(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ループ型ヒートパイプ
(51)【国際特許分類】
F28D 15/04 20060101AFI20221129BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
F28D15/04 E
F28D15/02 101L
F28D15/02 E
(21)【出願番号】P 2018199516
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋弘
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-193912(JP,A)
【文献】特開2016-142416(JP,A)
【文献】特開2018-036012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を気化させる蒸発器と、
前記作動流体を液化する凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループを形成する蒸気管と、
前記蒸発器内に設けられた第1多孔質体と、
前記液管内に設けられた第2多孔質体と、
を有し、
前記蒸発器と前記液管との接続領域は、
前記第1多孔質体
から前記第2多孔質体
の側に延伸した多孔質の第1延伸部と、
前記第2多孔質体に形成された第1凹部と、
前記第1多孔質体、前記第2多孔質体、前記第1凹部、及び前記第1延伸部と接する空間部と、を備え、
前記第1延伸部の先端側は、前
記第1凹部内に挿入されているループ型ヒートパイプ。
【請求項2】
作動流体を気化させる蒸発器と、
前記作動流体を液化する凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループを形成する蒸気管と、
前記蒸発器内に設けられた第1多孔質体と、
前記液管内に設けられた第2多孔質体と、
を有し、
前記蒸発器と前記液管との接続領域は、
前記第2多孔質体から
前記第1多孔質体の側に延伸した多孔質の第1延伸部と、
前記第1多孔質体に形成された第1凹部と、
前記第1多孔質体、前記第2多孔質体、前記第1凹部、及び前記第1延伸部と接する空間部と、を備え、
前記第1延伸部の先端側は、前
記第1凹部内に挿入されているループ型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記第1多孔質体及び前記第2多孔質体は積層された所定数の金属層を含み、前記金属層の積層方向から視て、前記第1延伸部が複数個並置されている請求項1
又は2に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記第1延伸部の先端面は、前記第1凹部の内壁面と接している請求項1
乃至3の何れか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項5】
前記接続領域は、前記第1多孔質体及び前記第2多孔質体の
うち前記第1凹部が形成された多孔質体側から前記第1延伸部が形成された多孔質体側に延伸した多孔質の第2延伸部を備え、
前記第2延伸部の先端側は、前記第1多孔質体及び前記第2多孔質体の
うち前記第1延伸部が形成された多孔質体に形成された第2凹部内に挿入されている請求項1乃至
4の何れか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項6】
前記第1多孔質体及び前記第2多孔質体は積層された所定数の金属層を含み、前記金属層の積層方向から視て、前記第2延伸部が複数個並置されている請求項
5に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項7】
前記第1延伸部と前記第2延伸部とが
前記金属層の積層方向から視て交互に配置されている請求項
6に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項8】
前記第2延伸部の先端面は、前記第2凹部の内壁面と接している請求項
5乃至
7の何れか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項9】
前記第1多孔質体及び前記第2多孔質体は積層された所定数の金属層を含み、
前記第2延伸部は、前記所定数の金属層のうちの1層以上の金属層が延伸して形成されている請求項
5乃至
8の何れか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項10】
前記第1多孔質体及び前記第2多孔質体は積層された所定数の金属層を含み、
前記第1延伸部は、前記所定数の金属層のうちの1層以上の金属層が延伸して形成されている請求項1乃至
9の何れか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項11】
前記所定数の金属層は、
一方の面側から窪む第1有底孔と、他方の面側から窪む第2有底孔と、前記第1有底孔と前記第2有底孔とが部分的に連通して形成された細孔と、を備えた金属層を含む請求項
9又は
10に記載のループ型ヒートパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループ型ヒートパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載されるCPU(Central Processing Unit)等の発熱部品を冷却するデバイスとして、ヒートパイプが知られている。ヒートパイプは、作動流体の相変化を利用して熱を輸送するデバイスである。
【0003】
ヒートパイプの一例として、発熱部品の熱により作動流体を気化させる蒸発器と、気化した作動流体を冷却して液化する凝縮器とを備え、蒸発器と凝縮器とがループ状の流路を形成する液管と蒸気管で接続されたループ型ヒートパイプが挙げられる。ループ型ヒートパイプでは、作動流体はループ状の流路を一方向に流れる。
【0004】
又、ループ型ヒートパイプの蒸発器や液管内には、多孔質体が設けられており、多孔質体に生じる毛細管力で液管内の作動流体を蒸発器に誘導し、蒸発器から液管に蒸気が逆流することを抑制している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、蒸発器と液管との接続領域は空間となっており、蒸発器内に設けられた多孔質体と液管内に設けられた多孔質体は接続領域には存在しない。すなわち、蒸発器内に設けられた多孔質体と液管内に設けられた多孔質体は接続領域において分断されており、両者は接続されていない。
【0007】
そのため、液管から蒸発器内への液循環が悪くなると共に、接続領域に不必要な液溜まりが発生して液管から蒸発器への液導入が阻害される場合がある。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、液管から蒸発器への液導入性を向上したループ型ヒートパイプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本ループ型ヒートパイプは、作動流体を気化させる蒸発器と、前記作動流体を液化する凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループを形成する蒸気管と、前記蒸発器内に設けられた第1多孔質体と、前記液管内に設けられた第2多孔質体と、を有し、前記蒸発器と前記液管との接続領域は、前記第1多孔質体から前記第2多孔質体の側に延伸した多孔質の第1延伸部と、前記第2多孔質体に形成された第1凹部と、前記第1多孔質体、前記第2多孔質体、前記第1凹部、及び前記第1延伸部と接する空間部と、を備え、前記第1延伸部の先端側は、前記第1凹部内に挿入されていることを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、液管から蒸発器への液導入性を向上したループ型ヒートパイプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るループ型ヒートパイプを例示する平面模式図である。
