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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-28
(45)【発行日】2022-12-06
(54)【発明の名称】画像記録方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20221129BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221129BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20221129BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41J2/01 121
B41J2/01 127
B41J2/01 401
B41J2/01 501
B41M5/00 120
C09D11/40
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021548719
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2020032947
(87)【国際公開番号】W WO2021059879
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2019177119
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】幕田 俊之
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-512800(JP,A)
【文献】特表2013-513000(JP,A)
【文献】特開2011-191582(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010560(WO,A1)
【文献】特開2013-113913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第1インク組成物と、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第2インク組成物と、を有する少なくとも2つのインク組成物を準備する工程と、
基材上に前記第1インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程と、
前記基材上に付与された前記第1インク組成物に活性エネルギー線を照射し、前記第1インク組成物に含まれる重合性液晶化合物を重合し、硬化させ、第1インク膜を形成する工程と、
前記第1インク膜上に、前記第2インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程と、
前記第1インク膜上に付与された前記第2インク組成物に活性エネルギー線を照射し、前記第2インク組成物に含まれる重合性液晶化合物を重合し、硬化させ、第2インク膜を形成する工程と、を含み、
前記第1インク膜上のヘキサデカン接触角は、45°以下である画像記録方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つのインク組成物を準備する工程では、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第3インク組成物をさらに準備し、
前記第2インク膜上に、前記第3インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程と、
前記第2インク膜上に付与された前記第3インク組成物に活性エネルギー線を照射し、第3インク膜を形成する工程をさらに含み、
前記第2インク膜上のヘキサデカン接触角は、45°以下である、請求項1に記載の画像記録方法。
【請求項3】
前記第1インク膜上のヘキサデカン接触角は、3°~25°である、請求項1又は請求項2に記載の画像記録方法。
【請求項4】
前記第1インク膜を形成する工程は、
前記基材上に付与された前記第1インク組成物に活性エネルギー線を照射した後に、前記第1インク組成物の硬化膜に対して親液化処理を施し、前記第1インク膜を形成する工程である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項5】
前記親液化処理は、コロナ処理、プラズマ処理及び紫外線オゾン処理からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の画像記録方法。
【請求項6】
前記コロナ処理は、放電量70W・min/m~500W・min/mで行われる、請求項5に記載の画像記録方法。
【請求項7】
前記第1インク組成物は、さらにフッ素系界面活性剤を含み、前記フッ素系界面活性剤の含有量は、前記第1インク組成物の全量に対して、0.005質量%~0.02質量%である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項8】
前記第1インク組成物は、さらにシリコーン系界面活性剤を含み、前記シリコーン系界面活性剤の含有量は、前記第1インク組成物の全量に対して、0.005質量%~0.3質量%である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項9】
前記第1インク組成物は、さらに炭化水素系界面活性剤を含み、前記炭化水素系界面活性剤の含有量は、前記第1インク組成物の全量に対して、0.005質量%~0.3質量%である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項10】
前記第1インク組成物は、さらに界面活性剤を含み、
前記界面活性剤は、架橋性基を有する界面活性剤である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項11】
前記第1インク組成物と前記第2インク組成物とは、キラル化合物の含有量が互いに異なる、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項12】
前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物はそれぞれ、互いに異なる2種以上の重合性液晶化合物を含む、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項13】
前記基材が光吸収性の基材である、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項14】
前記基材の可視光における可視光吸収率が、50%以上である、請求項13に記載の画像記録方法。
【請求項15】
前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物はそれぞれ、有機溶剤の全量に対して、沸点80℃~300℃の有機溶剤を30質量%以上含む、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項16】
前記第1インク膜を形成する工程では、前記活性エネルギー線として紫外線を照射し、
前記第2インク膜を形成する工程では、前記活性エネルギー線として紫外線を照射する、請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶化合物を含むインクを用いた画像記録方法が提案されている。液晶化合物にキラル剤を添加して作製されるコレステリック液晶は、特異な光反射性を有しており、見る角度によって色調が変わるといった特性がある。液晶化合物を含むインクを用いると、他の画像記録材料に見られない特殊な画像を記録することができるため、包装材等の物品への特殊な装飾、セキュリティー印刷への応用が期待できる。特に、インク画像を重ね合わせることにより、幅広い色彩表現が期待できる。また、インクジェット記録方式でインク画像を記録することにより、より複雑な画像表現が期待できる。
【0003】
コレステリック液晶層を積層する技術として、例えば、国際公開第2017/010560号には、液晶組成物を硬化した層の表面に、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を塗布すること、及び塗布された液晶組成物を硬化することを含むフィルムの製造方法が開示されている。また、国際公開第2017/057316号には、ラビングした配向膜上に、円盤状液晶組成物1の塗布液を塗布し、紫外線を照射して下層を得る工程と、円盤状液晶組成物2の塗布液を下層の上に塗布し、紫外線を照射する工程と、を含む光学フィルムの製造方法が開示されている。国際公開第2017/007007号には、重合性組成物を硬化した層を少なくとも3層含むフィルムであって、3層が、赤色光波長域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶相を固定した層、緑色光波長域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶相を固定した層、及び青色光波長域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶相を固定した層であるフィルムが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、インク画像を重ね合わせる際、先に記録されているインク画像に対して、後から記録されるインク画像が弾かれる「ハジキ」といった現象が発生する場合がある。特に、インクジェット記録方式を用いた画像記録では、微小なインク滴を吐出して画像を記録するため、ハジキがより発生しやすい。国際公開第2017/010560号、国際公開第2017/057316号及び国際公開第2017/007007号では、インクジェット記録方式を用いた画像記録におけるハジキの発生については検討されていない。
【0005】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本開示によれば、インクジェット記録方式を用いた画像記録において、ハジキの発生を抑制することが可能な画像記録方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は以下の態様を含む。
<1>重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第1インク組成物と、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第2インク組成物と、を有する少なくとも2つのインク組成物を準備する工程と、基材上に第1インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程と、基材上に付与された第1インク組成物に活性エネルギー線を照射し、第1インク膜を形成する工程と、第1インク膜上に、第2インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程と、第1インク膜上に付与された第2インク組成物に活性エネルギー線を照射し、第2インク膜を形成する工程と、を含み、第1インク膜上のヘキサデカン接触角は、45°以下である画像記録方法。
