(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】二成分接着剤におけるn個の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド単位を有する化合物の使用
(51)【国際特許分類】
C09J 5/06 20060101AFI20221129BHJP
C09J 169/00 20060101ALI20221129BHJP
C09J 175/12 20060101ALI20221129BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20221129BHJP
C08G 64/30 20060101ALI20221129BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221129BHJP
C07D 317/36 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C09J5/06
C09J169/00
C09J175/12
C09J7/35
C08G64/30
B32B27/00 D
C07D317/36
(21)【出願番号】P 2018563052
(86)(22)【出願日】2017-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2017062843
(87)【国際公開番号】W WO2017207461
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-29
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カール-ハインツ シューマッハー
(72)【発明者】
【氏名】トマス フェンロン
(72)【発明者】
【氏名】ゾフィー プツィエン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ヴォトラヴェール
(72)【発明者】
【氏名】ウルリケ リヒト
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502374(JP,A)
【文献】特表2016-508493(JP,A)
【文献】特開2012-111898(JP,A)
【文献】特表2008-506821(JP,A)
【文献】国際公開第2014/206636(WO,A1)
【文献】特開2013-230169(JP,A)
【文献】特開平10-330476(JP,A)
【文献】特表2017-530223(JP,A)
【文献】特表2010-518212(JP,A)
【文献】特表2015-509120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
C08G 63/00- 64/42
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
C07D317/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光沢シート、複合シートおよび積層された成形体から選択される積層された対象物を製造するための積層方法であり、
a) 第一の基材を、第一のシートの形で準備し、
b) 紙、第一のシートと同じであるか、または異なっていてもよい第二のシート、および成形体から選択される第二の基材を準備し、
c) 二成分接着剤を準備し、かつ
d) 前記二成分接着剤を第一の基材上におよび/または第二の基材上に塗布し、任意に乾燥させ、第一の基材を第二の基材上に貼り合わせ、ここで、前記貼り合わせを熱活性化のもとで行うことができ、前記二成分接着剤は、前記二成分接着剤中に反応性成分の第一の成分として、n個の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド単位を有する少なくとも1つの化合物、および第二の成分として、2個以上のアミン基を有するポリアミンおよび2個以上のアルコール性ヒドロキシ基を有するポリオールから選択される少なくとも1つの硬化剤化合物を含み、ここで、nは、2以上の数である、前記
積層方法。
【請求項2】
2個以上の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド単位を有する化合物は、式(I)
【化1】
[式中、
R
1およびR
3は、互いに無関係に、Hおよび有機基から選択され、かつ
R
2は、n価の有機基であり、前記有機基はn-1個の別の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド基で置換されていて、かつnは、2以上の数である]を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記式(I)において、R
1は、H、直鎖状、分枝状または環状のC
1~C
12-アルキル基、C
6~C
10-アリール基、C
6~C
12-アリールアルキル基、およびC
6~C
12-アルキルアリール基から選択され、かつR
3は、Hおよび直鎖状、分枝状または環状のC
1~C
12-アルキル基から選択されることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
R
3が、Hである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
R
1は、H、直鎖状、分枝状または環状のC
1~C
12-アルキル基、C
6~C
10-アリール基、C
6~C
12-アリールアルキル基、およびC
6~C
12-アルキルアリール基から選択され、かつ式(I)中のR
3は、H、アリール基、およびO原子またはN原子を含んでいてもよい直鎖状、分枝状または環状のC
1~C
12-アルキル基から選択され、かつR
2は、一般式(II)
【化2】
の、n-1個の別の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド基で置換されているn価の基であり、前記式(II)中のR
3は、H、アリール基、およびO原子またはN原子を含んでいてもよい直鎖状、分枝状または環状のC
1~C
12-アルキル基から選択され、かつnは、2以上の数であることを特徴とする、請求項2または3記載の方法。
【請求項6】
前記式(I)中のR
1およびR
3並びに前記式(II)中のR
3は、それぞれHである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
n=2~5であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
n=2~3である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
n個の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド単位を有する化合物および/または硬化剤化合物は少なくとも1個の線状または分枝状のスペーサー基を含み、可撓性のスペーサー基は、少なくとも200g/molの分子量を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記可撓性のスペーサー基は、アルキレン基、ポリエーテル基、ポリカルボナート基、ポリエステル基およびポリ(メタ)アクリラート基から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記式(I)中のR
2は、線状または分枝状のC
2~C
22-アルキレン基、一般式-(A-O)
m-[式中、Aは、C
2~C
5-アルキレンを表し、かつmは、1~100の数である]のポリエーテル基、ポリカルボナート基、ポリエステル基、およびポリ(メタ)アクリラート基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
n個の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド単位を有する化合物は、式(III)
【化3】
[式中、nは、1~12の数である]の化合物、式(IV)
【化4】
[式中、yは、1~12の数である]の化合物、式(V)
【化5】
の化合物、式(VI)
【化6】
[式中、nは、0以上の数を表す]の化合物、および式(VII)
【化7】
[式中、
【化8】
は、アルコキシル化グリセリン基である]の化合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記式(VI)中、nは、0~5の数を表す、請求項12記載の方法
【請求項14】
前記n個の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド単位を有する化合物および/または前記硬化剤化合物は、少なくとも1個の線状または分枝状のスペーサー基を含み、前記スペーサー基は、少なくとも200g/molの分子量を有する可撓性のスペーサー基である、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記可撓性のスペーサー基は、アルキレン基、ポリエーテル基、ポリカルボナート基、ポリエステル基、およびポリ(メタ)アクリラート基から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記二成分接着剤は、70℃以下の温度で、スピンドル3で12rpmで測定して10000mPa s未満のブルックフィールド粘度を有することを特徴とする、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
