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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】故障判定装置及び音出力装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 29/00 20060101AFI20221129BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20221129BHJP
   H03F 3/181 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H04R29/00 310
G01R31/00
H03F3/181
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019009188
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020120243
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 博次
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/083653(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0230018(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 29/00
G01R 31/00
H03F 3/181
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号と、前記入力信号に所定の処理を施す処理部から出力される出力信号と、の差分を示す差分検出信号を出力する差分検出部と、
前記差分検出信号に基づいて、前記処理部における故障の有無についての判定結果を示す判定信号を出力する判定部と、
前記入力信号のレベルが所定範囲にあるか否かを示すレベル検出信号を出力するレベル検出部と、
を含み、
前記判定部は、前記入力信号のレベルが前記所定範囲にあることを前記レベル検出信号が示す場合、前記判定信号の更新を行い、前記入力信号のレベルが前記所定範囲にないことを前記レベル検出信号が示す場合、前記判定信号の更新を停止する
故障判定装置。
【請求項2】
前記レベル検出部は、互いにレベルが異なる複数の閾値を用いて前記入力信号のレベルを判定して前記レベル検出信号を出力する
請求項1に記載の故障判定装置。
【請求項3】
前記複数の閾値が可変である
請求項2に記載の故障判定装置。
【請求項4】
前記レベル検出部は、前記入力信号のレベルが、第1の閾値よりも低く且つ前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値よりも高くなる期間、及び前記入力信号のレベルが、前記第2の閾値よりも小さい第3の閾値よりも低く且つ前記第3の閾値よりも小さい第4の閾値よりも高くなる期間に、それぞれ、前記入力信号のレベルが前記所定範囲にあることを示すレベル検出信号を出力する
請求項2または請求項3に記載の故障判定装置。
【請求項5】
前記レベル検出部は、前記入力信号のゼロレベルが前記第2の閾値と前記第3の閾値との間に存在するように設定された前記複数の閾値を用いて前記入力信号のレベルを判定して前記レベル検出信号を出力する
請求項4に記載の故障判定装置。
【請求項6】
前記レベル検出部は、前記入力信号の正側のピークが前記第1の閾値よりも大きく、前記入力信号の負側のピークが前記第4の閾値よりも小さくなるように設定された前記複数の閾値を用いて前記入力信号のレベルを判定して前記レベル検出信号を出力する
請求項4または請求項5に記載の故障判定装置。
【請求項7】
前記差分検出部は、
前記入力信号と前記出力信号との各時点における差分を示す差分信号を出力する比較部と、
前記差分信号を平均化した信号を前記差分検出信号として出力するフィルタ部と、を含み
前記判定部は、判定閾値を用いて前記差分検出信号のレベルを判定することにより前記処理部における故障の有無を判定する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の故障判定装置。
【請求項8】
前記フィルタ部は、前記レベル検出信号が前記入力信号のレベルが前記所定範囲にないことを示す場合、前記差分検出信号の更新を停止し、前記レベル検出信号が前記入力信号のレベルが前記所定範囲にあることを示す場合、前記差分検出信号の更新を行う
請求項7に記載の故障判定装置。
【請求項9】
前記入力信号及び前記出力信号は、それぞれ音声信号である
