(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41N 1/14 20060101AFI20221129BHJP
B41C 1/10 20060101ALI20221129BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20221129BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20221129BHJP
G03F 7/028 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B41N1/14
B41C1/10
G03F7/00 503
G03F7/004 505
G03F7/028
G03F7/004 507
G03F7/004 501
(21)【出願番号】P 2020569457
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051255
(87)【国際公開番号】W WO2020158287
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2019016538
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横川 夏海
(72)【発明者】
【氏名】榎本 和朗
(72)【発明者】
【氏名】阪口 彬
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/150039(WO,A1)
【文献】特開2005-271576(JP,A)
【文献】特開2012-071590(JP,A)
【文献】特表2012-529669(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092661(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0183647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/14
B41C 1/10
G03F 7/00
G03F 7/004
G03F 7/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、及び、
前記支持体上に、画像記録層を有し、
前記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、及び、コアシェル粒子を含有し、
前記コアシェル粒子のコア部に、官能基Aを有する樹脂Aを含有し、
前記コアシェル粒子のシェル部に、前記官能基Aと結合又は相互作用可能な官能基B、及び、分散基を有する樹脂Bを含有し、
前記重合開始剤が、電子供与型重合開始剤を含み、
前記赤外線吸収剤のHOMOと前記電子供与型重合開始剤のHOMOとの差が、0.70eV以下である、
平版印刷版原版。
【請求項2】
前記分散基が、下記式1で表される基を含む、請求項1に記載の平版印刷版原版。
*-Q-W-Y 式1
式1中、Qは二価の連結基を表し、Wは親水性構造を有する二価の基又は疎水性構造を有する二価の基を表し、Yは親水性構造を有する一価の基
又は疎水性構造を有する一価の基を表し、W及びYのいずれかは親水性構造を有し、*は他の構造との結合部位を表す。
【請求項3】
前記重合開始剤が、電子受容型重合開始剤を含む、請求項1又は請求項2に記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
前記電子受容型重合開始剤のLUMOと前記赤外線吸収剤のLUMOとの差が、0.70eV以下である、請求項3に記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
前記画像記録層が、重合性化合物を更に含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項6】
前記画像記録層が、酸発色剤を更に含む、請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項7】
前記官能基Bが、前記官能基Aと共有結合可能な基である、請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項8】
前記官能基Bが、前記官能基Aとイオン結合可能な基である、請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項9】
前記官能基Bが、前記官能基Aと水素結合可能な基である、請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項10】
前記官能基Bが、前記官能基Aと双極子相互作用可能な基である、請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項11】
前記樹脂Aが、架橋構造を有する樹脂を含む、請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項12】
前記樹脂Bが、重合性基を更に有する、請求項1~請求項
11のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項13】
前記重合性基が、(メタ)アクリロキシ基である、請求項
12に記載の平版印刷版原版。
【請求項14】
前記コアシェル粒子に含まれる樹脂Bのエチレン性不飽和基価が、0.05mmol/g~5mmol/gである、請求項
12又は請求項
13に記載の平版印刷版原版。
【請求項15】
請求項1~請求項
14のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
平版印刷版の作製方法。
【請求項16】
請求項1~請求項
14のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、
印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む
平版印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
また、地球環境への関心の高まりから、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境課題がクローズアップされている。
上記の環境課題に対して、現像あるいは製版の簡易化、無処理化が指向されている。簡易な作製方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が行われている。すなわち、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
本開示において、このような機上現像に用いることができる平版印刷版原版を、「機上現像型平版印刷版原版」という。
従来の平版印刷版原版又は平版印刷版原版を用いた印刷方法としては、例えば、特許文献1又は2に記載されたものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、支持体上に、(A)ラジカル重合性化合物、(B)赤外線吸収染料、(C)ラジカル発生剤、及び(D)コア部に親油性樹脂、シェル部に下記一般式(I)で表わされる構造単位を有する樹脂を有するコアシェル構造の樹脂微粒子を含有する、インキ及び湿し水の少なくともいずれかにより除去可能な画像記録層を有する平版印刷版原版が記載されている。
【化1】
【0005】
一般式(I)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、m及びlは、1≦m+l≦200を満足する0又は正の整数である。
【0006】
特許文献2には、その上に、以下:
フリーラジカル重合可能な成分、
画像形成の放射線に露光される際に、フリーラジカル重合可能な成分の重合を開始するために十分なラジカルを発生することができる開始剤組成物、
放射線吸収性化合物、
1つ以上のポリマーバインダー、および
疎水性ポリマーのコアと、ポリマーのコアに共有結合した、1つ以上の両性イオン性官能基を含む親水性ポリマーのシェルとを含む、少なくとも5質量%のコア-シェル粒子を含む画像形成性層を有する基材を含む、ネガ型動作用画像形成性要素。が記載されている。
【0007】
特許文献1:特開2012-71590号公報
特許文献2:特表2012-529669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、得られる平版印刷版において、UVインキを用いた場合であっても耐刷性に優れる平版印刷版原版を提供することである。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法、又は、平版印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 支持体、及び、
上記支持体上に、画像記録層を有し、
上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、及び、コアシェル粒子を含有し、
上記コアシェル粒子のコア部に、官能基Aを有する樹脂Aを含有し、
上記コアシェル粒子のシェル部に、上記官能基Aと結合又は相互作用可能な官能基B、及び、分散基を有する樹脂Bを含有する、
平版印刷版原版。
<2> 上記分散基が、下記式1で表される基を含む、上記<1>に記載の平版印刷版原版。
*-Q-W-Y 式1
式1中、Qは二価の連結基を表し、Wは親水性構造を有する二価の基又は疎水性構造を有する二価の基を表し、Yは親水性構造を有する一価の基又は疎水性構造を有する一価の基を表し、W及びYのいずれかは親水性構造を有し、*は他の構造との結合部位を表す。
<3> 上記重合開始剤が、電子受容型重合開始剤を含む、上記<1>又は<2>に記載の平版印刷版原版。
<4> 上記電子受容型重合開始剤のLUMOと上記赤外線吸収剤のLUMOとの差が、0.70eV以下である、<3>に記載の平版印刷版原版。
<5> 上記重合開始剤が、電子供与型重合開始剤を含む、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<6> 上記赤外線吸収剤のHOMOと上記電子供与型重合開始剤のHOMOとの差が、0.70eV以下である、<5>に記載の平版印刷版原版。
<7> 上記画像記録層が、重合性化合物を更に含む、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<8> 上記画像記録層が、酸発色剤を更に含む、上記<1>~<7>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<9> 上記官能基Bが、上記官能基Aと共有結合可能な基である、上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<10> 上記官能基Bが、上記官能基Aとイオン結合可能な基である、上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<11> 上記官能基Bが、上記官能基Aと水素結合可能な基である、上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<12> 上記官能基Bが、上記官能基Aと双極子相互作用可能な基である、上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<13> 上記樹脂Aが、架橋構造を有する樹脂を含む、上記<1>~<12>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<14> 上記樹脂Bが、重合性基を更に有する、上記<1>~<13>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<15> 上記重合性基が、(メタ)アクリロキシ基である、上記<14>に記載の平版印刷版原版。
<16> 上記コアシェル粒子に含まれる樹脂Bエチレン性不飽和基価が、0.05mmol/g~5mmol/gである、上記<14>又は<15>に記載の平版印刷版原版。
<17> 上記<1>~<16>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
平版印刷版の作製方法。
<18> 上記<1>~<16>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、
印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む
平版印刷方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、得られる平版印刷版において、UVインキを用いた場合であっても耐刷性に優れる平版印刷版原版を提供することができる。
また、本開示の他の実施形態によれば、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法又は平版印刷版の印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示に係る平版印刷版原版の一実施形態の模式的断面図である。
【
図2A】陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の一実施形態の模式的断面図である。
【
図2B】
図2A中のマイクロポアの1つを拡大した概略断面図である。
【
図3A】陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の別の一実施形態の模式的断面図である。
【
図3B】陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の別の一実施形態の模式的断面図である。
【
図4A】陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の別の一実施形態の模式的断面図である。
【
図4B】陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の別の一実施形態の模式的断面図である。
【
図5】第1陽極酸化処理工程から第2陽極酸化処理工程までを工程順に示す陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の模式的断面図である。
【
図6】陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
【
図7】陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
【
図8】陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における機械的粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。
【
図9】陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
特に限定しない限りにおいて、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上を併用してもよいものとする。
更に、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位の量は、組成物中に各成分、又は、ポリマー中の各構成単位に該当する物質又は構成単位が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質、又は、ポリマー中に存在する該当する複数の各構成単位の合計量を意味する。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示において、「平版印刷版原版」の用語は、平版印刷版原版だけでなく、捨て版原版を包含する。また、「平版印刷版」の用語は、平版印刷版原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版だけでなく、捨て版を包含する。捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。なお、捨て版とは、例えばカラーの新聞印刷において一部の紙面を単色又は2色で印刷を行う場合に、使用しない版胴に取り付けるための平版印刷版原版である。
また、本開示において、化学構造式における「*」は、他の構造との結合位置を表す。
以下、本開示を詳細に説明する。
【0013】
(平版印刷版原版)
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体、及び、上記支持体上に、画像記録層を有し、
上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、及び、コアシェル粒子を含有し、上記コアシェル粒子のコア部に、官能基Aを有する樹脂Aを含有し、上記コアシェル粒子のシェル部に、上記官能基Aと結合又は相互作用可能な官能基B、及び、分散基を有する樹脂Bを含有する。
また、本開示に係る平版印刷版原版は、ネガ型平版印刷版原版であっても、ポジ型平版印刷版原版であってもよいが、ネガ型平版印刷版原版であることが好ましい。
更に、本開示に係る平版印刷版原版は、機上現像用平版印刷版原版として好適に用いることができる。
【0014】
平版印刷版においては、版の印刷可能な枚数(以下、「耐刷性」ともいう。)に優れた平版印刷版が求められている。
特に、近年においては、印刷におけるインキとして、紫外線(UV)の照射により硬化するインキ(「紫外線硬化型インキ、又は、UVインキ」ともいう。)が用いられる場合がある。
UVインキは、瞬間乾燥可能なため生産性が高い、一般に溶剤の含有量が少ない、又は、無溶剤であるため環境汚染が低減されやすい、熱による乾燥を行わないか、又は、熱による乾燥を短時間として画像を形成できるため、印刷対象などの応用範囲が広がる等の利点を有している。
そのため、UVインキを用いた場合であっても耐刷性に優れる平版印刷版を提供することができる平版印刷版原版は、産業上非常に有用であると考えられる。
本発明者は、鋭意検討した結果、特許文献1又は特許文献2に記載の平版印刷版原版では、特にインキとしてUVインキを用いた場合に、得られる平版印刷版の耐刷性が不十分であることを見出した。
【0015】
本発明者が鋭意検討した結果、得られる平版印刷版において、UVインキを用いた場合であっても耐刷性に優れる平版印刷版原版を提供することができることを見出した。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
本開示に係る平版印刷版原版の画像記録層において、赤外線吸収剤、重合開始剤、及び、コアシェル粒子を含有し、上記コアシェル粒子のコア部に、官能基Aを有する樹脂Aを含有し、上記コアシェル粒子のシェル部に、上記官能基Aと結合又は相互作用可能な官能基B、及び、分散基を有する樹脂Bを含有することにより、上記コアシェル粒子のコア部とシェル部とが上記官能基A及び上記官能基Bにより結合又は相互作用し、上記画像記録層の強度により優れ、また、上記構成により、上記コアシェル粒子表面に分散基を多く存在させることが容易となり、コアシェル粒子の分散性が向上することにより、画像記録層の膜強度が更に向上し、UVインクを用いた場合であっても耐刷性(UV耐刷性)に優れると推定している。
【0016】
更に、本開示に係る平版印刷版原版の画像記録層が、上記実施態様であると、詳細な機構は不明であるが、画像記録層における赤外線吸収剤及びコアシェル粒子の凝集が抑制されやすく、また、湿し水への分散性にも優れるため、湿し水汚れ抑制性に優れやすく、また、現像カス抑制性にも優れやすいと推定している。
また、本開示に係る平版印刷版原版の画像記録層が、上記実施態様であると、油性インクを用いた場合であっても、耐刷性が向上しやすいと推定している。
また、本開示に係る平版印刷版原版の画像記録層が、分散基を有する樹脂Bを含有するコアシェル粒子を有するので、画像記録層においてコアシェル粒子自体の分散性も優れやすく、平版印刷版原版の表面が平滑になりやすいので、面状に優れやすいと推定している。
以下、本開示に係る平版印刷版原版における各構成要件の詳細について説明する。
【0017】
<画像記録層>
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体上に形成された画像記録層を有する。
本開示における画像記録層は、赤外線吸収剤、重合開始剤、及び、コアシェル粒子を含有する。
本開示に用いられる画像記録層は、ネガ型画像記録層であることが好ましく、水溶性又は水分散性のネガ型画像記録層であることがより好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版は、機上現像性の観点から、画像記録層の未露光部が湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより除去可能であることが好ましい。
以下、画像記録層に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0018】
<コアシェル粒子>
本開示において用いられる画像記録層は、コアシェル粒子を含み、上記コアシェル粒子のコア部に、官能基Aを有する樹脂Aを含有し、上記コアシェル粒子のシェル部に、上記官能基Aと結合又は相互作用可能な官能基B、及び、分散基を有する樹脂Bを含有する。
また、樹脂A又は樹脂Bにおける後述する各構成単位は、特に断りのない限り、樹脂A又は樹脂Bはそれぞれ独立に、1種単独で有していても、2種以上を有していてもよい。
【0019】
<<官能基A及び官能基B>>
コアシェル粒子において、上記官能基A及び官能基Bは、互いに、結合又は相互作用可能な官能基である。
官能基A及び官能基Bが結合可能な態様としては、共有結合、イオン結合、水素結合等が挙げられる。また、官能基A及び官能基Bが相互作用可能な態様としては、双極子相互作用等が挙げられる。
【0020】
-官能基A及び官能基Bが共有結合可能な基-
官能基A及び官能基Bが共有結合可能な基としては、官能基A及び官能基Bの反応により共有結合が形成可能な基であれば特に制限はなく、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、イソシアネート基、チオール基、グリシジル基、アルデヒド基、スルホン酸基等を挙げることができる。これらの中でも、UV耐刷性の観点から、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及び、グリシジル基が好ましく、及びカルボキシ基、及び、グリシジル基がより好ましい。
【0021】
-官能基A及び官能基Bがイオン結合可能な基-
イオン結合可能な基としては、官能基A及び官能基Bの一方がカチオン性基を有し、他方がアニオン性基を有していれば特に制限はされない。
カチオン性基しては、オニウム基であることが好ましい。オニウム基の例は、アンモニウム基、ピリジニウム基、ホスホニウム基、オキソニウム基、スルホニウム基、セレノニウム基、ヨードニウム基が挙げられる。中でも、UV耐刷性の観点から、アンモニウム基、ピリジニウム基、ホスホニウム基、又は、スルホニウム基が好ましく、アンモニウム基、又は、ホスホニウム基がより好ましく、アンモニウム基が特に好ましい。
【0022】
アニオン性基としては、特に制限はなく、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシ基、-SO3H、-OSO3H、-PO3H、-OPO3H2、-CONHSO2-、-SO2NHSO2-等が挙げられる。これらの中でも、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基又はカルボキシ基であることが好ましく、リン酸基、又は、カルボキシ基であることがより好ましく、カルボキシ基であることが更に好ましい。
【0023】
-官能基A及び官能基Bが水素結合可能な基-
水素結合可能な基としては、官能基A及び官能基Bの一方が水素結合供与性部位を有し、他方が水素結合受容性部位を有していれば特に制限はされない。
上記水素結合供与性部位は、水素結合可能な活性水素原子を有する構造であればよいが、X-Hで表される構造であることが好ましい。
Xは、ヘテロ原子を表し、窒素原子、又は、酸素原子であることが好ましい。
上記水素結合供与性部位としては、UV耐刷性の観点から、ヒドロキシ基、カルボキシ基、第一級アミド基、第二級アミド基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第一級スルホンアミド基、第二級スルホンアミド基、イミド基、ウレア結合、及び、ウレタン結合よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造であることが好ましく、ヒドロキシ基、カルボキシ基、第一級アミド基、第二級アミド基、第一級スルホンアミド基、第二級スルホンアミド基、マレイミド基、ウレア結合、及び、ウレタン結合よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造であることがより好ましく、ヒドロキシ基、カルボキシ基、第一級アミド基、第二級アミド基、第一級スルホンアミド基、第二級スルホンアミド基、及び、マレイミド基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造であることが更に好ましく、ヒドロキシ基、及び、第二級アミド基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造であることが特に好ましい。
【0024】
上記水素結合受容性部位としては、非共有電子対を有する原子を含む構造がよく、非共有電子対を有する酸素原子を含む構造であることが好ましく、カルボニル基(カルボキシ基、アミド基、イミド基、ウレア結合、ウレタン結合等のカルボニル構造を含む。)、及び、スルホニル基(スルホンアミド基等のスルホニル構造を含む。)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造であることがより好ましく、カルボニル基(カルボキシ基、アミド基、イミド基、ウレア結合、ウレタン結合等のカルボニル構造を含む。)であることが特に好ましい。
【0025】
官能基A及び官能基Bが水素結合可能な基としては、上記水素結合供与性部位及び水素結合受容性部位を有する基であることが好ましく、カルボキシ基、アミド基、イミド基、ウレア結合、ウレタン結合、又は、スルホンアミド基を有していることが好ましく、カルボキシ基、アミド基、イミド基、又は、スルホンアミド基を有していることがより好ましい。
【0026】
-官能基A及び官能基Bが双極子相互作用可能な基-
官能基A及び官能基Bが双極子相互作用可能な基としては、上記水素結合可能な基におけるX-H(Xは、ヘテロ原子を表し、窒素原子、又は、酸素原子)で表される構造以外の分極した構造を有した基であればよく、電気陰性度の異なる原子が結合された基が好適に挙げられる。
電気陰性度の異なる原子の組み合わせとしては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子と炭素原子との組み合わせが好ましく、酸素原子、窒素原子、及び、硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子と炭素原子との組み合わせがより好ましい。
これらの中でも、UV耐刷性の観点から、窒素原子と炭素原子との組み合わせ、炭素原子と、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子との組み合わせが好ましく、具体的には、シアノ基、シアヌル基、スルホン酸アミド基がより好ましい。
また、官能基A及び官能基Bが互いに同一の双極子相互作用可能な基であることが好ましい。
【0027】
官能基Aと上記官能基Bとの結合、及び、官能基Aと上記官能基Bとの相互作用の確認は、下記の方法により確認することができる。
具体的には、樹脂A:2g(固形分濃度20質量%の水溶液)と樹脂B:8g(固形分濃度7.5質量%1-メトキシ-2-プロパノール(MFG)溶液)とを反応、又は、混合させた後、21,000×g、60分間、遠心分離し、沈殿物を回収し、次いで、この沈殿物を、樹脂Bを溶解する溶媒で洗浄して、官能基Aと反応又は相互作用していない官能基Bを含む樹脂Bを洗いとり、沈殿物を40℃にて乾燥させる。
得られる沈殿物の乾燥物について赤外吸収スペクトル(IR)測定、及び、反応又は混合前後の重量増加の定量し、上澄み液の乾固物の重量を測定し、IR測定において官能基Bに由来する吸収ピークが増加し、かつ、乾固物の重量が減少乾燥物の重量が増加している場合には、任意の割合で官能基Aと官能基Bとが結合又は相互作用していると判断することができる。
【0028】
官能基Aと結合又は相互作用可能な官能基B(すなわち、官能基Bと結合又は相互作用可能な官能基A)としては、UV耐刷性の観点から、官能基Aと共有結合可能な基(以下、単に「共有結合可能な基」ともいう。)、官能基Aとイオン結合可能な基(以下、単に「イオン結合可能な基」ともいう。)、官能基Aと水素結合可能な基(以下、単に「水素結合可能な基」ともいう。)、又は、官能基Aと双極子相互作用可能な基(以下、単に「双極子相互作用可能な基」ともいう。)であることが好ましい。
【0029】
-共有結合可能な基-
共有結合可能な基は、官能基A及び官能基Bの種類に応じて適宜選択される。
官能基A及び官能基Bの一方が、例えば、カルボキシ基である場合、カルボキシ基と共有結合可能な基としては、ヒドロキシ基、グリシジル基等が挙げられる。
また、官能基A及び官能基Bの一方が、例えば、-NH2(第一級アミノ基)である場合、-NH2と共有結合可能な基としては、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、アクリレート基等が挙げられる。
【0030】
-イオン結合可能な基-
官能基Aとイオン結合可能な基は、官能基A及び官能基Bの種類に応じて適宜選択される。
官能基A及び官能基Bの一方が、例えば、カルボキシ基である場合、カルボキシ基とイオン結合可能な基は、第一級~第三級アミノ基、ピリジル基、ピペリジル基等の塩基性を有する基が挙げられる。
官能基A及び官能基Bの一方が、例えば、スルホン酸基である場合、スルホン酸基とイオン結合可能な基としては、第一級~第三級アミノ基、ピリジル基、ピペリジル基等の塩基性を有する基が挙げられる。
官能基A及び官能基Bの一方が、例えば、-SO3
-である場合、-SO3
-とイオン結合可能な基としては、第四級アンモニウム基等のカチオン性基が挙げられる。
官能基A及び官能基Bの一方がリン酸基である場合、リン酸基とイオン結合可能な基としては、第一級~第三級アミノ基等の塩基性を有する基が挙げられる。
【0031】
-水素結合可能な基-
