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特許7184207演算装置、設備管理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】演算装置、設備管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/04 20060101AFI20221129BHJP
   G01L 1/00 20060101ALI20221129BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G01L5/04 Z
G01L1/00 M
H02G1/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021553206
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2019041516
(87)【国際公開番号】W WO2021079433
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】小林 玄
(72)【発明者】
【氏名】安藤 和也
(72)【発明者】
【氏名】和氣 正樹
(72)【発明者】
【氏名】金子 亮一
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 裕明
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-143780(JP,A)
【文献】特開平05-133723(JP,A)
【文献】特許第6428973(JP,B1)
【文献】特開2018-196301(JP,A)
【文献】特開2006-353031(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1552589(KR,B1)
【文献】特開2012-205351(JP,A)
【文献】特開2008-181412(JP,A)
【文献】特開2006-194653(JP,A)
【文献】特開2019-148464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0200556(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00,5/04-5/10,
H02G 1/02,
G01B 11/00-11/30,
G01C 15/00-15/14,
G06T 1/00-19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算装置であって、
管理対象となる屋外構造物及び前記屋外構造物に架けられるケーブルの点群データが入力される入力部と、
前記点群データから前記ケーブルの最下点の座標(p、q、r)と2つの前記屋外構造物に前記ケーブルが架けられる架渉点の座標(a,b,c)と座標(x,y,z)を取得する座標取得部と、
数C1で前記屋外構造物間の距離S(m)と前記ケーブルの弛度d(m)を計算すること、
データベースから得た前記ケーブルの単位長当たりの荷重W(N/m)、前記距離S及び前記弛度dを数C2に代入して前記屋外構造物にかかる前記ケーブルの張力T(N)を計算すること、
前記張力T(N)に前記架渉点の高さH(m)を乗じて前記架渉点におけるモーメント(N・m)を計算すること、並びに
前記モーメントを前記屋外構造物の1つの任意の高さH(m)で割り、荷重T’(N)を算出することを行う演算部と、
を備える演算装置。
【数C1】
【数C2】
【請求項2】
前記ケーブルが、1つ又は複数のケーブル類、前記屋外構造物の前記架渉点間に架けられる支持体、及び前記支持体に前記ケーブル類を架ける一束化ハンガーで構成されており、且つ前記点群データを取得するときに風がある場合、
前記演算部は、数C3から計算した張力T(N)を前記張力T(N)とすることを特徴とする請求項1に記載の演算装置。
【数C3】
ただし、θ(℃)は無風時の温度、θ(℃)は有風時の温度、E(N/m)は前記支持体のヤング率、A(m)は前記支持体の断面積、α(1/℃)は前記支持体の線膨張係数、W(N/m)=√(W +W )は有風時の単位長さ当たりのケーブル荷重、W(N/m)は風起因で前記ケーブルに発生する単位長さ当たりの風圧荷重である。風圧荷重W(N/m)は風圧荷重種別による係数K(N/m)、前記一束化ハンガーの外径D(m)、前記一束化ハンガーが支える前記ケーブル類の外径と前記一束化ハンガーの断面高さの合計L(m)を用いて数C4で計算する。
【数C4】
【請求項3】
前記ケーブルが複数ある場合、
前記演算部は、
前記ケーブル毎に、前記モーメント(N・m)を計算すること、
前記ケーブル毎の前記モーメント(N・m)をベクトル加算して合成モーメントを算出すること、並びに
前記合成モーメントを前記任意の高さH(m)で割り、合成した荷重T’(N)を算出すること
を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の演算装置。
【請求項4】
前記屋外構造物に重さZ(N)の付属物が付随する場合、
前記演算部は、
前記重さZ(N)に前記付属物が前記屋外構造物に取り付けられる架渉点と前記付属物の重心との水平距離L(m)を乗じて前記付属物の前記架渉点におけるモーメント(N・m)を計算すること、
