(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】プライマー組成物、水性液、プライマー層付き基材フィルム、プリズムシート及びプライマー組成物としての使用
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20221129BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20221129BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20221129BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20221129BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B32B27/30 A
C09D5/00 D
C09D4/02
C09D167/00
G02B5/04 Z
(21)【出願番号】P 2018535081
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2018024471
(87)【国際公開番号】W WO2019004326
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2017129132
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】中根 宇之
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-016963(JP,A)
【文献】特開2009-149715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D4
C09D5
C09D7
C09D167
B32B7
B32B27
G02B1
G02B5
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム、前記基材フィルム上のプライマー層、及び前記プライマー層上のコーティング層を有するシートであって、
前記プライマー層が、(メタ)アクリルアミド基含有化合物(A)及び架橋剤(B)を含有するプライマー組成物
からなるプライマー層であって、
前記架橋剤(B)が、イソシアネート基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、アミノ基含有化合物、金属アルコキシド、金属キレート化合物、多価金属の酢酸-アンモニウム錯塩、多価金属のアンモニウム-カーボネート錯塩、アジリジン基含有化合物、ヒドラジン基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物及びメラミン基含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記(メタ)アクリルアミド基含有化合物(A)と前記架橋剤(B)の含有比率(質量比)が10:90~90:10である、
シート。
【請求項2】
前記(メタ)アクリルアミド基含有化合物(A)が水酸基含有(メタ)アクリルアミド基含有化合物である請求項1に記載の
シート。
【請求項3】
前記(メタ)アクリルアミド基含有化合物(A)中の炭素-炭素二重結合含有量が、1~40質量%である請求項1又は2に記載の
シート。
【請求項4】
プライマー組成物中における(メタ)アクリルアミド基含有化合物(A)の炭素-炭素二重結合含有量が、0.5~35質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の
シート。
【請求項5】
更に、バインダー樹脂(C)を含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の
シート。
【請求項6】
前記バインダー樹脂(C)が、ポリエステルである請求項5に記載の
シート。
【請求項7】
プライマー組成物中の前記バインダー樹脂(C)の含有量が、1~70質量%である請求項5または6に記載の
シート。
【請求項8】
前記プライマー組成物が、水性溶媒に溶解又は分散されてなる水性液
である、請求項1~7のいずれか1項に記載のシート。
【請求項9】
前記コーティング層がプリズム層
である、請求項1~8のいずれか1項に記載のシート。
【請求項10】
前記プリズム層が、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物である請求項
9に記載
のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物に関し、更に詳しくは、基材フィルム上にプライマー層を形成するためのプライマー組成物、該プライマー組成物を用いた水性液、プライマー層付き基材フィルム、プリズムシート及びプライマー組成物としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂は寸法安定性、機械的特性、耐熱性、透明性、電気的特性及び耐薬品性などに優れた性質を有するため各種基材用樹脂として広く用いられている。例えば、ポリエステルフィルムは、包装材料、磁気カード、印刷材料等の産業上、様々な分野で利用されており、前記ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性ポリエステルやこれらの共重合体に、必要に応じて他の樹脂を混合したものを、溶融押出して成形した後、二軸延伸し、熱固定したものが用いられている。このようなポリエステルフィルムは、諸物性に優れている反面、その表面は高度に結晶配向されているため、フィルム上に設けられるコーティング層との密着性に乏しいという問題があった。
【0003】
そのため、ポリエステルフィルムとコーティング層との密着性を向上させるために、フィルム表面に密着性を付与する検討がなされており、例えば、フィルム表面に易接着処理を施したり、各種樹脂からなるプライマー層を設けたりする方法が知られている。
【0004】
コーティング層の一つとして、例えばプリズム層があり、ポリエステルフィルムとプリズム層を備えたプリズムシートは、テレビ、パソコン、携帯電話等の表示装置に使用されている。
【0005】
プリズム層の形成方法としては、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をプリズム型に導入し、プリズム型とポリエステルフィルムとで活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を挟み込んだ状態で活性エネルギー線を照射し、樹脂組成物を硬化させ、プリズム型を取り除くことにより、ポリエステルフィルム上に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化してなるプリズム層を形成する方法が挙げられる。
【0006】
このような手法の場合、プリズムパターンが精巧に形成されるためには、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂を使用する必要がある。
しかし、無溶剤系樹脂は、溶剤系樹脂に比べて、ポリエステルフィルム上に積層されたプライマー層への浸透、膨潤効果が低く、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化してなる層とプライマー層との密着性が不十分となりやすい。
【0007】
