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特許7183685ポリウレタンインテグラルスキンフォーム用組成物、ポリウレタンインテグラルスキンフォーム、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ポリウレタンインテグラルスキンフォーム用組成物、ポリウレタンインテグラルスキンフォーム、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/76 20060101AFI20221129BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20221129BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20221129BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
C08G18/76 057
C08G18/10
C08G18/48 054
C08G101:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018196552
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2020063379
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長岡 毅
(72)【発明者】
【氏名】伊東 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】吉井 直哉
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-149205(JP,A)
【文献】特表2002-525403(JP,A)
【文献】特表2000-509423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、及び発泡剤(D)を含むインテグラルスキンフォーム用組成物であって、
有機ポリイソシアネート組成物(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを含むイソシアネート成分とジプロピレングリコールとから得られるイソシアネート基末端プレポリマーを含むものであり、
該ジフェニルメタンジイソシアネートを含むイソシアネート成分中の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの合計含有率が97質量%以上であり、かつ
該ジフェニルメタンジイソシアネートを含むイソシアネート成分中のジフェニルメタンジイソシアネートに占める2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの合計含有率が3質量%未満であること、及び
有機ポリイソシアネート組成物(A)のイソシアネート基含有率が15~25質量%であり、
ポリオール成分(B)が、数平均分子量600~3,500のポリテトラメチレングリコール(b1)を含有し、
ポリオール成分(B)中のポリテトラメチレングリコール(b1)の含有量が80質量%以上であることを特徴とする、インテグラルスキンフォーム用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のインテグラルスキンフォーム用組成物から得られるインテグラルスキンフォーム。
【請求項3】
フォーム密度が200~400kg/mであることを特徴とする請求項2に記載のインテグラルスキンフォーム。
【請求項4】
反発弾性率が50%以上であり、引裂強さが100N/cm以上であり、かつSplit Tear Strengthが2.50kg/cm以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載のインテグラルスキンフォーム。
【請求項5】
有機ポリイソシアネート組成物(A)と、ポリオール成分(B)とを、触媒(C)、及び発泡剤(D)の存在下、反応、発泡させて得られる、インテグラルスキンフォームの製造方法であって、
有機ポリイソシアネート組成物(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを含むイソシアネート成分とジプロピレングリコールとから得られるイソシアネート基末端プレポリマーを含むものであり、
該ジフェニルメタンジイソシアネートを含むイソシアネート成分中の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの合計含有率が97質量%以上であり、かつ
該ジフェニルメタンジイソシアネートを含むイソシアネート成分中のジフェニルメタンジイソシアネートに占める2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの合計含有率が3質量%未満であること、及び
有機ポリイソシアネート組成物(A)のイソシアネート基含有率が15~25質量%であり、
ポリオール成分(B)が、数平均分子量600~3,500のポリテトラメチレングリコール(b1)を含有し、
