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  • 特許-溶出制御型農薬粒剤及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】溶出制御型農薬粒剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 47/36 20060101AFI20221129BHJP
   A01N 25/12 20060101ALI20221129BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A01N47/36 101E
A01N25/12
A01P13/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021537017
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 KR2019012177
(87)【国際公開番号】W WO2020060246
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2018-0113216
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キ・ヒョン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】フン・ロク・リュ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-168298(JP,A)
【文献】特表2004-511478(JP,A)
【文献】特開2018-012709(JP,A)
【文献】特開2017-197529(JP,A)
【文献】特開2017-149713(JP,A)
【文献】特開2016-130247(JP,A)
【文献】特表2013-544882(JP,A)
【文献】国際公開第1995/028835(WO,A1)
【文献】特開2004-043370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬活性成分、天然ワックス及びpH調節剤を含む溶出制御型農薬粒剤であって、
前記農薬活性成分は、下記化学式1で表されるピリジンスルホニルウレア化合物、その塩または立体化学的異性体を含み、
前記農薬活性成分は、農薬粒剤の総重量に対して0.1から0.4重量%含まれ、
前記天然ワックスは、農薬粒剤の総重量に対して2から8重量%含まれ、
前記天然ワックスは、動物性天然ワックス及び植物性天然ワックスからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記農薬粒剤は、1重量%の水中懸濁状態でpH4から6であるものである、溶出制御型農薬粒剤。
【化1】
前記化学式1において、
nは、1から3の整数を示し、
Rは、水素または炭素数1から4のアルキル基であり、
R’は、水素、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から3のハロアルキル基、ハロゲン基または炭素数1から2のアルコキシ基であり、
X及びYは、それぞれ独立して炭素数1から2のアルキル基、炭素数1から2のアルコキシ基、炭素数1から2のハロアルコキシ基またはハロゲン基である。
【請求項2】
前記農薬活性成分は、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-2-(2-フルオロ-1-メトキシアセトキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミド、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-2-(2-フルオロ-1-ヒドロキシアセトキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミド、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-2-(2-フルオロ-1-(3-ヒドロキシプロピオン)オキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミド、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-2-(2-フルオロ-1-(3-メトキシプロピオン)オキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミド、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-4-メチル-2-(2-フルオロ-1-メトキシアセトキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミド、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-4-クロロ-2-(2-フルオロ-1-メトキシアセトキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミド及びN-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-4-ブロモ-2-(2-フルオロ-1-メトキシアセトキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミドからなる群から選択された一つ以上を含むものである、請求項に記載の溶出制御型農薬粒剤。
【請求項3】
前記天然ワックスは、融点が70から90℃であるものである、請求項1又は2に記載の溶出制御型農薬粒剤。
【請求項4】
