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特許7183542切断機、排出支援装置、及びそれらによる切断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】切断機、排出支援装置、及びそれらによる切断方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 33/00 20060101AFI20221129BHJP
   C25C 1/08 20060101ALI20221129BHJP
   C25C 7/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B23D33/00 D
C25C1/08
C25C7/02 303
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018009485
(22)【出願日】2018-01-24
(65)【公開番号】P2019126873
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】山本 征千
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-327115(JP,A)
【文献】特開2017-140669(JP,A)
【文献】特開平09-315622(JP,A)
【文献】特開2014-151362(JP,A)
【文献】特開2004-250224(JP,A)
【文献】米国特許第05582283(US,A)
【文献】実公昭41-015497(JP,Y1)
【文献】特表2011-526236(JP,A)
【文献】実開昭50-122387(JP,U)
【文献】特開2009-143698(JP,A)
【文献】実開昭58-027013(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 33/00 - 35/00
B26D 7/06
C25C 1/00 - 7/08
B65H 9/00 - 9/20
B65H 13/00 - 15/02
B65G 47/22 - 47/51
B65G 59/00 - 59/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形の金属板でなる被切断物を上方から厚さ方向に切断して短冊状の切断物を得る切断機であって、
前記被切断物を水平に載置する載置面の端部に固定された下刃と、
該下刃に噛み合わせるための上下動作が可能な上刃と、
前記載置面の端部側の後方に配設されて下がり方向の傾斜面を有するシュート部と、
前記シュート部から排出される前記切断物の長手方向に交差する両端面が排出される方向に対して平行な方向であり、かつ前記切断物の底面が前記傾斜面に対して平行に維持されるように排出機能を支援する排出支援装置と、
を備え、
前記排出支援装置には、前記切断物の長手方向の両端部のそれぞれの近傍に係合して前記傾斜面を緩慢に下降させるためのもので、前記シュート部を平面視したときに、前記排出される方向に対して直交し、かつ水平な軸に軸支されている緩衝腕をさらに備え、
前記緩衝腕は、前記載置面から排出された前記切断物を、前記傾斜面で一度保持し、付勢手段の力によって衝撃を吸収し、搬送手段に排出させるように機能する、衝撃を吸収する衝撃吸収機構を有する、
切断機。
【請求項2】
前記緩衝腕は、下降動作後に上限の待機位置まで自動的に戻る請求項1に記載の切断機。
【請求項3】
前記衝撃吸収機構は、ねじりコイルばね又はゼンマイばねを備えた請求項1又は2に記載の切断機。
【請求項4】
前記緩衝腕は、前記軸方向に視認した形状がL字型であり、該L字型の長辺の端部が軸支され、該L字型の角部が略直角で、該L字型の短辺が上向きの爪部を形成し、
前記爪部は前記切断物に前記傾斜面の上方で係合し、下方で係合を解除するように構成された請求項1~3の何れかに記載の切断機。
【請求項5】
被切断物を水平に載置する載置面の端部に固定された下刃と、該下刃に噛み合わせるための上下動作が可能な上刃と、を有して前記被切断物を上方から厚さ方向に切断する切断機の前記載置面の端部側の後方に配設されて下がり方向の傾斜面を有するシュート部に付設されて前記切断機により切断した切断物の排出機能を支援する排出支援装置であって、