3μmの接着剤層を用い、かつ3barの押圧で互いに張り合わされた2枚のポリエステルシートの24時間後の剥離強度が、1.5N/15mmより高いことを特徴とする、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記二成分接着剤は、シクロカルボナート基と硬化剤の官能基との反応を触媒作用するための少なくとも1つの触媒を含むことを特徴とする、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
請求項1~
18のいずれかに記載の方法により製造されるシート積層対象物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
二成分接着剤における反応性成分としての、好ましくは接着剤用途のためのヒドロキシポリウレタンまたはヒドロキシポリカルボナートを製造するための、2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4カルボン酸アミド単位を有する化合物の使用に関する。また、相応する二成分接着剤および相応する接着方法に関する。二成分接着剤の第二の成分として、好ましくは多官能性硬化剤化合物が使用される。
【0002】
イソシアナート成分がポリオール成分と反応して高分子量のポリウレタンポリマーを形成する、ポリイソシアナートを基礎とするポリウレタンの二成分系は、接着剤として頻繁に使用される。これらの系は、溶媒不含かつ水不含の反応性の百パーセント系として適用されるか、または有機溶媒中に溶けた接着剤として適用される。被覆材料は、適切な塗布システムを用いて第一の基材に塗布され、かつ次いで、場合により溶媒の蒸発後に硬化される。多様なシート材料の組合せにおいて高い結合強度が生じることが好ましい。
慣用の二成分接着剤中に含まれている、反応性モノマーの低分子量(ポリ)イソシアナート化合物は、殊にこの化合物が易揮発性であるか、またはマイグレーション可能である場合には、毒物学的リスクがある。これは一方で、この接着剤を適用する際の接着剤の加工に関係する。というのも、イソシアナートは、原則として高い毒性および高いアレルギー誘発性を有しているためである。他方で、可撓性基材の場合には、完全には反応しない芳香族イソシアナートが基材を通過してマイグレーションし、かつそこで水分により加水分解されて発がん性の芳香族アミンを生じる危険性がある。したがって、できる限り良好な接着値を有し、かつ室温ですでにできる限り良好な硬化特性を有する硬化性接着剤組成物用のイソシアナート不含の二成分系が望ましい。
【0003】
ポリウレタン系は、毒物学的に懸念のない環式カルボナート化合物から出発しても得ることができる。例えば、グリセリンカルボナート(4-(ヒドロキシメチル)-2-オキソ-1,3-ジオキソラン)は、化粧品に使用されている。
【化1】
環式カルボナート化合物は、開環しながらアミンと反応して、とりわけヒドロキシウレタンになる(反応式を参照)。
【0004】
グリセリンカルボナートを基礎とする系の欠点は、A、BおよびCという反応経路につながる位置選択性の低さ、この系の室温における反応性が比較的低いこと、および開環を促進する触媒は明らかに逆反応も促進し、これがすでに形成された生成物の部分的な分解を引き起こしかねないという事実である。
【0005】
WO2011/157551では、Rにおいてエーテル基に代えてエステル基を使用することにより、これらの問題は部分的に解決されている。この電子吸引性基は、反応速度のかなりの向上をもたらし、かつ反応経路Aの優先につながる。形成された第二級ヒドロキシウレタン[I]において、逆反応は観察されなかった。しかしながら、分子中に2個以上の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボキシル基を含む接着剤の製造は困難である。というのもこの製造は、エステル交換を介して行われ、この場合、シクロカルボナート環も攻撃されることがあるためである。また、上述のエステル基は、硬化のために使用されるアミン(R′-NH2)との反応の際に部分的に攻撃されることがある。
【0006】
WO2013/092011には、所定のシクロカルボナートアミドおよびその製造方法が記載されている。
【0007】
本発明の基礎となる課題は、上述の先行技術の欠点の少なくともいくつかを本質的に回避することであった。一般的に見て、接着剤用途のために、電子吸引性基を有する別の2-オキソ-1,3-ジオキソラン系を提供することが好ましい。殊に、懸念がなく、良好に入手可能であり、かつアミンとの反応性が高く、すでに室温でできる限り硬化することができ、かつさらに良好な接着値を有する(ポリマー鎖に対する結合であって、アミンによって攻撃されることがそれほどない結合を有する)接着剤として適している、2-オキソ-1,3-ジオキソラン系が提供されることが好ましい。
【0008】
この課題は、独立請求項の特徴により解決された。従属請求項は、好ましい実施形態に関する。
【0009】
本発明の主題は、二成分接着剤における、好ましくは接着剤用途のためのヒドロキシポリウレタンまたはヒドロキシポリカルボナートを製造するための反応性成分としての、n個の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド単位を有する化合物の使用であり、この際、nは2以上の数である。好ましくは、n=2~5、殊に2~3である。
【0010】
2個以上の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド単位を有する適切な化合物は、例えば式(I)
【化2】
[式中、
R
1およびR
3は、互いに無関係に、Hおよび有機基から選択され、かつ
R
2は、n価の有機基であり、この有機基はn-1個の別の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド基で置換されていて、かつnは、2以上の数である]の化合物である。
【0011】
R1は、好ましくは、H、直鎖状、分枝状または環状のC1~C12-アルキル基、C6~C10-アリール基、C6~C12-アリールアルキル基、およびC6~C12-アルキルアリール基から選択される。
【0012】
R2は、好ましくは、2~22個のC原子を有するアルキル基またはポリマー鎖であり、かつ好ましくは、線状または分枝状のC2~C22-アルキレン基、一般式-(A-O)m-[式中、Aは、C2~C5-アルキレンを表し、かつmは1~100の数である]のポリエーテル基、ポリカルボナート基、ポリエステル基およびポリ(メタ)アクリラート基からなる群から選択される。
【0013】
R2は、特に好ましくは、2~12個のC原子を有するn-アルキル単位、ならびにエチレンオキシド単位および/またはプロピレンオキシド単位を含むポリマー鎖から選択される。
【0014】
R3は、好ましくは、H、アリール基、およびO原子またはN原子を含んでいてもよい直鎖状、分枝状または環状のC1~C12-アルキル基から選択され、特に好ましくはHである。
R3が結合している炭素原子は、さらにまた別のC1~C12-アルキル基を有していてよい。またこの炭素原子は、4位で、さらにまたC1~C12-アルキル基を有していてよい。両方とも同時に存在する場合もある。
2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド中で、基R1およびR3はそれぞれ好ましくはHである。
【0015】
これらの化合物は、2-オキソ-1,3-ジオキソラン基に関して、nが2以上の官能価を有する。R
2は、n-1個の別の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド基、好ましくは一般式(II)
【化3】
[式中、R
3は上述の意味を有する]の基で置換されているn価の基である。
好ましくは、n=2~5、殊に2~3である。
【0016】
2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミドの製造は、WO2013/092011およびWO2016/062424に記載されている(酸素を用いたPt-接触酸化)。2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミドを製造する場合に重要な生成物は、式(VIII)
【化4】
[式中、R
3は、上述の意味を有する]の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸である。式(VIII)の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸の製造は、WO2013/092011に記載されている。
【0017】
式(VIII)の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸は、n個のNCO基を有するポリイソシアナートと反応させて相応するアミドにすることができ、ここで、nは上述の意味を有し、かつn官能性の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミドが生じる。このポリイソシアナートは、好ましくは、n=2~5、好ましくはn=2~3のNCO官能価(分子中のNCO基の数)を有する脂肪族イソシアナート、芳香族イソシアナート、または組合せられた脂肪族/芳香族イソシアナートである。
【0018】
