(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/24 20060101AFI20221129BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CEY
C08F8/00
(21)【出願番号】P 2021532466
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(86)【国際出願番号】 KR2020012493
(87)【国際公開番号】W WO2021054718
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0114795
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0118534
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジェ・ホ
(72)【発明者】
【氏名】テビン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・フン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジヘ・リュ
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-026026(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180864(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/117513(WO,A1)
【文献】特表2020-504191(JP,A)
【文献】特表2022-514512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- 3/28
C08F 6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤が架橋重合されたベース樹脂(base resin)を準備する段階;および
表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂を昇温して前記ベース樹脂に対する表面改質を行う段階を含み、
前記内部架橋剤はエポキシ当量が100g/eq以上~130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤およびエポキシ当量が130g/eq以上である第2エポキシ架橋剤を含
み、
前記第1エポキシ架橋剤:第2エポキシ架橋剤の重量比は、1:1~30:1である、高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記第2エポキシ架橋剤は、エポキシ当量が150g/eq~400g/eqである、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記第1エポキシ架橋剤および第2エポキシ架橋剤は、それぞれアクリル酸系単量体100重量部に対して0.01重量部~0.5重量部で含まれる、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記第1エポキシ架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、またはこれらの組み合わせ
を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記第2エポキシ架橋剤は、エチレングリコール繰り返し単位個数が3~15であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルのうちの1種以上である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記ベース樹脂の表面改質段階は、HLBが0以上6以下である疎水性物質の存在下で行われる、請求項1から
5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ベース樹脂を準備する段階は、
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、第1エポキシ架橋剤および第2エポキシ架橋剤を含む内部架橋剤、および重合開始剤を含むモノマー組成物を重合して含水ゲル状重合体を形成する段階;
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階;
前記乾燥された重合体を粉砕する段階;および
前記粉砕された重合体を分級する段階を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
エポキシ当量が100g/eq以上~130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤およびエポキシ当量が130g/eq以上である第2エポキシ架橋剤を含む内部架橋剤の存在下で、酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体が架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂;および
前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋された表面架橋層を含
み、
前記第1エポキシ架橋剤:第2エポキシ架橋剤の重量比は、1:1~30:1である、高吸水性樹脂。
【請求項9】
遠心分離保水能(CRC)が25g/g以上である、請求項
8に記載の高吸水性樹脂。
【請求項10】
下記式1により測定される通液性が30秒以下である、請求項
8または
9に記載の高吸水性樹脂:
[式1]
通液性(sec)=T1-B
前記式1において、
T1はクロマトグラフィ管内に分級(300~600μm)された高吸水性樹脂試料0.2±0.0005gを入れて
0.9%塩水を加えて塩水体積が50mlになるようにした後、30分間放置後、
クロマトグラフィ管内に重り付きのピストン(0.3psi=106.26g)を入れて1分間放置後、クロマトグラフィ管下部弁を開けて液面の高さが40mlから20mlまで減るのにかかる時間であり、Bは
0.9%塩水が満たされたクロマトグラフィ管で
、クロマトグラフィ管内に重り付きのピストン(0.3psi=106.26g)を入れて、クロマトグラフィ管下部弁を開けて液面の高さが40mlから20mlまで減るのにかかる時間である。
【請求項11】
前記高吸水性樹脂4gを水道水200gに浸漬させて2時間の間膨潤させた後、膨潤された前記高吸水性樹脂を
5171Pa(0.75psi
)の圧力下で1分間濾過紙上で放置してから、前記高吸水性樹脂から前記濾過紙に再び染み出てきた水の重量で定義される加圧水道水の長期再湿潤が1.0g以下である、請求項
8から
