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  • 特許-電磁波シールド用スプレー塗布剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】電磁波シールド用スプレー塗布剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20221130BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20221130BHJP
   C09D 5/33 20060101ALI20221130BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20221130BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221130BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20221130BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221130BHJP
【FI】
C09D163/00
H05K9/00 W
C09D5/33
C09D133/00
C09D7/61
C09D7/20
C09D7/63
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019041224
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020143225
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】坂井 徳幸
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 義隆
(72)【発明者】
【氏名】藤野 拓
(72)【発明者】
【氏名】米田 崇史
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-076866(JP,A)
【文献】特表2017-520903(JP,A)
【文献】特開2013-175559(JP,A)
【文献】特開2017-179360(JP,A)
【文献】特表2018-523734(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009124(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D, H05K,H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径30nm以上250nm以下の銀粒子(A)を、溶剤(E)に分散させたスラリー状のマスターバッチと、エポキシ樹脂(B)と、硬化剤(C)と、を含み、
導電性粒子として平均粒径30nm以上250nm以下の粒子のみを含む、電磁波シールド用スプレー塗布剤。
【請求項2】
前記スプレー塗布剤の粘度が10mPa・sを超え10,000mPa・s以下である請求項1に記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
【請求項3】
前記マスターバッチがさらに分散剤(D)を含む、請求項1又は2に記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
【請求項4】
前記マスターバッチが前記銀粒子(A)100質量部に対して前記分散剤(D)を0.1~10質量部含む、請求項3に記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
【請求項5】
前記マスターバッチに用いた前記銀粒子(A)の平均粒径よりも大きな平均粒径の銀乾粉(F)をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
【請求項6】
前記銀乾粉(F)が球状粉又は鱗片状粉である、請求項5に記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
【請求項7】
前記硬化剤(C)がフェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤のいずれかである、請求項1~6のいずれかに記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
【請求項8】
前記塗布剤はさらに添加剤(G)を含み、該添加剤(G)がシランカップリング剤である、請求項1~7のいずれかに記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
【請求項9】
前記溶剤(E)がエチレングリコールモノフェニルエーテル、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールのいずれかである、請求項1~8のいずれかに記載の電磁波シールド用スプレー塗布剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に実装する電子部品などに電磁波シールド層を形成するための電磁波シールド用スプレー塗布剤に関する。
【背景技術】
【0002】
銀、銅などの導電性粒子は電気抵抗が小さく、例えば、電子回路の製造に用いられる導電性インクや電子部品において電磁波を遮蔽するシールド層を形成するための塗布剤などに配合される。
