(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】チャックテーブルおよびチャックテーブルを備えた加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20221129BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221129BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221129BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20221129BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20221129BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H01L21/78 N
H01L21/78 F
H01L21/304 622H
H01L21/68 P
B24B49/10
B24B27/06 M
B24B55/02 D
(21)【出願番号】P 2018041615
(22)【出願日】2018-03-08
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-026700(JP,A)
【文献】特開2009-066708(JP,A)
【文献】特開2011-228436(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0208850(US,A1)
【文献】特開2014-075408(JP,A)
【文献】特開2009-188378(JP,A)
【文献】特開2005-103587(JP,A)
【文献】特開平06-031627(JP,A)
【文献】特開平09-001370(JP,A)
【文献】特開2008-188646(JP,A)
【文献】特開2006-245439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
H01L 21/683
B24B 49/10
B24B 27/06
B24B 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持部を備えたチャックテーブルであって、
該保持部に格子状に複数のAEセンサーが配設され、被加工物を介して発生する弾性波を複数箇所で収集し、該複数のAEセンサーの配置に関連づけて弾性波の強さの分布を取得
し、
該保持部は、複数の細孔が形成された基板と、該基板の上面に配設された該複数のAEセンサーと、該基板を支持する枠体と、から少なくとも構成され、
吸引源が該枠体に連通し該複数の細孔に吸引力を伝達して被加工物を吸引保持するチャックテーブル。
【請求項2】
被加工物を保持する保持部を備えたチャックテーブルであって、該保持部に格子状に複数のAEセンサーが配設され、被加工物を介して発生する弾性波を複数箇所で収集し、該複数のAEセンサーの配置に関連づけて弾性波の強さの分布を取得するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に加工を施す加工手段と、該チャックテーブルと該加工手段とを相対的に加工送りする加工送り手段と、該複数のAEセンサーによって収集された弾性波の強さの分布を表示する表示手段と、を少なくとも備え
、
該加工手段は、被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と該切削ブレードに切削水を供給する切削水供給ノズルとから少なくとも構成され、
該加工送り手段は、該チャックテーブルと該加工手段とをX軸方向に相対的に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該加工手段とをX軸方向に直交するY軸方向に相対的に割り出し送りするY軸送り手段と、を有する加工装置。
【請求項3】
該複数のAEセンサーはX座標Y座標で配設され、該表示手段は収集された弾性波をX座標Y座標で表示する請求項
2記載の加工装置。
【請求項4】
該表示手段は収集された弾性波の強さを色で表示する請求項
3記載の加工装置。
【請求項5】
該複数のAEセンサーによって収集された弾性波を記録する記録手段を備えた請求項
2記載の加工装置。
【請求項6】
該切削ブレードによる切削に伴う弾性波、該切削ブレードを挟むように位置づけられた一対の該切削水供給ノズルから供給される切削水に伴う弾性波が該複数のAEセンサーによって収集される請求項
2記載の加工装置。
【請求項7】
該複数のAEセンサーによって収集された弾性波の強さの分布によって切削水供給の不具合を検出する請求項
2記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を保持する保持部を備えたチャックテーブルと、チャックテーブルを備えた加工装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは切削装置によって個々のデバイスに分割され、分割された各デバイスは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