10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2019年9月18日付韓国特許出願第10-2019-0114795号および2020年9月15日付韓国特許出願第10-2020-0118534号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。より詳細には、保水能などの基本的な吸収能に優れ、かつ向上した再湿潤(rewet)の特性および通液性を有する高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer,SAP)とは、自重の5百ないし1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質として、開発業者ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名称で名付けられている。前記のような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は子供用紙おむつや生理用ナプキンなど衛生用品の他に園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における鮮度保持剤、および湿布用などの材料に広く使用されている。
【0004】
最も多くの場合に、このような高吸水性樹脂はおむつや生理用ナプキンなど衛生材分野に広く使用されているが、このような用途のために水分などに対する高い吸収力を奏する必要があり、外部の圧力にも吸収された水分が抜け出てはならず、これに加え、水を吸収して体積膨張(膨潤)した状態でも形態をよく維持して優れた通液性(permeability)を奏する必要がある。
【0005】
また、おむつや生理用ナプキンなどの衛生材には使用者の体重によって圧力が加えられる。特に、おむつや生理用ナプキンなどの衛生材に適用される高吸水性樹脂が液体を吸収した後、これに使用者の体重による圧力が加えられると高吸水性樹脂に吸収された一部の液体が再び染み出る再湿潤(rewet)現象と、小便が漏れる漏出(leakage)現象が発生し得る。
【0006】
したがって、このような再湿潤現象を抑制するために様々な試みが行われている。しかし、まだ再湿潤現象を効果的に抑制できる具体的な方案は提示されていない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のような従来技術の問題を解決するために、本発明は再湿潤および小便の漏出現象が抑制される高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明の一側面によれば、
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤が架橋重合されたベース樹脂(base resin)を準備する段階;および
表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂を昇温して前記ベース樹脂に対する表面改質を行う段階を含み、
前記内部架橋剤はエポキシ当量が100g/eq以上~130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤およびエポキシ当量が130g/eq以上である第2エポキシ架橋剤を含む、高吸水性樹脂の製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明の他の一側面によれば、
エポキシ当量が100g/eq以上~130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤およびエポキシ当量が130g/eq以上である第2エポキシ架橋剤を含む内部架橋剤の存在下で、酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体が架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂;および
前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋された表面架橋層を含む高吸水性樹脂が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高吸水性樹脂およびその製造方法によれば、基本的な吸収物性に優れ、かつ再湿潤現象および小便の漏出現象が抑制された高吸水性樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0012】
以下、本発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法について詳細に説明する。
【0013】
本発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤が架橋重合されたベース樹脂(base resin)を準備する段階;および
表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂を昇温して前記ベース樹脂に対する表面改質を行う段階を含み、
前記内部架橋剤として、エポキシ当量が100g/eq以上~130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤およびエポキシ当量が130g/eq以上である第2エポキシ架橋剤を含む。
【0014】
本発明の明細書で、「ベース樹脂」または「ベース樹脂粉末」は、水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された重合体を乾燥および粉砕して粒子(particle)またはパウダー(powder)形態にしたものであり、後述する表面改質または表面架橋段階を行っていない状態の重合体を意味する。
【0015】
アクリル酸系単量体の重合反応によって収得される含水ゲル状重合体は乾燥、粉砕、分級、表面架橋などの工程を経て粉末状の製品である高吸水性樹脂として市販される。
【0016】
最近、高吸水性樹脂において吸収能、通液性などの吸収物性だけでなく実際のおむつが使用される状況で表面の乾燥(dryness)状態がどれくらい維持されるかがおむつ特性を測る重要な尺度になっている。
【0017】
本発明の一実施形態による製造方法によって収得される高吸水性樹脂は、保水能、加圧吸収能、通液性など諸吸収性能に優れ、水によって膨潤された後にも乾燥した状態が保持され、高吸水性樹脂に吸収された小便が再び染み出る再湿潤(rewet)および小便の漏出(leakage)現象を効果的に防止できることを確認して本発明に至った。
【0018】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法では先に前記高吸水性樹脂の原料物質として、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含むモノマー組成物を製造し、これを重合して含水ゲル状重合体を収得した後、これを乾燥、粉砕、分級してベース樹脂(base resin)を準備する。
【0019】
これについて下記でより詳細に説明する。
【0020】
