(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20221130BHJP
B24B 51/00 20060101ALI20221130BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20221130BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01L21/78 A
H01L21/78 F
B24B51/00
B23Q17/00 E
G05B19/18 X
(21)【出願番号】P 2018201700
(22)【出願日】2018-10-26
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小城 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 万平
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-031063(JP,A)
【文献】特開2012-049429(JP,A)
【文献】特開2009-135418(JP,A)
【文献】特開2013-074198(JP,A)
【文献】特開2018-078145(JP,A)
【文献】特開平11-194819(JP,A)
【文献】特開2005-107788(JP,A)
【文献】特開2008-311461(JP,A)
【文献】特開2014-075472(JP,A)
【文献】特開平11-307612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 51/00
B23Q 17/00
G05B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、該保持手段で保持された被加工物に加工を施す加工手段と、少なくとも該加工手段を制御する制御手段と、を備えた加工装置であって、
加工装置の稼働中にエラーが発生した場合に警告を発信する警告発信手段と、
該警告の発信を停止させる警告停止ボタンと該エラーの復旧処理を完了するための復旧処理完了ボタンとを含む入力手段と、を備え、
該制御手段は、該警告停止ボタンが押された後、所定時間が経過しても該復旧処理完了ボタンが押されない場合、該警告発信手段から追加警告として再度警告を発信させ、
該追加警告は、加工装置の稼働中にエラーが発生した場合に発信される該警告とは異なる、
加工装置。
【請求項2】
該制御手段は、
同一のエラーに対して警告を停止できる上限回数を記憶する上限回数記憶部と、
該警告発信手段が該警告を発信した後、該復旧処理完了ボタンが押されるまでの間に、該警告停止ボタンが押された回数をカウントする警告停止ボタン作動回数カウント部と、
該警告停止ボタン作動回数カウント部でカウントされた回数が、該上限回数記憶部で記憶された該上限回数に達した場合に、以降は該警告停止ボタンを押しても該警告の発信を停止させない警告停止キャンセル部と、を更に備えた、
請求項1に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持手段と、保持手段で保持された被加工物に加工を施す加工手段と、加工手段を制御する制御手段とを少なくとも備えた加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば切削装置で被加工物を加工する際、特許文献1に示すように、切削溝を撮像した撮像画像を基に、例えば、形成された溝幅の値やチッピングの大きさ、切削位置等の複数の項目が適正であるか否かを判断するいわゆるカーフチェックを実施している。
【0003】
カーフチェックの結果、複数のチェック項目のうちのいずれかが適正でない場合には、エラーの発生とみなして切削装置は警告を発信する。切削装置により警告が発信されると、オペレータは、警告を停止し、撮像画像や設定された溝幅等の許容値等を確認して、エラーの原因がブレードの破損や異常摩耗のためか、切削液の付着等によるエラーの誤検出のためか、許容値が狭く設定されすぎているためか等を判断して適宜対応する。そして、エラーに対する対応を完了させた後に、切削を再開させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、量産工場においては、数十台の加工装置を一人のオペレータが操作することがあり、一旦警告を停止させた後、他の装置の警告が次々に発信されると、オペレータはそちらの対応に追われてしまうことがある。その場合、警告が停止されただけでエラーに対
する対応がなされないまま、エラーが発生した加工装置が放置されてしまう。例えば、被加工物が表面にボンディングパッド等が形成された半導体ウェーハである場合に、上記のように、エラーが発生した加工装置が長時間放置されると、純水である切削液が長時間ウェーハの上に付着したままで加工が一時停止した状態で放置され、これにより、ボンディングパッドに腐食が生じデバイスが損傷してしまうおそれもある。本発明の目的は、エラーの発生により警告が発信された後、作業者による対応がなされずに加工装置が長時間放置されてしまうのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段で保持された被加工物に加工を施す加工手段と、少なくとも該加工手段を制御する制御手段と、を備えた加工装置であって、加工装置の稼働中にエラーが発生した場合に警告を発信する警告発信手段と、該警告の発信を停止させる警告停止ボタンと該エラーの復旧処理を完了するための復旧処理完了ボタンとを含む入力手段と、を備え、該制御手段は、該警告停止ボタンが押された後、所定時間が経過しても該復旧処理完了ボタンが押されない場合、該警告発信手段から追加警告として再度警告を発信させ、該追加警告は、加工装置の稼働中にエラーが発生した場合に発信される該警告とは異なる。