前記農薬粒剤は、表面の全部または一部に天然ワックスを含むコーティング層をさらに含むものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の溶出制御型農薬粒剤。
【請求項5】
前記pH調節剤は、農薬粒剤の総重量に対して10から25重量%含まれるものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の溶出制御型農薬粒剤。
【請求項6】
前記pH調節剤は、酢酸、クエン酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、コハク酸、フマル酸、オレイン酸及び安息香酸からなる群から選択された1種以上を含む有機酸;またはリン酸、塩酸及び硫酸からなる群から選択された1種以上を含む無機酸を含むものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の溶出制御型農薬粒剤。
【請求項7】
前記リン酸は、リン酸水素二カリウム(KHPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)及びリン酸二水素ナトリウム(NaHPO)からなる群から選択された一つ以上を含むものである、請求項に記載の溶出制御型農薬粒剤。
【請求項8】
前記農薬粒剤は、固体担体、界面活性剤、溶媒、分散剤、湿潤剤、増粘剤、結合剤及びアジュバントからなる群から選択された一つ以上の添加剤をさらに含むものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の溶出制御型農薬粒剤。
【請求項9】
前記農薬粒剤の農薬活性成分の72時間後の水中溶出度は、10から20%であるものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の溶出制御型農薬粒剤。
【請求項10】
前記農薬粒剤の農薬活性成分の溶出持続期間は、200から300時間であるものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の溶出制御型農薬粒剤。
【請求項11】
1)下記化学式1で表されるピリジンスルホニルウレア化合物、その塩または立体化学的異性体を含む農薬活性成分、天然ワックス及びpH調節剤を混合して混合物を形成するステップ;
2)前記混合物を溶媒に撹拌させて混合物ペーストを製造するステップ;及び
3)前記混合物ペーストを造粒及び乾燥させるステップを含む、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の溶出制御型農薬粒剤の製造方法。
【化2】
前記化学式1において、
nは、1から3の整数を示し、
Rは、水素または炭素数1から4のアルキル基であり、
R’は、水素、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から3のハロアルキル基、ハロゲン基または炭素数1から2のアルコキシ基であり、
X及びYは、それぞれ独立して炭素数1から2のアルキル基、炭素数1から2のアルコキシ基、炭素数1から2のハロアルコキシ基またはハロゲン基である。
【請求項12】
前記乾燥温度は、75から100℃であるものである、請求項11に記載の溶出制御型農薬粒剤の製造方法。
【請求項13】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の溶出制御型農薬粒剤を用いる農作物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年9月20日付韓国特許出願10-2018-0113216号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願において開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、溶出制御型農薬粒剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
就農人口が減少し、且つ高齢化している近年の農業環境において、作物の栽培管理における省力化は非常に急を要する問題となっている。栽培管理において最も重要な作業の一つである防除は、対象が病害虫のものと雑草のものとに大別できる。防除作業は、栽培期間を通してその対象となる病害・雑草に有効な農薬を適時に散布及び使用する必要がある。通常、数回にわたる散布及び使用によって防除体系を形成している。
【0004】
農薬散布の作業は、その回数と薬剤の種類が多いため多くの努力を必要とする。例えば、水稲の場合、薬剤としては播種発芽期に種子消毒に用いる薬剤、苗立枯病用の薬剤、育苗~幼穂形成期~穂揃期にかけてのイモチ病、イネミズゾウムシ、ウンカ類、紋枯病などに対して用いる薬剤があり、雑草に対しては、ヒエ、カヤツリグサ科、イネ科雑草などに対して用いる除草剤がある。このように防除作業の種類と回数は非常に多いため、省力化栽培体系構築の障害となっている。
【0005】
このような現状から本発明者らは、栽培期間中に行っていた数回にわたる各種農薬の散布及び使用を、ただ一度、それも播種時若しくは苗の移植時の散布及び使用で済ませる防除法が、薬剤を用いる場合の理想の省力化防除法であると考えた。
【0006】
この防除法を実現するためには、種類の異なる農薬の環境内への溶出または放出(以後「溶出」と表記する)がそれぞれ必要な時期まで抑制され、そして適切な時期が来た時点で速かに農薬活性成分の溶出が開始され、また必要な期間中には農薬活性成分の溶出が持続する機能を有する農薬粒剤が必要である。
【0007】
特開平6-9303号公報においては、高吸水膨潤性物質層とオレフィン系重合体層からなる多層被膜で農薬粒子を被覆した被覆農薬粒剤が、特開平6-9304号公報においては、アルカリ物質層と、オレフィン系樹脂およびアルカリ水可溶性重合体との混合物層とからなる多層被膜で農薬粒子を被覆した被覆農薬粒剤が開示されている。