適切なポリイソシアナートは、テトラメチレン-1,4-ジイソシアナート、2-メチルペンタメチレン-1,5-ジイソシアナート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアナート(HDI)、2,2,4-および2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアナート(TMDI)、ドデカメチレン-1,12-ジイソシアナート、リシンジイソシアナート、リシンエステルジイソシアナート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナト-メチル-シクロヘキサン(イソホロンジイソシアナート、IPDI)、1,4-ジイソシアナト-2,2,6-トリメチル-シクロヘキサン(TMCDI)、2,2′-、2,4′-および4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアナート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアナート(CHDI)、1,3-ビス-(イソシアナト-メチル)-シクロヘキサン、1,4-ビス-(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、4,4′-ジイソシアナトジシクロヘキシル-2,2-プロパン、m-およびp-フェニレンジイソシアナート、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ジイソシアナトベンゼン、3,3′-ジメチル-4,4′-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、2,4-および2,6-トルイレンジイソシアナート(TDI)、2,2′-、2,4′-および4,4′-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、ナフタレン-1,2-ジイソシアナートおよびナフタレン-1,5-ジイソシアナート(NDI)、m-およびp-キシリレンジイソシアナート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアナート(TMXDI)、ならびに上述のイソシアナートの任意の混合物を含む。
【0019】
本発明の目的のために、本発明によるポリイソシアナートは、二量体(ウレトジオン)および三量体(イソシアヌラート)も含む。この場合、HDI三量体は特に重要である。さらに、例えば、
【化5】
[式中、nは、好ましくは1~8である]の「ポリマーのMDI」のようなオリゴマーも含まれるべきである。
【0020】
さらに、化学量論的に過剰量のNCO基が存在する限り、ポリイソシアナートとポリオールとのプレポリマーが使用されてもよい。適切なポリオールは、とりわけエチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位およびブチレンオキシド単位を含んでいてよいポリオキシアルキレンポリオール(「ポリエーテルポリオール」ともいわれる)、脂肪族ジオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカルボナートポリオール、ヒマシ油、ヒドロキシル化エポキシ化大豆油、ならびに上述のポリオールの混合物を含む。
【0021】
2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸とポリイソシアナートとの反応生成物に関する例示的であり、網羅的ではない概観は、次の反応式:
【化6】
[式中、nは、0~8、好ましくは1~8の数を表す]が当てはまる。
【0022】
n個の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド単位を有する好ましい化合物は、式(III)
【化7】
[式中、nは、1~12の数である]の化合物、式(IV)
【化8】
[式中、yは、1~12の数である]の化合物、式(V)
【化9】
の化合物、および式(VI)
【化10】
[式中、nは、0以上の数、好ましくは1~8の数を表す]の化合物からなる群から選択される。
【0023】
本発明の主題は、特に、接着剤用途のために適した、式(I)
【化11】
[式中、
R
1およびR
3は、互いに無関係に、Hおよび有機基から選択され、かつ
R
2は、n価の有機基であり、この有機基はn-1個の別の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド基で置換されていて、
nは、2以上の数であり、かつ
ここで、2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボキサミド基の間に少なくとも1個の線状または分枝状のスペーサー基が含まれていて、かつこのスペーサー基は、少なくとも200g/molの分子量を有し、かつ好ましくはアルキレン基、ポリエーテル基、ポリカルボナート基、ポリエステル基、およびポリ(メタ)アクリラート基から選択される]の、シクロカルボナート単位の間に可撓性スペーサー基を有する多官能性の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボキサミドでもある。
式(I)中のR
2は、好ましくは、線状または分枝状のC
2~C
22-アルキレン基、一般式-(A-O)
m-[式中、Aは、C
2~C
5-アルキレンを表し、mは、1~100の数である]のポリエーテル基、ポリカルボナート基、ポリエステル基、およびポリ(メタ)アクリラート基からなる群から選択される。
【0024】
特に好ましい2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボキサミドは、式(IV)
【化12】
[式中、yは、1~12の数である]の化合物、および式(VII)
【化13】
[式中、
【化14】
は、アルコキシ基中に好ましくは2~5個、殊に2および/または3個のC原子を有するアルコキシル化グリセリン基を表し、特に好ましくはエトキシル化/プロポキシル化グリセリンを表す]の化合物から選択される。
【0025】
本発明による使用の際に、2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミドはアミン硬化剤と反応してヒドロキシポリウレタンになる。この際、第二級ヒドロキシル基を有するヒドロキシポリウレタンが優勢に生じる、というのも求核性窒素原子の攻撃の際に負電荷はCONR1R2基のより近くにある酸素原子でより良好に安定化されるためである。第二級ヒドロキシル基を有するヒドロキシウレタンは、逆反応が起こらないという利点を有する。理論的には、アミンのアミド基への攻撃も考えられる。しかしながら、アミンは2-オキソ-1,3-ジオキソラン基だけを攻撃することを証明することができた。
【0026】
アミンとしては、この場合、基としてアルキル基、アリール基、アラルキル基ならびにアルカリール基を有する第一級アミンおよび第二級アミンが挙げられる。第一級アミンは、第二級アミンよりも迅速に反応し、脂肪族アミンは、芳香族アミンよりも迅速に反応する。殊に高分子量のポリアミン、例えばHuntsman Corp.のJeffamine(登録商標)およびBASF SEのポリエーテルアミンが、ここでは挙げられる。
【0027】
式R′-NH
2で示される第一級アミンの場合には、反応を次のように表すことができ、この場合、ここでは第二級ヒドロキシル基を有するヒドロキシウレタンが得られる好ましい反応だけが示されている:
【化15】
【0028】
本発明による使用の際に、2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミドはヒドロキシ硬化剤と反応してヒドロキシポリカルボナートになる。次の反応式において、第二級ヒドロキシル基を有するヒドロキシカルボナートが得られる好ましい反応だけが示されている。式R′-OHのアルコールとして、例えば上述のポリオールが挙げられる。
【化16】
【0029】
2個以上の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド単位を有する化合物と適切な多官能性硬化剤化合物との混合は、第一の成分において2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド化合物を有し、かつ第二の成分において多官能性硬化剤化合物を有する二成分接着剤として使用することができる。多官能性硬化剤成分は、第一級アミノ基、第二級アミノ基およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも2個の官能基を有する。好ましくは、二成分接着剤は、シクロカルボナート基と硬化剤の官能基との反応に触媒作用するための少なくとも1つの触媒を含む。
【0030】
異なる硬化剤化合物の混合物、例えは接着剤のポットライフを過度に低下させずに瞬間強度を形成する少量の「速効型」硬化剤+最終的な硬化のための緩慢型硬化剤を使用してもよい。
【0031】
二成分接着剤は、有機溶媒中の溶液として、または溶媒不含で、かつ水不含の百パーセント系として適用することもできる。
【0032】
好ましくは、硬化剤の官能基は、脂肪族ヒドロキシル基、脂肪族第一級アミノ基、および脂肪族第二級アミノ基から選択される。
【0033】
