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特許7184152混合イオン交換樹脂の分離塔、およびこれを用いた混合イオン交換樹脂の分離方法
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  • 特許-混合イオン交換樹脂の分離塔、およびこれを用いた混合イオン交換樹脂の分離方法 図1
  • 特許-混合イオン交換樹脂の分離塔、およびこれを用いた混合イオン交換樹脂の分離方法 図2
  • 特許-混合イオン交換樹脂の分離塔、およびこれを用いた混合イオン交換樹脂の分離方法 図3
  • 特許-混合イオン交換樹脂の分離塔、およびこれを用いた混合イオン交換樹脂の分離方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】混合イオン交換樹脂の分離塔、およびこれを用いた混合イオン交換樹脂の分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 49/09 20170101AFI20221129BHJP
   B01J 49/60 20170101ALI20221129BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B01J49/09
B01J49/60
C02F1/42 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021209423
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】宮地 みどり
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-81906(JP,A)
【文献】特開昭55-11089(JP,A)
【文献】特開昭55-124548(JP,A)
【文献】特公昭46-26963(JP,B2)
【文献】国際公開第2012/157448(WO,A1)
【文献】特開2010-42395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 49/00-49/90
C02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂を分離する混合イオン交換樹脂の分離塔であって、
前記2種以上のイオン交換樹脂のうち平均粒径が最も小さいイオン交換樹脂の平均粒径の90%以下の網目のスクリーンを分離塔の上部に設置し、
該分離塔の底部に注水部を有するとともに前記スクリーンの上側に排出部を有する、混合イオン交換樹脂の分離塔。
【請求項2】
前記2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂が、少なくともアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂をそれぞれ1種類以上含む、請求項1に記載の混合イオン交換樹脂の分離塔。
【請求項3】
前記混合イオン交換樹脂の分離塔が上部にアニオン交換樹脂抜出部を有するとともに該アニオン交換樹脂抜出部よりも下方にカチオン交換樹脂抜出部を有する、請求項2に記載の混合イオン交換樹脂の分離塔。
【請求項4】
2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂を分離する混合イオン交換樹脂の分離塔の上部に該2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂のうち平均粒径が最も小さいイオン交換樹脂の平均粒径の90%以下の網目のスクリーンを設置し、該分離塔の底部に注水部を有するとともに前記スクリーンの上側に外部に連通した排出部を有する混合イオン交換樹脂の分離塔に使用済の前記2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂を充填し、
前記注水部より上向流で通水して破損した使用済のイオン交換樹脂を排出部より外部に排出した後、残存する複数の使用済のイオン交換樹脂を分離する、混合イオン交換樹脂の分離方法。
【請求項5】
前記2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂が、少なくともアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂をそれぞれ1種類以上含む、請求項4に記載の混合イオン交換樹脂の分離方法。
【請求項6】
前記平均粒径が最も小さいイオン交換樹脂の平均粒径が50~2000μmである、請求項4又は5に記載の混合イオン交換樹脂の分離方法。
【請求項7】
前記2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂が、ポーラス型イオン交換樹脂である、請求項4~6のいずれか1項に記載の混合イオン交換樹脂の分離方法。
【請求項8】
前記上向流での通水が、早い通水速度で所定時間通水する工程とそれより遅い通水速度で所定時間通水する工程とを1セットとして、その通水を1セット以上繰り返す、請求項4~7のいずれか1項に記載の混合イオン交換樹脂の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造装置などに用いる混床式イオン交換装置などで使用した混合イオン交換樹脂を分離する分離塔、およびこれを用いた混床式イオン交換装置などを構成する混合イオン交換樹脂の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、純水製造装置では原水中の不純物を除去して清浄度を高めているが、イオン性の不純物、すなわちアニオン性の不純物とカチオン性の不純物を除去するためにアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを混合充填した混床式イオン交換装置が汎用的に用いられている。この混床式イオン交換装置では、イオン交換樹脂はイオン交換容量に相当する量のイオンを除去すると、それ以上のイオン性不純物は除去できずに破過する。そこで、ある程度の水量を処理したら、この混床式イオン交換装置からイオン交換樹脂を回収してそれぞれ分離し、カチオン交換樹脂再生塔、アニオン交換樹脂再生塔でそれぞれ硫酸や苛性ソーダなどにより再生して再度混床式イオン交換装置に充填して再利用することが行われている。
