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特許7185058硬化性組成物、硬化物、カラーフィルタ、固体撮像素子及び画像表示装置
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  • 特許-硬化性組成物、硬化物、カラーフィルタ、固体撮像素子及び画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物、カラーフィルタ、固体撮像素子及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20221129BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20221129BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20221129BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221129BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20221129BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221129BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20221129BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20221129BHJP
   C08G 63/688 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
G02B5/20 101
C08K5/37
C08L67/00
C08L101/00
G02F1/1335 505
G03F7/004 501
G03F7/004 505
G03F7/032 502
H01L27/146 D
C08G63/688
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021542726
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(86)【国際出願番号】 JP2020030729
(87)【国際公開番号】W WO2021039409
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2019154274
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】出井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】金子 祐士
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-065040(JP,A)
【文献】特開2016-143061(JP,A)
【文献】国際公開第2018/135249(WO,A1)
【文献】特開2013-225112(JP,A)
【文献】特開2017-165820(JP,A)
【文献】特開2018-090788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C08K 5/37
C08L 67/00
C08L 101/00
G02F 1/1335
G03F 7/004
G03F 7/032
H01L 27/146
C08G 63/688
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤、
樹脂、及び、
チオール化合物を含み、
チオール価が、6×10-6mmоl/g~6×10-4mmоl/gである
硬化性組成物。
【請求項2】
着色剤、
樹脂、及び、
チオール化合物を含み、
前記チオール化合物の含有量が、1ppm~99ppmである
硬化性組成物。
【請求項3】
前記樹脂が、カルボキシ基及びグラフト鎖を有する樹脂を含む請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記樹脂が、主鎖に直接結合したカルボキシ基を有し、かつ側鎖にグラフト鎖を有するポリエステル樹脂である請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記グラフト鎖が、付加重合型樹脂鎖である請求項3又は請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記グラフト鎖が、アクリル樹脂鎖である請求項3~請求項5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記チオール化合物が、エステル結合、及び、アミド結合よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を2つ以上とチオール基を1つ以上とを有する化合物を含む請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記チオール化合物が、カルボキシ基を2つ以上とチオール基を1つ以上とを有する化合物を含む請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記チオール化合物が、下記化合物A~化合物Dの少なくとも1種の化合物を含む請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
化合物A:ヒドロキシ基を有するチオール化合物と多価カルボン酸化合物又は多価カルボン酸無水物とを縮合した化合物
化合物B:アミノ基を有するチオール化合物と多価カルボン酸化合物又は多価カルボン酸無水物とを縮合した化合物
化合物C:2つ以上のカルボキシ基を有するチオール化合物と多価アルコール化合物とを縮合した化合物
化合物D:2つ以上のカルボキシ基を有するチオール化合物と多価アミン化合物とを縮合した化合物
【請求項10】
前記チオール化合物が、分子量が300以上であるチオール化合物を含む請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
重合性化合物、及び、光重合開始剤を更に含む請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
紫外線吸収剤を更に含む請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
重合禁止剤を更に含む請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
前記重合禁止剤が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、及び、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシルよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む請求項13に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項16】
請求項15に記載の硬化物を備えるカラーフィルタ。
【請求項17】
請求項16に記載のカラーフィルタを有する固体撮像素子。
【請求項18】
請求項16に記載のカラーフィルタを有する画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化性組成物、硬化物、カラーフィルタ、固体撮像素子及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話等の普及から、電荷結合素子(CCD)イメージセンサなどの固体撮像素子の需要が大きく伸びている。ディスプレイや光学素子のキーデバイスとしてカラーフィルタが使用されている。カラーフィルタは、通常、赤、緑、及び青の3原色の画素(着色パターン)を備えており、透過光を3原色へ分解する役割を果たしている。カラーフィルタは、顔料などの着色剤を含む組成物を用いて形成されている。
また、従来の硬化性組成物としては、例えば、特許文献1又は2に記載の硬化し組成物が知られている。
【0003】
特許文献1:特開2018-205533号公報
特許文献2:特開2018-169600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る実施形態が解決しようとする課題は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状に優れる硬化性組成物を提供することである。
また、本開示に係る実施形態が解決しようとする他の課題は、上記硬化性組成物の硬化物、上記硬化物を備えるカラーフィルタ、又は、上記カラーフィルタを備える固体撮像素子若しくは画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 着色剤、樹脂、及び、チオール化合物を含み、チオール価が、6×10-6mmоl/g~6×10-4mmоl/gである硬化性組成物。
<2> 着色剤、樹脂、及び、チオール化合物を含み、上記チオール化合物の含有量が、1ppm~99ppmである硬化性組成物。
<3> 上記樹脂が、カルボキシ基及びグラフト鎖を有する樹脂を含む<1>又は<2>に記載の硬化性組成物。
<4> 上記樹脂が、主鎖に直接結合したカルボキシ基を有し、かつ側鎖にグラフト鎖を有するポリエステル樹脂である<3>に記載の硬化性組成物。
<5> 上記グラフト鎖が、付加重合型樹脂鎖である<3>又は<4>に記載の硬化性組成物。
<6> 上記グラフト鎖が、アクリル樹脂鎖である<3>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<7> 上記樹脂が、分子内に2つのヒドロキシ基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)の存在下に、エチレン性不飽和単量体をラジカル重合して生成され、片末端領域に2つのヒドロキシ基を有するビニル重合体(a)中のヒドロキシ基と、テトラカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基と、を反応させて得られた樹脂である<1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<8> 上記チオール化合物が、エステル結合、及び、アミド結合よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を2つ以上とチオール基を1つ以上とを有する化合物を含む<1>~<7>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<9> 上記チオール化合物が、カルボキシ基を2つ以上とチオール基を1つ以上とを有する化合物を含む<1>~<8>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<10> 上記チオール化合物が、下記化合物A~化合物Dの少なくとも1種の化合物を含む<1>~<9>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
化合物A:ヒドロキシ基を有するチオール化合物と多価カルボン酸化合物又は多価カルボン酸無水物とを縮合した化合物
化合物B:アミノ基を有するチオール化合物と多価カルボン酸化合物又は多価カルボン酸無水物とを縮合した化合物
化合物C:2つ以上のカルボキシ基を有するチオール化合物と多価アルコール化合物とを縮合した化合物
化合物D:2つ以上のカルボキシ基を有するチオール化合物と多価アミン化合物とを縮合した化合物
<11> 上記チオール化合物が、分子量が300以上であるチオール化合物を含む<1>~<10>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<12> 重合性化合物、及び、光重合開始剤を更に含む<1>~<11>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<13> 紫外線吸収剤を更に含む<1>~<12>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<14> 重合禁止剤を更に含む<1>~<13>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<15> 上記重合禁止剤が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、及び、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシルよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む<14>に記載の硬化性組成物。
<16> <1>~<15>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
<17> <16>に記載の硬化物を備えるカラーフィルタ。
<18> <17>に記載のカラーフィルタを有する固体撮像素子。
<19> <17>に記載のカラーフィルタを有する画像表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る実施形態によれば、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状に優れる硬化性組成物が提供される。
また本開示に係る他の実施形態によれば、上記硬化性組成物の硬化物、上記硬化物を備えるカラーフィルタ、又は、上記カラーフィルタを備える固体撮像素子若しくは画像表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例におけるパターン上の硬化物におけるアンダーカット幅の測定位置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
更に、本開示において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
また、本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本開示において、特別な記載がない限り、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Pr」はプロピル基を、「Bu」はブチル基を、「Ph」はフェニル基を、それぞれ表す。
本開示において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本開示において、「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
本開示において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
本開示において、「主鎖」とは、樹脂を構成する高分子化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、上記結合鎖に環構造を有する場合は環構造全体を主鎖とし、「側鎖」とは、主鎖から枝分かれしている原子団を表す。
また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示において、顔料とは、溶剤に対して溶解しにくい着色剤を意味する。例えば、顔料は、23℃の水100g及び23℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに対する溶解度がいずれも0.1g以下であることが好ましく、0.01g以下であることがより好ましい。
以下、本開示を詳細に説明する。
【0009】
(硬化性組成物)
本開示に係る硬化性組成物の第一の実施態様は、着色剤、樹脂、及び、チオール化合物を含み、チオール価が、6×10-6mmоl/g~6×10-4mmоl/gである。
本開示に係る硬化性組成物の第二の実施態様は、着色剤、樹脂、及び、チオール化合物を含み、上記チオール化合物の含有量が、1ppm~99ppmである。
以下、単に「本開示に係る硬化性組成物」という場合は、本開示に係る硬化性組成物の第一の実施態様及び第二の実施態様の両方について述べるものとする。
本開示に係る硬化性組成物は、固体撮像素子用の硬化性組成物として好ましく用いることができる。
また、本開示に係る硬化性組成物は、カラーフィルタ用の硬化性組成物として好ましく用いることができる。具体的には、カラーフィルタの画素形成用の硬化性組成物として好ましく用いることができ、固体撮像素子に用いられるカラーフィルタの画素形成用の硬化性組成物としてより好ましく用いることができる。
【0010】
近年、イメージセンサの高画素化に伴いパターンの微細化及び薄膜化が進んでいる。これに伴い、従来の硬化性組成物では、得られるパターン状の硬化物の形状のうち、特に上記硬化物の端部の形状であるエッジ形状が十分でない場合があることを本発明者らは見出した。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、上記第一の実施態様、又は、上記第二の実施態様とすることにより、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状に優れることを見出した。
上記チオール化合物を含み、かつ、チオール価が、6×10-6mmоl/g~6×10-4mmоl/gであるか、又は、上記チオール化合物の含有量が、1ppm~99ppmであることにより、硬化性が向上し露光部の現像抑制性に優れ、特に現像時において、露光部の底部かつ端部における面方向の目減り(アンダーカット幅)が抑制され、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状に優れると推定している。
【0011】
また、本開示に係る硬化性組成物は、上記チオール化合物を含み、かつ、チオール価が、6×10-6mmоl/g~6×10-4mmоl/gであるか、又は、上記チオール化合物の含有量が、1ppm~99ppmであることにより、基板等の他の部材との界面における硬化性が向上し、得られる硬化物の密着性にも優れると推定している。
更に、本開示に係る硬化性組成物は、上記チオール化合物を含み、かつ、チオール価が、6×10-6mmоl/g~6×10-4mmоl/gであるか、又は、上記チオール化合物の含有量が、1ppm~99ppmであることにより、硬化性が向上し、また、露光部の形状及び現像抑制性、及び、非露光部の現像性に優れ、得られるパターン状の硬化物の欠陥も少ないと推定している。
【0012】
以下、本開示に係る硬化性組成物に含まれる各成分の詳細、及び、物性値等について説明する。
【0013】
<チオール化合物>
本開示に係る硬化性組成物の第一の実施態様は、チオール化合物を含み、チオール価が、6×10-6mmоl/g~6×10-4mmоl/gである。
本開示に係る硬化性組成物の第二の実施態様は、チオール化合物を含み、上記チオール化合物の含有量が、1ppm~99ppmである。
また、本開示に係る硬化性組成物は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、チオール価が、6×10-6mmоl/g~6×10-4mmоl/gであり、かつ、上記チオール化合物の含有量が、1ppm~99ppmであることが好ましい。
更に、本開示に係る硬化性組成物は、チオール化合物を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
【0014】
本開示に係る硬化性組成物の第一の実施態様は、チオール価が、6×10-6mmоl/g~6×10-4mmоl/gであり、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、1.0×10-5mmоl/g~5.0×10-4mmоl/gであることが好ましく、9.0×10-5mmоl/g~4.0×10-4mmоl/gであることがより好ましく、1.0×10-4mmоl/g~4.0×10-4mmоl/gであることが更に好ましく、2.5×10-4mmоl/g~4.0×10-4mmоl/gであることが特に好ましい。
本開示に係る硬化性組成物の第二の実施態様は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、チオール価が、6×10-6mmоl/g~6×10-4mmоl/gであることが好ましく、1.0×10-5mmоl/g~5.0×10-4mmоl/gであることがより好ましく、9.0×10-5mmоl/g~4.0×10-4mmоl/gであることが更に好ましく、1.0×10-4mmоl/g~4.0×10-4mmоl/gであることがより更に好ましく、2.5×10-4mmоl/g~4.0×10-4mmоl/gであることが特に好ましい。
【0015】
本開示における硬化性組成物のチオール価の測定方法は、以下の方法により測定するものとする。
1.呈色液の調製:5,5’-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)(DTNB)2.5mM、トリエチルアミン2.7mMとなるアセトン溶液を調製する。
2.検量線用サンプルの調製:3-メルカプトプロピオン酸が0.1M(mol/L)となるように高速液体クロマトグラフィ(HPLC)用の溶離液で希釈した溶液を作製する。
3.1.で調製した液に2.で調製した液を使用し3-メルカプトプロピオン酸が0.2mMになるように加えたサンプルを室温(25℃)で20分撹拌する。上記のサンプルを加えた3-メルカプトプロピオン酸が0.1ppm、1ppm、10ppm、100ppmになるように希釈した検量線用サンプルを作製する。
4.測定するサンプル10gと、1.で調製した液50mLとを混合した液を室温で20分撹拌し、100mLメスフラスコに反応液を入れアセトン5mLで洗いこみ、HPLC用の溶離液でメスアップする。
5.4.で得られたサンプルをフィルターろ過し、測定サンプルとする。
6.下記HPLCの測定により2-nitro-5-mercaptobenzoic acidを定量する。検量線サンプルの測定結果より検量線を取得し、それをもとに測定サンプル中に含まれるチオール基のmol量を算出しチオール価とする。
<<HPLCの測定条件>>
溶離液:リン酸及びトリエチルアミンを各0.2%含有する水溶液を作製し、メタノールと混合し、90/10(上記水溶液/メタノール)の比率に調整したもの
測定機器:Agilent-1200(アジレント・テクノロジー(株)製)
カラム:Phenomenex社製Synergi 4u Polar-RP 80A、250mm×4.60mm(内径)+ガードカラム
カラム温度:40℃
分析時間:15分
流速:1.0mL/min(最大送液圧力:182bar(18.2MPa))
注入量:5μL
検出波長:412nm
【0016】
