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特許7183762サーバ選択装置、サーバ選択方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】サーバ選択装置、サーバ選択方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 67/00 20220101AFI20221129BHJP
【FI】
H04L67/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018237466
(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2020098554
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】木村 拓人
(72)【発明者】
【氏名】松本 存史
(72)【発明者】
【氏名】金正 英朗
【審査官】木村 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-029694(JP,A)
【文献】特開2005-352762(JP,A)
【文献】特開2018-045452(JP,A)
【文献】特開2017-122994(JP,A)
【文献】特開2015-170125(JP,A)
【文献】特開2016-181289(JP,A)
【文献】特開2003-258885(JP,A)
【文献】特開2004-048565(JP,A)
【文献】特開2001-243242(JP,A)
【文献】特開2014-096103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一のコンテンツを有する複数のサーバのそれぞれについて、前記コンテンツのダウンロードの要求元のISP、キャリア名、基地局ID及びセルIDのいずれか1以上を含む通信環境情報に対応する品質情報のリストを取得する取得部と、
前記複数のサーバのそれぞれの前記品質情報のリストと、前記コンテンツのダウンロードに関するコストとに基づいて、前記複数のサーバの中からいずれかのサーバを選択する選択部と、
を有することを特徴とするサーバ選択装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記複数のサーバのそれぞれの前記品質情報のリストに対する集約関数の出力と前記コストとに基づいて前記いずれかのサーバを選択する、
ことを特徴とする請求項1記載のサーバ選択装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記集約関数の出力と閾値との比較に基づいて前記複数のサーバから抽出される一部のサーバの中で前記コストが最小となるサーバを選択する、
ことを特徴とする請求項2記載のサーバ選択装置。
【請求項4】
前記選択部は、前記集約関数の出力と重み付けされた前記コストとの和が最大となるサーバを選択する、
ことを特徴とする請求項2記載のサーバ選択装置。
【請求項5】
前記集約関数の出力は、前記品質情報の経験分布に基づく出力、又は前記品質情報を分布関数にフィッティングさせた結果に基づく出力である、
ことを特徴とする請求項2乃至4いずれか一項記載のサーバ選択装置。
【請求項6】
同一のコンテンツを有する複数のサーバのそれぞれについて、前記コンテンツのダウンロードの要求元の通信環境情報に対応する品質情報のリストを取得する取得部と、
前記複数のサーバのそれぞれの前記品質情報のリストに対する集約関数の出力と、前記コンテンツのダウンロードに関するコストとに基づいて、前記複数のサーバの中からいずれかのサーバを選択する選択部と、
を有し、
前記集約関数の出力は、前記品質情報の経験分布に基づく出力、又は前記品質情報を分布関数にフィッティングさせた結果に基づく出力である、
ことを特徴とするサーバ選択装置。
【請求項7】
同一のコンテンツを有する複数のサーバのそれぞれについて、前記コンテンツのダウンロードの要求元のISP、キャリア名、基地局ID及びセルIDのいずれか1以上を含む通信環境情報に対応する品質情報のリストを取得する取得手順と、
前記複数のサーバのそれぞれの前記品質情報のリストと、前記コンテンツのダウンロードに関するコストとに基づいて、前記複数のサーバの中からいずれかのサーバを選択する選択手順と、
をコンピュータが実行することを特徴とするサーバ選択方法。
【請求項8】
同一のコンテンツを有する複数のサーバのそれぞれについて、前記コンテンツのダウンロードの要求元の通信環境情報に対応する品質情報のリストを取得する取得手順と、
前記複数のサーバのそれぞれの前記品質情報のリストに対する集約関数の出力と、前記コンテンツのダウンロードに関するコストとに基づいて、前記複数のサーバの中からいずれかのサーバを選択する選択手順と、
をコンピュータが実行し、
前記集約関数の出力は、前記品質情報の経験分布に基づく出力、又は前記品質情報を分布関数にフィッティングさせた結果に基づく出力である、
ことを特徴とするサーバ選択方法。
【請求項9】
