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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】ポリウレタンエラストマー形成性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/66 20060101AFI20221130BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
C08G18/66 067
C08G18/48 066
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2016080310
(22)【出願日】2016-04-13
(65)【公開番号】P2017190394
(43)【公開日】2017-10-19
【審査請求日】2019-03-12
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 義久
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】岡崎 美穂
【審判官】藤原 浩子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/043348(WO,A1)
【文献】特開2013-241581(JP,A)
【文献】特開2016-040357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレンオキシド(A)20~99重量%、活性水素含有化合物(B)0.5~49重量%、及びポリイソシアネート(C)0.01~49重量%を含有する組成物であって、ポリアルキレンオキシド(A)が下記(a1)から(a4)の全てを満たすポリオキシプロピレングリコールであり、かつ活性水素含有化合物(B)が1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、メタキシリレンジアミン、及びエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、下記(b1)から(b3)の全てを満たすことを特徴とするポリウレタンエラストマー形成性組成物。
(a1)不飽和度が0.010meq/g以下である。
(a2)水酸基価(OHV)から算出された数平均分子量が1000以上である。
(a3)ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィーにより(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.016以下である。
(a4)ゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)と水酸基価(OHV)から算出された数平均分子量(M)とが、下記数式(1):
Mw/Mn≦1.0+M×0.000015 (1)
を満たす。
(b1)2~4官能性の活性水素含有化合物である。
(b2)数平均分子量が1000未満である。
(b3)活性水素基として水酸基、アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を含む。
【請求項2】
ポリイソシアネート(C)が、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、これらのイソシアネート含有プレポリマー、及びこれらのイソシアネートの変性物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリアルキレンオキシド(A)と活性水素含有化合物(B)との活性水素基の総量に対して、ポリイソシアネート(C)のNCO基を0.7~1.3当量(モル比)の範囲で含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(C)とのプレポリマーを含む請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めたポリアルキレンオキシド(A)の分子量分布(Mw/Mn)が、分離カラムに粒径3μmの充填剤を充填したカラム4本を直列接続し、レファレンス側に抵抗管を接続、展開溶媒にテトラヒドロフランを用いた条件で分析した分子量分布であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかの記載の組成物。
【請求項6】
さらに、ウレタン化触媒、光安定剤、及び酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤(D)を含む請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のポリウレタンエラストマー形成性組成物を反応させることを特徴とするポリウレタンエラストマーの製造方法。
【請求項8】
ポリアルキレンオキシド(A)20~99重量%、活性水素含有化合物(B)0.5~49重量%、及びポリイソシアネート(C)0.01~49重量%を含有する組成物において、ポリアルキレンオキシド(A)と活性水素含有化合物(B)とポリイソシアネート(C)との反応生成物であって、ポリアルキレンオキシド(A)が下記(a1)から(a4)の全てを満たすポリオキシプロピレングリコールであり、かつ活性水素含有化合物(B)が1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、メタキシリレンジアミン、及びエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、下記(b1)から(b3)の全てを満たすことを特徴とするポリウレタンエラストマー。
(a1)不飽和度が0.010meq/g以下である。
(a2)水酸基価(OHV)から算出された数平均分子量が1000以上である。
(a3)ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィーにより(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.016以下である。
(a4)ゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)と水酸基価(OHV)から算出された数平均分子量(M)とが、下記数式(1):
Mw/Mn≦1.0+M×0.000015 (1)
を満たす。
(b1)2~4官能性の活性水素含有化合物である。
(b2)数平均分子量が1000未満である。
(b3)活性水素基として水酸基、アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を含む。
【請求項9】
ポリイソシアネート(C)が、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、これらのイソシアネート含有プレポリマー、及びこれらのイソシアネートの変性物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項8に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項10】
ポリアルキレンオキシド(A)と活性水素含有化合物(B)との活性水素基の総量に対して、ポリイソシアネート(C)のNCO基を0.7~1.3当量(モル比)の範囲で含むことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項11】
ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めたポリアルキレンオキシド(A)の分子量分布(Mw/Mn)が、分離カラムに粒径3μmの充填剤を充填したカラム4本を直列接続し、レファレンス側に抵抗管を接続、展開溶媒にテトラヒドロフランを用いた条件で分析した分子量分布であることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれかに記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項12】
さらに、光安定剤、及び酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤(D)請求項8乃至請求項11のいずれかに記載のポリウレタンエラストマーを含むポリウレタンエラストマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンエラストマー形成性組成物、及びポリウレタンエラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンエラストマーとしては、例えば、熱硬化性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー等が知られており、反応原料であるポリオールやイソシアネートの官能基数を調整することによって工業的に多様な用途に用いられる。
【0003】
ポリウレタンエラストマーを成形するための形成性組成物を構成する成分としては、ポリオール、鎖延長剤又は架橋剤として機能する活性水素含有化合物、及びポリイソシアネートが一般的に用いられ、ポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリエステルポリオール、ポリアルキレンオキシド等が用いられる。
【0004】
ポリエステルポリオールを用いたポリウレタンエラストマー形成性組成物はその粘度が高くなってハンドリング性が劣りやすく、またそれを用いて得られるポリウレタンエラストマーはエステル基を含有するため加水分解により耐水性に劣るという課題や、ガラス転移温度(Tg)が高く耐寒性に劣るという課題がある。
【0005】
また、ポリテトラメチレングリコールを用いたポリウレタンエラストマーは、耐加水分解性や耐寒性に優れるため、それらの特性が必要な用途で好適に使用できる。しかしながら、ポリテトラメチレングリコールは室温環境下で通常固体であり、使用の際には通常加熱して使用される等ハンドリング性に劣り、それを用いたポリウレタンエラストマー形成性組成物は成形性に劣るという課題がある。また、それを用いて得られるポリウレタンエラストマーは、その結晶性に起因して、柔軟性が悪くなりやすく透明性が悪化しやすいため、使用用途が限られるという課題がある。
【0006】
さらにこれらのポリオールは、一般に分子量4000程度が限度であって高分子量化が困難であり、それを用いて得られるポリウレタンエラストマーの柔軟性の付与には限界があった。
【0007】
一方、ポリアルキレンオキシドは、一般に液状で粘度が低いため、そのようなポリアルキレンオキシドを用いたポリウレタンエラストマー形成性組成物はハンドリング性や成形性に優れる。
【0008】
ポリアルキレンオキシドは、水酸化カリウム等のアルカリ金属を触媒として用い、プロピレンオキシドやエチレンオキシド等のアルキレンオキシドの付加重合を行うことによって工業的に製造されている。しかしながら、この方法でポリアルキレンオキシドを製造すると、得られるポリアルキレンオキシドは、モノオールを多く副生し、不飽和度が高くなるため、そのようなポリアルキレンオキシドを用いたポリウレタンエラストマー形成性組成物は硬化性に劣るという課題を抱えている。
【0009】
また、このようなポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いて得られるポリウレタンエラストマーは、ポリテトラメチレングリコールやポリエステルポリオールを用いたポリウレタンエラストマーに対して一般に機械強度や耐久性が劣るという課題もある。
【0010】
不飽和度を低減させたポリアルキレンオキシドを用いたポリウレタンエラストマーとしては、例えば、水酸化セシウム等を触媒として用いて得られたポリアルキレンオキシド、水、及び鎖伸長剤からなる活性水素成分とポリイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタンエラストマーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載のポリアルキレンオキシドの不飽和度は依然高いものであり、得られたエラストマーも依然十分な機械物性や耐久性を発現していない。
