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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】監視装置及び電池監視システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20221129BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20221129BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221129BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/02 H
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R19/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019063738
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020167768
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】北 幸宏
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007040(JP,A)
【文献】特開2018-045409(JP,A)
【文献】特開2014-050119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/02
H01M 10/48
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池が直列接続されて構成された電池システムにおける前記電池を監視するための装置であり、当該電池に関する物理量を測定する監視装置と、
前記監視装置から前記物理量を読み出す読み出し命令を第1符号化方式で符号化された第1通信信号として第1クロック信号に同期させて送信し、当該第1通信信号に応じて前記監視装置から送信された前記物理量を示す通信信号を前記第1クロック信号に同期させて受信する制御装置と、
前記制御装置と前記監視装置との間に介在され、前記制御装置から受信した前記第1通信信号を第2符号化方式で符号化された第2通信信号に変換して前記監視装置に送信し、当該第2通信信号に応じて前記監視装置から送信された、前記物理量を示し、かつ、前記第2符号化方式で符号化された第3通信信号を受信し、受信した前記第3通信信号を前記第1符号化方式で符号化された第4通信信号に変換して前記制御装置に送信する通信変換装置と、
を有する電池監視システムにおける前記監視装置であって、
前記通信変換装置から受信した前記第2通信信号を前記第1符号化方式による読み出し命令に変換し、かつ、当該読み出し命令に応じた前記物理量を示す通信信号を前記第2符号化方式で符号化された前記第3通信信号に変換する変換部と、
前記通信変換装置から前記第2通信信号の受信を終了した時点から所定期間の間に、前記第3通信信号を前記通信変換装置に送信するための第2クロック信号の生成を開始する制御を行い、かつ、前記変換部によって変換された前記第3通信信号を、前記第2クロック信号に同期させて前記通信変換装置に送信する制御を行う制御部と、
を備えた監視装置。
【請求項2】
前記所定期間は、前記通信変換装置から前記第2通信信号の受信を終了した時点から前記第1クロック信号の次のクロックパルスがアクティブとなる時点までの期間である、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記物理量は、前記電池の出力電圧値及び温度の少なくとも一方である、
請求項1又は請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記第1符号化方式は、前記第2符号化方式に比較して直流成分が多い符号化方式であり、前記第2符号化方式は、前記第1符号化方式に比較して交流成分が多い符号化方式である、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の監視装置。
【請求項5】
前記第1符号化方式は、NRZ符号化方式であり、前記第2符号化方式は、マンチェスター符号化方式である、
請求項4に記載の監視装置。
【請求項6】
前記電池は、複数の電池セルが直列接続された電池モジュールである、
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の監視装置。
【請求項7】
複数の電池が直列接続されて構成された電池システムにおける前記電池を監視するための装置であり、当該電池に関する物理量を測定する監視装置と、