切削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、切削ブレードを挟んで位置づけられ切削水を供給する一対の切削水供給ノズルと、チャックテーブルと切削手段とをX軸方向に相対的に加工送りするX軸送り手段と、チャックテーブルと切削手段とをX軸方向に直交するY軸方向に相対的に割り出し送りするY軸送り手段と、を少なくとも備えて構成されていて、ウエーハの分割予定ラインを高精度に切削することができる(たとえば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、切削ブレードに目詰まりが生じたり、欠けが生じたり、または一対の切削水供給ノズルからの切削水が切削ブレードを挟んでアンバランスに供給されていたりすることで、切削精度に悪い影響を与えることがあるにもかかわらず、不具合を定量的に見つけることができず高精度な切削を維持できないという問題がある。
【0006】
また、チャックテーブルに保持されたウエーハを加工するレーザー加工装置、研削装置、研磨装置等においても不具合を定量的に見つけることができず高精度な加工を維持できないという問題がある。
【0007】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、不具合を定量的に検出することができるチャックテーブルおよびチャックテーブルを備えた加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の第一の局面が提供するのは以下のチャックテーブルである。すなわち、被加工物を保持する保持部を備えたチャックテーブルであって、該保持部に格子状に複数のAEセンサーが配設され、被加工物を介して発生する弾性波を複数箇所で収集し、該複数のAEセンサーの配置に関連づけて弾性波の強さの分布を取得し、該保持部は、複数の細孔が形成された基板と、該基板の上面に配設された該複数のAEセンサーと、該基板を支持する枠体と、から少なくとも構成され、吸引源が該枠体に連通し該複数の細孔に吸引力を伝達して被加工物を吸引保持するチャックテーブルである。
【0010】
上記課題を解決するために本発明の第二の局面が提供するのは以下の加工装置である。すなわち、被加工物を保持する保持部を備えたチャックテーブルであって、該保持部に格子状に複数のAEセンサーが配設され、被加工物を介して発生する弾性波を複数箇所で収集し、該複数のAEセンサーの配置に関連づけて弾性波の強さの分布を取得するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に加工を施す加工手段と、該チャックテーブルと該加工手段とを相対的に加工送りする加工送り手段と、該複数のAEセンサーによって収集された弾性波の強さの分布を表示する表示手段と、を少なくとも備え、該加工手段は、被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と該切削ブレードに切削水を供給する切削水供給ノズルとから少なくとも構成され、該加工送り手段は、該チャックテーブルと該加工手段とをX軸方向に相対的に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該加工手段とをX軸方向に直交するY軸方向に相対的に割り出し送りするY軸送り手段と、を有する加工装置である。
【0011】
好適には、該複数のAEセンサーはX座標Y座標で配設され、該表示手段は収集された弾性波をX座標Y座標で表示する。該表示手段は収集された弾性波の強さを色で表示するのが好都合である。該複数のAEセンサーによって収集された弾性波を記録する記録手段を備えているのが好ましい。該切削ブレードによる切削に伴う弾性波、該切削ブレードを挟むように位置づけられた一対の該切削水供給ノズルから供給される切削水に伴う弾性波が該複数のAEセンサーによって収集されるのが好都合である。該複数のAEセンサーによって収集された弾性波の強さの分布によって切削水供給の不具合を検出するのが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第一の局面が提供するチャックテーブルは、被加工物を保持する保持部に格子状に複数のAEセンサーが配設され、被加工物を介して発生する弾性波を複数箇所で収集し、該複数のAEセンサーの配置に関連づけて弾性波の強さの分布を取得し、該保持部は、複数の細孔が形成された基板と、該基板の上面に配設された該複数のAEセンサーと、該基板を支持する枠体と、から少なくとも構成され、吸引源が該枠体に連通し該複数の細孔に吸引力を伝達して被加工物を吸引保持するように構成されているので、たとえば切削装置に装着された場合において、切削ブレードに目詰まりが生じたり、欠けが生じたり、または一対の切削水供給ノズルからの切削水が切削ブレードを挟んでアンバランスに供給されていたりすると、AEセンサーによって収集された弾性波の変化によって不具合を定量的に検出することができる。
【0013】