【0011】
また、特定のホスファゼニウム塩を触媒として用いて得られたポリアルキレンオキシドとポリイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタンエラストマーが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2に記載のポリアルキレンオキシドも、その不飽和度は依然高いものであり、依然十分な機械物性や耐久性が発現されているとは言いがたい。
【0012】
不飽和度をさらに低減したポリアルキレンオキシドとして、複金属シアン化物錯体を触媒として用いて得られるポリアルキレンオキシドが知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、特許文献3に記載のポリアルキレンオキシドは、分子量分布が約1.1と広く粘度が高いためハンドリング性が悪い等の課題を抱えており、それを用いたポリウレタンエラストマー形成性組成物は粘度が上昇し、ハンドリング性や硬化性に劣るという課題がある。さらには、それを用いて得られるポリウレタンエラストマーは不均一となりやすいため、機械物性のバラツキが大きく、使用用途が限られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開平8-176263号公報
【文献】特開平11-124424号公報
【文献】特開平4-59825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の背景技術を鑑みてなされたものであり、その目的は、低粘度で硬化性及びハンドリング性に優れるポリウレタンエラストマー形成性組成物、及び強度と耐久性に優れるポリウレタンエラストマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の不飽和度で特定の分子量分布を有するポリアルキレンオキシド及びそのウレタンプレポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリウレタンエラストマー形成性組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は以下に示すポリウレタンエラストマー形成性組成物に関する。
【0017】
[1]ポリアルキレンオキシド(A)、活性水素含有化合物(B)、及びポリイソシアネート(C)を含有する組成物であって、ポリアルキレンオキシド(A)が下記(a1)から(a4)の全てを満たし、かつ活性水素含有化合物(B)が下記(b1)から(b3)の全てを満たすことを特徴とするポリウレタンエラストマー形成性組成物。
(a1)不飽和度が0.010meq/g以下である。
(a2)水酸基価(OHV)から算出された数平均分子量が1000以上である。
(a3)ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィーにより(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.039以下である。
(a4)ゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)と水酸基価(OHV)から算出された数平均分子量(M)とが、下記数式(1):
Mw/Mn≦1.0+M×0.000015 (1)
を満たす。
(b1)2~4官能性の活性水素含有化合物である。
(b2)数平均分子量が1000未満である。
(b3)活性水素基として水酸基、アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を含む。
【0018】
[2]活性水素含有化合物(B)が、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、メタキシリレンジアミン、及びエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]に記載の組成物。
【0019】
[3]ポリイソシアネート(C)が、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、これらのイソシアネート含有プレポリマー、及びこれらのイソシアネートの変性物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の組成物。
【0020】
[4]ポリアルキレンオキシド(A)と活性水素含有化合物(B)との活性水素基の総量に対して、ポリイソシアネート(C)のNCO基を0.7~1.3当量(モル比)の範囲で含むことを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の組成物。
【0021】
[5]ポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(C)とのプレポリマーを含む上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の組成物。
【0022】
[6]ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めたポリアルキレンオキシド(A)の分子量分布(Mw/Mn)が、分離カラムに粒径3μmの充填剤を充填したカラム4本を直列接続し、レファレンス側に抵抗管を接続、展開溶媒にテトラヒドロフランを用いた条件で分析した分子量分布であることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかの記載の組成物。
【0023】
[7]さらに、ウレタン化触媒、光安定剤、及び酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤(D)を含む上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の組成物。
【0024】
[8]上記[1]乃至[7]のいずれかに記載のポリウレタンエラストマー形成性組成物を反応させることを特徴とするポリウレタンエラストマーの製造方法。
【0025】
[9]ポリアルキレンオキシド(A)と活性水素含有化合物(B)とポリイソシアネート(C)との反応生成物であって、ポリアルキレンオキシド(A)が下記(a1)から(a4)の全てを満たし、かつ活性水素含有化合物(B)が下記(b1)から(b3)の全てを満たすことを特徴とするポリウレタンエラストマー。
(a1)不飽和度が0.010meq/g以下である。
(a2)水酸基価(OHV)から算出された数平均分子量が1000以上である。
(a3)ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィーにより(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.039以下である。
(a4)ゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)と水酸基価(OHV)から算出された数平均分子量(M)とが、下記数式(1):
Mw/Mn≦1.0+M×0.000015 (1)
を満たす。
(b1)2~4官能性の活性水素含有化合物である。
(b2)数平均分子量が1000未満である。
(b3)活性水素基として水酸基、アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を含む。
【0026】
[10]活性水素含有化合物(B)が、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、メタキシリレンジアミン、及びエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[9]に記載のエラストマー。
【0027】
[11]ポリイソシアネート(C)が、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、これらのイソシアネート含有プレポリマー、及びこれらのイソシアネートの変性物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記[9]又は[10]のいずれかに記載のエラストマー。
【0028】
[12]ポリアルキレンオキシド(A)と活性水素含有化合物(B)との活性水素基の総量に対して、ポリイソシアネート(C)のNCO基をを0.7~1.3当量(モル比)の範囲で含むことを特徴とする上記[9]乃至[11]のいずれかに記載のエラストマー。
【0029】
[13]ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めたポリアルキレンオキシド(A)の分子量分布(Mw/Mn)が、分離カラムに粒径3μmの充填剤を充填したカラム4本を直列接続し、レファレンス側に抵抗管を接続、展開溶媒にテトラヒドロフランを用いた条件で分析した分子量分布であることを特徴とする上記[9]乃至[12]のいずれかの記載のエラストマー。
【0030】
[14]さらに、ウレタン化触媒、光安定剤、及び酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤(D)を含む上記[9]乃至[13]のいずれかに記載のエラストマー。
【発明の効果】
【0031】
本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物は、粘度が低くハンドリング性に優れ、ポリアルキレンオキシドを用いても硬化性に優れる。
【0032】
また、本発明のポリウレタンエラストマーは、強度と耐久性に優れ、さらに透明性が求められる用途であっても好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0034】
本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物は、ポリアルキレンオキシド(A)、活性水素含有化合物(B)、及びポリイソシアネート(C)を含有する組成物であって、ポリアルキレンオキシド(A)が下記(a1)から(a4)の全てを満たし、かつ活性水素含有化合物(B)が下記(b1)から(b3)の全てを満たすことその特徴とする。
(a1)不飽和度が0.010meq/g以下である。
(a2)水酸基価(OHV)から算出された数平均分子量が1000以上である。
(a3)ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィーにより(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.039以下である。
(a4)ゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)と水酸基価(OHV)から算出された数平均分子量(M)とが、下記数式(1):
Mw/Mn≦1.0+M×0.000015 (1)
を満たす。
(b1)2~4官能性の活性水素含有化合物である。
(b2)数平均分子量が1000未満である。
(b3)活性水素基として水酸基、アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を含む。
【0035】
また、本発明のポリウレタンエラストマーは、ポリアルキレンオキシド(A)と活性水素含有化合物(B)とポリイソシアネート(C)との反応生成物であって、ポリアルキレンオキシド(A)が上記(a1)から(a4)の全てを満たし、かつ活性水素含有化合物(B)が上記(b1)から(b3)の全てを満たすことをその特徴とする。
【0036】
<ポリアルキレンオキシド(A)の化学組成>
本発明において、ポリアルキレンオキシド(A)としては、特に限定するものではないが、例えば、活性水素含有化合物(R[-H])を一種又は二種以上用い、炭素数が2~12の3員環のアルキレンオキシドを一種又は二種以上付加したアルキレンオキシド付加物であることが好ましく、また、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシドであることが好ましい。
【0037】
【化1】
【0038】