前記監視装置から前記物理量を読み出す読み出し命令を第1符号化方式で符号化された第1通信信号として第1クロック信号に同期させて送信し、当該第1通信信号に応じて前記監視装置から送信された前記物理量を示す通信信号を前記第1クロック信号に同期させて受信する制御装置と、
前記制御装置と前記監視装置との間に介在され、前記制御装置から受信した前記第1通信信号を第2符号化方式で符号化された第2通信信号に変換して前記監視装置に送信し、当該第2通信信号に応じて前記監視装置から送信された、前記物理量を示し、かつ、前記第2符号化方式で符号化された第3通信信号を受信し、受信した前記第3通信信号を前記第1符号化方式で符号化された第4通信信号に変換して前記制御装置に送信する通信変換装置と、
を有する電池監視システムであって、
前記監視装置は、
前記通信変換装置から受信した前記第2通信信号を前記第1符号化方式による読み出し命令に変換し、かつ、当該読み出し命令に応じた前記物理量を示す通信信号を前記第2符号化方式で符号化された前記第3通信信号に変換する変換部と、
前記通信変換装置から前記第2通信信号の受信を終了した時点から所定期間の間に、前記第3通信信号を前記通信変換装置に送信するための第2クロック信号の生成を開始する制御を行い、かつ、前記変換部によって変換された前記第3通信信号を、前記第2クロック信号に同期させて前記通信変換装置に送信する制御を行う制御部と、
を備える電池監視システム。
【請求項8】
前記監視装置は、前記電池システムの前記複数の電池を複数のグループに分けた各グループに対して1つずつ、かつ、前記監視装置間でデイジーチェーン接続されて複数設けられている、
請求項7に記載の電池監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置及び電池監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直列接続された複数の電池を監視するための技術として、一例として特許文献1には、電池モジュールの電圧値や温度等の物理量を測定する監視装置と、当該物理量の測定開始を指示する測定開始命令や、当該測定開始命令に応じて測定された物理量の読み出しを指示する読み出し命令等を監視装置に対して行う制御装置と、を有する電池監視システムが開示されている。
【0003】
この電池監視システムでは、監視装置と制御装置との間に介在され、制御装置から第1符号化方式に従って送信された上記読み出し命令等を示す通信信号を、第1符号化方式とは異なる第2符号化方式に従った通信信号へ変換して監視装置に送信する一方、監視装置から受信した第2符号化方式に従った、上記読み出し命令に応じた上記物理量等を示す通信信号を第1符号化方式に従った通信信号に変換して制御装置に送信する通信変換装置が備えられている。この電池監視システムでは、通信変換装置により、制御装置と監視装置との間の通信を安定化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-50119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、制御装置により、読み出し命令によって監視装置から上記物理量を読み出す場合に、当該物理量の取り込みに遅延が生じる場合がある、という問題点があった。
【0006】
すなわち、制御装置は、自身が生成したクロック信号に同期して読み出し命令を送信する一方、監視装置から通信変換装置を介して上記物理量を受信する際にも上記クロック信号に同期して当該物理量を読み取る。これに対し、監視装置では、通信変換装置を介して読み出し命令を受信した後に、当該読み出し命令に応じた上記物理量を、通信変換装置を介して受信した上記クロック信号に同期させて通信変換装置に送信する。この際、物理量の送信に用いるクロック信号は、監視装置の内部でバッファリングされたり、復調されたりすること等によって制御装置で生成されたクロック信号より遅延が生じる。このため、制御装置による上記物理量の読み出し開始より、通信変換装置による上記物理量の受信が遅延してしまい、当該物理量の取り込みにずれが生じる場合があるのである。この問題は、特許文献1に記載の技術のように、監視装置と通信変換装置との間に絶縁素子が介在されている場合には、当該絶縁素子によってもクロック信号に遅延が生じるため、顕著となる。
【0007】
本発明は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、電池の監視に用いる物理量を監視装置から読み出す際の遅延時間を抑制することができる監視装置及び電池監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る監視装置は、複数の電池が直列接続されて構成された電池システムにおける前記電池を監視するための装置であり、当該電池に関する物理量を測定する監視装置と、前記監視装置から前記物理量を読み出す読み出し命令を第1符号化方式で符号化された第1通信信号として第1クロック信号に同期させて送信し、当該第1通信信号に応じて前記監視装置から送信された前記物理量を示す通信信号を前記第1クロック信号に