【
図2】第1実施形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器及びその周囲の断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図である。
【
図5】従来のループ型ヒートパイプについて説明する図である。
【
図6】第1実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その1)である。
【
図7】第1実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その2)である。
【
図8】第1実施形態の変形例1に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図(その1)である。
【
図9】第1実施形態の変形例1に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図(その2)である。
【
図10】第1実施形態の変形例2に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図である。
【
図11】第1実施形態の変形例3に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図である。
【
図12】第1実施形態の変形例4に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図である。
【
図13】第1実施形態の変形例5に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図である。
【
図14】第1実施形態の変形例6に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
〈第1実施形態〉
[第1実施形態に係るループ型ヒートパイプの構造]
まず、第1実施形態に係るループ型ヒートパイプの構造について説明する。
図1は、第1実施形態に係るループ型ヒートパイプを例示する平面模式図である。
【0014】
図1を参照すると、ループ型ヒートパイプ1は、蒸発器10と、凝縮器20と、蒸気管30と、液管40と、注入口60とを有する。ループ型ヒートパイプ1は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル型の電子機器2に収容することができる。
【0015】
ループ型ヒートパイプ1において、蒸発器10は、作動流体Cを気化させて蒸気Cvを生成する機能を有する。凝縮器20は、作動流体Cの蒸気Cvを液化させる機能を有する。蒸発器10と凝縮器20は、蒸気管30及び液管40により接続されており、蒸気管30及び液管40によって作動流体C又は蒸気Cvが流れるループである流路50が形成されている。
【0016】
注入口60は、作動流体Cを液管40内に注入するための入り口であり、作動流体Cを注入後に気密封止されている。但し、本実施形態では、注入口60を液管40に接続しているが、注入口60を凝縮器20や蒸気管30に接続してもよい。この場合、凝縮器20や蒸気管30に注入された作動流体Cは、流路50内を流れて液管40内に移動する。
【0017】
図2は、第1実施形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器及びその周囲の断面図である。
図1及び
図2に示すように、蒸発器10には、例えば4つの貫通孔10xが形成されている。蒸発器10に形成された各貫通孔10xと回路基板100に形成された各貫通孔100xにボルト150を挿入し、回路基板100の下面側からナット160で止めることにより、蒸発器10と回路基板100とが固定される。
【0018】
回路基板100には、例えば、CPU等の発熱部品120がバンプ110により実装され、発熱部品120の上面が蒸発器10の下面と密着する。蒸発器10内の作動流体Cは、発熱部品120で発生した熱により気化し、蒸気Cvが生成される。
【0019】
図1に示すように、蒸発器10に生成された蒸気Cvは、蒸気管30を通って凝縮器20に導かれ、凝縮器20において液化する。これにより、発熱部品120で発生した熱が凝縮器20に移動し、発熱部品120の温度上昇が抑制される。凝縮器20で液化した作動流体Cは、液管40を通って蒸発器10に導かれる。蒸気管30の幅W
1は、例えば、8mm程度とすることができる。又、液管40の幅W
2は、例えば、6mm程度とすることができる。蒸気管30の幅W
1や液管40の幅W
2は、これに限らず、例えば互いに等しくてもよい。
【0020】
作動流体Cの種類は特に限定されないが、蒸発潜熱によって発熱部品120を効率的に冷却するために、蒸気圧が高く、かつ蒸発潜熱が大きい流体を使用することが好ましい。そのような流体としては、例えば、アンモニア、水、フロン、アルコール、及びアセトンを挙げることができる。
【0021】
蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30、液管40、及び注入口60は、例えば、金属層が複数積層された構造とすることができる。金属層は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層の各々の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。
【0022】
なお、金属層は銅層には限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。又、金属層の積層数は特に限定されない。
【0023】
図3は、第1実施形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図であり、
図3(a)は
図1のS部の平面図である。又、
図3(b)は
図3(a)のA-A線に沿う断面図であり、
図3(c)は
図3(a)のB-B線に沿う断面図である。なお、
図3(a)では、最外金属層である金属層81及び86の図示を省略している。又、
図3(a)は断面図ではないが、便宜上、各部に
図3(b)及び
図3(c)に対応するハッチングを施している。
【0024】
図3に示すように、蒸発器10及び液管40は、金属層81~86の6層が積層された構造である。蒸発器10及び液管40において、金属層81及び86が最外層であり、金属層82~85が内層である。但し、蒸発器10及び液管40における金属層の積層数は6層には限定されず、最低3層以上の金属層が積層されていればよい。すなわち、2層の最外層の間に1層以上の内層が積層されていればよい。
【0025】
金属層81及び86は、蒸発器10及び液管40を構成する金属層の積層構造の厚さ方向の両外側に位置し、金属層82~85は金属層81と金属層86との間に積層されている。本実施形態では、金属層81及び86は、孔や溝が形成されていないベタ状とされており、蒸発器10及び液管40の外壁の一部を構成している。