ポリオール成分(B)中のポリテトラメチレングリコール(b1)の含有量が80質量%以上であることを特徴とする、インテグラルスキンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンインテグラルスキンフォーム(以下、「ISF」と称する場合がある。)用組成物、ISF、及び当該ISFの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ISFは、その生産性の良さ、機械的強度、感触の良さ等から、靴底用素材やステアリングホイールをはじめとする自動車の内装部品として広く使用されているが、高性能な靴底等に好適な高い反発弾性率を有しつつ、優れた機械的強度を有するISFの技術はこれまで知られていなかった。
【0003】
特許文献1には、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と称する場合がある。)を使用した比較的高い密度を有する高弾性軟質ポリウレタンフォームが提案されている。
【0004】
しかしながら、当該ポリウレタンフォームは架橋剤を使用し、化学的架橋量を増やすことで高い弾性率を実現しているものであり、靴底用樹脂等として十分な伸び率や引き裂き強度等の機械的強度を得られない恐れがある。
【0005】
また、特許文献2には、靴底部材としての低密度ポリウレタン成形物を与える方法が記載されているが複雑な工程であり、さらに開示されている弾性率では十分なものではなかった。
【0006】
さらに、特許文献3には高い弾性率のポリウレタンフォームを与える方法が記載されている。
【0007】
しかしながら、当該ポリウレタンフォームはMDIのポリメリック体やカルボジイミド変性体を使用していることから高い機械強度を得られない恐れがある。さらに使用されるイソシアネートは結晶性の高いポリテトラメチレンエーテルグリコールを使用し、イソシアネート基含有率は低いため、高粘度であり、室温において液状を保つことが困難と予想され、取り扱いに注意が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-342343号公報
【文献】特表2015-507513号公報
【文献】特開2017-105913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、高反発弾性率を有し、機械的強度や生産性に優れるISFの提供、及び該ISFの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討研究を重ねた結果、特定のMDI成分と、ジプロピレングリコール(以下、「DPG」と称する場合がある。)とから得られる、特定のイソシアネート基含有率を有する有機ポリイソシアネート組成物を使用することで、これらの課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は,以下の(1)~(6)の実施形態を含む。
【0012】
(1)有機ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、及び発泡剤(D)を含むISF用組成物であって、有機ポリイソシアネート組成物(A)が、MDIを含むイソシアネート成分とDPGとから得られるイソシアネート基末端プレポリマーを含むものであり、該MDIを含むイソシアネート成分中の4,4’―MDIと2,2’―MDIと2,4’―MDIの合計含有率が97質量%以上であり、かつ該MDIを含むイソシアネート成分中のMDIに占める2,2’―MDIと2,4’―MDIの合計含有率が3質量%未満であること、及び有機ポリイソシアネート組成物(A)のイソシアネート基含有率が15~25質量%であることを特徴とする、ISF用組成物。
【0013】
(2)ポリオール成分(B)が、数平均分子量600~3,500のポリテトラメチレングリコール(b1)(以下、「PTMEG」と称する場合がある。)を含有することを特徴とする、上記(1)に記載のISF用組成物。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)に記載のISF用組成物から得られるISF。
【0015】
(4)フォーム密度が200~400kg/mであることを特徴とする上記(3)に記載のISF。
【0016】
(5)反発弾性率が50%以上であり、引裂強さが100N/cm以上であり、かつSplit Tear Strengthが2.50kg/cm以上であることを特徴とする上記(3)又は(4)に記載のISF。
【0017】
(6)有機ポリイソシアネート組成物(A)と、ポリオール成分(B)とを、触媒(C)、及び発泡剤(D)の存在下、反応、発泡させて得られる、ISFの製造方法であって、有機ポリイソシアネート組成物(A)が、MDIを含むイソシアネート成分とDPGとから得られるイソシアネート基末端プレポリマーを含むものであり、該MDIを含むイソシアネート成分中の4,4’―MDIと2,2’―MDIと2,4’―MDIの合計含有率が97質量%以上であり、かつ該MDIを含むイソシアネート成分中のMDIに占める2,2’―MDIと2,4’―MDIの合計含有率が3質量%未満であること、及び有機ポリイソシアネート組成物(A)のイソシアネート基含有率が15~25質量%であることを特徴とする、ISFの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ISFにおいて高い反発弾性を有しつつ、機械的強度を顕著に向上させることができる。また、本発明により得られたISFは、靴底用樹脂等高い弾性性能が必要な素材に広く利用でき非常に有用である。さらに、ISF製造の際、一般的な発泡装置で高い生産安定性を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明をさらに詳細に説明する。