水素結合可能な基は、官能基A及び官能基Bの種類に応じて適宜選択される。
官能基A及び官能基Bの一方がカルボキシ基である場合、アミド基、カルボキシ基等が挙げられる。
官能基A及び官能基Bの一方がフェノール性水酸基である場合、官能基Aと水素結合可能な基としては、フェノール性水酸等が挙げられる。
また、官能基A及び官能基Bの組み合わせとしては、例えば、アミド基とアミド基、ウレタン基とウレタン基、ウレア基とウレア基、ウレア基とフェノール性水酸、アクリルアミドとカルボキシ基等の組み合わせが挙げられる。
【0032】
-双極子相互作用可能な基-
双極子相互作用可能な基は、官能基A及び官能基Bの種類に応じて適宜選択される。
官能基A及び官能基Bの一方が例えばシアノ基である場合、シアノ基と双極子相互作用可能な基としては、シアノ基が挙げられる。
官能基A及び官能基Bの一方がスルホン酸アミド基である場合、スルホン酸アミド基と双極子相互作用可能な基としては、スルホン酸アミド基が挙げられる。
【0033】
<<結合又は相互作用の例>>
官能基Aと官能基Bとの結合又は相互作用の具体例を以下に下記に示すが、本開示における官能基Aと官能基Bとの結合又は相互作用は、これに限定されるものではない。
【0034】
【0035】
<<コア部>>
コアシェル粒子のコア部は、官能基Aを有する樹脂Aを含有する。
〔樹脂A〕
樹脂Aは、付加重合型樹脂であっても、重縮合樹脂であってもよいが、UV耐刷性及び製造容易性の観点から、アクリル樹脂、ポリウレア樹脂又はポリウレタン樹脂であることが好ましく、アクリル樹脂又はポリウレタン樹脂であることがより好ましく、アクリル樹脂であることが特に好ましい。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル化合物により形成される構成単位((メタ)アクリル化合物由来の構成単位)の含有量が50質量%以上である樹脂が好ましい。
(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリレート化合物、及び、(メタ)アクリルアミド化合物が好適に挙げられる。
また、スチレン-アクリル共重合体としては、スチレン化合物により形成される構成単位(スチレン化合物由来の構成単位)の含有量が、樹脂の全質量に対し、30質量%以上である樹脂が好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。
樹脂Aは、1種単独であってもよく、2種以上を併用してもよい。また、樹脂Aはラテックス状態であってもよい。
【0036】
樹脂Aに含まれる官能基Aは、上記樹脂Bに含まれる官能基Bと結合又は相互作用可能であれば特に制限はない。官能基Aは、後述の官能基Bの種類に応じて適宜設定することができる。
樹脂Aは、官能基Aを1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
樹脂Aにおいて、官能基Aとしては、UV耐刷性の観点から、カルボキシ基、シアノ基、及び、アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましく、カルボキシ基又はアミノ基であることがより好ましい。
また、樹脂Aは、官能基Aを有する構成単位を有することが好ましい。
【0038】
-シアノ基(-CN)を有する構成単位-
樹脂Aは、UV耐刷性の観点から、シアノ基を有する化合物により形成される構成単位を含むことが好ましい。
シアノ基は、通常、シアノ基を有する化合物(モノマー)を用いて、シアノ基を含む構成単位として樹脂Aに導入されることが好ましい。シアノ基を有する化合物としては、アクリロニトリル化合物が挙げられ、(メタ)アクリロニトリルが好適に挙げられる。
シアノ基を有する構成単位としては、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリロニトリルにより形成される構成単位がより好ましい。
【0039】
また、シアノ基を有する化合物により形成される構成単位としては、下記式a1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
【0040】
【0041】
式a1中、RA1は水素原子又はアルキル基を表す。
式a1中、RA1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0042】
樹脂Aが、シアノ基を有する構成単位を含み場合、シアノ基を有する構成単位の含有量は、UV耐刷性の観点から、樹脂Aの全質量に対し、55質量%~90質量%であることがより好ましく、60質量%~85質量%であることがより好ましい。
【0043】
-カルボキシ基(-COOH)を有する構成単位-
樹脂Aは、UV耐刷性の観点から、カルボキシ基を有する構成単位を含むことが好ましい。カルボキシ基は、通常、カルボキシ基を有する化合物(モノマー)を用いて、カルボキシ基を含む構成単位として樹脂Aに導入されることが好ましい。
カルボキシ基を有する構成単位は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等のカルボキシ基を有する化合物により形成される構成単位であってもよい。
【0044】
樹脂Aは、アクリル酸により形成された構成単位、及び、下記式a2により表される構成単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構成単位を含むことが好ましい。
【0045】
【0046】
式a2中、R3は、水素原子又はメチル基を表し、X3は、-O-又は-NR7-を表し、R7は水素原子又はアルキル基を表し、L3は単結合又は炭素数1以上の二価の炭化水素基を表し、*は、それぞれ独立、他の構造との結合部位を表す。
【0047】
式a2中、X3が-NR7を表す場合、R7は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式a2中、L3は単結合又は炭素数1以上の二価の炭化水素基を表し、単結合又は内部にエステル結合若しくはエーテル結合を有していてもよい二価の炭化水素基であることが好ましく、単結合又は二価の炭化水素基であることがより好ましく、単結合又は二価の脂肪族飽和炭化水素基であることが更に好ましい。L3が二価の炭化水素基を表す場合、L3の炭素数は、2~15であることがより好ましく、3~12であることがより好ましい。
【0048】
樹脂Aの全質量に対し、カルボキシ基を有する構成単位(好ましくは構成単位a2)の含有量は、5質量%以上70質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
-アミノ基を有する構成単位-
樹脂Aは、UV耐刷性の観点から、アミノ基を有する化合物により形成される構成単位を含むことが好ましい。
アミノ基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基であってもよいが、樹脂Aの合成上の観点から第三級アミノ基であることが好ましい。
樹脂Aが、第三級アミノ基を有する場合、樹脂Aは、下記式a3により表される構成単位を含むことが好ましい。
【0050】
【0051】
式a3中、R4は、水素原子又はメチル基を表し、X4は、-O-又は-NR8-を表し、R8は水素原子又はアルキル基を表し、L4、R5及びR6のうち少なくとも2つは結合して環を形成してもよく、L4は、単結合又は炭素数1以上の二価の炭化水素基を表し、R5及びR6はそれぞれ独立に、炭素数1以上の一価の炭化水素基を表し、*は、それぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
【0052】
式a3中、X4が-NR8を表す場合、R8は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式a3中、L4は単結合又は炭素数1以上の二価の炭化水素基を表し、単結合又はウレア結合若しくはエーテル結合を有していてもよい二価の炭化水素基が好ましく、単結合又は二価の炭化水素基がより好ましく、単結合又は二価の脂肪族飽和炭化水素基であることが更に好ましい。L4の炭素数は2~10であることがより好ましく、2~8であることが更に好ましい。
R5及びR6はそれぞれ独立に、炭素数1以上の一価の炭化水素基を表し、炭素数1以上の脂肪族飽和炭化水素基であることが好ましい。R5及びR6の炭素数は、それぞれ独立に、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることが更に好ましい。
【0053】
樹脂Aの全質量に対し、アミノ基を有する構成単位(好ましくは構成単位a3)の含有量は、5質量%以上70質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上40質量%以下であることが更に好ましい。
【0054】
樹脂Aは、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、分散基を有する構成単位、重合性基を有する化合物により形成される構成単位、及び、架橋構造を有する化合物により形成される構成単位からなる群より選択される少なくとも1つの構成単位を更に有することが好ましい。
【0055】
<<芳香族ビニル化合物により形成される構成単位>>
樹脂Aは、UV耐刷性の観点から、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位を更に含むことが好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、芳香環にビニル基が結合した構造を有する化合物であればよいが、スチレン化合物、ビニルナフタレン化合物等が挙げられ、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、β-メチルスチレン、p-メチル-β-メチルスチレン、α-メチルスチレン、及びp-メトキシ-β-メチルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましく挙げられる。
ビニルナフタレン化合物としては、1-ビニルナフタレン、メチル-1-ビニルナフタレン、β-メチル-1-ビニルナフタレン、4-メチル-1-ビニルナフタレン、4-メトキシ-1-ビニルナフタレン等が挙げられ、1-ビニルナフタレンが好ましく挙げられる。
【0056】
また、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位としては、下記式Z1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
【0057】
【0058】
式Z1中、RA1及びRA2はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Arは芳香環基を表し、RA3は置換基を表し、nは0以上Arの最大置換基数以下の整数を表す。
式Z1中、RA1及びRA2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、いずれも水素原子であることが更に好ましい。
式Z1中、Arはベンゼン環又はナフタレン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
式Z1中、RA3はアルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であることがより好ましく、メチル基又はメトキシ基であることが更に好ましい。
式Z1中、RA3が複数存在する場合、複数のRA3は同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
式Z1中、nは0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0059】
コアシェル粒子のコア部に含まれる樹脂Aにおいて、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有量は、インキ着肉性の観点から、樹脂Aの全質量に対し、15質量%~85質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが更に好ましい。
【0060】
<<架橋構造を有する化合物により形成される構成単位>>
コアシェル粒子のコア部に含まれる樹脂Aは、UV耐刷性の観点から、架橋構造を有することが好ましく、架橋構造を有する構成単位を有することがより好ましい。
樹脂Aが架橋構造を有することにより、コアシェル粒子自体の硬度が向上するため、画像部強度が向上し、他のインキよりも版を劣化させやすい紫外線硬化型インキを使用した場合であっても、耐刷性(UV耐刷性)が更に向上すると考えられる。
上記架橋構造としては、特に制限はないが、多官能エチレン性不飽和化合物を重合してなる構成単位、又は1種以上の反応性基同士が粒子内部で共有結合を形成した構成単位であることが好ましい。上記多官能エチレン性不飽和化合物の官能数としては、UV耐刷性及び機上現像性の観点から、2~15であることが好ましく、3~10であることがより好ましく、4~10であることが更に好ましく、5~10であることが特に好ましい。
また、上記を言い換えると、上記架橋構造を有する構成単位は、UV耐刷性及び機上現像性の観点から、2官能性~15官能性分岐単位であることが好ましい。
なお、n官能性分岐単位とは、n本の分子鎖が出ている分岐単位のことをいい、言い換えると、n官能性分岐点(架橋構造)を有する構成単位のことである。
また、多官能メルカプト化合物により架橋構造を形成することも好ましく挙げられる。
【0061】
上記多官能エチレン性不飽和化合物におけるエチレン性不飽和基としては、特に限定されないが、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基等が挙げられる。
また、上記多官能エチレン性不飽和化合物は、多官能(メタ)アクリレート化合物、又は多官能(メタ)アクリルアミド化合物、又は、多官能芳香族ビニル化合物であることが好ましい。
【0062】
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(β-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)メチル]アクリルアミド等が挙げられる。
多官能芳香族ビニル化合物としては、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0063】
上記分岐単位の炭素数としては、特に制限はないが、8~100であることが好ましく、8~70であることがより好ましい。
また、上記架橋構造を有する構成単位としては、UV耐刷性、機上現像性及び粒子の強度の観点から、下記BR-1~BR-17で表される構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位が好ましく、下記BR-1~BR-10又はBR-13~BR-17で表される構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位を含むことがより好ましく、下記BR-1~BR-7又はBR-13~BR-17で表される構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位が更に好ましく、下記BR-1で表される構成単位が特に好ましい。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
上記構造中、RBRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、nは1~20の整数を表す。
【0068】
【0069】
上記構造中、RBRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、nは1~20の整数を表す。
【0070】
また、多官能メルカプト化合物により形成される、架橋構造を有する構成単位としては、以下に示すBR-18が好ましく挙げられる。
【0071】
【0072】
上記樹脂Aにおける架橋構造を有する構成単位の含有量は、UV耐刷性及び機上現像性の観点から、上記樹脂Aの全質量に対し、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~45質量%であることがより好ましく、10質量%~40質量%であることが更に好ましく、10質量%~35質量%であることが特に好ましい。
【0073】
<<分散基を有する構成単位>>
樹脂Aにおける分散基を有する構成単位は、後述する樹脂Bにおける分散基を有する構成単位と同義であり、好ましい態様も同様である。
樹脂Aがその他の構成単位Aとして、分散基を有する構成単位を含む場合、分散基を有する構成単位の含有量は、樹脂Aを構成する全構成単位に対して、50質量%以下であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましく、2質量%~10質量%であることが更に好ましい。
【0074】
<<疎水性基を有する構成単位>>
コアシェル粒子において、コア部に含まれる樹脂Aは、インキ着肉性の観点から、疎水性基を有する構成単位を含有してもよい。
上記疎水性基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
疎水性基を含む構成単位としては、アルキル(メタ)アクリレート化合物、アリール(メタ)アクリレート化合物、又は、アラルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位がより好ましい。
上記アルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましい。上記アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環状構造を有していてもよい。アルキル(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アリール(メタ)アクリレート化合物におけるアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。また、上記アリール基は公知の置換基を有していてもよい。アリール(メタ)アクリレート化合物としては、フェニル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
上記アラルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましい。上記アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環状構造を有していてもよい。また、上記アラルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。アラルキル(メタ)アクリレート化合物としては、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
【0075】
コアシェル粒子において、コア部に含まれる樹脂Aにおける、疎水性基を有する構成単位の含有量は、樹脂Aの全質量に対し、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0076】
コアシェル粒子において、シェル部に含まれる樹脂Aは、樹脂Aにおける上述の構成単位以外のその他の構成単位を、特に限定なく有することができ、例えば、アクリルアミド化合物、ビニルエーテル化合物等により形成された構成単位が挙げられる。
アクリルアミド化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4-メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2-ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、クロロエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル、などが挙げられる。
【0077】
樹脂Aがその他の構成単位を含む場合、その他の構成単位の含有量は、樹脂Aの全質量に対し、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0078】
コア部は、樹脂Aを含んでいればよいが、コア部における樹脂Aの含有量は、UV耐刷性の観点から、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、コア部は樹脂Aからなることが特に好ましい。
また、コア部は、粒子であることが好ましく、樹脂Aからなる粒子であることがより好ましい。
【0079】
<<シェル部>>
コアシェル粒子のシェル部は、上記官能基Aと結合又は相互作用可能な官能基B、及び、分散基を有する樹脂Bを含有する。
【0080】
〔樹脂B〕
コアシェル粒子のシェル部に含まれる樹脂Bは、上記官能基Aと結合又は相互作用可能な官能基B、及び、分散基を有する。
樹脂Bは、付加重合型樹脂であっても、重縮合樹脂であってもよいが、UV耐刷性及び造容易性の観点から、アクリル樹脂、ポリウレア樹脂又はポリウレタン樹脂であることが好ましく、アクリル樹脂又はポリウレタン樹脂であることがより好ましく、アクリル樹脂であることが特に好ましい。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル化合物により形成される構成単位((メタ)アクリル化合物由来の構成単位)の含有量が50質量%以上である樹脂が好ましい。
(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリレート化合物、及び、(メタ)アクリルアミド化合物が好適に挙げられる。
【0081】
<官能基B>
樹脂Bは、官能基Aと結合又は相互作用可能な官能基Bを有する。官能基Aと結合又は相互作用可能な官能基Bは、上述の結合又は相互作用可能な基が挙げられる。
樹脂Bは、官能基Bを1種単独で有してもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0082】
樹脂Bにおいて、官能基Bとしては、UV耐刷性の観点から、第一級~第三級アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、及び、シアノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましく、第一級~第三級アミノ基又はシアノ基であることがより好ましく、第一級~第三級アミノ基であることが特に好ましい。
また、樹脂Bは、官能基Bを有する構成単位を有することが好ましい。
樹脂Bにおいて、官能基Aと結合又は相互作用可能な官能基Bを有する構成単位としては、UV耐刷性の観点から、下記式b-1又は上記式a1で表される構成単位を有することが好ましい。
【0083】
【化12】
式b-1中、X
1bは-O-、OH、NR
3b又はNH
2を表し、L
1bは炭素数1~20の二価の連結基を表し、R
1bは、カルボキシ基、ヒドロキシ基、グリシジル基又はアミノ基を表し、R
2bは水素原子又はメチル基を表し、R
3bは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。ただし、X
1bがOH、又は、NH
2を表す場合、それに応じて、L
1b及びR
1bは存在しなくてもよい。
【0084】
X1bは-O-又はOHであることが好ましい。
【0085】
X1bがNR3bを表す場合、R3bは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0086】
L1bは炭素数2~10の二価の連結基であることが好ましく、炭素数2~8の二価の連結基であることがより好ましく、炭素数2~8のアルキレン基であることが更に好ましく、炭素数2~5のアルキレン基であることが特に好ましい。
L1bで表される上記二価の連結基は、下記式LD1により表される基、上記アルキレン基、エステル結合、及び、アルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも2つの構造の結合により表される基がより好ましい。
【0087】
【0088】
式LDIにおける波線部分及び*部分は、他の構造との結合位置を表す。
R1b中のアミノ基は、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基であってもよいが、UV耐刷性の観点から、第三級アミノ基であることが好ましい。
【0089】
樹脂Bにおける官能基Bを有する構成単位の含有量は、UV耐刷性の観点から、上記樹脂Bの全質量に対し、1質量%~80質量%であることが好ましく、5質量%~60質量%であることがより好ましい。
【0090】
<<分散基>>
樹脂Bは分散基を有し、分散基を有する構成単位を有することが好ましい。
上記分散基は、例えば、炭素数10以上のアルキル鎖であってもよい。上記アルキル鎖は、UV耐刷性の観点から、分岐状又は直鎖状の飽和アルキル鎖であることが好ましく、線状のアルキル鎖であることがより好ましく、炭素数10以上の直鎖状のアルキル鎖であることが更に好ましい。
上記分散基は、UV耐刷性及び得られる平版印刷版における画像部の面状の観点から、炭素数10~炭素数30のアルキル基を有することが好ましく、炭素数12~炭素数24のアルキル基を有することがより好ましい。
また、分散基としては、UV耐刷性及び得られる平版印刷版における画像部の面状の観点から、下記式1で表される基を含むことが好ましい。
*-Q-W-Y 式1
式1中、Qは二価の連結基を表し、Wは親水性構造を有する二価の基又は疎水性構造を有する二価の基を表し、Yは親水性構造を有する一価の基又は疎水性構造を有する一価の基を表し、W及びYのいずれかは親水性構造を有し、*は他の構造との結合部位を表す。
【0091】
Qは、炭素数1~20の二価の連結基であることが好ましく、炭素数1~10の二価の連結基であることがより好ましい。
また、Qは、アルキレン基、アリーレン基、エステル結合、アミド結合、又は、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、フェニレン基、エステル結合、又は、アミド結合であることがより好ましい。
【0092】
Wにおける親水性構造を有する二価の基は、ポリアルキレンオキシ基、又は、ポリアルキレンオキシ基の一方の末端に-CH2CH2NRW-が結合した基であることが好ましい。なお、RWは、水素原子又はアルキル基を表す。
Wにおける疎水性構造を有する二価の基は、-RWA-、-O-RWA-O-、-RWN-RWA-NRW-、-OC(=O)-RWA-O-、又は、-OC(=O)-RWA-O-であることが好ましい。なお、RWAはそれぞれ独立に、炭素数6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキレン基、炭素数6~120のハロアルキレン基、炭素数6~120のアリーレン基、炭素数6~120のアルカーリレン基(アルキルアリール基から水素原子を1つ除いた二価の基)、又は、炭素数6~120のアラルキレン基を表す。
【0093】
Yにおける親水性構造を有する一価の基は、-OH、-C(=O)OH、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基、又は、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基の他方の末端に-CH2CH2N(RW)-が結合した基であることが好ましい。
Yにおける疎水性構造を有する一価の基は、炭素数6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基、炭素数6~120のハロアルキル基、炭素数6~120のアリール基、炭素数6~120のアルカーリル基(アルキルアリール基)、炭素数6~120のアラルキル基、-ORWB、-C(=O)ORWB、又は、-OC(=O)RWBであることが好ましい。RWBは、炭素数6~20を有するアルキル基を表す。
【0094】
UV耐刷性の観点から、式1で表される基が親水性構造を有することが好ましく、式1中のWが親水性構造を有する二価の基であることがより好ましく、式1中、Qがフェニレン基、エステル結合、又は、アミド結合であり、Wは、ポリカプロラクトン基、ポリオキサゾリン基、又は、ポリアルキレンオキシ基であり、Yが、末端が水素原子又はアルキル基であるポリオキサゾリン基、又は、ポリアルキレンオキシ基であることがより好ましい。
【0095】
樹脂Bは、UV耐刷性、及び、得られる平版印刷版における画像部の面状の観点から、分散基を有する構成単位を含むことが好ましく、式1で表される基を含む化合物により形成される構成単位を含むことがより好ましく、下記式b-3又は式b-4で表される構成単位を有することが更に好ましく、下記式b-3で表される構成単位を有することが特に好ましい。
【0096】
【0097】
式b-3及び式b-4中、L2はエチレン基又はプロピレン基を表し、L3は炭素数2~10のアルキレン基を表し、L4は炭素数1~10のアルキレン基を表し、R4及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R5及びR7はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、m1は2~200の整数を表し、m2は2~20の整数を表す。
【0098】
L2は、エチレン基又は1,2-プロピレン基であることが好ましい。
L3は、炭素数2~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましく、エチレン基であることが更に好ましい。
L4は、炭素数2~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数3~8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4~6のアルキレン基であることが更に好ましい。
R4及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることが更に好ましい。
m1は、5~200の整数であることが好ましく、8~150の整数であることがより好ましい。
m2は、2~10の整数であることが好ましく、4~10の整数であることがより好ましい。
【0099】
上記樹脂Bは、UV耐刷性の観点から、官能基Aと結合又は相互作用可能な官能基Bとして上記式b-1又は上記式a1で表される構成単位と、分散基として上記式b-3又は式b-4で表される構成単位と、を有することが好ましく、上記式b-1又は上記式a1で表される構成単位と上記式b-3で表される構成単位とを有することがより好ましい。
【0100】
-官能基Bを有する構成単位の含有量-
樹脂Bにおける官能基Bを有する構成単位の含有量は、UV耐刷性の観点から、上記樹脂Bの全質量に対し、1質量%~80質量%であることが好ましく、5質量%~60質量%であることがより好ましい。
