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特許7184222発光粒子含有樹脂組成物、その製造方法、光変換層および発光素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】発光粒子含有樹脂組成物、その製造方法、光変換層および発光素子
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20221129BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20221129BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20221129BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221129BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20221129BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20221129BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20221129BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20221129BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C08L101/00 ZNM
C08L101/02
C08K3/22
C08K3/36
C09K11/08 G
C09K11/08 A
C09K11/61
H01L29/78 613Z
H01L29/78 612Z
C08K3/16
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022521799
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2021016235
(87)【国際公開番号】W WO2021230031
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2020084453
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】延藤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】青木 良夫
(72)【発明者】
【氏名】梅津 安男
(72)【発明者】
【氏名】平田 真一
(72)【発明者】
【氏名】林 卓央
(72)【発明者】
【氏名】堀口 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】堀米 操
(72)【発明者】
【氏名】袁 建軍
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/022195(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/085513(WO,A1)
【文献】特開2010-121050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C09K 11/00- 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルハライドからなり発光性を有する半導体ナノ結晶を含み、該結晶表面にSi、Al及びTiのうち1種以上を含む無機被覆層を備えた発光粒子と、1種又は2種以上の熱硬化性樹脂と、1種又は2種以上の有機溶剤とを含有し、
前記有機溶剤が、オクタノール/水分配係数の常用対数値LogPが-1.0以上~6.5以下であって且つ1気圧での沸点が150~260℃であることを特徴とする、発光粒子含有樹脂組成物。
【請求項2】
前記発光粒子が、当該発光粒子表面を被覆するポリマー層を備え、
当該ポリマー層が、非水溶媒に可溶な重合性不飽和基を含有する重合体と、非水溶媒に可溶であって且つ重合後に不溶又は難溶になる重合性不飽和単量体とを重合することにより得られる疎水性ポリマーからなることを特徴とする、請求項1に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【請求項3】
前記有機溶剤は、20℃における蒸気圧が0.05~500Paであり、且つ、100℃における蒸気圧が20℃における蒸気圧の40倍以上である請求項1又は請求項2に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂がアルカリ不溶性である請求項1~3のいずれか一項に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機被覆層が、シロキサン結合を形成する化合物からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の発光粒子含有樹脂組成物
【請求項6】
前記無機被覆層が、中空部及び該中空部に連通する細孔を有する中空構造を備える粒子からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【請求項7】
前記中空構造を備える粒子が、中空シリカ粒子、中空アルミナ粒子又は中空酸化チタン粒子である請求項6に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【請求項8】
前記中空構造を備える粒子の中空部と前記半導体ナノ結晶との間に、該半導体ナノ結晶の表面に配位した配位子で構成される中間層をさらに備えた請求項6又は請求項7に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【請求項9】
前記配位子が前記半導体ナノ結晶に含まれるカチオンに結合する結合性基を有するものである請求項8に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【請求項10】
前記結合性基が、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基およびボロン酸基からなる群から選択される1種又は2種以上の基である請求項9に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリマー層の厚さが0.5~100nmである請求項2~10のいずれか一項に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【請求項12】
さらに光散乱性粒子を含有する請求項1~11のいずれか一項に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【請求項13】
半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液と、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物とを含む溶液とを混合することにより、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶を析出させると共に当該半導体ナノ結晶の表面に前記化合物を配位させ、その後、配位した前記化合物中の前記反応性基を縮合させることにより、前記半導体ナノ結晶の表面に前記シロキサン結合を有する表面層を形成した発光粒子を得る工程と、
前記発光粒子と、1種又は2種以上の熱硬化性樹脂と、1種又は2種以上の有機溶剤とを混合して発光粒子含有樹脂組成物を調製する工程とを備え、
前記有機溶剤が、オクタノール/水分配係数の常用対数値LogPが-1.0以上~6.5以下であって且つ1気圧での沸点が150~260℃であることを特徴とする、発光粒子含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液と、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物とを含む溶液とを混合することにより、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶を析出させると共に当該半導体ナノ結晶の表面に前記化合物を配位させ、その後、配位した前記化合物中の前記反応性基を縮合させることにより、前記半導体ナノ結晶の表面に前記シロキサン結合を有する表面層を形成した発光粒子を得る工程と、
次いで、前記発光粒子の表面を疎水性ポリマーで被覆してポリマー層を形成する工程と、
前記ポリマー層が形成された発光粒子と、1種又は2種以上の熱硬化性樹脂と、1種又は2種以上の有機溶剤とを混合して発光粒子含有樹脂組成物を調製する工程とを備えたことを特徴とする、発光粒子含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
シリカ、アルミナ又は酸化チタンからなり且つ中空部と該中空部に連通する細孔を有する中空粒子の該中空部に、メタルハライドからなり発光性を有する半導体ナノ結晶を析出させることにより、前記中空粒子と前記半導体ナノ結晶とを備えた発光粒子を得る工程と、
前記発光粒子と、1種又は2種以上の熱硬化性樹脂と、1種又は2種以上の有機溶剤とを混合して発光粒子含有樹脂組成物を調製する工程とを備えたことを特徴とする、発光粒子含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項16】
シリカ、アルミナ又は酸化チタンからなり且つ中空部と該中空部に連通する細孔を有する中空粒子の該中空部に、メタルハライドからなり発光性を有する半導体ナノ結晶を析出させることにより、前記中空粒子と前記半導体ナノ結晶とを備えた発光粒子を得る工程と、
前記発光粒子の表面を疎水性ポリマーからなるポリマー層で被覆する工程と、
前記ポリマー層で被覆された前記発光粒子と、1種又は2種以上の熱硬化性樹脂と、1種又は2種以上の有機溶剤とを混合して発光粒子含有樹脂組成物を調製する工程とを備えたことを特徴とする、発光粒子含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
画素部を備える光変換層であって、
前記画素部が請求項1~12のいずれか一項に記載の発光粒子含有樹脂組成物の硬化物を含むことを特徴とする、光変換層。
【請求項18】
請求項17記載の光変換層を備えたことを特徴とする、発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光粒子含有樹脂組成物、その製造方法、光変換層および発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の表示素子に要求される国際規格BT.2020を満たす材料として、発光性を有する半導体ナノ結晶が注目されている。前記半導体ナノ結晶は、蛍光又は燐光を発し、発光波長の半値幅が狭いという特徴がある。前記半導体結晶として、初期にはCdSeが使用されていたが、その有害性を回避するために、最近ではInPや、メタルハライドからなるものが使用されている。メタルハライドからなる半導体ナノ結晶、特に、ペロブスカイト型結晶構造を有する半導体ナノ結晶として、例えば、CsPbX(Xはハロゲン元素であり、Cl、BrまたはIを示す。)で表される化合物が知られている。
【0003】
中でも、ペロブスカイト型結晶構造を有する半導体ナノ結晶は、ハロゲン元素の種類とその存在割合を調整することにより発光波長を制御することができるため、生産性に優れるという利点がある。そして、例えば、光変換フィルムを作成するためのインク組成物として、ペロブスカイト型結晶構造を有する半導体ナノ結晶と、光硬化性樹脂と、溶媒とを含むものが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1には、実施例1として、オレイン酸及びオレイルアミンが配位したペロブスカイト型結晶構造を有する三臭化鉛セシウム結晶と、ラウリルメタクリレートと、トルエンとを含むインク組成物が開示されている。
【0004】
ところが、ペロブスカイト型結晶構造を有する半導体ナノ結晶は、300~500nmの波長領域の吸収が大きい。前記インク組成物を十分に硬化させるためには、前記半導体半導体ナノ結晶による紫外光の吸収を考慮して、前記インク組成物に光重合開始剤及び光増感剤を大量に添加する必要がある。しかし、光重合開始剤及び光増感剤を大量に含有するインク組成物は、経時的に粘度が上昇し、例えばインクジェット方式で当該インク組成物を吐出しようとするときにインクジェットノズルからの吐出安定性が低下するという問題がある。そこで、上記インク組成物において、光硬化性樹脂に代えて熱硬化性樹脂を用いることが考えられる。
【0005】
しかしながら、ペロブスカイト型結晶構造を有する半導体ナノ結晶は熱によって劣化しやすいため、半導体ナノ結晶と熱硬化性樹脂とを含むインク組成物を熱硬化すると、当該半導体ナノ結晶の発光強度が大きく低下するという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2019/022195号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶と熱硬化樹脂とを含有し、熱硬化時に発光強度の低下を招くことのない熱安定性に優れた発光粒子含有樹脂組成物及びその製造方法、前記樹脂組成物を用いた光変換層並びに発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶を、無機材料を含む無機層で被覆した複合粒子を発光粒子として用いることにより、バインダー樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合に、熱硬化時の熱履歴による半導体ナノ結晶の劣化を防ぐことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、前記課題は、下記の(1)~(16)の本発明により解決できる。
(1) メタルハライドからなり発光性を有する半導体ナノ結晶を含み、該結晶表面にSi、Al及びTiのうち1種以上を含む無機被覆層とを備えた発光粒子と、1種又は2種以上の熱硬化性樹脂と、1種又は2種以上の有機溶剤とを含有することを特徴とする、発光粒子含有樹脂組成物。
【0010】
(2) 前記発光粒子が、当該発光粒子表面を被覆するポリマー層を備え、
当該ポリマー層が、非水溶媒に可溶な重合性不飽和基を含有する重合体と、非水溶媒に可溶であって且つ重合後に不溶又は難溶になる重合性不飽和単量体とを重合することにより得られる疎水性ポリマーからなることを特徴とする、上記(1)に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【0011】
(3) 前記有機溶剤のオクタノール/水分配係数の常用対数値LogPが-1.0以上~6.5以下であって且つ1気圧での沸点が150~260℃である上記(1)又は(2)に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【0012】
(4) 前記有機溶剤の20℃における蒸気圧が0.05~500Paであり、且つ、100℃における蒸気圧が20℃における蒸気圧の40倍以上である上記(3)に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【0013】
(5) 前記熱硬化性樹脂がアルカリ不溶性である上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【0014】
(6) 前記無機被覆層がシロキサン結合を形成する化合物からなる、上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
(7) 前記無機被覆層が、中空部及び該中空部に連通する細孔を有する中空構造を備える粒子からなる、上記(1)~(5)の何れか1項に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
(8) 前記中空構造を備える粒子が、中空シリカ粒子、中空アルミナ粒子又は中空酸化チタン粒子である上記(7)に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【0015】
(9) 前記中空粒子の中空部と前記半導体ナノ結晶との間に、該半導体ナノ結晶の表面に配位した配位子で構成される中間層をさらに備えた上記(7)~(8)のいずれか一項に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【0016】
(10) 前記配位子が前記半導体ナノ結晶に含まれるカチオンに結合する結合性基を有するものである上記(9)に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【0017】
(11) 前記結合性基が、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基およびボロン酸基からなる群から選択される1種又は2種以上の基である上記(10)に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【0018】
(12) 前記ポリマー層の厚さが0.5~100nmである上記(2)~(11)のいずれか一項に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【0019】
(13) さらに光散乱性粒子を含有する上記(1)~(12)のいずれか一項に記載の発光粒子含有樹脂組成物。
【0020】
(14) 半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液と、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物とを含む溶液とを混合することにより、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶を析出させると共に当該半導体ナノ結晶の表面に前記化合物を配位させ、その後、配位した前記化合物中の前記反応性基を縮合させることにより、前記半導体ナノ結晶の表面に前記シロキサン結合を有する表面層を形成した母粒子を得る工程と、前記発光粒子と、1種又は2種以上の熱硬化性樹脂と、1種又は2種以上の有機溶剤とを混合して発光粒子含有樹脂組成物を調製する工程とを備えたことを特徴とする、発光粒子含有樹脂組成物の製造方法。
【0021】
(15) 半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液と、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物とを含む溶液とを混合することにより、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶を析出させると共に当該半導体ナノ結晶の表面に前記化合物を配位させ、その後、配位した前記化合物中の前記反応性基を縮合させることにより、前記半導体ナノ結晶の表面に前記シロキサン結合を有する表面層を形成した母粒子を得る工程と、次いで、前記母粒子の表面を疎水性ポリマーで被覆してポリマー層を形成する工程と、前記発光粒子と、1種又は2種以上の熱硬化性樹脂と、1種又は2種以上の有機溶剤とを混合して発光粒子含有樹脂組成物を調製する工程とを備えたことを特徴とする、発光粒子含有樹脂組成物の製造方法。
【0022】
(16) 中空部と該中空部に連通する細孔を有する中空粒子の該中空部に、メタルハライドからなり発光性を有する半導体ナノ結晶を析出させることにより、前記中空粒子と前記半導体ナノ結晶とを備えた発光粒子を得る工程と、
前記発光粒子と、1種又は2種以上の熱硬化性樹脂と、1種又は2種以上の有機溶剤とを混合して発光粒子含有樹脂組成物を調製する工程とを備えたことを特徴とする、発光粒子含有樹脂組成物の製造方法。
【0023】
(17) 中空部と該中空部に連通する細孔を有する中空粒子の該中空部に、メタルハライドからなり発光性を有する半導体ナノ結晶を析出させることにより、前記中空粒子と前記半導体ナノ結晶とを備えた発光粒子を得る工程と、
前記発光粒子の表面を疎水性ポリマーからなるポリマー層で被覆する工程と、
前記ポリマー層で被覆された前記発光粒子と、1種又は2種以上の熱硬化性樹脂と、1種又は2種以上の有機溶剤とを混合して発光粒子含有樹脂組成物を調製する工程とを備えたことを特徴とする、発光粒子含有樹脂組成物の製造方法。
【0024】
(18) 画素部を備える光変換層であって、
前記画素部が上記(1)~(13)のいずれか一項に記載の発光粒子含有樹脂組成物の硬化物を含むことを特徴とする、光変換層。
【0025】
(19) 上記(18)記載の光変換層を備えたことを特徴とする、発光素子。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶と熱硬化性樹脂とを含み、熱硬化時に発光強度の低下を招くことのない熱安定性に優れた発光粒子含有樹脂組成物及びその製造方法、前記樹脂組成物を用いた光変換層並びに発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る発光粒子の製造方法の一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る発光性ナノ結晶を含むナノ粒子の他の構成例を示す断面図である。(a)は中空粒子内包発光粒子を示し、(b)はポリマー被覆発光粒子を示す。
図3】本発明に係る発光性ナノ結晶を含むナノ粒子の他の一実施形態を示す断面図である。(a)はシリカ被覆発光粒子を示し、(b)はポリマー被覆発光粒子を示す。
図4】本発明に係る発光素子の一実施形態を示す断面図である。
図5】アクティブマトリックス回路の構成を示す概略図である。
図6】アクティブマトリックス回路の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の発光粒子含有樹脂組成物、その製造方法および発光素子について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の発光粒子の製造方法の一実施形態を示す断面図である。中空粒子として中空シリカ粒子を用いた場合の製造例を示す。なお、図1では、下段のナノ結晶原料付与以降の中空粒子912において、細孔912bの記載を省略した。
【0029】
1.発光粒子含有樹脂組成物
本発明の実施形態の発光粒子含有樹脂組成物は、発光粒子と、熱硬化性樹脂と、有機溶剤と、を含有する。一実施形態の発光粒子含有樹脂組成物は、後述するように、有機ELを用いた発光表示素子の光変換層をインクジェット方式で形成する用途に好適に用いることができる。
【0030】
1-1.発光粒子
図1に示す発光粒子91は、中空部912aと中空部912aに連通する細孔912bとを有する中空粒子912と、中空部912aに収容され、メタルハライドからなり発光性を有する半導体ナノ結晶911(以下、単に「ナノ結晶911」ということもある。)とを備える。かかる発光粒子91は、例えば、中空粒子912の中空部912aにナノ結晶911を析出させることにより得ることができる。発光粒子91は、ナノ結晶911が中空粒子912により保護されるため、熱や酸素に対する優れた安定性を得ることができ、その結果、優れた発光特性を得ることができる。
【0031】
発光粒子91は、その表面を疎水ポリマーからなるポリマー層92を備えた発光粒子(以下、「ポリマー被覆発光粒子」と記載することがある。)90であることがより好ましい。ポリマー被覆発光粒子90は、ポリマー層92を備えることにより、熱、酸素に対する安定性をさらに向上させると共に、優れた粒子分散性を得ることができるため、より優れた発光特性を得ることができる。
【0032】
1-1-1.発光粒子91及びその作製方法
発光粒子91は、中空粒子912と、この中空粒子912に収容されたナノ結晶911とを有している。本発明ではこのように、中空粒子912の中空部内にナノ結晶911があらかじめ収容された複合粒子を発光粒子として使用することにより熱硬化の熱履歴によるナノ結晶911の劣化を防止できる。
【0033】
[ナノ結晶911]
ナノ結晶911は、メタルハライドからなり、励起光を吸収して蛍光または燐光を発光するナノサイズの半導体結晶体(ナノ結晶粒子)である。かかるナノ結晶911は、例えば、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。ナノ結晶911は、例えば、所定の波長の光エネルギーや電気エネルギーにより励起され、蛍光または燐光を発することができる。
【0034】
メタルハライドからなるナノ結晶911は、一般式:Aで表される化合物であり、例えば、後述のペロブスカイト型結晶構造を有するものが広く知られている。
式中、Aは、有機カチオンおよび金属カチオンのうちの少なくとも1種である。有機カチオンとしては、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレア等が挙げられ、金属カチオンとしては、Cs、Rb、K、Na、Li等のカチオンが挙げられる。
Mは、少なくとも1種の金属カチオンである。金属カチオンとしては、1族、2族、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族から選ばれる金属カチオンが挙げられる。より好ましくは、Ag、Au、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Eu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、Ir、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zn、Zr等のカチオンが挙げられる。
Xは、少なくとも1種のアニオンである。アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン等が挙げられ、少なくとも1種のハロゲン化物イオンを含む。
aは、1~7の整数であり、bは、1~4の整数であり、cは、3~16の整数である。
【0035】
一般式Aで表される化合物は、具体的には、AMX、AMX、AMX、AMX、AMX、AM、AMX、AMX、AMX、A、AMX、AMX、AM、AMX、A、AMX、A、A、A10、A16で表される化合物が好ましい。
式中、Aは、有機カチオンおよび金属カチオンのうちの少なくとも1種である。有機カチオンとしては、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレア等が挙げられ、金属カチオンとしては、Cs、Rb、K、Na、Li等のカチオンが挙げられる。
式中、Mは、少なくとも1種の金属カチオンである。具体的には、1種の金属カチオン(M)、2種の金属カチオン(M α β)、3種の金属カチオン(M α β γ)、4種の金属カチオン(M α β γ δ)などが挙げられる。ただし、α、β、γ、δは、それぞれ0~1の実数を表し、かつα+β+γ+δ=1を表す。金属カチオンとしては、1族、2族、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族から選ばれる金属カチオンが挙げられる。より好ましくは、Ag、Au、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Eu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、Ir、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zn、Zr等のカチオンが挙げられる。
式中、Xは、少なくとも1種のハロゲンを含むアニオンである。具体的には、1種のハロゲンアニオン(X)、2種のハロゲンアニオン(X α β)などが挙げられる。アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン等が挙げられ、少なくとも1種のハロゲン化物イオンを含む。
【0036】
上記一般式Aで表されるメタルハライドからなる化合物は、発光特性をよくするために、Bi、Mn、Ca、Eu、Sb、Ybなどの金属イオンが添加(ドープ)されたものであってもよい。
【0037】
上記一般式Aで表されるメタルハライドからなる化合物の中で、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、その粒子サイズ、Mサイトを構成する金属カチオンの種類および存在割合を調整し、さらにXサイトを構成するアニオンの種類および存在割合を調整することにより、発光波長(発光色)を制御することができる点で、発光性ナノ結晶として利用する上で特に好ましい。具体的には、AMX、AMX、AMX、AMX、AMXで表される化合物が好ましい。式中のA、M及びXは上記のとおりである。また、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、上述のように、Bi、Mn、Ca、Eu、Sb、Ybなどの金属イオンが添加(ドープ)されたものであってもよい。
【0038】
ペロブスカイト型結晶構造を示す化合物の中でも、さらに良好な発光特性を示すために、AはCs、Rb、K、Na、Liであり、Mは1種の金属カチオン(M)、または2種の金属カチオン(M α β)であり、Xは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンであることが好ましい。但し、αとβはそれぞれ0~1の実数を表し、α+β=1を表す。具体的には、Mは、Ag、Au、Bi、Cu、Eu、Fe、Ge、K、In、Na、Mn、Pb、Pd、Sb、Si、Sn、Yb、Zn、Zrから選ばれることが好ましい。
【0039】
メタルハライドからなりペロブスカイト型結晶構造を有するナノ結晶911の具体的な組成として、CsPbBr、CHNHPbBr、CHNPbBr等のMとしてPbを用いたナノ結晶911は、光強度に優れると共に量子効率に優れることから、好ましい。また、CsPbBr、CHNHPbBr、CHNPbBr等のMとしてPb以外の金属カチオンを用いたナノ結晶911は、低毒性であって環境への影響が少ないことから、好ましい。
【0040】
ナノ結晶911は、605~665nmの波長範囲に発光ピークを有する光(赤色光)を発する赤色発光性の結晶であることが好ましく、500~560nmの波長範囲に発光ピークを有する光(緑色光)を発する緑色発光性の結晶であることが好ましく、420~480nmの波長範囲に発光ピークを有する光(青色光)を発する青色発光性の結晶であることが好ましい。また、一実施形態において、これらのナノ結晶の組み合わせでもよい。
なお、ナノ結晶911の発光ピークの波長は、例えば、絶対PL量子収率測定装置を用いて測定される蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルにおいて確認することができる。
【0041】
赤色発光性のナノ結晶911は、665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下または630nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上または605nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