前記ケーブルと前記付属物の前記モーメント(N・m)をベクトル加算して合成モーメントを算出すること、並びに
前記合成モーメントを前記任意の高さH(m)で割り、合成した荷重T’(N)を算出すること
を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の演算装置。
【請求項5】
設備管理方法であって、
管理対象となる屋外構造物及び前記屋外構造物に架けられるケーブルの点群データを取得すること、
前記点群データから前記ケーブルの最下点の座標(p、q、r)と2つの前記屋外構造物に前記ケーブルが架けられる架渉点の座標(a,b,c)と座標(x,y,z)を取得すること、
数C1で前記屋外構造物間の距離S(m)と前記ケーブルの弛度d(m)を計算すること、
データベースから得た前記ケーブルの単位長当たりの荷重W(N/m)、前記距離S及び前記弛度dを数C2に代入して前記屋外構造物にかかる前記ケーブルの張力T(N)を計算すること、
前記張力T(N)に前記架渉点の高さH(m)を乗じて前記架渉点におけるモーメント(N・m)を計算すること、並びに
前記モーメントを前記屋外構造物の1つの任意の高さH(m)で割り、荷重T’(N)を算出すること、
を行う設備管理方法。
【数C1】
【数C2】
【請求項6】
前記ケーブルは、1つ又は複数のケーブル類、前記屋外構造物の前記架渉点間に架けられる支持体、及び前記支持体に前記ケーブル類を架ける一束化ハンガーで構成されており、
前記点群データを取得するときに風がある場合、数C3から計算した張力T(N)を前記張力T(N)とすることを特徴とする請求項5に記載の設備管理方法。
【数C3】
ただし、θ(℃)は無風時の温度、θ(℃)は有風時の温度、E(N/m)は前記支持体のヤング率、A(m)は前記支持体の断面積、α(1/℃)は前記支持体の線膨張係数、W(N/m)=√(W +W )は有風時の単位長さ当たりのケーブル荷重、W(N/m)は風起因で前記ケーブルに発生する単位長さ当たりの風圧荷重である。風圧荷重W(N/m)は風圧荷重種別による係数K(N/m)、前記一束化ハンガーの外径D(m)、前記一束化ハンガーが支える前記ケーブル類の外径と前記一束化ハンガーの断面高さの合計L(m)を用いて数C4で計算する。
【数C4】
【請求項7】
前記屋外構造物に重さZ(N)の付属物が付随する場合、
前記重さZ(N)に前記付属物が前記屋外構造物に取り付けられる架渉点と前記付属物の重心との水平距離L(m)を乗じて前記付属物の前記架渉点におけるモーメント(N・m)を計算すること、
前記ケーブルと前記付属物の前記モーメント(N・m)をベクトル加算して合成モーメントを算出すること、並びに
前記合成モーメントを前記任意の高さH(m)で割り、合成した荷重T’(N)を算出すること
を行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の設備管理方法。
【請求項8】
コンピュータを請求項1から4のいずれかの演算装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電柱のような屋外構造物に架け渡されたケーブルの張力、合成荷重を算出する演算装置、その算出手法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、屋外構造物(ポール)とケーブルを含む設備の例を説明する図である。図1に示すように、設備構築後に民地、障害物等、その他の理由で支線を取り外すなど設備形態に変化が生じた場合、ポールに不平衡な荷重が発生する。ポールに不平衡な荷重が発生すると、ポールに傾きやたわみが生じる。ポールに傾きやたわみが生じることにより、ポール間のケーブル距離や弛度が変化し、結果としてポールにかかる張力が変化する。そのため、現在の張力が布設時と異なることがある。
【0003】
図2は、屋外構造物の管理方法を説明する図である。張力とポールの設計上の強度(設計強度)との比較、いわゆる耐力判定を行う場合、図2に示すように、ポールの各架渉点での張力等をモーメント計算により基準点(荷重作用点)にかかる合成荷重に換算する。しかし、上記で説明した通り、ポールに不平衡な荷重が発生するとポールにかかる張力が布設時から変化する。結果として、荷重作用点への現状の合成荷重と布設時の合成荷重とがずれることになる。
【0004】
このため、設備形態に変化が生じたとき、あるいは定期的に作業者が現地に赴き、目視あるいは手動でポール間のケーブル距離や弛度を計測し、現在の張力を算出する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-195240号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「配電規定(低圧及び高圧)」,JEAC7001-2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は次の3つである。
(課題1)現在のポールにかかる張力が不明
上記で説明した通り、ポールに不平衡な荷重が発生している場合ポールに傾きやたわみが生じる。これにより、ポール間のケーブル距離や弛度が変化してしまい、結果としてポールにかかる張力が変化し、実際の張力が布設時と異なっている。
(課題2)ポールにかかる張力の荷重作用点への換算が不正確