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の故障判定装置。
【請求項10】
入力信号に所定の処理を施す処理部と、
前記処理部から出力される出力信号によって示される音を出力するスピーカと、
前記入力信号と前記出力信号との差分を示す差分検出信号を出力する差分検出部と、
前記差分検出信号に基づいて、前記処理部における故障の有無についての判定結果を示す判定信号を出力する判定部と、
前記入力信号のレベルが所定範囲にあるか否かを示すレベル検出信号を出力するレベル検出部と、
を含み、
前記判定部は、前記レベル検出信号が前記入力信号のレベルが前記所定範囲にあることを示す場合、前記判定信号の更新を行い、前記レベル検出信号が前記入力信号のレベルが前記所定範囲にないことを示す場合、前記判定信号の更新を停止する
音出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障判定装置及び音出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音出力装置における故障検出に関する技術として、以下の技術が知られている。例えば、特許文献1には、警報音を発生する警報音発生手段と、警報音を発生させるための警報信号を警報音発生手段に送信する警報信号送信手段と、警報信号を増幅するアンプと、を備えた警報器におけるアンプの異常を検出する故障検出装置が記載されている。この故障検出装置は、互いに極性及び位相の異なる二つのパルス波を有する故障検出信号をアンプに送信する検出信号送信手段と、アンプが故障検出信号を増幅してプラス側出力端子から出力する第一検出信号を検出するための第一検出回路と、アンプが故障検出信号を増幅してマイナス側出力端子から出力する第二検出信号を検出するための第二検出回路と、検出された第一検出信号と第二検出信号とに基づいてアンプの異常を判定する判定手段と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-230016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音出力装置における「故障」の定義は、ユーザにおける音出力装置の用途により異なる。例えば、音質が重視される用途に用いられる場合には、原音と再生音(スピーカからの出力音)との差が微小であったとしても故障とみなす可能性がある。一方、緊急情報等の音質が重視されない用途に用いられる場合には、音による情報伝達に支障をきたす程度の顕著な不具合または劣化が生じない限り故障とはみなさない可能性がある。
【0005】
従って、音出力装置における故障判定機能の設計者自身が、故障を定義することができず、ユーザ側で故障判定基準を定めることとなる。
【0006】
音出力装置における故障判定は、例えば、入力信号(原音)と出力信号(再生音)との差異に基づいて行う方法が考えられる。例えば、入力信号と出力信号との差異が閾値よりも大きい場合に故障と判定され得る。ここで、入力信号と出力信号との間に差異が生じる要因として、非線形歪によるものと、ノイズによるものとが挙げられる。
【0007】
図1は、非線形歪に起因して、入力信号と出力信号との間に差異が生じている場合を示す図である。例えば、アンプの入出力特性の歪により入力信号のピーク部分が歪む場合、入力信号の高調波成分が発生し、これにより音が変化する。音質が重視される場合には、ユーザは、図1に示すような入力信号と出力信号との差異を、故障とみなす可能性がある。一方、出力信号に多少の歪みが生じたとしても、入力信号の周波数成分が十分に残り、入力信号による音の情報が十分に伝わる場合には、ユーザは、図1に示すような入力信号と出力信号との差異を、故障とはみなさない可能性がある。
【0008】
図2は、ノイズに起因して、入力信号(原音)と出力信号(再生音)との間に差異が生じている場合を示す図である。入力信号にノイズ成分が重畳すると、スピーカからは原音に雑音が混ざった音が出力される。音質が重視される場合には、ユーザは、図2に示すような入力信号と出力信号との差異を故障とみなす可能性がある。一方、このような雑音を含んだ音であっても、入力信号の周波数成分が十分に残り、入力信号による音の情報が十分に伝わる場合には、ユーザは、図2に示すような入力信号と出力信号との差異を故障とはみなさない可能性がある。
【0009】