本開示に係る硬化性組成物の第二の実施態様は、上記チオール化合物の含有量が、1ppm~99ppmであり、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、10ppm~80ppmであることが好ましく、20ppm~70ppmであることがより好ましく、30ppm~60ppmであることが特に好ましい。
本開示に係る硬化性組成物の第一の実施態様は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、上記チオール化合物の含有量が、1ppm~99ppmであることが好ましく、10ppm~80ppmであることがより好ましく、20ppm~70ppmであることが更に好ましく、30ppm~60ppmであることが特に好ましい。
なお、本開示において、ppmは、特に断りのない限り、質量ppmを表す。
【0017】
本開示における硬化性組成物のチオール化合物の含有量の測定方法は、以下の方法により測定するものとする。
1.Cu固定化カラム:キレート樹脂を充填した固相(MetaSEP IC-ME:ジーエルサイエンス社)に1,000ppmの硫酸銅水溶液を50mL通液して調製する。
2.上記金属固定化カラムを超純水10mL、メタノール5mL及びジクロロメタン5mLの順でカラムに通液させ、測定用の上記金属固定化カラムを調製する。
3.測定サンプル1gを10mLメスフラスコに入れジクロロメタンで希釈する。その液を上記金属固定化カラムに通しチオール化合物を吸着させたものを回収する。
4.3.でチオール化合物を吸着させた金属固定化カラムを熱分解ガスクロマトグラフ質量分析することで、吸着したチオール化合物が揮発する温度を確認する。
【0018】
<<熱分解ガスクロマトグラフ質量分析の測定条件>>
熱分解装置:マルチショットパイロライザー EGA/PY-3030D(フロンティア・ラボ社製)
熱分析条件:発生ガス分析
熱分解条件:炉温度50℃~800℃温度域(1分間保持)、インターフェース温度320℃
分析機器:6890N GC、5973N MSD(Agilent Technologies社製)
カラム:HP-5MS、30m(長さ)×0.25mm(内径)、0.25μm(膜厚)(Agilent Technologies社製)
スプリット比:1/50
キャリアーガス、流量:Heガス、1mL/分
注入口温度:250℃
オーブン温度:40℃(3分)→5℃/分→200℃(0分:達温)→10℃/分→320℃(3分)
質量範囲:m/z 10~500
【0019】
5.3.でチオール化合物を吸着させた金属固定化カラムを熱重量分析し、4.でチオール化合物が揮発する温度での重量変動量よりチオール化合物の含有量を算出した。
【0020】
<<熱重量分析の測定条件>>
分析機器:TGA 550(TAインスツルメント社製)
熱分析条件:10℃/分で昇温し、各チオール化合物が揮発する温度に達したら30分保持した。
【0021】
本開示におけるチオール化合物は、チオール基(メルカプト基)を1つ以上有する化合物であればよく、また、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。
本開示に係る硬化性組成物に含まれる上記チオール化合物は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、エステル結合、及び、アミド結合よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を2つ以上とチオール基を1つ以上とを有する化合物を含むことが好ましく、エステル結合を2つ以上とチオール基を1つ以上とを有する化合物を含むことがより好ましい。
また、上記チオール化合物は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、カルボキシ基を2つ以上とチオール基を1つ以上とを有する化合物を含むことが好ましく、エステル結合、及び、アミド結合よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を2つ以上とカルボキシ基を2つ以上とチオール基を1つ以上とを有する化合物を含むことがより好ましく、エステル結合を2つ以上とカルボキシ基を2つ以上とチオール基を1つ以上とを有する化合物を含むことが特に好ましい。
上記チオール化合物がカルボキシ基を有するチオール化合物を含む場合、上記カルボキシ基を有するチオール化合物におけるカルボキシ基の数は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、2~15であることが好ましい。
更に、上記チオール化合物は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、エチレン性不飽和結合を有していることが好ましい。
【0022】
更に、上記チオール化合物は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、下記化合物A~化合物Dの少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、下記化合物Aを含むことがより好ましい。
化合物A:ヒドロキシ基を有するチオール化合物と多価カルボン酸化合物又は多価カルボン酸無水物とを縮合した化合物
化合物B:アミノ基を有するチオール化合物と多価カルボン酸化合物又は多価カルボン酸無水物とを縮合した化合物
化合物C:2つ以上のカルボキシ基を有するチオール化合物と多価アルコール化合物とを縮合した化合物
化合物D:2つ以上のカルボキシ基を有するチオール化合物と多価アミン化合物とを縮合した化合物
【0023】
上記化合物Aの合成に用いられるヒドロキシ基を有するチオール化合物としては、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、1つ以上のヒドロキシ基と1つのチオール基とを有する化合物であることが好ましく、1つ又は2つのヒドロキシ基と1つのチオール基とを有する化合物であることがより好ましく、2つのヒドロキシ基と1つのチオール基とを有する化合物であることが特に好ましい。
上記化合物A又は上記化合物Bの合成に用いられる多価カルボン酸化合物又は多価カルボン酸無水物としては、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、2価~8価の多価カルボン酸化合物、又は、2価~8価の多価カルボン酸無水物であることが好ましく、2価若しくは4価の多価カルボン酸化合物、又は、2価若しくは4価の多価カルボン酸無水物であることがより好ましく、2価若しくは4価の多価カルボン酸無水物であることが更に好ましく、4価の多価カルボン酸無水物であることが特に好ましい。
また、上記化合物A又は上記化合物Bの合成に用いられる多価カルボン酸化合物又は多価カルボン酸無水物の炭素数としては、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、4~16であることが好ましく、2~12であることがより好ましく、10~12であることが特に好ましい。
更に、上記化合物A又は上記化合物Bの合成に用いられる多価カルボン酸化合物又は多価カルボン酸無水物としては、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、エチレン性不飽和結合を有していることが好ましい。
【0024】
上記化合物Bの合成に用いられるアミノ基を有するチオール化合物としては、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、1つ以上のアミノ基と1つのチオール基とを有する化合物であることが好ましく、1つ又は2つのアミノ基と1つのチオール基とを有する化合物であることがより好ましく、2つのアミノ基と1つのチオール基とを有する化合物であることが特に好ましい。
【0025】
上記化合物C又は上記化合物Dの合成に用いられる2つ以上のカルボキシ基を有するチオール化合物としては、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、2つ以上のカルボキシ基と1つのチオール基とを有する化合物であることが好ましく、2つ以上8つ以下のカルボキシ基と1つのチオール基とを有する化合物であることがより好ましく、2つのカルボキシ基と1つのチオール基とを有する化合物であることが特に好ましい。
上記化合物Cの合成に用いられる多価アルコール化合物としては、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、多価脂肪族アルコール化合物であることが好ましく、2価の脂肪族アルコール化合物であることがより好ましく、アルカンジオール化合物であることが特に好ましい。
また、上記化合物Cの合成に用いられる多価アルコール化合物の炭素数は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、2~10であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、3~6であることが特に好ましい。
【0026】
上記化合物Dの合成に用いられる多価アミン化合物としては、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、多価脂肪族アミン化合物であることが好ましく、2価の脂肪族アミン化合物であることがより好ましく、アルカンジアミン化合物であることが特に好ましい。
また、上記化合物Dの合成に用いられる多価アミン化合物の炭素数は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、2~10であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、3~6であることが特に好ましい。
【0027】
上記化合物A~上記化合物Dの合成に用いられるヒドロキシ基、アミノ基又は2つ以上のカルボキシ基を有するチオール化合物は、脂肪族チオール化合物であっても、芳香族チオール化合物であってもよいが、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、脂肪族チオール化合物であることが好ましい。
また、上記化合物A~上記化合物Dの合成に用いられるヒドロキシ基、アミノ基又は2つ以上のカルボキシ基を有するチオール化合物の炭素数は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、2~8であることが好ましく、2~6であることがより好ましく、3又は4であることが特に好ましい。
【0028】
上記化合物Aの合成に用いられるヒドロキシ基を有するチオール化合物と多価カルボン酸化合物又は多価カルボン酸無水物との使用比は、質量比で、5:1~1:5であることが好ましく、2.5:1~1:2.5であることがより好ましく、2:1~1:2であることが特に好ましい。
上記化合物Bに用いられるアミノ基を有するチオール化合物と多価カルボン酸化合物又は多価カルボン酸無水物との使用比は、質量比で、5:1~1:5であることが好ましく、2.5:1~1:2.5であることがより好ましく、2:1~1:2であることが特に好ましい。
上記化合物Cの合成に用いられる2つ以上のカルボキシ基を有するチオール化合物と多価アルコール化合物との使用比は、質量比で、5:1~1:5であることが好ましく、2.5:1~1:2.5であることがより好ましく、2:1~1:2であることが特に好ましい。
上記化合物Dの合成に用いられる2つ以上のカルボキシ基を有するチオール化合物と多価アミン化合物との使用比は、質量比で、5:1~1:5であることが好ましく、2.5:1~1:2.5であることがより好ましく、2:1~1:2であることが特に好ましい。
【0029】
また、上記チオール化合物は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、下記式(S-1)~式(S-3)のいずれかで表される構造を有する化合物を含むことが好ましく、下記式(S-1)又は式(S-2)で表される構造を有する化合物を含むことがより好ましく、下記式(S-1)で表される構造を有する化合物を含むことが特に好ましい。
更に、上記チオール化合物は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、下記式(S-1)~式(S-3)のいずれかで表される構造を2以上有する化合物を含むことがより好ましい。
【0030】
【化1】
【0031】
式(S-1)~式(S-3)中、Xs1~Xs3はそれぞれ独立に、O、NR又はCOOを表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Ls1は炭素数2~8のアルキレン基、又は、炭素数6~10のアリーレン基を表し、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
【0032】
式(S-1)におけるXs1及びXs2はそれぞれ独立に、O又はNRであることが好ましく、Oであることがより好ましい。
また、式(S-1)におけるXs1及びXs2は、同じ基であることが好ましい。
式(S-3)におけるXs3は、O又はNRであることが好ましく、Oであることがより好ましい。
式(S-3)におけるLs1は、炭素数2~8のアルキレン基、又は、フェニレン基であることが好ましく、炭素数2~8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2~8の直鎖アルキレン基であることが特に好ましい。
【0033】
上記チオール化合物は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、分子量300以上であるチオール化合物を含むことが好ましく、分子量300以上10万以下であるチオール化合物を含むことがより好ましく、分子量500以上8万以下であるチオール化合物を含むことが更に好ましく、分子量1,000以上5万以下であるチオール化合物を含むことが特に好ましい。
【0034】
上記チオール化合物の酸価は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、100mgKOH/g以上であることが好ましく、200mgKOH/g以上であることがより好ましく、200mgKOH/g以上800mgKOH/g以下であることが更に好ましく、200mgKOH/g以上600mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
本開示における化合物又は樹脂の酸価は、水酸化ナトリウム水溶液を用いた中和滴定により求める。具体的には、得られた化合物又は樹脂を溶媒に溶解させた溶液に、電位差測定法を用いて水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、樹脂の固形1gに含まれる酸のミリモル数を算出し、次に、その値を水酸化カリウム(KOH)の分子量56.1をかけることにより求める。なお、酸価の単位は、mgKOH/gである。
【0035】
上記チオール化合物としては、以下に示すものが好適に挙げられるが、これらに限定されてないことは言うまでもない。
T1-1:下記化合物、チオール価6.66mmоl/g、酸価747mgKOH/g
T1-2:下記化合物、チオール価5.05mmоl/g、酸価566mgKOH/g
【0036】
【化2】
【0037】
-化合物A:ヒドロキシ基を有するチオール化合物と多価カルボン酸化合物又は多価カルボン酸無水物とを縮合した化合物-
T2-1~T2-5:下記に示す2種の化合物を下記に示すモル比で縮合した化合物
【0038】
【化3】
【0039】
-化合物B:アミノ基を有するチオール化合物と多価カルボン酸化合物又は多価カルボン酸無水物とを縮合した化合物-
T3-1~T3-3:下記に示す2種の化合物を下記に示すモル比で縮合した化合物
【0040】
【化4】
【0041】
-化合物C:2つ以上のカルボキシ基を有するチオール化合物と多価アルコール化合物とを縮合した化合物-
T4-1:下記に示す2種の化合物を下記に示すモル比で縮合した化合物
【0042】
【化5】
【0043】
-化合物D:2つ以上のカルボキシ基を有するチオール化合物と多価アミン化合物とを縮合した化合物-
T5-1:下記に示す2種の化合物を下記に示すモル比で縮合した化合物
【0044】
【化6】
【0045】
【化7】
【0046】
【化8】
【0047】
本開示に係る硬化性組成物におけるチオール化合物の含有量の調整方法としては、特に制限はないが、チオール化合物を含まない各成分を使用し、少量のチオール化合物を添加する方法、不純物としてチオール化合物を多く含む場合は、酸化剤を添加して余分なチオール化合物を酸化しジスルフィド化合物とし、チオール化合物の含有量を低減させる方法等が挙げられる。
【0048】
本開示に係る硬化性組成物において、チオール化合物の含有量Mと、樹脂の含有量Mとの質量比(M/M)は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、0.05×10-6~5×10-6であることが好ましく、1×10-6~5×10-6であることがより好ましく、1.5×10-6~4×10-6であることが特に好ましい。
【0049】
<着色剤>
本開示に係る硬化性組成物は、着色剤を含む。
着色剤としては、公知の着色剤を用いることができ、顔料、及び、染料が挙げられる。
【0050】
<<顔料>>
本開示に係る硬化性組成物は、顔料を含有することが好ましい。
顔料としては、白色顔料、黒色顔料、有彩色顔料、近赤外線吸収顔料が挙げられる。なお、本開示において、白色顔料は純白色のみならず、白に近い明るい灰色(例えば灰白色、薄灰色など)の顔料などを含む。また、顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれでもよく、分散安定性をより向上させやすいという理由から有機顔料であることが好ましい。また、顔料は、波長400nm~2,000nmの範囲に極大吸収波長を有するものが好ましく、波長400nm~700nmの範囲に極大吸収波長を有するものがより好ましい。また、波長400nm~700nmの範囲に極大吸収波長を有する顔料(好ましくは有彩色顔料)を用いた場合においては、本開示に係る硬化性組成物は、カラーフィルタにおける着色層形成用の硬化性組成物として好ましく用いることができる。着色層としては、例えば、赤色着色層、緑色着色層、青色着色層、マゼンタ色着色層、シアン色着色層、イエロー色着色層などが挙げられる。
【0051】
顔料の平均一次粒子径は、1nm~200nmが好ましい。下限は5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。上限は、180nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。顔料の平均一次粒子径が上記範囲であれば、硬化性組成物中における顔料の分散安定性が良好である。なお、本開示において、顔料の一次粒子径は、顔料の一次粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた写真から求めることができる。具体的には、顔料の一次粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当径を顔料の一次粒子径として算出する。また、本開示における平均一次粒子径は、400個の顔料の一次粒子についての一次粒子径の算術平均値とする。また、顔料の一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
【0052】
-有彩色顔料-
有彩色顔料としては、特に限定されず、公知の有彩色顔料を用いることができる。有彩色顔料としては、波長400nm~700nmの範囲に極大吸収波長を有する顔料が挙げられる。例えば、黄色顔料、オレンジ色顔料、赤色顔料、緑色顔料、紫色顔料、青色顔料などが挙げられる。これらの具体例としては、例えば、以下が挙げられる。
【0053】
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214,215,228(国際公開第2013/098836号に記載された直結型キノフタロン二量体),231,232(メチン系),233(キノリン系),234(アミノケトン系),235(アミノケトン系),236(アミノケトン系)等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279,294(キサンテン系、Organo Ultramarine、Bluish Red),295(モノアゾ系),296(ジアゾ系),297(アミノケトン系)等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59,62,63等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42,60(トリアリールメタン系),61(キサンテン系)等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80,87(モノアゾ系),88(メチン系)等(以上、青色顔料)。
【0054】
緑色顔料としては、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子数が平均8~12個であり、塩素原子数が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/118720号に記載の化合物、中国特許出願公開第106909027号明細書に記載の化合物、リン酸エステルを配位子として有するフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
また、緑色顔料としては、特開2019-8014号公報、又は、特開2018-180023号公報に記載の緑色顔料を使用してもよい。
【0055】
青色顔料として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、特開2012-247591号公報の段落0022~0030、特開2011-157478号公報の段落0047に記載の化合物が挙げられる。
【0056】
また、黄色顔料として、特開2017-201003号公報に記載されている顔料、特開2017-197719号公報に記載されている顔料を用いることができる。また、黄色顔料として、下記式(Y)で表されるアゾ化合物及びその互変異性構造のアゾ化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料を用いることもできる。
【0057】
【化9】
【0058】
式(Y)中、RY1及びRY2はそれぞれ独立に、-OH又は-NRY5Y6を表し、RY3及びRY4はそれぞれ独立に、=O又は=NRY7を表し、RY5~RY7はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。
Y5~RY7が表すアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。上記アルキル基は、直鎖、分岐及び環状のいずれであってもよく、直鎖又は分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基及びアミノ基が好ましく挙げられる。
【0059】
