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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】金属膜付き半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20221129BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20221129BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20221129BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 L
H01L21/78 B
H01L21/78 F
H01L21/78 W
B23K26/364
B23K26/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018209003
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020077709
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克彦
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-170333(JP,A)
【文献】特開2018-006462(JP,A)
【文献】特開2006-173153(JP,A)
【文献】特開2013-149900(JP,A)
【文献】特開2016-076694(JP,A)
【文献】特開2017-079291(JP,A)
【文献】特開2018-113294(JP,A)
【文献】特開2018-107408(JP,A)
【文献】特開2017-208529(JP,A)
【文献】特開2004-119468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/364
B23K 26/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属膜付き半導体デバイスの製造方法であって、
格子状に配置された複数の分割予定ラインで区画された各領域に半導体素子の電極が設けられた第1面と、該第1面と反対側の第2面とを有する被加工物の該第1面に切削ブレードを切り込ませ、該被加工物の仕上がり厚さを超える深さの切削溝を該分割予定ラインに沿って形成する切削溝形成ステップと、
該切削溝形成ステップの後、該被加工物の該第1面に保護部材を貼り付ける保護部材貼り付けステップと、
該保護部材を介して該被加工物をチャックテーブルで保持して該被加工物が仕上がり厚さになるまで該第2面側を研削することにより、該被加工物を複数の半導体デバイスに分割する研削ステップと、
該研削ステップの後、該第1面側に該保護部材が貼り付けられた該複数の半導体デバイスの各々の側面と研削後の該第2面側とに、金属膜を被覆する金属膜被覆ステップと、
該金属膜被覆ステップの後、該第1面側から該保護部材を除去する保護部材除去ステップと、
該切削溝形成ステップの前に該第1面側を保護膜で被覆する保護膜被覆ステップと、
該保護部材除去ステップの後に該保護膜を除去する保護膜除去ステップと、
を備え
該保護部材貼り付けステップにおいて該保護部材を該保護膜に密着させることを特徴とする金属膜付き半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
該保護膜被覆ステップの後且つ該切削溝形成ステップの前に、該保護膜が形成された該被加工物の該第1面側にレーザービームを照射し、該分割予定ラインに沿って該切削溝より太い幅のレーザー加工溝を形成するレーザー加工溝形成ステップを更に備えることを特徴とする請求項に記載の金属膜付き半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
該保護膜被覆ステップの後且つ該レーザー加工溝形成ステップの前に、該保護膜に対して吸収性を有する波長のレーザービームを該分割予定ラインに沿って該保護膜に照射することにより、該保護膜が該分割予定ラインに沿って該切削溝及び該レーザー加工溝のいずれよりも太い幅で除去された保護膜除去ラインを形成する保護膜除去ライン形成ステップを更に備えることを特徴とする請求項に記載の金属膜付き半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
該レーザー加工溝形成ステップ又は該切削溝形成ステップの後、且つ、該保護部材貼り付けステップの前に、該被加工物をエッチングガスで処理し、該レーザー加工溝及び該切削溝の少なくともいずれかに付着したデブリを除去するデブリ除去ステップを更に備える請求項又はに記載の金属膜付き半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
該金属膜被覆ステップの後且つ該保護部材除去ステップの前に、該複数の半導体デバイスにおける該金属膜が被覆された該第2面側に粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼り付けステップを更に備えることを特徴とする請求項1からのいずれか記載の金属膜付き半導体デバイスの製造方法。
【請求項6】
該保護部材貼り付けステップで貼り付ける該保護部材は、エキスパンド性を有する粘着テープであって、該研削ステップの後且つ該金属膜被覆ステップの前に、該保護部材を拡張して、個々の半導体デバイスの間隔を広げる拡張ステップを更に備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の金属膜付き半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部が金属膜で被覆された半導体デバイスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォン等の携帯無線通信機器では、高機能化、高性能化等のために、携帯無線通信機器の無線システムを構成するSAW(Surface Acoustic Wave)デバイスやアンテナエレメント等の電子部品の数が増加している。
【0003】
また、携帯無線通信機器の高機能化、高性能化等のために、携帯無線通信機器に搭載されるDRAM(Dynamic Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の各種半導体デバイスのデータ転送速度の更なる高速化も進められている。データ転送速度の高速化に伴い、各種半導体デバイスが発生する電磁波が無線システムに対してノイズとなり、無線システムに悪影響を及ぼすという問題がある。
【0004】
そこで、電磁波ノイズの影響を低減するべく、電磁波シールドとして機能する金属で半導体デバイスを覆うことが知られている。例えば、金属を有する熱可塑性樹脂の成形品のケース(例えば、特許文献1参照)や、金属板の蓋体及び導電性エラストマの壁部(例えば、特許文献2参照)で、半導体デバイスを覆うことで電磁波ノイズを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-44680号公報
【文献】特開2004-72051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、金属のケースや金属板の蓋体等を採用した場合には、電磁波シールドを実装するために必要な空間が比較的大きくなるので、携帯無線通信機器の小型化や薄型化の妨げとなる。本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、電磁波シールドを実装するために必要な空間を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、金属膜付き半導体デバイスの製造方法であって、格子状に配置された複数の分割予定ラインで区画された各領域に半導体素子の電極が設けられた第1面と、該第1面と反対側の第2面とを有する被加工物の該第1面に切削ブレードを切り込ませ、該被加工物の仕上がり厚さを超える深さの切削溝を該分割予定ラインに沿って形成する切削溝形成ステップと、該切削溝形成ステップの後、該被加工物の該第1面に保護部材を貼り付ける保護部材貼り付けステップと、該保護部材を介して該被加工物をチャックテーブルで保持して該被加工物が仕上がり厚さになるまで該第2面側を研削することにより、該被加工物を複数の半導体デバイスに分割する研削ステップと、該研削ステップの後、該第1面側に該保護部材が貼り付けられた該複数の半導体デバイスの各々の側面と研削後の該第2面側とに、金属膜を被覆する金属膜被覆ステップと、該金属膜被覆ステップの後、該第1面側から該保護部材を除去する保護部材除去ステップと、該切削溝形成ステップの前に該第1面側を保護膜で被覆する保護膜被覆ステップと、該保護部材除去ステップの後に該保護膜を除去する保護膜除去ステップと、を備え、該保護部材貼り付けステップにおいて該保護部材を該保護膜に密着させることを特徴とする金属膜付き半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0009】