<2>少なくとも2つのインク組成物を準備する工程では、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第3インク組成物をさらに準備し、第2インク膜上に、第3インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程と、第2インク膜上に付与された第3インク組成物に活性エネルギー線を照射し、第3インク膜を形成する工程をさらに含み、第2インク膜上のヘキサデカン接触角は、45°以下である、<1>に記載の画像記録方法。
<3>第1インク膜上のヘキサデカン接触角は、3°~25°である、<1>又は<2>に記載の画像記録方法。
<4>第1インク膜を形成する工程は、基材上に付与された第1インク組成物に活性エネルギー線を照射した後に、第1インク組成物の硬化膜に対して親液化処理を施し、第1インク膜を形成する工程である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<5>親液化処理は、コロナ処理、プラズマ処理及び紫外線オゾン処理からなる群より選択される少なくとも1種である、<4>に記載の画像記録方法。
<6>コロナ処理は、放電量70W・min/m~500W・min/mで行われる、<5>に記載の画像記録方法。
<7>第1インク組成物は、さらにフッ素系界面活性剤を含み、フッ素系界面活性剤の含有量は、第1インク組成物の全量に対して、0.005質量%~0.02質量%である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<8>第1インク組成物は、さらにシリコーン系界面活性剤を含み、シリコーン系界面活性剤の含有量は、第1インク組成物の全量に対して、0.005質量%~0.3質量%である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<9>第1インク組成物は、さらに炭化水素系界面活性剤を含み、炭化水素系界面活性剤の含有量は、第1インク組成物の全量に対して、0.005質量%~0.3質量%である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<10>第1インク組成物は、さらに界面活性剤を含み、界面活性剤は、架橋性基を有する界面活性剤である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<11>第1インク組成物と第2インク組成物とは、キラル化合物の含有量が互いに異なる、<1>~<10>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<12>第1インク組成物及び第2インク組成物はそれぞれ、互いに異なる2種以上の重合性液晶化合物を含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<13>基材が光吸収性の基材である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<14>基材の可視光における可視光吸収率が、50%以上である<13>に記載の画像記録方法。
<15>第1インク組成物及び第2インク組成物はそれぞれ、有機溶剤の全量に対して、沸点80℃~300℃の有機溶剤を30質量%以上含む、<1>~<14>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、インクジェット記録方式を用いた画像記録において、ハジキの発生を抑制することが可能な画像記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の画像記録方法について詳細に説明する。
【0009】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
[画像記録方法]
本開示の画像記録方法は、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第1インク組成物と、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第2インク組成物と、を有する少なくとも2つのインク組成物を準備する工程と、基材上に第1インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程と、基材上に付与された第1インク組成物に活性エネルギー線を照射し、第1インク膜を形成する工程と、第1インク膜上に、第2インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程と、第1インク膜上に付与された第2インク組成物に活性エネルギー線を照射し、第2インク膜を形成する工程と、を含み、第1インク膜上のヘキサデカン接触角は、45°以下である。
【0012】
インク画像を重ね合わせる際、先に記録されているインク画像に対して、後から記録されるインク画像が弾かれるといった「ハジキ」といった現象が発生する場合がある。国際公開第2017/010560号、国際公開第2017/057316号及び国際公開第2017/007007号には、液晶化合物を含む組成物をワイヤーバーを用いて塗布して、液晶層を重ね合わせる方法が記載されているが、インクジェット記録方式を用いた画像記録については検討されていない。特に、インクジェット記録方式を用いた画像記録では、微小なインク滴を吐出して画像を記録するため、ハジキがより発生しやすい。したがって、国際公開第2017/010560号、国際公開第2017/057316号及び国際公開第2017/007007号に記載されている塗布方法をインクジェット記録方式に適用した場合、ハジキの発生を抑制するには不十分であると考えられる。
【0013】
これに対して、本開示の画像記録方法では、第1インク膜上のヘキサデカン接触角が45°以下であるため、第1インク膜と第2インク組成物の親和性が向上し、ハジキの発生が抑制される。
【0014】
本開示において、ヘキサデカン接触角は、ヘキサデカンを測定領域に滴下し、接触角計を用いて25℃で測定される。ヘキサデカン接触角は、例えば、接触角計(製品名「Drop master 500」、協和界面科学社製」)を用いて測定される。
【0015】
以下、本開示の画像記録方法における各工程について説明する。
【0016】
<インク準備工程>
本開示の画像記録方法は、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第1インク組成物と、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第2インク組成物と、を有する少なくとも2つのインク組成物を準備する工程(以下、インク準備工程」という)を含む。すなわち、第1インク組成物及び第2インク組成物はいずれも、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む。第1インク組成物と第2インク組成物とは、同じであっても異なっていてもよい。第1インク組成物と第2インク組成物とが同じであるとは、第1インク組成物に含まれる成分と、第2インク組成物に含まれる成分において、種類及び含有量が同じであることを意味する。第1インク組成物と第2インク組成物とが異なるとは、第1インク組成物に含まれる成分と、第2インク組成物に含まれる成分において、種類及び含有量のうち少なくとも1つが異なることを意味する。
【0017】
第1インク組成物は、例えば、第1の重合性液晶化合物、第1のキラル化合物、第1の重合開始剤及び第1の有機溶剤を含む。また、第2インク組成物は、例えば、第2の重合性液晶化合物、第2のキラル化合物、第2の重合開始剤及び第2の有機溶剤を含む。第1の重合性液晶化合物と第2の重合性液晶化合物とは、同じであっても異なっていてもよい。第1のキラル化合物と第2のキラル化合物とは、同じであっても異なっていてもよい。第1の重合開始剤と第2の重合開始剤とは、同じであっても異なっていてもよい。第1の有機溶剤と第2の有機溶剤とは、同じであっても異なっていてもよい。
【0018】
以下、第1の重合性液晶化合物と第2の重合性液晶化合物を単に「重合性液晶化合物」として説明する。第1のキラル化合物と第2のキラル化合物を単に「キラル化合物」として説明する。第1の重合開始剤と第2の重合開始剤を単に「重合開始剤」として説明する。第1の有機溶剤と第2の有機溶剤を単に「有機溶剤」として説明する。また、第1インク組成物と第2インク組成物に対して同じ説明が可能である場合には、単に「インク組成物」として説明する。
【0019】
インク準備工程においては、第1インク組成物と第2インク組成物を準備し、さらに他のインク組成物(例えば、第3インク組成物)を準備してもよい。他のインク組成物は、第1インク組成物又は第2インク組成物と同じであっても異なっていてもよい。また、他のインク組成物は、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含むインク組成物であってもよく、これらの成分とは異なる成分を含むインク組成物であってもよい。
【0020】
第3インク組成物が重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む場合、第3インク組成物は、例えば、第3の重合性液晶化合物、第3のキラル化合物、第3の重合開始剤及び第3の有機溶剤を含む。第3の重合性液晶化合物は、第1の重合性液晶化合物及び第2の重合性液晶化合物のいずれかと同じであっても異なっていてもよい。第3のキラル化合物は、第1のキラル化合物及び第2のキラル化合物のいずれかと同じであっても異なっていてもよい。第3の重合開始剤は、第1の重合開始剤及び第2の重合開始剤のいずれかと同じであっても異なっていてもよい。第3の有機溶剤は、第1の有機溶剤及び第2の有機溶剤のいずれかと同じであっても異なっていてもよい。
【0021】
(重合性液晶化合物)
以下、インク組成物に含まれる重合性液晶化合物について説明する。
本開示において、重合性液晶化合物とは、重合性基を有する液晶化合物のことである。
液晶化合物は、棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよいが、棒状液晶化合物であることが好ましい。
【0022】
棒状液晶化合物としては、例えば、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン化合物、アゾキシ化合物、シアノビフェニル化合物、シアノフェニルエステル化合物、安息香酸エステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、シアノフェニルシクロヘキサン化合物、シアノ置換フェニルピリミジン化合物、アルコキシ置換フェニルピリミジン化合物、フェニルジオキサン化合物、トラン化合物又はアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル化合物が好ましく用いられる。棒状液晶化合物としては、低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0023】