また、入力信号の発生タイミングとノイズ成分の発生タイミングとが異なることも考えられる。例えば、入力信号が音声信号である場合、当該入力信号は、振幅が大きい部分と振幅が小さい部分とを含み得る。一方、ノイズ成分は、ノイズ源が存在し続ける限り継続的に入力信号に重畳する。この場合、信号成分に対するノイズ成分の割合は、刻々と変化する。例えば、入力信号の振幅がゼロ(すなわち入力音声レベルがゼロ)の時点においては、信号成分に対するノイズ成分の割合は100%となる。一方、入力信号の振幅が比較的大きい時点においては、信号成分に対するノイズ成分の割合は小さくなる。信号成分に対するノイズ成分の割合に基づいて故障判定を行う場合、信号成分に対するノイズ成分の割合が刻々と変化すると、故障判定が困難となる。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、故障判定において、ユーザが定める故障の定義を包含可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る故障判定装置は、入力信号と、前記入力信号に所定の処理を施す処理部から出力される出力信号と、の差分を示す差分検出信号を出力する差分検出部と、前記差分検出信号に基づいて、前記処理部における故障の有無についての判定結果を示す判定信号を出力する判定部と、前記入力信号のレベルが所定範囲にあるか否かを示すレベル検出信号を出力するレベル検出部と、を含む。前記判定部は、前記入力信号のレベルが前記所定範囲にあることを前記レベル検出信号が示す場合、前記判定信号の更新を行い、前記入力信号のレベルが前記所定範囲にないことを前記レベル検出信号が示す場合、前記判定信号の更新を停止する。
【0012】
本発明に係る音出力装置は、入力信号に所定の処理を施す処理部と、前記処理部から出力される出力信号によって示される音を出力するスピーカと、前記入力信号と前記出力信号との差分を示す差分検出信号を出力する差分検出部と、前記差分検出信号に基づいて、前記処理部における故障の有無についての判定結果を示す判定信号を出力する判定部と、前記入力信号のレベルが所定範囲にあるか否かを示すレベル検出信号を出力するレベル検出部と、を含む。前記判定部は、前記レベル検出信号が前記入力信号のレベルが前記所定範囲にあることを示す場合、前記判定信号の更新を行い、前記レベル検出信号が前記入力信号のレベルが前記所定範囲にないことを示す場合、前記判定信号の更新を停止する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、故障判定において、ユーザが定める故障の定義を包含することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】非線形歪に起因する入力信号と出力信号との差異を示す図である。
図2】ノイズに起因する入力信号と出力信号との差異を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る音出力装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係るレベル検出部における処理内容の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る比較部に供給される入力信号及び出力信号の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る比較部から出力される差分信号の一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るフィルタ部から出力される差分検出信号の一例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る故障判定装置及び音出力装置による効果を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る故障判定装置及び音出力装置による効果を示す図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る音出力装置の構成の一例を示すブロック図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る音出力装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、各図面において、実質的に同一又は等価な構成要素又は部分には同一の参照符号を付している。
【0016】
[第1の実施形態]
【0017】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る音出力装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0018】
音出力装置100は、故障判定装置1、デジタルアナログ変換器21、信号処理部22及びスピーカ23を含んで構成されている。
【0019】