【0003】
この混合イオン交換樹脂による処理水質はイオン交換樹脂の再生状態により決定されるが、樹脂の再生状態をより高度に維持するためには、逆再生をできるだけ生じさせない必要がある。逆再生とは、アニオン交換樹脂の混入したカチオン交換樹脂を塩酸や硫酸など酸溶液で再生する際、アニオン交換樹脂がCl形やSO形などに再生され、またカチオン交換樹脂の混入したアニオン交換樹脂を水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液で再生する際、カチオン交換樹脂がNa形などに再生されることである。
【0004】
この逆再生を生じさせないためには、2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂を再生するとき、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とをできるだけ完全に近い状態に分離し、カチオン交換樹脂中へのアニオン交換樹脂の混入、およびアニオン交換樹脂中へのカチオン交換樹脂の混入を極力減少させる必要がある。
【0005】
そこで、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを精度よく分離する方法として、復水脱塩塔内で復水脱塩に使用されたイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合樹脂)をカチオン交換樹脂再生塔内に導入し、下から逆洗水を上向流にて通水することにより、混合状態のイオン交換樹脂を比重差でアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の上下2層に分離し、次いで上層を構成するアニオン交換樹脂を選択的に引き抜き、アニオン交換樹脂再生塔に移送し、アルカリにより再生を行う。そして、カチオン交換樹脂再生塔内に残ったカチオン交換樹脂は、該カチオン交換樹脂再生塔にて酸により再生することが提案されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-181363号公報
【文献】特開2020-75226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、高純度の純水を製造する際に混合イオン交換樹脂を使用した場合に、より高度にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを分離することが要望されているが、特許文献1,2などの従来の分離方法では限界があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、混床式イオン交換装置などで使用した混合イオン交換樹脂分離塔を提供することを目的とする。また、本発明は、混床式イオン交換装置などを構成する混合イオン交換樹脂を高精度で分離することの可能な混合イオン交換樹脂の分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み、本発明は第一に、2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂を分離する混合イオン交換樹脂の分離塔であって、前記2種以上のイオン交換樹脂のうち平均粒径が最も小さいイオン交換樹脂の平均粒径の90%以下の網目のスクリーンを分離塔の上部に設置し、該分離塔の底部に注水部を有するとともに前記スクリーンの上側に排出部を有する、混合イオン交換樹脂の分離塔を提供する(発明1)。
【0010】
かかる発明(発明1)によれば、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂などを混合した混合イオン交換樹脂における各イオン交換樹脂の分離精度を向上させることができる。これは以下のような作用による。すなわち、混合イオン交換樹脂の各イオン交換樹脂を比重分離しても分離精度に限界がある要因について本発明者らが検討した結果、混合イオン交換樹脂を再利用するためには、上向流で通水して比重差による沈降速度の違いを利用して分離するのが一般的であるが、破砕した樹脂が多く含まれる場合、破砕した樹脂は沈降速度が変化するため、必ずしも比重分離できないためであることがわかった。そこで、分離塔の上側に使用する樹脂よりも小さい孔径のスクリーンを設け、分離塔に上向流で通水することにより、破砕した細かな樹脂はスクリーンを抜けるが、通常の樹脂はスクリーンによりとどまるようにすることで、分離塔上部の排出部から破砕したイオン交換樹脂のみを排出することができ、これにより混合樹脂の分離精度を向上させることができる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂が、少なくともアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂をそれぞれ1種類以上含むことが好ましい(発明2)。
【0012】
かかる発明(発明2)によれば、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂との混合樹脂は汎用的に用いられており、両者は比重の相違を利用して分離しやすいので発明1の分離塔を適用するのに好適である。
【0013】