また、好ましくは、金属膜付き半導体デバイスの製造方法は、該保護膜被覆ステップの後且つ該切削溝形成ステップの前に、該保護膜が形成された該被加工物の該第1面側にレーザービームを照射し、該分割予定ラインに沿って該切削溝より太い幅のレーザー加工溝を形成するレーザー加工溝形成ステップを更に備える。
【0010】
また、好ましくは、金属膜付き半導体デバイスの製造方法は、該保護膜被覆ステップの後且つ該レーザー加工溝形成ステップの前に、該保護膜に対して吸収性を有する波長のレーザービームを該分割予定ラインに沿って該保護膜に照射することにより、該保護膜が該分割予定ラインに沿って該切削溝及び該レーザー加工溝のいずれよりも太い幅で除去された保護膜除去ラインを形成する保護膜除去ライン形成ステップを更に備える。
【0011】
また、好ましくは、金属膜付き半導体デバイスの製造方法は、該レーザー加工溝形成ステップ又は該切削溝形成ステップの後、且つ、該保護部材貼り付けステップの前に、該被加工物をエッチングガスで処理し、該レーザー加工溝及び該切削溝の少なくともいずれかに付着したデブリを除去するデブリ除去ステップを更に備える。
【0012】
また、好ましくは、金属膜付き半導体デバイスの製造方法は、該金属膜被覆ステップの後且つ該保護部材除去ステップの前に、該複数の半導体デバイスにおける該金属膜が被覆された該第2面側に粘着テープを貼り付ける粘着テープ貼り付けステップを更に備える。
【0013】
また、好ましくは、該保護部材貼り付けステップで貼り付ける該保護部材は、エキスパンド性を有する粘着テープであって、金属膜付き半導体デバイスの製造方法は、該研削ステップの後且つ該金属膜被覆ステップの前に、該保護部材を拡張して、個々の半導体デバイスの間隔を広げる拡張ステップを更に備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る金属膜付き半導体デバイスの製造方法では、半導体デバイスの各々の側面と仕上がり厚さまで研削された第2面とに金属膜を被覆するので、金属製のケースや金属板の蓋体等を採用する場合に比べて、電磁波シールドを実装するために必要な空間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】被加工物の例を示す斜視図である。
図2図2(A)は、切削溝形成ステップ(S10)を示す図であり、図2(B)は、保護部材貼り付けステップ(S20)を示す図であり、図2(C)は、研削ステップ(S30)を示す図である。
図3図3(A)は、金属膜被覆ステップ(S40)を示す図であり、図3(B)は、粘着テープ貼り付けステップ(S50)を示す図であり、図3(C)は、保護部材除去ステップ(S60)を示す図である。
図4】第1実施形態に係る金属膜付き半導体デバイスの製造方法のフロー図である。
図5図5(A)は、保護膜被覆ステップ(S5)を示す図であり、図5(B)は、表面側に保護膜が形成されたウェーハの断面図であり、図5(C)は、切削溝形成ステップ(S10)を示す図である。
図6図6(A)は、保護部材貼り付けステップ(S20)を示す図であり、図6(B)は、研削ステップ(S30)を示す図であり、図6(C)は、金属膜被覆ステップ(S40)を示す図である。
図7図7(A)は、粘着テープ貼り付けステップ(S50)を示す図であり、図7(B)は、保護部材除去ステップ(S60)を示す図であり、図7(C)は、保護膜除去ステップ(S65)を示す図である。
図8】第2実施形態に係る金属膜付き半導体デバイスの製造方法のフロー図である。
図9図9(A)は、保護膜被覆ステップ(S5)を示す図であり、図9(B)は、レーザービームでウェーハの表面側を加工する様子を示す一部断面側面図である。
図10図10(A)は、レーザー加工溝を示す拡大図であり、図10(B)は、保護膜除去ラインを示す拡大図であり、図10(C)は、保護膜除去ライン形成ステップ(S7)後のレーザー加工溝形成ステップ(S8)で形成されたレーザー加工溝の拡大図である。
図11図11(A)は、デブリ除去ステップ(S9)を示す図であり、図11(B)は、切削溝形成ステップ(S10)を示す図である。
図12図12(A)は、保護部材貼り付けステップ(S20)を示す図であり、図12(B)は、研削ステップ(S30)を示す図である。
図13図13(A)は、金属膜被覆ステップ(S40)を示す図であり、図13(B)は、粘着テープ貼り付けステップ(S50)を示す図である。
図14】第3実施形態に係る金属膜付き半導体デバイスの製造方法のフロー図である。
図15図15(A)は、切削溝形成ステップ(S10)を示す図であり、図15(B)は、第2変形例に係るデブリ除去ステップ(S9)を示す図である。
図16図16(A)は、保護部材貼り付けステップ(S20)を示す図であり、図16(B)は、研削ステップ(S30)を示す図である。
図17図17(A)は、拡張ステップ(S35)を示す図であり、図17(B)は、金属膜被覆ステップ(S40)を示す図である。
図18】第4実施形態に係る金属膜付き半導体デバイスの製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、被加工物の例を示す斜視図である。本実施形態の被加工物は、円盤状のウェーハ11である。ウェーハ11は、主としてシリコン(Si)から成り、厚さが500μmから1000μm程度の円盤状に形成されている半導体基板11c(図2(A)参照)を有する。
【0017】
なお、半導体基板11cの材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)などから成るシリコン以外の半導体材料等を半導体基板11cとして用いることもできる。
【0018】
半導体基板11c上には、半導体基板11cよりも薄い円盤状の機能層15cが設けられている(図2(A)参照)。半導体基板11cの機能層15c側の領域と機能層15cとにより、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の半導体素子(不図示)が構成されている。
【0019】
機能層15cには、上述の半導体素子を構成する半導体基板11cの活性領域と電気的に接続している、半導体素子の電極15dが設けられている。更に、機能層15cは、複数の電極15d間の層間絶縁層として機能する低誘電率絶縁体層(いわゆる、Low-k材料層)15eを有する。なお、各電極15dの上端は、低誘電率絶縁体層15eから露出している。
【0020】
ところで、本実施形態では、機能層15c側のウェーハ11の面を表面(第1面)11aと称する。また、半導体基板11cの機能層15cとは反対側の面をウェーハ11の裏面(第2面)11bと称する。このように、表面11aと裏面11bとは互いにウェーハ11の反対側に位置している。
【0021】
ウェーハ11の表面11a側には、格子状に配置された複数の分割予定ライン(ストリート)13で区画された各領域に、上述の半導体素子を構成する半導体基板11cの活性領域と機能層15cとを含むデバイス領域15aが形成されている。
【0022】
デバイス領域15aの表面11aには、電極15dが露出しており、この電極15d上には、半田等の金属材料で球状に形成された複数のバンプ(突起電極)15bが配置されている。なお、デバイス領域15a及びバンプ15bの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等に制限はない。
【0023】
本実施形態では、ウェーハ11の表面11a側にバンプ15bが設けられているが、バンプ15bは設けられなくてもよい。また、被加工物は、表面11a側が封止樹脂でモールドされ、封止樹脂からバンプ15bが突出するよう配置されているいわゆるWL-CSP(Wafer Level Chip Size Package)であってもよい。また、被加工物は、複数のデバイスチップがモールド樹脂で封止された状態の樹脂パッケージ基板であってもよい。
【0024】
ウェーハ11は、表面11a側に、複数のデバイス領域15aが配置されたデバイス部と、このデバイス部を囲む外周余剰部とを有する。ウェーハ11の外周余剰部の外周端部には、結晶方位を示すノッチ11dが設けられている。なお、ノッチ11dの代わりに、オリエンテーションフラット等の他のマークが設けられてもよい。
【0025】
次に、図2図3及び図4を用いて、第1実施形態に係る金属膜付き半導体デバイス21の製造方法について説明する。第1実施形態では、まず、ウェーハ11に切削溝を形成する(切削溝形成ステップ(S10))。図2(A)は、切削溝形成ステップ(S10)を示す図である。
【0026】
