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特許7185163立体画像表示システム、立体画像表示方法、およびプロジェクタ
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  • 特許-立体画像表示システム、立体画像表示方法、およびプロジェクタ 図1
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  • 特許-立体画像表示システム、立体画像表示方法、およびプロジェクタ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】立体画像表示システム、立体画像表示方法、およびプロジェクタ
(51)【国際特許分類】
   H04N 13/363 20180101AFI20221130BHJP
   H04N 13/302 20180101ALI20221130BHJP
   H04N 13/351 20180101ALI20221130BHJP
【FI】
H04N13/363
H04N13/302
H04N13/351
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021519999
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2019020419
(87)【国際公開番号】W WO2020235072
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】巻口 誉宗
(72)【発明者】
【氏名】高田 英明
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特許第6178721(JP,B2)
【文献】巻口誉宗,高田英明,少ない数のプロジェクタでなめらかな運動視差を実現する視点移動対応裸眼3D映像表示技術,NTT技術ジャーナル,2017年10月,Vol.29 No.10,pp.29-32
【文献】吹上大樹,河邉隆寛,西田眞也,裸眼で2D映像がクリアに見える3D映像生成技術,NTT技術ジャーナル,2017年09月,Vol.29 No.9,pp.21-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/00
H04N 5/74
H04N 9/31
G02B 30/00
G03B 21/00
G03B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で並べて配置され、同一の被写体に関する設置位置ごとの視点画像を、同一方向に投射する複数のプロジェクタと、
前記複数のプロジェクタにより投射された画像のうち、観察者の左目および右目において、視線方向から最も近い隣り合った2つの画像が、それぞれの表示位置までの距離に応じた輝度比率で重ね合わせられて視認させることで、前記被写体を立体視させるように重畳画像を表示させるスクリーンと、
前記複数のプロジェクタそれぞれの投射対象の視点画像である複数のベース画像から、所定周期分位相をずらすためのパターン情報を加算した第1視点画像の情報と、前記パターン情報を減算した第2視点画像の情報とを保持する画像保持部とを備え、
前記複数のプロジェクタはそれぞれ、
前記画像保持部に保持された画像の情報のうち、1つ前段のプロジェクタのベース画像から生成された第1視点画像と、1つ後段のプロジェクタのベース画像から生成された第2視点画像とを、自プロジェクタの投射対象の視点画像として前記スクリーンに投射する投射部を有する
ことを特徴とする立体画像表示システム。
【請求項2】
所定間隔で並べて配置され、同一の被写体に関する設置位置ごとの視点画像を、同一方向に投射する複数のプロジェクタと、
前記複数のプロジェクタにより投射された画像のうち、観察者の左目および右目において、視線方向から最も近い隣り合った2つの画像が、それぞれの表示位置までの距離に応じた輝度比率で重ね合わせられて視認させることで、前記被写体を立体視させるように重畳画像を表示させるスクリーンと、
前記複数のプロジェクタそれぞれの投射対象の視点画像である複数のベース画像から、所定周期分位相をずらすためのパターン情報を加算した第1視点画像の情報と、前記パターン情報を減算した第2視点画像の情報とを保持する画像保持部とを備えた立体画像表示システムの各プロジェクタが、
