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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/30 20060101AFI20221129BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20221129BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20221129BHJP
   H01L 35/22 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
H01L35/30
H01L35/32 A
H02N11/00 A
H01L35/22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018565554
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2018002913
(87)【国際公開番号】W WO2018143178
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2017015884
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】内田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 聡
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-060488(JP,A)
【文献】特開2006-186255(JP,A)
【文献】特開2003-133600(JP,A)
【文献】特開平07-111345(JP,A)
【文献】特開2012-079841(JP,A)
【文献】特表2015-522940(JP,A)
【文献】特開2012-222244(JP,A)
【文献】国際公開第2011/065185(WO,A1)
【文献】特表2013-508983(JP,A)
【文献】特開2014-154761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/30
H01L 35/32
H02N 11/00
H01L 35/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源からの熱を電力に変換する熱電変換モジュールであって、
面内の一方向である接合方向に沿って接合された、p型熱電変換素子及びn型熱電変換素子を有する、膜状の熱電変換素子体と、
前記熱電変換素子体の一方の面を熱源からの熱を受容する第1面とし、他方の面を第2面として、前記第1面のみで、前記p型熱電変換素子及び前記n型熱電変換素子の接合部に対して結合された熱伝導体と、
前記接合方向における前記熱伝導体の両側に隣接した断熱領域と、
を備え、
前記断熱領域が空気であるか、或いは空隙である、熱電変換モジュール。
【請求項2】
前記膜状の熱電変換素子体が、p型熱電変換素子及びn型熱電変換素子が少なくとも2対以上連続接合してなり、
前記熱伝導体が、前記少なくとも2対以上の前記p型熱電変換素子及び前記n型熱電変換素子の複数の接合部に対して、一つおきに結合され、
前記熱伝導体が結合された前記接合部が、導電性及び熱伝導性を有する金属材料を含んでなる、
請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項3】
前記複数の接合部のうちの前記熱伝導体が結合されない接合部が、前記p型熱電変換素子及び前記n型熱電変換素子が直接接合されてなる、請求項2に記載の熱電変換モジュール。
【請求項4】
前記膜状の熱電変換素子体が、少なくとも一つの熱電変換素子体基板を有し、前記熱電変換素子体基板が、少なくとも1つの通気孔を有する、請求項1~3の何れかに記載の熱電変換モジュール。
【請求項5】
前記膜状の熱電変換素子体が、繊維状炭素ナノ構造体を含む、請求項1~4の何れかに記載の熱電変換モジュール。
【請求項6】
記断熱領域内に、輻射反射体及び/又は輻射防止体を有する、請求項1~5の何れかに記載の熱電変換モジュール。
【請求項7】
前記膜状の熱電変換素子体を構成する前記p型熱電変換素子及び前記n型熱電変換素子の連続接合体が、蛇行配置されてなる、請求項2~6の何れかに記載の熱電変換モジュール。
【請求項8】
前記蛇行配置された前記連続接合体に対して結合された複数の熱伝導体が、前記接合方向に対して前記面内で垂直方向に相互に連結されてなる、請求項7に記載の熱電変換モジュール。
【請求項9】
前記蛇行配置された前記連続接合体に対して結合された複数の熱伝導体のそれぞれが、他の熱伝導体とは離隔配置されてなる、請求項7に記載の熱電変換モジュール。
【請求項10】
前記蛇行配置された前記連続接合体の、前記接合方向の各端部に配置された各p型熱電変換素子又はn型熱電変換素子が、前記各端部にて接合対象となる導電型の異なる他のn型熱電変換素子又はp型熱電変換素子と、直接接合する端部接合部をなしており、前記端部接合部は、末端がL字状又は逆L字状である前記p型熱電変換素子及び/又は前記n型熱電変換素子により形成されてなる、請求項7~9の何れかに記載の熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、温度差を利用して熱を電気に変換する熱電変換モジュールが注目されている。なかでも、熱電変換モジュールとしては、起電力が大きいことから、p(Positive)型半導体材料とn(Negative)型半導体材料とを接合して形成した接合体を含んでなる熱電変換モジュールが注目されている。そして、熱電変換モジュールは、未利用の熱エネルギーを活用するための有効な手段として期待されている。
