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特許7183760湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、及び、物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、及び、物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/30 20060101AFI20221129BHJP
   C08G 18/12 20060101ALI20221129BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20221129BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20221129BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20221129BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20221129BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20221129BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C08G18/30 070
C08G18/12
C08G18/42
C08G18/44
C08G18/48
C08G18/76 057
C08G18/79 010
C09J175/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018235425
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020097653
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】野中 諒
(72)【発明者】
【氏名】南田 至彦
(72)【発明者】
【氏名】山川 大輔
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-000785(JP,A)
【文献】特開2018-104487(JP,A)
【文献】特表2015-514848(JP,A)
【文献】特開2007-277507(JP,A)
【文献】特開2005-206674(JP,A)
【文献】特開2015-120323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/30
C08G 18/12
C08G 18/42
C08G 18/44
C08G 18/48
C08G 18/76
C08G 18/79
C09J 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、
前記ポリオール(a)が、
脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)、ポリエーテルポリオール(a-3)、及び、脂環構造を有しないポリカーボネートポリオール(a-4)を含有し、前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)と前記脂環構造を有しないポリカーボネートポリオール(a-4)との質量比[(a-1)/(a-4)]が、30/70~90/10の範囲であり、
前記ポリイソシアネート(b)が、
ジイソシアネート(b-1)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(b-2)、及び、イソシアヌレート化合物(b-3)を含有するものであることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオール(a-3)が、ポリプロピレングリコール、及び、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するものである請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項4】
請求項記載の接着剤による接着部を有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、及び、接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
板状の基材に化粧シートが貼り合された化粧板は、床材、扉、造作部材、天板等の建築内装材に広く利用されている。前記基材と化粧シートとの貼り合わせには、これまでウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、変性シリコーン樹脂系接着剤、アクリル系接着剤等が使用されている。この中でも、近年では、湿気硬化により優れた最終接着強度を発現する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤の利用が増えつつある。
【0003】
前記化粧板に使用される湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤としては、例えば、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーに、特定量のエポキシ基含有シランカップリング剤と(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤とを含有させた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
しかしながら、前記接着剤は、初期の接着強度(初期接着性)が不十分であり、また耐加水分解性も不十分であることから、経年で化粧シートが剥がれてくるとの指摘があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-225635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、初期接着性及び耐加水分解性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記ポリオール(a)が、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)、及び、ポリエーテルポリオール(a-3)を含有し、前記ポリイソシアネート(b)が、ジイソシアネート(b-1)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(b-2)、及び、イソシアヌレート化合物(b-3)を含有するものであることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記湿気硬化型ホットメルト樹脂組成物を含有する接着剤、及び、該接着剤により貼り合されたことを特徴とする物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた初期接着性及び耐加水分解性を有するものである。
【0010】
よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、化粧板の貼り合わせ用接着剤として好適に用いることができる。また、得られた化粧板は、床材;下足扉、クローゼット扉、キッチン扉等の扉;枠材、額縁、巾木等の造作材;カウンターテーブル、家具用天板等の天板などに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、特定のポリオール(a)、及び、特定のポリイソシアネート(b)の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有するものである。
【0012】
前記ポリオール(a)は、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)は、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)、及び、ポリエーテルポリオール(a-3)を必須成分として含有するものである。
【0013】
