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特許7184035光硬化型粘着シート、画像表示装置構成用積層体、画像表示装置の製造方法及び導電部材の腐食抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】光硬化型粘着シート、画像表示装置構成用積層体、画像表示装置の製造方法及び導電部材の腐食抑制方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20221129BHJP
   C09J 7/28 20180101ALI20221129BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221129BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20221129BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/28
C09J11/06
C09J133/14
H01B5/14 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019525484
(86)(22)【出願日】2018-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2018022589
(87)【国際公開番号】W WO2018235696
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2017122867
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】峯元 誠也
(72)【発明者】
【氏名】稲永 誠
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-046681(JP,A)
【文献】特開2017-110062(JP,A)
【文献】特開2016-069647(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145767(WO,A1)
【文献】特許第5421493(JP,B1)
【文献】特開2017-003943(JP,A)
【文献】特開2017-014379(JP,A)
【文献】特開2014-177611(JP,A)
【文献】特開2010-150396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
H01B5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、光を受光するとラジカルを発生する光開始剤、及び、365nmの吸光係数が20mL/g・cm以下の金属腐食防止剤を含有する粘着剤層を有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体は、カルボキシル基含有モノマーを含まない(共)重合体であり、
前記金属腐食防止剤は、1,2,3-トリアゾール及び1,2,4-トリアゾールから選択される1種又は2種であり、
前記粘着層が仮硬化又は未硬化状態にあり、かつ、光重合開始剤が活性を有したまま粘着剤層中に存在することを特徴とする光硬化型粘着シート。
【請求項2】
前記光開始剤が開裂型光開始剤であることを特徴とする請求項1記載の光硬化型粘着シート。
【請求項3】
前記金属腐食防止剤の25℃における水溶解度が20g/L以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光硬化型粘着シート。
【請求項4】
前記光開始剤100重量部に対して10~200質量部の割合で金属腐食防止剤を含有することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の光硬化型粘着シート。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体が、アミド基とカルボキシル基、及び、ヒドロキシル基とイソシアネート基のうちから選択される何れかの官能基の組合せによる化学的な結合を有するか、或いは、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の光硬化型粘着シート。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の光硬化型粘着シートと、銀を含む金属材料を備えた導電部材とを有する、光硬化型粘着シート付き導電部材。
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項に記載の光硬化型粘着シートであって、
銀を含む金属材料を備えた導電部材に貼合するために用いることを特徴とする、導電部材用光硬化型粘着シート。
【請求項8】
前記導電部材は、銀を含む金属材料を備えた透明導電層を有するものであることを特徴とする、請求項7記載の導電部材用光硬化型粘着シート。
【請求項9】
前記導電部材は、絶縁保護膜(パシベーション膜)を有するものであることを特徴とする請求項7又は8に記載の導電部材用光硬化型粘着シート。
【請求項10】
銀を含む金属材料を備えた導電部材を備えた画像表示装置用構成部材と、他の画像表示装置用構成部材とを備えた画像表示装置構成用積層体の製造方法であって、
請求項1~5の何れかに記載の光硬化型粘着シートを介して、前記2つの画像表示装置構成部材を積層した後、少なくとも一方の画像表示装置構成部材側から光を照射し、前記光硬化型粘着シートを光硬化することを特徴とする画像表示装置構成用積層体の製造方法。
【請求項11】
銀を含む金属材料を備えた導電部材に光硬化型粘着シートを積層した後、光照射して当該粘着シートを硬化させた後の前記導電部材の腐食抑制方法であって、
前記導電部材に、請求項1~5の何れか一項に記載の光硬化型粘着シートを積層した後、光照射する際に、当該粘着シート中の金属腐食防止剤で導電部材の銀の一部又は全部を被覆することで、前記光照射によって光開始剤から発生したラジカルが導電部材の銀と反応するのを抑制することを特徴とする、導電部材の腐食抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性能を有する光硬化型粘着シート、中でも銀を含む金属材料を備えた導電部材に貼合して光硬化した後に当該導電部材の腐食を抑制することができる光硬化型粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビ、タッチパネル、ペンタブレットなどの画像表示装置、例えばプラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(EPD)、干渉変調ディスプレイ(IMOD)等の平面型又は曲面を有する画像表示パネルを用いた画像表示装置においては、視認性確保や破損防止等のため、各構成部材間に空隙を設けず、各構成物材間を粘着シートや液状粘着剤で貼り合わせて一体化することが行われている。
【0003】
例えば液晶モジュールの視認側と表面保護パネルとの間にタッチパネルが介挿されてなる構成を備えた画像表示装置では、表面保護パネルと液晶モジュールの視認側との間に液状粘着剤や粘着シートを配置し、タッチパネルと他の構成部材、例えばタッチパネルと液晶モジュール、タッチパネルと表面保護パネルとを貼り合わせて一体化することが行われている。
【0004】
このような画像表示装置用構成部材間の空隙を粘着剤で充填する方法として、特許文献1には、紫外線硬化性樹脂を含む液状の接着樹脂組成物を該空隙に充填した後、紫外線を照射して硬化せしめる方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、粘着シートを該空隙に貼り合わせた後、画像表示ユニットを介して粘着シートに紫外線照射して粘着剤を硬化させる工程を含む画像表示装置の作製方法が開示されている。このようにして用いられる粘着シートは、たとえ粘着シートが薄肉であっても、被着体の印刷段差や界面に異物が存在した場合などにおける凹凸追随性を担保でき、かつ高温・高湿環境下などにおける耐発泡信頼性も両立できるため、好適に用いられる。近年、画像表示装置の薄肉化に伴って粘着剤も薄肉化が求められており、光硬化性を有する粘着シートは広く用いられつつある。
【0006】
さらに、特許文献3~8には、アクリル系ポリマー及び金属腐食防止剤を含む組成物から形成される粘着シートについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開2010/027041号公報
【文献】特開2010-072481号公報
【文献】特開2013-166846号公報
【文献】特開2014-177611号公報
【文献】特開2014-177612号公報
【文献】特開2015-004048号公報
【文献】特開2017-110062号公報
【文献】特開2010-150396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
タッチパネルは、通常、錫ドープ酸化インジウム(ITO)等の金属材料で形成された微細配線や透明導電層を有する上部電極板及び下部電極板を備えている。
また、透明導電層の周囲には、透明導電層により検知した指やタッチペンなどの位置情報を集約して通信するために、金属材料で形成された導体パターンを有する。