重合性液晶化合物は、重合性基を液晶化合物に導入することで得られる。重合性基としては、例えば、重合性不飽和基、エポキシ基及びアジリジニル基が挙げられる。中でも、重合性基は、重合性不飽和基が好ましく、エチレン性不飽和基が特に好ましい。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1個~6個であり、より好ましくは1個~3個である。得られる画像の耐久性の観点からは、重合性液晶化合物は、分子内に2個の重合性基を有することがさらに好ましい。
【0024】
重合性液晶化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、米国特許第5622648号明細書、米国特許第5770107号明細書、国際公開第95/22586号、国際公開第95/24455号、国際公開第97/00600号、国際公開第98/23580号、国際公開第98/52905号公報、特開平1-272551号公報、特開平6-16616号公報、特開平7-110469号公報、特開平11-80081号公報及び特開2001-328973号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0025】
重合性液晶化合物の具体例としては、下記の化合物(1)~化合物(17)が挙げられる。なお、重合性液晶化合物は以下の例に限定されない。
【0026】
【化1】

【0027】
【化2】
【0028】
【化3】
【0029】
化合物(12)において、Xは、それぞれ独立に2~5の整数を表す。
【0030】
【化4】
【0031】
【化5】
【0032】
なお、上記例示した以外の重合性液晶化合物としては、特開昭57-165480号公報に開示されているような環式オルガノポリシロキサン化合物が挙げられる。
【0033】
インク組成物には、重合性液晶化合物が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0034】
中でも、第1インク組成物及び第2インク組成物はそれぞれ、互いに異なる2種以上の重合性液晶化合物を含むことが好ましい。2種以上の重合性液晶化合物を用いることで、色再現性をより向上させることができる。
【0035】
重合性液晶化合物の含有量は、インク組成物の全量に対して1質量%~70質量%であることが好ましく、5質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~45質量%であることが特に好ましい。
【0036】
本開示では、色再現性を向上させる観点から、第1インク組成物と第2インク組成物とは、重合性液晶化合物の種類及び重合性液晶化合物の含有量の少なくとも一方が互いに異なることが好ましい。重合性液晶化合物の種類によって、重合性液晶化合物がコレステリック液晶となったときの螺旋構造のピッチが異なり、選択的に反射する光の波長が異なる。重合性液晶化合物の種類を互いに変えることにより、互いに異なる色相のインク膜を得ることができる。また、重合性液晶化合物の含有量を互いに変えることにより、キラル化合物との混合比が変わり、互いに異なる色相のインク膜を得ることができる。
【0037】
(キラル化合物)
以下、インク組成物に含まれるキラル化合物について説明する。
キラル化合物は光学活性化合物ともいう。キラル化合物は、重合性液晶化合物の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル化合物の種類によって、誘起する螺旋構造のねじれ方向又はピッチが異なる。
【0038】
キラル化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4-3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)を用いることができ、例えば、イソソルビド誘導体及びイソマンニド誘導体が挙げられる。
【0039】
キラル化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、キラリティーを有していれば、不斉炭素原子を含まない化合物であってもよい。キラル化合物として、例えば、ビナフチル構造を有する軸不斉化合物、ヘリセン構造を有するらせん不斉化合物及びシクロファン構造を有する面不斉化合物が挙げられる。
【0040】
キラル化合物は、重合性基を有していてもよい。キラル化合物が重合性基を有する場合には、キラル化合物と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される構造単位と、キラル化合物から誘導される構造単位とを有するポリマーが形成される。キラル化合物が重合性基を有する場合、重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と同種の基であることが好ましい。したがって、キラル化合物の重合性基は、重合性不飽和基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、重合性不飽和基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和基であることが特に好ましい。また、キラル化合物自体が液晶化合物であってもよい。
【0041】
キラル化合物の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。なお、インク組成物に用いることが可能なキラル化合物は以下の例に限定されない。化合物中の「Me」はメチル基を意味する。
【0042】
【化6】
【0043】
【化7】
【0044】
【化8】
【0045】
上記化合物中、Xは、それぞれ独立に2~5の整数を表す。
【0046】
キラル化合物の含有量は、インク組成物中、重合性液晶性化合物の含有量100質量部に対し、1質量部~15質量部であることが好ましく、3質量部~10質量部であることがより好ましい。
【0047】
第1インク組成物と第2インク組成物とは、キラル化合物の含有量が互いに異なることが好ましい。キラル化合物の含有量によって、重合性液晶化合物がコレステリック液晶となった際の螺旋構造のピッチが異なり、選択的に反射する光の波長が異なる。キラル化合物の含有量を互いに変えることにより、互いに異なる色相のインク膜を得ることができる。キラル化合物の含有量を多くすると反射波長が短波長側にシフトし、キラル化合物の含有量を少なくすると反射波長が長波長側にシフトする傾向がある。
【0048】
(重合開始剤)
以下、インク組成物に含まれる重合開始剤について説明する。
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、紫外線の照射によってラジカルを生成する機能を有することがより好ましい。
【0049】
光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、分子内水素引き抜き型光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤及びカチオン系光重合開始剤が挙げられる。中でも、光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましく、具体的には、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド又はビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドが好ましい。
【0050】
重合開始剤の含有量は、インク組成物中、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して0.1質量部~20質量部であることが好ましく、0.5質量部~12質量部であることがより好ましい。
【0051】
(有機溶剤)
以下、インク組成物に含まれる有機溶剤について説明する。
有機溶剤の種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0052】
有機溶剤としては、例えば、ケトン系溶剤、アルキルハライド系溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤、ヘテロ環化合物、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤及びエーテル系溶剤が挙げられる。
【0053】
有機溶剤の含有量は、インク組成物の全量に対して20質量%~80質量%であることが好ましく、40質量%~75質量%であることが好ましく、50質量%~70質量%であることがさらに好ましい。
【0054】
インク組成物は、吐出性の観点から、有機溶剤の全量に対して、沸点80℃~300℃の有機溶剤を30質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。また、有機溶剤の沸点の範囲は、100℃~280℃であることがより好ましく、130℃~250℃であることがさらに好ましい。有機溶剤の全量に対する沸点100℃~300℃の有機溶剤の含有量の上限値は特に限定されず、例えば、100質量%である。インク組成物に含まれる有機溶剤全てが、沸点80℃~300℃の有機溶剤であることが特に好ましい。
【0055】
沸点80℃~300℃の有機溶剤としては、例えば、
エチレングリコール(沸点:198℃)、プロピレングリコール(沸点:188℃)、1,2-ブタンジオール(沸点:194℃)、2,3-ブタンジオール(沸点:183℃)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(沸点:124℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(沸点:198℃)、1,2,6-ヘキサントリオール(沸点:178℃)、1,2,3-ブタントリオール(沸点:175℃)、1,2,4-ブタントリオール(沸点:170℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、ジプロピレングリコール(沸点:231℃)、1,3-プロパンジオール(沸点:214℃)、1,3-ブタンジオール(沸点:208℃)、1,4-ブタンジオール(沸点:230℃)、1,2-ペンタンジオール(沸点:206℃)、2,4-ペンタンジオール(沸点:201℃)、2-メチル-1,3-ブタンジオール(沸点:203℃)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(沸点:203℃)、1,5-ペンタンジオール(沸点:242℃)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(沸点:208℃)、1,2-ヘキサンジオール(沸点:223℃)、1,6-ヘキサンジオール(沸点:250℃)、2,5-ヘキサンジオール(沸点:217℃)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(沸点:243℃)、トリエチレングリコール(沸点:287℃)、トリプロピレングリコール(沸点:273℃)、グリセリン(沸点:290℃)等の多価アルコール;