請求項1乃至いずれか一項記載のサーバ選択装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバ選択装置、サーバ選択方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットを介してWeb閲覧や動画閲覧などを行うユーザは、コンテンツ事業者が設置したサーバ、又はCDN(Content Delivery Network)から端末へコンテンツをダウンロードする。その際、サーバへの集中アクセスやセキュリティアタックにより輻輳が発生すると、サーバの応答速度が落ちたり、又はサーバが完全に応答しなくなってしまったりすることがある。このようなサービス品質の劣化は、ユーザの体感品質に大きな影響を与えてしまう可能性がある。
【0003】
そのため、コンテンツを複数のサーバに配置することで、あるサーバの通信品質が劣化している際には、別のサーバからコンテンツをダウンロードすることのできる、マルチサーバ環境の導入が進んでいる。ここでの"サーバ"とは、オンプレミスのサーバ、CDNそのもの、又はそれらの組み合わせをいう。
【0004】
マルチサーバ選択ソリューションは、Conviva社及びCedexis社によって既に製品化されている。Conviva社が提供するソリューションは、リアルタイムに提供される各CDNの品質情報に基づき、最もスループットの高いCDNからコンテンツをダウンロードすることで、より通信品質の高いコンテンツ配信を実現する(非特許文献1)。Cedexis社の提供するOpenmixでは、スループット、RTT(Round Trip Time)といった指標を組み合わせ、選択ロジックをプログラムとして記述することで、CDN選択アルゴリズムをユーザが自由に組み立てることができる(非特許文献2)。更に、直近のスループットの比で確率的にCDNを選択する方式も提案されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】[online]、インターネット<URL:https://www.cedexis.com/openmix/>
【文献】Liu, Xi and Dobrian, Florin and Milner, Henry and Jiang, Junchen and Sekar, Vyas and Stoica, Ion and Zhang, Hui, A Case for a Coordinated Internet Video Control Plane, Proceedings of the ACM SIGCOMM 2012 Conference on Applications, Technologies, Architectures, and Protocols for Computer Communication, SIGCOMM 2012
【文献】Wamser, Florian and Hofner, Steffen and Seufert, Michael and Tran-Gia, Phuoc, Server and Content Selection for MPEG DASH Video Streaming with Client Information, Proceedings of the Workshop on QoE-based Analysis and Management of Data Communication Networks, Internet QoE 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に示すように、マルチサーバ環境における選択アルゴリズムや、選択することのできる環境は整いつつある。しかし、既存の選択アルゴリズムは、品質のみを考慮してサーバの選択を行っており、コストの大小に着目していない。
【0007】
例えば、2つのサーバA、Bがあり、いずれか一方のサーバをコンテンツのダウンロードの要求先として選択するという状況を考える。ここで、サーバAは品質が高く、コストも高い一方、サーバBは品質は中程度であるものの、コストが低いものとする。この場合、品質のみを考慮して適切なサーバを選択すると、サーバAを選択することが最善な選択となる。しかし、アプリケーションで求められる品質要件が中程度で十分である場合には、サーバBを選択することで、求められる品質要件を満たしたままコストを低減することが可能となる。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、品質だけでなくコストも考慮したコンテンツのサーバの選択を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで上記課題を解決するため、サーバ選択装置は、同一のコンテンツを有する複数のサーバのそれぞれについて、前記コンテンツのダウンロードの要求元のISP、キャリア名、基地局ID及びセルIDのいずれか1以上を含む通信環境情報に対応する品質情報のリストを取得する取得部と、前記複数のサーバのそれぞれの前記品質情報のリストと、前記コンテンツのダウンロードに関するコストとに基づいて、前記複数のサーバの中からいずれかのサーバを選択する選択部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
品質だけでなくコストも考慮したコンテンツのサーバの選択を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態におけるシステム構成例を示す図である。
図2】第1の実施の形態におけるサーバ選択装置10のハードウェア構成例を示す図である。