【0101】
-分散基を有する構成単位の含有量-
樹脂Bにおける官能基Bを有する構成単位の含有量は、UV耐刷性、及び、得られる平版印刷版における画像部の面状の観点から、上記樹脂Bの全質量に対し、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~40質量%であることがより好ましい。
【0102】
<<重合性基>>
樹脂Bは、重合性基を更に有することが好ましい。
重合性基は、例えば、カチオン重合性基であってもよいし、ラジカル重合性基であってもよいが、反応性の観点からは、ラジカル重合性基であることが好ましい。
上記重合性基としては、特に制限はないが、反応性の観点から、エチレン性不飽和基が好ましく、ビニルフェニル基(スチリル基)、又は、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基が最も好ましい。
また、樹脂Bは、重合性基を有する場合、重合性基を有する構成単位を有することが好ましい。
【0103】
また、これら重合性基を樹脂Bへの導入は、コアシェル粒子合成時に添加する多官能モノマーの残留による重合性基の導入と、コアシェル粒子合成後に高分子反応で粒子表面へ導入する方法があるが、本開示においては、コアシェル粒子合成後に高分子反応で導入する方法が望ましい。これはコアシェル粒子合成後に重合性基を導入するほうが、コアシェル粒子の表面に活性な重合性基を多く存在させることができるため、よりマトリクスとの反応性が上がり、マトリクスと強固な架橋を形成しやすいと考えられるためである。
【0104】
重合性基を有する構成単位は、上述の通り、例えば高分子反応により上記付加重合型樹脂に導入することができる。具体的には、例えば、メタクリル酸等のカルボキシ基を有する構成単位を導入した重合体に対し、エポキシ基及び重合性基を有する化合物(例えば、グリシジルメタクリレートなど)を反応させる方法、ヒドロキシ基、アミノ基等の活性水素を有する基を有する構成単位を導入した重合体に対し、イソシアネート基及び重合性基を有する化合物(2-イソシアナトエチルメタクリレートなど)を反応させる方法等により導入することができる。
このような導入方法において、上記メタクリル酸等のカルボキシ基を有する構成単位、又は、上記活性水素を有する基を有する構成単位(以下、併せて「反応前の構成単位」ともいい、重合性基が導入された後のこれらの構成単位を「反応後の構成単位」ともいう)に対する、エポキシ基及び重合性基を有する化合物、又は、イソシアネート基及び重合性基を有する化合物の反応率を調整することにより、カルボキシ基を有する構成単位、又は、活性水素を有する基を有する構成単位等を付加重合型樹脂に残存させることもできる。
上記反応前の構成単位は、後述する親水性構造を有する構成単位に該当するため、上記反応率を低くすることにより、付加重合型樹脂に親水性構造(カルボキシ基、アミノ基等のイオン性基等)を有する構成単位を付加重合型樹脂に含有させ、特定ポリマー粒子の分散性、平版印刷版原版の現像性等を更に向上させることもできる。
【0105】
上記反応率は、例えば、10%以上100%以下であることが好ましく、30%以上70%以下であることがより好ましい。
反応率は、下記式Rにより定義される値である。
反応率=(得られた付加重合型樹脂における反応後の構成単位のモル数/得られた付加重合型樹脂における反応前の構成単位の総モル数)×100 式R
また、重合性基を有する構成単位は、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する構成単位を導入した重合体に対し、カルボキシ基及び重合性基を有する化合物を反応させる等の方法により上記樹脂Bに導入されてもよい。
更に、重合性基を有する構成単位は、例えば下記式d1又は下記式d2により表される部分構造を有する単量体を用いることにより上記樹脂B中に導入されてもよい。具体的には、例えば、上記単量体を少なくとも用いた重合後に、下記式d1又は下記式d2により表される部分構造に対し、塩基化合物を用いた脱離反応によってエチレン性不飽和基を形成することにより、重合性基を有する構成単位が上記樹脂B中に導入される。
【0106】
【0107】
式d1及び式d2中、Rdは水素原子又はアルキル基を表し、Adはハロゲン原子を表し、Xdは-O-又は-NRN-を表し、RNは水素原子又はアルキル基を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
式d1及び式d2中、Rdは水素原子又はメチル基であることが好ましい。
式d1及び式d2中、Adは塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子であることが好ましい。
式d1及び式d2中、Xdは-O-であることが好ましい。Xdが-NRN-を表す場合、RNは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0108】
重合性基を有する構成単位としては、例えば、下記式D1により表される構成単位が挙げられる。
【0109】
【0110】
式D1中、LD1は単結合又は二価の連結基を表し、LD2はm+1価の連結基を表し、XD1及びXD2はそれぞれ独立に、-O-又は-NRN-を表し、RNは水素原子又はアルキル基を表し、RD1及びRD2はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、mは1以上の整数を表す。
【0111】
式D1中、LD1は単結合であることが好ましい。LD1が二価の連結基を表す場合、アルキレン基、アリーレン基又はこれらの2以上が結合した二価の基が好ましく、炭素数2~10のアルキレン基又はフェニレン基がより好ましい。
式D1中、LD2は下記式D2~下記式D6のいずれかにより表される基を含む連結基であることが好ましく、下記式D2~下記式D6のいずれかにより表される基、エステル結合、アルキレン基、及び、アルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも2つの構造の結合により表される基がより好ましい。
式D1中、XD1及びXD2はいずれも-O-であることが好ましい。また、XD1及びXD2の少なくとも一つが-NRN-を表す場合、RNは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
式D1中、RD1はメチル基であることが好ましい。
式D1中、m個のRD2のうち少なくとも1つはメチル基であることが好ましい。
式D1中、mは1~4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
【0112】
【0113】
式D2~式D6中、LD3~LD7は二価の連結基を表し、LD5とLD6は異なっていてもよく、XD5は-O-又は-NRN-であり、RNは水素原子又はアルキル基を表し、*は式D1中のXD1との結合部位を表し、波線部は式D1中のXD2との結合部位を表す。
【0114】
式D3中、LD3はアルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
式D4中、LD4はアルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
式D5中、LD5はアルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
式D5中、XD5は-O-又は-NH-であることが好ましい。
式D5中、LD6はアルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
式D6中、LD7はアルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
【0115】
重合性基を有する構成単位の具体例を下記に示すが、本開示における上記樹脂Bにおける重合性基を有する構成単位は、これに限定されるものではない。
【0116】
【0117】
-重合性基を有する構成単位の含有量-
上記樹脂Bが重合性基を有する構成単位を有する場合、重合性基を有する構成単位の含有量は、UV耐刷性の観点から、上記樹脂Bの全質量に対し、10質量%~70質量%であることが好ましく、15質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~55質量%であることが更に好ましい。
【0118】
コアシェル粒子に含まれる樹脂Bのエチレン性不飽和結合価(樹脂B1gあたりの重合性基の量)は、0.05mmol/g~5mmol/gであることが好ましく、0.2mmol/g~3mmol/gであることがより好ましい。上記エチレン性不飽和結合価は、ヨウ素滴定法により測定される。
【0119】
また、樹脂Bは、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、架橋構造を有する構成単位等の構成単位を有していてもよい。
【0120】
<<芳香族ビニル化合物により形成される構成単位>>
樹脂Bは、UV耐刷性の観点から、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位を更に有していてもよいが、有しないことが好ましい。
樹脂Bにおける芳香族ビニル化合物により形成される構成単位としては、樹脂Aにおける芳香族ビニル化合物により形成される構成単位と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0121】
樹脂Bにおいて、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有量は、インキ着肉性の観点から、樹脂Bの全質量に対し、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、樹脂Bが芳香族ビニル化合物により形成される構成単位を有しないことが特に好ましい。
【0122】
<<架橋構造を有する構成単位>>
樹脂Bは、UV耐刷性の観点から、架橋構造を有することが好ましく、架橋構造を有する構成単位を有することがより好ましい。
樹脂Bにおける架橋構造、及び、架橋構造を有する構成単位としては、樹脂Aにおける架橋構造、及び、架橋構造を有する構成単位とそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
【0123】
上記樹脂Bにおける架橋構造を有する構成単位の含有量は、UV耐刷性及び機上現像性の観点から、上記樹脂Bの全質量に対し、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、0.5質量%~15質量%であることがより好ましく、1質量%~10質量%であることが特に好ましい。
【0124】
<<疎水性基を有する構成単位>>
コアシェル粒子において、シェル部に含まれる樹脂Bは、インキ着肉性の観点から、疎水性基を有する構成単位を含有していてもよい。
樹脂Bにおける疎水性基を有する構成単位としては、樹脂Aにおける疎水性基を有する構成単位と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0125】
コアシェル粒子において、シェル部に含まれる樹脂Bにおける、疎水性基を有する構成単位の含有量は、樹脂Bの全質量に対し、1質量%~50質量%であることが好ましく、50質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0126】
コアシェル粒子において、シェル部に含まれる樹脂Bは、樹脂Aにおける上述の構成単位以外のその他の構成単位を、特に限定なく有することができ、例えば、アクリルアミド化合物、ビニルエーテル化合物等により形成された構成単位が挙げられる。
樹脂Bがその他の構成単位を含む場合、その他の構成単位の含有量は、樹脂Bの全質量に対し、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0127】
-樹脂Bの含有量-
コアシェル粒子におけるシェル部の樹脂Aに対する樹脂Bの含有量(以下、「被覆率」ともいう。)は、適宜設定することができるが、耐刷性の観点から、コアシェル粒子の全質量に対して、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~70質量%であることがより好ましく、10質量%~50質量%であることが特に好ましい。
【0128】
上記コア部に含まれる樹脂Bの含有率は、赤外線吸収スペクトル(IR)測定により求められる。
具体的には、樹脂Aと樹脂Bとの反応物又は混合物を、樹脂Bを溶解する溶媒で洗浄して、官能基Aと反応又は相互作用していない官能基Bを含む樹脂Bを洗いとり、沈殿物を40℃にて乾燥させ、IR測定する。任意の割合(例えば、樹脂A:樹脂B=2:8~8:2)で混合した樹脂Aと樹脂Bとのペーストを用いてIR測定を行い、樹脂Aのみが有するピークを標準として、例えば、樹脂Bが有する分散基のピーク面積を計算して検量線を作成し、そのピーク面積から被覆率を求める。
【0129】
-樹脂Bの数平均分子量-
樹脂Bの数平均分子量は、500~100万であることが好ましく、5,000~50万であることがより好ましく、10,000~20万であることが更に好ましい。
【0130】
コア部の算術平均粒径は、UV耐刷性の観点から、10nm~1,000nmであることが好ましく、30nm~800nmであることがより好ましく、50nm~600nmであることが特に好ましい。
コアシェル粒子の算術平均粒子径は、UV耐刷性の観点から、10nm~1,000nmであることが好ましく、50nm~800nmであることがより好ましく、70nm~600nmであることが特に好ましい。
【0131】
本開示におけるコアシェル粒子の算術平均粒径は、特に断りのない限り、動的光散乱法(DLS)によって測定された値を指す。
DLSによるコアシェル粒子の算術平均粒径の測定は、Brookhaven BI-90(Brookhaven Instrument Company製)を用い、上記機器のマニュアルに沿って行われる。
【0132】
また、シェル部の平均厚さは、UV耐刷性の観点から、1nm~100nmであることが好ましく、1nm~50nmであることがより好ましく、2nm~20nmであることが特に好ましい。
本開示におけるシェル部の平均厚さは、粒子断面を公知の方法により染色して電子顕微鏡により観察し、10個以上の粒子において計10箇所以上のシェル部の厚さの平均値をとるものとする。
-コアシェル粒子に含まれる樹脂A及び樹脂Bの製造方法-
コアシェル粒子に含まれる樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
例えば、官能基Aを有する構成単位の形成に用いられる化合物、官能基Bを有する構成単位の形成に用いられる化合物上記酸性基を有する構成単位の形成に用いられる化合物、上記その他の構成単位Aの形成に用いられる化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物と、を公知の方法により重合することにより得られる。
【0133】
-具体例-
コアシェル粒子に含まれる樹脂A及び樹脂Bの具体例を下記表に示すが、本開示において用いられる熱可塑性樹脂はこれに限定されるものではない。
【0134】
【0135】
【0136】
なお、A-13は、コア部の内部は左に示す樹脂が多く存在し、外側に行くにしたがい、右に示す樹脂Aが多く存在する粒子の例を表す。
【0137】
また、コアシェル粒子に含まれる樹脂Bの具体例を下記に示すが、本開示において用いられる樹脂はこれに限定されるものではない。
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
なお、B-8における*は、左に示す重合鎖との結合位置を表す。
【0146】
また、上記具体例中、各構成単位の含有比は、上述の各構成単位の含有量の好ましい範囲に従って、適宜変更可能である。
また、上記具体例に示す各化合物の重量平均分子量は、上述の樹脂Bの重量平均分子量の好ましい範囲に従って、適宜変更可能である。
【0147】
-コアシェル粒子の含有量-
画像記録層は、コアシェル粒子を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
画像記録層の全質量に対するコアシェル粒子の含有量は、UV耐刷性の観点から、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下がより好ましく、10質量%以上60質量%以下が更に好ましい。
【0148】
〔重合開始剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、重合開始剤を含有する。
重合性開始剤としては、特に制限はなく、電子受容型重合開始剤、電子供与型重合開始剤等が挙げられる。
【0149】
<<電子受容型重合開始剤>>
上記画像記録層は、UV耐刷性の観点から、電子受容型重合開始剤を含むことが好ましい。
本開示に用いられる電子受容型重合開始剤は、光、熱又はその両方のエネルギーによりラジカルやカチオン等の重合開始種を発生する化合物であって、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを適宜選択して用いることができる。
電子受容型重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、オニウム化合物がより好ましい。
また、電子受容型重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤であることが好ましい。
電子受容型重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム化合物が挙げられる。
【0150】
(a)有機ハロゲン化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0022~0023に記載の化合物が好ましい。
(b)カルボニル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0024に記載の化合物が好ましい。
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8-108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0025に記載の化合物が好ましい。
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0026に記載の化合物が好ましい。
(f)アジド化合物としては、例えば、2,6-ビス(4-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0027に記載の化合物が好ましい。
(i)ジスルホン化合物としては、例えば、特開昭61-166544号、特開2002-328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0028~0030に記載の化合物が好ましい。
【0151】
上記電子受容型重合開始剤の中でも好ましいものとして、硬化性の観点から、オキシムエステル化合物及びオニウム化合物が挙げられる。中でも、UV耐刷性の観点から、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物又はアジニウム塩化合物が好ましく、ヨードニウム塩化合物又はスルホニウム塩化合物がより好ましく、ヨードニウム塩化合物が更に好ましい。
これら化合物の具体例を以下に示すが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0152】
ヨードニウム塩化合物の例としては、ジアリールヨードニウム塩化合物が好ましく、特に電子供与性基、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩化合物がより好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウム塩化合物が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-メトキシフェニル-4-(2-メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-(2-メチルプロピル)フェニル-p-トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4-ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=1-ペルフルオロブタンスルホナート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0153】
スルホニウム塩化合物の例としては、トリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、特に電子求引性基、例えば、芳香環上の基の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されたトリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、芳香環上のハロゲン原子の総置換数が4以上であるトリアリールスルホニウム塩化合物が更に好ましい。具体例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)-4-メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=3,5-ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4-ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0154】
また、ヨードニウム塩化合物及びスルホニウム塩化合物の対アニオンとしては、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンが好ましく、スルホンイミドアニオンがより好ましい。
スルホンアミドアニオンとしては、アリールスルホンアミドアニオンが好ましい。
また、スルホンイミドアニオンとしては、ビスアリールスルホンイミドアニオンが好ましい。
スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンの具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記具体例中、Phはフェニル基を、Meはメチル基を、Etはエチル基を、それぞれ表す。
【0155】
【0156】
電子受容型重合開始剤の最低空軌道(LUMO)は、耐薬品性及びUV耐刷性の観点から、-3.00eV以下であることが好ましく、-3.02eV以下であることがより好ましい。
また、下限としては、-3.80eV以上であることが好ましく、-3.60eV以上であることがより好ましい。
【0157】
電子受容型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.1質量%~50質量%であることが好ましく、0.5質量%~30質量%であることがより好ましく、0.8質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0158】
<<電子供与型重合開始剤>>
重合開始剤は、平版印刷版における耐薬品性、及び、UV耐刷性の向上に寄与する観点から、電子供与型重合開始剤を更に含むことが好ましく、電子供与型重合開始剤及び上記電子供与型重合開始剤の両方を含むことがより好ましい。
電子供与型重合開始剤としては、例えば、以下の5種類が挙げられる。
(i)アルキル又はアリールアート錯体:酸化的に炭素-ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、ボレート化合物等が挙げられる。
(ii)アミノ酢酸化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC-X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシ基、トリメチルシリル基又はベンジル基が好ましい。具体的には、N-フェニルグリシン類(フェニル基に置換基を有していてもよい。)、N-フェニルイミノジ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iii)含硫黄化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を硫黄原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。具体的には、フェニルチオ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iv)含錫化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。
(v)スルフィン酸塩類:酸化により活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0159】
これら電子供与型重合開始剤の中でも、画像記録層は、ボレート化合物を含有することが好ましい。ボレート化合物としては、テトラアリールボレート化合物又はモノアルキルトリアリールボレート化合物が好ましく、化合物の安定性の観点から、テトラアリールボレート化合物がより好ましく、テトラフェニルボレート化合物が特に好ましい。
ボレート化合物が有する対カチオンとしては、特に制限はないが、アルカリ金属イオン、又は、テトラアルキルアンモニウムイオンであることが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又は、テトラブチルアンモニウムイオンであることがより好ましい。
【0160】
ボレート化合物として具体的には、ナトリウムテトラフェニルボレートが好ましく挙げられる。
【0161】
また、本開示に用いられる電子供与型重合開始剤の最高被占軌道(HOMO)は、耐薬品性及びUV耐刷性の観点から、-6.00eV以上であることが好ましく、-5.95eV以上であることがより好ましく、-5.93eV以上であることが更に好ましい。
また、上限としては、-5.00eV以下であることが好ましく、-5.40eV以下であることがより好ましい。
【0162】
本開示において、最高被占軌道(HOMO)及び最低空軌道(LUMO)の計算は、以下の方法により行う。
まず、計算対象となる化合物における対アニオンは無視する。
量子化学計算ソフトウェアGaussian09を用い、構造最適化はDFT(B3L
YP/6-31G(d))で行う。
MO(分子軌道)エネルギー計算は、上記構造最適化で得た構造でDFT(B3LYP/6-31+G(d,p)/CPCM(solvent=methanol))で行う。
上記MOエネルギー計算で得られたMOエネルギーEbare(単位:hartree)を以下の公式により、本開示においてHOMO及びLUMOの値として用いるEscaled(単位:eV)へ変換する。
Escaled=0.823168×27.2114×Ebare-1.07634
なお、27.2114は単にhartreeをeVに変換するための係数であり、0.823168と-1.07634とは調節係数であり、計算対象となる化合物のHOMOとLUMOとを計算が実測の値に合うように定める。
【0163】
以下に電子供与型重合開始剤の好ましい具体例として、B-1~B-8及び他の化合物を示すが、これらに限定されないことは、言うまでもない。また、下記化学式において、Buはn-ブチル基を表し、Zは対カチオンを表す。
Z+で表される対カチオンとしては、Na+、K+、N+(Bu)4等が挙げられる。上記Buはn-ブチル基を表す。
また、Z+で表される対カチオンとしては、上記電子受容型重合開始剤におけるオニウムイオンも好適にあげられる。
【0164】
【0165】
【0166】
電子供与型重合開始剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
電子供与型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~30質量%が好ましく、0.05質量%~25質量%がより好ましく、0.1質量%~20質量%が更に好ましい。
【0167】
また、本開示における好ましい態様の一つは、上記電子受容型重合開始剤と、上記電子供与型重合開始剤と、が塩を形成している態様である。
具体的には、例えば、上記オニウム化合物が、オニウムイオンと、上記電子供与型重合開始剤におけるアニオン(例えば、テトラフェニルボレートアニオン)との塩である態様が挙げられる。また、より好ましくは、上記ヨードニウム塩化合物におけるヨードニウムカチオン(例えば、ジ-p-トリルヨードニウムカチオン)と、上記電子供与型重合開始剤におけるボレートアニオンとが塩を形成した、ヨードニウムボレート化合物が挙げられる。
上記電子受容型重合開始剤と上記電子供与型重合開始剤とが塩を形成している態様の具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0168】
【0169】
本開示において、画像記録層が、オニウムイオンと、上述の電子供与型重合開始剤におけるアニオンと、を含む場合、画像記録層は電子受容型重合開始剤及び上記電子供与型重合開始剤を含むものとする。
【0170】
〔赤外線吸収剤〕
上記画像記録層は、赤外線吸収剤を含む。
赤外線吸収剤としては、特に制限はなく、例えば、顔料及び染料が挙げられる。
赤外線吸収剤として用いられる染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0171】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が挙げられる。中でも、シアニン色素が特に好ましい。
【0172】
上記赤外線吸収剤としては、メソ位に酸素又は窒素原子を有するカチオン性のポリメチン色素であることが好ましい。カチオン性のポリメチン色素としては、シアニン色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、アズレニウム色素等が好ましく挙げられ、入手の容易性、導入反応時の溶剤溶解性等の観点から、シアニン色素であることが好ましい。
【0173】
シアニン色素の具体例としては、特開2001-133969号公報の段落0017~0019に記載の化合物、特開2002-023360号公報の段落0016~0021、特開2002-040638号公報の段落0012~0037に記載の化合物、好ましくは特開2002-278057号公報の段落0034~0041、特開2008-195018号公報の段落0080~0086に記載の化合物、特に好ましくは特開2007-90850号公報の段落0035~0043に記載の化合物、特開2012-206495号公報の段落0105~0113に記載の化合物が挙げられる。
