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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】端末及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/00 20090101AFI20221129BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20221129BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20221129BHJP
【FI】
H04W24/00
G08G1/09 V
H04W4/44
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021515694
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2019017948
(87)【国際公開番号】W WO2020217460
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】工藤 理一
(72)【発明者】
【氏名】井上 武
(72)【発明者】
【氏名】谷口 篤
(72)【発明者】
【氏名】水野 晃平
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-034635(JP,A)
【文献】特開2018-032939(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077621(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
G08G 1/00-1/16
G05D 1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部通信装置と通信する端末であって、
自装置の位置情報を含む端末情報を生成する端末管理部と、
自装置の周辺環境に関する情報である周辺環境情報を収集する周辺環境情報収集部と、
前記外部通信装置と通信を行う通信部と、
あらかじめ学習された前記周辺環境情報と端末情報と通信品質と端末制御情報の間の入出力関係を用い、機械学習によって、前記端末情報及び前記周辺環境情報に対応する前記通信部の通信品質を予測し、予測される前記通信部の通信品質に対応する端末制御情報を出力する通信予測部と、
前記通信予測部の出力する端末制御情報に基づき、自装置の制御を行う端末制御部と、
を備え
前記周辺環境情報が、可視光カメラ又は赤外線カメラで撮像されたカメラ映像を含み、
前記通信予測部は、前記周辺環境情報に対応する端末の制御情報を出力する、
端末。
【請求項2】
予め通信品質の複数の状態に対して取りうる端末の制御ルールを示した制御テーブルをさらに備え、
前記端末制御部は、予測された通信品質に対し制御テーブルから対応する制御ルールを呼び出し、呼び出した新たな制御ルールに基づいて端末の制御を行う、
請求項に記載の端末。
【請求項3】
前記制御ルールは、通信品質に対応する状態に対し、前記端末の最大移動速度、前記端末の最大回転速度、前記端末の移動可能経路、前記端末の移動可能エリア、前記端末の経路変更、前記端末の構成物の動作範囲、最大動作速度、最大回転速度、最大トルクの少なくともいずれかを含む前記端末の構成物の制御パラメータを設定する、
請求項に記載の端末。
【請求項4】
前記通信部の通信品質の評価を行う通信評価部をさらに備え、
前記通信予測部は、端末制御情報に対する前記通信評価部の評価結果を教師データに含めて用い、
強化学習により通信品質の評価結果を改善する、又は評価結果があらかじめ定めた条件を満たす端末制御情報を前記端末制御部に出力する、
請求項に記載の端末。
【請求項5】
前記通信予測部は、前記周辺環境情報及び前記端末情報を用いて、通信品質の低下が予測される通信品質低下イベントを検出し、
前記端末制御部は、前記通信品質低下イベントを入力されると、端末の動き、速度、加速度、向き、位置若しくは消費電力、又は、端末の制御下にある構成物の動き、速度、加速度、向き若しくは位置、の少なくともいずれかについて、前記通信予測部が判定した通信品質低下を緩和するような制御を行う、
請求項に記載の端末。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載の端末と、
前記外部通信装置と、
を備える通信システム。
【請求項7】
前記端末と通信ネットワークで接続され、前記端末制御情報を生成する外部オペレータをさらに備え、
前記通信予測部は、前記通信部を介して前記端末制御情報を入力信号として用い、
前記通信予測部から出力される前記通信部の通信品質が、あらかじめ定めた制御情報に対して定義される通信品質の条件を満たさない場合に、警告信号を前記通信予測部で生成し、前記外部オペレータへ出力する、
請求項に記載の通信システム。
【請求項8】
前記端末と通信ネットワークで接続され、前記端末制御情報を生成する外部オペレータをさらに備え、
前記通信予測部は、前記通信部を介して前記端末制御情報を入力信号として用い、
前記通信予測部から出力される前記通信部の通信品質が、あらかじめ定めた端末制御情報に対して定義される通信品質の条件を満たさない場合に、予測される通信品質を満たす条件での代替の端末制御情報を新たに生成し、前記端末制御部へ入力する、