ポールの設計強度に対して耐力判定を行う場合、ポールの各架渉点での張力が必要となる。しかし、上記で説明した通り、ポールに不平衡な荷重が発生すると、ポールにかかる張力が変化し、実際の張力が布設時の張力と異なることになる。また、ポールの傾きやたわみなどの変形を考慮した耐力判定を行うためには、張力を任意の荷重作用点へ換算することが必要となる。
(課題3)作業者による測定では多大な時間が必要
現在、実際の張力を算出する場合、作業者が目視あるいは手動でポール間のケーブル距離や弛度を計測するため、多大な時間を要している。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、屋外構造物にかかる現在の張力を短時間で取得して耐力判定を可能とする演算装置、設備管理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る演算装置は、ケーブルの3Dモデルデータからケーブルの弛度およびポール間距離を数C1で算出し、該弛度および該ポール間距離とケーブルの単位長さ当たりの重量とからポール間の各ケーブルの張力を数C2(無風時)または数C3(有風時)により算出することとした。また、本発明に係る演算装置は、該張力とポールの付属物の荷重とをポール上の任意の位置に換算した合成荷重を数C3により算出することとした。
【0010】
具体的には、本発明に係る演算装置は、
管理対象となる屋外構造物及び前記屋外構造物に架けられるケーブルの点群データが入力される入力部と、
前記点群データから前記ケーブルの最下点の座標(p、q、r)と2つの前記屋外構造物に前記ケーブルが架けられる架渉点の座標(a,b,c)と座標(x,y,z)を取得する座標取得部と、
数C1で前記屋外構造物間の距離S(m)と前記ケーブルの弛度d(m)を計算すること、
データベースから得た前記ケーブルの単位長当たりの荷重W(N/m)、前記距離S及び前記弛度dを数C2に代入して前記屋外構造物にかかる前記ケーブルの張力T(N)を計算すること、
に前記架渉点の高さH(m)を乗じて前記架渉点におけるモーメント(N・m)を計算すること、並びに
前記モーメントを前記屋外構造物の1つの任意の高さH(m)で割り、荷重T’(N)を算出することを行う演算部と、
を備える。
【数C1】
【数C2】
【0011】
また、本発明に係る設備管理方法は、
管理対象となる屋外構造物及び前記屋外構造物に架けられるケーブルの点群データを取得すること、
前記点群データから前記ケーブルの最下点の座標(p、q、r)と2つの前記屋外構造物に前記ケーブルが架けられる架渉点の座標(a,b,c)と座標(x,y,z)を取得すること、
数C1で前記屋外構造物間の距離S(m)と前記ケーブルの弛度d(m)を計算すること、
データベースから得た前記ケーブルの単位長当たりの荷重W(N/m)、前記距離S及び前記弛度dを数C2に代入して前記屋外構造物にかかる前記ケーブルの張力T(N)を計算すること、
前記張力T(N)に前記架渉点の高さH(m)を乗じて前記架渉点におけるモーメント(N・m)を計算すること、並びに
前記モーメントを前記屋外構造物の1つの任意の高さH(m)で割り、荷重T’(N)に変換すること、
を行う。
【0012】
まず、本発明に係る演算装置及び設備管理方法は、ケーブルの3Dモデルデータを用いることができるため、ポール間のケーブル距離や弛度を3次元計測するレーザスキャナ等を用いることができる。このため、作業者が手動でポール間のケーブル距離や弛度を計測する必要がなくなる。従って、本発明に係る演算装置及び設備管理方法は、課題3を解決することができる。
【0013】
また、本発明に係る演算装置及び設備管理方法は、図3に示すように、ポールの傾きやたわみなどの変形や弛度の変化を考慮して、ポール間のケーブル距離や弛度を用いて各架渉点での張力(Tα、Tβ)を算出することができる。つまり、本発明に係る演算装置及び設備管理方法は、レーザスキャナ等で現在のポールやケーブルの形状を測定した結果から現在の張力(Tα、Tβ)を算出することができる。従って、本発明に係る演算装置及び設備管理方法は、課題1を解決することができる。
【0014】
さらに、本発明に係る演算装置及び設備管理方法は、図4に示すように、上記の手法で算出した各架渉点の張力を任意の位置での荷重作用点へ換算することができる。従って、本発明に係る演算装置及び設備管理方法は、課題2を解決することができる。
【0015】
以上のように、本発明は、屋外構造物にかかる現在の張力を短時間で取得して耐力判定を可能とする演算装置及び設備管理方法を提供することができる。
【0016】
なお、前記ケーブルが複数ある場合、
前記演算部は、
前記ケーブル毎に、前記モーメント(N・m)を計算すること、
前記ケーブル毎の前記モーメント(N・m)をベクトル加算して合成モーメントを算出すること、並びに
前記合成モーメントを前記任意の高さH(m)で割り、合成した荷重T’(N)を算出すること
を行うことを特徴とする。
【0017】
また、前記屋外構造物に重さZ(N)の付属物が付随する場合、
前記演算部は、
前記重さZ(N)に前記付属物が前記屋外構造物に取り付けられる架渉点と前記付属物の重心との水平距離L(m)を乗じて前記付属物の前記架渉点におけるモーメント(N・m)を計算すること、
前記ケーブルと前記付属物の前記モーメント(N・m)をベクトル加算して合成モーメントを算出すること、並びに
前記合成モーメントを前記任意の高さH(m)で割り、合成した荷重T’(N)を算出すること
