(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】硬化性および光学的に透明な感圧接着剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20221129BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20221129BHJP
C09J 183/06 20060101ALI20221129BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20221129BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20221129BHJP
G02F 1/1333 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J183/07
C09J183/06
C09J183/04
G02F1/1335
G02F1/1333
(21)【出願番号】P 2018514416
(86)(22)【出願日】2016-09-15
(86)【国際出願番号】 US2016051825
(87)【国際公開番号】W WO2017048890
(87)【国際公開日】2017-03-23
【審査請求日】2019-09-13
(32)【優先日】2015-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】リウ、 ユーシア
(72)【発明者】
【氏名】アハーン、 マシュー
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-524835(JP,A)
【文献】特開2012-041505(JP,A)
【文献】特開2008-156497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーン感圧接着剤組成物
を硬化した感圧接着剤フィルムであって、
前記硬化性シリコーン感圧接着剤組成物は、
(a)10~98%の、
(i)反応性ポリジメチルシロキサンポリマー;
(ii)反応性シリコーン樹脂(反応性ポリジメチルシロキサンポリマーを除く);および
(iii)pKa値が-6以下または15以上である酸または塩基触媒
の反応生成物;
(b)1~45%の(メタ)アクリレート官能化ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー;
(c)1~45%のシリコーン樹脂またはポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー;および
(d)0.001~5%のラジカル開始剤;
の混合物を含有し、
この硬化性シリコーン感圧接着剤組成物
を硬化した硬化フィルムの500nmのASTM E903に従って測定された透過率が90%より大きい、
感圧接着剤フィルム。
【請求項2】
反応性ポリジメチルシロキサンポリマー(i)対反応性シリコーン樹脂(ii)の比が1:9~9:1の範囲である、請求項1に記載の
感圧接着剤フィルム。
【請求項3】
反応性ポリジメチルシロキサンポリマー(i)がヒドロキシル基および/またはアルコキシ基でα,ω-エンドキャップされている、請求項1に記載の
感圧接着剤フィルム。
【請求項4】
前記反応性シリコーン樹脂が、四官能性シロキシ単位(SiO
4/2)およびトリオルガノシロキシ単位(R
3SiO
1/2)からなり、
ここで、Rはヒドロキシル基およびメチル基であり、
SiO
4/2単位のR
3SiO
1/2単位に対するモル比は、1:2~2:1であり、
前記官能性シリコーン樹脂の重量平均分子量は、500~200,000g/molである、請求項1に記載の
感圧接着剤フィルム。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート官能化ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーが、アクリル酸またはメタクリル酸官能基でα,ω-エンドキャップされたPDMSポリマーまたはオリゴマーであり、重量平均分子量が400~350,000g/molである、請求項1に記載の
感圧接着剤フィルム。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂(c)が四官能性シロキシ単位(SiO
4/2)およびトリオルガノシロキシ単位(R
3SiO
1/2)からなり、
ここで、Rは、独立して、メチル、ヒドロキシル、ヒドリド、ビニル、(メタ)アクリルオキシ官能基、またはそれらの混合物であり、
SiO
4/2単位のR
3SiO
1/2単位に対するモル比は、1:2~2:1であり、
平均重量分子量は、500~200,000g/molである、請求項1に記載の
感圧接着剤フィルム。
【請求項7】
硬化性シリコーン感圧接着剤組成物
を硬化した感圧接着剤フィルムであって、
前記硬化性シリコーン感圧接着剤組成物は、
(a)95~99.999%の、有機溶媒中の
(i)反応性ポリジメチルシロキサンポリマー;
(ii)反応性シリコーン樹脂(反応性ポリジメチルシロキサンポリマーを除く);および
(iii)(メタ)アクリレートおよびメトキシル官能化ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー;および
(iv)pKa値が-6以下または15以上である酸または塩基触媒
の反応生成物;
(b)0.001~5%のラジカル開始剤;および
(c)任意に、45%までのシリコーン樹脂またはポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー
の混合物を含み;そして
この硬化性シリコーン感圧接着剤組成物
を硬化した硬化フィルムの500nmのASTM E903に従って測定された透過率が90%より大きい、
感圧接着剤フィルム。
【請求項8】
反応性ポリジメチルシロキサンポリマー(i)対反応性シリコーン樹脂(ii)対(メタ)アクリレートおよびメトキシル官能化ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー(iii)の比が、1~8:1~8:1~8の範囲である、請求項7に記載の
感圧接着剤フィルム。
【請求項9】
硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを形成する方法であって、
(1)(i)反応性ポリジメチルシロキサンポリマー、(ii)反応性シリコーン樹脂、および(iii)酸触媒または塩基触媒の有機溶媒中の反応生成物を調製して非硬化性シリコーンネットワークを形成する工程;および
(2)前記非硬化性シリコーンネットワークを、(iv)5~45%の(メタ)アクリレート末端ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー、(v)5~45%のシリコーン樹脂、(vi)0.001~5%のラジカル開始剤、および(vii)任意に350,000未満の重量平均分子量を有するポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーと、一緒にして、有機溶剤中の溶液を形成する工程;
(3)第1の剥離ライナーを準備する工程;
(4)前記溶液を前記第1の剥離ライナー上にコーティングする工程;
(5)塗布膜から有機溶剤を蒸発させて実質的に溶剤を含まない膜を形成する工程;そして
(6)実質的に溶媒を含まないフィルム上に第2の剥離ライナーを積層する工程
を有する方法。
【請求項10】
前記有機溶媒を蒸発させる工程は、前記混合物を40~150℃の温度に暴露することを特徴とする請求項9に記載の硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性の光学的に透明な感圧接着剤に関する。光学的に透明な接着剤は、LCDディスプレイ、LEDディスプレイ、フレキシブルおよび折り畳み式ディスプレイ、タッチスクリーン、およびフレキシブル薄膜太陽電池モジュールなどの電子デバイスを接着するためのフィルム、ラミネート、テープまたは封入剤として適している。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスおよび回路は、一般に、カバー前面シートと基材後面シートとの間にある活性層で構成される。少なくとも1枚のシートは光学的に透明である。基板およびカバーシートは、光透過性および光学的透明性を高めるラミネート接着フィルムと一緒に接着される。望ましくは、接着剤は、広範囲の温度で基材に対する接着性を維持する。
【0003】
ラミネートフィルムの形態の接着剤は、液体ベースの接着剤よりも取扱い性を改善する。しかしながら、フィルムベースの接着剤にはいくつかの欠点がある。フィルムは、組立工程中の基板濡らし性(ウェットアウト)が悪く、空隙充填が不十分であり、電極、バスバー、インク段差、集積回路などの基板上の構成要素によって形成されるくぼみおよび空隙を含む基板ではこの問題が悪化する。
