(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】変性有機ポリイソシアネート組成物及びそれを用いた二液型塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/08 20060101AFI20221129BHJP
C08G 18/78 20060101ALI20221129BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20221129BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20221129BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20221129BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221129BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/78 037
C08G18/10
C08G18/73
C09D175/04
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2017127614
(22)【出願日】2017-06-29
【審査請求日】2020-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 優
(72)【発明者】
【氏名】堀口 健二
(72)【発明者】
【氏名】岸本 龍介
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-048270(JP,A)
【文献】特開平08-188566(JP,A)
【文献】特開2009-007409(JP,A)
【文献】特開2007-177171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロファネート基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)と、
式1で示されるホスファイト構造を持つ化合物、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、テトラ-C
12-
15-アルキル(プロパン-2,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ビス(ホスファイト)、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト、及びイソデシルジフェニルホスファイトからなる群より選ばれる少なくとも一種のホスファイト系化合物(B)と、を含む変性有機ポリイソシアネート組成物であって、
前記(A1
)を構成する水酸基含有化合物が、一分子中に水酸基を一つ有する化合物、C2~C18のアルカンジオール、及びトリメチロールプロパンからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
カルボン酸のジルコニウム塩(ただし、2-エチルヘキサン酸ジルコニウムを除く)を含むこと、を特徴とする、変性有機ポリイソシアネート組成物。
【化1】
(R
1~R
3は、それぞれ独立してアルキル基又はベンゼン環上にアルキル基を有するフェニル基を表し、R
1~R
3のうち少なくとも一つの分子量が78以上である。)
【請求項2】
アロファネート基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)、及びウレタン基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、
式1で示されるホスファイト構造を持つ化合物、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、テトラ-C
12-
15-アルキル(プロパン-2,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ビス(ホスファイト)、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト、及びイソデシルジフェニルホスファイトからなる群より選ばれる少なくとも一種のホスファイト系化合物(B)と、を含む変性有機ポリイソシアネート組成物であって、
前記(A1)、及び(A2)を構成する水酸基含有化合物が、一分子中に水酸基を一つ有する化合物、C2~C18のアルカンジオール、及びトリメチロールプロパンからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
式1で示されるホスファイト構造を持つ化合物(B)が、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリイソデシルホスファイトから選ばれる、少なくとも一種であることを特徴とする、変性有機ポリイソシアネート組成物。
【化2】
(R
1~R
3は、それぞれ独立してアルキル基又はベンゼン環上にアルキル基を有するフェニル基を表し、R
1~R
3のうち少なくとも一つの分子量が78以上である。)
【請求項3】
アロファネート基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)が、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体であることを特徴とする請求項1に記載の変性有機ポリイソシアネート組成物、または、
アロファネート基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)、及びウレタン基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種が、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体であることを特徴とする