[一般式(1)中、Rは、活性水素含有化合物(R[-H])からm個の活性水素を除いたm価の基;Zは炭素数2~12のアルキレン基又はシクロアルキレン基であり、Aは炭素数3のアルキレン基である。複数のZ又はAがある場合、それぞれは同一でも異なっていてもよい;mは1又は2~100の整数;pは0又は1~500の整数、qは1~1000の整数;rは0又は1~500の整数である。]
これらのうち、オキシアルキレン基を有し、ポリマー末端、分岐鎖末端といった任意の箇所に分子内に1分子当たり活性水素基を少なくとも1個有している化合物、即ちモノオール(m=1の場合)又はポリオール(m=2~100の整数の場合)が好ましい。
【0039】
活性水素含有化合物(R[-H])としては、活性水素基を有していれば特に限定されないが、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシアルキレンジオール等の2官能のジオール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等のビスフェノール類、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等のジヒドロキシベンゼン類、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等のアミン類等の2個の活性水素基を有する化合物が挙げられる。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、三洋化成工業社製のサンニックスGP-250、GP-400、GP-600、GP-1000等の3官能の低分子量ポリオール等のトリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等のテトラオール、ヘキソール、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類等の3個以上の活性水素基を有する化合物が挙げられる。さらに、分子量1000以下のポリオキシアルキレンモノオール等の1個の活性水素基を有する化合物等の1個以上の活性水素を有する化合物が挙げられる。活性水素含有化合物(R[-H])としては、これらの中からから選ばれる一種又は二種以上の混合物を用いることができる。
【0040】
活性水素含有化合物(R[-H])に付加させるアルキレンオキシドとしては、分子内にエポキシ環を1個以上有している化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の炭素数2~12のアルキレンオキシドが挙げられ、一種又は二種以上のアルキレンオキシドを用いてもよい。
【0041】
これらのなかでも、工業的に入手が容易なプロピレンオキシド、エチレンオキシド等の炭素数が2~3のアルキレンオキシドを含む一種又は二種以上のアルキレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドを含む一種又は二種以上のアルキレンオキシドがさらに好ましい。
【0042】
上記一般式(1)中のZOとしては、粘度が低くなりやすく良好なウレタン成形性を示しやすいため、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の炭素数2~12のアルキレンオキシド由来のポリエーテル構造を有することが好ましい。さらに好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシドから選ばれる一種又は二種以上のアルキレンオキシド由来のポリエーテル構造であり、最も好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシドから選ばれる一種のポリエーテル構造である。
【0043】
上記一般式(1)中のpは0又は1~500の整数であり、好ましくはp=0又は1~100の整数であり、さらに好ましくはp=0である。
【0044】
上記一般式(1)中のZとしては、例えば、下記一般式(2)で示される構造が挙げられる。
【0045】
【化2】
【0046】
[上記一般式(2)中、R、R、R、Rは各々独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキルを表す。但し、R~Rの合計の炭素数が10を超えることはない。また、R~Rのいずれか2つが結合してシクロアルキル基を形成してもよい。]
また、上記一般式(1)中のAOとしては、粘度が低くなりやすくウレタンとした際に良好な機械物性を示しやすいため、プロピレンオキシド等の炭素数3のアルキレンオキシド由来のポリエーテル構造であることが好ましい。
【0047】
上記一般式(1)中のAとしては、例えば、下記式で示される構造が挙げられる。
【0048】
【化3】
【0049】
上記一般式(1)中のqは1~1000の整数であり、好ましくはq=30~500の整数であり、さらに好ましくはq=50~250の整数である。
【0050】
上記一般式(1)中のrは、0又は1~500の整数である。低温で固化しにくくハンドリング性に優れやすいため、好ましくはr=0又は1~90の整数であり、さらに好ましくはr=0である。
【0051】
上記一般式(1)中のpとqとrの関係としては、粘度が低くなりやすくウレタンとした際に良好な機械物性を示しやすいため、p+q>r(但し、p+qが10~1000、qが10~1000、rが0又は1~90)を満たすことが好ましい。さらに好ましくは、p+q>5r(但しp+qが30~600、qが30~500、rが0又は1~90)を満たすことであり、最も好ましくはp+q>10r(但しp+qが50~600、qが50~500、rが0又は1~90)を満たすことである。
【0052】
上記一般式(1)中のmは1又は2~100の整数である。分子量分布が狭くなりやすくハンドリング性に優れやすいため、好ましくは1、2、又は3であり、最も好ましくは2である。
【0053】
<ポリアルキレンオキシド(A)の分子量分布>
本発明において、ポリアルキレンオキシド(A)は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.039以下である。好ましくは1.003~1.029の範囲であり、さらに好ましくは1.005~1.019の範囲であり、最も好ましくは1.006~1.016の範囲である。
【0054】
この分子量分布(Mw/Mn)が1.039を超えると、高分子量成分の増加及びモノオールの減少が要因と考えられる粘度の上昇に加え、低分子量成分の影響と考えられる硬化性の悪化を引き起こしやすく、バルクでのハンドリング性が悪く、溶媒への分散性や各原料との混合性が悪く、反応や組成が不均一となる。また、そのようなポリアルキレンオキシドを用いたポリウレタンエラストマー形成性組成物はハンドリング性が悪く生産性に劣る。さらに、そのようなポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いて得られるポリウレタンエラストマーは、ポリオールとして、ポリテトラメチレングリコールやポリエステルポリオールを用いて得られるポリウレタンエラストマーに比べ、強度や耐久性が不十分である。
【0055】
なお、この分子量分布(Mw/Mn)が1.029以下になると、顕著な粘度低減効果が得られ、バルクでのハンドリング性が向上し、溶媒への分散性や各原料との混合性が良好であり、反応や組成が均一となりやすい。
【0056】
2種以上のポリアルキレンオキシドを併用してポリアルキレンオキシド(A)とする場合、それぞれのポリアルキレンオキシドの分子量分布(Mw/Mn)が1.039以下であり、混合物とした際の分子量分布(Mw/Mn)も1.039以下であることが好ましい。
【0057】
本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物に用いるポリアルキレンオキシド(A)の、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)と、後述する水酸基価(OHV)より算出した数平均分子量(M)との関係は下記数式(1):
Mw/Mn≦1.0+M×0.000015 (1)
を満たす。好ましくは下記数式(2):
1.003≦Mw/Mn≦1.0+M×0.000012 (2)
を満たすことであり、さらに好ましくは下記数式(3):
1.0+M×0.000002≦Mw/Mn≦1.0+M×0.00001 (3)
を満たすことである。
【0058】
ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた分子量分布(Mw/Mn)は、後述する理由から、分離カラムに粒径3μmの充填剤を充填したカラム4本を直列接続し、レファレンス側に抵抗管を接続、展開溶媒にテトラヒドロフランを用いた条件で測定して分析した分子量分布であることが好ましく、標準ポリスチレンを用いた3次近似曲線検量線を用いて算出した分子量分布(Mw/Mn)であることが望ましい。
【0059】
分離カラムの本数としては、分離能(理論段数)が高くベースラインの揺らぎや液中の不純物の微小ピークにより分子量分布が広がることを抑制しやすいため、好ましくは3~5本であり、特に好ましく4本である。
【0060】
分離カラムの充填剤の粒径は、測定時間が適正で、ベースラインの揺らぎや液中の不純物の微小ピークにより分子量分布が広がることを抑制しやすいため、好ましくは1~4.5μmであり、特に好ましくは3μmである。
【0061】
分離カラムの排除限界は好ましくは5万~300万であり、さらに好ましくは6万~40万である。分離カラムの内径は好ましくは5~7.5mmφであり、さらに好ましくは6mmφである。分離カラムの長さ、好ましくは10~25cmであり、さらに好ましくは15cmである。
【0062】
このような分離カラムとしては、例えば、東ソー社製TskgelSuperH4000、Tskgel SuperH3000などが挙げられる。最も好ましい分離カラムの構成は、東ソー製TskgelSuperH4000×2本とTskgel SuperH3000×2本との計4本を直列接続する構成である。
【0063】
分離カラム側の流速は、好ましくは0.5~0.9ml/minであり、さらに好ましくは0.6ml/minである。カラム温度は好ましくは30℃~50℃であり、さらに好ましくは40℃である。
【0064】
また、レファレンス側にはポンプの脈動により分子量分布が広がることを抑制しやすいため、抵抗管2本~6本を接続することが好ましく、さらに好ましくは抵抗管5本の接続であり、最も好ましくは抵抗管5本と分離カラム1本の接続である。
【0065】
抵抗管としては長さが2m、内径が0.1mmφのもの等が好適なものとして挙げられる。
【0066】
レファレンス側の流速は、ポンプの脈動周期が短くベースラインの揺らぎを抑制しやすくポンプの脈動により分子量分布が広がることを抑制しやすいため、抵抗管5本の状態で好ましくは0.1~0.6ml/minであり、さらに好ましくは0.15ml/minである。
【0067】
3次近似曲線検量線の標準物質に用いるポリスチレンは、好ましくは6点~10点であり、さらに好ましくは8点である。分子量既知の標準物質に用いるポリスチレンの分子量としては好ましくは300~3000000の範囲からの選択であり、さらに好ましくは450~1100000の範囲からの選択である。具体的には、例えば500、1010、2630、10200、37900、96400、427000、1090000の8点選択などが挙げられ、標準物質の測定は500、2630、37900、427000の4点と1010、10200、96400、1090000の4点など2回に分けて測定してもよい。
【0068】
展開溶媒としては、好ましくはジメチルホルムアミド又はテトラヒドロフランであり、さらに好ましくは和光純薬社製のBHT安定剤含有特級テトラヒドロフランである。
【0069】
サンプル濃度としては好ましくは0.5~2mg/mlであり、さらに好ましくは1mg/mlである。サンプル溶液の注入量はピークがブロードになりにくく分子量分布が広がりにくい10~90μlが好ましく、さらに好ましくは20μlである。
【0070】
本発明において、ポリアルキレンオキシド(A)のゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法における低分子量成分の面積比率は、ピーク全体の4.5%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましい。低分子量成分の面積比率減少に伴い粘度は上昇しやすいが、ポリウレタンとした際に移行成分が少なくハンドリング性や機械物性に優れやすいため好ましい。
