(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】剥離方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20221129BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221129BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 622H
H01L21/78 M
(21)【出願番号】P 2018232887
(22)【出願日】2018-12-12
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-134588(JP,A)
【文献】特開2009-4611(JP,A)
【文献】特開2014-179355(JP,A)
【文献】特開2018-183848(JP,A)
【文献】特開昭63-251165(JP,A)
【文献】特開2011-224642(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103714(WO,A1)
【文献】特開2015-216281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの剥離方法であって、
微小凹凸を有した樹脂シートの上面に液体を介してワークを押圧することでワークを該樹脂シート上に密着させて固定する固定ステップと、
該樹脂シート上に固定されたワークを処理する処理ステップと、
該処理ステップを実施した後、ワークが固定された該樹脂シートに超音波振動を付与することでワークの該樹脂シートに対する密着を解放する振動付与ステップと、
密着が解放されたワークを該樹脂シート上から除去する除去ステップと、を備えた剥離方法。
【請求項2】
該振動付与ステップは、該樹脂シートの下面側から超音波振動を付与する、請求項1に記載の剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造工程では、ウェーハの表面に形成されたデバイスを保護するために、ウェーハの表面に表面保護テープ(例えば、特許文献1参照)を貼着した状態でウェーハの裏面を研削する。次いで、半導体デバイスの製造工程では、ウェーハの裏面側にダイシングテープを貼着し、表面保護テープを除去した後にウェーハをダイシングすることで個々のチップに分割した後のハンドリング性を確保している。
【0003】
しかしながら、特許文献1に示された表面保護テープは、糊層がウェーハやチップ等のワークに残存してしまうという問題がある。特に表面にバンプが形成されたウェーハやチップサイズの小さいチップ等のワークは、より強固にウェーハ等を固定するために接着力が強力な糊層を有する表面保護テープが利用される。このために、表面にバンプが形成されたウェーハやチップサイズの小さいチップ等のワークは、糊層が残存しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願出願人は、糊層を使用することなく、上面に微小凹凸が形成された樹脂シートの上面に液体を介しワークを密着させることでワークを樹脂シートに固定する方法を考案した。
【0006】
しかしながら、前述した固定方法は、樹脂シート上に密着したワークを樹脂シートから剥離する手法がなく、適切なワークの剥離が切望されている。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークに糊層を残存させることなくワークを樹脂シートから剥離することができる剥離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の剥離方法は、ワークの剥離方法であって、微小凹凸を有した樹脂シートの上面に液体を介してワークを押圧することでワークを該樹脂シート上に密着させて固定する固定ステップと、該樹脂シート上に固定されたワークを処理する処理ステップと、該処理ステップを実施した後、ワークが固定された該樹脂シートに超音波振動を付与することでワークの該樹脂シートに対する密着を解放する振動付与ステップと、密着が解放されたワークを該樹脂シート上から除去する除去ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記剥離方法において、該振動付与ステップは、該樹脂シートの下面側から超音波振動を付与しても良い。
【発明の効果】
【0010】
本願発明の剥離方法は、ワークに糊層を残存させることなくワークを樹脂シートから剥離することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る剥離方法の加工対象のウェーハの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る剥離方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2に示された剥離方法の固定ステップの樹脂シート上に純水を滴下する状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示された剥離方法の固定ステップの樹脂シートとウェーハの裏面とを対向させた状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示された剥離方法の固定ステップ後のウェーハの要部の断面を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示された剥離方法の固定ステップ後のウェーハ等を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図2に示された樹脂シートの上面に微小凹凸を形成する工程の一例を模式的に示す側面図である。