前記高吸水性樹脂の原料物質であるモノマー組成物は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および重合開始剤を含む。
【0021】
前記アクリル酸系単量体は、下記化学式1で表される化合物である:
【0022】
[化学式1]
R1-COOM1
【0023】
前記化学式1において、
R1は不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
M1は水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0024】
好ましくは、前記アクリル酸系単量体はアクリル酸、メタクリル酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選ばれる1種以上を含む。
【0025】
ここで、前記アクリル酸系単量体は酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであり得る。好ましくは前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものが使用される。このとき、前記アクリル酸系単量体の中和度は40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であり得る。前記中和度の範囲は最終物性に応じて調節され得る。しかし、前記中和度が過度に高いと中和した単量体が析出されて重合が円滑に行われることが難しく、逆に中和度が過度に低いと高分子の吸収力が大きく落ちるだけでなく取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を奏し得る。
【0026】
前記アクリル酸系単量体の濃度は、前記高吸水性樹脂の原料物質および溶媒を含むモノマー組成物に対して約20~約60重量%、好ましくは約40~約50重量%であり得、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度にし得る。ただし、前記単量体の濃度が過度に低くなると高吸水性樹脂の収率が低く経済性に問題が生じ得、逆に濃度が過度に高まると単量体の一部が析出されたり重合された含水ゲル状重合体の粉砕時の粉砕効率が低く現れるなど工程上問題が生じ得て高吸水性樹脂の物性が低下し得る。
【0027】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法で重合時に使用される重合開始剤は、高吸水性樹脂の製造に一般に使用されるものであれば特に限定されない。
【0028】
具体的には、前記重合開始剤は重合方法によって熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を含むこともできる。
【0029】
前記光重合開始剤は紫外線などの光によってラジカルを形成できる化合物であればその構成の限定なく使用することができる。
【0030】
前記光重合開始剤としては例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選ばれる一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例として、商用のlucirin TPO、すなわち、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)を使用することができる。より多様な光開始剤についてはReinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」p115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0031】
前記光重合開始剤は前記モノマー組成物に対して約0.01~約1.0重量%の濃度で含まれ得る。このような光重合開始剤の濃度が過度に低い場合は重合速度が遅くなり得、光重合開始剤の濃度が過度に高いと高吸水性樹脂の分子量が小さく物性が不均一になる。
【0032】
また、前記熱重合開始剤としては過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選ばれる一つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na2S2O8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K2S2O8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)2S2O8)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane) dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤についてはOdianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley、1981)」,p203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0033】
本発明の一実施例によれば、前記モノマー組成物は高吸水性樹脂の原料物質として内部架橋剤を含む。前記内部架橋剤はアクリル酸系単量体が重合された重合体の内部を架橋させるためのものとして、前記重合体の表面を架橋させるための表面架橋剤と区別される。
【0034】
本発明では内部架橋剤としてエポキシ系架橋剤を含み、エポキシ当量が100g/eq以上~130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤およびエポキシ当量が130g/eq以上である第2エポキシ架橋剤を同時に使用する。
【0035】
このようにエポキシ当量が互いに異なる内部架橋剤を同時に使用する場合、2種の架橋剤が互いに異なる構造のネットワークを形成するので、単一架橋剤を使用するときと比較して高吸水性樹脂の通液性および再湿潤の特性が大きく向上することができる。
【0036】
すなわち、2種の架橋剤がそれぞれ重合体主鎖と化学的に結合することにより架橋高分子ネットワークは各部分ごとに相異する柔軟性(flexibility)を奏し、そのため製造される高吸水性樹脂は水を吸収した状態で外部圧力に対するゲル収縮程度および水の流れ特性が変わることになる。このような構造によって前記高吸水性樹脂は向上した再湿潤特性および通液性を奏することができる。
【0037】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法で、内部架橋剤としては前記第1エポキシ架橋剤および第2エポキシ架橋剤のみを使用することができ、または第1エポキシ架橋剤および第2エポキシ架橋剤の他に通常使用される内部架橋剤をさらに使用することができる。ただし、高吸水性樹脂の通液性および再湿潤の物性向上効果を確保するために、第1エポキシ架橋剤および第2エポキシ架橋剤のみを使用することがより好ましい。
【0038】
前記第1および第2エポキシ内部架橋剤としてはアクリル酸系単量体のカルボン酸およびカルボキシレートと反応できるエポキシ官能基を2以上有する架橋剤が使用される。