【0003】
ここで、熱電変換モジュールとしては、p型素子及びn型素子を平面的に交互に配置して構成された熱電変換素子と、複数の凸部を有する外層部材とを備える構造の熱電変換モジュールが提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の熱電変換モジュールでは、外層部材の凸部がp型素子及びn型素子の接続部に対応した位置に熱的に結合されている。より具体的には、特許文献1には、熱電変換素子の平面に対して上下両側に、熱伝導性の高い材料からなる凸部を交互に配置して、p型素子及びn型素子の複数の接続部に対して熱及び冷熱を交互に伝達する構造が開示されている。かかる構造によれば、高温側に配置した外層部材により熱源から熱を回収して、凸部を介して熱電変換素子に伝達する共に、低温側に配置された外層部材により冷熱を得て、凸部を介して熱電変換素子に伝達することが可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-154761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、熱電変換モジュールには、高い熱電変換効率と共に、様々な取り付け態様に対応可能となるように、高いフレキシブル性が求められている。しかし、特許文献1に記載されたような、高温側からの熱伝達、及び低温側からの冷熱伝達を併用して、熱電変換素子のPN接続方向における温度差を高める構造には、熱電変換効率及びフレキシブル性を両立するという点で改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、熱電変換効率及びフレキシブル性を両立可能な熱電変換モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱電変換モジュールは、熱源からの熱を電力に変換する熱電変換モジュールであって、面内の一方向である接合方向に沿って接合されたp型熱電変換素子及びn型熱電変換素子を有する、膜状の熱電変換素子体と、前記熱電変換素子体の一方の面を熱源からの熱を受容する第1面とし、他方の面を第2面として、前記第1面のみで、前記p型熱電変換素子及び前記n型熱電変換素子の接合部に対して結合された熱伝導体と、を備えることを特徴とする。このように、熱電変換モジュールを、熱源からの熱を受容する第1面のみで熱電変換素子体の接合部に接合された熱伝導体を備えた構造とすれば、熱電変換モジュールの熱電変換効率及びフレキシブル性を両立することができる。
【0008】
ここで、本発明の熱電変換モジュールは、前記膜状の熱電変換素子体が、p型熱電変換素子及びn型熱電変換素子が少なくとも2対以上連続接合してなり、前記熱伝導体が、前記少なくとも2対以上の前記p型熱電変換素子及び前記n型熱電変換素子の複数の接合部に対して、一つおきに結合され、前記熱伝導体が結合された前記接合部が、導電性及び熱伝導性を有する金属材料を含んでなることが好ましい。熱電変換モジュールにおいて、熱伝導体が結合された接合部が、導電性及び熱伝導性を有する金属材料を含んでいれば、伝熱効率が高まり、熱電変換モジュールの熱電変換効率を一層高めることができる。
【0009】
また、本発明の熱電変換モジュールは、前記複数の接合部のうちの前記熱伝導体が結合されない接合部が、前記p型熱電変換素子及び前記n型熱電変換素子が直接接合されてなることが好ましい。熱電変換モジュールにおいて、熱伝導体が結合されていない接合部が導電型の異なる熱電変換素子同士が直接接合されることで形成されていれば、熱電変換素子体の接合方向における温度差を一層拡大することができ、熱電変換モジュールの熱電変換効率を一層高めることができる。
【0010】
また、本発明の熱電変換モジュールは、前記膜状の熱電変換素子体が、少なくとも一つの熱電変換素子体基板を有し、前記熱電変換素子体基板が、少なくとも1つの通気孔を有することが好ましい。熱電変換モジュールにおいて、通気口を有する熱電変換素子体基板により熱電変換素子体が支持されていれば、熱電変換素子体の強度を高めると共に、熱電変換素子体の接合方向における温度差を一層拡大することができる。
【0011】
また、本発明の熱電変換モジュールは、前記p型熱電変換素子及び前記n型熱電変換素子の、前記接合方向の長さが、それぞれ5mm以上であることが好ましい。熱電変換素子体を構成する各熱電変換素子の接合方向長さが5mm以上であれば、熱電変換素子体の接合方向における温度差を一層拡大することができ、熱電変換モジュールの熱電変換効率を一層高めることができる。
【0012】
また、本発明の熱電変換モジュールは、前記接合方向における前記熱伝導体の両側に隣接した断熱領域を備え、さらに、前記断熱領域内に、輻射反射体及び/又は輻射防止体を有することが好ましい。熱伝導体の接合方向両側の断熱内に輻射反射体及び/又は輻射防止体が配置されていれば、熱電変換素子体の接合方向における温度差を一層拡大することができ、熱電変換モジュールの熱電変換効率を一層高めることができる。
【0013】
