(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】トランスインピーダンスアンプ
(51)【国際特許分類】
H03F 1/34 20060101AFI20221129BHJP
H03F 1/48 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H03F1/34
H03F1/48
(21)【出願番号】P 2018207228
(22)【出願日】2018-11-02
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】田仲 顕至
(72)【発明者】
【氏名】三浦 直樹
(72)【発明者】
【氏名】福山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】野坂 秀之
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-014605(JP,A)
【文献】特開2015-019105(JP,A)
【文献】特開2015-154485(JP,A)
【文献】特表2013-522955(JP,A)
【文献】特表2013-529435(JP,A)
【文献】国際公開第2012/036207(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-H03F3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MOSトランジスタと、
前記MOSトランジスタのドレインにその一端が接続された抵抗と、
前記抵抗の他端と電流信号の入力ラインとの間に接続された第1のインダクタと、
前記MOSトランジスタのゲートと前記電流信号の入力ラインとの間に接続された第2のインダクタと、
前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタが形成された基板とを備え、
前記基板は、
厚み方向に複数の配線層を備え、
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタとは、
前記複数の配線層のうち互いに異なる配線層に、平面視で少なくともその一部が重なるように形成されている
ことを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項2】
請求項1に記載されたトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記第1のインダクタは、
前記第2のインダクタが形成されている配線層よりも厚みの薄い配線層に形成されている
ことを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタとは、
互いに強め合う磁界を発生するように設けられている
ことを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載されたトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタは、それぞれ、
前記複数の配線層のうち複数の層にそれぞれ形成されて互いに接続された複数のインダクタからなる多層インダクタである
ことを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項5】
ソースが接地された第1のMOSトランジスタと、
ソースが電源に接続された第2のMOSトランジスタと、
前記第1のMOSトランジスタのドレインと前記第2のMOSトランジスタのドレインとの接続点にその一端が接続された抵抗と、
前記抵抗の他端と電流信号の入力ラインとの間に接続された第1のインダクタと、
前記第1のMOSトランジスタのゲートと前記電流信号の入力ラインとの間に接続された第2のインダクタと、
前記第2のMOSトランジスタのゲートと前記電流信号の入力ラインとの間に接続された第3のインダクタと、
前記第1のインダクタ、前記第2のインダクタおよび前記第3のインダクタが形成された基板とを備え、
前記基板は、
厚み方向に複数の配線層を備え、
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタおよび前記第3のインダクタとは、
前記複数の配線層のうち互いに異なる配線層に、平面視で少なくともその一部が重なるように形成されている
ことを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項6】
請求項5に記載されたトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記第1のインダクタは、
前記第2のインダクタおよび前記第3のインダクタが形成されている配線層よりも厚みの薄い配線層に形成されている
ことを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項7】
請求項6に記載されたトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記第2のインダクタと前記第3のインダクタとは、
同じ配線層に形成されている
ことを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項8】
請求項5~7の何れか1項に記載されたトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記第1のインダクタ、前記第2のインダクタおよび前記第3のインダクタは、それぞれ、
前記複数の配線層のうち複数の層にそれぞれ形成されて互いに接続された複数のインダクタからなる多層インダクタである
ことを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流信号の電流電圧変換および増幅に利用されるトランスインピーダンスアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電流信号の電流電圧変換および増幅に利用されるトランスインピーダンスアンプ(TIA)では、ソース接地型の増幅回路に負帰還抵抗を設けている。
【0003】
図17に、ソース接地型の増幅回路を用いたTIA200の要部を示す。このTIA200では、ソースが接地されたnチャネルMOSトランジスタMnのドレインに負帰還抵抗Rの一端を接続し、この負帰還抵抗Rの他端と電流信号の入力ラインLinとの間にインダクタLc(以下、負帰還インダクタと呼ぶ。)を接続している。また、nチャネルMOSトランジスタMnのゲートと電流信号の入力ラインLinとの間にインダクタLb(以下、ゲートインダクタと呼ぶ。)を接続している。このTIA200では、負帰還抵抗Rの前段に接続された負帰還インダクタLcやnチャネルMOSトランジスタMnのゲートの前段に接続されたゲートインダクタLbによって、インダクタピーキングが発生し、帯域が延伸されるものとなる。
【0004】
なお、負帰還抵抗の前段に負帰還インダクタを接続することによってインダクタピーキングを発生させる方法については、例えば非特許文献1に示されている。また、ゲートの前段にゲートインダクタを接続することによってインダクタピーキングを発生させる方法については、非特許文献2に示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Ghasemi, Omidreza, Rabin Raut, and Glenn Cowan. "A low power Transimpedance Amplifier using inductive feedback approach in 90nm CMOS." Circuits and Systems, 2009. ISCAS 2009. IEEE International Symposium on. IEEE, 2009.