【0039】
前記第1エポキシ架橋剤はアクリル酸系単量体が重合された重合体の全般的な内部架橋のために使用されるものとして、エポキシ当量が100g/eq以上、または110g/eq以上であり、かつ130g/eq未満、または125g/eq以下であり、分子内エポキシ官能基を2以上、好ましくは2個含むものが使用される。第1エポキシ架橋剤のエポキシ当量が100g/eq未満であれば、架橋高分子ネットワークの柔軟性が落ちて高吸水性樹脂の吸収力が低下する問題があり得、逆にエポキシ当量が130g/eq以上で高いと均一な架橋構造を形成できない問題があり得る。
【0040】
具体的には、前記第1エポキシ架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0041】
好ましくは、前記第1エポキシ架橋剤はエポキシ当量が110~125g/eqであるエチレングリコールジグリシジルエーテル、またはジエチレングリコールジグリシジルエーテルであり得る。
【0042】
前記第2エポキシ架橋剤は、二重架橋効果を得ることができるように第1エポキシ架橋剤に比べてエポキシ当量が高いものを使用し、具体的にはエポキシ当量が130g/eq以上、150g/eq以上、または180g/eq以上であり、かつ400g/eq以下、または380g/eq以下であるものが使用される。第2エポキシ架橋剤のエポキシ当量が過度に高いと架橋鎖の長さが過度に長いためゲル強度に問題があり得るので、前記範囲を満たすことが好ましい。
【0043】
第2エポキシ架橋剤としては2官能性エポキシ架橋剤が適して使用され、具体的にはエチレングリコール繰り返し単位(-CH2CH-2O-)の個数が3~15であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルのうち1種以上が使用される。好ましくは、前記第2エポキシ架橋剤はエチレングリコール繰り返し単位の個数が4~13であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルであり得る。好ましくは、前記第2エポキシ架橋剤はエポキシ当量が180g/eq~380g/eqであり、エチレングリコール繰り返し単位の個数が4~13であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルであり得る。
【0044】
前記内部架橋剤はアクリル酸系単量体100重量部に対して0.001~1.0重量部の濃度で含まれ、重合された高分子を架橋させることができる。
【0045】
この際、前記第1エポキシ架橋剤および第2エポキシ架橋剤は、それぞれアクリル酸系単量体100重量部に対して0.01~0.5重量部で含まれ得る。具体的には、前記第1エポキシ架橋剤はアクリル酸系単量体100重量部に対して0.1~0.3重量部で含まれ、前記第2エポキシ架橋剤はアクリル酸系単量体100重量部に対して0.01~0.15重量部で含まれ得る。
【0046】
一方、前記第1エポキシ架橋剤および第2エポキシ架橋剤の含有量比は、特に制限されず、使用された架橋剤の種類と特性によって適宜調節することができる。ただし、重合体の適切な架橋度を確保し、架橋高分子ネットワークの柔軟性およびゲル強度効果を確保するために、好ましくは第1エポキシ架橋剤:第2エポキシ架橋剤の重量比は1:1~30:1、または1.1:1~27:1であり得る。
【0047】
本発明の製造方法で、高吸水性樹脂の前記モノマー組成物は必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含み得る。
【0048】
上述した酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、光重合開始剤、熱重合開始剤、内部架橋剤および添加剤などの原料物質は溶媒に溶解したモノマー組成物溶液の形態で準備される。
【0049】
この際、使用できる前記溶媒は上述した成分を溶解できるものであれば、その構成の限定なく使用され得、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどより選ばれた1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
前記溶媒はモノマー組成物の総含有量に対して上述した成分を除いた残量で含まれ得る。
【0051】
一方、このようなモノマー組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を形成する方法も通常使用される重合方法であれば、特に構成の限定はない。
【0052】
具体的には、重合方法は重合エネルギ源によって大きく熱重合および光重合に分かれ、通常熱重合を行う場合はニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行われ得、光重合を行う場合は移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行われるが、上述した重合方法は一例であり、本発明は上述した重合方法に限定されない。
【0053】
一例として、前述したように攪拌軸を備えたニーダー(kneader)などの反応器に、熱風を供給したり反応器を加熱して熱重合をして含水ゲル状重合体を得ることができ、反応器に備えられた攪拌軸の形態によって、反応器の排出口に排出される含水ゲル状重合体は数センチメートルないし数ミリメートル形態であり得る。具体的には、得られる含水ゲル状重合体の大きさは注入されるモノマー組成物の濃度および注入速度などによって多様に現れるが、通常重量平均粒径が2~50mmである含水ゲル状重合体が得られる。
【0054】
また、前述したように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で光重合を行う場合は、通常得られる含水ゲル状重合体の形態はベルトの幅を有するシート状の含水ゲル状重合体であり得る。この時、重合体シートの厚さは注入される単量体組成物の濃度および注入速度に応じて変わるが、通常約0.5~約5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度の単量体組成物を供給する場合、生産効率が低いため好ましくなく、シート状の重合体の厚さが5cmを超える場合は過度に厚い厚さによって、重合反応が全ての厚さにわたって均等に起きない。
【0055】
この時、このような方法で得られた含水ゲル状重合体の通常含水率は約40~約80重量%であり得る。一方、本明細書全体で「含水率」は、全体含水ゲル状重合体重量に対して占める水分の含有量であり、含水ゲル状重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱によって重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値と定義する。この時、乾燥条件は常温から約180℃まで温度を上昇させた後180℃で維持する方式で総乾燥時間は温度上昇段階5分を含んで20分に設定して含水率を測定する。
【0056】
次に、得られた含水ゲル状重合体を乾燥する段階を行う。