請求項2に記載の変性有機ポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
アロファネート基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)、及びウレタン基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、式1で示されるホスファイト構造を持つ化合物、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、テトラ-C
12-
15-アルキル(プロパン-2,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ビス(ホスファイト)、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト、及びイソデシルジフェニルホスファイトからなる群より選ばれる少なくとも一種のホスファイト系化合物(B)と、を含む変性有機ポリイソシアネート組成物の製造方法であって、前記(A1)、及び(A2)を構成する水酸基含有化合物が、一分子中に水酸基を一つ有する化合物、C2~C18のアルカンジオール、及びトリメチロールプロパンからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、前記(A1)の製造触媒が、カルボン酸のスズ塩、またはジルコニウム塩であり、
以下の第1~第3工程を備えること、を特徴とする、変性有機ポリイソシアネート組成物の製造方法。
第1工程:有機ジイソシアネートモノマーと水酸基含有化合物とを、触媒の存在下、又は不存在下、ウレタン化、及びアロファネート化反応のうち少なくとも一種の反応をさせてイソシアネート基末端プレポリマーIを製造する工程。
第2工程:イソシアネート基末端プレポリマーIに反応停止剤を添加し、反応を停止させる工程。
第3工程:反応停止後のイソシアネート基末端プレポリマーIに、前記ホスファイト系化合物(B)を添加した後、イソシアネート基末端プレポリマーIを薄膜蒸留、又は溶剤抽出により、有機ジイソシアネートモノマーを抽出する工程。
【化3】
(R
1~R
3は、それぞれ独立してアルキル基又はベンゼン環上にアルキル基を有するフェニル基を表し、R
1~R
3のうち少なくとも一つの分子量が78以上である。)
【請求項5】
式1で示されるホスファイト構造を持つ化合物(B)が、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリイソデシルホスファイトから選ばれる、少なくとも一種であることを特徴とする、請求項4に記載の変性有機ポリイソシアネート組成物の製造方法。
【請求項6】
アロファネート基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)、及びウレタン基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種が、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体であることを特徴とする請求項4又は5に記載の変性有機ポリイソシアネート組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載の変性有機ポリイソシアネート組成物と、ポリオールとを含む二液型塗料組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の二液型塗料組成物から得られる塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤で希釈した際の外観安定性を向上させることができる変性有機ポリイソシアネート組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機ポリイソシアネートを変性した変性有機ポリイソシアネートは、ポリウレタンプラスチックの分野において有用であり、各方面で使用されている。例えば、発泡体、繊維、フィルム、エラストマー及びペイントを製造するにあたり、ポリオールとともに用いられる。その使用の際には、変性有機ポリイソシアネートは度々有機溶剤にて希釈され使用される。しかしながら、変性有機ポリイソシアネートを有機溶剤で希釈すると、貯蔵中に変色する傾向がある。この性質は、変性有機ポリイソシアネートが比較的高温において貯蔵されなければならない場合、特に顕著である。
【0003】
変性有機ポリイソシアネートの変色傾向を低減させるために種々の安定剤を該変性有機ポリイソシアネートに添加する、ということが既に提案されている。公知の安定剤には、立体障害フェノール、ジアルキルジフェニルアミン、フェノチアジン、ホスファイト並びにこれらの化合物の代表的なものの混合物がある(特許文献1、2)。
【0004】
その中でトリフェニルホスファイト(TPP)は、高温での変色防止のために効果的である(特許文献3)。しかしTPPは、有機溶剤に希釈し貯蔵した際に外観不良を生じるという欠点がある。そこで、この問題点を克服した安定剤や製法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許3715381号明細書
【文献】特開1994-92925号公報
【文献】特公昭45-33438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、有機溶剤にて希釈後の経時外観安定性を改善した変性有機ポリイソシアネート組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、検討を重ねた結果、特定の安定剤を含有させた変性有機ポリイソシアネートにより、前記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、以下の[1]~[5]の実施形態を含むものである。
