(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】モールド付きケーブルの接続構造
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20221129BHJP
H01B 7/282 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H01B7/00 306
H01B7/282
(21)【出願番号】P 2019085435
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼本 隆
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-195076(JP,A)
【文献】特開昭61-240812(JP,A)
【文献】特開2008-067545(JP,A)
【文献】特開2018-191480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/282
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と、前記電子部品に接続されたケーブルとをモールドしたモールド付きケーブルの接続構造であって、
前記ケーブルは、導体
と該導体を覆うフッ素樹脂からなるフッ素樹脂層
とを有するフッ素系ケーブル
と、
前記フッ素系ケーブルを覆うシースと、を備え、
前記モールドと密着性がよい材料であって、前記フッ素系ケーブルを覆うように、
前記シースから離間した位置において前記フッ素系ケーブル
の外周に設けられた外挿部材と、
前記外挿部材の一部を覆うように
前記シースから離間した位置に設けられ、熱収縮により、前記外挿部材を前記フッ素系ケーブルに密着させる熱収縮チューブと、
を備え、
前記シースから離間した位置において、前記外挿部
材の前記熱収縮チューブにより覆われていない部分が、前記モールドと密着している、モールド付きケーブルの接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載のモールド付きケーブルの接続構造において、
前記外挿部材と前記熱収縮チューブとの間に、接着剤層が介在している、モールド付きケーブルの接続構造。
【請求項3】
請求項2に記載のモールド付きケーブルの接続構造において、
前記外挿部材は、前記モールドと溶け合うようにして、前記モールドと密着している、モールド付きケーブルの接続構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載のモールド付きケーブルの接続構造において、
前記電子部品は、前記フッ素系ケーブルの前記導体に接続された基板または半導体集積回路を備える、モールド付きケーブルの接続構造。
【請求項5】
請求項4に記載のモールド付きケーブルの接続構造において、
前記フッ素系ケーブルは、前記導体をポリテトラフルオロエチレンで覆ったポリテトラフルオロエチレンケーブルであり、
前記外挿部材は、前記ポリテトラフルオロエチレンケーブルを覆ったウレタンであり、
前記モールドの材料は、ナイロンまたはポリブチレンテレフタレートである、モールド付きケーブルの接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド付きケーブルの接続構造に関し、例えば高耐熱のケーブルと電子部品をモールドするときの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
センサ、半導体集積回路(以下、ICと称する)あるいは基板などの電子部品にケーブルを接続し、気密を取るために、電子部品とケーブルをモールドすることが行われる。この場合、モールドの材料として例えばナイロンが用いられ、ケーブルとしては、その外皮がモールド材料と密着性のよいウレタンのケーブルが用いられる。これにより、電子部品とケーブルとを覆うように、ナイロンのモールドを形成することができる。
【0003】