下記特許文献1には、ポリマーおよび樹脂の結合剤を含まず、ナノ銀粒子および接着促進剤を含む導電性インクが開示されている。
【0003】
また、シールド層を形成する場合は、導電性粒子を含む塗布剤を用いてスパッタリングにより形成するのが一般的である。シールド層は、例えば、図1に示すように、電子部品1の外面に、内側からステンレス(SUS)層2/銅(Cu)層3/ステンレス(SUS)層4の3層で形成される。電子部品の外面に接するステンレス層で密着性を保ち、銅層で電磁波をシールドし、最外層のステンレス層で防錆を図るものである。
【0004】
シールド層は、例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン、タブレット端末などの電子機器に内蔵されている基板に実装された、パワーアンプ、Wi-Fi/Bluetooth(登録商標)モジュール、フラッシュメモリなどの電子部品の表面に設けられる。
【0005】
スパッタリングによりシールド層を形成するとトップ(上面)のシールド層の厚みに対してサイド(側面)のシールド層の厚みは30~40%程度にしか形成されないという問題があった。具体的には、図1に示すように、トップのシールド層の厚みを5μmに形成する場合にサイドのシールド層の厚みは2μm程度にしか形成されなかった。このため、サイド(側面)の電磁波シールド効果が満足できないおそれがあった。
また、スパッタリングによりシールド層を3層5μm厚に形成する場合は、約1時間かかるなど時間がかかり、さらにはコストもかかるものであった。
【0006】
そこで、スパッタリングではなく電子部品の表面に塗布剤をスプレーしてコーティングすることも行われている。
例えば、下記特許文献2には、(a)フェノキシ樹脂、ビニリデン樹脂などの熱可塑性樹脂および/またはエポキシ樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂と、(b)溶媒または2-フェノキシエチルアクリレートなどの反応性希釈剤と、(c)銀粒子などの導電性粒子と、を含むEMI(電磁妨害;Electro Magnetic Interference)遮蔽組成物が開示され、また、このEMI遮蔽組成物を用い、スプレーコーティング機または分散/噴出機で、基材上に配した機能モジュールを封止する封止材をコーティングすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2014-529674号公報
【文献】特表2017-520903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のシールド層を形成するスプレー塗布剤は、長時間静置しておくと配合した銀粒子などの導電性粒子が沈降してしまうことがあった。沈降してしまうと、塗布剤内で濃度差ができ、形成したシールド層に導電性粒子が分散されず塗布ムラが生じ、シールド効果が十分に発揮されなくなるおそれがあった。そのため、スプレー(噴霧)装置には撹拌機構を備え付ける必要があった。
【0009】
また、シールド層をスプレー塗布して形成する場合、基材(例えば、銅基板)により密着強度が弱くなることもあり、剥離するおそれもあった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑み、長時間静置しておいても銀粒子が沈降しにくく、さらには、電子部品などの表面に対する密着性を高めた電磁波シールド用スプレー塗布剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態の電磁波シールド用スプレー塗布剤は、平均粒径30nm以上250nm以下の銀粒子(A)を、溶剤(E)に分散させたスラリー状のマスターバッチと、エポキシ樹脂(B)と、硬化剤(C)と、を含み、導電性粒子として平均粒径30nm以上250nm以下の粒子のみを含むことを特徴とする。このスプレー塗布剤の粘度は10mPa・sを超え10,000mPa・s以下にするのが好ましい。
【0012】
上記形態の電磁波シールド用スプレー塗布剤は、ナノオーダーの銀粒子(A)を溶剤(E)に予め分散させたスラリー状のマスターバッチ(銀ナノスラリーともいう。)を用いることにより、長時間に渡り銀粒子(A)が塗布剤中で沈降しにくく、撹拌しなくても銀粒子(A)が適度に分散された塗布剤になる。この塗布剤により形成されたシールド層は、銀粒子(A)が適度に分散されたものになり電磁波シールド効果を十分に発揮することができる。また、スラリー状のマスターバッチを用いることにより、シールド層が緻密な膜構造となり、電子部品などの表面に対する密着性を高めることができる。
【0013】
上記形態の電磁波シールド用スプレー塗布剤は、マスターバッチにさらに分散剤(D)を含ませることができ、また、マスターバッチには銀粒子(A)100質量部に対して分散剤(D)を0.1~10質量部含ませることができる。マスターバッチに分散剤(D)を含ませることにより、塗布剤中で銀粒子(A)がより一層沈降しにくくなり、長時間に渡り放置しても銀粒子(A)が適度に分散された塗布剤になる。
【0014】
上記形態の電磁波シールド用スプレー塗布剤は、マスターバッチに銀粒子(A)の平均粒径よりも大きな平均粒径の銀乾粉(F)も含ませることができ、また、銀乾粉(F)を球状粉又は鱗片状粉にすることができる。例えば、銀粒子(A)よりも粒径の大きな銀乾粉(F)を含ませることにより、電磁波シールド効果を高めることができる。
【0015】