そこで、ポリエステルフィルムとプリズム層との密着性を向上させる技術として、例えば、特許文献1には、プライマー層を(メタ)アクリレート化合物及びイソシアネート系化合物を含有する塗布液で形成する技術が提案されており、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、(メタ)アクリレート化合物及びイソシアネート系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層を有する積層ポリエステルフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プライマー層を備えた基材フィルムは巻き取り保管されるため、プライマー層表面には基材フィルムの未処理面が接触するが、その接触面で両者が密着してしまい、プライマー層を備えた基材フィルム同士が剥がれ難くなったり、基材フィルムの未処理面にプライマー層が移行したり融着したりすることがある。そこで、基材フィルムのプライマー層表面と未処理面との過剰な密着が生じないような耐ブロッキング性も必要である。
【0010】
特許文献1の技術ではプリズム層との密着性効果は示されている。一方、耐ブロッキング性についてはシリカ等の微粒子をプライマー塗剤に添加する手法が記載されているが、プライマー塗剤へ微粒子を添加すると、塗剤の安定性、塗膜の透明性、プリズム層との密着性等が悪化したり、微粒子を添加しても耐ブロッキング性が十分とはならない場合があり、微粒子のみに頼らない耐ブロッキング性の改善方法が必要であった。
【0011】
本発明は、このような背景下において、基材フィルムとコーティング層の双方、特にはポリエステルフィルムと無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化してなるプリズム層の双方との密着性に優れるとともに、プライマー層が基材フィルムの未処理面に移行又は融着しない、耐ブロッキング性にも優れるプライマー層を形成するためのプライマー組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、(メタ)アクリルアミド類と架橋剤を含有したプライマー組成物を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の(1)~(14)を特徴とする。
(1)(メタ)アクリルアミド類(A)及び架橋剤(B)を含有するプライマー組成物。
(2)前記架橋剤(B)が、イソシアネート系化合物、オキサゾリン系化合物、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、アミン系化合物、金属系化合物、アジリジン系化合物、ヒドラジン系化合物、ヒドラジド系化合物及びメラミン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である前記(1)に記載のプライマー組成物。
(3)前記(メタ)アクリルアミド類(A)が水酸基含有(メタ)アクリルアミド類である前記(1)または(2)に記載のプライマー組成物。
(4)前記(メタ)アクリルアミド類(A)中の炭素-炭素二重結合含有量が、1~40質量%である前記(1)~(3)のいずれか1つに記載のプライマー組成物。
(5)プライマー組成物中における(メタ)アクリルアミド類(A)の炭素-炭素二重結合含有量が、0.5~35質量%である前記(1)~(4)のいずれか1つに記載のプライマー組成物。
(6)前記(メタ)アクリルアミド類(A)と前記架橋剤(B)の含有比率(質量比)が10:90~90:10である前記(1)~(5)のいずれか1つに記載のプライマー組成物。
(7)更に、バインダー樹脂(C)を含有する前記(1)~(6)のいずれか1つに記載のプライマー組成物。
(8)前記バインダー樹脂(C)が、ポリエステル系樹脂である前記(7)に記載のプライマー組成物。
(9)プライマー組成物中の前記バインダー樹脂(C)の含有量が、1~70質量%である前記(7)または(8)に記載のプライマー組成物。
【0014】
(10)前記(1)~(9)のいずれか1つに記載のプライマー組成物が、水性溶媒に溶解又は分散されてなる水性液。
(11)基材フィルム上に、前記(1)~(9)のいずれか1つに記載のプライマー組成物からなるプライマー層を有するプライマー層付き基材フィルム。
(12)前記(11)に記載のプライマー層付き基材フィルムのプライマー層上に、プリズム層を有するプリズムシート。
(13)前記プリズム層が、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物である前記(12)に記載のプリズムシート。
(14)(メタ)アクリルアミド類(A)及び架橋剤(B)を含有する組成物の、プライマー組成物としての使用。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基材フィルムとコーティング層との密着性はもとより、プライマー層が基材フィルムの未処理面に移行又は融着しない、耐ブロッキング性にも優れたプライマー層を得ることのできるプライマー組成物を提供することができる。よって、本発明のプライマー組成物からなるプライマー層を有するプライマー層付き基材フィルムは、プリズムシート、ラベルシート、印刷用シート、ハードコートフィルム等のフィルム上にコーティング層を設けてなるシートに好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリルアミドとはアクリルアミド又はメタクリルアミド、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレート、(メタ)アクリロイル基とはメタクリロイル基又はアクリロイル基をそれぞれ意味する。
また、本発明において、「シート」とは、シート、フィルム、テープを概念的に包含するものである。
また、本発明において、「質量」は「重量」と同義である。
【0017】
<プライマー組成物>
本発明のプライマー組成物は、(メタ)アクリルアミド類(A)と、架橋剤(B)を含有する。
以下、各成分について説明する。
【0018】
<(メタ)アクリルアミド類(A)>
本発明のプライマー組成物は、(メタ)アクリルアミド類(A)を含有する。
例えば、本発明のプライマー組成物を、基材フィルムと無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂が硬化してなるプリズム層を用いたコーティング層との間に設けるプライマー層を形成するために用いる場合、(メタ)アクリルアミド類(A)中の(メタ)アクリロイル基が、上記無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化時にコーティング層中の二重結合と反応する。よって、本発明のプライマー組成物から得られるプライマー層は、基材フィルムとコーティング層との密着性に優れる。さらに、(メタ)アクリルアミド類(A)中のアミド基が高極性を有することにより、該密着性がより向上する。
【0019】
また、分子間でのアミド基同士の水素結合により、本発明のプライマー組成物から得られるプライマー層の耐ブロッキング性が向上する。さらに、(メタ)アクリルアミド類(A)が水酸基を有し、架橋剤(B)が後述のイソシアネート系化合物である場合、水酸基とイソシアネート基の反応で生じるウレタン結合部位とアミド基との水素結合により、耐ブロッキング性がより向上する。
【0020】
(メタ)アクリルアミド類(A)としては、例えば、単官能(メタ)アクリルアミド、2官能(メタ)アクリルアミド、3官能以上の多官能(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらの1種以上を用いる。
【0021】
単官能(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド等の(ジ)アルキル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-i-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩等のアミノ基含有(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のケトン基含有(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド、その他、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0022】