これらの上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値および下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0042】
緑色発光性のナノ結晶911は、560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下または530nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上または500nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
【0043】
青色発光性のナノ結晶911は、480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下または450nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上または420nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
【0044】
ナノ結晶911の形状は、特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。ナノ結晶911の形状としては、例えば、直方体状、立方体状、球状、正四面体状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等が挙げられる。なお、ナノ結晶911の形状としては、直方体状、立方体状または球状が好ましい。
【0045】
ナノ結晶911の平均粒子径(体積平均径)は、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。また、ナノ結晶911の平均粒子径は、1nm以上であることが好ましく、1.5nm以上であることがより好ましく、2nm以上であることがさらに好ましい。かかる平均粒子径を有するナノ結晶911は、所望の波長の光を発し易いことから好ましい。
なお、ナノ結晶911の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
【0046】
[中空粒子912]
中空粒子912は、内部にナノ結晶911を収容可能な空間である中空部912aと、中空部912aに連通する細孔912bとを備えたものであればよく、全体の形状として、立方体状形態(直方体状、立方体状を含む)、球状(略真球状)、細長い球状(楕円球状)、ハニカム形状(断面が六角形であって両端が開口した筒を隙間なく並べた形状)等の粒子を用いることができる。直方体状、立方体状、略真球状、楕円球状の中空粒子は、バルーン構造又は中空構造を備えた粒子である。これらのバルーン構造又は中空構造を備えた中空粒子は、中空部912aに収容されたナノ結晶911を全体に亘って覆うことによって、熱や酸素に対する安定性をより確実に得ることができるため、より好ましい。さらに、得られる発光粒子90においては、後述するポリマー層92との間に中空粒子912が介在するため、ナノ結晶911の酸素ガス、水分に対する安定性も向上する。
【0047】
中空部912aには、1個のナノ結晶911が収容されてよく、複数個のナノ結晶911が収容されてもよい。また、中空部912aは、1個または複数のナノ結晶911によって全体が占有されていてもよく、一部のみが占有されていてもよい。
【0048】
中空粒子としては、ナノ結晶911を保護できるものであれば、どのような材料であってもかまわない。合成の容易さ、透過率、コスト等の観点から、中空粒子としては、中空シリカ粒子、中空アルミナ粒子、中空酸化チタン粒子または中空ポリマー粒子であることが好ましく、中空シリカ粒子または中空アルミナ粒子であることがより好ましい。粒子表面処理が容易である点から、中空シリカ粒子であることがさらに好ましい。
【0049】
中空粒子912の平均外径は、特に限定されないが、5~300nmであることが好ましく、6~100nmであることがより好ましく、8~50nmであることがさらに好ましく、10~25nmであることが特に好ましい。かかるサイズの中空粒子912であれば、ナノ結晶911の酸素、水分および熱に対する安定性を十分に高めることができる。
【0050】
中空粒子912の平均内径、すなわち、中空部912aの直径は、特に限定されないが、1~250nmであることが好ましく、2~100nmであることがより好ましく、3~50nmであることがさらに好ましく、5~15nmであることが特に好ましい。中空粒子912の平均内径が過度に小さい場合には中空部912a内でナノ結晶911が析出しないおそれがあり、過度に大きい場合には中空部91a内でナノ結晶911が過度に凝集して発光効率が低下するおそれがある。上記範囲の平均内径を備えた中空粒子912であれば、凝集を抑制しつつナノ結晶911を析出させることができる。
【0051】
また、細孔912bのサイズは、特に限定されないが、0.5~10nmであることが好ましく、1~5nmであることがより好ましい。この場合、ナノ結晶911の原料化合物を含有する溶液を中空部912a内に円滑かつ確実に浸透させることができる。
【0052】
中空粒子912の一例である中空シリカ粒子は、例えば、図1に示すように、(a)一級アミノ基および/または二級アミノ基を有する脂肪族ポリアミン鎖(x1)と疎水性有機セグメント(x2)とを有する共重合体(X)を水性媒体と混合し、疎水性有機セグメント(x2)を主成分とするコアと脂肪族ポリアミン鎖(x1)を主成分とするシェル層とからなる会合体(XA)を形成する工程と、(b)会合体(XA)を含む水性媒体にシリカ原料(Y)を加え、会合体(XA)を鋳型(テンプレート)としてシリカ原料(Y)のゾルゲル反応を行い、シリカを析出させてコア-シェル型シリカナノ粒子(YA)を得る工程と、(c)コア-シェル型シリカナノ粒子(YA)から、共重合体(X)を除去する工程とにより作製することができる。
【0053】
脂肪族ポリアミン鎖(x1)としては、例えば、ポリエチレンイミン鎖、ポリアリルアミン鎖等が挙げられる。中空シリカナノ粒子912の前駆体であるコア―シェル型シリカナノ粒子(YA)を効率的に製造できるため、ポリエチレンイミン鎖がより好ましい。また、脂肪族ポリアミン鎖(x1)の分子量は、疎水性有機セグメント(x2)の分子量とのバランスの図るため、繰り返し単位の数が5~10,000の範囲であることが好ましく、10~8,000の範囲であることがより好ましい。
脂肪族ポリアミン鎖(x1)の分子構造も、特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、デンドリマー状、星状または櫛状等が挙げられる。シリカ析出に鋳型とする会合体を効率的に形成でき、製造コスト等の観点から、分岐状ポリエチレンイミン鎖が好ましい。
【0054】
疎水性有機セグメント(x2)としては、例えば、アルキル化合物に由来するセグメント、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリウレタンのような疎水性ポリマーに由来するセグメント等が挙げられる。
アルキル化合物の場合、炭素原子数が5以上のアルキレン鎖を有する化合物であることが好ましく、炭素原子数10以上のアルキレン鎖を有する化合物であることがより好ましい。疎水性有機セグメント(x2)の鎖長は、会合体(XA)をナノサイズで安定化できる範囲であれば特に制限されないが、繰り返し単位の数が5~10,000の範囲であることが好ましく、5~1,000の範囲であることがより好ましい。
【0055】
疎水性有機セグメント(x2)は、脂肪族ポリアミン鎖(x1)の末端にカップリングにより結合してもよく、脂肪族ポリアミン鎖(x1)の途中にグラフトにより結合してもよい。1つの脂肪族ポリアミン鎖(x1)には、1つの疎水性有機セグメント(x2)のみが結合しても、複数の疎水性有機セグメント(x2)が結合してもよい。
共重合体(X)に含まれる脂肪族ポリアミン鎖(x1)と疎水性有機セグメント(x2)との割合は、水性媒体中で安定な会合体(XA)を形成できれば、特に限定されない。具体的には、脂肪族ポリアミン鎖(x1)の割合が10~90質量%の範囲であることが好ましく、30~70質量%の範囲であることがより好ましく、40~60質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0056】
工程(a)では、共重合体(X)を水性媒体中に溶解することにより、コア-シェル構造を有する会合体(XA)を自己組織化によって形成させることができる。かかる会合体(XA)のコアは疎水性有機セグメント(x2)を主成分とし、シェル層は脂肪族ポリアミン鎖(x1)を主成分とし、疎水性有機セグメント(x2)の疎水相互作用により、水性媒体中に安定な会合体(XA)を形成すると考えられる。水性媒体としては、例えば、水、水と水溶性溶媒との混合溶液等が挙げられる。混合溶液を用いる場合、混合溶液中に含まれる水の量は、体積比で水/水溶性溶媒が0.5/9.5~3/7であることが好ましく、0.1/9.9~5/5であることがより好ましい。生産性、環境やコスト等の観点から、水単独または水とアルコールとの混合溶液を使用することが好ましい。
【0057】
水性媒体中に含まれる共重合体(X)の量は、0.05~15質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましく、0.2~5質量%であることがさらに好ましい。水性媒体中において共重合体(X)の自己組織化により会合体(XA)を形成する際には、2以上の官能基を有する有機架橋性化合物を使用し、シェル層において脂肪族ポリアミン鎖(x1)を架橋してもよい。かかる有機架橋性化合物としては、例えば、アルデヒド含有化合物、エポキシ含有化合物、不飽和二重結合含有化合物、カルボン酸基含有化合物等が挙げられる。
【0058】
次に、水の存在下で会合体(XA)を鋳型として、シリカ原料(Y)のゾルゲル反応を行う(工程(b))。シリカ原料(Y)としては、例えば、水ガラス、テトラアルコキシシラン類、テトラアルコキシシランのようなオリゴマー類等が挙げられる。テトラアルコキシシラン類としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシラン等が挙げられる。オリゴマー類としては、例えば、テトラメトキシシランの4量体、テトラメトキシシランの7量体、テトラエトキシシラン5量体、テトラエトキシシラン10量体等が挙げられる。
【0059】
ゾルゲル反応は、溶媒の連続相では生じず、会合体(XA)上のみで選択的に進行する。したがって、会合体(XA)が解砕されない範囲で、反応条件を任意に設定することができる。ゾルゲル反応において、会合体(XA)とシリカ原料(Y)との割合は、適宜に設定することができる。
【0060】
ゾルゲル反応の温度は、特に限定されず、0~90℃の範囲であることが好ましく、10~40℃の範囲であることがより好ましく、15~30℃の範囲であることがさらに好ましい。この場合、効率的にコア-シェル型シリカナノ粒子(YA)を得ることができる。
【0061】
反応活性の高いシリカ原料(Y)の場合、ゾルゲル反応の時間は、1分~24時間の範囲であることが好ましく、30分~5時間の範囲であることがより好ましい。また、反応活性が低いシリカ原料(Y)の場合、ゾルゲル反応の時間は、5時間以上であることが好ましく、一週間とすることがより好ましい。
【0062】
工程(b)により、互いに凝集せず、粒径が均一なコア-シェル型シリカナノ粒子(YA)を得ることができる。得られるコア-シェル型シリカナノ粒子(YA)の粒径分布は、製造条件や、目的とする粒径によっても異なるが、目的とする粒径(平均粒径)に対して±15%以下、好ましくは±10%以下に設定することができる。
【0063】
コア-シェル型シリカナノ粒子(YA)は、疎水性有機セグメント(x2)を主成分とするコアと脂肪族ポリアミン鎖(x1)とシリカとを主成分とする複合体をシェル層とする。ここで、主成分とは、意図的な第3成分が含まれないことを言う。コア-シェル型シリカナノ粒子(YA)におけるシェル層は、シリカが形成するマトリックスに脂肪族ポリアミン鎖(x1)が複合化されてなる有機無機複合体である。
コア-シェル型シリカナノ粒子(YA)の粒径は、5~300nmであることが好ましく、6~100nmであることがより好ましく、8~50nmであることがさらに好ましく、10~25nmであることが特に好ましい。かかる粒径は、共重合体(X)の種類、組成および分子量、シリカ原料(Y)の種類、ゾルゲル反応条件等により調整できる。また、コア-シェル型シリカナノ粒子(YA)は、分子の自己組織化により形成されるため、極めて優れた単分散性を示し、粒径分布の幅が平均粒径に対して±15%以下とすることができる。
【0064】
コア-シェル型シリカナノ粒子(YA)の形状は、球状またはアスペクト比が2以上の細長い球状とすることができる。また、一つの粒子内に複数のコアを有するコア-シェル型シリカナノ粒子(YA)を作製することもできる。かかる粒子の形状や構造等は、共重合体(X)の組成、シリカ原料(Y)の種類およびゾルゲル反応条件等を変更することにより調整できる。
【0065】
コア-シェル型シリカナノ粒子(YA)中に含まれるシリカの量は、30~95質量%の範囲であることが好ましく、60~90質量%の範囲であることがより好ましい。シリカの量は、共重合体(X)中に含まれる脂肪族ポリアミン鎖(x1)の量、会合体(XA)の量、シリカ原料(Y)の種類および量、ゾルゲル反応時間および温度等を変更することにより調整することができる。
【0066】
次に、工程(c)で、コア-シェル型シリカナノ粒子(YA)から共重合体(X)を除去することにより、目的とする中空シリカナノ粒子912を得ることができる。
【0067】
共重合体(X)を除去する方法としては、例えば、焼成処理、溶剤洗浄による処理が挙げられるが、共重合体(X)の除去率の観点から、焼成炉中での焼成処理法が好ましい。焼成処理としては、例えば、空気または酸素存在下での高温焼成、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム)の存在下での高温焼成が挙げられるが、空気中での高温焼成が好ましい。焼成温度としては、300℃以上であることが好ましく、300~1000℃の範囲であることがより好ましい。
【0068】
中空粒子912の作製方法は、上記工程(a)~(c)を行う方法に限定されず、任意の方法で作製することができる。例えば、中空粒子912の一例である立方体状形態の中空シリカ粒子は、例えば、次のようにして形成することができる。
【0069】
まず、水系溶媒中にてコロイド状炭酸カルシウム、アルコキシシラン及び塩基性触媒を混合することにより、コロイド状炭酸カルシウムの表面にアルコキシシランを 生じさせ、加水分解反応によってシリカ殻を形成する。
【0070】
コア粒子となるコロイド状炭酸カルシウムは、一次粒子径が20~200nmの立方体状形態の炭酸カルシウムである。コロイド状炭酸カルシウムは、水酸化カルシウムの水スラリーに炭酸ガスを導入することによって沈殿した炭酸カルシウムを回収する方法等により得ることができる。炭酸カルシウムの結晶は、カルサイトであり通常は六方晶系であるが、合成条件の制御により、立方晶系に近い形状、すなわち「立方体状形態」に成長させることができる。ここで「立方体状形態」とは、立方体に限らず面で囲まれた立方体に似た形状をいう。目的とするコロイド状炭酸カルシウムを得るためには、比較的低温下で、沈殿反応の速度が比較的大きい条件であることが好ましい。
【0071】
水酸化カルシウムと炭酸ガスとの反応によって生じたコロイド状炭酸カルシウムは、反応直後は20~200nmの一次粒子が凝集して数μmの凝集粒子を形成している。そこで、この凝集粒子が沈殿した水系媒体を、室温下で静置したり、加熱下で攪拌するなどにより、平均粒子径が20~700nmとなるまで熟成し、一次粒子として 分散させることが好ましい。
【0072】
また、水系溶媒中にコロイド状炭酸カルシウムを混合する際、コロイド状炭酸カルシウムの水スラリーをそのまま混合してもよく、或いは、濃度調整を適宜行ったものを混合してもよい。水スラリー中に均一に分散したコロイド状炭酸カルシウム粒子を用いることにより、粒径がナノサイズであってかつ分散性に優れた中空シリカ粒子を得ることができる。
【0073】
シリカ殻の原料として用いるアルコキシシランは、その加水分解によりシリカを生成するものであれば特段の制約はなく、例えば、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリプロポキシシラン等を用いることができる。
【0074】
塩基性触媒としては、アンモニア水やアミン類等を用いることができる。
【0075】
コロイド状炭酸カルシウム及びアルコキシシランに加えて塩基性触媒を水系溶媒中にて混合することにより、シリカ被覆された炭酸カルシウムを得る。前記混合の方法としては、水系溶媒とコロイド状炭酸カルシウムとアルコキシシラン塩基性触媒とを十分に混合できる方法であればよく、予めコロイド状炭酸カルシウムを分散させた水系溶媒中にアルコキシシラン及び塩基性触媒を添加あるいは滴下する方法、水系溶媒とアルコキシシランの混合液中にコロイド状炭酸カルシウム及び塩基性触媒を添加する方法、コロイド状炭酸カルシウムを分散させたアルコキシシランを塩基性触媒を含有する水系溶媒中に添加あるいは滴下する方法などを挙げることができる。また、必要に応じて、シリカ中空粒子の分散性をさらに向上させるための分散剤や界面活性剤など適宜添加してもよい。
【0076】
水系溶媒、コロイド状炭酸カルシウム、アルコキシシラン、塩基性触媒の混合比率は、所望するシリカ殻の厚さや性状を勘案して、適宜調節することができる。例えば、シリカ殻厚を厚くしたい場合には、アルコキシシラン/コロイド状炭酸カルシウムの比を大きくすればよく、また、反応時間を短縮したい場合には、塩基性触媒/アルコキシシランの比を大きくすればよい。
【0077】
高品質のシリカ中空粒子を効率よく製造するためには、水系溶媒に混合されるコロイド状炭酸カルシウムの固形分濃度を1~20重量%とすることが好ましい。1重量%未満であると、製造効率が低下するだけでなく、コロイド状炭酸カルシウムの表面にシリカ殻が形成されずに、シリカの遊離粒子が水スラリー中に生成することがあるため好ましくない。一方、20重量%を超えると、粘度が上昇して均一なシリカ殻を形成できないことがあるため好ましくない。
【0078】
さらに、アルコキシシランとコロイド状炭酸カルシウムとの比は、より平滑でかつ高純度のシリカ殻を比較的短時間で形成できることから、アルコキシシラン1モルに対してコロイド状炭酸カルシウムを0.15モル以上とするのが好ましい。0.15モル未満の場合には、シリカの遊離粒子が生成することがあるため好ましくない。
【0079】
また、塩基性触媒としてはアンモニア水が最も好適であり、アルコキシシラン1モルに対しアンモニアが2~40モルが好ましく、2~10モルがより好ましい。2モル未満であると反応に要する時間が極端に長くなり製造効率が悪化するため好ましくない。一方、40モルを超えると、シリカ殻の平滑性が低下したり、シリカの遊離粒子が生成することがあるため好ましくない。
【0080】
さらに、水系溶媒中に、コロイド状炭酸カルシウムとアルコキシシランと塩基性触媒と混合するときの温度は、特段の制約はないが、60℃以下が好ましく45℃以下であることがより好ましい。前記温度が60℃を超えると、シリカ殻の平滑性が低下したり、シリカの遊離粒子が生成することがあり、得られるシリカ中空粒子の性状を悪化させることがあるため好ましくない。
【0081】
以上の条件で前記混合を行うことにより、平滑かつ高純度のシリカ殻をより効率よく形成させることができる。
【0082】
次に、シリカ殻が被覆されたコロイド状炭酸カルシウムを酸処理して炭酸カルシウムを溶解させ、シリカ殻のみを残存させることにより、シリカからなる中空粒子を形成する。
【0083】
酸処理に使用する酸としては、塩酸、酢酸、硝酸など、炭酸カルシウムを溶解させることができる酸であれば特段の制約はない。酸処理する際の溶液の酸濃度は0.1~3モル/Lとすることが好ましい。0.1モル/L未満であると、酸処理に要する時間が長くなってしまうほか、場合によっては炭酸カルシウムを完全に溶解させることができなくなることがあるため好ましくない。一方、3モル/Lを超えると炭酸カルシウムの酸分解反応が急激に起こり、特にシリカ殻が薄い場合には、シリカ殻が破壊されてしまうことがあるため好ましくない。
【0084】
酸処理に際しては、シリカ殻被覆後の溶液を水で置換したり、脱水洗浄などを行うことにより、未反応のアルコキシシランを 十分に除去することが望ましい。未反応のアルコキシシランが 大量に残留している場合、酸処理によりゲルが生成して、シリカ中空粒子の性状を悪化させることがあるからである。
【0085】
このように、炭酸カルシウムを酸処理により溶解させることによって炭酸カルシウムが存在していた部分が中空になる一方、シリカ殻のみが残存することにより、シリカ中空粒子が得られる。このとき、シリカ殻には多数の細孔が形成される。
【0086】
その後、得られたシリカ中空粒子を回収し、加熱焼成処理することにより、炭酸カルシウムが流出した孔を塞ぐと共に、緻密な多孔質体からなるシリカ殻を形成する。この結果、目的とする中空シリカ粒子を得ることができる。加熱焼成処理としては、例えば、空気または酸素存在下での高温焼成、窒素ガス、ヘリウム等の不活性ガスの存在下での高温焼成が挙げられるが、空気中での高温焼成が好ましい。焼成温度は、300℃以上であることが好ましく、300~1000℃の範囲であることがより好ましい。
【0087】
このようにして得られる中空シリカ粒子は、緻密なシリカ殻からなる中空粒子であり、透過型電子顕微鏡法による一次粒子径が30~300nmの範囲であり、水銀圧入法により測定される細孔分布において2~20nmの範囲の細孔が検出されないものであり、そのシリカ殻が平滑かつ不純分の少ない高純度のものとなる。
【0088】
この緻密なシリカ殻は、少なくとも2nm以上の分子等を浸透させない一方、2nm未満の分子等を選択的に浸透させることができる。そのため、空気との接触、光、熱などにより分解あるいは変質しやすい成分であっても、当該中空シリカ粒子に内包することにより、該成分の分解あるいは変質を抑制することができる。
【0089】
以上のようにして、中空シリカ粒子912が作製される。なお、中空シリカ粒子912には、市販品を使用することもできる。かかる市販品としては、例えば、日鉄鉱業株式会社製の「SiliNax SP-PN(b)」が挙げられる。中空アルミナ粒子、中空酸化チタン粒子または中空ポリマー粒子についても、同様の方法によって製造することができる。
【0090】
本発明では、このようにして得られた中空粒子に、半導体ナノ結晶の原料化合物を含有する溶液(Z)を含浸し(図1中の(d))、乾燥することにより、前記中空粒子の前記中空部912a内に、ペロブスカイト型結晶構造を有し発光性の半導体ナノ結晶が析出し(図1中の(d))、発光粒子91を得ることができる。
【0091】
ここで用いる、半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液としては、固形分濃度0.5~20質量%の溶液であることが中空粒子912への含侵性の点から好ましい。また、有機溶媒はナノ結晶911との良溶媒であればよいが、特に、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、エタノール、メタノール、2-プロパノール、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、水及びこれらの混合溶媒であることが相溶性の点から好ましい。
【0092】
また、溶液を調製する方法としては、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、反応容器に、原料化合物と有機溶媒とを混合することが好ましい。この際の温度条件は室温~350℃であることが好ましく、また、混合時の攪拌時間は1分~10時間であることが好ましい。
【0093】
半導体ナノ結晶の原料化合物は、例えば、三臭化鉛セシウム溶液を調整する場合は、臭化セシウムと、臭化鉛(II)とを前記有機溶媒と混合することが好ましい。このとき、良溶媒1000質量部に対して、臭化セシウムが0.5~200質量部、臭化鉛(II)が0.5~200質量部となるように、それぞれの添加量を調整することが好ましい。
【0094】
次に、前記反応容器に中空シリカ粒子912を添加することにより、中空シリカ粒子912の中空部912a内に三臭化鉛セシウム溶液を含浸させる。その後、前記反応溶液内の溶液をろ過することにより、過剰な前記三臭化鉛セシウム溶液を除去し固形物を回収する。そして、得られた固形物を-50~200℃で減圧乾燥する。以上により、中空シリカ粒子911の中空部912aに、ペロブスカイト型結晶構造を有する半導体ナノ結晶911が析出された発光粒子91を得ることができる。
【0095】
さらに、発光粒子91は、図2(a)に示すように、中空粒子92の中空部912aの壁面と半導体ナノ結晶911との間に位置し、半導体ナノ結晶911の表面に配位した配位子で構成される中間層913を備えることが好ましい。図2(a)に示す発光粒子91は、MサイトとしてPbカチオン(図中、黒丸で示す。)を含むナノ結晶911の表面に、配位子としてオレイン酸、オレイルアミン等を配位させて中間層913が形成されている。なお、図2(a)では、中空粒子912において細孔912bの記載を省略した。中間層913を備える発光粒子91は、中間層913によって、ナノ結晶911の酸素、水分、熱等に対する安定性をさらに高めることができる。
【0096】
配位子で構成される中間層913を備えた発光粒子91は、ナノ結晶911の原料化合物を含有する溶液中に配位子を添加しておき、この溶液を中空シリカ粒子912に含浸し乾燥することによって得ることができる。
【0097】
配位子は、ナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有する化合物が好ましい。結合性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基およびボロン酸基のうちの少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシル基およびアミノ基のうちの少なくとも1種であることがより好ましい。かかる配位子としては、カルボキシル基またはアミノ基含有化合物等が挙げられ、これらの1種を単独で使用し、または2種以上を併用することができる。
【0098】
カルボキシル基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族カルボン酸が挙げられる。かかるカルボキシル基含有化合物の具体例としては、例えば、アラキドン酸、クロトン酸、trans-2-デセン酸、エルカ酸、3-デセン酸、cis-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸、4-デセン酸、all cis-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、all cis-8,11,14-エイコサトリエン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、trans-3-ヘキセン酸、trans-2-ヘキセン酸、2-ヘプテン酸、3-ヘプテン酸、2-ヘキサデセン酸、リノレン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、3-ノネン酸、2-ノネン酸、trans-2-オクテン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、オレイン酸、3-オクテン酸、trans-2-ペンテン酸、trans-3-ペンテン酸、リシノール酸、ソルビン酸、2-トリデセン酸、cis-15-テトラコセン酸、10-ウンデセン酸、2-ウンデセン酸、酢酸、酪酸、ベヘン酸、セロチン酸、デカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、ヘプタデカン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヘプタコサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、メリシン酸、オクタコサン酸、ノナデカン酸、ノナコサン酸、n-オクタン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、プロピオン酸、ペンタコサン酸、ノナン酸、ステアリン酸、リグノセリン酸、トリコサン酸、トリデカン酸、ウンデカン酸、吉草酸等が挙げられる。
【0099】
アミノ基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族アミンが挙げられる。かかるアミノ基含有化合物の具体例としては、例えば、1-アミノヘプタデカン、1-アミノノナデカン、ヘプタデカン-9-アミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、2-n-オクチル-1-ドデシルアミン、アリルアミン、アミルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、3-メトキシプロピルアミン、2-メトキシエチルアミン、2-メチルブチルアミン、ネオペンチルアミン、プロピルアミン、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、1-アミノデカン、ノニルアミン、1-アミノウンデカン、ドデシルアミン、1-アミノペンタデカン、1-アミノトリデカン、ヘキサデシルアミン、テトラデシルアミン等が挙げられる。
【0100】
また、発光粒子91を作製する際に、ナノ結晶911の原料化合物を含有する溶液中に、反応性基を有する配位子(例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン)を添加することができる。この場合、図2(a)に示すように、中空粒子912とナノ結晶911との間に位置し、ナノ結晶911の表面に配位した配位子で構成され、配位子の分子同士がシロキサン結合を形成している中間層913を有する母粒子91とすることも可能である。かかる構成によれば、中間層913を介してナノ結晶911を中空粒子912により強固に固定することができる。
【0101】
反応性基を有する配位子は、ナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基と、Siを含有し、シロキサン結合を形成する反応性基とを有する化合物が好ましい。なお、反応性基は、中空粒子912とも反応可能である。
【0102】
結合性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、ボロン酸基が挙げられる。中でも、結合性基としては、カルボキシル基およびアミノ基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらの結合性基は、反応性基よりもナノ結晶911に含まれるカチオンに対する親和性(反応性)が高い。このため、配位子は、結合性基をナノ結晶911側にして配位し、より容易かつ確実に中間層913を形成することができる。
【0103】
一方、反応性基としては、シロキサン結合が容易に形成されることから、シラノール基、炭素原子数が1~6のアルコキシシリル基のような加水分解性シリル基が好ましい。
【0104】
かかる配位子としては、カルボキシル基またはアミノ基含有ケイ素化合物等が挙げられ、これらの1種を単独で使用し、または2種以上を併用することができる。
