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特許7184189警報通信装置、通信システム、警報通信方法、および、警報通信プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】警報通信装置、通信システム、警報通信方法、および、警報通信プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 43/00 20220101AFI20221129BHJP
【FI】
H04L43/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021527310
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2019025972
(87)【国際公開番号】W WO2020261576
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 秀
(72)【発明者】
【氏名】小池 良典
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 弘高
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-156853(JP,A)
【文献】特開2010-4184(JP,A)
【文献】特開2009-88656(JP,A)
【文献】特開2001-111564(JP,A)
【文献】特開2006-60850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の第1ノードを有する第1ドメインには、隣接する第2ドメインとの仮想的な接続部である第1仮想IFが備えられ、
1つ以上の第2ノードを有する前記第2ドメインには、前記第1ドメインとの仮想的な接続部である第2仮想IFが備えられ、
警報通信装置は、前記第1ノードおよび前記第2ノードとして構成されており、
前記第1ノードは、前記第1ドメイン内で処理可能な形式の第1内部警報を受け、ドメイン間で共通に処理可能な仮想IFの警報である仮想警報に変換してから、前記第1仮想IFに隣接する前記第2仮想IFに通知し、
前記第2ノードは、前記第2仮想IFの仮想警報を、前記第2ドメイン内で処理可能な形式の第2内部警報に変換してから、前記第2ドメイン内の他ノードに転送することを特徴とする
警報通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の警報通信装置と、前記第1ドメインおよび前記第2ドメインを制御する上位制御装置とを含めて構成され、
前記上位制御装置は、前記第1ドメイン内の前記第1内部警報と、前記第1仮想IFの仮想警報と、前記第2仮想IFの仮想警報と、前記第2ドメイン内の前記第2内部警報とで、それぞれの警報の正常状態および異常状態の組み合わせを元に、前記第1ドメイン内部の故障か、前記第2ドメイン内部の故障か、ドメイン間の故障かを特定することを特徴とする
通信システム。
【請求項3】
1つ以上の第1ノードを有する第1ドメインには、隣接する第2ドメインとの仮想的な接続部である第1仮想IFが備えられ、
1つ以上の第2ノードを有する前記第2ドメインには、前記第1ドメインとの仮想的な接続部である第2仮想IFが備えられ、
警報通信装置は、前記第1ノードおよび前記第2ノードとして構成されており、
前記第1ノードが、前記第1ドメイン内で処理可能な形式の第1内部警報を受け、ドメイン間で共通に処理可能な仮想IFの警報である仮想警報に変換してから、前記第1仮想IFに隣接する前記第2仮想IFに通知する工程と、
前記第2ノードが、前記第2仮想IFの仮想警報を、前記第2ドメイン内で処理可能な形式の第2内部警報に変換してから、前記第2ドメイン内の他ノードに転送する工程とを含むことを特徴とする
警報通信方法。
【請求項4】
1つ以上の第1ノードを有する第1ドメインには、隣接する第2ドメインとの仮想的な接続部である第1仮想IFが備えられ、
1つ以上の第2ノードを有する前記第2ドメインには、前記第1ドメインとの仮想的な接続部である第2仮想IFが備えられ、
警報通信装置は、前記第1ノードおよび前記第2ノードとして構成されており、
前記第1ノードが、前記第1ドメイン内で処理可能な形式の第1内部警報を受け、ドメイン間で共通に処理可能な仮想IFの警報である仮想警報に変換してから、前記第1仮想IFに隣接する前記第2仮想IFに通知する手順、