同期させて受信する制御装置と、前記制御装置と前記監視装置との間に介在され、前記制御装置から受信した前記第1通信信号を第2符号化方式で符号化された第2通信信号に変換して前記監視装置に送信し、当該第2通信信号に応じて前記監視装置から送信された、前記物理量を示し、かつ、前記第2符号化方式で符号化された第3通信信号を受信し、受信した前記第3通信信号を前記第1符号化方式で符号化された第4通信信号に変換して前記制御装置に送信する通信変換装置と、を有する電池監視システムにおける前記監視装置であって、前記通信変換装置から受信した前記第2通信信号を前記第1符号化方式による読み出し命令に変換し、かつ、当該読み出し命令に応じた前記物理量を示す通信信号を前記第2符号化方式で符号化された前記第3通信信号に変換する変換部と、前記通信変換装置から前記第2通信信号の受信を終了した時点から所定期間の間に、前記第3通信信号を前記通信変換装置に送信するための第2クロック信号の生成を開始する制御を行い、かつ、前記変換部によって変換された前記第3通信信号を、前記第2クロック信号に同期させて前記通信変換装置に送信する制御を行う制御部と、を備えている。
【0009】
本発明に係る電池監視システムは、複数の電池が直列接続されて構成された電池システムにおける前記電池を監視するための装置であり、当該電池に関する物理量を測定する監視装置と、前記監視装置から前記物理量を読み出す読み出し命令を第1符号化方式で符号化された第1通信信号として第1クロック信号に同期させて送信し、当該第1通信信号に応じて前記監視装置から送信された前記物理量を示す通信信号を前記第1クロック信号に同期させて受信する制御装置と、前記制御装置と前記監視装置との間に介在され、前記制御装置から受信した前記第1通信信号を第2符号化方式で符号化された第2通信信号に変換して前記監視装置に送信し、当該第2通信信号に応じて前記監視装置から送信された、前記物理量を示し、かつ、前記第2符号化方式で符号化された第3通信信号を受信し、受信した前記第3通信信号を前記第1符号化方式で符号化された第4通信信号に変換して前記制御装置に送信する通信変換装置と、を有する電池監視システムであって、前記監視装置は、前記通信変換装置から受信した前記第2通信信号を前記第1符号化方式による読み出し命令に変換し、かつ、当該読み出し命令に応じた前記物理量を示す通信信号を前記第2符号化方式で符号化された前記第3通信信号に変換する変換部と、前記通信変換装置から前記第2通信信号の受信を終了した時点から所定期間の間に、前記第3通信信号を前記通信変換装置に送信するための第2クロック信号の生成を開始する制御を行い、かつ、前記変換部によって変換された前記第3通信信号を、前記第2クロック信号に同期させて前記通信変換装置に送信する制御を行う制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電池の監視に用いる物理量を監視装置から読み出す際の遅延時間を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る電池監視システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る監視装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施形態に係るSPI(Serial Peripheral Interface)通信方式の説明に供するブロック図である。
図4】実施形態に係るSPI通信方式の説明に供するタイムチャートである。
図5】従来技術の説明に供するタイムチャートである。
図6】実施形態に係る電池監視システムの動作の説明に供するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る電池監視システム90は、直列接続された複数の電池セルを各々含む複数の電池モジュール12が直列接続されて構成された電池システム10における各電池モジュール12の状態を監視するシステムである。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る電池監視システム90は、電池システム10と接続されている。本実施形態に係る電池監視システム90は、複数(本実施形態では、2つ)の監視装置20と、複数(本実施形態では、3つ)の絶縁素子50と、通信変換装置30と、制御装置40と、を備えている。
【0015】
本実施形態に係る監視装置20は、電池システム10における複数の電池モジュール12毎に、互いにデイジーチェーン接続されて各々設けられており、対応する電池モジュール12を監視及び制御する。監視装置20は、例えば、各電池モジュール12の電圧値及び温度を測定し、その測定結果を制御装置40へ送信する。また、監視装置20は、制御装置40からの命令に応じて、各電池モジュール12の間でSOC(State Of Charge)を均一化するためのバランシングを行う。監視装置20は、以上の処理以外にも、必要に応じて様々な動作を行うことができる。