また、特開平5-5005号公報の段落0008~0009、特開2001-222101号公報の段落0022~0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
顔料としては、特開2008-195018号公報の段落0072~0076に記載の化合物が好ましい。
【0174】
赤外線吸収剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、赤外線吸収剤として顔料と染料とを併用してもよい。
上記画像記録層中の赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%~10.0質量%が好ましく、0.5質量%~5.0質量%がより好ましい。
【0175】
〔電子供与型重合開始剤と、電子受容型重合開始剤と、赤外線吸収剤との関係〕
本開示における画像記録層は、上記電子供与型重合開始剤と、上記電子受容型重合開始剤と、上記赤外線吸収剤と、を含み、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが-6.0eV以上であり、かつ、上記電子受容型重合開始剤のLUMOが-3.0eV以下であることが好ましい。
上記電子供与型重合開始剤のHOMO、及び、上記電子受容型重合開始剤のLUMOのより好ましい態様は、それぞれ上述の通りである。
本開示における画像記録層において、上記電子供与型重合開始剤と、上記赤外線吸収剤と、上記電子受容型重合開始剤とは、例えば、下記化学式に記載のようにエネルギーの受け渡しを行っていると推測される。
そのため、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが-6.0eV以上であり、かつ、上記電子受容型重合開始剤のLUMOが-3.0eV以下であれば、ラジカルの発生効率が向上するため、耐薬品性及びUV耐刷性により優れやすいと考えられる。
【0176】
【0177】
UV耐刷性及び耐薬品性の観点から、上記電子供与型重合開始剤のHOMOと、上記赤外線吸収剤のHOMOとの差は、1.00eV以下であることが好ましく、0.700eV以下であることがより好ましい。また、同様の観点から、上記電子供与型重合開始剤のHOMOと、上記赤外線吸収剤のHOMOとの差は、-0.200eV以上であることが好ましく、-0.100eV以上であることがより好ましい。
また、同様の観点から、上記電子供与型重合開始剤のHOMOと、上記赤外線吸収剤のHOMOとの差は、1.00eV~-0.200eVであることが好ましく、0.700eV~-0.100eVであることがより好ましい。なお、マイナスの値は、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが、上記赤外線吸収剤のHOMOよりも高くなることを意味する。
【0178】
また、UV耐刷性及び耐薬品性の観点から、上記赤外線吸収剤のLUMOと、上記電子受容型重合開始剤のLUMOとの差は、1.00eV以下であることが好ましく、0.700eV以下であることがより好ましい。また、同様の観点から、上記赤外線吸収剤のLUMOと、上記電子受容型重合開始剤のLUMOとの差は、-0.200eV以上であることが好ましく、-0.100eV以上であることがより好ましい。
また、同様の観点から、上記赤外線吸収剤のLUMOと、上記電子受容型重合開始剤のLUMOとの差は、1.00eV~-0.200eVであることが好ましく、0.700eV~-0.100eVであることがより好ましい。なお、マイナスの値は、上記赤外線吸収剤のLUMOが、上記電子受容型重合開始剤のLUMOよりも高くなることを意味する。
【0179】
〔重合性化合物〕
本開示における画像記録層は、重合性化合物を含むことが好ましい。本開示において、重合性化合物とは、重合性基を有する化合物をいう。
本開示において、重合性を有する化合物であっても、上述のコアシェル粒子に含まれる樹脂A及び樹脂B、並びに、後述するコアシェル粒子以外のポリマー粒子、及び、後述する樹脂A及び樹脂B以外のバインダーポリマーに該当する化合物は、重合性化合物には該当しないものとする。
重合性基としては、特に限定されず公知の重合性基であればよいが、エチレン性不飽和基であることが好ましい。
また重合性基としては、ラジカル重合性基であってもカチオン重合性基であってもよいが、ラジカル重合性基であることが好ましい。
ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルフェニル基、ビニル基等が挙げられ、反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が好ましい。
重合性化合物の分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)は、50以上2,500未満であることが好ましく、50以上2,000以下であることがより好ましい。
【0180】
本開示に用いられる重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であることがより好ましい。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体若しくはオリゴマー、又は、それらの混合物などの化学的形態をもつ。
【0181】
-オリゴマー-
画像記録層に含まれる重合性化合物は、オリゴマーを含有することが好ましい。
本開示においてオリゴマーとは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)が600以上10,000以下であり、かつ、重合性基を少なくとも1つ含む重合性化合物を表す。
耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性に優れる観点から、オリゴマーの分子量としては、1,000以上5,000以下であることが好ましい。
【0182】
また、耐薬品性及びUV耐刷性を向上させる観点から、1分子のオリゴマーにおける重合性基数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることが特に好ましい。
また、オリゴマーにおける重合性基の上限値は、特に制限はないが、重合性基の数は20以下であることが好ましい。
【0183】
耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性により優れる観点から、オリゴマーとしては、重合性基の数が7以上であり、かつ、分子量が1,000以上10,000以下であることが好ましく、重合性基の数が7以上20以下であり、かつ、分子量が1,000以上5,000以下であることがより好ましい。
【0184】
耐薬品性及びUV耐刷性により優れる観点から、オリゴマーは、ウレタン結合を有する化合物、エステル結合を有する化合物及びエポキシ残基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましく、ウレタン結合を有する化合物を有することが好ましい。
本明細書においてエポキシ残基とは、エポキシ基により形成される構造を指し、例えば酸基(カルボキシ基等)とエポキシ基との反応により得られる構造と同様の構造を意味する。
【0185】
<<ウレタン結合を有する化合物>>
ウレタン結合を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物との反応により得られる化合物が挙げられる。
【0186】
ポリイソシアネート化合物としては、2官能~5官能のポリイソシアネート化合物が挙げられ、2官能又は3官能のポリイソシアネート化合物が好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、9H-フルオレン-2,7-ジイソシアネート、9H-フルオレン-9-オン-2,7-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、1,3-フェニレンジイソシアナート、トリレン-2,4-ジイソシアナート、トリレン-2,6-ジイソシアナート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-イソシアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,5-ジイソシアナトナフタレン、これらのポリイソシアネートのダイマー、トリマー(イソシアヌレート結合)等が好ましく挙げられる。また、上記のポリイソシアネート化合物と公知のアミン化合物とを反応させたビウレット体を用いてもよい。
【0187】
ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物としては、1つのヒドロキシ基と、1以上の重合性基とを有する化合物が好ましく、1つのヒドロキシ基と、2以上の重合性基とを有する化合物がより好ましい。
ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0188】
ウレタン結合を有する化合物としては、例えば、下記式(Ac-1)又は式(Ac-2)で表される基を少なくとも有する化合物であることが好ましく、下記式(Ac-1)で表される基を少なくとも有する化合物であることがより好ましい。
【0189】
【0190】
式(Ac-1)及び式(Ac-2)中、L1~L4はそれぞれ独立に、炭素数2~20の二価の炭化水素基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
L1~L4としては、それぞれ独立に、炭素数2~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4~8のアルキレン基であることが更に好ましい。また、上記アルキレン基は、分岐又は環構造を有していてもよいが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
【0191】
式(Ac-1)又は式(Ac-2)における波線部はそれぞれ独立に、下記式(Ae-1)又は式(Ae-2)で表される基における波線部と直接結合することが好ましい。
【0192】
【0193】
式(Ae-1)及び式(Ae-2)中、Rはそれぞれ独立に、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、波線部分は式(Ac-1)及び式(Ac-2)における波線部との結合位置を表す。
【0194】
また、ウレタン結合を有する化合物として、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、の反応により得られるポリウレタンに、高分子反応により重合性基を導入した化合物を用いてもよい。例えば、酸基を有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物を反応させて得られたポリウレタンオリゴマーに、エポキシ基及び重合性基を有する化合物を反応させることにより、ウレタン結合を有する化合物を得てもよい。
【0195】
<<エステル結合を有する化合物>>
また、エステル結合を有する化合物における重合性基の数は、3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましい。
【0196】
<<エポキシ残基を有する化合物>>
エポキシ残基を有する化合物としては、化合物内にヒドロキシ基を含む化合物が好ましい。
また、エポキシ残基を有する化合物における重合性基の数は、2~6であることが好ましく、2~3であることがより好ましい。
上記エポキシ残基を有する化合物としては、例えば、エポキシ基を有する化合物にアクリル酸を反応することにより得ることができる。
【0197】
耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性を向上させる観点から、上記画像記録層における上記重合性化合物の全質量に対する上記オリゴマーの含有量は、30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましい。
【0198】
重合性化合物は、上記オリゴマー以外の重合性化合物を更に含んでいてもよい。
オリゴマー以外の重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端にエチレン性不飽和基を少なくとも1つ有する化合物であることが好ましく、末端にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物であることがより好ましい。
オリゴマー以外の重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、低分子重合性化合物であることが好ましい。低分子重合性化合物としては、単量体、2量体、3量体又は、それらの混合物などの化学的形態であってもよい。
また、低分子重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、エチレン性不飽和基を3つ以上有する重合性化合物及びイソシアヌル環構造を有する重合性化合物からなる群より選ばれる少なくとも一方の重合性化合物であることが好ましい。
【0199】
本開示において低分子重合性化合物とは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)50以上600未満の重合性化合物を表す。
低分子重合性化合物の分子量としては、耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性に優れる観点から、100以上600未満であることが好ましく、300以上600未満であることがより好ましく、400以上600未満であることが更に好ましい。
重合性化合物が、オリゴマー以外の重合性化合物として低分子重合性化合物を含む場合(2種以上の低分子重合性化合物を含む場合はその合計量)、耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性の観点から、上記オリゴマーと低分子重合性化合物との比(オリゴマー/低分子重合性化合物)は、質量基準で、10/1~1/10であることが好ましく、10/1~3/7であることがより好ましく、10/1~7/3であることが更に好ましい。
【0200】
重合性化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)及び、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類、又は、アミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン原子、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。これらは、特表2006-508380号公報、特開2002-287344号公報、特開2008-256850号公報、特開2001-342222号公報、特開平9-179296号公報、特開平9-179297号公報、特開平9-179298号公報、特開2004-294935号公報、特開2006-243493号公報、特開2002-275129号公報、特開2003-64130号公報、特開2003-280187号公報、特開平10-333321号公報等に記載されている。
【0201】
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス〔p-(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0202】
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、その具体例としては、例えば、特公昭48-41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(M)で表されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(RM4)COOCH2CH(RM5)OH (M)
式(M)中、RM4及びRM5はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0203】
また、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報、特開2003-344997号公報、特開2006-65210号公報に記載のウレタンアクリレート類、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報、特開2000-250211号公報、特開2007-94138号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類、米国特許第7153632号明細書、特表平8-505958号公報、特開2007-293221号公報、特開2007-293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
【0204】
オリゴマーの具体例を下記表に示すが、本開示において用いられるオリゴマーはこれに限定されるものではない。
【0205】
オリゴマーとしては、市販品を用いてもよく、UA510H、UA-306H、UA-306I、UA-306T(いずれも共栄社化学(株)製)、UV-1700B、UV-6300B、UV7620EA(いずれも日本合成化学工業(株)製)、U-15HA(新中村化学工業(株)製)、EBECRYL450、EBECRYL657、EBECRYL885、EBECRYL800、EBECRYL3416、EBECRYL860(いずれもダイセルオルネクス(株)製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0206】
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、任意に設定できる。
重合性化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対して、5質量%~75質量%であることが好ましく、10質量%~70質量%であることがより好ましく、15質量%~60質量%であることが更に好ましい。
また、上記画像記録層における上記重合性化合物の全質量に対するコアシェル粒子に含まれる熱可塑性樹脂の含有量は、0質量%を超え400質量%以下であることが好ましく、25質量%~300質量%であることがより好ましく、50質量%~200質量%であることが更に好ましい。
画像記録層において、コアシェル粒子に含まれる樹脂と上記重合性化合物とは、海島構造をとることが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂の海(連続相)の中に、上記重合性化合物が島状に分散(不連続層)した構造を採用することができる。上記重合性化合物の全質量に対する上記コアシェル粒子に含まれる熱可塑性樹脂の含有量を上記範囲内の値とすることにより、海島構造を形成しやすいと考えられる。
【0207】
〔ポリマー粒子〕
上記画像記録層は、ポリマー粒子を含んでいてもよい。なお、上記コアシェル粒子は、ポリマー粒子に該当しない。
ポリマー粒子は、熱反応性ポリマー粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)よりなる群から選ばれることが好ましい。中でも、重合性基を有するポリマー粒子又はミクロゲルが好ましい。特に好ましい実施形態では、ポリマー粒子は少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性基を含む。このようなポリマー粒子の存在により、露光部のUV耐刷性及び未露光部の機上現像性を高める効果が得られる。
【0208】
熱反応性ポリマー粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性ポリマー粒子は熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0209】
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好ましく挙げられる。
【0210】
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001-277740号公報、特開2001-277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の少なくとも一部をマイクロカプセルに内包させたものである。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有する構成が好ましい態様である。
【0211】
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その表面又は内部の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有する反応性ミクロゲルは、画像形成感度やUV耐刷性の観点から好ましい。
【0212】
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するには、公知の方法が適用できる。
【0213】
また、ポリマー粒子としては、UV耐刷性、耐汚れ性及び保存安定性の観点から、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られるものが好ましい。
上記多価フェノール化合物としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するベンゼン環を複数有している化合物が好ましい。
上記活性水素を有する化合物としては、ポリオール化合物、又は、ポリアミン化合物が好ましく、ポリオール化合物がより好ましく、プロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が更に好ましい。
分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られる樹脂の粒子としては、特開2012-206495号公報の段落0032~0095に記載のポリマー粒子が好ましく挙げられる。
【0214】
更に、ポリマー粒子としては、UV耐刷性及び耐溶剤性の観点から、疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含むことが好ましい。
上記疎水性主鎖としては、アクリル樹脂鎖が好ましく挙げられる。
上記ペンダントシアノ基の例としては、-[CH2CH(C≡N)-]又は-[CH2C(CH3)(C≡N)-]が好ましく挙げられる。
また、上記ペンダントシアノ基を有する構成ユニットは、エチレン系不飽和型モノマー、例えば、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルから、又は、これらの組み合わせから容易に誘導することができる。
また、上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシド構造の繰り返し数は、10~100であることが好ましく、25~75であることがより好ましく、40~50であることが更に好ましい。
疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む樹脂の粒子としては、特表2008-503365号公報の段落0039~0068に記載のものが好ましく挙げられる。
【0215】
ポリマー粒子の平均粒径は、0.01μm~3.0μmが好ましく、0.03μm~2.0μmがより好ましく、0.10μm~1.0μmが更に好ましい。この範囲で良好な解像度と経時安定性が得られる。
本開示における上記各粒子の平均一次粒径は、光散乱法により測定するか、又は、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5,000個測定し、平均値を算出するものとする。なお、非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とする。
また、本開示における平均粒径は、特に断りのない限り、体積平均粒径であるものとする。
ポリマー粒子の含有量は、画像記録層の全質量に対し、5質量%~90質量%が好ましい。
【0216】
〔酸発色剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、酸発色剤を含むことが好ましい。
本開示で用いられる「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより、発色する性質を有する化合物を意味する。酸発色剤としては、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物が好ましい。
【0217】
このような酸発色剤の例としては、3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(”クリスタルバイオレットラクトン”と称される)、3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1,2-ジメチルインドール-3-イル)フタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(9-エチルカルバゾール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(2-フェニルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-メチルピロール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、
【0218】
3,3-ビス〔1,1-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス〔1-(4-ジメチルアミノフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1-(4-ピロリジノフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-〔1,1-ジ(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)エチレン-2-イル〕-3-(4-ジエチルアミノフェニル)フタリド、3-〔1,1-ジ(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)エチレン-2-イル〕-3-(4-N-エチル-N-フェニルアミノフェニル)フタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド、3,3-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド、3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド等のフタリド類、
【0219】
4,4-ビス-ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N-ハロフェニル-ロイコオーラミン、N-2,4,5-トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン-B-アニリノラクタム、ローダミン-(4-ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン-B-(4-クロロアニリノ)ラクタム、3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-ベンゾイルフェノオキサジン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、4ーニトロベンゾイルメチレンブルー、
【0220】
3,6-ジメトキシフルオラン、3-ジメチルアミノ-7-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6,7-ジメチルフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ブチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-オクチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジ-n-ヘキシルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’-フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’,3’-ジクロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-トリフルオロメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’-フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-N-イソペンチル-N-エチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、
【0221】
3-N-n-ヘキシル-N-エチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メトキシ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-エトキシ-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-モルホリノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-プロピル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-プロピル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ブチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ブチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソブチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソブチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソペンチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ヘキシル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-プロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ヘキシルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-オクチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