デジタルアナログ変換器21は、デジタル形式の音声信号である入力信号S1をアナログ信号S2に変換して出力する。
【0020】
信号処理部22は、アナログ信号S2に所定の処理を施した信号を出力信号S3として出力する。信号処理部22は、例えばアナログ信号S2を増幅する増幅処理及びアナログ信号S2に含まれる特定の周波数成分を除去するフィルタ処理の少なくとも一方を行うものであってもよい。スピーカ23は、出力信号S3を音に変換して出力する。なお、デジタルアナログ変換器21及び信号処理部22を含む処理部25は、本発明における処理部の一例である。
【0021】
故障判定装置1は、音出力装置100に故障が生じているか否かを判定する機能を有する。より具体的には、故障判定装置1は、原音を示す入力信号S1と、再生音を示す出力信号S3との差分に基づいて、デジタルアナログ変換器21及び信号処理部22の少なくとも一方における故障の有無を判定する。故障判定装置1は、アナログデジタル変換器10、差分検出部11、判定部14及びレベル検出部15を含んで構成されている。差分検出部11は、比較部12及びフィルタ部13を含んで構成されている。
【0022】
アナログデジタル変換器10は、信号処理部22から出力されるアナログ形式の出力信号S3をデジタル形式の出力信号S4に変換して出力する。
【0023】
比較部12は、逐次供給される入力信号S1と出力信号S4との各時点における差分を示す差分信号S5を出力する。比較部12は、例えば、入力信号S1の信号値(信号レベル)と出力信号S4の信号値(信号レベル)との差の絶対値を、差分信号S5として出力する。
【0024】
フィルタ部13は、差分信号S5の信号値を平均化したものを差分検出信号S6として出力する。すなわち、フィルタ部13は、ローパスフィルタに相当する機能を有しており、差分信号S5の信号値の時間平均を導出することで、入力信号S1と出力信号S4との差分を所定期間内において平均化した数値を示す差分検出信号S6として出力する。差分検出信号S6の信号値(信号レベル)は、入力信号S1と出力信号S4との差分が大きくなる程大きくなる。
【0025】
判定部14は、差分検出信号S6に基づいて、デジタルアナログ変換器21及び信号処理部22の少なくとも一方における故障の有無を判定し、その判定結果を示す判定信号S8を出力する。例えば、判定部14は、差分検出信号S6の信号値(信号レベル)が、予め定められた判定閾値よりも大きい場合には、デジタルアナログ変換器21及び信号処理部22の少なくとも一方において故障が生じていることを示す判定信号S8を出力する。この場合、判定部14は、例えばハイレベルの判定信号S8を出力してもよい。一方、判定部14は、差分検出信号S6の信号値(信号レベル)が、上記の判定閾値よりも小さい場合には、デジタルアナログ変換器21及び信号処理部22の双方において故障が生じていないことを示す判定信号S8を出力する。この場合、判定部14は、例えばローレベルの判定信号S8を出力してもよい。なお、判定部14における判定処理に用いられる上記の判定閾値は、ユーザが任意の値に設定することが可能である。また、判定閾値にヒステリシスを持たせてもよい。これにより、入力信号S1の変動に起因して判定信号S8が不安定になることを抑制することが可能となる。
【0026】
レベル検出部15は、入力信号S1のレベルが所定範囲にあるか否かを示すレベル検出信号S7を出力する。図4は、レベル検出部15において実施される処理の内容の一例を示す図である。レベル検出部15は、互いにレベルが異なる4つの閾値TH1、TH2、TH3、TH4を用いて入力信号S1のレベルを判定することにより、レベル検出信号S7を出力する。閾値TH1、TH2、TH3、TH4のレベルは、それぞれ可変とされており、ユーザが任意の値に設定可能である。図4に示す例では、TH1<TH2<TH3<TH4とされている。また、ここでは、上記所定範囲が、図4においてハッチングで示されている範囲であるものとする。すなわち、入力信号S1のレベルが所定範囲にある場合とは、入力信号S1のレベルが閾値TH1よりも低く且つ閾値TH2よりも高くなる場合、及び入力信号S1のレベルが閾値TH3よりも低く且つ閾値TH4よりも高くなる場合であるものとする。
【0027】
レベル検出部15は、入力信号S1のレベルが閾値TH1よりも低く且つ閾値TH2よりも高くなる期間t1、及び入力信号S1のレベルが閾値TH3よりも低く且つ閾値TH4よりも高くなる期間t2のそれぞれにおいて、入力信号S1のレベルが上記所定範囲にあることを示すレベル検出信号S7を出力する。この場合、レベル検出部15は、例えばハイレベルのレベル検出信号S7を出力してもよい。一方、レベル検出部15は、入力信号S1が上記所定範囲にない、期間t1及びt2以外の期間において、入力信号S1が上記所定範囲にないことを示すレベル検出信号S7を出力する。この場合、レベル検出部15は、例えばローレベルのレベル検出信号S7を出力してもよい。レベル検出信号S7は、フィルタ部13及び判定部14にそれぞれ供給される。