これらの透明導電層や導体パターンは、錫ドープ酸化インジウム(ITO)から形成されることが一般的であった。
しかし、ITOは、表面抵抗が高くて曲げに脆いという問題を抱えていたため、近年の画像表示装置の大画面化、フレキシブル化、フォルダブル化に伴い、ITOの代替材料として、表面抵抗が低くて曲げにも強い銀を含む金属材料が注目されている。
また、導体パターンに関しても、画像表示装置の狭額縁化に伴い細線化が進んでおり、銀を含む金属材料で形成された導体パターンが注目されている。
【0009】
しかし、銀は、ITOと比較して耐腐食性に劣るという課題を抱えていた。中でも、銀を含む金属材料を備えた導電部材に光硬化型粘着シートを貼合し、2つの画像表示装置構成部材を、当該粘着シートを介して積層した後、光を照射して当該粘着シートを硬化させて画像表示装置を製造すると、銀を含む金属材料の腐食が特に進行してしまうという課題を抱えていた。
【0010】
このように、銀を含む金属材料を備えた導電部材に光硬化型粘着シートを貼合し、光硬化させた際の金属材料の腐食について研究した結果、粘着シートに含まれる光開始剤が光により活性化してラジカルを発生し、このラジカルが金属材料中の銀と反応するため、銀を含む金属材料の腐食が進行することが分かってきた。
【0011】
そこで本発明は、特に銀を含む金属材料を備えた導電部材に貼合して光硬化した後に当該導電部材の腐食を抑制することができる、新たな光硬化型粘着シートを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、光を受光するとラジカルを発生する光開始剤、及び、365nmの吸光係数が20mL/g・cm以下の金属腐食防止剤を含有する粘着剤層を有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体は、カルボキシル基含有モノマーを含まない(共)重合体であり、
前記金属腐食防止剤は、1,2,3-トリアゾール及び1,2,4-トリアゾールから選択される1種又は2種であり、
前記粘着層が仮硬化又は未硬化状態にあり、かつ、光重合開始剤が活性を有したまま粘着剤層中に存在することを特徴とする光硬化型粘着シートを提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明が提案する光硬化型粘着シートを、銀を含む金属材料を備えた導電部材に積層した後、光照射して当該粘着シートを硬化させると、光照射する際に、当該粘着シート中の金属腐食防止剤で導電部材の銀に保護膜を形成することで、前記光照射によって光開始剤から発生したラジカルが導電部材の銀と反応するのを抑制することができるため、導電部材の腐食を抑制することができる。
よって、本発明が提案する光硬化型粘着シートは、例えば銀を含む金属材料で形成された導体パターンを有する導電部材等の各種導電部材を貼り合わせるのに好適な粘着シートとして用いることができる。とりわけ、タッチパネルを有する画像表示装置用の粘着シートとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】後述する実施例において、耐銀腐食信頼性の評価試験方法を説明するための図であり、(A)は耐銀腐食信頼性評価用サンプルの上面図、(B)は耐銀腐食信頼性評価用サンプルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。但し、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0016】
[光硬化型粘着シート]
本発明の実施形態の一例に係る光硬化型粘着シート(以下、「本粘着シート」とも称する。)は、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、光を受光するとラジカルを発生する光開始剤、及び、365nmの吸光係数が20mL/g・cm以下の金属腐食防止剤を含有する粘着剤組成物(「本粘着剤組成物」と称する)からなる粘着剤層を有する。
【0017】
ここで、「光硬化型粘着シート」とは、光を照射することにより硬化する性質を備えた粘着シートの意味である。
また、「(共)重合体」とは単独重合体及び共重合体を包括する意味であり、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートを包括する意味であり、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルを包括する意味である。
さらに、「光」とは、具体的には、波長200nm~780nmの波長領域の光を意味し、「光硬化型」とは、かかる波長領域での硬化性を有することを意味する。
【0018】
上記特許文献3~8に開示の粘着シートは、その製造時において、光開始剤を用いて硬化されているので、該光開始剤は失活しており、製造後には、該粘着シートを構成する粘着剤層中に光を受光するとラジカルを発生する光開始剤は存在していない。
このため、粘着シート形成後には、ラジカルを発生させることはできず、また、ラジカルに起因する腐食課題も存在しない。
一方、本粘着シートは、上記のとおり、光を照射することにより硬化する性質を備える粘着シートであって、上記特許文献3~8に開示の粘着シートとは異なり、光を受光するとラジカルを発生する光開始剤が粘着剤層中に失活することなく存在している点を特徴の一つとするものである。
【0019】
[本粘着剤組成物]
本粘着剤組成物は、上記のように、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、光を受光するとラジカルを発生する光開始剤、及び、365nmの吸光係数が20mL/g・cm以下の金属腐食防止剤、及び必要に応じて架橋剤を含有する組成物である。
【0020】
<(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体>
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体としては、例えばアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体の他、これと共重合性を有するモノマー成分とを重合することにより得られる共重合体を挙げることができる。
より好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートと、これと共重合可能な水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミド基含有モノマー及びその他のビニルモノマーの中から選択されるいずれか一つ以上のモノマーとを構成単位として含む共重合体を挙げることができる。
【0021】
中でも、本粘着剤組成物における(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体は、金属部材の腐食抑制のため、カルボキシル基含有モノマーを構成単位として含まない(共)重合体であるのが好ましい。
なお、「カルボキシル基含有モノマーを構成単位として含まない」とは、“実質的に含まない”の意であり、完全に含まない場合のみならず、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体中に、共重合性モノマーAが0.5質量%未満、好ましくは、0.1質量%未満で含むことを包含する。
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体は、以下に例示したモノマー等を、必要により重合開始剤を用いて常法により製造することができる。
【0022】
より具体的な(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の一例として、側鎖の炭素数が4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート(以下「共重合性モノマーA」とも称する。)と、これと共重合可能な以下のB~Eからなる群から選択されるいずれか一つ以上のモノマー成分から構成される共重合体を挙げることができる。
【0023】
・マクロモノマー(以下「共重合性モノマーB」とも称する。)
・側鎖の炭素数が1~3の(メタ)アクリレート(以下「共重合性モノマーC」とも称する。)
・水酸基含有モノマー(以下「共重合性モノマーD」とも称する。)
・その他のビニルモノマー(以下「共重合性モノマーE」とも称する。)
【0024】
また、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の一例として、(a)共重合性モノマーAと共重合性モノマーBとを含むモノマー成分から構成される共重合体や、(b)共重合性モノマーAと、共重合性モノマーB及び/又は共重合性モノマーCと、共重合性モノマーD及び/又は共重合成モノマーEとを含むモノマー成分から構成される共重合体も特に好適な例示として挙げることができる。
【0025】
(共重合性モノマーA)
上記側鎖の炭素数4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート(共重合性モノマーA)としては、例えばn-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
上記共重合性モノマーAは、共重合体の全モノマー成分中に、30質量%以上90質量%以下含有されることが好ましく、中でも35質量%以上或いは88質量%以下、その中でも特に40質量%以上或いは85質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0027】