【0222】
3-N-(2’-メトキシエチル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-メトキシエチル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-メトキシエチル)-N-イソブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-エトキシエチル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-エトキシエチル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-メトキシプロピル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-メトキシプロピル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-エトキシプロピル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-テトラヒドロフルフリル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(4’-メチルフェニル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-エチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(3’-メチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、2,2-ビス〔4’-(3-N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ-6-メチルフルオラン)-7-イルアミノフェニル〕プロパン、3-〔4’-(4-フェニルアミノフェニル)アミノフェニル〕アミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-〔4’-(ジメチルアミノフェニル)〕アミノ-5,7-ジメチルフルオラン等のフルオラン類、
【0223】
3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-n-プロポキシカルボニルアミノ-4-ジ-n-プロピルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-メチルアミノ-4-ジ-n-プロピルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-メチル-4-ジn-ヘキシルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4,7-ジアザフタリド、3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-フェニルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-ブトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-フェニルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド3-メチル-スピロ-ジナフトピラン、3-エチル-スピロ-ジナフトピラン、3-フェニル-スピロ-ジナフトピラン、3-ベンジル-スピロ-ジナフトピラン、3-メチル-ナフト-(3-メトキシベンゾ)スピロピラン、3-プロピル-スピロ-ジベンゾピラン-3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド等のフタリド類、
【0224】
その他、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-イソペンチル)アミノ-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン-3-オン、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-(4-メチルフェニル))アミノ-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン、3’-N,N-ジベンジルアミノ-6’-N,N-ジエチルアミノスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン、2’-(N-メチル-N-フェニル)アミノ-6’-(N-エチル-N-(4-メチルフェニル))アミノスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オンなどが挙げられる。
【0225】
中でも、本開示に用いられる酸発色剤は、発色性の観点から、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、及び、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、緑、青又は黒であることが好ましい。
【0226】
酸発色剤としては上市されている製品を使用することも可能であり、ETAC、RED500、RED520、CVL、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、BLUE220、H-3035、BLUE203、ATP、H-1046、H-2114(以上、福井山田化学工業(株)製)、ORANGE-DCF、Vermilion-DCF、PINK-DCF、RED-DCF、BLMB、CVL、GREEN-DCF、TH-107(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、ODB、ODB-2、ODB-4、ODB-250、ODB-BlackXV、Blue-63、Blue-502、GN-169、GN-2、Green-118、Red-40、Red-8(以上、山本化成(株)製)、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成工業(株)製)等が挙げられる。これらの市販品の中でも、ETAC、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、H-3035、ATP、H-1046、H-2114、GREEN-DCF、Blue-63、GN-169、クリスタルバイオレットラクトンが、形成される膜の可視光吸収率が良好のため好ましい。
【0227】
これらの酸発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用することもできる。
酸発色剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.5質量%~10質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0228】
〔コアシェル粒子以外のバインダーポリマー〕
画像記録層は、コアシェル粒子以外のバインダーポリマー(以下、「他のバインダーポリマー」ともいう。)を含んでもよい。
上記コアシェル粒子、及び、上記ポリマー粒子は、上記他のバインダーポリマーに該当しない。すなわち、他のバインダーポリマーは、粒子形状ではない重合体である。
他のバインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、又は、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0229】
中でも、他のバインダーポリマーは平版印刷版原版の画像記録層に用いられる公知のバインダーポリマーを好適に使用することができる。一例として、機上現像型の平版印刷版原版に用いられるバインダーポリマー(以下、機上現像用バインダーポリマーともいう)について、詳細に記載する。
機上現像用バインダーポリマーとしては、アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。また、ポリ(アルキレンオキシド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキシド)含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキシド)非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0230】
また、他のバインダーポリマーの他の好ましい例として、6官能以上10官能以下の多官能チオールを核として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖を有し、上記ポリマー鎖が重合性基を有する高分子化合物(以下、星型高分子化合物ともいう。)が挙げられる。星型高分子化合物としては、例えば、特開2012-148555号公報に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0231】
星型高分子化合物は、特開2008-195018号公報に記載のような画像部の皮膜強度を向上するためのエチレン性不飽和結合等の重合性基を、主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。重合性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
重合性基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基(スチリル基)などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、(メタ)アクリル基、ビニル基、ビニルフェニル基(スチリル基)が重合反応性の観点でより好ましく、(メタ)アクリル基が特に好ましい。これらの基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するポリマーとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。これらの基は併用してもよい。
【0232】
他のバインダーポリマーの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)が、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000~300,000であることが更に好ましい。
【0233】
必要に応じて、特開2008-195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
【0234】
本開示において用いられる画像記録層においては、他のバインダーポリマーを1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
他のバインダーポリマーは、画像記録層中に任意な量で含有させることができるが、バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~80質量%であることがより好ましい。
また、本開示における画像記録層が他のバインダーポリマーを含む場合、上記コアシェル粒子と他のバインダーポリマーとの合計質量に対する他のバインダーポリマーの含有量は、0質量%を超え99質量%以下であることが好ましく、20質量%~95質量%であることがより好ましく、40質量%~90質量%であることが更に好ましい。
【0235】
〔連鎖移動剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、平版印刷版におけるUV耐刷性の向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、沸点(揮発し難さ)の観点で炭素数7以上のチオール化合物がより好ましく、芳香環上にメルカプト基を有する化合物(芳香族チオール化合物)が更に好ましい。上記チオール化合物は単官能チオール化合物であることが好ましい。
【0236】
連鎖移動剤として具体的には、下記の化合物が挙げられる。
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
連鎖移動剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~50質量%が好ましく、0.05質量%~40質量%がより好ましく、0.1質量%~30質量%が更に好ましい。
【0242】
〔感脂化剤〕
画像記録層は、インキ着肉性を向上させるために、感脂化剤を更に含有することが好ましい。
感脂化剤は、SP値が18.0未満であることが好ましく、14~18未満であることがより好ましく、15~17であることが更に好ましく、16~16.9であることが特に好ましい。
また、感脂化剤は、分子量(分子量分布があるときは、重量平均分子量)が2,000以上の化合物であってもよく、分子量が2,000未満の化合物であってもよい。
【0243】
本開示におけるSP値(溶解度パラメーター、単位:(MPa)1/2))は、ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターを用いるものとする。
ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものであるが、本開示においてはSP値をδ(単位:(MPa)1/2)で表し、下記式を用いて算出される値を用いる。
δ(MPa)1/2=(δd2+δp2+δh2)1/2
なお、この分散項δd、極性項δp、及び、水素結合項δhは、ハンセンやその研究後継者らにより多く求められており、Polymer Handbook (fourth edition)、VII-698~711に詳しく掲載されている。
また本開示において、ポリマーのSP値は、ポリマーの分子構造からPolymer Handbook fourth editionに記載のHoy法により計算する。
【0244】
上記感脂化剤としては、例えば、オニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等のアンモニウム化合物などが挙げられる。
特に、オーバーコート層に無機層状化合物を含有させる場合、これら化合物は、無機層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機層状化合物による印刷途中の着肉性低下を抑制することができる。
【0245】
また、感脂化剤は、着肉性の観点から、オニウム化合物であることが好ましい。
オニウム化合物としては、ホスホニウム化合物、アンモニウム化合物、スルホニウム化合物等が挙げられ、オニウム化合物としては、上記観点から、ホスホニウム化合物及びアンモニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
また、後述する、現像促進剤又は電子受容型重合開始剤におけるオニウム化合物はSP値が18を超える化合物であり、感脂化剤には含まれない。
【0246】
ホスホニウム化合物としては、特開2006-297907号公報及び特開2007-50660号公報に記載のホスホニウム化合物が挙げられる。具体例としては、1,4-ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7-ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9-ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン-2,7-ジスルホナート等が挙げられる。
【0247】
アンモニウム化合物としては、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等を好ましく挙げることができる。
【0248】
含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。また、イミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。
中でも、第四級アンモニウム塩類及びピリジニウム塩類が好ましい。
具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p-トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008-284858号公報の段落0021~0037に記載の化合物、特開2009-90645号公報の段落0030~0057に記載の化合物等が挙げられる。
【0249】
アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すればよく、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5mol%~80mol%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009-208458号公報の段落0089~0105に記載のポリマーが挙げられる。
【0250】
アンモニウム塩含有ポリマーは、特開2009-208458号公報に記載の測定方法に従って求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5~120の範囲のものが好ましく、10~110の範囲のものがより好ましく、15~100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を重量平均分子量(Mw)に換算した場合、10,000~150,000が好ましく、17,000~140,000がより好ましく、20,000~130,000が特に好ましい。
【0251】
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90、Mw4.5万)
(2)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(3)2-(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70、Mw4.5万)
(4)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2-エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(5)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60、Mw7.0万)
(6)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比25/75、Mw6.5万)
(7)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.5万)
(8)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13-エチル-5,8,11-トリオキサ-1-ヘプタデカンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw7.5万)
【0252】
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、1質量%~40.0質量%が好ましく、2質量%~25.0質量%がより好ましく、3質量%~20.0質量%が更に好ましい。
【0253】
画像記録層は、感脂化剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本開示において用いられる画像記録層の好ましい態様の一つは、感脂化剤として、2種以上の化合物を含有する態様である。
具体的には、本開示において用いられる画像記録層は、機上現像性及び着肉性を両立させる観点から、感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーと、を併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウム塩類と、アンモニウム基含有ポリマーと、を併用することがより好ましい。
【0254】
〔現像促進剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、現像促進剤を更に含むことが好ましい。
現像促進剤は、SP値の極性項の値が6.0~26.0であることが好ましく、6.2~24.0であることがより好ましく、6.3~23.5であることが更に好ましく、6.4~22.0であることが特に好ましい。
【0255】
本開示におけるSP値(溶解度パラメーター、単位:(cal/cm3)1/2)の極性項の値は、ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターにおける極性項δpの値を用いるものとする。ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものであるが、本開示においては上記極性項δpを用いる。
δp[cal/cm3]はHansen 溶解度パラメーター双極子間力項、V[cal/cm3]はモル体積、μ[D]は双極子モーメントである。δpとしては、一般的にはHansenとBeerbowerによって簡素化された下記式が用いられている
【0256】
【0257】
現像促進剤としては、親水性高分子化合物又は親水性低分子化合物であることが好ましい。
本開示において、親水性とは、SP値の極性項の値が6.0~26.0であることをいい、親水性高分子化合物とは分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)が3,000以上の化合物をいい、親水性低分子化合物とは分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)が3,000未満の化合物をいう。
【0258】
親水性高分子化合物としては、セルロース化合物等が挙げられ、セルロース化合物が好ましい。
セルロース化合物としては、セルロース、又は、セルロースの少なくとも一部が変性された化合物(変性セルロース化合物)が挙げられ、変性セルロース化合物が好ましい。
変性セルロース化合物としては、セルロースのヒドロキシ基の少なくとも一部が、アルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の基により置換された化合物が好ましく挙げられる。
上記セルロースのヒドロキシ基の少なくとも一部が、アルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の基により置換された化合物の置換度は、0.1~6.0であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。
変性セルロース化合物としては、アルキルセルロース化合物又はヒドロキシアルキルセルロース化合物が好ましく、ヒドロキシアルキルセルロース化合物がより好ましい。
アルキルセルロース化合物としては、メチルセルロースが好ましく挙げられる。
ヒドロキシアルキルセルロース化合物としては、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく挙げられる。
【0259】
親水性高分子化合物の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)は、3,000~5,000,000であることが好ましく、5,000~200,000であることがより好ましい。
【0260】
親水性低分子化合物としては、グリコール化合物、ポリオール化合物、有機アミン化合物、有機スルホン酸化合物、有機スルファミン化合物、有機硫酸化合物、有機ホスホン酸化合物、有機カルボン酸化合物、ベタイン化合物等が挙げられ、ポリオール化合物、有機スルホン酸化合物又はベタイン化合物が好ましい。
【0261】
グリコール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びこれらの化合物のエーテル又はエステル誘導体類が挙げられる。
ポリオール化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
有機アミン化合物としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等及びその塩が挙げられる。
有機スルホン酸化合物としては、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等及びその塩が挙げられ、アルキル基の炭素数が1~10のアルキルスルホン酸が好ましく挙げられる。
有機スルファミン化合物としては、アルキルスルファミン酸等及びその塩が挙げられる。
有機硫酸化合物としては、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等及びその塩が挙げられる。
有機ホスホン酸化合物としては、フェニルホスホン酸等及びその塩、が挙げられる。
有機カルボン酸化合物としては、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸等及びその塩が挙げられる。
ベタイン化合物としては、ホスホベタイン化合物、スルホベタイン化合物、カルボキシベタイン化合物等が挙げられ、トリメチルグリシンが好ましく挙げられる。
【0262】
親水性低分子化合物の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)は、100以上3,000未満であることが好ましく、300~2,500であることがより好ましい。
【0263】
現像促進剤は、環状構造を有する化合物であることが好ましい。
環状構造としては、特に限定されないが、ヒドロキシ基の少なくとも一部が置換されていてもよいグルコース環、イソシアヌル環、ヘテロ原子を有していてもよい芳香環、ヘテロ原子を有していてもよい脂肪族環等が挙げられ、グルコース環又はイソシアヌル環が好ましく挙げられる。
グルコース環を有する化合物としては、上述のセルロース化合物が挙げられる。
イソシアヌル環を有する化合物としては、上述のトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
芳香環を有する化合物としては、上述のトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
脂肪族環を有する化合物としては、上述のアルキル硫酸であって、アルキル基が環構造を有する化合物等が挙げられる。
【0264】
また、上記環状構造を有する化合物は、ヒドロキシ基を有することが好ましい。
ヒドロキシ基を有し、かつ、環状構造を有する化合物としては、上述のセルロース化合物、及び、上述のトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが好ましく挙げられる。
【0265】
また、現像促進剤としては、オニウム化合物であることが好ましい。
オニウム化合物としては、アンモニウム化合物、スルホニウム化合物等が挙げられ、アンモニウム化合物が好ましい。
オニウム化合物である現像促進剤としては、トリメチルグリシン等が挙げられる。
また、上記電子受容型重合開始剤におけるオニウム化合物はSP値の極性項の値が6.0~26.0ではない化合物であり、現像促進剤には含まれない。
【0266】
画像記録層は、現像促進剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本開示において用いられる画像記録層の好ましい態様の一つは、現像促進剤として、2種以上の化合物を含有する態様である。
具体的には、本開示において用いられる画像記録層は、機上現像性及び着肉性の観点から、現像促進剤として、上記ポリオール化合物及び上記ベタイン化合物、上記ベタイン化合物及び上記有機スルホン酸化合物、又は、上記ポリオール化合物及び上記有機スルホン酸化合物を含むことが好ましい。
【0267】
画像記録層の全質量に対する現像促進剤の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0268】
〔その他の成分〕
画像記録層には、その他の成分として、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機層状化合物等を含有することができる。具体的には、特開2008-284817号公報の段落0114~段落0159の記載を参照することができる。
【0269】
〔画像記録層の形成〕
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、例えば、特開2008-195018号公報の段落0142~段落0143に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、0.3g/m2~3.0g/m2が好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。具体的には、例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメーチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1-プロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。塗布液中の固形分濃度は1質量%~50質量%であることが好ましい。
塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性を得る観点から、0.3g/m2~3.0g/m2が好ましい。
また、本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層の膜厚は、0.1μm~3.0μmであることが好ましく、0.3μm~2.0μmであることがより好ましい。
本開示において、平版印刷版原版における各層の膜厚は、平版印刷版原版の表面に対して垂直な方向に切断した切片を作製し、上記切片の断面を走査型顕微鏡(SEM)により観察することにより確認される。
【0270】
<オーバーコート層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層の、支持体側とは反対の側の面上にオーバーコート層(「保護層」と呼ばれることもある。)を有していてもよい。