【0020】
本発明のISF用組成物は、有機ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、及び発泡剤(D)を含むものであって、有機ポリイソシアネート組成物(A)は、MDIとDPGとのイソシアネート基末端プレポリマーを含むものである。
【0021】
このイソシアネート基末端プレポリマーを得る際に用いるMDIを含むイソシアネート成分は、該イソシアネート成分中にMDI(4,4’―MDI、2,2’―MDI、2,4’―MDIを含む)を合計で97質量%以上含み、かつ該MDI中の2,2’―MDIと2,4’―MDIの合計含有量(以後、MDIアイソマー含有量とも言う。)が3質量%未満であることを特徴とする。
【0022】
本発明におけるMDIを含むイソシアネート成分中のMDI含有率は97質量%以上であり、98質量%以上であることが好ましい。MDI含有率が97質量%未満の場合は、イソシアネート官能基数増大によるISFの機械的強度低下が生じる。
【0023】
また、MDI中のMDIアイソマー含有比率は3質量%未満であり、2質量%未満であることが好ましい。MDIアイソマー含有比率が3質量%以上の場合は、MDI部分の結晶性が低下することにより、ISFの機械的強度低下が生じる。
【0024】
本発明で使用する有機ポリイソシアネート組成物(A)のイソシアネート基含有率は、15~25質量%であり、16~24質量%であることが好ましい。イソシアネート基含有率が15質量%を下回る場合、有機ポリイソシアネートの粘度が非常に高くなり、発泡装置への導入が困難になると共に、一般的な発泡装置のイソシアネートやポリオール類の混合能力では十分均一に混合されない。一方25質量%以上のイソシアネート基含有率では、イソシアネートとポリオール、発泡剤としての水との反応がランダムとなり、特にイソシアネートと水との反応によって生じるウレア結合繰り返し単位の巨大化が原因として推定される機械的強度の顕著な低下が見られる。
【0025】
本発明で使用する有機ポリイソシアネート組成物(A)はMDIを含むイソシアネート成分とDPGとから得られるイソシアネート基末端プレポリマーの他に、PTMEGとから得られるイソシアネート基末端プレポリマーを併用することができる。有機ポリイソシアネート組成物(A)を得る際に用いるPTMEGとは、数平均分子量1,250~3,500であり、好ましくは数平均分子量1,500~3,500である。数平均分子量が下限を下回ると、PTMEG鎖がソフトセグメントとして十分機能しなくなるために反発弾性率目標値の達成が困難となる。一方で、上限値を超える分子量では靴底等の用途に好適なISFとしての硬さが得られなくなると共に、PTMEG鎖の結晶性が高まり、有機ポリイソシアネートの粘度が高くなりすぎるという問題がある。
【0026】
有機ポリイソシアネート組成物(A)を得る際に用いるPTMEGは、テトラヒドロフランのみを開環重合したものであることが好ましく、また、2官能であることが好ましい。このようなPTMEGを用いることで、反発弾性率、伸び率、引裂き強度を中心とした良好な機械物性を得ることができるため好ましい。
【0027】
また、PTMEGを重合する前の原料モノマー成分として10モル%までであれば、テトラヒドロフラン以外のエーテル単位を分子内に導入しても本発明の効果を大きく損なうことは無い。一般的にはPTMEGの常温液状化を目的とした1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の導入が可能である。
【0028】
また、有機ポリイソシアネート組成物(A)に用いるMDIは、類似構造体のポリフェニレンポリメチルポリイソシアネート(ポリメリックMDI、以後p-MDIとも言う。)を含むことも可能であるが、イソシアネート官能基数増大によるISFの伸び率低下、p-MDI由来のISF着色等が生じる恐れがあるため、有機ポリイソシアネート組成物(A)に使用されるMDIに対し、p-MDIの含有率は3質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、p-MDIを用いないことが最も好ましい。
【0029】
有機ポリイソシアネート組成物(A)は、上記したウレタン変性体を含むものであるが、MDIと常温において液状であるMDI(以下、「液状MDI」と称する。)を併用し、これをDPGやPTMEGにてウレタン変性したイソシアネート基末端プレポリマーを含む有機ポリイソシアネート組成物も好適に用いることができる。
【0030】
有機ポリイソシアネート組成物(A)に用いることができる液状MDIは、公知の手法で得られるものを挙げることができ、例えば、
(1)MDIを200℃以上で反応させる、