エチレングリコールジメチルエーテル(沸点:85℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点:135℃)、エチレングリコール-n-プロピルエーテル(沸点:150℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:171℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点:133℃)、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点:171℃)、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル(沸点:153℃)、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:159℃)、ジエチレングリコールメチルエーテル(沸点:194℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点:162℃)、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点:171℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:188℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点:202℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:230℃)、トリエチレングリコールメチルエーテル(沸点:249℃)、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(沸点:213℃)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(沸点:243℃)、トリエチレングリコールエチルエーテル(沸点:256℃)、ジエチレングリコール-n-ヘキシルエーテル(沸点:259℃)、トリプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(沸点:261℃)等の多価アルコールアルキルエーテル;
エチレングリコールフェニルエーテル(沸点:237℃)、プロピレングリコールフェニルエーテル(沸点:243℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(沸点:256℃)等の多価アルコールアリールエーテル;
ε-カプロラクタム(沸点:137℃)、N-メチルホルムアミド(沸点:199℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)、N-メチル-2-ピロリドン(沸点:204℃)、2-ピロリドン(沸点:245℃)、1,3-ジメチルイミダゾリジノン(沸点:220℃)、N-メチルピロリジノン(沸点:202℃)等の含窒素化合物;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点:146℃)、酢酸3-メトキシブチル(沸点:172℃)等のエステル化合物;及び
ダイアセトンアルコール(沸点:169℃)、γ-ブチロラクトン(沸点:204℃)等のケトン化合物が挙げられる。中でも、保存安定性及び吐出性の観点から、有機溶剤は、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸3-メトキシブチル、又はγ-ブチロラクトンが好ましい。
【0056】
(界面活性剤)
インク組成物は、さらに界面活性剤を含有してもよい。特に、第1インク膜上のヘキサデカン接触角を、45°以下とするために、第1インク組成物に界面活性剤を含有させることが好ましい。
【0057】
インク組成物に界面活性剤を含有させると、インク組成物が硬化した際に重合性液晶化合物が空気界面側で水平に配向し、螺旋軸方向がより均一になるよう制御される。界面活性剤は、安定的に又は迅速にプレーナー配向のコレステリック構造とする配向制御剤として機能できる化合物が好ましい。界面活性剤としては、例えば、炭化水素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0058】
なお、インク組成物には、界面活性剤が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0059】
一態様として、第1インク組成物は、さらにフッ素系界面活性剤を含むことが好ましい。第1インク膜上のヘキサデカン接触角を45°以下とする観点から、フッ素系界面活性剤の含有量は、第1インク組成物の全量に対して、0.005質量%~0.02質量%であることが好ましく、0.005質量%~0.01質量%であることがより好ましい。フッ素系界面活性剤が上記範囲であると、第1インク膜と第2インク組成物の親和性が向上し、ハジキの発生が抑制される。
【0060】
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック F-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-475、F-477、F-479、F-482、F-551-A、F-552、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、EXP、MFS-330、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K、DS-21(以上、DIC社製);フロラード FC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム社製);サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、AGC社製);PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製);及び、フタージェント 710FM、610FM、601AD、601ADH2、602A、215M、245F、208G(以上、ネオス社製)が挙げられる。
【0061】
フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基又はフッ素化アルキレンエーテル基を有する含フッ素ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体であってもよい。
【0062】
また、フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーであってもよい。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、アルキレンオキシド鎖(好ましくはエチレンオキシド鎖又はプロピレンオキシド鎖)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、を含む含フッ素ポリマーであってもよい。
【0063】
フッ素系界面活性剤は、架橋性基を有する架橋型フッ素系界面活性剤であってもよい。架橋性基としては、例えば、重合性不飽和基、エポキシ基及びアジリジニル基が挙げられる。中でも、重合性基は、重合性不飽和基が好ましく、エチレン性不飽和基が特に好ましい。
【0064】
他の態様として、第1インク組成物は、さらにシリコーン系界面活性剤を含むことが好ましい。シリコーン系界面活性剤の含有量は、第1インク組成物の全量に対して、0.005質量%~0.3質量%であることが好ましく、0.005質量%~0.015質量%であることがより好ましい。シリコーン系界面活性剤が上記範囲であると、第1インク膜と第2インク組成物の親和性が向上し、ハジキの発生が抑制される。
【0065】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマー、及び、側鎖又は末端に有機基を導入した変性ポリシロキサンが挙げられる。
【0066】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、DOWSIL 8032 ADDITIVE、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング社製);X-22-4952、X-22-4272、X-22-6266、KF-351A、K354L、KF-355A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、X-22-6191、X-22-4515、KF-6004、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越化学工業社製);F-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製);及び、BYK-307、BYK-323、BYK-330、BYK-UV3500、BYK-UV3505(以上、ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0067】
シリコーン系界面活性剤は、架橋性基を有する架橋型シリコーン系界面活性剤であってもよい。架橋性基としては、例えば、重合性不飽和基、エポキシ基及びアジリジニル基が挙げられる。中でも、重合性基は、重合性不飽和基が好ましく、エチレン性不飽和基が特に好ましい。
【0068】
また、他の態様として、第1インク組成物は、さらに炭化水素系界面活性剤を含むことが好ましい。炭化水素系界面活性剤の含有量は、第1インク組成物の全量に対して、0.005質量%~0.3質量%であることが好ましく、0.005質量%~0.015質量%であることがより好ましい。炭化水素系界面活性剤が上記範囲であると、第1インク膜と第2インク組成物の親和性が向上し、ハジキの発生が抑制される。
【0069】
炭化水素系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸ソルビタンエステル類、アルキルポリグルコシド類、脂肪酸ジエタノールアミド類、アルキルモノグリセリルエーテル類、アセチレンジオールのエチレンオキシド付加物、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックポリマーが挙げられる。
【0070】
炭化水素系界面活性剤は、架橋性基を有する架橋型炭化水素系界面活性剤であってもよい。架橋性基としては、例えば、重合性不飽和基、エポキシ基及びアジリジニル基が挙げられる。中でも、重合性基は、重合性不飽和基が好ましく、エチレン性不飽和基が特に好ましい。
【0071】
架橋型炭化水素系界面活性剤の市販品としては、例えば、BYK-UV3535(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0072】
本開示の画像記録方法では、特に、第2インク膜上に第3インク膜を形成する場合に、第1インク組成物は、架橋性基を有する界面活性剤(架橋型界面活性剤)を含むことが好ましい。界面活性剤が架橋性基を有していると、界面活性剤自体が重合するため、界面活性剤の浸み出し(マイグレーション)が抑制される。第1インク組成物に含まれる界面活性剤の浸み出しが抑制されると、第1インク膜上に付与される第2インク組成物への界面活性剤の付加が抑制され、第2インク膜上のヘキサデカン接触角が大きくなり過ぎない。その結果、第2インク膜上に第3インク組成物を付与した際に、ハジキの発生が抑制される。
【0073】
架橋型界面活性剤としては、例えば、架橋型フッ素系界面活性剤、架橋型シリコーン系界面活性剤、及び架橋型炭化水素系界面活性剤が挙げられる。
【0074】
(添加剤)
