(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】通信装置及び通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 28/18 20090101AFI20221129BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20221129BHJP
【FI】
H04W28/18
H04W24/02
(21)【出願番号】P 2021515693
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2019017947
(87)【国際公開番号】W WO2020217459
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】工藤 理一
(72)【発明者】
【氏名】井上 武
(72)【発明者】
【氏名】谷口 篤
(72)【発明者】
【氏名】水野 晃平
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-160900(JP,A)
【文献】特開2018-032939(JP,A)
【文献】国際公開第2004/098225(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部通信装置と通信する通信装置であって、
自装置の位置情報を含む装置情報を生成する装置管理部と、
自装置の周辺環境に関する情報である周辺環境情報を収集する周辺環境情報収集部と、
前記外部通信装置と通信を行う通信部と、
あらかじめ学習された前記周辺環境情報と前記装置情報と通信品質と通信制御の設定の間の入出力関係を用い、機械学習によって、前記装置情報及び前記周辺環境情報
に対応する前記通信部の通信品質を予測
し、予測される通信品質に対応する通信制御の設定を出力する通信予測部と、
前記通信予測部の
出力する
通信制御の設定に基づき、
前記通信部を制御する通信制御部と、
を備え
、
前記周辺環境情報は可視光カメラ又は赤外線カメラで撮像されたカメラ映像を含み、
前記通信予測部は、前記周辺環境情報に対応する通信制御の設定を出力する、
通信装置。
【請求項2】
前記通信部の通信品質の評価を行う通信評価部をさらに備え、
前記通信
予測部が
出力した前記通信
制御の設定に対する通信品質を前記通信評価部が評価し、
前記通信評価部で評価された通信品質を用い、前記周辺環境情報と前記装置情報と前記評価された通信品質と
通信制御の設定
との間で、通信品質に関する指標を高めるよう強化学習を行う、
請求項
1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信予測部は、前記周辺環境情報及び前記装置情報を用いて、通信品質の低下が予測される通信品質低下イベントを検出し、
前記通信制御部は、前記通信品質低下イベントを入力されると、
(i)前記外部通信装置とは異なる装置との通信確立を行うプロセスを開始するか、又は
(ii)前記外部通信装置との間の通信で用いている変調方式、符号化率及び空間多重数の少なくとも一つを、単位時間当たりの通信ビット数が減るように変更するか、又は
(iii)前記通信部が通信を行える範囲である通信エリア内に設置した信号反射板を制御して電波伝搬環境を変更するか、又は
(iv)通信品質の低下が予測される周波数を、通信品質の変化が少ないと予測される周波数に変更するか、又は
(iv)OSI参照モデルの第3層以上の高いレイヤーにおいて通信速度を、より低い通信速度に対応するモードに変更する、
請求項
1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信予測部は、前記周辺環境情報及び前記装置情報を用いて、通信品質の向上が予測される通信品質向上イベントを検出し、
前記通信制御部は、前記通信品質向上イベントを入力されると、
(i)通信品質が向上することで用いることができるより高い周波数のチャネルを用いたデータ通信の通信確立を行うプロセスを開始するか、又は
(ii)前記外部通信装置との間の通信で用いている変調方式、符号化率及び空間多重数の少なくとも一つを、単位時間当たりの通信ビット数が増えるように変更するか、又は
(iv)OSI(Open System Interconnection)参照モデルの第3層以上の高いレイヤーにおいて規定される通信速度をより高い通信速度に対応するモードに変更する、
請求項
1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記装置情報は、自装置の位置情報、自装置の速度情報、前記通信部のアンテナの位置、向き又は指向性の情報、前記通信部の通信情報、自装置の電源情報、自装置の固有情報、自装置の構成物の位置情報又は速度情報、のうち少なくとも一つを含む、
請求項
1に記載の通信装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれかに記載の通信装置と、
前記外部通信装置と、