【0026】
金属層81~86は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層81~86の各々の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。なお、金属層81~86は銅層には限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。
【0027】
蒸発器10内には多孔質体830が設けられ、液管40内には多孔質体840が設けられている。より詳しくは、蒸発器10の内層(金属層82~85)において、離間して配置された互いに対向する管壁880と管壁890との間に多孔質体830が設けられている。管壁880、890と多孔質体830は、一体的に(連続して)設けられている。図面では、便宜上、管壁と多孔質体の境界を実線で示し、ハッチングも異なっている。又、液管40の内層(金属層82~85)において、蒸発器10と同様に、離間して配置された互いに対向する管壁880と管壁890との間に多孔質体840が設けられている。管壁880、890と多孔質体840は、一体的に(連続して)設けられている。図面では、便宜上、管壁と多孔質体の境界を実線で示し、ハッチングも異なっている。
【0028】
図4は、多孔質体について説明する図であり、
図4(a)は
図3(a)のC部の拡大図、
図4(b)は
図3(b)のD部の拡大図である。なお、
図4では、多孔質体840について説明するが、多孔質体830も多孔質体840と同一構造である。
【0029】
図4(a)、(b)に示すように、多孔質体840において、1層目(一方の最外層)の金属層81及び6層目(他方の最外層)の金属層86には、孔や溝は形成されていない(つまり、最外層の金属層はべた状である)。これに対して、金属層82には、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔82xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔82yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0030】
有底孔82xと有底孔82yとは、平面視でX方向に交互に配置されている。又、有底孔82xと有底孔82yとは、平面視でY方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔82xと有底孔82yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔82zを形成している。又、Y方向に交互に配置された有底孔82xと有底孔82yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔82zを形成している。
【0031】
有底孔82x及び82yの平面形状は、例えば、直径が100~300μm程度の円形とすることができるが、楕円形や多角形等の任意の形状として構わない。有底孔82x及び82yの深さは、例えば、金属層82の厚さの半分程度とすることができる。X方向に隣接する有底孔82xの間隔L1は、例えば、100~400μm程度とすることができる。Y方向に隣接する有底孔82xの間隔についても同様である。X方向に隣接する有底孔82yの間隔L2は、例えば、100~400μm程度とすることができる。Y方向に隣接する有底孔82yの間隔についても同様である。
【0032】
有底孔82x及び82yのXZ平面に平行な断面形状及びYZ平面に平行な断面形状は、例えば、略半円形や略半楕円形とすることができる。但し、有底孔82x及び82yのXZ平面に平行な断面形状及びYZ平面に平行な断面形状は、底面側から開口側に向かって拡幅するテーパ形状や、底面に対して垂直な形状であっても構わない。
【0033】
細孔82zの短手方向の幅W3は、例えば、10~50μm程度とすることができる。又、細孔82zの長手方向の幅W4は、例えば、50~150μm程度とすることができる。
【0034】
金属層83には、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔83xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔83yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0035】
有底孔83xと有底孔83yとは、平面視でX方向に交互に配置されている。又、有底孔83xと有底孔83yとは、平面視でY方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔83xと有底孔83yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔83zを形成している。又、Y方向に交互に配置された有底孔83xと有底孔83yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔83zを形成している。有底孔83x及び83y、細孔83zの形状等は、例えば、有底孔82x及び82y、細孔82zの形状等と同様とすることができる。
【0036】
又、金属層82の有底孔82yと金属層83の有底孔83xとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔87zを形成している。
【0037】
金属層84には、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔84xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔84yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0038】
有底孔84xと有底孔84yとは、平面視でX方向に交互に配置されている。又、有底孔84xと有底孔84yとは、平面視でY方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔84xと有底孔84yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔84zを形成している。又、Y方向に交互に配置された有底孔84xと有底孔84yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔84zを形成している。有底孔84x及び84y、細孔84zの形状等は、例えば、有底孔82x及び82y、細孔82zの形状等と同様とすることができる。
【0039】
又、金属層83の有底孔83yと金属層84の有底孔84xとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔88zを形成している。
【0040】
金属層85には、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔85xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔85yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0041】