(共重合性モノマーB)
上記マクロモノマー(共重合性モノマーB)は、重合により(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体となった際に側鎖の炭素数が20以上となるモノマーである。共重合性モノマーBを用いることにより、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体をグラフト共重合体とすることができる。
したがって、共重合性モノマーBと、それ以外のモノマーの選択や配合比率によって、グラフト共重合体の主鎖と側鎖の特性を変化させることができる。
【0028】
上記マクロモノマー(共重合性モノマーB)としては、骨格成分がアクリル酸エステル共重合体またはビニル系重合体から構成されるのが好ましい。
マクロモノマーの骨格成分としては、例えば、上記共重合性モノマーA、後述の共重合性モノマーC、後述の共重合性モノマーD等に例示されるものが挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
マクロモノマーは、ラジカル重合性基又はヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、チオール基等の官能基を有するものである。
マクロモノマーとしては、他のモノマーと共重合可能なラジカル重合性基を有するものが好ましい。ラジカル重合性基は一つ或いは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。マクロモノマーが官能基を有する場合も官能基は一つ或いは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。また、ラジカル重合性基と官能基はどちらか一方でも、両方含有していてもよい。
【0030】
共重合性モノマーBの数平均分子量は、500~2万であるのが好ましく、中でも800以上或いは8000以下、その中でも1000以上或いは7000以下であるのが好ましい。
マクロモノマーは、一般に製造されているもの(例えば、東亜合成社製マクロモノマーなど)を適宜使用することができる。
上記共重合性モノマーBは、共重合体の全モノマー成分中に5質量%以上30質量%以下、中でも6質量%以上或いは25質量%以下、その中でも特に8質量%以上或いは20質量%以下の範囲で含有されることが好ましい。
【0031】
(共重合性モノマーC)
上記側鎖の炭素数が1~3の(メタ)アクリレート(共重合性モノマーC)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0032】
上記共重合性モノマーCは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上70質量%以下含有されることが好ましく、中でも3質量%以上或いは65質量%以下、その中でも特に5質量%以上或いは60質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0033】
(共重合性モノマーD)
上記水酸基含有モノマー(共重合性モノマーD)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0034】
上記共重合性モノマーDは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上30質量%以下含有されることが好ましく、中でも0質量%以上或いは25質量%以下、その中でも特に0質量%以上或いは20質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0035】
(共重合性モノマーE)
上記その他のビニルモノマー(共重合性モノマーE)としては、共重合性モノマーA~Dを除く、ビニル基を分子内に有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、分子内にアミド基やアルコキシルアルキル基等の官能基を有する官能性モノマー類並びにポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類並びに酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びラウリン酸ビニル等のビニルエステルモノマー並びにスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン及びその他の置換スチレン等の芳香族ビニルモノマーを例示することができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0036】
上記共重合性モノマーEは、共重合体の全モノマー成分中に0質量%以上30質量%以下含有されることが好ましく、中でも0質量%以上或いは25質量%以下、その中でも特に0質量%以上或いは20質量%以下の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0037】
上記に掲げるものの他、(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、マレイミド等のアミド基又はイミド基を含有するモノマー;ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性モノマー等も必要に応じて適宜用いることができる。
【0038】
中でも、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体は、アミド基とカルボキシル基、及び、ヒドロキシル基とイソシアネート基のうちから選択される何れかの官能基の組合せによる化学的な結合を有するか、或いは、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体を有するものであるのが好ましい。
また、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体は、側鎖の炭素数が4~18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレートと、これと共重合可能な共重合性モノマーとして、上記に掲げた共重合性モノマーの中から選択される、カルボキシル基を有しない親水性の(メタ)アクリレートとを含むモノマー成分の共重合体であることが好ましい。
また、親水性の(メタ)アクリレートとしては、メチルアクリレートや極性基を有するエステルが好ましく、該極性基としては、カルボキシル基以外の極性基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。とりわけ、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、N,N-ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアミド基含有(メタ)アクリレートが好ましい。これらは1種又は2種以上を併用してもよい。
【0039】
((メタ)アクリル酸エステル(共)重合体)
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の最も典型的な例としては、例えば2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリート、デシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される何れか1種以上のモノマー成分(a)と、有機官能基等をもつヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、フッ素化(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートからなる群より選択される何れか1種以上のモノマー成分(b)と、を含むモノマー成分を共重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体を挙げることができる。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の質量平均分子量は、10万以上150万以下、中でも15万以上或いは130万以下、その中でも特に20万以上或いは120万以下であることが好ましい。
【0041】
凝集力の高い粘着組成物を得たい場合は、分子量が大きい程分子鎖の絡み合いにより凝集力が得られる観点から、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の質量平均分子量は70万以上150万以下、特に80万以上或いは130万以下であることが好ましい。
一方、流動性や応力緩和性の高い粘着組成物を得たい場合は、質量平均分子量は10万以上70万以下、特に15万以上或いは60万以下であることが好ましい。
他方、粘着シート等を成形する際に溶剤を使用しない場合には、分子量が大きなポリマーを使用することが難しいため、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の質量平均分子量は10万以上70万以下、特に15万以上或いは60万以下、中でも特に20万以上或いは50万以下であることが好ましい。
【0042】
<光開始剤>