前記画像保持部に保持された画像の情報のうち、1つ前段のプロジェクタのベース画像から生成された第1視点画像と、1つ後段のプロジェクタのベース画像から生成された第2視点画像とを、自プロジェクタの投射対象の視点画像として前記スクリーンに投射する
ことを特徴とする立体画像表示方法。
【請求項3】
所定間隔で並べて配置され、同一の被写体に関する設置位置ごとの視点画像を、同一方向に投射する複数のプロジェクタにより投射された画像のうち、観察者の左目および右目において、視線方向から最も近い隣り合った2つの画像が、それぞれの表示位置までの距離に応じた輝度比率で重ね合わせられて視認させることで、前記被写体を立体視させるように重畳画像を表示させるスクリーンと、
前記複数のプロジェクタそれぞれの投射対象の視点画像である複数のベース画像から、所定周期分位相をずらすためのパターン情報を加算した第1視点画像の情報と、前記パターン情報を減算した第2視点画像の情報とを保持する画像保持部と
を備えた立体画像表示システム内のプロジェクタであって、
前記画像保持部に保持された画像の情報のうち、1つ前段のプロジェクタのベース画像から生成された第1視点画像と、1つ後段のプロジェクタのベース画像から生成された第2視点画像とを、自プロジェクタの投射対象の視点画像として前記スクリーンに投射する投射部を有する
ことを特徴とするプロジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像表示システム、立体画像表示方法、およびプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運動視差を伴う立体画像を多視点から裸眼で視認することができる立体画像表示装置の技術が提案されている。運動視差とは、観察者の視点が移動することによって生じる視差のことである。
【0003】
このような立体画像表示装置の1つとして、水平方向に視差を持つ複数の視点画像を複数のプロジェクタによってスクリーンに投射し、スクリーンの拡散特性や集光特性を制御して観察者の視点位置および両眼位置に応じた画像を視認させるものがある。
【0004】
このような立体画像表示装置の中でも、リニアブレンディングという知覚の視覚メカニズムを活用した表示装置では、従来よりも少ないプロジェクタ数で立体画像を投射可能である(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】M. Makiguchi et al. “Smooth Motion Parallax Glassless 3D Screen System Using Linear Blending of Viewing Zones and Spatially Imaged Iris Plane,” SID, Vol. 48, Issue 1, pp. 903-906
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したリニアブレンディングを用いた表示装置は、隣り合うプロジェクタから投射された2つの画像が、視点位置に応じた比率で合成された状態で観察者に視認されるようにスクリーンに表示させる。その際、スクリーンの拡散特性が大きいと、意図しないプロジェクタから投射された画像も観察者に知覚され、画質の劣化が生じるという問題があった。
【0007】
発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、画質の劣化を防ぎつつ、少ないプロジェクタ数で運動視差を伴う立体画像を表示させることが可能な立体画像表示システム、立体画像表示方法、およびプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、実施形態に係る立体画像表示システムは、所定間隔で並べて配置され、同一の被写体に関する設置位置ごとの視点画像を、同一方向に投射する複数のプロジェクタと、前記複数のプロジェクタにより投射された画像のうち、観察者の左目および右目において、視線方向から最も近い隣り合った2つの画像が、それぞれの表示位置までの距離に応じた輝度比率で重ね合わせられて視認させることで、前記被写体を立体視させるように重畳画像を表示させるスクリーンと、前記複数のプロジェクタそれぞれの投射対象の視点画像である複数のベース画像から、所定周期分位相をずらすためのパターン情報を加算した第1視点画像の情報と、前記パターン情報を減算した第2視点画像の情報とを保持する画像保持部とを備え、前記複数のプロジェクタはそれぞれ、前記画像保持部に保持された画像の情報のうち、1つ前段のプロジェクタのベース画像から生成された第1視点画像と、1つ後段のプロジェクタのベース画像から生成された第2視点画像とを、自プロジェクタの投射対象の視点画像として前記スクリーンに投射する投射部を有することを特徴とする。