二成分接着剤とは、少なくとも2つの多官能性接着剤成分を含み、これらの成分が相互に結合を形成しながら反応し、この場合にポリマーの網目構造を形成する接着剤であると解釈される。したがって、二成分接着剤組成物は、少なくとも1つの多官能性シクロカルボナートアミド化合物の他に、さらに好ましくは脂肪族ヒドロキシル基、脂肪族第一級アミノ基、または脂肪族第二級アミノ基から選択される少なくとも2個の官能基F、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10個の官能基Fを有する少なくとも1つの化合物を含む。これらの化合物は、以後、硬化剤ともいわれる。好ましくは、硬化剤の量は、官能性2-オキソ-1,3-ジオキソラン基の、硬化剤中の官能基Fに対するモル比が、1:10~10:1の範囲内、殊に5:1~1:5の範囲内、特に1:2~2:1の範囲内にあるように選択される。
【0034】
硬化剤は、低分子量の、つまり分子量が500g/mol未満の物質、または500g/molを超える数平均分子量を有するオリゴマーまたはポリマーの物質であってよい。
【0035】
特に良好な接着作用のために、2個以上の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド単位を有する化合物、または硬化剤化合物、または両方が、少なくとも1個の可撓性スペーサー基を含むことが好ましい。可撓性スペーサー基は、少なくとも200g/molの分子量を有する線状または分枝状の化合物基である。スペーサー基は、式(I)中で基R2または基R2の一部を形成してよく、かつ/またはスペーサー基は硬化剤の2個の官能基の間に存在してよい。スペーサー基は、好ましくは、アルキレン基、ポリエーテル基、ポリカルボナート基、ポリエステル基、およびポリ(メタ)アクリラート基から選択される。
【0036】
スペーサー基は、例えば少なくとも15個のC原子を有する線状または分枝状のアルキレン基、一般式-(A-O)m-[式中、Aは、C2~C5-アルキレンを表し、mは、-(A-O)m-の分子量が少なくとも200g/molであるように選択される数である]のポリエーテル基、ポリカルボナート基、ポリエステル基、およびポリ(メタ)アクリラート基である。好ましいスペーサー基は、アルコキシル化グリセリン、例えばエトキシル化グリセリン、プロポキシル化グリセリン、およびエトキシル化/プロポキシル化グリセリンである。
【0037】
アミン系硬化剤(以後、アミン硬化剤という)には、例えば脂肪族および脂環式ポリアミン、芳香族および芳香脂肪族ポリアミン、ならびにポリマーのアミン、例えばアミノプラストおよびポリアミドアミンが含まれる。アミン硬化剤は、1,3-ジオキソラン-2-オン基を有するポリマー(以後、カルボナートポリマーともいう)を、ポリアミンの第一級または第二級アミノ官能基と、カルボナートポリマーの1,3-ジオキソラン-2-オン基とのウレタン官能基の形成下での反応により架橋する。好ましいポリアミン硬化剤は、1分子当たり平均して少なくとも2個の第一級または第二級アミノ基、例えば1分子当たり2、3または4個の第一級または第二級アミノ基を有する。この硬化剤は、さらに1個以上の第三級アミノ基を含んでいてもよい。適切なポリアミンは、例えば
- 脂肪族ポリアミン、例えばエチレンジアミン、1,2-および1,3-プロパンジアミン、ネオペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1-(3-アミノプロピル)-3-アミノプロパン、1,3-ビス-(3-アミノプロピル)プロパン、4-エチル-4-メチルアミノ-1-オクチルアミンなど、
- 脂環式ジアミン、例えば1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,2-、1,3-、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-メチル-2,4-ジアミノシクロヘキサン、N-シクロヘキシルプロピレン-1,3-ジアミン、4-(2-アミノプロパン-2-イル)-1-メチルシクロヘキサン-1-アミン、イソホロンジアミン、4,4′-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′-ジメチル-4,4′-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′,5,5′-テトラメチル-4,4′-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,8-ジアミノ-トリシクロ[5.2.1.0]-デカン、ノルボルナンジアミン、メンタンジアミン、メンテンジアミンなど、
- 芳香族ジアミン、例えばトルイレンジアミン、キシリレンジアミン、殊にメタ-キシリレンジアミン(MXDA)、ビス(4-アミノフェニル)メタン(MDAまたはメチレンジアニリン)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(DADS、DDSまたはDapsonとしても公知)など、
- 環状ポリアミン、例えばピペラジン、N-アミノエチルピペラジンなど、
- ポリエーテルアミン、殊にポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレンオキシド、ポリ(1,4-ブタンジオール)、ポリテトラヒドロフラン(Poly-THF)またはポリペンチレンオキシドを基礎とする二官能性および三官能性の第一級ポリエーテルアミン、例えば4,7,10-トリオキサトリデカン-1,3-ジアミン、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン、1,8-ジアミノ-3,6-ジオキサオクタン(XTJ-504、Huntsman社)、1,10-ジアミノ-4,7-ジオキサデカン(XTJ-590、Huntsman社)、1,12-ジアミノ-4,9-ジオキサドデカン(BASF SE社)、1,3-ジアミノ-4,7,10-トリオキサトリデカン(BASF SE社)、230の平均分子量を有する、ポリプロピレングリコールを基礎とする第一級ポリエーテルアミン、例えばポリエーテルアミンD 230(BASF SE社)またはJeffamine(登録商標)D 230(Huntsman社)、400の平均分子量を有する、ポリプロピレングリコールを基礎とする二官能性の第一級ポリエーテルアミン、例えばポリエーテルアミンD 400(BASF SE社)またはJeffamine(登録商標)XTJ 582(Huntsman社)、2000の平均分子量を有する、ポリプロピレングリコールを基礎とする二官能性の第一級ポリエーテルアミン、例えばポリエーテルアミンD 2000(BASF SE社)、Jeffamine(登録商標)D 2000またはJeffamine(登録商標)XTJ 578(それぞれHuntsman社)、4000の平均分子量を有する、プロピレンオキシドを基礎とする二官能性の第一級ポリエーテルアミン、例えばポリエーテルアミンD 4000(BASF SE社)、プロピレンオキシドとトリメチロールプロパンとの反応、引き続き末端OH基のアミノ化により製造された、403の平均分子量を有する三官能性の第一級ポリエーテルアミン、例えばポリエーテルアミンT 403(BASF SE社)またはJeffamine(登録商標)T 403(Huntsman社)、プロピレンオキシドとグリセリンとの反応、引き続き末端OH基のアミノ化により製造された、5000の平均分子量を有する三官能性の第一級ポリエーテルアミン、例えばポリエーテルアミンT 5000(BASF SE社)またはJeffamine(登録商標)T 5000(Huntsman社)、プロピレンオキシドでグラフトされたポリエチレングリコールから構築されていてかつ600の平均分子量を有する脂肪族ポリエーテルアミン、例えばJeffamine(登録商標)ED-600もしくはJeffamine(登録商標)XTJ-501(それぞれHuntsman社)、プロピレンオキシドでグラフトされたポリエチレングリコールから構築されていてかつ900の平均分子量を有する脂肪族ポリエーテルアミン、例えばJeffamine(登録商標)ED-900(Huntsman社)、プロピレンオキシドでグラフトされたポリエチレングリコールから構築されていてかつ2000の平均分子量を有する脂肪族ポリエーテルアミン、例えばJeffamine(登録商標)ED-2003(Huntsman社)、プロピレンオキシドでグラフトされたジエチレングリコールのアミノ化により製造された、220の平均分子量を有する二官能性の第一級ポリエーテルアミン、例えばJeffamine(登録商標)HK-511(Huntsman社)、1000の平均分子量を有する、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)とポリプロピレングリコールとのコポリマーを基礎とする脂肪族ポリエーテルアミン、例えばJeffamine(登録商標)XTJ-542(Huntsman社)、1900の平均分子量を有する、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)とポリプロピレングリコールとのコポリマーを基礎とする脂肪族ポリエーテルアミン、例えばJeffamine(登録商標)XTJ-548(Huntsman社)、1400の平均分子量を有する、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)とポリプロピレングリコールとのコポリマーを基礎とする脂肪族ポリエーテルアミン、例えばJeffamine(登録商標)XTJ-559(Huntsman社)、400の平均分子量を有する、ブチレンオキシドでグラフトされた少なくとも三価のアルコールを基礎とするポリエーテルトリアミン、例えばJeffamine(登録商標)XTJ-566(Huntsman社)、219の平均分子量を有する、ブチレンオキシドでグラフトされたアルコールのアミノ化により製造された脂肪族ポリエーテルアミン、例えばJeffamine(登録商標)XTJ-568(Huntsman社)、600の平均分子量を有する、ペンタエリトリットおよびプロピレンオキシドを基礎とするポリエーテルアミン、例えばJeffamine(登録商標)XTJ-616(Huntsman社)、148の平均分子量を有する、トリエチレングリコールを基礎とするポリエーテルアミン、例えばJeffamine(登録商標)EDR-148(Huntsman社)、176の平均分子量を有する、プロピレンオキシドでグラフトされたエチレングリコールのアミノ化により製造された二官能性の第一級ポリエーテルアミン、例えばJeffamine(登録商標)EDR-176(Huntsman社)、および250の平均分子量を有する、ポリテトラヒドロフラン(Poly-THF)のアミノ化により製造されたポリエーテルアミン、例えばPolyTHF-Amin 350(BASF SE社)ならびにこれらのアミンの混合物、