上記の金属アゾ顔料については、特開2017-171912号公報の段落0011~0062、0137~0276、特開2017-171913号公報の段落0010~0062、0138~0295、特開2017-171914号公報の段落0011~0062、0139~0190、特開2017-171915号公報の段落0010~0065、0142~0222の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0060】
また、黄色顔料としては、下記式(Q)で表されるキノフタロン二量体も好適に使用できる。更に、特許第6443711号公報に記載のキノフタロン二量体も好適に使用できる。
【0061】
【化10】
【0062】
式(Q)中、X~X16はそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、Zは炭素数1~3のアルキレン基を表す。
【0063】
黄色顔料として、特開2018-203798号公報、特開2018-62578号公報、特許第6432077号公報、特許第6432076号公報、特開2018-155881号公報、特開2018-111757号公報、特開2018-40835号公報、特開2017-197640号公報、特開2016-145282号公報、特開2014-85565号公報、特開2014-21139号公報、特開2013-209614号公報、特開2013-209435号公報、特開2013-181015号公報、特開2013-61622号公報、特開2013-54339号公報、特開2013-32486号公報、特開2012-226110号公報、特開2008-74987号公報、特開2008-81565号公報、特開2008-74986号公報、特開2008-74985号公報、特開2008-50420号公報、特開2008-31281号公報、又は、特公昭48-32765号公報に記載のキノフタロン顔料も好適に使用できる。
【0064】
また、黄色顔料として、特開2013-54339号公報の段落0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-26228号公報の段落0013~0058に記載のキノフタロン化合物、特開2019-8014号公報に記載の黄色顔料、特許第6607427号に記載のキノフタロン化合物、韓国公開特許第10-2014-0034963号公報に記載の化合物、特開2017-095706号公報に記載の化合物、台湾特許出願公開第201920495号公報に記載の化合物、特許第6607427号公報に記載の化合物などを用いることもできる。
また、黄色顔料として、特開2018-62644号公報に記載の化合物を用いることもできる。なお、この化合物は、顔料誘導体として用いることもできる。
更に、特開2018-155881号公報に記載されているように、C.I.Pigment Yellow 129を、耐候性改良の目的で添加してもよい。
【0065】
赤色顔料として、特開2017-201384号公報に記載の構造中に少なくとも1つ臭素原子が置換したジケトピロロピロール系顔料、特許第6248838号公報の段落0016~0022に記載のジケトピロロピロール系顔料、国際公開第2012/102399号に記載のジケトピロロピロール化合物、国際公開第2012/117965号に記載のジケトピロロピロール化合物、特開2012-229344号公報に記載のナフトールアゾ化合物などを用いることもできる。
更に、赤色顔料として、特許第6516119号公報、又は、特許第6525101号公報に記載された赤色顔料も好適に用いることができる。
また、赤色顔料として、芳香族環に対して、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。このような化合物としては、式(DPP1)で表される化合物であることが好ましく、式(DPP2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0066】
【化11】
【0067】
上記式中、R11及びR13はそれぞれ独立に、置換基を表し、R12及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、n11及びn13はそれぞれ独立に、0~4の整数を表し、X12及びX14はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、X12が酸素原子又は硫黄原子の場合は、m12は1を表し、X12が窒素原子の場合は、m12は2を表し、X14が酸素原子又は硫黄原子の場合は、m14は1を表し、X14が窒素原子の場合は、m14は2を表す。R11及びR13が表す置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、スルホキシド基、スルホ基などが好ましい具体例として挙げられる。
【0068】
本開示において、有彩色顔料は、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、有彩色顔料は、2種以上組み合わせて用いる場合、2種以上の有彩色顔料の組み合わせで黒色を形成していてもよい。そのような組み合わせとしては、例えば以下の(1)~(7)の態様が挙げられる。硬化性組成物中に有彩色顔料を2種以上含み、かつ、2種以上の有彩色顔料の組み合わせで黒色を呈している場合においては、本開示に係る硬化性組成物は、近赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。
(1)赤色顔料と青色顔料とを含有する態様。
(2)赤色顔料と青色顔料と黄色顔料とを含有する態様。
(3)赤色顔料と青色顔料と黄色顔料と紫色顔料とを含有する態様。
(4)赤色顔料と青色顔料と黄色顔料と紫色顔料と緑色顔料とを含有する態様。
(5)赤色顔料と青色顔料と黄色顔料と緑色顔料とを含有する態様。
(6)赤色顔料と青色顔料と緑色顔料とを含有する態様。
(7)黄色顔料と紫色顔料とを含有する態様。
【0069】
また、シアン色の硬化性組成物とする場合、着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3及びC.I.ピグメントブルー15:4よりなる群から選ばれる少なくとも1種のフタロシアニン顔料を含むことが好ましい。以下、C.I.ピグメントブルー15:3とC.I.ピグメントブルー15:4とを合わせて特定フタロシアニン顔料ともいう。
【0070】
特定フタロシアニン顔料の平均二次粒子径は、可視光の透過性を高めて、シアン色に適した分光特性を有する硬化膜が得られやすいという理由から、50nm~100nmであることが好ましい。下限は、耐光性の観点から55nm以上であることが好ましく、60nm以上であることがより好ましい。上限は、分光特性の観点から95nm以下であることが好ましく、90nm以下であることがより好ましい。
【0071】
なお、本明細書において、顔料の平均二次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、電子顕微鏡写真から顔料の二次粒子の大きさを直接計測して測定した。具体的には、個々の顔料の二次粒子の短軸径と長軸径を計測し、平均をその顔料の粒径とする。次に、100個の顔料のそれぞれについて、それぞれの顔料の体積を、求めた粒径の立方体と近似して求め、体積平均粒径を平均二次粒子径とする。
【0072】
シアン色の硬化性組成物とする場合、着色剤は、着色剤の全質量に対し、特定フタロシアニン顔料を50質量%以上含有することが好ましく、55質量%以上含有することがより好ましく、60質量%以上含有することが更に好ましく、65質量%以上含有することが特に好ましい。上限は100質量%であってもよく、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよい。
【0073】
本開示に係る硬化性組成物に用いられる着色剤が、C.I.ピグメントブルー15:3とC.I.ピグメントブルー15:4とを含む場合は、C.I.ピグメントブルー15:3とC.I.ピグメントブルー15:4との質量比は、C.I.ピグメントブルー15:3の100質量部に対して、C.I.ピグメントブルー15:4が10質量部~1,000質量部であることが好ましく、25質量部~400質量部であることがより好ましく、50質量部~200質量部であることが更に好ましい。
【0074】
-白色顔料-
白色顔料としては、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛などが挙げられる。白色顔料は、チタン原子を有する粒子が好ましく、酸化チタンがより好ましい。また、白色顔料は、波長589nmの光に対する屈折率が2.10以上の粒子であることが好ましい。前述の屈折率は、2.10~3.00であることが好ましく、2.50~2.75であることがより好ましい。
【0075】
また、白色顔料は「酸化チタン 物性と応用技術 清野学著 13~45ページ 1991年6月25日発行、技報堂出版発行」に記載の酸化チタンを用いることもできる。
【0076】
白色顔料は、単一の無機物からなるものだけでなく、他の素材と複合させた粒子を用いてもよい。例えば、内部に空孔や他の素材を有する粒子、コア粒子に無機粒子を多数付着させた粒子、ポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ粒子からなるシェル層とからなるコア及びシェル複合粒子を用いることが好ましい。上記ポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ微粒子からなるシェル層とからなるコア及びシェル複合粒子としては、例えば、特開2015-047520号公報の段落0012~0042の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0077】
白色顔料は、中空無機粒子を用いることもできる。中空無機粒子とは、内部に空洞を有する構造の無機粒子であり、外殻に包囲された空洞を有する無機粒子のことを言う。中空無機粒子としては、特開2011-075786号公報、国際公開第2013/061621号、特開2015-164881号公報などに記載された中空無機粒子が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0078】
-黒色顔料-
黒色顔料としては特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、カーボンブラック、チタンブラック、グラファイト等が挙げられ、カーボンブラック、チタンブラックが好ましく、チタンブラックがより好ましい。チタンブラックとは、チタン原子を含有する黒色粒子であり、低次酸化チタンや酸窒化チタンが好ましい。チタンブラックは、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、表面を修飾することが可能である。例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は、酸化ジルコニウムでチタンブラックの表面を被覆することが可能である。また、特開2007-302836号公報に表されるような撥水性物質での処理も可能である。黒色顔料として、カラーインデックス(C.I.)Pigment Black 1,7等が挙げられる。チタンブラックは、個々の粒子の一次粒子径及び平均一次粒子径のいずれもが小さいことが好ましい。具体的には、平均一次粒子径が10~45nmであることが好ましい。チタンブラックは、分散物として用いることもできる。例えば、チタンブラック粒子とシリカ粒子とを含み、分散物中のSi原子とTi原子との含有比が0.20~0.50の範囲に調整した分散物などが挙げられる。上記分散物については、特開2012-169556号公報の段落0020~0105の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。チタンブラックの市販品の例としては、チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M-C、13R-N、13M-T(商品名:三菱マテリアル(株)製)、ティラック(Tilack)D(商品名:赤穂化成(株)製)などが挙げられる。
【0079】
-近赤外線吸収顔料-
近赤外線吸収顔料は、有機顔料であることが好ましい。また、近赤外線吸収顔料は、波長700nmを超え1,400nm以下の範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、近赤外線吸収顔料の極大吸収波長は、1,200nm以下であることが好ましく、1,000nm以下であることがより好ましく、950nm以下であることが更に好ましい。また、近赤外線吸収顔料は、波長550nmにおける吸光度A550と極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、0.03以下であることが更に好ましく、0.02以下であることが特に好ましい。下限は、特に限定はないが、例えば、0.0001以上とすることができ、0.0005以上とすることもできる。上述の吸光度の比が上記範囲であれば、可視透明性及び近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線吸収顔料とすることができる。なお、本開示において、近赤外線吸収顔料の極大吸収波長及び各波長における吸光度の値は、近赤外線吸収顔料を含む硬化性組成物を用いて形成した膜の吸収スペクトルから求めた値である。
【0080】
近赤外線吸収顔料としては、特に限定はないが、ピロロピロール化合物、リレン化合物、オキソノール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、クロコニウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ピリリウム化合物、アズレニウム化合物、インジゴ化合物及びピロメテン化合物が挙げられ、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物及びナフタロシアニン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ピロロピロール化合物又はスクアリリウム化合物であることが更に好ましく、ピロロピロール化合物であることが特に好ましい。
【0081】
また、本開示に用いられる顔料としては、特定のCuKα線によるX線回折パターンを有する顔料が好ましく挙げられる。具体的には、例えば、特許第6561862号公報に記載のフタロシアニン顔料、特許第6413872号公報に記載のジケトピロロピロール顔料、特許第6281345号公報に記載のアゾ顔料(C.I.Pigment Red269)などが挙げられる。
【0082】
硬化性組成物の全固形分中における顔料の含有量は5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることがより一層好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。上限は80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0083】
<<染料>>
本開示に係る硬化性組成物は、染料を含有することができる。染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。染料は、有彩色染料であってもよく、近赤外線吸収染料であってもよい。有彩色染料としては、ピラゾールアゾ化合物、アニリノアゾ化合物、トリアリールメタン化合物、アントラキノン化合物、アントラピリドン化合物、ベンジリデン化合物、オキソノール化合物、ピラゾロトリアゾールアゾ化合物、ピリドンアゾ化合物、シアニン化合物、フェノチアジン化合物、ピロロピラゾールアゾメチン化合物、キサンテン化合物、フタロシアニン化合物、ベンゾピラン化合物、インジゴ化合物、ピロメテン化合物が挙げられる。また、特開2012-158649号公報に記載のチアゾール化合物、特開2011-184493号公報に記載のアゾ化合物、特開2011-145540号公報に記載のアゾ化合物を用いることもできる。また、黄色染料として、特開2013-054339号公報の段落0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-026228号公報の段落0013~0058に記載のキノフタロン化合物などを用いることもできる。近赤外線吸収染料としては、ピロロピロール化合物、リレン化合物、オキソノール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、クロコニウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ピリリウム化合物、アズレニウム化合物、インジゴ化合物及びピロメテン化合物が挙げられる。また、特開2017-197437号公報に記載のスクアリリウム化合物、国際公開第2017/213047号の段落0090~0107に記載のスクアリリウム化合物、特開2018-054760号公報の段落0019~0075に記載のピロール環含有化合物、特開2018-040955号公報の段落0078~0082に記載のピロール環含有化合物、特開2018-002773号公報の段落0043~0069に記載のピロール環含有化合物、特開2018-041047号公報の段落0024~0086に記載のアミドα位に芳香環を有するスクアリリウム化合物、特開2017-179131号公報に記載のアミド連結型スクアリリウム化合物、特開2017-141215号公報に記載のピロールビス型スクアリリウム骨格又はクロコニウム骨格を有する化合物、特開2017-082029号公報に記載されたジヒドロカルバゾールビス型のスクアリリウム化合物、特開2017-068120号公報の段落0027~0114に記載の非対称型の化合物、特開2017-067963号公報に記載されたピロール環含有化合物(カルバゾール型)、特許第6251530号公報に記載されたフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
また、染料として、特開2019-073695号公報に記載のメチン染料、特開2019-073696号公報に記載のメチン染料、特開2019-073697号公報に記載のメチン染料、特開2019-073698号公報に記載のメチン染料を用いることもできる。
【0084】
硬化性組成物の全固形分中における染料の含有量は1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。上限としては特に制限はないが、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
また、染料の含有量は、顔料の100質量部に対して5~50質量部であることが好ましい。上限は、45質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。下限は、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることが更に好ましい。
また、本開示に係る硬化性組成物は染料を実質的に含有しないこともできる。本開示に係る硬化性組成物が染料を実質的に含まない場合、本開示に係る硬化性組成物の全固形分中における染料の含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0085】
本開示に係る硬化性組成物は、色素多量体を用いることもできる。色素多量体は、溶剤に溶解して用いられる染料であることが好ましい。また、色素多量体は、粒子を形成していてもよい。色素多量体が粒子である場合は通常溶剤に分散した状態で用いられる。粒子状態の色素多量体は、例えば乳化重合によって得ることができ、特開2015-214682号公報に記載されている化合物及び製造方法が具体例として挙げられる。色素多量体は、一分子中に色素構造を2以上有するものであり、色素構造を3以上有することが好ましい。上限は、特に限定はないが、100以下とすることもできる。一分子中に有する複数の色素構造は、同一の色素構造であってもよく、異なる色素構造であってもよい。色素多量体の重量平均分子量(Mw)は、2,000~50,000が好ましい。下限は、3,000以上がより好ましく、6,000以上が更に好ましい。上限は、30,000以下がより好ましく、20,000以下が更に好ましい。色素多量体は、特開2011-213925号公報、特開2013-041097号公報、特開2015-028144号公報、特開2015-030742号公報、国際公開第2016/031442号等に記載されている化合物を用いることもできる。
【0086】
<樹脂>
本開示に係る硬化性組成物は、樹脂を含む。
上記樹脂としては、分散剤、バインダーポリマー等が好適に挙げられる。
本開示に係る硬化性組成物は、上記樹脂として、分散剤を含むことが好ましく、分散剤、及び、バインダーポリマーを含むことが好ましい。
本開示におけるバインダーポリマーは、例えば、顔料などの粒子を組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。
【0087】
バインダーポリマーの重量平均分子量(Mw)は、2,000~2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。
【0088】
バインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0089】
バインダーポリマーは、酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシ基が好ましい。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として用いることもできる。
【0090】
酸基を有する樹脂としては、側鎖にカルボキシ基を有するポリマーが好ましい。具体例としては、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂、側鎖にカルボキシ基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシ基を有するポリマーに酸無水物を付加させた樹脂が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が好適である。
【0091】
酸基を有する樹脂としては、特開2018-173660号公報の段落0153~0167の記載のポリマーも好ましく挙げられる。
【0092】
酸基を有する樹脂については、特開2012-208494号公報の段落0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。
【0093】
酸基を有する樹脂の酸価は、30mgKOH/g~200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
【0094】
本開示に係る硬化性組成物は、分散剤としての樹脂を含むことが好ましい。