【0004】
WO2009148722およびWO2011062932の参考文献は、比較的高い粘度を有するポリイソブチレン系フィルム接着剤を記載している。より良好な濡らし性(ウェットアウト)を得るために、フィルム接着剤は、ホットラミネーション下で基材上に適用(塗布)される。しかしながら、多くの活性有機及び電子部品は、60℃を超える熱に敏感であり、このような高熱に長時間さらされると、電子部品に有害な影響を及ぼす。
【0005】
JP2012057065文献は、非硬化性感圧接着剤フィルムを開示している。基材を適切に濡らして空隙形成を最小限に抑えるために、接着フィルムの粘度は120℃で1,000,000cps未満または200,000g/mol未満の粘度平均分子量(Mv)を維持される。しかし、未硬化の熱可塑性接着剤は、装置の寿命の間に歪み下でコールドフローを示す。同様に、CN104130740文献は、高い剥離力を有するオルガノシリコーン感圧接着剤フィルムを教示している。これもまた、フィルムはUV硬化性ではなく、装置の寿命の間に歪み下でコールドフローを示す。
【0006】
CN103820042文献は、熱溶融性光学透明接着剤(TOCA)用のフィルムベースの熱硬化性ホットメルト接着剤を製造するために、SISおよびSBSブロックコポリマーを使用することを開示している。SISおよびSBSブロックコポリマーの軟質ブロック中の不飽和C=C官能性結合は、UV光下または高温下で空気中で容易に酸化し、接着フィルムは経時的に黄色または褐色に変色し、光学的透明性を損なう。
【0007】
WO2013173976A1文献は、光学デバイスにおける「ムラMura」として知られている別の課題を開示している。ムラは、不規則なスクリーン均一性または局所的な応力によって引き起こされる、光学デバイス上のダークスポットおよびパッチの外観として定義される。接着剤層の内側にある低レベルであっても、あらゆる種類の応力がムラを引き起こし、そしてこれは、光学デバイスの修理可能な欠陥ではない。ムラを克服するには、低モジュラス(柔らかい)の感圧接着剤が望ましい。
【0008】
ヒドロゲルもまた、電子デバイス用の接着フィルム層として使用されている。US5559165号およびUS6448303号文献は、硬質基材からの除去した時に、油状残留物を残さない軟質接着剤を開示している。EP1755562文献は、電子ビーム硬化性ヒドロゲル様軟質接着剤を記載している。同様に、US5262468文献は、ゼラチン状熱可塑性組成物を得るために高粘度ゴム(トルエン中25wt%で40,000cp)の使用を記載している。これらの組成物はすべて柔らかくてしなやかであるが、接着性に欠け、基材に接着しない。
【0009】
バランスのとれた低弾性率およびバランスのとれた剥離接着力を有する感圧接着剤(粘着剤)が、ムラ問題および剥離問題を克服するために望ましい。また、感圧接着剤(粘着剤)は、広い使用温度範囲を有することが望ましい。
【0010】
したがって、長期間にわたる高い光学的透明性、広い使用温度、高い剥離接着性および硬化後の低い弾性率を有する電子デバイスにおける感圧接着剤フィルムが、当該技術分野において必要とされている。本発明はこの必要性を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電子デバイスのための基板のシーリングおよび接着に適した硬化性シリコーン感圧接着剤組成物およびフィルムを提供する。硬化したフィルムは、広い温度範囲で長時間にわたって光透過性および光学的効果を高め、高い接着性、低いムラおよびモジュラスを提供する。
【0012】
本発明の1態様は、硬化性シリコーン感圧接着剤組成物であって、
(a)約10~約98%の
(i)官能基でα,ω-エンドキャップされたポリジメチルシロキサンポリマーである反応性ポリジメチルシロキサンポリマー;
(ii)反応性シリコーン樹脂;および
(iii)pKa値が-6以下または15以上である酸または塩基触媒
の反応生成物;
(b)約1~約45%の(メタ)アクリレート官能化ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー;
(c)約1~約45%のシリコーン樹脂またはポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー;および
(d)0.001~5%のラジカル開始剤
の混合物を含有する硬化性シリコーン感圧接着剤組成物に関する。硬化した接着剤は、ASTM E903に従って500nmで測定した、90%より大きい透過率を有する。
【0013】
本発明の別の態様は、硬化性シリコーン感圧接着剤組成物であって、
(a)約95~約99.999%の、有機溶媒中の
(i)反応性ポリジメチルシロキサンポリマー;
(ii)反応性シリコーン樹脂;
(iii)(メタ)アクリレートおよび/またはメトキシル官能化ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー;および
(iv)pKa値が-6以下または15以上である酸または塩基触媒
の反応生成物;
(b)約0.001~約5%のラジカル開始剤;および
(c)任意に、45%までのシリコーン樹脂またはポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー
の混合物を含有する硬化性シリコーン感圧接着剤組成物に関する。硬化した接着剤は、ASTM E903に従って500nmで測定した透過率が90%より大きい。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを形成する方法であって、
(1)(i)官能基でα,ω-エンドキャップされたポリジメチルシロキサンである反応性ポリジメチルシロキサンポリマー、(ii)反応性シリコーン樹脂、および(iii)酸触媒または塩基触媒の有機溶媒中の反応生成物を調製し、非硬化性シリコーンネットワークを形成する工程;および
(2)前記非硬化性シリコーンネットワークを、(iv)約5~約45%の(メタ)アクリレート末端ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー、(v)約5~約45%のシリコーン樹脂、(vi)約0.001~約5%のラジカル開始剤、および(vii)任意に約50,000未満の重量平均分子量を有するポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーと、一緒にして、有機溶剤中の溶液を形成する工程;
(3)第1の剥離ライナーを準備する工程;
(4)前記溶液を前記第1の剥離ライナー上にコーティングする工程;
(5)前記第1の剥離ライナー上の塗布膜から有機溶剤を蒸発させて実質的に溶剤を含まない膜を形成する工程;および
(6)実質的に溶媒を含まないフィルム上に第2の剥離ライナーを積層する工程
を有する硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを形成する方法に関する。
【0015】
本発明の更なる態様は、電子デバイスを形成する方法であって、
(1)(i)反応性ポリジメチルシロキサンポリマー、(ii)反応性シリコーン樹脂、および(iii)酸または塩基触媒の有機溶媒中の反応生成物を、(iv)(メタ)アクリレート末端ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー;(v)シリコーン樹脂;および(vi)ラジカル開始剤と混合することによって調製された硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを製造する工程、
(2)2つの剥離ライナーの間にフィルムをコーティングする工程;
(3)第1の基板を準備する工程であって、前記基板は、前記デバイスのフロントカバーシートまたはバック基板であり、
(4)前記剥離ライナーの1つを除去する工程;
(5)前記硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを前記デバイス基板上に約0.01~約0.5MPaの圧力で積層する工程;
(6)他方の剥離ライナーを除去する工程;
(7)前記硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを、約0.01~約0.5MPaの圧力、および/または約0.01~約0.1MPaの真空、および/または約30~80℃の温度で、第2のデバイス基板上に積層する工程と、
(8)UVA&V(紫外線A波および可視光)の1~5J/cm2の照射量および/または80~150℃の熱で硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを硬化させる工程;
を含み、それによって接着フィルムが第1のデバイスおよび第2のデバイス基板上に接着する、電子デバイスの形成方法に関する。