- 二量体の脂肪酸(例えば二量体のリノール酸)と低分子量のポリアミン、例えばジエチレントリアミン、1-(3-アミノプロピル)-3-アミノプロパンまたはトリエチレンテトラアミンまたは他のジアミン、例えば上述の脂肪族または脂環式ジアミンとの反応により得られるポリアミドアミン(アミドポリアミン)、
- アミン、殊にジアミンと、不足量のエポキシ樹脂もしくは反応性希釈剤との反応により得られる付加物、ここで、好ましくはエポキシ基の約5~20%がアミン、殊にジアミンと反応されている付加物が使用される、
- エポキシ化学から公知であるようなフェナルカミン、
- 例えばポリアミン、好ましくはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、2,2,4-もしくは2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの、アルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドおよび少なくとも1つのアルデヒド反応性の環部位を有する一価以上のフェノール、例えば多様なクレゾールおよびキシレノール、p-tert-ブチルフェノール、レゾルシン、4,4′-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4′-ジヒドロキシジフェニル-2,2-プロパン、好ましくはフェノールによる縮合により製造されるマンニッヒ塩基、
ならびに上述のアミン硬化剤の混合物、殊に脂肪族、脂環式および芳香族アミンの群からの二官能性アミンの、上述のポリエーテルアミンとの混合物である。
【0038】
好ましいアミン系硬化剤は、脂肪族ポリアミン、殊に2,2-ジメチルプロピレンジアミン、芳香族ジアミン、殊にm-キシリレンジアミン(MXDA)、および脂環式ジアミン、殊にイソホロンジアミン、N-シクロヘキシルプロピレン-1,3-ジアミン、および4,4′-ジアミノジシクロヘキシルメタン(Dicykan)である。例えばJeffamine(登録商標)D 230またはJeffamine(登録商標)T 403のようなポリプロピレングリコールを基礎とする二官能性または三官能性の第一級ポリエーテルアミンも好ましい。アミノ基周囲での高い移動度および低い立体障害が支配的であるポリアミン、例えば4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン、PolyTHF Amin 350(BASF SE)が特に好ましい。
【0039】
好ましいものとして挙げられたアミンの混合物、例えば2,2-ジメチルプロピレンアミンとイソホロンアミンとを含む混合物も好ましい。
【0040】
アルコール系硬化剤には、とりわけ、低分子量および高分子量の脂肪族および脂環式アルコールが含まれる。アルコール系硬化剤は、カルボナートポリマーに対して、第一級または第二級アルコール官能基の、1,3-ジオキソラン-2-オン基との炭酸のジエステルの形成下での反応により架橋する。好ましいアルコール系硬化剤は、1分子当たり平均して少なくとも2個の第一級または第二級ヒドロキシ基、例えば1分子当たり2、3または4個の第一級または第二級ヒドロキシ基を有する。適切な低分子量のアルコール系硬化剤は、例えば1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリトリット、ジペンタエリトリット、糖アルコール、例えばソルビットおよびマンニットである。
【0041】
適切なアルコール系硬化剤は、高分子量ポリマーのポリオール、例えばポリエステルポリオール、ポリカルボナートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリラートポリオールおよびポリビニルアルコールでもある。適切なポリマーのポリオール硬化剤は、好ましくは少なくとも1.5molで、かつ特に少なくとも1.8、例えば1.5~10の範囲内、殊に1.8~4の範囲内の平均OH官能価を有する。平均OH官能価とは、ポリマー鎖1つ当たりのOH基の平均数であると解釈される。典型的なポリマーのポリオール成分は、好ましくは、約250~50000g/mol、好ましくは約500~10000g/molの数平均分子量を有する。好ましくは、ポリマーのポリオール成分中に含まれるヒドロキシル基の少なくとも50モル%は第一級ヒドロキシル基である。
【0042】
好ましくは、ポリエステルポリオールは、ポリマー主鎖中にエステル基を有し、ポリマー主鎖の末端に遊離ヒドロキシル基を有する線状または分枝状のポリマーの化合物である。好ましくは、これは、場合により多価アルコール(例えば3、4、5または6価のアルコール)および/または多価ポリカルボン酸の存在での二価アルコールと二価カルボン酸との重縮合により得られるポリエステルである。遊離ジカルボン酸もしくはポリカルボン酸の代わりに、相応するジカルボン酸無水物もしくはポリカルボン酸無水物、または低級アルコールの相応するジカルボン酸エステルもしくはポリカルボン酸エステル、またはこれらの混合物を、ポリエステルポリオールの製造のために使用してもよい。ジカルボン酸またはポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族または複素環式であってよく、好ましくは2~50個、殊に4~20個のC原子を有し、かつ場合により、例えばハロゲン原子により置換されていてよく、かつ/または不飽和であってよい。これについての例として、スベリン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、マレイン酸、無水マレイン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、および二量体の脂肪酸が挙げられる。ポリエステルポリオールの製造のために、ジオールとして殊に、好ましくは2~40個の、殊に2~20個のC原子を有する脂肪族および脂環式ジオール、例えばエチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブテン-1,4-ジオール、ブチン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、例えば1,4-ビス-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、メチルペンタンジオール、さらにジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、およびポリブチレングリコールが挙げられる。一般式HO-(CH2)x-OH[式中、xは、2~20の数、好ましくは2~12の偶数である]のアルコールが好ましい。これについての例は、エチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、およびドデカン-1,12-ジオールである。さらに、ネオペンチルグリコールおよびペンタン-1,5-ジオールが好ましい。
【0043】
アルコール系硬化剤として、ラクトンを基礎とするポリエステルポリオールも適しており、これは、ラクトンのホモポリマーまたはコポリマー、好ましくはラクトンの適切な二官能性スターター分子への付加生成物であり、末端にヒドロキシル基を有する。ラクトンとして、好ましくは、一般式HO-(CH2)z-COOHの化合物から誘導されるものが挙げられ、この場合、zは、1~20の数であり、メチレン単位のH原子は、C1~C4-アルキル基に置き換えられていてもよい。例は、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトンおよび/またはメチル-ε-カプロラクトン、ならびにこれらの混合物である。適切なスターター分子は、例えば、ポリエステルポリオールのための構成成分として上記で挙げられた低分子量の二価アルコールである。ε-カプロラクトンの相応する重合体が特に好ましい。低級のポリエステルジオールまたはポリエーテルジオールを、ラクトン重合体の製造のためのスターターとして使用してもよい。ラクトンの重合体に代えて、ラクトンに相応するヒドロキシカルボン酸の、化学的に等価の相応する重縮合体を使用してもよい。
【0044】
適切なポリエステルポリオールの例は、例えばUllmanns Enzyklopaedie der Technischen Chemie、第4版、第19巻、第62~65頁から公知のポリエステルポリオールである。
【0045】
さらに、例えばホスゲンと、ポリエステルポリオール用の構成成分として挙げられる過剰量の低分子量のアルコールとの反応により得ることができるようなポリカルボナートポリオールも挙げられる。
【0046】