前記第2ノードが、前記第2仮想IFの仮想警報を、前記第2ドメイン内で処理可能な形式の第2内部警報に変換してから、前記第2ドメイン内の他ノードに転送する手順、
を、前記警報通信装置としてのコンピュータに実行させるための警報通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警報通信装置、通信システム、警報通信方法、および、警報通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
標準化団体ITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)は、光伝達網(OTN:Optical Transport Network)に関する勧告として、監視用の波長であるOSC(Optical Supervisory Channel)を用い、波長多重された主信号に関する警報信号をノード装置間で転送する旨の警報転送機能を規定する(非特許文献1)。
この警報転送機能により下流装置や上流逆装置(逆方向の下流装置)へ障害通知をし、重複した警報発生の抑止や障害の誤認識を抑止し、さらには通信経路の切り替えを行う。
【0003】
異なるベンダの通信装置同士を接続する場合や、通信装置の各部品(光クロスコネクト部、光合分派部、光増幅部など)と通信装置に接続される光送受信部とで製品ライフサイクルが異なる場合に対応するために、警報転送機能のシステムを再構築する検討がされている。以下、再構築したシステムの一例である。
・通信装置に異なる光送受信部を接続するシステム。
・通信装置の部品ごとに別々の装置として分離したシステム。
これらのシステムの再構築のための共通データモデル(非特許文献2,3)や、接続技術(非特許文献4)が検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】ITU-T、"G.709/Y.1331 : Interfaces for the optical transport network"、[online]、2016年6月22日、[2019年6月19日検索]、インターネット〈URL:https://www.itu.int/rec/dologin_pub.asp?lang=e&id=T-REC-G.709-201606-I!!PDF-E&type=items〉
【文献】OpenConfig、"OpenConfig Vendor-neutral, model-driven network management designed by users"、[online]、2016年、[2019年6月19日検索]、インターネット〈URL:http://www.openconfig.net/〉
【文献】The Open ROADM Multi-Source Agreement (MSA)、"Open ROADM"、[online]、2016年、[2019年6月19日検索]、インターネット〈URL:http://openroadm.org/home.html〉
【文献】Infinera、"Open Line Systems and Open ROADM: How Open Is Your Line System?"、[online]、2018年、[2019年6月19日検索]、インターネット〈URL:https://tnc18.geant.org/getfile/4520〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各ネットワーク構築者または各装置製造者は、それぞれ自身で警報転送機能の詳細な実装方式を決定する。実装方式は、例えば、OSCの信号波長やOTNフレームの警報信号のビット配列などであり、ITU-TのOTNに関する勧告に準拠している場合でも、それぞれ異なった実装がなされることも多い。よって、実装の違いにより、互いに異なる光ネットワーク間で警報を相互に転送できない場合も発生する。
【0006】
図9は、1カ所のノードから発出された警報が上位制御装置まで届く旨を示す説明図である。
第1ドメイン(制御装置X,ノードX1,X2,X3)と、第2ドメイン(制御装置Y,ノードY1,Y2,Y3)とは、互いに異なる光ネットワークである。上位制御装置は、ドメイン間を仲介するため、各制御装置X,Yと接続されている。
以下、ノードX1→X2→X3などのドメイン内の警報制御を「インバウンド」と呼び、ノードX2→制御装置X→上位制御装置(図の太線矢印)→制御装置Y→ノードY1などの上位制御装置を介する警報制御を「アウトバウンド」と呼ぶ。