請求項に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信を利用するシステム、通信を利用する端末の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なデバイスがインターネットにつながるIoT(Internet of things)の実現が進んでおり、自動車やドローン、建設機械車両など様々な機器が無線により接続されつつある。無線通信規格としても標準化規格IEEE802.11で規定される無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、LTEや5Gによるセルラー通信、IoT向けのLPWA(Low Power Wide Area) 通信、車通信に用いられるETC(Electronic Toll Collection System)、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)、ARIB-STD-T109など、サポートする無線規格も発展しており、今後の普及が期待されている。
【0003】
しかしながら、様々な用途で無線通信が使われる一方、サービスによっては、通信品質の要求条件を、無線通信が必ずしも満たすことができないことが問題となっている。例えば、IEEE802.11adやセルラー通信の5Gでは、ミリメータ帯の高い周波数を用いるため、無線通信を行う送受の間の遮蔽物によるブロッキングが大きな問題となる。それ以外の通信であっても、ブロッキングは通信品質に影響を及ぼす。ミリ波だけでなく、それ以外の周波数の無線通信であっても、遮蔽物によるブロッキングや、反射物の動きによる伝搬環境の変化は通信品質に影響を及ぼす。それ以外にも、反射物が動くことによって生じるドップラーシフトも通信に影響を与えるものとして知られている。
【0004】
一方、通信と制御の関連も深くなっている。例えば、遠隔で機器を管理する無人自動走行システム、ドローン制御、ロボット制御、など遠隔から高精度や高速で運行できる機械を制御する場合には、高い通信品質が求められる。いまだ明確なルールはないが、例えば、通信品質に対応して制限速度が設けられる場合には、通信品質の改善がすなわち機械制御の効率性に直結する。従来のように機械の制御を最適化するだけでなく、通信品質を最適化しながら制御を行うことが求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】IEEE Std 802.11ac(TM)-2013, IEEE Standard for Information technology -Telecommunications and information exchange between systems Local and metropolitan area networks - Specific requirements, Part 11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications, December 2013
【文献】Ghosh, Amitava, et al. “Millimeter-wave enhanced local area systems: A high-data-rate approach for future wireless networks.” IEEE Journal on Selected Areas in Communications 32.6 (2014): 1152-1163.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車、ドローン、建設機械車両、ロボット、その他のデバイスに無線通信機能が搭載しており、さらにそれらの通信に対し、スループット、遅延、継続性、安定性、その他の通信品質に対する要求条件が存在する場合、周辺環境の変化による通信品質が、当該デバイスによるサービスやシステムに対して大きな影響を及ぼすことがあるという課題がある。
【0007】
そこで、上記事情に鑑み、本開示は、通信品質の変動に対応可能な通信システム及び端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る通信システムは、無線通信機能を有するデバイスが、周辺環境を取得するカメラ、センサー、その他の装置から得られる情報や、通信によって通知される周辺のオブジェクトの位置情報からなる周辺環境情報を用いて将来の通信品質を予測し、自デバイスの制御や制御のルールを将来の通信品質に応じて決定することとした。
【0009】
本開示に係る通信システムは、本開示に係る端末と、前記端末と通信する外部通信装置と、を備える。
【0010】
本開示に係る端末は、
外部通信装置と通信する端末であって、
自装置の位置情報を含む端末情報を生成する端末管理部、
自装置の周辺環境に関する情報である周辺環境情報を収集する周辺環境情報収集部と、
前記外部通信装置と通信を行う通信部と、
前記端末情報及び前記周辺環境情報を用いて、前記通信部の通信品質を予測する通信予測部と、
前記通信予測部の予測する通信品質に基づき、自装置の制御を行う端末制御部と、
を備える。
【0011】
本開示では、前記通信予測部は、あらかじめ学習された前記周辺環境情報と前記端末情報と前記通信部の通信品質の間の入出力関係を用い、前記周辺環境情報と前記端末情報から、機械学習を用いて、前記通信部の通信品質を出力してもよい。
【0012】
本開示では、予め通信品質の複数の状態に対して取りうる端末の制御ルールを示した制御テーブルをさらに備え、