有底孔85xと有底孔85yとは、平面視でX方向に交互に配置されている。又、有底孔85xと有底孔85yとは、平面視でY方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔85xと有底孔85yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔85zを形成している。又、Y方向に交互に配置された有底孔85xと有底孔85yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔85zを形成している。有底孔85x及び85y、細孔85zの形状等は、例えば、有底孔82x及び82y、細孔82zの形状等と同様とすることができる。
【0042】
又、金属層84の有底孔84yと金属層85の有底孔85xとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔89zを形成している。
【0043】
各金属層に形成された細孔同士は互いに連通しており、互いに連通する細孔は多孔質体840内に三次元的に広がっている。そのため、作動流体Cは、毛細管力により、互いに連通する細孔内を三次元的に広がる。
【0044】
但し、
図4では、有底孔82xと有底孔83xと有底孔84xと有底孔85x、及び有底孔82yと有底孔83yと有底孔84yと有底孔85yが平面視で重複する形態を例示しているが、これには限定されない。すなわち、互いに連通する細孔が多孔質体840内に三次元的に広がる形態であれば、有底孔82xと有底孔83xと有底孔84xと有底孔85xとは必ずしも平面視で重複しなくてもよい。又、有底孔82yと有底孔83yと有底孔84yと有底孔85yとは必ずしも平面視で重複しなくてもよい。
【0045】
図5は、従来のループ型ヒートパイプについて説明する図であり、
図5(a)は
図3(a)に対応する平面図、
図5(b)は
図5(a)のB-B線に沿う断面図であり
図3(c)に対応する断面を示している。
【0046】
図5に示すように、従来のループ型ヒートパイプ1Xにおいて、蒸発器10の内層(金属層82~85)において、離間して配置された互いに対向する管壁880と管壁890との間には多孔質体830が設けられている。又、液管40の内層(金属層82~85)において、蒸発器10と同様に、離間して配置された互いに対向する管壁880と管壁890との間には多孔質体840が設けられている。又、蒸発器10と液管40との間には接続領域70が設けられているが、接続領域70には多孔質体830及び840は配置されていない。すなわち、従来のループ型ヒートパイプ1Xでは、接続領域70の互いに対向する管壁880と管壁890との間は空間部70Sのみが存在する。
【0047】
これに対して、
図3に示すように、ループ型ヒートパイプ1では、蒸発器10内には多孔質体830が設けられ、液管40内には多孔質体840と空間部40Sが設けられている。又、蒸発器10と液管40の接続領域70には、多孔質の延伸部831と空間部70Sが設けられている。空間部70Sは、延伸部831の側面831q及び831rの一部及び多孔質体830の端部の一部、多孔質体840の端部の一部と接している。
【0048】
多孔質の延伸部831は、平面視において、多孔質体830の接続領域70側端面830eのX方向中央部近傍からY方向に(液管40側に)突起している。
【0049】
多孔質の延伸部831は、蒸発器10内の多孔質体830と一体的に(連続して)設けられている。又、多孔質の延伸部831と多孔質体830は、同じ材料から形成されている。多孔質の延伸部831と蒸発器10内の多孔質体830は、平面視において、例えば、凸形状を構成している。
【0050】
液管40内に設けられた多孔質体840の蒸発器10側の端部には、凹部844を有している。より詳しくは、凹部844は、平面視において、多孔質体840の接続領域70側端面840eのX方向中央部近傍からY方向に(液管40側に)窪んでいる。
【0051】
多孔質体830及び840は積層された4つの金属層(金属層82~85)を含むが、延伸部831も多孔質体830及び840と同様に積層された4つの金属層(金属層82~85)を含む。すなわち、延伸部831は、4つの金属層(金属層82~85)が延伸して形成されており、多孔質体830及び840と同様の多孔質構造である。
【0052】
又、凹部844も多孔質体830及び840と同様に積層された4つの金属層(金属層82~85)を含む。すなわち、凹部844は、4つの金属層(金属層82~85)が窪んで形成されており、多孔質体830及び840と同様の多孔質構造である。
【0053】
延伸部831のY方向の先端側(液管40側)は、平面視において、接続領域70を超えて液管40内に達し、多孔質体840に形成された凹部844内に挿入されている。
【0054】
延伸部831の先端面831p、側面831q、及び831rは、凹部844の内壁面とは接していない。つまり、延伸部831の先端面831p、側面831q、及び831rは、凹部844の内壁面と離間して配置され、互いに対向している。延伸部831の先端面831p、側面831q、及び831rと凹部844の内壁面との間には空間部40Sが形成されている。空間部40Sは、空間部70Sと連通している。なお、
図3(b)及び
図3(c)に示すように、延伸部831の上面は金属層81の下面に接し、延伸部831の下面は金属層86の上面に接している。
【0055】
[第1実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造方法]
次に、第1実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造方法について、多孔質体の製造工程を中心に説明する。
図6及び
図7は、第1実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図であり、
図4(b)に対応する断面を示している。なお、
図6及び
図7では多孔質体840の形成について図示するが、多孔質体830についても同様の方法により形成される。
【0056】
まず、
図6(a)に示す工程では、
図1の平面形状に形成された金属シート820を準備する。そして、金属シート820の上面にレジスト層310を形成し、金属シート820の下面にレジスト層320を形成する。金属シート820は、最終的に金属層82となる部材であり、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム合金等から形成することができる。金属シート820の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。レジスト層310及び320としては、例えば、感光性のドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0057】
次に、
図6(b)に示す工程では、金属シート820の多孔質体840を形成する領域において、レジスト層310を露光及び現像して、金属シート820の上面を選択的に露出する開口部310xを形成する。又、レジスト層320を露光及び現像して、金属シート820の下面を選択的に露出する開口部320xを形成する。開口部310xの形状及び配置は、
図4に示した有底孔82xの形状及び配置に対応するように形成する。又、開口部320xの形状及び配置は、
図4に示した有底孔82yの形状及び配置に対応するように形成する。
【0058】
次に、