本発明の第二の局面が提供する加工装置は、被加工物を保持する保持部に格子状に複数のAEセンサーが配設され被加工物を介して発生する弾性波を複数箇所で収集し、該複数のAEセンサーの配置に関連づけて弾性波の強さの分布を取得するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に加工を施す加工手段と、該チャックテーブルと該加工手段とを相対的に加工送りする加工送り手段と、該複数のAEセンサーによって収集された弾性波の強さの分布を表示する表示手段と、を少なくとも備え、該加工手段は、被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と該切削ブレードに切削水を供給する切削水供給ノズルとから少なくとも構成され、該加工送り手段は、該チャックテーブルと該加工手段とをX軸方向に相対的に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該加工手段とをX軸方向に直交するY軸方向に相対的に割り出し送りするY軸送り手段と、を有するので、たとえば加工装置が切削装置である場合において、切削ブレードに目詰まりが生じたり、欠けが生じたり、または一対の切削水供給ノズルからの切削水が切削ブレードを挟んでアンバランスに供給されていたりすると、AEセンサーによって収集された弾性波の変化によって不具合を定量的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に従って構成されたチャックテーブルの斜視図。
【
図2】
図2に示すチャックテーブルの保持部の部分断面図。
【
図4】本発明に従って構成された加工装置の斜視図。
【
図5】
図4に示す加工装置により
図3に示すウエーハに加工が施されている状態を示す部分斜視図。
【
図6】
図5に示す加工が施されている際に表示手段に表示される画像の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従って構成されたチャックテーブルおよび加工装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
まず、本発明に従って構成されたチャックテーブルの実施形態について説明する。
図1に示すチャックテーブル2は、ウエーハ等の被加工物を保持する保持部4と、保持部4を支持する支持部6と、保持部4の周縁に間隔をおいて配置された複数のクランプ8とを備える。保持部4は、複数の細孔10a(
図2参照。)が形成された円形状の基板10と、基板10の上面に配設された複数のAE(Acoustic Emission)センサー12と、基板10を支持する枠体14とから少なくとも構成される。
図1に示すとおり、AEセンサー12は基板10の上面に格子状に配設されている。また、
図2に示すとおり、AEセンサー12は互いに間隔をおいて配設され、基板10の細孔10aはAEセンサー12間に位置している。枠体14は、基板10を支持する円形状の主部14aと、主部14aの下面中央部から下方に延びる筒状の連通部14bとを有し、連通部14bは吸引源(図示していない。)に連通している。そしてチャックテーブル2においては、吸引源を作動することにより、基板10の複数の細孔10aに吸引力を伝達して保持部4の上面に載せられた被加工物を吸引保持するようになっている。このようなチャックテーブル2は、切削装置やレーザー加工装置、研削装置、研磨装置等の加工装置に装着され、保持部4の上面で吸引保持した被加工物には切削加工やレーザー加工、研削加工、研磨加工等の加工が施される。そしてチャックテーブル2においては、被加工物に加工が施される際に被加工物を介して発生する弾性波を複数のAEセンサー12によって複数箇所で収集するようになっているので、AEセンサー12によって収集された弾性波の変化によって不具合を定量的に検出することができ、高精度な加工を維持することができる。
【0017】
次に、本発明に従って構成された加工装置について説明する。
図3には、本発明に従って構成された加工装置によって加工が施される被加工物としての円盤状のウエーハ20が示されている。このウエーハ20の表面20aは、格子状に形成された複数の分割予定ライン22によって複数の矩形領域に区画され、複数の矩形領域のそれぞれにはIC、LSI等の複数のデバイス24が形成されている。図示の実施形態におけるウエーハ20は、周縁が環状フレーム26に固定された粘着テープ28に貼り付けられている。
【0018】
図4に示す切削装置30は、本発明に従って構成された加工装置の一例であり、上述したとおりのチャックテーブル2と、チャックテーブル2に保持された被加工物に加工を施す加工手段32と、チャックテーブル2と加工手段32とを相対的に加工送りする加工送り手段(図示していない。)と、複数のAEセンサー12によって収集された弾性波の強さを表示する表示手段34とを少なくとも備える。
【0019】
チャックテーブル2は、
図4に矢印Xで示すX軸方向に移動自在、かつX軸方向に直交するZ軸方向(
図4に矢印Zで示す上下方向)に延びる軸線を中心として回転自在に装置ハウジング36に装着されている。チャックテーブル2が装置ハウジング36に装着された状態において、格子状に配設されている複数のAEセンサー12は、X軸方向に沿って整列していると共に、X軸方向およびZ軸方向に直交するY軸方向(