本粘着剤組成物は、光を受光するとラジカルを発生する光開始剤を含有するのが好ましい。架橋剤として(メタ)アクリロイル基を有する有機系架橋剤を用いる場合は、特に光開始剤をさらに添加するのが好ましい。光照射によりラジカルを発生させて系中の重合反応の起点となるためである。
本粘着シートは、光照射によって光開始剤から発生するラジカルが導電部材の銀と反応するのを抑制することができるため、本粘着剤組成物は、光を受光するとラジカルを発生する光開始剤を含有するのが好ましい。
【0043】
光開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光開始剤と、に大別される。
【0044】
光開始剤は、現在公知のものを適宜使用することができる。中でも、波長380nm以下の紫外線に感応する光開始剤が、硬化(架橋)反応の制御のしやすさの観点から好ましい。
一方、波長380nmより長波長の光に感応する光開始剤は、高い光反応性を得られる点、及び、感応する光が、本粘着シートの深部まで到達しやすい点で好ましい。
【0045】
これらのうちの開裂型光開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると開始剤としての機能をもたなくなる。このため、硬化(架橋)反応が終了した後の粘着剤中に活性種として残存することがなく、その後粘着剤が光に曝された場合に再度ラジカルを発生させることがないため、好ましい。
他方、水素引抜型光開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる点で有用である。
【0046】
前記開裂型光開始剤としては、光に対する感応性が高く、かつ反応後に分解物となり消色する点で、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光開始剤が好ましい。
【0047】
前記水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチル、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、3-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、カンファーキノンやその誘導体などを挙げることができる。
これらの中でも、ベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチルが好ましい。
【0048】
なお、上記に挙げた光開始剤は、いずれか1種またはその誘導体を使用してもよいし、それら2種以上を組み合わせて使用してもよい。
さらに、光開始剤に加えて増感剤を使用することも可能である。増感剤としては、特に限定はなく、光開始剤に用いられる増感剤であれば問題なく使用できる。例えば、芳香族アミンやアントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、クマリン誘導体、チオキサントン誘導体、フタロシアニン誘導体等や、ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、ミヒラーケトン、9,10-フェナントラキノンなどの芳香族ケトン及びこれらの誘導体などを挙げることができる。
なお、光開始剤や増感剤は、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体に結合された状態で含まれていてもよい。光開始剤や増感剤を(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体に結合させる方法としては、後述するように、記架橋剤を(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体に結合させる場合と同様の方法を採用することができる。
【0049】
光開始剤の含有量は、特に制限されるものではなく、典型的には、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体100質量部に対して0.1以上10質量部以下、中でも0.2質量部以上或いは5質量部以下、その中でも0.5質量部以上或いは3質量部以下の割合で調整することが特に好ましい。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
【0050】
<金属腐食防止剤>
本粘着剤組成物が含有する金属腐食防止剤は、含有する金属腐食防止剤によって本粘着剤組成物の光反応を阻害しない観点から、365nmの吸光係数が20mL/g・cm以下、中でも10mL/g・cm以下、その中でも5mL/g・cm以下、その中でも1mL/g・cm以下であるのが特に好ましい。
該特性を有する金属腐食防止剤としては、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、チアゾール骨格及びチアジアゾール骨格から選択されるいずれの骨格も有しない、金属腐食防止剤が好ましい。金属腐食防止剤が、このような骨格を有しないことで、上記範囲の吸光係数を有することができる。
【0051】
また、本粘着剤組成物が含有する金属腐食防止剤は、親水性の化合物であることが好ましい。金属腐食防止剤が親水性であると、同じく親水性である(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体をベース樹脂とする粘着剤層において動き易いため、例えば銀原子と化学的に結合して保護皮膜を形成することができ、光照射によって光開始剤から発生するラジカルの金属部材、特に銀への攻撃(反応)を抑制することができる。
かかる観点から、25℃における金属腐食防止剤の水溶解度は20g/L以上であるのが好ましく、特に50g/L以上、中でも特に100g/L以上であるのがさらに好ましい。
【0052】
本粘着剤組成物が含有する金属腐食防止剤としては、365nmにおける吸光係数が20mL/g・cm以下であり、かつ、親水性の化合物からなる金属腐食防止剤の中でも、トリアゾール系化合物であることが好ましい。中でも、ベンゾトリアゾール、1,2,3-トリアゾール及び1,2,4-トリアゾールから選択される1種又は2種以上の混合物であるのが特に好ましい。
また、該ベンゾトリアゾールとしては、置換又は無置換のいずれのベンゾトリアゾールであってもよく、例えば1,2,3-ベンゾトリアゾール、メチル-1H-ベンゾトリアゾール等のアルキルベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、5-アミノベンゾトリアゾール、5-フェニルチオールベンゾトリアゾール、5-メトキシベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、クロロベンゾトリアゾール、ブロモベンゾトリアゾール、フルオロベンゾトリアゾール等のハロゲノベンゾトリアゾール、銅ベンゾトリアゾール、銀ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾールシラン化合物等を挙げることができる。これらの中でも、粘着剤組成物への分散性や添加しやすさ、金属腐食防止効果の観点から、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2‘-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノールからなる群より選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物が好ましい。
さらに、1,2,4-トリアゾールは、融点が約120℃の固体である一方、1,2,3-トリアゾールは融点が約20℃と室温でほぼ液体状態である。よって、1,2,3-トリアゾールは、粘着剤組成物中に混合する際の分散性に優れ、均一に混合することができ、また、マスターバッチ化しやすい等の優れた利点がある。
【0053】
なお、波長365nmにおける吸光係数は、測定波長の光を吸収しない溶媒(アセトニトリル、アセトンなど)で希釈した溶液を、石英セルに入れ、その吸光度を測定することで求めることができる。
【0054】
この際、吸光係数は以下の式により求める。
α365=A365×d/c
α365:波長365nmでの吸光係数[mL/(g・cm)]
365:波長365nmでの吸光度
c:溶液濃度[g/mL]
d:(石英セルの)光路長[cm]
【0055】
また、吸光係数を計算する際に、透過率の測定結果から換算した吸光度を用いてもよい。
365=-Log(T365/100)
365:波長365nmでの光線透過率[%]
【0056】
本粘着剤組成物が含有する金属腐食防止剤は、光照射によって光開始剤から発生するラジカルの攻撃(反応)を効果的に抑制する観点から、上記光開始剤100質量部に対して10~200質量部の割合で金属腐食防止剤を含有することが好ましく、中でも20質量部以上或いは100質量部以下、その中でも25質量部以上或いは80質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0057】
また、本粘着剤組成物において、金属腐食防止剤のブリードアウトや金属腐食防止効果などの観点から、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下の割合で金属腐食防止剤を含有するのが好ましく、中でも0.1質量部以上或いは1質量部以下、その中でも0.2質量部以上或いは0.5質量部以下の割合で含有するのがより一層好ましい。
