらに備えられる。
図13の(a)には、カラーフィルム401が基材101の光吸収層301側の反対面に備えられた構造、
図13の(b)には、カラーフィルム401が基材101と光吸収層301との間に備えられた構造、
図13の(c)には、カラーフィルム401が光吸収層301と光反射層201との間に備えられた構造、
図13の(d)には、カラーフィルム401が光反射層201の光吸収層301側の反対面に備えられた構造を示している。
図13の(e)には、カラーフィルム401a、401b、401c、401dが、それぞれ基材101の光吸収層301側の反対面、基材101と光吸収層301との間、光吸収層301と光反射層201との間、および光反射層201の光吸収層301側の反対面に備えられた構造を例示しているが、これらにのみ限定されるものではなく、カラーフィルム401a、401b、401c、401dのうち1~3個は省略されてもよい。
【0108】
図12(b)と
図13(c)のような構造は、カラーフィルムの可視光透過率が0%を超えると、光反射層でカラーフィルムを通過して入射した光を反射することができるため、光吸収層と光反射層の積層による色相実現が可能である。
【0109】
図12(c)、
図12(d)、および
図13(d)のような構造では、カラーフィルムの追加による色差変化を認識できるように、光反射層201のカラーフィルムから発現される色相の光透過率が1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上であることが好ましい。このような可視光線透過率の範囲で、透過された光がカラーフィルムによる色相と混合されることができるためである。
【0110】
本明細書の一実施態様において、前記カラーフィルムは、1枚、または同種または異種が2枚以上積層された状態で備えられることができる。
【0111】
前記カラーフィルムとしては、上述の光反射層および光吸収層の積層構造から発現される色相とともに組み合わされ、所望の色相を発現することができるものが使用可能である。例えば、顔料および染料のうち1種または2種以上がマトリックス樹脂中に分散されて色相を呈するカラーフィルムが使用できる。上記のようなカラーフィルムは、カラーフィルムが備えられ得る位置にカラーフィルム形成用組成物を直接コーティングして形成してもよく、別の基材にカラーフィルム形成用組成物をコーティングするか、キャスティング、押出などの公知の成形方法によりカラーフィルムを製造した後、カラーフィルムが備えられ得る位置にカラーフィルムを配置または付着する方法を用いてもよい。コーティング方法としては、湿式コーティングまたは乾式コーティングが用いられることができる。
【0112】
前記カラーフィルムに含まれ得る顔料および染料としては、最終的な装飾部材から所望の色相を達成することができるものとして、当技術分野において公知のものなどから選択されることができ、赤色系、黄色系、紫色系、青色系、ピンク色系などの顔料および染料のうち1種または2種以上が使用できる。具体的に、ペリノン(perinone)系赤色染料、アントラキノン系赤色染料、メチン系黄色染料、アントラキノン系黄色染料、アントラキノン系紫色染料、フタロシアニン系青色染料、チオインジゴ(thioindigo)系ピンク色染料、イソインジゴ(isoindigo)系ピンク色染料などの染料が単独でまたは組み合わされて用いられることができる。カーボンブラック、銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)、C.I.ピグメントレッド112、ピグメントブルー、イソインドリンイエローなどの顔料が単独でまたは組み合わされて用いられてもよい。上記のような染料または顔料としては、市販のものが使用でき、例えば、Ciba ORACET社、チョグァンペイント(株)などの材料が使用可能である。前記染料または顔料の種類およびこれらの色相は例示にすぎず、公知の染料または顔料が多様に使用可能であり、これにより、さらに様々な色相を実現することができる。
【0113】
前記カラーフィルムに含まれるマトリックス樹脂としては、透明フィルム、プライマー層、接着層、コーティング層などの材料として公知されている材料が使用でき、特にその材料に限定されない。例えば、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ウレタン系樹脂、線状オレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂などの種々の材料が選択されることができ、前記例示された材料の共重合体または混合物も使用可能である。
【0114】
前記カラーフィルムが、前記光反射層または前記光吸収層よりも装飾部材の観察位置に近く配置された場合、例えば、
図12の(a)、(b)、
図13の(a)、(b)、(c)のような構造では、前記カラーフィルムは、光反射層、光吸収層、または光反射層と光吸収層の積層構造から発現される色相の光透過率が1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上であることが好ましい。これにより、カラーフィルムから発現される色相と、光反射層、光吸収層、またはこれらの積層構造から発現される色相がともに組み合わされて所望の色相を達成することができる。
【0115】
前記カラーフィルムの厚さは特に限定されず、所望の色相を呈することができれば、当技術分野において通常の知識を有する者が厚さを選択して設定することができる。例えば、カラーフィルムの厚さは、500nm~1mmであることができる。
【0116】
(パターン層)
本明細書の一実施態様において、前記色発現層または基材がパターン層を含むことができる。
【0117】
本明細書の一実施態様において、前記基材はパターン層を含み、前記パターン層は、前記色発現層に隣接して備えられる。
【0118】
本明細書において、前記パターン層が前記色発現層に隣接して備えられるということは、前記パターン層が前記色発現層に直接接することを意味し得る。例えば、前記パターン層が前記色発現層の光反射層に直接接するか、前記パターン層が前記色発現層の光吸収層に直接接することができる。
【0119】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層は、非対称構造の断面を有する凸部または凹部形状を含む。