【
図8】
図8は、
図2に示された剥離方法の処理ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図2に示された剥離方法の振動付与ステップを模式的に示す側断面図である。
【
図10】
図10は、
図2に示された剥離方法の除去ステップを模式的に示す側断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態1の変形例に係る剥離方法の振動付与ステップを模式的に示す側断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る剥離方法の固定ステップの樹脂シート上に純水を滴下する状態を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る剥離方法の固定ステップの樹脂シートとウェーハの表面とを対向させた状態を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係る剥離方法の処理ステップを模式的に示す側面図である。
【
図15】
図15は、実施形態2に係る剥離方法の振動付与ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
【
図16】
図16は、実施形態2に係る剥離方法の除去ステップを模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る剥離方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る剥離方法の加工対象のウェーハの一例を示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係る剥離方法の流れを示すフローチャートである。
【0014】
実施形態1に係る剥離方法は、
図1に示すワークであるウェーハ1を加工する方法でもある。実施形態1では、加工対象のウェーハ1は、シリコン、サファイア、又はガリウムヒ素などを基板2とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハである。なお、実施形態1では、ワークとして、ウェーハ1を示すが、本発明では、ワークは、ウェーハ1に限定されない。ウェーハ1は、
図1に示すように、基板2の表面3の格子状の分割予定ライン4によって区画された複数の領域にそれぞれデバイス5が形成されている。デバイス5は、例えば、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)等である。
【0015】
実施形態1に係る剥離方法は、ウェーハ1の基板2の裏面6に
図3に示す樹脂シート10を固定し、ウェーハ1に処理である切削加工した後に、切削加工後のウェーハ1を樹脂シート10上から除去して、ウェーハ1の樹脂シート10からの剥離方法である。実施形態1に係る剥離方法は、
図2に示すように、固定ステップST1と、処理ステップST2と、振動付与ステップST3と、除去ステップST4とを備える。
【0016】
(固定ステップ)
図3は、
図2に示された剥離方法の固定ステップの樹脂シート上に純水を滴下する状態を示す斜視図である。
図4は、
図2に示された剥離方法の固定ステップの樹脂シートとウェーハの裏面とを対向させた状態を示す斜視図である。
図5は、
図2に示された剥離方法の固定ステップ後のウェーハの要部の断面を拡大して示す断面図である。
図6は、
図2に示された剥離方法の固定ステップ後のウェーハ等を示す斜視図である。
図7は、
図2に示された樹脂シートの上面に微小凹凸を形成する工程の一例を模式的に示す側面図である。
【0017】
固定ステップST1は、微小凹凸11を有した樹脂シート10の上面12に液体である純水20を介してウェーハ1を押圧することで、ウェーハ1を樹脂シート10上に密着させて固定するステップである。実施形態1において、固定ステップST1では、ウェーハ1よりも大径でかつ上面12の全体に微小凹凸11が形成された
図3に示す樹脂シート10を準備する。樹脂シート10は、ポリオレフィン(Polyolefin)、塩化ビニル(Polyvinyl Chloride)又はポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate)から構成されて、粘着性を有する糊層などを有しないものである。
【0018】
実施形態1において、固定ステップST1では、
図3に示すように、樹脂シート10の上面12に液体である純水20を吐出ノズル21が滴下する。実施形態1において、固定ステップST1では、