図3】第1の実施の形態におけるサーバ選択装置10の機能構成例を示す図である。
図4】第1の実施の形態のサーバ選択装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図5】サーバリストテーブル111の構成例を示す図である。
図6】品質情報テーブル112の構成例を示す図である。
図7】コストテーブル113の構成例を示す図である。
図8】品質情報テーブル112にフィッティング分布のパラメータを格納した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、第1の実施の形態におけるシステム構成例を示す図である。図1において、1以上の各クライアント端末20は、インターネット又はLAN(Local Area Network)等のネットワークを介してサーバ選択装置10及び複数のサーバ30と接続される。
【0013】
クライアント端末20は、ユーザがWebページや動画等のコンテンツのダウンロード及び閲覧に利用する端末である。すなわち、クライアント端末20は、コンテンツのダウンロードの要求元である。例えば、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、PC(Personal Computer)等がクライアント端末20として利用されてもよい。
【0014】
各サーバ30は、クライアント端末20がダウンロード対象とする同一のコンテンツを有し、当該コンテンツのダウンロードの要求先の候補となる1以上のコンピュータ又はCDN(Content Delivery Network)である。すなわち、本実施の形態では、同一のコンテンツが複数のサーバ30に配置され、当該複数のサーバ30が当該コンテンツのダウンロードの要求先の候補となるマルチサーバ環境が構築されている。各サーバ30は、サーバ情報によって識別される。サーバ情報とは、宛先IPアドレス、宛先URL、CDN種別、サーバ名等、コンテンツの配置場所を特定するために必要十分な情報が含まれたID(識別情報)である。
【0015】
サーバ選択装置10は、ダウンロード対象のコンテンツについて、複数の候補(サーバ30)の中からいずれかのサーバ30を選択する1以上のコンピュータである。
【0016】
図2は、第1の実施の形態におけるサーバ選択装置10のハードウェア構成例を示す図である。図2のサーバ選択装置10は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU104、及びインタフェース装置105等を有する。
【0017】
サーバ選択装置10での処理を実現するプログラムは、CD-ROM等の記録媒体101によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、プログラムが記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0018】
メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納する。CPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムに従ってサーバ選択装置10に係る機能を実行する。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。
【0019】
図3は、第1の実施の形態におけるサーバ選択装置10の機能構成例を示す図である。図3において、サーバ選択装置10は、サーバリスト取得部11、最適サーバ選択部12及び最適サーバ応答部13を有する。これら各部は、サーバ選択装置10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU104に実行させる処理により実現される。サーバ選択装置10は、また、サーバリストテーブル111、品質情報テーブル112及びコストテーブル113等のテーブル(記憶部)を利用する。これら各テーブルは、例えば、補助記憶装置102、又はサーバ選択装置10にネットワークを介して接続可能な記憶装置等を用いて実現可能である。
【0020】
サーバ選択装置10は、図3に示される機能構成を有することにより、ユーザがコンテンツの閲覧等に利用するクライアント端末20の通信環境情報、及び閲覧対象のコンテンツのコンテンツ情報を入力として、コンテンツのダウンロードの要求先として最適なサーバ30を選択し、選択結果を出力する。
【0021】
通信環境情報とは、クライアント端末20が属する通信環境を表す情報又は通信環境に影響する情報をいう。例えば、通信環境情報は、時間帯、IPアドレス、ISP、キャリア名、基地局ID、セルID、GPS情報の全部又は一部の組み合わせで表現される。
【0022】
コンテンツ情報とは、コンテンツを特定するための情報であり、例えば、URI(Uniform Resource Identifier)等の形式で表現される。
【0023】
以下、サーバ選択装置10が実行する処理手順について説明する。図4は、第1の実施の形態のサーバ選択装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0024】