【0120】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層は、非対称構造の断面を有する凸部形状を含む。
【0121】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層は、非対称構造の断面を有する凹部形状を含む。
【0122】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層は、非対称構造の断面を有する凸部形状および非対称構造の断面を有する凹部形状を含む。
【0123】
本明細書において、「断面」とは、前記凸部または凹部を何れか一方向に切断した時の面を意味する。例えば、断面とは、前記装飾部材を地面上においたときに、前記地面に平行な方向または地面に垂直な方向に前記凸部または凹部を切断した時の面を意味し得る。前記実施態様に係る装飾部材のパターン層の凸部または凹部形状の表面は、地面に垂直な方向の断面の少なくとも1つが非対称構造を有することを特徴とする。
【0124】
本明細書において、「非対称構造の断面」とは、断面の縁で構成された図形が、線対称性または点対称性を有しない構造であることを意味する。線対称性とは、ある図形を、一直線を中心に対称させたときに重なり合う特性を有することを意味する。点対称性とは、ある図形を、一点を基準として180度回転したときに、本来の図形に完全に重なり合う対称性を有することを意味する。ここで、前記非対称構造の断面の縁は、直線、曲線、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0125】
本明細書において、前記「凸部形状」は「凸部単位体形状」を1つ以上含み、前記「凹部形状」は「凹部単位体形状」を1つ以上含むことができる。前記凸部単位体形状または凹部単位体形状は、2つの傾斜辺(第1傾斜辺および第2傾斜辺)を含む形状を意味し、3つ以上の傾斜辺を含む形状ではない。
図21を参照すると、円C1の凸部形状P1は、第1傾斜辺および第2傾斜辺を含む1つの凸部単位体形状である。しかし、円C2に含まれる凸部形状は、凸部単位体形状を2つ含むものである。前記第1傾斜辺は、それぞれ凸部形状または凹部形状の左側傾斜辺と定義することができ、前記第2傾斜辺は、それぞれ凸部形状または凹部形状の右側傾斜辺を意味し得る。
【0126】
上記のように、パターン層の表面に含まれる非対称構造の断面を有する凸部または凹部により、前記装飾部材が異色性を発現することができる。異色性とは、見る角度によって異なる色相が観測されることを意味する。色の表現は、CIE L*a*b*で表現可能であり、色差は、L*a*b*空間での距離(△E
*ab)を利用して定義されることができる。具体的に、色差は
【数12】
であり、0<△E
*ab<1の範囲内では、観察者が色差を認識することができない[参考文献:Machine Graphics and Vision 20(4):383-411]。したがって、本明細書では、異色性を△E
*ab>1と定義することができる。
【0127】
本明細書の一実施態様において、前記色発現層は、△E*ab>1の異色性を有する。具体的に、前記色発現層の色座標CIE L*a*b*におけるL*a*b*の空間での距離である色差△E*abが1を超えることができる。
【0128】
本明細書の一実施態様において、前記装飾部材は、△E*ab>1の異色性を有する。具体的に、前記装飾部材の全体で、色座標CIE L*a*b*におけるL*a*b*の空間での距離である色差△E*abが1を超えることができる。
【0129】
図14は、本明細書の一実施態様に係るパターン層を含む装飾部材を例示的に示す図である(基材および保護層不図示)。前記パターン層の表面は、前記凸部P1の間に、前記凸部に比べて高さが小さい第2凸部P2が配置された形状を有することができる。以下、第2凸部の前に説明された凸部を、第1凸部と称することができる。
【0130】
図15は、本明細書の一実施態様に係るパターン層を含む装飾部材を例示的に示す図である(色発現層不図示)。前記パターン層の表面は、前記凸部P1の先端部(尖っている部分)に、前記凸部に比べて高さが小さい凹部P3をさらに含む形状を有することができる。このような装飾部材は、画像の色が、見る角度によって繊細に変わる効果を奏することができる。
【0131】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層は凸部または凹部の形状を含み、各形状が逆像の構造で配列されたものであることができる。
【0132】
図16は、本明細書の一実施態様に係るパターン層を含む装飾部材を例示的に示す図である。
図16のa)に示したように、前記パターン層の表面は、複数の凸部が180度の逆像の構造で配列された形状を有することができる。具体的に、前記パターン層の表面は、第1傾斜面に比べて第2傾斜面の傾斜角が大きい第1領域C1と、第1傾斜面に比べて第2傾斜面の傾斜角が大きい第2領域C2と、を含むことができる。一例示において、前記第1領域に含まれる凸部を第1凸部P1と称し、前記第2領域に含まれる凸部を第4凸部P4と称することができる。前記第1凸部P1および第4凸部P4の高さ、幅、傾斜角、および第1および第2傾斜面が成す角度は、前記凸部P1の項目で述べた内容が同様に適用可能である。
図16の(b)に示したように、前記第1領域および第2領域の何れか1つの領域は画像またはロゴに対応し、他の1つの領域は背景部分に対応するように構成することができる。かかる装飾部材は、画像またはロゴの色が、見る角度によって繊細に変わる効果を奏することができる。また、画像またはロゴ部分と背景部分が、見る方向によって色が互いに変わって見える装飾効果を奏することができる。
【0133】
本明細書の一実施態様において、前記第1領域および第2領域は、それぞれ複数の凸部を含むことができる。前記第1領域および第2領域の幅および凸部の個数は、目的とする画像またはロゴの大きさを考慮して適宜調節可能である。
【0134】
本明細書において、凸部P1の傾斜角a2、a3は、凸部P1の傾斜面S1、S2とパターン層の水平面とが成す角度を意味し得る。本明細書において、特に言及しない限り、一図面において、第1傾斜面は凸部の左側傾斜面と定義することができ、第2傾斜面は凸部の右側傾斜面を意味し得る。