上記発明(発明2)においては、前記混合イオン交換樹脂の分離塔が上部にアニオン交換樹脂抜出部を有するとともに該アニオン交換樹脂抜出部よりも下方にカチオン交換樹脂抜出部を有することが好ましい(発明3)。
【0014】
かかる発明(発明3)によれば、一般にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とでは、アニオン交換樹脂の方が比重は小さいので、破砕した樹脂を除去して比重分離した際にはアニオン交換樹脂は上側にカチオン交換樹脂は下側に沈降する。そこで、の後、上側のアニオン交換樹脂抜出部からアニオン交換樹脂を、下側のカチオン交換樹脂抜出部からカチオン交換樹脂をそれぞれ精度よく取り出すことができる。
【0015】
また、本発明は第二に、2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂を分離する混合イオン交換樹脂の分離塔の上部に該2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂のうち平均粒径が最も小さいイオン交換樹脂の平均粒径の90%以下の網目のスクリーンを設置し、該分離塔の底部に注水部を有するとともに前記スクリーンの上側に外部に連通した排出部を有する混合イオン交換樹脂の分離塔に使用済の前記2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂を充填し、前記注水部より上向流で通水して破損した使用済のイオン交換樹脂を排出部より外部に排出した後、残存する複数の使用済のイオン交換樹脂を分離する、混合イオン交換樹脂の分離方法を提供する(発明4)。
【0016】
かかる発明(発明4)によれば、分離塔の上側に使用する樹脂よりも小さい孔径のスクリーンを設け、上向流で通水することにより、破損していない通常の樹脂はスクリーン下部にとどまり、破砕した細かな樹脂のみがスクリーンを抜けるので、分離塔上部の排出部から破砕した樹脂を排出した後、複数種のイオン交換樹脂を比重分離することことで分離精度を向上させることができる。
【0017】
上記発明(発明4)においては、前記2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂が、少なくともアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂をそれぞれ1種類以上含むことが好ましい(発明5)。
【0018】
かかる発明(発明5)によれば、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂との混合樹脂は汎用的に用いられており、両者は比重の相違を利用して分離しやすいので発明1の分離塔を適用するのに好適である。
【0019】
上記発明(発明4,5)においては、前記平均粒径が最も小さいイオン交換樹脂の平均粒径が50~2000μmであることが好ましい(発明6)。特に上記発明(発明4~6)においては、前記2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂が、ポーラス型イオン交換樹脂であることが好ましい(発明7)。
【0020】
かかる発明(発明6,7)によれば、平均粒径が最も小さいイオン交換樹脂の平均粒径をこのような範囲とすることで、破砕した樹脂を平均粒径90%以下の網目のスクリーンから好適に分離することができる。
【0021】
上記発明(発明4~7)においては、前記上向流での通水が、早い通水速度で所定時間通水する工程とそれより遅い通水速度で所定時間通水する工程とを1セットとして、その通水を1セット以上繰り返すことが好ましい(発明8)。
【0022】
かかる発明(発明8)によれば、混合イオン交換樹脂の分離塔に上向流で通水する際の通水速度に緩急をつけることにより混合イオン交換樹脂の攪拌効果が生じ、この攪拌効果により破砕したイオン交換樹脂が上部に舞い上がるので、破砕した細かな樹脂を分離塔上部の排出部からより確実に効率よく排出することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の混合イオン交換樹脂の分離塔によれば、2種以上のイオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂のうち平均粒径が最も小さいイオン交換樹脂の平均粒径の90%以下の網目のスクリーンを分離塔の上部に設置しているので、破砕した細かな樹脂はスクリーンを抜けるが、通常の樹脂はスクリーン下部にとどまるようにすることで、分離塔上部の排出部から破砕した樹脂のみを排出することができ、これにより混合樹脂の分離精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態による混合イオン交換樹脂の分離塔を示す概略図である。
図2】前記実施形態による混合イオン交換樹脂の分離塔による逆洗工程を示す概略図である。
図3】前記実施形態による混合イオン交換樹脂の分離塔による逆洗工程を示す拡大図である。
図4】比較例1(従来)の混合イオン交換樹脂の分離塔を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の混合イオン交換樹脂の分離塔の一実施形態について添付図面を参照にして詳細に説明する。
【0026】
〔混合イオン交換樹脂の分離塔〕
図1は、本発明の一実施形態による混合イオン交換樹脂の分離塔を示している。図1において、混合イオン交換樹脂の分離塔1は、円筒形の分離塔本体1Aの底部に注水部としての給水管2及び複数の吐出ノズル2Aが設けられていて、頂部には排出部としての排出管3が接続している。この分離塔本体1Aの吐出ノズル2Aの上側には集水板4が配置されているとともに、分離塔本体1Aの上端側にはスクリーン5が配置されている。なお、分離塔1内の上下方向の中間付近にはアニオン交換樹脂抜出部(図示せず)が設けられ、それよりも下方にカチオン交換樹脂抜出部(図示せず)が設けられている。また、分離塔1の底部には注排水口が設けられているとともに、側面上側には使用済みの混合樹脂の充填口や覗き窓などが設けられているが、これらは説明の便宜上省略する。