【0071】
ここで、ゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法における「低分子量成分の面積比率」とは、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定する際に算出される数平均分子量(Mn)の1/3以下の数平均分子量の低分子量成分を指し、ベースラインと分子量分布を測定する際に算出される数平均分子量(Mn)の1/3の点でピーク分割して低分子量成分の面積%を求めることができる。
【0072】
<ポリアルキレンオキシド(A)の性状>
本発明において、ポリアルキレンオキシド(A)の不飽和度は、0.010meq/g以下である。好ましくは、0.002~0.009meq/gの範囲であり、さらに好ましくは0.004~0.008meq/gの範囲である。
【0073】
不飽和度が0.010meq/gを超えるポリアルキレンオキシドを用いて得られるポリウレタンは、良好に硬化せず移行成分が多く発生し、機械物性の悪化及びハンドリング性の悪化により使用が困難である。さらには低分子量のモノオールを多く副生し、数平均分子量低下の要因となるためポリアルキレンオキシドの高分子量化が困難となるとともに、分子量分布の狭いポリアルキレンオキシドを得ること自体も困難となる。
【0074】
本発明において、ポリアルキレンオキシド(A)の「不飽和度(meq/g)」とは、ポリアルキレンオキシドの1g当たりに含まれる不飽和基の総量のことであり、JIS K1557 6.7に規定された方法に準拠して測定した値である。ポリアルキレンオキシドの不飽和度はポリアルキレンオキシド中に存在するモノオール量の指標となり、増加することで粘度は低下するが、ポリアルキレンオキシドの平均官能基数が低下することがある。また、アルキレンオキシド中に存在するモノオールは、ポリウレタン原料として用いた際に停止反応となり、ポリウレタンの分子量低下や未架橋の低分子量成分の増加につながったり、ポリウレタン中でダングリング鎖として作用することで機械物性が低下することがある。
【0075】
2種以上のポリアルキレンオキシドを併用してポリアルキレンオキシド(A)とする場合、それぞれのポリアルキレンオキシドの不飽和度が0.010meq/g以下であることが好ましいが、不飽和度が0.010meq/g以上のポリアルキレンオキシドと不飽和度が0.010meq/g未満のポリアルキレンオキシドとを混合して、その混合物の平均の総不飽和度が0.010meq/g以下になるように調整してもよい。
【0076】
本発明において、ポリアルキレンオキシド(A)のOHVから算出した数平均分子量(M)は1000以上である。好ましくは1000~30000の範囲であり、さらに好ましくは、1000~15000の範囲であり、最も好ましくは2000~7500の範囲である。
【0077】
また、ポリアルキレンオキシド(A)の数平均分子量(M)としては、熱可塑性のポリウレタンエラストマーに用いる場合、1000~5000の範囲が好ましく、熱硬化性のポリウレタンエラストマーに用いる場合、数平均分子量は2000~30000の範囲が好ましい。
【0078】
さらに、エラストマーに高い透明性が求められる用途の場合、ポリアルキレンオキシド(A)の数平均分子量(M)は、1000~3000の範囲であるか、又は7000~30000の範囲であることが好ましい。数平均分子量が1000~3000の範囲では均一に分散して透明性が発現しやすく、数平均分子量が7000~30000の範囲ではイソシアネート基の硬い成分が相対的に減少するため、大きいミクロ相分離構造を形成しにくいと考えられる影響で透明性を発現しやすい。
【0079】
一方、ポリアルキレンオキシド(A)の数平均分子量(M)が1000未満では、不飽和度や分子量分布の差異が小さくなり、ポリウレタンエラストマー形成性組成物のハンドリング性、得られるポリウレタンエラストマーの機械物性に顕著な改善効果が得られない。
【0080】
本発明において、ポリアルキレンオキシド(A)のOHVから算出した数平均分子量(M)は、ポリアルキレンオキシド(A)の水酸基価(OHV、単位はmgKOH/g)に基づき、下記数式(4):
数平均分子量=(56100/OHV)×1分子当たりの水酸基数 (4)
を用いて計算した値をいう。
【0081】
ここで、「OHV」は、JIS K1557 6.4に準拠して測定した値である。また、「1分子当たりの水酸基数」とは、ポリアルキレンオキシド(A)を製造するときに原料として用いた開始剤である活性水素含有化合物1分子あたりの活性水素原子の数をいう。市販品で開始剤の活性水素原子の数を特定できない場合、公称官能基数を用いる。
【0082】
2種以上のポリアルキレンオキシドを併用してポリアルキレンオキシド(A)とする場合、それぞれのポリアルキレンオキシドの数平均分子量が1000以上であることが好ましいが、数平均分子量が1000未満のポリアルキレンオキシドと数平均分子量が1000以上のポリアルキレンオキシドとを混合して、その混合物の平均の数平均分子量が1000以上となるように調整してもよい。
【0083】
本発明において、ポリアルキレンオキシド(A)としては、室温環境下で液体であり、非晶性の化合物が好ましい。室温環境下で液体で非晶性であれば、加熱をせず使用しやすい等成形性に優れやすく、得られるポリウレタンエラストマーの透明性が発現しやすい為好ましい。
【0084】
また、ポリアルキレンオキシド(A)のガラス転移温度は、ハンドリング性に優れやすく得られるポリウレタンエラストマーの低温特性が良好となりやすいことから、-30℃以下が好ましい。
【0085】
本発明において、ポリアルキレンオキシド(A)の25℃条件における粘度は、特に限定されず、用途により適宜選択されるが、好ましくは0.1~2000Pa・s(25℃)の範囲であり、さらに好ましくは0.2~200Pa・s(25℃)の範囲である。ポリアルキレンオキシド(A)の粘度が0.1~2000Pa・s(25℃)の範囲であれば成形しやすく、得られるポリウレタンエラストマーの物性を制御しやすい。
【0086】
本発明において、25℃条件における「粘度」とは、JIS K1557-5 6.2.3項のコーンプレート回転粘度計で測定した値を指す。具体的には、せん断速度0.1(1/s)条件での粘度を指すが、粘度が測定範囲に入らない場合、測定範囲に入るようせん断速度範囲を0.01~10(1/s)の範囲で調整しても良い。
【0087】
本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物において、ポリアルキレンオキシド(A)の含有量は、特に限定するものではないが、ポリウレタンエラストマー形成性組成物の20~99重量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは51~97重量%の範囲であり、最も好ましくは65~90重量%の範囲である。
【0088】
<ポリアルキレンオキシド(A)の製造>
本発明において、ポリアルキレンオキシド(A)の製造方法としては、特に限定するものではないが、例えば、活性水素含有化合物、塩基触媒、及びルイス酸の存在下に、アルキレンオキシドの開環重合を行うことにより製造することができる。
【0089】
例えば、活性水素含有化合物と塩基触媒を混合し、減圧処理して触媒活性種前駆体を調整する際に十分に水分や溶媒を除去すること、
さらにルイス酸を混合し、減圧処理して触媒活性種を調整する際に十分に副生物を除去すること及び沸点が低い副生物となる特定のルイス酸を選定することで、分子量分布を広げる要因となるルイス酸由来のポリアルキレンオキシドを抑制すること、
副反応が少ない塩基触媒と特定のルイス酸とを組み合わせた触媒を用いてアルキレンオキシドを付加する製造プロセスを経ること、
水分値が100ppm以下と少ないアルキレンオキシドを用いること、
等により製造することが好ましいが、特に限定されない。
【0090】
塩基触媒として、特に限定するものではないが、アルキレンオキシドの適応範囲が広くて重合活性が高く、低不飽和度となりやすいため、塩基触媒とルイス酸とを併用した触媒系を用いることが好ましい。
【0091】
ここで、ルイス酸としては、特に限定するものではないが、例えば、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、ホウ素化合物等を挙げることができる。そして、これらの中でも、触媒性能に優れるアルキレンオキシド重合触媒となることから、有機アルミニウム、アルミノキサン、有機亜鉛が好ましく、さらに好ましくは、有機アルミニウムである。
【0092】
アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、ジフェニルモノイソブチルアルミニウム、モノフェニルジイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム;メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、メチル-イソブチルアルミノキサン等のアルミノキサン;塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等の無機アルミニウムを挙げることができる。
【0093】
これらの中でも、触媒活性種調製の際の副生物の沸点が100℃以下と低くて除去しやすく、分子量分布を広げる要因となるルイス酸由来のポリアルキレンオキシドを抑制しやすいトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウムなどが好ましい。触媒活性種調製の際に副生する化合物はルイス酸の構造より判断でき、例えばトリメチルアルミニウムではアルミニウム上の置換基のメチル基にHが付加したメタン、トリイソブチルアルミニウムではアルミニウム上の置換基のイソブチル基にHが付加したイソブタン、トリイソプロポキシアルミニウムではイソプロポキシ基にHが付加したイソプロパノールである。
【0094】
亜鉛化合物としては、例えば、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等の有機亜鉛;塩化亜鉛、酸化亜鉛等の無機亜鉛を挙げることができる。
【0095】
ホウ素化合物としては、トリエチルボラン、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリイソプロポキシボラン、トリフェニルボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフルオロボラン等を挙げることができる。
【0096】
塩基触媒としては、特に限定するものではないが、P-N結合を有する塩基化合物が望ましい。さらに好ましくは、イミノ基及びP-N結合を有する塩基化合物であり、例えば下記一般式(3)で示されるイミノフォスファゼニウム塩化合物が挙げられる(例えば、特開2011-132179号公報参照)。
【0097】
【化4】
【0098】
[上記一般式中、R及びRは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。なお、RとRが互いに結合して環構造を形成していても良いし、R同士又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。Xは、ヒドロキシアニオン、炭素数1~4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2~5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭酸水素アニオンを表す。]
塩基触媒とルイス酸との割合は、特に限定するものではなく、アルキレンオキシド重合触媒としての作用が発現する限りにおいて任意であるが、例えばイミノフォスファゼニウム塩:ルイス酸=1:0.002~500(モル比)の範囲である。
【0099】
本発明において、ポリアルキレンオキシドを製造する際の重合温度としては、特に限定されないが、ポリアルキレンオキシドが分解して分子量分布が広がりにくく触媒活性を発現しやすいため、70~150℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは90~110℃の範囲である。
