(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】立体造形用粒子、立体造形用粉末、立体造形物の製造装置、立体造形物の製造方法、立体造形用粉末の製造方法、及び粒子
(51)【国際特許分類】
B29C 64/153 20170101AFI20221129BHJP
B29B 11/02 20060101ALI20221129BHJP
B29B 11/04 20060101ALI20221129BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20221129BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221129BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221129BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20221129BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20221129BHJP
【FI】
B29C64/153
B29B11/02
B29B11/04
B29C64/314
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
B33Y70/00
(21)【出願番号】P 2018167424
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2017216016
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】岩附 仁
(72)【発明者】
【氏名】山下 康之
(72)【発明者】
【氏名】鴨田 紀一
(72)【発明者】
【氏名】武藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】阿萬 康知
(72)【発明者】
【氏名】井関 敏之
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 充
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 啓
(72)【発明者】
【氏名】樋口 信三
(72)【発明者】
【氏名】飯田 崇一朗
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-106236(JP,A)
【文献】国際公開第2017/112723(WO,A1)
【文献】特表2018-523718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/00,11/02,11/04
B29C 64/10,64/153,64/20,64/30,
64/314,64/40
B33Y 10/00,30/00,40/00,50/00,
70/00,80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面および側面を有する柱体形状であって、
前記端面は、
第一の面および第二の面を含み、
少なくとも前記第一の面は、第一の対向面と、
前記第一の対向面を前記側面に沿って延伸した形状であり、
該第一の対向面と連続する面である外周領域と、を含み、
前記外周領域は、前記側面の一部を被覆している立体造形用粒子。
【請求項2】
請求項
1に記載の立体造形用粒子を含む立体造形用粉末。
【請求項3】
前記立体造形用粒子の前記端面が前記側面を被覆している領域において、前記柱体形状の高さ方向における最も短い部分の長さが1μm以上である請求項
2に記載の立体造形用粉末。
【請求項4】
前記立体造形用粒子の含有量(個数基準)は、前記立体造形用粉末に対して50%以上である請求項
2又は
3に記載の立体造形用粉末。
【請求項5】
前記立体造形用粒子の含有量(個数基準)は、前記立体造形用粉末に対して70%以上である請求項
2乃至
4のいずれか一項に記載の立体造形用粉末。
【請求項6】
前記立体造形用粒子の前記端面は、略真円形状、略楕円形状、又は略多角形形状である請求項
2乃至
5のいずれか一項に記載の立体造形用粉末。
【請求項7】
略角柱形状である前記立体造形用粒子を含む請求項
2乃至
6のいずれか一項に記載の立体造形用粉末。
【請求項8】
略角柱形状である前記立体造形用粒子の含有量(個数基準)は、前記立体造形用粉末に対して40%以上である請求項
7に記載の立体造形用粉末。
【請求項9】
前記立体造形用粒子は、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、及びポリエーテルエーテルケトンから選択される少なくとも一種を含む請求項
2乃至
8のいずれか一項に記載の立体造形用粉末。
【請求項10】
請求項
2乃至
9のいずれか一項に記載の立体造形用粉末が収容されている収容手段と、前記立体造形用粉末を含む層を形成する層形成手段と、前記層に電磁照射して溶融させる溶融手段と、を有する立体造形物の製造装置。
【請求項11】
請求項
2乃至
9のいずれか一項に記載の立体造形用粉末を含む層を形成する層形成工程と、前記層に電磁照射して溶融させる溶融工程と、を繰り返す立体造形物の製造方法。
【請求項12】
請求項
2乃至
9のいずれか一項に記載の立体造形用粉末の製造方法であって、
前記立体造形用粉末を構成する材料を線維状材料に形成する線維化工程と、
同方向に配置された複数の前記線維状材料を一体化させて一体化材料を形成する一体化工程と、
前記一体化材料を裁断し裁断物を得る裁断工程と、
前記裁断物を撹拌する撹拌工程と、
を有する立体造形用粉末の製造方法。
【請求項13】
立体造形用粉末の製造方法であって、
前記立体造形用粉末を構成する材料を線維状材料に形成する線維化工程と、
同方向に配置された複数の前記線維状材料を一体化させて一体化材料を形成する一体化工程と、
前記一体化材料を裁断し裁断物を得る裁断工程と、
前記裁断物を撹拌する撹拌工程と、
を有
し、前記一体化工程は、同方向に配置された複数の前記線維状材料を加熱しながら加圧することで一体化させて前記一体化材料を形成する立体造形用粉末の製造方法。
【請求項14】
端面および側面を有する柱体形状であって、
前記端面は、第一の面および第二の面を含み、
少なくとも前記第一の面は、第一の対向面と、前記第一の対向面を前記側面に沿って延伸した形状であり、該第一の対向面と連続する面である外周領域と、を含み、
前記外周領域は、前記側面の一部を被覆している粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形用粒子、立体造形用粉末、立体造形物の製造装置、立体造形物の製造方法、立体造形用粉末の製造方法、及び粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
立体造形物を製造する方式として、粉末床溶融(PBF:powder bed fusion)方式が知られている。PBF方式としては、選択的にレーザーを照射して立体造形物を形成するSLS(selective leser sintering)方式や、マスクを使い平面状にレーザーを当てるSMS(selective mask sintering)方式などが知られている。また、PBF方式以外の立体造形物を製造する方式としては、インクを用いたHSS(high speed sintering)方式、BJ(Binder jetting)方式などが知られている。
【0003】