【0008】
しかし、前記被覆農薬粒剤等は、溶出抑制期間中に農薬活性成分の溶出を完全に抑制できるものは無かった。つまり、従来の農薬粒剤には、所定の溶出抑制期間内において、常に一部の農薬活性成分の環境内への溶出、別な表現をすれば農薬活性成分の漏れがあった。よって、播種若しくは苗の移植と同時に多量の該被覆農薬粒剤を使用する場合には生育障害(薬害)が発生した。したがって、播種から収穫に至るまでの栽培期間内に必要な農薬活性成分の全量、若しくは大部分を含有する被覆農薬粒剤を、播種若しくは苗の移植と同時に一度に使用することは不可能であった。このような理由で、まだ農薬散布作業の大幅な省力化の達成には至っていなかった。
【0009】
すなわち、農薬が不完全な時限溶出機能を有する場合は、これを一度に使用するためには薬害が発生する危険を伴い、そして現実的には理想の省力化防除法が実現できなかった。
【0010】
特に、農作物栽培においては、昔から「苗半作」というように、栽培の初期ステップでの生育の良否が作柄に大きく影響を及ぼすため、前記危険は完全に避ける必要がある。また、水稲のように通常一年作の作物においては特に失敗は許容されない。
【0011】
このように、時限溶出被覆農薬粒剤の溶出抑制機能を向上させる技術の開発、すなわち溶出抑制期間における農薬活性成分の環境内への漏れを完全に若しくは最小限に低減させる技術の開発が、省力化栽培法の確立のための課題である。
【0012】
また、前記被覆農薬粒剤は、被覆層の形成のための追加設備が必要であるため生産コストが高いところ、高度の溶出の制御が実現されるとしても経済的負担が高いため実用化が困難となり得る。
【0013】
したがって、本発明の発明者らは、前記従来の問題点を解決するために低コストで溶出制御型農薬粒剤を製造できながらも、低毒性及び生分解性という特徴により環境汚染が少なく、高度の溶出の制御が実現され得る溶出制御型農薬粒剤の提供を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】韓国登録特許第10-0399366号公報(2003.09.15.公告)
【文献】特開平6-9303号公報(1994.01.18.公開)
【文献】特開平6-9304号公報(1994.01.18.公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の解決しようとする課題は、低毒性及び生分解性という特徴により環境汚染が少なく、高度の溶出制御が実現され、低コストで製造が可能な溶出制御型農薬粒剤及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、農薬活性成分、天然ワックス及びpH調節剤を含む溶出制御型農薬粒剤であって、前記農薬活性成分は、下記化学式1で表されるピリジンスルホニルウレア化合物、その塩または立体化学的異性体を含み、前記天然ワックスは農薬粒剤の総重量に比べて2から8重量%含まれ、前記農薬粒剤は1重量%の水中懸濁状態でpH4から6であるものである溶出制御型農薬粒剤を提供する。
【0017】
【化1】
前記化学式1において、
nは、1から3の整数を示し、
Rは、水素または炭素数1から4のアルキル基であり、
R’は、水素、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から3のハロアルキル基、ハロゲン基または炭素数1から2のアルコキシ基であり、
X及びYは、それぞれ独立して炭素数1から2のアルキル基、炭素数1から2のアルコキシ基、炭素数1から2のハロアルコキシ基またはハロゲン基である。
【0018】
また、本発明は、1)下記化学式1で表されるピリジンスルホニルウレア化合物、その塩または立体化学的異性体を含む農薬活性成分、天然ワックス及びpH調節剤を混合して混合物を形成するステップ;2)前記混合物を溶媒に撹拌させて混合物ペーストを製造するステップ;及び3)前記混合物ペーストを造粒及び乾燥させるステップを含む前記溶出制御型農薬粒剤の製造方法を提供する。
【0019】
【化2】
前記化学式1において、
nは、1から3の整数を示し、
Rは、水素または炭素数1から4のアルキル基であり、
R’は、水素、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から3のハロアルキル基、ハロゲン基または炭素数1から2のアルコキシ基であり、
X及びYは、それぞれ独立して炭素数1から2のアルキル基、炭素数1から2のアルコキシ基、炭素数1から2のハロアルコキシ基またはハロゲン基である。
【0020】
また、本発明は、前記溶出制御型農薬粒剤を用いる農作物の栽培方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の溶出制御型農薬粒剤及びその製造方法によれば、低毒性及び生分解性という特徴により環境汚染が少なく、高度の溶出制御が実現され、低コストで溶出制御型農薬粒剤の製造が可能である。
【0022】
本明細書の図は、本発明の具体的な実施例を例示するものであり、前述した発明の内容とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割をするものなので、本発明は、かかる図に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1及び比較例1の溶出制御型農薬粒剤の72時間後の水中溶出度(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。このとき、本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0025】
本発明は、溶出制御型農薬粒剤及びその製造方法に関し、低毒性及び生分解性という特徴により環境汚染が少なく、高度の溶出制御が実現され、低コストで製造が可能な溶出制御型農薬粒剤及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0026】