インク組成物は、インクジェットインクに通常含まれる添加剤を、必要に応じ、本開示の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0075】
添加剤としては、例えば、架橋剤及び非重合性ポリマーが挙げられる。
【0076】
(インク組成物の物性)
本開示において、インク組成物の粘度は特に限定されないが、インクジェット記録方式で吐出する場合には、吐出安定性の観点から30mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは0.5mPa・s~20mPa・s、さらに好ましくは3mPa・s~15mPa・sである。なお、インク組成物の粘度は回転式粘度計、例えば、東機産業社製の製品名「VISCOMETER TV-22」を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
【0077】
本開示において、インク組成物の表面張力は特に限定されないが、例えば、25mN/m以上であることが好ましく、より好ましくは25mN/m~60mN/mであり、さらに好ましくは25mN/m~45mN/mである。インク組成物の表面張力は、例えば、インク組成物に含有させる界面活性剤の種類及び含有量によって調整することができる。なお、インク組成物の表面張力は表面張力計、例えば、協和界面科学株式会社製の製品名「全自動表面張力計CBVP-Z」を用い、プレート法により25℃の条件下で測定されるものである。
【0078】
<第1インク付与工程>
本開示の画像記録方法は、基材上に第1インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程(以下、「第1インク付与工程」という)を含む。
【0079】
インクジェット記録方式は、通常公知の方式を用いることができ、例えば、静電誘引力を利用してインク組成物を吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインク組成物に照射して放射圧を利用してインク組成物を吐出させる音響インクジェット方式、及びインク組成物を加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式が挙げられる。
【0080】
一般に、インクジェット記録装置による画像記録方式には、短尺のシリアルヘッドを用いて画像記録を行うシャトルスキャン方式(「シリアルヘッド方式」ともいう)と、記録媒体の幅方向の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いて画像記録を行うシングルパス方式(「ラインヘッド方式」ともいう)とがある。シャトルスキャン方式では、シリアルヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら画像記録を行う。これに対して、シングルパス方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行うことができる。そのため、シングルパス方式では、シャトルスキャン方式と異なり、シリアルヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、シングルパス方式では、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要となり、記録媒体のみが移動するので、シャトルスキャン方式と比較して記録速度を上げることができる。また、記録媒体の搬送はロールトゥロール方式及び枚葉方式のいずれであってもよい。
【0081】
インクジェットヘッドから吐出される第1インク組成物の打滴量は、ハジキの発生を抑制する観点から2pL(ピコリットル)~80pLが好ましく、より好ましくは10pL~40pLである。なお、打滴量とは、インクジェット記録方式により1個のノズルから1回に吐出されるインクの体積を意味する。
【0082】
第1インク組成物の付与量は、適宜調整すればよく、1g/m~50g/mであることが好ましく、より好ましくは、5g/m~30g/mである。
【0083】
第1インク組成物の吐出における解像度は、100dpi(dot per inch)×100dpi~2400dpi×2400dpiであることが好ましく、より好ましくは、200dpi×200dpi~1200dpi×1200dpiである。なお、「dpi」とは、25.4mmあたりのドット数を意味する。
【0084】
第1インク付与工程では、第1インク組成物を基材上に付与する際、基材を加熱することが好ましい。基材を加熱することによって、第1インク組成物が基材に定着するのを促進することができる。
【0085】
加熱手段は特に限定されず、例えば、ヒートドラム、温風、赤外線ランプ、オーブン、ヒート板及びホットプレートが挙げられる。加熱温度は、200℃以下が好ましく、40℃~100℃がより好ましく、45℃~80℃がさらに好ましい。
【0086】
第1インク組成物は、インク準備工程で準備した、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む2種のインク組成物のうち、いずれかのインク組成物である。
【0087】
基材の種類は、特に限定されず、任意の基材を選択することができる。基材は、インク吸収性の基材、インク低吸収性の基材、及びインク非吸収性の基材のいずれであってもよい。基材としては、例えば、紙、皮革、布、プラスチック、金属、及びガラスが挙げられる。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリアミド、ポリアセタール、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、フッ素樹脂、酢酸セルロース、塩素化ポリエーテル、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ジアリルフタレート、メチルペンテン、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリエステルエラストマー、及びポリイミドが挙げられる。インク吸収性の基材として好適な基材としては、ピクトリコプルーフ等の受像層付きの基材が挙げられる。また、受像層は、塗布又は印刷によって設けることができ、受像層の種類は特に限定されない。また、基材は、カラー画像が既に印刷された基材、蒸着層が設けられた基材であってもよい。
【0088】
基材は、色再現性に優れた画像を得る観点から、光吸収性の基材であることが好ましい。基材としては、具体的に、シアン、マゼンタ、イエロー等のカラー顔料を含有する樹脂基材、及び、樹脂がコーティングされた紙が挙げられる。
【0089】
光吸収性の基材は、基材の光入射方向からの可視光吸収率が50%以上の基材であることが好ましい。光吸収性が良好であり、形成された画像の品質がより向上するという点で、黒色の基材が好ましく用いられる。また、基材に対して親液化処理を行ってもよく、ラビング処理を行ってもよい。特に、基材に対してラビング処理を行うことは、発色性を向上させる観点で好ましい。
【0090】
黒色の基材としては、黒色顔料を含有する樹脂基材、樹脂コートした紙基材又は金属基材にアルマイト処理などの黒色処理が施された基材等が挙げられる。また、任意の樹脂及び金属から選ばれる成形体を基材としてもよい。成形体を基材とした場合、基材表面に、本開示の画像記録方法により加飾を施すことができる。
【0091】
基材の可視光吸収率は、分光高度計V570(日本分光(株)製)によって測定することができる。なお、可視光吸収率が50%以上であるとは、波長380nm~780nmの領域全てにおいて、50%以上の光吸収率を示すことをいう。
【0092】
基材上には、第1インク組成物の受容性向上、及び、耐溶剤性の低い基材を用いる際の耐溶剤性付与を目的として、例えば、多官能(メタ)アクリレートの硬化物、顔料を含む画像層、インク溶剤を受容する受像層、配向膜材料、各種ポリマー材料、各種金属材料などを含む下地層を形成してもよい。液晶化合物の配向性は、基材の結晶性が高い場合、及び、基材の表面エネルギーが高い場合に良好となる。そのため、液晶化合物の配向に適さない基材を用いる場合には、下地層を設けることが好ましい。配向膜材料として、公知の有機材料又は無機材料を用いてもよい。下地層は、結晶性の高いポリマー層、UVインク等によって形成される硬化膜層であってもよい。
【0093】
配向膜は、有機配向膜及び無機配向膜のいずれであってもよい。配向膜としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリイミド等の有機ポリマー膜及び金属薄膜が挙げられる。また、配向膜を構成するポリマーは、結晶性が高いポリマー又は表面エネルギーの高いポリマーであることが好ましい。好ましいポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタラート、及び可溶性ポリイミドが挙げられる。また、有機ポリマー膜は、UV硬化型インクジェットインクによって形成されるインク層であってもよい。UV硬化型インクジェットインクとしては、公知のインクを用いることができる。UV硬化型インクジェットインクは、顔料を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0094】
下地層は、基材へ下地層形成用組成物を付与することによって形成することができる。基材へ下地層形成用組成物を付与する方法は特に限定されず、任意の方法を選択することができる。基材へ下地層形成用組成物を付与する方法としては、インクジェット記録、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷;バーコーター、ダイコーター、スリットコーター、又はスプレーを用いる塗布方法、及び蒸着方式が挙げられる。下地層形成用組成物を基材へ付与する前に、下地層形成用組成物を基材に均一に付与すること、及び、基材との密着性を向上させる目的で、基材に対して親液化処理を行うことが好ましい。
【0095】
下地層の形成方法としては、例えば、多官能(メタ)アクリレートと溶剤と重合開始剤とを含む下地層形成用組成物を基材上に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法が挙げられる。また、下地層は、1層であってもよく、複数の層が積層されていてもよい。また、下地層上に、親液化処理を行ってもよい。また、下地層上に、ラビング処理を行ってもよい。
【0096】
また、下地層は、カラー画像が記録されたインク層であってもよい。例えば、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを用いて形成された、シアン画像、マゼンタ画像、イエロー画像、ブラック画像、ホワイト画像、又はメタリックカラー画像が記録されたインク層上に、直接、本開示の画像記録方法を用いて画像を記録することができる。特に、下地層が、黒濃度の高いブラック画像が記録されたインク層であると、本開示の画像記録方法を用いて記録された画像の読み取り性が向上する。
【0097】
<第1インク膜形成工程>
本開示の画像記録方法は、基材上に付与された第1インク組成物に活性エネルギー線を照射し、第1インク膜を形成する工程(以下、「第1インク膜形成工程」という)を含む。
【0098】