【0009】
また、実施形態に係る立体画像表示方法は、所定間隔で並べて配置され、同一の被写体に関する設置位置ごとの視点画像を、同一方向に投射する複数のプロジェクタと、前記複数のプロジェクタにより投射された画像のうち、観察者の左目および右目において、視線方向から最も近い隣り合った2つの画像が、それぞれの表示位置までの距離に応じた輝度比率で重ね合わせられて視認させることで、前記被写体を立体視させるように重畳画像を表示させるスクリーンと、前記複数のプロジェクタそれぞれの投射対象の視点画像である複数のベース画像から、所定周期分位相をずらすためのパターン情報を加算した第1視点画像の情報と、前記パターン情報を減算した第2視点画像の情報とを保持する画像保持部とを備えた立体画像表示システムの各プロジェクタが、前記画像保持部に保持された画像の情報のうち、1つ前段のプロジェクタのベース画像から生成された第1視点画像と、1つ後段のプロジェクタのベース画像から生成された第2視点画像とを、自プロジェクタの投射対象の視点画像として前記スクリーンに投射することを特徴とする。
【0010】
また、実施形態に係るプロジェクタは、所定間隔で並べて配置され、同一の被写体に関する設置位置ごとの視点画像を、同一方向に投射する複数のプロジェクタにより投射された画像のうち、観察者の左目および右目において、視線方向から最も近い隣り合った2つの画像が、それぞれの表示位置までの距離に応じた輝度比率で重ね合わせられて視認させることで、前記被写体を立体視させるように重畳画像を表示させるスクリーンと、前記複数のプロジェクタそれぞれの投射対象の視点画像である複数のベース画像から、所定周期分位相をずらすためのパターン情報を加算した第1視点画像の情報と、前記パターン情報を減算した第2視点画像の情報とを保持する画像保持部とを備えた立体画像表示システム内のプロジェクタであって、前記画像保持部に保持された画像の情報のうち、1つ前段のプロジェクタのベース画像から生成された第1視点画像と、1つ後段のプロジェクタのベース画像から生成された第2視点画像とを、自プロジェクタの投射対象の視点画像として前記スクリーンに投射する投射部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の立体画像表示システム、立体画像表示方法、およびプロジェクタによれば、画質の劣化を防ぎつつ、少ないプロジェクタ数で運動視差を伴う立体画像を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る立体画像表示システムの構成を示す全体図である。
図2図2は、従来の立体画像表示システム100Aの構成を示す全体図である。
図3図3は、従来の他の立体画像表示システム100Bの構成を示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
運動視差を伴う立体画像を多視点から裸眼で視認することができるようにスクリーンに表示させる技術について説明する。その1つとして、図2に示す立体画像表示システム100Aのように、スクリーン110Aの前面に多数のプロジェクタ120-0~120-16を所定間隔で並べて設置し、同一の被写体に関する設置位置ごとの視点画像をスクリーン110A上の対応する位置P0~P16に点線で示すように投射するものがある。
【0014】
このように多視点の画像をスクリーン110Aに表示させることで、観察者Xは自身の位置に応じた立体画像を視認することができる。例えば、観察者Xがスクリーン110Aの前の表示位置P4とP5との間の位置からスクリーン110Aを見た場合に、一点鎖線で示すように、位置P4に表示された画像が左目で視認され、P4とずれた視点で位置P5に表示された画像が右目で視認されることで、P4とP5の間の位置に対応する立体画像を視認することができる。
【0015】
そして、観察者Xがスクリーン110Aの前を横方向に移動しても、その視点移動に伴って観察対象の立体画像が適宜切り替えられる。しかし、この観察対象の立体画像の切り替えをなめらかにするためには、プロジェクタを人間の左右の目の視差よりも小さい角度の間隔で多数設置する必要がある。
【0016】