前記端末制御部は、予測された通信品質に対し制御テーブルから対応する制御ルールを呼び出し、呼び出した新たな制御ルールに基づいて端末の制御を行ってもよい。
【0013】
本開示では、前記制御ルールは、通信品質に対応する状態に対し、前記端末の最大移動速度、前記端末の最大回転速度、前記端末の移動可能経路、前記端末の移動可能エリア、前記端末の経路変更、前記端末の構成物の動作範囲、最大動作速度、最大回転速度、最大トルクの少なくともいずれかを含む前記端末の構成物の制御パラメータを設定したものであってもよい。
【0014】
本開示では、前記通信予測部は、あらかじめ学習された前記周辺環境情報と端末情報と通信品質と端末制御の方法の間の入出力関係を用い、前記周辺環境情報と前記端末情報から、機械学習を用いて、前記外部通信装置との間の通信品質、または、通信品質に対応する端末の制御情報を前記端末制御部に出力してもよい。
【0015】
本開示では、前記通信部の通信品質の評価を行う通信評価部をさらに備え、
前記通信予測部は、端末の制御に対する前記通信評価部の評価結果を教師データに含めて用い、
強化学習により通信品質の評価結果を改善する、又は評価結果があらかじめ定めた条件を満たす制御情報を前記端末制御部に出力してもよい。
【0016】
本開示では、前記通信予測部は、前記周辺環境情報及び前記端末情報を用いて、通信品質の低下が予測される通信品質低下イベントを検出し、
前記端末制御部は、前記通信品質低下イベントを入力されると、端末の動き、速度、加速度、向き、位置若しくは消費電力、又は、端末の制御下にある構成物の動き、速度、加速度、向き若しくは位置、の少なくともいずれかについて、前記通信予測部が判定した通信品質低下を緩和するような制御を行ってもよい。
【0017】
本開示では、
前記端末と通信ネットワークで接続され、前記端末の前記制御情報を生成する外部オペレータをさらに備え、
前記通信予測部は、前記通信部を介して前記制御情報を入力信号として用い、
前記通信予測部から出力される前記通信部の通信品質が、あらかじめ定めた制御情報に対して定義される通信品質の条件を満たさない場合に、警告信号を前記通信予測部で生成し、前記外部オペレータへ出力してもよい。
【0018】
本開示では、
前記端末と通信ネットワークで接続され、前記端末の前記制御情報を生成する外部オペレータをさらに備え、
前記通信予測部は、前記通信部を介して前記制御情報を入力信号として用い、
前記通信予測部から出力される前記通信部の通信品質が、あらかじめ定めた制御情報に対して定義される通信品質の条件を満たさない場合に、予測される通信品質を満たす条件での代替の制御情報を新たに生成し、前記外部オペレータから入力された制御情報を破棄してもよい。
【0019】
なお、上記各開示は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、無線通信の品質が劣化することを事前に予測することで、通信品質に対応した端末の物理的な制御ルールを選択したり、通信品質を改善するような端末の物理的な制御を実施し、通信品質を改善することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の通信システムの構成例を示すブロック図である。
図2】本開示の通信システムの効果を説明する図である。
図3】本開示の通信システムの効果を説明する図である。
図4】通信品質に対する制御ルールの一例である。
図5】第1の通信制御方法の一例を示すフロー図である。
図6】第2の通信制御方法の一例を示すフロー図である。
図7】第3の通信制御方法の一例を示すフロー図である。
図8】本開示の通信システムでの実験を説明する図である。
図9】本開示の通信システムでの実験を説明する図である。
図10】本開示の通信システムでの実験を説明する図である。
図11】本開示に係る通信システムでの実験結果を説明する図である。
図12】本開示に係る通信システムでの実験結果を説明する図である。
図13】本開示に係る通信システムでの実験結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0023】
実施形態における通信システムは、
外部通信装置と通信可能な一つ以上の通信部と、
前記通信部の通信品質を評価する通信評価部と、
カメラやセンサーによる検出や、通信を介した周辺のオブジェクトの位置情報などにより周辺環境情報を取得する周辺環境情報収集部と、
前記周辺環境情報を用いて未来の通信品質を予測する通信予測部と、
これらの入出力を行う端末ネットワーク部と、
予測された通信品質に基づき端末の物理的な動作・運用を制御する端末制御部と、
を備える端末と、
外部通信装置と、を備える。
本開示の外部通信装置は、無線基地局およびその他の通信装置を有する他端末を含む。
【0024】
通信部は一つ以上具備することが可能であり、IEEE802.11で規定される無線LAN、Wigig、IEEE802.11pや、ITS用通信規格、LTEや5Gなどのセルラー通信、LPWA(Low Power Wide Area)などの無線通信や、音波、電気、光による通信を用いることができる。以下、通信部の数をNとする。ここで、Nは1以上の正数である。周辺環境の変化による通信品質の変化は、具体的には伝搬環境の変化や電波の遮蔽や開放により生じる。電波の遮蔽や電波伝搬条件の変化は、車両、ドローン、建設物、建設機械車両、ロボット、など金属で構成しうるあらゆる構造物により生じ、端末そのものの遮蔽により通信品質に影響が出ることが考えられる。
【0025】