を備える通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信を利用するシステム、通信を利用する装置の通信の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なデバイスがインターネットにつながるIoT(Internet of things)の実現が進んでおり、自動車やドローン、建設機械車両など様々な機器が無線により接続されつつある。無線通信規格としても標準化規格IEEE802.11で規定される無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、LTEや5Gによるセルラー通信、IoT向けのLPWA(Low Power Wide Area) 通信、車通信に用いられるETC(Electronic Toll Collection System)、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)、ARIB-STD-T109など、サポートする無線規格も発展しており、今後の普及が期待されている。
【0003】
しかしながら、様々な用途で無線通信が使われる一方、サービスによっては、通信品質の要求条件を、無線通信が必ずしも満たすことができないことが問題となっている。例えば、IEEE802.11adやセルラー通信の5Gでは、ミリメータ帯の高い周波数を用いるため、無線通信を行う送受の間の遮蔽物によるブロッキングが大きな問題となる。それ以外の通信であっても、ブロッキングは通信品質に影響を及ぼす。ミリ波だけでなく、それ以外の周波数の無線通信であっても、遮蔽物によるブロッキングや、反射物の動きによる伝搬環境の変化は通信品質に影響を及ぼす。それ以外にも、反射物が動くことによって生じるドップラーシフトも通信に影響を与えるものとして知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】IEEE Std 802.11ac(TM)-2013, IEEE Standard for Information technology -Telecommunications and information exchange between systems Local and metropolitan area networks - Specific requirements, Part 11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications, December 2013
【文献】Ghosh, Amitava, et al. “Millimeter-wave enhanced local area systems: A high-data-rate approach for future wireless networks.” IEEE Journal on Selected Areas in Communications 32.6 (2014): 1152-1163.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車、ドローン、建設機械車両、ロボット、その他のデバイスに無線通信機能が搭載しており、さらにそれらの通信に対し、スループット、遅延、継続性、安定性、その他の通信品質に対する要求条件が存在する場合、周辺環境の変化による通信品質が、当該デバイスによるサービスやシステムに対して大きな影響を及ぼすことがあるという課題がある。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、本開示は、通信品質の変動に対応可能な通信システム及び通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る通信システムは、無線通信機能を有するデバイスが、周辺環境を取得するカメラ、センサー、その他の装置から得られる情報や、通信によって通知される周辺のオブジェクトの位置情報からなる周辺環境情報を用いて将来の通信品質を予測し、相手装置との間の通信設定を将来の通信品質に応じて制御することとした。
【0008】
本開示に係る通信システムは、本開示に係る通信装置と、前記通信装置と通信する外部通信装置と、を備える。
【0009】
本開示に係る通信装置は、
外部通信装置と通信する通信装置であって、
自装置の位置情報を含む装置情報を生成する装置管理部と、
自装置の周辺環境に関する情報である周辺環境情報を収集する周辺環境情報収集部と、
前記外部通信装置と通信を行う通信部と、
前記装置情報及び前記周辺環境情報を用いて、前記通信部の通信品質を予測する通信予測部と、
前記通信予測部の予測する通信品質に基づき、前記通信部の通信設定を制御する通信制御部と、
を備える。
【0010】
本開示では、前記通信予測部は、あらかじめ学習された前記周辺環境情報と前記装置情報と通信品質の間の入出力関係を用い、前記周辺環境情報と前記装置情報から、機械学習を用いて、前記通信部の通信品質を出力してもよい。
【0011】
本開示では、前記通信予測部は、あらかじめ学習された前記周辺環境情報と前記装置情報と通信品質と通信制御の方法の間の入出力関係を用い、前記周辺環境情報と前記装置情報から、機械学習を用いて、前記外部通信装置との通信制御の設定を出力してもよい。
【0012】
本開示では、
前記通信部の通信品質の評価を行う通信評価部をさらに備え、
前記通信制御部が選択した前記通信部の通信設定に対する通信品質を前記通信評価部が評価し、
前記通信評価部で評価された通信品質を用い、前記周辺環境情報と前記装置情報と前記評価された通信品質と、選択した通信設定の間で、通信品質に関する指標を高めるよう強化学習を行ってもよい。
【0013】
本開示では、
前記通信予測部は、前記周辺環境情報及び前記装置情報を用いて、通信品質の低下が予測される通信品質低下イベントを検出し、
前記通信制御部は、前記通信品質低下イベントを入力されると、
(i)前記外部通信装置とは異なる装置との通信確立を行うプロセスを開始するか、又は
(ii)前記外部通信装置との間の通信で用いている変調方式、符号化率及び空間多重数の少なくとも一つを、単位時間当たりの通信ビット数が減るように変更するか、又は