図6(c)に示す工程では、開口部310x内に露出する金属シート820を金属シート820の上面側からハーフエッチングすると共に、開口部320x内に露出する金属シート820を金属シート820の下面側からハーフエッチングする。これにより、金属シート820の上面側に有底孔82xが形成され、下面側に有底孔82yが形成される。又、表裏でX方向に交互に配置された開口部310xと開口部320xとは、平面視で部分的に重複しているため、重複する部分が連通して細孔82zが形成される。又、平面視でレジスト層310及び320が何れも形成されていない領域は、両面からハーフエッチングされて貫通する。この領域は最終的に空間部となる。金属シート820のハーフエッチングには、例えば、塩化第二鉄溶液を用いることができる。
【0059】
次に、
図6(d)に示す工程では、レジスト層310及び320を剥離液により剥離する。これにより、金属層82が完成する。
【0060】
次に、
図7(a)に示す工程では、孔や溝が形成されていないベタ状の金属層81及び86を準備する。又、金属層82と同様の方法により、金属層83~85を形成する。金属層83~85に形成される有底孔及び細孔の位置は、例えば、
図4に示した通りである。
【0061】
次に、
図7(b)に示す工程では、
図7(a)に示す順番で各金属層を積層し、加圧及び加熱により固相接合を行う。これにより、隣接する金属層同士が直接接合され、蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30、及び液管40を有するループ型ヒートパイプ1が完成し、蒸発器10に多孔質体830が形成され、液管40に多孔質体840が形成される。その後、真空ポンプ等を用いて液管40内を排気した後、注入口60から液管40内に作動流体Cを注入し、その後注入口60を封止する。
【0062】
ここで、固相接合とは、接合対象物同士を溶融させることなく固相(固体)状態のまま加熱して軟化させ、更に加圧して塑性変形を与えて接合する方法である。なお、固相接合によって隣接する金属層同士を良好に接合できるように、金属層81~86の全ての材料を同一にすることが好ましい。
【0063】
このように、蒸発器10には多孔質体830が設けられており、多孔質体830は接続領域70まで延びている。又、液管40には多孔質体840が設けられており、多孔質体840は接続領域70まで延びている。更に、接続領域70は、多孔質体830から延伸した延伸部831と、延伸部831と接する空間部70Sとを備えており、延伸部831は多孔質体830及び840と同様の多孔質構造である。そして、延伸部831の先端側は、多孔質体840に形成された凹部844内に挿入されている。
【0064】
多孔質体840は、毛細管力による作動流体Cの移動及び貯蔵効果が高い反面、例えば貯蔵限界量まで作動流体Cが移動してこないと、多孔質体840外へ作動流体Cが漏れ出せない。従って、従来のループ型ヒートパイプのように、液管と蒸発器との接続領域が空間部のみを備え、多孔質体からの延伸部が存在しない場合、液管から蒸発器への液導入に支障が生じる場合がある。
【0065】
一方、ループ型ヒートパイプ1では、接続領域70に延伸部831を設け、延伸部831の先端側を多孔質体840に形成された凹部844内に挿入されている。そのため、延伸部831を構成する多孔質体に生じる毛細管力によって、液管40内の液相の作動流体Cを蒸発器10まで効果的に誘導することが可能となり、液管40から蒸発器10への液導入性を向上できる。
【0066】
又、仮に、液管と蒸発器との接続領域に延伸部のみを設け空間部を設けないと、蒸発器10からのヒートリークが生じ、熱輸送特性が低下してしまうおそれがある。ループ型ヒートパイプ1では、接続領域70に延伸部831に加え空間部70Sを設けているため、蒸発器10からのヒートリークを抑制することができる。又、空間部70Sは作動流体Cを貯留する領域としても利用できるため、ドライアウト(作動流体Cが枯渇した状態)を防止することが可能となる。
【0067】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、多孔質体を構成する一部の金属層のみから延伸部を形成する例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0068】
図8は、第1実施形態の変形例1に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図であり、
図3(a)に対応する平面図である。又、
図8(b)は
図8(a)のA-A線に沿う断面図であり、
図8(c)は
図8(a)のB-B線に沿う断面図である。なお、
図8(a)では、最外層である金属層81及び86の図示を省略している。又、
図8(a)は断面図ではないが、便宜上、各部に
図8(b)及び
図8(c)に対応するハッチングを施している。
【0069】
図8に示すように、第1実施形態の変形例1では、接続領域70は、多孔質体830から延伸した延伸部832と、延伸部832と接する空間部70Sとを備えている。延伸部832は、平面形状は
図3に示す延伸部831と同様であるが、延伸部831が金属層82~85により形成されていたのに対し、延伸部832は金属層83及び84のみにより形成されている点が延伸部831と相違する。
【0070】
又、多孔質体840の金属層83及び84のみに凹部845が設けられ、延伸部832のY方向の先端側(液管40側)は、平面視において、接続領域70を超えて液管40内に達し、多孔質体840に形成された凹部845内に挿入されている。
【0071】
延伸部832の先端面832p、側面832q、及び832rは、凹部845の内壁面とは接していない。つまり、延伸部832の先端面832p、側面832q、及び832rは、凹部845の内壁面と離間して配置され、互いに対向している。延伸部832の先端面832p、側面832q、及び832rと凹部845の内壁面との間には空間部40Sが形成されている。空間部40Sは、空間部70Sと連通している。なお、
図8(b)及び
図8(c)に示すように、延伸部832の凹部845内に挿入された部分の上面は金属層82の下面に接し、凹部845内に挿入された部分の下面は金属層85の上面に接している。
【0072】
なお、
図9(a)に示すように、延伸部832を金属層82及び85のみで形成し、凹部845を金属層82及び85のみに形成してもよい。又、
図9(b)に示すように、延伸部832を金属層82及び84のみで形成し、凹部845を金属層82及び84のみに形成してもよい。又、
図9(c)に示すように、延伸部832を金属層82及び83のみで形成し、凹部845を金属層82及び83のみに形成してもよい。又、
図9(d)に示すように、延伸部832を金属層84及び85のみで形成し、凹部845を金属層84及び85のみに形成してもよい。或いは、延伸部832を金属層82~85のうちの何れか1層又は3層で形成し、凹部845は、延伸部832を形成した金属層のみに形成してもよい。
【0073】
このように、多孔質体830を構成する全ての金属層82~85からではなく、一部の金属層のみから延伸部832を形成してもよい。延伸部832を形成する一部の金属層としては、金属層82~85から1層以上3層以下の任意の金属層を選択することができる。すなわち、延伸部832は、多孔質体830及び840を構成する所定数の金属層のうちの1層以上の金属層が延伸して形成されてもよい。この場合も、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0074】
〈第1実施形態の変形例2〉
第1実施形態の変形例2では、接続領域に延伸部を複数個並置する例を示す。なお、第1実施形態の変形例2において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0075】
