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特許7184178接合用金属部材の製造方法及び接合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】接合用金属部材の製造方法及び接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/70 20060101AFI20221129BHJP
   B29C 65/44 20060101ALI20221129BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20221129BHJP
   B23K 26/352 20140101ALN20221129BHJP
【FI】
B29C65/70
B29C65/44
B29C65/02
B23K26/352
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021519043
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2019018782
(87)【国際公開番号】W WO2020230200
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 悟
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/092607(WO,A1)
【文献】特開2014-065288(JP,A)
【文献】特開2016-132131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/02-65/70
B29C 45/14
B23K 26/352
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑部と凹凸部とを一の面に有し、
前記平滑部の表面を基準面としたときに、前記凹凸部が、前記基準面よりも低い位置まで到達する複数の窪みと、前記基準面よりも高い位置まで突出する複数の突起とを有し、
前記基準面から前記窪みの底部までの深さAの平均値と、前記基準面から前記突起の頂部までの高さBの平均値との比(B/A)が、0.3~3であり、
前記深さAの平均値が、100μm~1.5mmである接合用金属部材の製造方法であって、
前記凹凸部を、変調CWレーザーにより形成する接合用金属部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接合用金属部材の製造方法により製造された接合用金属部材における前記平滑部と前記凹凸部とを有する面と、樹脂部材と、を接合させる接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合用金属部材及び接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に用いられる各種成形体では、軽量化を目的として、鉄鋼材料とアルミニウム合金、マグネシウム合金等の軽量金属材料との異種金属接合、鉄鋼材料又は軽量金属材料と樹脂材料との異種材料接合などが検討されている。鉄鋼材料又は軽量金属材料と樹脂材料との異種材料接合により、さらなる軽量化が期待できる。
【0003】
そのため、金属成形体と樹脂成形体とを接合して一体化することで新たな複合部品を製造する方法が検討されている。例えば、加工速度を高めることができ、かつ異なる方向の接合強度も高めることができる方法として、金属成形体の表面に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射することで前記金属成形体の表面を粗面化する、金属成形体の粗面化方法及び複合成形体の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5774246号
【文献】特許第5701414号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2では、金属成形体を粗面化した場合、粗面化前の金属成形体表面である基準面よりも低い位置に凸形状が形成されるものの、基準面よりも高い位置には凸形状がほとんど形成されないことがある。そのため、十分なアンカー効果が得られず、粗面化された金属成形体と樹脂成形体等との接合強度が不十分となる場合がある。
【0006】
本開示は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、樹脂部材との接合強度に優れる接合用金属部材及びこの接合用金属部材と樹脂部材とを接合した接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 平滑部と凹凸部とを一の面に有し、