(iii)前記通信部が通信を行える範囲である通信エリア内に設置した信号反射板を制御して電波伝搬環境を変更するか、又は
(iv)通信品質の低下が予測される周波数を、通信品質の変化が少ないと予測される周波数に変更する、又は
(iv)OSI(Open System Interconnection)参照モデルの第3層以上の高いレイヤーにおいて通信速度を、より低い通信速度に対応するモードに変更してもよい。
【0014】
本開示では、
前記通信予測部は、前記周辺環境情報及び前記装置情報を用いて、通信品質の向上が予測される通信品質向上イベントを検出し、
前記通信制御部は、前記通信品質向上イベントを入力されると、
(i)通信品質が向上することで用いることができるより高い周波数のチャネルを用いたデータ通信の通信確立を行うプロセスを開始するか、又は
(ii)前記外部通信装置との間の通信で用いている変調方式、符号化率及び空間多重数の少なくとも一つを、単位時間当たりの通信ビット数が増えるように変更するか、又は
(iv)OSI参照モデルの第3層以上の高いレイヤーにおいて規定される通信速度をより高い通信速度に対応するモードに変更してもよい。
【0015】
本開示では、前記装置情報は、自装置の位置情報、自装置の速度情報、前記通信部のアンテナの位置、向き又は指向性の情報、前記通信部の通信情報、自装置の電源情報、自装置の固有情報、自装置の構成物の位置情報又は速度情報、のうち少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0016】
なお、上記各開示は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の装置は、無線通信の品質が劣化することを事前に予測して通信の品質を保つことができるよう、他の装置との間で行っている通信設定を変更することができるようになるため、通信品質の低下の影響を抑えたり無くしたりすることができるようになる。または、高い品質の無線通信が用いることができることを事前に予測して、即時に多くのビットの送信を行うことで、物理層などの下位のレイヤーの変動に合わせて上位のレイヤーで伝送するビットレートを向上させたり低下させたりすることで、下位のレイヤーで伝送可能なビットレートを最大限利用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の通信システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本開示の通信システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】第1の通信制御方法の一例を示すフロー図である。
【
図4】第2の通信制御方法の一例を示すフロー図である。
【
図5】第3の通信制御方法のステップ構成を示すブロック図である。
【
図6】本開示の通信システムの効果を説明する図である。
【
図7】本開示の通信システムの効果を説明する図である。
【
図8】本開示の通信システムでの実験を説明する図である。
【
図9】本開示の通信システムでの実験を説明する図である。
【
図10】本開示に係る通信システムでの実験結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0020】
実施形態における通信システムは、
外部通信装置(無線基地局、または端末、またはその他の通信装置を有する他端末)と通信可能な一つ以上の通信部と、
通信の制御を行う装置管理部と、
前記通信部の通信品質を評価する通信評価部と、
カメラやセンサーなどにより周辺環境情報を取得する周辺環境情報収集部と、
前記周辺環境情報を用いて通信品質の予測に関する情報を出力する通信予測部と、
これらの入出力を行う装置ネットワーク部と、
予測された通信品質に基づき動作・運用・通信などを制御する通信制御部と、
を備える通信装置と、
外部通信装置と、を備える。
【0021】
通信部は一つ以上具備することが可能であり、IEEE802.11で規定される無線LAN、Wigig、IEEE802.11pや、ITS用通信規格、LTEや5Gなどのセルラー通信、LPWA(Low Power Wide Area)などの無線通信や、音波、電気、光による通信を用いることができる。以下、通信部の数をNとする。ただし、Nは1以上の正数である。
【0022】
本開示は、カメラ・センサーなどの周辺環境情報収集装置により得られた周辺環境情報を通信装置(無線基地局または端末)に用い、無線基地局と端末との間で通信における、上り回線または下り回線、または端末間の回線の、スループット、遅延、継続性、安定性、およびそれらの変動に関する情報を予測し、通信を制御することで、通信品質の改善、またはサービスにとって致命的な通信品質低下を避けたり、逆に通信品質の向上を事前に予測し、物理層での伝送可能なビット量の増加に対応して、伝送するビット量を適切に向上させたり、ISO参照モデルにおける第3層以上の高いレイヤーで伝送するビット量を増減させ、より効率的に無線通信を利用することができる。
【0023】
図1は、第1の実施形態における通信システムの構成例を示すブロック図である。この実施形態において、通信装置は例えばWi-Fiやセルラー通信におけるところの基地局と端末における端末に該当する。通信システムは、通信を行う通信装置1と、外部通信装置2を備える。
図1では、理解が容易になるよう、システムが1台の外部通信装置2を備える例を示すが、本開示のシステムは、2以上の(Mは整数)外部通信装置2を備えていてもよい。
【0024】