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)は、優れた初期接着性及び耐加水分解性を得るうえで必須の成分である。前記ポリカーボネートポリオール(a-2)の有する脂環構造のパッキング効果により良好な凝集力が得られ、優れた初期接着性が発現する。
【0014】
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)としては、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、分子量が50~400の範囲の脂環式ポリオールを含むポリオール化合物との反応物を用いることができる。なお、前記脂環式ポリオールの分子量は、化学構造式から計算される値を示す。
【0015】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ-ト等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記脂環式ポリオールとしては、例えば、1,2-シクロブタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカン-ジメタノール、ビシクロ[4.3,0]-ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ[5,3,1,1]ドデカンジオール、ビシクロ[4,3,0]ノナンジメタノール、トリシクロ[5,3,1,1]ドデカン-ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ[5,3,1,1]ドデカノール、スピロ[3,4]オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’-ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、水素添加ビスフェノ-ルA、1,3-アダマンタンジオール等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた低粘度性、初期接着性及び耐加水分解性が得られる点から、1,4-シクロヘキサンジメタノールを用いることが好ましい。
【0017】
前記脂環式ポリオールの使用量としては、より一層優れた初期接着性及び耐加水分解性が得られる点から、ポリオール化合物中20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上がより好ましい。
【0018】
前記脂環式ポリオール以外に用いることができるポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を用いることができる。これらの中でも、より一層優れた低粘度性、初期接着性、柔軟性及び耐加水分解性が得られる点から、1,6-ヘキサンジオールを用いることが好ましい。
【0019】
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)の数平均分子量としては、より一層優れた初期接着性及び耐加水分解性が得られる点から、500~5,000の範囲であることが好ましく、700~3,000の範囲がより好ましく、800~2,000の範囲が更に好ましい。なお、前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0020】
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)の使用量としては、より一層優れた初期接着性及び耐加水分解性が得られる点から、前記ポリオール(a)及び前記ポリイソシアネート(b)の合計質量中1~40質量%の範囲であることが好ましく、3~30質量%の範囲がより好ましく、5~20質量%の範囲が更に好ましい。
【0021】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a-2)は、優れた初期接着性、及び、最終接着性を得るうえで必須の成分である。前記結晶性ポリエステルポリオール(a-2)としては、例えば、水酸基を有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。なお、本発明において、「結晶性」とは、JISK7121:2012に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、「非晶性」とは、前記ピークを確認できないものを示す。
【0022】
前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、結晶性を高め、より一層優れた初期接着性及び最終接着性が得られる点から、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びデカンジオールからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、1,6-ヘキサンジオールがより好ましい。
【0023】
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸等を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、結晶性を高め、より一層優れた初期接着性及び最終接着性が得られる点から、アジピン酸、セバシン酸、及び、ドデカンジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0024】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a-2)の数平均分子量としては、より一層優れた低粘度性、初期接着性、及び、最終接着性が得られる点から、500~10,000の範囲であることが好ましく、1,000~8,000の範囲がより好ましく、1,500~5,000の範囲が更に好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(a-2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0025】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a-2)の使用量としては、より一層優れた初期接着性、及び、最終接着性が得られる点から、前記ポリオール(a)及び前記ポリイソシアネート(b)の合計質量中5~50質量%の範囲であることが好ましく、7~45質量%の範囲がより好ましく、10~40質量%の範囲が更に好ましい。
【0026】
前記ポリエーテルポリオール(a-3)は、低粘度性、柔軟性、及び、塗工性を担保するうえで必須の成分である。前記ポリエーテルポリオール(a-3)としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール等を用いることができる。これらのポリエーテルポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
これらの中でも、より一層優れた耐加水分解性、低粘度性、柔軟性、及び、塗工性が得られる点から、ポリプロピレングリコール、及び/又は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを用いることが好ましく、ポリプロピレングリコールとポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとを併用することが好ましい。
【0028】
前記ポリプロピレングリコール(PO)とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(EOPO)とを併用する場合の質量比[PO/EOPO]としては、より一層優れた耐加水分解性、低粘度性、柔軟性、及び、塗工性が得られる点から、30/70~90/10の範囲であることが好ましく、40/60~80/20の範囲がより好ましく、50/50~70/30の範囲が更に好ましい。
【0029】
前記ポリエーテルポリオール(a-3)の数平均分子量としては、より一層優れた耐加水分解性、低粘度性、柔軟性、及び、塗工性が得られる点から、500~100,000の範囲であることが好ましく、550~10,000の範囲がより好ましく、600~6,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ポリエーテルポリオール(a-3)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0030】
