(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ニッケル含有水溶液用浄化剤及びニッケル含有水溶液の浄化方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/62 20060101AFI20221129BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20221129BHJP
C02F 1/58 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C02F1/62 Z
C02F1/52 K
C02F1/58 K
(21)【出願番号】P 2018069870
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 正寛
(72)【発明者】
【氏名】坪井 裕基
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-116938(JP,A)
【文献】特開平09-227855(JP,A)
【文献】特開平07-090403(JP,A)
【文献】特開2017-080740(JP,A)
【文献】特開2003-311280(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0124447(US,A1)
【文献】特開昭63-294986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/58 - 1/64
1/52 - 1/56
B01D 21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化水素ナトリウム100重量部に対し
、ジエチレントリアミン
を20重量部以上200重量部以
下、及び塩化カルシウム
を25~2500重量部
含んでなることを特徴とするニッケル含有水溶液用浄化剤。
【請求項2】
ニッケル含有水溶液に、請求項1に記載のニッケル含有水溶液用浄化剤を添加した後、生成した固形物を除去することを特徴とするニッケル含有水溶液の浄化方法。
【請求項3】
ニッケル含有水溶液が、さらにニッケルと錯生成能力を持つ化合物を含むことを特徴とする請求項2に記載のニッケル含有水溶液の浄化方法。
【請求項4】
ニッケルと錯生成能力を持つ化合物が、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる官能基を分子内に有する化合物であることを特徴とする請求項3に記載のニッケル含有水溶液の浄化方法。
【請求項5】
固形物を除去する前に、無機凝集剤を添加することを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載のニッケル含有水溶液の浄化方法。
【請求項6】
固形物を除去する前に、無機凝集剤及び高分子凝集剤を添加することを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載のニッケル含有水溶液の浄化方法。
【請求項7】
無機凝集剤が、鉄化合物及びアルミニウム化合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のニッケル含有水溶液の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物、及びニッケルを含有する水溶液から、ニッケルを除去することを可能にする浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニッケルを含有した水溶液は、排水処理設備に送り、例えば鉄イオンを添加してアルカリ性にし、ニッケルイオン等を鉄イオンやその他含有されるイオンと共に水酸化物として沈殿させるなどの処理を行い、水溶液から分離した後に放流する方法などが行われてきた。
【0003】
ニッケルは、化学物質排出把握管理促進法において第1種指定化学物質に指定される有害な重金属であり、水質汚濁に係る環境基準における要監視項目として設定されており、排水処理の重要性が高まっている。
【0004】
ところで、めっき工場、電子部品・機械部品製造工場、自動車工場、火力発電所、ごみ焼却場等からの排水には、クエン酸、グルコン酸などの有機酸、エチレンジアミン四酢酸(以下、EDTAと略す)、シアン、アミン、アンモニア及びポリ燐酸など、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物が含まれ、上記のような水酸化物法では処理できない事例が多くなっている。
【0005】
これに対し、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物を化学的に処理した後に、ニッケルを不溶化処理する方法が知られている。しかしながら、例えば、塩素系薬剤による酸化法、電解酸化法、過酸化水素-第一鉄塩法、オゾン酸化法、湿式酸化法等の化学的処理を用いても、共存する重金属元素による酸化反応の阻害、スケールの生成等の問題から、十分な浄化処理が行えない状況である。
【0006】
排水中に含まれる各種の重金属元素を除去する技術としては、例えば、無機凝集剤又は有機凝集剤の添加による凝集分離除去法、電解による除去法、活性炭、無機吸着剤又は有機高分子材料による吸着除去法、排水を加熱蒸発させる乾固法、膜を用いた逆浸透法、電気透析又は限外ろ過法等が提案されている。
【0007】
上記した諸方法を用いた場合であっても、以下のような問題が多々あり、いずれの方法もそれらに対する改善の必要性があった。例えば、
(1)凝集分離除去法ではニッケルを充分に処理できない、
(2)吸着除去法等は、例えニッケルを吸着できたとしても処理後に多量の固形成分が発生する、
(3)逆浸透法、電気透析又は限外ろ過法等は、排水中に有機物を含有すると除去が困難であり、また、その処理コストが高い、
(4)加熱蒸発による乾固法は、処理法が煩雑かつ処理コストが高い、