図4に示すように、樹脂シート10の上面12とウェーハ1の基板2の裏面6とを対向させた後、ウェーハ1を樹脂シート10の上面12に押圧するとともに、内径がウェーハ1よりも大径でかつ樹脂シート10の外径よりも小径な
図6に示す環状フレーム9を樹脂シート10の外周縁に押圧する。
【0019】
すると、
図5に示すように、樹脂シート10の上面12の微小凹凸11の凹部が吸盤だとして、ウェーハ1に押圧された時に凹部内の空気が逃げて純水20が浸入し、
図6に示すように、外部の大気圧によって樹脂シート10の上面12とウェーハ1及び環状フレーム9とがくっつく。このように、純水20を介すことで、樹脂シート10の上面12の微小凹凸11の凹部内に空気の層ができないため、樹脂シート10の上面12とウェーハ1との吸着力が大きくなる。また、本発明は、環状フレーム9の外周縁には接着剤を介して樹脂シート10を貼着してもよい。
【0020】
なお、実施形態1では、樹脂シート10の上面12の微小凹凸11の表面粗さRaは、例えば、0.08μm以上でかつ2μm~3μm以下程度であることが望ましい。これは、表面粗さRaが、0.08μmを下回っても、2μm~3μmを超えてもウェーハ1と樹脂シート10とがくっつかないからである。なお、表面粗さは、所謂、算術平均粗さある。
【0021】
また、実施形態1において、樹脂シート10の上面12の微小凹凸11は、
図7に示すバイト切削装置30により構成される。具体的には、微小凹凸11は、以下のように形成される。バイト切削装置30が、チャックテーブル31の保持面32に樹脂シート10の上面12の裏側の下面13を吸引保持する。バイト切削装置30が、スピンドル33によりバイトホイール34を回転しかつチャックテーブル31を保持面32に沿って移動させて、バイトホイール34のバイト工具35を樹脂シート10に切り込ませて、樹脂シート10の上面12に微小凹凸11を形成する。このように、実施形態1では、微小凹凸11は、バイト切削装置30により切削痕として形成されるが、本発明では、サンドブラスト加工、研削加工又は切削加工により形成されても良い。なお、本明細書に添付された図面の各図は、便宜上、微小凹凸11を実際の研削痕と異なる形状で示している。また、実施形態1では、微小凹凸11は、上面12の全体に形成されているが、本発明では、上面12の少なくともウェーハ1が固定される位置に形成されていれば良い。
【0022】
剥離方法は、樹脂シート10の上面12にウェーハ1及び環状フレーム9を固定すると、処理ステップST2に進む。
【0023】
(処理ステップ)
図8は、
図2に示された剥離方法の処理ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。処理ステップST2は、樹脂シート10上に固定されたウェーハ1を処理である切削加工するステップである。
【0024】
実施形態1において、処理ステップST2では、切削装置40は、チャックテーブル41の保持面42に樹脂シート10を介してウェーハ1の裏面6側を吸引保持する。処理ステップST2では、切削装置40の図示しない撮像ユニットがウェーハ1の表面3を撮像して分割予定ライン4を検出し、ウェーハ1と切削ユニット43の切削ブレード44との位置合わせを行なうアライメントを遂行する。
【0025】
処理ステップST2では、切削装置40は、
図8に示すように、ウェーハ1と切削ユニット43の切削ブレード44とを分割予定ライン4に沿って相対的に移動させながら切削水を供給しながら切削ブレード44を表面3側から樹脂シート10の厚みの中央まで切り込ませて、ウェーハ1を個々のデバイス5に分割する。なお、分割後のデバイス5は、ウェーハ1同様にワークである。処理ステップST2では、切削装置40は、ウェーハ1の全ての分割予定ライン4を切削加工すると、振動付与ステップST3に進む。
【0026】
(振動付与ステップ)
図9は、
図2に示された剥離方法の振動付与ステップを模式的に示す側断面図である。振動付与ステップST3は、処理ステップST2を実施した後、ウェーハ1即ち個片化されたデバイス5が固定された樹脂シート10に超音波振動を付与することで、ウェーハ1即ち個片化されたデバイス5の樹脂シート10に対する密着を解放するステップである。
【0027】
実施形態1において、振動付与ステップST3では、振動付与装置50は、
図9に示すように、円盤状の付与ユニット51の水平方向に沿って平坦な保持面52に樹脂シート10の下面13を介してウェーハ1の裏面6側を保持する。実施形態1において、振動付与ステップST3では、振動付与装置50は、付与ユニット51内でかつ保持面52下に配置された超音波振動子53を動作させて保持面52に超音波振動させて、樹脂シート10に超音波振動を付与する。実施形態1において、振動付与ステップST3では、振動付与装置50は、超音波振動により樹脂シート10とウェーハ1即ち個片化されたデバイス5との間の純水20にキャビテーションを生じさせる。そして、実施形態1において、振動付与ステップST3では、樹脂シート10を振動させてキャビテーションを生じさせることで、樹脂シート10とウェーハ1即ち個片化されたデバイス5との間に空気を入り込ませて、これらの密着を解放する。こうして、振動付与ステップST3は、樹脂シート10の下面13側から超音波振動を付与する。