上記形態の電磁波シールド用スプレー塗布剤は、熱硬化性樹脂(B)としてエポキシ樹脂又はアクリル樹脂を用いるのが好ましく、硬化剤(C)としてフェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤のいずれかを用いるのが好ましい。このような熱硬化性樹脂(B)や硬化剤(C)を用いることにより、塗布剤を適度に硬化させることができる。
【0016】
上記形態の電磁波シールド用スプレー塗布剤は、添加剤(G)を含ませることができ、添加剤(G)としてはシランカップリング剤を用いるのが好ましい。シランカップリング剤を用いることにより、耐熱性や接着強度などが高まり、電子部品などに対する密着性を上げることができる。
【0017】
上記形態の電磁波シールド用スプレー塗布剤は、溶剤(E)としてエチレングリコールモノフェニルエーテル、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールのいずれかを用いるのが好ましい。このような溶剤(E)を用いることにより、塗布剤の粘度を適度に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】スパッタリングによりシールド層を形成した電子部品を例示した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態の電磁波シールド用スプレー塗布剤について説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<電磁波シールド用スプレー塗布剤>
電磁波シールド用スプレー塗布剤(以下、本塗布剤ともいう。)は、平均粒径30nm以上250nm以下の銀粒子(A)を溶剤(E)に分散させたスラリー状のマスターバッチと、熱硬化性樹脂(B)と、硬化剤(C)と、を含むものである。
【0021】
<マスターバッチ>
マスターバッチは、銀粒子(A)を溶剤(E)に予め分散させ、スラリー状にしたものである。
本塗布剤は、マスターバッチを用いることにより、銀粒子(A)が塗布剤中で沈降しにくく、撹拌しなくても銀粒子(A)が長時間に渡り適度に分散されたものになる。
本塗布剤において、マスターバッチは、市販の銀スラリーを用いてもよく、また、下記に示すように、銀乾粉(F)を溶剤(E)に分散させたものを用いてもよい。
【0022】
<銀粒子(A)>
本塗布剤において、銀粒子(A)は、導電性粒子として電磁波を遮蔽するために配合するものであり、平均粒径30nm以上250nm以下の範囲内の粒子を用いる。この範囲内の粒子を用いることにより、本塗布剤中において銀粒子が沈降しにくくなる。このような観点から、銀粒子(A)の平均粒径は、好ましくは30nm以上250nm以下、特に好ましくは40nm以上250nm以下、さらに好ましくは100nm以上150nm以下の範囲内である。
【0023】
なお、この平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)観察することにより測定することができ、倍率10,000倍~20,000倍で複数枚撮影をし、撮影された視野に存在する銀粒子を円で近似して測定し、粒子50個の平均値をとって平均粒径とすることができる。
【0024】
銀粒子(A)は、具体的には、DOWA製銀粉(品名:DF-SNM-004,DF-SNM-007)などを用いることができる。
【0025】
<溶剤(E)>
溶剤(E)は、マスターバッチを作製するための溶媒となり、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル(EPH)、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール(BC)などを用いることができる。これらを2種以上混合してもよい。また、マスターバッチを作製した後、塗布剤の粘度を調整するために溶剤(E)をさらに配合することもできる。
溶剤(E)としては、具体的には、東邦化学工業製エチレングリコールモノフェニルエーテル(品名:ハイソルブEPH)を用いることができる。
【0026】
マスターバッチにおいて、銀粒子(A)及び溶剤(E)以外に分散剤(D)などを含ませることができる。さらに、銀粒子(A)として、或いは、銀粒子(A)以外の粒子として銀乾粉(F)を銀粒子(A)とともに含ませることができる。
【0027】
<分散剤(D)>
分散剤(D)は、銀粒子(A)を分散させるために配合するものであり、アクリル酸系、ステアリン酸系などの分散剤を用いることができる。
具体的には、エス・エヌ・エフ製アクリル酸系分散剤(品名:フロスパースシリーズ、アマイドAP-1)などを用いることができる。
【0028】
<銀乾粉(F)>
銀乾粉(F)は、平均粒径30nm以上250nm以下の範囲内の粒子を用いる。銀乾粉(F)の平均粒径は、30nm以上250nm以下の範囲内であり、好ましくは40nm以上250nm以下の範囲内であり、さらに好ましくは100nm以上150nm以下の範囲内である。さらに銀乾粉(F)を配合することにより、シールド効果を高めることができる。
【0029】
なお、この平均粒径は、例えば、銀粒子(A)と同様に、走査型電子顕微鏡(SEM)観察することにより測定することができる。
【0030】
銀乾粉(F)は、具体的には、メタロー テクノロジーズ ユーエスエイ(Metalor Technologies USA)製銀粉末(品名:P620-7,P620-24)などを用いることができる。
【0031】
<マスターバッチの配合割合>