前記ポリエーテルポリオール(a-3)の使用量としては、より一層優れた耐加水分解性、低粘度性、柔軟性、及び、塗工性が得られる点から、前記ポリオール(a)及び前記ポリイソシアネート(b)の合計質量中5~40質量%の範囲であることが好ましく、10~30質量%の範囲がより好ましい。
【0031】
前記ポリオール(a)は、前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)、及び、ポリエーテルポリオール(a-3)を必須成分として含有するが、必要に応じて、その他のポリオールを併用してもよい。前記ポリオール(a)中における(a-1)~(a-3)成分の合計使用量としては、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0032】
前記その他のポリオールとしては、例えば、脂環構造を有しないポリカーボネートポリオール(a-4)、前記結晶性ポリエステルポリオール(a-2)以外のポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた初期接着性及び耐加水分解性が得られる点から、脂環構造を有しないポリカーボネートポリオール(a-4)を用いることがより好ましい。
【0033】
前記ポリカーボネートポリオール(a-4)としては、例えば、前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)の原料と同様の、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、脂環式ポリオールを除くポリオール化合物との反応物を用いることができる。
【0034】
前記ポリカーボネートポリオール(a-4)の数平均分子量としては、より一層優れた初期接着性及び耐加水分解性が得られる点から、500~5,000の範囲であることが好ましく、700~3,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリカーボネートポリオール(a-4)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0035】
前記ポリカーボネートポリオール(a-4)を用いる場合の使用量としては、より一層優れた基材密着性が得られる点から、前記ポリオール(a)及び前記ポリイソシアネート(b)の合計質量中0.1~20質量%の範囲であることが好ましく、1~15質量%の範囲がより好ましい。
【0036】
また、前記ポリカーボネートポリオール(a-4)を用いる場合における、前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)と前記ポリカーボネートポリオール(a-4)との質量比[(a-1)/(a-4)]としては、より一層優れた基材密着性、初期接着性及び耐加水分解性が得られる点から、30/70~90/10の範囲であることが好ましく、40/60~80/20の範囲がより好ましく、50/50~70/30の範囲が更に好ましい。
【0037】
前記ポリイソシアネート(b)としては、架橋構造を形成し、優れた初期接着性及び耐加水分解性を得る上で、ジイソシアネート(b-1)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(b-2)、及び、イソシアヌレート化合物(b-3)を含有することが必須である。
【0038】
前記ジイソシアネート(b-1)としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ジイソシアネート等のジイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でもより一層優れた反応性及び接着性が得られる点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0039】
前記ジイソシアネート(b-1)の使用量としては、より一層優れた初期接着性及び耐加水分解性が得られる点から、前記ポリオール(a)及び前記ポリイソシアネート(b)の合計質量中1~20質量%の範囲であることが好ましく、7~17質量%の範囲がより好ましい。
【0040】
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(b-2)としては、具体的には下記式(2)で示されるものであり、好ましくは式(2)中、nが1~5の整数を示すものである。
(式(2)中、nは1以上の整数である。)
【0041】
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(b-2)の使用量としては、より一層優れた耐加水分解性が得られる点から、前記ポリオール(a)及び前記ポリイソシアネート(b)の合計質量中0.5~15質量%の範囲であることが好ましく、2~10質量%の範囲がより好ましい。
【0042】
前記イソシアヌレート化合物(b-3)としては、例えば、前記ジイソシアネート(b-1)のイソシアヌレート体を用いることができる。原料となるジイソシアネートとしては、より一層優れた初期接着強度及び耐加水分解性が得られる点から、脂肪族ジイソシアネートを用いることが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートがより好ましい。
【0043】
前記イソシアヌレート化合物(b-4)の使用量としては、より一層優れた初期接着性及び耐加水分解性が得られる点から、前記ポリオール(a)及び前記ポリイソシアネート(b)の合計質量中0.1~15質量%の範囲であることが好ましく、1~10質量%の範囲がより好ましい。
【0044】
前記ポリイソシアネート(b)は、前記ジイソシアネート(b-1)、前記ポリメチレンポリフェニルメタンジイソシアネート(b-2)、前記イソシアヌレート化合物(b-3)を必須成分として含有するが、必要に応じて、その他のポリイソシアネートを含有してもよい。前記ポリ磯左飛ネート(b)中における(b-1)~(b-3)成分の合計使用量としては、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
【0045】
前記その他のポリイソシアネートとしては、例えば、前記ジイソシアネート(b-1)のアダクト体;ビュレット体等を用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記ウレタンプレポリマーは、前記ポリオール(a)と前記ポリイソシアネート(b)とを反応させて得られるものであり、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される基材中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基を有するものである。
【0047】
前記ウレタンプレポリマーの製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(b)の入った反応容器に、前記ポリオール(a)の混合物を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(b)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(a)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0048】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際の、前記ポリオール(a)が有する水酸基及び前記ポリイソシアネート(b)が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)として、未反応のポリイソシアネートを減らし、より一層優れた接着性が得られる点から、1.5~7の範囲であることが好ましく、1.8~3の範囲がより好ましい。
【0049】
