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特許7185214アミド化合物の水素化に用いる水素添加反応用触媒およびこれを用いたアミン化合物の製造方法
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  • 特許-アミド化合物の水素化に用いる水素添加反応用触媒およびこれを用いたアミン化合物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】アミド化合物の水素化に用いる水素添加反応用触媒およびこれを用いたアミン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/198 20060101AFI20221130BHJP
   B01J 27/28 20060101ALI20221130BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20221130BHJP
   B01J 23/648 20060101ALI20221130BHJP
   B01J 27/187 20060101ALI20221130BHJP
   B01J 27/185 20060101ALI20221130BHJP
   B01J 27/188 20060101ALI20221130BHJP
   B01J 27/19 20060101ALI20221130BHJP
   C07C 209/50 20060101ALI20221130BHJP
   C07C 211/03 20060101ALI20221130BHJP
   C07C 211/48 20060101ALI20221130BHJP
   C07C 211/27 20060101ALI20221130BHJP
   C07D 295/03 20060101ALI20221130BHJP
   C07D 295/023 20060101ALI20221130BHJP
   C07D 295/073 20060101ALI20221130BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221130BHJP
   C07D 295/027 20060101ALN20221130BHJP
【FI】
B01J27/198 Z
B01J27/28 Z
B01J37/02 101D
B01J23/648 Z
B01J27/187 Z
B01J27/185 Z
B01J27/188 Z
B01J27/19 Z
C07C209/50
C07C211/03
C07C211/48
C07C211/27
C07D295/03
C07D295/023
C07D295/073
C07B61/00 300
C07D295/027
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018062581
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019084524
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2017070127
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017233917
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 清臣
(72)【発明者】
【氏名】満留 敬人
(72)【発明者】
【氏名】高木 由紀夫
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/066112(WO,A1)
【文献】特開平10-195030(JP,A)
【文献】特開2016-160243(JP,A)
【文献】特開2012-121843(JP,A)
【文献】宮川和也 他,Ru-Vバイメタル触媒による分子状水素を用いたアミドからアミンへの高選択的還元反応,第116回触媒討論会討論会A予稿集,日本,一般社団法人触媒学会,2015年09月09日,p. 136
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07B 61/00
Scopus
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金とバナジウムがハイドロキシアパタイトに担持されており、白金:バナジウムのモル比が1:0.8~5である、アミド化合物の水素添加反応用触媒。
【請求項2】
アミド化合物が、2級以上のアミド化合物または芳香族置換基を含むアミド化合物である請求項1に記載のアミド化合物の水素添加反応用触媒。
【請求項3】
更に、ルテニウムが担持されたものである請求項1または2に記載のアミド化合物の水素添加反応用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド化合物をアミン化合物にする水素添加反応に用いる、白金とバナジウムを含み、担体に担持された触媒およびこれを用いたアミン化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アミド化合物をアミン化合物にする還元反応は、アミドが難還元性であるため、カルボン酸誘導体の還元の中で最も難しい反応の一つである。
【0003】
アミド化合物をアミン化合物にする還元反応は研究等の少量試験では水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)等の強力な還元剤を化学量論的に用いる方法が一般だが、工業規模の合成に使用するには大量の金属廃棄物の発生や反応性が高いために大量に用いると水素等が発生し危険であり、後処理等の操作が煩雑であること等が問題となっていた。