分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシ基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40mgKOH/g~105mgH/gが好ましく、50mgKOH/g~105mgKOH/gがより好ましく、60mgKOH/g~105mgKOH/gが更に好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0095】
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する構成繰り返し単位を含むことが好ましい。分散剤として用いる樹脂が酸基を有する構成繰り返し単位を含むことにより、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、画素の下地に発生する残渣をより低減することができる。
【0096】
分散剤として用いる樹脂は、グラフト樹脂であることも好ましい。
グラフト樹脂が有するグラフト鎖としては、ポリエステル構成繰り返し単位、ポリエーテル構成繰り返し単位、ポリ(メタ)アクリル構成繰り返し単位、ポリウレタン構成繰り返し単位、ポリウレア構成繰り返し単位及びポリアミド構成繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構成繰り返し単位を含むことが好ましく、ポリエステル構成繰り返し単位、ポリエーテル構成繰り返し単位及びポリ(メタ)アクリル構成繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構成繰り返し単位を含むことがより好ましく、ポリ(メタ)アクリル構成繰り返し単位を含むことが更に好ましい。
グラフト樹脂の詳細は、特開2012-255128号公報の段落0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0097】
分散剤として用いる樹脂は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むポリイミン系分散剤であることも好ましい。ポリイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造を有する主鎖と、原子数40~10,000の側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。ポリイミン系分散剤については、特開2012-255128号公報の段落0102~0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0098】
分散剤として用いる樹脂は、コア部に複数個のポリマー鎖が結合した構造の樹脂であることも好ましい。このような樹脂としては、例えばデンドリマー(星型ポリマーを含む)が挙げられる。また、デンドリマーの具体例としては、特開2013-043962号公報の段落0196~0209に記載された高分子化合物C-1~C-31などが挙げられる。
【0099】
また、上記樹脂、好ましくは分散剤として用いる樹脂は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、カルボキシ基及びグラフト鎖を有する樹脂を含むことが好ましく、カルボキシ基及びグラフト鎖を有するポリエステル樹脂を含むことがより好ましい。また、上記樹脂は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、主鎖に直接結合するカルボキシ基を有し、かつ側鎖にグラフト鎖を有する樹脂であることが好ましく、主鎖に直接結合するカルボキシ基を有し、かつ側鎖にグラフト鎖を有するポリエステル樹脂であることが特に好ましい。
更に、上記グラフト鎖が、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、付加重合型樹脂鎖であることが好ましく、アクリル樹脂鎖であることがより好ましい。
【0100】
分散剤として用いる樹脂は、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、芳香族カルボキシ基(芳香環に直接結合したカルボキシ基)を有する樹脂を含むことが好ましい。上記芳香族カルボキシ基を有する樹脂において、芳香族カルボキシ基は構成繰り返し単位の主鎖に含まれていてもよく、構成繰り返し単位の側鎖に含まれていてもよいが、芳香族カルボキシ基は構成繰り返し単位の主鎖に含まれていることが好ましい。上記芳香族カルボキシ基において、芳香族環に結合したカルボキシ基の数は、1個~4個であることが好ましく、1個又は2個であることがより好ましい。
【0101】
芳香族カルボキシ基を有する樹脂としては、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、分子内に2つのヒドロキシ基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)の存在下に、エチレン性不飽和単量体をラジカル重合して生成され、片末端領域に2つのヒドロキシ基を有するビニル重合体(a)中のヒドロキシ基と、テトラカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基と、を反応させて得られた樹脂であることが好ましい。分子内に2つのヒドロキシ基と1つのチオール基とを有する化合物(a1)、片末端領域に2つのヒドロキシ基を有するビニル重合体(a)、及び、テトラカルボン酸無水物(b)としては、後述する各化合物が好適に挙げられる。
【0102】
また、芳香族カルボキシ基を有する樹脂としては、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状、密着性及び欠陥抑制の観点から、下記式(b-10)で表される構成繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましい。
【0103】
【化12】
【0104】
式(b-10)中、Ar10は芳香族カルボキシ基を含む基を表し、L11は、-COO-又は-CONH-を表し、L12は3価の連結基を表し、P10はエチレン性不飽和基を有するポリマー鎖を表す。
【0105】
式(b-10)においてAr10が表す芳香族カルボキシ基を含む基としては、芳香族トリカルボン酸無水物から由来する構造、芳香族テトラカルボン酸無水物から由来する構造などが挙げられる。芳香族トリカルボン酸無水物及び芳香族テトラカルボン酸無水物としては、下記構造の化合物が挙げられる。
【0106】
【化13】
【0107】
上記式中、Q1は、単結合、-O-、-CO-、-COOCHCHOCO-、-SO-、-C(CF-、下記式(Q-1)で表される基又は下記式(Q-2)で表される基を表す。
【0108】
【化14】
【0109】
芳香族トリカルボン酸無水物の具体例としては、ベンゼントリカルボン酸無水物(1,2,3-ベンゼントリカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物[1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物]等)、ナフタレントリカルボン酸無水物(1,2,4-ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5-ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6-ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8-ナフタレントリカルボン酸無水物等)、3,4,4’-ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’-ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、又は3,4,4’-ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物が挙げられる。
芳香族テトラカルボン酸無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、又は3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-6-メチル-1-ナフタレンコハク酸二無水物等が挙げられる。
【0110】
Ar10が表す芳香族カルボキシ基を含む基の具体例としては、式(Ar-1)で表される基、式(Ar-2)で表される基、式(Ar-3)で表される基などが挙げられる。
【0111】
【化15】
【0112】
式(Ar-1)中、n1は1~4の整数を表し、1~2の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(Ar-2)中、n2は1~8の整数を表し、1~4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
式(Ar-3)中、n3及びn4はそれぞれ独立して0~4の整数を表し、0~2の整数であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。ただし、n3及びn4の少なくとも一方は1以上の整数である。
式(Ar-3)中、Qは、単結合、-O-、-CO-、-COOCHCHOCO-、-SO-、-C(CF-、上記式(Q-1)で表される基又は上記式(Q-2)で表される基を表す。
【0113】
式(b-10)においてL11は、-COO-又は-CONH-を表し、-COO-を表すことが好ましい。
【0114】
式(b-10)においてL12が表す3価の連結基としては、炭化水素基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-S-及びこれらの2種以上を組み合わせた基が挙げられる。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~15が更に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。芳香族炭化水素基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~10が更に好ましい。炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基などが挙げられる。
【0115】
式(b-10)においてP10は(メタ)アクリロイル基を有するポリマー鎖を表す。P10が表すポリマー鎖は、ポリ(メタ)アクリル構成繰り返し単位、ポリエーテル構成繰り返し単位、ポリエステル構成繰り返し単位及びポリオール構成繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有することが好ましい。ポリマー鎖P10の重量平均分子量は500~20,000が好ましい。下限は600以上が好ましく、1,000以上がより好ましい。上限は10,000以下が好ましく、5,000以下がより好ましく、3,000以下が更に好ましいである。P10の重量平均分子量が上記範囲であれば組成物中における顔料の分散性が良好である。この樹脂は分散剤として好ましく用いられる。
【0116】
式(b-10)において、P10が表すポリマー鎖は、下記式(P-1)~式(P-5)で表される構成繰り返し単位を含むポリマー鎖であることが好ましく、式(P-5)で表される構成繰り返し単位を含むポリマー鎖であることがより好ましい。
【0117】
【化16】
【0118】
上記式において、RP1及びRP2は、それぞれアルキレン基を表す。RP1及びRP2で表されるアルキレン基としては、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましく、炭素数2~16の直鎖状又は分岐状のアルキレン基がより好ましく、炭素数3~12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が更に好ましい。
上記式において、RP3は、水素原子又はメチル基を表す。
上記式において、LP1は、単結合又はアリーレン基を表し、LP2は、単結合又は2価の連結基を表す。LP1は、単結合であることが好ましい。LP2が表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20のアリーレン基)、-NH-、-SO-、-SO-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-、-CONH-、及び、これらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。
P4は、水素原子又は置換基を表す。置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基、エチレン性不飽和基等が挙げられる。
【0119】
また、P10が表すポリマー鎖は、側鎖にエチレン性不飽和基を含む構成繰り返し単位を有するポリマー鎖であることがより好ましい。また、P10を構成する全構成繰り返し単位中における、エチレン性不飽和基を側鎖に含む構成繰り返し単位の割合は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。上限は、100質量%とすることができ、90質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0120】
また、P10が表すポリマー鎖は、酸基を有する構成繰り返し単位を有することも好ましい。酸基としては、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられる。この態様によれば、組成物中における顔料の分散性をより向上できる。更には、現像性をより向上させることもできる。酸基を有する構成繰り返し単位の割合は、1質量%~30質量%であることが好ましく、2質量%~20質量%であることがより好ましく、3質量%~10質量%であることが更に好ましい。
【0121】
また、式(b-10)で表される構成繰り返し単位を有する樹脂は、芳香族テトラカルボン酸無水物及び芳香族トリカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸無水物と、ヒドロキシ基含有化合物とを反応させることで製造することがきる。
芳香族テトラカルボン酸無水物及び芳香族トリカルボン酸無水物としては、上述したものが挙げられる。ヒドロキシ基含有化合物としては、分子内にヒドロキシ基を有してさえいれば、特に制限されないが、分子内に2つ以上のヒドロキシ基を有するポリオールであることが好ましい。
また、ヒドロキシ基含有化合物として、分子内に2つのヒドロキシ基と1つのチオール基を有する化合物を用いることも好ましい。分子内に2つのヒドロキシ基と1つのチオール基を有する化合物としては、例えば、1-メルカプト-1,1-メタンジオール、1-メルカプト-1,1-エタンジオール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール(チオグリセリン)、2-メルカプト-1,2-プロパンジオール、2-メルカプト-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メルカプト-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1-メルカプト-2,2-プロパンジオール、2-メルカプトエチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、又は2-メルカプトエチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。その他のヒドロキシ基含有化合物については、特開2018-101039号公報の段落0084~0095に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
上記酸無水物中の酸無水物基と、ヒドロキシ基含有化合物中のヒドロキシ基とのモル比(酸無水物基/ヒドロキシ基)は、0.5~1.5であることが好ましい。
【0122】
また、上記式(b-10)で表される構成繰り返し単位を有する樹脂は、以下の合成方法(1)又は(2)に示す方法などで合成することができる。
【0123】
〔合成方法(1)〕
エチレン性不飽和基を有する重合性モノマーを水酸基含有チオール化合物(好ましくは分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物)の存在下にて、ラジカル重合して片末端領域に2つの水酸基を有するビニル重合体を合成し、この合成したビニル重合体と、芳香族テトラカルボン酸無水物及び芳香族トリカルボン酸無水物から選ばれる一種以上の芳香族酸無水物とを反応させて製造する方法。
【0124】
〔合成方法(2)〕
水酸基含有化合物(好ましくは分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物)と、芳香族テトラカルボン酸無水物及び芳香族トリカルボン酸無水物から選ばれる一種以上の芳香族酸無水物と、を反応させたのち、得られた反応物の存在下で、エチレン性不飽和基を有する重合性モノマーをラジカル重合して製造する方法。合成方法(2)においては、水酸基を有する重合性モノマーをラジカル重合した後、更にイソシアネート基を有する化合物(例えば、イソシアネート基と上述した官能基Aとを有する化合物)とを反応させてもよい。これによって、ポリマー鎖P10に官能基Aを導入することができる。
【0125】
また、上記式(b-10)で表される構成繰り返し単位を有する樹脂は、特開2018-101039号公報の段落0120~0138の記載された方法に従い合成することもできる。
【0126】
式(b-10)で表される構成繰り返し単位を有する樹脂の重量平均分子量は、2,000~35,000であることが好ましい。上限は25,000以下であることが好ましく、20,000以下であることがより好ましく、15,000以下であることが更に好ましい。下限は、4,000以上であることが好ましく、6,000以上であることがより好ましく、7,000以上であることが更に好ましい。
【0127】
式(b-10)で表される構成繰り返し単位を有する樹脂の酸価は5~200mgKOH/gが好ましい。上限は150mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以下であることがより好ましく、80mgKOH/g以下であることが更に好ましい。下限は10mgKOH/g以上であることが好ましく、15mgKOH/g以上であることがより好ましく、20mgKOH/g以上であることが更に好ましい。
【0128】
上記芳香族カルボキシ基を有する樹脂は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
上記芳香族カルボキシ基を有する樹脂の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し、1質量%~50質量%であることが好ましい。下限は3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。上限は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0129】
また、上記芳香族カルボキシ基を有する樹脂の具体例としては、特開2017-156652号公報に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0130】
また、本開示に係る硬化性組成物は、下記条件1及び下記条件2の少なくとも一方を満たす樹脂(特定樹脂)を含むことが好ましい。
条件1:上記樹脂が、アニオン構造、上記アニオン構造とイオン結合する第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基を同一の側鎖に有する構成単位を含む。
条件2:上記樹脂が、第四級アンモニウムカチオン構造、及び、ラジカル重合性基が連結された基を側鎖に有する構成単位を含む。
【0131】
特定樹脂は、線状高分子化合物、星型高分子化合物、櫛形高分子化合物のいずれであってもよいし、分岐点を複数有する特開2007-277514号公報等に記載の特定末端基を有する星型高分子化合物であってもよく、樹脂の形態は問わない。
条件1又は条件2における側鎖の分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)は50~1,500であることが好ましく、100~1,000であることがより好ましい。
また、特定樹脂は、付加重合型樹脂であることが好ましく、アクリル樹脂であることがより好ましい。特定樹脂が付加重合型樹脂である場合、条件1又は条件2における側鎖が、付加重合により形成される分子鎖に結合する分子鎖であって、付加重合以外の方法により形成された分子鎖である態様が挙げられる。
【0132】
また、特定樹脂は、分散剤であってもよい。本明細書において、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、特定樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で使用することもできる。
【0133】
〔その他の構成単位〕
特定樹脂は、上述した以外のその他の構成単位を有していてもよい。
その他の構成単位としては、特に制限はなく、公知の構成単位を有することができる。
【0134】
特定樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であることが好ましく、1,000~200,000であることがより好ましく、1,000~100,000であることが特に好ましい。
【0135】
特定樹脂のエチレン性不飽和結合価(C=C価)は、深部硬化性、パターン形状、及び、基板密着性の観点から、0.01mmol/g~2.5mmol/gであることが好ましく、0.05mmol/g~2.3mmol/gであることがより好ましく、0.1mmol/g~2.2mmol/gであることが更に好ましく、0.1mmol/g~2.0mmol/gであることが特に好ましい。
特定樹脂のエチレン性不飽和結合価は、特定樹脂の固形分1gあたりのエチレン性不飽和基のモル量を表したものであり、実施例に記載の方法により測定される。
特定樹脂の酸価は、現像性の観点からは、30mgKOH/g~110mgKOH/gであることが好ましく、40mgKOH/g~90mgKOH/gであることがより好ましい。酸価は、上述した方法により測定される。
特定樹脂のアミン価は、支持体との密着性の観点からは、0.03mmol/g~0.8mmol/gであることが好ましく、0.1mmol/g~0.5mmol/gであることがより好ましい。
上記アミン価は、以下の方法により測定される。
試料約0.5gを精密に量り、酢酸50mLを加えて溶かし、0.1mol/L過塩素酸酢酸溶液で電気滴定法(電位差滴定)電位差自動滴定装置(AT-710M;京都電子工業(株)製)を用い、により滴定した。また、同様の方法で空試験を行って補正した。
アミン価(mmol/g)=a×5.611/c
a:0.1mol/L 過塩素酸の消費量(mL)
c:試料の量(g)