前記平滑部の表面を基準面としたときに、前記凹凸部が、前記基準面よりも低い位置まで到達する複数の窪みと、前記基準面よりも高い位置まで突出する複数の突起とを有し、
前記基準面から前記窪みの底部までの深さAの平均値と、前記基準面から前記突起の頂部までの高さBの平均値との比(B/A)が、0.3~3である接合用金属部材。
<2> 前記深さAの平均値が、100μm~1.5mmである<1>に記載の接合用金属部材。
<3> <1>又は<2>に記載の接合用金属部材と、
前記接合用金属部材における前記平滑部と前記凹凸部とを有する面と接合する樹脂部材と、を有する接合体。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、樹脂部材との接合強度に優れる接合用金属部材及びこの接合用金属部材と樹脂部材とを接合した接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】接合用金属部材の一実施形態における平滑部と凹凸部とを有する面の断面を、基準面よりも高い位置から撮影した断面写真(実施例における黄銅製試験片の凹凸部の電子顕微鏡写真)である。
図2】接合用金属部材の他の実施形態における凹凸部の断面写真(実施例におけるアルミニウム製試験片の凹凸部の電子顕微鏡写真)である。
図3】ISO19095に準拠した試験片の形状を説明するための図である。
図4】実施例における銅製試験片の凹凸部の電子顕微鏡写真である。
図5】比較例におけるアルミニウム製試験片の凹凸部の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0011】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、各成分に該当する粒子には、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0012】
<接合用金属部材>
本開示の接合用金属部材は、平滑部と凹凸部とを一の面に有し、前記平滑部の表面を基準面としたときに、前記凹凸部が、前記基準面よりも低い位置まで到達する複数の窪みと、前記基準面よりも高い位置まで突出する複数の突起とを有し、前記基準面から前記窪みの底部までの深さAの平均値と、前記基準面から前記突起の頂部までの高さBの平均値との比(B/A)が、0.3~3とされたものである。
【0013】
本開示の接合用金属部材は、樹脂部材との接合強度に優れる。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
接合用金属部材の比(B/A)を0.3~3とすることで、凹凸部に存在する基準面よりも高い位置まで突出した突起の数を十分に確保できる。そのため、接合用金属部材における凹凸部に樹脂部材を構成する樹脂が含浸する際に、樹脂が基準面よりも下まで到達しなくとも、基準面よりも高い位置まで突出した突起に樹脂がからみつきやすくなる。その結果、十分なアンカー効果が得られ、接合用金属部材と樹脂部材とが強固に接合することができるためと推察される。
【0014】
以下、本開示の接合用金属部材を図面に基づいて説明する。
なお、以下の実施形態では、接合用金属部材の一例として、金属部材の表面にレーザー光を照射して凹凸部を設けることで形成された接合用金属部材に基づいて、本開示の接合用金属部材を説明する。ただし、接合用金属部材を構成する材料、接合用金属部材の製造方法等は、特に限定されるものではない。
【0015】
図1は、接合用金属部材の一実施形態における平滑部と凹凸部とを有する面の断面を、基準面よりも高い位置から撮影した断面写真を示し、後述の実施例3における黄銅製試験片の凹凸部の電子顕微鏡写真の一例に該当する。図1には、平滑部と凹凸部とを有する面における平滑部及び凹凸部を含む箇所についての断面が示されている。図1には、接合用金属部材における平滑部と凹凸部とを有する面の全体に延長された基準面が、点線で表されている。
図2は、接合用金属部材の他の実施形態における凹凸部の拡大断面写真を示し、後述の実施例1におけるアルミニウム製試験片の凹凸部の電子顕微鏡写真の一例に該当する。
【0016】
図1に示すように、接合用金属部材における一の面には、平滑部10と凹凸部12とが存在する。凹凸部12には、図1又は図2に示すように、基準面よりも低い位置まで到達する複数の窪み16と、基準面よりも高い位置まで突出する複数の突起14が存在する。