ポリエーテルポリオールは、殊に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド、またはエピクロロヒドリンと、それら自体とを、例えばBF3の存在で重合することによるか、またはこれらの化合物を、場合により混合した形で、または連続して、反応性水素原子を有する二官能性または多官能性のスターター分子、例えばポリオールまたは多官能性アミン、例えば水、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビット、エタノールアミン、またはエチレンジアミンへ付加することにより製造することができるポリエーテルポリオールである。スクロースポリエーテル(DE1176358およびDE1064938参照)ならびにフォルミット(Formit)またはフォルモース(Formose)で開始されるポリエーテル(DE2639083およびDE2737951参照)も挙げられる。
【0047】
同様に、ポリヒドロキシオレフィン、好ましくは2個の末端のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシオレフィン、例えばα,ω-ジヒドロキシポリブタジエンが適している。
【0048】
同様に、ポリヒドロキシポリアクリラートも適していて、この場合、ヒドロキシル基は、ペンダント状に、または末端に配置されていてよい。これについての例は、OH基含有調節剤、例えばメルカプトエタノールまたはメルカプトプロパノールの存在でのアクリル酸および/またはメタクリル酸のアルキルエステルの単独重合または共重合、および引き続き低分子量のポリオール、例えばアルキレングリコール、例えばブタンジオールを用いるエステル交換により得られるα,ω-ジヒドロキシポリ(メタ)アクリルエステルである。このようなポリマーは、例えばEP-A 622 378から公知である。これについての例は、さらに、アクリル酸および/またはメタクリル酸のアルキルエステルと、エチレン系不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、例えばヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシブチルアクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラートまたはヒドロキシブチルメタクリラートとの共重合により得られるポリマーである。
【0049】
好ましくはポリビニルエステル、殊にポリ酢酸ビニルを完全に、または部分的に鹸化することにより得られるポリビニルアルコールも適している。ポリビニルエステル、好ましくはポリ酢酸ビニルが部分的に鹸化されて存在している限り、好ましくはヒドロキシル基として、エステル基の最大50~95%が鹸化されて存在する。ポリビニルエステル、好ましくはポリ酢酸ビニルが完全に鹸化されて存在している限り、一般にヒドロキシル基として、エステル基の95%超から100%までが鹸化されて存在する。
【0050】
高分子量ポリマーのポリオールの中で、好ましくはアルコール系硬化剤は、殊に、例えばBASF SE社の商品名Joncryl(登録商標)で得られるポリアクリラートポリオール、例えばJoncryl(登録商標)945である。
【0051】
適切な硬化剤は、アミノ酸、例えばリシン、アルギニン、グルタミン、およびアスパラギン、およびこれらの立体異性体およびこれらの混合物でもある。
【0052】
もちろん、多様な硬化剤の混合物、例えば1つ以上のアミン系硬化剤と1つ以上のアルコール系硬化剤との混合物、1つ以上のアミン系硬化剤と1つ以上のアミノ酸との混合物、または1つ以上のアルコール系硬化剤と1つ以上のアミノ酸の混合物を使用してもよい。
【0053】
本発明による接着剤組成物中で、硬化剤の全体量は、シクロカルボナート化合物+使用した硬化剤の全体量を基準として、好ましくは0.1質量%~50質量%、頻繁に0.5~40質量%、殊に1~30質量%である。
【0054】
接着剤組成物の硬化は、本発明によるポリマーと硬化剤との混合物を、混合温度を上回る温度に加熱することにより熱的に行うことができる。硬化は、これより低い温度で行ってもよい。典型的には、本発明による接着剤組成物の硬化は、-10℃~150℃の範囲内、好ましくは0~100℃の範囲内、殊に10~70℃の範囲内の温度で行われる。20~30℃の温度での硬化が特に好ましい。どの温度が適しているのかは、その都度の硬化剤および所望の硬化速度に依存し、かつ個別の場合に当業者が例えば簡単な予備試験に基づいて測定することができる。大抵の支配的な周囲温度に相当する低い温度範囲(5~約35℃)では、もちろん、本発明によるポリマーと硬化剤とを混合すれば十分である。あるいは、硬化は、好ましくはマイクロ波誘導により行われる。
【0055】
二成分接着剤組成物は、その硬化のために1つ以上の適切な触媒を含んでいてもよく、これらの触媒は、公知のように反応性官能基Fの種類に依存する。触媒は、所望の場合に、式Iの官能性アルキリデン-1,3-ジオキソラン-2-オン基を有する本発明によるポリマーと硬化剤との全体量を基準として0.01質量%~約10質量%の割合で使用される。一実施態様では、殊に、官能基としてアミノ基を有する硬化剤の場合には触媒は必要なく、つまり、組成物中での触媒の含有率は、0.01質量%未満である。触媒は、好ましくは、硬化剤が、アミノ基とは異なる反応性基Fを有する場合に、殊に硬化剤がヒドロキシル基を有する場合に使用される。
【0056】
好ましくは使用される触媒は、塩基性触媒、特に好ましくは有機アミンおよび有機ホスフィンである。有機アミンの中で、アミジン塩基、例えば1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)および1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、モノ-C1~C6-アルキルアミン、ジ-C1~C6-アルキルアミン、およびトリ-C1~C6-アルキルアミン、殊にトリエチルアミンおよびtert-ブチルアミンが好ましい。有機ホスフィンの中で、トリアルキルホスフィンおよびトリアリールホスフィンが好ましく、例えばトリ-n-ブチルホスフィンおよびトリフェニルホスフィンが好ましい。触媒は、もちろん混合物として、場合によりトリ-C1~C6-アルキルアンモニウムハロゲン化物と銅塩との組合せた形で、例えばトリフェニルホスフィンをトリ-C1~C6-アルキルアンモニウムハロゲン化物と銅塩、例えば塩化銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(II)または硫酸銅(II)との組合せた形で使用されてもよい。
【0057】
上述の成分の他に、接着剤組成物は、これについて通常の添加物を含んでよい。本発明による組成物のために適切な慣用の添加物の選択は、その都度の使用目的に依存し、かつ個々の場合に当業者により決定されてよい。
【0058】
適切な添加物は、例えば酸化防止剤、UV吸収剤/光安定剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、補強剤、充填剤、防曇剤、殺生物剤、可塑剤、滑剤、乳化剤、染料、顔料、レオロジー調節剤、接着調節剤、蛍光増白剤、難燃剤、滴下防止剤、核生成剤、湿潤剤、増粘剤、保護コロイド、消泡剤、粘着付与剤、溶媒および反応性希釈剤、ならびにこれらの混合物を含む。
【0059】
場合により使用される光安定剤/UV吸収剤、酸化防止剤、および金属不活性化剤は、好ましくは高いマイグレーション安定性および耐熱性を有する。これらは、例えば、a)~t)の群から選択される。a)~g)およびi)の群の化合物は、光安定剤/UV吸収剤であり、j)~t)の化合物は安定剤として作用する。
a) 4,4-ジアリールブタジエン、
b) ケイ皮酸エステル、
c) ベンゾトリアゾール、
d) ヒドロキシベンゾフェノン、
e) ジフェニルシアノアクリラート、
f) オキサミド、
g) 2-フェニル-1,3,5-トリアジン、
h) 酸化防止剤、
i) ニッケル化合物、
j) 立体障害アミン、
k) 金属不活性化剤、
l) ホスフィットおよびホスホニット、
m) ヒドロキシルアミン、
n) ニトロン、
o) アミンオキシド、
p) ベンゾフラノンおよびインドリノン、
q) チオ相乗剤
r) 過酸化物分解性化合物、
s) ポリアミド安定剤、ならびに
t) 塩基性補助安定剤。
【0060】
二成分接着剤は、好ましくはイソシアナート不含であり、つまり好ましくは硬化剤としてイソシアナート化合物を含まない。二成分接着剤は、好ましくは有機溶媒中の溶液の形で存在するか、または溶媒不含である。溶媒不含とは、有機溶媒または水を5質量%未満、特に好ましくは2質量%未満で含むか、または含まないことを意味する。
【0061】
本発明による二成分接着剤は、短時間で、かつ殊にアミン硬化剤を用いてすでに室温で高い結合力を構築することができる。
【0062】
本発明の主題は、反応性の第一の成分として先に詳細に説明されたn個の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド単位を有する少なくとも1つの化合物、および第二の成分(硬化剤)として先に詳細に説明された、ポリアミンおよびポリオールから選択される少なくとも1つの化合物を含む二成分接着剤でもあり、ここでnは、2以上の数であり、ポリアミンは2個以上のアミン基を有し、かつポリオールは2個以上のアルコール性ヒドロキシ基を有する。
【0063】
二成分接着剤は、成分の混合後に、70℃以下の温度で、好ましくは40℃以下の温度で、特に好ましくは23℃以下の温度で、好ましくは10000mPa s未満のブルックフィールド粘度(ブルックフィールドLVT、スピンドル3で12rpmで測定)を有する。