【0028】
なお、実施形態1において、超音波振動子53は、複数の圧電素子により構成されるが、本発明では、これらに限定されない。また、
図9は、超音波振動子53を簡略化して示している。剥離方法は、所定時間、超音波振動子53を動作させると、超音波振動子53の動作を停止して、除去ステップST4に進む。
【0029】
(除去ステップ)
図10は、
図2に示された剥離方法の除去ステップを模式的に示す側断面図である。除去ステップST4は、密着が解放されたウェーハ1即ち個片化されたデバイス5を樹脂シート10上から除去するステップである。
【0030】
実施形態1において、除去ステップST4では、ピックアップ装置60が、
図10に示すように、個片化されたデバイス5を1つずつピックアップ61で保持して、樹脂シート10上から除去する。なお、実施形態1において、除去ステップST4では、超音波振動子53を停止させた振動付与装置50の保持面52上の樹脂シート10からピックアップ装置60がデバイス5を1つずつ除去する。また、本発明は、振動付与ステップST3において、樹脂シート10に超音波振動を付与しながら、除去ステップST4を実施して、ピックアップ装置60がデバイス5を1つずつ除去しても良い。剥離方法は、樹脂シート10上から全てのデバイス5を除去すると終了する。
【0031】
実施形態1に係る剥離方法は、固定ステップST1において、純水20が滴下された樹脂シート10にウェーハ1を押圧して、樹脂シート10にウェーハ1の裏面6側を固定するので、ウェーハ1を固定するために粘着性を有する糊層を用いる必要が生じない。実施形態1に係る剥離方法は、処理ステップST2後の振動付与ステップST3において、超音波振動を樹脂シート10に付与することでウェーハ1即ち個片化されたデバイス5の樹脂シート10に対する密着を解放し、除去ステップST4において個片化されたデバイス5を樹脂シート10上から除去する。その結果、実施形態1に係る剥離方法は、個片化されたデバイス5に糊層を残存させることなく個片化されたデバイス5を樹脂シート10から剥離することができるという効果を奏する。
【0032】
また、実施形態1に係る剥離方法は、振動付与ステップST3において樹脂シート10の下面13側から超音波振動を付与するので、樹脂シート10とウェーハ1即ち個片化されたデバイス5を超音波振動させることができる。その結果、実施形態1に係る剥離方法は、固定ステップST1において、ウェーハ1即ち個片化されたデバイス5を純水20を介して樹脂シート10に密着させて固定しても、ウェーハ1即ち個片化されたデバイス5の樹脂シート10に対する密着を解放することができる。
【0033】
〔変形例〕
本発明の実施形態1の変形例に係る剥離方法を図面に基づいて説明する。
図11は、実施形態1の変形例に係る剥離方法の振動付与ステップを模式的に示す側断面図である。なお、
図11は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
実施形態1の変形例に係る剥離方法は、振動付与ステップST3が異なること以外、実施形態1と同じである。実施形態1の変形例に係る剥離方法の振動付与ステップST3では、振動付与装置50-1は、環状フレーム9を図示しない保持機構により保持した後、付与ユニット51-1のデバイス5の1つ分の大きさの振動面52-1を樹脂シート10の下面13を介して個片化されたデバイス5に順に接触させて、付与ユニット51-1内でかつ振動面52-1下に設けられた超音波振動子53-1を動作させて、各デバイス5毎に樹脂シート10に超音波振動を付与して、各デバイス5の樹脂シート10に対する密着を解放する。なお、超音波振動子53-1は、少なくとも1つの圧電素子により構成される。
【0035】
実施形態1の変形例に係る剥離方法は、固定ステップST1において、純水20が滴下された樹脂シート10にウェーハ1を押圧して樹脂シート10にウェーハ1の裏面6側を固定し、処理ステップST2後の振動付与ステップST3において、超音波振動を樹脂シート10に付与することでウェーハ1即ち個片化されたデバイス5の樹脂シート10に対する密着を解放する。その結果、実施形態1の変形例に係る剥離方法は、実施形態1と同様に、個片化されたデバイス5に糊層を残存させることなく個片化されたデバイス5を樹脂シート10から剥離することができるという効果を奏する。
【0036】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る剥離方法を図面に基づいて説明する。
図12は、実施形態2に係る剥離方法の固定ステップの樹脂シート上に純水を滴下する状態を示す斜視図である。
図13は、実施形態2に係る剥離方法の固定ステップの樹脂シートとウェーハの表面とを対向させた状態を示す斜視図である。
図14は、実施形態2に係る剥離方法の処理ステップを模式的に示す側面図である。
図15は、実施形態2に係る剥離方法の振動付与ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図16は、実施形態2に係る剥離方法の除去ステップを模式的に示す側面図である。なお、
図12、
図13、
図14、
図15及び