図4に矢印Yで示す方向)に沿って整列している。このため、複数のAEセンサー12のそれぞれはX座標Y座標で配設されており、X座標およびY座標により各AEセンサー12の位置が特定され得るようになっている。また、チャックテーブル2は、装置ハウジング36に内蔵されたチャックテーブル用モータ(図示していない。)によってZ軸方向に延びる軸線を中心として90度回転されるようになっており、チャックテーブル2の回転前後において複数のAEセンサー12はX軸方向およびY軸方向に沿って整列するようになっている。なお、X軸方向およびY軸方向が規定する平面は実質上水平である。
【0020】
図4および
図5を参照して加工手段32について説明する。加工手段32は、被加工物を切削する切削ブレード38を回転可能に備えた切削手段40と、切削ブレード38に切削水を供給する切削水供給ノズル42とから少なくとも構成される。図示の実施形態における切削手段40は、Y軸方向に移動自在かつZ軸方向に移動自在(昇降自在)に装置ハウジング36に支持されたスピンドルハウジング44と、Y軸方向を軸心として回転可能にスピンドルハウジング44に支持されたスピンドル46と、スピンドル46を回転させるモータ(図示していない。)と、スピンドルハウジング44の先端に装着されたブレードカバー48と備える。上記切削ブレード38はスピンドル46の先端に固定され、上記切削水供給ノズル42はブレードカバー48に付設されている。切削ブレード38の側面に沿って延びる切削水供給ノズル42は、切削ブレード38を挟んで両側に一対設けられているが、図面には片側の切削水供給ノズル42のみが示されている。また、切削水供給ノズル42は切削水供給源(図示していない。)に接続されており、チャックテーブル2に保持された被加工物に切削ブレード38で切削加工を施す際に、切削水供給源から供給された切削水を切削水供給ノズル42の複数の噴射口(図示していない。)から切削ブレード38および被加工物に向かって噴射するようになっている。
【0021】
図示の実施形態における上記加工送り手段は、チャックテーブル2と加工手段32とをX軸方向に相対的に加工送りするX軸送り手段(図示していない。)と、チャックテーブル2と加工手段32とをY軸方向に相対的に割り出し送りするY軸送り手段(図示していない。)とを有する。X軸送り手段は、チャックテーブル2に連結されX軸方向に延びるボールねじ(図示していない。)と、このボールねじを回転させるモータ(図示していない。)とから構成されていて、加工手段32に対してチャックテーブル2をX軸方向に相対的に加工送りする。また、チャックテーブル2の移動経路の上方には、チャックテーブル2に保持されたウエーハ20を撮像して切削すべき領域を検出する撮像手段50が設けられている。上記Y軸送り手段は、加工手段32のスピンドルハウジング44に連結されY軸方向に延びるボールねじ(図示していない。)と、このボールねじを回転させるモータ(図示していない。)とから構成されていて、チャックテーブル2に対して加工手段32をY軸方向に相対的に割り出し送りする。また、加工手段32のスピンドルハウジング44は、Z軸方向に延びるボールねじ(図示していない。)と、このボールねじを回転させるモータ(図示していない。)とから構成され得るZ軸送り手段によってZ軸方向に切り込み送り(昇降)されるようになっている。
【0022】
図4および
図6を参照して表示手段34について説明する。
図4に示すとおり、表示手段34は、装置ハウジング36の上面に搭載されている。また、
図6に示すとおり、表示手段34は、切削装置30の作動を制御する制御手段52を介して、複数のAEセンサー12のそれぞれに電気的に接続されている。そして、表示手段34は、X座標Y座標で配設されている各AEセンサー12によって収集された弾性波の強さを、各AEセンサー12のX座標Y座標に関連づけて、横軸をX座標とし縦軸をY座標として表示するようになっている。図示の実施形態における表示手段34は、収集された弾性波の強さを色で表示するようになっており、たとえば
図6に示すとおり、弾性波の強さのレベルをレベル5からレベル1までとして、弾性波の強さが強い(レベルが高い)ほど色が濃く、弾性波の強さが弱い(レベルが低い)ほど色が薄くなるように、レベル毎に色の濃さで弾性波の強さを表示する。あるいは、表示手段34は、レベル5の弾性波の強さを赤色、レベル4を桃色、レベル3を橙色、レベル2を黄色、レベル1を水色のように、レベル毎に異なる色で弾性波の強さを表示するようになっていてもよい。なお、弾性波の強さを示すレベルは5段階に限られない。
【0023】
制御手段52は、コンピュータから構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)54と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)56と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)58とを有する。制御手段52のランダムアクセスメモリ58は、複数のAEセンサー12によって収集された弾性波を記録する記録手段として機能する。
【0024】
図4に示すとおり、装置ハウジング36には、粘着テープ28を介して環状フレーム26に支持されたウエーハ20を複数枚収容したカセット60が昇降自在なカセット載置台62に載置されている。このカセット載置台62は、ボールねじおよびモータから構成され得る昇降手段(図示していない。)により昇降される。また、切削装置30は、カセット60から切削前のウエーハ20を引き出し仮置きテーブル64まで搬出すると共に仮置きテーブル64に位置づけられた切削済みのウエーハ20をカセット60に搬入する搬出入手段66と、カセット60から仮置きテーブル64に搬出された切削前のウエーハ20をチャックテーブル2に搬送する第一の搬送手段68と、切削済みのウエーハ20を洗浄する洗浄手段70と、切削済みのウエーハ20をチャックテーブル2から洗浄手段70に搬送する第二の搬送手段72とを更に備える。