上記オーバーコート層の膜厚は、上記画像記録層の膜厚よりも厚いことが好ましい。
オーバーコート層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
【0271】
このような特性のオーバーコート層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55-49729号公報に記載されている。オーバーコート層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできるが、機上現像性の観点から、水溶性ポリマーを含むことが好ましい。
本開示において、水溶性ポリマーとは、70℃、100gの純水に対して1g以上溶解し、かつ、70℃、100gの純水に対して1gのポリマーが溶解した溶液を25℃に冷却しても析出しないポリマーをいう。
オーバーコート層において用いられる水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005-250216号公報及び特開2006-259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0272】
上記水溶性ポリマーの中でも、ポリビニルアルコールを含むことが好ましく、けん化度が50%以上であるポリビニルアルコールを含むことが更に好ましい。
上記けん化度は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましい。けん化度の上限は特に限定されず、100%以下であればよい。
上記けん化度は、JIS K 6726:1994に記載の方法に従い測定される。
また、オーバーコート層の一態様として、ポリビニルアルコールと、ポリエチレングリコールとを含む態様も好ましく挙げられる。
【0273】
本開示におけるオーバーコート層が水溶性ポリマーを含む場合、オーバーコート層の全質量に対する水溶性ポリマーの含有量は、1質量%~99質量%であることが好ましく、3質量%~97質量%であることがより好ましく、5質量%~95質量%であることが更に好ましい。
【0274】
オーバーコート層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有してもよい。無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2-5D4O10(OH,F,O)2〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
【0275】
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg3(AlSi3O10)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si4O10)F2等の非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si4O10)F2、Na又はLiテニオライト(Na,Li)Mg2Li(Si4O10)F2、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si4O10)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
【0276】
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、膨潤性合成雲母は、10Å~15Å(1Å=0.1nm)程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi+、Na+、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi+、Na+の場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
【0277】
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0278】
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3μm~20μm、より好ましくは0.5μm~10μm、特に好ましくは1μm~5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1nm~50nm程度、面サイズ(長径)が1μm~20μm程度である。
【0279】
無機層状化合物の含有量は、オーバーコート層の全質量に対して、1質量%~60質量%が好ましく、3質量%~50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
【0280】
オーバーコート層は可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御するための無機粒子など公知の添加物を含有してもよい。また、画像記録層において記載した感脂化剤をオーバーコート層に含有させてもよい。
【0281】
オーバーコート層は公知の方法で塗布される。オーバーコート層の塗布量(固形分)は、0.01g/m2~10g/m2が好ましく、0.02g/m2~3g/m2がより好ましく、0.02g/m2~1g/m2が特に好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版におけるオーバーコート層の膜厚は、0.1μm~5.0μmであることが好ましく、0.3μm~4.0μmであることがより好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版におけるオーバーコート層の膜厚は、上記画像記録層の膜厚に対し、1.1倍~5.0倍であることが好ましく、1.5倍~3.0倍であることがより好ましい。
【0282】
<支持体>
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体を有する。
支持体としては、親水性表面を有する支持体(「親水性支持体」ともいう。)が好ましい。親水性表面としては、水との接触角が10°より小さいものが好ましく、5°より小さいものがより好ましい。
本開示における水接触角は、協和界面化学(株)製DM-501によって、25℃における表面上の水滴の接触角(0.2秒後)として測定される。
本開示に係る平版印刷版原版の支持体は、公知の平版印刷版原版用支持体から適宜選択して用いることができる。支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
以下、本開示に係る平版印刷版原版に用いられる支持体について図面を用いて説明するが、図面の説明中、符号が省略される場合がある。
【0283】
陽極酸化被膜の厚さは、200nm~2,000nmであることが好ましい。
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の一実施形態の模式的断面図を
図2Aに示す。
図2Aにおいて、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体12は、アルミニウム板18とアルミニウムの陽極酸化皮膜20(以後、単に「陽極酸化皮膜20」とも称する)とをこの順に有する。アルミニウム支持体12中の陽極酸化皮膜20は、
図1における平版印刷版原版10の画像記録層16側に位置する。即ち、平版印刷版原版10は、アルミニウム板18、陽極酸化皮膜20、下塗り層14、及び、画像記録層16を有する。
【0284】
〔アルミニウム板〕
アルミニウム板18(即ち、アルミニウム支持体)は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属、即ち、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。アルミニウム板18は、純アルミニウム板又はアルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板からなる。
【0285】
アルミニウム合金に含まれる異元素には、例えば、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどが挙げられる。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であることが好ましい。アルミニウム板18としては、純アルミニウム板が好適であるが、製錬技術上の観点から、僅かに異元素を含むアルミニウムであってもよい。アルミニウム板18としては、その組成が限定されるものではなく、公知公用の素材のもの(例えばJIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、及び、JIS A 3005)を適宜利用することができる。
【0286】
アルミニウム板18の幅は400mm~2,000mm程度、厚さはおよそ0.1mm~0.6mm程度が好ましい。アルミニウム板18の幅又は厚さは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさ、及び、ユーザーの希望により適宜変更できる。
【0287】
〔陽極酸化皮膜〕
陽極酸化皮膜20は、陽極酸化処理によってアルミニウム板18の表面に一般的に作製される、皮膜表面に対して略垂直であり、個々が均一に分布した極微細なマイクロポア22を有する陽極酸化アルミニウム皮膜を指す。マイクロポア22は、陽極酸化皮膜表面から厚み方向(即ち、アルミニウム板18側)に沿ってのびている。
陽極酸化皮膜の厚さX1は、200nm~2,000nmであることが好ましく、より好ましくは500nm~1,800nm、更に好ましくは750nm~1,500nmである。
【0288】
本開示において用いられるアルミニウム支持体は、下記態様1~態様3のいずれかの態様であることが好ましい。
本開示において、「マイクロポア」という用語は、陽極酸化皮膜中のポアを表す一般的に使われる用語であり、ポアのサイズを規定するものではない。
(態様1)
上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜表面から深さ10nmを超える位置までのびており、上記陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポアの平均径に対する、マイクロポア底部の平均径の割合が0.8倍以上1.2倍以下である。
(態様2)
上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜表面から深さ10nmを超える位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、連通位置からさらに深さ方向にのびる小径孔部とを有し、上記連通位置における上記小径孔部の平均径が、上記陽極酸化皮膜表面における上記大径孔部の平均径よりも小さい。
(態様3)
上記陽極酸化皮膜表面における上記マイクロポアの平均径が10nm~30nmであり、内部の最大径の平均値が20nm~300nmであり、上記内部の最大径の平均値が上記陽極酸化皮膜表面における上記マイクロポアの平均径よりも大きい。
以下、それぞれの態様について図面を用いて説明する。
【0289】
〔態様1について〕
図2Aは、上記態様1の一実施形態を示す断面概略図である。
図2Aにおいて、マイクロポア22が、陽極酸化皮膜20表面から深さ10nmを超える位置までのびており、上記陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポアの平均径に対する、マイクロポア底部の平均径の割合が0.8倍以上1.2倍以下である。
マイクロポア22の深さX2は10nmを超え、50nm以上であることが好ましく、75nm以上であることがより好ましい。
上記マイクロポア22の深さX2は、陽極酸化皮膜20の断面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)で観察し(倍率:15万倍)、得られた画像において、25個のマイクロポアの深さを測定し、算術平均値として求められる。
【0290】
上記陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y1は、10nm以上100nm以下であることが好ましく、15nm以上75nm以下であることがより好ましく、20nm以上50nm以下であることが更に好ましい。
上記陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の、深さX2に対する平均径Y1の割合(X2/Y1)は、2倍以上10倍以下が好ましく、2.5倍以上7倍以下がより好ましく、3倍以上6倍以下が更に好ましい。
また、マイクロポア22の底部の平均径Y2は、10nm以上100nm以下であることが好ましく、15nm以上75nm以下であることがより好ましく、20nm以上50nm以下であることが更に好ましい。
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y1に対する、マイクロポア22底部の平均径Y2の割合は、0.8倍以上1.2倍以下であることが好ましく、0.85倍以上1.15倍以下であることがより好ましく、0.9倍以上1.1倍以下であることが更に好ましい。
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y1に対する、マイクロポア22の底部の平均径Y2の割合は、下記式1Aにより求められる値である。
式1A:(マイクロポア22の底部の平均径Y2)/(陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y1)
【0291】
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポアの平均径Y1は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポアの径(即ち、直径)を測定し、算術平均値として求められる。
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポアの形状(即ち、開口部の形状)が円状でない場合は、円相当径を用いる。
マイクロポア22の底部の平均径Y2は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍のFE-SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア22の底部の径(即ち、直径)を測定し、算術平均値として求められる。なお、マイクロポア22の深さが深い場合は、必要に応じて、陽極酸化皮膜20上部を陽極酸化被膜と水平に切削し(例えば、アルゴンガスによって切削)、その後陽極酸化皮膜20表面を上記FE-SEMで観察して、マイクロポア22の底部の平均径Y2を求めてもよい。
なお、マイクロポア底部の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。
また、底部の形状が平面状ではない場合、例えば
図2Bに記載のY2-1を底部の平均径として測定する。
図2Bは
図2A中のマイクロポアの1つを拡大した概略断面図である。
【0292】
態様1におけるマイクロポア22の形状は特に限定されず、例えば、略直管状、略円柱状、深さ方向(即ち、厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状、深さ方向(即ち、厚み方向)に向かって径が大きくなる逆円錐状、中央部の径が大きい円柱状、中央部の径が小さい円柱状等が挙げられ、これらの中でも略直管状が好ましい。マイクロポア22の底部の形状は特に限定されず、曲面状(例えば、凹状)であっても、平面状であってもよい。
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y1に対する、中央部の径Y1Aの割合は(Y1A/Y1)は、0.8倍以上1.2倍以下であることが好ましい。
マイクロポア22の中央部の平均径Y1Aは、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍のFE-SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア22の中央部の径(即ち、直径)を測定し、算術平均値として求められる。なお、マイクロポア22の深さが深い場合は、必要に応じて、陽極酸化皮膜20上部を陽極酸化被膜と水平に切削し(例えば、アルゴンガスによって切削)、その後陽極酸化皮膜20表面を上記FE-SEMで観察して、マイクロポア22の底部の中央部の径Y1Aを求めてもよい。
【0293】
-その他の特性-
陽極酸化被膜20の表面におけるマイクロポア22の密度は、特に限定されないが、陽極酸化被膜の単位面積に対し、200個/μm2~2,000個/μm2であることが好ましく、200個/μm2~1,000個/μm2であることがより好ましい。
上記密度は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポアの数を計測し、計測値の算術平均値として算出される。
【0294】
陽極酸化被膜20において、上記マイクロポア22は、陽極酸化被膜の全面に分布していてもよいし、少なくとも一部に分布していてもよいが、全面に分布していることが好ましい。
マイクロポア22は、陽極酸化皮膜表面22に略垂直であることが好ましい。
また、マイクロポア22は、個々が均一に近い状態で分布していることが好ましい。
【0295】
〔態様2について〕
図3Aは、上記態様2の一実施形態を示す断面概略図である。
陽極酸化皮膜20中のマイクロポア22は、陽極酸化皮膜表面から深さ(深さA:
図3A参照)が10nmを超える位置までのびる大径孔部24と、大径孔部24の底部と連通し、連通位置から更に深さ方向にのびる小径孔部26とから構成される。
以下に、大径孔部24と小径孔部26について詳述する。
【0296】
-大径孔部-
陽極酸化皮膜表面の大径孔部に、支持体と接している本開示におけるポジ型画像記録層が一部入り込むことによって、アンカー効果を発揮して画像部と支持体との密着性が高まり、印刷時における画像部の耐刷性が向上すると推察される。
大径孔部24の陽極酸化皮膜表面における平均径(即ち、平均開口径)は、10nmより大きく100nm以下であることが好ましい。本開示に係る効果がより優れる点で、平均径は15nm~60nmがより好ましく、18nm~40nmが更に好ましい。
上記平均径が10nmより大きい場合、小点耐刷性、小点の現像ラチチュード、及び、ベタ画像部の耐刷性に優れた平版印刷版が得られやすい。また、上記平均径が100nm以下であれば、放置払い性に優れた平版位刷版が得られやすい。
大径孔部24の平均径は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(即ち、大径孔部)の径(即ち、直径)を測定し、算術平均値として求められる。
なお、大径孔部24の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。
【0297】
大径孔部24の底部は、陽極酸化皮膜表面から深さ(以後、「深さA」とも称する)が10nmを超える位置にある。つまり、大径孔部24は、陽極酸化皮膜表面から深さ方向(即ち、厚み方向)に10nmより大きくのびる孔部である。中でも、本開示の効果がより優れる点で、深さAは、10nmを超え1,000nm以下が好ましく、25nm~200nmがより好ましく、70nm~100nmが更に好ましい。
上記深さAが25nm以上であれば、小点耐刷性、小点の現像ラチチュード、及び、ベタ画像部の耐刷性に優れた平版印刷版が得られやすい。また、上記深さAが200nm以下であれば、と特に放置払い性に優れた平版位刷版が得られやすい。
上記陽極酸化皮膜表面からの深さは、陽極酸化皮膜20の断面をFE-SEMで観察し(倍率:15万倍)、得られた画像において、25個の大径孔部の深さを測定し、算術平均値として求められる。
【0298】
大径孔部24の形状は特に限定されず、例えば、略直管状、略円柱状、深さ方向(即ち、厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状、深さ方向(即ち、厚み方向)に向かって径が大きくなる逆円錐状が挙げられ、これらの中でも略直管状が好ましい。大径孔部の底部における径は、通常、開口部の径と1nm~10nm程度の差があってもよい。大径孔部24の底部の形状は特に限定されず、曲面状(例えば、凹状)であっても、平面状であってもよい。
【0299】
-小径孔部-
図3Aに示すように、陽極酸化皮膜20中のマイクロポア22は、大径孔部24の底部と連通して、連通位置よりさらに深さ方向(即ち、厚み方向)に延びる孔部である、小径孔部26を有することが好ましい。ひとつの小径孔部26は、通常ひとつの大径孔部24と連通するが、2つ以上の小径孔部26がひとつの大径孔部24の底部と連通していてもよい。
小径孔部26の連通位置における平均径は特に限定されないが、大径孔部24の底部との連通位置における小径孔部26の平均径は、大径孔部24の平均径よりも小さく、20nm未満であることが好ましく、15nm以下がより好ましく、13nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましい。上記平均径は、5nm以上であることが好ましい。平均径が20nm未満の場合、放置払い性に優れた平版印刷版が得られやすい。
【0300】
小径孔部26の平均径は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍のFE-SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(即ち、小径孔部)の径(即ち、直径)を測定し、算術平均値として求められる。なお、大径孔部の深さが深い場合は、必要に応じて、陽極酸化皮膜20上部(即ち、大径孔部のある領域)を切削し(例えば、アルゴンガスによって切削)、その後陽極酸化皮膜20表面を上記FE-SEMで観察して、小径孔部の平均径を求めてもよい。
なお、小径孔部26の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。
【0301】
小径孔部26の底部は、上記の大径孔部24との連通位置(上述した深さAに該当)からさらに深さ方向に100nm~1,940nm未満のびた場所に位置することが好ましい。言い換えると、小径孔部26の深さは100nm~1,940nm未満であることが好ましい。中でも、本開示の効果がより優れる点で、小径孔部26は連通位置から深さ300nm~1,600nmの位置までのびることが好ましく、小径孔部26は連通位置から深さ900nm~1,300nmの位置までのびることがより好ましい。
深さが100nm以上の場合、耐傷性に優れた平版印刷版原版が得られやすい。深さが1,940nm以下の場合、処理時間が短期化し、生産性及び経済性に優れやすい。
上記小径孔部の深さは、陽極酸化皮膜20の断面をFE-SEMで観察し(倍率:5万倍)、得られた画像において、25個の小径孔部の深さを測定し、算術平均値として求められる。
【0302】
小径孔部26の形状は特に限定されず、例えば、略直管状(即ち、略円柱状)、深さ方向に向かって径が小さくなる円錐状、深さ方向に向かって枝分かれしていく樹枝状が挙げられ、これらの中でも略直管状が好ましい。小径孔部26の底部における径は、通常、連通位置における径と1nm~5nm程度の差があってもよい。小径孔部26の底部の形状は特に限定されず、曲面状(例えば、凹状)であっても、平面状であってもよい。
【0303】
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体は、上記連通位置における上記小径孔部の平均径が、上記陽極酸化皮膜表面における上記大径孔部の平均径よりも小さいことが、重要である。小径孔部の平均径が、上記大径孔部の平均径よりも小さいことにより、耐汚れ性(即ち、放置払い性)に優れた平版印刷版が得られやすい。
大径孔部の平均径と小径孔部の平均径に関しては、小径孔部の平均径に対する大径孔部の平均径の比率、即ち、大径孔部の平均径/小径孔部の平均径が、1.1~12.5が好ましく、1.5~10がより好ましい。
【0304】
図3Bのように、大径孔部の底部における平均径が、陽極酸化被膜表面における平均径よりも大きい形状であってもよく、さらに大径孔部の底部に連通する小径孔部を有するようなマイクロポアであってもよい。大径孔部の底部における平均径が、陽極酸化被膜表面における平均径よりも大きい場合、陽極酸化被膜の表面における平均径は10nm~100nmであることが好ましく、底部の平均径は20nm~300nmであることが好ましい。
陽極酸化被膜の表面における平均径は10nm~100nmであることが好ましく、耐汚れ性(即ち、放置払い性)の観点から、好ましくは10nm~30nmである。底部の平均径は、20nm~300nmであれば構わないが、好ましくは40nm~200nmである。
また、陽極酸化被膜表面の10nm~100nmの部分の厚さは10nm~500nmであれば好ましいが、耐傷性の観点から50nm~300nmがより好ましい。
【0305】
-その他の特性-
陽極酸化被膜20の表面におけるマイクロポア22の密度は、特に限定されないが、陽極酸化被膜の単位面積に対し、200個/μm2~2,000個/μm2であることが好ましく、200個/μm2~1,000個/μm2であることがより好ましい。
上記密度は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポアの数を計測し、計測値の算術平均値として算出される。
【0306】
陽極酸化被膜20において、上記マイクロポア22は、陽極酸化被膜の全面に分布していてもよいし、少なくとも一部に分布していてもよいが、全面に分布していることが好ましい。
マイクロポア22は、陽極酸化皮膜表面22に略垂直であることが好ましい。
また、マイクロポア22は、個々が均一に近い状態で分布していることが好ましい。
【0307】
〔態様3について〕
図4Aは、上記態様3の一実施形態を示す断面概略図である。
図4Aにおいて、上記陽極酸化皮膜表面における上記マイクロポア22の平均径Y3が10nm~30nmであり、内部の最大径の平均値Y4が20nm~300nmであり、上記内部の最大径の平均値Y4が上記表面孔径上記陽極酸化皮膜表面における上記マイクロポアの平均径Y3よりも大きい。
マイクロポア22の深さX4は10nmを超え、30nm以上であることが好ましく、75nm以上であることがより好ましい。
上記マイクロポア22の深さX4は、陽極酸化皮膜20の断面をFE-SEMで観察し(倍率:15万倍)、得られた画像において、25個のマイクロポアの深さを測定し、算術平均値として求められる。
【0308】
上記陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y3は、10nm以上30nm以下であることが好ましく、11nm以上25nm以下であることがより好ましく、12nm以上20nm以下であることが更に好ましい。
また、マイクロポア内部の最大径の平均値Y4は、10nm以上300nm以下であることが好ましく、15nm以上200nm以下であることがより好ましく、20nm以上100nm以下であることが更に好ましい。
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポアの平均径Y3に対する、マイクロポア22の内部の最大径の平均値Y4の割合は、1.2倍以上10倍以下であることが好ましく、1.5倍以上8倍以下であることがより好ましく、2倍以上5倍以下であることが更に好ましい。
マイクロポア22の平均径Y3に対する、マイクロポア22の内部の最大径の平均値Y4の割合は、下記式1Bにより求められる値である。
式1B:(マイクロポア22の内部の最大径の平均値Y4)/(陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y3)
【0309】
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポアの平均径Y3は、上述の態様1におけるY1と同様の方法により求められる
マイクロポア22内部の最大径の平均値Y4は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍のFE-SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア22の径の最大値(即ち、直径)を測定し、算術平均値として求められる。なお、マイクロポア22の深さが深い場合は、必要に応じて、陽極酸化皮膜20上部を陽極酸化被膜と水平に切削し(例えば、アルゴンガスによって切削)、その後陽極酸化皮膜20表面を上記FE-SEMで観察して、マイクロポア22の底部の平均径Y4を求めてもよい。
なお、マイクロポア22の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。
【0310】
態様3におけるマイクロポア22の形状は特に限定されず、例えば、略直管状、略円柱状、深さ方向(即ち、厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状、深さ方向(即ち、厚み方向)に向かって径が大きくなる逆円錐状、中央部の径が大きい円柱状、中央部の径が小さい円柱状等が挙げられ、略直管状が好ましい。マイクロポア22の底部の形状は特に限定されず、曲面状(例えば、凹状)であっても、平面状であってもよい。
また、
図4Bに示すように、直径が小さい円柱と、直径が大きい円柱と、を組み合わせた形であってもよい。これらの円柱についても、特に制限はなく、略直管状、円錐状、逆円錐状、中央部の径が大きい円柱状、中央部の径が小さい円柱状等であってもよく、これらの中でも略直管状が好ましい。
図4に示す形状においても、マイクロポア22の底部の形状は特に限定されず、曲面状(例えば、凹状)であっても、平面状であってもよい。
【0311】
-その他の特性-
陽極酸化被膜20の表面におけるマイクロポア22の密度は、特に限定されないが、陽極酸化被膜の単位面積に対し、200個/μm2~2,000個/μm2であることが好ましく、200個/μm2~1,000個/μm2であることがより好ましい。
上記密度は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポアの数を計測し、計測値の算術平均値として算出される。
【0312】
陽極酸化被膜20において、上記マイクロポア22は、陽極酸化被膜の全面に分布していてもよいし、少なくとも一部に分布していてもよいが、全面に分布していることが好ましい。
マイクロポア22は、陽極酸化皮膜表面22に略垂直であることが好ましい。
また、マイクロポア22は、個々が均一に近い状態で分布していることが好ましい。
【0313】
<陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法>