立体造形物を製造する際に用いられる樹脂の粉末としては、例えば、樹脂溶融液を押し出した後、延伸して形成した樹脂繊維を、可動式のクランプで固定して切断ブレードに向かって移動させ、樹脂繊維を切断して得られる略円筒状の樹脂粉末が開示されている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の樹脂粉末は充填密度に劣り、該樹脂粉末を用いて形成した立体造形物は強度に劣る課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、端面および側面を有する柱体形状であって、前記端面は、第一の面および第二の面を含み、少なくとも前記第一の面は、第一の対向面と、前記第一の対向面を前記側面に沿って延伸した形状であり、該第一の対向面と連続する面である外周領域と、を含み、前記外周領域は、前記側面の一部を被覆している立体造形用粒子である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の立体造形用粒子は、充填密度に優れ、該樹脂粉末を用いて形成した立体造形物は強度に優れる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、立体造形用粉末の一例を示す写真である。
【
図2】
図2は、立体造形用粒子の一例を示す写真である。
【
図3A】
図3Aは、円柱体形状の立体造形用粒子の一例を示す概略斜視図である。
【
図3C】
図3Cは、円柱体形状の端部に頂点を有さない立体造形用粒子の一例を示す側面図である。
【
図3D】
図3Dは、円柱体形状の端部に頂点を有さない立体造形用粒子の一例を示す側面図である。
【
図3E】
図3Eは、円柱体形状の端部に頂点を有さない立体造形用粒子の一例を示す側面図である。
【
図3F】
図3Fは、円柱体形状の端部に頂点を有さない立体造形用粒子の一例を示す側面図である。
【
図3G】
図3Gは、円柱体形状の端部に頂点を有さない立体造形用粒子の一例を示す側面図である。
【
図3H】
図3Hは、円柱体形状の端部に頂点を有さない立体造形用粒子の一例を示す側面図である。
【
図3I】
図3Iは、円柱体形状の端部に頂点を有さない立体造形用粒子の一例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、円柱状の樹脂を斜め方向に切断することで形成された裁断物の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る立体造形物の製造装置を示す概略図である。
【
図6】
図6は、立体造形物の製造方法を説明するための概念図である。
【
図7】
図7は、立体造形物の製造方法を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以降で説明する立体造形用粒子は、粒子の一例であり、本願はこれに限定されない。従って、粒子は、立体造形用粒子以外に、例えば、表面収縮剤、スペーサー、滑剤、塗料、砥石、添加剤、二次電池セパレーター、食品、化粧品、衣服、自動車、精密機器、半導体、航空宇宙、医療、金属代替材料等の用途で用いる粒子であってもよい。
【0009】
<<立体造形用粉末>>
本実施形態の立体造形用粉末は複数の粒状物の集合体を意味し、端面および側面を有する柱体形状であって端面のいずれか一方が側面の一部を被覆している立体造形用粒子を含む。また、立体造形用粉末は、後述する立体造形用粒子以外に、立体造形用粒子に相当しない粒子を含んでいてもよい。
【0010】
<立体造形用粒子>
-立体造形用粒子の形状-
まず、
図1、
図2を用いて、立体造形用粒子(以降、「柱体」とも称する)について説明する。
図1は、立体造形用粉末の一例を示す写真である。また、
図1において点線の円で囲まれた柱体は、
図1において複数個存在する柱体のうちの一つを示す。
図2は、立体造形用粒子の一例を示す写真である。なお、
図1、
図2は、SEM(走査型電子顕微鏡)観察による写真である。このような写真(投影画像)を得る手段としてはSEMに限定されず、光学顕微鏡などの公知の画像解析装置を用いることができるが、以降の説明では、投影画像を得る手段の一例としてSEM(走査型電子顕微鏡)を用いた場合について説明する。
【0011】
図2に示すように、柱体21は、端面の一例である第一の面22と、端面の一例である第二の面23と、側面24とを有する。第一の面22は、第一の対向面22aと、側面24に沿って延伸した形状である第一の面の外周領域22bと、を有する。第一の面の外周領域22bは、曲面を介して第一の対向面22aと連続する面であり、第一の対向面22aと略直交する。第二の面23は、第一の対向面22aと対向する第二の対向面23aと、側面24に沿って延伸した形状である第二の面の外周領域23bと、を有する。第二の面の外周領域23bは、曲面を介して第二の対向面23aと連続する面であり、第二の対向面23aと略直交する。側面24は、第一の面22、及び第二の面23に隣接する。また、側面24上に、第一の面の外周領域22b、及び第二の面の外周領域23bが延伸している。言い換えると、柱体21の端面が折れ曲がるようにして側面24を被覆している。本実施形態のように、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察される範囲において、端面の両方が側面の全周を被覆していることが好ましいが、端面の両方が側面の一部を被覆している場合、端面の一方が側面の全周を被覆している場合、及び端面の一方が側面の一部を被覆している場合であってもよい。また、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察される範囲に限られず、端面の両方が側面の全周を被覆していることが好ましいが、端面の両方が側面の一部を被覆している場合、端面の一方が側面の全周を被覆している場合、及び端面の一方が側面の一部を被覆している場合であってもよい。
【0012】
なお、第一の面の外周領域22bおよび第二の面の外周領域23b(以降、「外周領域」とも称する)の形状は、側面24とSEM画像などで区別可能な形状であればよく、外周領域の一部が側面24と一体化している形状、外周領域が側面24と接している形状、及び外周領域と側面24との間に空間が存在する形状等を含む。また、第一の面の外周領域22bおよび第二の面の外周領域23bは、側面24の面方向と略同一の面方向となるように設けられていることが好ましい。
【0013】
なお、
図2に示すように、第一の面の外周領域22bおよび第二の面の外周領域23bは、側面24に沿って延伸してなり、側面24上に位置する。また、第一の面の外周領域22bおよび第二の面の外周領域23bと、側面24と、の接続領域近辺を覆う第一の面および第二の面の特徴的な構造は、ボトルキャップ形状とも称する。
【0014】
第一の面の外周領域および第二の面の外周領域は、それぞれ第一の面および第二の面が側面に沿って延伸した形状である。そのため、第一の面の外周領域と第一の対向面との間、及び第二の面の外周領域と第二の対向面との間は、それぞれ曲面を介して滑らかに連続している。第一の面の外周領域および第二の面の外周領域を設け、柱体が角部を有さないもしくは、角部の割合を低減するようにすることで、柱体を含む立体造形用粉末の充填密度を高めることができ、造形物の引張強度を向上させることができる。また、柱体が角部を有さないようにすることで、柱体を含む立体造形用粉末の流動性を向上させることができ、立体造形時における立体造形用粉末の移動不良を抑制することができるため造形物の引張強度を向上させることができる。また、第一の面の外周領域の全て、及び第二の面の外周領域の全てが側面に沿って延伸した形状(側面を被覆する形状)を有する柱体である場合、立体造形用として用いる上で必要とされる柱体の充填密度、及び柱体の流動性を更に向上させることができる。
【0015】