【0027】
そして、分離塔本体1Aの集水板4とスクリーン5との間の空間には、約40~70容積%を占める程度に使用済の混合イオン交換樹脂が充填される。本実施形態において混合イオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の混合樹脂である。この混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の割合(容積比)は、特に制限はないがアニオン交樹脂:カチオン交換樹脂=30:70~70:30程度である。また、これらアニオン交樹脂及びカチオン交換樹脂の平均粒径は小さい方のイオン交換樹脂で平均粒径が50~2000μm(膨潤時基準)であることが好ましい。さらには、アニオン交樹脂及びカチオン交換樹脂は、ポーラス型イオン交換樹脂であることが好ましい。なお、前述したアニオン交換樹脂抜出部とカチオン交換樹脂抜出部とは、この混合イオン交換樹脂の充填量(容積)と、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の割合と、安全率とに応じてそれぞれの樹脂抜出位置が設定される。
【0028】
上述したような混合イオン交換樹脂の分離塔1において、スクリーン5は、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂のうち平均粒径が小さい方のイオン交換樹脂の平均粒径(膨潤時基準)の90%以下の網目であり、特に70~90%である。スクリーン5の網目が平均粒径の90%を超えると、後述する逆洗工程において、正常なイオン交換樹脂が排出されやすくなる一方、70%より小さいと破砕した樹脂の除去率が十分でなくなる。
【0029】
〔混合イオン交換樹脂の分離方法〕
次に前述したような構成を有する本実施形態の混合イオン交換樹脂の分離塔1を用いた混合イオン交換樹脂の分離方法について説明する。
【0030】
まず、混床式イオン交換装置内に充填されている使用済の混合イオン交換樹脂Rを取り出して、混合イオン交換樹脂の分離塔1に充填口から充填する。そして、分離塔1の底部の注排水口から水(純水)を注入して分離塔1内を水で満たす。
【0031】
次に逆洗工程として、複数の吐出ノズル2Aから水(純水)を吐出して上向流で通水し、使用済みのイオン交換樹脂Rを逆洗する。このとき図2に示すように混合イオン交換樹脂Rは、集水板4とスクリーン5との間の空間の約40~70容積%を占めているので、集水板4とスクリーン5との間の空間全体に拡散する。このとき図3に示すように水の吐出圧により流動床化したアニオン交換樹脂A及びカチオン交換樹脂Cがスクリーン5に向けて流動するが、スクリーン5は、平均粒径が小さい方のイオン交換樹脂の平均粒径(膨潤時基準)の90%以下の網目であるので、正常なイオン交換樹脂はスクリーン5を透過せず、破損して短径が小さくなったイオン交換樹脂のみがスクリーン5を通過して排出管3から排出される。
【0032】
この上向流での逆洗工程の時間は、長い方が破砕したイオン交換樹脂が除去できて好ましいが、長すぎるとかえって作業効率が低下するため、30分~120分程度とするのが好ましい。特に、上述したような逆洗時間において、上向流での逆洗を例えばLV10m/h~20m/h程度の早い通水速度と、例えばLV3m/h~10m/h未満の遅い通水速度とを1セットとして、その通水を1セット、特に2セット以上繰り返すことが好ましい。このように上向流で通水する際の通水速度に緩急をつけることにより、攪拌効果により破砕したイオン交換樹脂が上部に舞い上がるので、破砕した細かな樹脂を分離塔1の上部の排出管3からより確実に効率よく排出することができる。
【0033】
このようにして、逆洗により破砕したイオン交換樹脂を排出したら、静置することで残存する正常なイオン交換樹脂Rは沈降する。このときアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とは比重が異なるので比重分離することができる。一般にカチオン交換樹脂の方が比重は大きいので、アニオン交換樹脂が下側でカチオン交換樹脂が上側に沈降する。なお、逆洗後、底部に設けた注排水口から純水の排出、注入を行って、公知の方法によりイオン交換樹脂の分離工程を別途行ってもよい。そして、分離したアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂抜出部とカチオン交換樹脂抜出部からそれぞれ抜き出して、それぞれの樹脂の再生塔により再生工程を行えばよい。なお、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の分離精度の向上のために安全率を考慮してアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の分離境界から所定の範囲の樹脂は分離せず残存させるのが好ましいが。この残存させたイオン交換樹脂は、取り出して次回のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合樹脂の分離時に利用すればよい。
【0034】
以上、本発明について添付図面を参照にして前記実施形態に基づき説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、前記実施形態においては、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の2種類の樹脂の場合について説明したが、異なるグレードあるいは性状のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を複数種用いた場合にも適用可能である。さらに本発明において、イオン交換樹脂とは、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂に限らず、これらのイオン交換樹脂に触媒金属を担持させた触媒樹脂や、ホウ素選択制吸着樹脂なども含む。また、本発明は、複数種の混合イオン交換樹脂を分離するに際し、事前に破砕したイオン交換樹脂を排除することを特徴とするものであり、その後の分離工程については特に制限はなく、公知の種々の分離方法に適用できることはいうまでもない。