等である。
【0008】
ところで、無機硫化物を排水中の重金属処理剤として使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。しかしながら、これら特許文献に記載の方法では、重金属と錯生成能力を持つ化合物を含むニッケル含有排水からの当該重金属の浄化処理効果が十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-160496公報
【文献】特許第5877588号公報
【文献】特開2014-235130公報
【文献】特許第5138737号公報
【文献】特許第3243261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物、及びニッケルを含有する水溶液のニッケル濃度を低減するニッケル含有水溶液の浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明で示す新規なニッケル含有水溶液の浄化方法を用いることにより、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物、及びニッケルを含有する水溶液を簡便な方法で、ニッケル濃度を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の要旨を有するものである。
【0013】
[1]無機硫化物100重量部に対し、窒素原子を3~8有するポリアミンを20重量部以上、及びアルカリ土類金属化合物を含んでなることを特徴とするニッケル含有水溶液用浄化剤。
【0014】
[2]ニッケル含有水溶液に、上記[1]に記載のニッケル含有水溶液用浄化剤を添加した後、生成した固形物を除去することを特徴とするニッケル含有水溶液の浄化方法。
【0015】
[3]ニッケル含有水溶液が、さらにニッケルと錯生成能力を持つ化合物を含むことを特徴とする上記[2]に記載のニッケル含有水溶液の浄化方法。
【0016】
[4]ニッケルと錯生成能力を持つ化合物が、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる官能基を分子内に有する化合物であることを特徴とする上記[3]に記載のニッケル含有水溶液の浄化方法。
【0017】
[5]固形物を除去する前に、無機凝集剤を添加することを特徴とする上記[2]~[4]のいずれかに記載のニッケル含有水溶液の浄化方法。
【0018】
[6]固形物を除去する前に、無機凝集剤及び高分子凝集剤を添加することを特徴とする上記[2]~[4]のいずれかに記載のニッケル含有水溶液の浄化方法。
【0019】
[7]無機凝集剤が、鉄化合物及びアルミニウム化合物からなる群より選択されることを特徴とする上記[5]又は[6]に記載のニッケル含有水溶液の浄化方法。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明のニッケル含有水溶液用浄化剤は、無機硫化物100重量部に対し、窒素原子を3~8有するポリアミンを20重量部以上、及びアルカリ土類金属化合物を含んでなることを特徴とする。
【0022】
硫化物の塩としては、例えば、硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム、硫化カリウム、硫化水素カリウム、硫化カルシウム、硫化水素カルシウム、硫化水素マグネシウム、硫化アンモニウム等が挙げられる。これらのうち経済性の点で、硫化水素ナトリウムが好ましい。
【0023】
窒素原子を3~8有するポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘプタエチレンオクタミン等の重量平均分子量が300以下のポリエチレンイミン類が挙げられるが、ジエチレントリアミンが特に好ましい。
【0024】
無機硫化物100重量部に対する、窒素原子を3~8有するポリアミンの添加量は、20重量部以上が好ましく、100重量部以上添加することにより、十分なニッケルの処理能力が得られる。
【0025】
アルカリ土類金属化合物としては、例えば、フッ化ベリリウム、塩化ベリリウム、臭化ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、酸化ベリリウム、水酸化ベリリウム、炭酸ベリリウム、硝酸ベリリウム、硫酸ベリリウム、硫化ベリリウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫化カルシウム、リン酸カルシウム、酢酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫化マグネシウム、リン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、フッ化ストロンチウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硫化ストロンチウム、リン酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウム、硫化バリウム、リン酸バリウム、酢酸バリウム、塩化ラジウム、臭化ラジウム等が挙げられる。
【0026】
アルカリ土類金属化合物は、0.05g/L以上加えればニッケル処理能力が得られるが、5g/L以上加えてもニッケル処理能力は一定となるため、アルカリ土類金属化合物の添加量を多くすることは、ニッケル排水処理費用が高くなり、経済的ではない。
【0027】
本発明の浄化剤は、ニッケル含有水溶液の浄化処理に特に有用である。
【0028】
本発明のニッケル含有水溶液の浄化方法は、ニッケル含有水溶液に、上記した本発明の浄化剤を添加した後、生成した固形物を除去することを特徴とする。ここで、生成した固形物には、本発明の浄化剤により固定化されたニッケルが含まれる。
【0029】
本発明の浄化方法は、ニッケルの処理が難しいニッケル含有水溶液(例えば、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物)、及びニッケルを含有する水溶液に対して特に有効である。