【0135】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層の凸部P1は、断面が多角形であり、一方向に延びる柱状を有することができる。一例示において、前記凸部P1の断面は、三角形、または三角形の先端部(尖っている部分または頂点部分)に小さい凹部をさらに含む形状を有することができる。
【0136】
本明細書の一実施態様において、前記第1傾斜面S1と第2傾斜面S2が成す角度a1は、80度~100度の範囲内であることができる。前記角度a1は、具体的に、80度以上、83度以上、86度以上、または89度以上であり、100度以下、97度以下、94度以下、または91度以下であることができる。前記角度は、第1傾斜面と第2傾斜面からなる頂点の角度を意味し得る。前記第1傾斜面と第2傾斜面が互いに頂点を成さない場合は、前記第1傾斜面と第2傾斜面を仮想で延ばして頂点を成すようにした状態の頂点の角度を意味し得る。
【0137】
本明細書の一実施態様において、前記凸部P1の第1傾斜面の傾斜角a2と第2傾斜面の傾斜角a3との差は、30度~70度の範囲内であることができる。前記第1傾斜面の傾斜角a2と第2傾斜面の傾斜角a3との差は、例えば、30度以上、35度以上、40度以上、または45度以上であり、70度以下、65度以下、60度以下、または55度以下であることができる。第1傾斜面と第2傾斜面の傾斜角の差が前記範囲内である場合、方向による色表現を実現する点から有利である。すなわち、異色性がさらに大きく現れることができる。
【0138】
本明細書の一実施態様において、前記凸部P1の高さH1は、5μm~30μmであることができる。凸部の高さが前記範囲内である場合、生産工程の点から有利である。本明細書において、凸部の高さは、前記パターン層の水平面を基準として凸部の最も高い部分と最も低い部分との最短距離を意味し得る。この凸部の高さについての説明は、上述の凹部の深さにも同様の数値範囲が適用可能である。
【0139】
本明細書の一実施態様において、前記凸部P1の幅W1は、10μm~90μmであることができる。凸部の幅が前記範囲内である場合、パターンを加工および形成するにおける工程の点から有利である。前記凸部P1の幅W1は、例えば、10μm以上、15μm以上、20μm以上、または25μm以上であり、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、または35μm以下であることができる。この幅についての説明は、凸部だけでなく、上述の凹部にも適用可能である。
【0140】
本明細書の一実施態様において、前記凸部P1の間の間隔は、0μm~20μmであることができる。本明細書において、凸部の間の間隔は、隣接する2つの凸部において、1つの凸部が終わる地点と、他の1つの凸部が始まる地点との最短距離を意味し得る。前記凸部の間の間隔が適切に保持される場合、装飾部材を凸部の傾斜角がより大きい傾斜面の方から見た時に、相対的に明るい色を示さなければならないのに、反射領域がシェーディングにより暗く見える現象を改善することができる。前記凸部の間には、後述のように、前記凸部に比べて高さがより小さい第2凸部が存在することができる。この間隔についての説明は、凸部だけでなく、上述の凹部にも適用可能である。
【0141】
本明細書の一実施態様において、前記第2凸部P2の高さH2は、前記第1凸部P1の高さH1の1/5~1/4の範囲を有することができる。例えば、前記第1凸部と第2凸部の高さの差(H1-H2)は、10μm~30μmであることができる。第2凸部の幅W2は、1μm~10μmであることができる。前記第2凸部の幅W2は、具体的に、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、または4.5μm以上であり、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、または5.5μm以下であることができる。
【0142】
本明細書の一実施態様において、前記第2凸部は、傾斜角が互いに異なる2つの傾斜面S3、S4を有することができる。前記第2凸部の前記2つの傾斜面が成す角度a4は、20度~100度であることができる。前記角度a4は、具体的に、20度以上、30度以上、40度以上、50度以上、60度以上、70度以上、80度以上、または85度以上であり、100度以下または95度以下であることができる。前記第2凸部の両傾斜面の傾斜角の差(a6-a5)は、0度~60度であることができる。前記傾斜角の差(a6-a5)は、0度以上、10度以上、20度以上、30度以上、40度以上、または45度以上であり、60度以下または55度以下であることができる。前記第2凸部の寸法が前記範囲内である場合、傾斜面の角度が大きい側面で光の流入を増加させ、明るい色相を形成することができるという点から有利である。
【0143】
本明細書の一実施態様において、前記凹部P3の高さH3は,3μm~15μmであることができる。前記凹部P3の高さH3は、具体的に、3μm以上であり、15μm以下、10μm以下、5μm以下であることができる。前記凹部は、傾斜角が互いに異なる2つの傾斜面S5、S6を有することができる。前記凹部の前記2つの傾斜面が成す角度a7は、20度~100度であることができる。前記角度a7は、具体的に、20度以上、30度以上、40度以上、50度以上、60度以上、70度以上、80度以上、または85度以上であり、100度以下または95度以下であることができる。前記凹部の両傾斜面の傾斜角の差(a9-a8)は、0度~60度であることができる。前記傾斜角の差(a9-a8)は、0度以上、10度以上、20度以上、30度以上、40度以上、または45度以上であり、60度以下または55度以下であることができる。前記凹部の寸法が前記範囲内である場合、鏡面で色感の追加が可能であるという点から有利である。
【0144】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層は凸部形状を含み、前記凸部形状の断面は第1傾斜辺および第2傾斜辺を含み、前記第1傾斜辺および第2傾斜辺の形態は互いに同一でも異なってもよく、それぞれ直線状または曲線状である。
【0145】
