(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】仮接着層形成用組成物及び仮接着層
(51)【国際特許分類】
C09J 179/08 20060101AFI20221129BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221129BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20221129BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20221129BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C09J179/08 A
C09J11/06
C09J7/35
B32B7/023
B32B27/34
(21)【出願番号】P 2019545599
(86)(22)【出願日】2018-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2018035882
(87)【国際公開番号】W WO2019065819
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2017185788
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葉 鎮嘉
(72)【発明者】
【氏名】江原 和也
(72)【発明者】
【氏名】進藤 和也
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-141317(JP,A)
【文献】特開2014-218394(JP,A)
【文献】特開2014-11179(JP,A)
【文献】特開2003-11308(JP,A)
【文献】特開平09-67558(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129546(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
C08G 73/00 - 73/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体表面に積層された樹脂基板上に電子デバイスを作製する際に、上記基体と上記樹脂基板との間に介在し、上記樹脂基板を上記基体上に固定する仮接着層を形成するための組成物であって、
(A)下記式(P1)で表されるポリアミック酸、(B)下記式(P2)で表されるポリアミック酸、(C)アミノ基又はウレイド基を有するシランカップリング剤、並びに(D)アミド系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒から選ばれる2種以上を含む混合溶媒を含み、
上記基体との剥離力が上記樹脂基板との剥離力よりも高く、かつ上記樹脂基板との剥離力が、上記電子デバイスの作製前で0.1~0.3N/25mmであり、かつ、上記電子デバイスの作製後で0.1~0.3N/25mmである仮接着層を与えることを特徴とする仮接着層形成用組成物。
【化1】
(式中、X
1は、2つのカルボキシ基及びエステル結合を有する2価の芳香族基、又は2つのカルボキシ基を有し、エステル結合を有しない2価の芳香族基を表し、Y
1は、エステル結合を有する2価の芳香族基、又はエステル結合を有しない2価の芳香族基を表し、X
1とY
1の少なくとも一方がエステル結合を有する芳香族基であり、mは自然数を表す。)
【化2】
(式中、X
2は、2つのカルボキシ基及びエーテル結合を有する2価の芳香族基、又は2つのカルボキシ基を有し、エーテル結合を有しない2価の芳香族基を表し、Y
2は、エーテル結合を有する2価の芳香族基、又はエーテル結合を有しない2価の芳香族基を表し、X
2とY
2の少なくとも一方がエーテル結合を有する芳香族基であり、nは自然数を表す。)
【請求項2】
上記X
1が、下記式(1)又は(2)で表される芳香族基である請求項1記載の仮接着層形成用組成物。
【化3】
【請求項3】
上記X
2が、下記式(3)で表される芳香族基である請求項1又は2記載の仮接着層形成用組成物。
【化4】
【請求項4】
上記Y
1が、下記式(4)~(6)のいずれかで表される芳香族基である請求項1~3のいずれか1項記載の仮接着層形成用組成物。
【化5】
【請求項5】
上記Y
2が、下記式(7)又は(8)で表される芳香族基である請求項1~4のいずれか1項記載の仮接着層形成用組成物。
【化6】
【請求項6】
上記(A)成分及び(B)成分のいずれか一方又は両方が、両末端にアミノ基を有するポリアミック酸である請求項1~5のいずれか1項記載の仮接着層形成用組成物。
【請求項7】
上記(A)成分と(B)成分の配合質量比が、(A):(B)=2:8~8:2である請求項1~6のいずれか1項記載の仮接着層形成用組成物。
【請求項8】
上記(C)成分が、アミノプロピルトリメトキシシランであり、含有量が(A)成分と(B)成分の合計質量に対し、5質量%未満である請求項1~7のいずれか1項記載の接着層形成用組成物。
【請求項9】
上記(D)成分が、アミド系溶媒から選ばれる有機溶媒を1種以上含む混合溶媒である請求項1~8のいずれか1項記載の仮接着層形成用組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項記載の仮接着層形成用組成物を用いて形成される仮接着層。
【請求項11】
ガラス転移温度が300℃未満である請求項10記載の仮接着層。
【請求項12】
請求項10又は11記載の仮接着層に、波長450nmの光透過率が80%以上である樹脂層が形成された積層体。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項記載の仮接着層形成用組成物を基体に塗布し、仮接着層を形成する工程、
上記仮接着層上に、波長450nmの光透過率が80%以上である樹脂基板を形成する工程、
上記樹脂基板上に電子デバイスを作製する工程、及び
上記樹脂基板を、0.1~0.3N/25mmの剥離力で剥離する工程
を含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮接着層形成用組成物及び仮接着層に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスには薄型化及び軽量化という特性に加え、曲げることができるという機能を付与することが求められている。このことから、従来の重く脆弱で曲げることができないガラス基板に代わって、軽量なフレキシブルプラスチック基板を用いることが求められる。
【0003】
特に、新世代ディスプレイでは、軽量なフレキシブルプラスチック基板(以下、樹脂基板と表記する)を用いたアクティブマトリクス型フルカラーTFTディスプレイパネルの開発が求められている。また、タッチパネル式ディスプレイは、ディスプレイパネルに組み合わせて使用されるタッチパネルの透明電極や樹脂基板等、フレキシブル化に対応する材料が開発されている。透明電極は、従来使用されていたITOから、PEDOT等の曲げ加工が可能な透明導電性ポリマー、金属ナノワイヤ、及びその混合系など、別の透明電極材料が提案されている(特許文献1~4参照)。
【0004】
一方、タッチパネル式ディスプレイで使用されるフィルムの基材も、ガラスからポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー樹脂及びアクリル樹脂等のプラスチックからなるシートに置き換えられ、フレキシブル性を持たせた透明なタッチスクリーンパネルが開発されている(特許文献5~6)。
【0005】
一般的に、フレキシブルタッチスクリーンパネルは、安定的に生産を行うため、ガラス基板等の支持基体上に接着層を形成し、その上でデバイスを作製した後に、該デバイスを接着層から剥離することで生産される(特許文献7)。この接着層は、上記のようなパネルの製造工程では、剥離してはならない一方、剥離する際は、適度な剥離力を有することが必要とされる。また、基体上でタッチスクリーンパネルを作製した後、剥離させる際、デバイスの製造プロセス前後で剥離力が変化しないことが重要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2012/147235号