【0136】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製のDISPERBYKシリーズ(例えば、DISPERBYK-111、161など)、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパースシリーズ(例えば、ソルスパース76500など)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、分散剤は、特開2018-150498号公報、特開2017-100116号公報、特開2017-100115号公報、特開2016-108520号公報、特開2016-108519号公報、特開2015-232105号公報に記載の化合物を用いてもよい。なお、上記分散剤として説明した樹脂は、分散剤以外の用途で使用することもできる。例えば、バインダーとして用いることもできる。
【0137】
本開示に係る硬化性組成物は、バインダーポリマーを1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
また、バインダーポリマーの含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し、1質量%~50質量%であることが好ましい。下限は3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。上限は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0138】
<重合性化合物>
本開示に係る硬化性組成物は、膜強度、及び、パターン形成性の観点から、重合性化合物を更に含むことが好ましく、重合性化合物、及び、後述する光重合開始剤を更に含むことがより好ましい。
重合性化合物が硬化する際の反応機構については特に限定されない。ラジカル重合反応、カチオン重合反応、縮重合反応、求核付加反応、置換反応による架橋反応等が挙げられる。重合性化合物は、ラジカル重合反応により硬化する化合物であることが好ましい。
重合性基としては、エチレン性不飽和基、エポキシ基などが挙げられる。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、スチレン基、シンナモイル基及びマレイミド基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基、スチレン基、又は、マレイミド基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
【0139】
重合性化合物は、モノマーであってもよく、ポリマーなどの樹脂であってもよい。モノマータイプの重合性化合物と、樹脂タイプの重合性化合物とを併用することもできる。
ただし、含有量については、重合性基を有するポリマーは、上記バインダーポリマーとして扱うものとする。
【0140】
重合性化合物の分子量は、3,000未満であることが好ましい。上限は、2,000以下がより好ましく、1,500以下が更に好ましい。下限は、100以上が好ましく、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましい。重合性化合物は、エチレン性不飽和基を3個以上有する化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和基を3個~15個有する化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和基を3個~6個有する化合物であることが更に好ましい。また、重合性化合物は、3官能~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3官能~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。重合性モノマーの具体例としては、特開2009-288705号公報の段落0095~0108、特開2013-029760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落0254~0257、特開2013-253224号公報の段落0034~0038、特開2012-208494号公報の段落0477、特開2017-048367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0141】
重合性化合物は、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール及び/又はプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。
【0142】
重合性化合物は、酸基を有する化合物を用いることもできる。酸基を有する重合性化合物を用いることで、現像時に未露光部の硬化性組成物層が除去されやすく、現像残渣の
発生を抑制できる。酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。酸基を有する重合性化合物としては、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。酸基を有する重合性モノマーの市販品としては、アロニックスM-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。酸基を有する重合性モノマーの酸価としては、0.1mgKOH/g~40mgKOH/gであることが好ましく、5mgKOH/g~30mgKOH/gであることがより好ましい。重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像液に対する溶解性が良好であり、40mgKOH/g以下であれば、製造や取扱い上、有利である。
【0143】
重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物も好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する重合性化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0144】
重合性化合物は、アルキレンオキシ基を有する化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物は、エチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基を有する化合物であることが好ましく、エチレンオキシ基を有する化合物であることがより好ましく、エチレンオキシ基を4個~20個有する3官能~6官能(メタ)アクリレート化合物であることが更に好ましい。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0145】
重合性化合物としては、トルエンなどの環境規制物質を実質的に含まない化合物を用いることも好ましい。このような化合物の市販品としては、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD DPEA-12 LT(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0146】
重合性化合物として用いられるエポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物ともいう。)としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物が好ましく用いられる。エポキシ化合物のエポキシ基の上限は、100個以下であることが好ましく、10個以下であることがより好ましく、5個以下であることが更に好ましい。
【0147】
エポキシ化合物のエポキシ当量(=エポキシ基を有する化合物の分子量/エポキシ基の数)は、500g/eq以下であることが好ましく、100g/eq~400g/eqであることがより好ましく、100g/eq~300g/eqであることが更に好ましい。
【0148】
エポキシ化合物は、低分子化合物(例えば、分子量1,000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1,000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1,000以上)であってもよい。エポキシ化合物の分子量(ポリマーの場合は、重量平均分子量)は、200~100,000が好ましく、500~50,000がより好ましい。分子量(ポリマーの場合は、重量平均分子量)の上限は、3,000以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,500以下が更に好ましい。
【0149】
重合性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
重合性化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し、0.1質量%~40質量%であることが好ましい。下限は1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。上限は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
また、重合性化合物としてエポキシ化合物を用いる場合、エポキシ化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し、0.1質量%~40質量%が好ましい。下限は、例えば1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
エポキシ化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、エチレン性不飽和化合物と、エポキシ基を有する化合物とを併用する場合、両者の割合(質量比)は、エチレン性不飽和化合物の質量:エポキシ基を有する化合物の質量=100:1~100:400が好ましく、100:1~100:100がより好ましく、100:1~100:50が更に好ましい。
【0150】
本開示に係る硬化性組成物の好ましい一態様として、以下が挙げられる。
硬化性組成物が、エチレン性不飽和化合物と、樹脂とを含み、硬化性組成物に含まれるエチレン性不飽和化合物の質量Mと、硬化性組成物に含まれるバインダーポリマーの質量Bとの比であるM/Bは、0.35以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.15以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、より耐湿性に優れた硬化膜を形成することができる。更には硬化膜形成時における膜収縮を抑制することもできる。特に、樹脂として重合性樹脂を含む用いた場合においては上記の効果がより顕著に得られる。上記のM/Bの値の下限は、0.01以上であることが好ましく、0.04以上であることがより好ましく、0.07以上であることが更に好ましい。
また、上記の態様において、重合性化合物とバインダーポリマーとの合計の含有量は硬化性組成物の全固形分に対し、1質量%~50質量%であることが好ましい。下限は3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。上限は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0151】
<重合開始剤>
本開示に係る硬化性組成物は、重合開始剤を更に含むことが好ましく、光重合開始剤を更に含むことがより好ましい。特に、硬化性化合物としてエチレン性不飽和化合物を用いた場合には、本開示に係る硬化性組成物は、光重合開始剤を更に含むことが特に好ましい。重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤及び熱重合開始剤の中から適宜選択することができる。光重合開始剤としては、例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。また、光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0152】
光重合開始剤としては、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物及び3-アリール置換クマリン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、及び、アシルホスフィン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましく、オキシム化合物を含むことが更に好ましい。光重合開始剤については、特開2014-130173号公報の段落0065~0111に記載された光重合開始剤、特許第6301489号公報に記載された光重合開始剤、MATERIAL STAGE 37~60p,vol.19,No.3,2019に記載されたパーオキサイド系光重合開始剤、国際公開第2018/221177号に記載の光重合開始剤、国際公開第2018/110179号に記載の光重合開始剤、特開2019-043864号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-044030号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-167313号公報に記載の有機過酸化物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0153】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、IRGACURE-127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-907、IRGACURE-369、IRGACURE-379、及び、IRGACURE-379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE-819、DAROCUR-TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0154】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落0025~0038に記載の化合物、国際公開第2013/167515号に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE OXE01、IRGACURE OXE02、IRGACURE OXE03、IRGACURE OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0155】
また、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0156】
また、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0157】
更に、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落0031~0047、特開2014-137466号公報の段落0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許第4223071号公報の段落0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0158】
光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載のOE-01~OE-75が挙げられる。
【0159】
好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0160】
【化17】
【0161】
【化18】
【0162】
オキシム化合物は、波長350nm~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360nm~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1,000~300,000であることがより好ましく、2,000~300,000であることが更に好ましく、5,000~200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0163】
また、熱重合開始剤、又は、光及び熱の両方で重合可能な重合開始剤として、MATERIAL STAGE 37~60p,vol.19,No.3,2019、国際公開第2018/221177号、国際公開第2018/110179号、又は、特開2019-43864号公報に記載のパーオキサイド化合物が挙げられる。
【0164】
光重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、硬化性組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落0407~0412、国際公開第2017/033680号の段落0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)及び化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)、特許第6469669号公報に記載されているオキシムエステル光開始剤などが挙げられる。
【0165】
本開示に係る硬化性組成物の全固形分中の重合開始剤の含有量は、0.1質量%~30質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。本開示に係る硬化性組成物において、重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0166】
<顔料誘導体>
本開示に係る硬化性組成物は、顔料誘導体を含有することができる。
顔料誘導体としては、顔料の一部を、酸基、塩基性基又はフタルイミドメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。
顔料誘導体としては、特開昭56-118462号公報、特開昭63-264674号公報、特開平01-217077号公報、特開平03-009961号公報、特開平03-026767号公報、特開平03-153780号公報、特開平03-045662号公報、特開平04-285669号公報、特開平06-145546号公報、特開平06-212088号公報、特開平06-240158号公報、特開平10-030063号公報、特開平10-195326号公報、国際公開第2011/024896号の段落0086~0098、国際公開第2012/102399号の段落0063~0094、国際公開第2017/038252号の段落0082、特開2015-151530号公報の段落0171、特開2019-133154号公報等に記載の化合物を用いることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0167】
また、顔料誘導体としては、発色団として、キノリン系骨格、ベンゾイミダゾロン系骨格、ジケトピロロピロール系骨格、アゾ系骨格、フタロシアニン系骨格、アンスラキノン系骨格、キナクリドン系骨格、ジオキサジン系骨格、ペリノン系骨格、ペリレン系骨格、チオインジゴ系骨格、イソインドリン系骨格、イソインドリノン系骨格、キノフタロン系骨格、スレン系骨格、金属錯体系骨格等が色素骨格を有することが好ましい。中でも、キノリン系骨格、ベンゾイミダゾロン系骨格、ジケトピロロピロール系骨格、アゾ系骨格、キノフタロン系骨格、イソインドリン系骨格又はフタロシアニン系骨格が好ましく、アゾ系骨格又はベンゾイミダゾロン系骨格がより好ましい。顔料誘導体が有する酸基としては、スルホ基、カルボキシ基が好ましく、スルホ基がより好ましい。顔料誘導体が有する塩基性基としては、アミノ基が好ましく、三級アミノ基がより好ましい。
顔料誘導体としては、塩基性基を有する顔料誘導体(「塩基性顔料誘導体」ともいう。)を含むことが好ましい。また、本開示に係る硬化性化合物は、現像性、及び、分散安定性の観点から、酸基を有するバインダーポリマー(分散剤)と、塩基性基を有する顔料誘導体とを含むことがより好ましい。
【0168】
顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対し、1質量部~50質量部が好ましい。下限値は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限値は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。顔料誘導体の含有量が上記範囲であれば、顔料の分散性を高めて、顔料の凝集を効率よく抑制できる。顔料誘導体は1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0169】
<シランカップリング剤>
本開示に係る硬化性組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。この態様によれば、得られる硬化膜の支持体との密着性を向上させることができる。シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられ、アミノ基、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、特開2009-288703号公報の段落0018~0036に記載の化合物、特開2009-242604号公報の段落0056~0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0170】
硬化性組成物の全固形分中におけるシランカップリング剤の含有量は、0.1質量%~5質量%が好ましい。上限は、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。シランカップリング剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0171】
<溶剤>
本開示に係る硬化性組成物は、溶剤を含有することができる。
溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や硬化性組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤としては、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開第2015/166779号の段落0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドなどが挙げられる。ただし、溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる。)。
【0172】