【0016】
本発明の別の態様では、電子デバイスを形成する方法であって、
(1)(i)反応性ポリジメチルシロキサンポリマー、(ii)反応性シリコーン樹脂、(iii)(メタ)アクリレート末端ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーおよび(iv)酸または塩基触媒の有機溶媒中の反応生成物を、(v)ラジカル開始剤、および任意に(vi)シリコーン樹脂またはポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーと混合することによって調製された硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを製造する工程、
(2)2つの剥離ライナーの間にフィルムをコーティングする工程;
(3)第1の基板を準備する工程であって、前記基板は、前記デバイスのフロントカバーシートまたはバック基板であり、
(4)前記剥離ライナーの1つを除去する工程;
(5)前記硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを前記デバイス基板上に約0.01~約0.5MPaの圧力で積層する工程;
(6)他方の剥離ライナーを除去する工程;
(7)前記硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを、約0.01~約0.5MPaの圧力、および/または約0.01~約0.1MPaの真空、および/または約30~80℃の温度で、第2のデバイス基板上に積層する工程と、
(8)UVA&Vの1~5J/cm2の照射量および/または80~150℃の熱で硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを硬化させる工程;
を含み、それによって接着フィルムが第1のデバイスおよび第2のデバイス基板上に接着する、電子デバイスの形成方法に関する。
【0017】
さらに本発明の別の態様では、電子デバイスを形成する方法であって、
(1)(i)反応性ポリジメチルシロキサンポリマー、(ii)反応性シリコーン樹脂、および(iii)酸または塩基触媒の有機溶媒中の反応生成物を、(iv)(メタ)アクリレート末端ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー;(v)シリコーン樹脂;および(vi)ラジカル開始剤と混合することによって調製された硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを製造する工程、
(2)2つの剥離ライナーの間にフィルムをコーティングする工程;
(3)2つの剥離ライナーの間の硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを、UVA&Vの1~5J/cm2の照射量および/または80~150℃での熱で硬化させ;それにより前記接着剤フィルムを第1のデバイスおよび第2のデバイス基板に接着する工程;
(4)第1の基板を準備する工程であって、前記基板は、前記デバイスのフロントカバーシートまたはバック基板であり、
(5)剥離ライナーの1つを除去する工程;
(6)前記硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを前記デバイス基板上に約0.01~約0.5MPaの圧力で積層する工程;
(7)他方の剥離ライナーを除去する工程;
(8)前記硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを、約0.01~約0.5MPaの圧力、および/または約0.01~約0.1MPaの真空、および/または約30~80℃の温度で、第2のデバイス基板上に積層する工程
を含む電子デバイスの形成方法に関する。
【0018】
本発明の別の態様は、電子デバイスを形成する方法であって、
(1)(i)反応性ポリジメチルシロキサンポリマー、(ii)反応性シリコーン樹脂、(iii)(メタ)アクリレート末端ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー、および(iv)酸または塩基触媒の有機溶媒中の反応生成物を、(v)ラジカル開始剤、および任意に(vi)シリコーン樹脂またはポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーと混合することによって調製された硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを製造する工程、
(2)2つの剥離ライナーの間にフィルムをコーティングする工程;
(3)2つの剥離ライナーの間の硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを、UVA&Vの1~5J/cm2の照射量および/または80~150℃での熱で硬化させ;それにより接着フィルムを第1のデバイスおよび第2のデバイス基板に接着する工程;
(4)第1の基板を準備する工程であって、前記基板は、前記デバイスのフロントカバーシートまたはバック基板であり、
(5)剥離ライナーの1つを除去する工程;
(6)前記硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを前記デバイス基板上に約0.01~約0.5MPaの圧力で積層する工程;
(7)他方の剥離ライナーを除去する工程;
(8)前記硬化性シリコーン感圧接着剤フィルムを、約0.01~約0.5MPaの圧力、および/または約0.01~約0.1MPaの真空、および/または約30~80℃の温度で、第2のデバイス基板上に積層する工程
を含む電子デバイスの形成方法に関する。
【0019】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下の詳細な説明において説明される。上記概要は、本明細書に記載された特許請求の範囲によってのみ規定されるクレームされた主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、硬化したシリコーン感圧接着剤フィルムのRDA温度掃引(歪み<30%、10rad/sでの温度対モジュラス曲線)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本明細書に引用される全ての文献は、参照することにより、その全体が組み込まれる。
【0022】
パーセントは、他に明示的に記載しない限り、成分の総重量を基準にした乾燥固体重量%を意味する。
【0023】
本明細書で使用される「オリゴマー」は、少なくとも2つのモノマー単位からなるがポリマーの単位数より少ない分子複合体である。
【0024】
本明細書で使用される「ポリマー」は、約15モノマー単位を超えるモノマー単位からなる分子複合体である。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「光学的に透明」または「光学的透明度」は、500nmでASTM E903に従って測定された90%以上のフィルムの透過率を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、互換的に使用される用語「光学的に透明な接着剤」および「OCA」は、光学的透明性を有する接着剤を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「デバイス」および「電子デバイス」は、交換可能に使用され、カバー前面シートと基板裏面シートとの間に回路または活性層のような様々な構成要素を有し、電子の流れを操作することによって動作する物品を指し、例えば、フレキシブルおよび折り畳み可能なディスプレイ、屋外ディスプレイ、LCDディスプレイ、LEDディスプレイなどのディスプレイ;ディフューザー;剛性補償器;ヒーター;柔軟な偏光子;タッチスクリーン;フレキシブル薄膜太陽電池;携帯電話;タブレットPC;テレビ;ノートPC;デジタルカメラ;フォトフレーム;カーナビゲーション等が挙げられる。
【0028】
本明細書で使用される場合、交換可能に使用される「フィルム」、「テープ」および「封入剤」という用語は、構成要素および/または基板を装置に一緒に接着する自立型の接着剤を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「反応性」は、酸または塩基触媒の存在下で加水分解する分子の能力を指す。
【0030】
本明細書で使用する場合、交換可能に使用される「感圧接着剤」または「PSA」という用語は、僅かな圧力をかけてほとんどの基材に瞬間的に付着し、永続的に粘着性のままである粘弾性材料を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、交換可能に使用される「ポリジメチルシロキサン」または「PDMS」という用語は、ジメチル置換ポリシロキサンを指す。
【0032】