異なる光ネットワーク間で警報転送が困難な場合はインバウンドでの監視制御が困難なため、アウトバウンドで一旦すべての警報を複数のネットワークを監視制御する上位制御装置まで発出する。そして、上位制御装置は、警報の依存関係から原因の特定および警報の抑止を実行する。
【0007】
図10は、6カ所のノードから発出された警報が上位制御装置まで届く旨を示す説明図である。
すべての警報をアウトバウンドの対象としてしまうと、警報を発出するノードが増えたときには、図示の太線矢印で示すように、発出される警報が一斉に上位制御装置に集中してしまうため、システム全体のスケーラビリティは低下する。
【0008】
そこで、本発明は、複数のネットワークをまたがって通知される警報の制御システムについて、スケーラビリティを向上させることを、主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の警報通信装置は、以下の特徴を有する。
本発明は、1つ以上の第1ノードを有する第1ドメインには、隣接する第2ドメインとの仮想的な接続部である第1仮想IFが備えられ、
1つ以上の第2ノードを有する前記第2ドメインには、前記第1ドメインとの仮想的な接続部である第2仮想IFが備えられ、
警報通信装置が、前記第1ノードおよび前記第2ノードとして構成されており、
前記第1ノードが、前記第1ドメイン内で処理可能な形式の第1内部警報を受け、ドメイン間で共通に処理可能な仮想IFの警報である仮想警報に変換してから、前記第1仮想IFに隣接する前記第2仮想IFに通知し、
前記第2ノードが、前記第2仮想IFの仮想警報を、前記第2ドメイン内で処理可能な形式の第2内部警報に変換してから、前記第2ドメイン内の他ノードに転送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のネットワークをまたがって通知される警報の制御システムについて、スケーラビリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係わる通信システムの構成図である。
図2】本実施形態に係わる図1の通信システムについて、管理系を含めた構成図である。
図3】本実施形態に係わるドメインAの境界ノードおよびVIF管理部の詳細な構成図である。
図4】本実施形態に係わる上位制御装置の詳細な構成図である。
図5】本実施形態に係わるドメインBの境界ノードおよびVIF管理部の詳細な構成図である。
図6】本実施形態に係わる通信システムの警報発生時の動作を示すシーケンス図である。
図7】本実施形態に係わる異常検知部の処理に使用されるテーブルの構成図である。
図8】本実施形態に係わる通信システムに用いられるコンピュータの構成図である。
図9】1カ所のノードから発出された警報が上位制御装置まで届く旨を示す説明図である。
図10】6カ所のノードから発出された警報が上位制御装置まで届く旨を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、通信システムの構成図である。
通信システムは、複数の伝送路システム(図1では第1ドメインであるドメインA10、第2ドメインであるドメインB20)が接続された光トランスポートシステムとして構成される。ドメインA10内の各ノード(第1ノード)は、仮想的に同じシングルベンダの構成であり、ドメインB20内の各ノード(第2ノード)は、仮想的にドメインA10とは別のシングルベンダの構成である。よって、ドメインA10の内部と、ドメインB20の内部とで、それぞれベンダ独自の監視制御システムを利用できる。一方、図1の通信システム全体では、2つのベンダから構成されるマルチベンダのシステムである。
各ドメインは、他ドメインとの接続の他に、ドメインとは独立した光送受信部30との接続も有する。光送受信部30は、送信データを伝送媒体である光ファイバで伝送するための光信号へ変調するとともに、受信した光信号を復調し受信データを取り出すデバイスである。
【0014】
以下、ドメイン内の各ノードのうち、外部(他ドメインまたは光送受信部30)との接続を有するノードを「境界ノード」とし、境界ノードに該当しないノードを「中継ノード」とする。
例えば、ドメインA10は、4つの境界ノード11,13,14,16と、2つの中継ノード12,15とを有する。ドメインB20は、4つの境界ノード21,23,24,26と、2つの中継ノード22,25とを有する。これらのノード間は、同じドメイン内の2重リングで接続される。なお、2重リングのネットワーク構成はあくまで一例である。
【0015】