2官能(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、代表的な市販品としては、例えば、富士フイルム社製の「FAM-201」等が挙げられる。
【0023】
3官能以上の多官能(メタ)アクリルアミドとしては、代表的な市販品として、例えば、富士フイルム社製の「FAM-301」、「FAM-401」、「FAM-402」等が挙げられる。
【0024】
本発明に使用される(メタ)アクリルアミド類(A)は、プリズム樹脂として好ましく用いられる無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性の点から、アクリルアミド基を有する化合物が好ましい。また、(メタ)アクリルアミド類(A)は、耐ブロッキング性の点から、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ケトン基等の官能基を含有すること、更に架橋剤(B)と反応性を有する基を含有することが好ましく、特には水酸基、カルボキシル基、ケトン基を有することが好ましく、更には水酸基を有することが好ましい。
【0025】
とりわけ、水酸基を有する水酸基含有(メタ)アクリルアミド類が、架橋剤(B)との反応性及び無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂との密着性の点で最も好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、中でもN-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0026】
水酸基含有(メタ)アクリルアミド類の水酸基価としては、20~800mgKOH/gであることが好ましく、特には50~700mgKOH/g、更には100~600mgKOH/gであることが好ましい。かかる水酸基価が小さすぎると無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性及び耐ブロッキング性が低下する傾向があり、大きすぎるとプライマー層の耐水性が低下する傾向がある。
なお、上記の水酸基価は、JIS K 1557に準じて測定した値である。
【0027】
(メタ)アクリルアミド類(A)は、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性の点から、プライマー組成物からなる塗膜表面に偏在しやすい低分子量のものを用いることが好ましく、(メタ)アクリルアミド類(A)の重量平均分子量としては、10,000以下が好ましく、特には1,000以下、更には500以下、殊には200以下が好ましい。なお、重量平均分子量の下限としては通常70である。かかる重量平均分子量が大きすぎると無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性が低下する傾向がある。
【0028】
なお、本発明において、重量平均分子量及び数平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量及び数平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製、「HLC-8320GPC」)に、カラム:TSKgel SuperMultipore HZ-M(排除限界分子量:2×106、理論段数:16,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:4μm)の2本直列を用いることにより測定されるものである。
【0029】
また、プライマー組成物からなる塗膜表面に偏在しやすいことから、単官能(メタ)アクリルアミド又は2官能(メタ)アクリルアミドが好ましく、特には単官能(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0030】
また、(メタ)アクリルアミド類(A)中の炭素-炭素二重結合含有量は、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性の点から、1~40質量%であることが好ましい。具体的に、下限は1質量%以上であることが好ましく、特には2質量%以上、更には3質量%以上、殊には5質量%以上であることが好ましい。かかる炭素-炭素二重結合含有量が少なすぎると無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性が低下する傾向がある。
【0031】
なお、上記(メタ)アクリルアミド類(A)中の炭素-炭素二重結合含有量は、下記式(I)により算出される。
(メタ)アクリルアミド類(A)中の炭素-炭素二重結合含有量(質量%)=(100×27×P1n)/P1mw・・・式(I)
式(I)中、P1nは(メタ)アクリルアミド類(A)の1分子当たりの炭素-炭素二重結合数、P1mwは(メタ)アクリルアミド類(A)の分子量(g/mol)である。
【0032】
更に、本発明においては、プライマー組成物中における(メタ)アクリルアミド類(A)の炭素-炭素二重結合含有量は、0.5~35質量%であることが好ましい。具体的に、下限は0.5質量%以上であることが好ましく、特には1質量%以上、更には2質量%以上、殊には4質量%以上であることが好ましい。かかる炭素-炭素二重結合含有量が少なすぎると無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性が低下する傾向がある。
【0033】
なお、上記プライマー組成物中における(メタ)アクリルアミド類(A)の炭素-炭素二重結合含有量は、下記式(II)により算出される。
プライマー組成物中における(メタ)アクリルアミド類(A)の炭素-炭素二重結合含有量(質量%)=(100×27×P2m×P2n)/(P2mw×S2)・・・式(II)
式(II)中、P2mは(メタ)アクリルアミド類(A)の質量(g)、P2nは(メタ)アクリルアミド類(A)の1分子当たりの炭素-炭素二重結合数、P2mwは(メタ)アクリルアミド類(A)の分子量(g/mol)、S2はプライマー組成物の固形分総質量(g)である。
【0034】
プライマー組成物中の(メタ)アクリルアミド類(A)の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、25質量%以上が殊に好ましい。また、その上限は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、75質量%以下が殊に好ましい。(メタ)アクリルアミド類(A)の含有量が少なすぎても多すぎても、基材フィルムとコーティング層との密着性が低下するとともに、耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
【0035】
<架橋剤(B)>
上記架橋剤(B)としては、特にイソシアネート系化合物、オキサゾリン系化合物、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、アミン系化合物、金属系化合物、アジリジン系化合物、ヒドラジン系化合物、ヒドラジド系化合物及びメラミン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を使用することが好ましい。これらの化合物を用いることにより、プライマー層のタックの減少、プライマー組成物からなる塗膜強度の向上、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等のコーティング剤の濡れの向上等が起こるため、耐ブロッキング性や無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性が向上する。