【0057】
この時、必要に応じて前記乾燥段階の効率を上げるために乾燥前に粗粉砕する段階をさらに経てもよい。
【0058】
この時、用いられる粉砕機は構成の限定はないが、具体的には、竪型粉砕機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、ロータリーカッターミル(Rotary cutter mill)、カッターミル(Cutter mill)、ディスクミル(Disc mill)、シュレッドクラッシャー(Shred crusher)、クラッシャー(Crusher)、チョッパー(chopper)およびディスクカッター(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選ばれるいずれか一つを含み得るが、上述した例に限定されない。
【0059】
この時、粉砕段階は含水ゲル状重合体の粒径が約2~約10mmになるように粉砕することができる。
【0060】
粒径を2mm未満に粉砕することは含水ゲル状重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が現れ得る。一方、粒径を10mm超過に粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果がわずかである。
【0061】
上記のように粉砕されたり、あるいは粉砕段階を経ていない重合直後の含水ゲル状重合体に対して乾燥を行う。この時、前記乾燥段階の乾燥温度は約150~約250℃であり得る。乾燥温度が150℃未満である場合は乾燥時間が過度に長くなって最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超える場合は過度に重合体表面のみ乾燥され、後に行われる粉砕工程で微粉が発生し得、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましい前記乾燥は、約150~約200℃の温度であり、さらに好ましくは約160~約180℃の温度で行われる。
【0062】
一方、乾燥時間は工程効率などを考慮して約20~約90分間行われるが、これに限定されない。
【0063】
前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル状重合体の乾燥工程として通常用いられる方法であれば、その構成の限定なく選択して使用することができる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。このような乾燥段階の進行後の重合体の含水率は約0.1~約10重量%であり得る。
【0064】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥された重合体を粉砕する段階を行う。
【0065】
粉砕段階後に得られる重合体粉末は粒径が約150~約850μmであり得る。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などが用いられるが、本発明は上述した例に限定されるものではない。
【0066】
そして、このような粉砕段階以後の最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られる重合体粉末を粒径によって分級する別途の過程を経てもよく、前記重合体粉末を粒径範囲によって一定の重量比になるように分級してもよい。
【0067】
次に、前記乾燥および粉砕された重合体、すなわちベース樹脂に表面架橋剤を混合する。
【0068】
一般的な高吸水性樹脂の製造方法で、乾燥および粉砕された重合体、すなわちベース樹脂に表面架橋剤を含む表面架橋溶液を混合した後、これら混合物に熱を加えて昇温することによって前記粉砕された重合体に対して表面架橋反応を行う。
【0069】
前記表面架橋段階は、表面架橋剤の存在下で前記粉砕された重合体の表面に架橋反応を誘導することによって、より向上した物性を有する高吸水性樹脂を形成させる段階である。このような表面架橋により前記粉砕された重合体粒子の表面には表面架橋層(表面改質層)が形成される。
【0070】
一般的に、表面架橋剤は高吸水性樹脂粒子の表面に塗布されるので、表面架橋反応は高吸水性樹脂粒子の表面上で起き、これは粒子内部には実質的に影響を及ぼさず、粒子の表面上での架橋結合性は改善させる。したがって、表面架橋結合された高吸水性樹脂粒子は内部より表面付近においてより高い架橋結合度を有する。
【0071】
一方、前記表面架橋剤としては重合体が有する官能基と反応可能な化合物を使用し、一例として多価アルコール化合物、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、ハロエポキシ化合物、ハロエポキシ化合物の縮合生成物、オキサゾリン化合物類、多価金属塩、またはアルキレンカーボネート化合物などを使用することができる。
【0072】
好ましくは、高吸水性樹脂の再湿潤の特性を低下させず、かつ吸収能がより改善されるように、エポキシ系表面架橋剤を使用することができる。
【0073】
このような条件を満たすエポキシ系表面架橋剤の例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル(triethyleneglycol diglycidyl ether)、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル(tetraethyleneglycol diglycidyl ether)、グリセリンポリグリシジルエーテル(glycerin polyglycidyl ether)、またはソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)などが挙げられる。
【0074】
前記添加されるエポキシ系表面架橋剤の含有量は、前記ベース樹脂100重量部に対して、約0.005重量部以上、または約0.01重量部以上、または約0.02重量部以上であり、かつ約0.2重量部以下、または約0.1重量部以下、または0.05重量部以下で使用することができる。
【0075】
前記エポキシ系表面架橋剤の含有量が過度に少ないと、表面架橋層の架橋密度が過度に低いため加圧下吸収能、通液性などの吸収特性が低くなり、過度に多く使用される場合は過度な表面架橋反応の進行により再湿潤の特性が低下し得る。
【0076】
前記エポキシ系表面架橋剤の添加時、追加で水を共に混合して表面架橋溶液の形態で添加することができる。水を添加する場合、表面架橋剤が重合体に均等に分散できる利点がある。この時、追加される水の含有量は表面架橋剤の均等な分散を誘導して重合体粉末の固まる現象を防止すると同時に表面架橋剤の表面浸透深さを最適化するための目的で重合体100重量部に対して、約1~約10重量部の割合で添加されることが好ましい。
【0077】
一方、上述した前記表面架橋剤の他に多価金属塩、例えば、アルミニウム塩、より具体的にはアルミニウムの硫酸塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩および塩酸塩からなる群より選ばれた1種以上をさらに含み得る。