第1実施形態では、切削装置(不図示)を用いて切削溝を形成する。切削装置は、ウェーハ11の裏面11b側を吸引して保持するチャックテーブル(不図示)を備える。チャックテーブルは、モータ等の回転機構(不図示)と連結されており、Z軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転できる。
【0027】
また、チャックテーブルの下方には、テーブル移動機構(不図示)が設けられており、チャックテーブルは、このテーブル移動機構によってX軸方向(加工送り方向)に移動できる。なお、X軸、Y軸(後述)及びZ軸は、直交座標系を構成している。
【0028】
チャックテーブルの保持面は、チャックテーブルの内部に形成された吸引路(不図示)等を介して吸引源(不図示)に接続されている。吸引源の負圧を保持面に作用させることで、ウェーハ11の裏面11b側がチャックテーブルで吸引保持される。
【0029】
切削装置は、ウェーハ11を切削するための切削ユニット(不図示)を更に備える。切削ユニットは、Y軸方向(割り出し送り方向)と略平行な回転軸となるスピンドル(不図示)を有する。
【0030】
スピンドルは、その一端側に連結されたモータ等の回転駆動源(不図示)により、回転する。また、スピンドルの回転駆動源とは反対側に位置する他端側には、円環状のブレードマウント(不図示)が回転可能な態様で一体的に固定されている。
【0031】
ブレードマウントを介してスピンドルには、いわゆるハブ型の切削ブレード20が装着されている。本実施形態の切削ブレード20は、円環状の基台(不図示)と、この基台の外周に設けられた円環状の切り刃22とを有する。切り刃22は、例えば、金属や樹脂等のボンド材(結合材)に、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒を混合して形成される。
【0032】
切削溝形成ステップ(S10)では、まず、ウェーハ11の裏面11b側にダイシングテープ(不図示)を貼り付けて、このダイシングテープを介してウェーハ11の裏面11b側をチャックテーブルの保持面に載置する。次いで、吸引源の負圧を作用させて、ウェーハ11の表面11a側が上方に露出した状態で、ウェーハ11をチャックテーブルで吸引保持する。
【0033】
そして、切削ブレード20を高速に回転させつつ切削ユニットをチャックテーブルに向けて降下させて、ウェーハ11の表面11a側に切削ブレード20を切り込ませる。但し、切削溝形成ステップ(S10)では、ウェーハ11を完全には切断しない。
【0034】
切削溝形成ステップ(S10)では、ウェーハ11の仕上がり厚さTを超え且つウェーハ11の裏面11bに達しない所定深さの切削溝17(図2(B)参照)を形成するべく、切削ブレード20の切り込み深さを調節する。
【0035】
次に、切削ブレード20の切り込み深さを維持したまま、切削ブレード20とチャックテーブルとをX軸方向に沿って相対的に移動させる。これにより、X軸方向に沿う1本の分割予定ライン13の一端から他端まで、ウェーハ11に切削溝17を形成する(即ち、ウェーハ11をハーフカットする)。
【0036】
1本の分割予定ライン13に沿う切削溝17を形成した後、切削ユニットをY軸方向に移動させる。そして、上述の1本の分割予定ライン13にY軸方向で隣接する他の分割予定ライン13の一端から他端まで、同様に切削溝17を形成する。
【0037】
一の方向に沿う全ての分割予定ライン13に沿って切削溝17を形成した後、回転機構によりチャックテーブルを90度回転させて、再び同様に、一の方向と直交する他の方向に沿う全ての分割予定ライン13に沿って切削溝17を形成する。これにより、ウェーハ11の表面11a側で格子状に配置された全ての分割予定ライン13に、所定深さの切削溝17を形成する。
【0038】
切削溝形成ステップ(S10)の後、ウェーハ11の表面11aに保護部材19を貼り付ける(保護部材貼り付けステップ(S20))。図2(B)は、保護部材貼り付けステップ(S20)を示す図である。
【0039】
保護部材19は、例えば、ウェーハ11と略同じ径を有する樹脂製の基材層を有する。基材層は、例えば、5μm以上200μm以下の厚さを有し、ポリオレフィン(PO)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、エチレン酢酸ビニル(EVA)等の高分子材料で形成されている。
【0040】
また、保護部材19は、基材層の表面側に粘着層を有する。粘着層は、例えば、熱又は紫外線が照射されると硬化して粘着力が低下する樹脂製の接着剤で構成された層である。粘着層は、基材層の円形の端部領域に環状に設けられてよく、基材層の全面に設けられてもよい。なお、粘着層は、保護部材19に設けられなくてもよい。
【0041】
保護部材19は、粘着層によりウェーハ11の表面11a側に対して剥離可能な態様で接着される。また、保護部材19は、ウェーハ11のデバイス領域15aにおけるバンプ15b等の凹凸構造に倣うように変形する。例えば、保護部材19の一方の面は、ウェーハ11の表面11aとバンプ15bの表面とに接着する。なお、保護部材19が粘着層を有しない場合、基材層が表面11a側に対して剥離可能な態様で密着する。
【0042】
保護部材貼り付けステップ(S20)では、保護部材貼り付け装置(不図示)を用いて、ウェーハ11の表面11aに保護部材19を貼り付ける。保護部材貼り付け装置は、チャンバー(不図示)を備えており、このチャンバーには、チャンバー内部を減圧するための吸引源(不図示)が接続されている。
【0043】
また、チャンバー内には、ウェーハ11を支持する支持テーブル(不図示)が設けられている。この支持テーブルは、例えば、ボールネジ式の移動機構によって所定方向(例えば、X軸方向)に移動される。
【0044】
保護部材貼り付け装置は、ロール状に巻かれたテープ体(不図示)を支持テーブルの上方へ送り出す送り出し機構を有する。テープ体は、保護部材19及び離型シートから構成されている。
【0045】
また、保護部材貼り付け装置は、テープ体が支持テーブルの上方へ送り出されるときに、保護部材19を離型シートから剥離する剥離ユニット(不図示)を有する。剥離ユニットにより離型シートから剥離された保護部材19は、送り出し機構により保護部材19の粘着層が支持テーブルと対面する様に支持テーブルの上方へ送り出される。
【0046】
保護部材貼り付け装置は、支持テーブルの上方へ送り出された保護部材19の基材層側を押圧する押圧ローラーを更に有する。押圧ローラーが保護部材19の基材層側を押圧することにより、保護部材19の粘着層側が、支持テーブルへ押し付けられる。
【0047】
保護部材貼り付けステップ(S20)では、まず、支持テーブル上にウェーハ11の裏面11b側を載置する。次に、吸引源でチャンバー内の圧力を低下させる。チャンバー内を減圧することで、ウェーハ11の表面11aと保護部材19との間にエアー、塵、その他の異物等が入り込むことを防止できる。
【0048】
そして、ロール状のテープ体を支持テーブル上へ送り出しながら、剥離ユニットでテープ体から離型シートを剥離すると共に、押圧ローラーで保護部材19を支持テーブル上に配置されたウェーハ11の表面11aに貼り付ける。ウェーハ11の表面11aに保護部材19を設けることで、後続する加工工程におけるウェーハ11の表面11a側の損傷を防止できる。
【0049】
なお、吸引源に接続され内部が減圧されるチャンバーを用いることは必須ではなく、保護部材貼り付け装置は、大気圧下でウェーハ11の表面11aに保護部材19を貼り付けてもよい。この場合、保護部材貼り付け装置は、上述の支持テーブル、送り出し機構、剥離ユニット、押圧ローラー等により構成される。
【0050】
なお、保護部材19に粘着層が設けられていない場合、保護部材貼り付けステップ(S20)では、支持テーブルを加熱することにより、保護部材19を軟化及び変形させつつ、保護部材19をウェーハ11に貼り付けてもよい。
【0051】
軟化した保護部材19は、ウェーハ11の表面11a側の凹凸構造に倣うように変形するので、ウェーハ11の表面11a側に密着できる。なお、加熱温度は、保護部材19の材料に応じて、各材料の軟化点となる様に適宜調節してよい。
【0052】
また、支持テーブルの加熱に代えて、保護部材19に対して温風を吹き付けることにより、保護部材19を軟化及び変形させてもよい。温風を吹き付ける場合、風圧により保護部材19はウェーハ11の表面11a側に押し付けられるので、加圧ローラーを用いずに、保護部材19をウェーハ11の表面11a側に密着させて貼り付けることができる。
【0053】
保護部材貼り付けステップ(S20)の後、ウェーハ11が仕上がり厚さになるまでウェーハ11の裏面11b側を研削することにより、ウェーハ11を複数の半導体デバイス21に分割する(研削ステップ(S30))。図2(C)は、研削ステップ(S30)を示す図である。
【0054】
研削ステップ(S30)では、研削装置30を用いてウェーハ11を研削する。研削装置30は、保護部材19を介してウェーハ11の表面11a側を吸引保持するチャックテーブル32を備えている。このチャックテーブル32は、モータ等の回転機構(不図示)と連結されており、Z軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。