気密性だけでなく、高耐熱性も要求される場合、ケーブルとしては、その外皮がフッ素系のケーブルが用いられる。フッ素系ケーブルの場合、ナイロンのようなモールド材料との密着性がよくないため、電子部品とフッ素系ケーブルを、ナイロンでモールドしても、気密性が損なわれる。そのため、モールドされた電子部品に、防水コネクタを用いてフッ素系ケーブルを取り付けることが行われる。例えばPPS(Poly Phenylene Sulfide Resin)でコネクタハウジングを形成し、コネクタハウジング内の端子に電子部品を接続するように、電子部品をコネクタハウジングに取り付け、エポキシでモールドして、電子部品の気密を取る。一方、フッ素系ケーブルには、防水コネクタを取り付け、モールドされたコネクタハウジングに防水コネクタを挿入して、フッ素系ケーブルと電子部品とを接続する。
【0004】
ケーブルが取り付けられる防水コネクタは、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高耐熱性のケーブルを用いながら、気密を取るためには、上記したように、コネクタハウジング、防水コネクタなどが必要となるため、価格が上昇し、また形状も大きくなってしまうと言う課題が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、価格の上昇の抑制または/および小型化が可能なモールド付きケーブルの接続構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
すなわち、一実施の形態に係わるモールド付きケーブルの接続構造は、電子部品と、電子部品に接続されたケーブルとをモールドしたモールド付きケーブルの接続構造であって、ケーブルは、導体と、導体を覆うフッ素樹脂からなるフッ素樹脂層を有するフッ素系ケーブルであり、モールドと密着性がよい材料であって、フッ素系ケーブルを覆うように、フッ素系ケーブルに設けられた外挿部材と、外挿部材の一部を覆うように設けられ、熱収縮により、外挿部材をフッ素系ケーブルに密着させる熱収縮チューブとを備え、外挿部材において、熱収縮チューブにより覆われていない部分が、モールドと密着している。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0011】
すなわち、価格の上昇を抑制しながら、高耐熱性のケーブルを用いても、気密性を確保することが可能なモールド付きケーブルの接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)および(B)は、実施の形態1に係わるモールド付きケーブルの構造を示す側面図である。
【
図2】フッ素系ケーブルの一例を示す横断面図である。
【
図3】多芯撚り線を含むケーブルの一例を示す横断面図である。
【
図4】多芯撚り線を用いた場合のモールド付きケーブルの構造を示す平面図である。
【
図5】(A)および(B)は、実施の形態2に係わるモールド付きケーブルの構造を示す側面図である。
【
図6】(A)および(B)は、実施の形態3に係わるモールド付きケーブルの構造を示す側面図である。
【
図7】(A)および(B)は、実施の形態4に係わるモールド付きケーブルの構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまでも一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0014】
また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0015】
(実施の形態1)
図1(A)および(B)は、実施の形態1に係わるモールド付きケーブルの構造を示す側面図である。ここで、
図1(A)は、モールド前の側面図を示し、
図1(B)は、モールド後の側面図を示している。
図2は、フッ素系ケーブルの一例を示す横断面図である。
【0016】
図1において、11は、フッ素系ケーブルを示している。このフッ素系ケーブルは、
図2に示すように、フッ素系樹脂からなるフッ素樹脂層17を有する。ここでは、フッ素系ケーブル11として、フッ素樹脂層17がテフロン(登録商標)と呼ばれるポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene:以下、PTFEとも呼ぶ)で作られたケーブルを例として説明する。PTFEケーブルにおいては、導体15を覆うようにフッ素樹脂層17が、導体15を取り囲んでおり、フッ素樹脂層17が、ケーブルの外皮となる。なお、導体15とフッ素樹脂層17との間に、他の絶縁体層が設けられてもよく、この場合、フッ素樹脂層17と他の絶縁体層とを含めて外皮と呼ぶこととする。