【0016】
本実施形態に係る監視装置20は、受信端子Rx及び送信端子Txを各々有している。電池システム10における高電圧側の電池モジュール12に接続された監視装置20(以下、上流側の監視装置20という。)の送信端子Txと、低電圧側の電池モジュール12に接続された監視装置20(以下、下流側の監視装置20という。)の受信端子Rxは、絶縁素子50を介して互いに接続されている。上流側の監視装置20の送信端子Txから通信信号が出力されると、この通信信号は、下流側の監視装置20において受信端子Rxに入力される。
【0017】
本実施形態に係る通信変換装置30は、各監視装置20と制御装置40との間で入出力される通信信号の変換を行うものであり、送信端子Tx、受信端子Rx、選択信号入力端子CS、クロック端子CLK、データ入力端子DIN及びデータ出力端子DOUTを有する。通信変換装置30の送信端子Txは、絶縁素子50を介して上流側の監視装置20の受信端子Rxに接続されており、通信変換装置30の受信端子Rxは、絶縁素子50を介して下流側の監視装置20の送信端子Txに接続されている。
【0018】
本実施形態に係る制御装置40は、マイクロコンピュータ等を用いて構成されており、各監視装置20との間で入出力される通信信号を基に、電池システム10を監視及び制御するための所定の処理、例えば各電池モジュール12のSOC推定処理等を行う。本実施形態に係る制御装置40は、選択信号出力端子SS、クロック端子CLK、データ入力端子DIN及びデータ出力端子DOUTを有する。
【0019】
本実施形態に係る制御装置40と各監視装置20との間で通信を行う場合、制御装置40は、選択信号出力端子SSから通信変換装置30の選択信号入力端子CSへ所定の選択信号を出力した状態で、クロック端子CLKから第1クロック信号CLK1を出力すると共に、データ出力端子DOUTから通信信号(データ信号)を出力する。この通信信号では、所定の符号化方式、例えばNRZ(Non Return to Zero)符号化方式に従って、各監視装置20への指令内容等を表すデータが符号化されている。なお、ここで用いられる符号化方式は、同期通信に適したものであることが好ましい。以下の説明では、この符号化方式を「第1符号化方式」と称する。
【0020】
制御装置40から出力された第1クロック信号CLK1と通信信号は、通信変換装置30において、クロック端子CLKとデータ入力端子DINへ各々入力される。これに応じて、通信変換装置30は、入力された通信信号を別の符号化方式に従った通信信号へと変換する。なお、ここで用いられる符号化方式は、非同期通信に適しており、かつ同じ符号(0または1)が連続した場合にも、通信信号の直流成分が増加することを抑えられる方式であることが好ましい。このような符号化方式には、例えばマンチェスター符号化方式等がある。以下の説明では、この符号化方式を「第2符号化方式」と称する。
【0021】
通信変換装置30は、以上のように通信信号の変換を行った後、変換後の通信信号を送信端子Txから出力する。この通信信号は、絶縁素子50を介して上流側の監視装置20の受信端子Rxに入力される。
【0022】
上流側の監視装置20は、通信変換装置30から通信信号を受信すると、その通信信号の内容を解読し、各電池モジュール12の電圧値や温度の測定、バランシングなど、制御装置40からの指令に応じた処理を実行する。そして、得られた測定結果等と共に、通信信号を送信端子Txから下流側の監視装置20の受信端子Rxへ出力する。これにより、上流側の監視装置20から下流側の監視装置20へ、通信順序に応じて通信信号が伝送される。
【0023】
下流側の監視装置20は、上流側の監視装置20からの通信信号を受信すると、上流側の監視装置20と同様に、その通信信号の内容を解読し、各電池モジュール12の電圧値や温度の測定、バランシングなど、制御装置40からの指令に応じた処理を実行する。そして、得られた測定結果等と共に、通信信号を送信端子Txから絶縁素子50を介して通信変換装置30の受信端子Rxへ出力する。
【0024】
通信変換装置30は、下流側の監視装置20から通信信号を受信すると、その通信信号を元の符号化方式、すなわち第1符号化方式に従って再変換する。そして、制御装置40からの指令によって変換後の通信信号はデータ出力端子DOUTから制御装置40のデータ入力端子DINへ出力される。
【0025】
以上のようにして、制御装置40と各監視装置20との間で通信信号が入出力されることにより、電池システム10の監視が行われる。なお、錯綜を回避するために、以下では、監視装置20による測定対象とする物理量として、電池モジュール12の電圧値のみを適用した場合について説明する。
【0026】
図2は、本実施形態に係る監視装置20の構成の一例を示すブロック図である。なお、本実施形態に係る上流側及び下流側の各監視装置20は、共に同様の構成とされている。各監視装置20は、処理部22、変換部24、受信部26及び送信部28を備えている。また、本実施形態に係る処理部22は、選択スイッチ22A、制御部22B、レベルシフタ22C、アナログ/デジタル(A/D)変換器22D及び記憶部22Eを備えている。