【0030】
ニッケルと錯生成能力を持つ化合物としては、ニッケルと錯体を形成する化合物であれば特に限定されない。例えば、分子内にカルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる官能基を有する化合物が挙げられる。具体的には、EDTA、ポリ燐酸等が挙げられ、特にニッケルと強固な錯体を形成する化合物として、EDTAが挙げられる。
【0031】
無機硫化物と窒素原子を3~8有するポリアミンとアルカリ土類金属化合物をニッケル含有水溶液中にそれぞれ別々に添加する場合、添加する順番は特に限定されない。
【0032】
固形物の除去を速やかに行うために、固形物を除去する前に、凝集剤を添加することが好ましい。凝集剤としては、例えば、無機凝集剤、高分子凝集剤が挙げられ、無機凝集剤と高分子凝集剤を併用することがより好ましい。
【0033】
無機凝集剤としては、市販されている無機凝集剤を使用でき、特に限定されない。例えば、塩化第二鉄等の鉄化合物、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物、等が挙げられる。
【0034】
ニッケル含有水溶液がニッケルと錯生成能力を持つ化合物を含む場合、無機凝集剤の添加量は、ニッケル含有水溶液中に含まれるニッケル錯生成能力を持つ化合物の含有量以上とすることが好ましい。無機凝集剤の添加量をニッケルと錯生成能力を持つ化合物の含有量以上とすることで、凝集性が増し、処理後の水溶液のニッケル濃度を低減することが容易となる。
【0035】
ニッケル含有水溶液中の、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物の含有量は、ニッケル含有水溶液中のニッケル錯生成能力を持つ化合物の濃度を、例えば、HPLC、ガスクロマトグラフィー、滴定等の分析を行うことで算出することができる。
【0036】
高分子凝集剤としては、市販されている高分子凝集剤を使用でき、特に限定されない。例えば、アクリル酸ポリマー、アクリルアミドポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレートポリマー等が挙げられる。凝集性能の点で、弱アニオン性のアクリル酸ポリマーが好ましい。固形物を除去する前に高分子凝集剤を添加することにより、除去する固形物のハンドリングが容易となる場合がある。
【0037】
無機凝集剤と高分子凝集剤を併用する場合、これらの凝集剤を添加する順番は特に限定されないが、無機凝集剤を添加し、次に高分子凝集剤を添加することが好ましい。
【0038】
固形物を除去する方法としては特に限定されず、例えば、ろ過、遠心分離、及び固形物を沈降させた後、上澄み液と分離する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0039】
本発明のニッケル水溶液用の浄化剤は、ニッケルの浄化処理が難しいニッケル含有水溶液(例えば、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物、及びニッケルを含有する水溶液)であっても、ニッケル濃度を低減することができる。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。
【0041】
(分析方法)
水溶液中のニッケルイオン濃度は、ICP発光分光分析装置(ICPE-9800、島津製作所社製)で測定した。
【0042】
(無機硫化物)
無機硫化物として、キシダ化学社製硫化水素ナトリウムを使用した。
【0043】
(ポリアミン)
ポリアミンとして、以下の東ソー製エチレンアミン類、日本触媒製ポリエチレンイミン類を使用した。
【0044】
エチレンジアミン(以下、EA(2)と略す)。
【0045】
ジエチレントリアミン(以下、EA(3)と略す)。
【0046】
ポリエチレンイミンの重量平均分子量1800品(以下、PEI(1800)と略す)。
【0047】
(アルカリ土類金属)
アルカリ土類金属として、キシダ化学社製塩化カルシウムを使用した。
【0048】
(無機凝集剤)
無機凝集剤として、以下の水溶液を使用した。
【0049】
キシダ化学社製ポリ塩化アルミニウム30gを水に加え、合計100gにした水溶液(30重量%ポリ塩化アルミニウム水溶液)。
【0050】
キシダ化学社製38重量%塩化第二鉄水溶液。
【0051】
(高分子凝集剤)
高分子凝集剤として、オルガノ社製OA-23(弱アニオンポリマー)を使用した。
【0052】
実施例1
500mLビーカーに、ジャーテスター(Jar Tester)を設置し、ニッケルイオン10mg/LとEDTA25mg/Lを含む水溶液を500mL添加した。次いで、150rpmで攪拌しながら、硫化水素ナトリウムを200mg/L、ジエチレントリアミン(EA(3))を200mg/L、塩化カルシウムを1g/L加え、pH11に調整し、150rpmで1時間攪拌した。次いで、30重量%ポリ塩化アルミニウム(以下、PACと略す)水溶液を1000mg/L加え、pH7に調整し、150rpmで5分間攪拌した。水溶液のpHは、微量の塩酸及び水酸化ナトリウムを用いて、常に所定のpHとなるように調整した。攪拌終了後、10分間静置し、アドバンテック社製5Aのろ紙で水溶液をろ別し、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。
【0053】
比較例1
500mLビーカーに、ジャーテスター(Jar Tester)を設置し、ニッケルイオン10mg/LとEDTA25mg/Lを含む水溶液を500mL添加した。次いで、pH11に調整し、150rpmで1時間攪拌した。次いで、30重量%PAC水溶液を1000mg/L加え、pH7に調整し、150rpmで5分間攪拌した。水溶液のpHは、微量の塩酸及び水酸化ナトリウムを用いて、常に所定のpHとなるように調整した。攪拌終了後、10分間静置し、アドバンテック社製5Aのろ紙で水溶液をろ別し、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。