【0009】
[1]アロファネート基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)、及びウレタン基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、式1で示されるホスファイト構造を持つ化合物(B)とを含む変性有機ポリイソシアネート組成物。
【0010】
【0011】
*R1~R3は、それぞれ独立してアルキル基又はベンゼン環上にアルキル基を有するフェニル基を表し、R1~R3のうち少なくとも一つの分子量が78以上である。
【0012】
[2]ホスファイト構造を持つ化合物(B)が、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、テトラ-C12-15-アルキル(プロパン-2,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ビス(ホスファイト)、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイトから選ばれる、少なくとも一種であることを特徴とする、上記[1]に記載の変性有機ポリイソシアネート組成物。
【0013】
[3]アロファネート基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)、及びウレタン基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種が、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の変性有機ポリイソシアネート組成物。
【0014】
[4]上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の変性有機ポリイソシアネート組成物と、ポリオールとを含む二液型塗料組成物。
【0015】
[5]上記[4]に記載の二液型塗料組成物から得られる塗膜。
【発明の効果】
【0016】
本発明の変性有機ポリイソシアネート組成物によれば、有機溶剤希釈後、高温における貯蔵後の外観が大いに改善され、その後のポリウレタンの製造のために有利に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明における変性有機ポリイソシアネート組成物は、アロファネート基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)、及びウレタン基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、下記式1のホスファイト構造を持つ化合物(B)とを含む変性有機ポリイソシアネート組成物である。
【0019】
【0020】
*R1~R3は、それぞれ独立してアルキル基又はベンゼン環上にアルキル基を有するフェニル基を表し、R1~R3のうち少なくとも一つの分子量が78以上である。
【0021】
本発明における変性有機ポリイソシアネート組成物は、有機ジイソシアネートモノマーと水酸基含有化合物とを、アロファネート化触媒、又はウレタン化触媒の存在下、アロファネート化、又はウレタン化することにより好適に得ることができる。
【0022】
有機ジイソシアネートモノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
<脂肪族ジイソシアネート>
脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等を挙げることができ、これらの混合物も使用することができる。
【0024】
<脂環族ジイソシアネート>
脂環族ジイソシアネートの具体例としては、例えばイソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等を挙げることができ、これらの混合物も使用することができる。
【0025】
<芳香族ジイソシアネート>
芳香族ジイソシアネートの具体例としては、例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等を挙げることができ、これらの混合物も使用することができる。
【0026】
<芳香脂肪族ジイソシアネート>
芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、例えば1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン等を挙げることができ、これらの混合物も使用することができる。
【0027】
水酸基含有化合物としては、特に限定するものではないが、一分子中に水酸基を1つ以上含有する化合物を挙げることができる。このような水酸基含有化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、n-ヘキサノール、2-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、3,3,5-トリメチル-1-ヘキサノール、n-トリデカノール、2-トリデカノール、2-オクチルドデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール等のモノアルコール、C2~C18のアルカンジオール等が挙げられる。
【0028】
触媒としては、実施する反応に応じて、公知の触媒から適宜選択して用いることができ、本発明においては、アロファネート化触媒、又はウレタン化触媒を用いることが好ましい。
【0029】
アロファネート化触媒としては、カルボン酸金属塩等の塩基性触媒等を用いることができ、例えば酢酸、プロピオン酸、ウンデシル酸、カプリン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のカルボン酸の亜鉛塩、スズ塩、ジルコニウム塩等を挙げることができる。