以下、前記本発明の溶出制御型農薬粒剤及びその製造方法を詳しく説明する。
【0027】
溶出制御型農薬粒剤
本発明の溶出制御型農薬粒剤は、農薬活性成分、天然ワックス及びpH調節剤を含んでよく、前記農薬活性成分は、下記化学式1で表されるピリジンスルホニルウレア化合物、その塩または立体化学的異性体を含んでよく、前記天然ワックスは、農薬粒剤の総重量に比べて2から8重量%含まれてよく、前記農薬粒剤は、1重量%の水中懸濁状態でpH4から6であってよいことを特徴とする。
【0028】
【化3】
前記化学式1において、
nは、1から3の整数を示してよく、
Rは、水素または炭素数1から4のアルキル基であってよく、
R’は、水素、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から3のハロアルキル基、ハロゲン基または炭素数1から2のアルコキシ基であってよく、
X及びYは、それぞれ独立して炭素数1から2のアルキル基、炭素数1から2のアルコキシ基、炭素数1から2のハロアルコキシ基またはハロゲン基であってよい。
【0029】
以下、本発明の溶出制御型農薬粒剤の各構成成分及び溶出制御機能に対して具体的に検討する。
【0030】
1)農薬活性成分
本発明の溶出制御型農薬粒剤の農薬活性成分は、稲作農業において発芽前及び/又は発芽後の処理除草剤として有用なものとして知られた下記化学式1で表されるピリジンスルホニルウレア化合物、その塩または立体化学的異性体を含むことができることを特徴とする。
【0031】
【化4】
前記化学式1において、
nは、1から3の整数を示してよく、
Rは、水素または炭素数1から4のアルキル基であってよく、
R’は、水素、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から3のハロアルキル基、ハロゲン基または炭素数1から2のアルコキシ基であってよく、
X及びYは、それぞれ独立して炭素数1から2のアルキル基、炭素数1から2のアルコキシ基、炭素数1から2のハロアルコキシ基またはハロゲン基であってよい。
【0032】
具体的には、前記化学式1において、nは1または2の整数であってよく、Rは水素またはメチル基であってよく、R’は水素、ハロゲン基またはメチル基であってよく、X及びYはそれぞれメトキシ基であってよい。
【0033】
より具体的には、前記化学式1において、nは1または2の整数であってよく、Rはメチル基であってよく、R’は水素、Cl、Brまたはメチル基であってよく、X及びYはそれぞれメトキシ基であってよい。
【0034】
また、前記化学式1で表されるピリジンスルホニルウレア化合物は、例えば、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-2-(2-フルオロ-1-メトキシアセトキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミド、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-2-(2-フルオロ-1-ヒドロキシアセトキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミド、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-2-(2-フルオロ-1-(3-ヒドロキシプロピオン)オキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミド、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-2-(2-フルオロ-1-(3-メトキシプロピオン)オキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミド、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-4-メチル-2-(2-フルオロ-1-メトキシアセトキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミド、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-4-クロロ-2-(2-フルオロ-1-メトキシアセトキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミド及びN-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-4-ブロモ-2-(2-フルオロ-1-メトキシアセトキシ-n-プロピル)ピリジン-3-スルホンアミドからなる群から選択された一つ以上であってよい。
【0035】
より具体的には、前記化学式1で表されるピリジンスルホニルウレア化合物は、下記化学式2の化合物[ISO提案名:フルセトスルフロン(flucetosulfuron)]であってよい。
【0036】
【化5】
【0037】
前記フルセトスルフロンは、稲、小麦、大麦(適正使用薬量:10~40g a.i./ha)及び芝生(適正使用薬量:50~200g a.i./ha)に対し、土壌又は茎葉処理時、これらの作物に安全であり、広葉雑草、イネ科雑草、カヤツリグサ科雑草、一年生及び多年生雑草など広範囲な草種に殺草の効果が優れることが知られている。
【0038】