【0025】
上述したとおりの切削装置30を用いてウエーハ20の分割予定ライン22を切削する際は、まず、粘着テープ28を介して環状フレーム26に支持された切削前のウエーハ20を搬出入手段66によってカセット60から引き出し仮置きテーブル64まで搬出する。次いで、仮置きテーブル64に搬出された切削前のウエーハ20を第一の搬送手段68によってチャックテーブル2に搬送する。この際は、分割予定ライン22をX軸方向に平行に位置づけて、ウエーハ20をチャックテーブル2の上面に載せる。次いで、吸引源を作動してチャックテーブル2の上面に吸引力を生成することによりウエーハ20を吸引保持する。また、複数のクランプ8で環状フレーム26を固定する。次いで、撮像手段50で上方からウエーハ20を撮像し、撮像手段50で撮像したウエーハ20の画像に基づいて、切削すべき分割予定ライン22を検出する。次いで、X軸送り手段でチャックテーブル2を移動させると共に、Y軸送り手段で加工手段32を移動させることにより、分割予定ライン22の上方に切削ブレード38を位置づける。次いで、
図5に矢印Aで示す方向に切削ブレード38をスピンドル46と共にモータで回転させる。次いで、Z軸送り手段で加工手段32を下降させ、X軸方向に整合させた分割予定ライン22に切削ブレード38の刃先を切り込ませると共に、X軸送り手段を作動して加工手段32に対してチャックテーブル2を相対的にX軸方向に所定の加工送り速度(たとえば50mm/s)で加工送りすることによって、分割予定ライン22をX軸方向に切削する切削加工を施す。切削加工の際は、一対の切削水供給ノズル42から切削ブレード38およびウエーハ20に向かって切削水を噴射する。次いで、Y軸送り手段を作動して分割予定ライン22のY軸方向間隔の分だけチャックテーブル2に対して加工手段32を相対的にY軸方向に割り出し送りする。そして、切削加工と割り出し送りとを交互に繰り返すことにより、X軸方向に整合させた分割予定ライン22のすべてに切削加工を施す。分割予定ライン22に沿って切削加工が施された部分(加工ライン)を
図5に符号74で示す。
【0026】
図示の実施形態では、上記切削加工の際に、被加工物であるウエーハ20を介して発生する弾性波を複数のAEセンサー12によって収集するようになっており、すなわち、切削ブレード38による切削に伴う弾性波、切削ブレード38を挟むように位置づけられた一対の切削水供給ノズル42から供給される切削水に伴う弾性波が複数のAEセンサー12によって収集される。各AEセンサー12で収集された弾性波の強さは、各AEセンサー12のX座標Y座標に関連づけて、制御手段52のランダムアクセスメモリ58に記録されると共に表示手段34に表示される。表示手段34のX軸方向の画面送りはチャックテーブル2の加工送りと同期するように設定されていると共に、表示手段34のY軸方向の画面送りは加工手段32の割り出し送りと同期するように設定されており、表示手段34には加工位置および加工位置の周囲のAEセンサー12から収集された弾性波が表示されるようになっている。したがって図示の実施形態では、切削ブレード38に目詰まりが生じたり、欠けが生じたり、または切削水供給ノズル42の噴射口位置がズレること等により一対の切削水供給ノズル42からの切削水が切削ブレード38を挟んでアンバランスに供給されていたりすると、AEセンサー12によって収集された弾性波の変化によって不具合を定量的に検出することができるので、高精度な切削加工を維持することができる。
【0027】
また、X軸方向に整合させた分割予定ライン22のすべてを切削した後は、チャックテーブル用モータでチャックテーブル2を90度回転させることにより、先に切削加工を施した分割予定ライン22と直交する分割予定ライン22をX軸方向に整合させ、そして切削加工と割り出し送りとを交互に繰り返すことにより、先に切削加工を施した分割予定ライン22と直交する分割予定ライン22のすべてにも切削加工を施す。この際は、チャックテーブル2の90度回転により各AEセンサー12のX座標Y座標が変わっているが、各AEセンサー12の位置については制御手段52の中央処理装置54によって適宜座標変換がなされ、そして横軸をX座標とし縦軸をY座標として、各AEセンサー12によって収集された弾性波が表示手段34に表示される。
【0028】
なお、図示の実施形態では加工装置の例として、チャックテーブル2に保持された被加工物に切削加工を施す切削装置30について説明したが、本発明に係る加工装置は、チャックテーブル2に保持された被加工物に対して、レーザー加工を施すレーザー加工装置、研削加工を施す研削装置、研磨加工を施す研磨装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
2:チャックテーブル
4:保持部
10:基板
10a:細孔
12:AEセンサー
14:枠体
30:切削装置(加工装置)
32:加工手段
34:表示手段
40:切削手段
42:切削水供給ノズル