【0054】
比較例2~9
添加する薬剤を表1に示す薬剤に変更した以外、比較例1と同様にして、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。これらの結果を表1に併せて示す。
【0055】
【0056】
実施例1は、EDTA含有排水の処理後水溶液のニッケル濃度を1.5mg/Lに低減することができ、ニッケルを処理することができた。
【0057】
比較例1は、アルミニウムイオンを添加して中和し、ニッケルイオンをアルミニウムイオンと共に水酸化物として沈殿させる処理方法の例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は7.0mg/Lであり、ニッケルを低減することができなかった。
【0058】
比較例2は、塩化カルシウムのみを添加して処理した例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は5.3mg/Lであり、ニッケルを低減することができなかった。
【0059】
比較例3は、硫化水素ナトリウムのみを添加して処理した例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は7.0mg/Lであり、ニッケルを十分低減することができなかった。
【0060】
比較例4は、硫化水素ナトリウムと塩化カルシウムを添加して処理した例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は5.5mg/Lであり、ニッケルを低減することができなかった。
【0061】
比較例5は、ポリアミンのみを添加して処理した例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は、薬剤を添加する前と同値の10mg/Lであり、ニッケルを低減することができなかった。
【0062】
比較例6は、ポリアミンと塩化カルシウムを添加して処理した例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は、薬剤を添加する前と同値の10mg/Lであり、ニッケルを低減することができなかった。
【0063】
比較例7は、硫化水素ナトリウムとポリアミンを添加して処理した例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は6.4mg/Lであり、ニッケルを十分に低減することができなかった。
【0064】
比較例8は、硫化水素ナトリウムと、本発明の範囲外であるEA(2)と塩化カルシウムを添加して処理した例であるが、処理後水溶液のニッケル濃度は、EA(2)を加えなかった比較例4と比較し、ニッケルの処理に改善効果は見られなかった。
【0065】
比較例9は、硫化水素ナトリウムと、本発明の範囲外であるPEI(1800)と塩化カルシウムを添加して処理した例であるが、処理後水溶液のニッケル濃度は10mg/Lであり、ニッケルを低減することができなかった。
【0066】
実施例2~3、比較例10
添加する薬剤を表2に示す薬剤に変更した以外、実施例1と同様にして、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。これらの結果を表2に併せて示す。
【0067】
【0068】
実施例2~3は、ポリアミンの重量部を本発明の範囲内で変化させて処理した例である。ポリアミンの重量部によらず、ニッケルの濃度を2.7mg/L以下に低減することができ、ニッケルを処理することができた。
【0069】
比較例10は、硫化水素ナトリウムと、本発明の範囲を下回る量のポリアミンを添加した例であるが、ニッケルの十分な低減効果は見られなかった。
【0070】
実施例4
500mLビーカーに、ジャーテスター(Jar Tester)を設置し、ニッケルイオン10mg/LとEDTA25mg/Lを含む水溶液を500mL添加した。次いで、150rpmで攪拌しながら、硫化水素ナトリウムを200mg/L、ジエチレントリアミン(EA(3))を200mg/L、塩化カルシウム1g/Lを加え、pH11に調整し、150rpmで1時間攪拌した。次いで、30重量%PAC水溶液を1000mg/L加え、pH7に調整し、150rpmで5分間攪拌した。次いで、高分子凝集剤として0.1重量%OA-23水溶液を2000mg/L加え、pH7に調整し、50rpmで5分間攪拌した。水溶液のpHは、微量の塩酸及び水酸化ナトリウムを用いて、常に所定のpHとなるように調整した。攪拌終了後、10分間静置し、アドバンテック社製5Aのろ紙で水溶液をろ別し、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。結果を表3に示す。
【0071】
実施例5
30重量%PAC水溶液を38重量%塩化鉄水溶液に変更した以外、実施例4と同様にして、処理後の水溶液のニッケル濃度を測定した。結果を表3に示す。
【0072】
【0073】
実施例4は、実施例1に高分子凝集剤を添加した例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は、高分子凝集剤を添加しない場合と同値であり、ニッケルの処理が十分であった。
【0074】
実施例5は、無機凝集剤として、塩化第二鉄水溶液を用いた例である。処理後の水溶液のニッケル濃度は、1.7mg/Lであり、無機凝集剤の種類によらず、ニッケルの処理が十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のニッケル含有水溶液の浄化方法によれば、ニッケルの処理が難しい、ニッケルと錯生成能力を持つ化合物、及びニッケルを含有する水溶液であっても、ニッケル濃度を低減できるため、新規なニッケル含有水溶液の浄化方法として、めっき工場、電子部品・機械部品製造工場、自動車工場などからのニッケル含有排水の処理方法として使用される可能性を有している。