【0058】
(架橋剤)
本粘着剤組成物は必要に応じて架橋剤を含んでもよい。
例えば上記した(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を架橋する方法としては、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体中に導入した水酸基やカルボキシル基等の反応性基と化学結合しうる架橋剤を添加し、加熱や養生により反応させる方法や、架橋剤としての(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート及び光開始剤等の反応開始剤を添加し、紫外線照射等によって架橋する方法を挙げることができる。中でも、本粘着剤組成物中のカルボキシル基等の極性官能基を反応によって消費せず、極性成分由来の高い凝集力や粘着物性を維持できる観点から、紫外線等の光照射による架橋方法が好ましい。
【0059】
上記架橋剤としては、例えば(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、N-置換(メタ)アクリルアミド基、アルコキシシリル基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する架橋剤を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、架橋性官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
【0060】
中でも、架橋反応の制御のし易さの観点からは、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の紫外線硬化型の多官能モノマー類のほか、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能アクリルオリゴマー類や、多官能アクリルアミド等を挙げることができる。
【0061】
また、2種以上の架橋性官能基を有する架橋剤としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシブチル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、(メタ)アクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基またはブロックイソシアネート基を含有するモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の各種シランカップリング剤を挙げることができる。
【0062】
2種以上の架橋性官能基を有する架橋剤は、一方の官能基を(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体と反応させ、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体に結合された構造をとってもよい。このような構造をとることにより、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体に、例えば(メタ)アクリロイル基やビニル基等の二重結合性の架橋性官能基を化学結合させることができる。
また、架橋剤が(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体に結合されることで、架橋剤のブリードアウトや、本粘着シートの予期せぬ可塑化を抑制することができる傾向にある。
また、架橋剤が(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体に結合されることで、光架橋反応の反応効率が促進されることから、より凝集力の高い硬化物を得ることができる傾向にある。
【0063】
本粘着剤組成物は、架橋剤の架橋性官能基と反応する単官能モノマーをさらに含有してもよい。このような単官能モノマーとしては、例えばメチルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、フェニル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー等を挙げることができる。
中でも被着体への密着性や湿熱白化抑制の効果を向上させる観点から、水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いるのが好ましい。
【0064】
架橋剤の含有量は、本粘着剤組成物の柔軟性と凝集力をバランスさせる観点から、前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体100質量部に対して、0.01以上10質量部以下の割合で配合するのが好ましく、中でも0.05質量部以上或いは8質量部以下、その中でも0.1質量部以上或いは5質量部以下であることが特に好ましい。
なお、本粘着シートが多層である場合は、粘着シートを構成する層のうち、中間層や基材となる層については、架橋剤の含有量が上記範囲を超えていてもよい。中間層や基材となる層における架橋剤の含有量は、前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体100質量部に対して、0.01以上40質量部以下の割合で配合するのが好ましく、中でも1質量部以上或いは30質量部以下、その中でも2質量部以上或いは25質量部以下であることが特に好ましい。
【0065】
<その他の成分>
本粘着剤組成物は、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、光開始剤、金属腐食防止剤及び架橋剤以外にも、必要に応じてその他の成分を含有することができる。
その他の成分としては、例えば、架橋剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、金属腐食防止剤(前記した金属腐食防止剤を除く)、老化防止剤、帯電防止剤、吸湿剤、発泡剤、消泡剤、無機粒子、粘度調整剤、粘着付与樹脂、光増感剤、蛍光剤などの各種の添加剤、反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)などを挙げることができる。その他、通常の粘着剤組成物に配合される公知の成分を適宜含有してもよい。
【0066】
<本粘着剤組成物の調製>
本粘着剤組成物は、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、光開始剤及び金属腐食防止剤、必要に応じて架橋剤、さらに必要に応じてその他の成分をそれぞれ所定量混合することにより得ることができる。
これらの混合方法としては、特に制限されず、各成分の混合順序も特に限定されない。
また、本粘着剤組成物製造時に熱処理工程を入れてもよく、この場合は、予め、本粘着剤組成物の各成分を混合してから熱処理を行うことが望ましい。各種の混合成分を濃縮してマスターバッチ化したものを使用してもよい。
【0067】
また、混合する際の装置も特に制限されず、例えば万能混練機、プラネタリミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ゲートミキサー、加圧ニーダー、三本ロール、二本ロールを用いることができる。必要に応じて溶剤を用いて混合してもよい。また、本粘着剤組成物は、溶剤を含まない無溶剤系として使用することできる。無溶剤系として使用することで溶剤が残存せず、耐熱性及び耐光性が高まるという利点を備えることができる。
【0068】
<本粘着シートの層構成及び厚さ>
本粘着シートは本粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する光硬化型粘着シートである。
かかる粘着剤層は、単層であっても多層であってもよく、また、多層の場合には、いわゆる基材層のような他の層が介在してもよい。粘着剤層が他の層を有する多層構成である場合は、本粘着シートの表面層が前記粘着剤組成物からなる粘着剤層であることが好ましい。
【0069】
本粘着シートが多層である場合、前記粘着剤組成物からなる粘着剤層の厚さは限定されないが、本粘着シート全体の厚みに対し10%以上であるのが好ましく、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上である。前記粘着剤組成物からなる粘着剤層の厚さが上記範囲であれば、導電部材に対する耐腐食信頼性、耐発泡信頼性、硬化特性が良好となるため好ましい。
【0070】
本粘着シートの厚さは、10μm以上500μm以下であるのが好ましく、中でも15μm以上或いは400μm以下であるのがより好ましく、その中でも特に20μm以上或いは350μm以下であるのことがさらに好ましい。
【0071】
<本粘着シートの物性>
本粘着シートは、光学的に透明であることが好ましい。つまり、透明粘着シートであることが好ましい。ここで、「光学的に透明」とは、全光線透過率は80%以上であることを意図し、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
【0072】
本粘着シートは、光を受光するとラジカルを発生する光開始剤を含む粘着剤層を有するため、被着体への貼合後に、光照射することで、該粘着剤層が硬化する性質を有する。