図2には、接合用金属部材における平滑部と凹凸部とを有する面の全体に延長された基準面が、点線で表されている。併せて、図2には、基準面と平行し突起14の頂部(最も高い位置)に接する面B、及び、基準面と平行し窪み16の底部(最も深い位置)に接する面Aが、各々点線で表されている。
【0017】
本開示において、基準面から窪みの底部までの深さAとは、図2に示すように、基準面と直交する断面を観察したときに、基準面と、基準面と平行し窪み16の底部に接する面Aと、の間の距離をいう。なお、基準面と直交する断面を観察したときに、図2に示すように、窪みの底部が接合用金属部材の表面から閉塞している場合がある。
本開示において、基準面から突起の頂部までの高さBとは、図2に示すように、基準面と直交する断面を観察したときに、基準面と、基準面と平行し突起14の頂部に接する面Bと、の間の距離をいう。
本開示において、深さAの平均値とは、上述のようにして求められた5個の窪みについての深さの算術平均値をいう。また、高さBの平均値とは、上述のようにして求められた5個の突起についての高さの算術平均値をいう。
断面の観察画像の倍率は特に限定されるものではなく、少なくとも5個の、窪み及び突起が一画像中に含まれる程度の倍率であってもよい。また、複数の観察画像から、少なくとも5つの、窪みの深さ及び突起の高さを求めてもよい。
【0018】
比(B/A)の平均値は、0.3~3とされ、0.3~2であることが好ましく、0.3~1であることがより好ましい。
比(B/A)の平均値が0.3以上であれば、凹凸部に存在する複数の突起が基準面よりも高い位置まで突出した状態を確保しやすく、突起に樹脂がからみつきやすい傾向にある。なお、比(B/A)の平均値が3を超える値とするのは、困難な場合がある。
窪み16の深さAの平均値は、100μm~1.5mmであることが好ましく、100μm~1mmであることがより好ましく、100μm~500μmであることがさらに好ましい。
突起14の高さBの平均値は、50μm~1mmであることが好ましく、70μm~500μmであることがより好ましく、90μm~200μmであることがさらに好ましい。
深さAの平均値と高さBの平均値との合計の値は、150μm~2.5mmであることが好ましく、170μm~1.5mmであることがより好ましく、190μm~700μmであることがさらに好ましい。
凹凸部12における突起14の密度は、5個/mm~50個/mmであることが好ましく、10個/mm~30個/mmであることがより好ましく、10個/mm~25個/mmであることがさらに好ましい。
【0019】
接合用金属部材を構成する金属は特に限定されるものではなく、接合用金属部材を用いて形成される接合体の用途に応じて公知の金属材料から適宜選択することができる。接合用金属部材を構成する金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、チタン、銅及びマグネシウム並びにこれらを含む合金を挙げることができる。合金としては、例えば、各種ステンレス及び銅-亜鉛合金(黄銅)を挙げることができる。
接合用金属部材における平滑部と凹凸部とを有する面には、メッキ処理、アルマイト処理等の表面処理を施してもよい。
【0020】
接合用金属部材の形状は特に限定されるものではなく、接合用金属部材を用いて形成される接合体の用途に応じて適宜選択することができる。接合用金属部材の形状としては、例えば、板状、球状、曲面を有する形状、段部を有する形状等を挙げることができる。
接合用金属部材の凹凸部を有する面は、平面であってもよい。
【0021】
金属部材に凹凸部を形成する方法は特に限定されるものではない。金属部材に凹凸部を形成する方法としては、上述のように、金属部材の表面にレーザー光を照射して凹凸部を設ける方法等が挙げられる。
【0022】
以下に、金属部材の表面にレーザー光を照射して凹凸部を設ける方法を採用した際の各種条件等について説明する。
なお、下記各種条件は、接合用金属部材を構成する金属の種類、突起の高さ、窪みの深さ等に鑑みて適宜設定されるものである。
【0023】
金属部材の表面にレーザー光を照射して凹凸部を設ける場合、パルスレーザーを用いても、連続発振(CW、Continuous Wave)レーザーを用いてもよい。CWレーザーを用いる場合、CWレーザーは周期的にレーザーの出力を変化させる変調CWレーザーであってもよい。
【0024】
CWレーザーを用いる場合、CWレーザーの照射速度(スキャン速度)は特に限定されるものではない。
CWレーザーの照射速度としては、100mm/sec~2000mm/secであることが好ましい。
CWレーザーの照射速度が100mm/sec以上であれば、金属部材の加工速度を速めることができる傾向にある。CWレーザーの照射速度が2000mm/sec以下であれば、比(B/A)を0.3~3の範囲としやすく、樹脂部材との接合強度がより向上する傾向にある。