【文献】特開2009-283410号公報
【文献】特表2010-507199号公報
【文献】特開2009-205924号公報
【文献】国際公開第2017/002664号
【文献】特開2015-166145号公報
【文献】特開2016-531358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、電子デバイスの製造プロセスにおいて、基体上に形成された樹脂基板が剥がれない程度の適度な接着性、優れた耐熱性及び耐溶剤性を有し、タッチパネルセンサー等の電子デバイスの製造プロセス前後における剥離力の変化が小さく、安定した接着性を発揮する仮接着層を与える仮接着層形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、エステル結合を有するポリアミック酸とエーテル結合を有するポリアミック酸とを組み合わせて使用すると共に、アミノ基又はウレイド基を有するシランカップリング剤、及び所定の有機溶媒を含む混合溶媒を組み合わせた組成物が、基体との優れた接着性、樹脂基板との適度な接着性と適度な剥離性、及び優れた耐熱性を有し、デバイスの製造プロセス前後における剥離力の変化が小さく、安定した接着性を発揮する硬化膜を与え得ることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明は、下記の仮接着層形成用組成物及び仮接着層を提供する。
1. 基体表面に積層された樹脂基板上に電子デバイスを作製する際に、上記基体と上記樹脂基板との間に介在し、上記樹脂基板を上記基体上に固定する仮接着層を形成するための組成物であって、
(A)下記式(P1)で表されるポリアミック酸、(B)下記式(P2)で表されるポリアミック酸、(C)アミノ基又はウレイド基を有するシランカップリング剤、並びに(D)アミド系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒から選ばれる2種以上を含む混合溶媒を含み、
上記基体との剥離力が上記樹脂基板との剥離力よりも高く、かつ上記樹脂基板との剥離力が、上記電子デバイスの作製前で0.1~0.3N/25mmであり、かつ、上記電子デバイスの作製後で0.1~0.3N/25mmである仮接着層を与えることを特徴とする仮接着層形成用組成物。
【化1】
(式中、X
1は、2つのカルボキシ基及びエステル結合を有する2価の芳香族基、又は2つのカルボキシ基を有し、エステル結合を有しない2価の芳香族基を表し、Y
1は、エステル結合を有する2価の芳香族基、又はエステル結合を有しない2価の芳香族基を表し、X
1とY
1の少なくとも一方がエステル結合を有する芳香族基であり、mは自然数を表す。)
【化2】
(式中、X
2は、2つのカルボキシ基及びエーテル結合を有する2価の芳香族基、又は2つのカルボキシ基を有し、エーテル結合を有しない2価の芳香族基を表し、Y
2は、エーテル結合を有する2価の芳香族基、又はエーテル結合を有しない2価の芳香族基を表し、X
2とY
2の少なくとも一方がエーテル結合を有する芳香族基であり、nは自然数を表す。)
2. 上記X
1が、下記式(1)又は(2)で表される芳香族基である1の仮接着層形成用組成物。
【化3】
3. 上記X
2が、下記式(3)で表される芳香族基である1又は2の仮接着層形成用組成物。
【化4】
4. 上記Y
1が、下記式(4)~(6)のいずれかで表される芳香族基である1~3のいずれかの仮接着層形成用組成物。
【化5】
5. 上記Y
2が、下記式(7)又は(8)で表される芳香族基である1~4のいずれかの仮接着層形成用組成物。
【化6】
6. 上記(A)成分及び(B)成分のいずれか一方又は両方が、両末端にアミノ基を有するポリアミック酸である1~5のいずれかの仮接着層形成用組成物。
7. 上記(A)成分と(B)成分の配合質量比が、(A):(B)=2:8~8:2である1~6のいずれかの仮接着層形成用組成物。
8. 上記(C)成分が、アミノプロピルトリメトキシシランであり、含有量が(A)成分と(B)成分の合計質量に対し、5質量%未満である1~7のいずれかの接着層形成用組成物。
9. 上記(D)成分が、アミド系溶媒から選ばれる有機溶媒を1種以上含む混合溶媒である1~8のいずれかの仮接着層形成用組成物。
10. 1~9のいずれかの仮接着層形成用組成物を用いて形成される仮接着層。
11. ガラス転移温度が300℃未満である10の仮接着層。
12. 10又は11の仮接着層に、波長450nmの光透過率が80%以上である樹脂層が形成された積層体。
13. 1~9のいずれかの仮接着層形成用組成物を基体に塗布し、仮接着層を形成する工程、
上記仮接着層上に、波長450nmの光透過率が80%以上である樹脂基板を形成する工程、
上記樹脂基板上に電子デバイスを作製する工程、及び
上記樹脂基板を、0.1~0.3N/25mmの剥離力で剥離する工程
を含む電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の仮接着層形成用組成物を用いることで、基体との優れた接着性、樹脂基板との適度な接着性と適度な剥離性、及び優れた耐熱性を有し、電子デバイスの製造プロセス前後における剥離力の変化が小さく、安定した接着性を発揮する仮接着層を再現性よく得ることできる。また、電子デバイスの製造プロセスにおいて、基体上に形成された樹脂基板や、更にその上に設けられる回路等に損傷を与えることなく、当該回路等とともに当該樹脂基板を当該基体から分離することが可能となる。したがって、本発明の仮接着層形成用組成物は、樹脂基板を備える電子デバイスの製造プロセスの高速化やその歩留り向上等に寄与し得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の仮接着層形成用組成物は、下記(A)~(D)成分を含むものである。
【0012】
本発明において、仮接着層とは、樹脂基板が形成される基体(ガラス基体等)直上に設けられる層であり、上記基体に対して接着力を有しない樹脂基板を形成する際に該基体上に樹脂基板を固定するために設けられる層である。その典型例としては、フレキシブル電子デバイスの製造プロセスにおいて、上記基体と、ポリイミド樹脂やアクリル樹脂等の樹脂からなるフレキシブル電子デバイスの樹脂基板との間に当該樹脂基板を所定のプロセス中において固定するために設けられ、かつ、当該樹脂基板上に電子回路等の形成した後において当該樹脂基板が当該基体から容易に剥離できるようにするために設けられる仮接着層が挙げられる。
【0013】
(A)成分
(A)成分は、下記式(P1)で表されるポリアミック酸である。
【化7】
【0014】
式(P1)において、X1は、2つのカルボキシ基及びエステル結合を有する2価の芳香族基、又は2つのカルボキシ基を有し、エステル結合を有しない2価の芳香族基を表し、Y1は、エステル結合を有する2価の芳香族基、又はエステル結合を有しない2価の芳香族基を表し、X1とY1の少なくとも一方がエステル結合を有する芳香族基である。mは自然数を表すが、2以上の整数が好ましい。
【0015】
上記X1において、2つのカルボキシ基を有する2価の芳香族基としては、ベンゼン環を1~5個含む2価の芳香族環が好ましく、2価のベンゼン環、2価のナフタレン環、2価のビフェニル環がより好ましく、2価のベンゼン環、2価のビフェニル環がより一層好ましい。また、エステル結合及び2つのカルボキシ基を有する2価の芳香族基としては、下記式(1)又は(2)で表される芳香族基が好ましい。
【0016】
【0017】
2つのカルボキシ基を有し、エーテル結合を有しない2価の芳香族基の好ましいものとしては、下記式(3)で表される芳香族基が好ましく、下記式(3’)又は(3’’)で表される芳香族基が好ましい。
【0018】
【0019】
【0020】