また、本発明の熱電変換モジュールは、前記膜状の熱電変換素子体を構成する前記p型熱電変換素子及び前記n型熱電変換素子の連続接合体が、蛇行配置されてなることが好ましい。熱電変換素子体を構成する複数の熱電変換素子の連続接合体が、蛇行配置されていれば、限られたスペース内に熱電変換素子を効率的に集積配置することができ、熱電変換モジュールの熱電変換効率を一層高めることができる。
【0014】
また、本発明の熱電変換モジュールは、前記蛇行配置された前記連続接合体に対して結合された複数の熱伝導体が、前記接合方向に対して前記面内で垂直方向に相互に連結されてなることが好ましい。蛇行配置された連続接合体に対して結合された複数の熱伝導体が、接合方向に対して垂直方向に相互に連結されていれば、接合方向における柔軟性と、接合方向に対して垂直な方向における強度とを両立することができる。
【0015】
また、本発明の熱電変換モジュールは、前記蛇行配置された前記連続接合体に対して結合された複数の熱伝導体のそれぞれが、他の熱伝導体とは離隔配置されてなることが好ましい。蛇行配置された連続接合体に対して結合された複数の熱伝導体が、相互に離隔配置されていれば、熱電変換モジュールの柔軟性を一層高めることができる。
【0016】
また、本発明の熱電変換モジュールは、前記蛇行配置された前記連続接合体の、前記接合方向の各端部に配置された各p型熱電変換素子又はn型熱電変換素子が、前記各端部にて接合対象となる導電型の異なる他のn型熱電変換素子又はp型熱電変換素子と、直接接合する端部接合部をなしており、前記端部接合部は、末端がL字状又は逆L字状である前記p型熱電変換素子及び/又は前記n型熱電変換素子により形成されてなることが好ましい。L字状又は逆L字状に変形された端部形状を有する熱電変換素子が、蛇行配置された連続接合体の接合方向両端部にて相互に直接接合していれば、熱電変換モジュールの柔軟性を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱電変換効率及びフレキシブル性を両立可能な熱電変換モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の熱電変換モジュールの概略構造の一例を示す断面図である。
図2】本発明の熱電変換モジュールの概略構造の他の一例を示す平面図である。
図3】本発明の熱電変換モジュールの概略構造の更に他の一例を示す平面図である。
図4】本発明の熱電変換モジュールの概略構造の更に他の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。
【0020】
ここで、本発明の熱電変換モジュールは、特に限定されることなく、保冷庫等に用いられうる温度調節素子、廃熱発電や雪氷発電等のための発電素子、さらには、リチウムイオン電池等のための電極として用いることができる。また、本発明の熱電変換モジュールの熱源としては、特に限定されることなく、例えば、電気機器等の熱源、並びに液化天然ガス、雪、及び氷等の冷熱源でありうる。なお、以下の説明では、明瞭のために、熱源の温度が熱電変換素子内に形成すべき温度勾配の高温側の温度よりも高い場合、即ち、熱源が冷熱源以外の熱源であると仮定して説明する。
【0021】
図1は、本発明の一例にかかる熱電変換モジュール100の概略構造を示す断面図である。熱電変換モジュール100は、一方の面が、熱源からの熱を受容する第1面であり、他方の面が、第1面の逆側面の第2面である。第1面が高温雰囲気に面する高温側面であり、第2面が低温雰囲気に面する低温側面である。熱電変換モジュール100の高温側面が、熱源200に隣接して配置されうる。図1では、下側を高温側、上側を低温側として示す。
【0022】
熱電変換モジュール100は、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2が面内の一方向である接合方向に沿って接合されてなる、膜状の熱電変換素子体10を備える。なお、図上、熱電変換素子体10は、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2を3対有するものとして示すが、これに限定されることなく、熱電変換素子体10は、少なくとも1対のp型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2を有していればよい。そして、熱電変換素子体10は、一方の面を熱源からの熱を受容する高温側面とし、他方の面を低温側面として、高温側面のみで、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の接合部3Aに対して結合された熱伝導体4を備える。そして、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の接合方向に沿う熱伝導体4の両側には、断熱領域5が隣接して配置されている。かかる構造の熱電変換モジュール100は、熱電変換効率及び柔軟性を高いレベルで両立可能である。この理由は明らかではないが、以下の通りであると推察される。まず、膜状の熱電変換素子体の両面側に熱伝導体が配置された構造では、両面側に配置された熱伝導体の存在により熱電変換モジュールの柔軟性を十分に高めることができないことがあった。また、本発明者らの検討により、膜状の熱電変換素子体の両面側に熱伝導体が配置された構造を有する熱電変換モジュールでは、構成部材の材質やモジュールのサイズ、熱源の温度等の諸条件の組み合わせによっては、低温側面に配置された熱伝導体にも熱源からの輻射熱等が伝導するケースがありうることが明らかとなった。低温側面に配置された熱伝導体が温められてしまえば、折角熱電変換素子体に生じた温度差が却って狭められてしまうことになる。そこで、本発明者らは、膜状の熱電変換素子体10に対して、低温側面には熱伝導体を配置せず、高温側面の接合部のみで熱伝導体4を結合する構造とすることで、熱電変換素子体10に生じた温度差を狭めることを回避可能であるとともに、熱電変換モジュールの柔軟性が過度に低下することを抑制可能な構造を創出した。