前記切断物を、前記傾斜面で受け止めて搬送手段に引き渡すまでの間に、衝撃を吸収する緩衝腕を有する衝撃吸収機構を備え、
前記緩衝腕は、前記載置面から排出された前記切断物を、前記傾斜面で一度保持し、付勢手段の力によって衝撃を吸収し、搬送手段に排出させるように機能する、
排出支援装置。
【請求項6】
端部に下刃が固定された載置面に載置された被切断物を上下動作が可能な上刃で上方から厚さ方向にせん断することにより切断する切断機を用いた切断方法であって、
前記切断機に備わる排出支援装置が、切断物を、衝撃吸収機構の緩衝腕によって、前記切断物の長手方向の両端部の近傍に係合して傾斜面の上方で受け止め、前記緩衝腕に備わった付勢手段の力によって衝撃を吸収し、搬送手段に排出させるように機能する、切断方法。
【請求項7】
切断予定線まで送られた前記被切断物を前記上刃で上方から厚さ方向にせん断することにより切断して切断物を得る切断工程と、
前記切断物を、回動するL字型の前記緩衝腕の爪部が、前記切断物の両端部の近傍に係合して傾斜面の上方で受け止める切断物受取工程と、
排出支援装置が、前記切断物を前記傾斜面に沿って緩慢に下降させる緩慢下降工程と、
前記切断物を前記傾斜面の下方で搬送手段の整列部に引き渡す切断物引渡工程と、
前記切断物との係合が解除された前記緩衝腕が前記傾斜面の下方から上限の待機位置へと付勢手段により戻される復帰工程と、
を有する請求項6に記載の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断機、排出支援装置、及びそれらによる切断方法に関し、詳しくは、シャー設備と呼ばれる金属板切断機において、切断後にシュート部を経由して排出され、搬送手段に引き渡される金属片の散乱を予防することができる切断機、排出支援装置、及びそれらによる切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業界において、広く一般的にシャー設備(以下、「金属板切断機」又は「切断機」ともいう)による切断処理が施される。例えば、非鉄金属製造業においては、電解製錬で得られた金属板をそのまま製品として出荷するのではなく、需要先で使用しやすいように切断加工を施すことで付加価値を付けることがある。
【0003】
特許文献1には、ニッケル、コバルト等の金属の電解精製において、カソード板の歪により生じるカソード板とアノード板との接触を防ぎ、且つ切断加工時のプッシャー噛みこみの発生及びプッシャー噛みこみに伴うサイズ不良品の発生を抑えることができる電解精製用カソードスペーサーが開示されている。
【0004】
この電気ニッケルの切断加工工程では、2組のシャー設備によって、第1切断工程及び第2切断工程の二段階に及ぶ切断加工を施すことにより、求めに応じた大きさと形状の製品が得られている。この切断加工に用いられる設備は、大きく分けてシャー設備と搬送コンベアから成る。第1切断工程では、シャー設備により略正方形の金属板を、例えば10分割して短冊状に切り分ける。
【0005】
つぎに、この短冊状の切断物(以下、「短冊状切断物」又は単に「短冊」ともいう)を、搬送コンベアで搬送した先の第2切断工程により、平面視認が概ね正方形の扁平直方体に切り分けられた金属片を得る。この第1切断工程で切断された短冊状の切断物は、シャー設備の後方に配設された滑り台のような傾斜面を有するシュート部から排出され、搬送コンベアによってつぎの工程へ送られる。
【0006】
このとき、通常は、短冊状の切断物が搬送コンベアの進行方向に対して直角に滑り落ち、排出された短冊状の切断物の間隔が詰まった状態で整列され、円滑に第2切断工程に供される。しかし、短冊状の切断物が、切断時の衝撃や落下の衝撃により、搬送コンベアの進行方向に対して直角では無く傾いて滑り落ち、先に排出された短冊状切断物に重なった状態(以下、「整列不良」ともいう)となる場合がある。その場合、第2切断工程の実施が不可能になるため、搬送コンベア上で重なりを修正して整頓するための手作業(以下、「手直し作業」ともいう)を必要とする。この手直し作業の間、切断工程は一時停止することになる。よって、整列不良の発生は当然に稼働率の低下を招く。また短冊は一本当たり約8kgの重量があるため、それを整頓する作業者にとっては相当の重労働となり負担が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-162824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1切断工程でシャー設備による切断後に排出され、引き渡しのために搬送コンベア上に落下する短冊状の切断物の姿勢には、以下のような不具合が頻発していた。すなわち、切断後に排出され、搬送コンベア上に落下する短冊は、本来ならば短冊の間隔が詰まった状態で搬送コンベア上に整列されるべきものである。