本開示は、カメラ・センサーおよび周辺オブジェクトの位置や状態を通信により収集する周辺環境情報収集装置により得られた周辺環境情報を用い、あらかじめ学習した結果を用い、端末の制御、運用、制御ルール、を適切に選択し、無線基地局と端末との間で通信における、上り回線または下り回線、または端末間で行われる端末間通信における、スループット、遅延、継続性、安定性、およびそれらの変動を改善したり、通信品質の低下を避けたり、通信品質の低下によって生じる危険な制御を避けることができる。
【0026】
図1は、第1の実施形態における通信システムの構成例を示すブロック図である。通信システムは、通信利用を行う端末1と、端末1と無線により通信可能な外部通信装置2を備える。
端末1は、
端末1内の機能ブロックで入出力を行う端末ネットワーク部1-0と、
端末情報を管理する端末管理部1-2と、
通信予測部1-6からの制御情報に基づいて端末1の制御を行う端末制御部1-5と、
端末1の周辺環境情報をカメラやセンサーなどで収集する周辺環境情報収集部1-3と、
外部通信装置2と通信する通信部1-4と、
通信部1-4の通信を評価する通信評価部1-1と、
端末1の制御に関する方針・計画・ルールを決める通信予測部1-6と、
を備える。
通信部1-4は、通信部1-4-1~1-4-Nを備える。
【0027】
外部通信装置2は、端末1の通信部1-4-1~1-4-Nとそれぞれ通信を行う外部通信部2-1~2-Nを備える。
【0028】
また、本開示の通信システムは、後述するように、端末1に学習部1-7を具備したり、外部ネットワーク2-0を介して外部通信装置2と接続される、通信評価部2-1、学習部2-7または外部オペレータ2-8を具備してもよい。
【0029】
端末管理部1-2の管理する端末情報は、端末1に関する任意の情報であり、端末1又は端末1の構成物の、位置、速度、向き、姿勢、ID、状態又は制御のうち一つ以上を含む。端末1の構成物は、例えば、通信部1-4に備わるアンテナである。
【0030】
周辺環境情報収集部1-3の収集する周辺環境情報は、端末1の周囲の環境の情報を取得可能な任意の情報であり、例えば、可視光カメラ、赤外線カメラ、電磁波センサー、光センサー、音波センサーなどの任意のセンサで検知された情報か、通信部1-4を介して収集した周辺のオブジェクトの位置や速度および状態情報を含む。
【0031】
通信予測部1-6は、周辺環境情報及び端末情報に基づいて通信品質を予測し、通信品質又は端末1の制御情報を出力する。通信予測部1-6は、周辺環境情報及び端末情報を入力データとし、通信品質または制御情報を出力データとして、機械学習を用いて入出力関係を予め学習した結果を利用する。入出力関係の学習は、端末1に具備された学習部1-7、または外部NW2-0に接続された学習部2-7において行われる。学習においては、通信評価部1-1又は2-1での評価結果を教師データに用い、強化学習を行うことが好ましい。強化学習には通信評価部1-1又は2-1から出力されるデータの外に、端末1の制御の効率性や作業時間や消費電力など、通信以外の教師データを用いてもよい。評価結果は、例えば通信品質の予測精度である。機械学習のアルゴリズムは任意であり、例えば、サポートベクターマシンや多層パーセプトロン、k近傍法、ランダムフォレストなどの機械学習アルゴリズムで学習を行ったり、RNN(Recurent Neural Network)、CNN(Convolutional Neural Network)、LSTM(Long Short Term Memory)、などのディープラーニングによる学習やオンライン学習を用いることができる。
【0032】
ここで予測される通信品質は、通信予測部1-6に入力する信号源の情報から任意の時間だけ先の通信品質である。任意の時間は、周辺環境情報を取得してから端末制御部1-5の制御を行うまでに必要な時間を経過後の任意の時間である。出力データが、複数のタイミングに対応する情報であったり、端末制御部で選択することができる制御方法に対応する任意のタイミングの情報であってもよい。または、あらかじめ定めた任意のイベント(例えば、通信品質低下イベント)がいつ発生するのかといったイベントの発生時間を出力してもよい。
【0033】
外部ネットワーク2-0に接続された学習部2-7において学習を行う場合には、学習のための周辺環境情報および端末情報を通信部1-4-iを介して学習部2-7へ出力する。iは1以上N以下の任意の整数である。通信品質は通信評価部1-1の結果と同様に、通信部1-4-iを介して学習部2-7に入力してもよいし、外部通信部2-4-iの通信を外部の通信評価部2-1で評価し、通信品質に関する情報を学習部2-7に入力してもよい。ここで、評価は、入出力関係の適用範囲の分類、予測精度、又は入力パラメータの重要度を判定可能な任意の評価である。評価は、1秒ごとなど、予め定められた周期で行ってもよいし、通信品質に関する特定のイベントや、周辺環境情報や端末情報に関する特定のイベントに対応して行ってもよい。
【0034】
通信品質に関する特定のイベントに対する学習とは、通信品質が定常状態や最頻値より大きくずれている場合に、当該通信品質を教師データとして、それより過去の周辺環境情報および端末情報を用い、学習を行う。周辺環境情報や端末情報に関する特定のイベントとは、周辺環境情報や端末情報がある特定の条件を満たした場合、ある程度時間経過した後に通信評価部で得られる通信品質情報を教師データとして、当該周辺環境情報と端末情報との間で学習を行う。特定の周辺環境情報の条件は、例えば、通信に影響を与える種類のオブジェクトが、通信装置の周辺を移動していることが観測された場合である。例えば、大型バスやトラックが隣を通過する、などである。特定の端末情報は、例えば、当該端末の位置情報があらかじめ定めた位置(交差点や建物の前、など)や速度となった場合である。