上記Y1において、2価の芳香族基としては、ベンゼン環を1~5個含む芳香族基が好ましい。エステル結合を有しない2価の芳香族基としては、2価のベンゼン環及び2価のビフェニル環がより好ましく、下記式(4)及び(5)で表される芳香族基がより好ましい。また、エステル結合を有する2価の芳香族基としては、下記式(6)で表される芳香族基が好ましい。
【0021】
【0022】
上記式(P1)で表されるポリアミック酸は、以下の芳香族テトラカルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分とを反応させることにより得ることができる。
【0023】
[芳香族テトラカルボン酸二無水物成分]
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物成分としては、エステル結合を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物、又はエステル結合を有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物が使用される。
【0024】
上記エステル結合を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物は、その分子内にエステル結合を含むものである。このような芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、複数の炭素数6~20の芳香族環がエステル結合で連結された構造を有するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。上記芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環等が挙げられ、ベンゼン環、ビフェニル環が好ましい。中でも、ポリアミック酸の有機溶媒への溶解性を確保する観点から、3又は4個の芳香族環がエステル結合で連結された構造を有するものが好ましい。
【0025】
本発明において、エステル結合を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0026】
【0027】
上記エステル結合を有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物は、ベンゼン環を1~5個含むものが好ましく、ベンゼン骨格、ナフチル骨格又はビフェニル骨格を含むものがより好ましい。
【0028】
上記エステル結合を有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-2,3,9,10-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-3,4,5,6-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピリデン、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
[芳香族ジアミン成分]
上記芳香族ジアミン成分としては、エステル結合を有する芳香族ジアミン、又はエステル結合を有しない芳香族ジアミンを使用する。
【0030】
上記エステル結合を有する芳香族ジアミンは、その分子内にエステル結合を含むものである。このような芳香族ジアミンとしては、複数の炭素数6~20の芳香族環がエステル結合で連結された構造を有するジアミンが挙げられる。上記芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられる。中でも、ポリアミック酸の有機溶媒への溶解性を確保する観点から、2又は3個の芳香族環が、エステル結合で連結された構造を有するジアミンが好ましい。
【0031】
上記エステル結合を有する芳香族ジアミンの好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0032】
【0033】
上記エステル結合を有しない芳香族ジアミンは、ベンゼン環を1~5個含むものが好ましく、ベンゼン骨格、ナフチル骨格又はビフェニル骨格を含むものがより好ましい。
【0034】
その具体例としては、1,4-ジアミノベンゼン(p-フェニレンジアミン)、1,3-ジアミノベンゼン(m-フェニレンジアミン)、1,2-ジアミノベンゼン(o-フェニレンジアミン)、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,6-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル-p-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン等のベンゼン環を1個含むジアミン;1,2-ナフタレンジアミン、1,3-ナフタレンジアミン、1,4-ナフタレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、1,6-ナフタレンジアミン、1,7-ナフタレンジアミン、1,8-ナフタレンジアミン、2,3-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、4,4’-ビフェニルジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジクロロベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド等のベンゼン環を2個含むジアミン;1,5-ジアミノアントラセン、2,6-ジアミノアントラセン、9,10-ジアミノアントラセン、1,8-ジアミノフェナントレン、2,7-ジアミノフェナントレン、3,6-ジアミノフェナントレン、9,10-ジアミノフェナントレン、1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(3-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン等のベンゼン環を3個含むジアミン等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明では、これらの中でも特にp-フェニレンジアミンを好適に使用することができる。また、これらは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
なお、本発明において、上述したポリアミック酸(P1)を得るために、上記テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の少なくとも一方からエステル結合を有する成分を選択するが、エステル結合を有するテトラカルボン酸二無水物成分を使用することがより好ましい。また、上記テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを反応させることにより得られるポリアミック酸(P1)は、所望する接着性を発揮させる観点から、両末端にアミノ基を有することが好ましい。
【0036】
以上説明した芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸二無水物成分とを反応させることで、(A)成分のポリアミック酸(P1)を得ることができる。
【0037】
[有機溶媒(反応溶媒)]
上記芳香族ジアミン成分及び芳香族テトラカルボン酸二無水物成分の反応に用いる有機溶媒(反応溶媒)は、反応に悪影響を及ぼさない限り特に限定されないが、その具体例としては、m-クレゾール、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-イソプロポキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-sec-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。なお、有機溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