各境界ノードは、外部と接続する端点に、仮想的な接続部としてVIF(Virtual Interface)を有する。例えば、ドメインA10の各境界ノードは、合計4つの第1仮想IF(VIF11v,13v,14v,16v)を有する。ドメインB20の各境界ノードは、合計4つの第2仮想IF(VIF21v,23v,24v,26v)を有する。これらのVIFは、物理的にシステム端点に配置しておらず、通信システムの上位制御装置40(図2)が扱うデータモデル上で仮想的に設置されている。そのため、上位制御装置40は、実際の物理装置の管理情報と、データモデルの管理情報とをマッピングし、双方の整合性をとっている。
【0016】
各VIFは、VIFが仮想的に設置されているセクションの信号情報(変調方式、変調速度、中心波長など)、および、状態情報(異常なし、LOS(Loss of Signal)など)を情報として持ち、その信号を送受信しているように見せる仮想的なインタフェースである。
例えば、VIF11vは、境界ノード11とともにドメインA10の内部に存在しており、境界ノード11の実際の接続先である光送受信部30との間の光信号を中継する。ここで、光送受信部30から入力される光信号は、VIF11vから送信される光信号として境界ノード11に扱わせる。これにより、実際は外部(光送受信部30)との警報送受信を、仮想的に内部(VIF11v)との警報送受信として、境界ノード11にインバウンド監視での自律制御を実行させる。
【0017】
同様に、ドメインA10の境界ノード13と、ドメインB20の境界ノード21とは、VIF13vおよびVIF21vを介して隣接している。そして、境界ノード13は、自身のドメインA10のVIF13vを介して、他のドメインB20(境界ノード21)から発出される警報をあたかも自身のドメインA10が発出した警報であるかのように、インバウンド制御で扱うことができる。また、境界ノード21もVIF21vを介して他のドメインA10から発出される警報を、インバウンド制御で扱うことができる。これらのインバウンド制御により、隣接するシステムのVIF状態からシステム間故障の特定も可能となる。
【0018】
図2は、図1の通信システムについて、管理系を含めた構成図である。
ドメインA10には、前記した各ノードに加え、境界ノード11のVIF11vを管理するためのVIF管理部11cと、境界ノード13のVIF13vを管理するためのVIF管理部13cとを有する。つまり、境界ノードが有するVIFの数に限らず、境界ノード1台に対して1つのVIF管理部が用意される。
ドメインB20には、前記した各ノードに加え、境界ノード21のVIF21vを管理するためのVIF管理部21cと、境界ノード23のVIF23vを管理するためのVIF管理部23cとを有する。
さらに、各ドメインからの警報のアウトバウンド制御をするための上位制御装置40も、管理系として備えられる。
【0019】
図2の太線実線矢印は、警報の流れを示す。中継ノード12で発出された警報はドメインA10(中継ノード12→境界ノード13)でインバウンド制御される。
以下、同じドメイン内で送受信される警報を「内部警報」とし、ドメイン間をまたがって送受信される警報を「VIF警報(仮想警報)」とする。VIF警報という名称は、警報を送受信するドメイン間のVIFの内部に、LOS信号などの警報を擬似的に発生させることを意図したものである。
内部警報はドメイン内のベンダ依存形式であり、VIF警報はドメインのベンダに非依存の(OTNなどで標準化された)共通形式である。ドメインA10の内部警報は、同じベンダで構成されるドメインA10内の各ノード間で送受信される。
つまり、ドメインA10内で異常が検知された際には、インバウンド制御によりドメインA10内の上流および下流に内部警報が転送される。この内部警報を受けた各ノードは、警報対処として、警報発出の抑止処理や、原因警報と波及警報との切り分け処理や、必要に応じた経路切替などの異常時処理などを実行する。
【0020】
ここで、境界ノード13から境界ノード21にドメインをまたがって警報を転送する場合を考える(図示では太線破線の矢印)。ドメインA10の内部警報は、ドメインB20にそのまま通知すると、ベンダが異なることにより、ドメインB20でインバウンド制御できない場合もある。
そこで、VIF管理部13cは、管理対象であるVIF13vから送信するドメインA10の第1内部警報を、VIF13vのVIF警報に変換する。そして、VIF管理部21cは、管理対象であるVIF21vで受信したVIF警報を、ドメインB20の第2内部警報に変換する。これにより、VIF13vからVIF21vに転送されたVIF警報はドメインB20(境界ノード21→中継ノード22→境界ノード23)で、内部警報として送受信される(太線実線矢印)。