【0027】
本実施形態に係る受信部26は、受信端子Rxに接続されており、外部装置(本実施形態では、通信変換装置30または前段の監視装置20)から送信された通信信号を受信する。また、本実施形態に係る送信部28は、送信端子Txに接続されており、外部装置(本実施形態では、次段の監視装置20または通信変換装置30)に対して通信信号を送信する。
【0028】
本実施形態に係る変換部24は、通信変換装置30から受信した読み出し命令等の通信信号を第1符号化方式による通信信号に変換する一方、当該読み出し命令等に応じた電池モジュール12の電圧値等を示す通信信号を第2符号化方式で符号化された通信信号に変換する。
【0029】
一方、処理部22の選択スイッチ22Aは、制御装置40から受信される通信信号に応じて、自己の監視対象とする電池モジュール12のうちの1つを選択し、選択した電池モジュール12の正極及び負極の各々の電圧を出力する。レベルシフタ22Cは、選択スイッチ22Aによって選択された電池モジュール12の正極電位と負極電位との差分である電圧を、グランド電位を基準としたレベルで出力する。A/D変換器22Dは、レベルシフタ22Cから出力された電圧に応じたデジタル値を出力する。記憶部22Eは、A/D変換器22Dから出力される電圧のデジタル値(以下、「出力電圧値」という。)を保存しておくための記憶媒体である。
【0030】
制御部22Bは、変換部24による変換処理によって得られた通信信号に含まれる命令に応じて、選択スイッチ22A、レベルシフタ22C、A/D変換器22D及び記憶部22Eを制御する。
【0031】
ところで、本実施形態に係る電池監視システム90では、制御装置40と通信変換装置30との間で行う通信の方式として、SPI通信方式を採用している。以下、図3及び図4を参照して、本実施形態に係るSPI通信方式について説明する。
【0032】
一例として図3に示すように、SPI通信方式では、一方の装置をマスターとし、他方の装置をスレーブとして、マスター及びスレーブが4本の配線で接続される。マスターは、データ出力端子DOUT、データ入力端子DIN、クロック端子CLK及び選択信号出力端子SSの4つの端子を備えている。また、スレーブは、データ入力端子DIN、データ出力端子DOUT、クロック端子CLK及び選択信号入力端子CSの4つの端子を備えている。そして、マスターのデータ出力端子DOUTとスレーブのデータ入力端子DINとが接続され、マスターのデータ入力端子DINとスレーブのデータ出力端子DOUTとが接続される。また、マスター及びスレーブのクロック端子CLK同士が接続され、マスターの選択信号出力端子SSとスレーブの選択信号入力端子CSとが接続される。
【0033】
マスターのデータ入力端子DINとデータ出力端子DOUTとの間にはシフトレジスタ42が介在されており、スレーブのデータ入力端子DINとデータ出力端子DOUTとの間にもシフトレジスタ32が介在されている。そして、マスターにはクロック発生器44が内蔵されており、マスターのシフトレジスタ42及びスレーブのシフトレジスタ32は、共にマスターのクロック発生器44によって発生された第1クロック信号CLK1に同期して作動する。
【0034】
以上の構成とされたマスター及びスレーブにおいて、マスターのシフトレジスタ42に格納されたデータと、スレーブのシフトレジスタ32に格納されたデータとが、第1クロック信号CLK1に同期して入れ替わる。より具体的には、例えば、通信モードとしてSPI通信方式のモード0を適用した場合、一例として図4に示すように、スレーブでは、マスターから受信している第1クロック信号CLK1の立ち上がりエッジで、マスターからデータ入力端子DINを介して受信したデータがシフトレジスタ32にラッチされ、第1クロック信号CLK1の立ち下がりエッジで、シフトレジスタ32のデータがシフトされて当該データのMSB(Most Significant Bit)から順にデータ出力端子DOUTからマスターに送信される。同様に、マスターでは、第1クロック信号CLK1の立ち上がりエッジで、スレーブからデータ入力端子DINを介して受信したデータがシフトレジスタ42にラッチされ、第1クロック信号CLK1の立ち下がりエッジで、シフトレジスタ42のデータがシフトされて当該データのMSBから順にデータ出力端子DOUTからスレーブに送信される。
【0035】
本実施形態に係る電池監視システム90では、マスターを制御装置40とし、スレーブを通信変換装置30として、SPI通信方式を適用している。
【0036】
次に、図5及び図6を参照して、制御装置40により、監視装置20によって測定された物理量(本実施形態では、電池モジュール12の電圧値)を読み出す場合における、本実施形態に係る電池監視システム90の作用を説明する。なお、錯綜を回避するために、ここでは、各監視装置20が、上記物理量の測定開始を指示する測定開始命令を示す通信信号を既に受信しており、各監視装置20ともに連続的に測定された電圧値が記憶部22Eに記憶(更新)されている場合について説明する。また、ここでは、錯綜を回避するために、制御装置40が、上記読み出し命令として、上流側の監視装置20及び下流側の監視装置20の双方の監視装置20に対して、測定している物理量を読み出す読み出し命令を送信する場合について説明する。