以下に、本開示に係る平版印刷版原版における陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法について説明する。
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法は特に限定されないが、以下の工程を順番に実施する製造方法が好ましい。
粗面化処理工程:アルミニウム板に粗面化処理を施す工程
(第1陽極酸化処理工程)粗面化処理されたアルミニウム板を陽極酸化する工程
ポアワイド処理工程:上記第1陽極酸化処理工程で得られた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板を、酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させ、陽極酸化皮膜中のマイクロポアの径を拡大させる工程
第2陽極酸化処理工程:上記ポアワイド処理工程で得られたアルミニウム板を陽極酸化する工程
親水化処理工程:上記第2陽極酸化処理工程で得られたアルミニウム板に親水化処理を施す工程
以下に上記各工程について詳述する。なお、粗面化処理工程、及び、親水化処理工程は、必要がなければ実施しなくてもよい。
上記製造方法によれば、上述の態様2に係るアルミニウム支持体が得られる。
第1陽極酸化処理工程から第2陽極酸化処理工程までを工程順に示す陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の模式的断面図を、
図5に示す。
【0314】
〔粗面化処理工程〕
粗面化処理工程は、アルミニウム板の表面に、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施す工程である。粗面化処理工程は、後述する第1陽極酸化処理工程の前に実施されることが好ましいが、アルミニウム板の表面がすでに好ましい表面形状を有していれば、特に実施しなくてもよい。
【0315】
粗面化処理は、電気化学的粗面化処理のみを施してもよいが、電気化学的粗面化処理と機械的粗面化処理および/または化学的粗面化処理とを組み合わせて施してもよい。
機械的粗面化処理と電気化学的粗面化処理とを組み合わせる場合には、機械的粗面化処理の後に、電気化学的粗面化処理を施すのが好ましい。
機械的粗面化処理は、例えば
図8に示した装置を使って行われる。具体的には、例えば、比重1.1g/cm
3の研磨剤(パミス)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行われる。
図8において、1はアルミニウム板、2及び4はローラ状ブラシ(例えば、束植ブラシ等)、3は研磨スラリー液、5、6、7及び8は支持ローラである。
【0316】
電気化学的粗面化処理は、硝酸又は塩酸の水溶液中で施すことが好ましい。
【0317】
機械的粗面化処理は、一般的には、アルミニウム板の表面を表面粗さRa:0.35μm~1.0μmとする目的で施される。
機械的粗面化処理の諸条件は特に限定されないが、例えば、特公昭50-40047号公報に記載されている方法に従って施すことができる。機械的粗面化処理は、例えば、パミストン懸濁液を使用したブラシグレイン処理、転写方式での処理等が挙げられる。
化学的粗面化処理も特に限定されず、公知の方法に従って施すことができる。
【0318】
機械的粗面化処理の後には、以下の化学エッチング処理を施すことが好ましい。
機械的粗面化処理の後に施される化学エッチング処理は、アルミニウム板の表面の凹凸形状のエッジ部分をなだらかにし、印刷時のインキの引っかかりを防止し、平版印刷版の耐汚れ性(即ち、放置払い性)を向上させるとともに、表面に残った研磨材粒子等の不要物を除去するために行われる。
化学エッチング処理としては、酸によるエッチングやアルカリによるエッチングが知られているが、エッチング効率の点で特に優れている方法として、アルカリ溶液を用いる化学エッチング処理(以下、「アルカリエッチング処理」ともいう。)が挙げられる。
【0319】
アルカリ溶液に用いられるアルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、カセイソーダ、カセイカリ、メタケイ酸ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、グルコン酸ソーダ等が好適に挙げられる。
アルカリ剤は、アルミニウムイオンを含有してもよい。アルカリ溶液の濃度は、0.01質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、また、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
アルカリ溶液の温度は室温(25℃)以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、また、80℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましい。
【0320】
エッチング量は、0.1g/m2以上が好ましく、1g/m2以上がより好ましく、また、20g/m2以下が好ましく、10g/m2以下がより好ましい。
処理時間は、エッチング量に対応して2秒~5分が好ましく、生産性向上の点から2~10秒がより好ましい。
【0321】
機械的粗面化処理後にアルカリエッチング処理を施した場合、アルカリエッチング処理により生じる生成物を除去するために、低温の酸性溶液を用いて化学エッチング処理(以下、「デスマット処理」ともいう。)を施すのが好ましい。
酸性溶液に用いられる酸は、特に限定されないが、例えば、硫酸、硝酸、塩酸等が挙げられる。酸性溶液の濃度は、1質量%~50質量%が好ましい。また、酸性溶液の温度としては、20℃~80℃が好ましい。酸性溶液の濃度及び温度が上記の範囲であると、平版印刷版の耐汚れ性(即ち、放置払い性)がより向上する。
【0322】
上記粗面化処理は、所望により機械的粗面化処理及び化学エッチング処理を施した後に、電気化学的粗面化処理を施す処理であるが、機械的粗面化処理を行わずに電気化学的粗面化処理を施す場合にも、電気化学的粗面化処理の前に、カセイソーダ(即ち、水酸化ナトリウム)等のアルカリ水溶液を用いて化学エッチング処理を施すことができる。これにより、アルミニウム板の表面近傍に存在する不純物等を除去することができる。
【0323】
電気化学的粗面化処理は、アルミニウム板の表面に微細な凹凸(即ち、ピット)を付与することが容易であるため、印刷性に優れた平版印刷版を作製するのに適している。
電気化学的粗面化処理は、硝酸または塩酸を主体とする水溶液中で、直流または交流を用いて行われることが好ましい。
【0324】
電気化学的粗面化処理の後には、以下の化学エッチング処理を行うことが好ましい。電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板の表面には、電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット又は金属間化合物が存在する。電気化学的粗面化処理の後に行われる化学エッチング処理においては、特にスマットを効率よく除去するため、まず、アルカリ溶液を用いて化学エッチング処理(即ち、アルカリエッチング処理)をすることが好ましい。アルカリ溶液を用いた化学エッチング処理の諸条件は、処理温度は20℃~80℃が好ましく、処理時間は1秒~60秒が好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンを含有することが好ましい。
【0325】
電気化学的粗面化処理後にアルカリ溶液を用いる化学エッチング処理を行った後、それにより生じる生成物を除去するために、低温の酸性溶液を用いて化学エッチング処理(即ち、デスマット処理)を行うことが好ましい。
電気化学的粗面化処理後にアルカリエッチング処理を行わない場合においても、スマットを効率よく除去するため、デスマット処理を行うことが好ましい。
【0326】
上述した化学エッチング処理は、浸せき法、シャワー法、塗布法等により行うことができ、特に限定されない。
【0327】
〔第1陽極酸化処理工程〕
第1陽極酸化処理工程は、上述した粗面化処理が施されたアルミニウム板に陽極酸化処理を施すことにより、アルミニウム板表面に深さ方向(即ち、厚み方向)にのびるマイクロポアを有するアルミニウムの酸化皮膜を形成する工程である。この第1陽極酸化処理により、
図5(A)に示されるように、アルミニウム板31の表面に、マイクロポア33aを有するアルミニウムの陽極酸化皮膜32aが形成される。
【0328】
第1陽極酸化処理は、この分野で従来から行われている方法で行うことができるが、上述したマイクロポアを最終的に形成できるように適宜製造条件が設定される。
具体的には、第1陽極酸化処理工程において形成されるマイクロポア33aの平均径(即ち、平均開口径)は、4nm~14nm程度であることが好ましく、より好ましくは5nm~10nmである。上記範囲内であれば、上述した所定の形状を有するマイクロポアが形成しやすく、得られる平版印刷版原版の性能もより優れる。
また、マイクロポア33aの深さは、60nm~200nm未満程度であることが好ましく、より好ましくは70nm~100nmである。上記範囲内であれば、上述した所定の形状を有するマイクロポアが形成しやすく、得られる平版印刷版原版の性能もより優れる。
【0329】
マイクロポア33aのポア密度は特に限定されないが、ポア密度が50個/μm2~4,000個/μm2であることが好ましく、100個/μm2~3,000個/μm2であることがより好ましい。上記範囲内であれば、得られる平版印刷版の耐刷性及び放置払い性、並びに、平版印刷版原版の現像性に優れる。
【0330】
第1陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の膜厚は、70nm~300nmが好ましく、より好ましくは80nm~150nmである。上記範囲内であれば、得られる平版印刷版の耐刷性、放置払い性、耐汚れ性(即ち、放置払い性)、並びに、平版印刷版原版の現像性に優れる。
第1陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の皮膜量は、0.1g/m2~0.3g/m2が好ましく、より好ましくは0.12g/m2~0.25g/m2である。上記範囲内であれば、得られる平版印刷版の耐刷性、放置払い性、耐汚れ性(即ち、放置払い性)、並びに、平版印刷版原版の現像性に優れる。
【0331】
第1陽極酸化処理工程においては、硫酸、シュウ酸、リン酸等の水溶液を主に電解浴として用いることができる。場合によっては、クロム酸、スルファミン酸、ベンゼンスルフォン酸等若しくはこれらの二種以上を組み合わせた水溶液または非水溶液を用いることもできる。上記のような電解浴中でアルミニウム板に直流または交流を流すと、アルミニウム板表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。電解液の種類を変えると大きくポア径が変化する事が知られていて、大まかに言えば、ポア径の大きさは、硫酸電解液でのポア径<シュウ酸電解液でのポア径<リン酸電解液でのポア径の順に大きくなる。
従って、電解液を交換して、2回処理、また、処理装置を2連又は、3連に繋げて、2段、若しくは、3段に連続して処理を行って、陽極酸化皮膜構造にすることが可能である。
例えば、特開2002-365791号公報に記載されているような方法で、リン酸電解液を使用して、陽極酸化皮膜の表面口部のポア径を維持したまま、底部のポアが大きい皮膜を得ることができる。
【0332】
電解浴にはアルミニウムイオンが含まれていてもよい。アルミニウムイオンの含有量は特に限定されないが、1g/L~10g/Lが好ましい。
【0333】
陽極酸化処理の条件は使用される電解液によって適宜設定されるが、一般的には、電解液の濃度が1質量%~80質量%(好ましくは5質量%~20質量%)、液温5℃~70℃(好ましくは10℃~60℃)、電流密度0.5A/dm2~60A/dm2(好ましくは5A/dm2~50A/dm2)、電圧1V~100V(好ましくは5V~50V)、電解時間1秒~100秒(好ましくは5秒~60秒)の範囲が適当である。
【0334】
上記陽極酸化処理のうちでも特に、英国特許第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸中にて高電流密度で陽極酸化する方法が好ましい。
【0335】
〔ポアワイド処理工程〕
ポアワイド処理工程は、上述した第1陽極酸化処理工程により形成された陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの径(即ち、ポア径)を拡大させる処理(即ち、孔径拡大処理)である。このポアワイド処理により、
図5(B)に示されるように、マイクロポア33aの径が拡大され、より大きな平均径を有するマイクロポア33bを有する陽極酸化皮膜32bが形成される。
ポアワイド処理により、マイクロポア33bの平均径は、10nm~100nm(好ましくは、15nm~60nm、より好ましくは、18nm~40nm)の範囲まで拡大される。マイクロポア33bは、上述した大径孔部24(
図5(A))に該当する部分となる。
ポアワイド処理により、マイクロポア33bの表面からの深さは、上述した深さA(
図3A)と同程度となるように調整することが好ましい。
【0336】
ポアワイド処理は、上述した第1陽極酸化処理工程により得られたアルミニウム板を、酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法等が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
【0337】
ポアワイド処理工程においてアルカリ水溶液を使用する場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群より選ばれる少なくとも一つのアルカリ水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1質量%~5質量%が好ましい。
アルカリ水溶液のpHを11~13に調整した後、10℃~70℃(好ましくは20℃~50℃)の条件下で、アルミニウム板をアルカリ水溶液に1秒~300秒(好ましくは1秒~50秒)接触させることが適当である。
アルカリ処理液中に炭酸塩、硼酸塩、燐酸塩等の多価弱酸の金属塩を含んでもよい。
【0338】
ポアワイド処理工程において酸水溶液を使用する場合、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は、1質量%~80質量%が好ましく、より好ましくは5質量%~50質量%である。
酸水溶液の液温5℃~70℃(好ましくは10℃~60℃)の条件下で、アルミニウム板を酸水溶液に1秒~300秒(好ましくは1秒~150秒)接触させることが適当である。
アルカリ水溶液または酸水溶液中にはアルミニウムイオンが含まれていてもよい。アルミニウムイオンの含有量は特に限定されないが、1g/L~10g/Lが好ましい。
【0339】
〔第2陽極酸化処理工程〕
第2陽極酸化処理工程は、上述したポアワイド処理が施されたアルミニウム板に陽極酸化処理を施すことにより、深さ方向(即ち、厚み方向)にのびたマイクロポアを形成する工程である。この第2陽極酸化処理工程により、
図5(C)に示されるように、深さ方向にのびたマイクロポア33cを有する陽極酸化皮膜32cが形成される。
第2陽極酸化処理工程によって、平均径が拡大されたマイクロポア33bの底部に連通し、平均径がマイクロポア33b(即ち、大径孔部24に該当)の平均径より小さく、連通位置から深さ方向にのびる新たな孔部が形成される。上記孔部が、上述した小径孔部26に該当する。
【0340】
第2陽極酸化処理工程においては、新たに形成される孔部の平均径が0nmより大きく20nm未満で、大径孔部20との連通位置からの深さが上述した所定範囲になるように処理が実施される。処理に使用される電解浴は上記の第1陽極酸化処理工程と同じであり、処理条件としては使用される材料に応じて適宜設定される。
陽極酸化処理の条件は使用される電解液によって適宜設定されるが、一般的には、電解液の濃度が1質量%~80質量%(好ましくは5質量%~20質量%)、液温5℃~70℃(好ましくは10℃~60℃)、電流密度0.5A/dm2~60A/dm2(好ましくは1A/dm2~30A/dm2)、電圧1V~100V(好ましくは5V~50V)、電解時間1秒~100秒(好ましくは5秒~60秒)の範囲が適当である。
【0341】
第2陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の膜厚は、200nm~2,000nmであることが好ましく、より好ましくは750nm~1,500nmである。上記範囲内であれば、得られる平版印刷版の耐刷性及び放置払い性に優れる。
第2陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の皮膜量は、2.2g/m2~5.4g/m2であることが好ましく、より好ましくは2.2g/m2~4.0g/m2である。上記範囲内であれば、得られる平版印刷版の耐刷性及び放置払い性、並びに、平版印刷版原版の現像性、耐傷性に優れる。
【0342】
第1陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の厚み(即ち、皮膜厚み1)と、第2陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の厚み(即ち、皮膜厚み2)との比(即ち、皮膜厚み1/皮膜厚み2)は、0.01~0.15が好ましく、0.02~0.10がより好ましい。上記範囲内であれば、平版印刷版用支持体の耐傷性に優れる。
【0343】
上述した小径孔部26(
図3(A)参照)の形状を製造するために、第2陽極酸化処理工程の処理中において、印加する電圧を段階的または連続的に増加させてもよい。印加する電圧が増加することにより、形成される孔部の径が大きくなり、結果として上述した小径孔部26のような形状が得られる。
【0344】
〔第3陽極酸化処理工程〕
第2陽極酸化処理工程に続いて、第3陽極酸化処理工程を行ってもよい。
第3陽極酸化処理工程における陽極酸化処理は、第2陽極酸化処理工程と同様の方法により、液成分、電流密度、時間等を、求められる支持体表面の面状に応じて適宜設定することにより行えばよい。
【0345】
〔親水化処理工程〕
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法は、上述した極酸化処理工程の後、親水化処理を施す親水化処理工程を有していてもよい。親水化処理としては、特開2005-254638号公報の段落0109~段落0114に開示される公知の方法が使用できる。
【0346】
ケイ酸ソーダ(即ち、ケイ酸ナトリウム)、ケイ酸カリ(即ち、ケイ酸カリウム)等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸漬させる方法等により、親水化処理を行うことが好ましい。
【0347】
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書及び米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法及び手順に従って行うことができる。
【0348】
本開示の陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体としては、上記アルミニウム板に対して、以下のA~Dの態様に示す各処理を、以下に示す順に施して得られる支持体が好ましく、耐刷性の点から、特にA態様が好ましい。以下の各処理の間に水洗を行うことが望ましい。ただし、連続して行う2つの工程(即ち、処理)が同じ組成の液を使用する場合は水洗を省いてもよい。
【0349】
〔A態様〕
(2)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(3)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(4)塩酸または硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理(第1電気化学的粗面化処理)
(5)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(6)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(7)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理(第2電気化学的粗面化処理)
(8)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第3アルカリエッチング処理)
(9)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第3デスマット処理)
(10)陽極酸化処理(第1陽極酸化処理(硫酸)、ポアワイド処理、及び、第2陽極酸化処理(硫酸))
(11)親水化処理
上記A態様によれば、上述の態様2に係るアルミニウム支持体が得られる。
【0350】
〔B態様〕
(2)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(3)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(12)塩酸または硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理
(5)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(6)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(10)陽極酸化処理(第1陽極酸化処理(硫酸)、及び、ポアワイド処理)
(11)親水化処理
上記B態様によれば、上述の態様1に係るアルミニウム支持体が得られる。
【0351】
〔C態様〕
(2)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(3)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(12)塩酸または硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理
(5)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(6)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(10)陽極酸化処理(第1陽極酸化処理(リン酸)、及び、第2陽極酸化処理(硫酸))
(11)親水化処理
上記C態様によれば、上述の態様2に係るアルミニウム支持体が得られる。
【0352】
〔D態様〕
(2)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(3)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(12)塩酸または硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理
(5)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(6)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(10)陽極酸化処理(第1陽極酸化処理(リン酸))
(11)親水化処理
上記D態様によれば、上述の態様3に係るアルミニウム支持体が得られる。
【0353】
上記A~Dの態様の(2)の処理の前に、必要に応じて、(1)機械的粗面化処理を実施してもよい。耐刷性などの観点からは、(1)の処理は各態様に含まれないほうが好ましい。
ここで、上記(1)~(12)における機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理、化学エッチング処理、陽極酸化処理及び親水化処理は、上述した処理方法、条件と同様の方法で行うことができるが、以下に説明する処理方法、条件で施すことが好ましい。
【0354】
機械的粗面化処理は、毛径が0.2mm~1.61mmの回転するナイロンブラシロールと、アルミニウム板表面に供給されるスラリー液で機械的に粗面化処理することが好ましい。研磨剤としては公知の物が使用できるが、珪砂、石英、水酸化アルミニウムまたはこれらの混合物が好ましい。スラリー液の比重(g/cm3)は1.05g/cm3~1.3g/cm3が好ましい。勿論、スラリー液を吹き付ける方式、ワイヤーブラシを用いる方式、凹凸を付けた圧延ロールの表面形状をアルミニウム板に転写する方式などを用いてもよい。
【0355】
アルカリ水溶液中での化学エッチング処理(即ち、第1アルカリエッチング処理、第2アルカリエッチング処理、及び、第3アルカリエッチング処理)に用いるアルカリ水溶液の濃度は1質量%~30質量%が好ましく、アルミニウム及びアルミニウム合金中に含有する合金成分を0質量%~10質量%含有していてもよい。
アルカリ水溶液としては、特に苛性ソーダを主体とする水溶液が好ましい。液温は常温(25℃)~95℃で、1秒間~120秒間処理することが好ましい。
エッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うことが好ましい。
【0356】
第1アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、0.5g/m2~30g/m2が好ましく、1.0g/m2~20g/m2がより好ましく、3.0g/m2~15g/m2が更に好ましい。
第2アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、0.001g/m2~30g/m2が好ましく、0.1g/m2~4g/m2がより好ましく、0.2g/m2~1.5g/m2が更に好ましい。
第3アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、0.001g/m2~30g/m2が好ましく、0.01g/m2~0.8g/m2がより好ましく、0.02g/m2~0.3g/m2が更に好ましい。
【0357】
酸性水溶液中で化学エッチング処理(即ち、第1アルカリエッチング処理、第2アルカリエッチング処理、及び、第3デスマット処理)では、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2以上の酸を含む混酸が好適に用いられる。酸性水溶液の濃度は0.5質量%~60質量%が好ましい。酸性水溶液中にはアルミニウム及びアルミニウム合金中に含有する合金成分が0質量%~5質量%溶解していてもよい。
液温は常温から95℃で実施され、処理時間は1秒~120秒が好ましい。デスマット処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うのが好ましい。
【0358】
電気化学的粗面化処理に用いられる水溶液について説明する。
第1電気化学的粗面化処理で用いる硝酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液を使用でき、1g/L~100g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン;塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムなどの塩酸イオン;等を有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L~飽和濃度まで添加して使用することができる。
硝酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。
具体的には、硝酸0.5質量%~2質量%水溶液中にアルミニウムイオンが3g/L~50g/Lとなるように塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムを添加した液を用いるのが好ましい。
液温は10℃~90℃が好ましく、40℃~80℃がより好ましい。
【0359】
第2電気化学的粗面化処理で用いる塩酸を主体とする水溶液は、通常の直流又は交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液を使用でき、1g/L~100g/Lの塩酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン;塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムなどの塩酸イオン;等を有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L~飽和まで添加して使用することができる。
塩酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。
具体的には、塩酸0.5質量%~2質量%水溶液中にアルミニウムイオンが3g/L~50g/Lとなるように塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムを添加した液を用いるのが好ましい。
液温は10℃~60℃が好ましく、20℃~50℃がより好ましい。なお、次亜塩素酸を添加してもよい。
【0360】
一方、B態様における塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理で用いる塩酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液を使用でき、1g/L~100g/Lの塩酸水溶液に、硫酸を0g/L~30g/L添加して使用することができる。この水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン;塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムなどの塩酸イオン;等を有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L~飽和濃度まで添加して使用することができる。
塩酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。
具体的には、硝酸0.5質量%~2質量%水溶液中に、アルミニウムイオンが3g/L~50g/Lとなるように塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を添加した液を用いるのが好ましい。
液温は10℃~60℃が好ましく、20℃~50℃がより好ましい。なお、次亜塩素酸を添加してもよい。
【0361】