また、本発明の溶出制御型農薬粒剤を製剤化するとき、化学式1で表されるピリジンスルホニルウレア化合物以外に、1または2種以上の他の農薬活性成分を任意に混合してもよい。混合可能な農薬活性成分としては、一般的な除草活性成分、殺虫活性成分、殺菌活性成分または植物生育調節活性成分等を含んでよく、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明の溶出制御型農薬粒剤を用いると、水に対する溶解度(25℃)が100ppm以上、より好ましくは500ppm以上で比較的高い農薬活性成分を用いた場合においても、溶出制御が可能になる。溶解度が比較的高い農薬活性成分として、具体的には、ネオニコチノイド系化合物を例示することができ、さらに具体的には、ニテンピラム、イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、チアクロプリド、またはジノテフランなどを好ましく例示することができる。
【0040】
一方、本発明の溶出制御型農薬粒剤は、前記農薬活性成分を農薬粒剤の総重量に比べて0.1から0.4重量%、より具体的に0.2%から0.3重量%含むのが好ましい。
本発明の溶出制御型農薬粒剤が農薬活性成分を前記範囲内の含量比で含む場合、十分な防除効果が得られるとともに、農薬活性成分の溶出抑制を効果的に達成することができる。
【0041】
2)天然ワックス
本発明の溶出制御型農薬粒剤は、従来の農薬粒剤の溶出制御方式とは異なり、合成プラスチック樹脂ではなく天然ワックスを用いることにより、天然ワックスの低毒性及び生分解性という特徴により環境汚染が少なく、高度の溶出制御を実現することを特徴とする。
【0042】
具体的に、本発明で用いる天然ワックスは、融点が70から90℃、具体的には75から85℃であることを特徴とする。
【0043】
前記範囲の融点を有する天然ワックスを用いる場合、農薬粒剤の造粒及び乾燥工程で発生する熱により天然ワックスが溶けて農薬粒剤内の空隙を埋め、水中での粒剤の崩壊を制御して農薬活性成分の溶出を制御することができる。
【0044】
もし、融点が低すぎると、農薬粒剤の造粒及び乾燥工程で発生する熱により天然ワックスが変性されるか、粒剤の外部にワックスが流れ出て遺失されるという問題があり、保管過程でも環境に応じてワックスが流れ出ることがある。融点が高すぎると、農薬粒剤の造粒及び乾燥工程で発生する熱により天然ワックスが溶けなくなるので、溶出制御機能を有し得ないこともある。
【0045】
具体的に、本発明で使用可能な天然ワックスは、蜜蝋(Bees Wax)、ラノリン(Lanolin;Wool Wax)、鯨蝋及び牛脂のような動物性天然ワックス;またはカルナウバ蝋(Carnauba wax)、カンデリラ蝋(Candelilla Wax)、Rice Wax及び木蝋(Japanese wax)のような植物性天然ワックスを一つ以上含んでよく、より具体的には、熱に対する安定性及び融点の面でカルナウバ蝋(Carnauba wax)が最も好ましい。一方、カルナウバ蝋の融点は約80から85℃である。
【0046】
また、本発明の溶出制御型農薬粒剤は、前記天然ワックスを農薬粒剤の総重量に比べて2から8重量%、具体的には3から5重量%含むのが好ましい。
【0047】
前記範囲未満で含む場合、農薬活性成分が比較的短期間で放出してしまうので薬害が助長される可能性が高くなり、前記範囲を超える場合、活性成分の放出が過度に抑制されるので十分な有害生物防除効果が得られない。
【0048】
一方、本発明の溶出制御型農薬粒剤は、農薬粒剤内の天然ワックス成分が溶けて粒剤表面の全部または一部に天然ワックスを含むコーティング層をさらに含んでよく、この場合、所定の溶出抑制期間内において、一部の農薬活性成分の環境内への漏れがさらに抑制されるという利点があり得る。
【0049】
3)pH調節剤
本発明の農薬活性成分である化学式1で表されるピリジンスルホニルウレア化合物は、そのスルホンアミド基の水素原子が脱離してイオン化する性質があるため、酸性条件で水溶解度が低下する特徴を有する。
【0050】
したがって、本発明の溶出制御型農薬粒剤は、pH調節剤をさらに含んで粒剤のpHを調節して溶出を制御する方式を採用した。
【0051】
具体的に、本発明の溶出制御型農薬粒剤に用いられるpH調節剤は、酢酸、クエン酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、コハク酸、フマル酸、オレイン酸及び安息香酸のような有機酸;またはリン酸、塩酸及び硫酸のような無機酸であってよい。
【0052】
より具体的に本発明はリン酸を用いてもよく、よりさらに具体的にリン酸はリン酸水素二カリウム(KHPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)及びリン酸二水素ナトリウム(NaHPO)からなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0053】
一方、本発明の溶出制御型農薬粒剤は、前記pH調節剤を農薬粒剤の総重量基準10から25重量%、具体的には10から20重量%、または10から15重量%含むのが好ましい。pH調節剤を前記範囲内の含量比で含む場合、十分な防除効果が得られるとともに、農薬活性成分の溶出抑制を効果的に達成することができる。
【0054】
本発明の溶出制御型農薬粒剤は前記pH調節剤を含むことにより、1重量%の水中懸濁状態でpH4から6、より具体的にはpH5から6であることを特徴とする。
【0055】
本発明における「1重量%の水中懸濁状態」は、溶出制御型農薬粒剤1重量%が水99重量%に懸濁状態で存在する懸濁液を意味するものである。
【0056】
1重量%の水中懸濁状態におけるpHが前記範囲未満である場合、活性成分の放出が過度に抑制されるので十分な有害生物防除効果が得られず、前記範囲を超える場合、農薬活性成分が比較的短期間で放出してしまうので薬害が助長される可能性が高くなるという問題がある。
【0057】
4)その他の添加剤
また、本発明に係る溶出制御型農薬粒剤は、前記成分等の他にも固体担体、界面活性剤、溶媒、分散剤、湿潤剤、増粘剤、結合剤またはアジュバントなどをさらに含んでよい。
【0058】