【0017】
2は、筒状の外挿部材であり、実施の形態1においてはウレタンによって形成されている。フッ素系ケーブル11は、ウレタンの外挿部材2の中空部に外挿されている。3は、筒状の熱収縮チューブである。
図1に示すように、熱収縮チューブ3の中空部には、外挿部材2の一部分と外挿部材2から突出したフッ素系ケーブル11の一部が配置されている。さらに、実施の形態1においては、熱収縮チューブ3の中空部と、中空部に配置された外挿部材2およびフッ素系ケーブル11との間に、接着剤層4が介在している。
【0018】
熱収縮チューブ3に熱を加えることにより、熱収縮チューブ3は、その中空部が縮むように収縮する。外挿部材2は、この収縮により、
図1(A)に示すように、ウレタンの外挿部材2の中空部がフッ素系ケーブル11のフッ素樹脂層17に押し付けられ密着するような厚さで形成されている。その結果、ウレタンの外挿部材2とフッ素系ケーブル11との間の気密性が確保される。接着剤層4が、外挿部材2と熱収縮チューブ3の中空部との間およびフッ素系ケーブル11のフッ素樹脂層17と熱収縮チューブ3の中空部との間に介在しているため、熱収縮チューブ3が収縮するとき、熱収縮チューブ3と外挿部材2との間および熱収縮チューブ3とフッ素系ケーブル11との間の隙間に、接着剤層4が押し込まれ、気密性をより向上させることが可能である。なお、接着剤層4を、熱収縮チューブ3の中空部に設ける方法としては、接着剤を、予め熱収縮チューブ3の中空部内面に塗布する方法、注入する方法等があるが、方法は特に制限されるものではない。
図1(A)においては、熱収縮チューブ3を収縮させた後の状態を示している。なお、熱収縮チューブ3により機密性が十分に確保される場合には、接着剤層4を省略しても良い。
【0019】
フッ素系ケーブル11において、基板6と接続される部分は、そのフッ素樹脂層17を含む外皮が剥がされ、導体15が露出している。露出した導体15は、基板6において、図示していない電極に電気的に接続されている。なお、基板6には、所定の機能を達成するために、複数のIC等が実装されているが、
図1では、省略している。
【0020】
図1(B)において、7はモールドを示している。モールド7の材料は、外挿部材2を構成する材料であるウレタンと密着性のよい(融着する)材料を用いている。実施の形態1においては、モールド7の材料は、ナイロンである。モールドの際、ナイロンは、
図1(B)に示すように、基板6、熱収縮チューブ3および熱収縮チューブ3から突出したフッ素系ケーブル11の部分を覆うように形成する。このとき、外挿部材2において、熱収縮チューブ3によって覆われていない部分も、ナイロンによって覆われるように、モールドを行う。これにより、
図1(B)において、斜線で示した領域7-2では、外挿部材2を構成するウレタンとモールド7を形成するナイロンとが融着し密着することになる。すなわち、密着性のよいウレタンとナイロンとが面状に接触し、気密性を確保することが可能である。
【0021】
実施の形態1における接続構造では、2段階で、モールド全体の気密が確保されている。すなわち、1段階目は、熱収縮チューブ3の収縮により生じる物理的な力により、外挿部材2とフッ素系ケーブル11との間の気密性を確保している。2段階目は、互いに密着性のよい外挿部材2とモールド7を、領域7-2で密着させることにより、モールドと外挿部材2との間の気密性を確保している。1段階目の気密確保により、フッ素系ケーブル11と外挿部材2との間を、例えば水分が浸入することを防ぐことができる。一方、2段階目の気密確保により、外挿部材2とモールド7との間を、水分が浸入することを防ぐことができる。この2段階の気密確保により、モールド7内に、水分の浸入を防ぐことができる。
【0022】
なお、熱収縮チューブ3は、特に制限されないが、ポリオレフィン(polyolefin)によって形成されている。また、外挿部材2を形成する材料としてウレタンを例にして説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、モールド7の材料との間で密着性がよい材料によって、外挿部材2は形成すればよい。例えばモールド7の材料として、実施の形態1と同様にナイロンを用いる場合、外挿部材2においてナイロンと当接する外挿部材2の表面に、例えば塗布等により、PBT(Poly Butylene Terephtalate)が存在すればよい。または、PBTからなる外挿部材2を用いることもできる。