通信装置1は、
通信装置内の機能ブロックで入出力を行う装置ネットワーク部1-0と、
通信装置と外部通信装置との間の通信品質を評価する通信評価部1-1と、
通信装置、通信装置の構成物および通信装置の通信の制御を行い、装置情報を生成する装置管理部1-2と、
通信装置の周辺環境情報を可視光カメラ、赤外線カメラ、電磁波センサー、光センサー、音波センサーなどで収集する周辺環境情報収集部1-3と、
外部通信装置2と通信する通信部1-4と、
通信予測部1-6の出力結果に基づき、通信方法を選択する通信制御部1-5と、
周辺環境情報及び装置情報を用いて通信品質を予測し、予測した通信品質に基づいて通信制御部1-5に指示を行う通信予測部1-6と、
を備える。
通信部1-4は、通信部1-4-1~1-4-N(Nは1以上の整数)を備える。
【0025】
外部通信装置2は、通信装置1の通信部1-4-1~1-4-Nとそれぞれ通信を行う外部通信部2-4-1~2-4-N、およびそれとつながるネットワークIF(interface)2-0を備える。
【0026】
ここで、装置管理部1-2の生成する装置情報は、通信装置1に関する任意の情報であり、通信装置1又は通信装置1の構成物の、位置、速度、向き、姿勢、ID、状態又は制御のうち一つ以上を含む。通信装置1が基地局に備わる場合は基地局に関する情報、通信装置1が端末に備わる場合は端末に関する情報であるが、通信相手(端末の際には通信を行う基地局か端末、基地局の場合には通信を行う端末)の位置、速度、向き、姿勢、ID、状態または制御に関する状態などからなる装置情報を含んでもよい。装置情報は、通信部1-4に備わるアンテナの取り付け位置、速度、向き、ID、状態、制御をさらに含んでいてもよい。
【0027】
周辺環境情報収集部1-3における周辺環境情報は、通信装置1の周囲の環境の情報を取得可能な任意の情報であり、例えば、可視光カメラ、赤外線カメラ、電磁波センサー、光センサー、音波センサーなどの任意のセンサで検知された情報、および通信によって通知された周辺のオブジェクトの位置/速度情報を含む。
【0028】
通信制御部1-5において選択する通信方法は、通信装置1に備わる任意の通信方法であり、例えば、変調方式、符号化率、周波数、チャネル、帯域幅、リソースブロック、送信タイミング、通信バッファ、優先度、多重数、が例示できる。
【0029】
通信品質の予測は、周辺環境情報及び装置情報を入力データに用いて、通信品質を出力データとして、機械学習を用いて入出力関係を学習することで行う。機械学習のアルゴリズムは任意であり、例えば、サポートベクターマシンや多層パーセプトロン、k近傍法、ランダムフォレストなどの機械学習アルゴリズム、RNN(Recurent Neural Network)、CNN(Convolutional Neural Network)、LSTM(Long Short Term Memory)、などのディープラーニングによる学習、オンライン学習が例示できる。
【0030】
周辺環境情報及び装置情報に対する機械学習において、周辺環境情報を車や人などのオブジェクトの位置や速度などの情報に変換したうえで、通信品質や通信品質に対しての戦略について学習することもできる。ここで予測される通信品質は、通信予測部1-6に入力する信号源の情報から任意の時間だけ先の通信品質である。任意の時間は、周辺環境情報を取得してから通信部1-4の制御を通信制御部1-5が行うまでに必要な時間を経過後の任意の時間である。出力データに、タイミングの情報含まれていてもよい。例えば、いつどのような通信品質になることが予測され、いつどのような通信制御の設定を行うのか、を出力データとして出力してもよい。
【0031】
この学習は、通信装置1が実際に通信を行いながら、実環境で行うこともできるし、他の装置や、学習用に特別に用意された他の装置で取得されたデータを用いて行うこともできるし、現実世界の実環境にできるだけ近い環境を模擬したシミュレーション空間において、学習を行うことができる。学習を通信予測部1-6が行うこともできるし、前記シミュレーション空間において行い、得られた学習結果を通信予測部1-6で用いることもできる。また、シミュレーション空間や類似の外の端末で学習された入出力関係を転移学習として用いることもできる。
【0032】
通信予測部1-6は、前記予め学習された入出力関係を用いて、入力された周辺環境情報と装置情報から、通信品質の予測または通信品質の予測に伴い実施される通信制御の設定を出力してもよい。通信制御の設定とは、通信の種類や冗長回線数や冗長回線の種別やその通信モード、通信相手、通信の変調方式、符号化率、周波数、チャネルの選択、帯域幅、リソースブロックの選択、送信タイミング、通信バッファ、時間や周波数や空間における通信の多重数、およびそれら条件の優先度などの通信方法に対する選択や戦略である。
【0033】
このように、通信予測部1-6から通信制御部1-5へは、予測された通信品質を出力してもよいし、通信制御の設定を出力してもよい。通信予測部1-6が通信品質を出力する場合、通信制御部1-5は通信品質に対して選択する通信制御の設定を予め決めておき、通信予測部1-6からの入力信号から通信を制御する。例えば、通信品質が低下することやその程度が通信予測部1-6から知らされると、変調方式や符号化率を下げてビットレートを低下させたり、低下させるよう通知信号を送ったりして、パケット誤りや再送が生じるのを防いだり、通信品質が変化する周波数やチャネル、リソースブロックを用いている装置を、影響を受けにくい周波数チャネルに変更して通信を行ったり、することができる。または、周辺環境情報から、通信に用いる周波数における電波の電波伝搬環境を推測し、空間的に多重を行う同時送信ストリーム数を増減させることもできる。