【0028】
フィルタ部13は、入力信号S1のレベルが上記所定範囲にあることをレベル検出信号S7が示す場合、差分検出信号S6の更新を行う。すなわち、この場合、フィルタ部13は、比較部12から供給される差分信号S5の変動に追従して差分検出信号S6を出力する。一方、フィルタ部13は、入力信号S1のレベルが上記所定範囲にないことをレベル検出信号S7が示す場合、差分検出信号S6の更新を停止させる。すなわち、この場合、差分検出信号S6の信号値(信号レベル)は、比較部12から供給される差分信号S5の変動には追従せず、直前の値が維持される。換言すれば、入力信号S1と出力信号S4との差分が変動した場合でも、その変動は差分検出信号S6に反映されない。
【0029】
同様に、判定部14は、入力信号S1のレベルが上記所定範囲にあることをレベル検出信号S7が示す場合、判定信号S8の更新を行う。すなわち、この場合、判定部14は、フィルタ部13から供給される差分検出信号S6の変動に追従して判定信号S8を出力する。一方、判定部14は、入力信号S1のレベルが上記所定範囲にないことをレベル検出信号S7が示す場合、判定信号S8の更新を停止させる。すなわち、この場合、判定信号S8の信号値は、フィルタ部13から供給される差分検出信号S6の変動には追従せず、直前の値が維持される。換言すれば、入力信号S1と出力信号S4との差分が変動した場合でも、その変動は判定信号S8に反映されない。従って、入力信号S1のレベルが上記所定範囲にある場合、故障判定装置1における故障判定は、実質的に停止する。
【0030】
以下において、音出力装置100の動作について説明する。
【0031】
デジタル形式の音声信号である入力信号S1は、デジタルアナログ変換器21においてアナログ信号に変換され、信号処理部22において、例えば増幅処理及びフィルタ処理が施され、出力信号S3として出力される。スピーカ23は、出力信号S3を音に変換して出力する。
【0032】
出力信号S3は、アナログデジタル変換器10においてデジタル形式の出力信号S4に変換される。入力信号S1及び出力信号S4は、それぞれ比較部12に供給される。
【0033】
図5は、比較部12に供給される入力信号S1及び出力信号S4の一例を示す図である。比較部12は、図6に示すように、入力信号S1の信号値(信号レベル)と出力信号S4の信号値(信号レベル)との差の絶対値を、差分信号S5として出力する。
【0034】
フィルタ部13は、図7に示すように、差分信号S5の信号値の時間平均を差分検出信号S6として出力する。
【0035】
判定部14は、差分検出信号S6の信号値(信号レベル)が、判定閾値よりも大きい場合には、デジタルアナログ変換器21及び信号処理部22の少なくとも一方において故障が生じていることを示す判定信号S8を出力する。一方、判定部14は、差分検出信号S6の信号値(信号レベル)が、上記の判定閾値よりも小さい場合には、デジタルアナログ変換器21及び信号処理部22の双方において故障が生じていないことを示す判定信号S8を出力する
【0036】
レベル検出部15は、図4に示すように、例えば、4つの閾値TH1、TH2、TH3、TH4を用いて入力信号S1のレベルを判定することによりレベル検出信号S7を出力する。レベル検出部15は、入力信号S1のレベルが、例えば、閾値TH1よりも低く且つ閾値TH2よりも高い期間t1、及び入力信号S1のレベルが閾値TH3よりも低く且つ閾値TH4よりも高い期間t2のそれぞれにおいて、入力信号S1のレベルが所定範囲にあることを示すレベル検出信号S7を出力する。
【0037】
フィルタ部13は、入力信号S1のレベルが所定範囲にあることをレベル検出信号S7が示す場合、差分検出信号S6の更新を行う。一方、フィルタ部13は、入力信号S1のレベルが所定範囲にないことをレベル検出信号S7が示す場合、差分検出信号S6の更新を停止させる。この場合、差分検出信号S6の信号値は、直前の値が維持される。
【0038】
同様に、判定部14は、入力信号S1のレベルが所定範囲にあることをレベル検出信号S7が示す場合、判定信号S8の更新を行う。一方、判定部14は、入力信号S1のレベルが所定範囲にないことをレベル検出信号S7が示す場合、判定信号S8の更新を停止させる。この場合、判定信号S8の信号値は、直前の値が保持される。
【0039】