【0023】
ここで、熱伝導体4に隣接する断熱領域5は、熱伝導体4よりも熱伝導率が低い物質、或いは真空により構成されうる。さらに、熱伝導体4よりも熱伝導率が低い物質は、後述する熱電変換素子体基板11及び12よりも熱伝導率が低い物質であることが好ましく、断熱物質であることがより好ましい。具体的には、そのような物質としては、特に限定されることなく、無機繊維系断熱材、発泡プラスチック系断熱材、及び空気のような、熱伝導率が0.1W/m・K未満、好ましくは0.06W/m・K未満の断熱物質が挙げられる。なかでも、断熱物質は空気であることが好ましい。空気の流動性により断熱効果が高まり、熱電変換素子体10の接合方向における温度勾配を高めることができるからである。
【0024】
さらに、断熱領域5内には、輻射反射体21及び/又は輻射防止体22が配置されることが好ましい。ここで、断熱領域5は、熱電変換素子体10の高温側面に面しており、例えば、2つの熱伝導体4、後述する基板6、及び熱電変換素子体10の高温側面により四方が区画される空隙である。輻射反射体21は、基板6に非接触である限りにおいて、断熱領域5内の何れかの位置に配置されていても良い。かかる特定配置の輻射反射体21によれば、熱源からの輻射を反射して、熱伝導体4を介することなく熱電変換素子が直接加熱されることを抑制することで、熱電変換素子の接合方向における温度勾配を一層大きくして、熱電変換モジュール100の熱電変換効率を一層高めることができる。好ましくは、輻射反射体21は、輻射反射率が90%以上でありうる。さらに好ましくは、輻射反射効果を最大化する観点から、輻射反射体21は、熱電変換素子体10の高温側面に対して隣接配置し、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の接続方向の接合方向両端部が、上記空隙を区画する2つの熱伝導体4に接するように配置されうる。
なお、熱電変換モジュール100が基板6を備えない場合には、輻射反射体21は、熱源と非接触である限りにおいて、2つの熱伝導体4、熱源、及び熱電変換素子体10の高温側面により四方が区画される空隙内の何れかの位置にて配置されうる。
【0025】
そして、輻射反射体21は、特に限定されることなく、例えば、樹脂に対して扁平金属粒子を配合してなるシート状の構造体でありうる。かかるシート状の構造体中において、扁平金属粒子は、面方向に略平行になるように配向されていることが好ましい。
【0026】
さらに、輻射防止体22は、熱電変換素子体10及び輻射反射体21に非接触である限りにおいて、断熱領域5内の何れかの位置にて配置されうる。熱電変換モジュール100が上述した輻射反射体21を備える場合には、輻射防止体22の配置は、かかる輻射反射体21よりも高温側(即ち、熱電変換素子体10を規準として、輻射反射体21よりも、熱電変換モジュールの厚み方向に遠い位置)である必要がある。そして、輻射防止体22により、熱源からの輻射を防止して、熱伝導体4を介することなく熱電変換素子体10が直接加熱されることを抑制することで、熱電変換素子体10の接合方向における温度勾配を一層大きくして、熱電変換モジュール100の熱電変換効率を一層高めることができる。好ましくは、輻射防止効果を最大化する観点から、輻射防止体22は、基板6に隣接配置し、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の接続方向における輻射防止体22の両端部が、上記空隙を区画する2つの熱伝導体4に接するように配置することができる。なお、熱電変換モジュール100が基板6を備えない場合には、輻射防止体22を熱源200に直接隣接して配置することができる。
【0027】
輻射防止体22は、特に限定されることなく、輻射反射体21と同様の材料、或いは、例えば、市販の遮熱フィルム(日本遮熱社製、「トップヒートバリアー(登録商標)THB-WBE1」)のような、一般的な輻射の小さい材料により形成することができる。
【0028】
熱電変換モジュール100による発電の概略スキームは以下の通りである。まず、熱源200より放出された熱が熱伝導体4を経て、接合部3Aにて接合されたp型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の各端部に伝えられる。これにより、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2のそれぞれにて、熱電変換モジュール100の接合方向の温度勾配が生じる。この温度勾配に起因するゼーベック効果により起電力が生じ、熱電変換モジュール100が発電する。温度勾配が大きければ、生じる起電力が大きくなり、熱電変換モジュール100の熱電変換効率が向上しうる。
【0029】