本開示に係る硬化性組成物においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は、例えば、東洋合成工業(株)が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0173】
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン又はナイロンが好ましい。
【0174】
溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0175】
有機溶剤中の過酸化物の含有率は、0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0176】
硬化性組成物中における溶剤の含有量は、10質量%~95質量%であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、30質量%~90質量%であることが更に好ましい。
【0177】
また、本開示に係る硬化性組成物は、環境規制の観点から環境規制物質を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本開示において、環境規制物質を実質的に含有しないとは、着色組成物中における環境規制物質の含有量が50質量ppm以下であることを意味し、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、1質量ppm以下であることが特に好ましい。
【0178】
<重合禁止剤>
本開示に係る硬化性組成物は、重合禁止剤を更に含むことが好ましい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、及び、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシルよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。硬化性組成物の全固形分中における重合禁止剤の含有量は、0.0001質量%~5質量%が好ましい。
【0179】
<界面活性剤>
本開示に係る硬化性組成物は、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤については、国際公開第2015/166779号の段落0238~0245、及び、特開2018-173660号公報段落0253~0260を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0180】
界面活性剤は、フッ素系界面活性剤であることが好ましい。硬化性組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
【0181】
フッ素系界面活性剤中のフッ素原子含有率は、3質量%~40質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましく、7質量%~25質量%が特に好ましい。フッ素原子含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、硬化性組成物中における溶解性も良好である。
【0182】
硬化性組成物の全固形分中における界面活性剤の含有量は、0.001質量%~5.0質量%が好ましく、0.005質量%~3.0質量%がより好ましい。界面活性剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0183】
<紫外線吸収剤>
本開示に係る硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
紫外線吸収剤は、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落0052~0072、特開2013-068814号公報の段落0317~0334、特開2016-162946号公報の段落0061~0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂(株)製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。また、紫外線吸収剤として特許第6268967号公報の段落0049~0059に記載の化合物も使用できる。
【0184】
硬化性組成物の全固形分中における紫外線吸収剤の含有量は、0.01質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~5質量%がより好ましい。紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0185】
<酸化防止剤>
本開示に係る硬化性組成物は、酸化防止剤を含有することができる。
酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。上述の置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2-[(4,6,9,11-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-2-イル)オキシ]エチル]アミン、亜リン酸エチルビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)などが挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブ AO-20、アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-50F、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-60G、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-330(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。また、酸化防止剤は、特許第6268967号公報の段落0023~0048に記載された化合物、韓国公開特許第10-2019-0059371号公報に記載の化合物等を使用することもできる。
【0186】
硬化性組成物の全固形分中における酸化防止剤の含有量は、0.01質量%~20質量%であることが好ましく、0.3質量%~15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0187】
<その他成分>
本開示に係る硬化性組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、本開示に係る硬化性組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100℃~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0188】
また、本開示に係る硬化性組成物は、得られる膜の屈折率を調整するために金属酸化物を含有させてもよい。金属酸化物としては、TiO、ZrO、Al、SiO等が挙げられる。金属酸化物の一次粒子径は1nm~100nmが好ましく、3nm~70nmがより好ましく、5nm~50nmが最も好ましい。金属酸化物はコア-シェル構造を有していてもよく、この際、コア部が中空状であってもよい。
【0189】
また、本開示に係る硬化性組成物は、耐光性改良剤を含んでもよい。
【0190】
本開示に係る硬化性組成物の粘度(25℃)は、例えば、塗布により膜を形成する場合、1mPa・s~100mPa・sであることが好ましい。下限は、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上が更に好ましい。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下が更に好ましく、15mPa・s以下が特に好ましい。
【0191】
本開示に係る硬化性組成物は、顔料などと結合又は配位していない遊離の金属の含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。この態様によれば、顔料分散性の安定化(凝集抑止)、分散性良化に伴う分光特性の向上、硬化性成分の安定化や、金属原子及び金属イオンの溶出に伴う導電性変動の抑止、表示特性の向上などの効果が期待できる。
【0192】
本開示に係る硬化性組成物は、テレフタル酸エステルを実質的に含まないことも好ましい。ここで、「実質的に含まない」とは、テレフタル酸エステルの含有量が、硬化性組成物の全質量に対し、1,000質量ppb以下であることを意味し、100質量ppb以下であることがより好ましく、ゼロであることが特に好ましい。
【0193】
本開示における硬化性組成物の含水率は、3質量%以下であることが好ましく、0.01質量~1.5質量%であることがより好ましく、0.1質量%~1.0質量%であることが特に好ましい。含水率は、カールフィッシャー法にて測定することができる。
【0194】
<収容容器>
本開示に係る硬化性組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や硬化性組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
また、本開示に係る硬化性組成物や、イメージセンサを製造するために用いられる組成物は、容器内壁からの金属溶出を防ぎ、組成物の保存安定性を高め、成分変質を抑制する目的で、収容容器の内壁をガラス製やステンレス製などにすることも好ましい。
【0195】
<硬化性組成物の製造方法>
本開示に係る硬化性組成物は、上述の成分を混合して製造できる。硬化性組成物の製造に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解及び/又は分散して硬化性組成物を製造してもよいし、必要に応じて、各成分を適宜2つ以上の溶液又は分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して硬化性組成物を製造してもよい。
【0196】
また、硬化性組成物の製造に際して、顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。
【0197】
硬化性組成物の製造にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、硬化性組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)及びナイロンが好ましい。
【0198】
フィルタの孔径は、0.01μm~7.0μmが好ましく、0.01μm~3.0μmがより好ましく、0.05μm~0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール(株)(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋(株)、日本インテグリス(株)(旧日本マイクロリス(株))及び(株)キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0199】
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。
【0200】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0201】
(硬化物)
本開示に係る硬化物は、本開示に係る硬化性組成物を硬化してなる硬化物である。
本開示に係る硬化物は、カラーフィルタなどに好適に用いることができる。具体的には、カラーフィルタの着色層(画素)として好ましく用いることができる。
本開示に係る硬化物は、膜状の硬化物(硬化膜)であることが好ましく、その膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。例えば、膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
【0202】
(カラーフィルタ)
次に、本開示に係るカラーフィルタについて説明する。
本開示に係るカラーフィルタは、本開示に係る硬化物を有し、カラーフィルタの画素として、本開示に係る硬化物を有することが好ましい。本開示に係るカラーフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や画像表示装置などに用いることができる。
上記カラーフィルタの画素としては、特に制限はないが、赤色画素、緑色画素、青色画素、シアン色画素、イエロー色画素、マゼンタ色画素等が挙げられる。
【0203】
本開示に係るカラーフィルタにおいて本開示に係る硬化物からなる膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
【0204】
本開示に係るカラーフィルタは、画素の幅が0.5μm~20.0μmであることが好ましい。下限は、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましい。上限は、15.0μm以下であることが好ましく、10.0μm以下であることがより好ましい。また、画素のヤング率が0.5GPa~20GPaであることが好ましく、2.5GPa~15GPaがより好ましい。
【0205】
本開示に係るカラーフィルタに含まれる各画素は高い平坦性を有することが好ましい。具体的には、画素の表面粗さRaは、100nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが更に好ましい。下限は規定されないが、例えば0.1nm以上であることが好ましい。画素の表面粗さは、例えばVeeco社製のAFM(原子間力顕微鏡) Dimension3100を用いて測定することができる。また、画素上の水の接触角は適宜好ましい値に設定することができるが、典型的には、50~110°の範囲である。接触角は、例えば接触角計CV-DT・A型(協和界面科学(株)製)を用いて測定できる。また、画素の体積抵抗値は高いことが好ましい。具体的には、画素の体積抵抗値は10Ω・cm以上であることが好ましく、1011Ω・cm以上であることがより好ましい。上限は規定されないが、例えば1014Ω・cm以下であることが好ましい。画素の体積抵抗値は、例えば超高抵抗計5410(アドバンテスト社製)を用いて測定することができる。
また、本開示に係る硬化性組成物を硬化してなる画素は、国際公開第2019/102887号に記載された画素構成にも好適に使用することができる。
【0206】
また、本開示に係るカラーフィルタは、本開示に係る硬化物の表面に保護層を設けてもよい。保護層を設けることで、酸素遮断化、低反射化、親疎水化、特定波長の光(紫外線、近赤外線等)の遮蔽等の種々の機能を付与することができる。保護層の厚さとしては、0.01μm~10μmが好ましく、0.1μm~5μmが更に好ましい。保護層の形成方法としては、有機溶剤に溶解した樹脂組成物を塗布して形成する方法、化学気相蒸着法、成型した樹脂を接着材で貼りつける方法等が挙げられる。保護層を構成する成分としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、セルロース樹脂、Si、C、W、Al、Mo、SiO、Siなどが挙げられ、これらの成分を二種以上含有しても良い例えば、酸素遮断化を目的とした保護層の場合、保護層はポリオール樹脂、SiO、Siを含むことが好ましい。また、低反射化を目的とした保護層の場合、保護層は(メタ)アクリル樹脂、フッ素樹脂を含むことが好ましい。
【0207】
樹脂組成物を塗布して保護層を形成する場合、樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコート法、キャスト法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の公知の方法を用いることができる。樹脂組成物に含まれる有機溶剤は、公知の有機溶剤(例えば、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、シクロペンタノン、乳酸エチル等)を用いることが出来る。保護層を化学気相蒸着法にて形成する場合、化学気相蒸着法としては、公知の化学気相蒸着法(熱化学気相蒸着法、プラズマ化学気相蒸着法、光化学気相蒸着法)を用いることができる
【0208】
保護層は、必要に応じて、有機又は無機粒子、特定波長(例えば、紫外線、近赤外線等)の吸収剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、密着剤、界面活性剤等の添加剤を含有してもよい。有機又は無機粒子の例としては、例えば、高分子粒子(例えば、シリコーン樹脂粒子、ポリスチレン粒子、メラミン樹脂粒子)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アルミニウム、窒化チタン、酸窒化チタン、フッ化マグネシウム、中空シリカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。特定波長の吸収剤は公知の吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤及び近赤外線吸収剤としては、上述した素材が挙げられる。これらの添加剤の含有量は適宜調整できるが、保護層の全重量に対して、0.1質量%~70質量%が好ましく、1質量%~60質量%がより好ましい。
【0209】
また、保護層としては、特開2017-151176号公報の段落0073~0092に記載の保護層を用いることもできる。
【0210】
カラーフィルタは、下地層を有していてもよい。下地層は、例えば、上述した本開示に係る硬化性組成物から着色剤を除いた組成物などを用いて形成することもでき、また、下地層を形成する組成物は、上述したバインダーポリマー、界面活性剤、及び、重合性化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
更に、カラーフィルタ、好ましくは赤色、緑色及び青色(RGB)の画素を有するカラーフィルタにおける下地層の表面接触角は、ジヨードメタンで測定した際に20度~70度であることが好ましく、また、水で測定した際に30度~80度であることが好ましい。上記接触角範囲であると、カラーフィルタ形成時の塗れ性が適度であり、また、下地層を形成する組成物の塗布性にも優れる。上記接触角範囲にするためには、界面活性剤の添加などの方法が挙げられる。
【0211】
<カラーフィルタの製造方法>
次に、本開示に係るカラーフィルタの製造方法について説明する。
本開示に係るカラーフィルタは、本開示に係る硬化性組成物を用いて支持体上に硬化性組成物層を形成する工程と、フォトリソグラフィ法又はドライエッチング法により硬化性組成物層に対してパターンを形成する工程と、を経て好適に製造できる。
【0212】
-フォトリソグラフィ法-
まず、フォトリソグラフィ法によりパターンを形成してカラーフィルタを製造する場合について説明する。
フォトリソグラフィ法によるパターン形成は、本開示に係る硬化性組成物を用いて支持体上に硬化性組成物層を形成する工程と、硬化性組成物層をパターン状に露光する工程と、硬化性組成物層の未露光部を現像除去してパターン(画素)を形成する工程と、を含むことが好ましい。必要に応じて、硬化性組成物層をベークする工程(プリベーク工程)、及び、現像されたパターン(画素)をベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。
【0213】
硬化性組成物層を形成する工程では、本開示に係る硬化性組成物を用いて、支持体上に着色組成物層を形成する。支持体としては、特に限定は無く、用途に応じて適宜選択できる。例えば、ガラス基板、シリコン基板などが挙げられ、シリコン基板であることが好ましい。また、シリコン基板には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、シリコン基板には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、シリコン基板には、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。
【0214】
硬化性組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(例えば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、硬化性組成物の塗布方法については、国際公開第2017/030174号、国際公開第2017/018419号の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0215】
支持体上に形成した硬化性組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスにより膜を製造する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10秒~300秒が好ましく、40秒~250秒がより好ましく、80秒~220秒が更に好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0216】
<<露光工程>>
次に、硬化性組成物層をパターン状に露光する(露光工程)。例えば、硬化性組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン状に露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
【0217】
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180nm~300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。また、300nm以上の長波な光源も利用できる。
【0218】
照射量(露光量)は、0.03J/cm~2.5J/cmが好ましく、0.05J/cm~1.0J/cmがより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、又は、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、又は、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、好ましくは1,000W/m~100,000W/m(例えば、5,000W/m、15,000W/m、又は、35,000W/m)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10,000W/m、酸素濃度35体積%で照度20,000W/mなどとすることができる。
【0219】