【0055】
チャックテーブル32の表面側には円盤状の多孔質部材が設けられ、この多孔質部材の表面はチャックテーブル32の保持面32aとなっている。保持面32aには、チャックテーブル32の内部に形成された流路を通じて吸引源(不図示)からの負圧が作用し、ウェーハ11の表面11a側を吸引する吸引力が発生する。
【0056】
保持面32aに対向するように、チャックテーブル32の上方には研削機構34が配置されている。研削機構34は、Z軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転するスピンドル(不図示)を備えている。このスピンドルは、昇降機構(不図示)でZ軸方向に沿って昇降される。スピンドルの下端側には、円盤状のホイールマウント(不図示)が固定されている。
【0057】
ホイールマウントの下面には、ホイールマウントと略同径の研削ホイール36が装着されている。研削ホイール36は、アルミニウム又はステンレス鋼等の金属材料で形成された環状のホイール基台38aを備えている。
【0058】
ホイール基台38aの上面側が、ホイールマウントに装着されることで、ホイール基台38aはスピンドルに固定される。また、ホイール基台38aの下面には複数の研削砥石(砥石チップ)38bが設けられている。
【0059】
各々の研削砥石38bは、略直方体形状であり、ホイール基台38aの環状の下面の全周において、隣り合う研削砥石38bどうしの間に間隙が設けられる態様で環状に配列されている。
【0060】
研削砥石38bは、例えば、金属、セラミックス、樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、CBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒を混合して形成されている。ただし、結合材や砥粒に制限はなく、研削砥石38bの仕様に応じてこれらは適宜選択される。
【0061】
本実施形態の研削ステップ(S30)では、まず、保護部材19が配設されたウェーハ11を、保護部材貼り付け装置から研削装置30のチャックテーブル32に移動する。その後、吸引源(不図示)の負圧を保持面32aに作用させて、保護部材19を介してウェーハ11の表面11a側を保持面32aで吸引保持する。
【0062】
そして、チャックテーブル32と研削機構34のスピンドルとを、それぞれ所定の方向に回転させつつ、研削機構34のスピンドルを降下させ、ウェーハ11の裏面11b側に研削砥石38bを押し当てる。
【0063】
ウェーハ11の裏面11b側は厚さTだけ除去され、ウェーハ11の厚さは、仕上がり厚さTとなる。切削溝17は、仕上がり厚さTより深くなるように形成されているので、ウェーハ11を仕上がり厚さTまで薄くすると、半導体基板11cは切削溝17を境に分割され、ウェーハ11は複数の半導体デバイス21に分割される。
【0064】
研削ステップ(S30)の後、仕上がり厚さまで研削された後のウェーハ11の裏面(即ち、半導体デバイス21の裏面11e)側と、半導体デバイス21の各々の側面11f(即ち、半導体基板11c及び機能層15cの各側面)とに、金属膜を被覆する(金属膜被覆ステップ(S40))。金属膜23は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)又はステンレス鋼等の金属の薄膜である。図3(A)は、金属膜被覆ステップ(S40)を示す図である。
【0065】
金属膜被覆ステップ(S40)では、物理蒸着(PVD:physical vapor deposition)装置又は化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)装置を用いて、ウェーハ11に金属膜23を形成する。PVDとしては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が用いられる。また、CVDとしては、プラズマCVD等が用いられる。
【0066】
本実施形態では、高周波マグネトロンスパッタリング装置(不図示。以下、スパッタ装置と略記する)を用いて金属膜23を形成する。スパッタ装置は、処理チャンバー(不図示)を備え、その処理チャンバーの内部には、静電式又はその他の方法によりウェーハ11を保持する保持テーブル(不図示)が設けられている。また、保持テーブルの上方には、金属膜23の材料となるターゲット(不図示)が励磁部材(不図示)に支持された状態で設けられている。
【0067】
このターゲットには高周波電源(不図示)が接続されている。また、処理チャンバーにはアルゴン(Ar)等のスパッタガスを導入する導入口(不図示)と、減圧源(不図示)に接続する排気口(不図示)とが設けられている。
【0068】
金属膜被覆ステップ(S40)では、まず、表面11a側に保護部材19が貼り付けられたウェーハ11を、保護部材19を介して処理チャンバー内の保持テーブルに載置し、静電式又はその他の方法によりウェーハ11を保持する。つまり、研削後の半導体デバイス21の裏面11eをターゲットに対向させる。次に、処理チャンバーを密封し、排気口から処理チャンバーの内部を排気して減圧する。
【0069】
次に、励磁部材によって磁化されたターゲットに高周波電源から高周波電力を加え、導入口からスパッタガスを導入してプラズマを発生させる。プラズマ中のスパッタガスのイオンがターゲットに衝突すると、ターゲットから金属粒子がはじき出されて、半導体デバイス21の裏面11e及び側面11fに金属が堆積する。
【0070】
金属膜23の厚さは、例えば、2μm以上10μm以下であり、より好ましくは、3μm以上8μm以下である。金属膜23は、半導体デバイス21から放出される電磁波ノイズを遮蔽する電磁波シールドとして機能する。
【0071】
このように、本実施形態では、電磁波シールドとしてμmオーダーの金属膜23を半導体デバイス21の裏面11e及び側面11fに直接形成するので、従来の様に金属製のケースや、金属板の蓋体等を採用する場合に比べて、電磁波シールドを実装するために必要な空間を低減できる。
【0072】
また、金属膜被覆ステップ(S40)では、保護部材19に貼り付けられている複数の半導体デバイス21に対して一斉に金属膜23を形成できる。それゆえ、従来の様に、個々の半導体デバイスを個別に金属のケース等で覆う場合に比べて、より効率的に半導体デバイス21を電磁波シールドで覆うことができる。
【0073】
金属膜被覆ステップ(S40)の後、複数の半導体デバイス21と、金属製で環状のフレーム25とに粘着テープ27を貼り付けてフレームユニット29を形成する(粘着テープ貼り付けステップ(S50))。図3(B)は、粘着テープ貼り付けステップ(S50)でのフレームユニット29の断面図である。
【0074】
粘着テープ貼り付けステップ(S50)では、まず、金属膜23が上側に位置する様に複数の半導体デバイス21及び保護部材19をフレーム25の開口に配置する。次に、フレーム25、複数の半導体デバイス21及び保護部材19上に、フレーム25の開口よりも大きな径を有する円形の樹脂製の粘着テープ27を貼り付ける。
【0075】
これにより、金属膜23が被覆された半導体デバイス21の裏面11e側に粘着テープ27を貼り付けて、保護部材19と、複数の半導体デバイス21と、フレーム25とを、粘着テープ27を介して一体化してフレームユニット29を形成する。
【0076】
粘着テープ貼り付けステップ(S50)の後、ウェーハ11の表面11a側から保護部材19を除去する(保護部材除去ステップ(S60))。図3(C)は、保護部材除去ステップ(S60)でのフレームユニット29の断面図である。
【0077】
保護部材19が粘着層を有する場合、保護部材除去ステップ(S60)では、紫外線照射装置又は加熱装置を用いて保護部材19の粘着層の粘着力を低下させた後、保護部材19をウェーハ11の表面11a側から剥がす。
【0078】
なお、保護部材19が粘着層を有しない場合には、紫外線等で保護部材19を処理すること無く、表面11a側から保護部材19を剥がすことができる。保護部材19の除去後、ピックアップ装置(不図示)等を用いて、個々の半導体デバイス21を粘着テープ27から取り出す。
【0079】
図4は、第1実施形態に係る金属膜23付き半導体デバイス21の製造方法のフロー図である。上述の様に、本実施形態では、半導体デバイス21の裏面11e及び側面11fに金属膜23を直接形成できるので、電磁波シールドを実装するために必要な空間を低減できる。また、全ての半導体デバイス21に対して一斉に金属膜23を形成するので、より効率的に半導体デバイス21を電磁波シールドで覆うことができる。
【0080】
次に、図5から図8を用いて、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、切削溝形成ステップ(S10)の前にウェーハ11の表面11a側を保護膜で被覆する保護膜被覆ステップ(S5)を更に備える。図5(A)は、保護膜被覆ステップ(S5)を示す図であり、図5(B)は、表面11a側に保護膜45が形成されたウェーハ11の断面図である。