図10は、第1実施形態の変形例2に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図であり、
図3(a)に対応する平面図である。又、
図10(b)は
図10(a)のA-A線に沿う断面図であり、
図10(c)は
図10(a)のB-B線に沿う断面図である。なお、
図10(a)では、最外層である金属層81及び86の図示を省略している。又、
図10(a)は断面図ではないが、便宜上、各部に
図10(b)及び
図10(c)に対応するハッチングを施している。
【0076】
図10に示すように、第1実施形態の変形例2では、接続領域70は、多孔質体830から延伸した多孔質の延伸部832a、832b、及び832cを備えている。多孔質の延伸部832a、832b、及び832cと蒸発器10内の多孔質体830は、平面視において、例えば、櫛歯形状を構成している。
【0077】
又、接続領域70は、延伸部832a、832b、及び832cの各々の側面832q及び832rの一部及び多孔質体830の端部の一部、多孔質体840の端部の一部と接する空間部70Sを備えている。
【0078】
延伸部832a~832cは、金属層83及び84のみで形成されている。延伸部832a~832cは、平面視において、多孔質体830の接続領域70側端部から各々がY方向に(液管40側に)突起しており、所定間隔でX方向に並置されている。
【0079】
多孔質体840の金属層83及び84には、接続領域70側に開口する3つの凹部845a、845b、及び845cが、所定間隔でX方向に並置されている。延伸部832aのY方向の先端側(液管40側)は、平面視において、接続領域70を超えて液管40内に達し、凹部845a内に挿入されている。又、延伸部832bのY方向の先端側(液管40側)は、平面視において、接続領域70を超えて液管40内に達し、凹部845b内に挿入されている。又、延伸部832cのY方向の先端側(液管40側)は、平面視において、接続領域70を超えて液管40内に達し、凹部845c内に挿入されている。
【0080】
延伸部832a~832cの各々の先端面832p、側面832q、及び832rは、凹部845a~845cの内壁面とは接していない。つまり、延伸部832a~832cの各々の先端面832p、側面832q、及び832rは、凹部845a~845cの内壁面と離間して配置され、互いに対向している。延伸部832a~832cの各々の先端面832p、側面832q、及び832rと凹部845a~845cの内壁面との間には空間部40Sが形成されている。空間部40Sは、空間部70Sと連通している。なお、
図10(b)及び
図10(c)に示すように、延伸部832a~832cの各々の凹部845a~845c内に挿入された部分の上面は金属層82の下面に接し、延伸部832a~832cの各々の凹部845a~845c内に挿入された部分の下面は金属層85の上面に接している。
【0081】
なお、
図9(a)の場合と同様に、延伸部832a~832cを金属層82及び85のみで形成し、凹部845a~845cを金属層82及び85のみに形成してもよい。又、
図9(b)の場合と同様に、延伸部832a~832cを金属層82及び84のみで形成し、凹部845a~845cを金属層82及び84のみに形成してもよい。又、
図9(c)の場合と同様に、延伸部832a~832cを金属層82及び83のみで形成し、凹部845a~845cを金属層82及び83のみに形成してもよい。又、
図9(d)の場合と同様に、延伸部832a~832cを金属層84及び85のみで形成し、凹部845a~845cを金属層84及び85のみに形成してもよい。或いは、延伸部832a~832cを金属層82~85のうちの何れか1層又は3層で形成し、凹部845a~845cは、延伸部832a~832cを形成した金属層のみに形成してもよい。
【0082】
このように、接続領域70に複数の延伸部(例えば、延伸部832a、832b、832c)を並置してもよい。接続領域70に複数の延伸部を設けた場合には、第1実施形態のように接続領域70に1つの延伸部を設けた場合よりも、より高い効果を奏する。
【0083】
すなわち、延伸部832a~832cを構成する多孔質体に生じる毛細管力によって、液管40内の液相の作動流体Cを蒸発器10まで更に効果的に誘導することが可能となり、液管40から蒸発器10への液導入性を更に向上できる。又、蒸発器10からのヒートリークの抑制や、ドライアウトの防止効果を更に高めることができる。
【0084】
なお、接続領域70に並置する延伸部の数は3個には限定されず、2個でもよいし、4個以上でもよい。又、各々の延伸部は、X方向の幅やY方向の長さが異なっていてもよい。
【0085】
〈第1実施形態の変形例3〉
第1実施形態の変形例3では、液管側の多孔質体にも延伸部を設ける例を示す。なお、第1実施形態の変形例3において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0086】
図11は、第1実施形態の変形例3に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図であり、
図3(a)に対応する平面図である。又、
図11(b)は
図11(a)のA-A線に沿う断面図であり、
図11(c)は
図11(a)のB-B線に沿う断面図である。なお、
図11(a)では、最外層である金属層81及び86の図示を省略している。又、
図11(a)は断面図ではないが、便宜上、各部に
図11(b)及び
図11(c)に対応するハッチングを施している。
【0087】
図11に示すように、第1実施形態の変形例3では、接続領域70は、第1実施形態の変形例2と同様に、多孔質体830から延伸した多孔質の延伸部832a、832b、及び832cと、多孔質体840に設けられた凹部845a、845b、845cを備えている。又、接続領域70は、第1実施形態の変形例2とは異なり、多孔質体840から延伸した多孔質の延伸部842a及び842bと、多孔質体830に設けられた凹部835a、835bを備えている。延伸部832a、832b、832c、842a、842b、及び多孔質体830の端部の一部、多孔質体840の端部の一部は、空間部70Sと接している。
【0088】
多孔質体830から延伸した延伸部832a、832b、及び832cと、多孔質体840から延伸した延伸部842a及び842bは、例えば、平面視で交互に配置することができる。これにより、液管側の多孔質体を進んで動く作動流体と、蒸発器側の多孔質体が作動流体を吸い上げて動く2つの流動効果が得られる。
【0089】
具体的には、例えば、延伸部842a及び842bは、金属層83及び84のみで形成されている。延伸部842a及び842bは、平面視において、多孔質体840の接続領域70側端部から各々がY方向に(蒸発器10側に)突起しており、所定間隔でX方向に並置されている。延伸部842a及び842bは、液管40内の多孔質体840と一体的に(連続して)設けられている。
【0090】
多孔質体830の金属層83及び84には、接続領域70側に開口する2つの凹部835a及び835bが、所定間隔でX方向に並置されている。凹部835a及び835bは、平面視において、多孔質体830の接続領域70側端面830eからY方向に(蒸発器10側に)窪んでいる。延伸部842aのY方向の先端側(蒸発器10側)は、平面視において、接続領域70を超えて蒸発器10内に達し、凹部835a内に挿入されている。又、延伸部842bのY方向の先端側(蒸発器10側)は、平面視において、接続領域70を超えて蒸発器10内に達し、凹部835b内に挿入されている。