(2)MDIにトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート等を触媒として添加した上で、170℃以上で反応させる、又は、
(3)MDIに3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド等のホスホレン化合物を触媒として添加した上で、70℃以上で反応させ、所定の反応率で反応停止剤を添加する、
等の方法で得られる、MDIの部分カルボジイミド変性物、及び部分ウレトンイミン変性物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものである。
【0031】
また、上記反応が終了し、反応停止剤を添加した後、得られた液状MDIを50℃以下の温度で24時間以上保管し、カルボジイミド結合の大部分をウレトンイミン結合へ変換した状態において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等、ウレトンイミン結合を分解しない方法で測定される液状MDI中のカルボジイミド変性MDI及びウレトンイミン変性MDIの含有率の合計は、5~40質量%が好ましく、更に好ましくは10~35質量%である。カルボジイミド変性MDI及びウレトンイミン変性MDI含有率の合計が前記範囲内であることにより好適なイソシアネート官能基数とすることが可能となり、使用に際しての粘度も適切にすることができる。さらにISFとした場合にも強度や反発弾性率を満足することができる。
【0032】
この液状MDIは、カルボジイミド変性前又はウレトンイミン変性前のMDIとして、2,2’-MDI、2,4’-MDIの含有率合計は、60質量%以下が好ましい。60質量%を超えるアイソマー含有率の場合、反応性低下により生産性が悪化する恐れがある。
【0033】
さらに有機ポリイソシアネート(A)に用いることができる液状MDIは、カルボジイミド変性前又はウレトンイミン変性前のMDIに少量のp-MDIを含むことが可能である。
【0034】
しかし、液状MDIに比較しp-MDIは高いイソシアネート平均官能基数を有しており、カルボジイミド変性前又はウレトンイミン変性前のMDIとして、最大3質量%、さらに好ましくは2質量%以下に留める必要があり、含まないことが最も好ましい。
【0035】
本発明におけるPTMEG(b1)としては、数平均分子量600~3,500が好ましく、さらに好ましくは1,000~3,500である。また、ポリオール成分(B)中の(b1)含有量は80質量%以上が好ましく、さらに好ましくは90質量%以上である。下限以下では、得られるISFの反発弾性率が十分高くならず、引裂き強度等の機械物性が低下する恐れがある。
【0036】
本発明に使用するポリオール成分(B)として、官能基数2~4の架橋剤(b2)を用いることができる。具体的には、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレンエーテルグリコール、シクロヘキサンジエタノール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等を用いることができる。これらのうち特に反応性が高いアミン系アルコールが好ましい。
【0037】
また、ポリオール成分(B)として、その他ポリオール(b3)を上記反発弾性率を低下させない範囲で添加することが出来る。その他ポリオールとしては、ウレタン樹脂に一般的に使用されるポリプロピレンエーテルポリオール(略称PPG)、ポリエステルポリオール、ひまし油等の天然由来ポリオール、ポリブタジエンポリオール、ダイマー酸エステルポリオールなどが上げられる。
【0038】
触媒(C)としては、当該分野において公知である各種ウレタン化触媒が使用できる。例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N”N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ブチル-2-メチルイミダゾール等の3級アミン及びこれらの有機酸塩、ジメチルエタノールアミン、N-トリオキシエチレン-N,N-ジメチルアミン、N,N-ジメチル-N-ヘキサノールアミン等のアミノアルコール類、及びこれらの有機酸塩、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ナフテン酸亜鉛等の有機金属化合物類等が挙げられる。これら触媒は、必要に応じて2種類以上を混合して使用することができる。また、これら触媒を低粘度化、液状化、成形機械の計量精度向上のための増容、等の理由で各種溶媒、ポリオール、可塑剤、等に溶解して使用することも可能である。
【0039】
本発明に使用される発泡剤(D)としては水が望ましいが、必要に応じて地球環境等に重大な影響を及ぼすことが少ない公知のものも使用することができる。この公知の発泡剤には不活性低沸点溶剤と反応性発泡剤の二種があり、前者としてはジクロルメタン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、アセトン、蟻酸メチル、ヘキサン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン等、さらに窒素ガス、炭酸ガスや空気等を挙げることができる。後者の例としては、室温より高い温度等により分解して気体を発生する、例えばアゾ化合物や炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0040】