【0036】
架橋剤(B)は、これらの中でも、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性の点からイソシアネート系化合物、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物が特に好ましく、更にはイソシアネート系化合物が好ましい。
【0037】
イソシアネート系化合物としては、官能基としてイソシアネート基を分子内に少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系化合物;1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系化合物;1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族イソシアネート系化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらのイソシアネート系化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0038】
具体的には、日本ポリウレタン社製の「アクアネート110」、「アクアネート210」、第一工業製薬社製の「エラストロンBN-27」、「エラストロンBN-77」、明成化学工業社製の「メイカネートTP-10」、「SU-268A」、Baxenden Chemical Limited社製の「Trixene aqua BI200」、「Trixene aqua BI220」等が挙げられる。
【0039】
中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネート系よりも脂肪族イソシアネート系又は脂環族イソシアネート系がより好ましい。また、安定性の点からは官能基ブロックタイプのものが好ましく、「SU-268A」、「Trixene aqua BI220」等が好適である。
【0040】
オキサゾリン系化合物としては、例えば、2位の炭素位置に不飽和炭素-炭素結合をもつ置換基を有する付加重合性2-オキサゾリン(例えば、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン)と他の不飽和単量体との共重合体等が挙げられ、市販品として、日本触媒社製の「エポクロスWS-500」、「エポクロスWS-700」、「エポクロスK-2010E」、「エポクロスK-2020E」、「エポクロスK-2030E」等が挙げられる。
【0041】
エポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-611」、「デナコールEX-612」、「デナコールEX-614」、「デナコールEX-614B」、「デナコールEX-622」等)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-512」、「デナコールEX-521」等)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-411」等)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-421」等)、グリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-313」、「デナコールEX-314」等)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-321」等)、レゾルシノールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-201」等)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-211」等)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-212」等)、ヒドロゲネイティッドビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-252」等)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-810」、「デナコールEX-811」等)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-850」、「デナコールEX-851」等)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-821」、「デナコールEX-830」、「デナコールEX-832」、「デナコールEX-841」、「デナコールEX-861」等)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-911」等)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX-941」、「デナコールEX-920」、「デナコールEX-931」等が挙げられる。
中でも、水性タイプのものが好適である。
【0042】
カルボジイミド系化合物としては、官能基としてカルボジイミド基、又はその互変異性の関係にあるシアナミド基を分子内に少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02」、「カルボジライトV-02-L2」、「カルボジライトSV-02」、「カルボジライトV-04」、「カルボジライトV-10」、「カルボジライトE-03A」、「カルボジライトE-02」、「カルボジライトE-04」等が挙げられる。
【0043】
アミン系化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0044】
金属系化合物としては、例えば、テトラエチルチタネート、テトラエチルジルコネート、アルミニウムイソプロピオネート等の金属アルコキシド、並びにアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属の、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、エチレンジアミン四酢酸配位化合物の金属キレート化合物、上記多価金属の酢酸-アンモニウム錯塩、及び上記多価金属のアンモニウム-カーボネート錯塩等が挙げられる。
【0045】
アジリジン系化合物としては、アジリジン基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば、日本触媒社製の「ケミタイトPZ-33」、「ケミタイトDZ-22E」等が挙げられる。
【0046】
ヒドラジン系化合物としては、例えば、モノ塩酸ヒドラジン、ジ塩酸ヒドラジン、モノ臭化水素酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジン等が挙げられる。
【0047】
ヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0048】
メラミン系化合物としては、例えば、ヘキサメトキシメチロールメラミンや、三和ケミカル社製の「ニカラックMW-30M」、「ニカラックMW-30」、「ニカラックMW-22」、「ニカラックMS-11」、「ニカラックMS-011」、「ニカラックMX-730」、「ニカラックMX-750」、「ニカラックMX-706」、「ニカラックMX-035」等のメチル化メラミン樹脂、「ニカラックMX-45」、「ニカラックMX-410」等の混合エーテル化メラミン樹脂等が挙げられる。
【0049】
架橋剤(B)としては、これらの中から選ばれる1種のみを用いてもよく、2種以上を併せて用いてもよい。