【0105】
カルボキシル基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、トリメトキシシリルプロピル酸、トリエトキシシリルプロピル酸、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N’-カルボキシメチルエチレンジアミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]フタルアミド、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸等が挙げられる。
【0106】
一方、アミノ基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルジメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、N-[2-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリイソプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン等が挙げられる。
【0107】
さらに、図2(b)に示すように、中空粒子内包発光粒子91の表面に疎水性ポリマーからなるポリマー層92を備えた発光粒子90(以下、「ポリマー被覆発光粒子90」と記載することがある。)であることがより好ましい。ポリマー被覆発光粒子90は、ポリマー層92を備えることにより、熱、酸素に対する安定性をさらに向上させると共に、優れた粒子分散性を得ることができるため、光変換層とした際により優れた発光特性を得ることができる。
【0108】
1-1-2.シリカ被覆発光粒子
図3(a)及び図3(b)に、本発明における発光性ナノ結晶を含むナノ粒子の他の形態を示す。図3(a)に示す発光粒子91は、発光性を有するペロブスカイト型の半導体ナノ結晶(以下、単に「ナノ結晶911」と言うこともある。)と、このナノ結晶911の表面に配位した配位子で構成され、さらに、配位子のうちシラン化合物である分子同士がシロキサン結合を形成した表面層914とを備える(以下、「シリカ被覆発光粒子91」ということもある。)。かかる発光粒子91は、例えば、ナノ結晶911の前駆体、オレイン酸、オレイルアミン等の配位子とシロキサン結合可能な部位を有する配位子とを混合し、ナノ結晶911を析出させると同時に該配位子をナノ結晶911表面に配位させ、その後引き続き、シロキサン結合を生じさせることにより得ることができる。該発光粒子91は、ナノ結晶911がシリカ表面層914により保護されるため、熱や酸素に対する優れた安定性を得ることができ、その結果、優れた発光特性を得ることができる。
【0109】
さらに、図3(b)に示すように、シリカ被覆発光粒子91の表面に疎水性ポリマーからなるポリマー層92を備えた発光粒子90(以下、「ポリマー被覆発光粒子90」と記載することがある。)であることがより好ましい。ポリマー被覆発光粒子90は、ポリマー層92を備えることにより、熱、酸素に対する安定性をさらに向上させると共に、優れた粒子分散性を得ることができるため、光変換層とした際により優れた発光特性を得ることができる。
【0110】
図3(a)に示すシリカ被覆発光粒子91は、発光性を有する前記ナノ結晶911と、このナノ結晶911の表面に配位した配位子で構成され、さらに、配位子のうちシラン化合物である分子同士がシロキサン結合を形成した表面層914とを有する。そのため、シリカ被覆発光粒子91は、ナノ結晶911が表面層914により保護されるため、優れた発光特性を維持することができる。
【0111】
かかるシリカ被覆発光粒子91は、半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液と、脂肪族カルボン酸と、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物を含む脂肪族アミンとを含む溶液とを混合することにより、発光性を有するペロブスカイト型の半導体ナノ結晶を析出させると共に当該半導体ナノ結晶の表面に前記化合物を配位させ、その後、配位した前記化合物中の前記反応性基を縮合させることにより、前記半導体ナノ結晶の表面に前記シロキサン結合を有する表面層を形成した粒子91を得る方法により製造することができる。
このシリカ被覆発光粒子91は、それ自体、単体で発光粒子として使用することが可能である。
【0112】
<表面層914>
前記表面層914は、ナノ結晶911の表面に配位可能でありかつ分子同士がシロキサン結合を形成可能な化合物を含む配位子から構成されている。
【0113】
かかる配位子は、ナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有する化合物であり、Siを含有し、シロキサン結合を形成する反応性基を有する化合物を含む。該結合性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基およびボロン酸基のうちの少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシル基およびアミノ基のうちの少なくとも1種であることがより好ましい。かかる配位子としては、カルボキシル基またはアミノ基含有化合物等が挙げられ、これらの1種を単独で使用し、または2種以上を併用することができる。
【0114】
カルボキシル基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族カルボン酸が挙げられる。かかるカルボキシル基含有化合物の具体例としては、例えば、アラキドン酸、クロトン酸、trans-2-デセン酸、エルカ酸、3-デセン酸、cis-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸、4-デセン酸、all cis-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、all cis-8,11,14-エイコサトリエン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、trans-3-ヘキセン酸、trans-2-ヘキセン酸、2-ヘプテン酸、3-ヘプテン酸、2-ヘキサデセン酸、リノレン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、3-ノネン酸、2-ノネン酸、trans-2-オクテン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、オレイン酸、3-オクテン酸、trans-2-ペンテン酸、trans-3-ペンテン酸、リシノール酸、ソルビン酸、2-トリデセン酸、cis-15-テトラコセン酸、10-ウンデセン酸、2-ウンデセン酸、酢酸、酪酸、ベヘン酸、セロチン酸、デカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、ヘプタデカン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヘプタコサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、メリシン酸、オクタコサン酸、ノナデカン酸、ノナコサン酸、n-オクタン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、プロピオン酸、ペンタコサン酸、ノナン酸、ステアリン酸、リグノセリン酸、トリコサン酸、トリデカン酸、ウンデカン酸、吉草酸等が挙げられる。
【0115】
アミノ基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族アミンが挙げられる。かかるアミノ基含有化合物の具体例としては、例えば、1-アミノヘプタデカン、1-アミノノナデカン、ヘプタデカン-9-アミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、2-n-オクチル-1-ドデシルアミン、アリルアミン、アミルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、3-メトキシプロピルアミン、2-メトキシエチルアミン、2-メチルブチルアミン、ネオペンチルアミン、プロピルアミン、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、1-アミノデカン、ノニルアミン、1-アミノウンデカン、ドデシルアミン、1-アミノペンタデカン、1-アミノトリデカン、ヘキサデシルアミン、テトラデシルアミン等が挙げられる。
【0116】
また、Siを含有し、シロキサン結合を形成する反応性基を有する化合物は、ナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有することが好ましい。
【0117】
反応性基としては、シロキサン結合が容易に形成されることから、シラノール基、炭素原子数が1~6のアルコキシシリル基のような加水分解性シリル基が好ましい。
【0118】
結合性基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、ボロン酸基等が挙げられる。中でも、結合性基としては、カルボキシル基、メルカプト基およびアミノ基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらの結合性基は、上述の反応性基よりもナノ結晶911に含まれるカチオンに対する親和性が高い。このため、配位子は、結合性基をナノ結晶911側にして配位し、より容易かつ確実に表面層914を形成することができる。
【0119】
Siを含有し、シロキサン結合を形成する反応性基を有する化合物としては、結合性基を含有するケイ素化合物を1種以上含有し、または2種以上を併用することができる。
好ましくは、カルボキシル基含有ケイ素化合物、アミノ基含有ケイ素化合物、メルカプト基含有ケイ素化合物の何れか1種を含有し、または2種以上を併用することができる。
【0120】
カルボキシル基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-(トリメトキシシリル)プロピオン酸、3-(トリエトキシシリル)プロピオン酸、2-、カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N’-カルボキシメチルエチレンジアミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]フタルアミド、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸等が挙げられる。
【0121】
一方、アミノ基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルジメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、N-[2-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリイソプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン等が挙げられる。
【0122】
メルカプト基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等が挙げられる。
【0123】
図3(a)に示すシリカ被覆発光粒子91は、MサイトとしてPbカチオンを含むナノ結晶911の表面に、配位子としてオレイン酸、オレイルアミン、3-アミノプロピルトリメトキシシランを配位させ、さらに3-アミノプロピルトリメトキシシランを反応させることにより表面層914を形成している。
【0124】
表面層914の厚さは、0.5~50nmであることが好ましく、1.0~30nmであることがより好ましい。かかる厚さの表面層914を有する発光粒子91であれば、ナノ結晶911の熱に対する安定性を十分に高めることができる。
【0125】
なお、表面層914の厚さは、配位子の結合基と反応性基とを連結する連結構造の原子数(鎖長)を調製することで変更することができる。
【0126】
<シリカ被覆発光粒子91の作製方法>
このようなシリカ被覆発光粒子91は、ナノ結晶911の原料化合物を含む溶液と、ナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有する化合物と、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物とを含む溶液とを混合した後に、析出したナノ結晶911の表面に配位したSiを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物中の反応性基を縮合させることにより、容易に作製することができる。このとき、加熱を行って製造する方法と、加熱を行わずに製造する方法とがある。
【0127】
まず、加熱を行ってシリカ被覆発光粒子91を製造する方法について説明する 。半導体ナノ結晶を反応によって合成する2種の原料化合物を含む溶液をそれぞれ調製する。この際、2種の溶液の何れか一方にナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有する化合物を、もう一方にSiを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物を加えておく。次いで、これらを不活性ガス雰囲気下で混合、140~260℃の温度条件下に反応させる。次いで、-20~30℃に冷却し、攪拌することにより、ナノ結晶を析出させる方法が挙げられる。析出したナノ結晶はナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する表面層914が形成されたものとなり、遠心分離等の定法によりナノ結晶を得ることができる。
【0128】
具体的には、例えば、炭酸セシウムとオレイン酸とを有機溶媒とを含む溶液を調製する。有機溶媒として、1-オクタデセン、ジオクチルエーテル、ジフェニルエーテル等を用いることができる。このとき、有機溶媒40mLに対して、炭酸セシウムが0.2~2g、オレイン酸が0.1~10mLとなるように、それぞれの添加量を調製することが好ましい。得られた溶液を90~150℃で10~180分間減圧乾燥した後、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下で100~200℃に加熱することにより、セシウム-オレイン酸溶液を得る。
【0129】
一方、臭化鉛(II)と前述のものと同一の有機溶媒とを含む溶液を調製する。このとき、有機溶媒5mLに対して臭化鉛(II)を20~100mg添加する。得られた溶液を90~150℃で10~180分間減圧乾燥した後、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下で0.1~2mLの3-アミノプロピルトリエトキシシランを添加する。
【0130】
そして、臭化鉛(II)及び3-アミノプロピルトリエトキシシランを含む溶液を140~260℃に加熱した状態で上述のセシウム-オレイン酸溶液を添加し、1~10秒間加熱撹拌させることにより反応させた後に、得られた反応液を氷浴で冷却する。このとき、臭化鉛(II)及び3-アミノプロピルトリエトキシシランを含む溶液5mLに対して、セシウム-オレイン酸溶液を0.1~1mL添加することが好ましい。-20~30℃で撹拌中に、ナノ結晶911が析出すると共に、ナノ結晶911の表面に3-アミノプロピルトリエトキシシラン及びオレイン酸が配位する。
【0131】
その後、得られた反応液を、大気下、室温(10~30℃、湿度5~60%)で5~300分間撹拌した後、0.1~50mLのエタノールを添加することにより懸濁液を得る。大気下、室温での撹拌中に3-アミノプロピルトリエトキシシランのアルコキシシリル基が縮合し、ナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する表面層914が形成される。
【0132】
得られた懸濁液を遠心分離することにより固形物を回収し、固形物をヘキサンに添加することにより、三臭化鉛セシウムからなるナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する表面層914を備えたシリカ被覆発光粒子91がトルエンに分散した発光粒子分散液を得ることができる。
【0133】
また、前記回収された固形物を後述する光重合性化合物であるイソボルニルメタクリレートに添加することにより、メチルアンモニウム三臭化鉛結晶からなるナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する表面層914を備えたシリカ被覆発光粒子91がイソボルニルメタクリレートに分散した発光粒子分散液を得ることができる。
【0134】
次に、加熱を行わずにシリカ被覆発光粒子91を製造する方法について説明する 。半導体ナノ結晶の原料化合物及びナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有する化合物(Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物は含まない)を含む溶液を、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物をナノ結晶に対して貧溶媒である有機溶剤に溶解した溶液中に大気下にて滴下・混合することにより、ナノ結晶を析出させる方法が挙げられる。有機溶剤の使用量は半導体ナノ結晶に対して質量基準で10~1000倍量であることが好ましい。また、析出したナノ結晶はナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する表面層914が形成されたものとなり、遠心分離等の定法によりナノ結晶を得ることができる。
【0135】
具体的には、半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液として、例えば、臭化鉛(II)と臭化セシウムとオレイン酸とオレイルアミンと有機溶剤とを含む溶液を調製する。有機溶剤は、ナノ結晶の良溶媒であればよいが、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、及びこれらの混合溶媒であることが相溶性の点から好ましい。このとき、有機溶剤10mLに対して、臭化鉛(II)が10~50mg、臭化セシウムが5~25mg、オレイン酸が0.2~2mL、オレイルアミンが0.05~0.5mlとなるように、それぞれの添加量を調整することが好ましい。
【0136】
一方、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物とナノ結晶に対して貧溶媒である有機溶剤とを含む溶液として、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシランと貧溶媒とを調製する。貧溶媒としては、イソプロピルアルコール、トルエン、ヘキサン等を用いることができる。このとき、貧溶媒5mLに対して、3-アミノプロピルトリエトキシシランが0.01~0.5mLとなるように、それぞれの添加量を調整することが好ましい。
【0137】
そして、上述の臭化鉛(II)と臭化セシウムとオレイン酸とオレイルアミンを含む溶液0.1~1mLを、上述の3-アミノプロピルトリエトキシシランと貧溶媒を含む溶液5mLに対して、大気下、0~30℃で添加し、瞬時に大気下で5~180秒間撹拌した後に、遠心分離によって固形物を回収する。混合物を負溶媒に添加したときに、ナノ結晶911が析出すると共に、ナノ結晶911の表面に3-アミノプロピルトリエトキシシラン、オレイン酸及びオレイルアミンが配位する。そして、大気下での撹拌中に3-アミノプロピルトリエトキシシランのアルコキシシリル基が縮合し、ナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する表面層914が形成される。
【0138】
この回収された固形物をトルエンに添加することにより、三臭化鉛セシウム結晶からなるナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する表面層914を備えたシリカ被覆発光粒子91がトルエンに分散した発光粒子分散液を得ることができる。
【0139】
また、前記回収された固形物を後述する光重合性化合物であるイソボルニルメタクリレートに添加することにより、三臭化鉛セシウム結晶からなるナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する表面層914を備えたシリカ被覆発光粒子91がイソボルニルメタクリレートに分散した発光粒子分散液を得ることもできる。
【0140】
1-1-3.チタン被覆発光粒子
本発明における発光性ナノ結晶を含むナノ粒子の他の形態としては、該発光性ナノ結晶をチタン酸化物で被覆してもよい。チタン酸化物で被覆する場合は、発光性ナノ結晶が疎水性溶媒中に分散した溶液中に、水と酸素を含まない不活性雰囲気下でチタンアルコキシドを適量添加して攪拌する工程により得ることができる。該発光性ナノ結晶表面をチタン酸化物で被覆することにより、該結晶の表面欠陥を補うことができ発光特性の低下を抑制することが可能となる。チタン酸化物は、チタンアルコキシドの加水分解生成物であり、(R-O)-Ti-O-(Rは、それぞれ独立して、直鎖あるいは分岐していてもよい炭素原子数1~8のアルキル基を表す)の構造を有する。
【0141】
かかるチタン被覆発光粒子は、以下の方法によって形成することができる。
まず、発光性ナノ結晶を疎水性有機溶媒に分散させる。疎水性有機溶媒は特に限定されないが、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、シクロヘキサンが好ましく、トルエン、シクロヘキサンがより好ましい。これら疎水性有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。次に、該ナノ結晶分散溶液にチタンアルコキシドを添加し攪拌することにより、ナノ結晶表面に配位、反応し、該結晶表面を被覆することができる。
【0142】
該チタンアルコキシドとして、4価のチタンアルコキシドを用いた場合、チタンアルコキシド中の1つのアルコキシ基が、溶媒中に僅かに含まれる水分により部分的に加水分解され、(R-O)-Ti-O-を生じる。チタンアルコキシドとしては、式(1)で表される化合物が好ましい。
【0143】
Ti(OR) :式(1)
(式中、Rは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、イソプロピル基、2-エチルヘキシル基を表す)
【0144】
このようなチタンアルコキシドとしては、具体的には、チタンイソプロポキシド、チタニウムメトキシド、テトラエチルオルソチタネート、チタニウム-2-エチルヘキシルオキサイド、チタニウム-ジイソプロポキシド-ビス(アセチルアセトネート)等を挙げることができる。これらチタンアルコキシドは、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよいが、2種以上のチタンアルコキシドを用いる場合には、それぞれの反応速度に注意し、添加する量とタイミングを制御し、ナノ結晶表面を被覆することが好ましい。
【0145】
1-2.発光粒子90及びその作製方法
ポリマー被覆発光粒子90は、上述の工程で得られた図1中の(e)の発光粒子91を母粒子とし(以下、「発光粒子91」を「母粒子91」と記載することがある。)、母粒子91の表面を、疎水性ポリマーで被覆してポリマー層92を形成することによって得ることができる(図1中の(f))。また、図2(a)又は図3(a)の発光粒子91を母粒子としてもよい。ポリマー被覆発光粒子90は、疎水性のポリマー層92を備えることにより、発光粒子90に酸素、水分に対する高い安定性を付与することができ、さらには、発光粒子90の分散安定性を向上することができる。
【0146】
かかるポリマー層92は、以下の方法I、方法II等によって形成することができる。 方法I: 疎水性ポリマーを含むワニスに、発光粒子91を添加して混合することにより、発光粒子91の表面を疎水性ポリマーで被覆する。
方法II: 発光粒子91の表面に、非水溶媒に可溶な重合性不飽和基を含有する重合体と共に、非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶または難溶になる重合性不飽和単量体を担持させた後、前記重合体と前記重合性不飽和単量体とを重合させる方法等により形成することができる。
なお、方法Iにおける疎水性ポリマーには、方法IIにおける重合体と重合性不飽和単量体とを重合させた重合物が含まれる。
【0147】
中でも、ポリマー層92は、方法IIにより形成することが好ましい。方法IIによれば、均一な厚さを有すると共に、発光粒子91への密着性に優れたポリマー層92を形成することができる。
【0148】
以下、上述のポリマー層の形成方法IIについて詳細に述べる。
[非水溶媒]
非水溶媒は、疎水性ポリマーを溶解し得る有機溶媒が好ましく、発光粒子91を均一に分散可能であれば、さらに好ましい。このような非水溶媒を用いることにより、非常に簡便に疎水性ポリマーを発光粒子91に吸着させてポリマー層92を被覆させることができる。さらに、好ましくは、非水溶媒は低誘電率溶媒である。低誘電率溶媒を用いることにより、疎水性ポリマーと発光粒子91とを当該非水溶媒中で混合するだけで、疎水性ポリマーが発光粒子91表面に強固に吸着し、ポリマー層を被覆させることができる。
このようにして得られたポリマー層92は、後述するように発光粒子90を溶媒で洗浄したときでも、発光粒子91から除去され難い。さらに、非水溶媒の誘電率は低いほど好ましい。具体的には、非水溶媒の誘電率は、好ましくは10以下であり、さらに好ましくは6以下であり、特に好ましくは5以下である。好ましい非水溶媒としては、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される少なくとも一つを含む有機溶媒であることが好ましい。
【0149】
脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソヘキサン等が挙げられ、脂環式炭化水素系溶媒としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられ、芳香族炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0150】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、非水溶媒として、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される少なくとも一つに、他の有機溶媒を混合した混合溶媒を使用してもよい。かかる他の有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸アミルのようなエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノールのようなアルコール系溶媒等が挙げられる。
【0151】
混合溶媒として使用する際には、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群のうち少なくとも一つの使用量を、50質量%以上とすることが好ましく、60質量%以上とすることがより好ましい。
【0152】
[非水溶媒に可溶な重合性不飽和基を含有する重合体]
本工程で使用する非水溶媒に可溶な重合性不飽和基を含有する重合体(以下、「重合体(P)」とも記載する。)には、炭素原子数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A1)、末端に重合性官能基を有する(メタ)アクリレート(A2)、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(B、C)、または重合性不飽和基を有する含ケイ素化合物(D)を単量体成分とする共重合体に重合性不飽和基を導入したポリマー、あるいは、炭素原子数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A1)、末端に重合性官能基を有する(メタ)アクリレート(A2)、含フッ素化合物(B、C)を主成分とする重合性不飽和基を有する単量体、または含ケイ素化合物(D)を主成分とする重合性不飽和基を有する単量体の共重合体からなるマクロモノマー等が含まれる。
【0153】
アルキル(メタ)アクリレート(A1)としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0154】
また、末端に重合性官能基を有する(メタ)アクリレート(A2)としては、例えば、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸と1価アルコールとのジエステル系化合物が挙げられる。ここで、本明細書中において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートおよびアクリレートの双方を意味する。「(メタ)アクリロイル」との表現についても同様である。
【0155】
また、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(B)としては、例えば、下記一般式(B1)で表される化合物が挙げられる。
【0156】
【化1】

上記一般式(B1)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、シアノ基、フェニル基、ベンジル基または-C2n-Rf(ただし、nは1~8の整数であり、Rfは下記式(Rf-1)~(Rf-7)のいずれか1つの基である。)である。
【0157】
また、上記一般式(B1)中、Lは下記式(L-1)~(L-10)のいずれか1つの基である。
【0158】
【化2】

上記式(L-1)、(L-3)、(L-5)、(L-6)および(L-7)中のnは1~8の整数である。上記式(L-8)、(L-9)および(L-10)中のmは1~8の整数であり、nは0~8の整数である。上記式(L-6)および(L-7)中のRfは下記式(Rf-1)~(Rf-7)のいずれか1つの基である。
【0159】
また、上記一般式(B1)中、Rfは下記式(Rf-1)~(Rf-7)のいずれか1つの基である。
【0160】
【化3】

上記式(Rf-1)~(Rf-4)中のnは4~6の整数である。上記式(Rf-5)中のmは1~5の整数であり、nは0~4の整数であり、かつmおよびnの合計は4~5である。上記式(Rf-6)中のmは0~4の整数であり、nは1~4の整数であり、pは0~4の整数であり、かつm、nおよびpの合計は4~5である。
【0161】
また、上記一般式(B1)で表される化合物の好ましい具体例としては、下記式(B1-1)~(B1-7)で表されるメタクリレート、下記(B1-8)~(B1-15)で表されるアクリレート等が挙げられる。なお、これらの化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0162】
【化4】
【0163】
【化5】
【0164】
また、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(C)としては、例えば、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖と、その両末端に重合性不飽和基とを有する化合物が挙げられる。
ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖は、炭素原子数1~3の2価フッ化炭素基と酸素原子とが交互に連結した構造を有することが好ましい。
かかるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖は、炭素原子数1~3の2価フッ化炭素基を1種のみを含んでもよく、複数種を含んでもよい。具体的なポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)としては、下記一般式(C1)で表される構造が挙げられる。
【0165】
【化6】
【0166】
上記一般式(C1)中、Xは下記式(C1-1)~(C1-5)である。
複数のXは同一であってもよく、異なってもよい。異なるXを含む場合(複数種の繰り返し単位X-Oを含む場合)、複数の同一の繰り返し単位X-Oがランダム状又はブロック状に存在していてもよい。
また、nは繰り返し単位の数であり、1以上の整数である。
【0167】
【化7】
【0168】
中でも、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖としては、フッ素原子数と酸素原子数とのバランスが良好となり、重合体(P)が母粒子91の表面に絡みつき易くなる点から、上記式(C1-1)で表されるパーフルオロメチレンと、上記式(C1-2)で表されるパーフルオロエチレンとが共存する構造が好ましい。
この場合、上記式(C1-1)で表されるパーフルオロメチレンと、上記式(C1-2)で表されるパーフルオロエチレンとの存在比率は、モル比率[パーフルオロメチレン(C1-1)/パーフルオロエチレン(C1-2)]で、1/10~10/1であることが好ましく、2/8~8/2であることがより好ましく、3/7~7/3であることがさらに好ましい。
【0169】
また、上記一般式(C1)中のnは3~100であることが好ましく、6~70であることがより好ましい。さらに、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖に含まれるフッ素原子数は、合計で18~200であることが好ましく、25~150であることがより好ましい。かかる構成のポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖において、フッ素原子数と酸素原子数とのバランスがさらに良好になる。
【0170】
両末端に重合性不飽和基を導入する前のポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有する原料化合物としては、例えば、下記式(C2-1)~(C2-6)が挙げられる。なお、下記式(C2-1)~(C2-6)中の「-PFPE-」は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖である。
【0171】
【化8】
【0172】
ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端に導入される重合性不飽和基は、例えば、下記式(U-1)~(U-5)で表される構造が挙げられる。
【0173】
【化9】
【0174】
中でも、含フッ素化合物(C)自体の入手や製造の容易さ、あるいは他の重合性不飽和基を有する単量体との共重合の容易さから、上記式U-1で表されるアクリロイルオキシ基、または上記式U-2で表されるメタクリロイルオキシ基が好ましい。
含フッ素化合物(C)の具体例としては、下記式(C-1)~(C-13)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式(C-1)~(C-13)中の「-PFPE-」は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖である。
【0175】
【化10】
【0176】
【化11】
【0177】
中でも、含フッ素化合物(C)としては、工業的製造が容易である点から、上記式(C-1)、(C-2)、(C-5)または(C-6)で表される化合物が好ましく、母粒子91の表面への絡み易い重合体(P)を合成可能である点から、上記式(C-1)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にアクリロイル基を有する化合物、または上記式(C-2)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にメタクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
【0178】
また、重合性不飽和基を有する含ケイ素化合物(D)としては、例えば、下記一般式(D1)で表される化合物が挙げられる。
【0179】
【化12】

上記一般式(D1)中、Pは重合性官能基、XはSiR1122、Rdは水素原子、フッ素原子、メチル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基(ただし、R11、R22はメチル基、あるいはSi(CH)基、アミノ基、グリシジル基であり、mは0~100の整数であり、nは0~4の整数である。)である。
【0180】
含ケイ素化合物(D)の具体例としては、下記式(D-1)~(D-5)で表される化合物が挙げられる。
【0181】
【化13】
【0182】
また、重合性不飽和基を有する単量体として使用可能なアルキル(メタ)アクリレート(A1)、末端に重合性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(A2)、含フッ素化合物(B、C)および含ケイ素化合物(D)以外の化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ビニルトルエンのような芳香族ビニル系化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリレート系化合物等が挙げられる。
これらの化合物は、アルキル(メタ)アクリレート(A1)、末端に重合性官能基を有する(メタ)アクリレート(A2)、含フッ素化合物(B、C)または含ケイ素化合物(D)とのランダム共重合体として使用することが好ましい。これにより、得られる重合体(P)の非水溶媒への溶解性を十分に高めることができる。
【0183】
上記重合性不飽和基を有する単量体として使用可能な化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。中でも、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリルメタクリレートのような直鎖状または分岐状の炭素原子数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A1)を使用することが好ましい。
重合性不飽和基を有する単量体の共重合体は、重合性不飽和基を有する単量体を常法により重合することにより得られる。
さらに、かかる共重合体に重合性不飽和基を導入することにより、重合体(P)が得られる。
【0184】
重合性不飽和基の導入方法としては、例えば、以下の方法III~VIが挙げられる。 方法IIIは、予め共重合成分としてアクリル酸、メタクリル酸のようなカルボン酸基含有重合性単量体、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのようなアミノ基含有重合性単量体を配合し共重合させ、カルボン酸基またはアミノ基を有する共重合体を得た後、このカルボン酸基またはアミノ基にグリシジルメタクリレートのようなグリシジル基および重合性不飽和基を有する単量体を反応させる方法である。
方法IVは、予め共重合成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートのような水酸基含有単量体を配合し共重合させ、水酸基を有する共重合体を得た後、この水酸基にイソシアネートエチルメタクリレートのようなイソシアネート基および重合性不飽和基を有する単量体を反応させる方法である。
方法Vは、重合の際にチオグリコール酸を連鎖移動剤として使用して共重合体の末端にカルボキシル基を導入し、このカルボキシル基にグリシジルメタクリレートのようなグリシジル基および重合性不飽和基を有する単量体を反応させる方法である。
方法VIは、重合開始剤としてアゾビスシアノペンタン酸のようなカルボキシル基含有アゾ開始剤を使用して共重合体にカルボキシル基を導入し、このカルボキシル基にグリシジルメタクリレートのようなグリシジル基および重合性不飽和基を有する単量体を反応させる方法である。
中でも、方法IIIが最も簡便であることから好ましい。
【0185】
[非水溶媒に可溶であり、かつ重合後に不溶もしくは難溶になる重合性不飽和単量体] 上述の非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる重合性不飽和単量体(以下、「単量体(M)」とも記載する。)としては、例えば、反応性極性基(官能基)を有さないビニル系モノマー類、アミド結合含有ビニル系モノマー類、(メタ)アクリロイロキシアルキルホスフェート類、(メタ)アクリロイロキシアルキルホスファイト類、リン原子含有ビニル系モノマー類、水酸基含有重合性不飽和単量体類、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、エポキシ基含有重合性不飽和単量体類、イソシアネート基含有α,β-エチレン性不飽和単量体類、アルコキシシリル基含有重合性不飽和単量体類、カルボキシル基含有α,β-エチレン性不飽和単量体類等が挙げられる。
【0186】
反応性極性基を有さないビニル系モノマー類の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンのようなオレフィン類等が挙げられる。
アミド結合含有ビニル系モノマー類の具体例としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アルコキシ化N-メチロール化(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
【0187】
(メタ)アクリロイロキシアルキルホスフェート類の具体例としては、例えば、ジアルキル[(メタ)アクリロイロキシアルキル]ホスフェート類、(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスフェート類等が挙げられる。
(メタ)アクリロイロキシアルキルホスファイト類の具体例としては、例えば、ジアルキル[(メタ)アクリロイロキシアルキル]ホスファイト類、(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスファイト類等が挙げられる。
リン原子含有ビニル系モノマー類の具体例としては、例えば、上記(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスフェート類または(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスファイト類のアルキレンオキシド付加物、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートのようなエポキシ基含有ビニル系モノマーとリン酸、亜リン酸またはこれらの酸性エステル類とのエステル化合物、3-クロロ-2-アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0188】
水酸基含有重合性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ-2-ヒドロキシエチルフマレート、モノ-2-ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような重合性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類またはこれらとε-カプロラクトンとの付加物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和モノまたはジカルボン酸、ジカルボン酸と1価のアルコールとのモノエステル類のような重合性不飽和カルボン酸類;上記重合性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類とポリカルボン酸の無水物(マレイン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、「ハイミック酸」、テトラクロルフタル酸、ドデシニルコハク酸等)との付加物等の各種不飽和カルボン酸類と1価のカルボン酸のモノグリシジルエステル(やし油脂肪酸グリシジルエステル、オクチル酸グリシジルエステル等)、ブチルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のモノエポキシ化合物との付加物またはこれらとε-カプロラクトンとの付加物;ヒドロキシビニルエーテル等が挙げられる。
【0189】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類の具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基含有重合性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、重合性不飽和カルボン酸類、水酸基含有ビニルモノマーと上記ポリカルボン酸の無水物との等モル付加物(モノ-2-(メタ)アクリロイルオキシモノエチルフタレート等)のような各種不飽和カルボン酸に、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する各種ポリエポキシ化合物を等モル比で付加反応させて得られるエポキシ基含有重合性化合物、グリシジル(メタ)アクリレート、(β-メチル)グルシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグルシジルエーテル等が挙げられる。
【0190】
イソシアネート基含有α,β-エチレン性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの等モル付加物、イソシアネートエチル(メタ)アクリレートのようなイソシアネート基およびビニル基を有するモノマー等が挙げられる。
アルコキシシリル基含有重合性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、ビニルエトキシシラン、α-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレートのようなシリコン系モノマー類等が挙げられる。
【0191】
カルボキシル基含有α,β-エチレン性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和モノまたはジカルボン酸、ジカルボン酸と1価アルコールとのモノエステル類のようなα,β-エチレン性不飽和カルボン酸類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ-2-ヒドロキシエチルフマレート、モノ-2-ヒドロキシエチル-モノブチルフマレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのようなα,β-不飽和カルボン酸ヒドロアルキルエステル類とマレイン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、「ハイミック酸」、テトラクロルフタル酸、ドデシニルコハク酸のようなポリカルボン酸の無水物との付加物等が挙げられる。
【0192】
中でも、単量体(M)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートのような炭素原子数3以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
さらに、重合体(P)と単量体(M)とを重合させる際には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ヒドロキシル基、ジメチルアミノ基のような官能基のうちの少なくとも1種を有する重合性不飽和単量体を共重合することが好ましい。これにより、形成される重合物(ポリマー層92)のシロキサン結合との相互作用の高まりにより、発光粒子91の表面に対する密着性を向上することができる。
【0193】
また、得られる発光粒子90から疎水性ポリマーが溶出するのを防止または抑制するために、疎水性ポリマー(重合体(P))は架橋していることが好ましい。
【0194】
架橋成分として使用可能な多官能重合性不飽和単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート等が挙げられる。
【0195】
また、得られる疎水性ポリマーが非水溶媒に溶解しない範囲において、その他の重合性不飽和単量体を共重合するようにしてもよい。その他の重合性不飽和単量体としては、例えば、上記アルキル(メタ)アクリレート(A)、含フッ素化合物(B、C)、これら以外に使用可能な重合体(P)用の重合性不飽和単量体として例示した化合物が挙げられる。
【0196】
疎水性ポリマーからなるポリマー層92は、発光粒子91、非水溶媒および重合体(P)の存在下で、単量体(M)を重合させることにより形成される。発光粒子91と重合体(P)とは、重合を行う前に混合することが好ましい。混合には、例えば、ホモジナイザー、ディスパー、ビーズミル、ペイントシェーカー、ニーダー、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等を使用することができる。
【0197】
本発明において、使用する発光粒子91の形態は、特に限定されず問わず、スラリー、ウエットケーキ、粉体等のいずれであってもよい。
【0198】
発光粒子91と重合体(P)との混合後に、単量体(M)および後述する重合開始剤をさらに混合し、重合を行うことにより、重合体(P)と単量体(M)との重合物で構成されるポリマー層92が形成される。これにより、発光粒子90が得られる。
【0199】
この際、重合体(P)の数平均分子量は、1,000~500,000であることが好ましく、2,000~200,000であることがより好ましく、3,000~100,000であることがさらに好ましい。このような範囲の分子量を有する重合体(P)を用いることにより、発光粒子91の表面に良好にポリマー層92を被覆し得る。
【0200】
また、単量体(M)の使用量も、目的に応じて適宜設定されるため、特に限定されないが、通常、100質量部の発光粒子91に対して、0.5~40質量部であることが好ましく、1~35質量部であることがより好ましく、2~30質量部であることがさらに好ましい。
【0201】
最終的に発光粒子91の表面を被覆する疎水性ポリマーの量は、100質量部の発光粒子91に対して、1~60質量部であることが好ましく、2~50質量部であることがより好ましく、3~40質量部であることがさらに好ましい。
【0202】
この場合、単量体(M)の量は、100質量部の重合体(P)に対して、通常、10~100質量部であることが好ましく、30~90質量部であることがより好ましく、50~80質量部であることがさらに好ましい。
【0203】
ポリマー層92の厚さは、0.5~100nmであることが好ましく、0.7~50nmであることがより好ましく、1~30nmであることがさらに好ましい。ポリマー層92の厚さが0.5nm未満であると、分散安定性が得られない場合が多い。ポリマー層92の厚さが100nmを超えると発光粒子91を高濃度で含有させることが困難となる場合が多い。かかる厚さのポリマー層92で発光粒子91を被覆することにより、発光粒子90の酸素、水分に対する安定性をより向上させることができる。
【0204】
発光粒子91、非水溶媒および重合体(P)の存在下における単量体(M)の重合は、公知の重合方法によって行うことができるが、好ましくは重合開始剤の存在下で行われる。
【0205】
かかる重合開始剤としては、例えば、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーベンゾエート、t-ブチル-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルハイドロパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0206】
非水溶媒に難溶の重合開始剤は、単量体(M)に溶解した状態で、発光粒子91と重合体(P)とを含む混合液に添加することが好ましい。
【0207】
また、単量体(M)または重合開始剤を溶解した単量体(M)は、重合温度に達した混合液に滴下法により添加して重合させてもよいが、昇温前の常温の混合液に添加し、充分に混合した後に昇温して重合させるのが安定であり好ましい。
【0208】
重合温度は、60~130℃の範囲であることが好ましく、70~100℃の範囲であることがより好ましい。かかる重合温度で単量体(M)の重合を行えば、ナノ結晶911の形態変化(例えば、変質、結晶成長等)を好適に防止することができる。
【0209】
単量体(M)の重合後、発光粒子91表面に吸着しなかったポリマーを除去することにより、発光粒子91の表面にポリマー層92が形成された発光粒子(ポリマー被覆発光粒子)90を得る。吸着しなかったポリマーを除去する方法としては、遠心沈降、限外ろ過が挙げられる。遠心沈降では、ポリマー被覆発光粒子90と吸着されなかったポリマーとを含む分散液を高速で回転させ、当該分散液中のポリマー被覆発光粒子90を沈降させて、吸着しなかったポリマーを分離する。限外ろ過では、ポリマー被覆発光粒子90と吸着しなかったポリマーとを含む分散液を適切な溶媒で希釈し、適切な孔サイズを有するろ過膜に当該希釈液を通して、吸着しなかったポリマーとポリマー被覆発光粒子90とを分離する。
【0210】
以上のようにして、ポリマー被覆発光粒子90が得られる。ポリマー被覆発光粒子90は、分散媒、樹脂あるいは重合性化合物に分散させた状態で(すなわち、分散液として)保存してもよく、分散媒を除去して粉体(ポリマー被覆発光粒子90の集合体)として保存してもよい。
【0211】
発光粒子含有樹脂組成物がポリマー被覆発光粒子90を含む場合には、ポリマー被覆発光粒子90の含有量は、10~50質量%であることが好ましく、15~45質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。同様に、発光粒子含有樹脂組成物がポリマー層92によって被覆されていない発光粒子91を含む場合も、発光粒子91の含有量は、10~50質量%であることが好ましく、15~45質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。発光粒子含有樹脂組成物中のポリマー被覆発光粒子90(又は発光粒子91)の含有量を前記範囲に設定することにより、発光粒子含有樹脂組成物をインクジェット印刷法により吐出する場合には、その吐出安定性をより向上させることができる。また、発光粒子90(又は発光粒子91)同士が凝集し難くなり、得られる発光層(光変換層)の外部量子効率を高めることもできる。
【0212】
1-2.熱硬化性樹脂
本発明の発光粒子含有樹脂組成物中に含まれる熱硬化性樹脂は、硬化物中においてバインダーとして機能する、熱により架橋し硬化する樹脂である。熱硬化性樹脂は、硬化性基を有する。本発明では、熱硬化性樹脂をバインダーとして使用することにより、光硬化系インクジェット系インクにおいて問題となっていた光重合開始剤及び光増感剤の使用量増に起因する、吐出不良を回避させることができる。
【0213】
硬化性基としては、エポキシ基、オキセタン基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、メチロール基等が挙げられ、発光粒子含有樹脂組成物の硬化物の耐熱性及び保存安定性に優れる観点、及び、遮光部(例えばブラックマトリックス)及び基材への密着性に優れる観点から、エポキシ基が好ましい。熱硬化性樹脂は、1種の硬化性基を有していてもよく、二種以上の硬化性基を有していてもよい。
【0214】
熱硬化性樹脂は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、熱硬化性樹脂は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0215】
熱硬化性樹脂としては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物が用いられ、通常、硬化剤と組み合わせて用いられる。熱硬化性樹脂を用いる場合、熱硬化反応を促進できる触媒(硬化促進剤)を更に添加してもよい。言い換えれば、発光粒子含有樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(並びに、必要に応じて用いられる硬化剤及び硬化促進剤)を含む熱硬化性成分を含有していてよい。また、これらに加えて、それ自体は重合反応性のない重合体を更に用いてもよい。
【0216】
1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物として、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂(以下、「多官能エポキシ樹脂」ともいう。)を用いてもよい。「エポキシ樹脂」には、モノマー性エポキシ樹脂及びポリマー性エポキシ樹脂の両方が含まれる。多官能性エポキシ樹脂が1分子中に有するエポキシ基の数は、好ましくは2~50個であり、より好ましくは2~20個である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を挙げることができる。エポキシ樹脂としては、カルボン酸により硬化しうる公知の多価エポキシ樹脂を挙げることができる。このようなエポキシ樹脂は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
【0217】
エポキシ基を有する熱硬化性樹脂(多官能エポキシ樹脂を含む)としては、オキシラン環構造を有するモノマーの重合体、オキシラン環構造を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。具体的な多官能エポキシ樹脂としては、ポリグリシジルメタクリレート、メチルメタクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体、ベンジルメタクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体、n-ブチルメタクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン-グリシジルメタクリレート等が挙げられる。また、本実施形態の熱硬化性樹脂として、特開2014-56248号公報の段落0044~0066の記載の化合物を用いることもできる。
【0218】
また、多官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを使用できる。
【0219】
より具体的には、商品名「エピコート828」(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「YDF-175S」(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名「YDB-715」(東都化成社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON EXA1514」(DIC(株)製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、商品名「YDC-1312」(東都化成社製)などのハイドロキノン型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON EXA4032」、「HP-4770」、「HP-4700」、「HP-5000」(DIC(株)製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、商品名「エピコートYX4000H」(ジャパンエポキシレジン社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、商品名「エピコート157S70」(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、商品名「エピコート154」(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名「YDPN-638」(東都化成社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名「YDCN-701」(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON HP-7200」、「HP-7200H」(DIC(株)製)などのジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、商品名「エピコート1032H60」(ジャパンエポキシレジン社製)などのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、商品名「VG3101M80」(三井化学社製)などの3官能型エポキシ樹脂、商品名「エピコート1031S」(ジャパンエポキシレジン社製)などのテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、商品名「デナコールEX-411」(ナガセ化成工業社製)などの4官能型エポキシ樹脂、商品名「ST-3000」(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「エピコート190P」(ジャパンエポキシレジン社製)などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名「YH-434」(東都化成社製)などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、商品名「YDG-414」(東都化成社製)などのグリオキザール型エポキシ樹脂、商品名「エポリードGT-401」(ダイセル化学社製)などの脂環式多官能エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)などの複素環型エポキシ樹脂などを例示することができる。また、必要であれば、エポキシ反応性希釈剤として、商品名「ネオトートE」(東都化成社製)などを混合することができる。
【0220】
また、多官能エポキシ樹脂としては、DIC(株)製の「ファインディックA-247S」、「ファインディックA-254」、「ファインディックA-253」、「ファインディックA-229-30A」、「ファインディックA-261」、「ファインディックA249」、「ファインディックA-266」、「ファインディックA-241」「ファインディックM-8020」、「エピクロンN-740」、「エピクロンN-770」、「エピクロンN-865」(商品名)等を用いることができる。
【0221】