固体担体として可能なものは、石英、クレー、珪砂、カオリナイト、パイロフィライト(pyrophyllite)、タルク、ベントナイト、酸性白土、アタパルジャイト、ゼオライト、珪藻土等の天然鉱物類;炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類;合成珪酸、合成珪酸塩、でんぷん、セルロース、植物粉末等の有機固体担体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチック担体;要素、無機中空体、プラスチック中空体、フュームドシリカ(fumed silica)(ホワイトカーボン)等が挙げられる。
【0059】
担体は、それぞれ単独で用いるか、または2種以上を組み合わせて用いてもよく、その配合比率は、溶出制御型農薬粒剤の総重量に比べて一般的に0.1~95重量%、好ましくは1~90重量%、さらに好ましくは10~90重量%の範囲内であってよい。
【0060】
溶媒として可能なものは、芳香族炭化水素、例えばキシレン混合物または置換されたナフタレン、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルまたはエチレングリコールモノエチルエーテルのようなアルコールとグリコール及びそのエーテルとエステル;シクロヘキサノンのようなケトン;N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドまたはジメチルホルムアミドのような強い極性溶媒;エポキシ化されたヤシ油または大豆油のようなエポキシ化されているかまたはエポキシ化されていない植物油;または水などである。
【0061】
分散剤としては、リグニンスルホン酸の塩、ナフタレンスルホン酸の塩、ラウリル硫酸の塩、ラウリルスルホン酸の塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルスルフェートの塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルフェートの塩のようなアニオン性分散剤、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、またはポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0062】
湿潤剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸の塩、ジアルキルスルホサクシネートの塩、ジアルキルナフタレンスルホン酸の塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルフェートの塩などのアニオン性湿潤剤、アセチレン系列の非イオン性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤の尿素複合体などの多様な種類の化合物が使用可能である。
【0063】
湿潤剤及び分散剤は前述されたものに限定されず、非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤のうち適当なものを使用でき、場合に応じてカチオン性界面活性剤も使用することができる。
【0064】
増粘剤として可能なものは、ホモ糖類及びヘテロ糖類のような多糖類(polysaccharide)と、モンモリロナイト(montmorillorite)、スメクタイト(smectite)、セピオライト、ヘクトライト、親水性/疎水性シリカのような無機物質とに分けられる。ホモ糖類はフランゴム(furangum)が挙げられ、ヘテロ糖類はグアーガム(guar gum)、キサンタンガム(xanthan gum)、ウェランガム(wellan gum)などが挙げられる。
【0065】
結合剤として可能なものは、でんぷん、デキストリン、アルファでんぷん、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、ゼラチン、リグニンスルホネート(lignin sulfonate)、ブドウ糖、ソルビトール(sorbitol)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose;HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methyl cellulose)、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)などが挙げられる。
【0066】
アジュバントは、薬効増進のために製剤段階で添加するか、散布液製造段階で希釈して使用される物質であって、通常、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤などが代表的である。
【0067】
アジュバントとして使用できる物質としては、ジアルキルスルホサクシネートの塩、アセチレン系列の非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、エトキシ化ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレントリブロック共重合体、アルコキシ化トリシロキサンなどがある。
【0068】
前記添加剤は、それぞれ単独で用いるか、または2種以上を組み合わせて用いてもよく、その配合比率は、溶出制御型農薬粒剤の総重量に対して一般的に0.01~30重量%、好ましくは0.01~20重量%、さらに好ましくは0.01~15重量%の範囲内であってよい。
【0069】
5)溶出制御機能
本発明の溶出制御型農薬粒剤は、時限溶出制御型の徐放機能を有する。
【0070】
時限溶出制御型の徐放機能とは、使用後一定期間に農薬活性成分の溶出が抑制される溶出抑制期間と、一定期間の経過後、速やかな溶出を開始及び持続する溶出開始時点及び溶出持続期間とからなる溶出パターンを実現する機能を意味する。