【0030】
ウレタン化触媒としては、カルボン酸金属塩等の塩基性触媒等を用いることができ、例えば酢酸、プロピオン酸、ウンデシル酸、カプリン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のカルボン酸のスズ塩、ビスマス塩等を挙げることができる。
【0031】
本発明における変性有機ポリイソシアネート組成物は、ホスファイト化合物(B)を含むものである。
【0032】
本発明におけるホスファイト化合物(B)としては、上記した式1に示される化合物であり、酸化防止剤として市場で入手できるホスファイト系酸化防止剤のうち、例えばトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン等、BASF社からイルガフォス(IRGAFOS)の商品名で得られるものや、あるいはADEKA社からアデカスタブの商品名で入手できるホスファイト構造を持つ化合物等を挙げることができる。
【0033】
式1のR1~R3は、それぞれ独立してアルキル基もしくはベンゼン環上にアルキル基を有するフェニル基を表し、R1~R3のうちの少なくとも一つの分子量が78以上である。外観不良抑制効果を高めるために、R1~R3のうち少なくとも一つの分子量は、113以上であることが好ましく、190以上であることが更に好ましい。
【0034】
ホスファイト構造を持つ化合物(B)の含有量は、アロファネート基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A1)、又はウレタン基を含有する変性有機ポリイソシアネート組成物(A2)に対して0.01~1質量%含有することが好ましく、0.05~0.5質量%含有することが更に好ましい。
【0035】
次に、本発明の変性有機ポリイソシアネート組成物の具体的な製造方法について説明する。
【0036】
第1工程では、有機ジイソシアネートモノマーと水酸基含有化合物とを、水酸基に対してイソシアネート基が過剰になる量を仕込んで、有機溶剤の存在下または非存在下、50~150℃で、ウレタン化及びアロファネート化反応のうち少なくとも一種の反応をさせてイソシアネート基末端プレポリマーIを製造する。ここでの反応の目安としては、中和滴定法によるイソシアネート基含有量と屈折率上昇値により完結を判断する。
【0037】
第2工程では、イソシアネート基末端プレポリマーIに反応停止剤を添加することによって、反応の停止を行う。
【0038】
これら第1工程~第2工程においては、窒素ガス、若しくは、乾燥空気気流下で反応を進行させる。
【0039】
第3工程では、第2工程で得られたイソシアネート基末端プレポリマーを薄膜蒸留又は溶剤抽出によって、遊離の有機ジイソシアネートモノマーの含有量を1質量%未満になるまで除去し、変性有機ポリイソシアネートを得る。
【0040】
ここで、第1工程における「イソシアネート基が過剰になる量」とは、イソシアネート基と水酸基とのモル比が、R=イソシアネート基/水酸基で5~75になるように仕込むことが好ましく、R=5~50になるように仕込むことがさらに好ましい。下限未満の場合には、目的物よりも分子量の高いポリイソシアネート組成物の生成量が多くなり、粘度の上昇を招く恐れがある。上限を超える場合には、粘度の上昇及び製品収率が下がり、生産性の低下を招く恐れがある。
【0041】
第1工程で用いる有機ジイソシアネートモノマーとしては、前記した各種ジイソシアネートを挙げることができる。
【0042】
第1工程で用いる水酸基含有化合物としては、前記した各種水酸基含有化合物を挙げることができる。
【0043】
また、第1工程では触媒を用いることができ、反応に用いる触媒としては、前記した触媒を挙げることができる。
【0044】
第1工程の反応は、反応に影響を与えない各種有機溶媒中で行うこともでき、有機溶媒の例としては、例えば脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテルエステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、極性非プロトン溶媒等が挙げられる。
【0045】
脂肪族炭化水素類としては、例えばn-ヘキサン、オクタン等が挙げられる。
【0046】
脂環族炭化水素類としては、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0047】
ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0048】
エステル類としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等が挙げられる。
【0049】
グリコールエーテルエステル類としては、例えばエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート等が挙げられる。
【0050】
エーテル類としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
【0051】
ハロゲン化炭化水素類としては例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタン等が挙げられる。
【0052】
極性非プロトン溶媒としては、例えばN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等が挙げられる。
【0053】
これらの溶媒は単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0054】
反応で使用した有機溶媒は、第3工程における遊離の有機ジイソシアネートの除去時に同時に除去される。
【0055】