【0021】
なお、実際に境界ノード13が存在しなくてもVIF13vというインタフェースのデータを生成し、VIF13vを仮想的に設置した箇所にインタフェースがあるようにデータをもたせてもよい。そして、VIF13vのVIF警報を上位制御装置40に格納することで、管理データ上のみにVIF13vが存在するようにしてもよい。そして、VIF13vが仮想的に設置されているドメインA10の警報は、VIF警報としてドメインB20に送信される。
一方、物理構成上では、境界ノード13内にVIF管理部13cを設置し、境界ノード13内の装置情報を集約したVIF警報を、WDM信号の1波をOSC光として使用して、隣接するドメインB20の境界ノード21へと転送するように構成される。その際に、ドメインA10の外部と接する部分にVIF13vがあると想定する。
【0022】
ここで、上位制御装置40は、アウトバウンド制御を行う場合でも、各ドメインの内部警報を直接扱う必要がなくなる。一方、上位制御装置40は、隣接するVIF間(VIF13v、VIF21v)でVIF警報を送受信すればよい。これにより、図10で例示したような上位制御装置40への警報の集中を予防し、通信システム全体でのスケーラビリティを向上させることができる。
【0023】
つまり、各ドメインにインバウンドでの自律制御を担当させ、上位制御装置40での計算量を減らすことで、通信システム全体として短時間での復旧が可能となる。また、上位制御装置40とドメインとの間で障害が発生しても、主信号が遮断されずに、自律的にインバウンド制御が可能となる。さらに、上位制御装置40は、ベンダに依存しないVIF警報を扱うことで、監視制御系をマルチベンダ共通のシステムに統一することができる。
【0024】
図3は、境界ノード13およびVIF管理部13cの詳細な構成図である。ここでは、境界ノード13およびVIF管理部13cを例示したが、他のノードおよびVIF管理部も同じ構成要素またはその一部を備える。
境界ノード13は、第1光増幅部131と、第2光増幅部132と、OXC部133と、光合分波部134とを有する。
第1光増幅部131および第2光増幅部132は、減衰した光信号を増幅する。図1で示した例では、ノード間は2重リングで接続されているので、光増幅部も回線ごとに(ここでは2つ)存在する。一方、2重リングに限定されず、境界ノード13が扱うネットワークの回線数に応じて、境界ノード13が備える光増幅部の個数も決定される。
OXC(optical cross-connect)部133は、光信号を電気信号に変換することなく、波長により経路選択して他ノードへ伝送する光クロスコネクトである。
光合分波部134は、OXC部133から受けた複数の信号を、波長多重(合波)したり、波長ごとに分離(分波)したりする。
【0025】
VIF管理部13cは、外部接続部135と、変換部136と、内部接続部137と、監視制御部138とを有する。
外部接続部135は、隣接する外部システムから警報を取得し、内部接続部137へ受け渡す。さらに、外部接続部135は、変換部136にて変換されたVIF警報を隣接する外部システムへ転送する。また、外部接続部135は、隣接するシステムへはVIFの故障とするVIF警報を転送し、上位制御装置40には故障の原因を求めるための警報を発出する。さらに、外部接続部135は、上位制御装置40から求められれば波及警報を通知する。
【0026】
変換部136は、自ドメインを隣接するドメインに対して光送受信部30に抽象化(仮想化)するために、内部警報をVIF警報に変換する。VIF警報は、自ドメインの監視制御情報として、光信号の正常時状態(ON/OFF)や、異常時警報(LOS/LOF/…)などが含まれるドメイン共通のデータモデルである。
そのため、VIF管理部11cは、監視対象である境界ノード11の状態(装置状態)と、その境界ノード11に接続される光送受信部30の状態を、監視対象であるVIF11vの状態情報としてマッピングしておく。そして、変換部136は、マッピングされた情報を元に、内部警報とVIF警報との変換処理を行う。
内部接続部137は、自ドメインのシステム端点として、インバウンドの監視制御機能を有する。監視制御部138は、内部接続部137の監視制御機能として、警報信号を送受信する。
【0027】
図4は、上位制御装置40の詳細な構成図である。
上位制御装置40は、トポロジ管理部401と、データベース402と、VIF処理部410とを有する。