【0037】
一例として図5に示すように、監視装置20によって測定された物理量を監視装置20から読み出す場合、制御装置40は、上述したように、監視装置20から上記物理量を読み出す読み出し命令を第1符号化方式(本実施形態では、NRZ符号化方式)で符号化された通信信号として、SPI通信方式により第1クロック信号CLK1に同期させて通信変換装置30に、第1クロック信号CLK1と共に送信する。そして、制御装置40は、読み出し命令を示す通信信号の通信変換装置30への送信が終了した後に第1クロック信号CLK1の送信を一旦停止し、当該読み出し命令に応じた物理量を通信変換装置30から読み取るために第1クロック信号CLK1の送信を再開する。
【0038】
通信変換装置30では、データ入力端子DINを介して通信信号を受信し、受信した通信信号を第2符号化方式(本実施形態では、マンチェスター符号化方式)で符号化された通信信号に変換して、上流側の監視装置20に送信端子Txを介して送信する。
【0039】
上流側の監視装置20では、受信端子Rxを介して通信信号を受信部26によって受信し、変換部24により、受信した通信信号を第1符号化方式による読み出し命令に変換する。この変換部24の変換により、第1クロック信号CLK1が再現(復調)される。そして、上流側の監視装置20では、制御部22Bにより、変換部24による変換によって得られた読み出し命令に応じた物理量を記憶部22Eから読み出し、当該物理量を示す通信信号を変換部24に送信する。変換部24では、制御部22Bから受信した通信信号を第2符号化方式で符号化された通信信号に変換して送信部28に出力する。送信部28では、変換部24から入力した通信信号を送信端子Txから下流側の監視装置20の受信端子Rxに送信する。
【0040】
下流側の監視装置20でも、上流側の監視装置20と同様に、受信端子Rxを介して通信信号を受信部26によって受信し、変換部24により、受信した通信信号を第1符号化方式による読み出し命令に変換する。この変換部24の変換により、第1クロック信号CLK1が再現される。そして、下流側の監視装置20でも、制御部22Bにより、変換部24による変換によって得られた読み出し命令に応じた物理量を記憶部22Eから読み出し、当該物理量を示す通信信号を変換部24に送信する。変換部24では、制御部22Bから受信した通信信号を第2符号化方式で符号化された通信信号に変換して送信部28に出力する。送信部28では、変換部24から入力した通信信号を送信端子Txから通信変換装置30の受信端子Rxに送信する。なお、監視装置20は、前段の監視装置20から受信した通信信号に物理量等を示す情報が含まれる場合には、当該情報も含めて通信信号を送信する。
【0041】
ここで、各監視装置20において、変換部24により再現された第1クロック信号CLK1は、受信端子Rxに接続されている絶縁素子50や、変換部24による変換処理等によって、制御装置40で生成されている第1クロック信号CLK1より遅延したものとなる。以下、便宜上、監視装置20で再現されたクロック信号を「第2クロック信号CLK2」といい、図5及び図6では、第2クロック信号CLK2と表記する。
【0042】
従って、下流側の監視装置20から第2クロック信号CLK2に同期して上記物理量を示す通信信号を通信変換装置30に送信する場合には、一例として図5に示すように、物理量を示す通信信号に遅延が生じてしまう。さらには、通信変換装置30においてもシフトレジスタ32とデータ出力端子DOUTとの間に図示しないバッファ・メモリが介在されているため、制御装置40が読み出し対象とする物理量を読み出す際には、想定している第1クロック信号CLK1による読み出し開始のタイミングより遅延したタイミングとなってしまう。なお、この遅延は、監視装置20の数が増加するほど大きくなることは、言うまでもない。
【0043】
そこで、本実施形態に係る監視装置20では、一例として図6に示すように、制御部22Bにより、通信信号の受信を終了した時点から所定期間の間に、第2クロック信号CLK2の生成を開始する制御を行う。そして、制御部22Bは、変換部24によって変換された通信信号を、第2クロック信号CLK2に同期させて通信変換装置30に送信する制御を行う。
【0044】