本発明においては、ISF用組成物の粘度を低下させるために粘度低減剤を使用することができる。粘度低減剤としては、一般に高粘度液体の粘度低減に使用される液状物質の内、イソシアネート基と反応する活性水素基、カルボジイミド基、ホルミル基などを含有しないもの等を挙げることができる。このようなものとしては、粘度低減効果の面から25℃における粘度が100mPa・s以下、取扱いの面から融点が0℃以下、安全性の面からJIS K2265の方法で計測される引火点が70℃以上、毒性、環境汚染性等が低いものであることが好ましい。具体的には、例えばフタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸系ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリスβクロロプロピル、アセチルクエン酸トリブチル、ジベンジルエーテル等が上げられる。
【0041】
粘度低減剤の添加量は有機ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、発泡剤(D)の合計量に対して15質量%以下が好ましい。15質量%を超えると、ISF成形物の成形性悪化や反発弾性率及び引裂き強度等の機械物性が低下する恐れがある。なお、粘度低減剤は、予め有機ポリイソシアネート組成物(A)、又はポリオール成分(B)に添加しても良いし、フォーム製造時に別に添加しても良い。
【0042】
本発明においては、必要に応じて助剤を使用してもよい。このような助剤としては、例えば、整泡剤、顔料又は染料、マイカ、ガラス繊維等の補強材又は充填剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、防カビ剤、抗菌剤、VOCキャッチャー剤等が挙げられ、必要に応じて使用することができる。
【0043】
整泡剤としては、一般にポリウレタンフォーム製造に使用されている公知のものを挙げることができる。例えば、ポリジメチルシロキサン-ポリアルキレンオキシドブロックポリマー、ビニルシラン-ポリアルキレンポリオール重合体等を挙げる事ができる。
【0044】
本発明のISFは、上記したISF用組成物から得ることができる。当該ISFは、例えば、有機ポリイソシアネート組成物(A)とポリオール成分(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)、及び必要に応じて助剤等の存在下、攪拌混合後、金型内に注入して得られるモールドフォーム、又は上下左右に壁面を有するコンベアーに注入することで得られる連続シート状フォーム等として製造される。両製造方法とも、有機ポリイソシアネート組成物(A)以外の成分をあらかじめ混合してポリオールプレミックスを準備し、これと有機ポリイソシアネート組成物(A)との2成分を混合発泡させる方法、一部又は全ての成分を別々に攪拌混合機の混合ヘッドに導入し、発泡する方法が可能である。
【0045】
本発明の有機ポリイソシアネート組成物中の全イソシアネート基と、水を含むイソシアネート反応性化合物中の全イソシアネート反応性基のモル比(イソシアネート基/NCO反応性基)としては、0.4~1.2(イソシアネートインデックス(NCO INDEX)=40~120)であることが好ましく、0.5~1.1(NCO INDEX=50~110)であることがより好ましい。
【0046】
なお、本発明によるISFの密度は、200~400kg/mであることが好ましい。特に経済性や生産性を考慮すると350kg/m以下に調整することが好ましい。
【0047】
触媒(C)の種類や配合量にもよるが、水のみを発泡剤として使用する場合、この密度帯域を達成するために必要な水の添加部数は、ポリオール成分(B)100質量部に対し0.3~3.0質量部であることが好ましい。
【0048】
以上のように、本発明のISFは、その用途を特に限定するものではないが、反発弾性率が50%以上、引裂強さが100N/cm以上、Split Tear strengthが2.50kg/cm以上というように、高反発弾性率、高機械的強度を有するため、従来の靴底、靴底の一部、靴の中敷等に用いられる発泡樹脂やISFを、本発明によるISFに置き換えることで、非常に優れた使用感、強度、耐久性を得ることができる。
【実施例
【0049】
以下、さらに本発明の具体的実施例について述べるが、本実施例のみによって本発明が限定されることはない。なお実施例において、すべての部及び%は特に断りの無い限り質量基準である。
【0050】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例I-1]
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、低アイソマー比率MDIを859g仕込み、75℃まで昇温した後、DPGを141g仕込み、温度を維持したまま攪拌羽根で均一に混合しながら3時間ウレタン化反応を行った。40℃まで冷却して有機ポリイソシアネート組成物「I-1」(MDI含有比率100%、MDIアイソマー比率1%、NCO基含有率20.0%、粘度2330mPa・s at 40℃)を得た。
