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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13363 20060101AFI20221129BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20221129BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G02F1/13363
G02F1/1335 510
G02B5/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021514272
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 KR2019006638
(87)【国際公開番号】W WO2019231301
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】10-2018-0063443
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ド・パク
(72)【発明者】
【氏名】デ・ヒ・イ
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-031822(JP,A)
【文献】特開2007-147884(JP,A)
【文献】特開2013-238770(JP,A)
【文献】特開2006-330268(JP,A)
【文献】特開2011-039176(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0157207(US,A1)
【文献】国際公開第2019/017483(WO,A1)
【文献】特表2014-513325(JP,A)
【文献】特開2017-173672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335,1/13363
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部偏光子、Rin(550)値が310nmないし350nmの範囲内である液晶層を含む面上スイッチングモード液晶パネル、及び下部偏光子を順次に含み、
前記上部偏光子の吸収軸と下部偏光子の吸収軸は、直交し、
前記下部偏光子は、上部偏光子に比べて光源に隣接して配置され、
前記上部偏光子と面上スイッチングモード液晶パネルとの間に、位相差フィルムとして、Rin(450)/Rin(550)値が0.99ないし1.01の範囲内であるフラット分散性を有する正の2軸性位相差フィルムと負のCプレートを含み、
前記正の2軸性位相差フィルムのRin(650)/Rin(550)の値は、0.99ないし1.01の範囲内であり、
前記正の2軸性位相差フィルムは、前記負のCプレートに比べて前記上部偏光子に隣接して配置される、液晶表示装置(Rin(λ)は、λnmの波長に対する液晶層又は位相差フィルムの面内位相差値である)。
【請求項2】
前記正の2軸性位相差フィルムは、550nmの波長の光に対する面上位相差値が0nmより大きく300nm以下である、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記正の2軸性位相差フィルムは、下記式2で計算される厚さ方向の位相差値が-300nmないし-40nmである、請求項1または2に記載の液晶表示装置:
[式2]
Rth={(nx+ny)/2-nz}×d
式2において、nx、ny及びnzは、それぞれ位相差フィルムのx軸、y軸及びz軸方向の屈折率であり、dは、位相差フィルムの厚さであり、前記x軸方向は、位相差フィルムの面方向で遅相軸方向を意味し、前記y軸方向は、位相差フィルムの面方向で進相軸方向を意味し、前記z軸方向は、位相差フィルムの厚さ方向を意味する。
【請求項4】
前記正の2軸性位相差フィルムの下記式3のNz値は、-1以上ないし1未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶表示装置:
[式3]
Nz=(nx-nz)/(nx-ny)
式3において、nx、ny、及びnzは、それぞれ位相差フィルムのx軸、y軸及びz軸方向の屈折率であり、前記x軸方向は、位相差フィルムの面方向で遅相軸方向を意味し、前記y軸方向は、位相差フィルムの面方向で進相軸方向を意味し、前記z軸方向は、位相差フィルムの厚さ方向を意味する。
【請求項5】
前記正の2軸性位相差フィルムの遅相軸は、上部偏光子の吸収軸と平行である、請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記負のCプレートは、下記の式2で計算される厚さ方向の位相差値が40nmないし130nmである、請求項1~のいずれか一項に記載の液晶表示装置:
[式2]
Rth={(nx+ny)/2-nz}×d
式2において、nx、ny及びnzは、それぞれ位相差フィルムのx軸、y軸及びz軸方向の屈折率であり、dは、位相差フィルムの厚さであり、前記x軸方向は、位相差フィルムの面方向で遅相軸方向を意味し、前記y軸方向は、位相差フィルムの面方向で進相軸方向を意味し、前記z軸方向は、位相差フィルムの厚さ方向を意味する。
【請求項7】
前記面上スイッチングモード液晶パネルは、前記液晶層の上部と下部にそれぞれ上部基板と下部基板をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記上部基板と下部基板のいずれかは、カラーフィルタ基板であり、他の一つは、薄膜トランジスタ基板である、請求項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶層の下記式2で計算される厚さ方向の位相差値は、0nmないし-40nmである、請求項1~のいずれか一項に記載の液晶表示装置:
[式2]
Rth={{nx+ny}/2-nz}×d
式2において、nx、ny及びnzは、それぞれ液晶層のx軸、y軸及びz軸方向の屈折率であり、dは、液晶層の厚さであり、前記x軸方向は、液晶層の面方向で遅相軸方向を意味し、前記y軸方向は、液晶層の面方向で進相軸方向を意味し、前記z軸方向は、液晶層の厚さ方向を意味する。
【請求項10】
前記上部偏光子に比べて下部偏光子に隣接する光源をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記面上スイッチングモード液晶パネルの液晶層の配向方向は、下部偏光子の吸収軸と平行である、請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、液晶表示装置に関する。
【0002】