熱硬化性樹脂として、比較的分子量が小さい多官能エポキシ樹脂を用いると、発光粒子含有樹脂組成物(インクジェットインク)中にエポキシ基が補充されてエポキシの反応点濃度が高濃度となり、架橋密度を高めることができる。
多官能エポキシ樹脂の中でも、架橋密度を高める観点から、一分子中にエポキシ基を4個以上有するエポキシ樹脂(4官能以上の多官能エポキシ樹脂)を用いることが好ましい。特に、インクジェット方式における吐出ヘッドからの吐出安定性を向上させるためにエポキシ当量が500以上の熱硬化性樹脂を用いる場合には、画素部(発光粒子含有樹脂組成物の硬化物)の強度及び硬度が低下し易いため、架橋密度を充分に高める観点から、4官能以上の多官能エポキシ樹脂を発光粒子含有樹脂組成物(インクジェットインク)に配合することが好ましい。なお、エポキシ当量は、JIS K7236:2001に記載の方法に準じて測定することができる。
【0222】
熱硬化性樹脂を硬化させるために用いられる硬化剤及び硬化促進剤としては、例えば、4-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、フェノールノボラック樹脂、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルベンジルアミン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、トリフェニルホスフィン、3-フェニル-1,1-ジメチルウレア等が挙げられる。
【0223】
熱硬化性樹脂は、信頼性に優れるカラーフィルタ画素部が得られやすい観点から、アルカリ不溶性であることが好ましい。熱硬化性樹脂がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃における熱硬化性樹脂の溶解量が、熱硬化性樹脂の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。熱硬化性樹脂の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
【0224】
熱硬化性樹脂のエポキシ当量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、発光粒子含有樹脂組成物の硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(発光粒子含有樹脂組成物の硬化物)の耐溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、150以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、500以上であることがさらに好ましい。インクジェットインクとしての適正な粘度とする観点から、4000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。ただし、架橋後の分子量に関してはこの限りでない。
【0225】
熱硬化性樹脂の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、発光粒子含有樹脂組成物の硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(発光粒子含有樹脂組成物の硬化物)の耐溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、発光粒子含有樹脂組成物の不揮発分の質量を基準として、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。熱硬化性樹脂の含有量は、インクジェットインクの粘度が高くなりすぎず、画素部の厚さが光変換機能に対して厚くなりすぎない観点から、発光粒子含有樹脂組成物の不揮発分の質量を基準として、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下あることが好ましい。
【0226】
本実施形態において、発光粒子含有樹脂組成物は、さらに、光重合性化合物を含有してもよい。ここでいう光重合性化合物とは、光の照射によって重合する光ラジカル重合性化合物であり、光重合性のモノマーまたはオリゴマーであってもよい。これらは、光重合開始剤と共に用いられる。光重合性化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0227】
光ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートであってもよく、(メタ)アクリロイル基を複数有する多官能(メタ)アクリレートであってもよい。
【0228】
発光粒子含有樹脂組成物を調製した際の流動性に優れる観点、吐出安定性により優れる観点および発光粒子塗膜製造時における硬化収縮に起因する平滑性の低下を抑制し得る観点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0229】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0230】
多官能(メタ)アクリレートは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレート、5官能(メタ)アクリレート、6官能(メタ)アクリレート等であってもよい。例えば、ジオール化合物の2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、トリオール化合物の2つまたは3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジまたはトリ(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。
【0231】
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレ-ト、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのネオペンチルグリコールに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに2モルのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0232】
3官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0233】
4官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
5官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
6官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトールの複数の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたポリ(メタ)アクリレートであってもよい。
(メタ)アクリレート化合物は、リン酸基を有する、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸(メタ)アクリレート等であってもよい。
【0234】
発光粒子含有樹脂組成物が熱硬化性樹脂及び光重合性化合物を含む場合、熱硬化性樹脂及び光重合性化合物の含有量の合計の好ましい下限値は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(発光粒子含有樹脂組成物の硬化物)の耐有機溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、発光粒子含有樹脂組成物の不揮発分の質量を基準として、3質量%以上であり、5質量%以上であり、10質量%以上であり、15質量%以上であり、20質量%以上である。また、熱硬化性樹脂及び光重合性化合物の含有量の合計の好ましい上限値は、インクジェットインクの粘度が高くなりすぎず、画素部の厚さが光変換機能に対して厚くなりすぎない観点から、発光粒子含有樹脂組成物の不揮発分の質量を基準として、80質量%以下、60質量%以下、50質量%以下である。
【0235】
1-3.有機溶剤
本発明の発光粒子含有樹脂組成物中に含まれる有機溶剤は、発光粒子含有樹脂組成物を均一となるように調製する観点や、発光粒子含有樹脂組成物の流動性等を高めて、ムラのないカラーフィルタ画素部(光変換層)を形成する観点から使用される。有機溶剤は、後述するLogP値が特定範囲の有機溶剤であり、かつ、1気圧での沸点が150~260℃の有機溶剤であることが好ましい。さらに、前記有機溶剤の20℃における蒸気圧に対する100℃における蒸気圧の比(すなわち、100℃における蒸気圧/20℃における蒸気圧)が40以上であることがより好ましい。
【0236】
本発明において、LogP値は、オクタノール/水分配係数の常用対数値を表し、一般に有機化合物の親疎水性の相対的評価に用いられる数値である。オクタノール/水分配係数(LogP値)の測定は、一般にJIS Z7260-107に基づいて実測することができる。また、オクタノール/水分配係数(LogP値)は、計算科学的手法により見積もることができる。本発明では、「Journal of Pharamaceutical Sciences、83ページ、84巻,No.1,1995年刊」(WILLIAM M. MEYLAN、PHILIP H.HOWARD著)に記載の方法で算出された値を用いる。
【0237】
本発明の発光粒子含有樹脂組成物において、中でもインクジェット印刷に使用される発光粒子含有樹脂組成物においては、有機溶剤のLogP値は-1.0以上~6.5以下であり、必要であれば、本発明の技術的効果を損なわない範囲において、LogP値がこの範囲外の有機溶剤を含有していてもよい。
【0238】
有機溶剤のLogP値の好ましい上限値は、発光粒子の水分による劣化を抑える観点で、5.0以下であり、4.0以下であり、3.0以下であり、2.0以下である。また、好ましい下限値は、発光粒子含有樹脂組成物の吸水性を抑制して発光粒子91の水分による劣化を防ぐという観点から、-0.5以上であり、0.0以上であり、1.0以上である。
【0239】
LogP値が、上記範囲の-1.0以上~6.5以下の範囲外の有機溶剤を含有する場合、その有機溶剤の発光粒子含有樹脂組成物中の好ましい含有量は、発光粒子の大気中の酸素や水分による劣化を抑える観点で、30質量%以下であり、20質量%以下であり、10質量%以下であり、5質量%以下であり、2質量%以下である。
【0240】
有機溶剤の1気圧での沸点は、インクジェットインクの連続吐出安定性の観点から、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることがさらに好ましく、180℃以上であることが特に好ましい。また、画素部の形成時には、発光粒子含有樹脂組成物の硬化前に発光粒子含有樹脂組成物から有機溶剤を除去する必要があるため、有機溶剤を除去しやすい観点から、有機溶剤の沸点は260℃以下であることが好ましく、250℃以下がより好ましく、240℃以下がさらに好ましく、230℃以下が特に好ましい。
【0241】
ところで、発光粒子含有樹脂組成物を、インクジェット装置を利用して基板に吐出させるとき、有機溶剤の蒸発速度が速すぎると、インクジェットヘッドに目詰まりが生じることがある。また、基板上に吐出された発光粒子含有樹脂組成物は、通常100℃以上に加熱されて乾燥されるが、有機溶剤の蒸発速度が遅すぎると、乾燥に長時間を要して製造効率が低下することがある。そこで、有機溶剤は、20℃における蒸気圧が0.05~500Paであり、且つ、100℃における蒸気圧が20℃における蒸気圧の40倍以上であることが好ましい。本発明の発光粒子含有樹脂組成物は、このような蒸気圧を有する有機溶剤を用いることにより、上述の目詰まりを抑制すると共に、高速乾燥を実現して製造速度を高めることができる。これらの効果を高めるため、有機溶剤は、20℃における蒸気圧が0.1~400Paであることがより好ましく、0.1~300Paであることがさらに好ましい。
【0242】
本発明において発光粒子含有樹脂組成物中に含有される有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アニソール、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル、マロン酸ジメチル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、マロン酸ジエチル、安息香酸メチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、1,4-ブタンジオールジアセテート、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、グリセリルトリアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、イソホロン、テトラリンなどが挙げられる。
【0243】
本発明の発光粒子含有樹脂組成物中の有機溶剤の重量比率は、本発明に用いられる発光粒子含有樹脂組成物が通常塗布により行われることから、塗布した状態を著しく損なわない限りは特に制限はないが、発光粒子含有樹脂組成物における有機溶剤の合計量の含有比率が50~99質量%であることが好ましく、55~90質量%であることが更に好ましく、60~80質量%であることが特に好ましい。
【0244】
また、用いる有機溶剤は、前記有機溶剤と、前記以外の1気圧における沸点が150℃未満の有機溶剤を一緒に使用してもよい。本発明の発光粒子含有樹脂組成物中の前記以外の1気圧における沸点が150℃未満の有機溶剤の含有比率は、0~30質量%であることが好ましく、0~25質量%であることが更に好ましく、0~20質量%であることが特に好ましい。
【0245】
本発明における発光粒子含有樹脂組成物は、公知慣用のカラーフィルタの製造方法に用いる発光粒子含有樹脂組成物として適用が可能であるが、比較的高額である発光粒子、有機溶剤等の材料を無駄に消費せずに、必要な箇所に必要な量を用いるだけでカラーフィルタ画素部(光変換層)を形成できる点で、インクジェット方式用に適合するよう、適切に調製して用いることが好ましい。また、本発明における発光粒子含有樹脂組成物は、フォトリソグラフィー方式用に適切に調製してもよい。
【0246】
前記有機溶剤は、発光粒子含有樹脂組成物の粘度及び表面張力を調整するために適宜使用される。例えば、インクジェット印刷時の吐出安定性の観点から、吐出ヘッドのインク吐出孔の先端における発光粒子含有樹脂組成物のメニスカス形状を安定化させるため、発光粒子含有樹脂組成物の粘度を2~20mPa・sに調整した場合、発光粒子含有樹脂組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となり、好適である。本発明における発光粒子含有樹脂組成物の粘度は、2~20mPa・sであることが好ましく、5~15mPa・sであることがより好ましく、7~12mPa・sであることが特に好ましい。発光粒子含有樹脂組成物の粘度は、例えば、E型粘度計によって測定される。
【0247】
さらに、有機溶剤の表面張力が20~40mN/mであることが好ましい。このような有機溶剤を用いることにより、発光粒子含有樹脂組成物の表面張力をインクジェット方式に適した20~40mN/mの範囲に調整することができ、飛行曲がりの発生を抑制することができる。なお、飛行曲がりとは、発光粒子含有樹脂組成物をインクジェット方式において吐出ヘッドの吐出孔から吐出させたとき、該組成物の着弾位置が目標位置に対して30μm以上ずれる現象をいう。有機溶剤の表面張力が40mN/m以下である場合、吐出孔の先端におけるメニスカス形状が安定するため、該組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、有機溶剤の表面張力が20mN/m以上である場合、飛行曲がりの発生を抑制できる。このため、例えば、発光粒子含有樹脂組成物を用いて後述するカラーフィルタ部を形成しようとする場合に、着弾すべき画素部形成領域に正確に着弾されずに該組成物の充填が不十分な画素部が生じたり、着弾すべき画素部形成領域に隣接する画素部形成領域(又は画素部)に該組成物が着弾し、色再現性が低下したりすることを防ぐことができる。
【0248】
1-4.その他の成分
本発明に用いる発光粒子含有樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリマー被覆発光粒子90又はポリマーが被覆されていない発光粒子91、熱硬化性樹脂、有機溶剤以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、光散乱性粒子、酸化防止剤、分散剤、熱可塑性樹脂、レベリング剤、連鎖移動剤等が挙げられる。
【0249】
<光散乱性粒子>
光散乱性粒子は、例えば、光学的に不活性な無機微粒子である。光散乱性粒子は、発光層(光変換層)に照射された光源部からの光を散乱させることができる。
【0250】
光散乱性粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金のような単体金属;シリカ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛のような金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウムのような金属炭酸塩;水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物、次硝酸ビスマスのような金属塩等が挙げられる。 中でも、光散乱性粒子を構成する材料としては、漏れ光の低減効果により優れる観点から、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウムおよびシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0251】
光散乱性粒子の形状は、球状、フィラメント状、不定形状等であってもよい。しかしながら、光散乱性粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、発光粒子含有樹脂組成物の均一性、流動性及び光散乱性をより高められる点で好ましい。
【0252】
発光粒子含有樹脂組成物中に含まれる光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)の好ましい下限値は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、0.05μm以上であり、0.2μm以上であり、0.3μm以上である。一方、前記光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)の好ましい上限値は、吐出安定性に優れる観点から、1.0μm以下であり、0.6μm以下であり、0.4μm以下である。前記光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、0.05~1.0μm、0.05~0.6μm、0.05~0.4μm、0.2~1.0μm、0.2~0.6μm、0.2~0.4μm、0.3~1.0μm、0.3~0.6μm、又は0.3~0.4μmであることが好ましい。このような平均粒子径(体積平均径)が得られやすい観点から、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、50nm以上であることが好ましく、1000nm以下であることが好ましい。発光粒子含有樹脂組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。また、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、例えば透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により各粒子の粒子径を測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
【0253】
光散乱性粒子の含有量の好ましい下限値は、は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、発光粒子含有樹脂組成物の不揮発分の質量を基準として、0.1質量%以上であり、1質量%以上であり、5質量%以上であり、7質量%以上であり、10質量%以上であり、12質量%以上である。光散乱性粒子の含有量の好ましい上限値は、漏れ光の低減効果により優れる観点及び吐出安定性に優れる観点から、発光粒子含有樹脂組成物の不揮発分の質量を基準として、60質量%以下であり、50質量%以下であり、40質量%以下であり、30質量%以下であり、25質量%以下であり、20質量%以下であり、15質量%以下である。本実施形態では、発光粒子含有樹脂組成物が高分子分散剤を含むため、光散乱性粒子の含有量を上記範囲とした場合であっても光散乱性粒子の良好に分散させることができる。
【0254】
発光粒子90の含有量に対する光散乱性粒子の含有量の質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)の好ましい下限値は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、0.1以上であり、0.2以上であり、0.5以上である。前記質量比の好ましい上限値は、漏れ光の低減効果により優れ、インクジェット印刷時の連続吐出性に優れる観点から、5.0以下であり、2.0以下であり、1.5以下である。なお、光散乱性粒子による漏れ光低減は、次のようなメカニズムによると考えられる。すなわち、光散乱性粒子が存在しない場合、バックライト光は画素部内をほぼ直進して通過するのみであり、発光粒子90に吸収される機会が少ないと考えられる。一方、光散乱性粒子を発光粒子90と同一の画素部内に存在させると、その画素部内でバックライト光が全方位に散乱され、それを発光粒子90が受光することができるため、同一のバックライトを用いていても、画素部における光吸収量が増大すると考えられる。結果的に、このようなメカニズムで漏れ光を防ぐことが可能になったと考えられる。
【0255】
<分散剤>
分散剤は、発光粒子90の発光粒子含有樹脂組成物中での分散安定性をさらに向上させ得る化合物であれば、特に限定されない。分散剤は、低分子分散剤と高分子分散剤とに分類される。本明細書中において、「低分子」とは、重量平均分子量(Mw)が5,000以下の分子を意味し、「高分子」とは、重量平均分子量(Mw)が5,000超の分子を意味する。なお、本明細書中において、「重量平均分子量(Mw)」は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて測定された値を採用することができる。
【0256】
低分子分散剤としては、例えば、オレイン酸;リン酸トリエチル、TOP(トリオクチルフォスフィン)、TOPO(トリオクチルフォスフィンオキサイド)、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、オクチルホスフィン酸(OPA)のようなリン原子含有化合物;オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミンのような窒素原子含有化合物;1-デカンチオール、オクタンチオール、ドデカンチオール、アミルスルフィドのような硫黄原子含有化合物等が挙げられる。
【0257】
一方、高分子分散剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アミノ系樹脂、ポリアミン系樹脂(ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等)、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジンのような天然ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、酸化ロジン、マレイン化ロジンのような変性ロジン、ロジンアミン、ライムロジン、ロジンアルキレンオキシド付加物、ロジンアルキド付加物、ロジン変性フェノールのようなロジン誘導体等が挙げられる。
【0258】
なお、高分子分散剤の市販品としては、例えば、ビックケミー社製のDISPERBYKシリーズ、エボニック社製のTEGO Dispersシリーズ、BASF社製のEFKAシリーズ、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSEシリーズ、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ、楠本化成製のDISPARLONシリーズ、共栄社化学社製のフローレンシリーズ等を使用することができる。
分散剤の配合量は、100質量部の発光粒子90に対して、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。
【0259】
ところで、従来の発光粒子含有樹脂組成物を用いてインクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する場合、発光粒子及び光散乱性粒子の凝集等によりインクジェットノズルからの吐出安定性が低下する場合があった。また、発光粒子及び光散乱性粒子を微細化すること、発光粒子及び光散乱性粒子の含有量を減らすこと等により、吐出安定性を向上させることが考えられるが、この場合、漏れ光の低減効果が低下しやすく、充分な吐出安定性と漏れ光の低減効果とを両立することは困難であった。これに対し、分散剤を更に含有する発光粒子含有樹脂組成物によれば、充分な吐出安定性を確保しつつ、漏れ光をより低減することができる。このような効果が得られる理由は、明らかではないが、分散剤によって、発光粒子及び光散乱性粒子(特に、光散乱性粒子)の凝集が顕著に抑制されるためであると推察される。
【0260】
光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基及び非イオン性官能基が挙げられる。酸性官能基は解離性のプロトンを有しており、アミン、水酸化物イオン等の塩基により中和されていてもよく、塩基性官能基は有機酸、無機酸等の酸により中和されていてもよい。
【0261】
酸性官能基としては、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、硫酸基(-OSO3H)、ホスホン酸基(-PO(OH)3)、リン酸基(-OPO(OH)3)、ホスフィン酸基(-PO(OH)-)、メルカプト基(-SH)、が挙げられる。
【0262】
塩基性官能基としては、一級、二級及び三級アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、並びに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ環基等が挙げられる。
【0263】
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO2-)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基が挙げられる。
【0264】
光散乱性粒子の分散安定性の観点、発光粒子が沈降するという副作用を起こしにくい観点、高分子分散剤の合成の容易性の観点、及び官能基の安定性の観点から、酸性官能基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基及びリン酸基が好ましく用いられ、塩基性官能基としては、アミノ基が好ましく用いられる。これらの中でも、カルボキシル基、ホスホン酸基及びアミノ基がより好ましく用いられ、最も好ましくはアミノ基が用いられる。
【0265】
酸性官能基を有する分散剤は酸価を有する。酸性官能基を有する高分子分散剤の酸価は、好ましくは、固形分換算で、1~150mgKOH/gである。酸価が1以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、酸価が150以下であると、画素部(発光粒子含有樹脂組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。
また、塩基性官能基を有する分散剤はアミン価を有する。塩基性官能基を有する分散剤のアミン価は、好ましくは、固形分換算で、1~200mgKOH/gである。アミン価が1以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、アミン価が200以下であると、画素部(発光粒子含有樹脂組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。 分散剤の重量平均分子量の好ましい下限値は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、漏れ光の低減効果をより向上させることができる観点から、750以上であり、1000以上であり、2000以上であり、3000以上である。また、分散剤の重量平均分子量の好ましい上限値は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、漏れ光の低減効果をより向上させることができ、また、インクジェットインクの粘度を吐出可能で安定吐出に適する粘度とする観点から、100000以下であり、50000以下であり、30000以下である。
【0266】
分散剤の含有量の好ましい下限値は、光散乱性粒子の分散性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、0.5質量部以上であり、2質量部以上であり、5質量部以上である。高分子分散の含有量の好ましい上限値は、画素部(発光粒子含有樹脂組成物の硬化物)の湿熱安定性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、50質量部以下であり、30質量部以下であり、10質量部以下である。
【0267】
<酸化防止剤>
本発明に用いる発光粒子含有樹脂組成物は、当該組成物及び組成物から形成される光変換層の劣化を抑制する目的で、必要に応じて酸化防止剤を含有することができる。具体的な酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「IRGANOX1010」)、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「IRGANOX1035」)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「IRGANOX1076」)、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1330」、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(「IRGANOX1520L」)、「IRGANOX1726」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」(以上、BASF株式会社製);「アデカスタブAO-20」、「アデカスタブAO-30」、「アデカスタブAO-40」、「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」、「アデカスタブAO-80」(以上、株式会社ADEKA製);「JP-360」、「JP-308E」、「JPE-10」(以上、城北化学工業株式会社製);「スミライザーBHT」、「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80」(以上、住友化学株式会社製)等が挙げられる。