この監視装置20の制御により、制御装置40による上記物理量の読み出し開始のタイミングに、通信変換装置30への上記物理量の送信を間に合わせることができる。なお、本実施形態では、上記所定期間として、通信信号の受信を終了した時点から、第1クロック信号CLK1の1周期分の期間を適用しているが、これに限るものではない。例えば、第1クロック信号CLK1の2周期分の期間等、制御装置40において生成されている第1クロック信号CLK1の次のクロックパルスがアクティブとなる時点までの期間、すなわち、制御装置40によって上記物理量の読み出しが開始されるまでの期間であれば、上記所定期間として適用することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、監視装置20が、通信変換装置30から受信した通信信号を第1符号化方式による読み出し命令に変換し、かつ、当該読み出し命令に応じた物理量を示す通信信号を第2符号化方式で符号化された通信信号に変換する変換部24と、通信変換装置30から通信信号の受信を終了した時点から所定期間の間に、上記物理量を示す通信信号を通信変換装置30に送信するための第2クロック信号CLK2の生成を開始する制御を行い、かつ、変換部24によって変換された上記物理量を示す通信信号を、第2クロック信号CLK2に同期させて通信変換装置30に送信する制御を行う制御部22Bと、を備えている。従って、電池の監視に用いる物理量を監視装置から読み出す際の遅延時間を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、上記所定期間を、通信変換装置30から通信信号の受信を終了した時点から第1クロック信号CLK1の次のクロックパルスがアクティブとなる時点までの期間としている。従って、確実に、制御装置40による上記物理量の読み出しタイミングに間に合わせることができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、上記物理量を、電池の出力電圧値としている。従って、当該出力電圧値を監視装置から読み出す際の遅延時間を抑制することができる。
【0048】
さらに、本実施形態によれば、第1符号化方式を、第2符号化方式に比較して直流成分が多い符号化方式とし、第2符号化方式を、第1符号化方式に比較して交流成分が多い符号化方式としている。従って、制御装置と監視装置との間の通信を安定化させることができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、監視装置20による監視対象とする物理量として電池モジュール12の出力電圧値を適用した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、電池モジュール12の温度を、監視装置20の監視対象とする物理量とする形態としてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、監視対象とする電池として、複数の電池セルが直列接続されて構成された電池モジュール12を適用した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、個々の電池セルを各々監視対象として適用する形態としてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、制御装置40と通信変換装置30との間の通信方式としてSPI通信方式を適用した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、I2C通信方式等を適用する形態としてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、SPI通信方式におけるモード0を適用した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、SPI通信方式における他のモードを適用する形態としてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、監視装置20を2つ用いた場合について説明したが、これに限定されない。例えば、監視装置20を1つのみ用いる形態としてもよく、監視装置20を3つ以上用いる形態としてもよい。
【0054】
更に、上記実施形態では、第1符号化方式としてNRZ符号化方式を適用し、第2符号化方式としてマンチェスター符号化方式を適用した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、第1符号化方式としてRZ(Return to Zero)符号化方式を適用し、第2符号化方式としてAMI符号化方式(Alternate Mark Inversion code)を適用する形態としてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 電池システム
12 電池モジュール
20 監視装置
22 処理部
22A 選択スイッチ
22B 制御部
22C レベルシフタ
22D A/D変換器
22E 記憶部
24 変換部
26 受信部
28 送信部
30 通信変換装置
32 シフトレジスタ
40 制御装置
42 シフトレジスタ
44 クロック発生器
90 電池監視システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6