(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】読取装置、画像読取装置、画像形成装置、及び読取方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20221129BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20221129BHJP
G03B 27/50 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H04N1/04 106A
G06T1/00 430D
G03B27/50 A
(21)【出願番号】P 2018193870
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】小山 忠明
(72)【発明者】
【氏名】佐々 朋紘
(72)【発明者】
【氏名】白土 寛貴
(72)【発明者】
【氏名】南原 康亮
(72)【発明者】
【氏名】中澤 政元
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-188760(JP,A)
【文献】特開2001-066254(JP,A)
【文献】特開2011-217339(JP,A)
【文献】特開平07-298002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 - 1/207
G06T 1/00
G03B 27/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に走査光を照射する照明手段と、
前記走査光の点灯及び消灯を切り換える光制御手段と、
前記被写体からの反射光を
光電変換し、前記被写体の画像を示す画像データを生成する受光手段と、
前記受光手段により連続的に前記画像データを取得する時間である取得時間を設定する取得時間設定手段と、
複数回行われる前記画像データの取得の間に生じるインターバルである取得間隔を設定する取得間隔設定手段と、
前記走査光の点灯時における前記
画像データと前記走査光の消灯時における前記
画像データとの差分を演算する演算手段と、
を備え、
前記受光手段は、前記消灯時における前記画像データを前記点灯時における前記画像データより先に取得し、
前記取得時間、又は前記取得時間と前記取得間隔との合計時間は、変動要因の変動周期の整数倍である、
読取装置。
【請求項2】
前記合計時間は、前記変動周期の1周期分である、
請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記取得時間は、第1の変動周期の整数倍であり、
前記合計時間は、第2の変動周期の整数倍である、
請求項1に記載の読取装置。
【請求項4】
前記取得時間は、第1の変動周期の1周期分であり、
前記合計時間は、第2の変動周期の整数倍である、
請求項1に記載の読取装置。
【請求項5】
前記取得時間は、第1の変動周期の1周期分であり、
前記取得間隔は、第2の変動周期の1周期分以下である、
請求項1に記載の読取装置。
【請求項6】
前記被写体のサイズを検出するための期間に前記受光手段により取得された
前記画像データから演算された前記差分に基づいて、前記被写体のサイズを検出するサイズ検出手段、
を更に備える請求項1~
5のいずれか1項に記載の読取装置。
【請求項7】
前記変動周期を検出する検出手段と、
を更に備え、
前記取得時間設定手段は、前記検出手段で検出された前記変動周期に基づいて前記取得時間を設定
し、
前記取得間隔設定手段は、前記検出手段で検出された前記変動周期に基づいて前記取得間隔を設定す
る、
請求項1~
6のいずれか1項に記載の読取装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記受光手段により取得された
前記画像データに基づいて前記変動周期を検出する、
請求項
7に記載の読取装置。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の読取装置と、
前記受光手段により取得された前記画像データに基づいて前記被写体の画像を読み取る手段と、
を備える画像読取装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置により読み取られた
前記被写体の画像を記録媒体に印刷する手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項11】
被写体に走査光を照射する
照明工程と、
前記走査光の点灯及び消灯を切り換える
光制御工程と、
前記被写体からの反射光を
光電変換し、前記被写体の画像を示す画像データを生成する
受光工程と、
前記受光工程により連続的に前記画像データを取得する時間である取得時間を設定する取得時間設定工程と、
複数回行われる前記画像データの取得の間に生じるインターバルである取得間隔を設定する取得間隔設定工程と、
前記走査光の点灯時における前記