第1インク組成物に含まれる重合性液晶化合物は、活性エネルギー線の照射によって重合し、硬化する。硬化によって、基材上に第1インク膜が形成される。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線及び電子線が挙げられ、中でも紫外線(以下、「UV」ともいう)が好ましい。
【0099】
紫外線のピーク波長は、200nm~405nmであることが好ましく、220nm~390nmであることがより好ましく、220nm~380nmであることがさらに好ましい。
【0100】
紫外線の露光量は、20mJ/cm~5J/cmであることが好ましく、100mJ/cm~1,500mJ/cmであることがより好ましい。照射時間は、好ましくは0.01秒間~120秒間、より好ましくは0.1秒間~90秒間である。照射条件及び基本的な照射方法は、特開昭60-132767号公報に開示されている照射条件及び照射方法を適用することができる。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査する方式、又は、駆動を伴わない別光源によって行われる方式が好ましい。
【0101】
紫外線照射用の光源としては、水銀ランプ、ガスレーザー及び固体レーザーが主に利用されており、水銀ランプ、メタルハライドランプ及び紫外線蛍光灯が広く知られている。また、GaN(窒化ガリウム)系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。UV-LED(発光ダイオード)及びUV-LD(レーザダイオード)は小型、高寿命、高効率、かつ、低コストであり、紫外線照射用の光源として期待されている。中でも、紫外線照射用の光源は、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ又はUV-LEDが好ましい。
【0102】
基材上に形成される第1インク組成物の硬化膜の厚さは特に限定されないが、例えば、0.5μm~20μmである。
【0103】
第1インク膜形成工程では、基材上に付与された第1インク組成物に活性エネルギー線を照射した後に、第1インク組成物の硬化膜に対して親液化処理を施してもよい。
【0104】
本工程において、第1インク組成物の硬化膜に対して親液化処理を施すことにより、ハジキの発生が抑制された画像を得ることができる。
【0105】
本開示において、親液化処理は、第1インク膜と第2インク組成物との親和性を高めることが可能な処理であれば特に限定されないが、ヘキサデカン接触角を少なくとも5°低下させる処理であることが好ましい。すなわち、本工程では、親液化処理前における第1インク組成物の硬化膜のヘキサデカン接触角に対して、親液化処理後における第1インク組成物の硬化膜のヘキサデカン接触角が少なくとも5°低下するよう、第1インク組成物の硬化膜に対して親液化処理を施すことが好ましい。また、親液化処理において、ヘキサデカン接触角の低下は、少なくとも10°であることがより好ましく、少なくとも20°であることがさらに好ましい。
【0106】
親液化処理は、コロナ処理、プラズマ処理、及び紫外線オゾン処理からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、コロナ処理であることがより好ましい。
【0107】
コロナ処理は、放電量50W・min/m以上で行われることが好ましい。放電量は、70W・min/m~500W・min/mがより好ましく、80W・min/m~350W・min/mがさらに好ましい。
【0108】
放電量は、下記式を用いて算出される。
放電量=P(W)/{L(m)×v(m/min)}
P(W):放電電力
L(m):放電電極長
v(m/min):処理速度
【0109】
第1インク膜形成工程では、基材上に付与された第1インク組成物に活性エネルギー線を照射することにより、第1インク膜が形成される。また、親液化処理を施す場合には、基材上に付与された第1インク組成物に活性エネルギー線を照射した後に、親液化処理を施すことにより、第1インク膜が形成される。第1インク膜上のヘキサデカン接触角は、45°以下である。第1インク膜上のヘキサデカン接触角が45°以下であると、第1インク膜と第2インク組成物の親和性が向上し、ハジキの発生が抑制される。また、ハジキの発生を抑制し、かつ、滲みを抑制する観点から、第1インク膜上のヘキサデカン接触角は、3°~40°であることが好ましく、3°~25°であることがより好ましく、10°~25°であることがさらに好ましい。
【0110】
<第2インク付与工程>
本開示の画像記録方法は、親液化処理が施された第1インク膜上に、第2インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程(以下、「第2インク付与工程」という)を含む。インクジェット記録方式により第2インク組成物を付与する方法は、インクジェット記録方式により第1インク組成物を付与する方法と同様である。
【0111】
第2インク組成物は、インク準備工程で準備した重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む2種のインク組成物のうち、第1インク組成物とは別のインク組成物である。
【0112】
第2インク付与工程では、第2インク組成物を付与する際、第1インク膜が形成された基材を加熱することが好ましい。第1インク膜が形成された基材を加熱することによって、第2インク組成物が、第1インク膜が形成された基材に定着するのを促進することができる。
【0113】
加熱手段は特に限定されず、例えば、ヒートドラム、温風、赤外線ランプ、オーブン、ヒート板及びホットプレートが挙げられる。加熱温度は、200℃以下が好ましく、40℃~100℃がより好ましく、45℃~80℃がさらに好ましい。
【0114】
<第2インク膜形成工程>
本開示の画像記録方法は、第1インク膜上に付与された第2インク組成物に活性エネルギー線を照射し、第2インク膜を形成する工程(以下、「第2インク膜形成工程」という)を含む。
【0115】
第2インク組成物に含まれる重合性液晶化合物は、活性エネルギー線の照射によって重合し、硬化する。硬化によって、第1インク膜上に第2インク膜が形成される。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線及び電子線が挙げられ、中でも紫外線が好ましい。第2インク組成物に活性エネルギー線を照射する方法は、第1インク組成物に活性エネルギー線を照射する方法と同様である。
【0116】
第2インク膜形成工程では、基材上に付与された第2インク組成物に活性エネルギー線を照射した後に、第2インク組成物の硬化膜に対して親液化処理を施してもよい。
【0117】
第2インク膜形成工程では、基材上に付与された第2インク組成物に活性エネルギー線を照射することにより、第2インク膜が形成される。また、親液化処理を施す場合には、基材上に付与された第2インク組成物に活性エネルギー線を照射した後に、親液化処理を施すことにより、第2インク膜が形成される。
【0118】
<その他の工程>
本開示の画像記録方法は、上記工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。
本開示の画像記録方法は、第1インク付与工程の後、第1活性エネルギー線を照射する工程の前に、第1インク組成物を加熱する第1加熱工程を含むことが好ましい。同様に、第2インク付与工程の後、第2活性エネルギー線を照射する工程の前に、第2インク組成物を加熱する第2加熱工程を含むことが好ましい。加熱工程を行うことにより、重合性液晶化合物が形成する螺旋構造の螺旋軸方向が均一になるよう制御することができる。
【0119】
加熱手段は特に限定されず、例えば、ヒートドラム、温風、赤外線ランプ、オーブン、ヒート板及びホットプレートが挙げられる。加熱温度は、50℃~200℃が好ましく、60℃~150℃がより好ましく、70℃~120℃がさらに好ましい。加熱時間は特に限定されず、例えば、1分~10分である。
【0120】
また、本開示の画像記録方法は、インク準備工程において第1インク組成物及び第2インク組成物とは別の第3インク組成物を準備し、第3インク組成物を、第2インク膜上にインクジェット記録方式により付与する工程と、第2インク膜上に付与された第3インク組成物に活性エネルギー線を照射し、第3インク膜を形成する工程をさらに含むことが好ましい。第3インク組成物は、例えば、第3の重合性液晶化合物、第3のキラル化合物、第3の重合開始剤及び第3の有機溶剤を含む。また、第2インク膜上のヘキサデカン接触角は45°以下であることが好ましい。第2インク膜上のヘキサデカン接触角が45°以下であると、第2インク膜と第3インク組成物の親和性が向上し、ハジキの発生が抑制される。また、ハジキの発生を抑制し、かつ、滲みを抑制する観点から、第2インク膜上のヘキサデカン接触角は、3°~40°であることが好ましく、3°~25°であることがより好ましく、10°~25°であることがさらに好ましい。
【0121】
また、本開示の画像記録方法では、基材上に、第1インク組成物を直接付与してもよく、基材上にインク膜等の下地層を形成した後に、下地層上に第1インク組成物を付与してもよい。
【0122】
本開示の画像記録方法では、インク組成物を付与する工程と、活性エネルギー線を照射する工程とを、第2インク膜形成工程の後に繰り返し行ってもよい。また、インク膜を繰り返し形成する場合に、各インク組成物の硬化膜に対して、親液化処理を適宜行ってもよい。親液化処理の好ましい態様は、上記のとおりである。
【0123】
また、本開示の画像記録方法において、基材上に形成される下地層及びインク膜の組み合わせとしては、例えば、第1インク膜と第2インク膜との組み合わせ、第1インク膜と第2インク膜と第3インク膜との組み合わせ、下地層と第1インク膜と第2インク膜と第3インク膜との組み合わせが挙げられる。
【0124】
(用途)
本開示の画像記録方法によって得られる画像記録物の用途としては、さまざまな製品への加飾が挙げられる。加飾は、製品に対して直接行ってもよく、加飾フィルムを作製して、加飾フィルムを製品に貼り付けてもよい。また、インクジェット記録方式等で記録された画像の上に、本開示の画像記録方法によって画像を記録することにより加飾することも好ましい。加飾対象となる素材としては、ガラス、各種プラスチック、プラスチックフィルム、金属、皮革、紙、及び布が挙げられる。室内装飾;各種容器の内壁又は外壁、宝飾品、時計文字盤、各種の家具への装飾;看板、横断幕、懸垂幕等の屋内外サインの外装;各種の家電の外装;電子ウォッチ、パソコン、携帯電話等の外装;ディスプレイ面への加飾;車載用の樹脂製品、ソーラーパネル、合成皮革等のカバン、スーツケース、ポリマー紙幣、IDカード、クレジットカード等のカード類、ギフトカード、化粧品等のプラスチックボトル、酒類等のガラスボトル、眼鏡、プラスチックフィルムがラミネートされたパッケージ用の紙基材、プラスチック包装材料への加飾が挙げられる。
【実施例
【0125】
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0126】
<実施例1>
[インク組成物の調製]
(インク組成物Gm1)
下記に示す成分を、25℃に保温された容器中で混合し、インク組成物Gm1を調製した。インク組成物Gm1の粘度(25℃)は、11mPa・sであった。
・ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・164.21質量部
・重合性液晶化合物の混合物A ・・・ 100.0質量部