電気化学的粗面化処理の交流電源波形は、サイン波、矩形波、台形波、三角波などを用いることができる。周波数は0.1Hz~250Hzが好ましい。
【0362】
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフを
図6に示す。
図6において、taはアノード反応時間、tcはカソード反応時間、tpは電流が0からピークに達するまでの時間、Iaはアノードサイクル側のピーク時の電流、Icはカソードサイクル側のピーク時の電流である。台形波において、電流が0からピークに達するまでの時間tpは1ms~10msが好ましい。
電源回路のインピーダンスの影響のため、tpが1以上であると電流波形の立ち上がり時必要な電源電圧が小さくなり、電源の設備コストの点から好ましい。tpが10ms以下であれば、電解液中の微量成分の影響を受けにくくなり均一な粗面化が行われやすくなる。
電気化学的な粗面化に用いる交流の1サイクルの条件は、アルミニウム板のアノード反応時間taに対するカソード反応時間tcの比tc/taが1~20、アルミニウム板がアノード時の電気量Qcとアノード時の電気量Qaの比Qc/Qaが0.3~20、及び、アノード反応時間taが5ms~1,000ms、の範囲にあることが好ましい。tc/taは2.5~15がより好ましい。Qc/Qaは2.5~15がより好ましい。電流密度は台形波のピーク値で電流のアノードサイクル側Ia、カソードサイクル側Icともに10A/dm
2~200A/dm
2が好ましい。Ic/Iaは0.3~20の範囲にあることが好ましい。電気化学的な粗面化が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和は25C/dm
2~1,000C/dm
2が好ましい。
【0363】
交流を用いた電気化学的な粗面化に用いる電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型など公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5-195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。
【0364】
交流を用いた電気化学的な粗面化には
図7に示した装置を用いることができる。
図7は、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
図7において、50は主電解槽、51は交流電源、52はラジアルドラムローラ、53a,53bは主極、54は電解液供給口、55は電解液、56はスリット、57は電解液通路、58は補助陽極、60は補助陽極槽、Wはアルミニウム板である。電解槽を2つ以上用いるときには、電解条件は同じでもよいし、異なっていてもよい。
アルミニウム板Wは主電解槽50中に浸漬して配置されたラジアルドラムローラ52に巻装され、搬送過程で交流電源51に接続する主極53a及び53bにより電解処理される。電解液55は電解液供給口54からスリット56を通じてラジアルドラムローラ52と主極53a及び53bとの間の電解液通路57に供給される。主電解槽50で処理されたアルミニウム板Wは次いで補助陽極槽60で電解処理される。補助陽極槽60には補助陽極58がアルミニウム板Wと対向配置されており、電解液55が補助陽極58とアルミニウム板Wとの間の空間を流れるように供給される。
【0365】
支持体は、必要に応じて、画像記録層とは反対側の面に、特開平5-45885号公報に記載の有機高分子化合物又は特開平6-35174号公報に記載のケイ素のアルコキシ化合物等を含むバックコート層を有していてもよい。
【0366】
<下塗り層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性の低下を抑制しながら現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ効果も有する。
【0367】
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
【0368】
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、-PO3H2、-OPO3H2、-CONHSO2-、-SO2NHSO2-、-COCH2COCH3が好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、上記極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
【0369】
具体的には、特開平10-282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2-304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005-238816号、特開2005-125749号、特開2006-239867号、特開2006-215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005-125749号及び特開2006-188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
【0370】
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol~10.0mmol、より好ましくは0.2mmol~5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万~30万がより好ましい。
【0371】
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6-テトラヒドロキシ-p-キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)等を含有してもよい。
【0372】
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1mg/m2~100mg/m2が好ましく、1mg/m2~30mg/m2がより好ましい。
【0373】
(平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法)
本開示に係る平版印刷版原版を画像露光して現像処理を行うことで平版印刷版を作製することができる。
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程(以下、「機上現像工程」ともいう。)と、を含むことが好ましい。
本開示に係る平版印刷方法は、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版を画像様に露光する工程(露光工程)と、印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程(機上現像工程)と、得られた平版印刷版により印刷する工程(印刷工程)と、を含むことが好ましい。
以下、本開示に係る平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法について、各工程の好ましい態様を順に説明する。なお、本開示に係る平版印刷版原版は、現像液によっても現像可能である。
以下、平版印刷版の作製方法における露光工程及び機上現像工程について説明するが、本開示に係る平版印刷版の作製方法における露光工程と、本開示に係る平版印刷方法における露光工程とは同様の工程であり、本開示に係る平版印刷版の作製方法における機上現像工程と、本開示に係る平版印刷方法における機上現像工程とは同様の工程である。
【0374】
<露光工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程を含むことが好ましい。本開示に係る平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光されることが好ましい。
光源の波長は750nm~1,400nmが好ましく用いられる。750nm~1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10mJ/cm2~300mJ/cm2であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、及びフラットベッド方式等のいずれでもよい。
画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。機上現像の場合には、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
【0375】
<機上現像工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する機上現像工程を含むことが好ましい。
以下に、機上現像方式について説明する。
【0376】
〔機上現像方式〕
機上現像方式においては、画像露光された平版印刷版原版は、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給し、非画像部の画像記録層が除去されて平版印刷版が作製されることが好ましい。
すなわち、平版印刷版原版を画像露光後、何らの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、あるいは、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光し、ついで、油性インキと水性成分とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された油性インキ及び水性成分のいずれか又は両方によって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。一方、露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。最初に版面に供給されるのは、油性インキでもよく、水性成分でもよいが、水性成分が除去された画像記録層の成分によって汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給することが好ましい。このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。油性インキ及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキ及び湿し水が好適に用いられる。
【0377】
上記本開示に係る平版印刷版原版を画像露光するレーザーとしては、光源の波長は300nm~450nm又は750nm~1,400nmが好ましく用いられる。300nm~450nmの光源の場合は、この波長領域に吸収極大を有する増感色素を画像記録層に含有する平版印刷版原版が好ましく用いられ、750nm~1,400nmの光源は上述したものが好ましく用いられる。300nm~450nmの光源としては、半導体レーザーが好適である。
【0378】
<印刷工程>
本開示に係る平版印刷方法は、平版印刷版に印刷インキを供給して記録媒体を印刷する印刷工程を含む。
印刷インキとしては、特に制限はなく、所望に応じ、種々の公知のインキを用いることができる。また、印刷インキとしては、油性インキ又は紫外線硬化型インキ(UVインキ)が好ましく挙げられる。
また、上記印刷工程においては、必要に応じ、湿し水を供給してもよい。
また、上記印刷工程は、印刷機を停止することなく、上記機上現像工程に連続して行われてもよい。
記録媒体としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の記録媒体を用いることができる。
【0379】
本開示に係る平版印刷版原版からの平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法においては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。このような加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度及び耐刷性の向上や感度の安定化等の利点が生じ得る。現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。上記態様であると、非画像部が硬化してしまう等の問題を防ぐことができる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用することが好ましく、100℃~500℃の範囲であることが好ましい。上記範囲であると、十分な画像強化作用が得られまた、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を抑制することができる。
【実施例】
【0380】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成繰り返し単位の比率はモル百分率である。また、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。
【0381】
<支持体の作製>
厚さ0.3mmの材質1Sのアルミニウム合金板に対し、特開2012-158022号公報の段落0126に記載の(A-a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)から段落0134に記載の(A-i)酸性水溶液中でのデスマット処理を実施した。
次に、特開2012-158022号公報の段落0135に記載の(A-j)第1段階の陽極酸化処理から段落0138に記載の(A-m)第3段階の陽極酸化処理の各処理条件を適宜調整して、平均系35nm、深さ100nmの大径孔部と、平均径10nm、深さ1,000nmの小径孔部を有し、大径孔部の平均径に対する大径孔部の深さの比が2.9である陽極酸化皮膜を形成し、アルミニウム支持体Aを得た。
なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラーで液切りを行った。
【0382】
<<ポリマー粒子A-1の合成、官能基A:カルボキシ基>>
下記の合成スキームに従って、ポリマー粒子A-1を合成した。
三口フラスコに、下記化合物(1)40部、下記化合物(2)10部、及び、蒸留水950部を加え、窒素雰囲気下で撹拌し、70℃に昇温した。次に、過硫酸カリウム1.9gを加え、5時間撹拌した。その後、95℃に昇温し、2時間撹拌した。反応液を室温(25℃、以下同様)に放冷し、ポリマー粒子A-1の分散液(固形分濃度:5質量%)を得た。ポリマー粒子A-1の平均粒径は180nmであった。
なお、ポリマー粒子A-1の平均粒径は、既述の方法により測定した。
【0383】
【0384】
<<ポリマー粒子A-2、A-4、A-7、A-11、及び、A-13~A-16>>
表1に記載の樹脂組成となるように、使用するモノマー及びその使用量を適宜変更した以外は、上記ポリマー粒子A-1と同様の方法により合成を行った。
【0385】
<<樹脂B-1の合成、官能基B:第三級アミノ基>>
下記の合成スキームに従って、樹脂B-1を合成した。3つ口フラスコに下記化合物(3)25g、下記化合物(4)25部、1-メトキシ2-プロパノール70部を加え、窒素雰囲気下で撹拌し80℃に昇温した。ジメチル2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.5部を加え6時間反応し、樹脂B-1を得た。得られた樹脂B-1の数平均分子量は36,000だった。
なお、樹脂B-1の平均粒径は既述の方法により測定した。
【0386】
【0387】
<<樹脂B-6の合成、官能基B:第三級アミノ基>>
3つ口フラスコに化合物A:41.7部、化合物B:26.4部、MFG(1-メトキシ-2-プロパノール):102.16部、ジペンタエリスリトールヘキサ(3-メルカプトプロピオネート):0.705部、開始剤V601(アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、富士フイルム和光純薬(株)製):0.124部を入れ、80℃で6時間加熱し、中間体Cを得た。MFG:126部で希釈したのち、アクリル酸:24.3部とテトラブチルアンモニウムブロミド5.4部を入れ、90℃で16時間加熱し、中間体Dを得た。得られた中間体溶液(固形分濃度:30質量%)を50部とジエチルアミン0.8部を加え80℃で30分間加熱し、目的のB-6の固形分濃度:30質量%MFG溶液を51部得た。GPCによる分子量測定の結果、重量平均分子量は70,000であった。
【0388】
【0389】
<<樹脂B-3~B-6、B-6-2、B-9、及び、B-12~B-15>>
表1に記載の樹脂組成となるように、使用するモノマー及びその使用量を適宜変更した以外は、上記樹脂B-1と同様の方法により合成を行った。
【0390】
〔コアシェル粒子CS-1の調製〕
樹脂A-1の35質量%水溶液2部と樹脂B-13の7.5質量%MFG溶液8部とを混合し、60℃で30分撹拌したのち、200メッシュのナイロンろ布でろ過して粒子液を得た。
コアシェル粒子CS-1は、樹脂Bの被覆量が、樹脂Aの全質量に対し、30質量%であり、算術平均粒径は190nmであった。
【0391】
〔コアシェル粒子CS-2~CS-16並びにCS-C1及びCS-C2の調製〕
使用するポリマー粒子及び樹脂B並びにその使用量を適宜変更した以外は、上記コアシェル粒子CS-1と同様の方法により調製した。
【0392】
<平版印刷版原版の形成>
上記支持体上に、下記組成の下塗り液(1)を乾燥塗布量が20mg/m2になるよう塗布し、100℃30秒間オーブンで乾燥し、下塗り層を有する支持体を作製した。
下塗り層上に、下記画像記録層塗布液(1)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥して乾燥塗布量0.60g/m2(膜厚=約0.60μm)の画像記録層を形成し、平版印刷版原版を得た。
更にその後、表1において、保護層が「あり」の場合、画像記録層上に、下記組成の保護層塗布液をバー塗布した後、120℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2の保護層を形成した。
【0393】
〔下塗り液(1)〕
・下記の下塗り化合物1:0.18部
・メタノール:55.24部
・蒸留水:6.15部
【0394】
-下塗り化合物1の合成-
<<モノマーM-1の精製>>
ライトエステル P-1M(2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、共栄社化学(株)製)420部、ジエチレングリコールジブチルエーテル1,050部及び蒸留水1,050部を分液ロートに加え、激しく撹拌した後静置した。上層を廃棄した後、ジエチレングリコールジブチルエーテル1,050部を加え、激しく撹拌した後静置した。上層を廃棄してモノマーM-1の水溶液(固形分換算10.5質量%)を1,300部得た。
【0395】
<<下塗り化合物1の合成>>
三口フラスコに、蒸留水を53.73部、以下に示すモノマーM-2を3.66部加え、窒素雰囲気下で55℃に昇温した。次に、以下に示す滴下液1を2時間掛けて滴下し、30分撹拌した後、VA-046B(富士フイルム和光純薬(株)製)0.386部を加え、80℃に昇温し、1.5時間撹拌した。反応液を室温(25℃)に戻した後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを8.0に調整したのち、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-OH-TEMPO)を0.005部加えた。以上の操作により、下塗り化合物1の水溶液を180部得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリエチレングリコール換算値とした重量平均分子量(Mw)は17万であった。
【0396】
【0397】
<<滴下液1>>
・上記モノマーM-1水溶液:87.59部
・上記モノマーM-2:14.63部
・VA-046B(2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート、富士フイルム和光純薬(株)製):0.386部
・蒸留水:20.95部
【0398】
<画像記録層塗布液(1)>
・表1に記載の赤外線吸収剤(下記構造の化合物):表1に記載の量
・表1に記載の重合性化合物(下記構造の化合物):表1に記載の量
・表1に記載の熱可塑性樹脂:表1に記載の量
・BYK306(Byk Chemie社):60部
・1-メトキシ-2-プロパノール(MFG):8,000部
・メチルエチルケトン:1,000部
・表1に記載の電子受容型重合開始剤:表1に記載の量
・表1に記載の電子供与型重合開始剤:表1に記載の量、「なし」と記載の場合は0部
・現像促進剤(下記化合物):20部
・感脂化剤(下記化合物):50部
・界面活性剤(下記化合物、Mw=13,000):4部
【0399】
・現像促進剤:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、SP値の極性項の値=6.4
・感脂化剤:1,4-ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート、SP値=16.2
【0400】
【0401】
<保護層塗布液の調製>
・無機層状化合物分散液(1)〔下記〕:1.5部
・ポリビニルアルコール(CKS50、日本合成化学工業(株)製、スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液:0.55部
・ポリビニルアルコール(PVA-405、(株)クラレ製、けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液:0.03部
・界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)1質量%水溶液:0.86部
・イオン交換水:6.0部
【0402】
上記保護層塗布液に用いた無機層状化合物分散液(1)の調製法を以下に示す。
【0403】
-無機層状化合物分散液(1)の調製-
イオン交換水193.6部に合成雲母(ソマシフME-100、コープケミカル(株)製)6.4部を添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0404】
<評価>
〔UV耐刷性〕
得られた平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T-6000IIIにて、外面ドラム回転数1,000rpm(revolutions per minute)、レーザー出力70%、解像度2,400dpi(dot per inch、1 inch=2.54cm)の条件で露光した。露光画像にはベタ画像、20μmドットFMスクリーンの50%網点チャート及び非画像部を含むようにした。
得られた露光済み平版印刷原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。版胴に対して給水ローラーを5%減速させた上で、Ecolity-2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とUVインキ(T&K UV OFS K-HS墨GE-M((株)T&K TOKA製))とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート(三菱製紙(株)製、連量:76.5kg)紙に印刷を50,000枚行った。
印刷枚数の増加にともない、徐々に画像記録層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン3%網点の網点面積率をX-Rite(X-Rite社製)で計測した値が印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数としてUV耐刷性を評価した。
【0405】
〔分散安定性〕
得られたコアシェル粒子について、塗布溶媒に対する分散安定性を評価した。
まず、塗布溶媒(メチルエチルケトン(MEK)/MFG=85/15);9gに得られたコアシェル粒子分散液を1gそれぞれ加え、40℃の条件下で30分間撹拌し評価溶液を調製した。
その後、評価液を60℃で1週間静置させたものを200メッシュのナイロン網でろ過し、静置前の評価液の重さからろ液の重さの差からろ液の回収率(%)を求め、下記の基準に従い分散安定性の評価を行った。ろ液の回収率が高いほど、分散安定性に優れるといえる。
【0406】
-評価基準-
A:ろ液の回収率が90%以上である。
B:ろ液の回収率が70%以上90%未満である。
C:ろ液の回収率が70%未満である。
【0407】
〔面状〕
得られた平版印刷版原版の支持体とは反対側の最外層の表面(以下、「平版印刷版原版の表面」ともいう。)の面状をSEM(倍率:1,000倍)で観察し、得られた画像を下記の基準に従って面性の評価を行った。
平版印刷版原版の表面のデコボコが少ないほど、コアシェル粒子の分散性に優れているといえる。
【0408】
-評価基準-
A:平版印刷版原版の表面のデコボコが5個以下であり、かつ、表面が平らに見える。
B:平版印刷版原版の表面5μm四方の面積に、デコボコが5個を超え20個以下である。
C:平版印刷版原版の表面5μm四方の面積に、デコボコが20個を超える。
【0409】
【0410】
表1における「C=C価」は、エチレン性不飽和基価を表す。また、表1における「分子量」は、数平均分子量Mnである。
表1に記載の化合物の詳細は下記の通りである。
【0411】
A-1、A-2、A-4、A-7、A-11、及び、A-13~A-16:下記に示す樹脂
【0412】
【0413】
なお、A-1におけるa,bの値は、実施例1ではa=80,b=20、実施例2ではa=90,b=10、実施例3ではa=70,b=30であった。
【0414】
【0415】
なお、A-13は、コア部の内部では左に示す樹脂が多く存在し、コア部の外側に行くにしたがい、右に示す樹脂Aが多く存在する粒子である。
【0416】
<A-13の作製>
【0417】
【0418】
3つ口フラスコに蒸留水77.3部、ロンガリット0.1543部、1質量%エチレンジアミン四酢酸水溶液0.5144部、0.2質量%硫酸鉄(II)7水和物0.643部を加え、窒素雰囲気化で撹拌し、60℃に昇温した。上記化合物(1)27.4部、上記化合物(2)8.23部、アデカリアソープ(SR-10、アニオン界面活性剤、(株)ADEKA製)2.057部、t-ブチルヒドロペルオキシド70質量%水溶液を0.203部、蒸留水20.61部の乳化液を30分かけて滴下し、その後30分加熱撹拌した。続いて上記化合物(2)2.061部、上記化合物(3)8.24部、アデカリアソープ(SR-10)0.052部、t-ブチルヒドロペルオキシド70質量%水溶液を0.025部、蒸留水5.15部の乳化液を10分かけて上記分散液に滴下し、その後2時間加熱撹拌し、ポリマー粒子A-13分散液(35%)を得た。得られた分散液中のポリマー粒子A-13のメジアン径は100nmであった。
【0419】
B-1、B-3、B-4、B-5、B-6、B-6-2、B-9、及び、B-12~B-15:下記に示す樹脂
【0420】
【0421】
【0422】
なお、B-6における*は、左に示す重合鎖との結合位置を表す。
【0423】
【0424】
【0425】
【0426】
C-A1、C-A2、C-B1及びC-B2:下記に示す樹脂
C2:下記構造の化合物
なお、CS-2において、コア部を構成する樹脂に含まれる末端の-OCH3と、シェル部を構成する樹脂に含まれる末端の-SO3
-は、結合又は相互作用しない。
【0427】
【0428】
〔電子供与型重合開始剤〕
R-1:下記構造の化合物 HOMO(eV)=-5.905eV
【0429】
【0430】
〔電子受容型重合開始剤〕
IA-1:下記構造の化合物、LUMO=-3.02eV
IA-2:下記構造の化合物
IA-3:下記構造の化合物、LUMO=-3.02eV
【0431】
【0432】
〔赤外線吸収剤〕
IR-1:下記構造の化合物、HOMO=-5.27eV、LUMO=-3.66eV
IR-2:下記構造の化合物
IR-3:下記構造の化合物、HOMO=-5.35eV、LUMO=-3.73eV
【0433】
【0434】
【0435】
〔熱可塑性樹脂〕
熱可塑性樹脂:下記構造の樹脂
【0436】
【0437】
上記式中、各構成単位の含有量(括弧右下の添え字)は質量比を表し、エチレンオキシ構造の括弧右下の添え字は繰り返し数を表す。
【0438】
〔重合性化合物〕
M-1:トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、NKエステル A-9300、新中村化学工業(株)製
M-2:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、SR-399、サートマー社製
M-3:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、A-DPH、新中村化学工業(株)製
M-4:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー、UA-510H、共栄社化学(株)製
M-5:エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ATM-4E、新中村化学工業(株)製
【0439】
表1に記載した結果から、実施例に係る平版印刷版原版は、比較例に係る平版印刷版原版と比べて、UV耐刷性に優れた平版印刷版が得られることがわかる。
また、表1に記載した結果から、実施例に係る平版印刷版原版は、分散安定性、及び、面状に優れることがわかる。
【0440】
2019年1月31日に出願された日本国特許出願第2019-016538号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0441】
10 平版印刷版原版、12 アルミニウム支持体、16 画像記録層、14 下塗り層、18 アルミニウム板、20 陽極酸化皮膜、24 大径孔部、26 小径孔部、50 主電解槽、52 ラジアルドラムローラ、51 交流電源、53a、53b主極、55 電解液、54 電解液供給口、56 スリット、57 電解液通路、60 補助陽極槽、58 補助陽極、Ex 電解液排出口、S 給液、W アルミニウム板、1 アルミニウム板、2及び4 ローラ状ブラシ、3 研磨スラリー液、5、6、7及び8 支持ローラ、610 陽極酸化処理装置、616 アルミニウム板、618 電解液、612 給電槽、614 電解処理槽、616 アルミニウム板、620 給電電極、622 ローラ、624 ニップローラ、626 電解液、628 ローラ、630 電解電極、634 直流電源、A 深さ、Y 連通位置、ECa アルミニウム板のアノード反応の電流、ECb アルミニウム板のカソード反応の電流