画像データと前記走査光の消灯時における前記
画像データとの差分を演算する
演算工程と、
を含み、
前記受光工程は、前記消灯時における前記画像データを前記点灯時における前記画像データより先に取得し、
前記取得時間、又は前記取得時間と前記取得間隔との合計時間は、変動要因の変動周期の整数倍である、
読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置、画像読取装置、画像形成装置、及び読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿の画像等を読み取る読取装置において、画像を読み取るための本スキャンを行う前に原稿の一部を簡易的に読み取るプレスキャンを行うことにより、原稿のサイズを検出する処理が行われている。
【0003】
例えば、プレスキャンを行うことにより原稿のサイズを検出する装置において、原稿カバーと原稿台とのなす角度が基準角度になったときに光源を点灯させた状態で画像データを取得し、その後光源を消灯させた状態で再び画像データを取得し、これらの2つのデータを用いて外乱光の影響が除去されたデータを取得する技術が開示されている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外乱光等の変動要因が例えば蛍光灯等の光に起因する場合、変動要因の強度は所定の周波数(例えば100Hz又は120Hz)で周期的に変動する。このような場合、画像データを取得するタイミングに応じて画像データレベル(外乱光の強度を示す値の積分値等)が変動する可能性がある。このように変動要因の強度が周期的に変動する場合、上記従来技術のように点灯状態及び消灯状態で取得された2つのデータを用いても、変動要因による影響を十分に除去できない場合がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、周期的に変動する変動要因の影響を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、被写体に走査光を照射する照明手段と、前記走査光の点灯及び消灯を切り換える光制御手段と、前記被写体からの反射光を光電変換し、前記被写体の画像を示す画像データを生成する受光手段と、前記受光手段により連続的に前記画像データを取得する時間である取得時間を設定する取得時間設定手段と、複数回行われる前記画像データの取得の間に生じるインターバルである取得間隔を設定する取得間隔設定手段と、前記走査光の点灯時における前記画像データと前記走査光の消灯時における前記画像データとの差分を演算する演算手段と、を備え、前記受光手段は、前記消灯時における前記画像データを前記点灯時における前記画像データより先に取得し、前記取得時間、又は前記取得時間と前記取得間隔との合計時間は、変動要因の変動周期の整数倍である、ことを特徴とする読取装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、周期的に変動する変動要因の影響を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る読取装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る読取装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の第1の設定例に係る取得時間及び取得間隔の例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の第1の設定例において取得時間の開始時点が外乱光の点灯期間に含まれている場合の例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の第2の設定例に係る取得時間及び取得間隔の例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の第2の設定例において取得時間の開始時点が外乱光の点灯期間に含まれている場合の例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の第3の設定例に係る取得時間及び取得間隔の例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の比較例に係る取得時間及び取得間隔の例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態の第4の設定例に係る取得時間及び取得間隔の例を第1の外乱光を基準にして示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態の第4の設定例に係る取得時間及び取得間隔の例を第2の外乱光を基準にして示す図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態の第5の設定例に係る取得時間及び取得間隔の例を示す図である。
【
図12】