本出願は、2018年6月1日付韓国特許出願第10-2018-0063443号に基づく優先権の利益を主張し、該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
IPSモードLCD(In-plane switching liquid crystal display)とは、初期の液晶配向がガラス基板に水平であり、電極に対して一定の角度を持つように配向され、電界の方向がガラス基板に平行に形成されるLCDをいう。IPSモードLCDに使用される既存の視野角補償フィルムは、偏光板の色味をブルーイッシュ(Bluish)にするのが一般的であったが、視野角補償フィルムを使用して色味だけでなく、視野角においてコントラスト比を向上させることも今後の重要な課題である(先行技術文献:大韓民国公開特許第10-2010-0076892号)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、視野角において色味だけでなく、コントラスト比にも優れた面上スイッチングモード液晶表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、液晶表示装置に関する。図1は、本出願の液晶表示装置を例示的に示す。図1に示すように、本出願の液晶表示装置は、上部偏光子10、面上スイッチングモード液晶パネル20、下部偏光子30を順次に含むことができる。本出願の液晶表示装置は、上記上部偏光子10と面上スイッチングモード液晶パネル20との間に、位相差フィルムとして、正の2軸性位相差フィルム40と負のCプレート50を含むことができる。本出願では、上記正の2軸性位相差フィルムの波長分散性をフラット分散性で制御することにより、視野角において色味だけでなく、コントラスト比にも優れた面上スイッチングモード液晶表示装置を提供することができる。以下、本出願の液晶表示装置について具体的に説明する。
【0006】
本明細書において、用語の上部は、表示装置が画像を具現しているとき、上記表示装置から上記画像を観察する観察者に向かう方向を意味し、用語の下部は、上記の反対方向を意味することができる。上記上部偏光子は、他の用語として視認側偏光子とも呼称され得る。また、本明細書において、用語の下部偏光子は、背面側偏光子又は光源側偏光子とも呼称され得る。
【0007】
本明細書において、用語の偏光子と偏光板は、互いに区別される対象を指す。用語の偏光子は、偏光機能を有するフィルム、シート又は素子そのものを意味し、用語の偏光板は、上記偏光子及びその偏光子の一面又は両面に積層されている他の要素を含む対象を意味する。上記で他の要素としては、偏光子の保護フィルム、粘着剤層、接着剤層、位相差フィルム又は低反射層などが例示され得る。
【0008】
偏光板に含まれることができる保護フィルムとしては、公知の材料のフィルムが使用されてもよい。このような材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性又は等方性などに優れた熱可塑性樹脂が使用されてもよい。このような樹脂の例としては、トリアセチルセルロース(TAC)(triacetyl cellulose)などのセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ノルボルネン樹脂などの環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂又は上記混合物などが例示され得る。
【0009】
上記保護フィルムとしては、位相差値のある光学異方性フィルム又は位相差値のない光学等方性フィルムを使用してもよい。一つの例示で、上記保護フィルムとしては、等方性フィルムを使用してもよい。
【0010】
上記保護フィルムは、偏光子の一面又は両面に存在できるが、両面に存在する場合に、各保護フィルムは、同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0011】
一つの例示で、上部偏光子の一面に正の2軸性位相差フィルム、及び負の2軸性位相差フィルムが順次に形成されていてもよい。このとき、上部偏光子と正の2軸性位相差フィルムの間には保護フィルムが存在するか、存在しなくてもよい。保護フィルムが存在する場合には、その保護フィルムは、位相差値のない保護フィルムであってもよい。
【0012】
偏光子は、複数の方向に振動する入射光から一方の方向に振動する光を抽出できる機能性素子である。偏光子としては、例えば、公知の吸収型線偏光子を使用してもよい。このような偏光子としては、ポリビニルアルコール(PVA)(poly(vinyl alcohol))偏光子が例示され得る。一つの例示で、偏光子は、二色性色素又はヨウ素が吸着及び配向されているPVAフィルム又はシートであってもよい。上記PVAは、例えば、ポリビニルアセテートをゲル化して得ることができる。ポリビニルアセテートとしては、ビニルアセテートの単独重合体、及びビニルアセテートと他の単量体及び共重合体などが例示され得る。上記でビニルアセテートと共重合される他の単量体としては、不飽和カルボン酸化合物、オレフィン化合物、ビニルエーテル化合物、不飽和スルホン酸化合物及びアンモニウム基を有するアクリルアミド化合物などの1種又は2種以上が例示され得る。ポリビニルアセテートのゲル化度は、一般的に約85モル%ないし約100モル%又は98モル%ないし100モル%程度である。線偏光子のポリビニルアルコールの重合度は、一般に約1,000ないし約10,000又は約1,500ないし約5,000であってもよい。
【0013】
本明細書において位相差フィルムは、光学異方性層として複屈折を制御することにより、入射偏光を変換できる素子を意味することができる。本明細書において位相差フィルムのx軸、y軸及びz軸を記載しながら特段の言及がない限り、上記x軸は、位相差フィルムの面内遅相軸と平行な方向を意味し、y軸は、位相差フィルムの面内進相軸と平行な方向を意味し、z軸は、位相差フィルムの厚さ方向を意味する。上記x軸とy軸は、面内で互いに直交することができる。本明細書において位相差フィルムが棒状の液晶分子を含む場合、遅相軸は、上記棒状の長軸方向を意味することができ、ディスク状の液晶分子を含む場合、遅相軸は、上記ディスク状の法線方向を意味することができる。本明細書において位相差フィルムの光軸を記載しながら特段の規定がない限り、遅相軸を意味する。本明細書において位相差フィルムの屈折率を記載しながら特段の規定がない限り、約550nmの波長の光に対する屈折率を意味する。
【0014】
本明細書において角度を定義しつつ、垂直、水平、直交又は平行などの用語を使用する場合、これは目的とする効果を損なわない範囲での実質的な垂直、水平、直交又は平行を意味するもので、例えば、製造誤差(error)又は偏差(variation)などを勘案した誤差を含むものである。例えば、上記それぞれの場合は、約±15度以内の誤差、約±10度以内の誤差又は約±5度以内の誤差を含むことができる。
【0015】