そこで、図3に示す立体画像表示システム100Bのように、拡散角が狭い指向性画像を表示可能なスクリーン110Bを用いるとともに、リニアブレンディングという人間の知覚の視覚メカニズムを活用することで、少ないプロジェクタ数で、運動視差に伴ってなめらかに切り替わる立体画像を観察者に提供することができる。
【0017】
図3の立体画像表示システム100Bでは、図2の立体画像表示システム100Aよりも少ない数のプロジェクタ120-0、120-2、120-4・・・120-16を所定間隔で並べて設置し、同一被写体に関する設置位置ごとの視点画像をスクリーン110Bの位置P0、P2、P4・・・P16に点線で示すように投射する。スクリーン110Bは、例えば2枚のレンチキュラーレンズを積層した構成を有し、各プロジェクタ120-0、120-2、120-4・・・120-16から投射された画像をそれぞれ対応する位置P0、P2、P4・・・に狭い拡散角で表示させる。これにより観察者Xがスクリーン110Bの前面からスクリーン110Bを見たときに、観察者Xの左目および右目において、視線方向から最も近い隣り合った2つの画像が、それぞれの表示位置までの距離に応じた輝度比率で重ね合わせられて視認させる。具体的には、2つの画像が、それぞれの表示位置までの距離が短い程高い輝度で重ね合わせられて視認される。このように左右の目で視認されることで、被写体が立体視される。
【0018】
例えば、観察者Xがスクリーン110Bの表示位置P4の前からスクリーン110Bを見た場合には、位置P4の画像にわずかに位置P2の画像が重ね合わせられた画像が左目で視認され、位置P4の画像にわずかに位置P6の画像が重ね合わせられた画像が右目で視認されることで、位置P4に対応する位相の立体画像が視認される。また、観察者Xが位置P4とP6の間に対応する位置に移動してスクリーン110Bを見た場合には、左目および右目において、各目から位置P4およびP6それぞれまでの距離に応じた輝度比率で、位置P4の画像と位置P6の画像とが重ね合わせられた画像が視認される。このとき、左目と右目との視差に基づいて、観察者Xにより、位置P4と位置P6との間の該当位置に対応する位相の立体画像が視認される。
【0019】
このとき、スクリーン110Bの拡散角が大きいと、観察者Xの視線方向から最も近い隣り合う2つの画像以外の画像も視認されてしまい、観察対象の画像の画質劣化の要因となってしまう。
【0020】
例えば、観察者XがP4に対応する位置にいる場合、スクリーン110Bにより理想的な拡散角で各画像が表示されれば、位置P4に対応する位相の立体画像のみが視認される。つまり、位置P4の位相の立体画像の輝度割合が100%の状態で視認される。
【0021】
しかし、スクリーン110Bの拡散角がこれよりも大きいと、観察者Xにより、位置P4の立体画像に位置P2の視点画像および位置P6の視点画像が重なって視認され、位置P2とP6の視点画像分が画像劣化成分となってしまう。
【0022】
例えば、位置P4に投射される画像の輝度割合が50%で視認され、その両隣の位置P2および位置P6に投射される画像の輝度割合がそれぞれ25%で視認される場合、位置P2および位置P6の視点画像の輝度割合の合計である50%が画質劣化成分となる。
【0023】
また、観察者XがP4とP6の間に対応する位置に移動した場合、スクリーン110Bにより理想的な拡散角で各画像が表示されていれば、位置P4の視点画像と位置P6の視点画像とが観察者Xの位置に応じた輝度比率で重ね合わせられた画像が、輝度割合100%の状態で視認される。
【0024】
これに対し、スクリーン110Bの拡散角が上述した程度に大きい場合は、位置P4の視点画像と位置P6の視点画像とが重ね合わせられた画像(輝度割合50%)に、位置P2の視点画像と位置P4の視点画像とが重ね合わせられた画像(輝度割合25%)と、位置P6の視点画像と位置P8の視点画像とが重ね合わせられた画像(輝度割合25%)がさらに重なって視認される。
【0025】
この場合、位置P2の視点画像と位置P4の視点画像とが重ね合わせられた画像の中の位置P4の視点画像、および、位置P6の視点画像と位置P8の視点画像とが重ね合わせられた画像の中の位置P6の視点画像の成分は、表示対象の画像(位置P4の視点画像と位置P6の視点画像が重ね合わせられた画像)と同成分であるため、画質劣化成分とはならない。そのため、位置P2の視点画像と位置P4の視点画像とが重ね合わせられた画像の中の位置P2の視点画像、および、位置P6の視点画像と位置P8の視点画像とが重ね合わせられた画像の中の位置P8の視点画像の輝度割合を合わせた25%が、画質劣化成分となる。
【0026】
上述した画質劣化成分の割合を低減させるための本発明の一実施形態について、以下に説明する。