【文献】Chao, Shih-Fong, et al. "A DC-11.5 GHz low-power, wideband amplifier using splitting-load inductive peaking technique." IEEE Microwave and wireless components letters 18.7 (2008): 482-484.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のTIA200では、
図18(a)にその平面図を、
図18(b)に
図18(a)におけるI-I線断面図を示すように、負帰還インダクタLcとゲートインダクタLbとを基板2上に隣接して形成している。
【0007】
この場合、負帰還インダクタLcの側面とゲートインダクタLbの側面との間に発生する寄生容量を小さくする必要から、負帰還インダクタLcとゲートインダクタLbとの間を離す必要があり(寄生容量の値は導体の距離に反比例する)、基板2上での占有面積が大きくなり、省面積化を実現することが難しかった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、省面積化を実現することが可能なトランスインピーダンスアンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために本発明は、MOSトランジスタ(Mn)と、前記MOSトランジスタのドレインにその一端が接続された抵抗(R:負帰還抵抗)と、前記抵抗の他端と電流信号の入力ライン(Lin)との間に接続された第1のインダクタ(Lc:負帰還インダクタ)と、前記MOSトランジスタのゲートと前記電流信号の入力ライン(Lin)との間に接続された第2のインダクタ(Lb:ゲートインダクタ)と、前記第1のインダクタおよび前記第2のインダクタが形成された基板(1)とを備え、前記基板は、厚み方向に複数の配線層(S1,S2)を備え、前記第1のインダクタと前記第2のインダクタとは、前記複数の配線層のうち互いに異なる配線層に、平面視で少なくともその一部が重なるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の一構成例として、第1のインダクタ(負帰還インダクタ)を第2のインダクタ(ゲートインダクタ)が形成されている配線層よりも厚みの薄い配線層に形成したり、第1のインダクタと第2のインダクタとを互いに強め合う磁界が発生するように設けたり、第1のインダクタおよび第2のインダクタをそれぞれ多層インダクタとしたりすることが考えられる。
【0011】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の構成要素を、括弧を付した参照符号によって示している。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、厚み方向に複数の配線層を備える基板の異なる配線層に、平面視で少なくともその一部が重なるように第1のインダクタ(負帰還インダクタ)と第2のインダクタ(ゲートインダクタ)とを形成するようにしたので、基板上での占有面積を小さくし、省面積化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係るTIAの要部の回路を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1に係るTIAにおける負帰還インダクタとゲートインダクタの形成例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態2に係るTIAにおける負帰還インダクタとゲートインダクタの形成例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態3に係るTIAにおける負帰還インダクタとゲートインダクタの形成例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態4に係るTIAにおける負帰還インダクタとゲートインダクタの形成例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態4に係るTIAにおいて、多層インダクタとされた負帰還インダクタとゲートインダクタの形成例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態5に係るTIAの要部の回路を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態5に係るTIAにおける負帰還インダクタとゲートインダクタの形成例を示す図である。