を行うことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る演算装置及び設備管理方法は、これら一連の算出を任意の風速を設定して算出することもできる。
前記ケーブルが、1つ又は複数のケーブル類、前記屋外構造物の前記架渉点間に架けられる支持体、及び前記支持体に前記ケーブル類を架ける一束化ハンガーで構成されており、且つ前記点群データを取得するときに風がある場合、
前記演算部は、数C3から計算した張力T(N)を前記張力T(N)とすることを特徴とする。
【数C3】
ただし、θ(℃)は無風時の温度、θ(℃)は有風時の温度、E(N/m)は前記支持体のヤング率、A(m)は前記支持体の断面積、α(1/℃)は前記支持体の線膨張係数、W(N/m)=√(W +W )は有風時の単位長さ当たりのケーブル荷重、W(N/m)は風起因で前記ケーブルに発生する単位長さ当たりの風圧荷重である。風圧荷重W(N/m)は風圧荷重種別による係数K(N/m)、前記一束化ハンガーの外径D(m)、前記一束化ハンガーが支える前記ケーブル類の外径と前記一束化ハンガーの断面高さの合計L(m)を用いて数C4で計算する。
【数C4】
【0019】
本発明に係る演算装置は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。すなわち、本発明は、コンピュータを前記演算装置として機能させるプログラムである。
【0020】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、屋外構造物にかかる現在の張力を短時間で取得して耐力判定を可能とする演算装置、設備管理方法、及びプログラムを提供することができる。
【0022】
つまり、本発明が課題1を解決することで、実際のポールの変形や弛度の変化を考慮して張力を算出することで、従来の手法よりも正確に各架渉点での張力を算出することができる。
【0023】
また、本発明が課題2を解決することで、実際のポールの変形を考慮して荷重作用点への換算を実施でき、従来の手法よりもポールの設計強度に対する耐力判定を正確に行うことができる。また、任意の風速に設定して合成荷重を算出することで、電柱1本ずつに対して昨今の大型台風など、想定を超えるような自然環境下でのポールの設計強度に対する耐力判定が可能なので、更改対象電柱のランク付けを実施することができる。
【0024】
さらに、本発明が課題3を解決することで、3次元測量を正確にかつ網羅的に行うことができ、作業者の工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】屋外構造物(ポール)とケーブルを含む設備の例を説明する図である。
図2】屋外構造物の管理方法を説明する図である。
図3】本発明に係る演算装置が張力を算出する手法を説明する図である。
図4】本発明に係る演算装置が張力を算出する手法を説明する図である。
図5】本発明に係る演算装置を説明する図である。
図6】MMSや固定式レーザスキャナを説明する図である。
図7】3Dモデルデータの例を説明する図である。
図8】3Dモデルデータから座標を取得する手法を説明する図である。
図9】架渉点での張力を任意の高さの荷重に変換する手法を説明する図である。
図10】本発明に係る演算装置が張力を算出する手法を説明する図である。
図11】本発明に係る設備管理方法を説明するフローチャートである。
図12】本発明に係る設備管理方法においてケーブルや設備を3Dモデル化する手法を説明するフローチャートである。
図13】本発明に係る演算装置が張力を算出する手法(有風時)を説明する図である。(A)は全体図、(B)は最下点Gにおける荷重を説明する図である。
図14】本発明に係る演算装置を説明する図である。
図15】数式の証明を説明する図である。
図16】座標と距離の関係を説明する図である。
図17】風によりケーブルに発生する荷重を説明する図である。
図18】一束化ハンガーの断面を説明する図である。
図19】ケーブルの支持体を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0027】
(実施形態1)
図5は、本実施形態の演算装置10を説明する図である。演算装置10は、
管理対象となる屋外構造物及び前記屋外構造物に架けられるケーブルの点群データが入力される入力部11と、
前記点群データから前記ケーブルの最下点の座標(p、q、r)と2つの前記屋外構造物に前記ケーブルが架けられる架渉点の座標(a,b,c)と座標(x,y,z)を取得する座標取得部12と、
数C1で前記屋外構造物間の距離S(m)と前記ケーブルの弛度d(m)を計算すること、
データベースから得た前記ケーブルの単位長当たりの荷重W(N/m)、前記距離S及び前記弛度dを数C2に代入して前記屋外構造物にかかる前記ケーブルの張力T(N)を計算すること、並びに
前記張力T(N)に前記架渉点の高さH(m)を乗じて前記架渉点におけるモーメント(N・m)を計算すること、並びに
前記モーメントを前記屋外構造物の1つの任意の高さH(m)で割り、荷重T’(N)に変換することを行う演算部13と、
を備える。
【0028】