図12は、第2の比較例に係る取得時間及び取得間隔の例を示す図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態の第6の設定例に係る取得時間及び取得間隔の例を示す図である。
【
図14】
図14は、第1の実施形態に係る画像データの取得順序の例を示す図である。
【
図15】
図15は、第3の比較例に係る画像データの取得順序の例を示す図である。
【
図16】
図16は、第1の実施形態に係る第1のキャリッジの動きの例を示す図である。
【
図17】
図17は、第1の実施形態に係る複写機の構成例を示す図である。
【
図18】
図18は、第2の実施形態に係る読取装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図19】
図19は、第2の実施形態に係る周波数検出部が出力する取得時間設定値及び取得間隔設定値の例を示す図である。
【
図20】
図20は、第3の実施形態に係る読取装置の機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、読取装置、画像読取装置、画像形成装置、及び読取方法の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、及びいわゆる均等の範囲のものが含まれる。以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更、及び組み合わせを行うことができる。
【0010】
(第1の実施形態)
<読取装置のハードウェア構成>
図1は、第1の実施形態に係る読取装置1のハードウェア構成例を示す図である。図中、X軸は主走査方向に対応し、Y軸は副走査方向に対応し、Z軸は高さ方向に対応する。
【0011】
本実施形態に係る読取装置1は、コンタクトガラス11、基準白板12、光源13(照明手段)、第1のキャリッジ14、第2のキャリッジ15、レンズ16、センサボード17(受光手段)、スキャナモータ18、読取窓19、及びADF20を含む。
【0012】
コンタクトガラス11は、画像が読み取られる原稿21(被写体)が載置される透明の板状部材である。
【0013】
基準白板12は、光源13から走査光が照射された場合に、基準となる光を反射させるための白色の板状部材である。基準白板12からの反射光から得られる画像データは、シェーディング補正等に利用される。
【0014】
光源13は、走査光をコンタクトガラス11(原稿21)へ向けて射出するユニットであり、例えばLED、導光体等を利用して構成され得る。光源13は、原稿21のサイズを検出するサイズ検出処理及び原稿21の画像を読み取るための画像読取処理を実行するための走査光を射出する。
【0015】
第1のキャリッジ14は、光源13及び第1のミラー31を含み、スキャナモータ18の駆動力等により副走査方向(Y軸方向)に移動可能なユニットである。第1のミラー31は、光源13から射出された走査光の反射光を第2のキャリッジ15側へ反射させる。
【0016】
第2のキャリッジ15は、第2のミラー32及び第3のミラー33を含み、スキャナモータ18の駆動力等により副走査方向に移動可能なユニットである。第2のミラー32は、第1のキャリッジ14(第1のミラー31)からの反射光を第3のミラー33へ反射させる。第3のミラー33は、第2のミラー32からの反射光をレンズ16へ反射させる。
【0017】
レンズ16は、第2のキャリッジ15(第3のミラー33)からの反射光を集光する。
【0018】
センサボード17は、CCD(Charge-Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のラインセンサを利用して構成される。センサボード17は、レンズ16により集光された反射光を光電変換し、原稿21の画像を示す画像データ(読取データ)を生成する。
【0019】
スキャナモータ18は、所定の制御ユニットにより制御され、第1のキャリッジ14及び第2のキャリッジ15を移動させる。
【0020】
読取窓19は、コンタクトガラス11と同様に透明の板状部材から構成される部分である。ADF20を用いた読取処理時おいては、読取窓19を介して原稿21への走査光の照射及び原稿21からの反射光の受光が行われる。
【0021】
ADF20は、複数の原稿21を1枚ずつ読取窓19に供給する装置である。ADF20は、原稿トレイ41、搬送ドラム42、排紙ローラ43、排紙トレイ44、及び背景部45を含む。
【0022】
ADF20から1枚ずつ搬送された原稿21は読取窓19を通過したときに光源13からの走査光に露光される。原稿21からの反射光は第1のキャリッジ14及び第2のキャリッジ15の各ミラー31~33により折り返され、レンズ16を通ってセンサボード17上のラインセンサの受光面上で縮小結像される。
【0023】