・重合開始剤:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド
(製品名「Omnirad 819、IGM Resins B.V.社製」) ・・・4.0質量部
・キラル化合物A ・・・5.23質量部
・フッ素系界面活性剤(製品名「フタージェント208G」、ネオス社製) ・・・0.07質量部
【0127】
なお、重合性液晶化合物の混合物Aは、化合物(10)33.4質量%、化合物(11)33.3質量%、及び化合物(12)(X=2)33.3質量%からなる。化合物(10)~(12)は棒状液晶化合物である。化合物(10)、化合物(11)、化合物(12)及びキラル化合物Aの構造は以下のとおりである。
【0128】
(化合物(10)、化合物(11)及び化合物(12))
【0129】
【化9】
【0130】
(キラル化合物A)
【0131】
【化10】
【0132】
分光反射測定器(コニカミノルタ社製、製品名「FD-7」)を用いてインク組成物Gm1で形成されるインク膜の可視光領域における反射率を測定したところ、インク組成物Gm1は、選択反射波長が550nmのインク膜を形成するインクであった。また、左円偏光板を用いて偏光特性を測定したところ、反射スペクトルは得られなかった。すなわち、インク組成物Gm1は、右偏光緑色のインク膜を形成するインクであった。他のインク組成物についても、特に断りのない限り、インク組成物Gm1と同様の手法で測定を行った。
【0133】
(インク組成物Rm1の調製)
インク組成物Gm1におけるキラル化合物Aの含有量を5.23質量部から4.78質量部に、ジエチレングリコールジエチルエーテルの含有量を164.21質量部から163.06質量部に変更したこと以外は、インク組成物Gm1と同様の方法でインク組成物Rm1を調製した。インク組成物Rm1の粘度(25℃)は、11mPa・sであった。インク組成物Rm1は、選択反射波長が650nmの右円偏光を反射する右偏光赤色のインク膜を形成するインクであった。
【0134】
(インク組成物Bm1の調製)
インク組成物Gm1におけるキラル化合物Aの含有量を5.23質量部から6.30質量部に、ジエチレングリコールジエチルエーテルの含有量を164.21質量部から165.88質量部に変更したこと以外は、インク組成物Gm1と同様の方法でインク組成物Bm1を調製した。インク組成物Bm1の粘度(25℃)は、11mPa・sであった。インク組成物Bm1は、選択反射波長が450nmの右円偏光を反射する右偏光青色のインク膜を形成するインクであった。
【0135】
[インク画像の記録]
基材としてPETシート(製品名「ビューフルUV TP-188」、KIMOTO社製)を用い、インク組成物Bm1を用いて、インクジェットプリンタ(製品名「UJF3042HG」、MIMAKI社製)でインク画像を記録した。画像解像度720dpi×600dpiで、ベタ画像を記録した。画像記録中、プラテン上にホットプレートを設置した。ホットプレートの温度は50℃に設定した。画像記録終了後、ベタ画像が形成された基材を80℃に設定されたオーブンで5分間保存し、メタルハライド光源で500mJ/cmの紫外線を照射した。これにより、インク組成物Bm1の硬化膜が形成された。
【0136】
インク組成物Bm1の硬化膜に対して、コロナ処理機(製品名「コロナ発振機TEC4AX」、春日電機社製)を用い、出力100W、4m/分の条件で1回、コロナ処理を施し、第1インク膜を得た。コロナ処理後に、インク組成物Gm1を用いて、第1インク膜の形成と同様の方法で、画像記録、加熱処理、及び紫外線照射を行った。なお、画像記録では、第1インク膜上に、ベタ画像を記録した。これにより、第1インク膜上に、インク組成物Gm1の硬化膜である第2インク膜が形成された。
【0137】
<実施例2>
実施例1におけるコロナ処理の条件を、下記の条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、画像サンプルを得た。
実施例2では、インク組成物Bm1の硬化膜に対して、コロナ処理機(製品名「コロナ発振機TEC4AX」、春日電機社製)を用い、出力60W、4m/分の条件で1回、コロナ処理を施した。
【0138】
<比較例1>
比較例1では、インク組成物Bm1の硬化膜に対してコロナ処理を施さず、インク組成物Bm1の硬化膜である第1インク膜を得たこと以外は、実施例1と同様の方法で、画像サンプルを得た。
【0139】
[評価]
(ハジキ)
上記画像サンプルを用いて、目視でハジキの度合いを観察した。評価基準は以下のとおりである。A及びBは、実用上問題ないレベルである。
A:ハジキが全く確認されない。
B:ハジキが一部確認される。
C:ハジキが全体的に確認される。
【0140】
評価結果を表1に示す。また、表1に、実施例1及び実施例2におけるコロナ処理の条件(放電量)を記載した。比較例1ではコロナ処理を施していないため、放電量の欄に「-」と記載した。さらに、第1インク膜上のヘキサデカン接触角を記載した。
【0141】
なお、放電量は、下記式により算出した。実施例で用いたコロナ処理機の放電電極長は、0.23mであった。ヘキサデカン接触角は、接触角計(製品名「Drop master 500」、協和界面科学社製」)を用いて、2箇所測定し、平均値を算出した。
放電量=P(W)/{L(m)×v(m/min)}
P(W):放電電力
L(m):放電電極長
v(m/min):処理速度
【0142】
【表1】
【0143】
表1より、実施例1及び実施例2では、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第1インク組成物と、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第2インク組成物と、を有する少なくとも2つのインク組成物を準備する工程と、基材上に第1インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程と、基材上に付与された第1インク組成物に活性エネルギー線を照射し、第1インク膜を形成する工程と、第1インク膜上に、第2インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程と、第1インク膜上に付与された第2インク組成物に活性エネルギー線を照射し、第2インク膜を形成する工程と、を含み、第1インク膜上のヘキサデカン接触角は、45°以下であり、ハジキの発生が抑制された画像を得ることができることが分かった。
【0144】
特に、実施例1では、第1インク組成物の硬化膜に対して、放電量70W・min/m以上でコロナ処理を施しているため、ハジキの発生がより抑制された画像を得ることができることが分かった。
【0145】
また、実施例1で得られた第2インク膜に対して、実施例1と同じ条件でコロナ処理を施し、コロナ処理後に、インク組成物Rm1を用いて、画像記録、加熱処理及び紫外線照射を行い、第2インク膜上に、インク組成物Rm1に由来する第3インク膜を形成したところ、ハジキの発生が抑制された画像を得ることができた。
【0146】
一方、比較例1では、第1インク膜上のヘキサデカン接触角が45°超であるため、ハジキの発生が確認された。
【0147】
<実施例101>
[インク組成物の調製]
(インク組成物Gm101)
下記に示す成分を、25℃に保温された容器中で混合し、インク組成物Gm101を調製した。インク組成物Gm101の粘度(25℃)は、11mPa・sであった。
・ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・61.975質量%
・重合性液晶化合物の混合物B ・・・34質量%
・重合開始剤:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド
(製品名「Omnirad 819、IGM Resins B.V.社製」) ・・・2.0質量%
・キラル化合物A ・・・2.0質量%
・フッ素系界面活性剤(製品名「フタージェント208G」、ネオス社製) ・・・0.025質量%
【0148】
なお、重合性液晶化合物の混合物Bは、化合物(10)50質量%、化合物(12)50質量%からなる。
【0149】
分光反射測定器(コニカミノルタ社製、製品名「FD-7」)を用いてインク組成物Gm101で形成されるインク膜の可視光領域における反射率を測定したところ、インク組成物Gm101は、選択反射波長が500nmのインク膜を形成するインクであった。また、左円偏光板を用いて偏光特性を測定したところ、反射スペクトルは得られなかった。すなわち、インク組成物Gm101は、右偏光緑色のインク膜を形成するインクであった。他のインク組成物についても、特に断りのない限り、インク組成物Gm101と同様の手法で測定を行った。
【0150】
(インク組成物Rm101の調製)
インク組成物Gm101におけるキラル化合物Aの含有量を2.0質量%から1.5質量%に、重合性液晶化合物の混合物Bの含有量を34質量%から34.5質量%に、に変更したこと以外は、インク組成物Gm101と同様の方法でインク組成物Rm101を調製した。インク組成物Rm101の粘度(25℃)は、11mPa・sであった。インク組成物Rm101は、選択反射波長が620nmの右円偏光を反射する右偏光赤色のインク膜を形成するインクであった。
【0151】
(インク組成物Bm101の調製)
インク組成物Gm101におけるキラル化合物Aの含有量を2.0質量%から2.2質量%に、重合性液晶化合物の混合物Bの含有量を34質量%から33.8質量%に、に変更したこと以外は、インク組成物Gm1と同様の方法でインク組成物Bm101を調製した。インク組成物Bm101の粘度(25℃)は、11mPa・sであった。インク組成物Bm101は、選択反射波長が445nmの右円偏光を反射する右偏光青色のインク膜を形成するインクであった。
【0152】
[インク画像の記録]
第1インク組成物としてインク組成物Bm101を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で画像記録、加熱処理、及び紫外線照射を行い、基材上に、インク組成物Bm101の硬化膜を形成した。インク組成物Bm101の硬化膜に対して、実施例1と同様の方法でコロナ処理を施し、第1インク膜を得た。なお、画像記録では、ベタ画像を記録した。
第1インク膜上に、第2インク組成物としてインク組成物Gm101を用いて、実施例1と同様の方法で画像記録、加熱処理、及び紫外線照射を行い、インク組成物Gm101の硬化膜を形成した。インク組成物Gm101の硬化膜に対して、インク組成物Bm101の硬化膜に対するコロナ処理と同様の条件で、コロナ処理を施し、第2インク膜を得た。なお、画像記録では、ベタ画像と、幅0.5ポイント(pt)のラインアンドスペース画像を記録した。
第2インク膜上に、第3インク組成物としてインク組成物Rm101を用いて、実施例1と同様の方法で画像記録、加熱処理、及び紫外線照射を行い、インク組成物Rm101の硬化膜である第3インク膜を形成した。なお、画像記録では、ベタ画像と、幅0.5ポイント(pt)のラインアンドスペース画像を記録した。
また、第1インク組成物を付与する前に、基材上にあらかじめ下地層形成用組成物(製品名「LH-100クリア」、MIMAKI社製)を用いて下地層を形成した場合にも、実施例101と同様に、第1インク膜、第2インク膜、及び第3インク膜が形成された。
【0153】