【0078】
このような多価金属塩は追加で使用することにより、一実施形態の方法で製造された高吸水性樹脂の通液性などをより向上させることができる。このような多価金属塩は前記表面架橋剤とともに表面架橋溶液に添加され得、前記ベース樹脂100重量部に対して0.01~4重量部の含有量で使用され得る。
【0079】
一方、ベース樹脂に表面架橋剤を混合して表面架橋反応を行うために昇温する前に選択的に疎水性物質を前記ベース樹脂に混合して再湿潤特性をより改善することができる。また、表面架橋効率が向上して疎水性物質を使用していない樹脂に比べて吸収速度、および通液性がより向上することができる。
【0080】
前記疎水性物質はHLBがその下限値として0以上、または1以上、または2以上であり、かつ上限値として6以下、または5以下、または5.5以下を満たす物質を使用することができる。また、前記疎水性物質は表面架橋反応時溶けてベース樹脂の表面改質層に位置しなければならないので、溶融温度(melting point)が表面架橋反応温度以下である物質を使用することができる。
【0081】
使用可能な疎水性物質としては例えば、グリセリルステアレート(glyceryl stearate)、グリコールステアレート(glycol stearate)、マグネシウムステアレート(magnesium stearate)、グリセリルラウレート(glyceryl laurate)、ソルビタンステアレート(sorbitan stearate)、ソルビタントリオレエート(sorbitan trioleate)、またはPEG-4ジラウレート(PEG-4 dilaurate)などが挙げられ、好ましくはグリセリルステアレート、またはグリセリルラウレートを使用できるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0082】
前記疎水性物質は前記ベース樹脂の表面の表面改質層内に分布して高吸水性樹脂が液体を吸収して膨潤される過程で膨潤された樹脂粒子が高まった圧力によって互いに凝集または固まることを防止し、表面に疎水性を付与することによって液体の透過および拡散をより容易にすることができる。したがって、高吸水性樹脂の再湿潤特性の改善に寄与することができる。
【0083】
前記疎水性物質は、前記ベース樹脂100重量部に対して約0.02重量部以上、または約0.025重量部以上、または約0.05重量部以上であり、かつ約0.5重量部以下、または約0.3重量部以下、または約0.1重量部以下になるように混合し得る。前記疎水性物質の含有量が0.02重量部未満で過度に少ないと再湿潤特性の改善には不足であり得、0.5重量部を超えて過度に多く含まれる場合はベース樹脂と疎水性物質が互いに脱離して再湿潤の改善効果がないかまたは不純物として作用する問題があり得るので、このような観点から前記重量部の範囲が好ましい。
【0084】
前記疎水性物質を混合する方法は、前記ベース樹脂に均等に混合できる方法であれば特に限定されず適宜採択して使用することができる。
【0085】
例えば、前記疎水性物質は前記ベース樹脂にエポキシ系表面架橋剤を含む表面架橋溶液を混合する前に乾式で混合するか、前記表面架橋溶液に表面架橋剤とともに分散させてベース樹脂に混合する方式で混合することができる。または前記表面架橋溶液とは別に、前記疎水性物質を融点以上に加熱して溶液状態で混合することもできる。
【0086】
次に、前記ベース樹脂、およびエポキシ系表面架橋剤の混合物に熱を加えて昇温することによって前記ベース樹脂に対して表面改質段階を行う。
【0087】
前記表面改質段階は約120~約190℃、好ましくは約130~約180℃の温度で約10~約90分、好ましくは約20~約70分間加熱させることによって行うことができる。架橋反応温度が120℃未満であるか反応時間が過度に短い場合は表面架橋反応が正しく起きず透過度が低くなり、190℃を超えるか反応時間が過度に長い場合は保水能が低下する問題が発生し得る。
【0088】
表面改質反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給したり、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としてはスチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを使用できるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、また供給される熱媒体の温度は熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適宜選択することができる。一方、直接供給される熱源としては電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、本発明は上述した例に限定されるものではない。
【0089】
前記のような表面改質段階によって、前記ベース樹脂の表面にはエポキシ系表面架橋剤とベース樹脂が有する官能基と反応して形成された表面架橋構造が形成され、前記表面架橋構造内に前述した疎水性物質が均等に分布した表面改質層が形成される。
【0090】
前記本発明の製造方法で製造された高吸水性樹脂は、互いに異なるエポキシ当量を有する2種のエポキシ系内部架橋剤によってベース樹脂が二重架橋構造を有することにより、保水能と加圧吸収能などの物性を低下させず向上した再湿潤特性および初期吸収速度を有することができる。
【0091】
したがって、本発明の他の一実施形態によれば、エポキシ当量が100g/eq以上~130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤およびエポキシ当量が130g/eq以上である第2エポキシ架橋剤を含む内部架橋剤の存在下で、酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体が架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂;および前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋された表面架橋層を含む高吸水性樹脂が提供される。
【0092】
前記高吸水性樹脂の具体的な製造方法および物性などに係る詳細な説明は前記高吸水性樹脂の製造方法で上述したとおりである。
【0093】
前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP 241.3により測定した保水能(CRC)が約25g/g以上、または約29g/g以上、または約30g/g以上であり、かつ約40g/g以下、または約38g/g以下、または約35g/g以下の範囲を有し得る。
【0094】
また、前記高吸水性樹脂は、下記数式1により測定される通液性(permeability、単位:秒)が約35秒以下、または約30秒以下であり得る。前記通液性はその値が小さいほど優れ、理論上下限値は0秒であるか、例えば約5秒以上、または約10秒以上、または約12秒以上であり得る。
【0095】
[数式1]
通液性(sec)=T1-B