第2工程における反応停止剤としては、触媒の活性を失活させる作用があるものであり、具体的には、リン酸、塩酸等の無機酸、スルホン酸基、スルファミン酸基等を有する有機酸およびこれらのエステル類、アシルハライド等公知の化合物が使用される。これらの反応停止剤は、単独または2種以上を併用することができる。尚、添加時期は、反応終了後、速やかな添加が好ましい。
【0056】
また、反応停止剤の添加量は、反応停止剤や使用した触媒の種類によって異なるが、触媒の0.5~10当量となるのが好ましく、0.8~5.0当量が特に好ましい。反応停止剤が少ない場合には、得られるポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性が低下しやすく、多すぎる場合は変性ポリイソシアネートが着色する場合がある。
【0057】
ホスファイト構造を持つ化合物(B)の添加については、いずれのタイミングで添加しても良いが、第2工程の始めから第3工程の終わりまでに添加することが好ましく、第2工程終了後から第3工程開始前がより好ましい。
【0058】
第3工程の精製工程では、反応混合物中に存在している遊離の未反応の有機ジイソシアネートモノマーを、例えば、10~100Paの高真空下、120~150℃で薄膜蒸留による除去法や有機溶剤による抽出法により、残留含有率を1.0質量%以下にする。尚、有機ジイソシアネートモノマーの残留含有率が上限値を超える場合は、臭気の発生や貯蔵安定性の低下を招く恐れがある。
【0059】
精製して得られた変性有機ポリイソシアネートは、ポットライフの延長や塗料組成物の一液化を目的として、公知のブロック剤を用いてブロックイソシアネートとすることも可能である。これにより、ブロック化されたポリイソシアネートは、常温時は不活性であるが、加熱することでブロック剤が解離し、再びイソシアネート基が活性化することで、活性水素基と反応する潜在的な機能を付加することができる。
【0060】
本発明に用いることができる、ブロック剤としては、活性水素基を分子内に1個有する化合物であり、例えば、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、活性メチレン、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ピラゾール系化合物等がある。
【0061】
また、一連の反応で得られた変性有機ポリイソシアネートは、ポリオールを配合することによって、本発明の二液型塗料組成物を得ることができる。
【0062】
ここで、本発明の二液型塗料組成物に使用されるポリオールとしては、特に限定されるものではないが、イソシアネート基との反応基として活性水素基を含有する化合物であり、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール、2種類以上のポリオールのエステル交換物、及びポリイソシアネートとウレタン化反応した水酸基末端プレポリマー等が好適に用いられ、これらは1種類又は2種類以上の混合物として使用することもできる。
【0063】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールの具体例としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、α-ハイドロムコン酸、β-ハイドロムコン酸、α-ブチル-α-エチルグルタル酸、α,β-ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸またはこれらの無水物等の1種類以上と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られるもの等を挙げることができる。また、ε-カプロラクトン、アルキル置換ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキル置換δ-バレロラクトン等の環状エステルモノマーの開環重合から得られるラクトン系ポリエステルポリオール等を挙げることができる。更に、低分子ポリオールの一部をヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールに代えて得られるポリエステル-アミドポリオールを使用することもできる。
【0064】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類、またはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子ポリアミン類等のような活性水素基を2個以上、好ましくは2~3個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイド類を付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオール、或いはメチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを開環重合することで得られるポリエーテルポリオール等を挙げることができる。
【0065】
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオールの1種類以上と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類との脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるもの等を挙げることができる。
【0066】
また、ポリカーボネートポリオールとポリエステルポリオールと低分子ポリオールのエステル交換反応により得られたポリオールも好適に用いることができる。
【0067】
<ポリオレフィンポリオール>
ポリオレフィンポリオールの具体例としては、例えば水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等を挙げることができる。