【0023】
図1では、
図1(A)に示すように、モールド前に、熱収縮チューブ3を収縮させて、外挿部材2とフッ素系ケーブル11との間の気密性を確保する例を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、熱収縮チューブ3に、フッ素系ケーブル11および外挿部材2を挿入した状態で、基板6も含めてモールドしてもよい。この場合には、モールドの際に発生する熱により、熱収縮チューブ3が収縮し、外挿部材2とフッ素系ケーブル11との間の気密性が確保されることになるため、工程を低減することが可能である。
【0024】
実施の形態1によれば、コネクタハウジングおよび防水コネクタを用いなくても済むため、価格の上昇を抑制することが可能であり、またモールド付きケーブルの小型化を図ることが可能である。
【0025】
<多芯撚り線を用いた場合>
次に、複数のフッ素系ケーブル11を撚り合わせた多芯撚り線を含むケーブルを用いた場合について説明する。
図3は、多芯撚り線を含むケーブルの一例を示す横断面図である。ケーブル21は、2本のフッ素系ケーブル11を撚り合わせた多芯撚り線25と、多芯撚り線25を覆うシース27とを備えている。なお、多芯撚り線25は、3本以上のフッ素系ケーブル11を撚り合わせて構成されてもよい。シース27の材料として、例えば、熱可塑性ポリウレタンやポリオレフィン系材料等が用いられる。耐熱性を向上させるため、シース27の材料は架橋されてもよい。
【0026】
図4は、多芯撚り線を用いた場合のモールド付きケーブルの構造を示す平面図である。
図4では、基板6の主面6a側から見たときの構成が示されている。
図4に示すように、多芯撚り線25に含まれる各フッ素系ケーブル11は、基板6の対応する電極6bとそれぞれ接続されている。
【0027】
また、多芯撚り線25の各フッ素系ケーブル11には、
図1(B)と同様に、外挿部材2、熱収縮チューブ3、接着剤層4が設けられている。そして、モールドの際、
図4に示すように、各フッ素系ケーブル11において、熱収縮チューブ3および熱収縮チューブ3から突出したフッ素系ケーブル11の部分がモールド7により覆われている。これにより、多芯撚り線21においても、外挿部材2とフッ素系ケーブル11との間の気密性が確保されている。
【0028】
なお、シース27の表面がフッ素樹脂である場合には、シース27に対しても、フッ素系ケーブル11と同様の封止構造を持たせてもよい。これにより、外挿部材2とフッ素系ケーブル11との間の気密性をより向上させることが可能となる。
【0029】
なお、この後に説明する各実施の形態においても、多芯撚り線を含むケーブル21が用いられてもよい。
【0030】
(実施の形態2)
図5(A)および(B)は、実施の形態2に係わるモールド付きケーブルの構造を示す側面図である。
図5(A)は、モールド前の側面図を示し、
図5(B)は、モールド後の側面図を示している。
【0031】
図5(A)および(B)は、
図1(A)および(B)に類似しているので、相異点を主に説明する。実施の形態1では、基板をモールドする場合を示したが、実施の形態2では、ICをモールドする場合を示す。
【0032】
ICは、半導体チップをモールドして形成したパッケージ部8と、半導体チップに接続され、パッケージ部8から突出したリード部9とを備えている。実施の形態2においても、熱収縮チューブ3を加熱して、熱収縮チューブ3を収縮させることにより、外挿部材2であるウレタンとフッ素系ケーブル11との間の気密性を確保する。このようにして、熱収縮チューブ3および外挿部材2を取り付けたフッ素系ケーブル11において、熱収縮チューブ3から外挿部材2が突出していない側のフッ素系ケーブル11の端部に、ICのリード部9が接続される。すなわち、外挿部材2が露出していない側のフッ素系ケーブル11の端部のフッ素樹脂層17を剥がし、露出した導体15に、ICのリード部9を電気的に接続する。
【0033】
ICのリード部9を、フッ素系ケーブル11の端部に接続した後、
図5(B)に示すように、パッケージ部8、リード部9、導体15、フッ素系ケーブル11の一部および熱収縮チューブ3を、ナイロンでモールドする。この場合も、実施の形態1と同様に、ウレタンで形成された外挿部材2において、熱収縮チューブ3から突出している領域7-2も、ナイロンでモールドする。