【0100】
本発明において、ポリアルキレンオキシドを製造する際の重合圧力は、特に限定されないが、0.05~1.0MPaの範囲、好ましくは0.1~0.6MPaの範囲である。
【0101】
本発明において、ポリアルキレンオキシドを製造する際の撹拌速度としては、重合容器の形状や内容積、撹拌翼形状等によるため、特に限定するものではないが、内容積2Lの円筒型の重合容器でイカリ型の撹拌翼の場合、300rpm以上で十分に撹拌することが好ましい。
【0102】
イミノフォスファゼニウム塩とルイス酸を組み合わせた触媒を用い、活性水素含有化合物にアルキレンオキシドを付加する場合、イミノフォスファゼニウム塩(その前駆体を含む)、ルイス酸、及び活性水素含有化合物を同時に混合し、加熱・減圧処理等を行って触媒活性種を調製する方法、これらのうちの1成分に他の2成分を混合し加熱・減圧処理等を行って触媒活性種を調製する方法、これらのうちの2成分に他の1成分を混合し加熱・減圧処理等を行って触媒活性種を調製する方法、これらのうちの2成分を混合し加熱・減圧処理等を行って触媒活性種前駆体を調製後、他の1成分を混合しさらに加熱・減圧処理等を行って触媒活性種を調製する方法等の如何なる方法を用いても良い。これらのうち、副生物や不純物が除去されやすく狭い分子量分布のポリアルキレンオキシドを得やすいため、イミノフォスファゼニウム塩と活性水素含有化合物とを混合した後に加熱・減圧処理を行って、その後にルイス酸を混合しさらに加熱・減圧処理等を行って触媒活性種を調製してアルキレンオキシドを付加する製造プロセスを経ることが好ましい。
【0103】
その際の加熱・減圧処理の温度としては副生物や不純物が除去されやすく狭い分子量分布のポリアルキレンオキシドを得やすいため100℃以上が好ましく、さらに好ましくは100~130℃の範囲である。加熱・減圧処理の際の圧力としては、副生物や不純物が除去されやすく狭い分子量分布のポリアルキレンオキシドを得やすいため0.5kPa未満が好ましく、さらに好ましくは0.001~0.2kPaの範囲である。その際の加熱・減圧処理の時間としては、反応容器の形状等により異なるがイミノフォスファゼニウム塩及び又はその前駆体、ルイス酸、及び活性水素含有化合物を混合後2時間以上であることが好ましく、さらに好ましくはイミノフォスファゼニウム塩及び又はその前駆体と活性水素含有化合物を混合後2時間以上の加熱・減圧留去に加え、ルイス酸混合後さらに加熱・減圧留去を2時間以上行うことが好ましい。さらに不純物除去のため低沸点の脱水溶媒を添加し、共沸操作を行って不純物を除去してもよい。
【0104】
本発明において、ポリアルキレンオキシド(A)としては、特に限定するものではないが、触媒が残存すると粘度が上昇することがあるため、重合後に触媒を除去したものであることが好ましい。ポリアルキレンオキシド(A)の触媒残渣量としては200ppm以下が好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましい。ここで、触媒残渣量としては、触媒を2種類以上併用して用いる場合、合算した触媒残渣量を指す。
【0105】
<活性水素含有化合物(B)>
本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物は活性水素含有化合物(B)を必須成分として含む。活性水素含有化合物(B)を含有しない場合、ポリウレタンとした際に機械強度や耐久性が発現せず、ポリウレタンエラストマーとしての使用は困難である。
【0106】
活性水素含有化合物(B)は、2分子内に活性水素基を2~4個含有する2~4官能性の化合物である。活性水素含有化合物(B)の官能基数が2未満では、鎖延長反応が停止しやすいため硬化性に劣り、得られるポリウレタンエラストマーの機械強度が低下するおそれがある。また、活性水素含有化合物(B)の官能基数が4を超えると、可使時間(ポットライフ)が短くなりやすく、成形性に劣るおそれがあり、得られるポリウレタンエラストマーも硬くなりやすく目的の弾性を発現しないおそれがある。
【0107】
活性水素含有化合物(B)としては、熱可塑性のポリウレタンエラストマーに用いる場合、2官能の活性水素含有化合物が好ましく、熱硬化性のポリウレタンエラストマーに用いる場合、3~4官能の活性水素含有化合物が好ましい。熱可塑性、熱硬化性を維持できる範囲で官能基数が異なる活性水素含有化合物を少量併用してもよい。
【0108】
活性水素含有化合物(B)の分子量は、1000未満であるが、好ましくは58~500、さらに好ましくは80~300の範囲である。分子量が1000以上では、ポリウレタンエラストマー形成性組成物の粘度が高くなりやすく、また硬化性に劣るおそれがある。またそれを用いて得られるポリウレタンエラストマーは強固なハードドメインを形成しにくく、強度が不足するおそれがある。
【0109】
活性水素含有化合物(B)は、活性水素基として、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を含む。また、反応性に差異が出て不均一な組成となりにくいことから、活性水素基が水酸基又はアミノ基のみで構成される活性水素含有化合物が好ましい。熱可塑性ポリウレタンエラストマーに用いる場合は、活性水素基として水酸基のみを含む活性水素含有化合物がさらに好ましく、熱硬化性ポリウレタンエラストマーに用いる場合は、活性水素基としてアミノ基のみを含む活性水素含有化合物がさらに好ましい。
【0110】
活性水素含有化合物(B)が、活性水素基として、水酸基もアミノ基も含まない場合、イソシアネート基との反応性に劣り、硬化性が不十分となるおそれがある。また、解重合が進行しやすい場合があり、耐久性が不足するおそれもある。
【0111】
このような活性水素含有化合物(B)としては、例えば、鎖延長剤又硬化剤として作用する活性水素含有化合物が挙げられ、具体的には、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール(1,4-BD)、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン(TMP)、トリエタノールアミン等のトリオール類、ヒマシ油、シュークローズ、ソルビトール等の4官能以上のポリオール類、トルエンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)等の芳香族アミン、エチレンジアミン等の脂肪族アミン、ジェファミンED等のポリアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミノアルコール等が例示される。
【0112】
本発明においては、これらの活性水素含有化合物を単独で、又は二種以上の混合物として使用することができる。
【0113】
なかでも、十分な硬化性と適度な可使時間(ポットライフ)を発現しやすく、得られるポリウレタンエラストマーの機械物性や耐久性を発現しやすいため、活性水素含有化合物(B)としては、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン(TMP)、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、メタキシリレンジアミン、及びエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0114】
また熱可塑性ポリウレタンエラストマーに用いる場合は、1,4-ブタンジオール、熱硬化性ポリウレタンエラストマーに用いる場合は、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、トリメチロールプロパン(TMP)が特に好適に使用できる。
【0115】
活性水素含有化合物(B)の含有量としては、特に限定するものではないが、本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物の0.5~49重量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは3~35重量%の範囲であり、最も好ましくは5~20重量%の範囲である。
【0116】
また、本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物は、活性水素含有化合物(B)中の活性水素基がポリアルキレンオキシド(A)中の活性水素基に対して、0.5~5当量(モル比)の範囲となる比率で活性水素含有化合物(B)を含有することがより好ましく、さらに好ましくは1~3当量(モル比)の範囲である。
【0117】
<ポリイソシアネート(C)>
本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物はポリイソシアネート(C)を必須成分として含む。本発明において、ポリイソシアネート(C)としては、特に限定するものではないが、例えば、少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。
【0118】
具体的には、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネートー4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、それらとポリオールとの反応によるイソシアネート含有プレポリマー、及びこれらの二種以上の混合物等が例示される。さらに、これらのイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基含有変性物)やポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等の縮合体(多核体と称されることもある)も包含される。
【0119】
これらのなかでも、生産性が優れ、さらには硬化性が優れるポリウレタンエラストマー形成性組成物を得やすいことから、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらのイソシアネート基含有プレポリマー、これらのイソシアネートの変性物(例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基含有変性物)等が好ましい。また柔軟性が優れるポリウレタンエラストマーを得やすいことから、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、そのイソシアネートの変性物(例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基含有変性物)等が好適に使用できる。これらイソシアネートは一種又は二種以上混合して使用してもよい。
【0120】
イソシアネート含有プレポリマーとしては、例えば、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、イソトリデカノール、ヘキシルデカノール、エチルヘキサノール、ブチルテトラグリコール等のモノオール、ポリオール、モノアミン又はポリアミン等と、対応するイソシアネートとの反応生成物が挙げられる。
【0121】
また熱可塑性ポリウレタンエラストマーに用いる場合は2官能のポリイソシアネート、熱硬化性ポリウレタンエラストマーに用いる場合は2~4官能のポリイソシアネートが特に好適に使用できる。
【0122】
ポリイソシアネート(C)の含有量は、本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物の0.01~49重量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは5~35重量%の範囲であり、最も好ましくは5~20重量%の範囲である。
【0123】
本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物において、ポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(C)とが反応してウレタンプレポリマーを形成していてもよい。
【0124】