【0027】
〈一実施形態による立体画像表示システムの構成〉
本発明の一実施形態による立体画像表示システムの構成について、図1を参照して説明する。本実施形態による立体画像表示システム1は、複数の指向性画像を表示可能なスクリーン10と、スクリーン10の前面に横方向に所定間隔で並べて設置され、同一の被写体に関する設置位置ごとの視点画像を、同一方向に投射する複数のプロジェクタ20-0、20-2、20-4、20-6、20-8、20-10、20-12、20-14、および20-16とを備える。
【0028】
スクリーン10は、上述した立体画像表示システム100Bのスクリーン110Bと同様に、各プロジェクタ20-0、20-2、20-4・・・20-16から投射された画像をそれぞれ対応する位置P0、P2、P4・・・に狭い拡散角で表示させる。これにより観察者Xがスクリーン10の前面からスクリーン10を見たときに、観察者Xの左目および右目において、視線方向から最も近い隣り合った2つの画像が、それぞれの表示位置までの距離に応じた輝度比率で重ね合わせられて視認させることで、被写体が立体視される。
【0029】
本実施形態においてプロジェクタ20-0、20-2、20-4・・・20-16はそれぞれ、隣り合うプロジェクタと、人間の両眼間隔よりも大きい角度分視点をずらした画像を投射させることができるため、上述した図2の立体画像表示システム100Aよりもプロジェクタの数を少なくすることができる。
【0030】
また、当該立体画像表示システム1内のいずれかの装置には、各プロジェクタ20-0~20-16それぞれからスクリーン10の対応する位置P0、P2、P4・・・P16への投射対象の視点画像であるベース画像B0、B2、B4・・・B16の情報と、これらのベース画像それぞれから生成された、Hidden Stereoの原理で用いるための画像情報、つまりベース画像から所定周期分位相をずらすためのパターン情報が加算された第1視点画像の情報と、これらのベース画像それぞれから当該パターン情報が減算された第2視点画像の情報とが保持されている。
【0031】
Hidden Stereoの原理とは、ベース画像I(1≦k≦K-1)に対して、視点画像Ik、視点画像Ik+1を用いて視点画像Ikとの位相差がφ(φは0<φ≦π/2を満たす実数)である視差誘導エッジDφを生成し、視点画像Ikに視差誘導エッジDφを加算することにより擬似視点画像Ik(R)を生成し、視点画像Ikに視差誘導エッジDφの正負反転画像を加算することにより擬似視点画像Ik(L)を生成し、擬似視点画像Ik(R), Ik(L)(1≦k≦K-1)を出力するものである。
【0032】
上述したベース画像B0、B2、B4・・・B16の情報と、それぞれの第1視点画像および第2視点画像の情報とは、各プロジェクタ20-0~20-16に保持されていてもよいし、プロジェクタ20-0~20-16に接続された別のマスター装置(図示せず)に保持されていてもよい。
【0033】
各プロジェクタ20-0、20-2、20-4・・・20-16はそれぞれ、保持された画像の情報のうち、隣り合う1つ前段のプロジェクタのベース画像から生成された第1視点画像と、1つ後段のプロジェクタのベース画像から生成された第2視点画像とを、自プロジェクタの投射対象の視点画像としてスクリーン10に投射する。
【0034】
上述した第1視点画像および第2視点画像は、Hidden Stereoの原理において、所定の2D画像から人間に奥行き情報を与える働きをする視差誘導パターンを加算/減算することで、観察者に立体画像を観察させるために生成する右目用/左目用画像に相当する。よって、図1において、位置P0に対応するベース画像B0の第1視点画像(右目用画像)を「第1視点画像B0R」と記載し、同様に位置P2に対応するベース画像B2の第1視点画像(右目用画像)を「第1視点画像B2R」、第2視点画像(左目用画像)「第2視点画像B2L」と記載する。
【0035】
つまり、プロジェクタ20-2からは、1つ前段のプロジェクタ20-0のベース画像B0から生成された第1視点画像B0Rと、1つ後段のプロジェクタ20-4のベース画像B4から生成された第2視点画像B4Lをスクリーン10の位置P2に投射する。同様に、プロジェクタ20-4からは、第1視点画像B2Rと第2視点画像B6Lを位置P4に投射し、プロジェクタ20-6からは、第1視点画像B4Rと第2視点画像B8Lを位置P6に投射し、プロジェクタ20-8からは、第1視点画像B6Rと第2視点画像B10Lを位置P8に投射し、プロジェクタ20-10からは、第1視点画像B8Rと第2視点画像B12Lを位置P10に投射し、プロジェクタ20-12からは、第1視点画像B10Rと第2視点画像B14Lを位置P12に投射し、プロジェクタ20-14からは、第1視点画像B12Rと第2視点画像B16Lを位置P14に投射する。