図5には、前記点群データを取得するモービルマッピングシステム(Mobile Mapping System:以下、MMS)と固定式レーザスキャナも記載されている。MMSは、車両に3次元レーザスキャナ(3Dレーザ測量機)、カメラ、GPS(Global Positioning System)、IMU(慣性計測装置)を搭載し、路上を走行しながら周囲のポール、建物、道路、橋梁、鉄塔などを含む屋外構造物の3次元測量を網羅的に行い、当該屋外構造物の表面上の多数の点の3次元座標を収集できる装置である。固定式レーザスキャナは、3Dレーザ測量機とGPSを搭載し、設置された場所から周囲の屋外構造物の3次元測量を網羅的に行い、当該屋外構造物の表面上の多数の点の3次元座標を収集できる装置である(図6参照。)。
【0029】
まず、MMSにおける3次元レーザスキャナ、GPSおよびIMUからはそれぞれ、屋外構造物までの3次元距離データ、車両の位置座標および車両の加速度データが得られ、これらが記憶媒体に入力される。同様に、固定式レーザスキャナにおける3次元レーザスキャナおよびGPSからはそれぞれ、屋外構造物までの3次元距離データが得られ、これらも記憶媒体に入力される。
【0030】
記憶媒体に格納した点群データは、演算装置10の入力部11に入力され、座標取得部12の抽出処理部にてケーブル及びその他設備の3次元モデル化(以下3Dモデルデータ)がなされる。図7は、3Dモデルデータの例を説明する図である。座標取得部12は、3Dモデルデータからケーブルの最下点Gの座標(p,q,r)と2つのポールの架渉点Eの座標(a,b,c)と架渉点Fの座標(x,y,z)を取得する(図8)。これらの座標は特許文献1などに記載される技術で取得可能である。
【0031】
演算部13は、数C1を利用して最下点Gの座標(p,q,r)、架渉点Eの座標(a,b,c)及び架渉点Fの座標(x,y,z)からポール間距離Sと弛度dを計算する。なお、数C1の導出については付録1に記載する。
【0032】
さらに演算部13は、設備データよりケーブル長さあたりの重量Wを取得し、先に計算したポール間距離Sと弛度dとともに数C2に代入して張力Tを計算する。数C2は非特許文献1(p.204)に記載される張力式である。なお、各パラメータの単位は、ここで、ポールにかかる張力Tは(N)、単位長さ当たりのケーブル荷重Wは(N/m)、ポール間距離Sは(m)、弛度dは(m)である。
【0033】
ここで、図9のように、架渉点(高さH)での張力Tをポールの任意の点(高さH)における荷重T’(N)に換算する場合、下数となる。
T’=T×H/H
【0034】
なお、ポール間にケーブルが複数架け渡されている場合、ケーブル毎にそれぞれの張力から架渉点におけるモーメントを計算して合成する。そして、合成したモーメントを任意の高さH(m)で割り、それらを加算することで合成荷重T’(N)を求めることができる。なお、それぞれの張力の方向が異なる場合は、モーメントをベクトル加算することになる。
【0035】
また、屋外構造物に重さZ(N)の付属物(例えばトランス)が付随する場合、演算部13は、前記重さZ(N)に前記付属物が前記屋外構造物に取り付けられる架渉点と前記付属物の重心との水平距離L(m)を乗じて前記付属物の前記架渉点におけるモーメント(N・m)を計算すること、
前記ケーブルと前記付属物の前記モーメント(N・m)をベクトル加算して合成モーメントを算出すること、並びに
前記合成モーメントを前記任意の高さH(m)で割り、合成した荷重T’(N)を算出すること
を行う。
つまり、付属物の重さをポールの任意の点(高さH)における荷重Tz(N)に換算する場合、下数となる。
Tz=Z×L/H
【0036】
図10で具体的に説明する。ポールには、ケーブルが2本架けられ、トランスが1つ取り付けられているものとする。このような場合、次式で任意の点での高さにおけるポールにかかる合成荷重T’(N)を計算する。
【数1】
ここでTα(N)は第一架渉点、Tβ(N)は第二架渉点でのポールにかかる張力、Z(N)はトランスの重量、H(m)は任意の点までの高さ、Hα(m)は地面からポールの第一架渉点までの高さ、Hβ(m)は地面からポールの第二架渉点までの高さ、L(m)は電柱とトランスの架渉点からトランスの重心座標までの距離である。
【0037】
数1のモーメント計算により、各架渉点にかかる張力または変圧装置などの付属物の荷重をポールの任意の点に換算した合成荷重を算出することができる。なお、各張力Tα、Tβの方向とトランスの取付方向が異なる場合には、各モーメントをベクトルで表し、ベクトル計算によって合成モーメントを算出すればよい。
[補足]
・各架渉点のモーメント:
地面を支点、作用点を架渉点として考えた時に、各架渉点にかかるモーメントは張力と支点から作用点までの距離の積で表される。
・トランスのモーメント:
トランスのモーメントはトランスの重量と電柱とトランスの架渉点からトランスの重心座標までの距離の積で表される。
・任意の点での合成荷重:
上記で算出された各モーメントの合成モーメントを地面から算出したい点までの距離で割ることで算出される。
【0038】
(実施形態2)
図11は、本実施形態の設備管理方法を説明するフローチャートである。本設備管理方法は、
管理対象となる屋外構造物及び前記屋外構造物に架けられるケーブルの点群データを取得すること、
前記点群データから前記ケーブルの最下点の座標(p、q、r)と2つの前記屋外構造物に前記ケーブルが架けられる架渉点の座標(a,b,c)と座標(x,y,z)を取得すること(ステップS01)、
数C1で前記屋外構造物間の距離S(m)と前記ケーブルの弛度d(m)を計算すること(ステップS02)、