【0034】
通信予測部1-6において、通信制御部1-5で取るべき通信制御の設定を直接決定する場合には、通信の種類、冗長回線数、通信相手、通信の変調方式、符号化率、周波数、チャネル、帯域幅、リソースブロック、送信タイミング、通信バッファ、時間や周波数や空間における通信の多重数、ネットワーク経路、メタマテリアルや金属を用いた反射板制御、およびそれら設定の優先度などの通信方法に対して、よりよい設定となるように学習して得られた入出力関係を用いて選択した設定を通信制御部1-5へ出力することもできる。この際、通信品質に関する情報を指標として強化学習を行い、あらかじめ定めた報酬や指標を最大化するように通信制御を学習させることもできる。このとき、通信制御部1-5が実施した通信制御の設定について、通信評価部1-1が結果を判定し、当該戦略の成否を判定したり、当該設定に対する評価に応じた報酬を決定し、通信予測部1-6の強化学習に用いたりすることができる。
【0035】
学習および通信品質として推定を行う対象を制限するため、通信品質に関係のある特定イベントのみを通信予測部1-6が判定するように予測や学習を行うこともできる。例えば、通信品質があらかじめ定めた条件を満たす場合のみを通信予測部1-6が予測するように学習を行い、当該イベントの際に、通信制御部1-6は通信方式の選択を実施することもできる。
【0036】
特定の条件を満たす場合とは、例えば通信品質が予め定めた条件を下回る低品質なものとなる通信品質低下イベントの条件を用いることができる。これは、このような条件において、利用者のユーザ体感や通信を用いたアプリケーションに致命的な問題を生じさせるためである。
【0037】
または、通信品質向上イベントとして、逆に通信品質が高くなる条件を用いることができる。これは、特に高い周波数など、利用できる条件に限定がある無線アクセスを用いる場合に、利用できるタイミングや条件をあらかじめ予測することで、物理層の伝送可能なビットレートの変動に合わせて変調方式や符号化率や空間多重数などを変更したり、より高い周波数チャネルの利用を開始したりすることで、効率的に無線リソースを利用することができる。
【0038】
通信品質低下イベントとしては、あらかじめ定めた通信品質の指標があらかじめ定めた条件を満たしたときとしたり、機械学習の識別により、周辺環境情報または装置情報の変化による通信品質低下とカテゴライズされた事象として定義できる。通信品質向上イベントでは、同様にあらかじめ定めた通信品質の指標があらかじめ定めた条件を満たしたり、機械学習の識別により、周辺環境情報または装置情報の変化による通信品質向上とカテゴライズされた事象として定義できる。ここで、複数のパラメータから抽出される特徴量とは、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator)低下と単位時間あたりビット数の低下が同時に生じている場合、などがあげられる。
【0039】
ここで、通信品質の指標は、時間当たりのビット数、時間と周波数あたりのビット数、パケットロス、パケットロス率、RSSI低下、RSRQ(Reference Signal Received Quality)低下、パケット送信レート、これらのパラメータが平常時からどれだけ変化したか、アプリケーションの問題発生、および、これら複数のパラメータから抽出される特徴量が挙げられる。
【0040】
通信品質低下イベントを入力されると、通信制御部1-5は、例えば、以下の処理を実行する。
・外部通信装置2とは異なる装置との通信確立を行うプロセスを開始する。
・外部通信装置2との間の通信で用いている変調方式、符号化率及び空間多重数の少なくとも一つを、単位時間当たりの通信ビット数が減るように変更する。
・通信部1-4が通信を行える範囲である通信エリア内に設置した信号反射板を制御して電波伝搬環境を変更する。
通信品質の低下が予測される周波数を、通信品質の変化が少ないと予測される周波数に変更する。
・OSI(Open System Interconnection)参照モデルの第3層以上の高いレイヤーにおいて通信速度を、より低い通信速度に対応するモードに変更する。
【0041】
通信品質向上イベントを入力されると、通信制御部1-5は、例えば、以下の処理を実行する。
・通信品質が向上することで用いることができるより高い周波数のチャネルを用いたデータ通信の通信確立を行うプロセスを開始する。
・外部通信装置2との間の通信で用いている変調方式、符号化率及び空間多重数の少なくとも一つを、単位時間当たりの通信ビット数が増えるように変更する。
・OSI参照モデルの第3層以上の高いレイヤーにおいて規定される通信速度をより高い通信速度に対応するモードに変更する。
【0042】
図2は、第2の実施形態における通信システムの構成例を示すブロック図である。この実施形態において、通信装置1は、例えばWi-Fiやセルラー通信におけるところの基地局と端末における基地局、または端末間通信における端末に該当する。第2の実施形態の通信システムは、通信を行う通信装置1と、外部通信装置2を備える。
図2では、理解が容易になるよう、システムが1台の外部通信装置2を備える例を示すが、本開示のシステムは、2以上の外部通信装置2を備えていてもよい。
【0043】
通信装置1は、
通信装置1内の機能ブロックで入出力を行う装置ネットワーク部1-0と、
通信装置1と外部通信装置2との間の通信品質を評価する通信評価部1-1と、
通信装置1、通信装置1の構成物および通信装置1の通信の制御を行い、装置情報を生成する装置管理部1-2と、