【0035】
機械学習は、端末1が実際に通信を行いながら、実環境で行うこともできるし、他の端末や、学習用に特別に用意された他の端末で取得されたデータを用いて行うこともできるし、現実世界の実環境にできるだけ近い環境を模擬したシミュレーション空間において、学習を行うこともできる。また、シミュレーション空間や類似の外の端末で学習された入出力関係を転移学習として用い、シミュレーションと実環境の両方で学習を行うこともできる。
【0036】
また、外部オペレータ2-8が通信部1-4-iを介して、端末1の制御を行う際に、本開示の構成を用いることもできる。この時、外部オペレータ2-8からの制御命令は通信予測部1-6に入力され、通信予測部1-6は周辺環境情報と端末情報から、当該制御命令による通信品質を予測する。このとき、通信品質が予め定めた条件を満たさない場合、制御を受け入れられないこと、または、通信品質があらかじめ定めた条件を満たす、制御情報を端末制御部1-5に出力し、端末制御部1-5は、当該制御情報を破棄したり、通信予測部1-6または端末制御部1-5で生成された代替の制御情報に従ったりすることができる。
【0037】
通信予測部1-6で代替の制御情報を生成する場合は、予測される通信品質に応じて、制御が変わりうるものであり、端末制御部1-5で生成されるものは、通信品質に対して影響を受けないか、通信品質に対してセンシティブでない制御情報となる。例えば、通信品質に応じて端末や端末の構成物の加速度や速度や回転を制御する条件があり、通信品質の予測に対して、外部オペレータの制御情報にできるだけ近い制御をこの条件を満たす範囲で実現するような場合は、通信予測部1-6で代替の制御情報を生成する。
【0038】
例えば、通信品質に応じて最高速度が決まっているとすると、外部オペレータ2-8が、当該端末の速度を上げるために加速を指示する制御信号を生成し、端末はその制御信号を入力信号として得るものの、通信予測部1-6は当該制御信号をそのまま実行すると、将来の通信品質が将来の端末の速度をそのままの制御信号で加速すると予測される将来の通信品質が将来における移動速度を当該加速度で得られる速度を許容しないことが分かった場合、通信予測部1-6は端末の加速を指示する制御情報を、加速度を下げるか、加速の指示を削除し、端末制御部1-5へ入力することで、端末が通信品質によって規定される条件を逸脱した制御をされることを防ぐことができる。
【0039】
さらに端末制御部1-5は、外部オペレータ2-8からの制御情報とは異なる制御を実施した旨の警告信号を、通信部1-4-iを介して外部オペレータ2-8へ通知することができる。警告信号により、外部オペレータ2-8や端末1の所有者などの外部に、入力した制御情報が変更されていることを通知することで、外部オペレータ2-8が不要な制御信号の入力を繰り返したりすることを防ぎ、外部通信部2-4の管理者が、より良い通信を提供することを検討するための参考情報とすることもできる。
【0040】
図2は交差点において大型車両による通信遮蔽が生じる場合の図を表す。通信基地局200が外部通信装置2として機能し、車両C1に端末1が備わる。通信基地局200と車両C1が無線で通信しており、学習部は、当該交差点において大型の車両が左折している際に、スループット低下が生じることをすでに学習している。この効果は必ずしも伝搬路の遮蔽が原因ではなく、交差点内の複雑な伝搬状態の変化により生じる。車両C1に搭載されたカメラ映像から大型車両B1が前方から接近し左折を始めたことを周辺環境情報収集部1-3により取得する。自身の端末情報として車両C1の位置、速度、向きを取得し、端末1の通信部1-4の通信品質に3秒以上後に影響が出る可能性があることを、通信予測部1-6において予測する。この結果を受け、端末制御部1-5は、以下の制御を行う。
【0041】
・通信部1-4に備わるアンテナの位置や車体C1の構成を変更する。
・通信部1-4の設定を、低い通信品質に対応する制御ルール(最高速度を10km/hに制限、など)に切り替える。
・車両C1の停止位置を微調整することで、予め学習された中で最も通信品質がよい車両C1の向きや位置を実現する。このように、端末制御1-5の制御は、端末1の備わる車両C1の制御も含む。
・車両C1の車内または遠隔において、車両C1を管理している外部オペレータ2-8に、通信品質の低下または生じうる問題について報告・警告・指示を行う。
【0042】
図3は、通信基地局と通信を行う制御ロボットの例を示す。制御ロボットは腹部に通信に用いるアンテナ110を用いている。アンテナ110は、端末1の制御下にある構成物として機能する。アンテナ110は、前方向に対する電波放射と電波受信には高い性能を持っているが、この腹部を腕により隠したり、背中方向を通信基地局200に向けたりすると通信品質が低下する性質を持つ。この例では、図2とは異なり、外部環境によらず、自端末そのものが通信品質低下の要因を作る。実際の環境では、図2による外部構造による遮蔽と、図3のような自分や自分の行動の結果による遮蔽が生じるため、本開示における端末1は、周辺環境情報と端末情報を用いて通信品質を予測した結果により、端末1を制御する。
【0043】
図3では、制御ロボットが通信基地局200に背を向けて通信品質が低下する例を表している。このような問題を防ぐため、この例において端末1は、以下の動作を行う。
・通信品質を低下させない、端末1の位置、向き、構成物の制御をあらかじめ学習し、通信品質を低下させる端末1の位置、向き、構成物の制御パターンをとらないようにする。