【0009】
つまり、通常であれば、搬送コンベアの幅方向に短冊の長手方向を一致させて、かつ搬送コンベアの幅方向の中心線と短冊の長手方向の中心線を一致させて、なおかつ短冊どうしの間隔が詰まった状態で、搬送に都合良く整頓されて搬送コンベアに載置される短冊(以下、「整頓短冊」ともいう)になる。なお、整頓とは正しい位置に置くことをいう。しかし、時として、切断時の衝撃や落下の衝撃によって姿勢が傾き、切断及び排出の順番が先のものに、後のものが重なった状態や、それ以外にも正しい位置に置かれずに短冊の長手方向が搬送コンベアの幅方向に対して大きく傾いて散乱した状態の短冊(以下、「散乱短冊」ともいう)が発生することがある。散乱短冊は、第2切断工程における短冊の供給不良による不良品の発生や設備停止、設備故障の原因となるため、搬送コンベア上で手作業により修正を行っている。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、切断後に排出され、搬送コンベア上に落下する金属片の散乱を予防することにより、手直し作業頻度を低減し、切断工程の設備稼働率向上、作業の安全化を図ることができる切断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、整列不良の発生原因が切断時の衝撃や落下の衝撃であることを究明し、その衝撃の吸収方法を鋭意研究することによって本発明を完成した。すなわち、本発明者らは、上記課題を解決するために、シャー設備のシュート部に短冊状切断物に対する落下衝撃吸収機構を設けることにより、短冊状切断物の整列不良を抑制し、その結果、設備稼働率を向上させ、作業の安全化を図ることに成功した。
【0012】
[1]本発明の一態様の切断機(100)は、長方形の金属板でなる被切断物(10)を上方から厚さ方向(Z)に切断して短冊状の切断物(1)を得る切断機(100)であって、
前記被切断物(10)を水平に載置する載置面(20)の端部に固定された下刃(30)と、
該下刃(30)に噛み合わせるための上下動作が可能な上刃(40)と、
前記載置面(20)の端部側の後方に配設されて下がり方向の傾斜面(59)を有するシュート部(50)と、
前記シュート部(50)から排出される前記切断物(1)の長手方向に交差する両端面が排出される方向(X)に対して平行な方向であり、かつ前記切断物(1)の底面が前記傾斜面(59)に対して平行に維持されるように排出機能を支援する排出支援装置(60)と、
を備え、
前記排出支援装置(60)には、前記切断物(1)の長手方向の両端部(17,18)それぞれの近傍に係合して前記傾斜面(59)を緩慢に下降させるためのもので、前記シュート部(50)を平面視したときに、前記排出される方向(X)に対して直交し、かつ水平な軸(Y1)に軸支されている緩衝腕(70)をさらに備え、
前記緩衝腕(70)は、前記載置面(20)から排出された前記切断物(1)を、前記傾斜面(59)で一度保持し、付勢手段(90)の力によって衝撃を吸収し、搬送手段(80)に排出させるように機能する、衝撃を吸収する衝撃吸収機構(61)を有するものである。
【0014】
]また、本発明の一態様は、[]の切断機(100)において、前記緩衝腕(70)は、下降動作後に上限の待機位置(91)まで自動的に戻るように構成されたものである。
【0015】
]また、本発明の一態様は、[]又は[]の切断機(100)において、前記衝撃吸収機構(61)は、ねじりコイルばね又はゼンマイばねを備えたものである。
【0016】
]また、本発明の一態様は、[1]~[]のいずれかの切断機において、前記緩衝腕(70)は、前記軸(Y1)方向に視認した形状がL字型であり、該L字型の長辺の端部(71)が軸支され、該L字型の角部(73)が略直角で、該L字型の短辺が上向きの爪部(72)を形成し、
前記爪部(72)は前記切断物(1)に前記傾斜面(59)の上方で係合し、下方で係合を解除するように構成されたものである。
【0017】