マスターバッチは、銀粒子(A)及び溶剤(E)を適宜割合で配合して作製することができる。必要に応じて分散剤(D)や銀乾粉(F)を配合してもよい。
例えば、銀粒子(A)100質量部に対し、溶剤(E)1質量部~30質量部、好ましくは1質量部~27.5質量部、より好ましくは1質量部~25質量部の割合で配合する。
分散剤(D)を配合する場合は、銀粒子(A)100質量部に対し、分散剤(D)0.1質量部~10質量部、好ましくは0.1質量部~7.5質量部、より好ましくは0.1質量部~5質量部の割合で配合する。
銀乾粉(F)を配合する場合は、銀粒子(A)100質量部に対し、銀乾粉(F)0.1質量部~50質量部、好ましくは0.1質量部~40質量部、より好ましくは0.1質量部~30質量部の割合で配合する。
【0032】
本塗布剤は、マスターバッチに、熱硬化性樹脂(B)及び硬化剤(C)を配合して作製することができる。
<熱硬化性樹脂(B)>
熱硬化性樹脂(B)は、塗布剤を硬化させるために配合するものであり、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂を用いるのが好ましい。
エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、シロキサン系エポキシ樹脂などを用いることができ、これらを2種以上混合してもよい。これらのなかでも、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
エポキシ当量は、特に限定するものではないが、50g/eq~200g/eqの範囲内が好ましい。
【0033】
エポキシ樹脂は、具体的には、DIC製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(品名:N665)、新日鉄住金化学製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(品名:YDF8170)、DIC製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名:850CRP)、DIC製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(品名:835LV)、三菱ケミカル製アミノフェノール型エポキシ樹脂(品名:630)などを用いることができる。
【0034】
アクリル樹脂としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ターシャルブチルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、その他のアルキルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、グリシジルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジンクモノアクリレート、ジンクジアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、2,2,3,3-テトラフロロプロピルアクリレート、2,2,3,3,4,4-ヘキサフロロブチルアクリレート、パーフロロオクチルアクリレート、パーフロロオクチルエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノアクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノアクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノアクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノアクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノアクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノアクリレート、ジアクリロイルオキシメチルトリシクロデカン、N-アクリロイルオキシエチルマレイミド、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-アクリロイルオキシエチルフタルイミドを用いることができ、これらを2種以上混合してもよい。
【0035】
アクリル樹脂は、具体的には、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドなどを用いることができる。
【0036】
<硬化剤(C)>
本塗布剤において、硬化剤(C)は、熱硬化性樹脂(B)を硬化させるために配合するものであり、配合した熱硬化性樹脂(B)に適合するものを用いることができる。
熱硬化性樹脂(B)として、例えば、エポキシ樹脂を用いる場合は、硬化剤(C)として、フェノール系硬化剤、脂肪族アミン・芳香族アミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などを用いることができる。
【0037】
フェノール系硬化剤としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、ビフェノールなどのビスフェノール類及びその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタンなどの3官能のフェノール類及びその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物で2核体又は3核体がメインのもの及びその誘導体などを用いることができる。