【0071】
具体的には、使用後から農薬粒剤中の農薬活性成分が外部環境中に約20重量%溶出されるまでの期間を溶出抑制期間とし、20重量%を超えて約100重量%溶出されるまでの期間を溶出持続期間とした場合、溶出抑制期間/溶出持続期間の比率が0.2以上である溶出パターンを実現する機能を意味する。
【0072】
本発明の溶出制御型農薬粒剤は、天然ワックスにより時限溶出制御型の徐放機能を有し、溶出抑制期間における農薬活性成分の漏れが顕著に抑制された優れた時限溶出機能を有する。
【0073】
具体的に、本発明の溶出制御型農薬粒剤は、農薬活性成分の72時間後の溶出度は10から20%、具体的には10から15%であることを特徴とし、農薬粒剤の農薬活性成分の溶出持続期間は200から300時間、具体的には250から300時間であることを特徴とする。溶出持続期間とは、溶出開始以後の農薬活性成分の溶出度が90から100%、具体的に95から100%に到達する期間を意味する。
【0074】
このように本発明の溶出制御型農薬粒剤は、溶出抑制期間中の農薬活性成分の溶出が抑制され、溶出開始以後には溶出が一定時間以上持続するため、栽培期間に必要な農薬活性成分の全量若しくはその大部分を、播種若しくは移植と同時に一度に使用しても栽培初期の生育障害(薬害)を起こさない。また、本発明の農薬活性成分として化学式1で表されるピリジンスルホニルウレア化合物の他に含まれた農薬活性成分も同様に溶出が制御され、農薬の散布及び使用回数を減少させることができ、これらの作業を顕著に軽減させることができる。
【0075】
したがって、本発明を用いる場合、農作業において理想の省力化防除法が実現することができる。
【0076】
溶出制御型農薬粒剤の製造方法
また、本発明は、低コストで溶出制御型農薬粒剤を製造することができる溶出制御型農薬粒剤の製造方法を提供する。
【0077】
農薬粒剤は、農薬活性成分を必須成分として含有する原料を造粒することにより得られる。このような造粒法としては、押出造粒法、被覆造粒法、吸着造粒法などがある。本発明では、これら造粒法のうち押出造粒法によることを特徴とする。
【0078】
以下、本発明の溶出制御型農薬粒剤の製造方法を具体的に検討する。
【0079】
本発明の溶出制御型農薬粒剤の製造方法は、1)下記化学式1で表されるピリジンスルホニルウレア化合物、その塩または立体化学的異性体を含む農薬活性成分、天然ワックス及びpH調節剤を混合して混合物を形成するステップ;2)前記混合物を溶媒に撹拌させて混合物ペーストを製造するステップ;及び3)前記混合物ペーストを造粒及び乾燥させるステップを含んでよく、前記乾燥温度は75から100℃であってよいことを特徴とする。
【0080】
【化6】
前記化学式1において、nは、1から3の整数を示してよく、
Rは、水素または炭素数1から4のアルキル基であってよく、
R’は、水素、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から3のハロアルキル基、ハロゲン基または炭素数1から2のアルコキシ基であってよく、
X及びYは、それぞれ独立して炭素数1から2のアルキル基、炭素数1から2のアルコキシ基、炭素数1から2のハロアルコキシ基またはハロゲン基であってよい。
【0081】
本発明の溶出制御型農薬粒剤は、湿式造粒法で押出式造粒機を用いて製造されてよく、一つ以上の農薬活性成分、天然ワックス、pH調節剤、固体担体及びその他の添加剤を加え、これらを均一に混合して得られた混合物に溶媒として液体の補助成分及び適量の水を加えてペースト状に混練し、直径0.5から3mm、具体的には0.5から1.5mmの孔を有するスクリーンを装着した押出式造粒機を用いて造粒した後、乾燥して製造することができる。
【0082】
一方、本発明の農薬活性成分である化学式1で表されるピリジンスルホニルウレア化合物は熱安定性が高くないので、その乾燥温度の細心な調節が必要であるところ、本発明の乾燥温度は75から100℃、具体的には75から90℃、より具体的には80から90℃であってよいことを特徴とする。
【0083】
乾燥温度が低すぎる場合、乾燥時間が長すぎるため生産性が落ちることがあり、乾燥されて水が完全に除去されるまでの時間が長いほど、製造工程で粒剤の内部から外部に移動する農薬活性成分量が多くなり、溶出制御機能が損なわれるという問題が生じ得る。逆に、乾燥温度が高すぎる場合、農薬活性成分の安定性が落ちるため、十分な防除効果を期待できないこともある。
【0084】
前記製造方法で得られる本発明の溶出制御型農薬粒剤は、通常0.5から3mm、具体的には0.5から1.5mmの範囲内の平均粒径を有してよい。
【0085】
また、本発明は、溶出制御型農薬粒剤を用いる農作物の栽培方法を提供することができ、前記溶出制御型農薬粒剤を土壌及び水面、農作物の葉面及び茎に散布することにより用いられる。
【0086】
前記溶出制御型農薬粒剤は、対象作物が限定されるものではなく、稲の他にもキャベツ、レタス、ホウレンソウなどの葉菜類、大根、にんじんなどの根菜類、トマト、きゅうり、カボチャなどの果菜類の他に、米類、麦類、とうもろこし、じゃがいも類、豆類、工芸作物、花卉類などに用いられてよい。
【0087】
このように本発明は、低毒性及び生分解性という特徴により環境汚染が少なく、高度の溶出制御が実現され、低コストで製造が可能な溶出制御型農薬粒剤及びその製造方法を提供することができる。
【0088】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、いくつか異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【実施例
【0089】
実施例1