データベースから得た前記ケーブルの単位長当たりの荷重W(N/m)、前記距離S及び前記弛度dを数C2に代入して前記屋外構造物にかかる前記ケーブルの張力T(N)を計算すること(ステップS03、S04)、
前記張力T(N)に前記架渉点の高さH(m)を乗じて前記架渉点におけるモーメント(N・m)を計算すること、並びに
前記モーメントを前記屋外構造物の1つの任意の高さH(m)で割り、荷重T’(N)を算出すること(ステップS06)、
を行う。
【0039】
詳細を説明する。
ステップS01では、レーザスキャナ等を用いてポール、建物、道路、橋梁、鉄塔などを含む屋外構造物の3次元測量を網羅的に行い、取得した3次元座標からケーブル及びその他設備の3Dモデル化を行う。図12は、ステップS01でケーブルの3Dモデルを抽出する処理を説明するフローチャートである。座標取得部12は、レーザスキャナが検出した懸垂線状の点群を読み込む(ステップS11)。そして、座標取得部12は、その点群から不自然な懸垂線を除外し、残った懸垂線を連結させる(ステップS12)。座標取得部12は、得られた懸垂線をケーブルとして3Dオブジェクト化する(ステップS13)。
【0040】
ステップS02では、座標取得部12が、ケーブルの3Dモデルを利用して、図8のように、架渉点と最下点の3次元座標を数C1に代入してポール間距離Sと弛度dを算出する。
ステップS03では、単位長さ当たりのケーブル荷重W(N/m)を取得する。ケーブル荷重Wは、外部のデータベースから与えられてもよいし、計算時に作業者が入力してもよい。
【0041】
ステップS04では、各架渉点におけるケーブルの弛度が電柱に与える張力をケーブル毎に算出する。風を考慮しない場合、ポールに接続されている各架渉点におけるケーブルの弛度が電柱に与える張力T(N)は、数C2にステップS02で算出した値とステップS03で得たケーブル荷重W(N/m)を代入することで求められる。一方、風や温度を考慮する場合、後述する数C3及び数C4で水平張力Tを計算する。
【0042】
ステップS05は、ポールにケーブル以外にトランス等の付属物が取り付けられている場合に行う。データベース等から付属物の重さZを取得し、ポールと付属物の架渉点から付属物の重心座標までの距離L(m)とから荷重を算出する。
ステップS06では、図10のように、各架渉点での張力あるいは付属物の重量をポールの任意の点に換算した合成荷重T’を数1で計算する。
【0043】
(実施形態3)
本実施形態では、風があるときの張力を算出する手法について説明する。図13は、本実施形態で張力を算出するときの手法を説明する図である。演算装置の構成は図5の構成と同じである。風を考慮するとき、ケーブルの形態も考慮する必要がある。ケーブルの形態については、付録2に記載する。
【0044】
つまり、前記ケーブルが、1つ又は複数のケーブル類、前記屋外構造物の前記架渉点間に架けられる支持体、及び前記支持体に前記ケーブル類を架ける一束化ハンガーで構成されており、且つ前記点群データを取得するときに風がある場合、演算部13は、数C3から計算した張力T(N)を前記張力T(N)とする。つまり、数C3で算出した張力Tを張力Tとして数1等に代入して合成荷重T’を算出する。
【0045】
詳細に説明する。
図13のように有風時の場合、風によりポール自体に応力が発生するとともに、ケーブルがポールに与える張力も発生する。風によりケーブルに発生する荷重を以下のように算出する。
ケーブル類の外径和が一束化ハンガーの外径D(m)以下の場合、風でケーブルに発生する単位長さ当たりの水平荷重W(N/m)は、Wc=K×Lで計算できる。
一方、ケーブル類の外径和が一束化ハンガーの外径D(m)より大きい場合、風でケーブルに発生する単位長さ当たりの水平荷重W(N/m)は、Wc=K×Dで計算できる。
ここで、K(N/m)は風圧荷重種別による係数、D(m)は一束化ハンガーの外径、L(m)は一束化ハンガー内のケーブル外径と一束化ハンガーの断面高さの合計である。
【0046】
風により発生する単位長さ当たりのケーブル荷重W(N/m)は、単位長さ当たりのケーブル荷重W(N/m)と水平荷重W(N/m)とのベクトル和であるため、次式となる。
【数2】
【0047】
有風時は、ポール及びケーブルに吹く風の方向について、ポール及びケーブルを基準とした3軸方向にベクトル変換して風圧による荷重を換算する必要がある。また、温度変化した場合は、ケーブルの伸縮により水平張力が変化するが、その際には数C3を用いて水平張力Tを求める(付録3を参照。)。
なお、数C3において、T(N)は有風時の水平張力、θ(℃)は無風時の温度、θ(℃)は有風時の温度、E(N/m)は支持体のヤング率、A(m)は支持体断面積、α(1/℃)は支持体の線膨張係数である(付録4を参照。)。
【0048】
(実施形態4)
実施形態1から3で説明した演算装置10は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
図14は、演算装置10であるシステム100のブロック図を示している。システム100は、ネットワーク135へと接続されたコンピュータ105を含む。
【0049】