コンタクトガラス11上に固定された原稿21を、両キャリッジ14,15を移動させながら読み取るフラットベット読取では、コンタクトガラス11の下部に配置された光源13からの走査光が原稿21に照射される。原稿21からの反射光は、両キャリッジ14,15のミラー31~33によって折り返され、レンズ16を通ってセンサボード17上のラインセンサの受光面上で縮小結像される。このとき、第2のキャリッジ15の移動速度は、第1のキャリッジ14の移動速度の1/2となる。なお、ここでは第1のキャリッジ14、第2のキャリッジ15、レンズ16、センサボード17等が個別に構成されているが、これらが一体となった構成であってもよい。
【0024】
<読取装置の機能構成>
図2は、第1の実施形態に係る読取装置1の機能構成例を示すブロック図である。読取装置1は、光源13及びセンサボード17を制御する制御部101を有する。制御部101は、光源制御部111(光制御手段)、取得時間設定部121、取得間隔設定部122、記憶部123、及び演算部124(演算手段)を含む。制御部101は、所定の処理を実行する1又は複数の電子回路を含んで構成される電子制御ユニットであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、CPUを制御するプログラム、各種論理回路等の協働により構成され得る。
【0025】
光源制御部111は、光源13による走査光の射出を制御するための処理を行う。光源制御部111は、所定の制御信号に応じて、光源13の点灯及び消灯の切り換え、走査光の光量の調整等を行う。光源制御部111は、例えば、光源13に含まれるLEDへの駆動電流の制御等を行う。
【0026】
取得時間設定部121は、取得時間を設定するための処理を行う。取得時間とは、センサボード17により連続的に画像データを取得する時間である。取得時間は、例えば、センサボード17に含まれる撮像素子の光電変換機能により生成された電気信号を連続的に取得する時間である。取得時間は、原稿サイズの検出に影響を与える可能性がある外乱光の変動周期に基づいて設定される。設定時間は予め設定されていてもよいし、動的に設定されてもよい。取得時間の設定方法については後述する。なお、外乱光は、原稿サイズの検出に影響を与える可能性がある変動要因の一例である。外乱光以外の変動要因としては、例えば、読取装置1自体の振動等が考えられる。
【0027】
取得間隔設定部122は、取得間隔を設定するための処理を行う。取得間隔とは、複数回行われる画像データの取得処理の間に生じるインターバルである。原稿サイズ検出時に複数回の取得処理が行われる場合には、取得時間と取得間隔とが交互に経過することとなる。取得時間と取得間隔との和を合計時間と称する。取得間隔は、原稿サイズの検出に影響を与える可能性がある外乱光の変動周期に基づいて設定される。取得間隔は予め設定されていてもよいし、動的に設定されてもよい。取得間隔の設定方法については後述する。
【0028】
記憶部123は、センサボード17により取得された画像データを記憶する。このとき、センサボード17は、1回の原稿サイズ検出処理において、走査光(光源13)が消灯された状態で取得された消灯画像データと、走査光が点灯された状態で取得された点灯画像データとを取得し、記憶部123は、同一の原稿サイズ検出処理に係る消灯画像データと点灯画像データとを紐付けて記憶する。
【0029】
演算部124は、記憶部123に記憶された、紐付けられた消灯画像データと点灯画像データとの差分を算出する。当該差分に基づいて、外乱光の影響を除去又は軽減させた画像データを得ることができる。差分を示す差分データの利用方法は特に限定されるべきものではないが、例えば、差分データは外乱光の影響を除去又は軽減した情報として、原稿21のサイズを特定するための処理に利用され得る。
【0030】
<取得時間及び取得間隔の設定例>
《1種類の変動周期に対応する場合》
以下に、外乱光の1種類の変動周期に対応する場合における取得時間及び取得間隔の設定例を第1~第3の設定例として説明する。
【0031】
図3は、第1の実施形態の第1の設定例に係る取得時間T1及び取得間隔T2の例を示す図である。ここで例示する外乱光は、周波数100Hz、すなわち10msの変動周期で点滅を繰り返す光である。外乱光の強度は、
図3に示すように波動状に変動する。
【0032】
第1の設定例においては、取得時間T1と取得間隔T2との和である合計時間Tsが外乱光の変動周期の2倍(20ms)になっている。
図3は、2回の取得時間T1のそれぞれにおいて消灯画像データD1(走査光を消灯させた状態で取得した画像データ)及び点灯画像データD2(走査光を点灯させた状態で取得した画像データ)が取得されることを示している。このように、合計時間Tsを変動周期の整数倍に設定することにより、消灯画像データD1のデータレベルの積分値と点灯画像データD2のデータレベルの積分値とを略一定にすることができる。これにより、周期的に変動する外乱光による影響を正確に把握して除去することが可能となる。
【0033】
なお、「2倍」という数値は「整数倍」の一例であり、合計時間Tsは変動周期の2倍以外の整数倍(例えば、1倍,3倍等)であってもよい。また、
図3においては、取得時間T1の開始時点Sが外乱光の消灯時点(外乱光の強度が0になる時)に同期している場合が示されているが、実施形態はこれに限られるものではない。