このように、本粘着シートは、その製造後においても、粘着剤層中の光開始剤が活性を有する状態にある。このような粘着剤層を形成する好ましい手法としては、次の(1)又は(2)を挙げることができる。
【0073】
(1)本粘着シートの製造時において、仮硬化(1次架橋)状態でシート形状を保持しつつ、かつ、光硬化性(光活性)を具備させる。
(2)本粘着シートの製造時において、未硬化(架橋)状態でシート形状を保持しつつ、かつ、光硬化性(光活性)を具備させる。
【0074】
上記(1)の具体例としては、例えば光重合開始剤と、官能基(i)を有する(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体と、該官能基(i)と反応する官能基(ii)とを有する化合物と、その他、必要に応じて(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートと、を含む組成物(粘着剤)を、加熱又は養生させ、粘着剤層を形成する方法を挙げることができる。
該方法によれば、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体中の官能基(i)と、該化合物中の官能基(ii)が反応し、化学的な結合が形成されることで硬化(架橋)して、粘着剤層が形成される。このようにして粘着剤層を形成することで、光重合開始剤が活性を有したまま粘着剤層中に存在することができる。
なお、この際、光重合開始剤としては、上述した開裂型光開始剤及び水素引抜型光開始剤のいずれを使用してもよい。
【0075】
上記官能基(i)と官能基(ii)の組み合わせとしては、例えばアミド基(官能基(i))とカルボキシル基(官能基(ii))、ヒドロキシル基(官能基(i))とイソシアネート基(官能基(ii))が好ましい。
より詳細には、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体が水酸基を有し、例えば上述した水酸基含有モノマー(共重合性モノマーD)を含むモノマー成分の共重合体としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体を使用し、かつ、上記化合物がイソシアネート基を有する場合が特に好適な例である。
【0076】
また、上記官能基(ii)を有する化合物は、さらに、(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合性官能基を有していてもよい。これにより、該ラジカル重合性官能基による(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の光硬化(架橋)性を維持したまま粘着剤層を形成することができる。より詳細には、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体が水酸基を有し、例えば上述した水酸基含有モノマーを含むモノマー成分の共重合体としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体を使用し、かつ、上記化合物が、(メタ)アクリロイル基を有する場合、例えば上記化合物が2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート又は1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等である場合が特に好適な例である。
このように、該ラジカル重合性官能基による(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体同士の架橋反応を利用することにより、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートを用いなくとも、光硬化(架橋)後の凝集力が効率よく上がりやすく信頼性に優れる等の利点があるため、より好ましい。
【0077】
上記(1)の他の具体例としては、例えば光重合開始剤として、上述した水素引抜型開始剤を利用する方法を挙げることができる。水素引抜型開示剤は、一度励起されても、開始剤のうち反応しなかったものは基底状態に戻るため、光重合開始剤として再度利用可能である。このように、水素引抜型光開始剤を利用することで、粘着シートの製造後においても、該光重合開始剤による光硬化(架橋)性を維持させることができる。
【0078】
上記(2)の具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成するモノマー成分として、上述したマクロモノマーを利用する方法が挙げられる。より具体的には、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体を利用する方法が挙げられる。このようなマクロモノマーを利用することで、室温状態では、枝成分同士が引き寄せ合って組成物(粘着剤)として物理的架橋をしたような状態を維持することができる。
したがって、未硬化(架橋)のままでシート状態を保持させることができ、光を受光するとラジカルを発生する光開始剤を含む粘着剤層を有する粘着シートを製造することができる。なお、この際、光重合開始剤としては、上述した開裂型光開始剤及び水素引抜型光開始剤のいずれを使用してもよい。
【0079】
<本粘着シートの使用形態>
本粘着シートは、被着体に本粘着剤組成物を直接塗布し、シート状に形成して使用する以外にも、離型フィルム上に単層又は多層のシート状に成型した離型フィルム付き粘着シートとすることもできる。
かかる離型フィルムの材質としては、例えばポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、フッ素樹脂フィルム等を挙げることができる。これらの中でも、ポリエステルフィルム及びポリオレフィンフィルムが特に好ましい。
【0080】
離型フィルムの厚みは特に制限されない。中でも、例えば加工性及びハンドリング性の観点からは、25μm~500μmであるのが好ましく、その中でも38μm以上或いは250μm以下、その中でも50μm以上或いは200μm以下であるのがさらに好ましい。
【0081】
なお、本粘着シートは、上記の様に被着体や離型フィルムを使用せずに、本粘着剤組成物を直接に押出成形する方法や、型に注入することによって成形する方法を採用することもできる。更には、導電部材等の部材間に本粘着剤組成物を直接充填することによって、粘着シートの態様とすることもできる。
【0082】
<本粘着シートを利用した導電部材の腐食抑制方法>
本粘着シートを、銀を含む金属材料を備えた導電部材、例えば銀を含む金属材料で形成された導電部材に積層した後、光照射する際に、当該粘着シート中の金属腐食防止剤で導電部材の銀の一部又は全部を被覆することで、前記光照射によって光開始剤から発生したラジカルが導電部材の銀と反応するのを抑制することができる。よって、本粘着シートは、このような導電部材の腐食抑制方法に利用することができる。
【0083】
<本粘着シートの用途>
本粘着シートは、銀を含む金属材料を備えた導電部材、例えば銀を含む金属材料で形成された導電部材に貼合するために好適に用いることができる。例えばパーソナルコンピューター、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビゲーションシステム、タッチパネル、ペンタブレットなどの画像表示装置、例えばプラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、無機ELディスプレイ、電気泳動ディスプレイ(EPD)、干渉変調ディスプレイ(IMOD)などの画像表示パネルを用いた画像表示装置などにおいて、銀を含む金属材料を備えた透明導電層を含む導電部材を貼り合わせるのに好適である。この際、前記導電部材は、絶縁保護膜(パシベーション膜)を有するものであってもよい。
【0084】
本粘着シートは、とりわけ銀を含む金属材料を備えた導電部材、例えば透明導電層の導電層面に貼り合わせて使用することができる。
この際、本粘着シートの何れか一方の粘着剤層面と透明導電層の導電層面とが貼り合わせた構成を有するものであればよい。
本粘着シートが両面粘着シートの場合には、本積層体は本粘着シートの両方の粘着剤層面と透明導電層の導電層面とが貼り合わされた構成を有するものであってもよい。
【0085】
上記透明導電層は、その導電膜の導電層面を覆うようにオレフィン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、あるいは無機ガラス等による絶縁保護膜(パシベーション膜)が形成されていてもよい。
この場合、本粘着シートは、透明導電層面と直接貼り合わされない(透明導電層面と直接接していない)。
しかし、本粘着剤組成物中の金属腐食防止剤成分は水溶性が高く、湿熱環境下において、本粘着シートが吸湿した際に透明導電層に移動しやすいため、優れた金属腐食防止効果を奏することができる。このように、本粘着シートによると、絶縁保護膜の有無に関わらず、被着体の金属イオンによる粘着剤層の変色や変質のみならず、被着体に対する優れた金属腐食防止効果も奏することができる。
【0086】
上記透明導電層としては、少なくとも片面の表層に導電層を有するものであればよく、透明基材の表層に導電物質が蒸着やスパッタ、コーティング等により設けられた透明導電層を挙げられる。
透明導電層の導電層に用いられる導電物質は、銀を含む金属材料であればよく、導電物質がパターン形成される基材としては、特に限定されるものではないが、ガラス、樹脂フィルムなどが挙げられる。