]また、本発明の一態様の排出支援装置(60)は、被切断物(10)を水平に載置する載置面(20)の端部に固定された下刃(30)と、該下刃(30)に噛み合わせるための上下動作が可能な上刃(40)と、を有して前記被切断物(10)を上方から厚さ方向(Z)に切断する切断機(100)の前記載置面(20)の端部側の後方に配設されて下がり方向の傾斜面(59)を有するシュート部(50)に付設されて前記切断機(100)により切断した切断物(1)の排出機能を支援する排出支援装置(60)であって、
前記切断物(1)を、前記傾斜面(59)で受け止めて搬送手段(80)に引き渡すまでの間に、衝撃を吸収する緩衝腕(70)を有する衝撃吸収機構(61)を備え、
前記緩衝腕(70)は、前記載置面(20)から排出された前記切断物(1)を、前記傾斜面(59)で一度保持し、付勢手段(90)の力によって衝撃を吸収し、搬送手段(80)に排出させるように機能するものである。
【0018】
[6]また、本発明の一態様の切断方法は、端部に下刃(30)が固定された載置面(20)に載置された被切断物(10)を上下動作が可能な上刃(40)で上方から厚さ方向(Z)にせん断することにより切断する切断機(100)を用いた切断方法であって、
前記切断機(100)に備わる排出支援装置(60)が、切断物(1)を、衝撃吸収機構(61)の緩衝腕(70)によって、前記切断物(1)の長手方向の両端部(17,18)の近傍に係合して傾斜面(59)の上方で受け止め、前記緩衝腕(70)に備わった付勢手段(90)の力によって衝撃を吸収し、搬送手段(80)に排出させるように機能するものである。

【0019】
]また、本発明の一態様は、[]の切断方法において、切断予定線(12)まで送られた前記被切断物(10)を前記上刃(40)で上方から厚さ方向(Z)にせん断することにより切断して切断物を得る切断工程(S10)と、
前記切断物(1)を、回動するL字型の前記緩衝腕(70)の爪部(72)が、前記切断物(1)の両端部(17,18)の近傍に係合して傾斜面(59)の上方で受け止める切断物受取工程(S20)と、
排出支援装置(60)が、前記切断物(1)を前記傾斜面(59)に沿って緩慢に下降させる緩慢下降工程(S30)と、
前記切断物(1)を前記傾斜面(59)の下方で搬送手段(80)の整列部(81)に引き渡す切断物引渡工程(S40)と、
前記切断物(1)との係合が解除された前記緩衝腕(70)が前記傾斜面(59)の下方から上限の待機位置(91)へと付勢手段(90)により戻される復帰工程(S50)と、
を有するものである。


【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、切断後に排出され、搬送コンベア上に落下する金属片の散乱を予防することにより、手直し作業頻度を低減し、切断工程の設備稼働率向上、作業の安全化を図ることができる切断機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る切断機(以下、「本機」ともいう)、排出支援装置(以下、「本支援装置」ともいう)、及びそれらによる切断方法(以下、「本方法」ともいう)、を適用した電気ニッケルの切断加工装置のレイアウトを説明するための平面略図である。
図2図1の切断加工装置において、電気ニッケルが2段階に切断されて製品になることを説明するための模式図である。
図3図2の第1切断工程で整列不良の生じる経過を説明するための経過説明図であり、図3(A)は前進段階、図3(B)は切断段階、図3(C)は落下段階、図3(D)は散乱段階を、それぞれ示している。
図4】本支援装置の外観図であり、図4(A)はL字型の緩衝腕を回動自在に軸支する軸方向から視認した側面図、図4(B)は切断物が排出される方向から視認した正面図、をそれぞれ示している。
図5図4の本支援装置及び緩衝腕の要部拡大図であり、図5(A)は平面図、図5(B)は側面図、図5(C)は正面図、をそれぞれ示している。
図6】本方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。また、各図にわたって、同一効果の部材および箇所には、外形に多少の違いがあっても同一符号を付して説明の重複を避けている。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る切断機(以下、「本機」ともいう)、排出支援装置(以下、「本支援装置」ともいう)、及びそれらによる切断方法(以下、「本方法」ともいう)、を適用した電気ニッケルの切断加工装置のレイアウトを説明するための平面略図である。図1に示すように工場内は、3組の切断機100,101,102と、3組の搬送コンベア(搬送手段)80,81,82と、これらを統合制御する制御部99と、を備えて主要構成されている。