なお、柱体の端面が側面を被覆している領域である第一の面の外周領域および第二の面の外周領域は、柱体の高さ方向における最も短い部分の長さが1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが更に好ましい。1μm以上であると、第一の面の外周領域と第一の対向面との間、及び第二の面の外周領域と第二の対向面との間における曲面がより滑らかになり、柱体を含む立体造形用粉末の充填密度を高めることができ、造形物の引張強度を向上させることができる。また、曲面がより滑らかになることで、柱体を含む立体造形用粉末の流動性を向上させることができ、立体造形時における立体造形用粉末の移動不良を抑制することができるため造形物の引張強度を向上させることができる。なお、第一の面の外周領域および第二の面の外周領域は、柱体の高さ方向における長さであって、最も長い部分の長さが10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。なお、上記の長さはいずれも、SEM(走査型電子顕微鏡)等の投影画像で観察される範囲における長さであるとする。
【0016】
柱体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、略円柱、略角柱などの立体形状が挙げられ、略角柱の形状であることが好ましい。なお、略円柱、略角柱の形状には、上記の第一の面の外周領域および第二の面の外周領域を有する立体形状が含まれる。なお、柱体の立体形状により、柱体における第一の対向面および第二の対向面の形状が決まる。例えば、柱体の高さ方向における線(角)が観察できずに滑らかな面が一様に観察できるような場合、柱体は略円柱であり、第一の対向面および第二の対向面の形状は略円形状となる。また、柱体の高さ方向における線(角)で区分された複数の面が観察できるような場合、柱体は略角柱であり、第一の対向面および第二の対向面の形状は略多角形形状となる。なお、第一の対向面が略多角形形状であって且つ第二の対向面が略円形状であってもよく、第一の対向面が略円形状であって且つ第二の対向面が略多角形形状であってもよい。
【0017】
柱体は、上記の通り向かい合う面である第一の対向面と第二の対向面とを有する。第一の対向面は、第二の対向面に対して傾斜を有していてもよいが、傾斜が略ついておらず略平行であることが好ましい。略平行であることにより、柱体を含む立体造形用粉末の流動性を向上させることができる。
【0018】
また、柱体の第一の対向面または第二の対向面において引ける最長の直線の長さと、柱体における高さの比は、0.5倍以上5.0倍以下であることが好ましく、0.7倍以上2.0倍以下がより好ましく、0.8倍以上1.5倍以下が更に好ましい。
【0019】
--略円柱形状--
略円柱の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第一の対向面と第二の対向面の形状が略真円である略真円柱体、略楕円である略楕円柱体などが挙げられる。これらの中でも、略真円柱体が好ましい。なお、略円柱体の円部分は、一部が欠けていてもよい。また、略円とは、長径と短径との比(長径/短径)が、1以上10以下であるものを意味する。
【0020】
第一の対向面と第二の対向面の面積の大きさが多少ずれていてもよいが、大きい面と小さい面との円の直径の比(大きい面/小さい面)としては、1.5倍以下が好ましく、形が統一されている方が密度を詰めることができる点から、1.1倍以下がより好ましい。
【0021】
略円柱体の直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上100μm以下が好ましい。なお、略円柱体の円形部分が略楕円形である場合は、直径とは、長径を意味する。
【0022】
略円柱体の高さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上100μm以下が好ましい。
【0023】
--略角柱形状--
略角柱の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第一の対向面と第二の対向面の形状が多角形である略長方体、略立方体、略三角柱、略六角柱などが挙げられる。これらの中でも、略六角柱が好ましく、略正六角柱であることがより好ましい。形状が、略角柱であることにより、隙間なく詰めることができ、得られる立体造形物の引張強度を向上することができる。なお、略角柱は、一部が欠けていてもよい。
【0024】
第一の対向面と第二の対向面の面積の大きさが多少ずれていてもよいが、大きい面と小さい面との多角形の辺の平均値の比(大きい面/小さい面)としては、1.5倍以下が好ましく、形が統一されている方が密度を詰めることができる点から、1.1倍以下がより好ましい。
【0025】
略角柱の第一の対向面または第二の対向面において引ける最長の直線の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上100μm以下が好ましい。
【0026】
略角柱の高さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上100μm以下が好ましい。
【0027】
柱体の第一の対向面と第二の対向面の間の高さを形成する辺は、切断時に樹脂が軟化し、つぶれた状態(例えば、円柱形ではたる型)も本実施形態の範囲に含まれるが、弧を描くもの同士で空間を空けてしまうため、粉末を密に詰めることができる点から、辺が直線状になっているものが好ましい。
【0028】
--頂点を有さない形状-
柱体は、頂点を有さないことが好ましい。頂点とは、柱体を側面から観察したときに存在する角の部分をいう。柱体の形状について、
図3A~
図3Iを用いて説明する。
図3Aは、円柱体形状の立体造形用粒子の一例を示す概略斜視図である。
図3Bは、
図3Aにおける円柱体形状の立体造形用粒子の一例を示す側面図である。
図3Cは、円柱体形状の端部に頂点を有さない立体造形用粒子の一例を示す側面図である。
図3D~
図3Iは、いずれも、円柱体形状の端部に頂点を有さない立体造形用粒子の他の一例を示す側面図である。
【0029】
図3Aに示す円柱体を、側面から観察すると、
図3Bに示すように長方形の形状を有しており、角の部分、すなわち、頂点が4箇所存在する。この端部に頂点を持たない形状の一例が
図3Cから
図3Iである。柱体の頂点の有無の確認は、柱体の側面における投影像から判別することができる。例えば、柱体粒子の側面に対して走査型電子顕微鏡(装置名:S4200、株式会社日立製作所製)等を用いて観察し、二次元像として取得する。この場合、投影像は4辺形となり、各々隣り合う2辺によって構成される部位を端部とすると、隣り合う2つの直線のみで構成される場合は、角が形成され頂点を持つことになり、
図3C~
図3Iのように端部が円弧によって構成される場合は端部に頂点を持たないことになる。
【0030】
-立体造形用粒子(柱体)の含有量-
立体造形用粉末に含まれる柱体の含有量(個数基準)は、立体造形用粉末に対して50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0031】
立体造形用粉末中において、上記のような第一の面の外周領域および第二の面の外周領域を有する柱体の含有量が多くなることにより、柱体を含む立体造形用粉末の充填密度を高めることができ、造形物の引張強度を向上させることができる。また、第一の面の外周領域および第二の面の外周領域を有する柱体の含有量を多くすることで、柱体を含む立体造形用粉末の流動性を向上させることができ、立体造形時における立体造形用粉末の移動不良を抑制することができるため造形物の引張強度を向上させることができる。
【0032】
柱体の含有量の具体的な算出方法は、次の手順で行われる。すなわち、SEM(走査型電子顕微鏡)を用い150倍の倍率で写真撮影し、撮影して得た画像から立体造形用粉末の個数および柱体の個数を求め、柱体の個数を立体造形用粉末の個数で除算して100を乗算することで算出する。
【0033】
なお、SEM(走査型電子顕微鏡)の倍率は立体造形用粉末の大きさにより適宜変更可能である。また、SEM画像から立体造形用粉末の個数および柱体の個数を求める際、本願では、SEM画像における立体造形用粉末および柱体の最長部が20μm以上であるもののみ、個数を数える対象とする。また、柱体の含有量を算出する際における立体造形用粉末の個数は100個以上であるとする。
【0034】