ネットワーク135は、データ通信ネットワークである。ネットワーク135は、プライベートネットワーク又はパブリックネットワークであってよく、(a)例えば或る部屋をカバーするパーソナル・エリア・ネットワーク、(b)例えば或る建物をカバーするローカル・エリア・ネットワーク、(c)例えば或るキャンパスをカバーするキャンパス・エリア・ネットワーク、(d)例えば或る都市をカバーするメトロポリタン・エリア・ネットワーク、(e)例えば都市、地方、又は国家の境界をまたいでつながる領域をカバーするワイド・エリア・ネットワーク、又は(f)インターネット、のいずれか又はすべてを含むことができる。通信は、ネットワーク135を介して電子信号及び光信号によって行われる。
【0050】
コンピュータ105は、プロセッサ110、及びプロセッサ110に接続されたメモリ115を含む。コンピュータ105が、本明細書においてはスタンドアロンのデバイスとして表されているが、そのように限定されるわけではなく、むしろ分散処理システムにおいて図示されていない他のデバイスへと接続されてよい。
【0051】
プロセッサ110は、命令に応答し且つ命令を実行する論理回路で構成される電子デバイスである。
【0052】
メモリ115は、コンピュータプログラムがエンコードされた有形のコンピュータにとって読み取り可能な記憶媒体である。この点に関し、メモリ115は、プロセッサ110の動作を制御するためにプロセッサ110によって読み取り可能及び実行可能なデータ及び命令、すなわちプログラムコードを記憶する。メモリ115を、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードドライブ、読み出し専用メモリ(ROM)、又はこれらの組み合わせにて実現することができる。メモリ115の構成要素の1つは、プログラムモジュール120である。
【0053】
プログラムモジュール120は、本明細書に記載のプロセスを実行するようにプロセッサ110を制御するための命令を含む。本明細書において、動作がコンピュータ105或いは方法又はプロセス若しくはその下位プロセスによって実行されると説明されるが、それらの動作は、実際にはプロセッサ110によって実行される。
【0054】
用語「モジュール」は、本明細書において、スタンドアロンの構成要素又は複数の下位の構成要素からなる統合された構成のいずれかとして具現化され得る機能的動作を指して使用される。したがって、プログラムモジュール120は、単一のモジュールとして、或いは互いに協調して動作する複数のモジュールとして実現され得る。さらに、プログラムモジュール120は、本明細書において、メモリ115にインストールされ、したがってソフトウェアにて実現されるものとして説明されるが、ハードウェア(例えば、電子回路)、ファームウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせのいずれかにて実現することが可能である。
【0055】
プログラムモジュール120は、すでにメモリ115へとロードされているものとして示されているが、メモリ115へと後にロードされるように記憶装置140上に位置するように構成されてもよい。記憶装置140は、プログラムモジュール120を記憶する有形のコンピュータにとって読み取り可能な記憶媒体である。記憶装置140の例として、コンパクトディスク、磁気テープ、読み出し専用メモリ、光記憶媒体、ハードドライブ又は複数の並列なハードドライブで構成されるメモリユニット、並びにユニバーサル・シリアル・バス(USB)フラッシュドライブが挙げられる。あるいは、記憶装置140は、ランダムアクセスメモリ、或いは図示されていない遠隔のストレージシステムに位置し、且つネットワーク135を介してコンピュータ105へと接続される他の種類の電子記憶デバイスであってよい。
【0056】
システム100は、本明細書においてまとめてデータソース150と称され、且つネットワーク135へと通信可能に接続されるデータソース150A及びデータソース150Bを更に含む。実際には、データソース150は、任意の数のデータソース、すなわち1つ以上のデータソースを含むことができる。データソース150は、体系化されていないデータを含み、ソーシャルメディアを含むことができる。
【0057】
システム100は、ユーザ101によって操作され、且つネットワーク135を介してコンピュータ105へと接続されるユーザデバイス130を更に含む。ユーザデバイス130として、ユーザ101が情報及びコマンドの選択をプロセッサ110へと伝えることを可能にするためのキーボード又は音声認識サブシステムなどの入力デバイスが挙げられる。ユーザデバイス130は、表示装置又はプリンタ或いは音声合成装置などの出力デバイスを更に含む。マウス、トラックボール、又はタッチ感応式画面などのカーソル制御部が、さらなる情報及びコマンドの選択をプロセッサ110へと伝えるために表示装置上でカーソルを操作することをユーザ101にとって可能にする。
【0058】
プロセッサ110は、プログラムモジュール120の実行の結果122をユーザデバイス130へと出力する。あるいは、プロセッサ110は、出力を例えばデータベース又はメモリなどの記憶装置125へともたらすことができ、或いはネットワーク135を介して図示されていない遠隔のデバイスへともたらすことができる。
【0059】
例えば、図11及び図12のフローチャートを行うプログラムをプログラムモジュール120としてもよい。システム100を演算処理部Dとして動作させることができる。
【0060】
用語「・・・を備える」又は「・・・を備えている」は、そこで述べられている特徴、完全体、工程、又は構成要素が存在することを指定しているが、1つ以上の他の特徴、完全体、工程、又は構成要素、或いはそれらのグループの存在を排除してはいないと、解釈されるべきである。用語「a」及び「an」は、不定冠詞であり、したがって、それを複数有する実施形態を排除するものではない。