本明細書中で交換可能に使用される用語「(メタ)アクリレート官能化ポリジメチルシロキサン」、「(メタ)アクリレート官能化PDMS」または「PDMS-DA」は、α,ω-末端キャップアクリレート官能基を含むジメチル置換ポリシロキサンを指す。
【0033】
本発明は、光学的に透明で硬化性のシリコーン系感圧接着剤組成物を提供する。硬化性シリコーン感圧接着剤組成物は、(a)約10~約98%の反応生成物、(b)約1~約45%の(メタ)アクリレート官能化ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー、(c) 約1~45%のシリコーン樹脂またはポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー、および(d)約0.001~約5%のラジカル開始剤を含む。反応生成物(a)は、(i)官能基でα,ω-エンドキャップされたポリジメチルシロキサンポリマーである反応性ポリジメチルシロキサンポリマー、(ii)反応性シリコーン樹脂、(iii)pKa値が-6以下または15以上である酸または塩基触媒を含む。硬化した接着剤は、ASTM E903に従って500nmで測定して90%より大きい透過率を有する。異なる実施形態において、光学的に透明で硬化性のシリコーン系感圧接着剤組成物は、(a)約95~約99.999%の(i)反応性ポリジメチルシロキサンポリマー、(ii)反応性シリコーン樹脂、(iii)(メタ)アクリレートおよびメトキシル官能化ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー、および(iv)pKa値が-6以下または15以上である酸または塩基触媒の、有機溶媒中の反応生成物;(b)約0.001~約5%のラジカル開始剤;(c)任意に、45%までのシリコーン樹脂またはポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーを含む。硬化した接着剤は、ASTM E903に従って500nmで測定した透過率が90%より大きい。
【0034】
反応性ポリジメチルシロキサンと反応性シリコーン樹脂との間の反応は、ポリジメチルシロキサンのα,ω-末端キャップ部位および官能化シリコーン樹脂部位で、触媒の存在下で有機溶媒中で起こる。反応性ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーと反応性シリコーンとの比は、1:9~9:1の範囲である。反応生成物は、ポリジメチルシロキサンとシリコーン樹脂との間の軽度に共有結合的に架橋したネットワークであり、このネットワークは有機溶媒に可溶性のままである。
【0035】
反応性α,ω-エンドキャップポリジメチルシロキサンの重量平均分子量(Mw)は、約100~約1,000,000g/mol、好ましくは約400~約350,000g/molである。反応性ポリジメチルシロキサンポリマーは、好ましくは、ヒドロキシル基および/またはアルコキシ基などの反応性基でエンドキャップされている。ジオルガノシロキサンポリマーのような他のα,ω-エンドキャップポリジメチルシロキサンを使用することができる。他のジオルガノ置換基としては、例えば、メチルビニル、メチルフェニル、ジフェニル、メチルエチル、および3,3,3-トリフルオロプロピルメチルが挙げられる。好ましい実施形態では、ジオルガノ置換基はすべてジメチル置換基(PDMS)である。
【0036】
反応性シリコーン樹脂は、かご状Si-O-Si化学構造中に、R3SiO1/2(Mユニット)、R2SiO2/2(Dユニット)、RSiO3/2(Tユニット)および/またはSiO4/2(Qユニット)の組み合わせを含むシリコーンポリマーのネットワークである。これは、米国特許第2676182号、米国特許第2814601号の手順に従って作製することができ、様々な商業的供給源からも得られる。好ましい官能化シリコーン樹脂は、MユニットとQユニットの両方を有するシリコーン樹脂であり、MQ樹脂としても知られている。本発明における有用な反応性MQシリコーン樹脂としては、0.05~5重量%のシリコーン結合ヒドロキシル基を含有し、さらにモル比で各Qに対して0.5~1.5のMユニットのMユニットおよびQユニットを含むシリコーン樹脂が挙げられる。MQ樹脂は、トルエン、キシレン、ヘプタンなどに可溶である。MQ樹脂中のMユニットの好ましいR基は、メチルおよびヒドロキシルである。SiO4/2(Qユニット)とR3SiO1/2(Mユニット)のモル比は、1:2~2:1の範囲である。1つの好ましいR基はヒドロキシル基とメチル基の組み合わせであり、各Si-Meに対して0.001~1のSi-OHを有する。好ましいMQ樹脂は、官能化シリコーン樹脂の重量平均分子量が約500~約200,000g/molである。
【0037】
有用な触媒は、任意の酸または塩基、およびそれらの混合物であり得る。好ましい触媒は、炭化水素溶媒中で-6以下または15以上のpKa値を有する。好ましい触媒の例は、KOH、NaOH、LiOH、有機リチウム試薬、グリニャール試薬、メタンスルホン酸、硫酸、およびそれらの混合物である。触媒の他の例としては、スズ、チタン、アルミニウム、ビスマスなどの金属の有機金属塩が挙げられる。上記の2種以上のタイプの触媒の組み合わせも使用することができる。
【0038】
非硬化性シリコーン生成物を形成する反応は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ケトン、アセテート、水およびそれらの混合物から選択される有機溶媒または共溶媒中で行われる。好ましい溶媒としては、キシレン、トルエン、ヘプタン、テトラヒドロフラン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
反応性PDMSポリマーと反応性MQシリコーン樹脂との反応は、室温または高温または約160℃以下の温度で起こり得る。好ましい温度は60~150℃の範囲である。典型的には、反応は約1~約24時間である。加熱は、T-剥離接着またはモジュラスのような所望の物理的性質が反応生成物について達成されるまで続けることができる。反応の固形分は約20~80%であり、溶媒の添加または除去によって調整することができる。
【0040】
次いで、約10~約98%の上記反応生成物を残りの成分と合わせて、光学的に透明な感圧接着剤を形成する。1つの成分は、フリーラジカル反応性官能基を含有するポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーである。好ましくは、官能性PDMS(i)は、約400~約350,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有し、(ii)ポリマーまたはオリゴマー鎖あたり少なくとも1つのフリーラジカル反応性官能基を含む。1つの好ましい官能性PDMSは、(メタ)アクリレート官能化PDMSポリマーまたはオリゴマーである。好ましくは、約1~約45%の(メタ)アクリレート官能化PDMSポリマーまたはオリゴマーを反応生成物に添加して硬化性シリコーン感圧接着剤組成物を形成する。
【0041】
PDMSポリマーまたはオリゴマーのための官能基は、好ましくは、末端メタクリレート、ペンダントメタクリレート、末端アクリレート、および/またはペンダントアクリレートから選択される。シロキサン(メタ)アクリルオリゴマーまたはマクロマーの例としては、ポリジメチルシロキサンモノ(メタ)アクリレート、例えばトリアルコキシシリル(メタ)アクリレート、ジアルコキシシリル(メタ)アクリレートまたはメタクリレートが含まれる。好ましいシロキサン(メタ)アクリルマクロマーは、トリメトキシシリルおよびジメトキシメチルシリル官能性PDMS-アクリレートまたはメタクリレートである。シロキサン(メタ)アクリルマクロマーは、(メタ)アクリルモノマーの全重量に基づいて0.2~50重量%の含有量である。ポリシロキサン含有(メタ)アクリルマクロマーの量は、典型的にはアクリルポリマーの0.2~50重量%、より好ましくは1~15重量%の量で使用される。例示的な官能性PDMSポリマーまたはオリゴマーとしては、限定されないが、Gelest社などからのジ(メタ)アクリル化-ポリジメチルシロキサン、シルセスキオキサン(Silquiloxane)、シランモノマーなどが挙げられる。特に好ましい官能性PDMSは、米国特許第5300608号に記載されているように、Henkel Corporationによって製造されたメタクリルオキシプロピルジメトキシ末端PDMSである。
【0042】
反応性官能性PDMS中の官能基として有利に使用できる他のアクリルポリマーは、末端キャップアルコキシシリル官能基またはポリシロキサンブロックまたはグラフトコポリマーを含むアクリルポリマーである。末端キャップアルコキシシリル官能基の例は、トリアルコキシシリル、ジアルコキシシリル官能基である。好ましい末端キャップアルコキシシリル官能基は、トリメトキシシリル、ジメトキシメチルシリル、トリエトキシシリルおよび/またはジエトキシメチルシリル官能基である。そのようなポリマーの例は、KanekaのMS-ポリマーである。ブロックコポリマーも有用である。ポリシロキサンブロックコポリマーの例は、ポリジメチルシロキサン-アクリルブロックコポリマーである。シロキサンブロックの好ましい量は、ブロックポリマー全体の10~50重量%である。