なお、立体造形用粉末に含まれる略角柱の形状の柱体の含有量(個数基準)は、立体造形用粉末に対して40%以上であることが好ましい。
【0035】
立体造形用粉末中において、上記のような第一の面の外周領域および第二の面の外周領域を有する略角柱形状の柱体の含有量が多くなることにより、上記のように柱体を含む立体造形用粉末の充填密度、及び得られる立体造形物の引張強度を向上させることができる。
【0036】
-立体造形用粒子(柱体)の結晶性-
柱体は、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂とは、熱をかけると可塑化し、溶融するものを意味する。熱可塑性樹脂の中でも、結晶性樹脂を用いてもよい。なお、結晶性樹脂とは、ISO 3146(プラスチック転移温度測定方法、JIS K7121)の測定した場合に、融解ピークを有するものを意味する。
【0037】
結晶性樹脂としては、結晶制御された結晶性熱可塑性樹脂が好ましく、熱処理、延伸、結晶核材、超音波処理等、外部刺激の方法により、結晶サイズや結晶配向が制御されている結晶性熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0038】
結晶性熱可塑性樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱し、結晶性を高めるアニーリング処理や、より結晶性を高めるために結晶核剤を添加し、その後アニーリング処理する方法がある。また、超音波を当てることにより結晶性を高めることや、溶媒に溶解しゆっくりと揮発させることにより結晶性を高める方法、外部電場印加処理による結晶性成長等の工程を経ること、もしくは、延伸することにより高配向、高結晶にしたものを粉砕、裁断等の加工を施す方法などが挙げられる。
【0039】
アニーリングとしては、樹脂をガラス転移温度から50℃高い温度にて3日間加熱し、その後、室温までゆっくりと冷却することにより行うことができる。
【0040】
延伸としては、押し出し加工機を用いて、融点より30℃以上高い温度にて撹拌しながら、繊維状に立体造形用樹脂溶解液を伸ばす。この際、溶融液は、1倍以上10倍以下程度に延伸し繊維にする。延伸は、樹脂ごと溶融粘度ごとに最大の延伸倍率を変えることができる。
【0041】
超音波としては、グリセリン(東京化成工業株式会社製、試薬グレード)溶媒を樹脂に対して5倍ほど加えた後、融点より20℃高い温度まで加熱し、超音波発生装置(ヒールシャー社製、ultrasonicator UP200S)にて24kHz、振幅60%での超音波を2時間与えることにより行うことができる。その後、室温にてイソプロパノールの溶媒で洗浄後、真空乾燥することが好ましい。
【0042】
外部電場印加処理としては、樹脂をガラス転移温度以上にて過熱した後に600V/cmの交流電場(500ヘルツ)を1時間印加した後にゆっくりと冷却することにより行うことができる。
【0043】
PBF方式では、結晶層変化についての温度幅(温度窓)が大きな方が、立体造形物作成時の反り返りを抑制できるために好ましい。結晶層変化は、融解開始温度と冷却時の再結晶点間の差が大きな樹脂粉末の方が、造形性がよくなるため、より差がある方が好ましい。
【0044】
-立体造形用粒子(柱体)の組成-
柱体を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアセタール(POM、融点:175℃)、ポリイミド、フッ素樹脂等のポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。熱可塑性樹脂としては、上記ポリマー以外に、難燃化剤や可塑剤、熱安定性添加剤や結晶核剤等の添加剤、非結晶性樹脂等のポリマー粒子を含んでいてもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP、融点:180℃)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド410(PA410)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66、融点:265℃)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12);半芳香族性のポリアミド4T(PA4T)、ポリアミドMXD6(PAMXD6)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド9T(PA9T、融点:300℃)、ポリアミド10T(PA10T)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、PA9Tは、ポリノナメチレンテレフタルアミドとも呼ばれ、炭素が9つのジアミンにテレフタル酸モノマーから構成され、一般的にカルボン酸側が芳香族であるため半芳香族と呼ばれる。さらには、ジアミン側も芳香族である全芳香族としてp-フェニレンジアミンとテレフタル酸モノマーとからできるアラミドと呼ばれるものも本実施形態のポリアミドに含まれる。
【0047】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET、融点:260℃)やポリブタジエンテレフタレート(PBT、融点:218℃)、ポリ乳酸(PLA)などが挙げられる。耐熱性を付与するため一部テレフタル酸やイソフタル酸が入った芳香族を含むポリエステルも本実施形態に好適に用いることができる。
【0048】
ポリエーテルとしては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、融点:343℃)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などが挙げられる。ポリエーテル以外にも、結晶性ポリマーであればよく、例えば、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルスルフォンなどが挙げられる。PA9Tのように融点ピークが2つあるものを用いてもよい(完全に溶融させるには2つ目の融点ピーク以上に樹脂温度を上げる必要がある)。
【0049】
なお、柱体は、任意の流動化剤、粒度化剤、強化剤、酸化防止剤等を含有していてもよい。流動化剤の含有量としては、粒子表面上に覆うために十分な量であればよく、柱体に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。流動化剤としては、10μm未満の体積平均粒径を有する粒状無機材料を好適に用いることができる。
【0050】
<<粉末の物性>>
柱体を含む粉末の一例としての立体造形用粉末は、下記(1)~(3)から選択される少なくとも1種を満たすことが好ましい。
【0051】
(1)示差走査熱量測定において、ISO 3146に準拠して、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度をTmf1とし、その後、10℃/minにて、-30℃以下まで降温し、さらに、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度をTmf2としたときに、Tmf1>Tmf2となる。なお、吸熱ピークの融解開始温度は、融点での吸熱が終了した後に、熱量の一定となった所から低温側へx軸に対して平行な直線を引き、直線から-15mW下がった時点での温度である。
【0052】
(2)示差走査熱量測定において、ISO 3146に準拠して、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークのエネルギー量から求められる結晶化度をCd1とし、その後、10℃/minにて、-30℃以下まで降温し、さらに、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークのエネルギー量から求められる結晶化度をCd2としたときに、Cd1>Cd2となる。
【0053】