【0050】
プライマー組成物中の架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリルアミド類(A)の官能基の量、(メタ)アクリルアミド類(A)の重量平均分子量、用途目的により適宜選択できるが、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、18質量%以上が殊に好ましい。また、その上限は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、75質量%以下が殊に好ましい。架橋剤(B)の含有量が少なすぎても多すぎても、架橋不足となり無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性と耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
【0051】
また、本発明において、プライマー組成物中の(メタ)アクリルアミド類(A)と架橋剤(B)の含有比率(質量比)は、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性と耐ブロッキング性の点から、(メタ)アクリルアミド類(A):架橋剤(B)が10:90~90:10であることが好ましく、特に好ましくは15:85~85:15、更に好ましくは20:80~80:20、殊に好ましくは25:75~75:25である。(メタ)アクリルアミド類(A)に対して架橋剤(B)が少なすぎても多すぎても、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性及び耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
【0052】
本発明において、(メタ)アクリルアミド類(A)として、最も好ましいものである水酸基含有(メタ)アクリルアミド類を用い、架橋剤(B)として最も好ましいものであるイソシアネート系化合物を用いた場合において、プライマー組成物中における水酸基含有(メタ)アクリルアミド類の水酸基と架橋剤(B)のイソシアネート基の含有比率(水酸基量:イソシアネート基量)(モル比)が100:1~100:300であることが好ましく、特に好ましくは100:3~100:150、更に好ましくは100:5~100:100、殊に好ましくは100:10~100:70である。イソシアネート基の含有比率が小さすぎると無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性や耐ブロッキング性が低下する傾向があり、大きすぎるとプライマー層が空気中の水分と反応し経時変化を引き起こす傾向がある。
【0053】
本発明において、(メタ)アクリルアミド類(A)及び架橋剤(B)、更に後述のバインダー樹脂(C)の反応を促進するために、硬化触媒を用いることが好ましい。
かかる硬化触媒としては、例えば、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニア化合物等の金属系化合物、アミン系化合物等が挙げられ、中でも触媒活性の高さの点で金属系化合物が好ましく、特には有機スズ化合物が好ましい。
硬化触媒の含有量はプライマー組成物100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、特に好ましくは0.1~2質量部、更に好ましくは0.5~1.5質量部である。
【0054】
<バインダー樹脂(C)>
本発明のプライマー組成物には、塗布外観、透明性や密着性の向上等のために、また、(メタ)アクリルアミド類(A)と架橋剤(B)を担持させるために、各種ポリマーをバインダー樹脂(C)として併用することも可能である。
【0055】
バインダー樹脂(C)の具体例としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂(ポリビニルアルコール等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。その中でも、密着性向上の観点からポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、特に好ましくはポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂であり、更に好ましくはポリエステル系樹脂である。
【0056】
ポリウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物のことであり、通常ポリオールとイソシアネートの反応により作製される。ポリオールとしては、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
【0057】
ポリエステル系樹脂とは、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸及びポリオール化合物からなるものが挙げられる。
多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸等のスルホン酸金属塩含有ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の3官能以上の多価カルボン酸、p-ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシル酸及びそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができる。
【0058】
ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオ-ル、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオ-ル、2-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノ-ル、1,3-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、p-キシリレングリコ-ル、ビスフェノ-ルA-エチレングリコ-ル付加物等の芳香族ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ-ル、ポリプロピレングリコ-ル、ポリテトラメチレングリコ-ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ-ル等のポリエーテルジオール、ジメチロ-ルプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジオール、グリセリン、トリメチロ-ルプロパン等の3官能以上のポリオールなどを用いることができる。
【0059】
これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル系樹脂を合成すればよい。これらポリエステル系樹脂の中でも、水系化の観点からスルホン酸塩を有する構成成分を含むもの、または酸価が10以上であることが好ましく、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂等への密着性の観点から、スルホン酸塩を有する構成成分を含むものが特に好ましい。
【0060】
アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリレート系のモノマーに代表されるような、炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えば、ポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体(例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体)も含まれる。あるいは、ポリエステル溶液、又はポリエステル分散液中で炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、又は分散液中で炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