透明導電層は、典型的には、少なくとも片面の表層に導電層を有する。また、典型的には、透明導電層には周辺部を引き回すように銅や銀を主成分とする導体パターン(配線パターン)が形成される。
【0087】
(本画像表示装置構成用積層体)
本粘着シートは、銀を含む金属材料を備えた導電部材、例えば銀を含む金属材料で形成された導電部材を備えた画像表示装置用構成部材と、他の画像表示装置用構成部材との間を、本粘着シートを介して積層して画像表示装置構成用積層体(「本画像表示装置構成用積層体」と称する)を構成するのに適している。
本画像表示装置構成用積層体は、本粘着シートを介して、前記2つの画像表示装置構成部材を積層した後、少なくとも一方の画像表示装置構成部材側から光を照射し、前記光硬化型粘着シートを光硬化することにより製造することができる。
【0088】
本画像表示装置構成用積層体の具体例としては、例えば離型フィルム/本粘着シート/タッチパネル、画像表示パネル/本粘着シート/タッチパネル、画像表示パネル/本粘着シート/タッチパネル/本粘着シート/保護パネル、偏光フィルム/本粘着シート/タッチパネル、偏光フィルム/本粘着シート/タッチパネル/本粘着シート/保護パネルなどの構成を挙げることができる。
【0089】
上記タッチパネルとしては、保護パネルにタッチパネル機能を内在させた構造体や、画像表示パネルにタッチパネル機能を内在させた構造体も含む。
よって、本画像表示装置構成用積層体は、例えば離型フィルム/本粘着シート/保護パネル、離型フィルム/本粘着シート/画像表示パネル、画像表示パネル/本粘着シート/保護パネルなどの構成であってもよい。
また、上記の構成において、本粘着シートと、これと隣接するタッチパネル、保護パネル、画像表示パネル、偏光フィルム等の部材との間に前記の導電層を介入する全ての構成を挙げることができる。但し、これらの積層例に限定されるものではない。
【0090】
なお、上記タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、電磁誘導方式等の方式のものが挙げられる。中でも静電容量方式であることが好ましい。
【0091】
上記保護パネルの材質としては、ガラスの他、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィンポリマー等の脂環式ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等のプラスチックであってもよい。
【0092】
画像表示パネルは、偏光フィルムその他位相差フィルム等の他の光学フィルム、液晶材料及びバックライトシステムから構成される(通常、本粘着剤組成物又は粘着物品の画像表示パネルに対する被着面は光学フィルムとなる。)ものであり、液晶材料の制御方式によりSTN方式やVA方式やIPS方式等があるが、何れの方式であってもよい。
【0093】
本画像表示装置構成用積層体は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、プラズマディスプレイ及びマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)ディスプレイなどの画像表示装置の構成部材として使用することができる。
【0094】
<語句の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0095】
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【実施例
【0096】
以下、実施例及び比較例によりさらに詳しく説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0097】
[実施例1]
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、枝成分がメチルメタクリレート(7質量部)及びイソボルニルメタクリレート(7質量部)からなるマクロモノマー(数平均分子量2500)であって、幹成分がラウリルアクリレート(43質量部)、エチルヘキシルアクリレート(40質量部)及びアクリルアミド(3質量部)からなる共重合体(A-1、質量平均分子量15万)1kgと、架橋剤(b)として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(B-1)100gと、光開始剤(c)として、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノンの混合物(C-1)10gと、金属腐食防止剤(d)として、1,2,3-トリアゾール(D-1、吸光係数0.3mL/g・cm、水溶解度>1000g/L)3gとを均一に溶融混練し、樹脂組成物1を作製した。
当該樹脂組成物1を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製、「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm/三菱ケミカル社製、「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、厚さ150μmとなるように温度80℃でシート状に賦形し、透明両面粘着シート1を作製した。
なお、透明両面粘着シート1は、光照射により硬化する性質を有するものである。
【0098】
[実施例2]
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)としての上記(A-1)1kgと、架橋剤(b)としての上記(B-1)100gと、光開始剤(c)としての2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(C-2)10gと、金属腐食防止剤(d)としての上記(D-1)5gとを均一に溶融混練し、樹脂組成物2を作製した。
当該樹脂組成物2を、実施例1と同様にシート状に賦形し、透明両面粘着シート2を作製した。
なお、透明両面粘着シート2は、光照射により硬化する性質を有するものである。
【0099】
[実施例3]
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)としての上記(A-1)1kgと、架橋剤(b)として、グリセリンジメタクリレート(B-2)100gと、光開始剤(c)としての上記(C-1)10gと、金属腐食防止剤(d)として、1,2,4-トリアゾール(D-2、吸光係数0.3mL/g・cm、水溶解度>1000g/L)1gとを均一に溶融混練し、樹脂組成物3を作製した。
当該樹脂組成物3を、実施例1と同様にシート状に賦形し、透明両面粘着シート3を作製した。
なお、透明両面粘着シート3は、光照射により硬化する性質を有するものである。
【0100】
[実施例4]
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、2-エチルヘキシルアクリレート(65質量部)、メチルアクリレート(32質量部)及びアクリルアミド(3質量部)からなる共重合体(A-2、質量平均分子量40万)1kgと、架橋剤(b)としての上記(B-1)20gと、光開始剤(c)として、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノンの混合物(C-1)10gと、金属腐食防止剤(d)としての上記(D-1)3gとを均一に溶融混練し、樹脂組成物4を作製した。
当該樹脂組成物4を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm/「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、厚さ150μmとなるように温度60℃でシート状に賦形し、PETフィルムを介して波長365nmの積算光量が800mJ/cmとなるよう高圧水銀ランプを用いて照射することで、透明両面粘着シート4を作製した。
なお、透明両面粘着シート4は、紫外線の照射量を調節して、半硬化状態、すなわち、さらに光硬化できる余地を残した状態のものである。
【0101】
参考例1
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)としての上記(A-1)1kgと、架橋剤(b)としての上記(B-1)50gと、光開始剤(c)としての上記(C-1)10gと、金属腐食防止剤(d)としての1,2,3-ベンゾトリアゾール(D-3、吸光係数0.8mL/g・cm、水溶解度20g/L)5gとを均一に溶融混練し、樹脂組成物5を作製した。
当該樹脂組成物5を、実施例1と同様にシート状に賦形し、透明両面粘着シート5を作製した。
なお、透明両面粘着シート5は、光照射により硬化する性質を有するものである。
【0102】
[比較例1]
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、枝成分がメチルメタクリレート15質量部からなるマクロモノマー(数平均分子量2500)であって、幹成分がn-ブチルアクリレート(81質量部)及びアクリル酸(4質量部)からなる共重合体(A-3、質量平均分子量30万)1kgと、架橋剤(b)としての上記(B-2)100gと、光開始剤(c)としての上記(C-1)10gとを均一に溶融混練し、樹脂組成物6を作製した。金属腐食防止剤(d)は添加しなかった。