【0004】
一方、分子状水素を還元剤とするアミドからアミンへの還元反応は、無害な水のみを副生するため環境調和型のアミンの合成方法である。このアミドの触媒的水素還元反応は古くから研究されており、銅-クロム、レニウムまたはニッケル触媒を用いて行われてきたが、水素圧200気圧、反応温度200℃以上等の高温高圧な反応条件を必要とする。
【0005】
近年、非特許文献1や2ではモレキュラーシーブスを反応系内に添加することで120℃、10atmまたは160℃、5atmという低温低圧条件下でのアミドの水素化が報告されている。しかし、基質適用性に乏しく、C-N開裂によるアルコールが副生してしまうという問題点があった。また、これらの触媒は再使用できない。
【0006】
また、非特許文献3で報告されている均一系触媒を用いた反応もあるが、C-N開裂によるアルコールが副生してしまうという問題点があった。また、均一系触媒を用いた反応では高価な触媒を繰り返し使用することが難しい。
【0007】
そのため、工業的に使用するためには、温和な条件下でも使用でき、高い活性を維持したまま、繰り返し使用できるような耐久性が高い触媒が求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】R. Burch, C. Paun, X.-M. Cao, P. Crawford, P. Goodrich, C. Hardacre, P. Hu, L. McLaughlin, J. Sa, J. M. Thompson, Catalytic hydrogenation of tertiary amides at low temperatures and pressures using bimetallic Pt/Re-based catalysts. J. Catal. 283, 89-97 (2011)
【文献】M. Stein, B. Breit, Catalytic hydrogenation of amides to amines under mild conditions. Angew. Chem. Int. Ed. 125, 2287-2290 (2013)
【文献】E. Balaraman, B. Gnanaprakasam, L. J. W. Shimon, D. Milstein, Direct hydrogenation of amides to alcohols and amines under mild conditions. J. Am. Chem. Soc. 132, 16756-16758 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、アミド化合物をアミン化合物にする還元反応を行える触媒であって、温和な条件下でも使用でき、高い活性を維持したまま、繰り返し使用できるような耐久性も備えた触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、白金とバナジウムを含み、担体に担持された触媒が、アミド化合物に対する高い水素化活性、選択性、耐久性、反応性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、白金とバナジウムが担体に担持されたことを特徴とするアミド化合物の水素添加反応用触媒である。
【0012】
また、本発明は、溶媒中で、白金とバナジウムを担体に担持させた後、これを乾燥することを特徴とする上記アミド化合物の水素添加反応用触媒の製造方法である。
【0013】
更に、本発明は、白金とバナジウムとルテニウムが担体に担持されたことを特徴とするアミド化合物の水素添加反応用触媒である。
【0014】
また更に、本発明は、溶媒中で、白金とバナジウムとルテニウムを担体に担持させた後、これを乾燥することを特徴とする上記アミド化合物の水素添加反応用触媒の製造方法である。
【0015】
更にまた、本発明は、アミド化合物を、上記アミド化合物の水素添加反応用触媒に接触させて水素添加し、アミン化合物を得ることを特徴とするアミン化合物の製造方法である。
【0016】
また、本発明は、上記アミン化合物の製造方法で製造されたアミン化合物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の触媒は、温和な条件下で使用できるため、アミド化合物からアミン化合物への合成が安全で容易になる。
【0018】
また、本発明の触媒は、製造の際に、特別な操作を必須としないため、安価で安全に製造できる。
【0019】
そのため、本発明の触媒は、アミド化合物からアミン化合物への工業的な合成に利用できる。
【0020】
また、本発明の触媒は担体に担持されているため使用後に、ろ過によって容易に高価な白金を回収可能であり、更にこの回収された触媒は当初の活性・選択性を維持できる。
【0021】
そのため、本発明の触媒は、再利用も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の触媒Pt-V/HAPのTEM像である。
図2】製造例1で得られたPt-V/HAPのADF-STEM画像である。
図3】製造例1で得られたPt-V/HAPのCaの元素マッピング画像である。
図4】製造例1で得られたPt-V/HAPのVの元素マッピング画像である。
図5】製造例1で得られたPt-V/HAPのPtの元素マッピング画像である。
図6】製造例1で得られたPt-V/HAPのCa・V・Ptの元素マッピング画像を重ねたものである。