ステップS101において、サーバリスト取得部11は、クライアント端末20から送信される、コンテンツのダウンロードの要求先のサーバの選択に関するリクエストを受信する。例えば、クライアント端末は、ユーザによってコンテンツのダウンロード指示が入力された場合等、コンテンツをダウンロードする必要が生じた際に、当該リクエストをサーバ選択装置10へ送信する。当該リクエストには、ダウンロード対象のコンテンツのコンテンツ情報、及び当該リクエストの送信元のクライアント端末の通信環境情報等が含まれる。
【0025】
続いて、サーバリスト取得部11は、受信されたリクエスト(以下、「対象リクエスト」という。)に含まれているコンテンツ情報によって識別されるコンテンツを保持している各サーバ30のサーバ情報のリスト(以下、「サーバリスト」という。)を取得する(S102)。サーバリストは、サーバリストテーブル111を参照して取得されてもよい。
【0026】
図5は、サーバリストテーブル111の構成例を示す図である。図5に示されるように、サーバリストテーブル111には、コンテンツ情報に対応付けて、当該コンテンツ情報に係るコンテンツを保持するサーバ30のサーバ情報が記憶されている。図5では、コンテンツ情報としてURL、サーバ情報としてサーバ名を用いた例が示されている。
【0027】
図5によれば、例えば、コンテンツ情報として「http://www.aaa.com/01.ts」が入力された場合は、サーバリストとして{ServerA,ServerB,ServerC}が得られる。
【0028】
なお、サーバリストは、クライアント端末20からのリクエストに含まれてもよい。例えば、クライアント端末20のユーザによって、サーバリストが指定されてもよい。この場合、サーバリストテーブル111は参照されなくてもよい。
【0029】
続いて、最適サーバ選択部12は、サーバリストに含まれる各サーバ情報について、ユーザから入力された通信環境情報に対応する品質情報を品質情報テーブル112から取得する(S103)。
【0030】
図6は、品質情報テーブル112の構成例を示す図である。図6に示されるように、品質情報テーブル112には、過去に行われた各コンテンツのダウンロードごとに、通信環境情報、サーバ情報及び品質情報を含む履歴が記憶されている。通信環境情報は、ダウンロードの要求元のクライアント端末20の通信環境情報である。サーバ情報は、ダウンロードの要求先のサーバ30のサーバ情報である。品質情報は、当該ダウンロードに関する品質情報である。図6の例では、通信環境情報として時間帯、キャリア名及びセルIDの組が用いられ、サーバ情報としてサーバ名が用いられ、品質情報としてスループットを用いられている。
【0031】
図6の例によれば、例えば、リクエストに含まれる通信環境情報として時間帯=10、キャリア名=CarrierA、セルID=aaaaaaである場合、ServerAについては、スループットのリスト(以下、「品質情報リスト」という。)として{1000、2000、500、900。1100}が取得される。すなわち、当該通信環境情報に該当するレコード取得され、取得されたレコードの品質情報がサーバ情報ごとにリスト化されて、品質情報リストとして取得される。
【0032】
なお、図6では、品質情報としてスループットが用いられる例を示したが、品質情報としては、クライアント端末20、測定専用の端末、又はサーバ30から取得可能な他の指標が用いられてもよい。例えば、RTTの逆数、ジッタの逆数、Webページ表示待ち時間の逆数、映像の平均ビットレート、映像の再生停止時間の逆数、映像のビットレート変動量の逆数、推定体感品質値、又はこれらの重み付き和(加重和)が品質情報として用いられてもよい。すなわち、本実施の形態において品質情報は、値が大きいほど品質が高いことをしめす指標である。
【0033】
続いて、最適サーバ選択部12は、サーバリストに含まれる各サーバ情報に対応するコストをコストテーブル113から取得する(S104)。
【0034】
図7は、コストテーブル113の構成例を示す図である。図7に示されるように、コストテーブル113には、サーバ情報ごとにコストが対応付けられて記憶されている。コストとは、そのサーバ30からコンテンツを取得(ダウンロード)する際に要する単位通信量あたりの金銭的なコストを表しており、例えば、CDNの転送量に基づいた利用料、トランジット料金等、単位通信量あたりに要するコストである。
【0035】
続いて、最適サーバ選択部12は、サーバリストにサーバ情報が含まれる各サーバ30の品質情報リスト及びコストに基づいて、サーバリストにサーバ情報が含まれるサーバ30群の中から一つの)サーバ30(以下、「最適サーバ30」という。)を選択する(S105)。ここで、サーバリストにおいてi番目のサーバ情報iの品質情報リストをq={q1i,q2i,・・・qni}によって示す。すなわち、qniは、サーバ情報iの品質情報リストにおいてn番目の品質情報を示す。また、サーバ情報iのコストをcによって示す。
【0036】
第1の実施の形態において、最適サーバ選択部12は、予め与えられている品質情報の集約関数f(q)及び閾値Tに基づいて、S={i|f(q)≧T}を求め、サーバi=argmini∈Sを最適サーバ30として選択する。すなわち、最適サーバ選択部12は、集約関数f(q)の出力と閾値Tとの比較に基づいて抽出される一部のサーバ30(当該出力が閾値T以上であるサーバ30)の中で、コストが最小となるサーバ30を最適サーバ30として選択する。なお、本実施の形態では、品質情報の値が大きいほど品質が高いことを示す。したがあって、閾値T以上の品質情報は、品質が閾値Tより高いことを示す品質情報に相当する。