【0081】
保護膜被覆ステップ(S5)では、保護膜形成装置40を用いて、ウェーハ11の表面11a側に保護膜45を形成する。保護膜形成装置40は、例えば、スピンナテーブル機構(不図示)と、スピンナテーブル機構の周囲及び底部を囲んで設けられた流体受け機構(不図示)とを備えている。
【0082】
スピンナテーブル機構は、円形のスピンナテーブル(不図示)と、スピンナテーブルを支持する円柱状の支持部材(不図示)と、支持部材を介してスピンナテーブルを回転駆動する電動モータ(不図示)とを含む。電動モータを回転駆動すると、スピンナテーブルは図5(A)の矢印方向に回転する。
【0083】
スピンナテーブルは多孔質材料から形成された吸引保持部を有しており、この吸引保持部は吸引源(不図示)に接続されている。スピンナテーブルの吸引保持部上に載置されたウェーハ11は、吸引源からの負圧により、吸引保持部上に吸引保持される。
【0084】
液体受け機構は、スピンナテーブル機構の周囲及び底部を囲む液体受け容器(不図示)と、支持部材に装着されたカバー部材(不図示)とを含む。
【0085】
保護膜形成装置40は、スピンナテーブルに保持されたウェーハ11の表面11a側に、液状の樹脂を吐出する液状樹脂吐出ユニット(不図示)を更に備えている。液状樹脂吐出ユニットは、概略L形状のアームと、このアームの先端に設けられ液状樹脂を吐出する液状樹脂吐出ノズル42と、アームを揺動する電動モータとを有する。液状樹脂吐出ノズル42はアームを介して液状樹脂供給源(不図示)に接続されている。
【0086】
なお、保護膜形成装置40は、ウェーハ11を洗浄する洗浄装置と兼用される。保護膜形成装置40は、液状樹脂吐出ユニットとは異なる位置に、スピンナテーブルに保持されたウェーハ11を洗浄するための洗浄液吐出ユニット(不図示)を備えている。
【0087】
洗浄液吐出ユニットは、液状樹脂吐出ユニットと同様に、概略L形状のアームと、このアームの先端に設けられ洗浄液48を吐出する洗浄液吐出ノズル46(図7(C)参照)と、アームを揺動する電動モータとを有する。洗浄液吐出ノズル46はアームを介して洗浄液供給源(不図示)に接続されている。
【0088】
保護膜被覆ステップ(S5)の手順について説明すると、まず、ウェーハ11の表面11a側が液状樹脂吐出ノズル42と対向する様に、ウェーハ11をスピンナテーブルの吸引保持部上に載置する。
【0089】
そして、吸引源からの負圧によりウェーハ11の裏面11b側をスピンナテーブルで吸引保持する。次に、電動モータを駆動してスピンナテーブルと一体にウェーハ11を回転させる。なお、このとき、洗浄液吐出ノズル46は、スピンナテーブルの上方から退避している。
【0090】
そして、図5(A)に示す様に、スピンナテーブルを矢印方向に低速(例えば30rpmから50rpm)で回転させつつ、液状樹脂吐出ノズル42をスピンナテーブル上でスピンナテーブルの回転中心を横切るように円弧状に揺動させながら、液状樹脂吐出ノズル42からウェーハ11上に液状樹脂44を滴下する。
【0091】
液状の樹脂は遠心力によりウェーハ11の表面11a上及びバンプ15bの表面上に一様に広がる。保護膜45は、バンプ15b等の凹凸を反映する様に、ウェーハ11の表面11a側の凹凸に倣って、例えば、約1μmから20μmの厚さで形成される(図5(B)参照)。
【0092】
保護膜45は、耐熱性及び耐薬品性を有する樹脂膜であり、例えば、塩化ビニル膜である。なお、本実施形態では、スピンナテーブル機構を用いて保護膜45を形成したが、これに代えて、シート状の保護膜45をウェーハ11の表面11a側に貼り付けてもよい。
【0093】
シート状の保護膜45を表面11a側に貼り付ける場合、表面11a側に貼り付ける前に、保護膜45の厚さを予め調整できる。それゆえ、スピンナテーブル機構を用いて保護膜45を形成する場合に比べて、保護膜45の厚さを容易に調整できる。例えば、スピンナテーブル機構を用いて保護膜45を形成する場合に比べて保護膜45の厚さをより厚く、約5μmから200μmとすることができる。
【0094】
保護膜被覆ステップ(S5)の後、切削溝形成ステップ(S10)を行う。図5(C)は、切削溝形成ステップ(S10)を示す図である。第2実施形態の切削溝形成ステップ(S10)では、上述の切削装置を用いて、保護膜45を切断し、且つ、第1実施形態と同様にウェーハ11に切削溝17を形成する(図6参照)。
【0095】
切削溝形成ステップ(S10)の後、保護部材貼り付けステップ(S20)を行う。図6(A)は、保護部材貼り付けステップ(S20)を示す図である。第2実施形態の保護部材貼り付けステップ(S20)でも、上述の保護部材貼り付け装置を用いて、ウェーハ11の表面11a側に保護部材19を貼り付けて、保護部材19を保護膜45に密着させる。
【0096】
このように、第2実施形態では、ウェーハ11の表面11a側に保護膜45を介して保護部材19を設ける。それゆえ、保護部材19をウェーハ11から剥離した後、仮に、ウェーハ11の表面11a及びバンプ15bに保護部材19の粘着層が残ったとしても、保護膜45を除去するときにこの粘着層も併せて除去できる。それゆえ、半導体デバイス21の表面11aに保護部材19の粘着層が残ることを防止できる。
【0097】
保護部材貼り付けステップ(S20)の後、研削ステップ(S30)を行う。図6(B)は、研削ステップ(S30)を示す図である。第2実施形態の研削ステップ(S30)でも、ウェーハ11の裏面11b側を厚さTだけ除去し、ウェーハ11を仕上がり厚さTに加工する。これにより、半導体基板11cは切削溝17を境に分割され、ウェーハ11は複数の半導体デバイス21となる。
【0098】
研削ステップ(S30)の後、金属膜被覆ステップ(S40)を行う。図6(C)は、金属膜被覆ステップ(S40)を示す図である。第2実施形態の金属膜被覆ステップ(S40)でも、PVD又はCVDにより、半導体デバイス21の裏面11e及び側面11fに、金属膜23を形成する。
【0099】
金属膜被覆ステップ(S40)の後、粘着テープ貼り付けステップ(S50)を行う。図7(A)は、粘着テープ貼り付けステップ(S50)を示す図である。粘着テープ貼り付けステップ(S50)では、第1実施形態と同様に、フレームユニット29を形成する。
【0100】
粘着テープ貼り付けステップ(S50)の後、ウェーハ11の表面11a側から保護部材19を除去する(保護部材除去ステップ(S60))。図7(B)は、保護部材除去ステップ(S60)を示す図である。なお、保護膜45は、ウェーハ11の表面11a側と密着しており、保護部材除去ステップ(S60)で表面11a側から保護膜45の全ては剥がれない。
【0101】
そこで、第2実施形態に係る金属膜23付き半導体デバイス21の製造方法では、保護部材除去ステップ(S60)の後に、保護膜45を除去する保護膜除去ステップ(S65)を行う。保護膜除去ステップ(S65)では、洗浄装置を兼ねる保護膜形成装置40を用いて保護膜45を除去する。図7(C)は、保護膜除去ステップ(S65)を示す図である。
【0102】
保護膜45を除去する手順について説明すると、まず、表面11a側を上方に位置付けるように粘着テープ27の半導体デバイス21とは反対側(即ち、裏面27b側)をスピンナテーブルの吸引保持部上に載置する。
【0103】
そして、吸引源からの負圧により粘着テープ27の裏面27b側をスピンナテーブルで吸引保持する。次に、電動モータを駆動してスピンナテーブルと一体にフレームユニット29を回転させる。なお、このとき、液状樹脂吐出ノズル42は、スピンナテーブルの上方から退避している。
【0104】
そして、スピンナテーブルを例えば800rpmで回転させつつ、洗浄液吐出ノズル46をスピンナテーブル上で円弧状に揺動させながら、ウェーハ11上に洗浄液48(例えば、イソプロピルアルコール(IPA))を滴下する。
【0105】
図7(C)に示す様に、保護膜45は、洗浄液48に溶解して使用済液Aとなり、遠心力により半導体デバイス21外へ吹き飛ばされ、液体受け容器に受け止められる。この様にして、保護膜45は、洗浄液48によりウェーハ11の表面11a側から除去される。なお、シート状の保護膜45が表面11aに貼り付けられている場合、保護部材除去ステップ(S60)で保護部材19を剥がす様に保護膜45を剥がしてよい。
【0106】
図8は、第2実施形態に係る金属膜23付き半導体デバイス21の製造方法のフロー図である。第2実施形態では、ウェーハ11の表面11a側に保護膜45を介して保護部材19を設けるので、半導体デバイス21の表面11aに保護部材19の粘着層が残ることを防止できる。
【0107】
また、第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、金属膜23を半導体デバイス21の裏面11e及び側面11fに直接形成でき、電磁波シールドを実装するために必要な空間を低減できる。また、全ての半導体デバイス21に対して一斉に金属膜23を形成するので、効率的に半導体デバイス21を電磁波シールドで覆うことができる。