【0025】
レーザーの照射出力は特に限定されるものではない。
例えば、CWレーザーを用いる場合、レーザー出力は300W~2000Wであることが好ましい。
CWレーザーのレーザー出力が300W以上であれば、CWレーザーの照射速度を速めやすくなり、金属部材の加工速度を速めることができる傾向にある。CWレーザーのレーザー出力が2000W以下であれば、レーザー光の照射設備を小型化できる傾向にある。
【0026】
レーザーのスポット径は特に限定されるものではない。
例えば、レーザーのスポット径としては、10μm~50μmであることが好ましい。
【0027】
変調CWレーザーを用いる場合、変調方式としては正弦波であってもよく三角波であってもよく矩形波であってもよい。
変調CWレーザーの周波数としては、1000Hz~10000Hzであることが好ましい。
変調CWレーザーにおいて、レーザー出力の最大値を100としたときのレーザー出力の最小値は、30以上100未満であることが好ましく、50~95であることがより好ましく、80~90であることがさらに好ましい。
【0028】
金属部材の表面にレーザー光を照射する場合、ワブリング加工により凹凸部を設けてもよい。
また、レーザー光を一度照射された箇所に、レーザー光を繰り返し照射してもよい。レーザー光を繰り返して照射する場合、繰り返しの回数としては、1回~40回であることが好ましい。
【0029】
レーザーとしては、ルビーレーザー、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー、チタンサファイアレーザー等の固体レーザー、色素レーザー等の液体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、炭酸ガスレーザー、窒素レーザー、エキシマーレーザー等の気体レーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザーなどを用いることができる。
レーザーとしては、グリーンレーザーであってもよい。
【0030】
金属部材の表面にレーザー光を照射して凹凸部を設ける場合、金属部材表面におけるレーザー光の照射される箇所に、圧縮空気を供給してもよい。供給される圧縮空気の圧力としては、レーザー光の照射により発生する金属粉を効率的に除去する観点から、0.2MPa~0.5MPaであることが好ましい。
【0031】
レーザー光が直線状に照射された場合、レーザー光の走査間隔としては、レーザー光のスポット径よりも大きいことが好ましい。
【0032】
<接合体>
本開示の接合体は、本開示の接合用金属部材と、前記接合用金属部材における前記平滑部と前記凹凸部とを有する面と接合する樹脂部材と、を有する。
本開示の接合体では、樹脂部材が、接合用金属部材における平滑部と凹凸部とを有する面と接合するため、接合用金属部材と樹脂部材との接合強度に優れる。
【0033】
樹脂部材を構成する樹脂の種類は特に限定されるものではなく、接合体の用途に応じて従来から公知の樹脂を適宜選択して用いることができる。
樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エラストマー等が挙げられる。
【0034】
熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂等が挙げられる。
エラストマーの具体例としては、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム等が挙げられる。
【0035】
樹脂部材には、接合体の用途に応じて従来から公知の樹脂以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、粒子状の充填材、繊維状の充填材、離型剤等が挙げられる。
【0036】
その他の成分としては、さらに、熱硬化性樹脂を硬化する硬化剤、熱硬化性樹脂の硬化を促進する硬化促進剤、無機材料の表面を改質する表面処理剤等を挙げることができる。
【0037】
樹脂部材に含まれる樹脂以外のその他の成分の含有量は、接合体の用途に応じて適宜設定されてもよい。
【0038】
接合体の製造方法は特に限定されるものではなく、インジェクション成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、トランスファ成形法、押出成形法、注型成形法等の通常の樹脂成形体の成形方法を採用することができる。また、上述のようにして凹凸部の設けられた接合用金属部材における凹凸部の設けられた面に対して、インサート成形法により樹脂及び必要に応じてその他の成分を含む樹脂組成物を付与して接合体を製造してもよい。