本明細書において位相差フィルム又は液晶層の面上位相差(Rin)及び厚さ方向位相差(Rth)は、それぞれ下記式1及び式2で計算される。本明細書においてRin(λ)は、λnmの波長に対する液晶層又は位相差フィルムの面内位相差値を意味し、Rth(λ)は、λnmの波長に対する液晶層又は位相差フィルムの厚さ方向の位相差値を意味する。
【0016】
[式1]
Rin=(nx-ny)×d
【0017】
[式2]
Rth={(nx+ny)/2-nz}×d
【0018】
式1ないし2においてdは、位相差フィルム又は液晶層の厚さであり、nx、ny及びnzは、それぞれ位相差フィルム又は液晶層のx軸、y軸及びz軸方向の屈折率である。x軸は、位相差フィルム又は液晶層の面内遅相軸と平行な方向を意味し、y軸は、位相差フィルム又は液晶層の面内進相軸と平行な方向を意味し、z軸は、位相差フィルム又は液晶層の厚さ方向を意味する。本明細書において位相差フィルム又は液晶層の面上位相差値及び厚さ方向位相差値を記載しながら特段の規定がない限り、約550nmの波長の光に対する位相差値を意味する。
【0019】
本明細書において、位相差フィルムのNz値は、下記式3で計算することができる。
【0020】
[式3]
Nz=(nx-nz)/(nx-ny)
【0021】
式3においてnx、ny及びnzは、それぞれ上記定義された位相差フィルムのx軸、y軸及びz軸方向の屈折率である。
【0022】
本明細書において正の2軸性位相差フィルムは、下記式4を満たす位相差フィルムを意味し、いわゆる+Bプレートとも呼称され得る。一つの例示で、正の2軸性位相差フィルムは、下記式4を満たしながら、nz>nxを満たすか、又はnx>nzを満たすことができる。一つの例示で、nz>nxを満たす場合、上記Nz値は、0未満の負数であってもよい。他の一つの例示で、nx>nzを満たす場合、上記Nz値は、0より大きく1未満であってもよい。
【0023】
本明細書において負のCプレートは、下記式5を満たす位相差フィルムを意味することができる。負のCプレートは、nx=nyなので、上記Nz値が定義されていないか、無限大(∞)値を有する。
【0024】
[式4]
nz≠nx>ny
【0025】
[式5]
nx=ny>nz
【0026】
一つの例示で、上部偏光子の吸収軸と下部偏光子の吸収軸は、直交できる。一つの例示において上記下部偏光子は、上部偏光子に比べて光源側に隣接して配置されていてもよい。したがって、上部偏光子と液晶パネルとの間に配置された正の2軸性位相差フィルム及び負のCプレートは、液晶パネルを通過した光に対して補償を行うことができる。後述するように、液晶パネルは、上部基板と下部基板の間に液晶層を含むことができる。このとき、上部基板と下部基板の構造に応じて上部基板と下部基板の間に位相差値の差が発生し得る。もし、下部偏光子と液晶パネルとの間に正の2軸性位相差フィルム及び負のCプレートを配置して、液晶パネルを通過する前の光に対して補償する場合、上記位相差値の差により、液晶パネルを通過しながら補償点が変更され得るので、フラット分散性の正の2軸性位相差フィルムを使用しても、視野角におけるコントラスト比の向上効果を極大化させることは難しい。本発明では、位相差フィルムを上部偏光子と液晶パネルとの間に配置して液晶パネルを通過した後に補償を行うために、線偏光位置に目標とした補償点で補償経路を設定することができ、このとき、正の2軸性位相差フィルムの波長分散性をフラット分散性で制御することにより、視野角におけるコントラスト比の向上効果を極大化することができる。
【0027】
上記正の2軸性位相差フィルムは、フラット分散性を持っていてもよい。フラット分散性は、次の位相差値の特性を意味することができる。上記正の2軸性位相差フィルムは、Rin(450)/Rin(550)値が0.99ないし1.01の範囲内であってもよい。上記正の2軸性位相差フィルムは、Rin(650)/Rin(550)値が0.99ないし1.01の範囲内であってもよい。上記フラット分散性を持つ正の2軸性位相差フィルムを使用する場合、視野角においてブルーイッシュ(bluish)な色味を表すことができ、視野角におけるコントラスト比も向上させることができる。
【0028】
一つの例示で、上記正の2軸性位相差フィルムは、550nmの波長の光に対する面上位相差値が0nmより大きく300nm以下であってもよい。上記面上位相差値は、具体的に0nmより大きく、50nm以上、80nm以上、100nm以上又は110nm以上であってもよく、300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下又は120nm以下であってもよい。このような位相差値の範囲内で視野角において色味だけでなく、コントラスト比にも優れた面上スイッチングモード液晶表示装置を提供するのに有利になり得る。
【0029】
一つの例示で、上記正の2軸性位相差フィルムは、厚さ方向の位相差値が-300nmないし-40nmであってもよい。上記厚さ方向の位相差値は、具体的に-300nm以上、-170nm以上、-130nm以上又は-120nm以上であってもよく、-40nm以下、-90nm以下又は-100nm以下であってもよい。このような位相差値の範囲内で視野角において色味だけでなく、コントラスト比にも優れた面上スイッチングモード液晶表示装置を提供するのに有利になり得る。
【0030】
一つの例示で、上記正の2軸性位相差フィルムの式3のNz値は、1未満であってもよい。このとき、Nz値が0である場合は、除外されることができる。したがって、上記Nz値は、0未満であるか、又は0より大きく1未満であってもよい。上記Nz値は、具体的に、-1以上又は-0.5以上であってもよく、0.5以下又は0未満であってもよい。このようなNz値の範囲内で視野角において色味だけでなく、コントラスト比にも優れた面上スイッチングモード液晶表示装置を提供するのに有利になり得る。
【0031】
一つの例示で、上記正の2軸性位相差フィルムの遅相軸は、上部偏光子の吸収軸に平行であってもよい。上記正の2軸性フィルムの遅相軸と上部偏光子の吸収軸が互いに平行でない場合には、光経路上の下部偏光子及び上部偏光子の間の光抜けによる漏光現象が発生しうる。
【0032】
一つの例示で、上記正の2軸性位相差フィルムが負のCプレートに比べて上部偏光子に隣接して配置されていてもよい。このような配置を介して視野角において色味及びコントラスト比に優れた面上スイッチングモード液晶表示装置を提供するのに有利になり得る。
【0033】
一つの例示で、上記負のCプレートは、厚さ方向の位相差値が40nmないし130nmであってもよい。厚さ方向の位相差値は、具体的に40nm以上、50nm以上、70nm以上、90nm以上、100nm以上又は110nm以上であってもよく、130nm以下又は120nm以下であってもよい。このような位相差値の範囲内で視野角において色味だけでなく、コントラスト比にも優れた面上スイッチングモード液晶表示装置を提供するのに有利になり得る。
【0034】