<実施例102~実施例105>
実施例101におけるコロナ処理の条件を、下記の条件に変更したこと以外は、実施例101と同様の方法で、第1インク膜、第2インク膜、及び第3インク膜を形成した。
【0154】
実施例102では、第1インク組成物の硬化膜及び第2インク組成物の硬化膜に対して、コロナ処理機(製品名「コロナ発振機TEC4AX」、春日電機社製)を用い、出力60W、4m/分の条件で1回、コロナ処理を施した。
【0155】
実施例103では、第1インク組成物の硬化膜及び第2インク組成物の硬化膜に対して、コロナ処理機(製品名「コロナ発振機TEC4AX」、春日電機社製)を用い、出力40W、4m/分の条件で1回、コロナ処理を施した。
【0156】
実施例104では、第1インク組成物の硬化膜及び第2インク組成物の硬化膜に対して、コロナ処理機(製品名「コロナ発振機TEC4AX」、春日電機社製)を用い、出力100W、4m/分の条件で3回、コロナ処理を施した。
【0157】
実施例105では、第1インク組成物の硬化膜及び第2インク組成物の硬化膜に対して、コロナ処理機(製品名「コロナ発振機TEC4AX」、春日電機社製)を用い、出力100W、4m/分の条件で5回、コロナ処理を施した。
【0158】
<実施例106>
第1インク組成物、第2インク組成物、及び第3インク組成物に含まれる界面活性剤の含有量を表2に記載の含有量に変更したこと、第1インク組成物に活性エネルギー線を照射した後にコロナ処理を行わなかったこと、及び第2インク組成物に活性エネルギー線を照射した後にコロナ処理を行わなかったこと以外は、実施例101と同様の方法で、第1インク膜、第2インク膜、及び第3インク膜を形成した。なお、実施例106では、実施例101に対して、界面活性剤の含有量を増加させたことに伴い、重合性液晶化合物の混合物Bの含有量を減少させた。以下の実施例においても、界面活性剤の含有量の調整に関しては、重合性液晶化合物の混合物Bの含有量を調整することにより行った。
【0159】
<実施例107~実施例115、比較例102、及び比較例103>
第1インク組成物に含まれる界面活性剤の種類及び含有量を、表2に記載の種類及び含有量に変更したこと以外は、実施例106と同様の方法で、第1インク膜、第2インク膜、及び第3インク膜を形成した。
実施例107~実施例115、比較例102、及び比較例103で用いた界面活性剤は以下のとおりである。
炭化水素系界面活性剤・・・製品名「BYK-399」、ビックケミー・ジャパン株式会社製
架橋型炭化水素系界面活性剤・・・製品名「BYK-UV3535」、ビックケミー・ジャパン社製)
架橋型シリコーン系界面活性剤・・・製品名「BYK-UV3505」、ビックケミー・ジャパン社製
【0160】
<実施例116>
第1インク組成物に界面活性剤を含有させなかったこと以外は、実施例106と同様の方法で、第1インク膜、第2インク膜、及び第3インク膜を形成した。
【0161】
<比較例101>
比較例101では、第1インク組成物に活性エネルギー線を照射した後にコロナ処理を行わなかったこと、及び第2インク組成物に活性エネルギー線を照射した後にコロナ処理を行わなかったこと以外は、実施例101と同様の方法で、第1インク膜、第2インク膜、及び第3インク膜を形成した。
【0162】
[評価]
ハジキと滲みに関して、2層評価と3層評価を行った。2層評価は、第1インク膜上に、第2インク組成物の硬化膜が形成された画像サンプルを用いて行った。ハジキに関する2層評価は、1層目、2層目ともにベタ画像である画像サンプルを用いて行った。滲みに関する2層評価は、1層目がベタ画像、2層目がラインアンドスペース画像である画像サンプルを用いて行った。3層評価は、第1インク膜、第2インク膜、及び第3インク膜がこの順に形成された画像サンプルを用いて行った。ハジキに関する3層評価は、1層目、2層目、3層目ともにベタ画像である画像サンプルを用いて行った。滲みに関する3層評価は、1層目及び2層目がベタ画像、3層目がラインアンドスペース画像である画像サンプルを用いて行った。
【0163】
(ハジキ)
上記画像サンプルを用いて、目視でハジキの度合いを観察した。評価基準は以下のとおりである。A~Cは、実用上問題ないレベルである。
A:ハジキが全く確認されないか、又は、ハジキが確認される面積が、ベタ画像全体の1%以下である。
B:ハジキが確認される面積が、ベタ画像全体の1%超5%以下である。

C:ハジキが確認される面積が、ベタ画像全体の5%超40%以下である。
D:ハジキが確認される面積が、ベタ画像全体の40%超である。
【0164】
(滲み)
上記画像サンプルを用いて、目視でハジキの度合いを観察した。評価基準は以下のとおりである。A~Cは、実用上問題ないレベルである。
A:0.5ptスペース部分の濡れ潰れが全く確認されないか、又は、0.5ptスペース部分の濡れ潰れが確認される面積が、ラインア
ンドスペース画像全体の1%以下である。
B:0.5ptスペース部分の濡れ潰れが確認される面積が、ラインアンドスペース画像全体の1%超5%以下である。
C:0.5ptスペース部分の濡れ潰れが確認される面積が、ラインアンドスペース画像全体の5%超40%以下である。
D:0.5ptスペース部分の濡れ潰れが確認される面積が、ラインアンドスペース画像全体の40%超である。
【0165】
評価結果を表2に示す。また、表2に、実施例101~105におけるコロナ処理の条件(放電量)を記載した。実施例106~116及び比較例101~103ではコロナ処理を施していないため、放電量の欄に「-」と記載した。さらに、第1インク膜上及び第2インク膜上のヘキサデカン接触角を記載した。放電量及びヘキサデカン接触角は、実施例1と同様の方法で測定した。
【0166】
【表2】
【0167】
表2より、実施例101~実施例116では、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第1インク組成物と、重合性液晶化合物、キラル化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含む第2インク組成物と、を有する少なくとも2つのインク組成物を準備する工程と、基材上に第1インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程と、基材上に付与された第1インク組成物に活性エネルギー線を照射し、第1インク膜を形成する工程と、第1インク膜上に、第2インク組成物をインクジェット記録方式により付与する工程と、第1インク膜上に付与された第2インク組成物に活性エネルギー線を照射し、第2インク膜を形成する工程と、を含み、第1インク膜上のヘキサデカン接触角は、45°以下であり、2層及び3層のいずれの場合にも、ハジキの発生が抑制された画像を得ることができることが分かった。
【0168】
一方、比較例101~比較例103では、第1インク膜上のヘキサデカン接触角が45°超であるため、2層及び3層のいずれの場合にも、ハジキの発生が確認された。
【0169】
実施例109では、第1インク膜上のヘキサデカン接触角が3°以上であり、実施例116と比較して、2層における滲みが抑制されることが分かった。
【0170】
実施例109では、第1インク膜上のヘキサデカン接触角が25°以下であり、実施例112と比較して、2層におけるハジキが抑制されることが分かった。
【0171】
実施例101では、第1インク組成物の硬化膜に対して、放電量70W・min/m以上でコロナ処理を施しているため、実施例102及び実施例103と比較して、2層におけるハジキの発生が抑制されることが分かった。同様に、実施例101では、第2インク組成物の硬化膜に対して、放電量70W・min/m以上でコロナ処理を施しているため、実施例102及び実施例103と比較して、3層におけるハジキの発生が抑制されることが分かった。
【0172】
実施例101では、第1インク組成物の硬化膜に対して、放電量500W・min/m以下でコロナ処理を施しているため、実施例105と比較して、2層における滲みの発生が抑制されることが分かった。同様に、実施例101では、第2インク組成物の硬化膜に対して、放電量500W・min/m以下でコロナ処理を施しているため、実施例105と比較して、3層における滲みの発生が抑制されることが分かった
【0173】
実施例109では、第1インク組成物が架橋型界面活性剤を含むため、実施例111と比較して、3層におけるハジキの発生が抑制されることが分かった。
【0174】
<実施例201~実施例216>
[インク組成物の調製]
(インク組成物Gm201)
下記に示す成分を、25℃に保温された容器中で混合し、インク組成物Gm201を調製した。
・ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・61.025質量%
・重合性液晶化合物の混合物A ・・・35.658質量%
・重合開始剤:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド
(製品名「Omnirad 819、IGM Resins B.V.社製」) ・・・1.426質量%
・キラル化合物A ・・・1.866質量%
・フッ素系界面活性剤(製品名「フタージェント208G」、ネオス社製) ・・・0.025質量%
【0175】
インク組成物Gm201の粘度(25℃)は、11mPa・sであった。インク組成物Gm201は、選択反射波長が530nmの右円偏光を反射する右偏光緑色のインク膜を形成するインクであった。
【0176】
(インク組成物Rm201の調製)
インク組成物Gm201におけるキラル化合物Aの含有量を1.866質量%から1.614質量%に、重合性液晶化合物の混合物の含有量を35.658質量%から35.900質量%に、重合開始剤の含有量を1.426質量%から1.436質量%に変更したこと以外は、インク組成物Gm201と同様の方法でインク組成物Rm201を調製した。インク組成物Rm201の粘度(25℃)は、11mPa・sであった。インク組成物Rm201は、選択反射波長が610nmの右円偏光を反射する右偏光赤色のインク膜を形成するインクであった。
【0177】
(インク組成物Bm201の調製)
インク組成物Gm201におけるキラル化合物Aの含有量を1.866質量%から2.225質量%に、重合性液晶化合物の混合物の含有量を35.658質量%から35.312質量%に、重合開始剤の含有量を1.426質量%から1.413質量%に変更したこと以外は、インク組成物Gm1と同様の方法でインク組成物Bm1を調製した。インク組成物Bm1の粘度(25℃)は、11mPa・sであった。インク組成物Bm1は、選択反射波長が450nmの右円偏光を反射する右偏光青色のインク膜を形成するインクであった。
【0178】
実施例201では、インク組成物Gm101、Rm101、及びBm101の代わりに、インク組成物Gm201、Rm201、及びBm201を用い、実施例101と同じ条件で画像記録を行い、同じ評価を行った。実施例202~実施例216では、実施例102~実施例116と同様に、実施例201に対して、コロナ処理の条件、界面活性剤の種類及び量を変更した。その結果、実施例201~実施例216においても、実施例101~実施例116と同様の結果が得られることが分かった。
【0179】
なお、2019年9月27日に出願された日本国特許出願2019-177119号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。