熱電変換素子体10を構成するp型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2を形成するための熱電変換材料としては、特に限定されることなく、ビスマステルル系化合物、アンチモン系化合物、シリコン系化合物、金属酸化物系化合物、ホイスラー合金系化合物、導電性高分子化合物、導電性繊維、及びこれらの複合材料等を用いることができる。中でも、導電性繊維を用いることが好ましく、カーボンナノチューブ(以下、CNTとも称する)などの繊維状の炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。CNTを使用すれば、本発明の熱電変換モジュール100の機械的強度を更に向上させると共に、軽量化することができるからである。さらに、CNTとしては特に限定されることなく、単層CNTおよび/または多層CNTを用いることができるが、CNTは、単層CNTであることが好ましい。単層CNTの方が、熱電特性(ゼーベック係数)が優位である傾向があるからである。なお、単層カーボンナノチューブとしては、CNT製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて製造したCNTを用いることができる(以下、かかる方法に準じて製造されたCNTを「SGCNT」と称することがある)。さらにSGCNTは折れ曲がりが多いという特徴を持っている。ここで、CNTは、電子移動による熱伝導性は高いが、フォノン振動による熱伝導性の低下効果も高いと考えられている。しかし、SGCNTは、他の一般的な方法に従って製造したCNTよりも折れ曲がりが多いため、フォノン振動が増幅されにくい構造となっており、フォノン振動に起因した熱伝導性の低下を抑制することができる。よって、SGCNTは、他の一般的なCNTと比較して、熱電変換材料としてより優位な材料でありうる。
【0030】
そして、熱電変換素子体10を構成するための熱電変換材料としてCNTを使用するにあたり、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2をそれぞれ構成するCNTのゼーベック係数を異なるものとする必要がある。ここで、CNTは、そのままではp型熱電変換素子としての特性を有する。よって、n型熱電変換素子2を得るための処理(以下、「n化処理」とも称する)をCNTについて適用する必要がある。具体的には、例えば、既知の方法により作製した、或いは市販されている、薄膜状に成形されたCNTであるバッキーペーパーを、一般的な方法、例えば、国際公開第2015/198980号に記載の方法に従ってn化処理することで、n型熱電変換素子2として機能しうるバッキーペーパーを得ることができる。
【0031】
ここで、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の接合方向の長さは、それぞれ5mm以上であることが好ましい。p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の接合方向の長さが上記下限値以上であれば、熱電変換素子体の接合方向における温度差を一層拡大することができ、熱電変換モジュールの熱電変換効率を一層高めることができる。
【0032】
さらに、熱電変換素子体10を構成するp型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2を形成するための熱電変換材料として、内部に空隙を有する構造の熱電変換材料を用いることが好ましい。内部に空隙を有する構造の熱電変換材料としては、密度が0.1g/cm3以下であると共に、繊維状の網目構造を有する導電性構造体が挙げられる。そのような導電性構造体は、具体的には、CNTのような繊維状炭素ナノ構造体により構成されうる。p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2を形成するための熱電変換材料として、内部に空隙を有する構造の熱電変換材料を用いれば、熱電変換素子体10の熱伝導性を低下させることで、熱電変換素子の接合方向における温度勾配を一層大きくして、熱電変換効率を一層向上させることができる。
【0033】
なお、内部に空隙を有する構造の熱電変換材料は、特に限定されることなく、例えば、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体と未発泡の発泡粒子とを併用して形成することができる。内部に空隙を有する構造の熱電変換材料では、相互に直交(交差)する2つの方向における各熱伝導率が、相異なり得る。そこで、熱伝導率の高い方向が、熱電変換モジュール100の厚み方向に一致するように形成することができる。具体的には、例えば、未発泡の発泡粒子とCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を含むシートを形成し、得られたシートを上下又は左右が開放された金型にて挟み、発泡粒子を発泡させることにより作製することができる。
【0034】