図17は、本明細書の一実施態様に係るパターン層を含む装飾部材を例示的に示す図である。パターン層の断面は凸部形状を有し、凸部形状の断面は、第1傾斜辺を含む第1領域D1と、第2傾斜辺を含む第2領域D2と、を含む。前記第1傾斜辺および第2傾斜辺は直線状である。第1傾斜辺と第2傾斜辺が成す角度c3は、75度~105度、または80度~100度であることができる。第1傾斜辺と地面が成す角度c1と、第2傾斜辺と地面が成す角度c2は異なる。例えば、c1およびc2の組み合わせは、20度/80度、10度/70度、または30度/70度であることができる。
【0146】
図18は、本明細書の一実施態様に係るパターン層を含む装飾部材を例示的に示す図である。パターン層の断面は凸部形状を有し、凸部形状の断面は、第1傾斜辺を含む第1領域E1と、第2傾斜辺を含む第2領域E2と、を含む。前記第1傾斜辺および第2傾斜辺の何れか1つ以上は曲線状であることができる。例えば、第1傾斜辺と第2傾斜辺の両方が曲線状であってもよく、第1傾斜辺は直線状であり、第2傾斜辺は曲線状であってもよい。第1傾斜辺は直線状であり、第2傾斜辺は曲線状である場合、角度c1が角度c2より大きいことができる。
図18には、第1傾斜辺が直線状であり、第2傾斜辺が曲線状であることを示している。曲線状を有する傾斜辺が地面と成す角度は、傾斜辺と地面が当接する地点から、第1傾斜辺と第2傾斜辺が接する地点まで任意の直線を引いたときに、その直線と地面が成す角度から計算されることができる。曲線状の第2傾斜辺は、パターン層の高さによって屈曲度が異なり、曲線が曲率半径を有することができる。前記曲率半径は、凸部形状の幅(E1+E2)の10倍以下であることができる。
図18の(a)は、曲線の曲率半径が凸部形状の幅の2倍であることを示した図であり、
図18の(b)は、曲線の曲率半径が凸部形状の幅の1倍であることを示した図である。凸部の幅(E1+E2)に対する、曲率のある部分(E2)の割合は、90%以下であることができる。
図18の(a)および(b)には、前記凸部の幅(E1+E2)に対する、曲率のある部分(E2)の割合が60%であることを示している。
【0147】
本明細書の一実施態様において、前記凸部形状の断面は、三角形または四角形の多角形の形態であることができる。
【0148】
図19は、本明細書の一実施態様に係るパターン層を含む装飾部材を例示的に示す図である。パターン層の断面は凸部形状を有し、凸部形状の断面は四角形の形態であることができる。前記四角形の形態は、一般的な四角形の形態であることができ、各傾斜辺の傾斜角が互いに異なるものであれば、特に制限されない。前記四角形の形態は、三角形の一部を切断して残った形態であることができる。例えば、一対の対辺が平行な四角形である台形、または互いに平行な対辺の対が存在しない四角形の形態であることができる。凸部形状の断面は、第1傾斜辺を含む第1領域F1と、第2傾斜辺を含む第2領域F2と、第3傾斜辺を含む第3領域F3と、を含む。第3傾斜辺は、地面に平行であってもよく、平行ではなくてもよい。例えば、四角形の形態が台形である場合、第3傾斜辺は地面に平行である。第1傾斜辺~第3傾斜辺の何れか1つ以上は曲線状であることができ、曲線状についての内容は上述のとおりである。F1+F2+F3を全て合わせた長さが、凸部形状の幅と定義されることができ、幅についての内容は上述のとおりである。
【0149】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層は、2以上の凸部形状を含み、各凸部形状の間の一部または全部に、平坦部をさらに含むことができる。
【0150】
図20は、本明細書の一実施態様に係るパターン層を含む装飾部材を例示的に示す図である。パターン層の各凸部の間に平坦部を含むことができる。前記平坦部は、凸部が存在しない領域を意味する。パターン層が平坦部をさらに含むことを除き、それ以外の構成要素(D1、D2、c1、c2、c3、第1傾斜辺、および第2傾斜辺)についての説明は上述のとおりである。一方、D1+D2+G1を全て合わせた長さが、パターンのピッチと定義されるが、上述のパターンの幅とは異なる。
【0151】
本明細書の一実施態様において、前記凸部または凹部形状の表面は、前記凸部または凹部形状を2以上含む。このように2以上の凸部または凹部形状の表面を有することで、異色性をさらに大きくすることができる。この際、2以上の凸部または凹部形状は、同一の形状が繰り返された形態であってもよいが、互いに異なる形状が含まれてもよい。
【0152】
本明細書の一実施態様において、前記非対称構造の断面を有する凸部または凹部形状は、少なくとも1つの断面が、傾斜角が異なるか、屈曲度が異なるか、辺の形態が異なる2以上の辺を含む。例えば、少なくとも1つの断面を構成する辺のうち2つの辺が、互いに傾斜角が異なるか、屈曲度が異なるか、辺の形態が異なる場合に、前記凸部または凹部は非対称構造を有することになる。
【0153】
本明細書の一実施態様において、前記凸部または凹部の形状は、少なくとも1つの断面が、傾斜角が互いに異なる第1傾斜辺および第2傾斜辺を含む。
【0154】
本明細書において、他に言及しない限り、「辺」は直線であってもよいが、これに限定されず、全部または一部が曲線であってもよい。例えば、辺は、円や楕円の弧の一部、波構造、ジグザグなどの構造を含み得る。
【0155】
本明細書において、前記辺が円や楕円の弧の一部を含む場合、その円や楕円は、曲率半径を有することができる。前記曲率半径は、曲線の極めて短い区間を円弧に換算したときに、円弧の半径と定義されることができる。
【0156】
本明細書において、他に言及しない限り、「傾斜辺」は、前記装飾部材を地面においたときに、地面に対して辺が成す角度が0度超過90度以下である辺を意味する。この際、辺が直線である場合は、直線と地面が成す角度を測定することができる。辺に曲線が含まれている場合は、前記装飾部材を地面においたときに、前記辺のうち地面と最も近い地点と、前記面のうち地面から最も遠い地点とを最短距離で連結した直線が地面と成す角度を測定することができる。
【0157】
本明細書において、他に言及しない限り、傾斜角とは、前記装飾部材を地面においたときに、前記パターン層を構成する面または辺が地面と成す角度であって、0度超過90度以下である。または、パターン層を構成する面または辺が地面に接する地点(a´)と、パターン層を構成する面または辺が地面から最も遠く離れた地点(b´)とを互いに連結したときに生じる線分(a´-b´)と地面が成す角度を意味し得る。