特に、反応に用いる有機溶媒は、ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物並びにポリアミック酸をよく溶解することから、式(S1)で表されるアミド類、(S2)で表されるアミド類及び式(S3)で表されるアミド類から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0039】
【0040】
式中、R1及びR2は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基を表す。R3は、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を表す。aは、自然数を表すが、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0041】
炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がより好ましい。
【0042】
反応温度は、用いる溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定すればよく、通常0~100℃程度であるが、得られるポリアミック酸の溶液中でのイミド化を防いでポリアミック酸単位の高含有量を維持するためには、好ましくは0~70℃程度であり、より好ましくは0~60℃程度であり、より一層好ましくは0~50℃程度である。
【0043】
反応時間は、反応温度や原料物質の反応性に依存するため一概に規定できないが、通常1~100時間程度である。
【0044】
以上説明した方法によって、目的とするポリアミック酸を含む反応溶液を得ることができる。
【0045】
上記ポリアミック酸の重量平均分子量は、5,000~1,000,000が好ましく、10,000~500,000がより好ましく、ハンドリング性の観点から15,000~200,000がより一層好ましい。なお、本発明において重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析による標準ポリスチレン換算で得られる平均分子量である。
【0046】
本発明においては、通常、上記反応溶液をろ過した後、そのろ液をそのまま、又は希釈若しくは濃縮して得られる溶液を、本発明の仮接着層形成用組成物の調製に供することができる。このようにすることで、得られる仮接着層の接着性、剥離性等の悪化の原因となり得る不純物の混入を低減できるだけでなく、効率よく仮接着層形成用組成物を得ることができる。
【0047】
(A)成分の配合量は、組成物中3~20質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。(A)成分の配合量を上記範囲の上限以下とすることで、要求する接着性を得ることができる。また、(A)成分の配合量を上記範囲の下限以上とすることで、樹脂基板に対する適度な接着性と、デバイス作製後における適度な剥離性を得ることができる。
【0048】
(B)成分
(B)成分は、下記式(P2)で表されるポリアミック酸である。
【化15】
【0049】
式(P2)において、X2は、2つのカルボキシ基及びエーテル結合を有する2価の芳香族基、又は2つのカルボキシ基を有し、エーテル結合を有しない2価の芳香族基を表し、Y2は、エーテル結合を有する2価の芳香族基、又はエーテル結合を有しない2価の芳香族基を表し、X2とY2の少なくとも一方がエーテル結合を有する芳香族基である。nは自然数を表すが、2以上の整数が好ましい。
【0050】
上記X2において、エーテル結合及び2つのカルボキシ基を有する2価の芳香族基としては、下記式(3a)又は(3b)で表される芳香族基が好ましく、式(3a’)又は(3b’)で表される芳香族基がより好ましい。
【0051】
【0052】
【0053】
また、2つのカルボキシ基を有し、エーテル結合を有しない2価の芳香族基としては、上記X1で、2つのカルボキシ基を有し、エステル結合を有しない2価の芳香族基として例示したものと同様のものを挙げることができ、下記式(3)で表される芳香族基が好ましく、下記式(3’)又は式(3'’)で表される芳香族基がより好ましい。
【0054】
【0055】
【0056】
上記Y2において、2価の芳香族基としては、ベンゼン環を1~5個含む芳香族基が好ましい。エーテル結合を有しない2価の芳香族基としては、上記Y1でエステル結合を有しない2価の芳香族基として例示したものと同様、2価のベンゼン環及び2価のビフェニル環がより好ましく、下記式(4)及び(5)で表される芳香族基がより好ましい。
【0057】
【0058】
また、エーテル結合を有する2価の芳香族基としては、下記式(7)又は(8)で表される芳香族基が好ましい。
【0059】
【0060】
上記式(P2)で表されるポリアミック酸は、以下の芳香族テトラカルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分とを反応させることにより得ることができる。
【0061】
[芳香族テトラカルボン酸二無水物成分]
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物成分としては、エーテル結合を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物、又はエーテル結合を有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用する。
【0062】
上記エーテル結合を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物は、その分子内にエーテル結合を含むものである。このような芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、複数の炭素数6~20の芳香族環がエーテル結合で連結された構造を有するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。上記芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環等が挙げられ、ベンゼン環、ビフェニル環が好ましい。中でも、ポリアミック酸の有機溶媒への溶解性を確保する観点から、3又は4個の芳香族環がエーテル結合で連結された構造を有するものが好ましい。
【0063】
本発明において、エーテル結合を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0064】
【0065】
上記エーテル結合を有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物は、ベンゼン環を1~5個含むものが好ましく、ベンゼン骨格、ナフチル骨格又はビフェニル骨格を含むものがより好ましい。好ましい具体例としては、上記エステル結合を有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物で例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0066】
[芳香族ジアミン成分]
上記芳香族ジアミン成分としては、エーテル結合を有する芳香族ジアミン、及びエーテル結合を有しない芳香族ジアミンの少なくとも一方を使用する。
【0067】
上記エーテル結合を有する芳香族ジアミンは、その分子内にエーテル結合を含むものである。このような芳香族ジアミンとしては、複数の炭素数6~20の芳香族環がエーテル結合で連結された構造を有するジアミンが挙げられる。上記芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられる。中でも、ポリアミック酸の有機溶媒への溶解性を確保する観点から、2又は3個の芳香族環が、エーテル結合で連結された構造を有するジアミンが好ましい。
【0068】