次に、硬化性組成物層の未露光部を現像除去してパターン(画素)を形成する。着色組成物層の未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の硬化性組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液としては、下地の素子や回路などにダメージを起さない有機アルカリ現像液が望ましい。現像液の温度は、例えば、20℃~30℃が好ましい。現像時間は、20秒~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、更に新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0220】
現像液は、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液(アルカリ現像液)であることが好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面及び安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、更に界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0221】
現像後、乾燥を施した後に追加露光処理や加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。追加露光処理やポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の硬化処理である。ポストベークにおける加熱温度は、例えば100℃~240℃が好ましく、200℃~240℃がより好ましい。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。追加露光処理を行う場合、露光に用いられる光は、波長400nm以下の光であることが好ましい。また、追加露光処理は、韓国公開特許第20170122130号公報に記載の方法で行ってもよい。
【0222】
-ドライエッチング法-
次に、ドライエッチング法によりパターンを形成してカラーフィルタを製造する場合について説明する。ドライエッチング法でのパターン形成は、本開示に係る硬化性組成物を用いて支持体上に硬化性組成物層を形成し、この硬化性組成物層の全体を硬化させて硬化物層を形成する工程と、この硬化物層上にフォトレジスト層を形成する工程と、フォトレジスト層をパターン状に露光したのち、現像してレジストパターンを形成する工程と、このレジストパターンをマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングする工程と、を含むことが好ましい。フォトレジスト層の形成においては、更にプリベーク処理を施すことが好ましい。特に、フォトレジスト層の形成プロセスとしては、露光後の加熱処理、現像後の加熱処理(ポストベーク処理)を実施する形態が望ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013-064993号公報の段落0010~0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0223】
<固体撮像素子>
本開示に係る固体撮像素子は、本開示に係る硬化物を備え、本開示に係るカラーフィルタを有することが好ましい。
本開示に係る固体撮像素子の好ましい一態様としては、赤色画素、緑色画素、及び、青色画素よりなる群から選ばれた少なくとも1つの画素が本開示に係る硬化物である態様が挙げられる(RGB画素)。
また、本開示に係る固体撮像素子の好ましい他の一態様としては、シアン色画素、イエロー色画素、及び、マゼンタ色画素よりなる群から選ばれた少なくとも1つの画素が本開示に係る硬化物である態様が挙げられる(CMY画素)。
本開示に係る固体撮像素子の構成としては、本開示に係る硬化物を備え、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0224】
基板上に、固体撮像素子(CCD(電荷結合素子)イメージセンサ、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオード及び転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口した遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面及びフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、カラーフィルタを有する構成である。更に、デバイス保護膜上であってカラーフィルタの下(基板に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、カラーフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各着色画素が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各着色画素に対して低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報、国際公開第2018/043654号に記載の装置が挙げられる。本開示に係る固体撮像素子を備えた撮像装置は、デジタルカメラや、撮像機能を有する電子機器(携帯電話等)の他、車載カメラや監視カメラ用としても用いることができる。
また、本開示に係る固体撮像素子は、特開2019-211559号公報に記載されているように、固体撮像素子の構造内に紫外線吸収層(UVカットフィルタ)を設けることにより、カラーフィルタの耐光性を改良してもよい。
【0225】
(画像表示装置)
本開示に係る画像表示装置は、本開示に係る硬化物を備え、本開示に係るカラーフィルタを有することが好ましい。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や各画像表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木昭夫著、(株)工業調査会、1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、(株)工業調査会、1994年発行)」に記載されている。液晶表示装置としては、特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置が挙げられる。
【実施例
【0226】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成単位の比率はモル百分率である。
【0227】
-チオール価の測定方法-
1.呈色液の調製:5,5’-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)(DTNB)が2.5mM、トリエチルアミン2.7mMのアセトン溶液を調製した。
2.検量線用サンプルの調製:3-メルカプトプロピオン酸が0.1M(=0.1mol/l)となるように高速液体クロマトグラフィ(HPLC)用の溶離液で希釈した溶液を作製した。
3.1.で調製した液に2.で調製した液を使用し3-メルカプトプロピオン酸が0.2mMになるように加えたサンプルを室温で20分撹拌した。上記のサンプルを加えた3-メルカプトプロピオン酸が0.1ppm、1ppm、10ppm、100ppmになるように希釈した検量線用サンプルを作製した。
4.各実施例サンプルを10g、1.で調製した液を50mL混合した液を室温で20分撹拌し、100mLメスフラスコに反応液を入れアセトン5mLで洗いこみ、HPLC用の溶離液でメスアップした。
5.4.で得られたサンプルをフィルターろ過し、測定サンプルとした。
6.下記HPLCの測定により2-nitro-5-mercaptobenzoic acidを定量した。検量線サンプルの結果より検量線を取得し、それをもとに実施例サンプル中に含まれるチオール基のmol量を算出しチオール価とした。
【0228】
<<HPLCの測定条件>>
溶離液:リン酸及びトリエチルアミンを各0.2%含有する水溶液を作製し、メタノールと混合し、90/10(上記水溶液/メタノール)の比率に調整したもの
測定機器:Agilent-1200(アジレント・テクノロジー(株)製)
カラム:Phenomenex社製Synergi 4u Polar-RP 80A、250mm×4.60mm(内径)+ガードカラム
カラム温度:40℃
分析時間:15分
流速:1.0mL/min(最大送液圧力:182bar(18.2MPa))
注入量:5μL
検出波長:412nm
【0229】
-重量平均分子量の測定方法-
各マクロモノマー、及び、樹脂の重量平均分子量(Mw)は、下記測定条件の下、GPC(Gel permeation chromatography)測定により算出した。
装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
検出器:示差屈折計(RI検出器)
プレカラム TSKGUARDCOLUMN SUPERAW-H4.6mm×35mm(東ソー(株)製)
サンプル側カラム:以下4本を直列で直結した(全て東ソー(株)製)。
TSK-GEL SuperAW-4000 6.0mm×150mm
TSK-GEL SuperAW-3000 6.0mm×150mm
TSK-GEL SuperAW-2500 6.0mm×150mm
TSK-GEL SuperAW-2500 6.0mm×150mm
リファレンス側カラム:サンプル側カラムに同じ
恒温槽温度:40℃
移動相:臭化リチウムを10mmol/Lとなるよう添加したN-メチルピロリドン溶液
サンプル側移動相流量:0.5mL/分
リファレンス側移動相流量:0.1mL/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:100μL
データ採取時間:試料注入後16分~60分
サンプリングピッチ:300ms(ミリ秒)
【0230】
-酸価の測定方法-
各樹脂の酸価は、水酸化ナトリウム水溶液を用いた中和滴定により求めた。具体的には、得られた樹脂を溶媒に溶解させた溶液に、電位差測定法を用いて水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、樹脂の固形1gに含まれる酸のミリモル数を算出し、次に、その値を水酸化カリウム(KOH)の分子量56.1をかけることにより求めた。なお、酸価の単位は、mgKOH/gである。
【0231】
<樹脂の合成>
(樹脂B-1の合成)
メチルメタクリレート50質量部、n-ブチルメタクリレート50質量部、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)45.4質量部を反応容器に仕込み、雰囲気ガスを窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール6質量部を添加して、更にAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.12質量部を加え、12時間反応させた。固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物9.7質量部、PGMEA70.3質量部、触媒としてDBU(1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン)0.20質量部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。PGMEAを加えて不揮発分(固形分濃度)を20質量%に調整し、酸価43mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)9,000の樹脂B-1の樹脂溶液を得た。
【0232】
【化19】
【0233】
(樹脂B-2の合成)
メチルメタクリレート50質量部、n-ブチルメタクリレート30質量部、t-ブチルメタクリレート20質量部、PGMEA45.4質量部を反応容器に仕込み、雰囲気ガスを窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール6質量部を添加して、更にAIBN0.12質量部を加え、12時間反応させた。固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物9.7質量部、PGMEA70.3質量部、触媒としてDBU0.20質量部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。PGMEAを加えて不揮発分(固形分濃度)を20質量%に調整し、酸価43mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)9,000の樹脂B-2の樹脂溶液を得た。
【0234】
【化20】
【0235】
(樹脂B-3の合成)
樹脂B-2の合成において、t-ブチルメタクリレート20質量部を、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレートに変更した以外は同様にして、酸価43mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)9,000の樹脂B-3の樹脂溶液を得た。
【0236】
【化21】
【0237】
(樹脂B-4の合成)
樹脂B-2の合成において、t-ブチルメタクリレート20質量部を、昭和電工(株)製「カレンズMOI-BM」に変更した以外は同様にして、酸価43mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)9,000の樹脂B-4の樹脂溶液を得た。
【0238】
【化22】
【0239】
(樹脂B-5の合成)
3-メルカプト-1,2-プロパンジオール6.0質量部、ピロメリット酸無水物9.5質量部、PGMEA62質量部、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン0.2質量部を反応容器に仕込み、雰囲気ガスを窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認した後、系内の温度を70℃に冷却し、メチルメタクリレート65質量部、エチルアクリレート5.0質量部、t-ブチルアクリレート15質量部、メタクリル酸5.0質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート10質量部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を溶解したPGMEA溶液53.5質量部を添加して、10時間反応させた。固形分測定により重合が95%進行したことを確認し反応を終了した。PGMEAを加えて不揮発分(固形分濃度)を20質量%に調整し、酸価70.5mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)10,000の樹脂B-5の樹脂溶液を得た。
【0240】
【化23】
【0241】
(樹脂B-6の合成)
1-チオグリセロール108質量部、ピロメリット酸無水物174質量部、メトキシプロピルアセテート650質量部、触媒としてモノブチルスズオキシド0.2質量部を反応容器に仕込み、雰囲気ガスを窒素ガスで置換した後、120℃で5時間反応させた(第一工程)。酸価の測定で95%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認した。次に、第一工程で得られた化合物を固形分換算で160質量部、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート200質量部、エチルアクリレート200質量部、t-ブチルアクリレート150質量部、2-メトキシエチルアクリレート200質量部、メチルアクリレート200質量部、メタクリル酸50質量部、PGMEA663質量部を反応容器に仕込み、反応容器内を80℃に加熱して、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.2質量部を添加し、12時間反応させた(第二工程)。固形分測定により95%が反応したことを確認した。最後に、第二工程で得られた化合物の50質量%PGMEA溶液500質量部、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)27.0質量部、ヒドロキノン0.1質量部を反応容器に仕込み、イソシアネート基に基づく2,270cm-1のピークの消失を確認するまで反応を行った(第三工程)。ピーク消失の確認後、反応溶液を冷却して、PGMEAを加えて不揮発分(固形分濃度)を20質量%に調整し、酸価68mgKOH/g、エチレン性不飽和結合価0.62mmol/g、重量平均分子量(Mw)13,000の樹脂B-6の樹脂溶液を得た。
【0242】
【化24】
【0243】
(樹脂B-7の合成)
メチルメタクリレート40質量部、n-ブチルメタクリレート60質量部、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)45.4質量部を反応容器に仕込み、雰囲気ガスを窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール8質量部を添加して、更にAIBN0.12質量部を加え、12時間反応させた。固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物13質量部、PGMEA70.3質量部、触媒としてDBU0.20質量部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。PGMEAを加えて不揮発分(固形分濃度)を20質量%に調整し、酸価55mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)10,000の樹脂B-7の樹脂溶液を得た。
【0244】
【化25】
【0245】
(樹脂B-8の合成)
メチルメタクリレート50質量部、n-ブチルメタクリレート50質量部、PGMEA45.4質量部を反応容器に仕込み、雰囲気ガスを窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、2-メルカプトエタノール4.3質量部を添加して、更にAIBN0.12質量部を加え、12時間反応させた。固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)8.3質量部、ヒドロキノン0.1質量部を反応容器に仕込み、イソシアネート基に基づく2,270cm-1のピークの消失を確認するまで70℃で反応を行った。更にメタクリル酸10質量部とPGMEA250質量部を加えた後、ドデシルメルカプタン1質量部、AIBN0.12質量部を加え、70℃12時間反応させた。PGMEAを加えて不揮発分(固形分濃度)を20質量%に調整し、酸価53mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)10,000の樹脂B-8の樹脂溶液を得た。
【0246】
【化26】
【0247】
(樹脂B-9の合成)
<マクロモノマーB9-1の合成>
マクロモノマーB9-1の合成方法を以下に示す。
三口フラスコに、ε-カプロラクトン(1,044.2部)、δ-バレロラクトン(184.3部)、及び、2-エチル-1-ヘキサノール(71.6部)を導入し、混合物を得た。次に、窒素を吹き込みながら、上記混合物を撹拌した。
次に、混合物にモノブチル錫オキシド(0.61部)を加え、得られた混合物を90℃に加熱した。6時間後、H-NMR(nuclear magnetic resonance)を用いて、混合物中における2-エチル-1-ヘキサノールに由来するシグナルが消失したのを確認後、混合物を110℃に加熱した。窒素下にて110℃で12時間重合反応を続けた後、H-NMRでε-カプロラクトン及びδ-バレロラクトンに由来するシグナルの消失を確認し、得られた化合物について、GPC法(Gel permeation chromatography、後述する測定条件による。)により分子量測定を行った。化合物の分子量が所望の値に到達したことを確認した後、上記化合物を含有する混合物に2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(0.35部)を添加した後、更に、得られた混合物に対して、2-メタクリロイロキシエチルイソシアネート(87.0部)を30分かけて滴下した。滴下終了から6時間後、H-NMRにて2-メタクリロイロキシエチルイソシアネート(MOI)に由来するシグナルが消失したのを確認後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(1,387.0部)を混合物に添加し、濃度が50質量%のマクロモノマーB9-1溶液(2,770部)を得た。マクロモノマーB9-1の構造は、H-NMRにより確認した。得られたマクロモノマーB9-1の重量平均分子量は3,000であった。
【0248】
【化27】
【0249】
<樹脂B-9の合成>
三口フラスコに、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート:71.37部、PGMEA:268.2部を導入し、窒素をフラスコ内に流しながら、混合物を75℃まで昇温した。別に、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート:71.37部、濃度(固形分含有量)が50質量%のマクロモノマーB-1溶液229.4部(PGMEA:114.7部、マクロモノマーB-1:114.7部)、PGMEA:182.0部、ドデシルメルカプタン:2.54部、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸メチル)(以下、「V-601」と記載):1.73部を混合した滴下溶液を調整した。ドデシルメルカプタン:0.89部とPGMEA:8.5部の混合液をフラスコ内に添加した後に、先に調整した滴下溶液を4時間かけて滴下した。滴下完了後、PGMEA:21.1部を添加し、更に混合物を75℃で2時間加熱した。更にV-601:0.87部、PGMEA:8.4部の混合液を追加し、90℃に昇温し3時間加熱し、重合反応を終了した。
フラスコ内を空気に置換したあとに、2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン1-オキシル:0.2部、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル:24.9部、ジメチルドデシルアミン:7.7部、PGMEA:20.3部を添加し、90℃で48時間加熱した後、反応を終了した。得られた混合物に2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン1-オキシル:7.81部、PGMEA:27.8部を追加することで樹脂B-9の30質量%溶液を得た。
得られた樹脂B-9の重量平均分子量は18,500、酸価は68mgKOH/mgであった。
【0250】
(樹脂C-1の合成)