本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物が、ポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(C)との反応生成物からなるNCO基末端ウレタンプレポリマーを含有する場合、ポリイソシアネート(C)をさらに含有させる必要はないが、さらに含有させる場合には、ポリウレタンエラストマー形成性組成物の30重量%未満の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは10重量%未満の範囲である。この場合、活性水素含有化合物(B)のOH基に対してNCO基が0.7~1.3当量(モル比)となる範囲で上記NCO基末端ウレタンプレポリマーを含有することが好ましく、より好ましくは0.9~1.1当量(モル比)となる範囲であり、さらに好ましくは1.01~1.1当量の範囲である。
【0125】
一方、本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物が、ポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(C)との反応生成物からなるNCO基末端ウレタンプレポリマーを含有しない場合、ポリイソシアネート(C)の含有量としては1~49重量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましく10~35重量%の範囲である。この場合、ポリイソシアネート(C)に対して、ポリアルキレンオキシド(A)と活性水素含有化合物(B)の活性水素基の総量が0.7~1.3当量(モル比)となる範囲でポリアルキレンオキシド(A)を含むことが好ましく、より好ましくは0.9~1.1当量(モル比)となる範囲であり、さらに好ましくは0.9~0.99当量の範囲である。
【0126】
<添加剤(D)>
本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物には、本発明の趣旨を損なわない範囲において必要に応じ、添加剤(D)として、ウレタン化触媒、消泡材、整泡剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、ナノクレイ、発泡剤、ダイマー酸ジオール、充填剤、離型剤、可塑剤、水、その他の添加剤を含んでもよい。
【0127】
これらのうち、ポリウレタンエラストマー形成性組成物の硬化性や得られるポリウレタンエラストマーの耐候性や耐久性が良好となりやすいため、ウレタン化触媒、酸化防止剤・光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を含むことが好ましい。
【0128】
ウレタン化触媒としては、特に限定するものではないが、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、2-エチルヘキサン酸錫等の有機錫化合物、鉄アセチルアセトナート、塩化鉄等の鉄化合物、オクチル酸鉛等の鉛化合物、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の三級アミン系触媒等が挙げられ、好ましくは有機錫化合物である。
【0129】
酸化防止剤としては、特に限定するものではないが、チオエーテル系化合物、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系化合物等、ポリマー鎖の酸化を抑制する効果がある化合物が挙げられ、具体的には、チバ社製イルガノックス、ADEKA社製アデカスタブ等が市販されている。
【0130】
これらのなかでも、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、ウレタンに対する酸化防止性を得やすいことから、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、チバ・ジャパン社製IRGANOX-1010、IRGANOX-1024、IRGANOX-1035、IRGANOX-1076、IRGANOX-1081から選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0131】
光安定剤としては、特に限定するものではないが、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤、ベンゾエート系化合物等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等、耐光性や耐候性等を付与する効果がある化合物が挙げられ、具体的にはチバ・ジャパン製チヌビン等が市販されている。
【0132】
これらのなかでも、光安定剤としては、チヌビン234、チヌビン144、チヌビンC353、チヌビンB75から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これら酸化防止剤、光安定剤を混合して用いることもできる。
【0133】
特に限定するものではないが、整泡剤としてはシリコーン系化合物が好ましく、消泡剤としてはシリコーン系化合物が好ましく、難燃剤としてはトリスクロロプロピルホスフェート等のリン系化合物や塩素系化合物が好ましく、可塑剤としてはジオクチルフタレート(DOP)等のフタル酸系化合物が好ましく、離型剤としてはシリコーン系化合物が好ましい。
【0134】
本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物には、添加剤(D)として、得られるポリウレタンエラストマーの分子量をあまり大きくしないようにすることでポリウレタンエラストマーの加工性を高めるための分子量調節剤として、例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の末端基停止剤を併用してもよい。
【0135】
添加剤(D)の各成分の含有量としては、特に限定するものではないが、本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物に対してそれぞれ5重量%以下の範囲であり、さらに好ましくは0.1重量%以下の範囲である。ウレタン化反応触媒を用いる場合は、ポリウレタンエラストマー形成性組成物に対して0.0001~1重量%の範囲で用いることが好ましく、さらに好ましくは0.001~0.03重量%の範囲である。
【0136】
本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ポリアルキレンオキシド(A)、活性水素含有化合物(B)以外のポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオールを含んでも良く、本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物に対して30重量%未満の範囲で用いることが好ましいが、このようなポリオール類を含まないことがさらに好ましい。
【0137】
<ポリウレタンエラストマーの製造方法>
本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物を反応させることで本発明のポリウレタンエラストマーが製造できる。製造方法としては、ワンショット法、プレポリマー法等から選ばれる公知の方法を用いることができる。
【0138】
ワンショット法としては、例えば、本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物を一括で混合し、同時に反応させることによって、ポリウレタンエラストマーを製造する方法等が挙げられる。
【0139】
プレポリマー法としては、例えば、ポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(C)を反応させてNCO基末端ウレタンプレポリマーを製造し、このプレポリマーと活性水素含有化合物(B)とを反応させてポリウレタンエラストマーを製造する方法等が挙げられる。
【0140】
これらの方法を用いて、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマーではバッチ法、バンドキャスティング法、反応押出法、熱硬化性ポリウレタンエラストマーでは注型法等公知の方法を用いることにより本発明のポリウレタンエラストマーを製造することができる。
【0141】
バッチ法としては、例えば、ポリアルキレンオキシド(A)及びポリイソシアネート(C)、又はそれらのウレタンプレポリマーと、活性水素含有化合物(B)とを所定の割合で混合し、混合液を容器に流し込み、120~130℃程度で24時間ほど重合反応させ、塊状のポリウレタンエラストマーを作製する方法等が挙げられる。
【0142】
バンドキャスティング法としては、例えば、ポリアルキレンオキシド(A)及びポリイソシアネート(C)、又はそれらのウレタンプレポリマーと、活性水素含有化合物(B)とをミキシングヘッドを用いて素早く混合・撹拌し、連続的にコンベア上に供給して重合反応を進行させて板状のポリウレタンエラストマーを作製する等が挙げられる。
【0143】
反応押出法としては、例えば、ポリアルキレンオキシド(A)及びポリイソシアネート(C)、又はそれらのウレタンプレポリマーと、活性水素含有化合物(B)とを混合した原料液を二軸押し出し機等の混練装置内に送液し、混練しながら重合させて、ポリウレタンエラストマーを得る方法等が挙げられる。
【0144】
注型法としては、例えば、液状のポリアルキレンオキシド(A)及びポリイソシアネート(C)、又はそれらのウレタンプレポリマーと、活性水素含有化合物(B)とを混合撹拌後、金型へ流し込み、所定時間熱硬化することでポリウレタンエラストマーを得る方法等が挙げられる。
【0145】
また、これらの方法以外にも、溶媒や水中で製造することにより微粒子状のポリウレタンエラストマーを得る方法や、発泡剤等を用いて微発泡させて製造することによりマイクロセルラー状のポリウレタンエラストマーを得る方法等が挙げられる。
【0146】
<ポリウレタンエラストマーの成形方法、用途>
本発明のポリウレタンエラストマーは、射出成形、押出し成形、スラッシュ成形、カレンダー成形、インフレーション成形、ブロー成形、溶媒キャスティング、注型、反応押出(RIM)等公知の成形法により、フィルム状、シート状、塊状等に加えて種々の形状に成形することができる。
【0147】
例えば、インフレーション成形、ブロー成形、カレンダー成形、押出し成形、溶媒キャスティングにより、フィルム状、シート状のポリウレタンエラストマーを得ることができる。
【0148】
本発明のポリウレタンエラストマーは薄膜でも高い強度、高い耐久性を発現しやすいため、2mm以下の厚みのポリウレタンエラストマーフィルム、シート用途で好適に使用でき、なかでも500μm以下の厚みのポリウレタンエラストマーフィルム用途で好適に使用できる。このようなポリウレタンエラストマーフィルムは、高い機械物性が要求される自動車用途、医療用途、雑貨、工業製品、合成皮革・人工皮革等の衣料用途、接着剤シートといった用途に好適に用いることができる。
【0149】
また、パウダースラッシュ成形により粒子状のポリウレタンエラストマーを得ることができ、高い耐久性を発現しやすいため、自動車用途においてドアトリムやインパネ等好適に使用できる。
【0150】
本発明のポリウレタンエラストマーのその他の用途として、例えば、タイヤチェーン、サイドモールド、ダストカバー、ボールジョイント、キャスター、ローラー、パッキン、シール材、コネクター、サッカーボール、ゴルフボール、スポーツシューズ、時計バンド、耐圧ホース、消防ホース、油圧チューブ、エアチューブ、コンベア、駆動ベルト、自動車配線、コンピュータ配線、電線、電力ケーブル被覆、メディカル用ディスポ製品、OA機器コネクター、容器類、ソリッドタイヤ、ベルト、ブレード、トラックホイール、スノーブラウ、製紙ロール、印刷ロール、鉄鋼ロール、Oリング、ガスケット、オイルシール、刃受け、ダイパット、スプリング、緩衝材、電気機器、OA機器、パイプ、板、シート、スケートローラー、釣り糸、靴底、ゴム製品、医療機器部品、航空宇宙用部品等が挙げられる。
【実施例
【0151】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で使用した原料、及び評価方法は以下に示すとおりである。
【0152】
(原料)
<ポリオール>