【0268】
酸化防止剤の添加量は、発光粒子含有樹脂組成物に含まれる固形分の総量に対して、0.01~2.0質量%であることが好ましく、0.02~1.5質量%であることがより好ましく、0.05~1.0質量%であることが特に好ましい。
【0269】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂等が挙げられる。
【0270】
<レベリング剤>
レベリング剤としては、特に限定はないが、発光粒子91および発光粒子90を含有する薄膜を形成する場合に、膜厚ムラを低減させ得る化合物が好ましい。
かかるレベリング剤としては、例えば、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルリン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン誘導体、フルオロアルキルエチレンオキシド誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、アルキルアンモニウム塩、フルオロアルキルアンモニウム塩類等が挙げられる。
【0271】
レベリング剤の具体例としては、例えば、「メガファックF-114」、「メガファックF-251」、「メガファックF-281」、「メガファックF-410」、「メガファックF-430」、「メガファックF-444」、「メガファックF-472SF」、「メガファックF-477」、「メガファックF-510」、「メガファックF-511」、「メガファックF-552」、「メガファックF-553」、「メガファックF-554」、「メガファックF-555」、「メガファックF-556」、「メガファックF-557」、「メガファックF-558」、「メガファックF-559」、「メガファックF-560」、「メガファックF-561」、「メガファックF-562」、「メガファックF-563」、「メガファックF-565」、「メガファックF-567」、「メガファックF-568」、「メガファックF-569」、「メガファックF-570」、「メガファックF-571」、「メガファックR-40」、「メガファックR-41」、「メガファックR-43」、「メガファックR-94」、「メガファックRS-72-K」、「メガファックRS-75」、「メガファックRS-76-E」、「メガファックRS-76-NS」、「メガファックRS-90」、「メガファックEXP.TF-1367」、「メガファックEXP.TF1437」、「メガファックEXP.TF1537」、「メガファックEXP.TF-2066」(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0272】
レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「フタージェント100」、「フタージェント100C」、「フタージェント110」、「フタージェント150」、「フタージェント150CH」、「フタージェント100A-K」、「フタージェント300」、「フタージェント310」、「フタージェント320」、「フタージェント400SW」、「フタージェント251」、「フタージェント215M」、「フタージェント212M」、「フタージェント215M」、「フタージェント250」、「フタージェント222F」、「フタージェント212D」、「FTX-218」、「フタージェント209F」、「フタージェント245F」、「フタージェント208G」、「フタージェント240G」、「フタージェント212P」、「フタージェント220P」、「フタージェント228P」、「DFX-18」、「フタージェント601AD」、「フタージェント602A」、「フタージェント650A」、「フタージェント750FM」、「FTX-730FM」、「フタージェント730FL」、「フタージェント710FS」、「フタージェント710FM」、「フタージェント710FL」、「フタージェント750LL」、「FTX-730LS」、「フタージェント730LM」、(以上、株式会社ネオス製)等が挙げられる。
【0273】
レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「BYK-300」、「BYK-302」、「BYK-306」、「BYK-307」、「BYK-310」、「BYK-315」、「BYK-320」、「BYK-322」、「BYK-323」、「BYK-325」、「BYK-330」、「BYK-331」、「BYK-333」、「BYK-337」、「BYK-340」、「BYK-344」、「BYK-370」、「BYK-375」、「BYK-377」、「BYK-350」、「BYK-352」、「BYK-354」、「BYK-355」、「BYK-356」、「BYK-358N」、「BYK-361N」、「BYK-357」、「BYK-390」、「BYK-392」、「BYK-UV3500」、「BYK-UV3510」、「BYK-UV3570」、「BYK-Silclean3700」(以上、BYK株式会社製)等が挙げられる。
【0274】
レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「TEGO Rad2100」、「TEGO Rad2011」、「TEGO Rad2200N」、「TEGO Rad2250」、「TEGO Rad2300」、「TEGO Rad2500」、「TEGO Rad2600」、「TEGO Rad2650」、「TEGO Rad2700」、「TEGO Flow300」、「TEGO Flow370」、「TEGO Flow425」、「TEGO Flow ATF2」、「TEGO Flow ZFS460」、「TEGO Glide100」、「TEGO Glide110」、「TEGO Glide130」、「TEGO Glide410」、「TEGO Glide411」、「TEGO Glide415」、「TEGO Glide432」、「TEGO Glide440」、「TEGO Glide450」、「TEGO Glide482」、「TEGO Glide A115」、「TEGO Glide B1484」、「TEGO Glide ZG400」、「TEGO Twin4000」、「TEGO Twin4100」、「TEGO Twin4200」、「TEGO Wet240」、「TEGO Wet250」、「TEGO Wet260」、「TEGO Wet265」、「TEGO Wet270」、「TEGO Wet280」、「TEGO Wet500」、「TEGO Wet505」、「TEGO Wet510」、「TEGO Wet520」、「TEGO Wet KL245」(以上、エボニック・インダストリーズ株式会社製)等が挙げられる。
【0275】
レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「FC-4430」、「FC-4432」(以上、スリーエムジャパン株式会社製)、「ユニダインNS」(以上、ダイキン工業株式会社製)、「サーフロンS-241」、「サーフロンS-242」、「サーフロンS-243」、「サーフロンS-420」、「サーフロンS-611」、「サーフロンS-651」、「サーフロンS-386」(以上、AGCセイミケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0276】
レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「DISPARLON OX-880EF」、「DISPARLON OX-881」、「DISPARLON OX-883」、「DISPARLON OX-77EF」、「DISPARLON OX-710」、「DISPARLON 1922」、「DISPARLON 1927」、「DISPARLON 1958」、「DISPARLON P-410EF」、「DISPARLON P-420」、「DISPARLON P-425」、「DISPARLON PD-7」、「DISPARLON 1970」、「DISPARLON 230」、「DISPARLON LF-1980」、「DISPARLON LF-1982」、「DISPARLON LF-1983」、「DISPARLON LF-1084」、「DISPARLON LF-1985」、「DISPARLON LHP-90」、「DISPARLON LHP-91」、「DISPARLON LHP-95」、「DISPARLON LHP-96」、「DISPARLON OX-715」、「DISPARLON 1930N」、「DISPARLON 1931」、「DISPARLON 1933」、「DISPARLON 1934」、「DISPARLON 1711EF」、「DISPARLON 1751N」、「DISPARLON 1761」、「DISPARLON LS-009」、「DISPARLON LS-001」、「DISPARLON LS-050」(以上、楠本化成株式会社製)等が挙げられる。
【0277】
レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「PF-151N」、「PF-636」、「PF-6320」、「PF-656」、「PF-6520」、「PF-652-NF」、「PF-3320」(以上、OMNOVA SOLUTIONS社製)、「ポリフローNo.7」、「ポリフローNo.50E」、「ポリフローNo.50EHF」、「ポリフローNo.54N」、「ポリフローNo.75」、「ポリフローNo.77」、「ポリフローNo.85」、「ポリフローNo.85HF」、「ポリフローNo.90」、「ポリフローNo.90D-50」、「ポリフローNo.95」、「ポリフローNo.99C」、「ポリフローKL-400K」、「ポリフローKL-400HF」、「ポリフローKL-401」、「ポリフローKL-402」、「ポリフローKL-403」、「ポリフローKL-404」、「ポリフローKL-100」、「ポリフローLE-604」、「ポリフローKL-700」、「フローレンAC-300」、「フローレンAC-303」、「フローレンAC-324」、「フローレンAC-326F」、「フローレンAC-530」、「フローレンAC-903」、「フローレンAC-903HF」、「フローレンAC-1160」、「フローレンAC-1190」、「フローレンAC-2000」、「フローレンAC-2300C」、「フローレンAO-82」、「フローレンAO-98」、「フローレンAO-108」(以上、共栄社化学株式会社製)等が挙げられる。
【0278】
また、レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「L-7001」、「L-7002」、「8032ADDITIVE」、「57ADDTIVE」、「L-7064」、「FZ-2110」、「FZ-2105」、「67ADDTIVE」、「8616ADDTIVE」(以上、東レ・ダウシリコーン株式会社製)等が挙げられる。
レベリング剤の添加量は、発光粒子含有樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.005~2質量%であることが好ましく、0.01~0.5質量%であることがより好ましい。
【0279】
<連鎖移動剤>
連鎖移動剤は、発光粒子含有樹脂組成物の基材との密着性をより向上させること等を目的として使用される成分である。連鎖移動剤としては、例えば、芳香族炭化水素類;クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、ブロモトリクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素類;オクチルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、n-ペンチルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-テトラデシルメル、n-ドデシルメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンのようなメルカプタン化合物;ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンのようなチオール化合物;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドのようなスルフィド化合物;N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジビニルアニリン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー、アクロレイン、アリルアルコール、ターピノーレン、α-テルピネン、γ-テルビネン、ジペンテン等が挙げられるが、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、チオール化合物が好ましい。
【0280】
連鎖移動剤の具体例としては、例えば、下記一般式(9-1)~(9-12)で表される化合物が好ましい。
【0281】
【化14】
【0282】
【化15】
【0283】
式中、R95は炭素原子数2~18のアルキル基を表し、該アルキル基は直鎖であってもよく分岐鎖であってもよい。該アルキル基中の1つ以上のメチレン基は酸素原子および硫黄原子が相互に直接結合することなく、酸素原子、硫黄原子、-CO-、-OCO-、-COO-または-CH=CH-で置換されていてもよい。
96は炭素原子数2~18のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ以上のメチレン基は酸素原子および硫黄原子が相互に直接結合することなく、酸素原子、硫黄原子、-CO-、-OCO-、-COO-または-CH=CH-で置換されていてもよい。 連鎖移動剤の添加量は、発光粒子含有樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、1.0~5質量%であることがより好ましい。
【0284】
以上のような発光粒子含有樹脂組成物は、ポリマー被覆発光粒子90又はポリマー層92で被覆されていない発光粒子91を、熱硬化性樹脂、有機溶剤等を混合した溶液中に分散させ、次いで、硬化剤等を添加、均一混合することにより調製することができる。
【0285】
或いは、ポリマー被覆発光粒子90又はポリマー層92で被覆されていない発光粒子91を有機溶剤中に分散させ、次いで、熱硬化性樹脂、有機溶剤、硬化剤等の混合溶液中に添加、均一混合することにより調製することができる。発光粒子90の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、3本ロールミル、ペイントコンディショナー、アトライター、分散攪拌機、超音波等の分散機を使用することにより行うことができる。
【0286】
2.発光粒子含有樹脂組成物の使用例
上述の発光粒子樹脂組成物は、例えば、インクジェットプリンター、フォトリソグラフィ、スピンコーター等、種々の方法によって基板上に被膜を形成し、この被膜を加熱して硬化させることにより硬化物を得ることができる。以下、青色有機LEDバックライトを備えた発光素子のカラーフィルタ画素部を発光粒子含有樹脂組成物にて形成する場合を例に挙げて説明する。
【0287】
2-1.発光素子
図4は、本発明の発光素子の一実施形態を示す断面図であり、図5及び図6は、それぞれアクティブマトリックス回路の構成を示す概略図である。なお、図4では、便宜上、各部の寸法およびそれらの比率を誇張して示し、実際とは異なる場合がある。また、以下に示す材料、寸法等は一例であって、本発明は、それらに限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更することが可能である。以下では、説明の都合上、図4の上側を「上側」または「上方」と、上側を「下側」または「下方」と言う。また、図4では、図面が煩雑になることを避けるため、断面を示すハッチングの記載を省略している。
【0288】
図4に示すように、発光素子100は、下基板1と、EL光源部200と、充填層10と、保護層11と、発光粒子90を含有し発光層として作用する光変換層12と、上基板13とをこの順に積層した構造を備える。光変換層12に含有される発光粒子90は、ポリマー被覆発光粒子90であってもよく、ポリマー層92で被覆されていない発光粒子91であってもよい。EL光源部200は、陽極2と、複数の層からなるEL層14と、陰極8と、図示しない偏光板と、封止層9とを順に備える。EL層14は、陽極2側から順次積層された正孔注入層3と、正孔輸送層4と、発光層5と、電子輸送層6と、電子注入層7とを含む。
【0289】
かかる発光素子100は、EL光源部200(EL層14)から発せられた光を光変換層12によって吸収及び再放出するか或いは透過させ、上基板13側から外部に取り出すフォトルミネセンス素子である。このとき、光変換層12に含まれる発光粒子90によって所定の色の光に変換される。以下、各層について順次説明する。
【0290】
<下基板1および上基板13>
下基板1および上基板13は、それぞれ発光素子100を構成する各層を支持および/または保護する機能を有する。発光素子100がトップエミッション型である場合、上基板13が透明基板で構成される。一方、発光素子100がボトムエミッション型である場合、下基板1が透明基板で構成される。ここで、透明基板とは、可視光領域の波長の光を透過可能な基板を意味し、透明には、無色透明、着色透明、半透明が含まれる。
【0291】
透明基板としては、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の透明なガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅等で構成される金属基板、シリコン基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。これらの中でも、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスからなるガラス基板を用いることが好ましい。具体的には、コーニング社製の「7059ガラス」、「1737ガラス」、「イーグル200」及び「イーグルXG」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA-10G」及び「OA-11」が好適である。これらは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れる。また、発光素子100に可撓性を付与する場合には、下基板1および上基板13には、それぞれ、プラスチック基板(高分子材料を主材料として構成された基板)、比較的厚さの小さい金属基板が選択される。
【0292】
下基板1および上基板13の厚さは、それぞれ特に限定されないが、100~1,000μmの範囲であることが好ましく、300~800μmの範囲であることがより好ましい。
なお、発光素子100の使用形態に応じて、下基板1および上基板13のいずれか一方または双方を省略することもできる。
【0293】
図5に示すように、下基板1上には、R、G、Bで示される画素電極PEを構成する陽極2への電流の供給を制御する信号線駆動回路C1および走査線駆動回路C2と、これらの回路の作動を制御する制御回路C3と、信号線駆動回路C1に接続された複数の信号線706と、走査線駆動回路C2に接続された複数の走査線707とを備えている。また、各信号線706と各走査線707との交差部近傍には、図6に示すように、コンデンサ701と、駆動トランジスタ702と、スイッチングトランジスタ708とが設けられている。
【0294】
コンデンサ701は、一方の電極が駆動トランジスタ702のゲート電極に接続され、他方の電極が駆動トランジスタ702のソース電極に接続されている。駆動トランジスタ702は、ゲート電極がコンデンサ701の一方の電極に接続され、ソース電極がコンデンサ701の他方の電極および駆動電流を供給する電源線703に接続され、ドレイン電極がEL光源部200の陽極4に接続されている。
【0295】
スイッチングトランジスタ708は、ゲート電極が走査線707に接続され、ソース電極が信号線706に接続され、ドレイン電極が駆動トランジスタ702のゲート電極に接続されている。また、本実施形態において、共通電極705は、EL光源部200の陰極8を構成している。なお、駆動トランジスタ702およびスイッチングトランジスタ708は、例えば、薄膜トランジスタ等で構成することができる。
【0296】
走査線駆動回路C2は、走査線707を介して、スイッチングトランジスタ708のゲート電極に走査信号に応じた走査電圧を供給または遮断し、スイッチングトランジスタ708のオンまたはオフする。これにより、走査線駆動回路C2は、信号線駆動回路C1が信号電圧を書き込むタイミングを調整する。一方、信号線駆動回路C1は、信号線706およびスイッチングトランジスタ708を介して、駆動トランジスタ702のゲート電極に映像信号に応じた信号電圧を供給または遮断し、EL光源部200に供給する信号電流の量を調整する。
【0297】
したがって、走査線駆動回路C2から走査電圧がスイッチングトランジスタ708のゲート電極に供給され、スイッチングトランジスタ708がオンすると、信号線駆動回路C1から信号電圧がスイッチングトランジスタ708のゲート電極に供給される。このとき、この信号電圧に対応したドレイン電流が電源線703から信号電流としてEL光源部200に供給される。その結果、EL光源部200は、供給される信号電流に応じて発光する。
【0298】
<EL光源部200>
[陽極2]
陽極2は、外部電源から発光層5に向かって正孔を供給する機能を有する。陽極2の構成材料(陽極材料)としては、特に限定されないが、例えば、金(Au)のような金属、ヨウ化銅(CuI)のようなハロゲン化金属、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)のような金属酸化物等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0299】
陽極2の厚さは、特に制限されないが、10~1,000nmの範囲であることが好ましく、10~200nmの範囲であることがより好ましい。
【0300】
陽極2は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法のような乾式成膜法により形成することができる。この際、フォトリソグラフィー法やマスクを用いた方法により、所定のパターンを有する陽極2を形成してもよい。
【0301】
[陰極8]
陰極8は、外部電源から発光層5に向かって電子を供給する機能を有する。陰極8の構成材料(陰極材料)としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、銀、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、希土類金属等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0302】
陰極8の厚さは、特に限定されないが、0.1~1,000nmの範囲であることが好ましく、1~200nmの範囲であることがより好ましい。
【0303】
陰極3は、例えば、蒸着法やスパッタリング法のような乾式成膜法により形成することができる。
【0304】
[正孔注入層3]
正孔注入層3は、陽極2から供給された正孔を受け取り、正孔輸送層4に注入する機能を有する。なお、正孔注入層3は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
【0305】
正孔注入層3の構成材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、銅フタロシアニンのようなフタロシアニン化合物;4,4’,4’’-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミンのようなトリフェニルアミン誘導体;1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノ-キノジメタンのようなシアノ化合物;酸化バナジウム、酸化モリブデンのような金属酸化物;アモルファスカーボン;ポリアニリン(エメラルディン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT-PSS)、ポリピロールのような高分子等が挙げられる。これらの中でも、正孔注入材料としては、高分子であることが好ましく、PEDOT-PSSであることがより好ましい。また、上述の正孔注入材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0306】
正孔注入層3の厚さは、特に限定されないが、0.1~500mmの範囲であることが好ましく、1~300nmの範囲であることがより好ましく、2~200nmの範囲であることがさらに好ましい。正孔注入層3は、単層構成であってもよく、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
【0307】
このような正孔注入層4は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。正孔注入層3を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の正孔注入材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、正孔注入層3を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等を好適に用いることができる。
【0308】
[正孔輸送層4]
正孔輸送層4は、正孔注入層3から正孔を受け取り、発光層6まで効率的に輸送する機能を有する。また、正孔輸送層4は、電子の輸送を防止する機能を有していてもよい。なお、正孔輸送層4は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
【0309】
正孔輸送層4の構成材料(正孔輸送材料)としては、特に限定されないが、例えば、TPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’ジアミン)、α-NPD(4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル)、m-MTDATA(4、4’,4’’-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)のような低分子トリフェニルアミン誘導体;ポリビニルカルバゾール;ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン](poly-TPA)、ポリフルオレン(PF)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン(Poly-TPD)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-コ-(4,4’-(N-(sec-ブチルフェニル)ジフェニルアミン))(TFB)、ポリフェニレンビニレン(PPV)のような共役系化合物重合体;およびこれらのモノマー単位を含む共重合体等が挙げられる。
【0310】
これらの中でも、正孔輸送材料としては、トリフェニルアミン誘導体、置換基が導入されたトリフェニルアミン誘導体を重合することにより得られた高分子化合物であることが好ましく、置換基が導入されたトリフェニルアミン誘導体を重合することにより得られた高分子化合物であることがより好ましい。また、上述の正孔輸送材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0311】
正孔輸送層4の厚さは、特に限定されないが、1~500nmの範囲であることが好ましく、5~300nmの範囲であることがより好ましく、10~200nmの範囲であることがさらに好ましい。正孔輸送層4は、単層構成であってもよく、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
【0312】
このような正孔輸送層4は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。正孔輸送層4を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の正孔輸送材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、正孔輸送層4を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等を好適に用いることができる。
【0313】
[電子注入層7]
電子注入層7は、陰極8から供給された電子を受け取り、電子輸送層6に注入する機能を有する。なお、電子注入層7は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
【0314】
電子注入層7の構成材料(電子注入材料)としては、特に制限されないが、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaOのようなアルカリ金属カルコゲナイド;CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSeのようなアルカリ土類金属カルコゲナイド;CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaClのようなアルカリ金属ハライド;8-ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)のようなアルカリ金属塩;CaF、BaF、SrF、MgF、BeFのようなアルカリ土類金属ハライド等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属ハライド、アルカリ金属塩であることが好ましい。また、上述の電子注入材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0315】
電子注入層7の厚さは、特に限定されないが、0.1~100nmの範囲であることが好ましく、0.2~50nmの範囲であることがより好ましく、0.5~10nmの範囲であることがさらに好ましい。電子注入層7は、単層構成であってもよく、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
【0316】
このような電子注入層7は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。電子注入層7を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の電子注入材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、電子注入層7を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用されうる。
【0317】
[電子輸送層8]
電子輸送層8は、電子注入層7から電子を受け取り、発光層5まで効率的に輸送する機能を有する。また、電子輸送層8は、正孔の輸送を防止する機能を有していてもよい。なお、電子輸送層8は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