【0064】
二成分接着剤は、3μmの接着剤層を用い、かつ3barの押圧で互いに張り合わされた2枚のポリエステルシートの24時間後の剥離強度として測定して、好ましくは1.5N/15mmより高い接着力を有する。
【0065】
本発明の主題は、2枚の基材を互いに接着し、かつこの基材の少なくとも一方の表面上に二成分接着剤を塗布し、この二成分接着剤は、反応性成分としてn個の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸アミド単位を有する先に詳細に説明された化合物の少なくとも1つを含み、かつnは、2以上の数である、接着方法でもある。
【0066】
好ましい用途および好ましい接着方法は、複合シート積層体、光沢シート積層体、および殊に家具積層体または自動車内装部品の積層体の場合に使用されるような成形体の積層体である。
【0067】
本発明の主題は、光沢シート、複合シート、および積層された成形体から選択される積層された対象物を製造するための積層方法でもあり、ここで
a) 第一の基材を、第一のシートの形で準備し、
b) 紙、第二のシートおよび成形体から選択される第二の基材を準備し、
c) 先に詳細に記載された本発明による二成分接着剤を準備し、かつ
d) 二成分接着剤を第一の基材上におよび/または第二の基材上に塗布し、任意に乾燥させ、第一の基材を第二の基材上に貼り合わせ、ここでこの貼り合わせを熱活性化のもとで行うことができる。
第一のシートは、好ましくはプラスチックシートおよびアルミ箔から選択され、この場合、プラスチックシートは金属化されていてもよい。
貼り合わせは、好ましくは加圧下および/または温度上昇下で、殊に熱活性化により行われる。
基材の少なくとも1つは、接着剤で被覆された側で印刷または金属化されていてよい。
【0068】
本発明の主題は、シート材料が、好ましくは、可塑剤を含んでいてもよいポリ塩化ビニル、および熱可塑性ポリオレフィン(TPO)およびこれらの組合せからなる群から選択される、本発明による積層法により製造された、シート積層された対象物でもある。
【0069】
利用されるシートは、多様なプラスチック装飾シートであり、かつ表面構造を有していてよい。プラスチックシート上のこの表面構造は、例えば接着の前、接着の間または接着の後にエンボス加工により施すことができる。
【0070】
シート基材の表面処理は、無条件に二成分接着剤による被覆の前に行う必要はない。しかしながら、シート基材の表面を被覆の前に変性させる場合には、より良好な結果が得られる。この場合、通常の表面処理、例えば接着作用の強化のためのコロナ処理を適用することができる。好ましくは、ポリマーシートは、接着剤と接触する表面に親水基を有する。親水基は、例えば酸素を含む基、例えばOH基または酸基である。親水基は、好ましくは接着作用の強化のためのコロナ処理により作成される。コロナ処理または他の表面処理は、被覆組成物による十分な濡れ性のために必要な程度で実施される。通常では、この目的のために、1平方メートルおよび1分当たり約10ワットのコロナ処理で十分である。あるいは、または付加的に、任意で、プライマーまたはシート基材と接着剤層および/または成形体基材との間の中間層を使用してもよい。
【0071】
さらに、シートは、さらなる付加的な機能層、例えばバリア層、印刷層、着色層もしくはラッカー層または保護層を有していてもよい。この場合、機能層は、外側に、つまりシート基材の接着剤で被覆された側とは反対側に、または内側に、シート基材と接着剤層との間に存在してよい。
【0072】
成形体の積層は、基材としての堅固な(立体的に成形された、寸法安定性の、可撓性でない)成形体上に大面積の曲げやすいシートの持続的な貼り合わせによる複合体の製造に関する。曲げやすいシートは、殊にポリマーシートおよび金属箔から選択される。このシートは、堅固な成形体、例えば金属、塗装された金属、木材、木質材料、繊維材料またはプラスチックからなる成形品と張り合わされる。成形品は、家具または家具部品、つまり家具の構成部材または自動車内装部分であってよい。
【0073】
一実施形態の場合に、積層された成形体は、シート被覆された家具である。本発明により製造されたシート被覆された家具は、複合体である。この複合体は、シートと接着剤層との間に、および/または基材と接着剤層の間に、さらに付着の改善のためにプライマー層を有していてよい。接着されるべきシートと基材とは、定着剤で前処理されていてよい。しかしながら、本発明による接着剤のすでに良好な付着特性に基づき、プライマーの適用は無条件に必要であるとはいえない。家具部品は、合成繊維または天然繊維またはチップから構成されている成形品であってもよく、この成形品は、結合剤によって成形品に結合されている。成形品は、任意の形状を有していてよい。特にMDFプレート(中密度ウッドファイバーボード)が好ましい。
【0074】
自動車製造のためのシート積層された成形品の製造の際に、自動車に組み込むために予め設定された成形品上に積層が行われる。この成形品は、合成繊維または天然繊維またはチップから構成されている成形品であってもよく、この成形品は、結合剤によって成形品に結合されている、殊にプラスチック、例えばABSからなる成形品も適している。成形品は、任意の形状を有していてよい。
【0075】
第一の基材として特に好ましいシートは、ポリマーシートである。ポリマーシートとして、殊に、巻き上げることができる0.05ミリメートル~5ミリメートル、好ましくは0.25~1mmの厚みの曲げやすい平面状のプラスチックであると解釈される。したがって、厳格な意味で1mm未満の厚みの「シート」の他に、典型的に1~3mmの厚みの、特別の場合に、それどころか最大5mmまでの厚みの、トンネル、屋根または水泳用プールのシーリングのために典型的に使用されるようなシーリング帯材でもあると解釈される。この種のプラスチックシートは、通常では、塗工、キャスティング、押出、または特に好ましくはカレンダー加工により製造され、典型的にはロールの形で市場で入手可能であるか、または現場で製造される。これらは、単層または多層で構成されていてよい。ポリマーシートのプラスチックは、好ましくは、熱可塑性プラスチック、例えばポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、例えばポリエチレン、延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリ塩化ビニル、殊に粘質PVC、ポリアセタート、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ASA(アクリルニトリル/スチレン/アクリル酸エステルコポリマー)、PUR(ポリウレタン)、PA(ポリアミド)、ポリ(メタ)アクリラート、ポリカルボナート、またはこれらのプラスチックアロイ、セロファン、金属で、例えばアルミニウムで被覆(蒸着)されたポリマーシート(省略して:金属化シート)または金属箔、例えばアルミニウムからなる金属箔である。上述のシートは、例えば印刷インキで印刷されていてもよい。硬質PVCおよび熱可塑性ポリエチレンテレフタラート(PET)が特に好ましい。
【0076】
シートおよび基材を接着剤で被覆することは、通常の塗布方法によって、例えばスプレー塗布、刷毛塗り、ナイフ塗布、スタンプ塗布、ローラ塗布または流延塗布によって行うことができる。スプレー塗布が好ましい。
【0077】
塗布される接着剤量は、接着剤を基準として、好ましくは0.5~100g/m2、特に好ましくは2~80g/m2、全く特に好ましくは10~70g/m2である。好ましくは、シートまたは基材は片面だけ被覆される。しかしながら、両方を接着されるべきユニット、つまりシートおよび基材の被覆も考慮される。被覆の後に、水もしくはその他の溶媒を除去するために、通常では乾燥が、好ましくは室温で、または80℃までの温度で行われる。
【0078】
接着剤は、熱的に活性化されてよい。接着剤層内の温度は、好ましくは少なくとも30℃、または少なくとも40℃、例えば30~200℃、または40~180℃である。本発明の特別な利点は、慣用の接着剤により使用される60~70℃の温度範囲の下方の温度でも、例えば60℃未満、例えば最大で58℃、最大で55℃または最大で50℃の温度での接着剤の良好な活性化性にある。
【0079】
接着は、好ましくは加圧下で行われる。このため、例えば接着されるべき部品は、少なくとも0.005、または少なくとも0.01、または少なくとも0.08N/mm2、例えば0.005~5N/mm2、または0.01~0.8N/mm2の圧力で一緒に押圧されてよい。押圧は、例えばシートと基材との間に負圧を印加することにより、および/または空気圧によって作り出されてよい。
【0080】