図7】製造例1で得られたPt-V/HAPのEDSライン分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のアミド化合物の水素添加反応用触媒(以下、「本発明の触媒」という)は、白金とバナジウムが、担体に担持されたものである。なお、本明細書においては、本発明の触媒は、「X-Y/Z」(X、Yは白金、バナジウム等の金属名、Zは担体名)等と記載することがある。
【0024】
(白金)
本発明の触媒を構成する白金は、特に限定されないが、例えば、白金粒子が好ましい。ここで白金粒子とは、金属白金または酸化白金の少なくとも1種から選ばれる白金の粒子であり、好ましくは金属白金の粒子である。
【0025】
ここで、白金粒子は、白金を含有していれば特に制限されるものではなく、ルテニウム(Ru)やロジウム(Rh)やパラジウム(Pd)等の貴金属を少量含んでいてもよいが、好ましくは金属白金である。白金粒子は一次粒子でもよく、二次粒子であってもよい。白金粒子の平均粒子径は1~30nmが好ましく、1~10nmがより好ましい。なお、本明細書において「平均粒子径」とは、電子顕微鏡で任意の数の粒子の直径を観察し、それらの直径の平均値のことをいう。
【0026】
(バナジウム)
本発明の触媒を構成するバナジウムは、特に限定されないが、例えば、バナジウム酸化物が好ましい。バナジウム酸化物としては、例えば、バナジン酸イオン(VO 3-、VO 3-)、五酸化バナジウム、酸化バナジウム(II)または酸化バナジウム(IV)等のうち少なくとも1種から選ばれるものであり、好ましくはVである。
【0027】
(白金-バナジウム[Pt-V]のモル比)
本発明の触媒における、白金とバナジウムの組成比は、金属としての白金(Pt):金属としてのバナジウム(V)のモル数のモル数換算で、モル比[Pt:V]=1:0.1~10、好ましくは1:0.5~5、更に好ましくは1:0.8~1.2である。
【0028】
(ルテニウム)
本発明の触媒には、更にルテニウムを含有させることができる。このルテニウムは、特に限定されないが、例えば、酸化ルテニウム、金属ルテニウム等である。また、金属ルテニウムは白金と合金化していてもよく、酸化ルテニウムが酸化バナジウムと複合酸化物を形成していてもよい。なお、前記合金化や複合酸化物の形成は常法に従ってすることができる。
【0029】
本発明の触媒に、ルテニウムを含有させる場合、上記した白金またはバナジウムの一部をルテニウムに置き換えればよい。
【0030】
(白金-ルテニウム-バナジウム[Pt-Ru-V]のモル比)
本発明の触媒における、白金とルテニウムとバナジウムの組成比は、白金とバナジウムの組成比に関しては前述の通りであり、金属としての白金(Pt):金属としてのルテニウム(Ru)のモル数のモル数換算で、モル比[Pt:Ru]=1:0.1~10、好ましくは1:0.5~5、更に好ましくは1:0.8~1.2である。
【0031】
(担体)
本発明の触媒の担体(母材)は、特に限定されるものではない。担体の吸着能等の諸物性も、特に限定されるものではないが、例えば、その吸着能は、いわゆるBET値として0.1~300m/gであってもよく、平均粒径としては0.02~100μmであってもよい。本発明においては、担体の吸着能は、0.5~180m/gであることが好ましい。
【0032】
また、担体の形態は、特に限定されず、例えば、粉末状、球形粒状、不定形顆粒状、円柱形ペレット状、押し出し形状、リング形状等が挙げられる。
【0033】
上記のような担体としては、例えば、ハイドロキシアパタイト(HAP)、チタニア、アルミナ、シリカ等の無機酸化物やカーボン粉末等を用いることができ、好ましくはハイドロキシアパタイトである。
【0034】
上記ハイドロキシアパタイトとしては、特に制限されることはなく、一般的なCa10(PO(OH)の化学量論的組成の水酸化リン酸カルシウムのみならず、この組成に類似した組成の水酸化リン酸カルシウム化合物やリン酸三カルシウム等を含む。
【0035】
本発明の触媒において、白金とバナジウムが担体に担持される態様は、特に制限されるものではなく、担体の形態により、種々の態様を採ることができ、担持される位置も単純に制御されていなくてもよいし、細孔や層の内側であったり、表面のみであってもよいが、粒子径の小さな白金が分散して担持され、バナジウムは、白金の近傍または白金上に存在する方が好ましい。なお、本発明の触媒における白金とバナジウム酸化物の担体への担持量は、特に限定されないが、例えば、金属換算の白金の量で0.1~10wt%であることが好ましい。
【0036】
本発明の触媒は、上記したような担体を用いているため、反応に使用した後に分離も容易になり、触媒の再使用においても有利であることは言うまでもない。
【0037】
(触媒に追加できる成分)
本発明の触媒は、上記した白金とバナジウム(必要によりルテニウム)が担体に担持されていればよく、効果を損なわない範囲で、遷移金属やアルカリ金属やアルカリ土類金属などを触媒成分や担体成分として常法に従って含有させてもよい。
【0038】
(本発明の触媒の製造方法)
本発明の触媒のうち、白金とバナジウムが担体に担持されたことを特徴とするアミド化合物の水素添加反応用触媒は、溶媒中で、白金とバナジウムを担体に担持させた後、これを乾燥することにより製造できる(以下、「本発明方法A」という)。
【0039】
具体的に本発明方法Aにおいて、白金とバナジウムを溶媒中で担体に担持させる方法は特に限定されないが、例えば、担体と、白金化合物およびバナジウム化合物を含有する溶媒混合液とを混合して、白金とバナジウムを溶媒中で担体に担持させる方法や、担体と、白金化合物を含有する溶媒液と、バナジウム化合物を含有する溶媒液とを何れかの順序で混合して、白金とバナジウムを溶媒中で担体に担持させる方法が挙げられる。
【0040】