【0043】
光学的に透明な感圧接着剤は、シリコーン樹脂またはポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーをさらに含む。シリコーン樹脂またはポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーは、約1~約45%のレベルで存在する。
【0044】
シリコーン樹脂は、(メタ)アクリレート官能化PDMSとシリコーン樹脂との間の反応生成物の形成において上述したように使用されたものと同じMQ樹脂であってもよい。他の好ましいシリコーンMQ樹脂は、Mユニット中に、ビニル、フェニル、(メタ)アクリルオキシ、およびそれらの混合物を含む。シリコーンMQ樹脂はまた、シリコーン樹脂中のSi-OHの量を減少させるために、Me3SiOSiMe3、 ViMe2SiOSiMe2Vi、 MeViPhSiOSiPhViMe、Me3SiNHSiMe3またはトリオルガノシラン、例えば Me3SiCl、Me2ViSiClまたはMeViPhSiClで、さらに処理することができる。SiO4/2(Qユニット)とR3SiO1/2(Mユニット)のモル比は、1:2~2:1の範囲である。好ましいシリコーン樹脂は、官能化シリコーン樹脂の重量平均分子量が約500~200,000g/molである。硬化性シリコーン感圧接着剤組成物は、約1~約45%のシリコーン樹脂を含む。
【0045】
ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーは、PDMSとシリコーン樹脂または非反応性PDMSポリマーまたはオリゴマーとの間で反応生成物を形成するために先に記載したものと同じPDMSであってもよい。他の好ましいポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーは、接着性を改善または二重硬化特性を有するために、メチル、ビニル、エポキシ、アルコキシル末端キャップ基を含有する。さらに他の好ましいポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーは、ポリジメチルシロキサンとポリイミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールとのブロックコポリマーであり、硬化性接着剤と相溶性であり、種々の基材に対する接着性を提供する。一実施形態では、PDMSポリマーまたはオリゴマーは、メチル、ヒドロキシル、ヒドリド、ビニル、(メタ)アクリルオキシ基でα,ω-エンドキャップされている。ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーは、約400~350,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0046】
感圧接着剤は、フリーラジカルを生成し、放射線硬化または熱硬化によって接着剤を硬化させるラジカル開始剤をさらに含む。本明細書における放射線硬化という用語は、化学線照射による接着剤の硬化性部分の架橋、強化、硬化または加硫を指す。化学線は、電子線硬化を含む材料の化学変化を誘発する電磁放射線である。ほとんどの場合、そのような放射線は紫外線(UV)または可視光である。放射線硬化の開始は、適切な光開始剤の添加によって達成される。接着剤の硬化は、紫外線(UV)または可視光線への直接露光によって、またはポリエステル、ポリカーボネート、ガラスなどで作られた透明カバーシートを介した間接露光によって達成される。
【0047】
放射線硬化性接着剤のための光開始剤の選択は、放射線硬化および熱硬化の分野の当業者によく知られており、接着剤が使用される特定の用途に大きく依存する。光開始剤は、UV切断可能な光開始剤であり、1種以上の光開始剤および任意に1種以上の光増感剤を含んでよい。1つ以上の光開始剤および光増感剤を含むラジカル光重合開始系は、Fouassier、J-P.、Photoinitiation、Photopolymerization and Photocuring Fundamentals and Applications 1995、Hanser /Gardner Publications、Inc.、New York, NYから見つけることができる。適切なラジカル光開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンおよび1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンのようなアセトフェノン誘導体;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドのようなアシルホスフィンオキシド誘導体;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル誘導体等のようなタイプI型アルファ開裂開始剤が挙げられる。タイプIIの光開始剤も硬化性接着剤に適しており、ベンゾフェノン、イソプロピルチオキサントン、およびアントロキノンが挙げられる。前述の化合物の多くの置換誘導体も使用することができる。
【0048】
適切な光開始剤は、接着剤中の樹脂および他の添加剤の光吸収スペクトルとは異なる光吸収スペクトルを示すものである。光開始剤の量は、典型的には、接着剤の総重量の100重量部を基準にして、約0.001~約10重量部、好ましくは約0.01~約1重量部の範囲である。
【0049】
一実施形態では、接着剤は、光学透明カバーシートまたは前面シートを介して硬化され、光開始剤は、カバーまたは基材シートが透明である波長の放射線を吸収することができなければならない。例えば、接着剤がソーダライムガラスカバープレートを介して硬化される場合、光開始剤は320nmを超える有意なUV吸光度を有さなければならない。320nm未満のUV線は、ソーダライムガラスカバープレートによって吸収され、接着フィルム中の光開始剤に到達することができない。この例では、光開始剤へのエネルギーの移動を増大させるために、赤色シフト光開始剤、または光開始系として光開始剤に光増感剤を含めることが有益である。400nm以下のカットオフ吸光度を有するPETフィルムを介して接着剤を硬化させる場合、光開始剤は400nm以上のUV吸光を有さなければならない。そのような光開始剤の例には、BASFから市販されているIRGACURE(商標)819、IRGACURE(商標)2022、LUCIRIN(商標)TPO、LUCIRIN(商標)TPO-Lが含まれるが、これらに限定されない。UV放射の範囲は、必要に応じて変更することができ、そのような変更は、当業者の専門知識の範囲内である。
【0050】
本明細書における「熱硬化」という用語は、オーブン中の熱、赤外線(IR)、近IRまたはマイクロ波に曝すことによって接着剤の硬化可能部分を強化、硬化または加硫することを指す。熱硬化温度は50~200℃、好ましくは60~100℃である。熱硬化の開始は、適切な熱ラジカル開始剤の添加によって達成される。
【0051】
熱硬化のためのラジカル開始剤としては、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロドデカン、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシンおよびクメンヒドロペルオキシドが挙げられる。熱硬化のための開始剤の量は、典型的には接着剤の総重量の100部に対して約0.001~約10部の範囲である。
【0052】
一実施形態では、熱硬化開始剤は、望ましくは中程度の開始温度を提供するように選択されるが、それは早すぎる架橋を防止するのに十分高いが、電子デバイスが過度に高い温度に曝されるのを防ぐのに十分低い温度である。過度に高い温度は、デバイス内の反応性有機成分を劣化させる可能性がある。適切な市販のフリーラジカル熱開始剤の例として、United Initiatorsから入手できるLUPEROX TBEC、Akzo Nobel Polymer Chemicalsから入手できるTRIGONOX 101およびTRIGONOX 201、Arkemaから入手できるLUPEROX 101およびLUPEROX 231、GEO Specialty Chemicalsから入手できるDICUP、2,5,-ジメチル-2,5 ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3(Arkemaから LUPEROX 130の商品名、Akzo Nobel Polymer Chemicalsから入手可能なTRIGONOX 145の商品目で入手可能なもの);ジ-Tert-ブチルペルオキシド(Akzo Nobel Polymer ChemicalsからTRIGONOX Bの商品名で入手可能なものなど)が挙げられる。これらのフリーラジカル開始剤の典型的な硬化温度は、典型的には約80~約150℃の範囲であるが、より速い硬化のために温度を上昇させることができる。