上記エーテル結合を有する芳香族ジアミンの好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0069】
【0070】
上記エーテル結合を有しない芳香族ジアミンは、ベンゼン環を1~5個含むものが好ましく、ベンゼン骨格、ナフチル骨格又はビフェニル骨格を含むものがより好ましい。好ましい具体例としては、上記エステル結合を有しない芳香族ジアミンで例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0071】
なお、本発明において、上述したポリアミック酸(P2)を得るために、上記テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の少なくとも一方からエーテル結合を有する成分を選択するが、エーテル結合を有するジアミン成分を使用することがより好ましい。なお、本発明において、(B)成分である上記テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを反応させることにより得られるポリアミック酸(P2)は、所望する接着性を発揮させる観点から、両末端にアミノ基を有することが好ましい。更に、本発明では、上記(A)成分及び(B)成分は、いずれか一方が両末端にアミノ基を有するポリアミック酸であることが好ましいが、両成分ともが両末端にアミノ基を有するポリアミック酸であることがより好ましい。
【0072】
以上説明した芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸二無水物成分とを反応させることで、(B)成分のポリアミック酸(P2)を得ることができる。
【0073】
上記芳香族ジアミン成分及び芳香族テトラカルボン酸二無水物成分の反応に使用される有機溶媒(反応溶媒)は、上記で例示したものと同様のものを用いることができる。
【0074】
反応温度は、用いる溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定すればよく、通常0~100℃程度であるが、得られるポリアミック酸の溶液中でのイミド化を防いでポリアミック酸単位の高含有量を維持するためには、好ましくは0~70℃程度であり、より好ましくは0~60℃程度であり、より一層好ましくは0~50℃程度である。
【0075】
反応時間は、反応温度や原料物質の反応性に依存するため一概に規定できないが、通常1~100時間程度である。
【0076】
以上説明した方法によって、目的とするポリアミック酸を含む反応溶液を得ることができる。
【0077】
上記ポリアミック酸の重量平均分子量は、5,000~1,000,000が好ましく、10,000~500,000がより好ましく、ハンドリング性の観点から15,000~200,000がより一層好ましい。なお、本発明において重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析による標準ポリスチレン換算で得られる平均分子量である。
【0078】
本発明においては、通常、上記反応溶液をろ過した後、そのろ液をそのまま、又は希釈若しくは濃縮して得られる溶液を、本発明の仮接着層形成用組成物の調製に供することができる。このようにすることで、得られる仮接着層の接着性、剥離性等の悪化の原因となり得る不純物の混入を低減できるだけでなく、効率よく仮接着層形成用組成物を得ることができる。
【0079】
(B)成分の配合量は、組成物中20~40質量%が好ましく、25~40質量%がより好ましい。(B)成分の配合量を上記範囲の上限以下とすることで、樹脂基板に対する適度な接着性と、デバイス作製後における適度な剥離性を得ることができる。また、(B)成分の配合量を上記範囲の下限以上とすることで、要求する接着性を得ることができる。
【0080】
また、上記(A)成分と(B)成分の配合比率は、質量比で(A):(B)=2:8~8:2であることが好ましく、2:8~7:3がより好ましく、2:8~5:5がより一層好ましい。(A)成分と(B)成分の配合比率を、上記範囲とすることで要求する接着性が発現される。
【0081】
(C)成分
本発明の組成物は、密着性を向上させる観点から、好ましくは、(C)成分としてアミノ基又はウレイド基を有するシランカップリング剤を含む。上記シランカップリング剤の好ましい一例としては、式(C1)で表されるシラン化合物が挙げられる。
【0082】
【0083】
式(C1)中、R11はメチル基又はエチル基を表す。Xは加水分解性基を表す。Yは、アミノ基又はウレイド基を表す。cは0~3の整数である。dは0~3の整数である。
【0084】
Xで表される加水分解性基としては、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数2~4のアルコキシアルコキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。炭素数1~3のアルコキシ基は、直鎖状又は分岐状のものが好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基及びi-プロポキシ基である。また、炭素数2~4のアルコキシアルコキシ基として具体的には、メトキシメトキシ基、2-メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基及び2-エトキシエトキシ基である。
【0085】
上記シランカップリング剤の具体例としては、3-アミノプロピルトリクロロシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。本発明では、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシランが好ましく、3-アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましい。上記シランカップリング剤としては、市販品を使用し得る。
【0086】
(C)成分の配合量は、組成物中0.01~5質量%が好ましく、0.05~3質量%がより好ましい。(C)成分の配合量を上記範囲の上限以下とすることで、良好な保存安定性が得られる。また、(C)成分を上記範囲の下限以上とすることで、要求する接着性を得ることができる。
【0087】
また、(C)成分の配合量は、上記(A)成分と(B)成分の合計質量に対し、5質量%未満であることが好ましい。(C)成分の配合量を上記範囲とすることで、要求する接着性が発現される。
【0088】
(D)成分
(D)成分は、アミド系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒から選ばれる2種以上を含む混合溶媒である。本発明では、これら溶媒の組み合わせに特に制限はなく、上記例示の同じ系の有機溶媒群から複数種類の有機溶媒を組み合わせても、異なる系の有機溶媒群から1種類以上ずつを組み合わせてもよい。本発明においては、塗布性の観点から、アミド系溶媒を1種以上含むことが好ましく、アミド系溶媒とエーテル系溶媒又はアルコール系溶媒との組み合わせがより好ましく、アミド系溶媒とエーテル系溶媒との組み合わせが更に好ましい。
【0089】
アミド系溶媒としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルブタンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-イソプロポキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-sec-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド等が挙げられる。
【0090】
エステル系溶媒としては、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル、乳酸イソアミル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸プロピル、2-ヒドロキシイソ酪酸ブチル、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0091】
エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。
【0092】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒が挙げられる。
【0093】
上記アミド系溶媒と他の系の溶媒とを組み合わせて使用する場合、その配合比率は、質量比でアミド系溶媒:他の系の溶媒=95:5~60:40が好ましく、95:5~70:30がより好ましく、90:10~70:30がより一層好ましい。上記溶媒の配合比率を、上記範囲とすることで塗布性を向上させることができる。
【0094】
本発明の仮接着層形成用組成物の調製方法は任意である。調製方法の好ましい一例としては、上記で説明した方法によって得られた目的とするポリアミック酸を含む反応溶液をろ過する方法が挙げられる。この際、濃度調整等を目的として必要があればろ液を希釈又は濃縮してもよい。このような方法を採用することで、得られる組成物から製造される仮接着層の接着性、剥離性等の悪化の原因となり得る不純物の混入を低減できるだけでなく、効率よく仮接着層形成用組成物を得ることができる。希釈に用いる溶媒としては、特に限定されるものではなく、その具体例としては、上記反応の反応溶媒の具体例と同様のものが挙げられる。希釈に用いる溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0095】
本発明の仮接着層形成用組成物の粘度は、作製する仮接着層の厚み等を勘案して適宜設定するものではあるが、特に0.05~5μm程度の厚さの膜を再現性よく得ることを目的とする場合、通常、25℃で10~10,000mPa・s程度、好ましくは20~5,000mPa・s程度である。
【0096】
ここで、粘度は、市販の液体の粘度測定用粘度計を使用して、例えば、JIS K7117-2に記載の手順を参照して、組成物の温度25℃の条件にて測定することができる。好ましくは、粘度計としては、円錐平板型(コーンプレート型)回転粘度計を使用し、好ましくは同型の粘度計で標準コーンロータとして1°34’×R24を使用して、組成物の温度25℃の条件にて測定することができる。このような回転粘度計としては、例えば、東機産業(株)製TVE-25Lが挙げられる。
【0097】
なお、本発明の仮接着層形成用組成物は、上記(A)~(D)成分の他に、例えば膜強度を向上させるために、架橋剤等を含んでいてもよい。
【0098】
[仮接着層]
以上説明した仮接着層形成用組成物を基体上に塗布した後、通常180~250℃で焼成する工程を含む焼成法にて、基体との優れた接着性、樹脂基板との適度な接着性及び優れた耐熱性を有する仮接着層を得ることができる。
【0099】
加熱時間は、加熱温度によって異なるため一概に規定できないが、通常1分~5時間である。また、上記焼成時の温度は、最高温度が上記範囲となる限り、それ以下の温度で焼成する工程を含んでもよい。
【0100】
本発明における加熱態様の好ましい一例としては、50~150℃で1分間~1時間加熱した後に、そのまま加熱温度を上昇させて180~250℃で5分間~4時間加熱する態様が挙げられる。特に、加熱態様のより好ましい一例としては、50~150℃で1分間~1時間加熱し、200~250℃で5分間~2時間加熱する態様が挙げられる。更に、加熱態様のより好ましい他の一例としては、50~150℃で1分間~2時間加熱した後に、200℃~250℃で5分間~1時間加熱する態様が挙げられる。
【0101】
このような本発明の仮接着層を基体上に形成する場合、仮接着層は基体の一部表面に形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。基体の一部表面に仮接着層を形成する態様としては、基体表面のうち所定の範囲にのみ仮接着層を形成する態様、基体表面全面にドットパターン、ラインアンドスペースパターン等のパターン状に仮接着層を形成する態様等がある。なお、本発明において、基体とは、その表面に本発明の仮接着層形成用組成物が塗られるものであって、フレキシブル電子デバイス等の製造に用いられるものを意味する。
【0102】
基体(基材)としては、例えば、ガラス、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等)、金属(シリコンウエハ等)、木材、紙、スレート等が挙げられるが、特に、本発明の仮接着層がそれに対する十分な接着性を有することから、ガラスが好ましい。なお、基体表面は、単一の材料で構成されていてもよく、2以上の材料で構成されていてもよい。2以上の材料で基体表面が構成される態様としては、基体表面のうちのある範囲はある材料で構成され、その余の表面はその他の材料で構成されている態様、基体表面全体にドットパターン、ラインアンドスペースパターン等のパターン状にある材料がその他の材料中に存在する態様等がある。
【0103】
本発明の仮接着層形成用組成物を基体に塗布する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等が挙げられる。
【0104】
加熱に用いる器具は、例えばホットプレート、オーブン等が挙げられる。加熱雰囲気は、空気下であっても不活性ガス下であってもよく、また、常圧下であっても減圧下であってもよい。
【0105】
仮接着層の厚さは、通常0.01~50μm程度、生産性の観点から好ましくは0.05~20μm程度である。なお、所望の厚さは、加熱前の塗膜の厚さを調整することによって実現する。
【0106】
仮接着層のガラス転移温度Tgは、300℃未満が好ましく、260℃以下がより好ましい。上記ガラス転移温度Tgが300℃未満であることにより、より低い温度での焼成を可能となる。
【0107】
本発明の仮接着層は、基体、特にガラスの基体との優れた接着性、樹脂基板との適度な接着性と適度な剥離性、及び優れた耐熱性を有するとともに、電子デバイスの製造プロセスの前後において剥離力が小さく、安定した接着性を発揮する。それ故、本発明の仮接着層は、フレキシブル電子デバイスの製造プロセスにおいて、当該デバイスの樹脂基板に損傷を与えることなく、当該樹脂基板を、その樹脂基板上に形成された回路等とともに、基体から剥離させるために好適に用いることができる。
【0108】
[樹脂基板の製造方法]
以下、本発明の仮接着層を用いたフレキシブル電子デバイスの製造方法の一例について説明する。まず、本発明の仮接着層形成用組成物を用いて、上述の方法によって、ガラス基体上に仮接着層を形成する。この仮接着層の上に、樹脂基板を形成するための樹脂基板形成用溶液を塗布し、この塗膜を焼成することで、本発明の仮接着層を介して、ガラス基体に固定された樹脂基板を形成する。
【0109】
上記塗膜の焼成温度は、樹脂の種類等に応じて適宜設定されるものであるが、本発明では、この焼成時の最高温度を200~250℃とすることが好ましく、210~250℃とすることがより好ましく、220~240℃とすることが更に好ましい。樹脂基板作製の際の焼成時の最高温度をこの範囲とすることで、下地である仮接着層と基体との接着性や、仮接着層と樹脂基板との適度な接着性及び剥離性をより向上させることができる。この場合も、最高温度が上記範囲となる限り、それ以下の温度で焼成する工程を含んでもよい。
【0110】
樹脂基板は、仮接着層を全て覆うようにして、仮接着層の面積と比較して大きい面積で樹脂基板を形成しても、仮接着層を形成した範囲よりも小さい面積で樹脂基板を形成してもよい。このような樹脂基板としては、アクリルポリマーからなる樹脂基板やシクロオレフィンポリマーからなる樹脂基板、全芳香族系ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾイミダゾールのような、全芳香族系ポリマーを用いた樹脂基板が挙げられる。また、上記ポリマーにシリカゾル、チタニアゾル等が添加されたハイブリッドフィルムであってもよい。また、本発明の仮接着層は、上述した各種基体の中でも特にガラス基体に対して接着性を示さない樹脂基板を使用する場合においてより好適に採用でき、そのような樹脂基板としては、例えば、フッ素原子を含有するポリイミドからなる樹脂基板を例示することができる。上記樹脂基板の形成方法は、常法に従えばよい。また、上記樹脂基板としては、波長450nmの光透過率が80%以上であるものが好ましい。