【0024】
3組の切断機100,101,102は、金属板切断機として類似の構造であるが、それぞれの役割が異なる。切断機101は吊手切断用、切断機100は大きな被切断物(以下、「電気ニッケル板」ともいう)10を短冊1に切断する1次切断機、切断機102は短冊1を角型ニッケル片2に切断する2次切断機である。制御部99は操作卓を備えており運転者がそれを操作する。
【0025】
3組の搬送コンベア80,81,82は、3組の切断機100,101,102と関連付けて運用される。それらのうち、搬送コンベア81,82は、例えば、1枚で80kg程度の被切断物10を26枚程度積み重ねた約2000kgの山を、同時に3~5山搬送する。また、搬送コンベア80は、1枚で8kg程度の切断物1を同時に10枚以上搬送する。以下、切断機100、及び搬送コンベア80について詳細に後述する。
【0026】
図2は、図1の切断加工装置において、電気ニッケルが2段階に切断されて製品になることを説明するための模式図である。図2に示すように、カソード吊手11の付いた大きな方形の被切断物10から複数の短冊1に細分化した後、さらに短冊1を角型ニッケル片2に切断する。図2中の矢印は、左側の矢印が吊手切断用の切断機101及び短冊1に細分化する1次切機100であり、右側の矢印が短冊1を製品としての角型ニッケルに細分化する2次切機102である。
【0027】
図3は、図2の第1切断工程で整列不良の生じる経過を説明するための経過説明図であり、図3(A)は前進段階、図3(B)は切断段階、図3(C)は落下段階、図3(D)は散乱段階を、それぞれ示している。また、図3に示す1次切断機200は、本機100の前提としての本発明の排出支援装置60を付設していない。
【0028】
以下、1次切断機100,200の動作について、簡単に説明する。1次切断機100,200は、長方形の金属板でなる被切断物10を上方から厚さ方向Zに切断して短冊状の切断物1を得るものであり、被切断物10を水平に載置する載置面20の端部に固定された下刃30と、下刃30に噛み合わせるための上下動作が可能な上刃40と、を備えて構成されている。
【0029】
図3(A)に示すように、1次切断機200は、カソード吊手11が切断された被切断物(切断前と同一符号)10をX方向に前進させて切断予定線12に位置付ける。図3(B)に示すように、1次切断機200は、上刃40が鉛直方向Zに下降して被切断物10から短冊1に切断する。図3(B)~図3(D)に示すように、短冊1の切断時の衝撃や落下の衝撃により、搬送コンベア80の整列部81に正しく載置されず、転がって1枚先に切断されて既に整列された短冊に乗り重なることがある。
【0030】
図4は、本支援装置の外観図であり、図4(A)はL字型の緩衝腕を回動自在に軸支する軸方向から視認した側面図、図4(B)は切断物が排出される方向から視認した正面図、をそれぞれ示している。図4(A)に示すように、1次切断機100は排出支援装置60を備えている。図4(B)にも併せて示すように、排出支援装置60は、切断物1の排出機能を支援するものであり、載置面20の後方に配設されて下がり方向の傾斜面59を有するシュート部50と、緩衝腕70と、を備えて構成されている。
【0031】
シュート部50には、そこから排出される切断物1の姿勢を正しく保持して排出することが求められる。つまり、切断物1の長手方向の両端部17,18が、排出される方向Xに対して直角かつ水平な方向Yに維持されることが望ましい。そのため、この排出支援装置60には、さらにL字型の緩衝腕70を備えている。その緩衝腕70は、軸Y1で回動自在に軸支されている。
【0032】
この緩衝腕70は、切断物1の両端部17,18それぞれの近傍に係合して傾斜面59を緩慢に下降させる衝撃吸収機構61を有する。緩衝腕70の衝撃吸収機構61は、排出された切断物1を、傾斜面59の上方で受け止めて下方で搬送コンベア80に引き渡すまでの間に衝撃を吸収する。
【0033】