【0038】
脂肪族アミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、m-キシレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、N-アミノエチルピペラジン、1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミンなどを用いることができる。
芳香族アミンとしては、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエートなどの芳香族ポリアミンなどを用いることができる。
【0039】
酸無水物系硬化剤としては、フタル酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸とポリブタジエンの反応物、無水マレイン酸とスチレンの共重合体などを用いることができる。
【0040】
より具体的には、群栄化学工業製フェノール系硬化剤(品名:PSM4324)、アルベマール(ALBEMARLE Co.,Ltd.)製アミン系硬化剤(3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、および3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンを含有)(品名:エタキュア100)、日本化薬製アミン系硬化剤(4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン)(品名:HDAA)、三菱ケミカル製酸無水物系硬化剤(品名:YH307)などを用いることができる。
【0041】
熱硬化性樹脂(B)として、アクリル樹脂を用いる場合は、硬化剤(C)としては、例えば、熱ラジカル重合開始剤などの重合開始剤を用いることができる。
【0042】
熱ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、P-メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ケイ皮酸パーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルへキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-m-トルオイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどを用いることができる。
【0043】
より具体的には、ジ-tert-ブチルペルオキシドなどを用いることができる。
【0044】
<添加剤(G)>
本塗布剤において、種々の添加剤(G)を配合することができる。添加剤(G)としては、例えば、シランカップリング剤、硬化促進剤、消泡剤などを配合することができる。
【0045】
シランカップリング剤は、塗布剤の耐熱性や接着強度を高めるために配合するものであり、例えば、エポキシ系、アミノ系、ビニル系、メタクリル系、アクリル系、メルカプト系などの各種シランカップリング剤を用いることができる。これらの中でも、エポキシ基を有するエポキシ系シランカップリング剤、メタクリル基を有するメタクリル系シランカップリング剤が好ましい。
具体的には、信越化学製エポキシ系シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)(品名:KBM403)、信越化学製メタクリル系シランカップリング剤(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(品名:KBM503)などを用いることができる。
【0046】
硬化促進剤は、熱硬化性樹脂の硬化を促進するために配合するものであり、熱硬化性樹脂(B)としてエポキシ樹脂を使用する場合、例えば、イミダゾール類、トリフェニルホスフィン又はテトラフェニルホスフィンの塩類などを用いることができる。
具体的には、四国化成工業製2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(品名:キュアゾール2P4MHZ-PW)などを用いることができる。
【0047】
消泡剤は、塗布剤中の気泡の発生を防止するために配合するものであり、例えば、アクリル系、シリコーン系及びフルオロシリコーン系などの消泡剤を用いることができる。
具体的には、旭化成ワッカーシリコーン製シリコーン系消泡剤(品名:WACKER AF98/1000)などを用いることができる。
【0048】
<粘度>
本塗布剤は、粘度が10mPa・sを超え10,000mPa・s以下の範囲内である。粘度が10mPa・s以下であると銀粒子(A)が沈降しやすくなり、粘度が10,000mPa・sを超えるとスプレーにより塗布しにくくなる。
この観点から、本塗布剤の粘度は、10mPa・s以上10,000mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以上2,000mPa・s以下がより好ましく、100mPa・s以上1,000mPa・s以下がさらに好ましい。
本塗布剤の粘度は、溶剤(E)の配合割合を変えることにより調整することができる。
なお、本発明の粘度は25℃におけるものである。
【0049】
<本塗布剤の配合割合>
本塗布剤は、マスターバッチに、熱硬化性樹脂(B)及び硬化剤(C)を適宜割合で配合することができる。必要に応じて、添加剤(G)を配合してもよい。