p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2を電気的に接続する接合部3のうち、熱伝導体4が結合された接合部3Aは、導電性及び熱伝導性を有する金属により形成されることが好ましい。かかる導電性及び熱伝導性を有する金属としては、導電率(JIS K 0130:2008)が10S/m以上であると共に熱伝導率が10W/m・K以上である金属材料、より具体的には、Ag及びCu等が挙げられる。中でも、入手しやすいペースト状の材料があり、プロセスの低コスト化を実現し、且つプロセスの容易性を付与し得るといった観点から、Agが好ましい。接合部3が導電性及び熱伝導性を有する金属材料を含んでいれば、接合部3Aと熱伝導体4との間における伝熱効率が高まり、熱電変換モジュールの熱電変換効率を一層高めることができる。さらに、接合部のうちの熱伝導体4が結合されない接合部3Bでは、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2が直接接合されていることが好ましい。熱電変換モジュールにおいて、熱伝導体4が結合されていない接合部3Bにて、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2が直接接合されていれば、熱電変換素子体10の接合方向における温度差を一層拡大することができ、熱電変換モジュール100の熱電変換効率を一層高めることができる。
なお、本明細書において、「熱伝導率」は、熱伝導体等の測定対象物について、例えば、レーザーフラッシュ法を用いて測定することができる値である。
【0035】
例えば、接合部3Aは、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2を、導電材料としてAgを含むペースト状の樹脂材料を用いて接続することにより形成することができる。なお、樹脂材料としては、特に限定されることなく、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリイミド系樹脂等の一般的な樹脂材料を用いることができる。好ましくは、樹脂材料として、柔軟性に富むと共に耐熱性の高いポリイミド系樹脂を用いる。なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、「アクリル」又は「メタアクリル」を意味する。
【0036】
熱電変換素子体10に接続する熱伝導体4は、上述したように、接合部3に結合される。ここで、熱伝導体4は、熱伝導体4に隣接する断熱領域5が相互に連通するように配置されることが好ましい。断熱領域5間を空気が流通することで、断熱領域5の断熱性を一層高めて、熱電変換素子体10の接合方向における温度勾配を高めることができるからである。さらに、熱伝導体4は、熱伝導体4に隣接する断熱領域5が相互に連通すると共に、各複数の断熱領域5のそれぞれが、熱電変換モジュール100の外側雰囲気と直接的又は間接的に連通するように配置されることが好ましい。断熱領域5の断熱性をより一層高めることで、熱電変換素子体10の接合方向における温度勾配を一層高めることができるからである。
【0037】
熱伝導体4は、特に限定されることなく、上述した接合部3Aと同様の金属材料等の熱伝導性無機材料、及び熱伝導性樹脂などの熱伝導性有機材料を含む熱伝導性材料により形成されうる。中でも、軽量性の観点から、Alが好ましい。熱伝導体4の熱伝導率は、10W/m・K以上であることが好ましく、50W/m・K以上であることがより好ましく、100W/m・K以上であることがさらに好ましく、200W/m・K以上であることが特に好ましい。また、熱伝導体4は、熱電変換モジュール100の厚み方向長さが1mm以上であることが好ましい。熱電変換素子体10の接合方向における温度勾配を一層大きくすることができるからである。さらに、熱伝導体4は、接合部3Aと、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の各接合方向長さの1/5以下の領域で、熱電変換素子体10に接触することが好ましい。
【0038】
さらに、熱伝導体4は異方性熱伝導体であってもよい。異方性熱伝導体では、熱電変換モジュール100の厚み方向の熱伝導率が、厚み方向に対して横断方向の熱伝導率よりも高い。熱伝導体4が厚み方向の熱伝導性に富む異方性熱伝導体であれば、熱伝導体4が熱を伝導する際に生じうるロスを低減して、熱電変換モジュール100の熱電変換効率を一層向上させうる。そして、熱伝導体4が異方性熱伝導体である場合には、かかる異方性熱伝導体の厚み方向の熱伝導率が、10W/m・K以上であることが好ましく、50W/m・K以上であることがより好ましく、100W/m・K以上であることがさらに好ましく、200W/m・K以上であることが特に好ましい。
【0039】
異方性熱伝導体は、特に限定されることなく、例えば、グラファイトシート、及びCNT等の有機系異方性熱伝導材料、並びに扁平金属粒子等の無機異方性熱伝導材料を用いて形成することができる。なお、扁平金属粒子とは、例えば、アスペクト比が3以上である扁平形状の金属粒子を意味する。好ましくは、熱電変換素子体10に柔軟性を付与すると共に、軽量化する観点から、有機系異方性熱伝導材料を用いることが好ましい。さらに、熱電変換モジュール100の熱電変換効率を一層向上させる観点から、熱伝導体4を構成する異方性熱伝導体を、CNTを用いて形成することが好ましい。
なお、異方性熱伝導体は、特に限定されることなく、これらの異方性熱伝導材料と、接合部3の形成にも用いられうる一般的な樹脂材料とを併用して形成することができる。異方性熱伝導体は、これらを用いて、異方性熱伝導材料の熱伝導率の高い方向が、熱電変換モジュール100の厚み方向に一致するように、塗布工程及び加圧工程等を含む既知の製造方法により作製することができる。
【0040】