・通信品質を低下させる、端末1の位置、向き、構成物の制御を行う場合に、状態の維持時間を最小化するように端末1の制御を行い、通信品質低下の影響を受ける時間を低減する。
・低い通信品質に対応する制御ルール(動作速度の制限やトルクなどパワーの制限、など)に切り替える。
・アンテナ110の位置を変更する。
・アンテナ110を用いているロボットのアプリケーションを、より低いビットレートで実行可能なものに切り替える。このように、端末制御1-5の制御は、端末1の備わるロボットの制御も含む。
・遠隔において端末1を管理しているオペレータに、通信品質の低下または生じうる問題について報告・警告・指示を行う。
【0044】
学習および通信品質として予測を行う対象を制限するため、通信品質に関係のある特定イベントのみを通信予測部1-6が判定するように学習することもできる。例えば、周辺環境情報と端末情報のそれぞれまたは両方と相関の高い通信品質低下イベントを通信予測部1-6が予測するように、学習部1-7または2-7は学習を行い、これを検出する入出力関係を通信予測部1-6へ出力する。
【0045】
通信品質低下イベントとは、あらかじめ定めた通信品質の指標があらかじめ定めた条件を満たしたときとしたり、機械学習の識別により、周辺環境情報または端末情報の変化による通信品質低下とカテゴライズされた事象として定義できる。ここで、通信品質の指標は、時間当たりのビット数、時間と周波数あたりのビット数、パケットロス、パケットロス率、RSSI(Received Signal Strength Indicator)低下、RSRQ(Reference Signal Received Quality)低下、パケット送信レート、これらのパラメータが平常時からどれだけ変化したか、および、これら複数のパラメータから抽出される特徴量が挙げられる。また、複数のパラメータから抽出される特徴量とは、例えば、RSSI低下と単位時間あたりビット数の低下が同時に生じている場合、などがあげられる。
【0046】
通信予測部1-6において、端末制御部1-5で取るべき制御方式を直接決定する場合には、通信品質、通信品質の安定性、通信品質の予測精度を指標として加えることで、制御ルールの強化学習を行い、通信品質があらかじめ定めた報酬を最大化するように端末制御を学習させることもできる。
【0047】
制御ルールとは、通信品質に対して定義される端末1の制御ルールである。通信品質の状態に対し、端末1がとりうる動作などの制御内容を制限することができる。図4に制御ルールを定めた制御テーブルの例を示す。制御テーブルは、予め通信品質の複数の状態に対して取りうる端末の制御ルールを定める。端末1が制御テーブルを備える場合、端末制御部1-5は、予測された通信品質に対し制御テーブルから対応する制御ルールを呼び出し、新たな制御ルールに基づいて端末1の制御を行うことができる。
【0048】
ここで、架空の自動走行車両の制御ルールとして、スループットと遅延に対する通信品質の条件と、それに対する制御の条件が表で示されている。通信品質が非常に悪い場合、最大速度を5km/hとして、停車可能な路肩に停車しなければならず、通信の状況が改善するほど、最大速度と、運行エリアが広がっていくことが記載されている。このようにして通信品質に対して、制御を制限することで、自動で動作する端末が、事故などを引き起こさないように、通信で管理を実施することができる。また、通信の状況を改善するほど、実際の端末の動作の制限がなくなり、作業効率も高くなるため、前述の強化学習を作業効率性など通信以外のパラメータに報酬や価値を設定することもできる。本開示によれば、通信品質の予測に基づいて制御ルールを選択できるため、制御において、致命的な問題が生じるのを予め回避することができる。
【0049】
制御ルールは、複数の通信品質に対応する状態に対し、前記端末の最大移動速度、前記端末の最大回転速度、前記端末の移動可能経路、前記端末の移動可能エリア、前記端末の経路変更、前記端末の構成物の動作範囲、最大動作速度、最大回転速度、最大トルクの少なくともいずれかを含む前記端末の構成物の制御パラメータを設定したものであることが好ましい。ここで、通信品質が高品質であるほど自由度が高い、または範囲が大きいように設定したものであることが好ましい。
【0050】
図5は、本開示による第1の通信制御方法を示すフロー図である。
まず、端末か外部ネットワーク2-0に接続された学習部1-7または2-7において、端末1、端末1以外の装置、シミュレーション空間などにおいて取得した周辺環境情報及び端末情報と通信品質または通信品質に対応する端末制御との関係を学習する(S100)。
次に、学習された入出力関係を通信予測部1-6へ入力し、通信予測部1-6は、新たに入力される端末1の周辺環境情報及び端末情報から、未来の通信品質または通信品質に対応する端末1の制御の設定を端末制御部1-5へ出力する(S101)。
端末制御部1-5は、入力された通信品質の予測値を用いて対応する端末1の制御を実施したり、端末1の制御モードを設定したり、端末1の制御または端末1の制御モードを通信予測部1-6から入力され、当該制御や制御モードを実施する(S102)。
【0051】
制御や制御モードを入力された場合、端末制御部1-5はその可否を判断し、実施するかを判断することもできる。さらに、学習した結果により、今後の学習につなげるため、実施した制御または制御モードの設定に対し、得られた通信品質を通信評価部1-1で評価し、学習部1-7または2-7へ出力することもできる(S103)。
【0052】
ステップS102において、通信品質に対応する制御は、通信品質を高めるための制御、通信品質があらかじめ定めた条件を満たさない条件での制御、通信品質の予測確率が高い制御があげられる。