通信装置1の周辺環境情報を可視光カメラ、赤外線カメラ、電磁波センサー、光センサー、音波センサーなどで収集する周辺環境情報収集部1-3と、
外部通信装置2と通信する通信部1-4と、
通信予測部1-6の出力結果に基づき、通信方法を選択する通信制御部1-5と、
周辺環境情報及び装置情報を用いて未来の通信品質を予測し、予測した通信品質に基づいて通信制御部1-5に指示を行う通信予測部1-6と、を備える。
通信部1-4は、通信部1-4-1~1-4-N(Nは1以上の整数)を備える。
【0044】
外部通信装置2は、通信装置1の通信部1-4とそれぞれ通信を行う外部通信部2-4-1~2-4-Mを備える。ここで、Mは1以上の整数である。
【0045】
ここで、装置管理部1-2の生成する装置情報、周辺環境情報収集部1-3における周辺環境情報、通信制御部1-5において選択する通信方法、周辺環境情報と装置情報を用いた通信品質の予測については、通信システムの第1の実施形態において述べたとおりである。
【0046】
周辺環境情報と装置情報を用いて、通信品質との間の関係を学習するため、通信予測部1-6は、入力される情報の特徴量を予め定め、サポートベクターマシンや多層パーセプトロン、k近傍法、ランダムフォレストなどの機械学習アルゴリズムで学習を行ったり、ディープラーニングなどのニューラルネットワークによる学習や、オンライン学習を行ったりすることができる。例えば、周辺環境情報に対して前述の機械学習アルゴリズムにおいて、車や人などのオブジェクトの位置や速度などの情報に変換したうえで、通信品質や通信品質に対しての戦略について学習することもできる。この学習は、通信装置が実際に通信を行いながら、実環境で行うこともできるし、他の装置や、学習用に特別に用意された他の装置で取得されたデータを用いて行うこともできるし、現実世界の実環境にできるだけ近い環境を模擬したシミュレーション空間において、学習を行うことができる。学習を通信予測部1-6が行うこともできるし、シミュレーション空間において行い、得られた学習結果を通信予測部1-6で用いることもできる。
【0047】
通信予測部1-6から通信制御部1-5へは、予測された通信品質を出力してもよいし、変調方式、符号化率、周波数、チャネル、帯域幅、リソースブロック、送信タイミング、通信バッファ、優先度、多重数、スケジューリング、要求遅延、ネットワーク経路、メタマテリアルや金属を用いた反射板制御、などの通信制御の設定を出力してもよい。通信予測部1-6が通信品質を出力する場合、通信制御部1-5は通信品質に対して選択する通信制御の設定を予め決めておき、通信予測部1-6の入力信号から通信設定を決定する。例えば、ある周波数における通信品質が低下することが通信予測部1-6から知らされると、変調方式や符号化率を下げてビットレートを低下し、パケット誤りや再送が生じるのを防いだり、周辺環境情報により得られた結果に影響を受けやすい周波数やチャネル、リソースブロックを用いている通信装置を、影響を受けにくい周波数チャネルに異動させたり、通信を行っている外部通信部2-4-1~2-4-Mのスケジューリング方法を変更し、通信品質が低下する周波数リソースの利用優先度を下げたり、他の基地局との通信にハンドオーバーさせたり、することができる。または、周辺環境情報から、通信に用いる周波数における電波のマルチパス環境を推測し、空間的に多重を行う同時送信ストリーム数を増減させることもできる。
【0048】
通信予測部1-6が通信制御の設定を出力する場合には、変調方式、符号化率、周波数、チャネル、帯域幅、リソースブロック、送信タイミング、通信バッファ、優先度、多重数、スケジューリング、要求遅延、ネットワーク経路、メタマテリアルや金属を用いた反射板制御、などの通信方法に対して、よりよい設定となるように学習して得られた入出力関係を用いて選択した設定を通信制御部1-5へ出力することもできる。この際、通信品質に関する情報を指標として強化学習を行い、あらかじめ定めた報酬や指標を最大化するように通信制御を学習させることもできる。
【0049】
このとき、通信制御部1-5が実施した通信制御の設定について、通信評価部1-1が通信制御の結果得られた通信品質を判定し、通信評価部1-1の評価結果を教師データに用い、当該戦略の成否を判定したり、当該設定に対する評価に応じた報酬を決定し、通信予測部1-6の強化学習に用いたりすることができる。ここで、評価は、入出力関係の適用範囲の分類、予測精度、又は入力パラメータの重要度を判定可能な任意の評価である。評価結果は、例えば通信品質の予測精度である。評価は、1秒ごとなど、予め定められた周期で行うことが好ましい。
【0050】
図3は、第1の通信制御方法の一例を示すフロー図である。通信品質の予測のため、周辺環境情報収集部1-3は周辺環境情報を、装置管理部1-2は装置情報を生成し(S101)、通信予測部1-6は通信品質を予測する(S112)。通信制御部1-5は、通信予測部1-6の予測結果に基づき、前記変調方式、符号化率、周波数、チャネル、帯域幅、リソースブロック、送信タイミング、通信バッファ、優先度、多重数、スケジューリング、要求遅延、ネットワーク経路、メタマテリアルや金属を用いた反射板制御方法などの通信方法を選択して実施する(S113)。
【0051】
ステップS113により、予測された通信品質に対し、通信品質の改善、通信料の削減、致命的な通信品質の低下を避けるため、または、通信品質の向上を利用するための通信方法が選択される。通信品質が低くなる場合には、送信されるビット数を下げることで、パケット誤りや再送により到達ビット数が低下することを防ぐ。通信品質が向上する場合には、送信されるビット数を上げたり、一時的に利用可能となる周波数チャネルを用いることで、効率的に無線リソースを活用する。通信料の削減は、携帯電話回線などライセンス帯を用いた通信を、通信品質がある閾値を下回る場合のみと定義し、最低限の頻度で通信回線料が高い無線アクセスを用いることで、コストを削減できる。