本発明の第1の実施形態に係る故障判定装置1及び音出力装置100によれば、図8に示すように、閾値TH1のレベルを、入力信号S1の正側のピークよりも低いレベルに設定し、閾値TH4のレベルを、入力信号S1の負側のピークよりも高いレベルに設定することで、入力信号S1の正側のピークが生じるタイミング及び負側のピークが生じるタイミングのそれぞれにおいて、故障判定装置1における故障判定を実質的に停止させることができる。従って、図8に示すように、出力信号S3及びS4に、非線形歪が生じた場合に、この歪が故障として判定されることを回避することができる。例えば、出力信号S3及びS4に歪みが生じることを許容した上で、信号処理部22において実施される増幅処理におけるゲインを最大としたい場合に、入力信号S1の正側及び負側のピークに生じている歪が、故障として判定されることを回避することができる。
【0040】
一方、閾値TH1のレベルを、入力信号S1の正側のピークよりも高いレベルに設定し、閾値TH4のレベルを、入力信号S1の負側のピークよりも低いレベルに設定することで、入力信号S1のピーク部分において顕著に現れる歪みを、故障として判定することが可能となる。
【0041】
また、図9に示すように、入力信号S1のゼロレベルが閾値TH2と閾値TH3との間に存在するように、閾値TH2及び閾値TH3のレベルを設定することで、入力信号S1のレベルがゼロまたは極めて小さくなるタイミングにおいて、故障判定装置1における故障判定を実質的に停止させることができる。従って、図9に示すように、出力信号S3及びS4がノイズを含む場合に、入力信号S1のレベルがゼロ付近となるタイミングにおいて、信号成分に対するノイズ成分の割合が高くなる場合に、これが故障として判定されることを回避することが可能となる。従って入力信号S1のレベル変化及び無音時間の長さの違いにより、故障判定の結果が大きく異なってしまうことを回避することが可能となる。
【0042】
このように、本発明の実施形態に係る故障判定装置1及び音出力装置100によれば、故障判定において、ユーザが定める故障の定義を包含することが可能となる。
【0043】
なお、本実施形態では、レベル検出部15が、4つの閾値TH1~TH4を用いて入力信号S1のレベルを判定する場合を例示したがこの態様に限定されない。レベル検出部15は、例えば2つまたは3つの閾値を用いて入力信号S1のレベルを判定してもよいし、5つ以上の閾値を用いて入力信号S1のレベルを判定してもよい。
【0044】
また、本実施形態では、故障判定装置1を音出力装置に適用する場合を例示したが、この態様に限定されない。例えば、入力信号に所定の処理を施す信号処理部を有し、信号処理部から出力される出力信号を外部に送信する送信装置に故障判定装置1を適用することも可能である。また、入力信号及び出力信号は、音声信号であることを要さず、入力信号及び出力信号の形式及びこれらの信号に含まれる情報等については、特に限定されるものではない。
【0045】
[第2の実施形態]
図10は、本発明の第2の実施形態に係る音出力装置100Aの構成の一例を示すブロック図である。第2の実施形態に係る音出力装置100Aは、アナログ形式の音声信号が入力信号S1として供給される。従って、音出力装置100Aは、第1の実施形態に係る音出力装置100(図3参照)が備えるデジタルアナログ変換器21及びアナログデジタル変換器10を備えていない。本実施形態に係る故障判定装置1Aを構成する比較部12、フィルタ部13、判定部14及びレベル検出部15は、それぞれ、アナログ回路で構成されている。
【0046】
本発明の第2の実施形態に係る音出力装置100Aによれば、第1の実施形態に係る音出力装置100と同様の効果を奏する。
【0047】
[第3の実施形態]
図11は、本発明の第3の実施形態に係る音出力装置100Bの構成の一例を示すブロック図である。第3の実施形態に係る音出力装置100Bは、アナログ形式の音声信号が入力信号S1として供給される。本実施形態に係る故障判定装置1Bは、アナログ形式の入力信号S1をデジタル形式の入力信号S9に変換するアナログデジタル変換器16を備える。デジタル形式の入力信号S9は、比較部12及びレベル検出部15にそれぞれ供給される。故障判定装置1Bを構成する比較部12、フィルタ部13、判定部14及びレベル検出部15は、それぞれ、デジタル回路で構成されている。
【0048】
本発明の第3の実施形態に係る音出力装置100Bによれば、第1の実施形態に係る音出力装置100と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0049】
1、1A、1B 故障判定装置
100、100A、100B 音出力装置
10 アナログデジタル変換器
11 差分検出部
12 比較部
13 フィルタ部
14 判定部
15 レベル検出部
21 デジタルアナログ変換器
22 信号処理部
23 スピーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11