【0036】
このように各プロジェクタが投射することにより、スクリーン10上の各位置P0、P2、P4・・・P16では、それぞれ該当する第1視点画像と第2視点画像とが足し合わせられて表示される。
【0037】
このとき、スクリーン10の拡散角が理想的な角度よりも大きく、例えば、P4に対応する位置にいる観察者Xがスクリーン10を見たときに、位置P4の視点画像の輝度割合が50%で視認され、その両隣の位置P2および位置P6の視点画像の輝度割合がそれぞれ25%で視認される場合について説明する。
【0038】
ここで、プロジェクタ20-4から位置P4に投射される第1視点画像B2R、第2視点画像B6Lはそれぞれ、ベース画像B2、B6から位置P4の投射対象の画像の位相に近づくように生成された画像であるため、これらの画像の情報は画質劣化成分にはならない。
【0039】
また、プロジェクタ20-2から投射される画像は第1視点画像B0Rおよび第2視点画像B4Lであり、プロジェクタ20-6から投射される画像は第1視点画像B4Rおよび第2視点画像B8Lである。これらのうち、第2視点画像B4Lと第1視点画像B4Rとは、同一のベース画像B4から同一のパターン情報を減算および加算することで生成された画像であるためこれらのパターン情報分が打ち消され、観察者Xからはベース画像B4として視認され、画質劣化成分は発生しない。
【0040】
また、プロジェクタ20-2から投射される第1視点画像B0Rはベース画像B2からB4と反対のB0方向に位相がずれた画像であり、プロジェクタ20-6から投射される第2視点画像B8Lはベース画像B6からB4と反対のB8方向に位相がずれた画像であるため、画質劣化成分となる。
【0041】
これらの状態を合わせると、画質劣化成分の輝度割合は、観察者Xにより視認される画像のうち、プロジェクタ20-2から投射された画像の輝度割合の1/2およびプロジェクタ20-6から投射された画像の輝度割合の1/2であり、これらは合わせると全体の25%にある。つまり、上述した図3の立体画像表示システム100Bにおいて、観察者XがP4に対応する位置にいる場合の画質劣化成分50%よりも大幅に低下する。
【0042】
また、観察者XがP4とP6との間に対応する位置に移動した場合、位置P4の視点画像(第1視点画像B2Rおよび第2視点画像B6L)と位置P6の視点画像(第1視点画像B4Rおよび第2視点画像B8L)とが重ね合わせられた画像(輝度割合50%)に、位置P2の視点画像(第1視点画像B0Rおよび第2視点画像B4L)と位置P4の視点画像(第1視点画像B2Rおよび第2視点画像B6L)とが重ね合わせられた画像(輝度割合25%)と、位置P6の視点画像(第1視点画像B4Rおよび第2視点画像B8L)と位置P8の視点画像(第1視点画像B6Rおよび第2視点画像B10L)とが重ね合わせられた画像(輝度割合25%)がさらに重なって視認される。
【0043】
この場合、図3の立体画像表示システム100Bと同様に、位置P2の視点画像と位置P4の視点画像とが重ね合わせられた画像の中の位置P4の視点画像、および、位置P6の視点画像と位置P8の視点画像とが重ね合わせられた画像の中の位置P6の視点画像の成分は、表示対象の画像(位置P4の視点画像と位置P6の視点画像が重ね合わせられた画像)と同成分であるため、画質劣化成分とはならない。そのため、位置P2の視点画像と位置P4の視点画像とが重ね合わせられた画像の中の位置P2の視点画像、および、位置P6の視点画像と位置P8の視点画像とが重ね合わせられた画像の中の位置P8の視点画像の輝度割合を合わせた25%が、画質劣化成分となる。
【0044】
つまり、観察者Xが、各プロジェクタから投射された画像が表示されるスクリーン10上の位置P0、P2、P4・・・P16に対応する位置からスクリーン10を見た場合に、従来に比べて画質劣化が大幅に低減される。また、観察者が、スクリーン10上の位置P0、P2、P4・・・P16のいずれか2つの間に対応する位置からスクリーン10を見た場合には、従来と同様の画質劣化が生じる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…立体画像表示システム
10…スクリーン
20-0~20-16…プロジェクタ
図1
図2
図3