データベース402には、ネットワーク(ドメインA10、ドメインB20)の管理情報として、トポロジ、トポロジに基づく実際の故障点、VIFの状態、VIFの接続情報、隣接VIF間の状態などが格納される。
トポロジ管理部401は、データベース402内のトポロジを管理し、適宜最新の情報に更新する。
【0028】
VIF処理部410は、VIF上位管理部411と、VIF接続部412と、異常検知部413とを有する。
VIF接続部412は、接続先の外部接続部135との間で、VIF警報を取得したりVIF警報を通知したりする。
VIF上位管理部411は、データベース402内のトポロジと、VIF接続部412が取得したVIF警報とを照合することで、どのVIFが隣接しているか、どこで障害が発生しているかなどを管理する。
異常検知部413は、VIF上位管理部411により隣接していると判断されたVIFどうしの状態を比較し、VIF間で異常が発生していないかを検知する。
【0029】
図5は、境界ノード21およびVIF管理部21cの詳細な構成図である。
境界ノード21は、第1光増幅部211と、第2光増幅部212と、OXC部213と、光合分波部214とを有する。VIF管理部21cは、外部接続部215と、変換部216と、内部接続部217と、監視制御部218とを有する。
なお、図5の構成図は、図3の構成図と同じ構成要素名で、符号が異なるものである。この図5の構成要素を用いて、図6で詳細な処理の説明を行う。
【0030】
図6は、通信システムの警報発生時の動作を示すシーケンス図である。
S11として、ドメインA10の中継ノード12の1ポートで故障が発生して光信号が出なくなった場合、内部警報(LOS信号)がドメイン内で転送される。この内部警報によるインバウンド制御により、ドメインA10内で故障点警報の抑止処理や冗長切替処理が実行される。
S12として、S11の内部警報がドメインA10の境界ノード13に届くと、VIF管理部13cの内部接続部137が内部警報を検知する。
一方、内部接続部137は、中継ノード12からの内部警報だけでなく、VIF13vを介して境界ノード13に接続される光送受信部30で検知された警報も、ドメインA10の(VIF13vからの)内部警報として検知してもよい。
S13として、変換部136は、S12で検知された内部警報を、VIF13vのVIF警報(LOS信号)に変換(マッピング)する。外部接続部135は、変換されたVIF警報を、上位制御装置40のVIF接続部412に通知する。
【0031】
S21として、VIF接続部412は、S13で通知されたVIF警報のVIF13vに対して、隣接するVIF21v(境界ノード21のVIFである旨の情報)をVIF上位管理部411から取得する。
S22として、異常検知部413は、通知されたVIF警報からドメイン間の異常を検知する(詳細は図7)。また、VIF上位管理部411は、データベース402内のトポロジと、通知されたVIF警報とを照合することで、どこで障害が発生しているか(つまり、警報の原因はどの箇所か)を特定してもよい。
S23として、VIF接続部412は、通知されたVIF警報を隣接するVIF21vを管理するVIF管理部21cに通知する。
【0032】
S31として、VIF管理部21cの外部接続部215は、S23で通知されたVIF警報をVIF21vのVIF警報(LOS信号)としてマッピングし、そのVIF警報を内部接続部217に受け渡す。
S32として、内部接続部217は、S31のVIF21vのVIF警報をドメインB20内部の警報として検出し、その検出結果をもとにドメインB20の内部警報を作成する。つまり、変換部216は、VIF21vのVIF警報をドメインB20の内部警報に変換する。
S33として、ドメインB20内で(境界ノード21→中継ノード22→境界ノード23)S32の内部警報が転送されることで、ドメインB20内のシングルベンダとしてインバウンド制御される。
【0033】
以上説明したシーケンスでは、上位制御装置40によるアウトバウンド制御がS21~S23に縮小されており、その他は各ドメイン内でのインバウンド制御である。よって、上位制御装置40への負担が大幅に軽減されている。
【0034】
図7は、異常検知部413の処理に使用されるテーブルの構成図である。図6と同様に、ドメインA10→ドメインB20に警報が転送される場合で説明する。
このテーブルは、ドメインごとの内部(内部警報)および外部(VIF警報)それぞれの警報の内容(正常状態および異常状態のいずれか)の組み合わせを元に、異常検知部413が故障箇所を特定するためのものである。以下に示すように、異常検知部413は、隣接するシステムのVIFの状態の組み合わせを上下流双方で確認することでシステム間の異常を判別する。