実施例又は比較例で用いたポリオールの性状を表1、表2に併せて示す。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
ポリオール(A1)、(A7)~(A10)、(A12):イミノ基含有フォスファゼニウム塩(IPZ)触媒とトリイソプロポキシアルミニウムを併用し、脱水・脱溶媒を十分に行い、2官能分子量400のポリオキシプロピレングリコールに十分に脱水したプロピレンオキシドを付加したポリアルキレンオキシド。
【0156】
ポリオール(A2):イミノ基含有フォスファゼニウム塩(IPZ)触媒とトリイソプロポキシアルミニウムを併用し、常法により、2官能分子量400のポリオキシプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加したポリアルキレンオキシド。
【0157】
ポリオール(A3):市販の汎用ポリオキシプロピレングリコール(三洋化成工業社製PP-2000)。
【0158】
ポリオール(A4)、(A13):イミノ基含有フォスファゼニウム塩(IPZ)触媒のみを用い、常法により、2官能分子量400のポリオキシプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加したポリエーテルジオール。
【0159】
ポリオール(A5)、(A11):複合金属シアン化物錯体(DMC)触媒を用い、2官能分子量400のポリオキシプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加したポリアルキレンオキシド。
【0160】
ポリオール(A6):市販のポリテトラメチレングリコール(三菱化学社製PTMG2000)。
【0161】
なお、上記したポリオールは使用前に加熱・真空脱水し使用した。市販品以外は、常法により触媒を除去し使用した。
【0162】
ポリオール(A1)、(A2)は不飽和度と分子量分布が狭く、ポリオール(A5)、(A6)と比較して低粘度であり、ポリウレタンエラストマー形成性組成物を作製した際に良好なハンドリング性が期待できるものであった。
【0163】
ポリオール(A7)~(A10)、(A12)は不飽和度と分子量分布が狭いものであった。またポリオール(A10)は、ポリオール(A11)と比較して低粘度であり、ポリウレタンエラストマー形成性組成物を作製した際に良好なハンドリング性が期待できるものであった。
【0164】
<活性水素含有化合物>
1,4-ブタンジオール(1,4-BD)、トリメチロールプロパン(TMP)は、市販品を使用前に加熱・真空脱水して使用した。
【0165】
3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)は、市販品をそのまま使用した。
【0166】
<ポリイソシアネート>
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI、東ソー社製ミリオネートMTL)をそのまま使用した。
【0167】
<添加剤>
ウレタン化触媒:ジブチルチンジラウレート(和光純薬社製)
酸化防止剤 :Irganox1010(BASF社製)
上記市販品をそのまま使用した。
【0168】
(ポリウレタンエラストマー形成性組成物の評価方法)
<水酸基価、数平均分子量>
ポリアルキレンオキシドの水酸基価(OHV)はJIS-K1557-1の方法に従い、測定した。また、ポリアルキレンオキシドの数平均分子量は、ポリアルキレンオキシドの水酸基価に基づき、上記数式(4)を用いて計算した値である。
【0169】
<不飽和度>
JIS-K1557-6の方法に従い、測定した。
【0170】
<分子量分布(Mw/Mn)>
サンプル瓶へポリオール10mgとTHF10mlを添加し、1終夜静置することで溶解し、PTFEカードリッジフィルター(0.5μm)でろ過することでサンプルを得た。検出器としてRI検出器RI8020、測定用カラムとして分離カラムに粒径3μmの充填剤を充填した東ソー製TskgelSuperH4000×2本及びTskgel SuperH3000×2本の計4本を直列接続し、レファレンス側は抵抗管×5本を接続、展開溶媒に和光社製BHT安定剤含有の特級テトラヒドロフランを用い、分離カラム側の流速0.6ml/min、レファレンス側の流量0.15ml/min、カラム温度40℃の条件で分析した。分子量既知の東ソー社製標準ポリスチレン8点を用いた3次近似曲線を検量線として、分子量分布(Mw/Mn)の解析を行った。測定装置には東ソー製HLC-8320GPC、解析には東ソー製HLC-8320GPC-ECOSEC-WorkStationを用いた。
【0171】
<性状>
ポリウレタンエラストマー形成性組成物の性状を以下のとおり評価した。
【0172】
○:室温下で液体のもの
×:室温下で固体が混ざる状態(ペースト状等)のもの
××:粘調すぎて使用が困難なもの(室温下で液体、ペースト状によらない)。
【0173】
<硬化性>
硬化中の厚さ約500μmのフィルム状のポリウレタンエラストマーを経時でIRを測定し、NCO基に由来する2230cm-1付近のピークが痕跡量となるまでの時間を以下のとおり評価した。
【0174】
○:18時間未満に痕跡量となる場合
△:痕跡量となるまで18時間以上24時間未満要する場合
×:痕跡量となるまでで24時間以上を要する場合
××:硬化が早期に進行しすぎてポットライフが短く、成形が困難な場合(NCO基残存量によらない)。
【0175】
(ポリウレタンエラストマーの評価方法)
<引張強度、伸び>
厚さ約500μmのフィルム状のポリウレタンエラストマーを3号ダンベル型の打ち抜き機を用いて打ち抜き、硬化物の厚みを測定した。引張試験機(オリエンテック社製テンシロンRTG-1210)を用いて、チャック間距離5cm、引張速度200mm/minで引張強度及び破断時の伸びを測定し、以下のとおり評価した。
【0176】
○ :引張強度が35MPa以上のもの
× :引張強度が35MPa未満のもの。
【0177】
引張強度の評価が○のものは、ポリオールとしてポリテトラメチレングリコールを用いて得られたポリウレタンエラストマーに匹敵する引張強度を有する。また、引張強度が低く、破断時の伸びが300%未満のものは、実用特性上使用が難しい。
【0178】
<耐久性>
JISK7312に準拠して、伸長回復3回目のヒステリシス損失を測定した。
【0179】
○:ヒステリシス損失が10%以下のもの
×:ヒステリシス損失が10%を超えるもの。
【0180】
以上の引張強度、破断時の伸び、耐久性の何れもが○の場合、物性が特に良好であると判断できる。
【0181】
<透明性>
厚さ約500μmのフィルム状のポリウレタンエラストマーを、ヘーズメーター(日本電色工業製NDH5000)にてHaze(白濁度)を測定した。
【0182】
○:Hazeが20%未満のもの
△:Hazeが20%~30%未満の範囲のもの
×:Hazeが30%以上のもの。
【0183】
透明性の評価が○のものは透明性が求められる用途に特に好適に使用できる。
【0184】
<ポリウレタンエラストマー形成性組成物及びポリウレタンエラストマーの製造>
実施例1.
撹拌翼を付した4つ口のセパラブルフラスコに、分子量2000、2官能のポリオール(A1)を投入し、100℃2時間で減圧脱水を行い、室温に冷却後、窒素下で、4,4’-MDI(東ソー社製ミリオネートMTL)を、ポリオール(A1)と4,4’-MDIの比率がNCO/OH比で2となるようにセパラブルフラスコに投入し、窒素下で無触媒80℃でNCO基の消費が停止するまで撹拌し、NCO基末端ウレタンプレポリマーを合成した。そこに、酸化防止剤(BASF社製Irganox1010)を2000ppm、1,4-ブタンジオールをNCO/OH比=1.05となるよう加えて撹拌し、ポリウレタンエラストマー形成性組成物を得た。
【0185】
次に、得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物を60℃に加熱した厚み500μm厚みの金属製モールドに離型剤を塗り、余剰分を拭き取り、液を流し込み60℃でキュアすし、所定時間キュアすることでポリウレタンエラストマーを得た(プレポリマー法)。
【0186】
得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物は、硬化した際の反応性が高く、18時間未満でNCO基が痕跡量まで減少していた。また、性状は液状であり、ハンドリング性に優れるポリウレタンエラストマー形成性組成物であった。
【0187】
また、得られたポリウレタンエラストマーは引張強度が顕著に高く、耐久性の指標となるヒステリシス損失も低いため、ポリテトラメチレングリコールを使用して得られたポリウレタンエラストマーが通常用いられる用途への展開が期待できるものであった。
【0188】
さらに、得られたポリウレタンエラストマーは、Hazeが低く透明性に優れ、光学用途への展開も期待できるものであった。
【0189】
実施例2.
ポリオール(A1)の代わりにポリオール(A2)を用いる以外は、実施例1と同様の手法によりポリウレタンエラストマー形成性組成物、及びポリウレタンエラストマーを得た(プレポリマー法)。
【0190】
得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物は、硬化した際の反応性が高く、18時間未満でNCO基が痕跡量まで減少していた。また、性状は液状であり、ハンドリング性に優れるポリウレタンエラストマー形成性組成物であった。
【0191】
また、得られたポリウレタンエラストマーは引張強度が顕著に高く、耐久性の指標となるヒステリシス損失も低いため、ポリテトラメチレングリコールを使用して得られたポリウレタンエラストマーが通常用いられる用途への展開が期待できるものであった。
【0192】
さらに、得られたポリウレタンエラストマーはHazeが低く透明性に優れ、光学用途への展開も期待できるものであった。
【0193】
比較例1.
ポリオール(A1)の代わりに、不飽和度の高いポリオール(A3)を用いる以外は、実施例1と同様の手法により、ポリウレタンエラストマー形成性組成物、及びポリウレタンエラストマーを得た(プレポリマー法)。
【0194】
得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物は、18時間以上をNCO基の消費に要し、硬化する際の反応性(硬化性)が十分ではないものであった。
【0195】
また、得られたポリウレタンエラストマーは引張強度、耐久性の指標となるヒステリシス損失が十分ではなく、ポリテトラメチレングリコールを使用して得られたポリウレタンエラストマーが通常用いられる用途には適さないものであった。
【0196】
比較例2.
ポリオール(A1)の代わりに、不飽和度の高いポリオール(A4)を用い、1,4-ブタンジオールの代わりにエチレングリコール(EG)を使用する以外は、実施例1と同様の手法により、ポリウレタンエラストマー形成性組成物、及びポリウレタンエラストマーを得た(プレポリマー法)。
【0197】
得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物は、18時間以上をNCO基の消費に要し、硬化する際の反応性(硬化性)が十分ではないものであった。
【0198】
また、得られたポリウレタンエラストマーは引張強度、耐久性の指標となるヒステリシス損失が十分ではなく、ポリテトラメチレングリコールを使用して得られたポリウレタンエラストマーが通常用いられる用途には適さないものであった。
【0199】
比較例3.
ポリオール(A1)の代わりに、不飽和度が低く分子量分布が広いポリオール(A5)を用いる以外は、実施例1と同様の手法によりポリウレタンエラストマー形成性組成物、ポリウレタンエラストマーを得た(プレポリマー法)。
【0200】
得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物は、18時間以上をNCO基の消費に要し、硬化する際の反応性(硬化性)が十分ではないものであった。
【0201】
また、得られたポリウレタンエラストマーは引張強度、耐久性の指標となるヒステリシス損失が十分ではなく、ポリテトラメチレングリコールを使用して得られたポリウレタンエラストマーが通常用いられる用途には適さないものであった。
【0202】
さらに、得られたポリウレタンエラストマーは透明性が良好なものではなかった。
【0203】
比較例4.