さらに、膜状の熱電変換素子体10は、熱電変換素子体10を支持する少なくとも一つの熱電変換素子体基板を有しうる。図1では、熱電変換素子体10は、高温側熱電変換素子体基板11及び低温側熱電変換素子体基板12により両面側から挟持されてなる。熱電変換素子体10が少なくとも一つの熱電変換素子体基板により支持されていれば、熱電変換モジュール100の機械的強度を一層向上させることができる。さらにかかる高温側熱電変換素子体基板11及び低温側熱電変換素子体基板12が少なくとも1つの通気孔を有していれば、断熱領域5の通気性を向上させることで、断熱領域5の断熱性を向上させることができる。このため、熱電変換素子体10の接続方向における温度差を一層拡大させることができる。
【0041】
高温側熱電変換素子体基板11及び低温側熱電変換素子体基板12は、特に限定されることなく、ポリイミド等の耐熱性及び柔軟性に富む樹脂材料により形成されたフィルムでありうる。
【0042】
また、高温側熱電変換素子体基板11及び低温側熱電変換素子体基板12の通気口は、特に限定されることなく、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の接合方向に沿って、等間隔で配置されうる。
【0043】
さらに、図1に示すように、熱電変換モジュール100は、熱電変換素子体10に対して熱伝導体4を介して接続された基板6を有しても良い。熱電変換素子体10と熱伝導体4を介して接続する少なくとも一つの基板6を設ければ、熱電変換モジュール100の機械的強度を向上させることができる。また、かかる少なくとも一つの基板6は、外部環境からモジュール内部の構成要素を保護する機能も奏しうる。
【0044】
基板6は、樹脂基板又は金属基板でありうる。樹脂基板としては、柔軟性を有する樹脂材料を含んでなる基板である、いわゆるフレキシブル基板が挙げられる。そのようなフレキシブル基板としては、熱伝導性が低く、且つ耐熱性及び柔軟性に優れる樹脂を用いて形成された基板が挙げられ、具体的には、高温側熱電変換素子体基板11及び低温側熱電変換素子体基板12と同じくポリイミドを形成材料とする基板が挙げられる。また、金属基板としては、アルミニウム、銅、及び銀等の熱伝導性の高い金属材料を含んでなる基板が挙げられる。なお、樹脂基板及び金属基板は、それぞれ単独で用いることができるが、両方を積層して併用することも可能である。
【0045】
基板6として樹脂基板を採用した場合には、熱電変換モジュール100に柔軟性を付与することができ、熱電変換モジュールの設置容易性を向上させることができる。熱電変換モジュールの設置場所は、必ずしも平たんな場所ではないので、熱電変換モジュールに柔軟性を付与することができれば、熱電変換モジュールが設置場所の形状に応じて自在に変形可能となり、発電効率を上げることができる。
一方、基板6として、金属基板を採用した場合には、熱電変換素子の接合方向における温度勾配を一層大きくして、熱電変換効率を一層高めることができる。
【0046】
さらに、基板6として、熱伝導体4と同様の異方性熱伝導材料を用いて形成した異方性熱伝導基板を用いることもできる。異方性熱伝導基板では、基板の厚み方向に対して横断方向の熱伝導率が、基板の厚み方向の熱伝導率よりも高い。よって、少なくとも基板6が熱伝導性に富む異方性熱伝導基板であれば、熱源からの集熱効率を高めて、熱伝導体4を介して熱電変換素子体10へと入力される熱量を増大させることができる。これにより、熱電変換素子体10の接合方向における温度勾配を一層大きくして、熱電変換効率を一層向上させることができる。なお、基板6を異方性熱伝導基板とする場合には、熱伝導体4と同様に、柔軟性及び軽量化の観点から、有機系異方性熱伝導材料を用いることが好ましい。
【0047】
また、熱電変換素子体10を備える熱電変換モジュール100の厚みは、10mm以下であることが好ましく、6mm以下であることがより好ましい。熱電変換モジュール100の取り付け容易性を向上させることができるからである。
【0048】
図2に本発明の熱電変換モジュールの概略構造の他の一例の平面図を示す。図2では、熱電変換モジュール101を低温側からみた平面図を示す。熱電変換モジュール101では、熱電変換素子体10’を構成するp型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の連続接合体が、蛇行配置されている。「蛇行配置」とは、図2に示すように、複数のp型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の連続接合体が、所定面積の区画内に折りたたまれたかのような形状で配置される態様を意味する。熱電変換素子体10’を構成する複数の熱電変換素子の連続接合体が、蛇行配置されていれば、限られたスペース内に多数の熱電変換素子を効率的に集積配置することができ、熱電変換モジュールの熱電変換効率を一層高めることができる。
【0049】
なお、図2では、折りたたみ形状の両端部にて、導電型の異なる熱電変換素子(即ち、p型熱電変換素子に対するn型熱電変換素子、およびその逆の関係)が導電部材30により接続されている態様を例示する。そして、導電部材30は、Ag及びCu等の金属材料や、グラファイトシート及びCNT等の炭素系材料により構成されうる。
【0050】