【0053】
ここで、通信品質を高めるための制御は、例えば、車両が通信品質が最大となる車線を走ったり、ロボットが作業を実現する動作計画において、最小通信品質が最も高いものとなるようにすることが例示できる。通信品質があらかじめ定めた条件を満たさない条件での制御は、例えば、目的地まで最短の移動経路を車やロボットに指定しつつ、かついずれかの場所で100ms以上の回線断が生じないように経路を設定することが例示できる。
【0054】
また、周辺環境情報として、トラックなどの大型のオブジェクトが接近していることを検出した場合に、通信品質を低下させる位置関係を避けるために車線変更して距離をとったり、加速して特定のエリアにおいて並列することを避けたり、逆に通信品質が低下しても問題ない速度まで原則することが例示できる。通信品質の予測性能を評価する場合には、これまでの観測から、通信品質低下イベントや通信品質向上イベントやその通信品質の変動幅の予測が妥当であったか、通信評価部1-1において事後判断を行うことを例示できる。通信品質の予測性能を基準にして、端末1の制御や制御ルールを決定してもよい。周辺環境情報に対し、通信品質の予測性能が高い経路や移動範囲、制御方法を選択することが例示できる。
【0055】
図6は、本開示による第2の通信制御方法を示すフロー図である。
まず、端末1か外部ネットワーク2-0に接続された学習部1-7または2-7において、端末1、端末1以外の装置、シミュレーション空間などにおいて取得した周辺環境情報及び端末情報と通信品質または通信品質に対応する端末制御との関係を学習する(S100)。
次に、学習された入出力関係を通信予測部1-6へ入力し、通信予測部1-6は、新たに入力される端末1の周辺環境情報及び端末情報から、複数の制御または制御モードに対して、未来の通信品質または通信品質に対応する端末の制御の設定を予測し、端末制御部1-5へ出力する(S111)。制御の予測は、例えば、強化学習により、あらかじめ定めた目標値や報酬が最大となる制御を出力することが例示できる。出力を複数とし、制御または制御モードとその際の通信品質や効率性などに関するパラメータを出力してもよい。端末制御部1-5は入力された複数の予測結果から、端末の制御または制御モードを決定する(S112)。制御モードの決定方法として、通信品質を最大化するもの、通信品質について所定の品質を満たす中で、最も制御効率が高いもの、または通信以外の指標で決まる基準(作業効率や消費電力などが例示できる)を用い、決定することができる。複数の制御や制御モードを入力された場合、端末制御部1-5はその可否を判断し、実施するかを判断することもできる。
【0056】
さらに、学習した結果により、今後の学習につなげるため、実施した制御または制御モードの設定に対し、得られた通信品質を通信評価部1-1で評価し、学習部1-7または2-7へ出力し、ステップS100での学習に用いることもできる(S103)。
【0057】
図7は、本開示による第3の通信制御方法を示す。まず、端末1か外部ネットワーク2-0に接続された学習部1-7または2-7において、端末1、端末1以外の装置、シミュレーション空間などにおいて取得した周辺環境情報及び端末情報と通信品質または通信品質に対応する端末制御との関係を学習する(S100)。本通信制御方法では、外部オペレータ2-8が端末1の制御を実施し、制御情報を外部通信部2-4-iから通信部1-4-iへの通信を介して、通信予測部1-6へ入力する(S121)。学習された入出力関係が通信予測部1-6で用いられる。通信予測部1-6は、入力された制御情報と、周辺環境情報と、新たに入力される端末1の周辺環境情報と、端末情報とから、複数の制御または制御モードに対して、未来の通信品質を予測し、この通信品質があらかじめ定めた条件を満たすか判定する(S122)。条件を満たす場合(YES)、当該制御または制御モードを実施する(S123)。条件を満たさない場合(NO)、このまま何も制御や制御モードの実施を行わないか、もしくは、通信品質について既定された、前記あらかじめ定めた条件を満たす代替の制御または制御モードを生成し(S122-1)、制御または制御モードを実施することができる(S123)。
【0058】
さらに、学習した結果により、今後の学習につなげるため、実施した制御または制御モードの設定に対し、得られた通信品質を通信評価部1-1で評価し、学習部1-7または2-7へ出力し、ステップS100での学習に用いることもできる(S124)。
【0059】
また、ステップS122において、入力された制御または制御モードが規定の通信品質を満たさないと予測された場合、外部オペレータに当該判定結果を通知したり、ステップS122-1で生成した代替の制御/制御モードも含めて外部オペレータに通知したりすることができる。
【0060】
図8は、本開示の効果を確認するために行った実験の図である。道路を挟んで無線LANの基地局と装置を設置し、2台のカメラ映像を用いて未来の通信品質を予測した。装置が端末1として機能し、基地局が外部通信装置2として機能する。ここで、無線LANは5GHz帯のチャネルを用い、通信品質は、20MHz当たりのスループットに対し、過去30秒間の平均で割った規格化スループットを用いた。通信品質は1秒ごとに評価される。カメラは上部を向いたカメラ#1と下部を向いたカメラ#2を用いた。
【0061】