【0037】
集約関数f(q)としては、qにおける任意のパーセンタイル値、qの平均値、qにおける最頻値、qの平均と標準偏差の重み付き平均、又はqの要素のうち予め指定された閾値を上回る品質情報の割合等を出力する関数であってもよい。
【0038】
また、集約関数f(q)の出力(例えば、qにおける任意のパーセンタイル値、qの平均値、qにおける最頻値、qの平均と標準偏差の重み付き平均、又はqの要素のうち予め指定された閾値を上回る品質情報の割合等)は、qに含まれる品質情報の集合の経験分布に基づいて求められてもよいし、当該経験分布(当該集合)を何らかの分布関数にフィッティングさせ、当該分布関数に基づいて求められてもよい。後者の場合、分布関数にフィッティングさせた結果を用いてもよい。後者の場合、正規分布、対数正規分布、ベータ分布等、パラメータを含む任意の分布の分布関数が用いられてもよい。
【0039】
例えば、サーバリストの内容が{ServerA,ServerB,ServerC}であり、q={1000,2000,3000}、q={100,200,300}、q={10000,20000,30000}、c=0.1、c=0.1、c=1.0、T=1000、f(q)=(1/(|q|))Σjiとする。この場合、f(q)=2000、f(q)=200、f(q)=20000となるため、品質情報のみを考慮するとServerCが最適サーバ30として選択される。一方、第1の実施の形態によれば、S={ServerA,ServerC}となり、argmini∈S=1となるため、ServerAが選択される。
【0040】
続いて、最適サーバ応答部13は、最適サーバ30のサーバ情報を含む応答を、リクエストの送信元のクライアント端末20に送信する(S106)。当該サーバ情報を受信したクライアント端末20は、当該サーバ情報に係るサーバ30からコンテンツをダウンロードする。
【0041】
上述したように、第1の実施の形態によれば、品質だけでなくコストも考慮したコンテンツのサーバ30の選択を可能とすることができる。したがって、ユーザの体感品質を保ちながらコストを低減することが可能となり、従来のサーバ30の選択方式を適用した場合と比較して、より経済的な映像配信・Web閲覧を実現することが可能となる。
【0042】
なお、品質情報テーブル112には、コンテンツのダウンロードごとの品質情報を直接記憶するのではなく、通信環境情報及びサーバ情報の組み合わせごとに、集約関数f(q)の値、又はフィッティングさせた分布関数のパラメータ等を記憶してもよい。
【0043】
図8は、品質情報テーブル112にフィッティング分布のパラメータを格納した例を示す図である。ここでは、フィッティング分布として対数正規分布を用い、そのパラメータであるμ、σを格納した例を示した。通信環境情報及びサーバ情報の組み合わせ単位での集約関数f(q)の値、又は分布関数へのフィッティングは、予め指定された時間周期ごとに実行されてもよいし、品質情報が到着するたびに実行されてもよい。
【0044】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では第1の実施の形態と異なる点について説明する。第2の実施の形態において特に言及されない点については、第1の実施の形態と同様でもよい。
【0045】
第2の実施の形態では、図4のステップS105における最適サーバ30の選択方法が第1の実施の形態とは異なる。具体的には、品質情報の集約関数f(q)について品質情報とコストのバランスを調整するパラメータα(α≧0)が導入される。この場合、最適サーバ選択部12は、与えられた時、サーバi=argmax(f(q)-αc)を最適サーバ30として選択する。すなわち、集約関数f(q)の出力と、αによって重み付けされたコストとの和(この例では、重み付け係数が負であるため、負の重み付けコストとの和)が最大となるサーバ30が最適サーバ30として選択される。
【0046】
例えば、サーバリストの内容が{ServerA,ServerB,ServerC}であり、q={1000,2000,3000}、q={100,200,300}、q={10000,20000,30000}、c=0.1、c=0.1、c=1.0、α=100000、f(q)=(1/(|q|))Σjiとする。この場合、f(q)-αc=-8000、f(q)-αc=-9800、f(q)-αc=-80000となるため、品質情報のみを考慮するとServerCが最適サーバ30として選択される。一方、第2の実施の形態によれば、argmax(f(q)-αc)=1となるため、ServerAが選択される。
【0047】
なお、上記各実施の形態において、サーバリスト取得部11は、取得部の一例である。最適サーバ選択部12は、選択部の一例である。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 サーバ選択装置
11 サーバリスト取得部
12 最適サーバ選択部
13 最適サーバ応答部
20 クライアント端末
30 サーバ
100 ドライブ装置
101 記録媒体
102 補助記憶装置
103 メモリ装置
104 CPU
105 インタフェース装置
111 サーバリストテーブル
112 品質情報テーブル
113 コストテーブル
B バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8