【0096】
前記数式1において、
T1はクロマトグラフィ管内に分級(300~600μm)された高吸水性樹脂試料0.2±0.0005gを入れて塩水を加えて塩水体積が50mlになるようにした後、30分間放置後、液面の高さが40mlから20mlまで減るのにかかる時間であり、Bは塩水が満たされたクロマトグラフィ管で液面の高さが40mlから20mlまで減るのにかかる時間である。
【0097】
また、前記高吸水性樹脂は優れた吸収特性を奏し、かつより向上した再湿潤特性を奏することができる。
【0098】
より具体的には、前記高吸水性樹脂4gを水道水200gに浸漬させて2時間の間膨潤させた後、膨潤された前記高吸水性樹脂を0.75psiの圧力下で1分間濾過紙上で放置してから、前記高吸水性樹脂から前記濾過紙に再び染み出た水の重量で定義される再湿潤特性(加圧水道水の長期再湿潤)が1.0g以下、または0.9g以下、または0.8g以下、または0.76g以下であり得る。前記水の重量はその値が小さいほど優れ、理論上下限値は0gであるが、例えば0.1g以上、または0.2g以上、または0.3g以上であり得る。
【0099】
前記再湿潤物性の評価で使用した水道水は電気伝導度が140~150μS/cmである。水道水の電気伝導度は測定物性に大きい影響を与えるので等しい水準の電気伝導度を有する水道水を使用して再湿潤などの物性を測定する必要がある。
【0100】
上記のように本発明の高吸水性樹脂は優れた吸収能を有して多量の小便を吸収した場合にも再湿潤および小便の漏出現象が抑制されることができる。
【0101】
本発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
【0102】
<実施例>
高吸水性樹脂の製造
実施例1
(1)ベース樹脂の製造
攪拌機、窒素投入機、温度計を取り付けた3Lガラス容器にアクリル酸518g、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE、エポキシ当量113g/eq)1.40g(アクリル酸100重量部に対して0.27重量部)、エチレングリコール繰り返し単位個数が4個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(PEGDGE、エポキシ当量185g/eq)0.052g(アクリル酸100重量部に対して0.01重量部)、およびジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド0.04gを添加して溶解させた後、24.5%水酸化ナトリウム溶液822.2gを添加して窒素を連続して投入しながら水溶性不飽和単量体水溶液を製造した。前記水溶性不飽和単量体水溶液を40℃に冷却した。
【0103】
この水溶液500gを横250mm、縦250mm、高さ30mmのステンレス材質の容器に加えて紫外線を照射(照射量:10mV/cm2)して90秒間UV重合を実施して含水ゲル状重合体を収得した。収得した含水ゲル状重合体を2mm×2mm大きさに粉砕した後、得られたゲル状樹脂を600μmの孔径を有するステンレス製金網の上に約30mm厚さに広げておき、180℃熱風オーブンで30分間乾燥した。このように得られた乾燥重合体を粉砕機を用いて粉砕し、ASTM規格の標準網ふるいで分級して150~850μmの粒子の大きさを有するベース樹脂を得た。
【0104】
(2)高吸水性樹脂の製造
前記ベース樹脂100重量部に水6.2重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02重量部、硫酸アルミニウム0.2重量部、およびグリセリルステアレート(HLB 3.8)0.03重量部を含む表面架橋溶液を噴射して混合してこれを攪拌機と二重ジャケットからなる容器に入れて140℃で35分間表面架橋反応を行った。その後表面処理された粉末をASTM規格の標準網ふるいで分級して150~850μmの粒子の大きさを有する高吸水性樹脂粉末を得た。
【0105】
実施例2
(1)段階で、アクリル酸100重量部に対してエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.23重量部、エチレングリコール繰り返し単位個数が4個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルを0.05重量部使用したことを除いては実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂粉末を得た。
【0106】
実施例3
(1)段階で、アクリル酸100重量部に対してエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.18重量部、エチレングリコール繰り返し単位個数が4個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルを0.10重量部使用したことを除いては実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂粉末を得た。
【0107】
実施例4
(1)段階で、アクリル酸100重量部に対してエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.15重量部、エチレングリコール繰り返し単位個数が4個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルを0.13重量部使用したことを除いては実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂粉末を得た。
【0108】
実施例5
(1)段階で、エチレングリコール繰り返し単位個数が4個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルの代わりにエチレングリコール繰り返し単位個数が9個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(エポキシ当量268eq/g)を使用したことを除いては実施例2と同様の方法で高吸水性樹脂粉末を得た。
【0109】
実施例6
(1)段階で、エチレングリコール繰り返し単位個数が4個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルの代わりにエチレングリコール繰り返し単位個数が13個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(エポキシ当量372eq/g)を使用したことを除いては実施例2と同様の方法で高吸水性樹脂粉末を得た。
【0110】
実施例7
(1)段階で、エチレングリコールジグリシジルエーテルの代わりにジエチレングリコールジグリシジルエーテル(DGDGE、エポキシ当量122g/eq)を使用したことを除いては実施例2と同様の方法で高吸水性樹脂粉末を得た。
【0111】
実施例8
(1)段階で、エチレングリコールジグリシジルエーテルの代わりにジエチレングリコールジグリシジルエーテル(DGDGE、エポキシ当量122g/eq)を使用したことを除いては実施例3と同様の方法で高吸水性樹脂粉末を得た。