【0053】
必要に応じて、本発明の硬化性接着剤に無機充填剤および乾燥剤をさらに添加してもよい。無機充填剤は、接着剤の凝集力、レオロジー、および水分および酸素バリヤー特性を改善するために使用することができる。代表的な充填剤には、粉砕石英、溶融シリカ、非晶質シリカ、タルク、ガラスビーズ、グラファイト、カーボンブラック、アルミナ、金属粉末、粘土、グラフェン、ナノ粘土、マイカ、窒化アルミニウム、および窒化ホウ素が含まれる。乾燥剤を、接着剤の防湿特性を改善するために、本発明の硬化性接着剤に添加してもよい。そのような乾燥剤の代表的なリストを、Dean、J.Lange’s Handbook of Chemistry、1999、McGraw Hill、Inc.、New York、NY、pp11.5に見いだすことができる。一般に、適切な乾燥剤としては、CaO、BaO、MgOなどの金属酸化物;他の酸化物、例えばSiO2、P2O5、Al2O3;金属水素化物、例えばCaH2、NaH、LiAlH4; CaSO4、Na2SO4、MgSO4、CaCO3、K2CO3、CaCl2などの金属塩;粉末状ゼオライト、例えば4Aおよび3Aモレキュラーシーブ; Ba(ClO4)2、Mg(ClO4)2などの金属過塩素酸塩;軽度に架橋されたポリ(アクリル酸)のような超吸収性ポリマー;カルシウムのような水と反応する金属が挙げられる。乾燥剤は、水および/または水蒸気と反応し、吸収し、または吸着することができる。
【0054】
必要に応じて、本発明の硬化性接着剤に、さらに、滑剤、加水分解性ポリマーおよび/またはオリゴマー接着促進剤を添加してもよい。有用なシラン接着促進剤の例としては、C3~C24アルキルトリアルコキシシラン、(メタ)アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリスメトキシエトキシシラン、ビニルベンジルプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリアルコキシシランなどが挙げられる。しかし、活性有機成分に反応して分解するシラン接着促進剤は、電子デバイス用の接着剤に添加してはならない。有用な官能性ポリマーおよび/またはオリゴマー接着促進剤の例としては、限定されないが、加水分解性PDMSポリマーまたはオリゴマー、例えばトリアルコキシシリル(メタ)アクリレート、ジアルコキシシリル(メタ)アクリレートまたはメタクリレート基でエンドキャップされたPDMS、を挙げることができる。接着促進剤は、典型的には、硬化性シリコーンPSA全体の0.2~40重量%、より好ましくは1~20重量%の量で使用される。特に好ましいポリマーおよび/またはオリゴマー接着促進剤は、米国特許第5300608号明細書によるHenkel Corporation製のメタクリロキシプロピルジメトキシ末端PDMSである。しばしば、当該技術分野で知られているように、より良好な結果のために、触媒は、接着促進剤と共に、典型的には硬化性シリコーンPSA全体の0.001~5重量%の量で存在する。有用なこのような触媒の例には、アミン、接着促進触媒およびスズ触媒、例えばジブチルスズジラウレートが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
別の実施形態では、(i)反応性ポリジメチルシロキサンポリマー対(ii)反応性シリコーン樹脂対(iii)(メタ)アクリレートおよび/またはメトキシル官能化ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーの比は、1~8対1~8対1~8である。
【0056】
本発明の接着剤溶液は、約20~40℃で約100~約100,000cps、好ましくは25~30℃で約1,000~約10,000cpsの範囲のブルックフィールド粘度範囲を有する。そのような粘度範囲は、接着剤が周囲温度で15~250μmの厚さのフィルムにコーティング可能であることを可能にする。粘度は20%~80%の固形分%で調節可能である。接着剤溶液は、実験室で溶液フィルムアプリケータを使用してラボテスト用のPSAフィルムにコーティングすることができる。コーティング手順は、当業者に周知である。PSAフィルムは、D-バルブ(Fusion Systems)を用いてUVA&Vの1-5J/cm2の照射量でさらにUV硬化させることができるか、または 80℃超の30分間加熱で熱硬化させることができる。
【0057】
PSA接着フィルムは、UVまたは熱硬化後に、特に-40~80℃の温度範囲において、低いモジュラスを有する。低弾性率は、接着剤が柔らかく、粗い基材の空隙を埋めるように容易に濡らすことができることを示す。低モジュラスのために、接着フィルムは、ディスプレイ装置の性能を著しく改善しながら、電子ディスプレイ装置、例えばLCDにムラをもたらすこともない。光学的に透明な接着フィルムが、硬化後に広い温度範囲で柔らかい場合、ムラを最小限に抑えることができる。弾性率の測定は、当業者に周知である。この文献に記録された弾性率値は、光レオメトリー(photorheometry)またはRDAを用いて測定された。硬化した接着剤の弾性せん断弾性率(G’)は、硬化後に、20℃および10rad/sにおいて、1.0×107dyn/cm2未満であることが好ましい。
【0058】
硬化したシリコーン感圧接着剤組成物は、約30~約80重量%の固形分含量で、有機溶媒中に存在する。好ましい有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランが挙げられる。
【0059】
硬化した接着フィルムは、基材に対して良好な剥離強度を有さなければならない。フレキシブル電子デバイスが曲げられた場合において、または剛性デバイスが垂直位置に長期間置かれた場合において、接着層と基板との間の剥離を避けるために、剥離接着力およびソフトな弾性率のバランスが重要である。T-剥離接着試験は、当業者に周知の測定値であるASTM D1876に従い、インストロン(Instron)で行った。T-剥離試験ASTM D1876は、2つの結合したフレキシブルな接着体を、徐々に分離するのに必要とされる力を評価する。接着剤の硬化、接着剤の厚さ、接着体およびコンディショニングのような試験片の調製の変動は、プロセスおよび用途における最適化のための洞察を提供する。本発明の硬化シリコーンPSAは、好ましくは、PET基材の間で15オンス/インチ超のT-剥離接着性を有する。
【0060】
180剥離接着は、PSTC101またはISO8510またはASTM D3330のいずれかに従って、当業者に周知の測定値に従ってInstronで実施することができる。本発明の硬化シリコーンPSAフィルムは、PETとステンレス鋼パネルとの間で、 25オンス/インチ超の180剥離接着性を有することが好ましい。
【0061】
硬化したPSAフィルムの光学特性(T%、ヘイズ%およびイエローインデックスb*)は、ASTM E903およびASTM D1003に従って、AgilentのCary 300を用いて測定することができる。硬化シリコーン接着フィルムが、ガラススライド間、500-900nm範囲に渡って、少なくとも90%、好ましくは> 99%の光透過率を示し、そしてヘイズおよび黄色度b*が1%未満の場合、接着剤は光学的に透明であると考えられる。
【0062】
一実施形態では、硬化性シリコーンPSA溶液は、まず、(i)反応性α,ω-末端キャップポリジメチルシロキサンポリマー、(ii)官能化シリコーン樹脂、および(iii)酸触媒または塩基触媒の反応生成物を有機溶媒中で、可溶性かつ非硬化性のシリコーン架橋ネットワークを形成するために調製し;次いで反応生成物を、(iv)5~45%の(メタ)アクリレート末端ポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマー;(v)5~45%のシリコーン樹脂;(vi)0.001~5%のラジカル開始剤;および(vii)任意に、0~45%のポリジメチルシロキサンポリマーまたはオリゴマーと混合することで製造される。
【0063】
接着剤は、接着剤溶液をコーティングとして剥離ライナー上に、規定されたグラム重量/平方メートル(GPSM)で塗布し、溶剤を空気またはオーブン中で高温で蒸発させることにより、PSAフィルムとして形成することができる。第2の剥離ライナーは、実質的に溶媒を含まないPSAフィルム上に適用し、2つの剥離ライナーの間に積層PSAフィルムを形成する。例示的な剥離ライナーとしては、PETフィルム、フルオロシリコーン剥離コーティングを有するクラフト紙が挙げられる。
【0064】