【0061】
上記炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、及びそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド又は(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有ビニル系モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのような各種ビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種ハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
【0062】
バインダー樹脂(C)の含有量は、(メタ)アクリルアミド類(A)及び架橋剤(B)の合計100質量部に対して、3~200質量部であることが好ましく、特には5~100質量部、更には8~60質量部であることが好ましい。
【0063】
また、プライマー組成物中のバインダー樹脂(C)の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、特に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、70質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、殊に好ましくは40質量%以下である。バインダー樹脂(C)を含有する場合、バインダー樹脂(C)の含有量が少なすぎると造膜不良等によりプライマー組成物からなる塗膜の透明性が低下する傾向があり、多すぎるとプライマー組成物中の(メタ)アクリルアミド類(A)と架橋剤(B)の含有量が少なくなりすぎて密着性と耐ブロッキング性を両立させることが困難となる傾向がある。
【0064】
本発明のプライマー組成物には、上記各成分以外に、必要に応じて、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤、熱安定剤、ガラス繊維、無機・有機充填剤、色料、難燃剤、軟化剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤、ゲル化剤、消泡剤、他の熱可塑性樹脂等を、本発明の効果を損なわない程度に配合することができる。
【0065】
本発明のプライマー組成物は、(メタ)アクリルアミド類(A)、架橋剤(B)、及び所望によりバインダー樹脂(C)やその他の成分を混合することにより作製することができる。
【0066】
<水性液>
本発明の水性液は、上記のプライマー組成物が水性溶媒に溶解又は分散されてなるものである。以下、水性溶媒に溶解又は分散させることを「水溶解又は水分散」と表記する。
本発明の水性液を調製するに際しては、水性溶媒に、少なくとも上記の(メタ)アクリルアミド類(A)と架橋剤(B)、好ましく更にバインダー樹脂(C)を適宜混合して行うことができる。例えば、(1)各成分を混合した後、水性溶媒を混合して本発明の水性液とする方法、(2)各成分のそれぞれを水性溶媒で水性液としておき、これらを混合し本発明の水性液とする方法、(3)各成分のいずれか1つ以上を水性溶媒で水性液としておき、更に残りの成分を混合し本発明の水性液とする方法等が挙げられるが、調製が容易な点で上記(2)または(3)の方法が好ましい。
【0067】
上記水性溶媒としては、水又は水に適宜の親水性有機溶媒を混合したものを挙げることができる。
前記親水性有機溶媒としては、例えば、アセトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル等のグリコールエーテル類、コハク酸ジイソブチル、グルタル酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソブチル等のカルボン酸エステル類など、水と混合可能なものが挙げられる。
【0068】
親水性有機溶媒を用いる場合には、本発明の水性液の全体に対する含有割合は適宜設定される。例えば、20質量%以下の範囲と設定することができるが、これに限定されるものではない。また、これら親水性有機溶媒の中から選ばれる1種を用いてもよく、あるいは2種以上を併せて用いてもよい。
【0069】
(メタ)アクリルアミド類(A)と架橋剤(B)、好ましくは更にバインダー樹脂(C)が水性溶媒に溶解又は分散された水性液を調製する際、これらが酸性基を有する場合は、水性溶媒に均一に溶解又は分散させるために中和剤を配合することが好ましい。
【0070】
かかる中和剤としては、プライマー組成物に含有される(メタ)アクリルアミド類(A)、架橋剤(B)及びバインダー樹脂(C)の酸性基を中和することができるものであればよい。具体的には、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物;エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等の有機アミン;及びアンモニア等が挙げられる。これら中和剤の中から選ばれる1種を用いてもよく、あるいは2種以上を併せて用いてもよい。
【0071】
これら中和剤の中でも乾燥により揮散させやすく、プライマー層の耐水性という点で、沸点が150℃以下のものであることが好ましい。特に、汎用性が高く、低沸点であり、乾燥時の揮散が容易な点から、アンモニア、トリエチルアミンが好ましく、アンモニアが特に好ましい。
【0072】
また、本発明の水性液には、必要に応じて、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤を配合することができる。界面活性剤を配合することによって、水性液をポリエステルフィルム等のポリエステル系樹脂基材に塗布する際の基材フィルムへの濡れ性を向上させることができる。
界面活性剤としては適宜のものを用いることができ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等を挙げることができる。これら界面活性剤の中から選ばれる1種を用いてもよく、あるいは2種以上を併せて用いてもよい。
なお、コーティング層とプライマー層の密着性及びプライマー層の耐水性の点からは、界面活性剤を添加しない方が好ましい。
【0073】
また、本発明の水性液には、更に必要に応じて、耐電防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、滑剤、着色剤等を配合してもよい。
【0074】
本発明の水性液の固形分の濃度は、(メタ)アクリルアミド類(A)、架橋剤(B)、好ましくは更にバインダー樹脂(C)の良好な分散性を確保することができるように適宜調整され、例えば、5~30質量%が好ましい。なお、基材フィルムへの塗布時には所望の膜厚を得るべく適宜希釈され、例えば固形分濃度を1~15質量%に調整し使用される。
【0075】
<プライマー層付き基材フィルム>
本発明の水性液を基材フィルムに塗布し、加熱乾燥することにより、(メタ)アクリルアミド類(A)及び架橋剤(B)、更に好ましくはバインダー樹脂(C)を含有するプライマー組成物から得られる被膜(プライマー層)を形成して、プライマー層付き基材フィルムを得ることができる。
【0076】
上記基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂フィルム又はシートから選択される単層体又は複層体が挙げられる。