上記負のCプレートの厚さは、0.5μmない30μmの範囲内であってもよい。上記正の2軸性フィルムと負のCプレートを含む全体の位相差フィルムの厚さは、20μmないし100μm範囲内であってもよい。
【0035】
上記正の2軸性位相差フィルムは、高分子延伸フィルム又は液晶重合フィルムであってもよい。上記高分子延伸フィルムは、延伸により光学異方性を付与できる高分子フィルムを適切な方式で延伸した延伸高分子層を含むことができる。上記液晶重合フィルムは、液晶高分子層又は重合性液晶化合物の硬化層を含むことができる。
【0036】
上記で高分子延伸フィルムとしては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリノルボルネンなどの環状のオレフィンポリマー(COP:Cycloolefin polymer)、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール又はTAC(Triacetyl cellulose)などのセルロースエステル系ポリマーや上記ポリマーを形成する単量体のうちで2種以上の単量体の共重合体などを含む高分子層を使用してもよい。
【0037】
一つの例示で、正の2軸性位相差フィルムは、アクリレート系樹脂を含むことができる。後述するように、位相差フィルムは、樹脂組成物をフィルム成形し、これを延伸する方法により製造することができる。したがって、正の2軸性位相差フィルムを製造するための樹脂組成物は、アクリレート系樹脂を含むことができる。
【0038】
一つの例示で、アクリレート系樹脂のガラス転移温度(Tg、glass transition temperature)は、120℃以上であってもよい。アクリレート系樹脂のガラス転移温度は、具体的に120℃以上又は125℃以上であってもよく、150℃以下又は145℃以下であってもよい。本明細書においてガラス転移温度は、METTLER社のDSC(Differential Scanning Calorymeter)装備を用いて測定し、測定方法は、測定しようとするレジン(resin)3mgないし20mgをアルミナるつぼに入れ、30℃ないし250℃まで毎分10℃の昇温速度でレジンを溶融させ、再び30℃まで冷却後、再び200℃まで毎分10℃の昇温速度でレジンを溶融させる。このとき、METTLER社のDSC装備を介して2番目の溶融させる過程で、レジンの熱の比熱挙動が変わる温度範囲の中間地点が測定され、この値がガラス転移温度値として測定される。
【0039】
一つの例示で、アクリレート系樹脂は、重量平均分子量が100,000g/molないし5,000,000g/molである(メタ)アクリレート系樹脂を含むことができる。上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)(GPC)分析を介して測定され得る。
【0040】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを全て含む意味である。上記(メタ)アクリレート系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び架橋性官能基含有単量体の共重合体であってもよい。
【0041】
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、特に限定されるものではないが、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを挙げることができ、より具体的には、炭素数1ないし12のアルキル基を有する単量体として、ペンチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート及びデシル(メタ)アクリレートのうちで1種又は2種以上を含むことができる。
【0042】
上記架橋性官能基含有単量体は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒドロキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体及び窒素含有単量体のうちで1種又は2種以上を含むことができる。
【0043】
上記ヒドロキシル基含有化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、又は2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0044】
上記カルボキシル基含有化合物の例としては、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシ酪酸、アクリル酸異重体、イタコン酸、マレイン酸、又はマレイン酸無水物などを挙げることができる。
【0045】
上記窒素含有単量体の例としては、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン又はN-ビニルカプロラクタムなどを挙げることができる。
【0046】
上記(メタ)アクリレート系樹脂には、また、相溶性などのその他の機能性向上の観点から、酢酸ビニル、スチレン及びアクリロニトリルのうちの少なくとも一つがさらに共重合されてもよい。
【0047】
一つの例示で、上記アクリレート系樹脂は、N-置換マレイミド構造、ラクトン環構造及びグルタルイミド構造からなる群から選ばれる1以上の単量体をアクリレート分子鎖中に有していてもよい。上記アクリレート系樹脂において、N-置換マレイミド構造、ラクトン環構造及びグルタルイミド構造は、核磁気共鳴(NMR、Nuclear magnetic resonace)の測定を介して、上記構造を確認することができる。一つの例示で、上記N-置換マレイミド構造は、N-フェニルマレイミド(Nphenylmaleimide)(PMI)であってもよい。
【0048】
上記単量体をアクリレート分子鎖中に有するというのは、上記アクリル系樹脂100重量部基準あたり、上記単量体1ないし40重量部、好ましくは、5ないし30重量部、さらに好ましくは、5ないし20重量部を含むことを意味し、上記単量体をアクリレート分子鎖中に含む場合、共重合体を達成することができる。
【0049】
上記共重合体は、2種以上の他の単量体を重合することにより得られる物を共重合体と言い、共重合体は、2種以上の単量体が不規則又は規則的に配列していてもよい。上記共重合体は、単量体が規則なしに混じり合った形態を有する不規則共重合体(Random Copolymer)、一定の区間別に整列されたブロックが繰り返されるブロック共重合体(Block Copolymer)又は単量体が交互に繰り返されて重合される形態を有する交互共重合体(Alternating Copolymer)であってもよく、本出願の一実施形態によるアクリレート系樹脂は、不規則共重合体、ブロック共重合体又は交互共重合体であってもよい。
【0050】