【0112】
実施例9
(1)段階で、エチレングリコール繰り返し単位個数が4個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルの代わりにエチレングリコール繰り返し単位個数が9個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(エポキシ当量268eq/g)を使用したことを除いては実施例7と同様の方法で高吸水性樹脂粉末を得た。
【0113】
実施例10
(1)段階で、エチレングリコール繰り返し単位個数が4個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルの代わりにエチレングリコール繰り返し単位個数が13個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(エポキシ当量372eq/g)を使用したことを除いては実施例7と同様の方法で高吸水性樹脂粉末を得た。
【0114】
比較例1
(1)段階で、内部架橋剤としてエチレングリコール繰り返し単位個数が4個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルを含まず、エチレングリコールジグリシジルエーテルのみをアクリル酸100重量部に対して0.28重量部で使用したことを除いては実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂粉末を得た。
【0115】
比較例2
(1)段階で、内部架橋剤としてエチレングリコール繰り返し単位個数が4個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルを含まず、エチレングリコールジグリシジルエーテルのみをアクリル酸100重量部に対して0.32重量部で使用したことを除いては実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂粉末を得た。
【0116】
比較例3
(1)段階で、内部架橋剤としてエチレングリコール繰り返し単位個数が4個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルを含まず、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(DGDGE、エポキシ当量122g/eq)のみをアクリル酸100重量部に対して0.28重量部で使用したことを除いては実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂粉末を得た。
【0117】
比較例4
(1)段階で、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを含まず、エチレングリコール繰り返し単位個数が4個であるポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルのみをアクリル酸100重量部に対して0.28重量部で使用したことを除いては実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂粉末を得た。
【0118】
<実験例>
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂について、次のような方法で物性を評価した。
【0119】
別に表記しない限り、下記物性評価はすべて恒温恒湿(23±1℃、相対湿度50±10%)で行い、生理食塩水または塩水は0.9重量%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を意味する。
【0120】
また、下記再湿潤物性評価で使用した水道水はOrion Star A222(Thermo Scientific)を用いて測定した時、電気伝導度が140~150μS/cmであるものを使用した。
【0121】
(1)遠心分離保水能(CRC:Centrifuge Retention Capacity)
各樹脂の無荷重下吸収倍率による保水能をEDANA WSP 241.3に従い測定した。
【0122】
具体的には、高吸水性樹脂W0(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を取って、封筒の質量W2(g)を測定した。また、樹脂を用いず同じ操作をした後にその時の質量W1(g)を測定した。得られた各質量を用いて次のような式によりCRC(g/g)を算出した。
【0123】
[数1]
CRC(g/g)={[W2(g)-W1(g)]/W0(g)}-1
【0124】
(2)通液性(Permeability)
クロマトグラフィ管(F20mm)にピストンを入れた状態での液量20mlおよび40mlの液面に線を表示した。その後、クロマトグラフィ管下部ガラスフィルタとコックの間に気泡が生じないように逆に水を投入して約10mlを満たして塩水で2~3回洗浄し、40ml以上まで0.9%塩水を満たした。クロマトグラフィ管にピストンを入れて下部弁を開けて液面が40mlから20ml表示線まで減る時間(B)を記録した。
【0125】
クロマトグラフィ管に塩水を10ml残して、分級(300~600μm)された高吸水性樹脂試料0.2±0.0005gを入れて塩水を加えて塩水体積が50mlになるようにした後、30分間放置した。その後、クロマトグラフィ管内に重り付きのピストン(0.3psi=106.26g)を入れて1分間放置後、クロマトグラフィ管下部弁を開けて液面が40mlから20ml表示線まで減る時間(T1)を記録し、T1-Bの時間(単位:秒)を計算した。
【0126】
(3)加圧水道水の長期再湿潤(2hrs)
(i)直径13cmのペトリ皿(petri dish)に高吸水性樹脂4gを均等に振りかけて分散させて水道水200gを注いだ後2時間の間膨潤させた。
【0127】
(ii)2時間の間膨潤させた高吸水性樹脂をフィルターペーパー(製造会社:whatman,catalog No.1004-110,pore size 20-25μm、直径11cm)20枚上に敷いて直径11cm、5kg錘(0.75psi)で1分間加圧した。
【0128】
(iii)1分間加圧後フィルターペーパーに付いた水道水の量(単位:g)を測定した。
前記実施例と比較例に関する物性値を下記表1に記載した。
【0129】
【0130】
表1を参照すると、実施例1~10は保水能に優れ、かつ通液性および再湿潤の特性がいずれも優れることを確認することができる。しかし、比較例1、3および4のように内部架橋剤として第1および第2エポキシ系架橋剤のうち1種のみを使用した場合は同量の内部架橋剤を使用した実施例1~10と比較して通液性および再湿潤特性が顕著に劣る。また、1種の内部架橋剤を使用するものの、架橋剤の含有量を高めた比較例2の場合は通液性は多少改善されたが、保水能および再湿潤の特性が劣ることが示された。
【0131】
このような結果から、本発明によれば高吸水性樹脂の保水能など優れた基本吸収物性を維持しながらも向上した通液性および再湿潤の特性を確保できることを確認することができる。