【0034】
図4は、第1の実施形態の第1の設定例において取得時間T1の開始時点Sが外乱光の点灯期間に含まれている場合の例を示す図である。このように、取得時間T1の開始時点Sが外乱光の消灯時点に同期していなくても、合計時間Tsが変動周期の整数倍に設定されていれば、消灯画像データD1のデータレベルの積分値と点灯画像データD2のデータレベルの積分値とは略一定となり、
図3に示す場合と同様の効果が得られる。
【0035】
図5は、第1の実施形態の第2の設定例に係る取得時間T1及び取得間隔T2の例を示す図である。第2の設定例においては、取得時間T1が外乱光の変動周期の2倍(20ms)となっている。このように、取得時間T1を変動周期の整数倍に設定することにより、
図3に示す第1の例と同様に、消灯画像データD1のデータレベルの積分値と点灯画像データD2のデータレベルの積分値とを略一定にすることができる。
【0036】
図6は、第1の実施形態の第2の設定例において取得時間T1の開始時点Sが外乱光の点灯期間に含まれている場合の例を示す図である。このように、取得時間T1の開始時点Sが外乱光の消灯時点に同期していなくても、取得時間T1が変動周期の整数倍に設定されていれば、消灯画像データD1のデータレベルの積分値と点灯画像データD2のデータレベルの積分値とは略一定となり、
図5に示す場合と同様の効果が得られる。
【0037】
図7は、第1の実施形態の第3の設定例に係る取得時間T1及び取得間隔T2の例を示す図である。第3の設定例においては、取得時間T1と取得間隔T2との和である合計時間Tsが外乱光の変動周期の1周期分(10ms)に相当している。これにより、サイズ検出処理に必要となる消灯画像データD1及び点灯画像データD2の取得に要する時間(データ取得時間)を最小限(2周期分)に抑えることができる。
【0038】
図8は、第1の比較例に係る取得時間T1及び取得間隔T2の例を示す図である。本比較例に係る合計時間Tsは、外乱光の変動周期の2周期分(20ms)に相当する。この場合、データ取得時間は4周期分(40ms)となり、
図7に示す場合より長くなる。
【0039】
通常、サイズ検出処理は画像読取処理の前に行われるため、本設定例のようにデータ取得時間を短縮することにより、サイズ検出処理及び画像読取処理を高速化することが可能となる。
【0040】
《2種類の変動周期に対応する場合》
以下に、外乱光の2種類の変動周期に対応する場合における取得時間及び取得間隔の設定例を第4~第6の設定例として説明する。
【0041】
図9は、第1の実施形態の第4の設定例に係る取得時間T1及び取得間隔T2の例を第1の外乱光を基準にして示す図である。
図10は、第1の実施形態の第4の設定例に係る取得時間T1及び取得間隔T2の例を第2の外乱光を基準にして示す図である。第1の外乱光は、100Hzの周波数、すなわち10msの変動周期で点滅を繰り返す光である。第2の外乱光は、120Hzの周波数、すなわち約8.3msの変動周期で点滅を繰り返す光である。
【0042】
第4の設定例においては、
図9及び
図10に示すように、取得時間T1が第1の外乱光の変動周期の2周期分(20ms)に相当し、取得時間T1と取得間隔T2との合計時間Tsが第2の外乱光の変動周期の3周期分(約25ms)に相当している。このように、2種類の外乱光の周波数(変動周期)が存在する場合には、取得時間T1を一方の変動周期の整数倍に設定し、合計時間Tsを他方の変動周期の整数倍に設定することにより、両方の外乱光の影響を低減させることができる。
【0043】
なお、ここでは取得時間T1を第1の外乱光の変動周期10msに対応させ、合計時間Tsを第2の外乱光の変動周期約8.3msに対応させる例を示したが、取得時間T1を第2の外乱光の変動周期約8.3msに対応させ、合計時間Tsを第1の外乱光の変動周期10msに対応させてもよい。
【0044】
図11は、第1の実施形態の第5の設定例に係る取得時間T1及び取得間隔T2の例を示す図である。第5の設定例においては、取得時間T1が第1の外乱光の変動周期の1周期分(10ms)に相当し、合計時間Tsが第2の外乱光の変動周期の3周期分(約25ms)に相当している。これにより、データ取得時間を短時間(本例では約35ms)に抑えることができる。
【0045】
図12は、第2の比較例に係る取得時間T1及び取得間隔T2の例を示す図である。本比較例に係る取得時間T1は第1の外乱光の変動周期に2周期分(20ms)に相当し、合計時間Tsは第2の外乱光の変動周期の4周期分(約33.3ms)に相当する。この場合、データ取得時間は約53.3msとなり、
図11に示す場合より長くなる。
【0046】
このように、本設定例によれば、2種類の変動周期に対応する場合であっても、データ取得時間を短縮し、サイズ検出処理及び画像読取処理を高速化することが可能となる。
【0047】
図13は、第1の実施形態の第6の設定例に係る取得時間T1及び取得間隔T2の例を示す図である。第6の設定例においては、取得時間T1が第1の外乱光の変動周期の1周期分(10ms)に相当し、取得間隔T2が第2の外乱光の変動周期の1周期分(約8.3ms)以下になっている。これにより、データ取得時間を最小限(本例では約26.7ms)に抑えることができ、