例えば、マスターバッチ100質量部に対し、熱硬化性樹脂(B)0.1質量部~30質量部、硬化剤(C)0.1質量部~30質量部の割合で配合する。
好ましくは、マスターバッチ100質量部に対し、熱硬化性樹脂(B)0.5質量部~25質量部、硬化剤(C)0.5質量部~25質量部の割合で配合し、より好ましくは、マスターバッチ100質量部に対し、熱硬化性樹脂(B)1質量部~20質量部、硬化剤(C)1質量部~20質量部の割合で配合し、さらに好ましくは、マスターバッチ100質量部に対し、熱硬化性樹脂(B)1質量部~15質量部、硬化剤(C)1質量部~15質量部の割合で配合することができる。
【0050】
添加剤(G)を配合する場合は、マスターバッチ100質量部に対し、添加剤(G)0.01質量部~10質量部、好ましくは0.05質量部~10質量部、より好ましくは0.05質量部~8質量部の割合で配合する。
【0051】
<製造方法>
本塗布剤は、例えば、まず、銀粒子(A)及び溶剤(E)、必要に応じて分散剤(D)や銀乾粉(F)を適宜割合で配合し、撹拌混合してスラリー状のマスターバッチを作製する。次に、このマスターバッチに熱硬化性樹脂(B)及び硬化剤(C)、必要に応じて添加剤(G)を適宜割合で配合し、撹拌混合して本塗布剤を製造することができる。
この後、溶剤(E)をさらに配合して、本塗布剤の粘度が10mPa・sを超え10,000mPa・s以下の範囲内になるように調整するのが好ましい。
【0052】
これら原料を撹拌混合するには、公知の装置を用いることができる。例えば、ヘンシェルミキサー、ロールミル、三本ローラミルなどの公知の装置によって混合することができる。これら原料は、同時に混合してもよく、一部を先に混合し、残りを後から混合してもよい。
【0053】
<塗布方法>
本塗布剤は、電子部品などにスプレー(噴霧)塗布し、電子部品などの外面に電磁波シールド層を形成することができる。
本塗布剤は、例えば、従来公知のスプレーコーティング機などで電子部品に塗布することができる。また、本塗布剤をエアゾール缶などに充填して塗布してもよい。
電磁波シールド層は、特に限定するものではないが、厚さを5μm~30μm、特に5μm~20μm、さらに5μm~10μmに形成するのが好ましい。
【0054】
本塗布剤は、電子部品などに塗布することができ、電子部品としては、例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン、タブレット端末などの電子機器に用いられる、パワーアンプ、Wi-Fi/Bluetooth(登録商標)モジュール、フラッシュメモリなどを挙げることができる。
本塗布剤を電子部品に塗布する場合は、個々の電子部品に塗布した後に基板上に実装してもよく、また、電子部品を基板上に実装した後にそれらをまとめて塗布してもよい。
【0055】
本塗布剤により形成した電磁波シールド層は、37dB以上、好ましくは50dB以上、特に好ましくは60dB以上のシールド効果を有する。このようなシールド効果を有することにより、電磁波を有効に遮蔽することができる。
このシールド効果は、ASTM D4935に準拠して測定することができる。
【0056】
本塗布剤により形成した電磁波シールド層は、下記実施例に示すクロスカットピール試験において5B以上の密着性を有する。このような密着性を有することにより、電子部品の外面に形成した電磁波シールド層が剥がれ落ちにくくなる。
【0057】
本塗布剤は、長時間静置、例えば、24時間以上、好ましくは36時間以上、より好ましくは48時間以上に渡り静置しても銀粒子(A)が沈降しにくく、電子部品などの外面にスプレー塗布することにより、銀粒子(A)がムラなく適度に分散された電磁波シールド層を形成することができる。また、本塗布剤により形成された電磁波シールド層は、電磁波を十分に遮蔽し、また、密着性に優れて剥がれ落ちにくいものである。
【実施例
【0058】
以下、本発明の一実施例の電磁波シールド用スプレー塗布剤について説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0059】
実施例及び比較例の電磁波シールド用スプレー塗布剤を作製するにあたり以下の原料を用いた。
<原料>
1.銀粒子(A)
A-1:球状100nm銀フィラー「メタロー テクノロジーズ ユーエスエイ(Metalor Technologies USA)製P620-24」
A-2:球状200nm銀フィラー「メタロー テクノロジーズ ユーエスエイ(Metalor Technologies USA)製P620-7」
A-3:球状40nm銀スラリー「DOWA製DF-SNM-004」
A-4:球状130nm銀スラリー「DOWA製DF-SNM-007」
なお、上記各数値は平均粒径であり、走査型電子顕微鏡(SEM)観察し、50個を測定して平均値を算出したものである。
【0060】
2.熱硬化性樹脂(B)
B-1:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「DIC製N665-EXP」
B-2:ビスフェノールF型エポキシ樹脂「新日鉄住金化学製YDF8170」
B-3:ビスフェノールF型エポキシ樹脂「DIC製835LV」
B-4:ビスフェノールA型エポキシ樹脂「DIC製850CPR」
B-5:アミノフェノール型エポキシ樹脂「三菱ケミカル製630」
【0061】
3.硬化剤(C)
C-1:フェノール系硬化剤「群栄化学工業製PSM4324」
C-2:アミン系硬化剤「日本化薬製HDAA」