上述の本排出支援装置60の要点のみを簡略に説明すると、つぎのとおりである。すなわち、本排出支援装置60は、被切断物10を載置する載置面20の端部に固定された下刃30と、下刃30に噛み合わせるための上下動作が可能な上刃40と、を有して被切断物10を厚さ方向Zに切断する切断機100の後方に傾斜面59と共に付設されて切断物1の排出機能を支援するものである。
【0034】
本排出支援装置60は、排出された切断物1を、傾斜面59の上方で受け止めて、下方で搬送コンベア80に引き渡すまでの間に、衝撃を吸収する衝撃吸収機構61を備えている。この衝撃吸収機構61は、載置面20の後方に配設され、傾斜面59に対する登り方向-αXへ押し戻す付勢手段90を有する。
【0035】
図5は、図4の本排出支援装置及び緩衝腕の要部拡大図であり、図5(A)は平面図、図5(B)は側面図、図5(C)は正面図、をそれぞれ示している。図5(A)に示すように、シュート部50の中央に傾斜面59が配設され、その脇にL字型の緩衝腕70が配設されている。図5(B)に示すように、排出された切断物1が傾斜面59の上を+αX方向に滑り落ちるように構成されている。
【0036】
また、緩衝腕70は、軸Y1方向に視認した形状がL字型であり、L字型の長辺の端部71の近傍が軸Y1に軸支されている。L字型の短い他端(爪部)72が回動する外周側である。L字型の角部73は略直角である。その角部73から延在する他端72が傾斜面59から上向きの爪部72(同一符号)を形成するように取り付けられている。爪部72は1枚ずつ排出された切断物1に傾斜面59の上方で係合する。係合したまま切断物1が傾斜面59の上を+αX方向に滑り落ちると、下方に接続された搬送コンベア80の整列部81の手前で係合を解除して衝撃を緩和しながら載置されるように構成されている。
【0037】
また、緩衝腕70は、方向Yに平行な軸Y1に軸支されて回動自在であると共に、シュート部50で傾斜面59を登り方向-αXに押し戻す付勢手段90を備えている。この付勢手段90は、詳細な図示を省略するが、ねじりコイルばね又はゼンマイばねにより構成されており、緩衝腕70の下降動作後は上限の待機位置91まで自動的に戻る。
【0038】
ねじりコイルばねは、コイル軸のまわりに、ねじりモーメントを受けて使用されるばねである。このねじりコイルバネは、コイルとしてより一般的なコイルバネと比較すると、同じ重量で保存できるエネルギーが大きい。また軽量に設計することができる。よってバネ機構部を省スペースに設計できるメリットがある。受け止めバー(緩衝腕)70は、短冊1を受け止める部分であり、受け止めた短冊1を一次的に保持するためのストッパー(L字型の角部)73を有する。
【0039】
短冊乱れは、短冊落下時のシュートの傾斜面59との衝撃力によって発生する。その対策として、短冊1の落下衝撃の吸収を可能にする衝撃吸収機構61を1次切断機200に付設した。この衝撃吸収機構61は、主にバネ機構部(付勢手段)90と受け止めバー(緩衝腕)70の2つから成り、本体(基部)62にはボルトナットで固定できるようなねじ孔63を備えている。バネ機構部90は円筒状であり、螺旋形に配置されたSW-C(硬鋼線)製のねじりコイルバネが内蔵されている。ねじりコイルバネ(付勢手段)90は、受け止めバー(緩衝腕)70の軸Y1に固定されており、受け止めバー(緩衝腕)70への鉛直下向き応力を打ち消すように作用する。
【0040】
図5(C)に示すように、本支援装置60の基部62には、その四隅に取り付けネジ穴63が穿設されている。このため、本機100の前提となる1次切断機200のシュート部50に、本支援装置60の基部62を密着し、その四隅に取り付けネジ穴63を用いてネジ止めすれば、1次切断機200から1次切断機100へと改造することができる。また、本支援装置60を単独で汎用化することも可能である。
【0041】
図6は、本方法を説明するためのフローチャートである。図6に示すように、本方法には、切断工程S10と、切断物受取工程S20と、緩慢下降工程S30と、切断物引渡工程S40と、復帰工程S50と、を有する。まず、載置面20に載置された被切断物10は切断予定線12まで逐次前進させられる。切断工程S10では、切断予定線12まで送られた被切断物10を上刃40で上方から厚さ方向(Z)に押圧して切断する。
【0042】
切断物受取工程S20では、排出された1枚ずつの切断物1を、回動するL字型の緩衝腕70の爪部72が、切断物1の両端部17,18それぞれの近傍に係合して傾斜面59の上方で柔軟に受け止める。緩慢下降工程S30では、排出支援装置60は、切断物1を傾斜面59に沿って緩慢に下降させる。