図11に示す場合より更に高速化を図ることができる。
【0048】
<画像データの取得順序について>
上記のように、本実施形態においては消灯画像データと点灯画像データとが取得されるが、消灯画像データを点灯画像データより先に取得することが好ましい。走査光を射出する光源13は、ON/OFFの切り換え時に状態が安定するまでの安定化時間を必要とする場合が多い。そこで、消灯画像データを点灯画像データより先に取得することにより、光源13をOFFにした後の安定化時間を待たずに消灯画像データを取得することができる。
【0049】
図14は、第1の実施形態に係る画像データの取得順序の例を示す図である。本実施形態においては、サイズ検出処理を開始させるためのトリガ(例えば、コンタクトガラス11とADF20の背景部45とのなす角度が所定の条件を満たす場合等)が検出されると、画像データ取得準備が行われ、画像データ取得準備完了後に、光源13がOFFとなっている状態で消灯画像データD1が取得される。消灯画像データD1の取得完了後、光源13がONとなり、光源ONの安定化時間の経過後、点灯画像データD2が取得される。
【0050】
図15は、第3の比較例に係る画像データの取得順序の例を示す図である。本比較例においては、画像データ取得準備の完了後に光源13がONとなり、光源ONの安定化時間の経過後に点灯画像データD2が取得される。そして、点灯画像データD2の取得完了後に光源13がOFFとなり、光源OFFの安定化時間の経過後に消灯画像データD1が取得される。
【0051】
上記のように、比較例においては、両画像データD1,D2を取得する間に光源ONの安定化時間と光源OFFの安定化時間の両方が含まれるが、本実施形態によれば、両画像データD1,D2を取得する間に光源OFFの安定化時間が含まれない。これにより、本実施形態におけるデータ取得時間は比較例におけるデータ取得時間より短くなる。
【0052】
<原稿サイズの検出位置>
図16は、第1の実施形態に係る第1のキャリッジ14の動きの例を示す図である。
図16に示すように、サイズ検出処理の実行時(原稿21の主走査方向(X軸方向)のサイズを検出する際)に、第1のキャリッジ14を所定の開始位置Psから画像読取処理の実行時における移動方向αとは反対の移動方向βに移動させてもよい。なお、サイズ検出処理の実行時に第1のキャリッジ14を画像読取処理の実行時における移動方向αと同一の方向に移動させてもよい。
【0053】
<画像形成装置の構成>
図17は、第1の実施形態に係る複写機201の構成例を示す図である。複写機201は、上記読取装置1を利用して構成される画像読取装置211を含む画像形成装置の一例である。複写機201は、画像読取装置211、給紙部212、及び画像形成部213を含む。
【0054】
画像読取装置211は、上記読取装置1のセンサボード17により取得された画像データに基づいて原稿21の画像を読み取る装置である。
【0055】
給紙部212は、サイズの異なる記録紙(記録媒体)を収納する給紙カセット221,222と、給紙カセット221,222に収納された記録紙を画像形成部213の画像形成位置まで搬送する各種ローラからなる給紙手段223とを有する。
【0056】
画像形成部213は、露光装置231と、感光体ドラム232と、現像装置233と、転写ベルト234と、定着装置235とを有する。画像形成部213は、画像読取装置211により読み取られた原稿21の画像データに基づいて、露光装置231により感光体ドラム232を露光して感光体ドラム232に潜像を形成し、現像装置233により感光体ドラム232に異なる色のトナーを供給して現像するようになっている。そして、画像形成部213は、転写ベルト234により感光体ドラム232に現像された像を給紙部212から供給された記録紙に転写した後、定着装置235により記録紙に転写されたトナー画像のトナーを溶融して、記録紙にカラー画像を定着するようになっている。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、周期的に変動する外乱光等の変動要因の影響を軽減することが可能となる。
【0058】
以下に、他の実施形態について図面を参照して説明するが、第1の実施形態と同一又は同様の作用効果を奏する箇所については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0059】
(第2の実施形態)
一般的な外乱光である蛍光灯の光は、公共の交流電源の周波数に依存した周期で点滅するが、当該交流電源に依存しない周期で点滅する外乱光がサイズ検出処理に影響を与える可能性がある。そこで、本実施形態は、外乱光の周波数を検出し、検出された周波数に応じて取得時間及び取得間隔を設定する手段を有する。
【0060】