本発明方法Aに用いられる白金化合物は、特に限定されないが、好ましくは乾燥した際に担体上で白金粒子となるものである。このような白金化合物としては、例えば、白金アセチルアセトナト(Pt(acac))、テトラアンミン白金(II)酢酸塩、ジニトロジアンミン白金(II)、ヘキサアンミン白金(IV)炭酸塩、ビス(ジベンザルアセトン)白金(0)等の白金錯体塩、塩化白金、硝酸白金、テトラクロロ白金酸カリウム等の塩が挙げられ、特にPt(acac)が好ましい。
【0041】
また、本発明方法Aに用いられるバナジウム化合物は、特に限定されないが、好ましくは乾燥した際に担体上でバナジウム酸化物を生じるものである。このようなバナジウム化合物としては、例えば、バナジルアセチルアセトナト(VO(acac))、ビス(タルトラト)ビス[オキソバナジウム(IV)]酸テトラメチルアンモニウム等のバナジウム錯体塩、バナジン(V)酸アンモニウム、ナフテン酸バナジウム等の塩が挙げられ、特にVO(acac)が好ましい。
【0042】
本発明方法Aに用いられる白金化合物およびバナジウム化合物を含有する溶媒混合液は、上記白金化合物およびバナジウム化合物を、溶媒に懸濁させたものである。この溶媒混合液における白金化合物とバナジウム化合物はモル比で1:0.1~10、好ましくは1:0.5~5、更に好ましくは1:1である。また、溶媒としては、例えば、水や、アルコール、アセトン等の有機溶媒が挙げられ、水であればコスト、安全性共に優れているため好ましい。これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせてもよい。なお、溶媒の温度は特に限定されないが、例えば、0~100℃、好ましくは10~50℃である。
【0043】
上記のようにして調製した溶媒混合液は、次に、担体と混合すればよい。上記溶媒混合液と、担体を混合する方法は特に限定されないが、各成分が十分に分散する量があればよく、金属換算の白金0.1mmolに対して担体0.1~100g、好ましくは1~10gの量で撹拌しながら行う。混合後は0.5~12時間、好ましくは1~6時間撹拌を続ける。
【0044】
また、本発明方法Aに用いられる白金化合物を含有する溶媒液と、バナジウム化合物を含有する溶媒液は、上記白金化合物およびバナジウム化合物を、それぞれ溶媒に懸濁させたものである。これらの溶媒液における各化合物の含有量は、これら溶媒液を混合した際に上記白金化合物およびバナジウム化合物を含有する溶媒混合液と同じになる量にすればよい。また、これらに使用する溶媒や溶媒の温度は上記溶媒混合液と同様にすればよい。
【0045】
上記のようにして調製された白金化合物を含有する溶媒液と、バナジウム化合物を含有する溶媒液は、次に、担体と、白金化合物を含有する溶媒液と、バナジウム化合物を含有する溶媒液とを何れかの順序で混合すればよい。担体と白金化合物を含有する溶媒液を混合した後にバナジウム化合物を含有する溶媒液の順序で混合すると白金化合物の上に遷移金属が担持される傾向があるためよく、白金化合物を後に混合すると高価な白金のロスが少なくなる場合があるためよい。また、上記溶媒液と、担体を混合する方法は、上記混合溶液を用いる場合と同様にすればよい。
【0046】
以上のようにして溶媒混合液と担体を混合あるいは各溶媒液と担体を混合して、溶媒中で、白金とバナジウムを担体に担持させた後は乾燥させればよい。乾燥の前には、洗浄、ろ過、濃縮等の前処理をして溶媒を除去させることが好ましい。乾燥の条件は特に限定されないが、例えば、80~200℃で1~56時間乾燥させる。乾燥後は、例えば、マッフル炉等を使用して250~700℃で1~12時間焼成等することが好ましく、更に、粉砕等を行ってもよい。
【0047】
なお、本発明方法Aにおいて溶媒として水を使用する場合、白金化合物としては、例えば、ヘキサクロロ白金(IV)酸塩(HPtCl)、テトラクロロ白金(II)酸塩(KPtCl等)等の白金塩が挙げられる。これらの中でもテトラクロロ白金(II)酸カリウム(KPtCl)が好ましい。また、バナジウム化合物としては、例えば、塩化バナジウム(VCl)等のバナジウム塩や、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO)、オルトバナジン(V)酸ナトリウム(NaVO)、メタバナジン酸カリウム(KVO)、メタバナジン酸アンモウム(NHVO)等のバナジン酸塩が挙げられる。これらの中でも塩化バナジウムが好ましい。
【0048】
また、本発明方法Aにおいて溶媒として水を使用する際、上記化合物が溶媒に溶解しにくい場合は、触媒性能に問題がない範囲で、pH調整剤やバインダー等を用いたり、超音波をかけたり温度を調整してもよい。pH調整剤としては水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、酢酸、クエン酸、炭酸、乳酸等が挙げられる。また、バインダーとしてはポリエチレングリコールやポリビニルアルコール等の有機化合物やシリカ等の無機化合物等が挙げられる。
【0049】
本発明の触媒のうち、白金とバナジウムとルテニウムが担体に担持されたことを特徴とするアミド化合物の水素添加反応用触媒は、溶媒中で、白金とバナジウムとルテニウムを担体に担持させた後、これを乾燥することにより製造できる(以下、「本発明方法B」という)。
【0050】
具体的に本発明方法Bにおいて、白金とバナジウムとルテニウムを溶媒中で担体に担持させる方法は特に限定されないが、例えば、担体と、白金化合物、バナジウム化合物およびルテニウム化合物を含有する溶媒混合液とを混合して、白金とバナジウムとルテニウムを溶媒中で担体に担持させる方法や、担体と、白金化合物を含有する溶媒混合液と、バナジウム化合物を含有する溶媒混合液と、ルテニウム化合物を含有する溶媒混合液を何れかの順序で混合して、白金とバナジウムとルテニウムを溶媒中で担体に担持させる方法が挙げられる。