(3)X線回折測定により得られる結晶化度をCx1とし、窒素雰囲気下10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温し、その後、10℃/minにて、-30℃以下まで降温し、さらに、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときのX線回折測定により得られる結晶化度をCx2としたときに、Cx1>Cx2となる。
【0054】
上記(1)~(3)は、同一の立体造形用粉末について、異なる視点から特性を規定したものであり、上記(1)~(3)は互いに関連している。
【0055】
[条件(1)の示差走査熱量測定による溶解開始温度の測定方法]
条件(1)の示差走査熱量測定(DSC)による溶解開始温度の測定方法としては、ISO 3146(プラスチック転移温度測定方法、JIS K7121)の測定方法に準じて、示差走査熱量測定装置(例えば、株式会社島津製作所製、DSC-60A等)を使用し、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度(Tmf1)を測定する。その後、10℃/minにて、-30℃以下まで降温し、さらに、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度(Tmf2)を測定する。なお、吸熱ピークの融解開始温度は、融点での吸熱が終了した後に、熱量の一定となった所から低温側へx軸に対して平行な直線を引き、直線から-15mW下がった時点での温度である。
【0056】
[条件(2)の示差走査熱量測定による結晶化度の測定方法]
条件(2)の示差走査熱量測定(DSC)による結晶化度の測定方法としては、ISO 3146(プラスチック転移温度測定方法、JISK7121)に準拠して、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークのエネルギー量(融解熱量)を測定し、完全結晶熱量に対する融解熱量から結晶化度(Cd1)を求めることができる。その後、10℃/minにて、-30℃以下まで降温し、さらに、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークのエネルギー量を測定し、完全結晶熱量に対する融解熱量から結晶化度(Cd2)を求めることができる。
【0057】
[条件(3)のX線解析装置による結晶化度の測定方法]
条件(3)のX線解析装置による結晶化度の測定方法としては、二次元検出器を有するX線解析装置(例えば、Bruker社、Discover8等)を使用し、室温にて2θ範囲を10~40に設定し、得られた粉末をガラスプレート上に置き、結晶化度を測定(Cx1)することができる。次に、DSC内において、窒素雰囲気化にて10℃/minで加熱し、融点より30℃高い温度まで昇温し、10分間保温した後、10℃/min、-30℃まで冷却後のサンプルを室温に戻し、Cx1と同様にして、結晶化度(Cx2)を測定することができる。
【0058】
<<粉末の製造方法>>
粉末の一例としての立体造形用粉末は、立体造形用粒子を構成する材料を含有するペレット等から柱状の繊維状材料を作製する線維化工程と、作製した複数の繊維状材料を一体化させて一体化材料を作製する一体化工程と、一体化材料を裁断して裁断物を得る裁断工程と、裁断物を撹拌する撹拌工程と、を経て製造されることが好ましい。
【0059】
繊維化工程は、押し出し加工機を用い、融点より30℃以上高い温度にて撹拌しながら、繊維状に樹脂溶解液を伸ばすことが好ましい。樹脂溶解液は、1倍以上10倍以下に延伸し繊維化することが好ましい。この時、押出し加工機のノズル口の形状により繊維断面の形状を決めることができる。例えば、断面を円形形状とする場合は、ノズル口も円形形状であることが好ましい。なお、この工程により、上述の通り、樹脂の結晶性を制御することができる。
【0060】
一体化工程は、線維化工程で作製した繊維状材料を同方向に複数並べて配置して一体化させる。一体化させる方法としては、加熱しながら加圧することでシート状に一体化させる方法、繊維に水を付与して冷却し、氷中に繊維を固定して一体化させる方法などが挙げられるが、加熱しながら加圧することでシート状に一体化させる方法が好ましい。この工程により、繊維状材料を固定化させることができる。加熱しながら加圧することでシート状に一体化させる場合、付加する熱は、用いる樹脂の種類により異なるが、融点以下であることが好ましく、また、融点より100°低い温度以上であることが好ましい。また、付加する圧力は、10MPa以下であることが好ましい。なお、上記の熱、及び圧力は、次の切断工程を経ると一体化していた各線維が分離する範囲であることが好ましい。また、「加熱しながら加圧する」とは、加熱工程と加圧工程を同時に行う場合が好ましいが、加熱工程後の予熱が残っている状態において加圧工程を後から行う場合など、加熱工程と加圧工程を同時に行わない場合であってもよい。また、一体化材料はシート状に限らず、次の裁断工程が適切に行われる範囲であれば特に形状は限定されない。また、繊維を並べる方向は完全に同一の方向でなくてもよく、略同一の方向であればよい。
【0061】
なお、線維化工程で得られた繊維状材料の断面形状が円である場合、一体化工程で加熱しながら加圧することで、繊維状材料の一部又は全部が変形して断面形状が多角形となる。それにより、多角形の断面を有する繊維状材料が一体化した一体化材料を作成することができる。
【0062】
裁断工程は、一体化工程で作製した一体化材料を連続的に裁断して裁断物を作製することが好ましい。裁断する手段としては、ギロチン方式といった上刃と下刃が共に刃物になっている裁断装置、押し切り方式と呼ばれる下側の板と上刃で裁断していく裁断装置、及びCO2レーザー等を用いて裁断する裁断装置などを用いることができる。これら裁断装置を用いて、一体化材料を形成する繊維の長手方向と垂直な裁断面を有するように裁断することができる。なお、裁断装置のカット幅は、5.0μm以上100.0μm以下であることが好ましい。また、裁断装置のカット速度は、特に制限はないが、10spm(shots per minute)以上1000spm以下であることが好ましい。
【0063】
撹拌工程は、裁断工程で作製した裁断物を撹拌し、機械摩擦により表面溶融させて柱体を作製することが好ましい。撹拌する方法としては、裁断物同士を衝突させる方法、裁断物に裁断物以外の物質を衝突させる方法等の各種球型化方法が挙げられるがこれらに限られない。撹拌時の回転数は、500rpm以上10000rpm以下であることが好ましい。撹拌時の回転時間は、1分以上60分以下であることが好ましい。この工程により、第一の面の外周領域および第二の面の外周領域を作製することができる。
【0064】
これらの工程では、一体化工程で繊維を一体化材料にして繊維の位置、方向を固定した上で裁断工程を行うため、立体造形用樹脂の裁断幅、裁断方向を均一にすることが可能となり、均一な形状の柱体を得ることができる。すなわち、従来のように、繊維を可動式のクランプで固定して裁断手段に向かって移動させ樹脂繊維を裁断して粉末を得る方法等では、繊維が十分に固定化されていないため、裁断時において繊維に動きが生じることに起因して裁断幅、及び裁断方向のばらつきが起こる。裁断幅、及び裁断方向のばらつきは、大きさや形状の異なる裁断物を多数生じさせる。また、例えば、
図4の模式図で示すような円柱状の樹脂を斜め方向に切断することで形成された裁断物など、想定していない形状の粉末を多数生じさせる。このような裁断物を用いた場合、立体形状が対称ではないため、仮に撹拌処理を行ったとしても、端面のいずれか一方が側面の一部を被覆している形状の柱体を多数得ることは困難である。また、裁断物の大きさが不均等であると、裁断物は撹拌工程において過度な力を受けて扁平化し、特に他の裁断物に比べて大きい裁断物は所望の形状を得ることができない。従って、柱体の含有量(個数基準)を50%以上とするためには、上記の線維化工程、一体化工程、裁断工程、及び撹拌工程を経ることが好ましく、加熱しながら加圧することでシート状に一体化させる一体化工程を経ることがより好ましい。