なかでも、透明性、耐薬品性、耐熱性、機械的強度及びコスト等の点からポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
上記ポリエステルフィルムは、未延伸のものと、延伸したもののいずれでもよいが、延伸フィルムを用いることが好ましく、特に二軸延伸フィルムを用いることが好ましい。
【0077】
水性液の塗布方法としては公知一般の方法を用いることができ、例えば、基材フィルムの片面又は両面に、キスコート、リバースコート、グラビアコート、ダイコート等で塗布する方法が挙げられる。
【0078】
また、加熱乾燥後(架橋後)のプライマー層の厚みは、0.01~2μmであることが好ましく、更には0.02~0.5μm、殊には0.03~0.3μm、特には0.05~0.15μmであることが好ましい。かかる厚みが薄すぎると密着性が低下する傾向があり、厚すぎると透明性やヘイズ等の光学特性が低下したり、耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
【0079】
<積層フィルム/プリズムシート>
上記プライマー層付き基材フィルムのプライマー層上にさらにコーティング層を設け、該コーティング層をハードコート層やプリズム層とすることにより、積層フィルムやプリズムシートを得ることができる。
コーティング層を形成する材料としては、コーティング材料として一般的に用いられているアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂や、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物等が挙げられるが、なかでも活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0080】
<<積層フィルム>>
積層フィルムは、上記プライマー層付き基材フィルムのプライマー層上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工し、活性エネルギー線を照射して硬化することにより、プライマー層付き基材フィルムのプライマー層上に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化してなるハードコート層を形成することにより得ることができる。
【0081】
上記ハードコート層の厚みとしては、通常0.5~15μmであり、好ましくは1~10μm、特には2~7μmであることが好ましい。
【0082】
<<プリズムシート>>
プリズムシートは、上記プライマー層付き基材フィルムのプライマー層上にプリズム層を形成することにより得ることができる。
プリズム層としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物であることが好ましく、特に好ましくは、無溶剤系活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物である。
【0083】
プリズム層が、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物である場合のプリズム層の形成方法としては、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をプリズム型に導入し、プリズム型とプライマー層付き基材フィルム(特には、ポリエステルフィルム)のプライマー層側とで活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を挟み込んだ状態で活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させ、プリズム型を取り除くことにより、基材フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する方法が挙げられる。
【0084】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗工方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スプレー、シャワー、ディッピング、ロール、スピン、カーテン、フロー、スリット、ダイ、グラビア、コンマ、ディスペンサー、スクリーン印刷、インクジェット印刷等のようなウェットコーティング法が挙げられる。
【0085】
活性エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。
紫外線照射により硬化させる方法としては、150~450nmの波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LED等を用いて、30~3,000mJ/cm2程度照射すればよい。
紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。
【0086】
プリズム層の厚みとしては、5~50μmであることが好ましく、特には10~45μm、更には15~40μm、殊には20~35μmであることが好ましい。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた測定法及び評価方法は次のとおりである。
なお、下記において、「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
【0088】
以下の成分を用意した。
【0089】
<(メタ)アクリルアミド類(A)>
(A-1):N-メチロールアクリルアミド(笠野興産社製「N-MAM」)(水酸基価:487mgKOH/g、炭素-炭素二重結合含有量:26.7質量%)
(A-2):N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(KJケミカルズ社製「HEAA」)(水酸基価:555mgKOH/g、炭素-炭素二重結合含有量:23.4質量%)
【0090】
比較化合物として以下の化合物を用意した。
(A’-1):トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート(全エチレンオキサイド単位=15/1分子)(東邦化学工業社製「T-70EA」)
【0091】
<架橋剤(B)>
(B-1):1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート3量体骨格を有するノニオン系ブロックイソシアネート水分散体(Baxenden Chemicals Limited社製「Trixene aqua BI220」(固形分40%、イソシアネート基当量400g/mol(固形分値)))
(B-2):オキサゾリン基含有ポリマー水分散体(日本触媒社製「エポクロス WS-700」(固形分25%、オキサゾリン基当量220g/mol(固形分値)))
【0092】
<バインダー樹脂(C)>
(C-1):以下の製造例1により作製したポリエステル系樹脂の水性液(固形分濃度20%)
【0093】
〔製造例1〕
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管の付いた反応缶に、多価カルボン酸成分としてテレフタル酸252部(1.517mol)、イソフタル酸135部(0.813mol)、5-ソジウムスルホイソフタル酸ジメチル60部(0.203mol)、ポリオール成分としてエチレングリコール248部(3.995mol)、ジエチレングリコール6部(0.057mol)、触媒として酢酸亜鉛(II)0.3部、三酸化二アンチモン0.4を仕込み、内温が200~240℃となるまで2時間かけて昇温し、240℃で3時間エステル化反応を行った。その後、系内を1mmHg程度まで減圧し、内温240℃で重縮合反応を行い、ポリエステル系樹脂を得た。
得られたポリエステル系樹脂は、酸価3mgKOH/g、数平均分子量8,300、重量平均分子量12,700、ガラス転移温度51℃であった。