【
図9】
図9は、
図7に示したTIAからゲートインダクタを除いた回路を示す図である。
【
図10】
図10は、nチャネルMOSトランジスタMnの等価回路図である。
【
図11】
図11は、
図9に示した回路においてpチャネルMOSトランジスタMp側の素子を省略した場合の等価回路図である。
【
図12】
図12は、
図7に示したTIAから負帰還インダクタを除いた回路を示す図である。
【
図13】
図13は、
図12に示した回路においてpチャネルMOSトランジスタ側の素子を省略した場合の等価回路図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施の形態6に係るTIAにおける負帰還インダクタとゲートインダクタの形成例を示す図である。
【
図15】
図15は、実施の形態6に係るTIAにおいて、多層インダクタとされた負帰還インダクタとゲートインダクタの形成例を示す平面図である。
【
図16】
図16は、実施の形態6に係るTIAにおいて、多層インダクタとされた負帰還インダクタとゲートインダクタの形成例を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、ソース接地型の増幅回路を用いたTIAの要部を示す図である。
【
図18】
図18は、従来の負帰還インダクタとゲートインダクタの形成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
〔実施の形態1〕
図1に、本発明の実施の形態1に係るTIA101の要部の回路図を示し、
図2に本発明の実施の形態1に係るTIA101における負帰還インダクタLcとゲートインダクタLbの形成例を示す。なお、
図1において、
図17を参照して説明した構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0016】
このTIA101は、厚み方向に2つの配線層S1とS2を備えた基板1の下層の配線層S1に負帰還インダクタ(第1のインダクタ)Lcを形成し、上層の配線層S2にゲートインダクタ(第2のインダクタ)Lbを形成している。
【0017】
この例において、配線層S1,S2の厚みは同じとされている。また、負帰還インダクタLcおよびゲートインダクタLbは、その平面形状が渦巻き状とされ、その全部が重なるように形成されている。すなわち、負帰還インダクタLcとゲートインダクタLbとは、基板1の異なる配線層S1,S2に、平面視でその全部が重なるように形成されている。
【0018】
このTIA101では、負帰還インダクタLcとゲートインダクタLbとが異なる配線層S1,S2に形成され、平面視でその全部が重ねられているので、基板1上での占有面積を小さくし、省面積化が実現されている。また、負帰還インダクタLcとゲートインダクタLbとは、基板1の厚み方向に離されているので、寄生容量の発生も小さい。
【0019】
なお、この実施の形態1のTIA101では、負帰還インダクタLcを下層の配線層S1に形成し、ゲートインダクタLbを上層の配線層S2に形成しているが、ゲートインダクタLbを下層の配線層S1に、負帰還インダクタLcを上層の配線層S2に形成するようにしてもよい。また、負帰還インダクタLcとゲートインダクタLbとは、必ずしもその全部を重ねなくてもよく、少なくともその一部が重ねられていればよい。
【0020】
〔実施の形態2〕
図3に、本発明の実施の形態2に係るTIA102における負帰還インダクタLcとゲートインダクタLbの形成例を示す。同図において、
図2を参照して説明した構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0021】
このTIA102では、下層の配線層S1を上層の配線層S2よりも薄くし、厚さの薄い下層の配線層S1に負帰還インダクタLcを形成し、厚さの厚い上層の配線層S2にゲートインダクタLbを形成している。
【0022】
このTIA102において、厚さの薄い下層の配線層S1では、電流の通る道が小さいために、寄生抵抗が大きくなる。厚さの厚い上層の配線層S2では、電流の通る道が大きいために、寄生抵抗が小さくなる。下層の配線層S1に形成されている負帰還インダクタLcには、後段に負帰還抵抗Rが接続されていることから(
図1参照)、設計によって負帰還抵抗Rを低減することによって、下層の配線層S1での寄生抵抗の影響を小さくすことが可能である。
【0023】
〔実施の形態3〕