【0043】
切断物引渡工程S40では、落下衝撃を吸収しながら切断物1を傾斜面59の下方で搬送コンベア80の整列部81へ引き渡す。復帰工程S50では、切断物1との係合を解除した緩衝腕70が傾斜面59の下方から上限の待機位置91へと付勢手段90により回動して戻される。なお、付勢手段90は、ねじりコイルばね又はゼンマイばねに限らず、例えば短冊1が緩衝腕70に与える力のモーメントより小さくなるような逆方向の力のモーメントを与えるように、ウエイトを装着しても良い。
【0044】
衝撃吸収機構61は、落下してくる短冊状金属片(切断物)1を受け止め緩衝腕70で一度保持し、バネ(付勢手段)90の力によって衝撃を吸収し、供給先である搬送コンベア80上の整列部81に略同一方向に排出させるように機能する。衝撃吸収機構61は外部電源を必要とせず、ケーブル付設費用等の施工費の発生も抑制的であり、容易に設置することが可能である。加えてボルトナットによって簡単にシュート部50へ装着することができる。
【0045】
上述の本方法の要点のみを簡略に説明すると、つぎのとおりである。本方法は、下刃30を固定された載置面20に載置された被切断物10を上下動作が可能な上刃40で上方から厚さ方向Zに押圧して切断する切断機100を用いた切断方法である。この切断機100に備わる排出支援装置60は、排出された切断物1を、衝撃吸収機構61の緩衝腕70が、切断物1の両端部17,18それぞれの近傍に係合して傾斜面59で柔軟に受け止め、傾斜面59を緩慢に下降させ、搬送手段80に引き渡すまでの間に衝撃を吸収する。
【0046】
本発明の一実施形態が適用される切断設備の構成は、図1及び図2を用いて上述したとおりである。本方法は、切断機100を用いて被切断物10を切断する切断方法である。載置面20の端部には下刃30が固定されている。上刃40は上下動作が可能である。載置面20に被切断物10が載置されている。この被切断物10のうち、主に被切断物10を上刃40で上方から厚さ方向Zに押圧して格子状に切断する。
【0047】
電気ニッケルの製造工程は、あらかじめ、その表面を所定の粗さとなるようにサンドブラスト処理を行った母板にニッケルを電着させ、その電着した種板を剥ぎ取り、成形して作製したものをカソード板として使用する。この成形は、剥ぎ取ったシート状のニッケルの4辺を切断する等してトリミングし、導電および支持のためのカソードビームから垂下するための吊り手リボン11を上辺部2ヶ所にカソードビームを挟み込んだ状態で袋状に固定し、シート状のニッケルと吊り手リボン11とクロスビームから成るカソード板を仕上げることにより行われる。カソードビームを電解槽の縁部に架け渡すことによって、カソード板は電解槽中に懸垂される。カソード板は、吊手リボン11がわずかに電解液に浸漬される程度の位置に電解槽中に懸垂され、略正方形の種板が電解液に浸漬される。
【0048】
吊手リボン11は上述の種板を、所定サイズの短冊状に切断したものが使用される。カソード板は、電着が進んで電着部の厚さが、例えば10mm程度の厚さになると、電気ニッケル板10として電解槽から引き上げられて、つぎの加工工程に供される。電気ニッケル板10は、切断機によって、例えば25mm程度のブロックに切断されて製品となる。
【0049】
電気ニッケル板10は、吊手リボン11が取り付けられた状態で切断機にセットされ、まず吊手リボン11が切断され、引き続き電着部分を第1切断工程に係る1次切断機100によって、長方形の短冊状の切断物(略して「短冊」ともいう)1に切断される。この短冊は、搬送コンベア上に、切断前の電気ニッケル板1枚相当分で1かたまりとなるように、相互に切断面どうしが狭い間隔を空けるように均等に並べられ、さらに第2切断工程に係る2次切断機102へ長手方向に装入されて切断される。すなわち、切断方向を90度変更して切断することにより、ブロック状の製品を得ている。
【0050】
1次切断機100から落下させた短冊状の切断物1は、搬送コンベア(図1の右方)で向きを揃えられ、つぎの工程に送られる。ただし、この搬送コンベアではすべての短冊1を整列させることはできない。これは搬送コンベアによる整列能力を超えて進行方向に直角な方向に対して大きく傾いた状態で短冊が払い出される場合や、短冊1同士が重なった状態で搬送コンベア80上を流れる不具合が一定の確率で発生するからである。この現象を整列不良、又は短冊乱れと呼ぶ。整列不良、又は短冊乱れの発生メカニズムの代表例は、図3を用いて上述したとおりである。