【0052】
図4は、第2の通信制御方法の一例を示すフロー図である。周辺環境情報収集部1-3は周辺環境情報を、装置管理部1-2は装置情報を生成し(S101)、通信予測部1-6は周辺環境情報及び装置情報に対する通信制御の設定が学習された入出力関係を用い、入力された周辺環境情報と装置情報から、通信制御の設定を決定する(S122)。通信制御部1-5は、通信予測部1-6から入力される設定に基づき、通信に関する制御を実施する(S123)。
【0053】
図5は、第3の通信制御方法を示すフロー図である。
通信品質の予測のため、周辺環境情報収集部1-3は周辺環境情報を、装置管理部1-2は装置情報を生成する(S101)。
通信予測部1-6は、周辺環境情報及び装置情報を入力とし、通信制御の設定を出力とし、通信品質に関する指標を達成することを報酬として、強化学習を実施する(S132)。通信予測部1-6は、強化学習の結果に基づき、予め定めた報酬や価値を最大化するように、通信制御の設定として変調方式、符号化率、周波数、チャネル、帯域幅、リソースブロック、送信タイミング、通信バッファ、優先度、多重数、スケジューリング、要求遅延、ネットワーク経路、メタマテリアルや金属を用いた反射板制御方法、を決定して通信制御部1-5へ出力し、通信制御部1-5は入力された設定に基づき通信に関する制御を実施する(S133)。
【0054】
また、さらに通信制御部1-5の通信制御の実施に対し、その効果を通信評価部1-1が評価してもよい(S134)。この場合、通信評価部1-1は、成否や報酬情報を生成し、通信予測部1-6にフィードバックする。これにより、通信予測部1-6において、よりよい戦略がとれるよう学習することができる。
【0055】
図6は、交差点において大型車両による通信遮蔽が生じる場合の図を表す。車両C1に通信装置1が備わり、通信基地局200が外部通信装置2として機能する。通信基地局200と車C1が無線で通信しており、通信予測部1-6は、当該交差点において大型の車両が左折している際に、スループット低下が生じることをすでに学習している。この効果は必ずしも伝搬路の遮蔽が原因ではなく、交差点内の複雑な伝搬状態の変化により生じる。通信装置1は、車両C1に搭載されたカメラ映像から大型車両B1が前方から接近し左折を始めたことを周辺環境情報として取得し、自身の装置情報として、車両位置、速度、向きを取得し、通信部1-4の通信品質に影響が出る可能性があることを通信予測部1-6において予測する。この結果を受け、通信制御部1-5は、以下の処理を行う。
【0056】
・通信部1-4の変調方式及び符号化率などを下げることで単位時間当たりビット量を下げる
・通信基地局200と通信している周波数を下げて遮蔽に強い通信を用いる。
・通信基地局200以外の基地局との通信を開始する。
・他の車両などの通信装置との通信、および他の通信装置を利用した中継通信を開始する。
【0057】
図7は交差点において大型車両による通信遮蔽が生じる場合の図を表す。通信基地局200が通信装置1として機能し、車両C1に外部通信装置2が備わる。通信基地局200が本開示による通信制御を実施しており、当該交差点において大型の車両が左折している際に、当該交差点内でスループット低下が生じることをすでに学習している。この効果は必ずしも伝搬路の遮蔽が原因ではなく、交差点内の複雑な伝搬状態の変化により生じる。通信装置1は、通信基地局200に搭載されたカメラ映像から大型車両B1が左折を始めたこと、及び車両C1及びC2の位置、速度、向きを周辺環境情報収集部1-3により取得し、自身の装置情報として、位置情報や当該車両C1及びC2に対して用いているアンテナ装置のセクタ番号(基地局が搭載している指向性アンテナで構成されるセクタが、交差点側のものを使っているか、セクタ番号から判断できる)を用い、車装置の通信部1-4の通信品質に影響が出る可能性があることを通信予測部1-6において予測する。この結果を受け、通信制御部1-5は、以下の処理を行う。
【0058】
・通信部1-4の変調方式及び符号化率などを下げることで、車両C1との単位時間当たりビット量を下げる。
・ISO参照モデルにおける第3層以上の上位のレイヤーにおいて、ビットレートを下げる。(映像の圧縮率の向上によるデータレート制限など)
・通信基地局200と通信している車両C1の外部通信装置2で利用している周波数を下げ、遮蔽に強い周波数を用いる。
・車両C1の外部通信装置2に、通信基地局200以外の通信基地局との通信を開始させる。
・車両C2などの他の通信装置との通信、および他の通信装置を利用した中継通信を開始させる。
・通信基地局200が具備するメタマテリアルなどで構成される反射板を制御し、外部通信装置2との通信品質を向上させる。
【0059】
図6と
図7において、本開示による装置制御の例を示したが、通信装置1の通信部1-4が平常時には、アンライセンス帯を用いたビットコストが非常に安いかタダの通信を用い、前述の通信品質低下が生じると予測した場合のみ、ライセンス帯などビットコストのかかる管理された通信を開始することで、利用者の通信コストを改善する効果も期待できる。この場合、ライセンス帯における通信の同期や認証など、実際に通信を開始するのに必要な時間をTとすると、通信品質低下を予測するターゲットとなる時間をTまたはT+ΔTとして設定することができる。
【0060】