【実施例
【0035】
以下の具体的実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0036】
[実施例1]
図1に示すイオン交換樹脂の分離塔1に、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合樹脂(アニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂=50:50(容積比))を2m充填し、上向流でLV15m/hで1時間通水した。通水停止後、分離したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂をそれぞれ抜き取って他のイオン交換樹脂の混入率を測定した。その結果、アニオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂およびカチオン交換樹脂中のアニオン交換樹脂の混入率はそれぞれ0.01%であった。また、1時間の通水時に分離塔から排水槽に流入した健全な樹脂量を確認した結果、分離塔1からの健全な樹脂の損失割合は0%であった。これらの結果を逆洗条件とともに表1に示す。
【0037】
[実施例2]
図1に示すイオン交換樹脂の分離塔1に、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合樹脂(アニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂=50:50(容積比))を2m充填し、上向流でLV15m/hで15分通水し、その後LV5m/hで15分通水するサイクルを2回繰り返した。通水停止後、分離したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂をそれぞれ抜き取って他のイオン交換樹脂の混入率を測定した。その結果、アニオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂およびカチオン交換樹脂中のアニオン交換樹脂の混入率はそれぞれ0.005%であった。また、1時間の通水時に分離塔1から排水槽に流入した健全な樹脂量を確認した結果、分離塔からの健全な樹脂の損失割合はお0%であった。これらの結果を逆洗条件とともに表1にあわせて示す。
【0038】
[比較例1]
図4に示すようにスクリーン5を有しない混合イオン交換樹脂の分離塔1に、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合樹脂(アニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂=50:50(容積比))を2m充填し、上向流でLV5m/hで1時間通水した。通水停止後、分離したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂をそれぞれ抜き取って混入率を測定した。その結果、アニオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂およびカチオン交換樹脂中のアニオン交換樹脂の混入率はそれぞれ0.1%であった。また、1時間の通水時に分離塔1から排水槽に流入した健全な樹脂量を確認した結果、分離塔からの健全な樹脂の損失割合は0%であった。
【0039】
[比較例2]
図4に示すようにスクリーン5を有しない混合イオン交換樹脂の分離塔1に、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合樹脂(アニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂=50:50(容積比))を2m充填し、上向流でLV15m/hで1時間通水した。通水停止後、分離したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂をそれぞれ抜き取って混入率を測定した。その結果、アニオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂およびカチオン交換樹脂中のアニオン交換樹脂の混入率はそれぞれ0.2%であった。また、1時間の通水時に分離塔から排水槽に流入した健全な樹脂量を確認した結果、分離塔1からの健全な樹脂の損失割合は10%であった
【0040】
【表1】
【符号の説明】
【0041】
1 混合イオン交換樹脂の分離塔1
1A 分離塔本体
2 給水管
2A 吐出ノズル
3 排出管
4 集水板
5 スクリーン
R 混合イオン交換樹脂
A アニオン交換樹脂
C カチオン交換樹脂
【要約】
【課題】 混床式イオン交換装置などのイオン交換樹脂を高精度で分離することの可能なイオン交換樹脂の分離塔を提供する。
【解決手段】 混合イオン交換樹脂の分離塔1は、円筒形の分離塔本体1Aの底部に注水部としての給水管2及び複数の吐出ノズル2Aを有し、頂部には排出部としての排出管3が接続している。この分離塔本体1Aの吐出ノズル2Aの上側には集水板4が配置されているとともに、分離塔本体1Aの上端側にはスクリーン5は配置されている。このスクリーン5は、混合イオン交換樹脂のうち平均粒径が最も小さいイオン交換樹脂の平均粒径の90%以下の網目を有する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4