反応容器にシクロヘキサノン70質量部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でN-置換マレイミドとしてシクロへキシルマレイミド50質量部と、ヒドロキシエチルメタクリレート15質量部と、メタクリル酸12質量部と、メチルメタクリレート23質量部と、アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部の混合物を2時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、更に80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部をシクロヘキサノン10質量部に溶解させたものを添加し、更に80℃で1時間反応を続けて、樹脂溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして130℃、2時間加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液の不揮発分(固形分濃度)が20質量%になるようにシクロヘキサノンを添加して樹脂C-1の樹脂溶液を得た。得られた樹脂C-1の酸価78mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は14,000であった。下記の構造式において、主鎖に付記した数値は質量比である。
【0251】
【化28】
【0252】
(樹脂C-3の合成)
反応容器にシクロヘキサノン70質量部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でN-置換マレイミドとしてフェニルマレイミド50質量部と、メタクリル酸16.5質量部と、メチルメタクリレート23質量部と、アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部の混合物を2時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、更に80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部をシクロヘキサノン10質量部に溶解させたものを添加し、更に80℃で1時間反応を続けた。次に、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル10.5質量部とテトラブチルアンモニウムブロミド0.5質量部を添加し、空気下90℃で24時間反応を続けた。酸価測定により反応終了を確認した後、室温まで冷却し、樹脂溶液約2gをサンプリングして130℃、2時間加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液の不揮発分(固形分濃度)が20質量%になるようにシクロヘキサノンを添加して樹脂C-3の樹脂溶液を得た。得られた樹脂C-3の酸価78mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は16000であった。下記の構造式において、主鎖に付記した数値は質量比である。
【0253】
【化29】
【0254】
(樹脂C-4の合成)
樹脂C-4の合成において、シクロへキシルマレイミド55質量部と、ヒドロキシエチルメタクリレート10質量部と、メタクリル酸8質量部と、メチルメタクリレート27質量部に変更した以外は同様にして、酸価52mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)13,000の樹脂C-4の樹脂溶液を得た。下記の構造式において、主鎖に付記した数値は質量比である。
【0255】
【化30】
【0256】
(樹脂D-3の合成)
反応容器にシクロヘキサノン70.0質量部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn-ブチルメタクリレート13.3質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート4.6質量部、メタクリル酸4.3質量部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成(株)製「アロニックスM110」)7.4質量部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、重量平均分子量(Mw)26,000のアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が0質量%になるようにメトキシプロピルアセテートを添加して樹脂D-3の樹脂溶液を
調製した。
【0257】
<分散液の調製>
下記の表1~表3に記載の原料を混合したのち、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を製造した。下記の表に記載の数値は質量部である。なお、樹脂(分散剤)の配合量の値は、それぞれ固形分20質量%の樹脂溶液での配合量の値である。
【0258】
【表1】
【0259】
【表2】
【0260】
【表3】
【0261】
上記表1~表3に記載の略語は,以下の通りである。
(顔料)
PR254:C.I.Pigment Red 254
PR264:C.I.Pigment Red 264
PR272:C.I.Pigment Red 272
PR122:C.I.Pigment Red 122
PO71:C.I.Pigment Orange 71
PG58:C.I.Pigment Green 58
PG36:C.I.Pigment Green 36
PG59:C.I.Pigment Green 59
PG62:C.I.Pigment Green 62
PG63:C.I.Pigment Green 63
PY139:C.I.Pigment Yellow 139
PY150:C.I.Pigment Yellow 150
PY185:C.I.Pigment Yellow 185
PB15:3:C.I.Pigment Blue 15:3
PB15:6:C.I.Pigment Blue 15:6
PV23:C.I.Pigment Violet 23
【0262】
(顔料誘導体)
誘導体1~5:下記構造の化合物
【0263】
【化31】
【0264】
(樹脂(分散剤))
B-1~B-9:上述した樹脂B-1~B-9の樹脂溶液
【0265】
(実施例1~71、及び、比較例1~12)
<着色組成物の調製>
下記の表4~表6に記載の原料を混合して、硬化性組成物を調製した。なお、下記の表4~表6中の着色剤濃度の値は、硬化性組成物の全固形分中における着色剤の含有量(顔料及び顔料誘導体の合計の含有量)の値である。また、樹脂C-1~C-4及びD-3の配合量の値は、それぞれ固形分20質量%の樹脂溶液での配合量の値である。
【0266】
【表4】
【0267】
【表5】
【0268】
【表6】
【0269】
上記表4~表6に記載の略語は以下の通りである。
【0270】
(分散液)
分散液R1~R14:上述した分散液R1~R14
分散液G1~G17:上述した分散液G1~G17
分散液B1~B4:上述した分散液B1~B4
【0271】
(樹脂又は樹脂溶液)
C-1、C-3、C-4:上述した樹脂C-1、C-3、C-4の樹脂溶液
C-2:アロニックスUVT-302(東亞合成(株)製、マレイミド構造を有する樹
脂)にシクロヘキサノンを添加して固形分濃度を20質量%に調整した樹脂溶液。
D-1:下記構造の樹脂。主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=30,000。
D-2:下記構造の樹脂。D-2はエチレン性不飽和基を有する繰り返し単位を含む樹
脂である。主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=11,000。
D-3:上述した樹脂D-3の樹脂溶液
【0272】
【化32】
【0273】
(重合性化合物)
E-1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD DPHA、分子量578)
E-2:トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成(株)製、アロニックスM-309、分子量296)
E-3:イソシアヌル酸トリス(2-アクリロイルオキシエチル)(東亞合成(株)製、アロニックスM-315、分子量423)
【0274】
(光重合開始剤)
G-1:IRGACURE OXE02(BASF社製)
G-2:IRGACURE 369(BASF社製)
G-3:IRGACURE OXE01(BASF社製)
【0275】
(添加剤)
H-1:EHPE-3150((株)ダイセル製、エポキシ化合物)
H-2:TINUVIN326(BASF社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)
【0276】
(界面活性剤)
I-1:下記混合物(Mw=14,000)の1質量%PGMEA溶液。下記の式中、構成単位の割合を示す%は質量%である。
【0277】
【化33】
【0278】
(重合禁止剤)
J-1:p-メトキシフェノール
【0279】
(溶剤)
K-1:PGMEA
K-2:シクロヘキサノン
【0280】
(チオール化合物)
各チオール化合物T1-1等は、上述したチオール化合物T1-1等とそれぞれ同じ化合物である。
また、チオール化合物TR-1~TR-4は、上述したチオール化合物TR-1~TR-4とそれぞれ同じ化合物である。
【0281】
<性能評価>
(パターン密着性の評価)
上記で得た硬化性組成物を、予めヘキサメチルジシラザンを噴霧した8インチのシリコンウエハの上に、乾燥後膜厚が記載の膜厚(μm)になるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃で120秒間プリベークした。
塗布基板をi線ステッパー露光装置FPA-i5+(キヤノン(株)製)を使用して、塗布膜に365nmの波長で、1.1μm四方のアイランドパターンを有するマスクを通し、50mJ/cm~1,700mJ/cmの露光量で照射した。露光後、アルカリ現像液CD-2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を使用して、25℃40秒間の条件で現像した。その後、流水で30秒間リンスした後、スプレー乾燥し、着色パターンを得た。
得られた1.1μm四方のアイランドパターンについて、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S-9220)を用いてパターン上方から観察し、パターンサイズ計測を行った。また、光学顕微鏡を用いて密着性の評価を行った。全てのパターンが密着している時のパターンサイズを下記5段階で評価した。
評価「3」以上が好ましく、「4」及び「5」は優れた性能を有すると評価する。
5:膜厚が0.9μm以上1.0μm未満であっても全てのパターンが密着する。
4:膜厚が1.0μm以上1.05μm未満であっても全てのパターンが密着する。
3:膜厚が1.05μm以上1.1μm未満であっても全てのパターンが密着する。
2:膜厚が1.1μm以上1.2μm未満であっても全てのパターンが密着する。
1:膜厚が1.2μm以上でないと全てのパターンが密着しない。
【0282】
<硬化物のエッジ形状の評価>
以下の方法により、各硬化性組成物を用いて形成したパターン状の硬化物のエッジ形状を評価した。
【0283】
〔硬化性組成物膜形成工程〕
シリコンウェハ上に、乾燥後の膜厚が0.9μmになるように、硬化性組成物膜(組成物膜)を形成した。硬化性組成物膜の形成は、スピンコートを用いて行った。上記膜厚となるよう、スピンコートの回転数を調整した。塗布後の硬化性組成物膜を、シリコンウェハを下にしてホットプレート上に載置して乾燥した。ホットプレートの表面温度は100℃で、乾燥時間は、120秒間とした。
【0284】
〔露光工程〕
得られた硬化性組成物膜を、以下の条件で露光した。
露光は、i線ステッパー(商品名「FPA-3000iS+」、キャノン社製)を用いて行った。硬化性組成物膜に対して、線形20μm(幅20μm、長さ4mm)を有するマスクを介して400mJ/cmの露光量(照射時間0.5秒)で照射(露光)した。
【0285】
〔現像工程〕
硬化後の硬化性組成物膜を、以下の条件により現像し、パターン状の硬化膜を得た。
硬化後の硬化性組成物膜に対して、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)0.3質量%水溶液を用いて、23℃で、60秒間のパドル現像を5回繰り返し、パターン状の硬化物を得た。その後、パターン状の硬化物をスピンシャワーを用いてリンスし、更に純水で洗浄した。
【0286】
〔ポストベーク工程〕
上記で得られたパターン状の硬化物を、クリーンオーブンCLH-21CDH(光洋サーモシステム(株)製)を用いて220℃で300秒間加熱した。
更に、加熱後のパターン状の硬化物を、表面温度220℃のホットプレートに載置し、300秒間加熱した。
【0287】
〔評価〕
上記のパターン状の硬化物を走査型電子顕微鏡で撮影し、1.5μmパターン断面のエッジ形状を下記基準にて評価した。
図1に示すように、ウエハ4上に形成されたパターン状の硬化物1のパターンエッジ部2の底部の切れ込みの長さTを測定した。なお、図1において、Lは露光領域、Lは未露光領域に相当する。評価は以下の基準により行った。
評価「A」以上が好ましく、「AA」は優れた性能を有すると評価する。
-評価基準-
AA:アンダーカット幅が0.05μm以下だった。
A:アンダーカット幅が0.05μm超、0.15μm以下だった。
B:アンダーカット幅が0.15μm超、0.25μm以下だった。
C:アンダーカット幅が0.25μm超だった。
【0288】
(欠陥の評価)
直径8インチ(1インチ=25.4mm)のシリコンウエハをオーブン中で200℃のもと30分加熱処理した。次いで、このシリコンウエハ上に、下塗り用レジスト液(CT-4000、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を乾燥膜厚が0.1μmになるように塗布し、更に220℃のオーブン中で1時間加熱乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付シリコンウエハ基板を得た。
得られた硬化性組成物を、上記で作製した下塗り層付シリコンウエハ基板の下塗り層上に塗布した。次いで、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行なった。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を使用して365nmの波長で、パターンを有するマスクを通して500mj/cm2の露光量で露光した。マスクは1.4μm×1.4μmのアイランドパターンを2.8μm×2.8μmの周期で形成可能なものを用い、11mm×11mmのサイズのショットをウエハの外周3mmを除く全領域に露光した。
次いで、照射された塗布膜が形成されている基板をスピン・シャワー現像機(DW-30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、アルカリ現像液(CD-2060、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて室温で60秒間パドル現像を行った。次いで、パドル現像後の基板を、真空チャック方式で水平回転テーブルに固定し、回転装置によってシリコンウエハを回転数50rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理(23秒×2回)を行い、次いで、スピン乾燥を行い、次いで、200℃で300秒間、ホットプレートを用いて加熱処理(ポストベーク)を行い、硬化膜のパターン(画素)を形成した。得られた硬化膜のパターンの欠陥数について、ウエハ欠陥評価装置(ComPLUS3、AMAT社製)を用いて検査した。評価は以下の基準により欠陥の評価を行った。
A:8インチウエハ内の総欠陥数≦30
B:30<8インチウエハ内の総欠陥数≦100
C:100<8インチウエハ内の総欠陥数
【0289】
【表7】
【0290】
【表8】
【0291】
【表9】
【0292】
表7~表9に記載の結果から、本開示に係る硬化性組成物である実施例1~実施例71の硬化性組成物は、比較例1~比較例12の組成物に比べて、得られるパターン状の硬化物のエッジ形状に優れることがわかる。
また、表7~表9に記載の結果から、本開示に係る硬化性組成物である実施例1~実施例71の硬化性組成物は、得られる硬化物の密着性にも優れ、また、得られるパターン状の硬化物の欠陥も少ないことがわかる。
更に、比較例1又は比較例3で検出した塗膜を走査透過型電子顕微鏡(STEM)による欠陥解析をすると比較例1では正常部に比べ欠陥部ではCa、及び、Feが検出された。比較例3では正常部に比べ欠陥部ではNa、Ca、及び、Znが検出された。
【0293】
(実施例101~実施例171)
実施例101~実施例171において、それぞれ実施例1~71の硬化性組成物を使用した。
上記硬化性組成物と色が重複しないように、後述するRed組成物、Green組成物、及び、Blue組成物のうちの重複する色の組成物を、得られた実施例1~71の硬化性組成物と入れ替えてそれぞれ使用した。例えば、実施例1~実施例32の硬化性組成物の色は、Redであり、実施例33~実施例67の硬化性組成物の色は、Greenであり、実施例68~実施例71の硬化性組成物の色は、Blueである。
【0294】
シリコンウエハ上に、Red組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を用い、1,000mJ/cmで2μm四方のドットパターンのマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、更に純水にて水洗した。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで、赤外線カットフィルタのパターン上に、Red組成物をパターニングした。同様にGreen組成物、Blue組成物を順次パターニングし、赤、緑及び青の着色パターン(Bayerパターン)を形成した。
なお、Bayerパターンとは、米国特許第3,971,065号明細書に開示されているような、一個の赤色(Red)素子と、二個の緑色(Green)素子と、一個の青色(Blue)素子とを有する色フィルタ素子の2×2アレイを繰り返したパターンである。
これを公知の方法に従い、固体撮像素子に組み込んだ。
得られた固体撮像素子について、低照度の環境下(0.001ルクス(Lux))で赤外発光ダイオード(赤外LED)により赤外線を照射し、画像の取り込みを行い、画像性能を評価した。
実施例1~実施例71で得られたいずれの硬化性組成物を使用した場合でも、好適な画像認識能と耐湿性とを有する固体撮像素子が得られた。
【0295】
実施例101~実施例171で使用した上記実施例1~71の硬化性組成物以外のRed組成物、Green組成物、及び、Blue組成物は、以下の通りである。
【0296】
-Red組成物-
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Red組成物を調製した。
Red顔料分散液:51.7質量部
樹脂4(40質量%PGMEA溶液):0.6質量部
重合性化合物4:0.6質量部
光重合開始剤1:0.3質量部
界面活性剤1:4.2質量部
PGMEA:42.6質量部
【0297】
-Green組成物-
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Green組成物を調製した。
Green顔料分散液:73.7質量部
樹脂4(40質量%PGMEA溶液):0.3質量部
重合性化合物1:1.2質量部
光重合開始剤1:0.6質量部
界面活性剤1:4.2質量部
紫外線吸収剤(UV-503、大東化学(株)製):0.5質量部
PGMEA:19.5質量部
【0298】
-Blue組成物-
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Blue組成物を調製した。
Blue顔料分散液:44.9質量部
樹脂4(40質量%PGMEA溶液):2.1質量部
重合性化合物1:1.5質量部
重合性化合物4:0.7質量部
光重合開始剤1:0.8質量部
界面活性剤1:4.2質量部
PGMEA:45.8質量部
【0299】
Red組成物、Green組成物、及び、Blue組成物に使用した原料は、以下の通りである。
【0300】
・Red顔料分散液
C.I.Pigment Red 254を9.6質量部、C.I.Pigment Yellow 139を4.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を6.8質量部、PGMEAを79.3質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Red顔料分散液を得た。
【0301】
・Green顔料分散液
C.I.Pigment Green 36を6.4質量部、C.I.Pigment Yellow 150を5.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.2質量部、PGMEAを83.1質量部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Green顔料分散液を得た。
【0302】
・Blue顔料分散液
C.I.Pigment Blue 15:6を9.7質量部、C.I.Pigment Violet 23を2.4質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.5部、PGMEAを82.4部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合及び分散して、顔料分散液を調製した。その後更に、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返し、Blue顔料分散液を得た。
【0303】
・重合性化合物1:KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、日本化薬(株)製)
・重合性化合物4:下記構造
【0304】
【化34】
【0305】
・重合性化合物5:下記構造(左側化合物と右側化合物とのモル比が7:3の混合物)
【0306】
【化35】
【0307】
・樹脂4:下記構造(酸価:70mgKOH/g、Mw=11,000、各構成単位における比はモル比である。)
【0308】
【化36】
【0309】
・光重合開始剤1:IRGACURE-OXE01(1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)、BASF社製)
・界面活性剤1:下記混合物(Mw=14,000)の1質量%PGMEA溶液。下記の式中、構成単位の割合を示す%(62%及び38%)の単位は、質量%である。
【0310】
【化37】
【0311】
2019年8月27日に出願された日本国特許出願第2019-154274号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0312】
1:パターン状の硬化物、2:パターンエッジ部、4:ウエハ、L:露光領域、L:未露光領域に、T:底部の切れ込みの長さ
図1