以上の方法によって得られたウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、より一層優れた接着性が得られる点から、1~10質量%の範囲であることが好ましく、2~5質量%の範囲がより好ましく、2.5~4質量%の範囲が更に好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマーのNCO%は、JISK1603-1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0050】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は前記ウレタンプレポリマーを含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0051】
前記その他の添加剤としては、例えば、硬化触媒、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、光安定剤、充填材、染料、顔料、消泡剤、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス、熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0052】
次に、物品について説明する。
【0053】
前記物品は、少なくとも2つの物品が、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有する接着剤により貼り合されたものである。
【0054】
前記貼り合される物品としては、例えば、板状の木材、集成材、合板、MDF(ミディアム・デンシティ・ファイバーボード)、パーチクルボード等の木質基材;硬質セメント珪酸カルシウム板等の無機質基材;樹脂シート;ガラス;ゴム;プラスチック成形品;化粧紙、不織布、織布、突板;畳表などを用いることができる。
【0055】
前記接着剤層としては、十分な接着性が得られればよく適宜決定できるが、例えば、0.03~0.15mmの範囲が挙げられる。
【0056】
以上、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた初期接着性及び耐加水分解性を有するものである。
【0057】
よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、化粧板の貼り合わせ用接着剤として好適に用いることができる。また、得られた化粧板は、床材;下足扉、クローゼット扉、キッチン扉等の扉;枠材、額縁、巾木等の造作材;カウンターテーブル、家具用天板等の天板などに好適に使用することができる。
【実施例
【0058】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0059】
[実施例1]
攪拌機、温度計、不活性ガス導入口及び還流冷却管を備えた4ツ口フラスコに、脂環式ポリカーボネートポリオール(1,4-シクロヘキサンジメタノールを原料とするもの、数平均分子量;1,000、以下「脂環PC」と略記する。)15質量部、結晶性ポリエステルポリオール(1,6-ヘキサンジオール及び1,12-ドデカンジカルボン酸の反応物、数平均分子量;3,500、以下「結晶性PEs1」と略記する。)35質量部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量;2,000、以下「PPG」と略記する。)13質量部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量;4000、以下「EOPO」と略記する。)7質量部、液状ポリエステルポリオール(ジエチレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール及びアジピン酸の反応物、数平均分子量;2,000、以下「他PEs」と略記する。)5質量部を仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、反応容器内の温度を60℃に冷却後、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と略記する。)13質量部、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(東ソー株式会社製「ミリオネート MR-200」、以下「cMDI」と略記する。)7質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(以下、「HDI-N」と略記する。)5質量部を加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。
なお、実施例1は参考例である。
【0060】
[実施例2~5、比較例1~3]
各種ポリオールの使用量を表1~2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてウレタンプレポリマーを得た。なお、実施例2および4は参考例である。

【0061】
[数平均分子量の測定方法]
実施例及び比較例で用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、以下の条件で測定した値を示す。
【0062】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0063】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0064】
[初期接着性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を120℃で加熱溶融状態にし、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に50μmの厚さとなるように塗布し、次いで、塗布面にMDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)を載置し貼り合わせた。貼り合わせを行った3分後に35℃の雰囲気下で、25mm幅に対して、75gの荷重を90°方向にかけて、15分後にPETシートの剥離長さを測定し、以下のように評価した。
「T」:剥離長さが5mm未満である。
「F」:剥離長さが5mm以上である。
【0065】
[耐加水分解性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を120℃で加熱溶融状態にし、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に50μmの厚さとなるように塗布し、次いで、塗布面にMDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)を載置し貼り合わせた。これを23℃、湿度50%の条件下で5日間放置した。その後、85℃、湿度85%の雰囲気下で。25mm幅に対して70℃の荷重を90°方向にかけて、PETシートが40mm剥離するまでの日数を測定し、以下のように評価した。
「T」:35日以上
「F」:35日未満
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
表1~2中の略語は以下のものである。
「結晶性PEs2」:1,6-ヘキサンジオール及びアジピン酸の反応物、数平均分子量;4,500
「PC」:1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールを原料としたポリカーボネートポリオール、数平均分子量;2,000
【0069】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた初期接着性及び耐加水分解性を有することが分かった。
【0070】
一方、比較例1は、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)を用いない態様であるが、初期接着性が不良であった。
【0071】
比較例2は、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)を用いない態様であるが、初期接着性が不良であった。
【0072】
比較例3は、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(b-2)、及び、イソシアヌレート化合物(b-3)を用いない態様であるが、初期接着性及び耐加水分解性が不良であった。