【0111】
次に、本発明の仮接着層を介して基体に固定された当該樹脂基板の上に、所望の回路を形成し、その後、例えば仮接着層と共に樹脂基板を所定の形状にカットし、この回路とともに樹脂基板を仮接着層から剥離して、樹脂基板と基体とを分離する。この際、基体の一部を仮接着層とともにカットしてもよい。
【0112】
上記基体との剥離力が上記樹脂基板との剥離力よりも高く、かつ上記樹脂基板との剥離力は、上記電子デバイスの作製前で0.1~0.3N/25mmであり、好ましくは0.15~0.3N/25mmであり、かつ上記電子デバイスの作製後で0.1~0.3N/25mmであり、好ましくは0.15~0.3N/25mmであり、より好ましくは0.2~0.3N/25mmである。電子デバイスの作製後における剥離力が、電子デバイスの作製前における剥離力に比較して大きくなりすぎると、最終的に樹脂基板を剥離することができなくなり、小さくなりすぎると、樹脂基板が基体上に安定して固定されず、電子デバイスの作製を安定して行うことができないおそれがある。
【0113】
また、電子デバイスの作製後における剥離力の変化は、樹脂基板を安定的に固定する観点から、電子デバイスの作製前の剥離力に対して±0.1N/25mm未満が好ましく、±0.05N/25mm未満がより好ましい。
【0114】
なお、本発明において、「電子デバイスの作製後」とは、以下の(1)~(3)の工程からなる電子デバイス作製工程(製造プロセス)を実施した後であることを意味するものとする。本発明は、これらの工程を経ても仮接着層の樹脂基板に対する接着力の変化が小さく、安定して樹脂基板を固定することができるものである。
(1)仮接着層及び樹脂基板が形成された基体を3%水酸化カリウム水溶液に5分浸漬させた後、250℃で50分加熱する工程
(2)次に、上記基体を所定のITOエッチング材に5分浸漬させた後、250℃で50分加熱する工程
(3)更に、再度ITOエッチング材に5分浸漬させた後、250℃で50分加熱す工程
【0115】
上記ITOエッチング材としては、一般的には、塩化鉄(III)水溶液30%と塩化水素水12%混合水溶液だが、市販品を使用することができ、例えば、PE-560(清英實業有限公司製)等を挙げることができる。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0117】
[1]化合物の略語
p-PDA:p-フェニレンジアミン
ODA:4.4-ジアミノジフェニルエーテル
TFMB:2,2’-トリフルオロメチルベンジジン
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
TAHQ:p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)
6FDA:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
DMAc:N,N’-ジメチルアセトアミド
APTMS:3-アミノプロピルトリメトキシシラン
【0118】
[2]重量平均分子量及び分子量分布の測定
ポリマーの重量平均分子量(以下Mwと略す)と分子量分布は、日本分光(株)製GPC装置(カラム:Shodex製 KD801及びKD805)を用い、溶出溶媒としてジメチルホルムアミド/LiBr・H2O(29.6mM)/H3PO4(29.6mM)/THF(0.1wt%)を流量1.0mL/分、カラム温度40℃の条件で測定した。なお、Mwは標準ポリスチレン換算値とした。
【0119】
[3]ガラス転移温度Tgの測定
装置:TAインスルツメント製 DMA Q-800
昇温速度:10℃/分
測定温度:25~400℃
【0120】
[4]ポリマーの合成
以下の方法によって、ポリアミック酸を合成した。
なお、得られたポリマー含有反応液からポリマーを単離せず、後述の通りに、反応液を希釈することで、樹脂基板形成用組成物又は仮接着層形成用組成物を調製した。
【0121】
<合成例S1 ポリアミック酸(S1)の合成>
TFMB9.496g(0.02965モル)をDMAc113.3gに溶解し、BPDA5.234g(0.01779モル)と6FDA5.269g(0.01186モル)を添加した後、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。得られたポリマーのMwは37,300、分子量分布2.6であった。
【0122】
<合成例L1 ポリアミック酸(L1)の合成>
p-PDA0.931g(0.00861モル)をNMP35.2gに溶解させた。得られた溶液にTAHQ3.868g(0.00845モル)を加え、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。Mwは45,000、Mw/Mnは2.7であった。
【0123】
<合成例L2 ポリアミック酸(L2)の合成>
ODA1.965g(0.00983モル)をNMP35.2gに溶解させた。得られた溶液にBPDA2.834g(0.00963モル)を加え、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。Mwは35,000、Mw/Mnは2.9であった。
【0124】
<合成例L3 ポリアミック酸(L3)の合成>
TFMB1.965g(0.00650モル)をNMP35.2gに溶解させた。得られた溶液にTAHQ0.298g(0.00065モル)とBPDA1.720g(0.00585モル)を加え、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。Mwは45,000、Mw/Mnは3.9であった。
【0125】
[5]仮接着層形成用組成物(ワニス)の調製
[実施例1-1]
ナスフラスコ中、ポリアミック酸L1 3g及びポリアミック酸L2 7gを23℃で3時間撹拌させた。その後、1%に希釈したAPTMSのNMP溶液1.2gを滴下し、更に、NMP8.43g、BCS4.6gを滴下し、更に24時間撹拌させ、仮接着層形成用組成物Aを得た。
【0126】
[実施例1-2]
1%に希釈したAPTMSのNMP溶液の代わりに、2%に希釈したAPTMSのNMP溶液を使用した以外は、実施例1-1と同様の方法で仮接着層形成用組成物Bを得た。
【0127】
[実施例1-3]
ポリアミック酸L1 3g及びポリアミック酸L2 7gを、ポリアミック酸L1 2g、ポリアミック酸L2 8gに変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で仮接着層形成用組成物Cを得た。
【0128】
[比較例1-1]
ナスフラスコ中、ポリアミック酸L1 3g及びポリアミック酸L2 7gを23℃で3時間撹拌させた。その後、NMP9.63g、BCS4.6gを滴下し、更に24時間撹拌させ、仮接着層形成用組成物aを得た。
【0129】
[比較例1-2]
Primid XL552(大日本塗料(株)製)0.12gを添加した以外は、比較例1-1と同様の方法で仮接着層形成用組成物bを得た。
【0130】
[比較例1-3]
ナスフラスコ中、ポリアミック酸L1 3g及びポリアミック酸L2 7gの代わりにポリアミック酸L3 10g、セロキサイド2021P((株)ダイセル化学製)0.12gを添加した以外は、比較例1-1と同様の方法で仮接着層形成用組成物cを得た。
【0131】
[比較例1-4]
ナスフラスコ中、ポリアミック酸L2 10gを23℃で3時間撹拌させた。その後、5%に希釈したAPTESのNMP溶液1.2gを滴下し、更に、NMP8.43g、BCS4.6gを滴下し、更に24時間撹拌させ、仮接着層形成用組成物dを得た。
【0132】
[6]仮接着層のガラス転移温度Tgの測定