【0065】
<<粉末の用途>>
本実施形態の粉末は、粒度、粒度分布、熱移動特性、溶融粘度、嵩密度、流動性、溶融温度、及び再結晶温度のようなパラメータについて適切なバランスを有し、SLS方式、SMS方式、MJF(Multi Jet Fusion)方式、又はBJ(Binder Jetting)法などの粉末を用いた各種立体造形方法において好適に利用される。また、本実施形態の粉末は、表面収縮剤、スペーサー、滑剤、塗料、砥石、添加剤、二次電池セパレーター、食品、化粧品、衣服等の用途においても好適に利用される。更に、自動車、精密機器、半導体、航空宇宙、医療等の分野において用いられる材料や金属代替材料として用いてもよい。
【0066】
<<立体造形物の製造装置>>
本実施形態の立体造形物の製造装置は、上記の立体造形用粉末を含む層を形成する層形成手段と、層に電磁照射して溶融させる溶融手段と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を含む。
【0067】
層形成手段としては、例えば、ローラ、ブレード、ブラシ等、又はこれらの組合せなどが挙げられる。
【0068】
溶融手段としての電磁照射源としては、例えば、CO2レーザー、赤外照射源、マイクロウエーブ発生器、放射加熱器、LEDランプ等、又はこれらの組合せなどが挙げられる。
【0069】
ここで、
図5を用いて、上記の立体造形用粉末を用いる立体造形物の製造装置について説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る立体造形物の製造装置を示す概略図である。
【0070】
図5に示すように、造形装置1は、造形用の樹脂粉末Pを収容する収容手段の一例としての供給槽11、供給槽11に収容されている樹脂粉末Pを供給するローラ12、ローラ12によって供給された樹脂粉末Pが配され、レーザーLが走査されるレーザー走査スペース13、電磁線としてのレーザーLの照射源である電磁照射源18、及び電磁照射源18によって照射されたレーザーLをレーザー走査スペース13の所定位置へ反射させる反射鏡19を有する。また、造形装置1は、供給槽11、及びレーザー走査スペース13に収容される樹脂粉末Pをそれぞれ加熱するヒータ11H,13Hを有する。
【0071】
反射鏡19の反射面は、電磁照射源18がレーザーLを照射している間、3D(three-dimensional)モデルの2次元データに基づいて、移動する。3Dモデルの2次元データは、3Dモデルを所定間隔でスライスしたときの各断面形状を示す。これにより、レーザーLの反射角度が変わることで、レーザー走査スペース13のうち、2次元データによって示される部分に、選択的にレーザーLが照射される。レーザーL照射位置の樹脂粉末は、溶融し、焼結して層を形成する。すなわち、電磁照射源18は、樹脂粉末Pから造形物の各層を形成する層形成手段として機能する。
【0072】
また、造形装置1の供給槽11、及びレーザー走査スペース13には、ピストン11P,13Pが設けられている。ピストン11P,13Pは、層の造形が完了すると、供給槽11、及びレーザー走査スペース13を、造形物の積層方向に対し上、又は下方向に移動させる。これにより、供給槽11からレーザー走査スペース13へ、新たな層の造形に用いられる新たな樹脂粉末Pを供給することが可能になる。
【0073】
造形装置1は、反射鏡19によってレーザーの照射位置を変えることにより、樹脂粉末Pを選択的に溶融させるが、本発明はこのような実施形態に限定されない。本実施形態の粉末は、選択的マスク焼結(SMS: Selective Mask Sintering)方式の造形装置においても好適に用いられる。SMS方式では、例えば、樹脂粉末の一部を遮蔽マスクによりマスクし、電磁線が照射され、マスクされていない部分に赤外線などの電磁線を照射し、選択的に樹脂粉末を溶融することにより造形する。SMSプロセスを用いる場合、樹脂粉末Pは、赤外吸収特性を増強させる熱吸収剤、又は暗色物質などを1種以上含有することが好ましい。熱吸収剤、又は暗色物質としては、カーボンファイバー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びセルロースナノファイバーなどが例示される。SMSプロセスについては、例えば、米国特許第6,531,086号明細書に記載されているものを好適に用いることができる。
【0074】
<<立体造形物の製造方法>>
本実施形態の立体造形物の製造方法は、上記の立体造形用粉末を含む層を形成する層形成工程と、層に電磁照射して溶融させる溶融工程と、を繰り返し、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0075】
層形成工程としては、例えば、ローラ、ブレード、ブラシ等、又はこれらの組合せなどで層形成する工程が挙げられる。
【0076】
溶融工程としては、例えば、CO2レーザー、赤外照射源、マイクロウエーブ発生器、放射加熱器、LEDランプ等、又はこれらの組合せなどである電磁照射源を用いて溶融する工程が挙げられる。
【0077】
図6、及び
図7は、立体造形物の製造方法を説明するための概念図である。
図6、及び
図7を用いて、造形装置1を用いた立体造形物の製造方法について説明する。
【0078】
供給槽11に収容された樹脂粉末Pは、ヒータ11Hによって加熱される。供給槽5の温度としては、樹脂粒子Pをレーザー照射により溶融するとき反り返りを抑制する点では、樹脂粒子Pの融点以下のなるべく高い温度が好ましいが、供給槽11での樹脂粉末Pの溶融を防ぐ点では、樹脂粉末Pの融点より10℃以上低いことが好ましい。
図6の(A)に示すように、造形装置1のエンジンは、供給工程の一例として、ローラ12を駆動して、供給槽5の樹脂粉末Pをレーザー走査スペース13へ供給して整地することで、1層分の厚さTの粉末層を形成する。レーザー走査スペース13へ供給された樹脂粉末Pは、ヒータ13Hによって加熱される。レーザー走査スペース13の温度としては、樹脂粒子Pをレーザー照射により溶融するときに反り返りを抑制する点では、なるべく高い方が好ましいが、レーザー走査スペース13での樹脂粉末Pの溶融を防ぐ点では、樹脂粉末Pの融点より5℃以上低温であることが好ましい。
【0079】
造形装置1のエンジンは、3Dモデルから生成される複数の二次元データの入力を受け付ける。
図6の(B)に示すように、造形装置1のエンジンは、複数の二次元データのうち最も底面側の二次元データに基づいて、反射鏡19の反射面を移動させつつ、電磁照射源18にレーザーを照射させる。レーザーの出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、10ワット以上150ワット以下が好ましい。レーザーの照射により、粉末層のうち、最も底面側の二次元データによって示される画素に対応する位置の樹脂粉末Pが溶融する。レーザーの照射が完了すると、溶融した樹脂は硬化して、最も底面側の二次元データが示す形状の焼結層が形成される。
【0080】
焼結層の厚みTとしては、特に限定されないが、平均値として、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上が更に好ましい。また、焼結層の厚みTとしては、特に限定されないが、平均値として、200μm未満が好ましく、150μm未満がより好ましく、120μm未満が更に好ましい。
【0081】
図7の(A)に示すように、最も底面側の焼結層が形成されると、造形装置1のエンジンは、レーザー走査スペース13に1層分の厚さTの造形スペースが形成されるように、ピストン13Pによりレーザー走査スペース13を1層分の厚さT分降下させる。また、造形装置1のエンジンは、新たな樹脂粉末Pを供給可能とするため、ピストン11Pを上昇させる。続いて、