【0061】
(他の実施形態)
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。要するにこの発明は、上位実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0062】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0063】
[付録1]
図15及び図16は、数C1の導出を説明する図である。
ポール間のケーブルはカテナリー曲線で表されるので、次の式(カテナリー式)が成り立つ。
【数A1-1】
また、cosh xの級数展開部分の第3項以下について無視すると、
【数A1-2】
と近似できるので、上記カテナリー式について次の式が成り立つ。
【数A1-3】
【0064】
ポールAB間のケーブルの架渉点座標とケーブルの最下点座標を図15のように定義する。この時、2点(a,c)と(x,z)はカテナリー曲線上の点なので、次の式が成り立つ。
【数A1-4】
ここで、h=z-c、s=x-aとすると2点を通る直線の方程式は次の式が成り立つ。
【数A1-5】
【0065】
また、次の式の通りにf(X)を置く。
【数A1-6】
これは直線の方程式からカテナリー曲線を引いたものであり、f(X)の最大値が弛度d(m)となる。一方、直線の傾きより次の式が成り立つ。
【数A1-7】
【数A1-8】
X=sh/Sのとき、f(X)は最大になる。このとき、下記の式が成り立つ。
【数A1-9】
【0066】
数A9に数C2の張力式を代入すると次式となる。
【数A1-10】
2次方程式の解の公式よりdは次式となる。
【数A1-11】
【0067】
ここまでの計算は最下点座標が原点(0, 0)を通ると仮定して計算している。ここで、最下点座標が原点を通らずに、(p,r)を通る場合、数A11は下記の通りとなる。
【数A1-12】
以上より、数C1のdが導出され、これは3次元座標系でも同様の値となる。
【0068】
また、図16の2次元座標において、AB間距離を求める方法は各軸の距離の2乗の和の平方根を取ればいいので、√((x-a)+(y-b))となる。したがって、ポール間距離S(m)は2点間の距離を求める式を用いると下記の通りとなる。
【数A1-13】
以上より、数C1のSが導出される。
【0069】
[付録2]
有風時、ケーブルに発生する風圧荷重Pc(kN)は次式で算出される。
[数A2-1]
Pc=K”・Σd・S
ここで、K”(kN/m)は風圧荷重種別による係数(甲種:0.98、丙種:0.49)である。Σd(m)は各種ケーブルの外径和(ケーブルの外径和+添加ケーブルの外径和)である。S(m)は平均ポール間隔である。
【0070】
例えば、図17のような一束化形態の場合、風圧を受けるのは一束化ハンガーとケーブルになる。ここで、図18のように一束化ハンガーの外径をD(m)、一束化ハンガー内のケーブル外径と一束化ハンガーの断面高さの合計をL(m)とすると、一束化ハンガー内のケーブル外径の合計により、外径和は以下の2通りに分類される。
(A)ケーブル類の外径和が一束化ハンガーの外径以下の場合(D≧L)、外径和はL(m)となる。
(B)ケーブル類の外径和が一束化ハンガーの外径より大きい場合(D<L)、外径和はD(m)となる。
【0071】
[付録3]
弛度の計算式(数C3)の導出を説明する。
温度及び荷重と弛度との関係式は次式で表される。次式は、架け渡されたケーブルについて周囲の温度及び単位長あたりの垂直荷重が変わった場合に成り立つ関係式であり、平坦地、傾斜地のいずれでも適用できる一般式である。
【数A3-1】
【数A3-2】
なお、
S(m)はポール間隔、
L(m)はケーブルの架渉状態での長さ、
(m)は温度θ℃、ケーブル1m当たりの荷重(kN/m)における弛度、
(kN)は温度θ℃、ケーブル1m当たりの荷重(kN/m)における張力、
(m)は温度θ℃、ケーブル1m当たりの荷重(kN/m)における弛度、
(kN)は温度θ℃、ケーブル1m当たりの荷重(kN/m)における張力、
α(1/℃)は1℃当たりのケーブルの線膨張係数であり、1.111×10-5
EA(kN)はつり線又は支柱線の弾性係数、
H(m)は1スパンの高低差、
θとθ(℃)は温度、
とW(kg/m)はケーブル、つり線等の自重及び風圧を含むケーブル1m当たりの荷重である。
数A3-1に数A3-2を代入して整理すると、数C3が得られる。
【0072】
[付録4]
図19は、ケーブルの形態を説明する図である。
支持体はつり線又は支持線を意味する。支持体は、通信ケーブルの張力を受け持つものであり、通信ケーブルの形状によりつり線又は支持線に分かれる。通信ケーブルには、「自己支持形ケーブル」と「非自己支持形ケーブル」がある。図19(A)は自己支持形ケーブルの場合であり、支持体である指示線がケーブルおよびワイヤの張力を受け持つ。図19(B)は非自己支持形ケーブルの場合であり、一束化工法等により、支持体であるつり線が非自己支持形ケーブルの張力を受け持つ。
【符号の説明】
【0073】
10:演算装置
11:入力部
12:座標取得部
13:演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19