当該樹脂組成物6を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(「ダイアホイルMRF」、厚さ75μm/「ダイアホイルMRT」、厚さ38μm)で挟み、厚さ150μmとなるように温度80℃でシート状に賦形し、透明両面粘着シート6を作製した。
なお、透明両面粘着シート6は、光照射により硬化する性質を有するものである。
【0103】
[比較例2]
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)としての上記(A-1)1kgと、架橋剤(b)としての上記(B-1)100gと、光開始剤(c)としての上記(C-1)10gとを均一に溶融混練し、樹脂組成物7を作製した。金属腐食防止剤(d)は添加しなかった。
当該樹脂組成物7を、比較例1と同様にシート状に賦形し、透明両面粘着シート7を作製した。
なお、透明両面粘着シート7は、光照射により硬化する性質を有するものである。
【0104】
[比較例3]
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)としての上記(A-1)1kgと、架橋剤(b)としての上記(B-1)100gと、光開始剤(c)としての上記(C-2)10gとを均一に溶融混練し、樹脂組成物8を作製した。金属腐食防止剤(d)は添加しなかった。
当該樹脂組成物8を、比較例1と同様にシート状に賦形し、透明両面粘着シート8を作製した。
なお、透明両面粘着シート8は、光照射により硬化する性質を有するものである。
【0105】
[比較例4]
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)としての上記(A-3)1kgと、架橋剤(b)としての上記(B-2)100gと、光開始剤(c)としての上記(C-1)10gと、金属腐食防止剤(d)としての上記(D-1)3gとを均一に溶融混練し、樹脂組成物9を作製した。
当該樹脂組成物9を、比較例1と同様にシート状に賦形し、透明両面粘着シート9を作製した。
なお、透明両面粘着シート9は、光照射により硬化する性質を有するものである。
【0106】
[比較例5]
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)としての上記(A-1)1kgと、架橋剤(b)としての上記(B-2)100gと、光開始剤(c)としての上記(C-1)10gと、金属腐食防止剤(d)として、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(D-4、吸光係数90mL/g・cm、水溶解度20g/L)5gとを均一に溶融混練し、樹脂組成物10を作製した。
当該樹脂組成物10を、比較例1と同様にシート状に賦形し、透明両面粘着シート10を作製した。
なお、透明両面粘着シート10は、光照射により硬化する性質を有するものである。
【0107】
[比較例6]
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)としての上記(A-1)1kgと、架橋剤(b)としての上記(B-2)100gと、光開始剤(c)としての上記(C-1)10gと、金属腐食防止剤(d)として、メルカプトベンゾチアゾール(D-5、吸光係数65mL/g・cm、水溶解度0.3g/L)5gとを均一に溶融混練し、樹脂組成物11を作製した。
当該樹脂組成物11を、比較例1と同様にシート状に賦形し、透明両面粘着シート11を作製した。
なお、透明両面粘着シート11は、光照射により硬化する性質を有するものである。
【0108】
かかる光硬化型の透明両面粘着シート1~11について、下述する各種評価を行った。結果は表1に示す。
【0109】
<各種評価>
(1)段差吸収性
上記透明両面粘着シート1~11を、離型フィルムを積層したままトムソン打抜機を用いて50×80mmにカットした。片側の離型フィルムを剥離し、露出した粘着面を、周縁部5mmに厚さ40μmの印刷を施したソーダライムガラス(82mm×53mm×厚さ0.5mm)の印刷面に、粘着シートの4辺が印刷段差にかかるようにして真空プレス機を用いてプレス圧着した(温度25℃、プレス圧0.04MPa)。次いで、残る離型フィルムを剥がし、印刷段差のないソーダライムガラス(82mm×53mm×厚さ0.5mm)をプレス貼合した後、オートクレーブ処理(60℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、段差付ガラス/粘着シート/ガラス積層体を作製した。
作製した当該積層体を目視観察し、印刷段差近傍で粘着シートが追従せず気泡が残ったものを「×(poor)」、気泡がなく外観良好に貼合されたものを「○(good)」と判定した。
【0110】
(2)耐発泡信頼性
段差吸収性評価にて作製した段差付ガラス/粘着シート/ガラス積層体のうち、気泡がなく平滑に貼合できたサンプルについて、ガラス側から、波長365nmの積算光量が2000mJ/cmとなるように高圧水銀ランプにて光を照射し硬化させた。室温で12時間静置した後、65℃90%RHの環境で500時間保管した後の外観を目視評価した。
環境試験後に粘着シートの変形、発泡又は剥離が生じたものを「×(poor)」、粘着シートの変形、発泡及び剥離のいずれも生じなかったものを「○(good)」と判定した。
【0111】
(3)耐銀腐食性
銀を含む金属材料を備えた導電部材として、銀ナノワイヤーフィルム(C3nano社製Activegrid Film、基材ポリエチレンテレフタレート(厚み50μm)、表面抵抗値50Ω/□、オーバーコート層付、全光線透過率>91%、ヘーズ≦0.9%、b*≦1.3)を準備した。
銀ナノワイヤーフィルムを縦45×横80mmにカットし、銀ペースト(藤倉化成社製ドータイトD-550)を、電極間が50mmとなるように縦方向に約3~5mm巾で塗布して、乾燥させたのち、シートの縦幅9mmとなるように横方向にカットした。この9mm×80mm×5本の銀ペースト電極付銀ナノワイヤーフィルムを、ソーダライムガラス上に平行に並べた。
この上に、50mm巾にカットした透明両面粘着シート1~11の片面剥離フィルムを剥離し、電極間に粘着シートが位置するようにロールで貼合した後、オートクレーブ処理(60℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、剥離フィルム付粘着シート側から、波長365nmの積算光量が2000mJ/cmとなるように高圧水銀ランプにて光を照射し硬化させてサンプルを得た。
【0112】
このサンプルについて、次の(1)(2)何れかの環境下で環境試験を行い、電極間の抵抗値上昇を確認した。
(1)65℃90%RH×300hの湿熱環境(表中の「ΩUP%(湿熱)」)。
(2)UVフェードメーター(500mW/m、BPT63℃)×300hのUV照射環境(表中の「ΩUP%(UV)」)。
そして、上記環境試験の総合評価として、湿熱環境、UV環境ともに抵抗値上昇が10%を超えるか又は断線したものを「×(poor)」と判定し、湿熱環境及びUV環境のいずれかにおいて、抵抗値上昇が10%以下に抑えられたものを「○(good)」と判定し、湿熱環境及びUV環境ともに抵抗値上昇が1%以下に抑えられたものを「◎(very good)」と判定した。
【0113】
【表1】
【0114】
上記実施例、比較例及びこれまで発明が行ってきた試験結果から、カルボキシル基含有モノマーを含まない(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体と、光を受光するとラジカルを発生する光開始剤と、365nmの吸光係数が20mL/g・cm以下の金属腐食防止剤、中でもトリアゾール系化合物の金属腐食防止剤とを含有する光硬化型粘着シートを使用することにより、この粘着シートを、銀を含む金属材料を備えた導電部材に積層した後、光照射して当該粘着シートを硬化させると、光照射した際、当該粘着シート中の金属腐食防止剤で導電部材の銀に保護膜を形成することにより、前記光照射によって光開始剤から発生したラジカルが導電部材の銀と反応するのを抑制することができ、導電部材の腐食を抑制することができることが分かった。
【0115】
また、実施例1~4及び参考例1の透明両面粘着シートは、光硬化型粘着シートの特徴である高段差吸収性と、UV硬化後の高い耐発泡信頼性を維持しながら、耐銀腐食性にも優れるものであり、銀配線や銀メッシュに比べて表面積が大きく腐食しやすい銀ナノワイヤーに対しても、貼合後の環境試験での抵抗値上昇を抑制できるものであった。その中でも、光開始剤に開裂型を使用し、かつ金属腐食防止剤を含んだ実施例2は、極めて優れた耐銀腐食性能を示した。
【0116】
これに対し、比較例1では、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体に酸を含み、かつ金属腐食防止剤を使用していないため、耐銀腐食性に劣るものであった。
また、比較例2及び3では、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体には酸を含有しないものの、金属腐食防止剤を使用しておらず、耐銀腐食性に劣るものであった。
さらに、比較例4では、金属腐食防止剤を使用しているものの、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体には酸を含むため、耐銀腐食を完全には抑制できないものであった。
また、比較例5及び6では、波長365nmにおける吸光係数の大きい金属腐食防止剤を使用しているため、金属腐食防止剤が粘着シートの光硬化を阻害し、後UV硬化後の耐発泡信頼性に劣るものであった。

図1