【0158】
本明細書において、他に言及しない限り、屈曲度とは、辺または面の連続した地点での接線の勾配の変化程度を意味する。辺または面の連続した地点での接線の勾配の変化が大きいほど、屈曲度が大きい。
【0159】
本明細書において、前記凸部は凸部単位体形状であり、前記凹部は凹部単位体形状であることができる。前記凸部単位体形状または凹部単位体形状は、2つの傾斜辺(第1傾斜辺および第2傾斜辺)を含む形状を意味し、3つ以上の傾斜辺を含む形状ではない。
図21を参照すると、円C1の凸部P1は、第1傾斜辺および第2傾斜辺を含む1つの凸部単位体形状である。しかし、円C2に含まれる形状は、凸部単位体形状を2つ含むものである。前記第1傾斜辺は、凸部または凹部の左側傾斜辺と定義することができ、前記第2傾斜辺は、凸部または凹部の右側傾斜辺を意味し得る。
【0160】
本明細書の一実施態様において、前記第1傾斜面と第2傾斜面が成す角度a1は、80度~100度の範囲内であることができる。前記角度a1は、具体的に、80度以上、83度以上、86度以上、または89度以上であり、100度以下、97度以下、94度以下、または91度以下であることができる。前記角度は、第1傾斜面と第2傾斜面からなる頂点の角度を意味し得る。前記第1傾斜面と第2傾斜面が互いに頂点を成さない場合は、前記第1傾斜面と第2傾斜面を仮想で延ばして頂点を成すようにした状態の頂点の角度を意味し得る。
【0161】
本明細書の一実施態様において、前記凸部P1の第1傾斜辺の傾斜角a2と第2傾斜辺の傾斜角a3との差は、30度~70度の範囲内であることができる。前記第1傾斜辺の傾斜角a2と第2傾斜辺の傾斜角a3との差は、例えば、30度以上、35度以上、40度以上、または45度以上であり、70度以下、65度以下、60度以下、または55度以下であることができる。第1傾斜辺と第2傾斜辺の傾斜角の差が前記範囲内である場合、方向による色表現を実現する点から有利である。
【0162】
図22は、本明細書の一実施態様に係る装飾部材のパターン層およびその製造方法を例示的に示した図である。パターン層の断面は凸部形状を有し、凸部形状の断面は、ABO1三角形状の特定領域を除去した形態であることができる。前記除去される特定領域を決定する方法は、下記のとおりである。傾斜角c1およびc2についての内容は上述のとおりである。
【0163】
1)AO1線分をL1:L2の割合で分ける、AO1線分上の任意の点P1を設定する。
2)BO1線分をm1:m2の割合で分ける、BO1線分上の任意の点P2を設定する。
3)AB線分をn1:n2の割合で分ける、AB線分上の任意の点O2を設定する。
4)O2O1線分をo1:o2の割合で分ける、O1O2線分上の任意の点P3を設定する。
この際、L1:L2、m1:m2、n1:n2、およびo1:o2の割合は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立に、1:1000~1000:1であることができる。
5)P1O1P2P3多角形が成す領域を除去する。
6)ABP2P3P1多角形が成す形状を凸部の断面とする。
【0164】
前記パターン層は、L1:L2、m1:m2、n1:n2、およびo1:o2の割合を調節することで、種々の形態に変形可能である。例えば、前記L1およびm1が大きくなる場合、パターンの高さが高くなり、前記o1が大きくなる場合は、凸部上に形成される凹部の高さが小さくなり、n1の割合を調節することで、凸部に形成される凹部の最低地点の位置を、凸部の傾斜辺の何れか一方に近いように調節することができる。
【0165】
図23は、
図22による装飾部材のパターン層の製造方法により製造されたパターン層を例示的に示した図である。前記L1:L2、m1:m2、およびo1:o2の割合が全て同一である場合、断面の形状が台形の形態であることができる。台形の高さha、hbは、前記L1:L2の割合を調節することで変わり得る。例えば、
図23の(a)は、前記L1:L2の割合が1:1であり、
図23の(b)は、前記L1:L2の割合が2:1である場合に製造されるパターン層を示した図である。
【0166】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層の表面の凸部または凹部形状は、前記パターン層の表面の外側に突出したコーン(cone)状の凸部、または前記パターン層の表面の内側に凹陥したコーン(cone)状の凹部であることができる。
【0167】
本明細書の一実施態様において、前記コーン状は、円錐、楕円錐、または多角錐の形態を含む。ここで、多角錐の底面の形態としては、三角形、四角形、突出点が5個以上の星状などが挙げられる。一例によると、装飾部材を地面においたときに、前記パターン層の表面がコーン状の凸部形状を有する場合、前記凸部形状の前記地面に対する垂直断面の少なくとも1つは、三角形状であることができる。他の一例によると、装飾部材を地面においたときに、前記パターン層の表面がコーン状の凹部形状を有する場合、前記凹部形状の前記地面に対する垂直断面の少なくとも1つは、逆三角形状であることができる。
【0168】
本明細書の一実施態様において、前記コーン状の凸部またはコーン状の凹部形状が、非対称構造の断面を少なくとも1つ有することができる。例えば、前記コーン状の凸部または凹部を、前記凸部または凹部形状の表面側から観察した時に、コーンの頂点を基準として360度回転時に同一の形態が2つ以下存在する場合、異色性が発現されるにおいて有利である。
図24は、コーン状の凸部形状を、前記凸部形状の表面側から観察して示した図であって、a)は何れも対称構造のコーン状を示した図であり、b)は非対称構造のコーン状を例示した図である。
【0169】
前記装飾部材を地面においたときに、対称構造のコーン状は、地面に水平な方向への断面(以下、水平断面という)が、円または各辺の長さが等しい正多角形であり、コーンの頂点が、地面に対する水平断面の重心点の前記断面に垂直な線上に存在する構造である。しかし、非対称構造の断面を有するコーン状は、コーン状の凸部または凹部形状の表面側から観察した時に、コーンの頂点の位置が、コーンの水平断面の重心点ではない点の垂直線上に存在する構造であるか、コーンの水平断面が、非対称構造の多角形または楕円である構造である。コーンの水平断面が非対称構造の多角形である場合は、多角形の辺または角の少なくとも1つを、それ以外と異なるように設計することができる。