テトラメチレングリコール[ポリオール(A6)]と1,4-ブタンジオールとをモル比1:1で混ぜ、加熱・真空脱水を行い、酸化防止剤(BASF社製Irganox1010)を2000ppmを加え、さらに4,4’-MDI(東ソー社製ミリオネートMTL)をNCO/OH比=1.05となるよう加えて加熱撹拌し、ポリウレタンエラストマー形成性組成物を得た。
【0204】
ここで、ポリテトラメチレングリコールは室温で固体であるためポリウレタンエラストマー形成性組成物の調製がしにくく、ハンドリング性に劣るものであった。また、得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物も、ペースト状でありハンドリング性に劣るものであった。
【0205】
次に、離型剤を塗り、余剰分を拭き取り、60℃に加熱した500μm厚みの金属製モールドに得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物を流し込み60℃でキュアすることで所定時間キュアすることでポリウレタンエラストマーを得た(ワンショット法)。
【0206】
得られたポリウレタンエラストマーは白濁しており、光学用途への展開が困難なものであった。さらには、常温で硬いため、用途が限られるものであった。
【0207】
分子量2000のポリオールを用いて得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物の性状及び硬化性、並びにそれを用いて得られたポリウレタンエラストマーの物性の結果を表3に併せて示す。
【0208】
【表3】
【0209】
実施例3.
ポリオール(A1)の代わりに、分子量1000、2官能のポリオール(A7)を用いる以外は、実施例1と同様の手法により、ポリウレタンエラストマー形成性組成物、及びポリウレタンエラストマーを得た(プレポリマー法)。
【0210】
得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物は、硬化した際の反応性が高く、18時間未満でNCO基が痕跡量まで減少していた。また、性状は液状であり、ハンドリング性に優れる組成物であった。
【0211】
また、得られたポリウレタンエラストマーは引張強度が顕著に高く、耐久性の指標となるヒステリシス損失も低いため、ポリテトラメチレングリコールを使用して得られたポリウレタンエラストマーが通常用いられる用途への展開が期待できるものであった。
【0212】
また、得られたポリウレタンエラストマーはHazeが低く透明性に優れ、光学用途への展開も期待できるものであった。
【0213】
実施例4.
ポリオール(A1)の代わりに、分子量4300、2官能のポリオール(A8)を用い、1,4-ブタンジオールの代わりに、3官能のトリメチロールプロパンを用いる以外は、実施例1と同様の手法によりポリウレタンエラストマー形成性組成物、ポリウレタンエラストマーを得た(プレポリマー法)。
【0214】
得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物は、硬化した際の反応性が高く、18時間未満でNCO基が痕跡量まで減少していた。また、性状は液状であり、ハンドリング性に優れるポリウレタンエラストマー形成性組成物であった。
【0215】
また、得られたポリウレタンエラストマーは引張強度が顕著に高く、耐久性の指標となるヒステリシス損失も低いため、ポリテトラメチレングリコールを使用して得られたポリウレタンエラストマーが通常用いられる用途への展開が期待できるものであった。
【0216】
実施例5.
ポリオール(A1)の代わりに、分子量18400、2官能のポリオール(A10)を用い、1,4-ブタンジオールの代わりに、3官能のトリメチロールプロパンを用い、トリメチロールプロパンの比率を上昇した以外は、実施例1と同様の手法によりポリウレタンエラストマー形成性組成物、及びポリウレタンエラストマーを得た(プレポリマー法)。
【0217】
得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物は、硬化した際の反応性が高く、18時間未満でNCO基が痕跡量まで減少していた。また、性状は液状であり、ハンドリング性に優れるポリウレタンエラストマー形成性組成物であった。
【0218】
また、得られたポリウレタンエラストマーは引張強度が顕著に高く、耐久性の指標となるヒステリシス損失も低いため、ポリテトラメチレングリコールを使用して得られたポリウレタンエラストマーが通常用いられる用途への展開が期待できるものであった。
【0219】
比較例5.
2官能のポリオール(A8)の代わりに、不飽和度が高い3官能のポリオール(A13)を用いた以外は実施例4と同様の手法によりポリウレタンエラストマー形成性組成物、ポリウレタンエラストマーを得た(プレポリマー法)。
【0220】
得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物は、18時間以上をNCO基の消費に要し、硬化する際の反応性(硬化性)が十分ではないものであった。
【0221】
また、得られたポリウレタンエラストマーは引張強度、耐久性の指標となるヒステリシス損失が十分ではなく、ポリテトラメチレングリコールを使用して得られたポリウレタンエラストマーが通常用いられる用途には適さないものであった。また、得られたポリウレタンエラストマーは伸び物性、透明性が良好なものではなかった。
【0222】
比較例6.
ポリオール(A10)の代わりに、ポリオール(A10)と同等の分子量(18400)で同等の不飽和度(0.008~0.009)である分子量分布が広いポリアルキレンオキシドであるポリオール(A11)を用いた以外は、実施例5と同様の手法によりポリウレタンエラストマー形成性組成物、ポリウレタンエラストマーを得た(プレポリマー法)。
【0223】
得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物は、粘度が顕著に高くハンドリングが困難なものであった。実施例5のポリオール(A10)を用いたポリウレタンエラストマー形成性組成物と比較しても、顕著に粘度が高いものであった。
【0224】
また、得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物は、18時間以上をNCO基の消費に要し、硬化する際の反応性(硬化性)が十分ではないものであった。
【0225】
さらに、得られたポリウレタンエラストマーは比較例1、2と比較して機械物性の向上は見られたが、引張強度、耐久性の指標となるヒステリシス損失が十分ではなく、ポリテトラメチレングリコールを使用して得られたポリウレタンエラストマーが通常用いられる用途には適さないものであった。また、得られたポリウレタンエラストマーは透明性が良好なものではなかった。
【0226】
2官能又は3官能のポリオールを用いて得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物の性状及び硬化性、並びにそれを用いて得られたポリウレタンエラストマーの物性の結果を表4に併せて示す。
【0227】
【表4】
【0228】
実施例6.
2官能のポリオール(A1)の代わりに、不飽和度が低く分子量分布が狭い2官能のポリオール(A9)及びポリオール(A12)を35:65の重量比で併用して用い、活性水素含有化合物として、固体の3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)を用い、ウレタン化触媒としてジブチルチンジラウレートを30ppmとなるように添加した以外は、実施例1と同様の手法により、ポリウレタンエラストマー形成性組成物、ポリウレタンエラストマーを得た(プレポリマー法)。
【0229】
活性水素含有化合物が固体であったが、活性水素含有化合物添加前のポリウレタンエラストマー形成性組成物のハンドリング性は良好であり、官能評価では活性水素含有化合物添加後も通常用いられる用途に使用できるハンドリング性と判断した。
【0230】
得られたポリウレタンエラストマーは引張強度が高く、ヒステリシス損失が実施例1~5の何れよりも低く、顕著に耐久性が良好なものであるため、ポリテトラメチレングリコールを使用して得られたポリウレタンエラストマーが通常用いられる用途への展開が期待できるものであった。
【0231】
実施例7~9.
表5に示すとおり、2官能ポリオールの種類とそれらの比率を変更した以外は、実施例6と同様の手法により、ポリウレタンエラストマー形成性組成物、ポリウレタンエラストマーを得た(プレポリマー法)。
【0232】
活性水素含有化合物が固体であったが、活性水素含有化合物添加前のポリウレタンエラストマー形成性組成物のハンドリング性は良好であり、官能評価では活性水素含有化合物添加後も通常用いられる用途に使用できるハンドリング性と判断した。
【0233】
得られたポリウレタンエラストマーは引張強度が顕著に高く、耐久性の指標となるヒステリシス損失も低いため、ポリテトラメチレングリコールを使用して得られたポリウレタンエラストマーが通常用いられる用途への展開が期待できるものであった。
【0234】
比較例7.
ポリオール(A10)の代わりに、不飽和度が高いポリアルキレンオキシドであるポリオール(A11)を用いた以外は、実施例9と同様の手法により、ポリウレタンエラストマー形成性組成物、ポリウレタンエラストマーを得た(プレポリマー法)。
【0235】
得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物は活性水素含有化合物の添加によらず粘度が顕著に高く、ハンドリング性に劣るものであった。
【0236】
また、得られたポリウレタンエラストマーは引張強度も耐久性の指標となるヒステリシス損失も十分ではなく、ポリテトラメチレングリコールを使用して得られたポリウレタンエラストマーが通常用いられる用途への展開が困難なものと判断した。
【0237】
2官能ポリオールを併用して得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物の組成、それを用いて得られたポリウレタンエラストマーの物性の結果を表5に示す。なお、実施例6~9、比較例7では触媒を用いているため硬化性の評価は実施しなかった。
【0238】
【表5】
【0239】
比較例8.
活性水素基としてアミノ基のみを有する3,3’-ジクロロ-4,4‘-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)の代わりに、活性水素基としてカルボキシル基のみを有する活性水素含有化合物であるジカルボン酸であるフタル酸を用いた以外は、実施例9と同様の手法によりポリウレタンエラストマー形成性組成物、ポリウレタンエラストマーの合成を検討した(プレポリマー法)。
【0240】
得られたポリウレタンエラストマー形成性組成物の反応は顕著に遅く硬化性が顕著に低いと判断でき、現実的な時間でポリウレタンエラストマーを合成することが困難であった。反応が完結しないため、硬化物の物性は発現しなかった。
【0241】
以上より、実施例で例示したポリウレタンエラストマーは引張強度、耐久性に優れるため、ポリウレタンエラストマーフィルムや種々の形状に成形した際に高い強度、耐久性を発現する成形物を得ることが期待できるものであった。