【0051】
本発明方法Bに用いられる白金化合物、バナジウム化合物は、本発明方法Aで用いられるものと同じである。また、本発明方法Bに用いられるルテニウム化合物は、特に限定されないが、例えば、塩化ルテニウム、酢酸ルテニウム等の塩やルテニウムアセチルアセトナト、ドデカカルボニル三ルテニウム(0)、ホルマトジカルボニルルテニウム(I)、硝酸ルテニウム(II)ニトロシル、ヘキサアンミンルテニウム酢酸塩等の錯体塩等が挙げられる。これらの中でも塩化ルテニウム、Ru(acac)が好ましい。
【0052】
本発明方法Bに用いられる白金化合物、バナジウム化合物およびルテニウム化合物を含有する溶媒混合液は、上記白金化合物、バナジウム化合物およびルテニウム化合物を、溶媒に懸濁させたものである。この溶媒混合液における白金化合物とバナジウム化合物はモル比で1:0.1~10、好ましくは1:0.5~5、更に好ましくは1:1である。そして、ルテニウム化合物は、上記した白金化合物またはバナジウム化合物の一部をルテニウムに置き換えればよい。また、これらに使用する溶媒や溶媒の温度は本発明方法Aと同様にすればよい。
【0053】
上記のようにして調製した溶媒混合液は、次に、担体と混合すればよい。上記溶媒混合液と、担体を混合する方法は、上記溶媒混合液を用いる以外は本発明方法Aと同様にすればよい。
【0054】
また、本発明方法Bに用いられる白金化合物を含有する溶媒液と、バナジウム化合物を含有する溶媒液と、ルテニウム化合物を含有する溶媒液は、上記白金化合物、バナジウム化合物およびルテニウム化合物を、それぞれ溶媒に懸濁させたものである。これらの溶媒混合液における各化合物の含有量は、これら溶媒液を混合した際に上記白金化合物、バナジウム化合物およびルテニウム化合物を含有する溶媒混合液と同じになる量にすればよい。また、これらに使用する溶媒や溶媒の温度は本発明方法Aと同様にすればよい。
【0055】
上記のようにして調製された白金化合物を含有する溶媒液と、バナジウム化合物を含有する溶媒液と、ルテニウム化合物を含有する溶媒液は、次に、担体と、白金化合物を含有する溶媒液と、バナジウム化合物を含有する溶媒液と、ルテニウム化合物を含有する溶媒液とを何れかの順序で混合すればよい。また、上記溶媒液と、担体を混合する方法は、上記溶媒液を用いる以外は本発明方法Aと同様にすればよい。
【0056】
以上のようにして溶媒混合液と担体を混合あるいは各溶媒液と担体を混合して、溶媒中で、白金とバナジウムとルテニウムを担体に担持させた後は、本発明方法Aと同様に乾燥をさせればよい。また、乾燥後は、本発明方法Aと同様に焼成、粉砕等を行ってもよい。
【0057】
なお、本発明方法Bにおいて溶媒として水を使用する場合、ルテニウム化合物としては、塩化ルテニウム(III)(RuCl)、ルテニウム酸ナトリウム(KRuO)、ニトロシル硝酸ルテニウム(Ru(NO)(NO)等のルテニウム塩等が挙げられる。これらの中でも塩化ルテニウムが好ましい。これ以外の条件については全て本発明方法Aと同様にすればよい。
【0058】
本発明の触媒は、白金とバナジウム(必要によりルテニウム)(以下、単に「白金等」という)が担体粒子中に均一に担持されていてもよく、担体の表面側に偏在して担持していてもよい。このような白金等の担持位置については、特に白金等のように高価な成分を有効に利用しようとする場合には担体の表面側に偏在担持させることが望ましい。担体表面に偏在担持させることで、反応基質と白金等とが接触する機会が増し、触媒の活性向上が期待できる。
【0059】
このような担体表面に白金等を偏在担持させる方法は特に限定されるものではなく、使用する触媒材料に応じて公知の手法の中から適宜選択することができる。具体的な例としては、上記白金化合物やバナジウム化合物(必要によりルテニウム化合物)を含有する溶媒混合液、あるいは、白金化合物を含有する溶媒液、バナジウム化合物を含有する溶媒液(必要によりルテニウム化合物を含有する溶媒液)のpHを調整する手法、担体上で白金等を非水溶化(沈殿)させるために、担体と上記溶媒混合液や上記溶媒液を混合する前または後に、アルカリ水溶液等の非水溶化に使用する水溶液で処理して白金等を固定化する手法、上記担体と上記溶媒混合液や上記溶媒液を混合した後、温度や静置時間を管理し、熟成をさせる手法、本発明の触媒製造後に、更に焼成工程を追加する手法等が挙げられる。なお、上記手法においては、適宜、洗浄、乾燥等を行ってもよい。
【0060】
上記溶媒混合液や溶媒液のpHを調整する手法においては、上記したpH調整剤を用いることができ、これらを用いて溶媒混合液や溶媒液のpHを担体への担持がしやすいように調整すればよく、酸性よりにしても良いし、アルカリ性よりにしても良いし、中性よりにしてもよい。
【0061】
上記担体と溶媒混合液や溶媒液を混合する前または後に、アルカリ水溶液等の非水溶化に使用する水溶液で処理する手法においては、アルカリ性化合物を水等に溶解させたアルカリ水溶液が用いられる。アルカリ性化合物としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属やアルカリ土類金属の重炭酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のケイ酸塩、アンモニア等が挙げられる。また、この際のpHは特に限定されないが、7~14、好ましくは8~13である。
【0062】
上記非水溶化の処理に用いるアルカリ水溶液の使用量は、白金化合物やバナジウム化合物(必要によりルテニウム化合物)を固定化することを目的とすることから、被還元対象に対してやや過剰なアルカリ量、例えば、1.05~1.2倍になるように濃度を調整して使用することが好ましい。
【0063】