一つの例示で、アクリレート系樹脂は、ラクトン-メチルメタクリレート(Lactone-MMA)、マレイミド-メチルメタクリレート(Maleimide-MMA)又はグルタルイミド-メチルメタクリレート(Glutarimide-MMA)であってもよい。
【0051】
上記正の2軸性位相差フィルム及び/又は上記フィルムを製造するための樹脂組成物は、アクリレート系樹脂に追加で位相差調整剤をさらに含むことができる。上記位相差調整剤は、スチレンモノマーを含むことができる。上記位相差調整剤は、例えば、スチレン-アクリロニトリル(SAN、Styrene-Acrylonitrile)であってもよい。
【0052】
位相差調整剤としてスチレン(styrene)を単独で使用する場合、アクリレート系樹脂との使用性が発生しないが、アクリロニトリル(Acrylonitrile)とともに使用したスチレン-アクリロニトリル(SAN)を使用することにより、アクリレート系樹脂との使用性が十分であると言える。
【0053】
一つの例示で、位相差調整剤は、アクリレート系樹脂100重量部に対して、15重量部以上、20重量部以上、又は30重量部以上で含まれていてもよく、80重量部以下、又は75重量部以下で含まれていてもよい。位相差調整剤が上記含量範囲内で含まれる場合、位相差フィルムのフラット波長分散性の具現及び位相差フィルムを製造するための樹脂組成物のガラス転移温度を適正範囲内にすることにより、位相差フィルムの耐熱性を確保するという側面から有利になり得る。
【0054】
一つの例示で、上記正の2軸性位相差フィルム及び/又は上記フィルムを製造するための樹脂組成物は、アクリレート系樹脂及び位相差調整剤に追加でトリアジン系複屈折調整剤をさらに含むことができる。トリアジン系複屈折調整剤を使用すると、アクリレート系樹脂との屈折率差を用いてフラット波長分散性を具現するのにさらに有利になり得る。
【0055】
一つの例示で、トリアジン系複屈折調整剤は、アクリレート系樹脂100重量部に対して、5重量部以上、5.5重量部以上又は6.5重量部以上で含まれていてもよく、15重量部以下、14重量部以下、又は13重量部以下で含まれていてもよい。トリアジン系複屈折調整剤が上記含量範囲内で含まれる場合、一般的な正分散でフラット波長分散性を具現するのにより適することができ、光学特性に優れた特徴を持つ。
【0056】
本出願の一実施形態において、上記トリアジン系複屈折調整剤は、2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジン誘導体(2-hydroxyphenyl-s-triazine derivative)が使用されてもよく、具体的にBASF社のTinuvin1600、Tinuvin460、Tinuvin477、Tinuvin479、Tinuvin1577及び/又はADEKA社のLA-F70、LA46等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0057】
一つの例示で、上記トリアジン系複屈折調整剤は、下記化1の化合物であってもよい。
【0058】
【化1】
【0059】
上記化1において、LないしLは、互いに同一又は異なって、それぞれ独立して直接結合;置換又は非置換されたアリーレン基;又は置換又は非置換されたヘテロアリーレン基であり、ZないしZは、互いに同一又は異なって、それぞれ独立して水素;ヒドロキシ基;置換又は非置換されたアルコキシ基;置換又は非置換されたアルキル基;置換又は非置換されたアリール基;又は置換又は非置換されたヘテロアリール基であり;a、b、及びcは、互いに同一又は異なって、それぞれ独立して1ないし3の整数であり、p、q及びrは、互いに同一又は異なって、それぞれ独立して1ないし5の整数であり。a、b、c、p、q及びrが2以上の整数である場合、2以上の括弧内の置換基は、互いに同一又は異なる。
【0060】
上記置換基の例示は、以下で説明するが、これに限定されるものではない。
【0061】
本明細書において、「置換又は非置換された」という用語は、アルコキシ基;アルキル基;アリール基;及びヘテロ環基からなる群から選ばれた1つ以上の置換基で置換又は非置換されたり、上記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換又は非置換されたことを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2つのフェニル基が連結された置換基として解釈されることができる。
【0062】
本明細書において、上記アルキル基は、直鎖又は分枝鎖であってもよく、炭素数は、特に限定されるものではないが、1ないし40であることが好ましい。一実施形態によれば、上記アルキル基の炭素数は、1ないし20である。もう一つの実施形態によれば、上記アルキル基の炭素数は、1ないし10である。もう一つの実施形態によれば、上記アルキル基の炭素数は、1ないし6である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、1-メチル-ブチル基、1-エチル-ブチル基、ペンチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、n-ノニル基、2,2-ジメチルヘプチル基、1-エチル-プロピル基、1,1-ジメチル-プロピル基、イソヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基などがあるが、これに限定されるものではない。
【0063】
本明細書において、上記アルコキシ基は、直鎖、分岐鎖又は環鎖であってもよい。アルコキシ基の炭素数は、特に限定されるものではないが、炭素数1ないし40であることが好ましい。具体的に、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、3,3-ジメチルブチルオキシ、2-エチルブチルオキシ、n-オクチルオキシ、n-ノニルオキシ、n-デジルオキシ、ベンジルオキシ、p-メチルベンジルオキシなどであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0064】
本明細書に記載されたアルキル基、アルコキシ基及びその他のアルキル基の部分を含む置換体は、直鎖状又は分岐鎖状を全て含む。
【0065】
本明細書において、アリール基は、特に限定されるものではないが、炭素数6ないし60であることが好ましく、単環式アリール基又は多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、上記アリール基の炭素数は、6ないし30である。一実施形態によれば、上記アリール基の炭素数は、6ないし20である。上記アリール基が単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などであってもよいが、これに限定されるものではない。上記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリルレニル基、トリフェニル基、クライセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0066】