【0318】
電子輸送層8の構成材料(電子輸送材料)としては、特に制限されないが、例えば、トリス(8-キノリラート)アルミニウム(Alq3)、トリス(4-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム(Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム(BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(p-フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq)、ビス(8-キノリノラート)亜鉛(Znq)のようなキノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体;ビス[2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラート]亜鉛(Zn(BOX)2)のようなベンズオキサゾリン骨格を有する金属錯体;ビス[2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラート]亜鉛(Zn(BTZ)2)のようなベンゾチアゾリン骨格を有する金属錯体;2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]カルバゾール(CO11)のようなトリまたはジアゾール誘導体;2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(mDBTBIm-II)のようなイミダゾール誘導体;キノリン誘導体;ペリレン誘導体;4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BPhen)のようなピリジン誘導体;ピリミジン誘導体;トリアジン誘導体;キノキサリン誘導体;ジフェニルキノン誘導体;ニトロ置換フルオレン誘導体;酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)のような金属酸化物等が挙げられる。これらの中でも、電子輸送材料としては、イミダゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、金属酸化物(無機酸化物)であることが好ましい。また、上述の電子輸送材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0319】
電子輸送層7の厚さは、特に限定されないが、5~500nmの範囲であることが好ましく、5~200nmの範囲であることがより好ましい。電子輸送層6は、単層であってもよく、2以上が積層されたものであってもよい。
【0320】
このような電子輸送層7は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。電子輸送層6を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の電子輸送材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、電子輸送層6を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用され得る。
【0321】
[発光層5]
発光層5は、発光層5に注入された正孔および電子の再結合により生じるエネルギーを利用して発光を生じさせる機能を有する。本実施形態の発光層5は、400~500nmの範囲の波長の青色光を発し、より好ましくは420~480nmの範囲である。
【0322】
発光層5は、発光材料(ゲスト材料またはドーパント材料)およびホスト材料を含むことが好ましい。この場合、ホスト材料と発光材料との質量比は、特に制限されないが、10:1~300:1の範囲であることが好ましい。発光材料には、一重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物または三重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物を使用することができる。また、発光材料としては、有機低分子蛍光材料、有機高分子蛍光材料および有機燐光材料からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0323】
一重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物としては、蛍光を発する有機低分子蛍光材料または有機高分子蛍光材料が挙げられる。
【0324】
有機低分子蛍光材料としては、アントラセン構造、テトラセン構造、クリセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、ペリレン構造、スチルベン構造、アクリドン構造、クマリン構造、フェノキサジン構造またはフェノチアジン構造を有する化合物が好ましい。
【0325】
有機低分子蛍光材料の具体例としては、例えば、5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン、4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(ジベンゾフラン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(ジベンゾチオフェン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン]、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン、クマリン6、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン、ルブレン、5,12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、5,10,15,20-テトラフェニルビスベンゾ[5,6]インデノ[1,2,3-cd:1’,2’,3’-lm]ペリレン等が挙げられる。
【0326】
有機高分子蛍光材料の具体例としては、例えば、フルオレン誘導体に基づく単位からなるホモポリマー、フルオレン誘導体に基づく単位とテトラフェニルフェニレンジアミン誘導体に基づく単位とからなるコポリマー、タ―フェニル誘導体に基づく単位からなるホモポリマー、ジフェニルベンゾフルオレン誘導体に基づく単位からなるホモポリマー等が挙げられる。
【0327】
三重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物としては、燐光を発する有機燐光材料が好ましい。有機燐光材料の具体例としては、例えば、イリジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、スカンジウム、イットリウム、ガドリニウム、パラジウム、銀、金、アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む金属錯体が挙げられる。中でも、有機燐光材料としては、イリジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、スカンジウム、イットリウム、ガドリニウムおよびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む金属錯体が好ましく、イリジウム、ロジウム、白金およびルテニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む金属錯体がより好ましく、イリジウム錯体または白金錯体がさらに好ましい。
【0328】
ホスト材料としては、発光材料のエネルギーギャップより大きいエネルギーギャップを有する化合物の少なくとも1種を使用することが好ましい。さらに、発光材料が燐光材料である場合、ホスト材料としては、発光材料の三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)よりも三重項励起エネルギーの大きい化合物を選択することが好ましい。
【0329】
ホスト材料としては、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)、バソフェナントロリン、バソキュプロイン、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9,10-ジフェニルアントラセン、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン、9-フェニル-10-{4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル}アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン、5,12-ジフェニルテトラセンまたは5,12-ビス(ビフェニル-2-イル)テトラセン等が挙げられる。これらのホスト材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0330】
発光層5の厚さは、特に限定されないが、1~100nmの範囲であることが好ましく、1~50nmの範囲であることがより好ましい。
【0331】
このような発光層5は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。発光層5を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の発光材料およびホスト材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、発光層5を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用され得る。
【0332】
なお、EL光源部200は、さらに、例えば、正孔注入層3、正孔輸送層4および発光層5を区画するバンク(隔壁)を有していてもよい。バンクの高さは、特に限定されないが、0.1~5μmの範囲であることが好ましく、0.2~4μmの範囲であることがより好ましく、0.2~3μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0333】
バンクの開口の幅は、10~200μmの範囲であることが好ましく、30~200μmの範囲であることがより好ましく、50~100μmの範囲であることがさらに好ましい。バンクの開口の長さは、10~400μmの範囲であることが好ましく、20~200μmの範囲であることがより好ましく、50~200μmの範囲であることがさらに好ましい。また、バンクの傾斜角度は、10~100°の範囲であることが好ましく、10~90°の範囲であることがより好ましく、10~80°の範囲であることがさらに好ましい。
【0334】
<光変換層12>
光変換層12は、EL光源部200から発せられた光を変換して再発光するか、或いは、EL光源部200から発せられた光を透過する。図4に示すように、画素部20として、前記範囲の波長の光を変換して赤色光を発する第1の画素部20aと、前記範囲の波長の光を変換して緑色光を発する第2の画素部20bと、前記範囲の波長の光を透過する第3の画素部20cとを有している。複数の第1の画素部20a、第2の画素部20b及び第3の画素部20cが、この順に繰り返すように格子状に配列されている。そして、隣り合う画素部の間、すなわち、第1の画素部20aと第2の画素部20bとの間、第2の画素部20bと第3の画素部20cとの間、第3の画素部20cと第1の画素部20aとの間に、光を遮蔽する遮光部30が設けられている。言い換えれば、これらの隣り合う画素部同士は、遮光部30によって離間されている。なお、第1の画素部20aおよび第2の画素部20bは、それぞれの色に対応した色材を含んでもよい。
【0335】
第1の画素部20a及び第2の画素部20bは、それぞれ上述した実施形態の発光粒子含有樹脂組成物の硬化物を含有する。硬化物は、発光粒子90と硬化成分とを必須として含有し、さらに、光を散乱させて外部へ確実に取り出すために光散乱粒子を含むことが好ましい。硬化成分は、熱硬化性樹脂の硬化物であり、例えばエポキシ基を含有する樹脂の重合によって得られる硬化物である。すなわち、第1の画素部20aは、第1の硬化成分22aと、第1の硬化成分22a中にそれぞれ分散された第1の発光粒子90aおよび第1の光散乱粒子21aとを含む。同様に、第2の画素部20bは、第2の硬化成分22bと、第2の硬化成分22b中にそれぞれ分散された第1の発光粒子90b及び第1の光散乱粒子21bとを含む。第1の画素部20a及び第2の画素部20bにおいて、第1の硬化成分22aと第2の硬化成分22bとは同一であってもよく異なっていてもよく、第1の光散乱性粒子22aと第2の光散乱性粒子22bとは同一であってもよく異なっていてもよい。
【0336】
第1の発光粒子90aは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、赤色発光粒子である。すなわち、第1の画素部20aは、青色光を赤色光に変換するための赤色画素部と言い換えてよい。また、第2の発光粒子90bは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、緑色発光粒子である。すなわち、第2の画素部20bは、青色光を緑色光に変換するための緑色画素部と言い換えてよい。
【0337】
発光粒子含有樹脂組成物の硬化物を含む画素部20a、20bにおける発光粒子90の含有量の下限値は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、発光粒子含有樹脂組成物の硬化物の全質量を基準として、1質量%以上であり、5質量%以上であり、10質量%以上であり、15質量%以上である。発光粒子90の含有量の好ましい上限値は、画素部20a、20bの信頼性に優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、発光粒子含有樹脂組成物の全質量を基準として、40質量%以下であり、30質量%以下であり、25質量%以下であり、20質量%以上である。
【0338】
発光粒子含有樹脂組成物の硬化物を含む画素部20a、20bにおける光散乱性粒子21a、21bの含有量の好ましい下限値は、外部量子効率の向上効果により優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、0.1質量%以上であり、1質量%以上であり、5質量%以上であり、7質量%以上であり、10質量%以上であり、12質量%以上である。光散乱性粒子21a、21bの含有量の好ましい上限値は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び画素部20の信頼性に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、60質量%以下であり、50質量%以下であり、40質量%以下であり、30質量%以下であり、25質量%以下であり、20質量%以下であり、15質量%以下である。
【0339】
第3の画素部20cは、420~480nmの範囲の波長の光に対し30%以上の透過率を有する。そのため、第3の画素部20cは、420~480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に、青色画素部として機能する。第3の画素部20cは、例えば、上述の熱硬化性樹脂を含有する組成物の硬化物を含む。硬化物は、第3の硬化成分22ccを含有する。第3の硬化成分22cは、熱硬化性樹脂の硬化物であり、具体的には、エポキシ基を含有する樹脂の重合によって得られる硬化物である。すなわち、第3の画素部20cは、第3の硬化成分22cを含む。第3の画素部20cが上述の硬化物を含む場合、熱硬化性樹脂を含有する組成物は、420~480nmの範囲の波長の光に対する透過率が30%以上となる限りにおいて、上述の発光粒子含有樹脂組成物に含有される成分のうち、熱硬化性樹脂、硬化剤、溶剤以外の成分を更に含有していてもよい。なお、第3の画素部20cの透過率は、顕微分光装置により測定することができる。
【0340】
画素部(第1の画素部20a、第2の画素部20b及び第3の画素部20c)の厚さは、特に限定されないが、好ましい下限値は、1μm以上であり、2μm以上であり、3μm以上である。前記厚さの好ましい上限値は、30μm以下であり、25μm以下であり、20μm以下である。
【0341】
以上の第1~3の画素部20a~20cを備える光変換層12は、湿式成膜法により形成した塗膜を乾燥、加熱して硬化させることより形成することができる。第1の画素部20a及び第2の画素部20bは、本発明の発光粒子含有樹脂組成物を用いて形成することができ、第3の画素部20cは当該発光粒子含有樹脂組成物に含まれる発光粒子90を含まない樹脂組成物を用いて形成することができる。以下、本発明の発光粒子含有樹脂組成物を用いた塗膜形成方法について詳述するが、本発明の発光粒子含有樹脂組成物を用いる場合も同様に行うことができる。
【0342】
本発明の発光粒子含有樹脂組成物の塗膜を得るための塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(ピエゾ方式またはサーマル方式の液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。ここで、ノズルプリント印刷法とは、発光粒子含有樹脂組成物をノズル孔から液柱としてストライプ状に塗布する方法である。中でも、塗布法としては、インクジェット印刷法(特に、ピエゾ方式の液滴吐出法)が好ましい。これにより、発光粒子含有樹脂組成物を吐出する際の熱負荷を小さくすることができ、発光粒子90の熱による劣化を防ぐことができる。
【0343】
インクジェット印刷法の条件は、次のように設定することが好ましい。発光粒子含有樹脂組成物の吐出量は、特に限定されないが、1~50pL/回であることが好ましく、1~30pL/回であることがより好ましく、1~20pL/回であることがさらに好ましい。
【0344】
また、ノズル孔の開口径は、5~50μmの範囲であることが好ましく、10~30μmの範囲であることがより好ましい。これにより、ノズル孔の目詰まりを防止しつつ、発光粒子含有樹脂組成物の吐出精度を高めることができる。
【0345】
塗膜を形成する際の温度は、特に限定されないが、10~50℃の範囲であることが好ましく、15~40℃の範囲であることがより好ましく、15~30℃の範囲であることがさらに好ましい。かかる温度で液滴を吐出するようにすれば、発光粒子含有樹脂組成物中に含まれる各種成分の結晶化を抑制することができる。
【0346】
また、塗膜を形成する際の相対湿度も、特に限定されないが、0.01ppm~80%の範囲であることが好ましく、0.05ppm~60%の範囲であることがより好ましく、0.1ppm~15%の範囲であることがさらに好ましく、1ppm~1%の範囲であることが特に好ましく、5~100ppmの範囲であることが最も好ましい。相対湿度が上記下限値以上であると、塗膜を形成する際の条件の制御が容易となる。一方、相対湿度が上記上限値以下であると、得られる光変換層12に悪影響を及ぼし得る塗膜に吸着する水分量を低減することができる。
【0347】
得られた塗膜の乾燥は、室温(25℃)で放置して行っても、加熱することにより行ってもよいが、生産性の観点から加熱することによって行うのが好ましい。乾燥を加熱により行う場合、乾燥温度は特に限定されないが、発光粒子含有樹脂組成物に使用される有機溶剤の沸点及び蒸気圧を考慮した温度とすることが好ましい。乾燥温度は、塗膜中の有機溶剤を除去するプリベーク工程として、50~130℃であることが好ましく、60~120℃であることがより好ましく、70~110℃であることが特に好ましい。乾燥温度が50℃以下であると有機溶剤が除去できず、一方、130℃以上であると有機溶剤の除去および塗膜の硬化が同時に起こるため、硬化した塗膜の外観は著しく劣ることとなり、好ましくない。また、乾燥は、減圧下で行うことが好ましく、0.001~100Paの減圧下で行うことがより好ましい。さらに、乾燥時間は、1~30分間であることが好ましく、1~15分間であることがより好ましく、1~10分間であることが特に好ましい。このような乾燥条件で塗膜を乾燥することにより、有機溶剤が確実に塗膜中から除去され、得られる光変換層12の外部量子効率をより向上させることができる。
【0348】
本発明の発光粒子含有樹脂組成物は、前記塗膜のプリベーク工程後にさらに加熱することにより完全に硬化させることができる。完全硬化させるための加熱温度は、150~260℃であることが好ましく、160~230℃であることがより好ましく、170~210℃であることが特に好ましい。
【0349】
また、完全硬化させるための加熱時間は、1~30分間であることが好ましく、1~15分間であることがより好ましく、1~10分間であることが特に好ましい。さらに、完全硬化させるための加熱は、空気中あるいは不活性ガス中で行うことができるが、塗膜の酸化を抑制するために、不活性ガス中で行うことがより好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、二酸化炭素等が挙げられる。このような加熱条件で塗膜を硬化させることにより、塗膜が完全に硬化できることから、得られる光変換層9の外部量子効率をより向上させることができる。
【0350】
本発明の発光粒子含有樹脂組成物は、加熱による硬化の他に、活性エネルギー線(例えば、紫外線)の照射を併用することにより硬化させてもよい。照射源(光源)としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等が使用される。 照射する光の波長は、200nm以上であることが好ましく、440nm以下であることがより好ましい。また、光の照射量(露光量)は、10mJ/cm以上であることが好ましく、4000mJ/cm以下であることがより好ましい。
【0351】
上述したように、本発明の発光粒子樹脂組成物は熱に対する安定性が優れることから、熱硬化後の成形体である画素部20においても、良好な発光を実現することができる。さらには、本発明の発光粒子組成物は分散性に優れるため、発光粒子90の分散性に優れ、且つ、平坦な画素部20を得ることができる。
【0352】
さらに、第1の画素部20a及び第2の画素部20bに含まれる発光粒子90は、メタルハライドからなり好ましくはペロブスカイト型結晶構造を有する半導体ナノ結晶を含むため、300~500nmの波長領域の吸収が大きい。そのため、第1の画素部20a及び第2の画素部20bにおいて、第1の画素部20a及び第2の画素部20bに入射した青色光が上基板13側へ透過する、すなわち、青色光が上基板13側へ漏れることを防ぐことができる。したがって、本発明の第1の画素部20a及び第2の画素部20bによれば、青色光が混色されることなく、色純度の高い赤色光及び緑色光を取り出すことができる。
【0353】
遮光部30は、隣り合う画素部20を離間して混色を防ぐ目的及び光源からの光漏れを防ぐ目的で設けられる、いわゆるブラックマトリックスである。遮光部30を構成する材料は、特に限定されず、クロム等の金属の他、バインダーポリマーにカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の硬化物等を用いることができる。ここで用いられるバインダーポリマーとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種又は2種以上混合したもの、感光性樹脂、O/Wエマルジョン型の樹脂組成物(例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの)などを用いることができる。遮光部30の厚さは、例えば、1μm以上であることが好ましく、15μm以下であることが好ましい。
【0354】
発光素子100は、トップエミッション型に代えて、ボトムエミッション型として構成することもできる。
また、発光素子100は、EL光源部200に代えて、他の光源を使用することもできる。
【0355】
以上、本発明の発光粒子含有樹脂組成物及びその製造方法、並びに、当該樹脂組成物を用いて製造した光変換層を備えた発光素子について説明したが、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、本発明の発光粒子、発光粒子分散体、発光粒子含有樹脂組成物および発光素子は、それぞれ、上述した実施形態の構成において、他の任意の構成を追加して有していてもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。また、本発明の発光粒子の製造方法は、上述した実施形態の構成において、他の任意の目的の工程を有していてもよいし、同様の効果を発揮する任意の工程と置換されていてよい。
【実施例
【0356】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0357】
下記実施例では、発光粒子を製造する操作及び発光粒子含有樹脂組成物を製造する操作は、窒素で満たしたグローブボックス内又は大気を遮断し窒素気流下のフラスコ内で行った。また、以下で例示するすべての原料は、その容器内に導入した窒素ガスで容器内の大気を置換した後に用いた。尚、液体材料に関しては、その容器内に導入した窒素ガスで液体材料中の溶存酸素を置換した後に用いた。
【0358】
また、以下で用いる、1,4-ブタンジオールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、グリセリルトリアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸イソブチルは、あらかじめモレキュラーシーブス(3Aあるいは4Aを使用)で48時間以上脱水したものを用いた。酸化チタンについては使用前に、1mmHgの減圧下、2時間、120℃で加熱し、窒素ガス雰囲気下で放冷した。
【0359】
<発光粒子分散液の調製>
(発光粒子分散液1の調製)
中空粒子として、日鉄鉱業株式会社製、「SiliNax SP-PN(b)の粒子を用いた。この中空粒子は、全体が立方体状形態であって、中空構造を備えたシリカ粒子である。まず、この中空シリカ粒子を150℃で8時間減圧乾燥した。次いで、200.0質量部の乾燥させた中空シリカ粒子を桐山ロートに秤取した。なお、中空シリカ粒子は、平均外径が100nmであり、平均内径が80nmである。
【0360】
次に、アルゴン雰囲気下、三つ口フラスコに63.9質量部の臭化セシウム、110.1質量部の臭化鉛(II)および3000質量部のN-メチルホルムアミドを供給し、50℃で30分間撹拌することにより、三臭化鉛セシウム溶液を得た。
【0361】
その後、前記三つ口フラスコに乾燥した中空シリカ粒子を供給して、得られた三臭化鉛セシウム溶液を中空シリカ粒子に含浸させた後、過剰な三臭化鉛セシウム溶液をろ過により除去し、固形物を回収した。得られた固形物を150℃で1時間減圧乾燥することにより、ペロブスカイト型結晶構造の三臭化鉛セシウムからなるナノ結晶を中空シリカ粒子に内包した発光粒子A(212.7質量部)を得た。得られた発光粒子Aを固形分濃度が5.0質量%となるように1,4-ブタンジオールジアセテート(株式会社ダイセル製)に分散することにより、発光粒子Aが分散した発光粒子分散液1を得た。
【0362】
(発光粒子分散液2の調製)
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、190質量部のヘプタンを供給し、85℃に昇温した。同温度に到達した後、66.5質量部のラウリルメタクリレート、3.5質量部のジメチルアミノエチルメタクリレートおよび0.5質量部のジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)を20質量部のヘプタンに溶解した混合物を、上記四つ口フラスコのへプタンに3.5時間かけて滴下し、滴下終了後も、同温度に10時間保持し、反応を継続した。その後、反応液の温度を50℃に降温した後、0.01質量部のt-ブチルピロカテコールを1.0質量部のヘプタンに溶解した溶液を添加し、さらに1.0質量部のグリシジルメタクリレートを添加した後、85℃まで昇温し、同温度で5時間反応を継続した。これにより、重合体(P)を含有する溶液を得た。なお、溶液中に含まれる不揮発分(NV)の量は25.1質量%であり、重合体(P)の重量平均分子量(Mw)は10,000であった。
【0363】
次いで、温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、26質量部のヘプタンと、3質量部の発光粒子Aと、3.6質量部の上述の重合体(P)を含有する溶液を供給した。さらに上記四つ口フラスコに、0.2質量部のエチレングリコールジメタクリレートと、0.4質量部のメチルメタクリレートと、0.12質量部のジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)とを供給した。その後、上記四つ口フラスコ内の混合液を、室温で30分間攪拌した後、80℃に昇温し、同温度で15時間反応を継続した。反応終了後、反応溶液内の発光粒子Aに吸着しなかったポリマーを遠心分離により分離し、次いで、沈降した粒子を室温で2時間真空乾燥することにより、母粒子としての発光粒子Aの表面が疎水性ポリマーからなるポリマー層で被覆されたポリマー被覆発光粒子Bを得た。
【0364】
得られたポリマー被覆発光粒子Bを透過型電子顕微鏡で観察したところ、発光粒子Aの表面に厚さ約10nmのポリマー層が形成されていた。その後、得られたポリマー被覆発光粒子Bを固形分濃度が5.0質量%となるように1,4-ブタンジオールジアセテート(株式会社ダイセル製)に分散することにより、発光粒子分散液2を得た。
【0365】
(発光粒子分散液3の調製)
まず、発光粒子分散液1に用いたものと同一の中空シリカ粒子(日鉄鉱業株式会社製、「SiliNax SP-PN(b)」)を150℃で8時間減圧乾燥した。次いで、200.0質量部の乾燥させた中空シリカ粒子を桐山ロートに秤取した。
【0366】
次に、アルゴン雰囲気下、三つ口フラスコに3.36質量部のメチルアミン臭化水素酸塩と、11.01質量部の臭化鉛(II)と、100質量部のN-メチルホルムアミドとを供給し、50℃で30分間撹拌することにより、メチルアンモニウム三臭化鉛溶液を得た。
【0367】
次に、前記三つ口フラスコに中空シリカ粒子を供給して、得られたメチルアンモニウム三臭化鉛溶液を中空シリカ粒子に含浸させた後、過剰なメチルアンモニウム三臭化鉛溶液をろ過により除去し、固形物を回収した。その後、得られた固形物を120℃で1時間減圧乾燥することにより、ペロブスカイト型結晶構造のメチルアンモニウム三臭化鉛からなるナノ結晶を中空シリカ粒子に内包した発光粒子C(21.04質量部)を得た。
【0368】
次いで、発光粒子Bに代えて発光粒子Cを用いたこと以外は、ポリマー被覆発光粒子Bと同一にして、母粒子としての発光粒子Cの表面が疎水性ポリマーからなるポリマー層で被覆されたポリマー被覆発光粒子Cを得た。
【0369】
得られたポリマー被覆発光粒子Cを透過型電子顕微鏡で観察したところ、母粒子としての発光粒子Cの表面に厚さ約10nmのポリマー層が形成されていた。その後、得られたポリマー被覆発光粒子Cを固形分濃度が5.0質量%となるように1,4-ブタンジオールジアセテートに分散することにより、発光粒子分散液3を得た。