図16は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
実施形態2に係る剥離方法は、実施形態1と同様に、固定ステップST1と、処理ステップST2と、振動付与ステップST3と、除去ステップST4とを備える。なお、実施形態2では、保持部材23上に接着部材22を介して樹脂シート10が固定された状態で、バイト切削装置30で樹脂シート10を切削して微小凹凸11を形成する。
【0038】
実施形態2に係る剥離方法の固定ステップST1は、
図12及び
図13に示すように、接着部材22を介して保持部材23に下面13が固定された樹脂シート10の上面12に純水20(
図13のみに示す)を介してウェーハ1を押圧することでウェーハ1の表面3側を樹脂シート10上に密着させて固定するステップである。なお、実施形態2において、樹脂シート10は、ウェーハ1と同径の円板状に形成されている。保持部材23は、ウェーハ1及び樹脂シート10と同径の円板状に形成され、硬質な材料で構成されている。
【0039】
実施形態2に係る剥離方法の固定ステップST1では、樹脂シート10は、ウェーハ1及び保持部材23と同軸になる位置に保持部材23に固定される。また、実施形態2に係る剥離方向の固定ステップST1では、ウェーハ1の表面3側を純水20を介して樹脂シート10に固定する。
【0040】
実施形態2に係る剥離方法の処理ステップST2は、樹脂シート10上に固定されたウェーハ1を処理である研削加工するステップである。実施形態2に係る剥離方法の処理ステップST2では、研削装置70が、チャックテーブル71の保持面72に保持部材23及び樹脂シート10を介してウェーハ1の表面3側を吸引保持する。処理ステップST2では、研削装置70は、
図14に示すように、スピンドル73により研削ホイール74を回転しかつチャックテーブル71を軸心回りに回転しながらウェーハ1の裏面6上に図示しない研削水を供給するとともに、研削ホイール74の研削砥石75をチャックテーブル71に所定の送り速度で近づけることによって、研削砥石75でウェーハ1の基板2の裏面6を研削する。実施形態2に係る剥離方法は、所定の仕上げ厚さまでウェーハ1を薄化すると振動付与ステップST3に進む。
【0041】
実施形態2に係る剥離方法の振動付与ステップST3は、振動付与装置50が、
図15に示すように、付与ユニット51の保持面52に保持部材23及び樹脂シート10を介してウェーハ1の表面3側を保持し、超音波振動子53を動作させて保持面52に超音波振動させて、保持部材23を介して樹脂シート10に超音波振動を付与する。実施形態2に係る剥離方法の振動付与ステップST3では、振動付与装置50は、超音波振動により樹脂シート10とウェーハ1即ち個片化されたデバイス5との間の純水20にキャビテーションを生じさせて、樹脂シート10とウェーハ1即ち個片化されたデバイス5との間に空気を入り込ませて、これらの密着を解放する。こうして、実施形態2に係る剥離方法の振動付与ステップST3は、実施形態1と同様に、樹脂シート10の下面13側から超音波振動を付与する。
【0042】
実施形態2に係る剥離方法の除去ステップST4は、
図16に示すように、仕上げ厚さまで薄化されかつ密着が解放されたウェーハ1を樹脂シート10上から除去する。なお、実施形態2において、除去ステップST4では、超音波振動子53を停止させた振動付与装置50の保持面52上の樹脂シート10からウェーハ1を除去する。
【0043】
なお、本発明は、紫外線を透過するガラス等で保持部材23を構成し、接着部材22を紫外線が照射されると硬化する紫外線硬化型の接着剤で構成しておき、固定ステップST1の前に予め硬化前の接着部材22で保持部材23を樹脂シート10の下面13に接着しても良い。この場合、処理ステップST2後に保持部材23側から接着部材22に紫外線を照射して、接着部材22を硬化させ、樹脂シート10から保持部材23を剥離させて、実施形態1と同様に、振動付与ステップST3及び除去ステップST4を実施しても良い。
【0044】
実施形態2に係る剥離方法は、固定ステップST1において、純水20が滴下された樹脂シート10にウェーハ1を押圧して樹脂シート10にウェーハ1の表面3側を固定し、処理ステップST2後の振動付与ステップST3において、超音波振動を樹脂シート10に付与することでウェーハ1の樹脂シート10に対する密着を解放する。その結果、実施形態2に係る剥離方法は、実施形態1と同様に、ウェーハ1に糊層を残存させることなくウェーハ1を樹脂シート10から剥離することができるという効果を奏する。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、前述した実施形態等では、処理ステップST2において、処理である切削加工及び研削加工を実施したが、本発明では、処理ステップST2において、切削加工及び研削加工以外の種々の加工(例えば、レーザー加工、ワークの搬送、ワークの観察又はワークの測定)を実施しても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 ウェーハ(ワーク)
5 デバイス(ワーク)
10 樹脂シート
12 上面
13 下面
20 純水(液体)
ST1 固定ステップ
ST2 処理ステップ
ST3 振動付与ステップ
ST4 除去ステップ