本明細書において、ヘテロ環基は、異種原子としてN、O、P、S、Si及びSeのうちの1つ以上を含むヘテロ環基であって、炭素数は、特に限定されるものではないが、炭素数が1ないし60であることが好ましい。一実施形態によれば、上記ヘテロ環基の炭素数は、1ないし30である。ヘテロ環基の例としては、ピリジル基、ピロール基、ピリミジル基、ピリダジニル基、フラニル基、チオフェニル基、イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、チアゾール基、イソチアゾール基、トリアゾール基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、ジチアゾール基、テトラゾール基、ピラニル基、チオピラニル基、ピラジニル基、オキサジニル基、チアジニル基、ジオキソニル基、トリアジニル基、テトラジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キノリル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、アクリジル基、キサンデニル基、フェナントリジニル基、ジアザナフタレニル基、トリアザインデニル基、インドール基、インドリニル基、インドリジニル基、プタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基、カルバゾール基、ベンゾカルバゾール基、ジベンゾカルバゾール基、インドロカルバゾール基、インデノカルバゾール基、ペナジニル基、イミダゾピリジン基、フェノキサジニル基、フェナントリジン基、フェナントロリン(phenanthroline)基、フェノチアジン(phenothiazine)基、イミダゾピリジン基、イミダゾフェナントリジン基、ベンゾイミダゾキナゾリン基、又はベンゾイミダゾフェナントリジン基などがあるが、これに限定されるものではない。
【0067】
本明細書において、ヘテロアリール基は、芳香族であることを除いては、前述したヘテロ環基に関する説明が適用されてもよい。本明細書において、アリーレンは、2価基であることを除いては、前述したアリール基に関する説明が適用されてもよい。
【0068】
一つの例示で、上記LないしLは、直接結合;又は置換又は非置換された炭素数6ないし60のアリーレン基、具体的に、炭素数6ないし40のアリーレン基、より具体的にペリレン基であってもよい。一つの例示で、上記ZないしZは、水素;ヒドロキシ基;置換又は非置換された炭素数6ないし60のアリール基、具体的に炭素数6ないし40のアリール基、より具体的にフェニル基;又は炭素数1ないし40のアルキル基で置換又は非置換されたアルコキシ基、具体的に炭素数1ないし10の分岐鎖のアルキル基で置換又は非置換されたアルコキシ基であってもよい。
【0069】
一つの具体的な例示で、トリアジン系複屈折調整剤は、上記化1においてLないしLは、それぞれ直接結合であり、上記ZないしZのうちの少なくとも一つは、置換又は非置換されたアリール基である化合物であってもよい。このような構造のトリアジン系複屈折調整剤としては、BASF社のTinuvin1600を例示することができる。ZないしZのうちの少なくとも一つがフェニル基である場合、そうでない場合よりも複屈折の差が大きく現れるので、類似含量対比、ZないしZのうちの少なくとも1つがフェニル基である化合物がそうでない化合物に比べて波長分散性の改善効果の側面から有利になり得る。
【0070】
上記位相差フィルム及び/又は樹脂組成物においてアクリレート系樹脂、スチレンモノマーを含む位相差調整剤及びトリアジン系複屈折調整剤の含量及び成分は、核磁気共鳴(NMR、Nuclear magnetic resonace)及びガスクロマトグラフィー(GC、Gas Chromatography)分析を通してそれぞれの成分及び含量を確認することができる。
【0071】
上記樹脂組成物のガラス転移温度は、115℃以上であってもよい。上記樹脂組成物のガラス転移温度は、具体的に118℃以上であってもよく、150℃以下又は130℃以下であってもよい。ガラス転移温度が120℃以上であるアクリレート系樹脂によって、樹脂組成物のガラス転移温度を上記範囲内にすることができ、これによる位相差フィルムの場合、耐熱性が非常に優れた特性を持つことになる。
【0072】
前述したように、位相差フィルムは、上記樹脂組成物を製造した後、これをフィルム成形し、これを延伸する方法により製造されることができる。
【0073】
上記樹脂組成物は、例えば、オムニミキサーなどの任意の適切な混合機で上記フィルム原料をフリーブレンドした後に得られた混合物を押出混練して製造する。この場合、押出混練に用いられる混合機は、特に限定されずに、例えば、単軸押出機、2軸押出機などの押出機や加圧ニーダー(Kneader)などの任意の適切な混合機を用いることができる。
【0074】
上記フィルム成形の方法としては、例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法などの任意の適切なフィルム成形法が挙げられる。これらのフィルム成形法のうちで溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。
【0075】
上記溶液キャスト法(溶液流延法)に用いられる溶媒は、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、デカリンなどの脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。これらの溶媒は、単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
上記溶液キャスト法(溶液流延法)を行うための装置としては、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーターなどを挙げることができる。一方、上記溶融押出法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法などが挙げられる。成形温度は、150℃ないし350℃、又は200℃ないし300℃であってもよい。
【0077】
上記Tダイ法でフィルムを成形する場合には、公知の単軸押出機や2軸押出機の先端部にTダイを装着し、フィルム状に押出されたフィルムを巻き取ってロール状のフィルムを得ることができる。
【0078】