図7の(A)に示すように、造形装置1のエンジンは、ローラ12を駆動して、供給槽5の樹脂粉末Pをレーザー走査スペース13へ供給して整地することで、1層分の厚さTの粉末層を形成する。
【0082】
図7の(B)に示すように、造形装置1のエンジンは、複数の二次元データのうち最も底面側から2層目の二次元データに基づいて、反射鏡19の反射面を移動させつつ、電磁照射源18にレーザーを照射させる。これにより、粉末層のうち、最も底面側から2層目の二次元データによって示される画素に対応する位置の樹脂粉末Pが溶融する。レーザーの照射が完了すると、溶融した樹脂は硬化して、最も底面側から2層目の二次元データが示す形状の焼結層が、最も底面側の焼結層に積層された状態で形成される。
【0083】
造形装置1は、上記の供給工程と、層形成工程と、を繰り返すことで、焼結層を積層させる。複数の二次元データのすべてに基づく造形が完了すると、3Dモデルと同形状の立体物が得られる。
【0084】
<<立体造形物>>
立体造形物は、本発明の立体造形物の製造方法により好適に製造される。
【実施例】
【0085】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0086】
(実施例1)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(商品名:ノバデュラン5020、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、融点:218℃、ガラス転移温度:43℃)を融点より30℃高い温度にて撹拌後、ノズル口が円形形状である押し出し加工機(株式会社日本製鋼所製)を用いて繊維状に立体造形用樹脂溶解液を伸ばした。繊維は4倍延伸させることで繊維径(直径)が55μmとなるように調整した。その後、形成した繊維を同方向に並べて配置し、融点より50°低い温度で加熱しながら10MPaの圧力を付加することでシート状に一体化させた。なお、シート状に一体化した各繊維の断面形状は略多角形であった。更に、シート状に一体化させた繊維を、押し切り方式の裁断装置(株式会社荻野精機製作所製、NJシリーズ1200型)を用い、カット幅50μm、カット速度280spm(shots per minute)となるように調整して裁断した。その後、機械摩擦により表面溶融させるため、マルチパーパスミキサ(日本コークス工業社製)を用いて、得られた裁断物を、回転数9000rpmで20分間処理し立体造形用樹脂粉末を得た。これを実施例1の立体造形用樹脂粉末とした。
【0087】
(実施例2)
実施例1において、マルチパーパスミキサ(日本コークス工業社製)を用いて撹拌処理する時間を20分から10分に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の立体造形用樹脂粉末を得た。
【0088】
(実施例3)
実施例1において、マルチパーパスミキサ(日本コークス工業社製)を用いて撹拌処理する時間を20分から5分に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の立体造形用樹脂粉末を得た。
【0089】
(実施例4)
実施例3において、マルチパーパスミキサ(日本コークス工業社製)を用いて撹拌処理する回転数を9000rpmから6000rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の立体造形用樹脂粉末を得た。
【0090】
(実施例5)
実施例3において、マルチパーパスミキサ(日本コークス工業社製)を用いて撹拌処理する回転数を9000rpmから3000rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の立体造形用樹脂粉末を得た。
【0091】
(実施例6)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(商品名:ノバデュラン5020、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、融点:218℃、ガラス転移温度:43℃)を融点より30℃高い温度にて撹拌後、ノズル口が円形形状である押し出し加工機(株式会社日本製鋼所製)を用いて繊維状に立体造形用樹脂溶解液を伸ばした。繊維は4倍延伸させることで繊維径(直径)が55μmとなるように調整した。その後、形成した繊維を同方向に並べて配置し、水を付与してから冷却することで氷中に固定した。更に、氷中に固定した繊維を、押し切り方式の裁断装置(株式会社荻野精機製作所製、NJシリーズ1200型)を用い、カット幅50μm、カット速度280spm(shots per minute)となるように調整して裁断した。その後、機械摩擦により表面溶融させるため、マルチパーパスミキサ(日本コークス工業社製)を用いて、得られた裁断物を、回転数9000rpmで20分間処理し立体造形用樹脂粉末を得た。これを実施例6の立体造形用樹脂粉末とした。
【0092】
(実施例7)
実施例6において、マルチパーパスミキサ(日本コークス工業社製)を用いて撹拌処理する回転数を9000rpmから3000rpmに変更し、撹拌処理する時間を20分から5分に変更した以外は、実施例6と同様にして、実施例7の立体造形用樹脂粉末を得た。
【0093】
(実施例8)
実施例1において、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂をポリアセタール(POM)樹脂(商品名:ユピタール F10-01、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、融点:175℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例8の立体造形用樹脂粉末を得た。
【0094】
(実施例9)
実施例1において、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂をポリアミド12(PA12)樹脂(商品名:ダイアミドL2121、ダイセルエボニック社製、融点:172℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例9の立体造形用樹脂粉末を得た。
【0095】
(実施例10)
実施例1において、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂をポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂(商品名:HT P22PF、VICTREX社製、融点:343℃、ガラス転移温度:143℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例10の立体造形用樹脂粉末を得た。
【0096】
(実施例11)
実施例1において、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂をポリプロピレン(PP)樹脂(商品名:ノバテック MA3、日本ポリプロ株式会社製、融点:180℃、ガラス転移温度:0℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例11の立体造形用樹脂粉末を得た。
【0097】
(実施例12)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(商品名:ノバデュラン5020、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、融点:218℃、ガラス転移温度:43℃)を融点より30℃高い温度にて撹拌後、ノズル口が円形形状である押し出し加工機(株式会社日本製鋼所製)を用いて繊維状に立体造形用樹脂溶解液を伸ばした。繊維は4倍延伸させることで繊維径(直径)が55μmとなるように調整した。その後、形成した繊維を同方向に並べて可動式のクランプで固定した。更に、クランプで固定した繊維を、押し切り方式の裁断装置(株式会社荻野精機製作所製、NJシリーズ1200型)を用い、カット幅50μm、カット速度280spm(shots per minute)となるように調整して裁断した。その後、機械摩擦により表面溶融させるため、マルチパーパスミキサ(日本コークス工業社製)を用いて、得られた裁断物を、回転数1000rpmで20分間処理し立体造形用樹脂粉末を得た。これを実施例1の立体造形用樹脂粉末とした。