車両用の取付部品の製造のためにも本発明による方法は特別な意味を有する。自動車用の内装部品を製造するための本発明による接着剤の使用は特に好ましい。この種の内装部品の例は、ドアインナーカバー、スイッチパネル、ダッシュボード、リアシェルフ、ルーフライニング、スライディングルーフライニング、センタコンソール、グローブボックス、サンバイザ、ピラー、ドアグリップおよびアームグリップ、フロアアッセンブリ、ロードフロアアッセンブリおよびトランクルームアッセンブリ、ならびにライトバンおよびトラックの仮眠用キャビンボードおよびリアボードである。このために、殊に真空深絞り法または封止法における圧縮積層が用いられる。真空深絞り法の場合には、接着剤は成形体に塗布される。引き続き、場合により排気が、例えば室温で、または乾燥トンネル内では好ましくは最大40℃で行われる。典型的に、張り合わされるべきシート、例えば空気不透過性材料からなる装飾シートが、フレーム内に気密に張設される。シートの下方には下型が存在し、その上に成形体が置かれる。下型および成形体は、穿孔されているか、または空気透過性である。この器具は、下方でさらに気密に閉鎖されている。この装置から空気を吸い出す際に、シートは、成形体の表面にかかる大気圧下で成形体にぴったりと張り付く。シートは、真空もしくは負圧の印加の前に加熱される。シートは、形成されるべき真空もしくは負圧のために空気不透過性である。圧縮積層法の場合には、接着剤は同様に成形体および場合により貼り合わせられるべきシートに塗布されるが、しかしながら少なくとも成形体には塗布される。引き続き、場合により排気が、典型的には室温で、または乾燥トンネル内では好ましくは最大40℃で行われる。成形体とシートとの貼り合わせは、熱活性化の後で接合および圧縮下で行うことができる。ここで利用されるシートは、多様なプラスチック装飾シートであり、かつ表面構造を有する。プラスチックシート上のこの表面構造は、例えば接着の前、接着の間または接着の後にエンボス加工されてよい。
【0081】
複合シートを製造するための本発明による積層法の場合には、先に説明された二成分接着剤または相応する既製の配合物を、張り合わされるべき基材に、好ましくは0.1~20g/m2、特に好ましくは1~7g/m2の層厚で、例えばブレード、刷毛などにより塗布する。通常の被覆方法、例えばロール塗布、対向ロール塗布、グラビアロール塗布、対向グラビアロール塗布、刷毛塗り、ロッド塗布、スプレー被覆、エアブラシ被覆、メニスカス被覆、カーテン被覆または浸漬被覆を適用することができる。揮発成分の排気のための任意の短い時間の後(好ましくは1~60秒後)に、被覆されたシート基材を、次いで第二のシート基材と積層することができ、ここで、温度は、例えば20~200℃、好ましくは20~100℃であり、かつ圧力は、例えば100~3000kN/m2、好ましくは300~2000kN/m2であってよい。複合シート積層のための基材として、特に、例えばポリマーシート、殊にポリエチレン(PE)、延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアセタート、セロファン、金属で、例えばアルミニウムで被覆(蒸着)されたポリマーシート(省略して:金属化シート)、または金属箔、例えばアルミニウムからなる金属箔が適している。上述のシートを互いに、または他のタイプのシートと、例えばポリマーシートを金属箔と、多様なポリマーシートなどを互いに貼り合わせることができる。上述のシートは、例えば印刷インキで印刷されていてもよい。
【0082】
本発明の一実施形態は、先に述べられた積層法により得られる、つまり先に説明された二成分接着剤の使用下で製造される複合シートである。第一のシートの材料は、好ましくはOPP、CPP、PE、PETおよびPAから選択され、かつ第二のシートの材料は、好ましくはOPP、CPP、PE、PET、PAおよび金属箔から選択される。本発明の一実施形態の場合に、第一のシートおよび/または第二のシートは、接着剤で被覆されるその都度の側に印刷されるか、または金属化されている。基材シートの厚みは、例えば5~100μm、好ましくは5~40μmであってよい。好ましい複合シートの場合に、シート材料は、アルミニウム箔、印刷されたポリエステルシート、印刷されていないポリエステルシート、印刷されたポリアミドシート、印刷されていないポリアミドシート、ポリプロピレンシート、ポリエチレンシートおよびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0083】
光沢シート積層の場合には、第一の基材を第二の基材とラミネートし、ここで、第一の基材は、ポリマーシート、好ましくは透明なポリマーシートであり、かつ第二の基材は紙、厚紙または板紙であり、ここで第二の基材は、好ましくは印刷されており、かつこのラミネートは好ましくは加圧下および加熱下で行われる。この積層は、複合シートの製造と同様に行われる。好ましくは、光沢シートラミネートは、先に説明された二成分接着剤の使用下で製造され、ここで透明なポリマーシート(第一の基材)の材料は、延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアセタートおよびセロファンから選択され、かつ第二の基材の材料は、紙、厚紙および板紙から選択される。好ましくは、光沢シート積層のためのポリマーシートとしてコロナ処理されたOPPシートが使用される。本発明の一実施形態の場合に、光沢シートの第二の基材は、接着剤で被覆される側に、着色または印刷されている。ポリマーシートの厚みは、例えば5~100μm、好ましくは5~40μmであってよい。
【0084】
本発明を、次の実施例を用いて詳細に説明する。
【0085】
実施例
実施例1:エトキシル化/プロポキシル化グリセリンを基礎とする3個の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボキサミド基を有する化合物
【化17】
【化18】
=グリセリン+EO/PO
M
eq=1870g/mol(シクロカルボナート基1つ当たりの分子量)
【0086】
窒素雰囲気下で、トルエン-2,4-ジイソシアナート(TDI)13.94g(0.0825mol)および2-オキソ-[1,3]-ジオキソラン-4-カルボン酸10.56g(0.08mol)を乾燥THFまたはアセトン70ml中に溶かす。1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデカ-7-エン(DBU)0.12g(1mol%)を添加し、この反応混合物を室温で12h攪拌する。溶媒の蒸発後に、生成物が白色固体として定量的収率で得られる。
【0087】
この反応は、乾燥したアセトニトリル中で、かつ触媒として4-DMAPを用いて行ってもよい。
【0088】
DBTL(ジブチルスズジラウラート、0.02質量%)の存在で、得られた生成物を、Lupranol(登録商標)2095(第一級ヒドロキシル末端基を有する三官能性ポリエーテルポリオール)と反応させて、二官能性プレポリマーにすることができる。このために、生成物5.0g(0.0195mol)を乾燥THF中に溶かし、かつLupranol(登録商標)2095 31.2g(6.52mmol)およびDBTL1.2mg(0.002mmol)を添加する。この反応混合物を4hで60℃に加熱する。溶媒の蒸発後に、生成物が粘性の黄色油状物として得られる。
【0089】
実施例2
グリセリンカルボナートカルボン酸(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸)とイソシアヌラート変性されたヘキサメチレンジイソシアナート(Basonat(登録商標)HI 100)から製造された3個の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボキサミド基を有する化合物
【化19】
【0090】
シクロカルボナートカルボン酸31.79g(0.12mol)をTHF80ml中に装入し、黄色の溶液が生じた。THF60ml中のDMAP(4-(ジメチルアミノ)-ピリジン、0.0012mol)0.3704gを添加した。その後、THF80ml中のBasonat(登録商標)HI 100 46.09g(NCOを基準として0.12mol;Basonat(登録商標)HI 100のNCO数は21.9%に相当)を添加した。この溶液を、室温で約24h攪拌する。溶液は一晩を経て濁る。THFの回転蒸発による蒸発後に、黄色の高粘性の液体73.76gが残留する。IRスペクトルにおいて、NCOピークは見られず、NCO数は1.1%に相当した。
【0091】
実施例3:二成分接着剤
実施例1または実施例2の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボキサミドを、23℃でTHF中に溶かし、多様なアミン系硬化剤(表1参照)と混合した。
【0092】
得られる反応性二成分接着剤を、混合直後に、36μmの厚みの印刷されたポリエステルシートに3μmの層厚で塗布した。溶媒を熱空気流で蒸発させ、次いで、予めコロナ処理が行われた36μmの厚みの第二のポリエステルシートをカレンダー中で3barの圧力下で接着剤層に積層した。生じるラミネートを、15mmの幅のストリップに切断し、このストリップから、24h後に、剥離強度を室温(20℃)で測定した[N/15mm]。このために引裂装置を利用し、かつ剥離強度試験を、90°の引裂角で実施した(T試験)。この結果は表1に示されている。
【0093】
アミン系硬化剤:
DODDA:4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン
H2NCH2CH2CH2OCH2CH2CH2CH2OCH2CH2CH2NH2
DATOTD:1,13-ジアミノ-4,7,10-トリオキサトリデカン
H2NCH2CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2CH2NH2
DAP:1,3-ジアミノプロパン、H2NCH2CH2CH2NH2
【0094】
表1:接着剤組成および剥離強度測定の結果
【表1】
Liofol(登録商標)UR7732/Liofol(登録商標)UR 6084:イソシアナートを基礎とする結合剤(Liofol(登録商標)UR7732)およびポリオール硬化剤(Liofol(登録商標)UR 6084)からなる二成分ポリウレタン積層接着剤
【0095】
24h後の1.5Nより大きい剥離強度は、可撓性の包装内での接着剤の適用のため、および複合シート積層のために特に良好に適していて、工業的に使用可能である。