上記のような過程を通じてフィルムが製膜された後、上記フィルムを延伸する。延伸工程は、縦方向(MD)延伸、横方向(TD)延伸をそれぞれ行ってもよく、全て行ってもよい。また、縦方向の延伸と横方向の延伸を全て行う場合に、どちらか一方を先に延伸した後に、他の方向に延伸してもよく、両方向を同時に延伸してもよい。また、上記延伸は、1段階で行ってもよく、多段階にかけて行ってもよい。縦方向延伸の場合、ロール間の速度差による延伸を行うことができ、横方向延伸の場合、テンターを使用してもよい。テンターのレールの開始角は、通常、10度以内として、横方向の延伸時に生じるボウイング(Bowing)現象を抑制し、光学軸の角度を規則的に制御する。横方向の延伸を多段階に行う場合にも、ボウイング抑制効果を得ることができる。
【0079】
延伸温度は、フィルムの原料である樹脂組成物のガラス転移温度付近の範囲であることが好ましく、上記組成物のガラス転移温度をTgとするとき、好ましくは、(Tg-30℃)~(Tg+100℃)、より好ましくは、(Tg-20℃)~(Tg+80℃)、さらに好ましくは(Tg-5℃)~(Tg+20℃)の範囲内である。延伸温度が(Tg-30℃)未満であれば、十分な延伸倍率が得られないおそれがある。逆に、延伸温度が(Tg+100℃)を超えると、樹脂組成物の流動(フロー)が起こり、安定した延伸を行えないおそれがある。
【0080】
また、本出願の一実施形態において、上記フィルムを延伸する段階における延伸比は、延伸方向の長さを基準に1.05ないし10倍であってもよい。
【0081】
また、総延伸比は、総延伸面積を基準に1.1倍以上、又は1.2倍以上、又は1.5倍以上であり、25倍以下、又は10倍以下、又は7倍以下になるように延伸することができる。上記延伸比が1.1倍未満である場合、延伸の効果を十分に達成できない場合があり、25倍を超える場合、フィルム層が割れることもある。
【0082】
上記位相差フィルムは、これの光学的等方性や機械的特性を安定化させるため、延伸処理後に熱処理(アニーリング)などを行うことができる。熱処理条件は、特に制限されずに、本発明の技術分野において通常の技術者に知られた任意の適切な条件を採用することができる。
【0083】
上記液晶重合フィルムは、基材層及び上記基材層の一面に液晶層を含むことができる。液晶重合フィルムの基材層は、上記反射防止フィルムの基材層に関する内容が同一に適用され得る。したがって、液晶重合フィルムの基材層も光透過性基材を使用してもよい。上記液晶層は、重合性液晶化合物を重合された状態で含むことができる。本明細書において、用語の「重合性液晶化合物」は、液晶性を示すことができる部位、例えば、メソゲン(mesogen)骨格などを含み、また、重合性官能基を一つ以上含む化合物を意味することができる。このような重合性液晶化合物は、いわゆるRM(Reactive Mesogen)という名称で多様に公知されている。上記重合性液晶化合物は、上記硬化層内で重合された形態、すなわち、前述した重合単位で含まれていてもよく、これは上記液晶化合物が重合されて硬化層内で液晶高分子の主鎖又は側鎖のような骨格を形成している状態を意味することができる。
【0084】
上記重合性液晶化合物は、単官能性又は多官能性重合性液晶化合物であってもよい。上記で単官能性重合性液晶化合物は、重合性官能基を1つ有する化合物であり、多官能性重合性液晶化合物は、重合性官能基を2個以上含む化合物を意味することができる。一つの例示で多官能性重合性液晶化合物は、重合性官能基を2個ないし10個、2個ないし8個、2個ないし6個、2個ないし5個、2個ないし4個、2個ないし3個又は2個又は3個を含むことができる。
【0085】
上記のような重合性液晶化合物を、例えば、開始剤、安定剤及び/又は非重合性液晶化合物などの他の成分と配合して製造された重合性液晶組成物を配向膜上で配向させた状態で硬化させて複屈折が発現された上記硬化層を形成することは公知である。上記フラット分散特性を有する位相差フィルムは、フラット分散特性を有する重合性液晶化合物を含むことにより、製造され得る。
【0086】
一つの例示で、負のCプレートは、厚さ方向に負の位相差値を持って高い複屈折を持つ物質を含むことができる。上記厚さ方向に負の位相差値を持って高い複屈折を持つ物質としては、高分子主鎖に芳香族環又はシクロオレフィン系を含む化合物を例示することができる。
【0087】
負のCプレートの具体例としてTAC(Triacetyl cellulose)などのセルロースエステル系ポリマーフィルム、ポリアリレート(polyarylate)フィルム、ポリノルボルネン(polynorbornene)フィルム、ポリカーボネート(polycarbonate)フィルム、ポリスルホン(polysulfone)フィルム、ポリイミド(polyimide)フィルム又は上記ポリマーを形成する単量体のうちで2種以上の単量体の共重合体フィルムなどが例示され得る。
【0088】
上記ポリアリレートは、下記化2で表される化合物を含むことができる。
【0089】
【化2】
【0090】
上記化2において、nは、1以上の整数である。
【0091】
一つの例示で、それぞれの位相差フィルムと偏光子は、粘着剤又は接着剤を介して互いに付着されているか、あるいは直接コーティングによって互いに積層されていてもよい。上記粘着剤又は接着剤としては、光学透明粘着剤又は接着剤を使用してもよい。
【0092】
一つの例示で、上記面上スイッチングモード液晶パネルは、液晶層を含むことができる。また、上記面上スイッチングモード液晶パネルは、上記液晶層の上部と下部にそれぞれ上部基板、液晶層及び下部基板をさらに含むことができる。上記上部基板及び下部基板は、それぞれガラス基板又はプラスチック基板であってもよい。一つの例示で、上部基板及び下部基板のいずれかは、カラーフィルタ基板であってもよく、他の一つは、薄膜トランジスタ(TFT)(thin film transistor)基板であってもよい。カラーフィルタとTFTは、それぞれ固有の位相差を持つことができるので、上部基板と下部基板の間に位相差値の差が発生し得る。一つの例示で、上記カラーフィルタ基板の厚さ方向(Rth)値は、10nm未満であってもよい。本発明では、位相差フィルムを上部偏光子と液晶パネルの間に配置して液晶パネルを通過した後に補償を行うことができるので、線偏光位置に目標とした補償点で補償経路を設定し、このとき、正の2軸性位相差フィルムがフラット分散性を持つように制御することにより、視野角におけるコントラスト比の向上効果を極大化することができる。
【0093】
上記液晶層は、誘電率異方性が正数又は負数である液晶を含むことができる。上記液晶層の誘電率異方性は、目的とする液晶パネルのモードに応じて適宜選択されることができる。上記液晶層は、上記液晶を水平配向された状態で含むことができる。一つの例示で、上記液晶層の面上位相差(Rin)値は、310nmないし350nmの範囲内であってもよい。上記液晶層の面上位相差(Rin)値は、310nm以上、315nm以上、320nm以上、325nm以上又は330nm以上であってもよく、350nm以下、345nm以下又は340nm以下であってもよい。また、上記液晶層の厚さ方向の位相差(Rth)値は、0nmないし-40nmであってもよい。上記液晶層のプレチルト角は、例えば、0.2°未満であってもよい。