【0098】
(比較例1)
実施例1において、マルチパーパスミキサ(日本コークス工業社製)を用いた撹拌処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の立体造形用樹脂粉末を得た。
【0099】
(比較例2)
実施例6において、マルチパーパスミキサ(日本コークス工業社製)を用いた撹拌処理を行わなかった以外は、実施例6と同様にして、比較例2の立体造形用樹脂粉末を得た。
【0100】
(比較例3)
実施例12において、マルチパーパスミキサ(日本コークス工業社製)を用いた撹拌処理を行わなかった以外は、実施例12と同様にして、比較例3の立体造形用樹脂粉末を得た。
【0101】
各実施例、及び比較例で得られた立体造形用樹脂粉末について、以下のようにして、「粉末の形状」を観察し、「柱体の含有量」、及び「第一の面及び第二の面の外周領域の最短長」を測定した。結果を下記表1に示す。
【0102】
[粉末の形状]
得られた立体造形用樹脂粉末を、SEM(日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIME)を用いて150倍の倍率で写真撮影した。撮影して得たSEM画像中の立体造形用樹脂粉末において、第一の面と、第二の面と、側面と、を有し、且つSEMで観察される範囲において第一の面、及び第二の面の外周領域の少なくとも一方が一部領域または全領域で側面に沿って延伸した形状を有するものを柱体であると判断した。
【0103】
次に、柱体であると判断した立体造形用樹脂粒子の側面を観察し、柱体の高さ方向における線(角)で区分された複数の面が観察できる場合は第一の対向面及び第二の対向面が略多角形形状であると判断し、柱体の高さ方向における線が観察できずに滑らかな面が一様に観察できる場合は第一の対向面及び第二の対向面が略円形状(略真円形状または略楕円形状)であると判断した。
【0104】
[立体造形用粒子(柱体)の含有量]
得られた立体造形用樹脂粉末を、SEM(日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIME)を用いて150倍の倍率で写真撮影した。撮影して得たSEM画像中の立体造形用樹脂粉末において、第一の面と、第二の面と、側面と、を有し、且つSEMで観察される範囲において第一の面、及び第二の面の外周領域の少なくとも一方が一部領域または全領域で側面に沿って延伸した形状を有するものを柱体であると判断した。
【0105】
次に、SEM画像から立体造形用樹脂粉末の個数および柱体の個数を求め、柱体の個数を立体造形用樹脂粉末の個数で除算して100を乗算することで柱体の個数基準の含有量(%)を算出した。また、SEM画像から立体造形用樹脂粉末の個数および柱体の個数を求める際、立体造形用樹脂粉末および柱体における最長部が20μm以上であるもののみ、個数を数える対象とした。また、柱体の含有量を算出する際において数えた立体造形用樹脂粉末の個数は100個であった。
【0106】
[第一の面及び第二の面の外周領域の最短長]
得られた立体造形用樹脂粉末を、SEM(日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-7800FPRIME)を用いて150倍の倍率で写真撮影した。撮影して得たSEM画像中の立体造形用樹脂粉末において、第一の面と、第二の面と、側面と、を有し、且つSEMで観察される範囲において第一の面、及び第二の面の外周領域の少なくとも一方が一部領域または全領域で側面に沿って延伸した形状を有するものを柱体であると判断した。
【0107】
次に、SEMで観察される範囲の柱体において、第一の面および第二の面の外周領域の柱体の高さ方向における最短の長さ(μm)を算出した。
【0108】
【0109】
各実施例、及び比較例で得られた立体造形用樹脂粉末について、以下のようにして、「緩み密度」、「体積平均粒子系Dv」、「個数平均粒子径Dn」、及び「造形物の強度」を評価した。結果を下記表2に示す。
【0110】
[緩み密度]
作製した立体造形用樹脂粉末の緩み密度を、かさ比重計(JIS Z-2504対応、蔵持科学器械製)を用いて測定し、測定した緩み密度を各樹脂の真密度で除算して緩み充填率(%)を求めた。なお、C以上であった場合を実用可能であるとした。
(評価基準)
A:40%以上
B:35%以上40%未満
C:33%以上35%未満
D:33%未満
【0111】
[体積平均粒子系Dv、及び個数平均粒子径Dn]
得られた立体造形用樹脂粉末の体積平均粒子系Dv(μm)は、粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、microtrac MT3300EXII)を用いて、樹脂粉末ごとの粒子屈折率を使用し、溶媒は使用せず乾式(大気)法にて測定した。
【0112】
得られた立体造形用樹脂粉末の、個数平均粒子径Dn(μm)は、粒度分布測定装置(シスメックス製F-PIA3000)を用いて測定した。
【0113】
また、得られた体積平均粒子系Dv(μm)、及び個数平均粒子径Dn(μm)から体積平均粒子系/個数平均粒子径(Dv/Dn)を算出した。
【0114】
[造形物の強度]
SLS方式造形装置(株式会社リコー製、AM S5500P)の供給床中に得られた立体造形用樹脂粉末を加え、立体造形物の製造を行った。設定条件は、0.1mmの層平均厚み、10ワット以上150ワット以下のレーザー出力を設定し、0.1mmのレーザー走査スペース、融点より-3℃の温度を部品床温度に使用した。SLS方式造形装置にて、レーザー走査スペース13の中心部に、XY平面方向(
図5におけるローラ12が進行する平面方向)に長辺が向いた5個の引張試験標本(XY造形物)と、Z軸方向(
図5におけるローラ12が進行する平面に垂直な方向)に長辺が向いた5個の引張試験標本(Z造形物)を造形した。各々の造形物の間隔は5mm以上である。引張試験標本は、ISO(国際標準化機構)3167 Type1A 多目的犬骨様試験標本(標本は、80mm長さ、4mm厚さ、10mm幅の中心部分を有する)である。造形時間は、50時間に設定した。
【0115】
次に、同一の立体造形用樹脂粉末を用い、同一形状の5個の引張試験標本を射出成形により造形した。
【0116】
SLS方式造形装置で得られた引張試験標本であるXY造形物およびZ造形物と、射出成型で得られた引張試験標本について、ISO 527に準じた引張試験機(株式会社島津製作所製、AGS-5kN)を使用して、「引張強度」を測定した。なお、引張試験における試験速度は、50mm/分間にて一定とした。また、引張強度は、それぞれの引張試験標本について5回試験を行い、得られた測定値の平均値とした。そして、SLS方式造形装置で得られた引張試験標本の引張強度を射出成形で得られた引張試験標本の引張強度で除することで、SLS方式造形装置で得られた引張試験標本の引張強度を評価した。なお、XY造形物およびZ造形物における評価がともに射出成形物の60%以上であった場合を実用可能であるとした。
【0117】
【符号の説明】
【0118】
1 造形装置
11 供給槽
11H ヒータ
11P ピストン
12 ローラ
13 レーザー走査スペース
13H ヒータ
13P ピストン
18 電磁照射源
19 反射鏡
21 柱体
22 第一の面(端面の一例)
22a 第一の対向面
22b 第一の面の外周領域
23 第二の面(端面の一例)
23a 第二の対向面
23b 第二の面の外周領域
24 側面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0119】