【0068】
<アクリルポリオール>
アクリルポリオールとしては、例えばアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル〔以下(メタ)アクリル酸エステルという〕と、反応点となりうる少なくとも分子内に1個以上の水酸基を有するアクリル酸ヒドロキシ化合物及び/又はメタクリル酸ヒドロキシ化合物〔以下(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物という〕と、重合開始剤とを熱エネルギーや紫外線または電子線などの光エネルギー等を使用し、アクリルモノマーを共重合したもの等を挙げることができる。
【0069】
<(メタ)アクリル酸エステル>
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば炭素数1~20のアルキルエステル等を挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは単独または2種類以上組み合わせたものを挙げることができる。
【0070】
<(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物>
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物の具体例としては、ポリイソシアネートとの反応点となりうる少なくとも分子内に1個以上の水酸基を有しており、具体的には、例えば2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のアクリル酸ヒドロキシ化合物等が挙げられる。また、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等のメタクリル酸ヒドロキシ化合物等が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物は、単独または2種以上を組み合わせたものを挙げることができる。
【0071】
<シリコーンポリオール>
シリコーンポリオールの具体例としては、例えばγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を重合したビニル基含有シリコーン化合物、及び分子中に少なくとも1個の末端水酸基を有する、α,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω-ジヒドロキシポリジフェニルシロキサン等のポリシロキサン等を挙げることができる。
【0072】
<ヒマシ油系ポリオール>
ヒマシ油系ポリオールの具体例としては、例えばヒマシ油脂肪酸とポリオールとの反応により得られる線状または分岐状ポリエステルポリオール等が挙げられる。また、脱水ヒマシ油、一部分を脱水した部分脱水ヒマシ油、水素を付加させた水添ヒマシ油も使用することができる。
【0073】
<フッ素系ポリオール>
フッ素系ポリオールの具体例としては、例えば含フッ素モノマーとヒドロキシ基を有するモノマーとを必須成分として共重合反応により得られる線状または分岐状のポリオールである。ここで、含フッ素モノマーとしては、フルオロオレフィンであることが好ましく、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロメチルトリフルオロエチレン等が挙げられる。また、ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、例えばヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルクロトン酸ビニル等のヒドロキシル基含有カルボン酸ビニル又はアリルエステル等のヒドロキシル基を有するモノマー等が挙げられる。
【0074】
また、ポリオールは、1分子中の活性水素基数(平均官能基数)が1.9~6.0であることが好ましい。活性水素基数が下限値未満の場合には、塗膜物性が低下する恐れがある。また、上限値を超える場合には、密着性が低下する恐れがある。
【0075】
また、ポリオールの数平均分子量は、500~50000の範囲にあることが好ましい。下限値未満の場合には、密着性低下の恐れがあり、上限値を超えると低極性有機溶剤に対する溶解性の低下や密着性低下を招く恐れがある。
【0076】
また、本発明の二液型塗料組成物のポリイソシアネート組成物と、ポリオールとの配合割合は、特に限定するものではないが、イソシアネート組成物中のイソシアネート基とポリオール中の水酸基のモル比が、R=イソシアネート基/水酸基で0.5~2.5となるように配合することが好ましい。下限値未満の場合には水酸基が過剰になり、密着性の低下を招く恐れがある。また、架橋密度が低下し耐久性の低下や塗膜の機械的強度が低下する恐れがある。上限値を超える場合にはイソシアネート基が過剰になり、空気中の水分と反応し、塗膜の膨れやこれに伴う密着性の低下を生じる恐れがある。
【0077】
また、希釈溶剤として使用する有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類等からなる群から、目的及び用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
また、本発明の二液型塗料組成物は、ポットライフ、硬化条件、及び作業条件等を考慮し、適宜に公知のウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩を選択して用いる。これらの触媒は、単独または2種以上併用することができる。
【0079】
また、本発明の二液型塗料組成物の硬化条件としては、特に限定されるものではないが、硬化温度が-5~120℃、湿度が10~95%RH、養生時間が0.5~168時間であることが好ましい。
【0080】
本発明によって得られた二液型塗料組成物は、スプレー、刷毛、浸漬、コーター等の公知の方法により被着体の表面上に塗布され、塗膜を形成する。