1.FTS(flucetosulfuron)0.25重量部、リグノスルホン酸ナトリウム(Sodium Ligno Sulfonate;SLS;cas no.8061-51-6)3重量部、リン酸二水素カリウム(KHPO)10重量部、カルナウバ蝋(Carnauba Wax)3重量部、パイロフィライト(Pyrophyllite;PLW;cas no.12269-78-2)79.75重量部を混合した後、エアーミル(air-mill)を用いて粉砕を実施した。
2.NK-PVA25(PVAc 40重量%である水溶液)10重量部を水18重量部と混合して均質な溶液を製造した。
3.2で作製した溶液に1の粉砕物を入れて練った後、押出式造粒機を用いて造粒し、80℃で30分間流動層乾燥器を用いて乾燥して農薬粒剤100g(100重量部)を製造した。
【0090】
実施例2
前記実施例1でカルナウバ蝋(Carnauba Wax)を5重量部、パイロフィライト(Pyrophyllite)を77.75重量部使用したことを除き、実施例1と同様の方法で農薬粒剤を製造した。
【0091】
実施例3
前記実施例1でカルナウバ蝋(Carnauba Wax)を5重量部、リン酸二水素カリウム(KHPO)を20重量部、パイロフィライト(Pyrophyllite)を67.75重量部使用したことを除き、実施例1と同様の方法で農薬粒剤を製造した。
【0092】
比較例1
前記実施例1でカルナウバ蝋(Carnauba Wax)を使用せず、パイロフィライト(Pyrophyllite)を82.75重量部使用したことを除き、実施例1と同様の方法で農薬粒剤を製造した。
【0093】
比較例2
前記実施例1でカルナウバ蝋(Carnauba Wax)を1重量部、パイロフィライト(Pyrophyllite)を81.75重量部使用したことを除き、実施例1と同様の方法で農薬粒剤を製造した。
【0094】
比較例3
前記実施例1でカルナウバ蝋(Carnauba Wax)を10重量部、パイロフィライト(Pyrophyllite)を72.75重量部使用したことを除き、実施例1と同様の方法で農薬粒剤を製造した。
【0095】
比較例4
前記実施例1でリン酸二水素カリウム(KHPO)を使用せず、パイロフィライト(Pyrophyllite)を89.75重量部使用したことを除き、実施例1と同様の方法で農薬粒剤を製造した。
【0096】
【表1】
【0097】
実験例
前記実施例及び比較例の各物性を測定し、その結果を図1、表2及び表3に示した。
【0098】
1)水中溶出実験
各実施例及び比較例で製造した溶出制御型農薬粒剤の水中溶出度を測定するために、各実施例及び比較例の溶出制御型農薬粒剤0.6mgを、蒸留水250mlを入れたガラス瓶に加え、20℃条件下で静置させた。一定時間(4時間、72時間、288時間、336時間)が経た後、ガラス瓶の中間位置でマイクロピペットを用いて溶液1mlをサンプリングした。サンプリングされた溶液にアセトニトリル(Acetonitrile)1mlを入れて濾過(filtering)した後、農薬活性成分(FTS)量を測定した。水中の農薬活性成分量は、高速液体クロマトグラフィー(ウォーターズ社製486チューナブルUV/VIS検出器)を用いて測定し、その結果を図1、表2及び表3に示した。
水中溶出度(%)=(X/Y)×100
(X:一定時間経過後に水中に溶出された農薬活性成分量、Y:水中溶出前に農薬粒剤中に含まれた農薬活性成分全量)
【0099】
1-1)天然ワックスの有無による比較
図1にみられるように、天然ワックスを使用した実施例1の農薬粒剤は、72時間後の水中溶出度が約12.2%である一方、天然ワックスを使用していない比較例1の農薬粒剤は、72時間後の水中溶出度が97%であることが確認できた。
【0100】
これにより、天然ワックスを使用した実施例1の農薬粒剤が優れた溶出制御機能を有することが確認できた。
【0101】
1-2)天然ワックスの使用量による比較
【0102】
【表2】
【0103】
前記表2に見られるように、天然ワックスを適量使用した実施例1及び2は、72時間後の水中溶出度が約12から15%程度で高度の溶出制御が実現され、288時間後の水中溶出度は約98%程度で、農薬粒剤散布後の農業に必要な一定期間の間活性成分の溶出が持続することが確認できた。
【0104】
その一方、天然ワックスを全く使用していない比較例1は、4時間後の水中溶出度が69%、72時間後の水中溶出度が97%で、全く溶出制御されていないことが確認でき、天然ワックスを少量使用した比較例2は、72時間後の水中溶出度が約46%程度で、溶出制御機能に優れないことが確認できた。
【0105】
一方、比較例3は、粒剤が水面上に浮いているため、同一の条件での水中溶出度の測定が不可能であった。そこで、ガラス瓶を数回倒立して強引に水面下に落とした後、測定試験を進めた。前記のように溶出度が測定され得るように条件を変更して測定試験を進めたにもかかわらず、実施例に比べて溶出制御機能が低下したことが確認でき、また、粒剤が水面上に浮いているため、実施例1及び2と同一の条件での水中溶出度の測定が不可能な程度である比較例3は、実際に田で使用する際に薬害のおそれがあるため好ましくない。
【0106】
1-3)農薬粒剤の1重量%水中懸濁状態でのpHによる比較
【0107】
【表3】
【0108】
前記表3に見られるように、1重量%水中懸濁状態でのpHが6である実施例1及びpHが5.5である実施例3の農薬粒剤は、高度の溶出の制御が実現されるが、pHが7である比較例4の農薬粒剤は、溶出制御機能が実現されないことが確認できた。
【0109】
これは、本発明の農薬活性成分であるフルセトスルフロンの水溶解度が、酸性条件であるほど低下することに因るものであって、これによって弱酸性の農薬粒剤が高度の溶出制御機能を有するということが確認できた。
【0110】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解できるものである。よって、以上で記述した実施例等は、全ての面において例示的なものであり、限定的ではないものと理解しなければならない。
図1