さらに、凹凸部の設けられた接合用金属部材と樹脂部材とを接触させて、超音波溶着、振動溶着、誘導溶着、高周波溶着、レーザー溶着、熱溶着、スピン溶着等により接合用金属部材と樹脂部材とを接合してもよい。
また、樹脂部材の接合用金属部材と接合する箇所を加熱して軟化させた後に、樹脂部材と接合用金属部材とを加圧しながら接触させることで、接合用金属部材と樹脂部材とを接合してもよい。
凹凸部における突起の変形を防いで接合強度を向上する観点から、接合体はインサート成形法により製造されたものであることが好ましい。
樹脂部材の成分として熱硬化性樹脂を用いる場合、上記方法により接合用金属部材と樹脂部材とを接合した後、加熱処理することで樹脂部材を硬化してもよい。
【0039】
本開示の接合体の用途としては、車両等に用いられる各種成形体が挙げられ、具体的には、例えば、サイドドア、フード、ルーフ、バックドア、ラゲージドア、バンパ及びクラッシュボックスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例
【0040】
以下に、本開示を実施例に基づいて説明するが、本開示は下記実施例に限定されるものではない。
【0041】
図3(A)に示す、ISO19095に準拠した外径がφ55mmで内径がφ20mmで厚み2mmのドーナツ状のアルミニウム製(AL3003)、銅製(C1020)及び黄銅製(C2680)の試験片100を準備した。
試験片100に、ファイバーレーザー(株式会社アマダミヤチ製 ML6811C(CWレーザー))を用いて、凹凸部102を下記条件で形成した。凹凸部102の幅は、1.2mmとした。
【0042】
【表1】
【0043】
図2に、実施例1のアルミニウム製試験片の凹凸部の電子顕微鏡写真の一例を、図4に、実施例2の銅製試験片の凹凸部の電子顕微鏡写真の一例を、図1に、実施例3の黄銅製試験片の凹凸部の電子顕微鏡写真の一例を、図5に、比較例1のアルミニウム製試験片の凹凸部の電子顕微鏡写真の一例を、各々示す。
図1図2及び図4から明らかなように、実施例1、2及び3の各試験片の凹凸部は、基準面よりも低い位置まで到達する複数の窪みと、基準面よりも高い位置まで突出する複数の突起とを有していることが分かる。
なお、各試験片の電子顕微鏡写真の撮影は、日本電子株式会社製のJSM-IT100を用い、20kVの加速電圧で行った。
【0044】
実施例1のアルミニウム製試験片の凹凸部における、比(B/A)の値を上述のようにして求めたところ、0.4であった。また、深さAの平均値は380μmであった。
実施例2の銅製試験片の凹凸部における、比(B/A)の値を上述のようにして求めたところ、0.5であった。また、深さAの平均値は220μmであった。
実施例3の黄銅製試験片の凹凸部における、比(B/A)の値を上述のようにして求めたところ、0.9であった。また、深さAの平均値は120μmであった。
比較例1のアルミニウム製試験片の凹凸部における、比(B/A)の値を上述のようにして求めたところ、0.2であった。また、深さAの平均値は190μmであった。
【0045】
次いで、凹凸部を設けた各試験片の凹凸部を覆うように、株式会社ソディック製の射出成型機LA60を用いて図3(B)に示すような樹脂部104を樹脂加熱温度210℃、金型温度80℃の条件でインジェクション成形した。樹脂部104の大きさは、外径がφ26mmで厚みが2mmとした。樹脂としては、はポリプラスチック株式会社製のポリアセタール(POM)樹脂(標準グレードM90-44)とした。
樹脂部を形成した各試験片を用いて、下記方法により接合強度を評価した。なお、接合強度評価用の試験片を、実施例及び比較例毎に5つ準備した。
【0046】
-評価方法-
株式会社島津製作所製AG-5kNISを用いて、試験速度5mm/minで引張試験を行い、5つの接合体についての接合強度を求めその平均値を算出した。
【0047】
POM樹脂との接合において、各試験片についての接合強度は以下のとおりであった。
実施例1のアルミニウム製試験片についての接合強度の平均値は、17.8MPaであった。
実施例2の銅製試験片についての接合強度の平均値は、14.7MPaであった。
実施例3の黄銅製試験片についての接合強度の平均値は、22.4MPaであった。
比較例1のアルミニウム製試験片についての接合強度の平均値は、0MPaであった。
【0048】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0049】
10 平滑部
12 凹凸部
14 突起
16 窪み
100 試験片
102 凹凸部
104 樹脂部
図1
図2
図3
図4
図5