【0170】
例えば、
図25のように、コーンの頂点の位置を変更することができる。具体的に、
図25の第1の図のように、コーン状の凸部形状の表面側から観察した時に、コーンの頂点を、コーンの地面に対する水平断面の重心点O1の垂直線上に位置するように設計する場合、コーンの頂点を基準として360度回転時に、4つの同一の構造を得ることができる(4 fold symmetry)。しかし、コーンの頂点を、地面に対する水平断面の重心点O1ではない位置O2に設計することで、対称構造が破れる。地面に対する水平断面の一辺の長さをx、コーンの頂点の移動距離をaおよびb、コーンの頂点(O1またはO2)から地面に対する水平断面まで垂直に連結した線の長さであるコーン状の高さをh、水平断面とコーンの側面が成す角度をθnとしたときに、
図25の面1、面2、面3、および面4について、下記のようにコサイン値が得られる。
【数13】
【0171】
この際、θ1とθ2は同一であるため異色性がない。しかし、θ3とθ4は異なり、│θ3-θ4│は二つの色間の色差(△E*ab)を意味するため、異色性を示すことができる。ここで、│θ3-θ4│>0である。このように、コーンの地面に対する水平断面と側面が成す角度を利用して、対称構造がどれくらい破れているか、すなわち、非対称の程度を定量的に示すことができる。このような非対称の程度を示す数値は、異色性の色差に比例する。
【0172】
図26は、最高点が線状である凸部の形状を有する表面を示した図であって、a)は、異色性を発現しない凸部を有するパターンを例示した図であり、b)は、異色性を発現する凸部を有するパターンを例示した図である。
図26のa)のX-X´断面は二等辺三角形または正三角形であり、26のb)のY-Y´断面は側辺の長さが互いに異なる三角形である。
【0173】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層は、最高点が線状の凸部形状、または最低点が線状の凹部形状の表面を有する。前記線状は、直線状であってもよく、曲線状であってもよく、曲線と直線の両方を含む形態や、ジグザグ形態であってもよい。これらを
図27~
図29に示した。最高点が線状である凸部、または最低点が線状である凹部の形状の表面を、前記凸部または凹部形状の表面側から観察した時に、前記凸部または凹部の地面に対する水平断面の重心点を基準として360度回転時に、同一の形態が1つしか存在しない場合、異色性を発現するにおいて有利である。
【0174】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層は、コーン状の先端部が切断された構造の凸部または凹部形状の表面を有する。
図30に、装飾部材を地面においたときに、地面に垂直な断面が非対称である逆台形の凹部を実現した写真を示している。このような非対称断面は、台形または逆台形の形態であることができる。この場合にも、非対称構造の断面により異色性を発現することができる。
【0175】
上記で例示した構造の他にも、
図31のような種々の凸部または凹部形状の表面を実現することができる。
【0176】
本明細書において、他に言及しない限り、「面」は平面であってもよいが、これに限定されず、全部または一部が曲面であってもよい。例えば、面に垂直な方向への断面の形態が、円や楕円の弧の一部、波構造、ジグザグなどである構造を含み得る。
【0177】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層は対称構造のパターンを含む。対称構造としては、プリズム構造、レンチキュラレンズ構造などが挙げられる。
【0178】
本明細書の一実施態様において、前記装飾部材は、前記光吸収層の前記光反射層に対向する面、前記光吸収層と前記光反射層との間、または前記光反射層の前記光吸収層に対向する面に、非対称構造の断面を有する凸部または凹部形状を含むパターン層を含む。
【0179】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層は、凸部または凹部形状が形成された表面の反対側の表面に平坦部を有し、前記平坦部は基材上に形成されていることができる。前記基材層としては、プラスチック基材を用いることができる。プラスチック基板としては、TAC(triacetyl cellulose);ノルボルネン誘導体などのCOP(cyclo olefin copolymer);PMMA(poly(methyl methacrylate);PC(polycarbonate);PE(polyethylene);PP(polypropylene);PVA(polyvinyl alcohol);DAC(diacetyl cellulose);Pac(polyacrylate);PES(poly ether sulfone);PEEK(polyetheretherketon);PPS(polyphenylsulfone)、PEI(polyetherimide);PEN(polyethylenemaphthatlate);PET(polyethyleneterephtalate);PI(polyimide);PSF(polysulfone);PAR(polyarylate)、または非晶質フッ素樹脂などが使用できるが、これに制限されるものではない。