【0051】
切断後の短冊1は、落下を開始するが、このとき図3(B)で示すように、短冊1が傾斜面(シュート部50の傾斜面)59等に対し傾いた状態で落下し、短冊1の端と傾斜面59が衝突することがある。このときの落下衝撃は短冊1の回転力を生む。その結果、排出された短冊1は、図3(C)で示すように、搬送コンベア80上の短冊1に重なった状態となる。短冊乱れの多くはこのようなメカニズムで発生しており、短冊1の端と傾斜面59との衝突が重なりの要因となっている。短冊乱れが発生した場合は、作業者は工程を一時停止させ、手作業によって短冊1の位置を修正する。
【0052】
本切断設備の一日の切断量は最大で110t程度であり、このとき1次切断機100のシュート部50を通過する短冊1は約13700本に上る。従来は、平均すると通過する短冊104本当り1回のペースで作業者による短冊1の位置修正が実施されていた為、作業者の短冊位置の修正回数は最大132回/日程度となっていた。また、位置修正に要する時間は一回当たり10秒程度であることから、短冊乱れによる工程停止時間は一日当たり20分程度となっていた。本工程は並列運転していない為、この短冊乱れは稼働率の低下に直結する。また設備の稼働中は常に短冊乱れ対応の作業者が配備されていなければならず、作業負荷の増大を招く。これを防ぐため、本発明の一実施形態が切断設備で適用される。
【0053】
例えば、電気ニッケル板10のサイズは、縦1000mm、横800mm、厚さが10mmであり、吊手リボン11は、電気ニッケル上辺部から最上部までの高さが、200mm、幅が100mmである。この電気ニッケル板10を短冊状に切断(切断枚数800枚/8時間)する操業において、本機100を使用したところ、切断後に排出され、搬送コンベア80に落下する短冊1の散乱を予防することができた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、電解採取法により製造された電気ニッケル板を短冊状に切断する切断機、切断支援機構およびそれらを用いた切断方法として採用される可能性がある。本発明を採用することにより、シャー設備のシュート部から搬送コンベア上に向かって安定的に短冊状の切断物を払い出し、手作業による短冊の手直し作業の頻度を軽減し、生産性を向上させる装置を提供できるので、その工業的価値は極めて大きい。
【0055】
なお、前記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0056】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、切断機、排出支援装置、落下衝撃吸収機構、緩衝腕の構成、動作、及び切断方法も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 切断物(短冊)、2 切断物(製品)、10 電気ニッケル板、被切断物、11 吊手リボン、12 切断予定線、17,18 (切断物1の長手方向の)両端部、20 載置面、30 下刃、40 上刃、50 シュート部、59 傾斜面、60 排出支援装置、61 衝撃吸収機構、70 緩衝腕、71 L字型長辺の端部、72 (短い他端)爪部、73 (L字型緩衝腕70の)角部、80,81,82 搬送コンベア、90 付勢手段(バネ機構部、ねじりコイルばね又はゼンマイばね)、81(搬送コンベア80の)整列部、91 (緩衝腕70の下降動作後は上限の)待機位置、99 制御部、100 切断機(本機、1次切断機)、101 (本機の前工程用の)切断機、102 (本機の後工程用の2次切断機)切断機、S10 切断工程、S20 切断物受取工程、S30 緩慢下降工程、S40 切断物引渡工程、S50 復帰工程、X (被切断物(カソード)10,11を移動させる)又は(切断物1が排出される)方向、Y (Xに対して直角かつ水平な方向)又は(下刃稜線31および上刃稜線41の延在方向、Y1 (緩衝腕70が軸支された)軸、YZ 噛み合わせ面、+αX (シュート部50で傾斜面59を下る)方向、-αX (排出経路50で傾斜面59を登る)方向、Z (被切断物(10,11)の厚さ方向(Z)、θ (載置面20に対して下がり方向の)傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6