【0091】
延伸部842a及び842bの各々の先端面842p、側面842q、及び842rは、凹部835a及び835bの内壁面とは接していない。つまり、延伸部842a及び842bの各々の先端面842p、側面842q、及び842rは、凹部835a及び835bの内壁面と離間して配置され、互いに対向している。延伸部842a及び842bの各々の先端面842p、側面842q、及び842rと凹部835a及び835bの内壁面との間には、空間部10Sが形成されている。空間部10Sは、空間部70Sと連通している。なお、
図11(b)及び
図11(c)に示すように、延伸部842a及び842bの各々の凹部835a及び835b内に挿入された部分の上面は金属層82の下面に接し、延伸部842a及び842bの各々の凹部835a及び835b内に挿入された部分の下面は金属層85の上面に接している。
【0092】
なお、
図9(a)の場合と同様に、延伸部832a~832c、842a、及び842bを金属層82及び85のみで形成し、凹部845a~845c、835a、及び835bを金属層82及び85のみに形成してもよい。又、
図9(b)の場合と同様に、延伸部832a~832c、842a、及び842bを金属層82及び84のみで形成し、凹部845a~845c、835a、及び835bを金属層82及び84のみに形成してもよい。又、
図9(c)の場合と同様に、延伸部832a~832c、842a、及び842bを金属層82及び83のみで形成し、凹部845a~845c、835a、及び835bを金属層82及び83のみに形成してもよい。又、
図9(d)の場合と同様に、延伸部832a~832c、842a、及び842bを金属層84及び85のみで形成し、凹部845a~845c、835a、及び835bを金属層84及び85のみに形成してもよい。或いは、延伸部832a~832c、842a、及び842bを金属層82~85のうちの何れか1層又は3層で形成し、凹部845a~845c、835a、及び835bは、延伸部832a~832c、842a、及び842bを形成した金属層のみに形成してもよい。
【0093】
このように、蒸発器10側の多孔質体830に延伸部(例えば、延伸部832a、832b、832c)を設け、更に液管40側の多孔質体840に延伸部(例えば、延伸部842a、842b)を設けてもよい。この場合は、接続領域70に設ける延伸部の個数を第1実施形態の変形例1よりも増やすことができるため、第1実施形態の変形例1よりも更に高い効果を奏する。
【0094】
すなわち、延伸部832a~832c、842a、及び842bを構成する多孔質体に生じる毛細管力によって、液管40内の液相の作動流体Cを蒸発器10まで更に効果的に誘導することが可能となり、液管40から蒸発器10への液導入性を更に向上できる。又、ドライアウトの防止効果を更に高めることができる。
【0095】
なお、接続領域70に並置する多孔質体830の延伸部の数は3個には限定されず、2個でもよいし、4個以上でもよい。又、接続領域70に並置する多孔質体840の延伸部の数は2個には限定されず、3個以上でもよい。又、各々の延伸部は、X方向の幅やY方向の長さが異なっていてもよい。凹部の数も延伸部の数に従って適宜、変更してもよい。
【0096】
〈第1実施形態の変形例4〉
第1実施形態の変形例4では、一方の多孔質体の延伸部が他方の多孔質体と全く接しない例を示す。なお、第1実施形態の変形例4において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0097】
図12は、第1実施形態の変形例4に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図であり、
図3(a)に対応する平面図である。又、
図12(b)は
図12(a)のA-A線に沿う断面図であり、
図12(c)は
図12(a)のB-B線に沿う断面図である。なお、
図12(a)では、最外層である金属層81及び86の図示を省略している。又、
図12(a)は断面図ではないが、便宜上、各部に
図12(b)及び
図12(c)に対応するハッチングを施している。
【0098】
図12に示すように、第1実施形態の変形例4では、接続領域70は、多孔質体830から延伸した延伸部833と、延伸部833と接する空間部70Sとを備えている。延伸部833は、例えば、金属層83及び84のみにより形成されている。延伸部833は、蒸発器10内の多孔質体830と一体的に(連続して)設けられている。より詳しくは、蒸発器10内の多孔質体830を構成する金属層83及び84と一体的に設けられている。
【0099】
延伸部833の金属層83で形成されている部分は、金属層82側からハーフエッチングされて薄化されている。又、延伸部833の金属層84で形成されている部分は、金属層85側からハーフエッチングされて薄化されている。その結果、延伸部833は、延伸部832(
図8等参照)の半分程度の薄さである。
【0100】
凹部845は、金属層83、84を厚さ方向に貫通して形成されている。
【0101】
延伸部833のY方向の先端側(液管40側)は、平面視において、接続領域70を超えて液管40内に達し、多孔質体840に形成された凹部845内に挿入されている。
【0102】
延伸部833の先端面833p、側面833q、及び833rは、凹部845の内壁面とは接していない。延伸部833の先端側の上下面も凹部845とは接していない。つまり、延伸部833の先端面833p、側面833q、及び833rは、凹部845の内壁面と離間して配置され、互いに対向している。そして、延伸部833の先端側の上面は、金属層82の下面と離間して配置され、互いに対向し、延伸部833の先端側の下面は、金属層85の上面と離間して配置され、互いに対向している。延伸部833の先端面833p、側面833q、833r、及び上下面と凹部845の内壁面との間には空間部40Sが形成されている。空間部40Sは、空間部70Sと連通している。
【0103】
なお、延伸部833を、上面側から薄化された金属層82及び下面側から薄化された金属層83のみで形成し、凹部845を金属層82及び83のみに形成してもよい。又、延伸部833を、上面側から薄化された金属層84及び下面側から薄化された金属層85のみで形成し、凹部845を金属層84及び85のみに形成してもよい。
【0104】
又、延伸部833を、上面側から薄化された金属層82のみ又は下面側から薄化された金属層83のみで形成し、凹部845を金属層82及び83のみに形成してもよい。又、延伸部833を、上面側から薄化された金属層83のみ又は下面側から薄化された金属層84のみで形成し、凹部845を金属層83及び84のみに形成してもよい。又、延伸部833を、上面側から薄化された金属層84のみ又は下面側から薄化された金属層85のみで形成し、凹部845を金属層84及び85のみに形成してもよい。
【0105】
又、延伸部833を、上面側から薄化された金属層82、薄化されていない金属層83、及び下面側から薄化された金属層84のみで形成し、凹部845を、金属層82、83、及び84のみに形成してもよい。又、延伸部833を、上面側から薄化された金属層83、薄化されていない金属層84、及び下面側から薄化された金属層85のみで形成し、凹部845を、金属層83、84、及び85のみに形成してもよい。
【0106】