【0180】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層は、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂を含むことができる。前記硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができる。前記光硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコン樹脂、ケイ素樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリエステル樹脂、またはメラミン樹脂などを用いることができるが、これに制限されるものではない。紫外線硬化性樹脂としては、代表的に、アクリル重合体、例えば、ポリエステルアクリレート重合体、ポリスチレンアクリレート重合体、エポキシアクリレート重合体、ポリウレタンアクリレート重合体またはポリブタジエンアクリレート重合体、シリコンアクリレート重合体、またはアルキルアクリレート重合体などを用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0181】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層の内部または少なくとも一面に、有色染料(color dye)をさらに含むことができる。前記パターン層の少なくとも一面に有色染料を含むということは、例えば、前記パターン層の平坦部側に備えられた上述の基材層に有色染料が含まれている場合を意味し得る。
【0182】
本明細書の一実施態様において、前記有色染料としては、アントラキノン(anthraquinone)系染料、フタロシアニン(phthalocyanine)系染料、チオインジゴ(thioindigo)系染料、ペリノン(perinone)系染料、イソシンジゴ(isoxindigo)系染料、メタン(methane)系染料、モノアゾ(monoazo)系染料、および1:2金属錯体(1:2 metal complex)系染料などを用いることができる。
【0183】
本明細書の一実施態様において、前記パターン層が内部に有色染料を含む場合、前記硬化性樹脂に染料を添加して適用されることができる。前記パターン層の下部に有色染料をさらに含む場合、染料が含まれた層を基材層の上部または下部にコーティングする方式により適用されることができる。
【0184】
本明細書の一実施態様において、前記有色染料の含量は、例えば、0~50wt%であることができる。前記有色染料の含量は、パターン層または装飾部材の透過度およびヘイズ範囲を決定することができ、透過度は、例えば、20%~90%であり、ヘイズは、例えば、1%~40%であることができる。
【0185】
本明細書の一実施態様において、前記色発現層は、装飾部材を見る時における色の金属質感と奥行き感を付与することができる。前記色発現層は、前記装飾部材の画像が見る角度によって種々の色相に見えるようにする。これは、前記パターン層を通過して無機物層の表面で反射される光の波長が、入射する光の波長によって変化するためである。
【0186】
前記色発現層は、上述のパターン層の表面と同一の凸部または凹部を有することができる。前記色発現層は、上述のパターン層の表面と同一の傾斜度を有することができる。
【0187】
本明細書の一実施態様において、前記装飾部材は、前記基材と前記色発現層との間、前記色発現層の前記基材に対向する面、または前記基材の前記色発現層に対向する面に備えられた保護層を含む。
【0188】
本明細書の一実施態様において、前記装飾部材は、前記基材と前記パターン層との間、前記パターン層と前記光反射層との間、前記光反射層と前記光吸収層との間、および前記光吸収層の光反射層に対向する面の反対面の何れか1つ以上に備えられた保護層を含む。すなわち、前記保護層は、装飾部材の各層の間または装飾部材の最外郭に備えられることで、装飾部材を保護する機能をする。
【0189】
本明細書において、「保護層」とは、他に定義しない限り、装飾部材の他の層を保護できる層を意味する。例えば、耐湿または耐熱環境で無機物層が劣化することを防止することができる。または、外部の要人により、無機物層またはパターン層に傷が生じることを効果的に抑え、装飾部材の異色性が効果的に発現されるようにする。
【0190】
本明細書において、「無機物層」とは、他に定義しない限り、光吸収層または光反射層を意味する。
【0191】
本明細書において、保護層が含まれている装飾部材の構造の例示は、下記のとおりである。
【0192】
例えば、基材/保護層/パターン層/光反射層/光吸収層/保護層、または基材/保護層/パターン層/光吸収層/光反射層/保護層の構造を有することができる。
【0193】
本明細書の一実施態様において、前記保護層はアルミニウム酸窒化物を含む。保護層がアルミニウム酸窒化物(AlON)を含むことで、保護層がアルミニウム酸窒化物(AlON)を含まない場合に比べて、後述の保護層の機能が増大することができる。また、アルミニウム酸窒化物の各元素の割合を調節すると、保護機能がさらに向上することができる。
【0194】
本明細書の一実施態様において、前記装飾部材は保護層をさらに含むことで、高温高湿の環境に放置されてもパターン層と無機物層の損傷が抑えられるため、劣悪な環境でも優れた装飾効果が維持されることができる。
【0195】
本明細書の装飾部材は、適用が必要な公知の対象に適用可能である。例えば、携帯用電子機器、電子製品、化粧品容器、家具、建築材などに制限されずに適用可能である。
【0196】
前記装飾部材を携帯用電子機器、電子製品、化粧品容器、家具、建築材などに適用する方式は特に制限されず、当業界で装飾フィルムを適用する方式として公知されている方式が適用可能である。前記装飾部材は、必要に応じて、粘着層をさらに含んでもよい。他の一例示において、前記装飾部材は、携帯用電子機器または電子製品に直接コーティングすることで適用されることができる。この場合、前記装飾部材を携帯用電子機器または電子製品に付着するための別の粘着層が不要である。他の一例示において、前記装飾部材は、粘着層を介して携帯用電子機器または電子製品に付着されることができる。前記粘着層としては、光学用透明接着テープ(OCA tape;optically clear adhesive tape)または接着樹脂を用いることができる。前記OCAテープまたは接着樹脂としては、当業界で公知のOCAテープまたは接着樹脂が制限されずに適用可能である。必要に応じて、前記粘着層の保護のための剥離層(release liner)がさらに備えられることができる。
【0197】
本明細書の一実施態様において、前記光反射層および光吸収層はそれぞれ、スパッタ(Sputter)方式、エバポレーション(Evaporation)方式、蒸発蒸着法、CVD(chemical vapor deposition)、湿式コーティング(wet coating)などにより、基材または基材のパターン層のパターン上に形成されることができる。特に、スパッタ方式は直進性を有するため、ターゲットの位置をティルトして凸部の両傾斜面の蒸着厚さの差を極大化することができる。