・テーブルの第1行は、ドメインA10およびドメインB20の双方で異常を示す警報を受け取っていない場合であり、ネットワーク全体で正常状態である。
・テーブルの第2行は、ドメインB20の内部だけで異常を示す警報を受け取った場合であり、ドメインB20の内部に故障箇所があることがわかる。
・テーブルの第3行は、隣接するドメインA10の外部とドメインB20の外部とで、状態が正常から異常に変化しているので、ドメイン間で異常が発生していることがわかる。
・テーブルの第4行は、ドメインA10およびドメインB20の双方で異常を示す警報を受け取った場合であり、警報が流れる最上流であるドメインA10内部に故障箇所があることがわかる。
・テーブルの第5行は、上流のドメインA10で異常が検出されているにもかかわらず、下流のドメインB20で異常が検出されていない場合であり、ドメイン間で警報を中継する上位制御装置40に異常があることがわかる。
【0035】
図8は、通信システムに用いられるコンピュータの構成図である。
図2の各ノード(境界ノード11、中継ノード12など)、各VIF管理部(VIF管理部11cなど)、上位制御装置40などの通信システムの各装置は、CPU901と、RAM902と、ROM903と、HDD904と、通信I/F905と、入出力I/F906と、メディアI/F907とを有するコンピュータ900として構成される。
通信I/F905は、外部の通信装置915と接続される。入出力I/F906は、入出力装置916と接続される。メディアI/F907は、記録媒体917からデータを読み書きする。さらに、CPU901は、RAM902に読み込んだプログラム(アプリケーションや、その略のアプリとも呼ばれる)を実行することにより、各処理部を制御する。そして、このプログラムは、通信回線を介して配布したり、CD-ROM等の記録媒体917に記録して配布したりすることも可能である。
【0036】
[効果]
本発明は、1つ以上の境界ノード13を有するドメインA10には、隣接するドメインB20との仮想的な接続部であるVIF13vが備えられ、
1つ以上の境界ノード21を有するドメインB20には、ドメインA10との仮想的な接続部であるVIF21vが備えられ、
警報通信装置が、境界ノード13および境界ノード21として構成されており、
境界ノード13が、ドメインA10内で処理可能な形式の内部警報を受け、ドメイン間で共通に処理可能な仮想IFの警報であるVIF警報に変換してから、VIF13vに隣接するVIF21vに通知し、
境界ノード21が、VIF21vのVIF警報を、ドメインB20内で処理可能な形式の内部警報に変換してから、ドメインB20内の他ノードに転送することを特徴とする。
【0037】
これにより、上位制御装置40にVIF警報を通知するノードから中継ノード12が省略されてシステム端点の境界ノード13だけになるので、上位制御装置40が処理する警報数や、上位制御装置40の監視ポイントが抑制される。よって、上位制御装置40に負荷が集中しなくなることで、通信システム全体のスケーラビリティが向上する。
【0038】
本発明は、警報通信装置と、ドメインA10およびドメインB20を制御する上位制御装置40とを含めて構成され、
上位制御装置40が、ドメインA10内の内部警報と、VIF13vのVIF警報と、VIF21vのVIF警報と、ドメインB20内の内部警報とで、それぞれの警報の正常状態および異常状態の組み合わせを元に、ドメインA10内部の故障か、ドメインB20内部の故障か、ドメイン間の故障かを特定することを特徴とする。
【0039】
これにより、上位制御装置40は、複数のドメインにまたがる広範囲から、警報が示す故障箇所を特定することができる。よって、ネットワークの保守員は、様々な箇所で送出される警報から、原因の警報に絞り込んで、効率的に障害復旧することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 ドメインA(第1ドメイン)
11,13,14,16 境界ノード(第1ノード)
12,15 中継ノード
11c,13c VIF管理部
11v,13v VIF(第1仮想IF)
20 ドメインB(第2ドメイン)
21,23,24,26 境界ノード(第2ノード)
22,25 中継ノード
21c,23c VIF管理部
21v,23v VIF(第2仮想IF)
30 光送受信部
40 上位制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10