【0108】
次に、図9から図14を用いて、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、まず、第2実施形態と同様に、保護膜形成装置40を用いて、ウェーハ11の表面11a側に保護膜45を形成する(保護膜被覆ステップ(S5))。図9(A)は、保護膜被覆ステップ(S5)を示す図である。
【0109】
第3実施形態では、保護膜被覆ステップ(S5)の後、且つ、切削溝形成ステップ(S10)の前に、保護膜45が形成されたウェーハ11の表面11a側にレーザービームLを照射して、分割予定ライン13に沿ってレーザー加工溝51等を形成する。
【0110】
図9(B)は、レーザービームLでウェーハ11の表面11a側を加工する様子を示す一部断面側面図である。例えば、レーザービームLの照射により、保護膜45及び機能層15cをアブレーションして、レーザー加工溝51を形成する(レーザー加工溝形成ステップ(S8))。図10(A)は、レーザー加工溝51を示す拡大図である。なお、図10(A)は、図9(B)の領域Bを示している。
【0111】
レーザー加工溝形成ステップ(S8)は、レーザー加工装置50を用いて実行される。レーザー加工装置50は、ウェーハ11の裏面11b側を吸引保持するチャックテーブル(不図示)を有する。
【0112】
また、チャックテーブルに対向する位置には、チャックテーブルで保持されたウェーハ11の表面11a側に、パルス状のレーザービームLを照射する加工ヘッド52が設けられている。レーザービームLは、保護膜45及びウェーハ11に対して吸収性を有する(即ち、保護膜45及びウェーハ11に吸収される)波長、例えば、355nmの波長を有する。
【0113】
チャックテーブルの保持面は、チャックテーブルの内部に形成された吸引路(不図示)等を介して吸引源(不図示)に接続されている。吸引源の負圧を保持面に作用させることで、ウェーハ11の裏面11b側がチャックテーブルで吸引保持される。
【0114】
また、チャックテーブルの下方には支持テーブル(不図示)が設けられており、この支持テーブルは、ボールネジ式の移動機構によって所定方向(例えば、X軸方向)に沿って移動する。
【0115】
レーザービームLで保護膜45及びウェーハ11を加工するときには、例えば、1つの分割予定ライン13とチャックテーブルが移動するX軸方向とを平行にする。そして、レーザービームLをウェーハ11の表面11a側に照射しつつ、加工ヘッド52とチャックテーブルとをX軸方向に相対的に移動させる。レーザービームLの幅にも依存するが、レーザービームLは、1つの分割予定ライン13に沿って1回又は複数回照射されてもよい。
【0116】
これにより、保護膜45及び機能層15cを分割予定ライン13に沿ってアブレーション加工して除去し、半導体基板11cに達するレーザー加工溝51を分割予定ライン13に沿って形成する。
【0117】
また、チャックテーブルをY軸方向に移動させたり回転させたりすることにより、全ての分割予定ライン13に沿ってレーザー加工溝51を形成する。なお、レーザー加工溝51は、後続する切削溝形成ステップ(S10)で形成される切削溝17の幅W4(図11(B)参照)よりも太い幅W1を有する(即ち、W<W)。
【0118】
本実施形態では、幅W1のレーザー加工溝51をレーザービームLで形成し、後続する切削溝形成ステップ(S10)で、この幅W1内に切削ブレード20を位置付けて半導体基板11cを切削ブレード20で切削する。これにより、機能層15c及び保護膜45を切削ブレード20で切削する場合に比べて、機能層15cの膜剥がれ等を防止できるので、より高品位な切削加工が可能となる。また、保護膜45により、アブレーション加工時に発生するデブリ(Debris)がデバイス領域15aへ付着することを防止できる。
【0119】
ところで、後続する金属膜被覆ステップ(S40)では、レーザー加工溝51に金属膜23が形成されるが、このとき、レーザー加工溝51の内側に露出している保護膜45の側部57にも金属膜23が形成される。
【0120】
しかしながら、保護膜45は最終的に保護膜除去ステップ(S65)で除去されるので、保護膜45の側部57に設けられた金属膜23は空間中に突出した状態となり、レーザー加工溝51の内側に露出している機能層15cの側面に設けられた金属膜23は僅かなきっかけで剥がれやすくなる。それゆえ、金属膜23による電磁波シールドの効果が低減する恐れがある。
【0121】
そこで、第3実施形態の第1変形例では、機能層15cの一部を保護膜45から露出させることで段差部を形成する。当該第1変形例では、保護膜被覆ステップ(S5)の後且つレーザー加工溝形成ステップ(S8)の前に、レーザービームLを分割予定ライン13に沿って保護膜45に照射する。保護膜45は分割予定ライン13に沿ってアブレーションされて除去され、保護膜除去ライン53が形成される(保護膜除去ライン形成ステップ(S7))。
【0122】
この保護膜除去ライン53は、レーザー加工溝形成ステップ(S8)で形成されるレーザー加工溝55の幅W3と、切削溝形成ステップ(S10)で形成される切削溝17の幅W4とのいずれよりも太い幅W2を有する。図10(B)は、保護膜除去ライン53の拡大図である。なお、図10(B)は、図9(B)の領域Bを示している。
【0123】
例えば、保護膜45におけるレーザービームLのスポットを幅W2に対応する幅広形状に整形した上で、レーザービームLを分割予定ライン13に沿ってウェーハ11の表面11a側に照射する。これにより、保護膜除去ライン53を形成できる。
【0124】
また、スポットを幅広形状に整形することに代えて、保護膜45におけるレーザービームLのスポットを円形状としてもよい。この場合、幅W2の幅方向(即ち、分割予定ライン13に直交する方向)にレーザービームLの軌跡が部分的に重なる様に、ウェーハ11の表面11a側にレーザービームLを照射する。
【0125】
保護膜除去ライン形成ステップ(S7)の後、ウェーハ11の表面11a側から幅W2の内側に位置する機能層15cにレーザービームLを照射して、レーザー加工溝55を形成する(レーザー加工溝形成ステップ(S8))。レーザー加工溝55は、切削溝17の幅W4よりも太く、保護膜除去ライン53の幅W2よりも狭い幅W3を有する(即ち、W4<W3<W2)。
【0126】
例えば、第1変形例のレーザー加工溝形成ステップ(S8)では、保護膜除去ライン形成ステップ(S7)に比べてレーザービームLを絞ることにより、パワー密度(W/cm)を高くして、幅W2の内側に位置する機能層15cをアブレーションする。これにより、保護膜除去ライン53よりも狭い幅W3を有し、半導体基板11cに達するレーザー加工溝55を形成できる。
【0127】
図10(C)は、保護膜除去ライン形成ステップ(S7)後における第1変形例のレーザー加工溝形成ステップ(S8)で形成されたレーザー加工溝55を示す拡大図である。なお、図10(C)は、図9(B)の領域Bを示している。図10(C)に示す様に、第1変形例では、レーザー加工溝55の内側で露出している機能層15cの側部59aと、保護膜45が除去された領域の機能層15cの上面とから構成される、段差部59bが形成される。
【0128】
後続する金属膜被覆ステップ(S40)では、機能層15cの段差部59bに接して金属膜23が形成される。特に、金属膜23は機能層15cの上面に形成されているので、図10(A)に示すレーザー加工溝51に金属膜23を形成する場合に比べて、金属膜23は、より強固に機能層15cに密着できる。したがって、金属膜23は、図10(A)に示す例に比べて、機能層15cの側部59aから剥がれ難くなる。
【0129】
第3実施形態では、レーザー加工溝形成ステップ(S8)後、又は、保護膜除去ライン形成ステップ(S7)及びレーザー加工溝形成ステップ(S8)後、且つ、保護部材貼り付けステップ(S20)の前にデブリ除去ステップ(S9)を行う。これにより、レーザー加工溝55に付着した機能層15cのデブリを除去する。
【0130】
図11(A)は、デブリ除去ステップ(S9)を示す図である。なお、以降では、第3実施形態の第1変形例として記載した保護膜除去ライン形成ステップ(S7)及びレーザー加工溝形成ステップ(S8)を経たウェーハ11を図示することとする。
【0131】
デブリ除去ステップ(S9)は、プラズマエッチング装置60を用いて行う。本実施形態のプラズマエッチング装置60は、エッチングガスをプラズマ状態にした後に、真空チャンバー内にこのプラズマ状態のエッチングガスを導入するリモートプラズマエッチング装置である。
【0132】
プラズマエッチング装置60は、内部に処理空間を有する真空チャンバー(不図示)を備えている。また、処理空間には、ウェーハ11を支持するためのテーブルベース(不図示)が設けられている。
【0133】