【0198】
本明細書の一実施態様において、前記光反射層および光吸収層はそれぞれ、反応性スパッタリング方法により形成されることができる。反応性スパッタリングとは、エネルギーを有するイオン(例えば、Ar+)がターゲット物質に衝撃を与え、この時にたたき出されたターゲット物質が、蒸着しようとする表面上に蒸着される方式である。この際、ベース圧力(Base Pressure)は、1.0X10-5Torr以下、6.0X10-6Torr以下、好ましくは3.0X10-6Torr以下であることができる。
【0199】
本明細書の一実施態様において、前記反応性スパッタリング方法は、プラズマガスおよび反応性ガスを含むチャンバー内で行われることができる。前記プラズマガスは、アルゴン(Ar)ガスであることができる。また、前記無機物層の形成に必要な反応性ガスは酸素(O2)および窒素(N2)であり、酸素または窒素原子を提供するためのガスであって、プラズマガスとは区分される。
【0200】
本明細書の一実施態様において、前記プラズマガスの流量は、10sccm以上300sccm以下、好ましくは20sccm以上200sccm以下であることができる。前記sccmは、Standard Cubic Centimeer Per minuteを意味する。
【0201】
本明細書の一実施態様において、前記チャンバー内のプロセス圧力(p1)は、1.0mTorr~10.0mTorr、好ましくは1.5mTorr~10.0mTorrであることができる。スパッタリングを行う時に、プロセス圧力が前記範囲より高くなると、チャンバーの内部に存在するAr粒子が多くなり、ターゲットから放出された粒子がAr粒子とぶつかってエネルギーを失うことになるため、薄膜の成長速度が低下する恐れがある。逆に低すぎるプロセス圧力が維持される場合は、Ar粒子による銅酸化物粒子のエネルギー損失は少なくなるが、高エネルギーを有する粒子によって基板が損傷されたり、保護層の品質が低下する恐れがあるという欠点がある。
【0202】
本明細書の一実施態様において、前記プラズマガスに対する反応性ガスの分率が、30%以上70%以下、好ましくは40%以上70%以下、より好ましくは50%以上70%以下であることができる。前記反応性ガスの分率は、(Q反応性ガス/(Qプラズマプロセスガス)*100%)により計算されることができる。前記Q反応性ガスは、チャンバー内における反応性ガスの流量を意味し、Qプラズマプロセスガスは、チャンバー内におけるプラズマプロセスガスの流量を意味し得る。前記数値範囲を満たす場合、上述の銅酸化物の原子の割合を所望の範囲に調節することができる。
【0203】
本明細書の一実施態様において、前記反応性スパッタリング方法の駆動電力は100W以上500W以下、好ましくは150W以上300W以下であることができる。
【0204】
本明細書の一実施態様において、前記反応性スパッタリング方法で印加される電圧の範囲は、350V以上500Vであることができる。前記電圧の範囲は、ターゲットの状態、プロセス圧力、駆動電力(プロセスパワー)、または反応性ガスの分率に応じて調節可能である。
【0205】
本明細書の一実施態様において、前記反応性スパッタリング方法の蒸着温度は、20℃以上300℃以下であることができる。前記範囲より低い温度で蒸着する場合は、ターゲットからたたき出されて基材に到着した粒子の結晶成長に必要なエネルギーが足りないため、薄膜成長の結晶性が低下するという問題があり、前記範囲より高い温度では、ターゲットから出る粒子が蒸発または揮発(re-evaporation)され、薄膜成長速度が低下するという問題があり得る。
[発明を実施するための形態]
【0206】
以下、実施例を挙げて本出願を具体的に説明するが、本明細書の範囲が下記実施例によって制限されるものではない。
【0207】
<実施例および比較例>
【0208】
実施例1
PET基材上に紫外線硬化型樹脂を塗布し、傾斜角がそれぞれ20度/70度のプリズム形態のパターン層を形成した。その後、前記パターン層上に、反応性スパッタリング法(reactive sputtering)により光吸収層および光反射層を含む色発現層を形成した。
【0209】
具体的に、反応性スパッタリング法(reactive sputtering)を用い、銅ターゲットを使用した。アルゴンガスの流量は35sccmに、酸素ガスの流量は15sccmに調節し、プロセス圧力は9mTorr、電力は200Wに維持した。これにより、下記表2の組成を有する10nmの光吸収層を形成した、その後、光吸収層上に、厚さ70nmのInをスパッタリング方式により蒸着して光反射層を形成することで、最終装飾部材を製造した。
【0210】
実施例2
光吸収層の厚さを20nmに調節したことを除き、実施例1と同様の方法により装飾部材を製造した。
【0211】
実施例3
光吸収層の厚さを30nmに調節したことを除き、実施例1と同様の方法により装飾部材を製造した。
【0212】
比較例1
光吸収層の厚さを40nmに調節したことを除き、実施例1と同様の方法により装飾部材を製造した。
【0213】
比較例2
光吸収層の厚さを50nmに調節したことを除き、実施例1と同様の方法により装飾部材を製造した。
【0214】
比較例3
光吸収層の厚さを60nmに調節したことを除き、実施例1と同様の方法により装飾部材を製造した。
【0215】
実施例4
光吸収層の厚さを70nmに調節したことを除き、実施例1と同様の方法により装飾部材を製造した。
【0216】
実施例5
光吸収層の厚さを80nmに調節したことを除き、実施例1と同様の方法により装飾部材を製造した。
【0217】
実施例6
光吸収層の厚さを90nmに調節したことを除き、実施例1と同様の方法により装飾部材を製造した。
【0218】
【0219】
<評価例(色相評価)>
前記実施例および比較例で製造された装飾部材の成分比を分析し、各厚さ毎に現れる色相を観察して、下記表3に記録した。
【0220】
【0221】
実施例の装飾部材は、暖かい色を現したが、比較例の装飾部材は、凉しい色を現した。これを
図34に示した。
【0222】
実施例および比較例を比較すると、光吸収層の組成が同一であっても、厚さを変化させる場合、暖かい色または凉しい色が現れることを確認することができた。