蛇行配置された複数のp型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の連続接合体に対して、矩形状の熱伝導体4の長手方向が、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の接合方向に対して(図示した平面内にて)垂直な方向に一致する向きで配置されている。そして、接合方向位置が同じ複数の接合部3Aに対して、同じ熱伝導体4が結合している。かかる配置によれば、接合方向における柔軟性と、接合方向に対して垂直な方向における強度とを両立することができる。また、かかる配置によれば、同じ熱伝導体4が結合する複数の接合部3A間における温度差を低減することができ、熱電変換モジュールの起電力を均一化することができる。温度差が熱電変換素子体10’の場所によって不均一になると、起電力(電圧)にむらが生じ、熱電変換素子体10’の部位に応じて得られる電流値に差異を生じることとなる。熱電変換モジュールは各素子を直列に接合してなるので、電流値に差異ができると、最も低い電流値に規定されてしまい、結果的に、熱電変換モジュールの発電力の低下を引き起こすことがある。
なお、本明細書において、「接合方向に対して垂直方向」とは、熱電変換素子体の面内で、接合方向に対して直交するか、或いは略直交する(接合方向となす角が90°±5°以内)であることを意味する。
また、本明細書において、「矩形状」とは、正方形及び長方形等の4角が全て90°の形状以外にも、任意の1つ又は複数の角が、C面取り又はR面取りされてなる形状も含む。
【0051】
さらに、熱電変換素子体10’は、高温側熱電変換素子体基板11及び低温側熱電変換素子体基板により挟持されてなる。図2では、明瞭のために低温側熱電変換素子体基板の図示を省略する。なお、導電部材30も、高温側熱電変換素子体基板11及び低温側熱電変換素子体基板(図示しない)により挟持されうる。
【0052】
また、高温側熱電変換素子体基板11は、p型熱電変換素子1及びn型熱電変換素子2の接合方向に沿って所定間隔で配置された複数の通気孔31を有する。図示しない低温側熱電変換素子体基板も、対応する位置に複数の通気口を有し得る。通気孔31により、図1に示したような断熱領域5が外部と導通することとなり、通気性が向上し、断熱領域5内に熱がこもることを抑制することができる。
【0053】
なお、熱電変換モジュール101には、熱電変換素子体10’の両端に導電線40が接続されてなり、熱電変換素子体10’により生じた電力を取り出すことができる。
【0054】
図3は、本発明の熱電変換モジュールの概略構造の更に他の一例の平面図である。図3に示す熱電変換モジュール102は、熱伝導体4’の形状及び配置が図2に示した熱電変換モジュール103の熱伝導体4の形状及び配置と異なる以外は、同じ構造を有する。図3に示すように、熱電変換モジュール102では、熱伝導体4’の長手方向長さが、P/n型熱電変換素子1/2の接合方向直交方向長さに略一致している。そして、複数の熱伝導体4’が、接合方向に対して(図示した平面内にて)垂直な方向では、相互に連結されておらず、各熱伝導体4’が相互に離隔配置されている。蛇行配置された連続接合体に対して結合された複数の熱伝導体が、相互に離隔配置されていれば、熱電変換モジュールの柔軟性を一層高めることができる。
【0055】
図4は、本発明の熱電変換モジュールの概略構造の更に他の一例の平面図である。図4では、熱電変換素子体10’’において、接合方向の各端部に配置された各p型熱電変換素子1’又はn型熱電変換素子2’が、各端部にて接合対象となる導電型の異なる他のn型熱電変換素子2’又はp型熱電変換素子1’と、相互に直接接合する端部接合部3Cをなしている。かかる端部接合部3Cは、末端がL字状又は逆L字状であるp型熱電変換素子1’及びn型熱電変換素子2’により形成されてなる。このように、L字状又は逆L字状に変形された端部形状を有する熱電変換素子が、蛇行配置された連続接合体の接合方向両端部にて相互に直接接合していれば、熱電変換モジュールの柔軟性を一層高めることができる。
なお、本明細書において「L字状又は逆L字状」とは、接合方向に対して交差する方向を軸線としうる構成部を有する形状を意味し、接合方向と交差方向とが必ずしも直交していなくても良い。
また、図4において、各p型熱電変換素子1’又はn型熱電変換素子2’の形状及び導電部材30を備えない点以外は、熱電変換モジュール103のその他の構造は図2に示した熱電変換モジュール101と同じである。
【0056】
なお、図4では、末端にてp型熱電変換素子1’及びn型熱電変換素子2’の双方がL字状又は逆L字状部を有しており、これらのL字状部及び逆L字状部が端部接合部3Cを形成するものとして図示している。しかし、p型熱電変換素子1’及びn型熱電変換素子2’の形状は、かかる形状に限定されることなく、例えば、p型熱電変換素子1’又はn型熱電変換素子2’の何れか一方のみがL字状又は逆L字状形状を有しており、通常の矩形形状である他方の熱電変換素子との間で端部接合部3Cを形成していても良い。また、L字状又は逆L字状部を形成する角が、C面取り又はR面取りされていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明によれば、熱電変換効率及びフレキシブル性を両立可能な熱電変換モジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1’ p型熱電変換素子
2,2’ n型熱電変換素子
3A、3B 接合部
3C 端部接合部
4,4’ 熱伝導体
5 断熱領域
6 基板
10、10’、10’’ 熱電変換素子体
11 高温側熱電変換素子体基板
12 低温側熱電変換素子体基板
21 輻射反射体
22 輻射防止体
30 導電部材
31 通気孔
40 導電線
100~103 熱電変換モジュール
200 熱源
図1
図2
図3
図4