硬化性シリコーンPSAフィルムは、UV硬化性光学的透明フィルム(UVOCA)、または熱硬化性光学的透明フィルム(HOCA)と呼ばれる未硬化フィルムとして供給することができる。さらに、硬化性シリコーンPSAフィルムは、光学的に透明なフィルム(OCA)と呼ばれるように、完全に硬化したフィルムとして提供することができる。推奨される硬化条件は、UVの照射量1~5J/cm2、または 80℃を超える加熱のいずれかである。シリコーンPSAフィルムは、ストレス下での出荷および保管温度に耐えることができる。このPSAフィルムは、-40℃以下で感圧性を維持し、貯蔵時に最小またはゼロのコールドフローを維持する。シートおよびロールは、その後、所望のサイズおよび形状にダイカットすることができる。
【0065】
本発明のシリコーンPSAフィルムを利用する電子デバイスは、様々な方法で組み立てられる。一実施形態では、PSAフィルムは、上述のように2つの剥離ライナー基板の間に配置され、1つの剥離ライナーが除去される。露出した接着フィルムは、装置の前面カバーシートまたは背面基板のいずれかに積層される。その後、他方の剥離ライナーがPSAフィルムから除去され、露出した接着剤表面が残りのフロントシートまたは基材に積層される。ラミネーションを強化して、空隙または捕捉空気を回避するために、ゴムローラーラミネーター、オートクレーブ内で加圧下、熱および/または真空によるラミネーションプロセスを使用してもよい。もしPSAフィルムが、UVOCAまたはHOCAの形態のように硬化しない場合、積層デバイスをUV照射または加熱による硬化に曝してPSAフィルムを架橋させ、フロントカバーシートを背面基板にしっかりと接着させるべきである。
【0066】
別の実施形態では、接着フィルムは、前面カバーシートと背面基板の両方に同時に積層される。約40℃から約150℃の範囲の温度で加熱する。ラミネーションを強化し、層間の閉じ込められた空気(空隙)を除去するために、真空および/または圧力を加えることができる。好ましくは、電子装置内の有機活性成分が120℃以上の温度で分解する可能性があるため、積層温度は約110℃未満であり、用途によっては約80℃未満であることが好ましい。もしPSAフィルムが、UVOCAまたはHOCAの形態のように硬化しない場合、積層デバイスをUV照射または加熱による硬化に曝してPSAフィルムを架橋させ、フロントカバーシートを背面基板にしっかりと接着させるべきである。
【0067】
UV硬化は、接着フィルムを約280~約700nmの波長を有するUV光源に約1-5J/cm2の照射量で曝すことによって完了する。熱硬化は、約80℃以上、好ましくは120℃以上の温度で一定時間加熱することにより完了する。
【0068】
別の実施形態では、接着剤を最初に硬化させ、次いでフロントカバーシートおよび背面基板上に積層する。硬化した感圧接着剤フィルムはまだ十分なタックおよび掴みを有し、基材に接着する。
【0069】
さらに別の実施形態では、本発明の接着フィルムは、装置内で、単層であっても多層であってもよい。単層フィルムとは、本発明において記載された接着剤が、カバーと基材とを接着するための唯一のフィルムであるものを指す。多層形態の場合、層の少なくとも1つは本発明に記載の接着剤であり、デバイスは他の適切な基材またはポリマー材料{例えば、α-オレフィンとα,β-エチレン性不飽和カルボン酸とのコポリマー(すなわち、酸コポリマー)、部分的に中和されたイオン酸コポリマー(すなわちアイオノマー)、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアセタール(音響グレードのポリビニルアセタールを含む)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(例えば線状低密度ポリエチレン)、ポリオレフィンブロックコポリマーエラストマー、α-オレフィンとα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステルとのコポリマー(例えば、エチレンメチルアクリレートコポリマーおよびエチレンブチルアクリレートコポリマー)、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂、およびそれらの組み合わせ}で構成された他の層を含んでいてもよい。
【0070】
本発明の硬化性接着剤は、光学的透明度および/または接触感覚を必要とする表示装置に有用である。
【0071】
一実施形態では、本明細書に記載の硬化性接着剤は、光学アセンブリを接着するための光学的に透明な接着剤(OCA)または紫外線硬化可能な光学的に透明な接着剤(UVOCA)フィルムとして有用である。用語OCAおよびUVOCAは、当該技術分野において十分に確立されている。OCAおよびUVOCAフィルムは、カバーレンズ、プラスチックまたは他の光学材料をディスプレイモジュール基板に接着する。OCAおよびUVOCAは、一般に、ムラの最小化を含む、装置の光学特性を改善し、耐久性およびプロセス効率を改善するために使用される。OCAやUVOCAの主な用途には、静電容量式タッチパネル、LED/OLEDテレビなどがある。
【0072】
1つの特定の実施形態において、本発明の硬化性シリコーンPSAフィルムは、折り畳みおよび折り曲げ曲率に対する抵抗を必要とするフレキシブルおよび折り畳み可能な表示装置用のOCAまたはUVOCAとして特に有用である。
【0073】
本発明のOCAまたはUVOCAフィルムを、LCD、LED、タッチパネルディスプレイデバイスのカバーレンズとディスプレイモジュール基板との間に組み込むには、いくつかの方法がある。本発明のOCAまたはUVOCAフィルムは、カバーレンズに適用されることが好ましい。OCAまたはUVOCAフィルムは、典型的には2つの剥離ライナーの間で保護され、第1のライナーは薄く(25~50μm)、取り除きやすく、他方はより厚く(75~100μm)、より高い剥離力を有する。第1のライナーが除去された後のOCAまたはUVOCAフィルムは、ゴムロールによって一方向にプレスおよびラミネートすることによってカバーレンズ上に適用される。その後、第2の剥離ライナーを除去し、好ましくは真空(<0.1MPa)および/またはオートクレーブ(<0.5MPa)下で、接着フィルムの露出面をディスプレイモジュール基板に積層する。気泡のない結合のためには、真空状態が好ましい。加熱を、好ましくは約40~約80℃の範囲で適用してもよい。
【0074】
本発明のUVOCAは、200nm~700nm、好ましくは450nm~500nmの範囲の波長を含む電磁放射線への曝露によって上部基板を通して硬化される。硬化度は、対応する配合化学に特有の吸収ピークにおけるIR吸収の減少を測定することによって決定することができる。これは、当業者に十分に確立されている。UV照射は、Fusion UV Systemsから入手可能なもののような連続的な高輝度発光システムで供給することができる。紫外線硬化にはメタルハライドランプ、LEDランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプなどを使用することができ、エネルギー範囲は約1~約5J/cm2である。
【0075】
好ましい実施形態では、上部基板はガラスまたはポリマーフィルム、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリイミドフィルムおよび/またはトリアセテートセルロース(TAC)を含むプラスチックフィルムから選択される。別の好ましい実施形態では、上部基板は、リフレクタ、カバーレンズ、タッチパネル、リターダフィルム、リターダガラス、LCD、レンチキュラレンズ、ミラー、防眩または反射防止フィルム、アンチスプリントフィルム、ディフューザまたは電磁気干渉フィルタである。たとえば、3Dテレビアプリケーションでは、ガラスまたはフィルムリターダがパッシブ3D TVのLCDにボンディングされるか、またはTN LCDまたはレンチキュラーレンズが肉眼3D用の通常のTFT LCDにボンディングされる。ベース基板は、上部に偏光フィルムを有するLCDモジュールである。ベース基板は、好ましくは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、電気泳動ディスプレイ、および陰極線管ディスプレイから選択されるディスプレイパネルであることができる。
【0076】
さらに別の実施形態では、ディスプレイパネルはタッチ機能を有する。本発明の接着剤および本発明の塗布プロセスは、任意のタッチパネルセンサアセンブリに使用することができる。本発明の接着剤は、インジウム-スズ-酸化物被覆ガラスの2つの層を必要とするタッチパネルセンサを接合するために使用することができる。接着剤は、カバーレンズ接着、特に透明プラスチックポリメチル(メタ)アクリレートのようなカバーレンズとガラスタッチパネルセンサを利用するタッチパネルセンサのエアギャップを充填するために使用することができる。接着剤は、カバーレンズをLCDモジュールに直接接合するために使用することができる。別の実施形態では、本発明は、層の間に本発明のOCAまたはUVOCAを有するベース基板上に2つ以上の上部基板を次々と結合させる可能性を含む。