【0081】
ここで、被着体は特に限定されるものではなく、ステンレス、リン酸処理鋼、亜鉛鋼、鉄、銅、アルミニウム、真鍮、ガラス、スレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート-ABS樹脂、6-ナイロン樹脂、6,6-ナイロン樹脂、MXD6ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、NBR樹脂、クロロプレン樹脂、SBR樹脂、SEBS樹脂などの素材で成形された被着体、コロナ放電処理やその他表面処理を施されたポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、または前記被着体表面にプライマ―層などの中間層が形成された被着体を用いることができる。
【0082】
被着体表層に形成される塗膜の膜厚は、リコート性や耐久性に優れるため、被着体に少なくとも10μmの膜厚を形成すれば良い。膜厚が10μm未満である場合には耐久性が低下し、衝撃により塗膜の破れ等を生じる恐れがある。
【実施例】
【0083】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における%表記は、特に断りのない限り質量基準である。
【0084】
<ポリイソシアネート組成物の合成>
<実施例1>
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー社製、NCO含量:49.9質量%、以下HDIという)910g、及びn-オクタノール(三洋化成工業社製)90gを仕込み、これらを撹拌しながら60℃に昇温し、この反応液中にアロファネート化触媒であるオクチル酸ジルコニール(第一稀元素化学工業社製)0.1gを添加し、110℃にて所定の屈折率に達するまで反応させた後、反応停止剤である酸性リン酸エステル(JP-508、城北化学工業社製)0.11gを添加し、60℃で1時間停止反応を行った。ここで、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製、IRGAFOS 168)を0.3g添加し、60℃で1時間撹拌混合した。その後、反応生成物から、薄膜蒸留(条件:140℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、変性有機ポリイソシアネートP-1を430g得た。
【0085】
<実施例2>
表1に示す条件で合成を行い,実施例1と同様な手順にて各変性ポリイソシアネートP-2を得た。
【0086】
<実施例3>
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI592g、及びトリメチロールプロパン(三菱ガス化学社製)158g、酢酸エチル(昭和電工社製)250gを仕込み、これらを撹拌しながら60℃に昇温し,所定のNCO含量に達するまで反応させた。その後、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製、IRGAFOS 168)を0.3g添加し、60℃で1時間撹拌混合し、変性有機ポリイソシアネートP-3を1000g得た。
【0087】
<比較例1>
表1に示す条件で合成を行い,実施例1と同様な手順にて各変性ポリイソシアネートP-4を得た。
【0088】
<比較例2>
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI910g、及びn-オクタノール(三洋化成工業社製)90gを仕込み、これらを撹拌しながら60℃に昇温し,この反応液中にアロファネート化触媒であるオクチル酸ジルコニール(第一稀元素化学工業社製)0.1gを添加し、110℃にて所定の屈折率に達するまで反応させた後、反応停止剤である酸性リン酸エステル(JP-508、城北化学工業社製)0.11gを添加し、60℃で1時間停止反応を行った。その後、反応生成物から、薄膜蒸留(条件:140℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、変性有機ポリイソシアネートP-5を430g得た。
【0089】
【0090】
表1で使用した原料は以下の通り。
・酸性リン酸エステル:リン酸ジ-2-エチルヘキシル (JP-508、城北化学工業社製)
・触媒-1:オクチル酸ジルコニール (第一稀元素化学工業社製)
・酸化防止剤-1:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト (IRGAFOS 168、BASF社製)
・酸化防止剤-2:3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン (アデカスタブ PEP-36、ADEKA社製)
・酸化防止剤-3:トリフェニルホスファイト (アデカスタブ TPP、ADEKA社製)。
【0091】
<色数評価>
色数の評価は、JIS K 0071-1に示されるハーゼン単位色数(白金-コバルト スケール)の方法を使用した。
【0092】
<濁度評価>
濁度の評価は、JIS K 0101に示されるカオリン濁度(視覚法)の方法を使用した。
【0093】
<溶剤希釈安定性>
<初期値>
それぞれ得られた変性有機ポリイソシアネートP-1~P-5をメチルエチルケトン(MEK)にて固形分20%になるよう希釈し、その色数・濁度を測定した。
<50℃×3ヶ月後>
変性有機ポリイソシアネートP-1~P-5を、MEKにて固形分20%に希釈したものを50℃で3ヶ月保管した後、その色数・濁度を測定した。
【0094】
各実施例においては、良好な結果が得られた。一方、比較例であるP-4をMEKに希釈したものは、50℃で3ヶ月保管した後の色数に大きな変化はみられなかったが、濁度の上昇がみられた。P-5はサンプルの色数が高い傾向にあり、またMEKに希釈したものについても、50℃で3ヶ月保管した後に色数が高くなる傾向がみられた。