上記熟成をさせる手法において、上記担体と溶媒混合液や溶媒液を混合した後の温度や静置時間は適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、10~100℃で1~72時間、好ましくは30~70℃で2~24時間熟成させればよい。
【0064】
上記本発明の触媒製造後に、更に焼成工程を追加する手法においては、製造された本発明の触媒を、水素を含むガス雰囲気中で加熱還元処理を施しながら焼成すればよい。このような焼成を気相還元や水素還元ともいう。気相還元であれば還元時に介在する溶媒がなく被還元成分の移動が困難であり、白金等の粒子が凝集しづらく、白金等を小さな粒子の状態で担持させることができる。
【0065】
この焼成工程がある場合、焼成後に白金等が酸化されてしまうことがある。このような場合は還元処理を施すことが好ましい。このような還元処理には気相還元と液相還元が採用できる。気相還元は100~500℃に加熱した触媒に還元性の気体を供給して還元処理を施すものである。このような還元性の気体としては前述のような水素の他、一酸化炭素や低分子の炭化水素を使用してもよい。低分子の炭化水素としてはメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン等も使用できる。また、気相還元の場合、気体の組成は還元成分のみからなるガスを使用してもよいが、窒素等、還元時に不活性なガスと混合して使用してもよい。
【0066】
また、液相還元は還元性の液体と触媒を混合し、80~150℃で加熱することで酸化された触媒成分を還元するものである。使用される還元成分は特に限定されるものではなく、還元条件に応じて適宜選択すればよく、例えばギ酸、ギ酸ナトリウム、ヒドラジン等が挙げられる。
【0067】
斯くして得られる本発明の触媒は、白金とバナジウム(必要によりルテニウム)が担体に担持されたものとなる。
【0068】
なお、本発明の触媒が製造できたことは、例えば、TEM(Transmission Electron Microscope;透過型電子顕微鏡)、FE-SEM(Field Emission-Scanning Electron Microscope;電界放射型走査電子顕微鏡)、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy;エネルギー分散型X線分光法)等で確認することができる。
【0069】
(アミド化合物の水素化)
本発明の触媒は、アミド化合物の水素添加反応用である。そのため、本発明の触媒は、アミド化合物に接触させれば、水素添加(還元)してアミン化合物を製造することができる。
【0070】
アミド化合物としては、アミド結合を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、2級以上のアミド化合物または芳香族置換基を含むアミド化合物、ラクタムまたは3級アミドにおいてN原子に結合しているカルボニルを含まない置換基の2つがお互いに連結していて環状構造を取るアミド化合物等が好ましく、2級以上のアミド化合物または芳香族置換基を含むアミド化合物がより好ましい。
【0071】
アミド化合物に、本発明の触媒を接触させて水素添加する方法は特に限定されず、適宜選択すればよい。具体的には、オートクレーブ等の耐圧性の容器中、液相で本発明の触媒と、アミド化合物と、水素ガスを接触させることによりアミド化合物の水素添加を行えばよい。また、水素添加の際には、水を除去して反応を進行させるために、モレキュラーシーブ等を容器中に入れておいてもよい。更に、本発明の触媒は、水素添加前に還元処理を予め行っておいてもよい。
【0072】
液相は有機溶剤のみあるいは数種の有機溶剤の混液が好ましく、有機溶剤のみがより好ましい。上記で用いられる有機溶剤は、特に限定されないが、例えば、ドデカン、シクロヘキサン等の炭素原子数5~20の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の炭素原子数7~9の芳香族炭化水素、ジメチルエーテル、ジメトキシエタン(DME)、オキセタン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒロドピラン(THP)、フラン、ジベンゾフラン、フラン等の鎖状構造または環状構造を有するエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル等から選択される1種以上が挙げられ、これらの中でも特にDMEが好ましい。
【0073】
有機溶剤の使用量は、例えば、上記アミド化合物の濃度が0.5~2.0質量%程度となる範囲内が好ましい。また、本発明の触媒の使用量は、例えば、触媒中の白金の量を基準としてアミド化合物に対して0.0001~50モル%程度であり、0.01~20モル%程度が好ましく、0.1~5モル%程度がより好ましい。
【0074】
本発明の触媒は、温和な条件でも、円滑に水素添加反応を進行させることができる。反応温度としては、基質の種類や目的生成物の種類等に応じて適宜調整することができ、例えば、100℃以下、好ましくは10~100℃、より好ましくは20~80℃程度、特に好ましくは30~70℃程度である。反応時の圧力は、5MPa以下、好ましくは常圧~4MPa、より好ましくは2~3.5MPaである。反応時間は、反応温度および圧力に応じて適宜調整することができ、例えば10分~56時間程度、好ましくは20分~48時間程度、特に好ましくは40分~30時間程度である。
【0075】