円盤部の上面には、円盤部よりも径の小さい円盤状の静電チャックテーブル(不図示)が配置されている。静電チャックテーブルは、絶縁材料によって形成されたテーブル本体と、テーブル本体に埋め込まれた複数の電極とを備え、電極間に発生する静電気によってウェーハ11を吸着して保持する。各電極は、例えば、5kV程度の高電圧を発生可能な直流電源に接続されている。
【0134】
真空チャンバーの上壁には、静電チャックテーブルによって保持されるウェーハ11に対してプラズマ状態の原料ガスを供給する供給ノズル(不図示)が設けられており、供給ノズルに接続している流路の上流側には、1以上のガス供給源(不図示)の各々が、バルブ(不図示)、流量コントローラー(不図示)等を介して並列に接続されている。
【0135】
1以上のガス供給源から供給されるガスの種類の数は、除去するデブリに応じて変えてよい。デブリは、主として機能層15cに由来しており、例えば、機能層15cにおける低誘電率絶縁体層15eが炭素含有酸化シリコン系(SiOCH系)の酸化物である場合には、パーフルオロシクロブタン(C)又は六フッ化硫黄(SF)を含有するガスが、ガス供給源から供給される。
【0136】
また、例えば、機能層15cにおける低誘電率絶縁体層15eが炭素含有酸化シリコン系とは異なる有機物である場合には、水素(H)を含有するガスが第1のガス供給源から供給され、更に、窒素(N)を含有するガスが第2のガス供給源から供給される。
【0137】
供給ノズルの下流端に形成された供給口とガス供給源との間には、供給ノズルを流れる混合ガスに高周波電圧を加えるための電極が設けられている。この電極には、高周波電源が接続されている。高周波電源は、電極に対して、450kHzから2.45GHz程度(例えば、13.56MHz)の高周波電圧で0.5kWから5kW程度の電力を供給する。
【0138】
高周波電源等を用いて、供給ノズルを流れる混合ガスに高周波電圧を作用させることで、混合ガスをプラズマ化(代表的には、ラジカル化又はイオン化)できる。プラズマ状態の混合ガスは、供給ノズルの供給口から処理空間に供給される。
【0139】
本実施形態のデブリ除去ステップ(S9)では、まず、上述したリモートプラズマエッチング装置の真空チャンバーの処理空間にウェーハ11を搬入し、ウェーハ11の表面11a側が上方に露出するようにウェーハ11の裏面11b側を静電チャックテーブルの上面に載せる。
【0140】
その後、静電チャックテーブルの電極に直流電圧を印加して、静電気によりウェーハ11を静電チャックテーブルで吸着して保持する。また、処理空間を排気して、処理空間を例えば、200Pa程度まで減圧する。
【0141】
その後、各ガス供給源から、原料ガス及び不活性ガス等を任意の流量で供給する。また、高周波電源から電極に高周波電圧を供給して、原料ガス及び不活性ガスの混合ガスをプラズマ化(ラジカル化、イオン化等)する。これにより、供給ノズルの供給口からプラズマ状態のエッチングガスPを処理空間に供給できる。
【0142】
供給口から供給されたプラズマ状態のエッチングガスPは、供給口の下方に配置されているウェーハ11の表面11a側に供給されて、レーザー加工溝55に存在するデブリを除去する。これにより、エッチングガスPでデブリを除去しない場合に比べて、後続する金属膜被覆ステップ(S40)で形成する金属膜23を機能層15cに対してより強固に密着させることができる。
【0143】
なお、デブリ除去ステップ(S9)では、プラズマ化していない反応性ガスをレーザー加工溝55に供給することによりデブリを除去してもよい。反応性ガスとしては、例えば、三フッ化塩素(ClF)、二フッ化キセノン(XeF)等が用いられる。また、反応性ガスと、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の不活性ガスとの混合ガスを供給することによりデブリを除去してもよい。
【0144】
デブリ除去ステップ(S9)の後、切削溝形成ステップ(S10)を行う。図11(B)は、切削溝形成ステップ(S10)を示す図である。切削溝形成ステップ(S10)では、上述の切削装置を用いてレーザー加工溝55の内側に幅W4の切削溝17を形成する。
【0145】
切削溝形成ステップ(S10)の後、保護部材貼り付けステップ(S20)を行う。図12(A)は、保護部材貼り付けステップ(S20)を示す図である。保護部材貼り付けステップ(S20)では、上述の保護部材貼り付け装置を用いて、ウェーハ11の表面11a側に保護部材19を設ける。なお、保護部材19は、保護膜45と密着するが、ウェーハ11の表面11aには接しないので、段差部59bにおける機能層15cの上面と、保護部材19のウェーハ11側の表面との間には空間が形成される。
【0146】
保護部材貼り付けステップ(S20)の後、研削ステップ(S30)を行う。図12(B)は、研削ステップ(S30)を示す図である。例えば、上述の研削装置30を用いて、ウェーハ11を仕上がり厚さTに加工する。これにより、ウェーハ11を半導体デバイス21に分割する。
【0147】
研削ステップ(S30)の後、金属膜被覆ステップ(S40)を行う。図13(A)は、金属膜被覆ステップ(S40)を示す図である。例えば、上述のスパッタ装置を用いて、高周波マグネトロンスパッタリング法で半導体デバイス21の裏面11e、側面11f、段差部59bの上面に金属膜23を形成する。
【0148】
上述の様に、段差部59bにおける機能層15cの上面には金属膜23が形成されるので、保護膜45を除去しても、金属膜23は機能層15cの側面(即ち、側部59aの表面)から剥がれ難くなる。これにより、保護膜除去ステップ(S65)を経ても半導体デバイス21の側面11fから金属膜23が剥がれ難くなる。
【0149】
金属膜被覆ステップ(S40)の後且つ保護部材除去ステップ(S60)の前に、粘着テープ貼り付けステップ(S50)を行う。図13(B)は、粘着テープ貼り付けステップ(S50)を示す図である。
【0150】
粘着テープ貼り付けステップ(S50)では、上述の様に、保護部材19及び複数の半導体デバイス21を、環状のフレーム25と、円形の粘着テープ27と共に一体化して、フレームユニット29を形成する。フレームユニット29を形成することで、フレームユニット29を形成しない場合に比べて、以降の各ステップにおける複数の半導体デバイス21の取り扱いがより容易になる。
【0151】
粘着テープ貼り付けステップ(S50)の後、保護部材除去ステップ(S60)を行う。上述のように、保護部材除去ステップ(S60)では、紫外線照射装置又は加熱装置を用いて保護部材19の粘着層の粘着力を低下させた後、保護部材19をウェーハ11の表面11a側から剥がす。なお、保護部材19が粘着層を有しない場合には、紫外線等で保護部材19を処理すること無く、表面11a側から保護部材19を剥がしてよい。
【0152】
保護部材除去ステップ(S60)の後、保護膜除去ステップ(S65)を行う。上述の様に、保護膜除去ステップ(S65)では、洗浄装置を兼ねる保護膜形成装置40を用いて保護膜45を除去する。
【0153】
また、保護膜除去ステップ(S65)の後、上述のピックアップ装置(不図示)等を用いて、個々の半導体デバイス21を粘着テープ27から取り出してよい。これにより、電磁波シールドとしてμmオーダーの金属膜23を有する半導体デバイス21を得ることができる。
【0154】
図14は、第3実施形態に係る金属膜23付き半導体デバイス21の製造方法のフロー図である。第3実施形態では、保護膜除去ライン53を形成する場合には(S6でYES)、保護膜除去ライン形成ステップ(S7)及びレーザー加工溝形成ステップ(S8)を順次行い、デブリ除去ステップ(S9)に進む。これに対して、保護膜除去ライン53を形成しない場合には(S6でNO)、レーザー加工溝形成ステップ(S8)のみを行い、デブリ除去ステップ(S9)に進む。
【0155】
次に、第3実施形態の第2変形例について説明する。第2変形例では、レーザー加工溝形成ステップ(S8)の後に、切削溝形成ステップ(S10)及びデブリ除去ステップ(S9)をこの順で行う。係る点が、第1変形例と異なる。
【0156】
第3実施形態の第2変形例では、レーザー加工溝形成ステップ(S8)の後に、上述の切削装置を用いて切削溝形成ステップ(S10)を行う。図15(A)は、切削溝形成ステップ(S10)を示す図である。
【0157】
そして、切削溝形成ステップ(S10)の後、且つ、後続する保護部材貼り付けステップ(S20)の前に、ウェーハ11をプラズマ化したエッチングガスPで処理し、レーザー加工溝55及び切削溝17に付着したデブリを除去する(デブリ除去ステップ(S9))。図15(B)は、第2変形例に係るデブリ除去ステップ(S9)を示す図である。
【0158】
第3実施形態の第2変形例では、レーザーアブレーションにより生じた機能層15cのデブリに加えて、切削溝17内に生じたデブリをエッチングガスPで除去する。これにより、エッチングガスPで処理しない場合に比べて、例えば、後続する金属膜被覆ステップ(S40)で形成する金属膜23を半導体基板11c及び機能層15cに対してより強固に密着させることができる。デブリ除去ステップ(S9)後に保護部材貼り付けステップ(S20)を行う。以降のステップは、第3実施形態と同じである。