このように、一方の多孔質体の延伸部が他方の多孔質体と全く接していなくてもよい。この場合も、第1実施形態と同様の効果を奏する。又、第1実施形態の効果以外に、蒸発器の多孔質体が液管の多孔質体に非接触となるため、伝熱面積を少なくでき、ヒートリークの量を下げる効果が得られる。なお、多孔質体830が複数の延伸部を有する場合や、多孔質体840が1つ又は複数の延伸部を有する場合についても同様である。
【0107】
〈第1実施形態の変形例5〉
第1実施形態の変形例5では、液管側の多孔質体のみに延伸部を設ける例を示す。なお、第1実施形態の変形例5において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0108】
図13は、第1実施形態の変形例5に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図であり、
図3(a)に対応する平面図である。又、
図13(b)は
図13(a)のC-C線に沿う断面図であり、
図13(c)は
図13(a)のB-B線に沿う断面図である。なお、
図13(a)では、最外層である金属層81及び86の図示を省略している。又、
図13(a)は断面図ではないが、便宜上、各部に
図13(b)及び
図13(c)に対応するハッチングを施している。
【0109】
図13に示すように、第1実施形態の変形例5では、蒸発器10内には、多孔質体830と空間部10Sが設けられ、液管40内には、多孔質体840が設けられている。又、蒸発器10と液管40の接続領域70には、多孔質体の延伸部841と空間部70Sが設けられている。
【0110】
又、接続領域70は、延伸部841の側面841q、841rの一部及び多孔質体840の端部の一部と接する空間部70Sを備えている。
【0111】
多孔質の延伸部841は、平面視において、多孔質体840の接続領域70側端面840eのX方向中央部近傍からY方向に(蒸発器10側に)突起している。
【0112】
多孔質の延伸部841は、液管40内の多孔質体840と一体的に(連続して)設けられている。又、多孔質の延伸部841と多孔質体840は、同じ材料から形成されている。多孔質の延伸部841と液管40内の多孔質体840は、平面視において、例えば凸形状を構成している。
【0113】
蒸発器10内に設けられた多孔質体830の液管40側の端部には、凹部834を有している。より詳しくは、凹部834は、平面視において、多孔質体830の接続領域70側端面830eのX方向中央部近傍からY方向に(蒸発器10側)に窪んでいる。
【0114】
多孔質体830及び840は積層された4つの金属層(金属層82~85)を含むが、延伸部841も多孔質体830及び840と同様に積層された4つの金属層(金属層82~85)を含む。すなわち、延伸部841は、4つの金属層(金属層82~85)が延伸して形成されており、多孔質体830及び840と同様の多孔質構造である。又、凹部834も多孔質体830及び840と同様に積層された4つの金属層(金属層82~85)を含む。すなわち、凹部834は、4つの金属層(金属層82~85)が窪んで形成されており、多孔質体830及び840と同様の多孔質構造である。
【0115】
延伸部841のY方向の先端側(蒸発器10側)は、平面視において、接続領域70を超えて蒸発器10内に達し、多孔質体830に形成された凹部834内に挿入されている。
【0116】
延伸部841の先端面841p、側面841q、及び841rは、凹部834の内壁面とは接していない。つまり、延伸部841の先端面841p、側面841q、及び841rは、凹部834の内壁面と離間して配置され、互いに対向している。延伸部841の先端面841p、側面841q、及び841rと凹部834の内壁面との間には空間部10Sが形成されている。空間部10Sは、空間部70Sと連通している。なお、
図13(b)及び
図13(c)に示すように、延伸部841の上面は金属層81の下面に接し、延伸部841の下面は金属層86の上面に接している。
【0117】
このように、液管40側の多孔質体840に延伸部841を設けてもよい。この場合も、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0118】
なお、多孔質体840の延伸部841を金属層82~85のうちの何れか1層~3層で形成し、凹部834は、延伸部841を形成した金属層のみに形成してもよい。又、多孔質体840の延伸部の数は1個には限定されず、2個以上でもよい。又、多孔質体840の延伸部の数が2個以上の場合、各々の延伸部は、X方向の幅やY方向の長さが異なっていてもよい。
【0119】
〈第1実施形態の変形例6〉
第1実施形態の変形例6では、一方の多孔質体の延伸部の先端面が他方の多孔質体の凹部と接する例を示す。なお、第1実施形態の変形例6において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0120】
図14は、第1実施形態の変形例6に係るループ型ヒートパイプの蒸発器と液管との接続領域の構造を例示する図であり、
図3(a)に対応する平面図である。なお、
図14(a)では、最外層である金属層81及び86の図示を省略している。又、
図14(a)は断面図ではないが、便宜上、各部に
図14(b)及び
図14(c)に対応するハッチングを施している。又、
図14のA-A線に沿う断面図については
図3(b)と同様であり、
図14のB-B線に沿う断面図については及び
図3(b)と同様であるため、図示は省略する。
【0121】
図14のE部に示すように、第1実施形態の変形例6では、延伸部831の先端面831p(XZ平面と略平行な面)が、凹部844の内壁面の底面844p(XZ平面と略平行な面)と接している点が、第1実施形態(
図3参照)と相違する。第1実施形態の変形例6のその他の点は、第1実施形態(
図3参照)と同様である。
【0122】
このように、一方の多孔質体の延伸部の先端面が他方の多孔質体の凹部と接してもよい。この場合は、第1実施形態の効果に加え、接続領域70近傍の機械的強度を向上する効果が得られる。
【0123】
なお、多孔質体830及び/又は840の延伸部を金属層82~85のうちの何れか1層~3層で形成した場合も同様である。又、多孔質体830及び/又は840の延伸部の数が2個以上の場合も同様である。
【0124】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0125】
例えば、多孔質体の細孔は有底孔を連通して形成しなくてもよく、貫通孔が形成された金属層同士を、貫通孔が部分的に重複するように積層することにより細孔を形成してもよい。
【符号の説明】
【0126】
1 ループ型ヒートパイプ
2 電子機器
10 蒸発器
10S、40S、70S 空間部
10x 貫通孔
20 凝縮器
30 蒸気管
40 液管
50 流路
60 注入口
70 接続領域
81、82、83、84、85、86 金属層
82x、82y、83x、83y、84x、84y、85x、85y 有底孔
82z、83z、84z、85z、87z、88z、89z 細孔
100 回路基板
100x 貫通孔
110 バンプ
120 発熱部品
150 ボルト
160 ナット
830、840 多孔質体
830e、840e 端面
831、832、832a、832b、832c、833、841、842、842a、842b 延伸部
831p、832p、833p、841p、842p 先端面
831q、832q、833q、841q、842q、831r、832r、833r、841r、842r 側面
834、835a、835b、844、845、845a、845b、845c 凹部
844p 底面
880、890 管壁