【0094】
本明細書において、プレチルトは、角度(angle)と方向(direction)を持つことができる。上記プレチルト角は、極角(Polar angle)とも呼称することができ、上記プレチルト方向は、方位角(Azimuthal angle)とも呼称することもできる。
【0095】
上記プレチルト角は、液晶のディレクターが基板と水平な面に対してなす角度を意味することができる。上記プレチルト方向は、液晶のディレクターが基板の水平な面に射影された方向を意味することができる。上記プレチルト方向は、後述する液晶層の初期状態の液晶の配向方向を意味することができる。
【0096】
本明細書において、用語の「液晶のディレクター」は、液晶が棒(rod)状である場合、長軸を意味することができ、液晶が円板(discotic)状である場合、円板平面の法線方向の軸を意味することができる。
【0097】
上記正の2軸性位相差フィルムと負のCプレートの組み合わせは、上記位相差値を持つ液晶層を含む面上スイッチングモード液晶パネルの視野角における色味とコントラスト比の改善に適すると言える。
【0098】
上記面状スイッチングモード液晶パネルの上部基板と下部基板は、それぞれ液晶層側に配向膜をさらに含むことができる。上記液晶の配向方向は、上記配向膜によって定められることができる。上記配向膜は、水平配向膜であってもよい。上記配向膜としては、ラビング配向膜又は光配向膜を使用してもよい。
【0099】
一つの例示で、上記液晶表示装置は、上記上部偏光子に比べて下部偏光子に隣接する光源をさらに含むことができる。一つの例示で、上記光源は、バックライトユニットに含まれた状態で液晶表示装置に含まれていてもよい。上記バックライトユニットは、上記光源から発光される光を案内する導光板、上記導光板の下部に位置する反射シート、上記導光板の上部に位置する拡散シートをさらに含むことができる。上記光源は、光を発生させることで、導光板の側面に配置されていてもよい(エッジ型)。光源は、線光源ランプ又は面光源ランプ、CCFL又はLEDなどの様々な光源が使用されてもよい。光源の外部には光源カバーが配置されていてもよい。導光板は、光源から発生した光を拡散シートへガイドすることができる。上記導光板は、直下型の光源を採用する場合には省略することができ、この場合、拡散板がさらに含まれていてもよい。反射シートは、光源から発生した光を反射させて拡散シートの方向に供給する役割を果たすことができる。拡散シートは、導光板を介して入射される光を拡散及び散乱させて液晶パネルに供給することができる。
【0100】
一つの例示で、上記面上スイッチングモード液晶パネル(液晶層)の液晶の配向方向は、下部偏光子の吸収軸と互いに平行、又は互いに直交することができる。上記配向方向は、初期状態、具体的に電界が印加されていない状態での液晶の配向方向を意味することができる。上記角度が平行である場合にOモードの液晶パネルと定義でき、直交する場合、Eモードの液晶パネルと定義できる。一つの例示で、視野角コントラスト比の向上効果を極大化するという側面から、Oモードの液晶パネルが好ましいと言える。
【発明の効果】
【0101】
本出願は、視野角において色味だけでなく、コントラスト比にも優れた面上スイッチングモード液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1】本出願の液晶表示装置を例示的に示す。
図2】Lb Contour測定結果である。
図3】Cb Contour測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
以下、本出願による実施例及び本出願によらない比較例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記に提示された実施例により制限されるものではない。
【0104】
[実施例1、比較例1及び比較例2]
面上スイッチングモード液晶表示装置の設計条件は、次の通りである。
【0105】
1)液晶パネル:セル間隔(液晶層の厚さ)が3.4μm、プレチルト角が0.1°、液晶の誘電率異方性△ε>0,550nmの波長で、液晶の複屈折△n=0.1、液晶層のRin(550)が330nm、液晶層のRth(550)が0nmであるOモードの面上スイッチングモード液晶パネル
【0106】
2)上部偏光板:偏光子の一面に正の2軸性位相差フィルム(アクリル系フィルム)及び負のCプレート(TAC系フィルム)を順次に形成した偏光板
【0107】
3)下部偏光板:偏光子の一面に厚さ60μmのNRT(No retardation TAC)フィルムを貼り付けた偏光板
【0108】
上部偏光板及び下部偏光板の偏光子は、380nmないし780nmの波長の光に対する偏光度が99.99%以上であり、単体透過率が42.0%であるPVA(Polyvinyl Alcohol)偏光子である(測定装備:Eldim社のEZ Contrast装備)。上部偏光板の負のCプレートが液晶パネルに接し、下部偏光板のNRTフィルムが液晶パネルに接するように合着して面上スイッチングモード液晶表示装置を作製した。正の2軸性位相差フィルムとして、比較例1は、正波長分散性の位相差フィルムを使用し、実施例1は、フラット波長分散性の位相差フィルムを使用し、比較例2は、逆波長分散性の位相差フィルムを使用した。正の2軸性位相差フィルムの位相差値と負のCプレートの位相差値は、下記表1に記載した。位相差値は、エキソメトリックス(Axometrics)社のエキソスキャン(Axoscan)装備を使用して測定した。
【0109】
[光特性評価]
EZ contrast(Eldim)機器を使用して、面状スイッチングモード液晶表示装置に対して、光の特性を測定した。図2は、Lb contourであって、傾斜角に応じて全方位(phi:0°~360°)でブラック状態での輝度を測定したグラフであり、図3は、Cb contourであって、全方位(phi:0°~360°)でブラック状態での色味を測定したグラフである。一般的に、ブラック状態とは、液晶パネルを駆動したときのブラック画面となる状態を意味し、光特性の評価では、液晶パネルが駆動されていない状態でブラック状態を具現した。表1において、Lb maxは、傾斜角60°で全方位のブラック輝度を測定した値のうちで最大のブラック輝度を示す方位角におけるブラック輝度値を意味する。コントラスト比は、ブラック状態の輝度に対するホワイト状態の輝度と定義されるので、Lb max値が低いほど、視野角でコントラスト比に優れていることを意味する。
【0110】
【表1】
【符号の説明】
【0111】
10 上部偏光子
20 面上スイッチングモード液晶パネル
30 下部偏光子
40 正の2軸性位相差フィルム
50 負のCプレート
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C