図18は、第2の実施形態に係る読取装置2の機能構成例を示すブロック図である。本実施形態に係る読取装置2は、外乱光の周波数(変動周期)を検出し、その検出結果に基づいて取得時間設定値及び取得間隔設定値を出力する周波数検出部302(検出手段)を有する。周波数検出部302の具体的な構成は特に限定されるべきものではないが、周波数検出部302は、例えば、読取装置2の内部又は外部に設置され外乱光の強度を電圧に変換する光電変換素子等を利用して構成され得る。
【0061】
本実施形態に係る制御部301の取得時間設定部311は、周波数検出部302から出力された取得時間設定値に基づいて取得時間を設定し、設定した取得時間を示す取得時間制御信号をセンサボード17に出力する。取得間隔設定部312は、周波数検出部302から出力された取得間隔設定値に基づいて取得間隔を設定し、設定した取得間隔を示す取得間隔制御信号をセンサボード17に出力する。センサボード17は、受信した取得時間制御信号及び取得間隔制御信号が示す取得時間及び取得間隔で画像データ(消灯画像データ及び点灯画像データ)を取得する。
【0062】
図19は、第2の実施形態に係る周波数検出部302が出力する取得時間設定値及び取得間隔設定値の例を示す図である。ここでは、周波数40Hz及び周波数50Hzの2種類の外乱光が存在する場合を例示する。このような場合、周波数検出部302は、例えば、取得時間設定値を40Hzの周期の整数倍(1倍)である25msとする。また、周波数検出302は、合計時間が50Hzの周期の整数倍(2倍)である40msとなるように、取得間隔設定値を15msとする。なお、ここで示した取得時間設定値及び取得間隔設定値は単なる例示であり、取得時間設定値及び取得間隔設定値は、第1の実施形態で示した各種の設定例のように状況に応じて適宜設定され得るものである。
【0063】
また、本実施形態に係る制御部301は、
図18に示すように、サイズ検出部313を有する。サイズ検出部313は、演算部124による演算結果、すなわち消灯画像データと点灯画像データとの差分を示す差分データに基づいて、原稿21の全体的なサイズ(例えばA4、B5等)を検出する処理を行う。
【0064】
本実施形態によれば、外乱光等の変動要因の周波数(変動周期)が一般的な固定値でない場合、周波数が変化する場合等であっても、変動要因の影響を効果的に除去することが可能となる。
【0065】
(第3の実施形態)
図20は、第3の実施形態に係る読取装置3の機能構成例を示すブロック図である。本実施形態に係る周波数検出部302は、記憶部123に記憶された画像データに基づいて外乱光の周波数を検出する。例えば、記憶部123に記憶された画像データを1ライン毎に比較して画像データレベルの増減の周期を算出すること等により、外乱光の周波数を検出することができる。また、センサボード17は、背景部45が開けられたタイミングで(コンタクトガラス11と背景部45とのなす角度が0°から所定角度以上になったとき等に)、消灯画像データを取得することが好ましい。
【0066】
本実施形態によれば、周波数検出部302をソフトウェア的に構成することができ、装置の小型化、コストの削減等を図ることができる。
【0067】
上記実施形態に係る読取装置1~3の機能を実現するプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。また、プログラムを、インターネット等のネットワークに接続された他のコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、プログラムをネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図するものではない。この新規な実施形態はその他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更、及び組み合わせを行うことができる。この実施形態及びその変形は発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1~3 読取装置
11 コンタクトガラス
12 基準白板
13 光源
14 第1のキャリッジ
15 第2のキャリッジ
16 レンズ
17 センサボード
18 スキャナモータ
19 読取窓
20 ADF
21 原稿
31 第1のミラー
32 第2のミラー
33 第3のミラー
41 原稿トレイ
42 搬送ドラム
43 排紙ローラ
44 排紙トレイ
45 背景部
101,301,401 制御部
111 光源制御部
121,311 取得時間設定部
122,312 取得間隔設定部
123 記憶部
124 演算部
201 複写機(画像形成装置)
211 画像読取装置
212 給紙部
213 画像形成部
221,222 給紙カセット
223 給紙手段
231 露光装置
232 感光体ドラム
233 現像装置
234 転写ベルト
302 周波数検出部
313 サイズ検出部
D1 消灯画像データ
D2 点灯画像データ
P 開始位置
S 開始時点
T1 取得時間
T2 取得間隔
Ts 合計時間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】