【0034】
これにより、実施の形態1と同様に、外挿部材2とフッ素系ケーブル11との間の気密性と、外挿部材2とモールド7との間の気密性を確保することが可能である。
【0035】
図5では、
図5(A)に示すように、モールド前に、熱収縮チューブ3を収縮させて、外挿部材2とフッ素系ケーブル11との間の気密性を確保する例を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、実施の形態1と同様に、熱収縮チューブ3に、フッ素系ケーブル11および外挿部材2を挿入した状態で、ICも含めてモールドしてもよい。この場合には、モールドの際に発生する熱により、熱収縮チューブ3が収縮し、外挿部材2とフッ素系ケーブル11との間の気密性が確保されることになるため、工程を低減することが可能である。
【0036】
実施の形態1では、フッ素系ケーブル11に接続されるモールドが基板を含む場合を説明し、実施の形態2では、フッ素系ケーブル11に接続されるモールドがICを含む場合を説明した。フッ素系ケーブル11に接続されるモジュールが、センサを含む場合も、実施の形態1または2と同様に実施することができる。例えば、センサが基板に実装されている場合には、実施の形態1と同様にすればよいし、基板に実装されていない場合には、実施の形態2と同様にすればよい。
【0037】
(実施の形態3)
図6は、実施の形態3に係わるモールド付きケーブルの構造を示す側面図である。ここで、
図6(A)は、モールド前の側面図を示し、
図6(B)は、モールド後の側面図を示している。
図6は、
図1に類似しているので、主に相異点を説明する。実施の形態1においては、
図1で説明したように、外挿部材2として、モールド7の材料と密着性のよい材料を用いていた。これに対して、実施の形態3に係わる接続構造においては、外挿部材がモールドと互いに溶け合う材料に変更されている。
【0038】
図6において、10は、実施の形態3において変更された外挿部材を示している。
図6に示しているフッ素系ケーブル11、熱収縮チューブ3、導体15、基板6およびモールド7は、
図1と同じであるため、説明は省略する。また、実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、接着剤層4が、熱収縮チューブ3と外挿部材10との間と、熱収縮チューブ3とフッ素系ケーブル11との間に介在している。熱収縮チューブ3が加熱により収縮することにより、接着剤層4は、熱収縮チューブ3と外挿部材10との間の隙間および熱収縮チューブ3とフッ素系ケーブル11との間の隙間を埋めるように作用する。
【0039】
外挿部材10の材料としては、モールドの際の加熱により、モールド7の材料と溶け合う樹脂あるいはホットメルトが用いられている。例えば、外挿部材10とモールド7とを同じ材料(ナイロン等)で形成することができる。また、モールド7の材料よりも融点が低く、モールド7の材料が含まれる材料(モールド7の材料が、ナイロンの場合はナイロンより融点が低くナイロンが含まれる材料、PBTの場合は、PBTを含むハイトレル(登録商標)等)で形成することができる。
【0040】
実施の形態3においては、樹脂あるいはホットメルトによって形成された筒状の外挿部材10に、フッ素系ケーブル11が外挿される。さらに、筒状の熱収縮チューブ3の中空部に、
図6に示すように、外挿部材10の一部とフッ素系ケーブル11が挿入される。このとき、実施の形態3においても、熱収縮チューブ3の一方側(紙面右側)において、外挿部材10が突出するように、外挿部材10と熱収縮チューブ3との位置を合わせる。
【0041】
その後、熱収縮チューブ3を加熱することにより、実施の形態1と同様に、熱収縮チューブ3の収縮による物理的な力によって、外挿部材10とフッ素系ケーブル11とが密着し、外挿部材10とフッ素系ケーブル11との間の気密性が確保される。このときの状態が、
図6(A)に示されている。
【0042】
次に、ナイロンでモールドが行われる。すなわち、基板6、熱収縮チューブ3、熱収縮チューブ3の一方側において露出している外挿部材10、熱収縮チューブ3の他方側(紙面左側)において露出しているフッ素系ケーブル11および導体15が、ナイロンによって覆われる。モールドの際には、封止する材料であるナイロンが加熱される。加熱されたナイロンとナイロンからなる外挿部材10が、