ここで、カメラ映像は15FPSで取得され、X軸上のサイズ、Y軸上のサイズ、オブジェクトの中心位置を抽出した。通信品質を評価する周期(1秒)の間に、15個のオブジェクト情報が得られるため、ここで、15個の位置情報とサイズ情報を平均化し、サイズと位置のX軸とY軸に対する変化量を移動速度として抽出した。あるオブジェクトのサイズと位置の検出例を図9に示す。実際の環境でカメラ#1で撮影されたカメラ映像と車両の認識の様子を図10に示す。ここで理解のために、外部通信装置2が存在する場所も星印で図中に示した。この周辺環境では、乗用車が通っても、基地局と端末との通信路は遮蔽されないが、バスが通過する場合には当該通信路は遮蔽される。
【0062】
カメラ#1とカメラ#2から取得する車(乗用車)、バス、歩行者、の情報と現状の通信品質、および現状の通信で得られている信号電力を用い、1秒後の未来の通信品質を予測する。ここでは、通信予測のためにランダムフォレスト学習を用いた。図11に1秒後の通信品質を予測した結果を示す。図11では、予測した通信品質Qpと実測した通信品質Qmを比較している。このグラフはカメラ映像に何らかのオブジェクトが認識している時間とその前後10秒のデータのみを抽出し、学習と予測を行ったものである。ここで装置の位置を決定木を500としたランダムフォレスト学習を用い、3時間分のデータを用いk-fold cross validation法により、データを5分割し、4つのデータセットでトレーニングした結果を用いて、残りの1つのデータセットに対し通信品質を予測した。この結果は装置のそばを車やバスが行き来しているタイミングのデータのみを抽出しており、前述のように乗用車に対し通信品質に影響がない場合も含めての結果を示している。通信品質の低下に着目すると、通信品質の低下を予測できていることが確認できる。ここで得られた結果は、信号電力の低下や、車両に対して反射して受信する電磁波のドップラー効果によるチャネルの変動により、基地局と装置の間で用いている変調方式・符号化率・空間多重数が適切ではなくなり、パケットロスが生じ、スループットが低下していることを表している。
【0063】
図12に、時間に対して規格化スループットとオブジェクト認識の対応を示す。ラインAが規格化スループットを表し、プロットBがカメラ#1の映像からオブジェクトが識別されたタイミングを示している。スループットのグラフの下、0.25付近でプロットがあるタイミングでは、オブジェクトが認識されている。ここでは、車の認識とバスの認識に注目する。その時間において規格化スループットを確認すると車では車両の通行条件で半分ほどではスループット低下が生じており、バスでは大きくスループットが低下しているのが確認できる。
【0064】
一方、この付近での規格化スループットのデータを学習することで、端末が自己位置を最適化した位置での規格化スループットを図13に示す。ラインAが規格化スループットを表し、プロットBがカメラ#1の映像からオブジェクトが識別されたタイミングを示している。プロットBによれば、絶対位置では20cm以下のずれであるが、車の認識に対してスループットが低下しないことが確認できる。例えばこのように位置に対して、周辺のオブジェクトの動きに対してスループット低下を受けないよう最適化することで、この場所におけるロボットや各種車両の作業が、周辺のオブジェクトによるスループット低下の影響を受けて変化をしにくいように最適化できることがわかる。
【0065】
(他の実施形態)
上述した実施形態における端末をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、各装置が有する構成要素それぞれを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した構成要素の一部を実現するためのものであってもよく、更に前述した構成要素をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0066】
以上、この開示の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この開示の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0067】
[付記]
以下は、本開示の概要をまとめたものである。
カメラ・センサーなどにより取得できる装置の周辺環境情報、および、装置の位置情報/向き/姿勢/ID/状態/装置の構成物の制御/装置の制御の情報のうち一つ以上からなる端末情報を用い、未来の通信品質を予測し、あらかじめ定めた品質を満たした、より良い品質となるための、通信制御を実施することができる。端末制御部でとりうるオプションについて、通信品質を指標として強化学習により最適な方策を学習し、周辺環境情報の入力から、強化学習により習得した戦略により端末を制御することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
外部の通信装置と通信する端末であり、端末を制御することで通信品質への影響を及ぼせるシステムにおいて、周辺環境情報または端末情報またはその両方から、通信品質と相関の高い通信以外の情報を取得し、通信品質を改善したり、要求を満たさない通信品質となることを避ける端末制御を実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
1:端末
1-0:端末NW部
1-1:通信評価部
1-2:装置管理部
1-3:周辺環境情報収集部
1-4:通信部
1-5:端末制御部
1-6:通信予測部
2:外部通信装置
2-0:外部ネットワーク
2-4-1、2-4-N:外部通信部
110:アンテナ
200:通信基地局
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13