【0094】
次に、得られたポリエステル系樹脂20部、脱イオン水80部、25%アンモニア水0.1部を反応器に仕込み、90℃に昇温し撹拌しながら溶解させ、固形分濃度20%のポリエステル系樹脂の水性液(水分散体)を調製した。
【0095】
<実施例1~5及び比較例1>
上記にて用意した(メタ)アクリルアミド類(A)及び架橋剤(B)を用いて、表1に示すとおりの固形分質量比となるよう、各成分を混合し、実施例1~5及び比較例1のプライマー組成物を調製した。
【0096】
実施例1~4において、得られたプライマー組成物中における(メタ)アクリルアミド類(A)の水酸基と架橋剤(B)のイソシアネート基の含有比率(水酸基量:イソシアネート基量)(モル比)を下記式(III)によって求めた。また、実施例5においては、プライマー組成物中における(メタ)アクリルアミド類(A)の水酸基と架橋剤(B)のオキサゾリン基の含有比率(水酸基量:オキサゾリン基量)(モル比)を求めた。結果を表1に示す。
【0097】
水酸基量:イソシアネート基量(またはオキサゾリン基量)(モル比)={(Hm×Hn)/(Hmw)}:{Im/Imw}・・・式(III)
式(III)中、Hmは水酸基含有化合物の質量(g)、Hnは水酸基含有化合物の1分子当たりの水酸基数、Hmwは水酸基含有化合物の分子量(g/mol)、Imはイソシアネート基含有化合物(またはオキサゾリン基含有化合物)の質量(g)、Imwはイソシアネート基当量(またはオキサゾリン基当量)(g/mol)である。
なお、表1中では、水酸基量を100と換算したときの、水酸基量:イソシアネート基量(またはオキサゾリン基量)(モル比)を記載した。
【0098】
得られたプライマー組成物について、下記の方法に従いプリズム層形成用の無溶剤系紫外線硬化型樹脂組成物を硬化してなる樹脂層との密着性及び耐ブロッキング性を評価した。結果を表1に示す。
【0099】
〔密着性〕
上記調製したプライマー組成物を、組成物水性液の固形分が3%となるように脱イオン水で希釈し、プライマー組成物の塗液を調製した。調製した塗液をPETフィルム(東レ社製、ルミラーT60、厚み100μm)上にバーコーターNo.6にて塗布し、150℃で3分間乾燥させることで、厚み0.2μmのプライマー層を形成した。
【0100】
次に、プリズム層形成用の無溶剤系紫外線硬化型樹脂組成物「サンラッドA」(三洋化成工業社製)を上記プライマー層の上にアプリケーターを用いて塗布し、続いて塗布面から13cmの高さにセットした80W/cmの照射強度を有する高圧水銀ランプを用いて紫外線を450mJ/cm2で照射することで紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させ、厚み25μmの樹脂層を形成した。
【0101】
このようにして形成した紫外線硬化樹脂層に1mm2のクロスカットを100個入れ、その上にニチバン社製のセロテープ(登録商標)を貼り付け、テープ上をプラスチック消しゴムで擦って十分に密着させた後、90°方向に急速に剥離し、樹脂層が残存したマス数により密着性評価を行った。評価基準は以下のとおりであり、◎及び○を密着性良好とした。
【0102】
(評価基準)
◎:98/100以上(残存個数/測定個数)
○:86/100以上、97/100以下
△:66/100以上、85/100以下
×:65/100以下
【0103】
〔耐ブロッキング性〕
上記調製したプライマー組成物を、組成物水性液の固形分が20%となるように脱イオン水で希釈し、プライマー組成物の塗液を調製した。調製した塗液をPETフィルム(東レ社製、ルミラーT60、厚み100μm)上にバーコーターNo.10にて塗布し、150℃で3分間乾燥させることで、厚み2μmのプライマー層を形成した。
【0104】
上記で得られたプライマー層付きPETフィルム2枚を、一方のプライマー層付きPETフィルムのプライマー層側の面と他方のプライマー層付きPETフィルムの基材フィルム側の面(プライマー層が設けられていない未処理面)とが接するように重ね、6.2g/cm2の圧力をかけた状態で23℃、相対湿度50%の環境下に一晩静置した。その後、2枚のプライマー層付きPETフィルムの密着状態を確認することにより、耐ブロッキング性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0105】
(評価基準)
○:2枚のプライマー層付きPETフィルムに密着が見られない、又は、2枚のプライマー層付きPETフィルムが簡単に剥がれ、プライマー層の未処理面への移行や融着痕が見られない。
×:2枚のプライマー層付きPETフィルムが密着している、又は、2枚のプライマー層付きPETフィルムを剥がした際にプライマー層の未処理面への移行や融着痕が見られる。
【0106】
【0107】
表1の結果から、実施例1~5のプライマー組成物は、(メタ)アクリルアミド類(A)と架橋剤(B)を含有するものであるので、基材フィルムと樹脂層の双方との密着性に優れ、また、耐ブロッキング性にも優れることが判明した。
これに対し、比較例1は、(メタ)アクリルアミド類(A)ではなく、アクリレート化合物を使用しているため、耐ブロッキング性に劣るものであった。
【0108】
<実施例6~8>
上記にて用意した(メタ)アクリルアミド類(A)、架橋剤(B)及びバインダー樹脂(C)を用いて、表2に示すとおりの固形分質量比となるよう、各成分を混合し、実施例6~8のプライマー組成物を調製した。
【0109】
得られたプライマー組成物中における(メタ)アクリルアミド類(A)の水酸基と架橋剤(B)のイソシアネート基の含有比率(水酸基量:イソシアネート基量)(モル比)を実施例1と同様にして求めた。結果を表2に示す。
【0110】
得られたプライマー組成物について、上記記載のプリズム層形成用の無溶剤系紫外線硬化型樹脂組成物を硬化してなる樹脂層との密着性及び耐ブロッキング性を評価し、さらに下記の方法に従い透明性を評価した。結果を表2に示す。
【0111】
〔透明性〕
上記調製したプライマー組成物を、組成物水性液の固形分が3%となるように脱イオン水で希釈し、プライマー組成物の塗液を調製した。調製した塗液をPETフィルム(東レ社製、ルミラーT60、厚み100μm)上にバーコーターNo.6にて塗布し、150℃で3分間乾燥させることで、厚み0.2μmのプライマー層を形成した。
上記で得られたプライマー層付きPETフィルムを目視にて観察し、下記の評価基準に従って透明性を評価した。
【0112】
(評価基準)
○:透明性が高く、目視ではフィルムのくもりや造膜不良等が確認されない。
△:やや透明性に欠け、光にかざすと目視にてフィルムのくもりや造膜不良等が確認される。
×:透明性に欠け、目視にてフィルムのくもりや造膜不良等がはっきりと確認される。
【0113】
【0114】
表2の結果から、実施例6~8のプライマー組成物は、(メタ)アクリルアミド類(A)、架橋剤(B)に加え、更にバインダー樹脂(C)としてポリエステル系樹脂を含有するものであり、これにより、透明性にも優れたものとなることが判明した。
【0115】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2017年6月30日出願の日本特許出願(特願2017-129132)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明のプライマー組成物は、基材フィルムのプライマーとして好適に用いることができる。また、得られるプライマー層付き基材フィルムは、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化してなるコーティング層との密着性に優れるものであり、例えば、ラベルシートや印刷用シート、ハードコートフィルム、プリズムシートなど、フィルム上にコーティング層を設けてなるシートとして有用であり、特にはプリズムシートとして有用である。