図4に、本発明の実施の形態3に係るTIA103における負帰還インダクタLcとゲートインダクタLbの形成例を示す。同図において、
図3を参照して説明した構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0024】
このTIA103では、互いに強め合う磁界が発生するように、負帰還インダクタLcおよびゲートインダクタLbが設けられている。すなわち、負帰還インダクタLcおよびゲートインダクタLbの巻き方向を同じとしている。
【0025】
これにより、近接して配置された負帰還インダクタLcとゲートインダクタLbとの間に相互誘導が発生し、面積当たりのインダクタンスが大きくなり、負帰還インダクタLcおよびゲートインダクタLbの直径や巻数を小さくするなどして、さらに省面積化を実現することが可能となる。
【0026】
〔実施の形態4〕
図5に、本発明の実施の形態4に係るTIA104における負帰還インダクタLcとゲートインダクタLbの形成例を示す。なお、
図5では、簡単のために、負帰還インダクタLcおよびゲートインダクタLbの平面形状を四角形に巻かれた形としている。
【0027】
このTIA104では、負帰還インダクタLcおよびゲートインダクタLbを多層インダクタ(
図6参照)としている。多層インダクタとは、多層配線の各層に小さなインダクタを形成し、この各層のインダクタをヴィアで層間接続したインダクタである。
【0028】
この例では、下層の配線層S1を4層の層S11~S14で構成し、この層S11~S14にインダクタLc1~Lc4を形成し、このインダクタLc1~Lc4をヴィアで層間接続することによって、負帰還インダクタLcを多層インダクタとしている。また、上層の配線層S2を2層の層S21,S22で構成し、この層S21,S22にインダクタLb1,Lb2を形成し、このインダクタLb1,Lb2をヴィアで層間接続することによって、ゲートインダクタLbを多層インダクタとしている。
【0029】
多層インダクタは、層間での自己誘導が起きるために、面積あたりのインダクタンスが単層のインダクタに比べて大きい。しかしながら、小さなインダクタをヴィアで層間接続するために、寄生抵抗が単層のインダクタに比べて大きい。
図5に示したTIA104では、負帰還インダクタLcは4層の多層インダクタとされており、また、層S1
1~S1
4の厚さは薄いために、配線層S1での寄生抵抗が大きく、この寄生抵抗により信号が劣化してしまう虞がある。しかし、負帰還インダクタLcには、後段に負帰還抵抗Rが接続されていることから(
図1参照)、設計によって負帰還抵抗Rを低減することによって、配線層S1での寄生抵抗の影響を小さくすることが可能である。
【0030】
また、このTIA104では、負帰還インダクタLcとゲートインダクタLbとを積層することで、インダクタ間の距離が近くなり、強い相互誘導が発生する。このインダクタ間の相互誘導により、面積当たりのインダクタンスが大きくなるため、負帰還インダクタLcやゲートインダクタLb-nの直径や巻数を低減させることが可能となり、省面積化を実現できる。
【0031】
〔実施の形態5〕
図7に、本発明の実施の形態5に係るTIA105の要部の回路図を示す。このTIA105では、ソースが接地されたnチャネルMOSトランジスタMnのドレインと、ソースが電源(正側電源)Vddに接続されたpチャネルMOSトランジスタMpのドレインとの接続点に、負帰還抵抗Rの一端を接続し、この負帰還抵抗Rの他端と電流信号の入力ラインLinとの間に負帰還インダクタ(第1のインダクタ)Lcを接続している。また、nチャネルMOSトランジスタMnのゲートと電流信号の入力ラインLinとの間にゲートインダクタ(第2のインダクタ)Lb-nを接続し、pチャネルMOSトランジスタMpのゲートと電流信号の入力ラインLinとの間にゲートインダクタ(第3のインダクタ)Lb-pを接続している。なお、
図7では、入力ラインLinと接地ラインとの間の入力容量をCin、出力ラインLoutと接地ラインとの間の出力容量をCoutとして示している。
【0032】
図8に、このTIA105における負帰還インダクタLcとゲートインダクタLb-n,Lb-pの形成例を示す。このTIA105では、下層の配線層S1を4層の層S1
1~S1
4で構成し、この層S1
1~S1
4にインダクタLc
1~Lc
4を形成し、このインダクタLc
1~Lc
4をヴィアで層間接続することによって、負帰還インダクタLcを多層インダクタとしている。また、上層の配線層S2を2層の層S2
1,S2
2で構成し、この層S2
1,S2
2にインダクタLb-n
1,Lb-n
2を形成し、このインダクタLb-n
1,Lb-n