【0077】
一実施形態では、硬化性接着剤は、フレキシブル光電池モジュール/セル(本明細書では互換的に使用される)の封入剤として有用である。光起電力モジュールアセンブリは、光を電気エネルギーに変換することができる任意の物品または材料を含む。光電池を形成する際に、硬化性接着フィルムを含む封入シートまたはロールが、光電池モジュールアセンブリに積層される。封止材を含むフレキシブル光電池は、適切な太陽光または反射された太陽光が光電池に到達するように十分に透明で、その使用中に折り畳みおよび折り曲げ曲率に耐えることができなければならない。
【0078】
硬化性接着剤は再加工可能である。電子装置に欠陥が見つかった場合、フィルムはカバーシートまたは基板のいずれかから容易に除去することができる。接着フィルムは、単一の固体片として残るか、数片に壊れ、溶媒なしで、またはデバイス内の他の成分を傷つけることなく除去することができる。カバーシートおよび基板は、別の電子デバイスを形成するために別の接着フィルムで再使用することができる。
【0079】
当業者には明らかであるように、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多くの修正および変形を行うことができる。本明細書に記載された特定の実施形態は、単なる例としてのみ提供され、本発明は、添付の特許請求の範囲(特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲と共に)によってのみ限定される。
【実施例】
【0080】
Elastomer 50N(Mw 110000g/mol)は、Wackerから市販されているシリコーンポリマーである。
【0081】
PDMS-DAは、Henkelから市販されているメタクリルオキシプロピルジメトキシ末端ポリジメチルシロキサンである。
【0082】
MQは、Dow Corning社、Momentive社およびWacker社から市販品が入手可能なヒドロキシル官能性シリコーン樹脂(Mw約9000g/mol)である。
【0083】
ヘプタン、炭酸アンモニウム、n-ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M)(nBuLi)、水酸化カリウム(1.0N水溶液)はAldrichから市販されている。
【0084】
TPOは、BASFから市販されている光開始剤である。
【0085】
試験温度掃引試験:
温度掃引に対する弾性率(G’)、損失弾性率(G”)およびtanδを得るために、レオメトリックスダイナミックメカニカルアナライザー(Rheometrics Dynamic Mechanical Analyzer)(モデルRDA 700)を使用した。この機器は、Rhiosソフトウェアバージョン4.3.2によって制御された。直径8mmで約2mmのギャップで隔てられた平行板を使用した。試料を装填し、約-100℃に冷却し、時間プログラムを開始した。プログラムテストでは、5℃間隔で、各温度で10秒間の浸漬時間(soak time)を取って、温度を上昇させた。対流オーブンを窒素で連続的に通気した。周波数は10rad/sに維持した。試験開始時の初期ひずみは0.05%であった(プレートの外縁部で)。ソフトウエア内のオートストレインオプションを使用して、テスト中に正確に測定可能なトルクを維持した。このオプションは、ソフトウェアによって許容される最大の歪みが80%になるように構成されていた。オートストレインプログラムは、保証されていれば、以下の手順で各温度上昇時のひずみを調整した。トルクが200g-cm未満であった場合、歪みを、現在の値の25%だけ増加させた。トルクが1200g-cmを上回った場合、現在の値の25%だけ減少させた。200~1200g-cmのトルクでは、その温度上昇時に歪みを変化させなかった。せん断貯蔵弾性率(G’)およびせん断損失弾性率(G”)は、ソフトウェアによってトルクおよび歪みデータから計算される。それらの比、G”/G’{tanδ(タンデルタ)としても知られている}も計算した。tanδにおける最大を、軟質ブロックTgとした。弾性率および損失弾性率値が互いに等しくなる温度(G”=G’)を、流動温度として報告した。
【0086】
T-剥離試験:
T-剥離接着試験は、Instron Sintech 1/Dを用いて、ASTM D1876に従って実施した。手順は以下の通りであった:(1)接着剤フィルムを2枚の2~3ミルのPETフィルムの間に移す;(2)UVA&Vの1-5J/cm2の照射量でD-バルブ(Fusion Systems)を用いて積層接着剤をUV硬化させる;(3)試料を幅1.0インチ×長さ6~12インチの細長いストリップに切断する;(4)23℃、相対湿度50%の条件下で12時間養生する;(5)t-ピール試験片の各端部をインストロンの別々の試験グリップでクランプし、23℃および50%相対湿度でTピール接着試験を、ボンドラインの長さに12.0インチ/分の速度で行う。
【0087】
透過率試験:
ASTM E903およびASTM D1003に従って、AgilentのCary300分光光度計を用いて光学特性(T%、ヘイズ%および黄色度b*)を測定した。透過率の好ましい試験方法は次のとおりである:(1)イソプロパノールで3回拭き取った75mm×50mm平滑マイクロスライド(Dow Corning、Midland、MIから入手のガラススライド)上に接着剤の小さなフィルムを置く;(2)第2のガラススライドを力を掛けながら接着剤に付着する;(3)UVA&Vを1-5J/cm2でD-バルブ(Fusion Systems)により、接着剤を硬化させる;分光器で300~900nmの光透過率を測定する。
【0088】
例1:
ポリジメチルシロキサンポリマー(Wacker Elastomer 50N、15g)、ヒドロキシルMQ樹脂(33g)、(NH4)2CO3(0.3g)およびヘプタン(60g)の混合物を、60℃で2時間撹拌した。次いで、ゆっくりとN2パージを行いながら、反応混合物をヘプタンの還流まで2時間加熱した。生成物を室温まで冷却し、ガラス瓶に充填した。
【0089】
例2~6:
例2~6は、表1に示すように、追加の成分を例1に組み合わせることによって作製した。
【0090】
【0091】
表1に示すように、より多くのMQを添加すると、より高いT-剥離値およびより高いせん断弾性率G’値がもたらされた。
【0092】
例7:
ポリジメチルシロキサンポリマー(15g)、ヒドロキシルMQ樹脂(33g)およびヘプタン(60g)の混合物を還流下で2時間、N2ガスで覆いながら撹拌した。触媒nBuLi(0.3mL、ヘキサン中1.6M)を加え、混合物をさらに1時間混合した。反応混合物をCO2で1時間パージし、続いてN2で1時間パージした。生成物を室温まで冷却し、ガラス瓶に充填した。
【0093】
例8~15:
例8~15は、表2に示すように、例7に追加の成分を組み合わせることによって作製した。
【0094】
【0095】
n-ブチルリチウム反応からの生成物は、炭酸アンモニウム触媒で製造された接着剤と比較して、-40~80℃の温度範囲にわたってより高いT-剥離接着性およびより低い弾性率G’変化を有する。表3に示すように、より多くのMQを添加すると、より高いT-剥離およびより高いせん断弾性率G’がもたらされた。
【0096】
例13~14は、例7~12(
図1)と比較して、40~80℃の全温度範囲において、T-剥離接着性と低弾性率との良好なバランスを有する。他の機械的および光学的特性を表3に示す。例12および13の全RDA温度掃引試験を
図1に示す。
【0097】
【0098】
例16~17:
例16の反応部分の反応条件は例1と同様にした。例17の反応部分は、ポリジメチルシロキサンポリマー(Elastomer 50N、20g)、ヒドロキシルMQ樹脂(30g)、メタクリルオキシプロピルジメトキシ末端ポリジメチルシロキサン(10g)、KOH溶液(1.0N、0.05g)、及びヘプタン(50g)の混合物を調製し60℃で2時間攪拌して行った。反応混合物をCO2で1時間パージし、続いてN2で1時間パージした。TPO(0.05g)を加え、30分間混合した。生成物を室温まで冷却し、ガラス瓶に充填した。
【0099】
【0100】
例16は、80℃でのT-ピールおよびモジュラスが低い弱いフィルムであった。例17は、例14と同様のT-剥離を有したが、溶液中で1週間以内に貯蔵中にゲル化した。
【0101】
当業者には明らかであるように、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多くの修正および変形を行うことができる。本明細書に記載された特定の実施形態は、単なる例としてのみ提供され、本発明は、添付の特許請求の範囲(特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲と共に)によってのみ限定される。