図6(B)に斜線で示した領域7-10で当接し、熱により互いに溶け合い、密着する。ここでは、外挿部材10としてナイロンを用いた。これにより、モールド7と外挿部材10との間の気密性が確保される。勿論、モールドの際に、外挿部材10も加熱されてもよい。このようにして、実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、2段階で気密が確保される。
【0043】
実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、熱収縮チューブ3の中空部に外挿部材10およびフッ素系ケーブル11を配置した状態で、モールドを行うようにしてもよい。これにより、モールドの際の熱により、外挿部材10とフッ素系ケーブル11との間の気密性が確保され、外挿部材10とモールド7とが互いに溶け合うことにより、外挿部材10とモールド7との間の気密性が確保されることになる。その結果、少ない工程で、フッ素系ケーブル11とモールド7との間の気密性を確保することが可能となる。
【0044】
(実施の形態4)
図7は、実施の形態4に係わるモールド付きケーブルの構造を示す側面図である。ここで、
図7(A)は、モールド前の側面図を示し、
図7(B)は、モールド後の側面図を示している。
図7は、
図5に類似しているので、主に相異点を説明する。この実施の形態4においては、実施の形態3と同様に、外挿部材が変更され、外挿部材10となっている。
図7において、ICのパッケージ部8、リード部9、接着剤層4、導体15、フッ素系ケーブル11、熱収縮チューブ3およびモールド7は、
図5と同じであるため、説明は省略する。
【0045】
実施の形態4において、外挿部材10は、実施の形態3と同様に、モールドと互いに溶け合う材料、例えば樹脂またはホットメルトによって形成されている。例えば、外挿部材10とモールド7とを同じ材料で形成することができる。また、モールド7の材料よりも融点が低く、モールド7の材料が含まれる材料(モールド7の材料が、ナイロンの場合はナイロンより融点が低くナイロンが含まれる材料、PBTの場合は、PBTを含むハイトレル(登録商標)等)で形成することができる。
【0046】
熱収縮チューブ3を加熱することにより、樹脂またはホットメルトによって形成された外挿部材10とフッ素系ケーブル11との間は、気密が確保された状態となる。このとき、実施の形態4においても、熱収縮チューブ3の一方側(紙面右側)において、外挿部材10が露出するように、外挿部材10と熱収縮チューブ3との位置を合わせる。これにより、モールド前の接続構造部の状態は、
図7(A)に示されている状態となる。
【0047】
その後、パッケージ部8、リード部9、導体15、フッ素系ケーブル11、熱収縮チューブ3を、ナイロンで覆うようにモールドを行う。このときの熱により、熱収縮チューブ3の一方側において露出している外挿部材10を形成する樹脂またはホットメルトと、モールド7を形成するナイロンとが互いに溶け合う。これにより、
図7(B)において斜線で示した領域7-10で、外挿部材10とモールド7とが密着する。その結果、実施の形態4においても、2段階で気密が確保されることになる。
【0048】
実施の形態4においても、実施の形態2と同様に、熱収縮チューブ3の中空部に外挿部材10およびフッ素系ケーブル11を配置した状態で、モールドを行うようにしてもよい。これにより、少ない工程で、フッ素系ケーブル11とモールド7との間の気密性を確保することが可能となる。
【0049】
実施の形態1~4においては、外挿部材2または10において、熱収縮チューブ3の一方側において露出した領域が、モールドと密着または溶け合うことにより、モールドと外挿部材2または10との間の気密性を確保するようにしていた。しかしながら、これに限定されるものではない。例えば、熱収縮チューブ3の両側(一方側と他方側)において、外挿部材2または10の領域が露出するようにしてもよい。これにより、モールドと密着または溶け合う領域を大きくすることが可能である。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0051】
2、10 外挿部材
3 熱収縮チューブ
4 接着剤層
6 基板
7 モールド
8 パッケージ部
9 リード部
11 フッ素系ケーブル
15 導体