【0051】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例I-2]
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、低アイソマー比率MDIを773g仕込み、75℃まで昇温した後、DPGを127g仕込み、温度を維持したまま攪拌羽根で均一に混合しながら3時間ウレタン化反応を行った。その後、DOMを100g仕込み、50℃にて1時間攪拌羽根で均一に混合した後40℃まで冷却して有機ポリイソシアネート組成物「I-2」(MDI含有比率100%、MDIアイソマー比率1%、NCO基含有率18.0%、粘度860mPa・s at 40℃)を得た。
【0052】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例I-5]
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、低アイソマー比率MDIを577g、液状MDIを115g仕込み、75℃まで昇温した後、DPGを107g仕込み、温度を維持したまま攪拌羽根で均一に混合しながら3時間ウレタン化反応を行った。その後、DOMを200g仕込み、50℃にて1時間攪拌羽根で均一に混合した後40℃まで冷却して有機ポリイソシアネート組成物「I-5」(MDI含有比率95%、MDIアイソマー比率1%、NCO基含有率18.0%、粘度450mPa・s at 40℃)を得た。
【0053】
[イソシアネート合成例I-3~4、I-6~11]
表1~表2に示した原料を用い、I-1、I-2、I-5と同様の操作を行うことで有機ポリイソシアネート組成物I-3~4、I-6~11を得た。表中の原料配合は、質量部にて示した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
[ポリオール成分の調製]
表3に示す割合で原料を均一に混合し、ポリオールプレミックスとして、ポリオール成分P-1~P-2を調製した。なお、原料配合は質量部にて示した。
【0057】
【表3】
【0058】
表1~表3で使用した原料は以下の通り。
・低アイソマー比率MDI:MDI含有比率100%、MDIアイソマー比率1%、NCO基含有率33.5%。
・高アイソマー比率MDI:MDI含有比率100%、MDIアイソマー比率55%、NCO基含有率33.5%。
・液状MDI:MDI含有比率70%、MDIアイソマー比率1%、NCO基含有率29.0%のカルボジイミド変性及びウレトンイミン変性MDI
・DPG:ジプロピレングリコール(ADEKA社製)
・DOM:ビス(2-エチルヘキシル)マレエート(大八化学工業社製)
・PG:プロピレングリコール(東京化成工業社製)
・DEG:ジエチレングリコール(三菱ケミカル社製)
・MPO:2-メチル-1,3-プロパンジオール(東京化成工業社製)
・PTG-3000SN:PTMEG、数平均分子量=3000(商品名、保土谷化学工業社製)
・PTMEG2000:PTMEG、数平均分子量=2000(商品名、INVISTA社製)
・DABCO NCIM:1-イソブチル-2-メチルイミダゾール(商品名、エボニック社製)
・SRX-280A:シリコーン整泡剤(商品名、東レ・ダウコーニング社製)。
【0059】
[ISFの作製]
有機ポリイソシアネート組成物としてイソシアネート基末端プレポリマーI-1~I-11、ポリオールプレミックスP-1~P-2を用いISFを作製した。
【0060】
即ち、表4~5に示す割合で温度40℃に調整した各有機ポリイソシアネート組成物とポリオールプレミックスとを7000r.p.m.の回転数で卓上ミキサーにより混合撹拌した。60℃に加熱し、離型剤塗布後、乾燥した200mm×200mm×10mmサイズの金属モールドにこの混合物を注入した後、蓋をして7分間硬化させた。硬化後、金型から取り出し、ISFのテストピース(以下TPと略す)を得た。得られたTPについては、70℃で24時間加熱養生した後に、密度、硬さ、機械物性等の評価を実施した。
【0061】
<物性測定>
・密度:JIS K7222に準じて測定を行った。
・硬さ(アスカーC、スキン付き表面硬度):JIS K7312準じて測定を行った。
・反発弾性率:JIS K6400-3に準じて測定を行った。
・TR(引裂き強度、B型ダンベル使用):JIS K6400-5に準じて測定を行った。
・Split Tear StrengthはISO20875に準じて測定を行った。
【0062】
<総合評価>
以下の3項目すべての物性項目において基準値を超えたものを良好と判断した。
・反発弾性率:50%以上
・TR:100N/cm以上
・Split Tear Strength:2.50kg/cm以上。
【0063】
作製したISFの評価結果を表4~表5に記載する。
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
表4~5から明らかなように、本願発明の室温で液状のイソシアネートから得られるISFは、高い反発弾性率、優れた機械的強度を有する。
【0067】
本発明による従来市場に無い高い反発弾性率と優れた機械的物性を有するポリウレタンインテグラルスキンフォームは、靴底、靴のインソール、産業用機械の部品、玩具、楽器等に、使用感の向上、軽量化等の優れた効果をもたらす。