【0159】
なお、上述の様に、デブリ除去ステップ(S9)は、プラズマ化していない反応性ガスをレーザー加工溝55に供給してデブリを除去してもよく、反応性ガスと不活性ガスとの混合ガスによりデブリを除去してもよい。
【0160】
次に、図16から図18を用いて第4実施形態について説明する。以降では、第3実施形態と第4実施形態との差異を主として説明する。第4実施形態でも、第3実施形態と同様に、まず、保護膜被覆ステップ(S5)から切削溝形成ステップ(S10)までを行う。
【0161】
切削溝形成ステップ(S10)の後、保護部材貼り付けステップ(S20)を行う。但し、第4実施形態の保護部材貼り付けステップ(S20)でウェーハ11の表面11a側に貼り付ける保護部材19は、外力により径方向に拡張する(即ち、エキスパンド性を有する)粘着テープである。
【0162】
保護部材貼り付けステップ(S20)では、表面11a側に保護膜45が形成されたウェーハ11を、金属製の環状のフレーム25の開口部に配置した状態で、上述の保護部材貼り付け装置(不図示)を用いてフレーム25及びウェーハ11の表面11a側に保護部材19を貼り付ける。これにより、ウェーハ11、フレーム25及び保護部材19等が一体化されたフレームユニット29が形成される。図16(A)は、保護部材貼り付けステップ(S20)を示す図である。
【0163】
保護部材貼り付けステップ(S20)の後、上述の研削装置30を用いて研削ステップ(S30)を行い、ウェーハ11を複数の半導体デバイス21に分割する。図16(B)は、研削ステップ(S30)を示す図である。
【0164】
研削ステップ(S30)の後且つ金属膜被覆ステップ(S40)の前に、保護部材19を拡張して、個々の半導体デバイス21の間隔を広げる(拡張ステップ(S35))。拡張ステップ(S35)では、例えば、エキスパンド装置70を用いて保護部材19を径方向に拡張する。図17(A)は、拡張ステップ(S35)を示す図である。
【0165】
エキスパンド装置70は、ウェーハ11の径よりも大きい径を有する円筒状のドラム72を備える。このドラム72の頂部には周方向に沿って複数のローラー74が設けられている。半導体デバイス21とは反対側に位置する保護部材19の裏面19bがローラー74に接する態様で、フレームユニット29はドラム72上に載置される。
【0166】
また、エキスパンド装置70は、保護部材19の裏面19b側に配置され、円環状の金属製の内側リング76を有する。内側リング76は、その径方向が水平となる様に下端部が支持されており、その上端部が保護部材19の裏面19bに接するように構成されている。
【0167】
エキスパンド装置70は、更に、保護部材19の半導体デバイス21側(即ち、表面19a側)に配置され、内側リング76の外径よりも内径が大きい円環状の金属製の外側リング78を有する。外側リング78は、その下端部が保護部材19の表面19aに接し、その上端部が押圧される様に構成されている。
【0168】
円環状の内側リング76及び外側リング78は、同軸状に配置され、互いに近づく向きに相対的に移動可能に構成されている。また、内側リング76の外径と外側リング78の内径との差は、保護部材19の厚さよりも小さい。内側リング76及び外側リング78が相対的に移動して互いに同じ高さ位置に来ると、内側リング76の外周と外側リング78の内周との間で保護部材19は挟まれて固定される。
【0169】
エキスパンド装置70は、更に、フレーム保持ユニット(不図示)を備える。フレーム保持ユニットは、ドラム72の上端部を外周側から囲むように設けられたフレーム支持台(不図示)を含む。フレーム支持台は、ドラム72の径よりも大きい径の開口を有しており、ドラム72の上端部と同様の高さに配置されている。また、フレーム支持台の外周側の複数箇所には、クランプ(不図示)が設けられている。
【0170】
フレーム支持台の上にフレーム25が配置されるようにフレームユニット29をドラム72上に載置して、クランプによりフレーム25を固定すると、フレームユニット29がフレーム支持台により固定される。
【0171】
フレーム支持台は、鉛直方向に沿って伸長する複数のロッド(不図示)により支持される。各ロッドの下端部には、円盤状のベース(不図示)により支持されており、ロッドを昇降させるエアシリンダ(不図示)が設けられている。各エアシリンダを引き込み状態にすると、フレーム支持台がドラム72に対して引き下げられる。
【0172】
拡張ステップ(S35)では、まず、ドラム72の上端の高さと、フレーム支持台の上面の高さとが一致するように、エアシリンダを作動させてフレーム支持台の高さを調節する。次に、フレームユニット29をドラム72及びフレーム支持台の上に載せる。その後、クランプによりフレーム支持台の上にフレーム25を固定する。
【0173】
次に、エアシリンダを作動させてフレーム保持ユニットのフレーム支持台をドラム72に対して引き下げる。これにより、図17(A)に示す様に、保護部材19が径方向に拡張される。
【0174】
保護部材19が径方向に拡張されると、保護部材19に支持されている半導体デバイス21どうしの間隔が広げられる。これにより、拡張ステップ(S35)を行わない場合と比較して、後続する金属膜被覆ステップ(S40)において、半導体デバイス21に金属が堆積しやすくなる。
【0175】
より、具体的には、半導体デバイス21の側面11f(即ち、半導体基板11c及び機能層15cの側面)と、段差部59bの上面(図10(C)参照。なお、図17(A)において、段差部59bの上面は、下方を向いている。)とに、金属が堆積しやすくなる。
【0176】
保護部材19を拡張させた後、内側リング76及び外側リング78を近づけるように相対的に移動させて、内側リング76の外周と外側リング78の内周との間に保護部材19を挟み込む。これにより、保護部材19は、拡張した状態で内側リング76及び外側リング78により固定される。
【0177】
その後、外側リング78とローラー74との間の位置で外側リング78の外周に沿って保護部材19を円状に切断して、リングユニット80(図17(B)参照)を形成する。これにより、拡張ステップ(S35)を終了する。
【0178】
拡張ステップ(S35)の後、上述のスパッタ装置等を用いて金属膜被覆ステップ(S40)を行う。金属膜被覆ステップ(S40)では、例えば、スパッタ装置の保持テーブルの表面に保護部材19の裏面19bが接するように、保持テーブル上にリングユニット80を配置する。
【0179】
そして、スパッタ装置を用いて、半導体デバイス21の裏面11e及び側面11f等に金属膜23を形成する。図17(B)は、金属膜被覆ステップ(S40)を示す図である。なお、第4実施形態に係る金属膜23付き半導体デバイス21の製造方法のフロー図を図18に示す。第4実施形態では、第3実施形態と同様に、金属膜被覆ステップ(S40)後に、粘着テープ貼り付けステップ(S50)以降のステップを、順次行う。
【0180】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、第4実施形態における拡張ステップ(S35)を、第1及び第2実施形態に適用してもよい。
【0181】
また、第1実施形態から第4実施形態並びに第3実施形態の第1及び第2変形例では、半導体基板11c及び機能層15cを有する被加工物から金属膜23付きの半導体デバイス21を製造したが、被加工物がWL-CSP又は樹脂パッケージ基板である場合には、被加工物から金属膜23付きの半導体パッケージデバイスを製造してもよい。
【符号の説明】
【0182】
11 ウェーハ(被加工物)
11a 表面(第1面)
11b 裏面(第2面)
11c 半導体基板
11d ノッチ
11e 裏面
11f 側面
13 分割予定ライン(ストリート)
15a デバイス領域
15b バンプ(突起電極)
15c 機能層
15d 電極
15e 低誘電率絶縁体層
17 切削溝
19 保護部材
19a 表面
19b 裏面
20 切削ブレード
21 半導体デバイス
22 切り刃
23 金属膜
25 フレーム
27 粘着テープ
27b 裏面
29 フレームユニット
30 研削装置
32 チャックテーブル
32a 保持面
34 研削機構
36 研削ホイール
38a ホイール基台
38b 研削砥石
40 保護膜形成装置(洗浄装置)
42 液状樹脂吐出ノズル
44 液状樹脂
45 保護膜
46 洗浄液吐出ノズル
48 洗浄液(IPA)
50 レーザー加工装置
52 加工ヘッド
51 レーザー加工溝
53 保護膜除去ライン
55 レーザー加工溝
57 側部
59a 側部
59b 段差部
60 プラズマエッチング装置
70 エキスパンド装置
72 ドラム
74 ローラー
76 内側リング
78 外側リング
80 リングユニット
A 使用済液
B 領域
L レーザービーム
P エッチングガス
仕上がり厚さ
厚さ
W1,W2,W3,W4 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18