図8は、本開示の効果を確認するために行った実験の図である。道路を挟んで無線LANの基地局と端末を設置し、2台のカメラ映像を用いて未来の通信品質を予測した。基地局に通信装置1が備わり、端末が外部通信装置2として機能する。ここで、無線LANは5GHz帯のチャネルを用い、通信品質は、20MHz当たりのスループットに対し、過去30秒間の平均で割った規格化スループットを用いた。通信品質は1秒ごとに評価される。カメラは上部を向いたカメラ#1と下部を向いたカメラ#2を用いた。
【0061】
ここで、カメラ映像は15FPSで取得され、X軸上のサイズ、Y軸上のサイズ、オブジェクトの中心位置を抽出した。通信品質を評価する周期(1秒)の間に、15個のオブジェクト情報が得られるため、ここで、15個の位置情報とサイズ情報を平均化し、サイズと位置のX軸とY軸に対する変化量を移動速度として抽出した。実際の環境でカメラ#1で撮影されたカメラ映像と車両の認識の様子を
図9に示す。ここで理解のために、外部通信装置2が存在する場所も星印で図中に示した。この周辺環境では、乗用車が通っても、通信基地局と端末との通信路は遮蔽されないが、バスが通過する場合には当該通信路は遮蔽される。
【0062】
カメラ#1とカメラ#2から取得する車(乗用車)、バス、歩行者、の情報と現状の通信品質、および現状の通信で得られている信号電力を用い、1秒後の未来の通信品質を予測する。ここでは、通信予測のためにランダムフォレスト学習を用いた。
図12に1秒後の通信品質を予測した結果を示す。
図12では、予測した通信品質Qpと実測した通信品質Qmを比較している。決定木を500としたランダムフォレスト学習を用い、3時間分のデータを用いk-fold cross validation法により、データを5分割し、4つのデータセットでトレーニングした結果を用いて、残りの1つのデータセットに対し通信品質を予測した。この結果は端末のそばを車やバスが行き来しているタイミングのデータのみを抽出しており、前述のように乗用車に対し通信品質に影響がない場合も含めての結果を示している。通信品質の低下に着目すると、通信品質の低下を予測できていることが確認できる。
【0063】
ここで得られた結果は、信号電力の低下や、車両に対して反射して受信する電磁波のドップラー効果によるチャネルの変動により、基地局と端末の間で用いている変調方式・符号化率・空間多重数が適切ではなくなり、パケットロスが生じ、スループットが低下していることを表している。
図12の結果から、周辺環境情報を用い、通信品質が予測できているため、この影響を最小化するように本開示により通信を制御する。つまり、以下のような通信制御が実施できる。
【0064】
方法1:変調方式・符号化率・空間多重数を伝送するビット数が低下するように変更し、パケット誤りが生じないように予めビットレートを低下させる。
方法2:通信品質低下のタイミングの前に、同じ通信方式で、QoS制御による優先接続を実施したり、他の通信基地局や中継装置との接続を行い、回線を多重化するか、回線を切り替える。
方法3:通信品質低下のタイミングの前に、セルラー通信など他の回線を用いた通信を確立し、通信品質低下時に回線を多重化するか、回線を切り替える。
方法4:通信装置に別途搭載したメタマテリアルや反射板など電波条件を改善する付属物を制御し、通信品質低下の影響を軽減する。
上記の通信制御は、単一の手段を用いてもよいし、環境や条件に対して適応的に用いることもできるし、強化学習により、効果的な戦略を学習してもよい。
【0065】
上述した実施形態における通信装置(端末または基地局)をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、各通信装置が有する構成要素それぞれを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した構成要素の一部を実現するためのものであってもよく、更に前述した構成要素をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0066】
以上、この開示の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この開示の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0067】
[付記]
以下は、本開示の概要をまとめたものである。
カメラ・センサーなどにより取得できる装置の周辺環境情報、および、装置の位置情報/向き/姿勢/ID/状態/装置の構成物の制御/装置の制御の情報のうち一つ以上からなる装置情報を用い、未来の通信品質を推定し、あらかじめ定めた品質を満たした、より良い品質となるための、通信制御を実施することができる。通信制御部でとりうるオプション(変調方式の変更、誤り訂正方法や符号化率の変更、周波数チャネルの変更、周波数帯域の変更、通信方式の方法)について、通信品質を指標として強化学習により最適な方策を学習し、周辺環境情報の入力から、強化学習により習得した戦略により通信を制御することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
外部の通信装置と通信する装置において、周辺環境情報を収集することで、通信品質と相関の高い通信以外の情報を取得し、通信に変化が生じる前に、通信方法を選択・変更・開始することで、通信品質を改善したり、要求を満たさない通信品質となることを避けることができる。
【符号の説明】
【0069】
1:装置
1-0:装置NW部
1-1:通信評価部
1-2:装置管理部
1-3:周辺環境情報収集部
1-4:通信部
1-5:通信制御部
1-6:通信予測部
2:外部通信装置
2-0:ネットワークインタフェース
2-4-1、2-4-N:外部通信部