上記した方法によりアミド化合物を水素添加してアミン化合物が得られるが、通常のクロスカップリング反応等で製造することが難しいようなアミン化合物でも本発明の方法では製造できる。具体的に、C-Nカップリングの代表例であるBuchwald-Hartwig反応では、ハロゲン化アリールと1・2級アミンをPd触媒存在下で反応させて、当該アミンのN原子に直接アリール基を結合させることができるが、N原子と芳香環の間にひとつ以上の炭素原子またはメチレン鎖を介在させることはできない。しかしながら、上記した方法では、アミンのN原子をアシル化することによって得たアミド化合物を水素化することで、結果として元のアミンのN原子にひとつ以上の炭素原子またはメチレン鎖を介在させたC-N結合を生成させることができる。このような例としては、モルホリン→4-シクロヘキシルカルボニルモルホリン→4-シクロヘキシルメチルモルホリン、ピペリジン→1-フェニルアセチルピペリジン→1-フェネチルピペリジン、ベンジルメチルアミン→ベンジルメチルフェニルアセチルアミド→ベンジルメチルフェネチルアミン等が挙げられる。
【0076】
(触媒の再利用)
本発明の触媒は活性成分である白金が担体に担持されているため、反応中においても担持された白金が大きな粒子になりにくい。また、本発明の触媒は、例えば、水素添加後に反応液から濾過、遠心分離等の物理的な分離手法により容易に回収することができる。回収された本発明の触媒はそのまま、あるいは、必要により、洗浄、乾燥、焼成等を施した後、再利用することができる。洗浄、乾燥、焼成等は本発明の触媒の製造の際と同様に行えばよい。
【0077】
回収された本発明の触媒は、未使用の本発明の触媒と比べ、ほぼ同等の触媒能を示すことができ、使用-再生を複数回繰り返しても、その触媒能の低下を著しく抑制することができる。そのため、本発明によれば、通常、水素添加の費用の多くの割合を占める触媒を回収し、繰り返し利用することができるため、アミド化合物の水素添加のコストを大幅に削減することができる。
【実施例
【0078】
以下、本発明の触媒、並びに本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で広く応用が可能なものである。
【0079】
製 造 例 1
Pt-V/HAPの調製:
アセトン90mLにエヌ・イー ケムキャット社製Pt(acac)2 0.4mmolとシグマアルドリッチ社のVO(acac)2を0.4mmol加え室温で30分撹拌した。更に和光純薬社のHAP(商品名「リン酸三カルシウム」)1.0gを加えて室温で4時間撹拌した。得られた混合物から溶媒をロータリーエバポレータで除去し、淡緑色の粉末を得た。得られた粉末を110℃で終夜乾燥した。更に、乾燥した粉末をメノウ鉢で粉砕し、大気中で、2時間、300℃で焼成し、濃灰色の粉末(Pt-V/HAP)が得られた。
【0080】
上記で得られたPt-V/HAPについて種々の解析を行った。Pt-V/HAPのTEM像を図1に、ADF-STEM画像を図2に、Caの元素マッピング画像を図3に、Vの元素マッピング画像を図4に、Ptの元素マッピング画像を図5に、Ca・V・Ptの元素マッピング画像を重ねたものを図6に示した。これらの結果から、本発明の触媒は、白金粒子が担体に担持され、酸化バナジウム(V)が白金粒子の近傍または上に存在し、金属としての白金(Pt):金属としてのバナジウム(V)のモル数のモル数換算で、モル比[Pt:V]=6:7、また金属としての白金量は5.8wt%であることが分かった。また、Pt-V/HAPのEDSライン分析の結果(図7)から、白金粒子の平均粒子径は2.2nmであった。
【0081】
製 造 例 2
Pt-V/Cの調製:
製造例1のHAPをシグマアルドリッチ社の多孔質カーボン(商品名:炭素、メソポーラス)に替えた以外は同様にしてPt-V/Cが得られた。金属としての白金(Pt):金属としてのバナジウム(V)のモル数のモル数換算で、モル比[Pt:V]=6:7、また金属としての白金量は5.8wt%であることが分かった。
【0082】
製 造 例 3
Pt-V/TiOの調製:
製造例1のHAPを触媒学会の参照触媒であるチタニア(JRC TIO-4)に替えた以外は同様にしてPt-V/TiOが得られた。金属としての白金(Pt):金属としてのバナジウム(V)のモル数のモル数換算で、モル比[Pt:V]=6:7、また金属としての白金量は5.8wt%であることが分かった。
【0083】
製 造 例 4
Pt-V/Alの調製:
製造例1のHAPを住友化学社のアルミナ(AKP-G015)に替えた以外は同様にしてPt-V/Alが得られた。金属としての白金(Pt):金属としてのバナジウム(V)のモル数のモル数換算で、モル比[Pt:V]=6:7、また金属としての白金量は5.8wt%であることが分かった。
【0084】
製 造 例 5
Pt-V/SiOの調製:
製造例1のHAPを富士シリシア化学社のシリカ(Q-3)に替えた以外は同様にしてPt-V/SiOが得られた。金属としての白金(Pt):金属としてのバナジウム(V)のモル数のモル数換算で、モル比[Pt:V]=6:7、また金属としての白金量は5.8wt%であることが分かった。
【0085】
製 造 例 6
Pt-Ru-V/TiOの調製:
水90mLにエヌ・イー ケムキャット社製40mM RuCl水溶液5.0mL(Ru:0.2mmol)とTiO 0.5g、K(PtCl)を0.085g(Pt:0.2mmol)加え、更に40mM VCl水溶液 5.0mL(V:0.2mmol)加え室温で6時間撹拌した。得られた混合物に28wt%アンモニア水1.0mLを加え、90℃で6時間加熱撹拌した。溶液を脱イオン水で濾過洗浄し、得られた粉末を110℃で終夜乾燥した。乾燥した粉末をメノウ鉢で粉砕し、灰色の粉末(Pt―Ru-V/HAP)が得られた。得られた粉末中の金属比は金属としての白金(Pt):金属としてのルテニウム(Ru):金属としてのバナジウム(V)のモル数のモル数換算で、モル比[Pt:Ru:V]=1:1:1、また金属としての白金量は7.8wt%であった。
【0086】
製 造 例 7
Pt-Re/HAPの調製:
製造例1のVO(acac)をStrem Chemicals社のRe(CO)10に替えた以外は同様にしてPt-Re/HAPが得られた。金属としての白金(Pt):金属としてのレニウム(Re)のモル数のモル数換算で、モル比[Pt:Re]=6:7、また金属としての白金量は5.8wt%であることが分かった。
【0087】
製 造 例 8
Pt-Mo/HAPの調製:
製造例1のVO(acac)をナカライテスク社の(NHMo24・4HOに替えた以外は同様にしてPt-Mo/HAPが得られた。金属としての白金(Pt):金属としてのモリブデン(Mo)のモル数のモル数換算で、モル比[Pt:Mo]=6:7、また金属としての白金量は5.8wt%であることが分かった。
【0088】
製 造 例 9
Pt-W/HAPの調製:
製造例1のVO(acac)をシグマアルドリッチ社の(NH10(W・xHOに替えた以外は同様にしてPt-W/HAPが得られた。金属としての白金(Pt):金属としてのタングステン(W)のモル数のモル数換算で、モル比[Pt:W]=6:7、また金属としての白金量は5.8wt%であることが分かった。
【0089】
製 造 例 10
Pd-V/HAPの調製:
製造例1のエヌ・イー ケムキャット社製Pt(acac)をシグマアルドリッチ社のPd(acac)に替えた以外は同様にしてPd-V/HAPが得られた。金属としてのパラジウム(Pd):金属としてのバナジウム(V)のモル数のモル数換算で、モル比[Pd:V]=6:7、また金属としてのパラジウム量は3.2wt%であることが分かった。
【0090】
製 造 例 11
Ru-V/HAPの調製:
製造例1のエヌ・イー ケムキャット社製Pt(acac)をエヌ・イー ケムキャット社製のRu(acac)に替えた以外は同様にしてRu-V/HAPが得られた。金属としてのルテニウム(Ru):金属としてのバナジウム(V)のモル数のモル数換算で、モル比[Ru:V]=6:7、また金属としてのルテニウム量は3.0wt%であることが分かった。
【0091】
製 造 例 12
Rh-V/HAPの調製:
製造例1のエヌ・イー ケムキャット社製Pt(acac)を三津和化学薬品社のRh(acac)に替えた以外は同様にしてRh-V/HAPが得られた。金属としてのロジウム(Rh):金属としてのバナジウム(V)のモル数のモル数換算で、モル比[Rh:V]=6:7、また金属としてのロジウム量は3.1wt%であることが分かった。
【0092】
製 造 例 13
Pt/HAPの調製:
製造例1のVO(acac)を除いた以外は同様にしてPt/HAPが得られた。金属としての白金量は5.8wt%であることが分かった。
【0093】
製 造 例 14
V/HAPの調製:
製造例1のエヌ・イー ケムキャット社製Pt(acac)を除いた以外は同様にしてV/HAPが得られた。金属としてのバナジウム量は1.8wt%であることが分かった。
【0094】
実 施 例 1
製造例1~14で得られた触媒を、それぞれ表1の触媒量と、溶媒である1,2-ジメトキシエタン(DME)5mL、そして基質であるN-アセチルモルホリン0.5mmolを50mLのステンレス製オートクレーブに加えて表1の条件で水素化反応を行った。反応後、ガスクロマトグラフを用いて2の収率を測定した。結果を表1に記した。
【0095】
【化1】
【0096】
【表1】
【0097】
少なくとも白金とバナジウムの両方を担持した触媒は、アミド化合物の水素添加反応を温和な条件下で行えることが分かった。また、Pt-V/HAPは、アミド化合物の水素添加反応を温和な条件下で収率よく行えることが分かった。また、Pt-Ru-V/TiOも問題なく反応が進むことが分かった。
【0098】
実 施 例 2
製造例1で得られたPt-V/HAPを、それぞれ表2の触媒量と基質0.5mmol、和光純薬社のモレキュラーシーブス4Å:0.1gを50mLのステンレス製オートクレーブに加え、溶媒である1,2-ジメトキシエタン(DME)5mLを加えて、反応温度70℃、水素圧3MPaの下で水素化反応を行った。反応後、ガスクロマトグラフを用いて4の収率を測定した。結果を表2に記した。
【0099】
【化2】
【0100】
【表2】
【0101】
Pt-V/HAPは、基質が変わってもアミド化合物の水素添加反応を温和な条件下で収率よく行えることが分かった。
【0102】
実 施 例 3
触媒の再利用:
実施例1の反応後、使用したPt-V/HAPを遠心分離により分離し、溶媒である1,2-ジメトキシエタン(DME)で洗浄して反応系から回収した。この回収したPt-V/HAPを、再度同じ反応に使用した。結果を表3に示した。
【0103】
【表3】
【0104】
Pt-V/HAPは、性能の劣化なく再利用できることがわかった。
【0105】
実 施 例 4
製造例1で得られたPt-V/HAPを、それぞれ触媒0.1gと基質0.5mmol、和光純薬社のモレキュラーシーブス4Å:0.1gを50mLのステンレス製オートクレーブに加え、溶媒である1,2-ジメトキシエタン(DME)5mLを加えて、表4に記載の反応温度および水素圧の下で水素化反応を行った。反応後、ガスクロマトグラフを用いて4の収率を測定した。結果を表4に記した。
【0106】
【表4】
【0107】
Pt-V/HAPは、基質や水素圧や反応温度が変わってもアミド化合物の水素添加反応を温和な条件下で収率よく行えることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の触媒は、種々の医薬、農薬、その他種々の工業分野において有用なアミノ化合物を温和な条件で安全に製造するのに有用である。また、本発明の触媒は、安価で安全に製造できる。
以 上

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7