【0370】
(発光粒子分散液4の調製)
中空粒子としては、以下のものを用いた。まず、特表2010-502795号公報の実施例1に記載の方法によって、コア-シェル型シリカナノ粒子を作製した。このコア-シェル型シリカナノ粒子は、PDPA23-PDMA68ジブロックコポリマーからなるコアと、オルトケイ酸テトラメチルをケイ酸化したシリカを含むシェルとを備える。得られたコア-シェル型シリカナノ粒子をアルミナるつぼに加え、電気炉内で焼成した。このとき、炉内を5時間かけて600℃まで昇温し、その温度にて3時間保持した。その後、自然冷却することによって、中空シリカ粒子を得た。なお、得られた中空シリカ粒子の平均外径は35nmであり、平均内径は15nmであった。
【0371】
次に、アルゴン雰囲気下、三つ口フラスコに6.39質量部の臭化セシウムと、11.01質量部の臭化鉛(II)と、300質量部のN-メチルホルムアミドとを供給し、50℃で30分間撹拌することにより、三臭化鉛セシウム溶液を得た。
【0372】
次に、前記三つ口フラスコに中空シリカ粒子を供給して、得られた三臭化鉛セシウム溶液を中空シリカ粒子に含浸させた後、過剰な三臭化鉛セシウム溶液をろ過により除去し、固形物を回収した。その後、得られた固形物を150℃で1時間減圧乾燥することにより、ペロブスカイト型結晶構造の三臭化鉛セシウムからなるナノ結晶を中空シリカ粒子に内包した発光粒子D(21.55質量部)を得た。
【0373】
次いで、発光粒子Bに代えて発光粒子Dを用いたこと以外は、ポリマー被覆発光粒子Bと同一にして、母粒子としての発光粒子Dの表面が疎水性ポリマーからなるポリマー層で被覆されたポリマー被覆発光粒子Dを得た。
【0374】
得られたポリマー被覆発光粒子Dを透過型電子顕微鏡で観察したところ、母粒子としての発光粒子Dの表面に厚み約10nmのポリマー層が形成されていた。得られたポリマー被覆発光粒子Dを固形分濃度が5.0質量%となるように1,4-ブタンジオールジアセテートに分散することにより、発光粒子分散液4を得た。
【0375】
(発光粒子分散液5の調製)
中空粒子として、シグマアルドリッチ社製、「MSU-H」の粒子を用いた。この中空粒子は、ハニカム形状、すなわち、断面が六角形であって両端が開口した筒を隙間なく並べた形状を備えたシリカ粒子である。この中空シリカ粒子の貫通孔の平均内径は7.1nmであり、中空シリカ粒子の平均長さは0.5~1μmである。但し、貫通孔の軸方向を、中空シリカ粒子の長さ方向とする。まず、この中空シリカ粒子を、150℃で8時間減圧乾燥した。次いで、200.0質量部の乾燥させた中空シリカ粒子を桐山ロートに秤取した。
【0376】
次に、アルゴン雰囲気下、三つ口フラスコに2.13質量部の臭化セシウムと、3.67質量部の臭化鉛(II)と、100質量部のN-メチルホルムアミドとを供給し、50℃で30分間撹拌することにより、三臭化鉛セシウム溶液を得た。その後、前記三つ口フラスコに前記中空シリカ粒子を供給して、得られた三臭化鉛セシウム溶液を中空シリカ粒子に含浸させた後、過剰な三臭化鉛セシウム溶液をろ過により除去し、固形物を回収した。その後、得られた固形物を150℃で1時間減圧乾燥することにより、ペロブスカイト型結晶構造の三臭化鉛セシウムからなるナノ結晶を中空シリカ粒子の貫通孔に保持した発光粒子E(13.68質量部)を得た。
【0377】
次いで、発光粒子Bに代えて発光粒子Eを用いたこと以外は、ポリマー被覆発光粒子Bと同一にして、母粒子としての発光粒子Eの表面が疎水性ポリマーからなるポリマー層で被覆されたポリマー被覆発光粒子Eを得た。
【0378】
得られたポリマー被覆発光粒子Eを透過型電子顕微鏡で観察したところ、ポリマー被覆粒子Eの表面に厚さ約10nmのポリマー層が形成されていた。得られたポリマー被覆発光粒子Eを固形分濃度が5.0質量%となるように1,4-ブタンジオールジアセテートに分散することにより、発光粒子分散液5を得た。
【0379】
(発光粒子分散液6の調製)
上述のポリマー被覆発光粒子Bを、固形分濃度が5.0質量%となるようにジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(東京化成工業株式会社製)に分散したこと以外は、上述の発光粒子分散液2と全く同一にして、発光粒子分散液6を得た。
【0380】
(発光粒子分散液7の調製)
上述のポリマー被覆発光粒子Bを、固形分濃度が5.0質量%となるようにジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(東京化成工業株式会社製)に分散したこと以外は、上述の発光粒子分散液2と全く同一にして、発光粒子分散液7を得た。
【0381】
(発光粒子分散液8の調製)
上述のポリマー被覆発光粒子Bを、固形分濃度が5.0質量%となるようにエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(昭和化学株式会社製)に分散したこと以外は、上述の発光粒子分散液2と全く同一にして、発光粒子分散液8を得た。
【0382】
(発光粒子分散液9の調製)
上述のポリマー被覆発光粒子Bを、固形分濃度が5.0質量%となるようにグリセリルトリアセテート(株式会社ダイセル製)に分散したこと以外は、上述の発光粒子分散液2と全く同一にして、発光粒子分散液9を得た。
【0383】
(発光粒子分散液10の調製)
上述のポリマー被覆発光粒子Bを、固形分濃度が5.0質量%となるようにジプロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業株式会社製)に分散したこと以外は、上述の発光粒子分散液2と全く同一にして、発光粒子分散液9を得た。
発光粒子分散液10を得た。
【0384】
(発光粒子分散液11の調整)
上述のポリマー被覆発光粒子Bを、固形分濃度が5.0質量%となるようにジエチレングリコールモノエチルエーテル(東京化成工業株式会社製)に分散したこと以外は、上述の発光粒子分散液2と全く同一にして、発光粒子分散液11を得た。
【0385】
(発光粒子分散液12の調製)
上述のポリマー被覆発光粒子Bを、固形分濃度が5.0質量%となるようにトリエチレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業株式会社製)に分散したこと以外は、上述の発光粒子分散液2と全く同一にして、発光粒子分散液12を得た。
【0386】
(発光粒子分散液13の調製)
上述のポリマー被覆発光粒子Bを、固形分濃度が5.0質量%となるように酢酸イソブチル(東京化成工業株式会社製)に分散したこと以外は、上述の発光粒子分散液2と全く同一にして、発光粒子分散液13を得た。
【0387】
(発光粒子分散液14の調製)
まず、発光粒子分散液1に用いたものと同一の中空シリカ粒子(日鉄鉱業株式会社製、「SiliNax SP-PN(b)」)を150℃で8時間減圧乾燥した。次いで、200.0質量部の乾燥させた中空シリカ粒子を桐山ロートに秤取した。
【0388】
次に、アルゴン雰囲気下、三つ口フラスコに2.13質量部の臭化セシウムと、3.67質量部の臭化鉛(II)と、0.018質量部のオレイン酸と、0.016質量部のオレイルアミンと、100質量部のN-メチルホルムアミドとを供給し、50℃で30分間撹拌することにより、三臭化鉛セシウム溶液を得た。その後、前記三つ口フラスコに前記中空シリカ粒子を供給して、得られた三臭化鉛セシウム溶液を中空シリカ粒子に含浸させた後、過剰な三臭化鉛セシウム溶液をろ過により除去し、固形物を回収した。その後、得られた固形物を150℃で1時間減圧乾燥することにより、オレイン酸およびオレイルアミンが配位したペロブスカイト型結晶構造の三臭化鉛セシウムからなるナノ結晶を中空シリカ粒子の中空部に保持した発光粒子F(13.03質量部)を得た。
【0389】
次いで、発光粒子Bに代えて発光粒子Fを用いたこと以外は、ポリマー被覆発光粒子Bと同一にして、母粒子としての発光粒子Fの表面が疎水性ポリマーからなるポリマー層で被覆されたポリマー被覆発光粒子Fを得た。
【0390】
得られたポリマー被覆発光粒子Fを透過型電子顕微鏡で観察したところ、母粒子としての発光粒子Fの表面に厚さ約10nmのポリマー層が形成されていた。その後、得られたポリマー被覆発光粒子Cを固形分濃度が5.0質量%となるように1,4-ブタンジオールジアセテートに分散することにより、発光粒子分散液14を得た。
【0391】
(発光粒子分散液15の調製)
まず、0.12gの炭酸セシウムと、5mLの1-オクタデセンと、0.5mLのオレイン酸とを混合して混合液を得た。次に、この混合液を120℃で30分間、減圧乾燥した後、アルゴン雰囲気下に150℃で加熱した。これにより、セシウム-オレイン酸溶液を得た。
【0392】
一方、0.1gの臭化鉛(II)と7.5mLの1-オクタデセンと、0.75mLのオレイン酸とを混合して混合液を得た。次に、この混合液を90℃で10分間、減圧乾燥した後、アルゴン雰囲気下に混合液に0.75mLの3-アミノプロピルトリエトキシシランを添加した。その後さらに20分間減圧乾燥を行った後、アルゴン雰囲気下に140℃で加熱した。
【0393】
その後、上記臭化鉛(II)を含む混合液に150℃で0.75mLの前記セシウム-オレイン酸溶液を添加し、5秒間加熱撹拌することにより反応させた後、氷浴で冷却した。次いで、60mLの酢酸メチルを添加した。得られた懸濁液を遠心分離(10,000回転/分、1分間)した後、上澄み液を除去することにより固形物を回収し、発光粒子Gを得た。この発光粒子Gは、表面層を備えたペロブスカイト型の三臭化鉛セシウム結晶であり、透過型電子顕微鏡観察により平均粒子径は10nmであった。また、表面層は3-アミノプロピルトリエトキシシランで構成される層であり、その厚さは約1nmであった。すなわち、発光粒子Gは、シリカで被覆された粒子である。その後、得られた発光粒子Gを、固形分濃度が5.0質量%となるように1,4-ブタンジオールジアセテート(株式会社ダイセル製)に分散させることによって発光粒子分散液15を得た。
【0394】
(発光粒子分散液16の調製)
発光粒子Bに代えて発光粒子Gを用いたこと以外は、ポリマー被覆発光粒子Bと同一にして、母粒子としての発光粒子Gの表面が疎水性ポリマーからなるポリマー層で被覆されたポリマー被覆発光粒子Hを得た。
【0395】
得られたポリマー被覆発光粒子Hを透過型電子顕微鏡で観察したところ、母粒子としての発光粒子Gの表面に厚さ約10nmのポリマー層が形成されていた。その後、得られたポリマー被覆発光粒子Hを固形分濃度が5.0質量%となるように1,4-ブタンジオールジアセテートに分散することにより、発光粒子分散液16を得た。
【0396】
(発光粒子分散液C1の調製)
まず、温度計、攪拌機、セプタムおよび窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、0.814質量部の炭酸セシウムと、40質量部のオクタデセンと、2.5質量部のオレイン酸とを供給し、窒素雰囲気下、150℃で均一な溶液になるまで加熱撹拌した。全て溶解させた後、100℃まで冷却することによって、オレイン酸セシウム溶液を得た。
【0397】
次に、温度計、攪拌機、セプタムおよび窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、0.069質量部の臭化鉛(II)と、5質量部のオクタデセンとを供給し、窒素雰囲気下、120℃で1時間加熱撹拌した。続いて前記四つ口フラスコに、0.5質量部のオレイルアミンと0.5質量部のオレイン酸とを供給し、窒素雰囲気下、160℃で均一な溶液になるまで加熱撹拌した。さらに前記四つ口フラスコに、0.4重量部のオレイン酸セシウム溶液を供給し、160℃で5秒間撹拌した後、当該四つ口フラスコを氷冷した。得られた反応液を遠心分離によって分離し、上澄み液を除去することによって、発光粒子Xとして、オレイン酸およびオレイルアミンが配位したペロブスカイト型結晶構造の三臭化鉛セシウム結晶0.45質量部を得た。その後、得られた発光粒子Xを、固形分濃度が5.0質量%となるように1,4-ブタンジオールジアセテート(株式会社ダイセル製)に分散させることによって発光粒子分散液C1を得た。
【0398】
下記表1に、得られた発光粒子分散液1~16及びC1について、分散質、分散質を構成する半導体ナノ結晶の組成、分散質における無機被覆層の有無、ポリマー層の有無及び量子収率(PLQY)を示す。
【0399】
(量子収率(PLQY))
得られた発光粒子分散液の量子収率を、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス株式会社製、「Quantaurus-QY」)で測定した。量子収率が高いほど、発光粒子の発光効率が良く、優れた発光特性を有することを意味する。
【0400】
【表1】
【0401】
<光散乱性粒子分散液の調製>
(光散乱粒子分散液1の調製)
窒素ガスで満たした容器内で、酸化チタン(石原産業株式会社製「CR60-2」)6.00gと、高分子分散剤(味の素ファインテクノ株式会社製「アジスパーPB-821」)1.02gと、有機溶剤である1,4-ブタンジオールジアセテートとを不揮発分40.0%となるように混合した。さらに、得られた配合物にジルコニアビーズ(直径:1.25mm) を加え、前記容器を窒素ガスで満たして密閉した後、密閉容器をペイントコンディショナーを用いて2時間振とうさせて配合物の分散処理を行うことにより、光散乱性粒子分散体1を得た。上記の材料は全て、窒素ガスを導入して溶存酸素を窒素ガスに置換したものを用いた。
【0402】
(光散乱粒子分散液2の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを用いた以外は光散乱粒子分散液1と同様にして、光散乱粒子分散液2を得た。
【0403】
(光散乱粒子分散液3の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを用いた以外は光散乱粒子分散液1と同様にして、光散乱粒子分散液3を得た。
【0404】
(光散乱粒子分散液4の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを用いた以外は光散乱粒子分散液1と同様にして、光散乱粒子分散液4を得た。
【0405】
(光散乱粒子分散液5の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、グリセリルトリアセテートを用いた以外は光散乱粒子分散液1と同様にして、光散乱粒子分散液5を得た。
【0406】
(光散乱粒子分散液6の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを用いた以外は光散乱粒子分散液1と同様にして、光散乱粒子分散液6を得た。
【0407】
(光散乱粒子分散液7の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを用いた以外は光散乱粒子分散液1と同様にして、光散乱粒子分散液7を得た。
【0408】
(光散乱粒子分散液8の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを用いた以外は光散乱粒子分散液1と同様にして、光散乱粒子分散液8を得た。
【0409】
(光散乱粒子分散液9の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、酢酸イソブチルを用いた以外は光散乱粒子分散液1と同様にして、光散乱粒子分散液9を得た。
【0410】
<樹脂溶液の調製>
(樹脂溶液1の調製)
グリシジル基含有アクリル樹脂であるファインディックA-254(DIC株式会社製、エポキシ当量:500)を2.40gと、硬化剤である4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(4M-HHPA、東京化成工業株式会社製)を0.43gと、硬化触媒であるN,N-ジメチルベンジルアミン(東京化成工業株式会社製)を0.03gとを、不揮発分44.5質量%となるように、有機溶剤である1,4-ブタンジオールジアセテートに溶解させ、樹脂溶液1を得た。
【0411】
(樹脂溶液2の調製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるEPICLON 1050(DIC株式会社製、エポキシ当量:475)を1.92gと、硬化剤である4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(4M-HHPA、東京化成工業株式会社製)を0.68gと、硬化触媒であるN,N-ジメチルベンジルアミン(東京化成工業株式会社製)を0.26gとを、不揮発分44.5質量%となるように、有機溶剤である1,4-ブタンジオールジアセテートに溶解させ、樹脂溶液2を得た。
【0412】
(樹脂溶液3の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを用いた以外は樹脂溶液1と同様にして、樹脂溶液3を得た。
【0413】
(樹脂溶液4の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを用いた以外は樹脂溶液1と同様にして、樹脂溶液4を得た。
【0414】
(樹脂溶液5の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを用いた以外は樹脂溶液1と同様にして、樹脂溶液5を得た。
【0415】
(樹脂溶液6の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、グリセリルトリアセテートを用いた以外は樹脂溶液1と同様にして、樹脂溶液6を得た。
【0416】
(樹脂溶液7の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを用いた以外は樹脂溶液1と同様にして、樹脂溶液7を得た。
【0417】
(樹脂溶液8の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを用いた以外は樹脂溶液1と同様にして、樹脂溶液8を得た。
【0418】
(樹脂溶液9の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は樹脂溶液1と同様にして、樹脂溶液9を得た。
【0419】
(樹脂溶液10の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを用いた以外は樹脂溶液1と同様にして、樹脂溶液10を得た。
【0420】
(樹脂溶液11の調製)
有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテートの代わりに、酢酸イソブチルを用いた以外は樹脂溶液1と同様にして、樹脂溶液11を得た。
【0421】
<発光粒子含有樹脂組成物の調製>
(発光粒子含有樹脂組成物1の調製)
発光粒子分散液1(不揮発分濃度5.0量%)1.50gと、光散乱性粒子分散体1(不揮発分濃度40.0質量%)0.44gと、樹脂溶液1(不揮発分濃度44.5質量%)3.07gとを、アルゴンガスで満たした容器内で均一に混合した後、グローブボックス内で、混合物を孔径5μmのフィルターでろ過した。さらに、得られたろ過物を入れた容器内にアルゴンガスを導入し、容器内をアルゴンガスで飽和させた。次いで、減圧してアルゴンガスを除去することにより、発光粒子含有樹脂組成物1を得た。
【0422】
(発光粒子含有樹脂組成物2~21及びC1の調製)
発光粒子分散液1~17、光散乱粒子分散液1~9及び樹脂溶液1~11の添加量を、下記表2~表4に示す添加量に変更した以外は、発光粒子含有樹脂組成物1の調製と同一条件で、発光粒子含有樹脂組成物2~21及びC1を得た。なお、下記表1~表3中の添加量の単位は、いずれも「g」である。さらに、下記表5に、発光粒子分散液1~17、光散乱粒子分散液1~9及び樹脂溶液1~11の調製に使用した有機溶剤について、LogP、1気圧における沸点、20℃における蒸気圧、20℃における蒸気圧に対する100℃における蒸気圧比及び25℃における表面張力を示す。
【0423】
【表2】
【0424】
【表3】
【0425】
【表4】
【0426】
【表5】
【0427】
<発光粒子含有樹脂組成物の評価>
得られた1~21の発光粒子含有樹脂組成物を実施例1~21とし、発光粒子含有樹脂組成物C1を比較例1とした。実施例1~21及び比較例1の発光粒子含有樹脂組成物について、以下のようにして、分散安定性、吐出安定性を評価した。結果を下記表6に示す。
【0428】
(分散安定性)
実施例1~21及び比較例1の発光粒子含有樹脂組成物を大気下で10日間放置した後、沈殿物の有無を確認し、以下の基準に従って評価した。
〔評価基準〕
A:沈殿物が全く生じていない。
B:沈殿物がごくわずかに生じている。振とうすることにより元に戻る。
C:沈殿物がやや多く生じている。振とうしても沈殿物が残る。
【0429】
(吐出安定性)
実施例1~21及び比較例1の発光粒子含有樹脂組成物を、インクジェットプリンター(富士フィルムDimatix社製、「DMP-2831」)を用いて10分間連続で吐出した。本インクジェットプリンターのインクを吐出するヘッド部には16個のノズルが形成されており、1回の吐出の際に1個のノズルから吐出される発光粒子含有樹脂組成物の吐出量を10pLに設定した。
〔評価基準〕
A:連続吐出可能(16個のノズル中、連続吐出可能なノズルが10個以上。)
B:連続吐出不可(16個のノズル中、連続吐出可能なノズルが9個以下。)
C:吐出不可(16個のノズルの全てで、連続吐出不可。)
【0430】
【表6】
【0431】
<光変換層の評価>
発光粒子含有樹脂組成物1~21を用いた光変換層を実施例22~42とし、発光粒子含有樹脂組成物C1を用いた光変換層を比較例2とした。発光粒子含有樹脂組成物1~21及びC1を、ガラス基板上に、乾燥後の膜厚が3.5μmとなるように、スピンコーターにて大気中で塗布した。塗布膜を100℃にて窒素中でプリベークした後、180℃に窒素中で加熱して硬化させて、ガラス基板上に発光粒子含有樹脂組成物の硬化物からなる層(光変換層)を形成し、これを評価用試料とした。その後、以下のようにして、光変換層の表面平滑性及び外部量子効率保持率を評価した。
【0432】
(表面平滑性)
得られた光変換層の表面を原子間力顕微鏡(AFM)にて観察し、その表面粗さSaを測定した。下記表7に、光変換層の表面粗さSa[μm]を示す。
【0433】
(外部量子効率保持率)
まず、面発光光源としてのシーシーエス株式会社社製の青色LED(ピーク発光波長:450nm)の上方に積分球を設置し、この積分球に大塚電子株式会社製の放射分光光度計(商品名「MCPD-9800」)を接続した。次に、青色LEDと積分球との間に上述の評価用試料を挿入して、青色LEDを点灯させ、観測されるスペクトル及び各波長における照度を放射分光光度計によって測定した。得られたスペクトル及び照度から、以下のようにして外部量子効率(EQE)を求めた。
【0434】
外部量子効率は、光変換層に入射した光(光子)のうち、どの程度の割合で蛍光として観測者側に放射されるかを示す値である。従って、この値が大きければ光変換層が発光特性に優れていることを示しており、重要な評価指標である。外部量子効率(EQE)は、以下の式(1)で算出される。
EQE[%]=P2/E(Blue)×100…(1)
式中、E(Blue)は、380~490nmの波長域における「照度×波長÷hc」の合計値を表し、P2は、500~650nmの波長域における「照度×波長÷hc」の合計値を表し、これらは観測した光子数に相当する値である。なお、hは、プランク定数、cは光速を表す。
【0435】
そして、上記評価用試料を作製した直後に測定したEQEを初期の外部量子効率EQEとし、EQEを測定した後、室温かつ大気下で10日保管した後の外部量子効率EQEとし、以下の式(2)によって、光変換層の外部量子効率保持率[%]を算出した。
外部量子効率保持率[%]=EQE/EQE×100…(2)
【0436】
ここで、EQEは、数値が大きいほど、塗膜の硬化工程における加熱による半導体ナノ結晶の劣化が小さい、すなわち、熱に対する安定性に優れることを意味する。光変換層として使用するためには、EQEは20%以上が好ましく、25%以上がより好ましい。優れることを意味する。さらに、光変換層は、EQEに加えて、さらにEQEが高いことが望ましく、外部量子効率保持率が高いほど、発光粒子を含む光変換層の酸素ガスおよび水蒸気に対する安定性が高いことを意味する。
結果を表7に示す。
【0437】
【表7】
【0438】
<発光粒子含有樹脂組成物及び光変換層の評価結果>
まず、実施例1~2、19及び比較例1の発光粒子含有樹脂組成物、並びに、それらを用いて作製した実施例22~23、40及び比較例2の光変換層について検討する。実施例1~2の発光粒子含有樹脂組成物は、比較例1と比較して、分散安定性及び吐出安定性が優れ、平滑な光変換層を形成できたことが明らかである。また、比較例1の発光粒子含有樹脂組成物は、半導体ナノ結晶にオレイン酸及びオレイルアミンを配位させることによって半導体ナノ結晶の発光を実現させており、配位させない場合には発光を実現できない。これに対し、実施例1~2の発光粒子含有樹脂組成物は、半導体ナノ結晶にオレイン酸やオレイルアミンを配位させていないにもかかわらず、半導体ナノ結晶の良好な発光を実現している。そして、表7に示すように、実施例22~23では、比較例2と比較して、、熱硬化後の光変換層における外部量子収率保持率は高い。これらのことから、実施例1~2の発光粒子含有樹脂組成物は、発光粒子を構成する半導体ナノ結晶が中空粒子に収容されたものであることにより、酸素、水蒸気及び熱に対する優れた安定性を確保し、優れた発光特性を得ることができたと考えられる。
【0439】
そして、実施例2は、実施例1と比較して、発光粒子含有樹脂組成物における分散安定性及び吐出安定性がより優れ、光変換層における表面粗さがさらに小さい。このことから、実施例2の発光粒子含有樹脂組成物は、分散する発光粒子がその表面にポリマー層を備えたものであることにより、分散安定性を吐出安定性がより向上し、より平滑な光変換層を形成できることが明らかである。
【0440】
さらに、実施例19は、半導体ナノ結晶にオレイン酸及びオレイルアミンが配位している点で、実施例2と相違する。実施例40は、実施例23と比較して、熱硬化後の光変換層における外部量子収率保持率はさらに高い。このことから、中空粒子の中空部に半導体ナノ粒子を収容した発光粒子においても、発光効率を向上させるのに半導体ナノ結晶に配位子を配位させることが有効であることが明らかである。
【0441】
次に、実施例2~6の発光粒子含有樹脂組成物について検討する。実施例2~5の発光粒子含有樹脂組成物は、いずれも、ポリマー被覆発光粒子が分散されたものであって、分散媒体も共通しているが、ポリマー被覆発光粒子を構成するナノ結晶の組成が異なるか、又はナノ結晶が収容される中空シリカ粒子の形状が異なる。また、実施例2及び6の発光粒子含有樹脂組成物は、樹脂溶液の組成が異なる以外は同一である。表6~7から、実施例2~6の発光粒子含有樹脂組成物は、ナノ結晶の組成、中空シリカの形状又は樹脂溶液に含まれる熱可塑性樹脂の種類に関係なく、酸素、水分及び熱に対する優れた安定性を確保し、優れた発光特性を得ることができると共に、分散安定性及び吐出安定性を確保し、平滑な光変換層を形成できることが明らかである。
【0442】
さらに、実施例2の発光粒子含有樹脂組成物について検討する。実施例2、7~18の発光粒子含有樹脂組成物は、いずれも、ポリマー被覆発光粒子Bが分散しているが、発光粒子分散液、光散乱性粒子分散液及び樹脂溶液に用いた有機溶剤の種類及びその添加量が異なる。表6~7から、実施例2、7~18の発光粒子含有樹脂組成物は、比較例1の発光粒子含有樹脂組成物と比較して、用いた有機溶剤の種類に関係なく、酸素、水分及び熱に対する安定性を確保でき、優れた発光特性を得られることが明らかである。
【0443】
そして、実施例2、7~18の結果から、分散安定性に優れた発光粒子含有樹脂組成物は、光変換層の量子収率保持率が高いことが明らかである。このことから、発光粒子含有樹脂組成物を構成する有機溶媒の種類及びその添加量が、光変換層の量子収率保持率に影響すると考えられる。さら、発光粒子含有樹脂組成物の発光特性、分散安定性及び吐出安定性、並びに、光変換層の発光特性及び表面平滑性を考慮すると、発光粒子含有樹脂組成物に含まれる有機溶剤として、1,4-ブタンジオールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、グリセリルトリアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが、より好ましいことが明らかである。
【0444】
次に、実施例20~21、比較例1の発光粒子含有樹脂組成物について検討する。実施例20~21の発光粒子含有樹脂組成物は、シロキサン結合層からなる無機被覆層を有し、実施例21の発光粒子含有組成物ではさらにポリマー被覆層を有する発光粒子を含有する。また、実施例20~21の発光粒子含有樹脂組成物は、発光粒子が異なる以外は同一である。表6~7から、実施例20~21の発光粒子含有樹脂組成物は、比較例1と比較して、分散安定性及び吐出安定性が優れ、平滑な光変換層を形成できたことが明らかである。また、比較例1の発光粒子含有樹脂組成物は、半導体ナノ結晶にオレイン酸及びオレイルアミンを配位させることによって半導体ナノ結晶の発光を実現させており、配位させない場合には発光を実現できない。これに対し、実施例20~21の発光粒子含有樹脂組成物は、半導体ナノ結晶にシロキサン結合可能な化合物を配位子として使用することで、半導体ナノ結晶の良好な発光を実現している。そして、表7に示すように、実施例41~42では、比較例2と比較して、熱硬化後の光変換層における外部量子収率保持率は高い。これらのことから、実施例20~21の発光粒子含有樹脂組成物は、発光粒子を構成する半導体ナノ結晶がシロキサン結合層により被覆されたものであることにより、酸素、水蒸気及び熱に対する優れた安定性を確保し、優れた発光特性を得ることができたと考えられる。
【0445】
以上のことから、実施例1~21の発光粒子含有樹脂組成物によって得られた光変換層は、発光特性に優れ、平滑な表面を備えることが明らかである。よって、これらの光変換層を用いて、発光素子のカラーフィルタ画素部を構成した場合には、優れた発光特性を得ることができるものと期待できる。
【符号の説明】
【0446】
100 発光素子
200 EL光源部
1 下基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
9 封止層
10 充填層
11 保護層
12 光変換層
13 上基板
14 EL層
20 画素部、
20a 第1の画素部
20b 第2の画素部
20c 第3の画素部
21a 第1の光散乱粒子
21b 第2の光散乱粒子
21c 第3の光散乱粒子
22a 第1の硬化成分
22b 第2の硬化成分
22c 第3の硬化成分
90a 第1の発光粒子
90b 第1の発光粒子
30 遮光部
90 発光粒子、ポリマー被覆粒子
91 発光粒子
911 ナノ結晶
912 中空ナノ粒子
912a 中空部
912b 細孔
913 中間層
914 表面層
92 ポリマー層
701 コンデンサ
702 駆動トランジスタ
705 共通電極
706 信号線
707 走査線
708 スイッチングトランジスタ
C1 信号線駆動回路
C2 走査線駆動回路
C3 制御回路
PE,R,G,B 画素電極
X 共重合体
XA 会合体
x1 脂肪族ポリアミン鎖
x2 疎水性有機セグメント
YA コア-シェル型シリカナノ粒子
Z 半導体ナノ結晶の原料化合物を含有する溶液
図1
図2
図3
図4
図5
図6