C-3:アミン系硬化剤「アルベマール(ALBEMARLE Co.,Ltd.)製エタキュア100」
C-4:酸無水物系硬化剤「三菱ケミカル製YH307」
【0062】
4.分散剤(D)
D-1:アクリル酸系分散剤「エス・エヌ・エフ製フロスパース」
D-2:ステアリン酸系分散剤「三菱ケミカル製アマイドAP-1」
【0063】
5.溶剤(E)
E-1:エチレングリコールモノフェニルエーテル(EPH)
E-2:ブチルカルビトールアセテート(BCA)
E-3:ブチルカルビトール(BC)
【0064】
6.添加剤(G)
<シランカップリング剤>
G-1:エポキシ系シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)「信越化学製KBM403」
G-2:メタクリル系シランカップリング剤(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)「信越化学製KBM503」
【0065】
<実施例及び比較例の作製>
まず、下記表1に示す配合割合になるように銀粒子(A)、分散剤(D)、溶剤(E)を配合し、三本ローラミルを用いて混合して、スラリー状のマスターバッチを作製した。次に、このマスターバッチに、下記表1に示す配合割合になるように熱硬化性樹脂(B)、硬化剤(C)、溶剤(E)、添加剤(G)を配合し、三本ローラミルを用いて混合して、各電磁波シールド用スプレー塗布剤を作製した。
【0066】
<粘度測定>
実施例及び比較例の各電磁波シールド用スプレー塗布剤の粘度は、東京計器社製回転粘度計TVE-22Hを用いて、10rpmで25℃における粘度(mPa・s)を測定した。測定した各電磁波シールド用スプレー塗布剤の粘度を下記表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
<沈降試験>
沈降試験は、試験管に実施例及び比較例の各電磁波シールド用スプレー塗布剤を30ml投入し、常温で放置し、1時間毎に目視で確認し、底部に銀粒子が沈降してないかを64時間後まで確認した。
【0069】
<シールド効果測定>
シールド効果は、ASTM D4935に準拠して測定した。
より具体的には、精密ディスペンス装置(ノードソンアシムテック社製「スペクトラムIIディスペンサ」型番S2-920P)にディスペンス・バブル(ノードソンアシムテック社製「ディスペンスジェット」型番DJ-2200)を装着し、実施例及び比較例の各電磁波シールド用スプレー塗布剤を5mm角のポリイミド基板(厚さ1mm)上に塗布し、200℃で20分間加熱して電磁波シールド用スプレー塗布剤を硬化させた。
電磁波シールド用スプレー塗布剤を硬化させた各ポリイミド基板を、キーコム社製「同軸管タイプ シールド効果測定システム(500MHz~18Ghz)」にて測定した。その結果を上記表1に示す。
【0070】
<強度(密着性)測定(クロスカットピール試験)>
強度は、ASTM D3359-97に準拠して測定した。
より具体的には、精密ディスペンス装置(ノードソンアシムテック社製「スペクトラムIIディスペンサ」型番S2-920P)にディスペンス・バブル(ノードソンアシムテック社製「ディスペンスジェット」型番DJ-2200)を装着し、実施例及び比較例の各電磁波シールド用スプレー塗布剤を50mm角のCu基板(厚さ0.1mm)上に塗布し、200℃で20分間加熱して電磁波シールド用スプレー塗布剤を硬化させた。
電磁波シールド用スプレー塗布剤を硬化させた各Cu基板に対してプレッシャークッカー試験を行った。
【0071】
電磁波シールド用スプレー塗布剤を硬化させた各Cu基板を用い、ゴーテック社製クロスカットガイドにて十文字に交差するように碁盤目状に切れ込みを入れた後、交差する切れ込み部分にセロハンテープ(ニチバン株式会社製)を貼り、貼り付けたセロハンテープを素早く剥がす。それにより剥がれた塗布剤の面積を測定し、以下の表2に示す0B~5Bの6段階で判定した。その結果を上記表1に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
<結果>
沈降試験は、24時間以上経ても銀粒子の沈降が確認できない場合を可(○)と判定し、24時間未満で銀粒子の沈降が確認されたものを不可(×)と判定した。
シールド効果は、37dB以上を可(○)と判定し、37dB未満を不可(×)と判定した。
強度は、5B以上を可(○)と判定し、4B以下を不可(×)と判定した。
それらの結果を上記表1に示す。
【0074】
<考察>
実施例1~9の塗布剤は、沈降試験、シールド効果、強度(密着性)のいずれもが良好な結果であった。
一方、比較例1,2の塗布剤は、沈降試験の結果は不可であった。
【0075】
実施例1~9の塗布剤は、銀粒子を溶剤に予め分散させてスラリー状にしたマスターバッチから作製したものであり、いずれの試験においても良好な結果である。特に、実施例1,2,9の塗布剤は、64時間後でも沈降が確認されないものであった。
また、実施例3~8は銀乾粉を溶剤に添加してスラリー化したものであるが、このようにしてもいずれの試験において良好な結果が得られた。
【0076】
一方、比較例1,2の塗布剤は、スラリー状にしたマスターバッチを作製してないものであり、このような塗布剤は、1時間以内に銀粒子の沈降が確認されるものであった。本試験では、シールド効果の結果は実用上問題ないものであったが、スプレー塗布する際に塗布ムラが生じてしまうおそれがあることが確認された。
【符号の説明】
【0077】
1 電子部品
2 ステンレス層
3 銅層
4 ステンレス層
図1