上記仮接着層形成用組成物を硬化して得られる仮接着層のTgは、以下の手順により測定した。
バーコーター(ギャップ:250μm)を用いて、実施例1-1~1-3、比較例1-1及び1-4で得られた仮接着層形成用組成物を、ガラス基体としての100mm×100mmガラス基板の上に塗布した。そして、得られた塗膜を、ホットプレートを用いて120℃で3分間加熱し、その後、オーブンを用いて、240℃で60分間加熱し、ガラス基板上に厚さ約6μmのフィルム(仮接着層)を形成し、フィルム付きガラス基板を得た。その後、得られたフィルム付きガラス基板を、2Lビーカーに満たした純水に浸漬させ、ガラス基板からフィルムを剥離した。そして、得られたフィルムから5mm×70mmの試験片を作製し、DMAにてTgを測定した。結果を表1に示す。
【0133】
[7]仮接着層及び樹脂基板の形成
[実施例2-1]
スピンコータ(条件:回転数3,000rpmで約30秒)を用いて、実施例1-1で得られた仮接着層形成用組成物Aを、ガラス基体としての100mm×100mmガラス基板(以下同様)の上に塗布した。
そして、得られた塗膜を、ホットプレートを用いて120℃で3分間加熱し、その後、オーブンを用いて、240℃で60分間加熱し、ガラス基板上に厚さ約0.1μmの仮接着層を形成し、仮接着層付きガラス基板を得た。なお、昇温の間、ガラス基板をオーブンから取り出すことはせず、オーブン内で加熱した。
【0134】
次に、バーコーター(ギャップ:250μm)を用いて、上記で得られた仮接着層付きガラス基板上の仮接着層(樹脂薄膜)の上に樹脂基板形成用組成物S1を塗布した。そして、得られた塗膜を、ホットプレートを用いて150℃で10分間加熱し、その後、オーブンを用いて、250℃で60分間加熱し、仮接着層上に厚さ約10μmの樹脂基板を形成し、樹脂基板・仮接着層付きガラス基板を得た。また、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製UV-2600)を用いて光透過率を測定した結果、樹脂基板は、450nmで95%以上の透過率を示した。
【0135】
[実施例2-2~2-3]
実施例1-1で得られた仮接着層形成用組成物Aの代わりに、それぞれ実施例1-2~1-3で得られた仮接着層形成用組成物B及びCを用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で仮接着層及び樹脂基板を形成し、仮接着層付きガラス基板及び樹脂基板・仮接着層付きガラス基板を得た。
【0136】
[比較例2-1~2-4]
実施例1-1で得られた仮接着層形成用組成物Aの代わりに、それぞれ比較例1-1~1-4で得られた仮接着層形成用組成物a~dを用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で、仮接着層及び樹脂基板を形成し、仮接着層付きガラス基板及び樹脂基板・仮接着層付きガラス基板を得た。
【0137】
[比較例2-5]
ガラス基板上に仮接着層を形成しないこと以外は、実施例2-1と同様に樹脂基板を形成し、樹脂基板付きガラス基板を得た。
【0138】
[8]剥離性(仮接着性)の評価
[実施例2-1~2-3、比較例2-1~2-5]
上記実施例2-1~2-3及び比較例2-1~2-4で得られた仮接着層付きガラス基板について、仮接着層とガラス基板との剥離性を、樹脂基板・仮接着層付きガラス基板について、仮接着層と樹脂基板との剥離力及び工程安定性を、下記手法にて確認した。また、比較例2-5で得られた樹脂基板付きガラス基板の樹脂基板についても、評価可能な項目について同様の評価を行った。
【0139】
<仮接着層とガラス基板との剥離性評価>
実施例2-1~2-3及び比較例2-1~2-4で得られた仮接着層付きガラス基板上の仮接着層をクロスカット(縦横2mm間隔、以下同様)し、25マスカットを行った。すなわち、このクロスカットにより、2mm四方のマス目を25個形成した。
そして、この25マスカット部分に粘着テープを張り付けて、そのテープを剥がし、以下の基準に基づき、剥離性を評価した。結果を表1に示す。
<判定基準>
5B:0%剥離(剥離なし)
4B:5%未満の剥離
3B:5~15%未満の剥離
2B:15~35%未満の剥離
1B:35~65%未満の剥離
0B:65%~80%未満の剥離
B:80%~95%未満の剥離
A:95%~100%未満の剥離
AA:100%剥離(すべて剥離)
【0140】
<仮接着層と樹脂基板との剥離力評価>
実施例2-1~2-3及び比較例2-1~2-4で得られた樹脂基板・仮接着層付きガラス基板の樹脂基板、並びに比較例2-5で得られた樹脂基板付きガラス基板の樹脂基板を、カッターを用いて25mm×50mmの短冊状にカットした。そして、カットした樹脂基板の先端にセロハンテープ(ニチバンCT-24)を貼り付け、これを試験片とした。この試験片を、オートグラフAG-500N((株)島津製作所製)を用いて剥離角度が90度となるように剥離試験を行い、剥離力を測定した。なお、剥離できないものは、剥離不可とした。結果を表1に示す。
【0141】
<工程安定性>
実施例2-1~2-3、比較例2-1~2-4で得られた樹脂基板・仮接着層付きガラス基板、並びに比較例2-5で得られた樹脂基板付きガラス基板について、下記(1)~(3)の工程からなる製造プロセスを実施し、実施後における樹脂基板の状態を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
(1)3%水酸化カリウム水溶液に5分浸漬させた後、250℃で50分加熱した。
(2)ITOエッチング材PE-560(精英實業有限公司製)に5分浸漬させた後、250℃で50分加熱した。
(3)再度ITOエッチング材に5分浸漬させた後、250℃で50分加熱した。
[判定基準]
○:変化無し
△:一部剥離
×:全面剥離
【0142】
<仮接着層の剥離力変化>
実施例2-1~2-3、比較例2-1~2-4で得られた樹脂基板・仮接着層付きガラス基板、並びに比較例2-5で得られた樹脂基板付きガラス基板の樹脂基板の工程安定性を確認した後、樹脂基板をカッターを用いて25mm×50mmの短冊状にカットした。そして、カットした樹脂基板の先端にセロハンテープを貼り付け、これを試験片とした。この試験片を、オートグラフAG-500Nを用いて剥離角度が90度となるように剥離試験を行い、剥離力を測定し、製造プロセス実施前における剥離力と比較した。
製造プロセス実施前後の剥離力の変化については、下記の基準で評価した。なお、剥離できないものは、剥離不可とした。結果を表1に示す。
[判定基準]
◎:剥離力の変化が±0.05N/25mm未満であり、かつ製造プロセス実施前後における剥離力がいずれも0.2~0.3N/25mmの範囲内
○:剥離力の変化が±0.05N/25mm以上0.1N/25mm未満であり、かつ製造プロセス実施前後における剥離力がいずれも0.2~0.3N/25mmの範囲内
△:剥離力の変化が±0.1N/25mm以上であり、かつ製造プロセス実施前後における剥離力がいずれも0.1~0.3N/25mmの範囲内
□:剥離力の変化が±0.1N/25mm以上であり、かつ製造プロセス実施前後における剥離力のうち少なくとも一方が0.1~0.3N/25mmの範囲外
×:製造プロセス実施中に剥離したため、測定不能
―:まったく剥離せず。
【0143】
【0144】
表1に示される通り、実施例で得られた仮接着層は、基体との優れた接着性及び樹脂基板との適度な接着性と適度な剥離性とを有し、電子デバイスの製造プロセス前後における剥離力の変化が小さく、工程安定性に優れていることが確認された。
一方、比較例については、製造プロセス実施中に樹脂基板が剥離してしまい、工程安定性に劣る(比較例2-1)、樹脂基板の形成初期から剥離することができない(比較例2-2、2-3)、工程安定性は良いが、大きく剥離力が変化して最終的に剥離することができない(比較例2-4)ことが確認された。また、仮接着層を形成せず、実施例で形成した樹脂基板と同様の樹脂基板を基体上に直接形成した比較例2-5では、樹脂基板が基体上に安定して固定されず、工程安定性に劣ることが確認された。