2をヴィアで層間接続することによって、ゲートインダクタLb-nを多層インダクタとしている。また、配線層S2よりも上層の配線層S3を2層の層S3
1,S3
2で構成し、この層S3
1,S3
2にインダクタLb-p
1,Lb-p
2を形成し、このインダクタLb-p
1,Lb-p
2をヴィアで層間接続することによって、ゲートインダクタLb-pを多層インダクタとしている。
【0033】
〔負帰還インダクタについて〕
図9に、
図7に示したTIA105からゲートインダクタLb-nおよびLb-pを除いた回路を示す。ここで、簡単のために、nチャネルMOSトランジスタMnの等価回路を
図10とみなし、
図9に示した回路においてpチャネルMOSトランジスタMp側の素子を省略した場合の等価回路を
図11に示す。
【0034】
なお、
図10に示したnチャネルMOSトランジスタMnの等価回路において、gmVgsは電流源、rは内部抵抗、Cgdはゲートとドレインとの間の容量、Cgsはゲートとソースとの間の容量、Cdsはドレインとソースとの間の容量を示す。
【0035】
図11に示した等価回路からも分かるように、負帰還インダクタLcと容量Cgdとは並列共振し、共振周波数においてインピーダンスが高くなるため、利得のピーキングが発生する。この負帰還インダクタLcを寄生抵抗は大きいが、省面積な多層インダクタとすることによって、省面積化と広帯域化を両立させることができる。また、負帰還インダクタLcを帰還パスに組み込み、利得のピーキングを発生させることによって、利得の遮断周波数を延伸させることができる。また、多層インダクタは寄生抵抗によりQ値が小さいために滑らかにピーキングさせることができ、単層のインダクタ(高Q値なインダクタ)でピーキングさせるよりも、帯域内の利得の平坦性を妨げずに帯域を延伸させることができる。また、多層インダクタを用いるために、省面積化が容易である。
【0036】
〔ゲートインダクタについて〕
図12に、
図7に示したTIA105から負帰還インダクタLcを除いた回路を示す。ここで、簡単のために、nチャネルMOSトランジスタMnの等価回路を
図10とみなし、pチャネルMOSトランジスタMp側の素子を省略した場合の等価回路を
図13に示す。
【0037】
図13に示した等価回路からも分かるように、ゲートインダクタLb-nと容量Cgdとは直列共振し、共振周波数においてインピーダンスが低くなるため、利得のピーキングが発生する。ゲートインダクタLb-p側でも、同様にして、利得のピーキングが発生する。このゲートインダクタLb-nおよびLb-pを寄生抵抗は大きいが省面積な多層インダクタとすることによって、省面積化と広帯域化を両立させることができる。また、ゲートインダクタLb-nおよびLb-pを入力パスに組み込み、利得のピーキングを発生させることによって、利得の遮断周波数を延伸させることができる。また、多層インダクタを用いるために、省面積化が容易である。
【0038】
〔実施の形態6〕
図14に、本発明の実施の形態6に係るTIA106における負帰還インダクタLcとゲートインダクタLb-n,Lb-pの形成例を示す。
【0039】
このTIA106では、負帰還インダクタLcを下層の配線層S1に形成し、ゲートインダクタLb-nとゲートインダクタLb-pを上層の配線層S2に形成している。すなわち、ゲートインダクタLb-nとゲートインダクタLb-pとを同じ配線層S2に隣接して形成している。
【0040】
また、このTIA106において、負帰還インダクタLcおよびゲートインダクタLb-n,Lb-pは多層インダクタとされている。参考として、その平面図を
図15に、そその斜視図を
図16に示す示す。
【0041】
また、このTIA106では、負帰還インダクタLcとゲートインダクタLb-p,Lp-nとが互いに強めあう磁界を発生するように、負帰還インダクタLcの巻き方向と、ゲートインダクタLb-p,Lp-nの巻き方向とを逆としている。
【0042】
また、このTIA106では、負帰還インダクタLcとゲートインダクタLb-p,Lp-nとの重ねた辺の配線同士の寄生容量が最小になるように、配線位置が直上にこないようにしたり、配線幅を小さくする、というような設計を行っている。
【0043】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1…基板、S1,S2,S3…配線層、Mn…nチャネルMOSトランジスタ、Mp…pチャネルMOSトランジスタ、R…負帰還抵抗、Lc…負帰還インダクタ、Lb,Lb-n、Lb-p…ゲートインダクタ、Lin…電流信号の入力ライン、101~106…TIA(トランスインピーダンスアンプ)。