【0007】
該制御手段が、同一のエラーに対して警告を停止できる上限回数を記憶する上限回数記憶部と、該警告手段が該警告を発信した後、該復旧処理完了ボタンが押されるまでの間に、該警告停止ボタンが押された回数をカウントする警告停止ボタン作動回数カウント部と、該警告停止ボタン作動回数カウント部でカウントされた回数が、該上限回数記憶部で記憶された該上限回数に達した場合に、以降は該警告停止ボタンを押しても該警告の発信を停止させない警告停止キャンセル部と、を更に備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、警告停止ボタンが押された後、所定時間が経過しても復旧処理完了ボタンが押されない場合に、警告発信手段から追加警告として再度警告を発信させるため、警告が発信された後、作業者による対応がなされずに長時間放置されてしまうのを防止する効果がある。
また、追加警告を、加工装置の稼働中にエラーが発生した場合に発信される警告とは異なるものとすることにより、オペレータに対して追加警告であることを明確に伝えることができる。
さらに、制御手段が、同一のエラーに対して警告を停止できる上限回数を記憶する上限回数記憶部と、警告手段が警告を発信した後、復旧処理完了ボタンが押されるまでの間に、警告停止ボタンが押された回数をカウントする警告停止ボタン作動回数カウント部と、警告停止ボタン作動回数カウント部でカウントされた回数が、上限回数記憶部で記憶された上限回数に達した場合に、以降は警告停止ボタンを押しても警告の発信を停止させない警告停止キャンセル部とを更に備えていることにより、オペレータがエラーに対応せずに放置するのをより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】カーフチェック時の切削溝を撮像する様子を表す断面図である。
【
図5】タッチパネルの画面内の表示を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1 加工装置の構成
図1に示す被加工物Wは、例えば、表面Waの分割予定ラインLで区画された領域にデバイスDを備え、その上にボンディングパッドを有する半導体ウェーハである。しかし、被加工物Wは、ボンディングパッドを有した半導体ウェーハに限定されない。
【0011】
被加工物Wに対しては、様々な加工装置によって多様な加工がなされ得る。加工装置は、例えば、研削装置、レーザ加工装置、バイト切削装置、洗浄装置、エキスパンド装置等であるが、これらに限られるものでない。加工装置の一例としての
図2に示す加工装置1は、ブレードを切り込ませて半導体ウェーハ等の被加工物Wを切削加工するための装置である。半導体ウェーハの切削加工時、被加工物Wの裏面Wbには、ダイシングテープTが貼着される。ダイシングテープTが貼着されることにより、被加工物Wは切削加工後も、ダイシングテープTの上で固定される。被加工物Wは、ダイシングテープTを介して環状フレームFに支持される。
【0012】
加工装置1は、被加工物Wを保持する保持手段6を備える。保持手段6は、例えば、被加工物Wを保持するチャックテーブル60を備える。チャックテーブル60の四隅には、環状フレームFを支持するクランプ61が配設されている。チャックテーブル60の下方には、例えば、チャックテーブル60を回転させる図示しない回転手段や、チャックテーブル60をX軸方向に移動させる図示しない切削送り手段が配設されている。回転手段や切削送り手段は、カバー62及びそれに取り付けられた蛇腹カバー63によって覆われており、カバー62や蛇腹カバー63は、例えば、加工の際に使用される切削水が装置内部に入るのを防ぐ役割を果たす。チャックテーブル60がカバー62とともにX軸方向に移動すると蛇腹カバー63が伸縮する構成となっている。
【0013】
加工装置1は、被加工物Wを加工するための加工手段2を備える。
図2に示すように、加工手段2は、Y軸方向に整列して配設された第1切削ユニット20及び第2切削ユニット21を備える。第1切削ユニット20は第1切削ブレード200と、第1切削ブレード200を回転させる図示しないモータとを備え、同様に第2切削ユニット21は第2切削ブレード210と第2切削ブレード210を回転させる図示しないモータとを備える。
【0014】
加工手段2には、第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とをY軸方向に移動させる図示しない割り出し送り手段と、第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とをZ軸方向に昇降移動させる図示しない切込み送り手段とが接続されている。
図3に示すように、回転する第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とに向かって、チャックテーブル60を移動させ、被加工物Wの表面Waに第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とを切り込ませることで、被加工物Wに2本同時に切削溝を形成することができる。
【0015】
図2に示すように、加工装置1は、制御手段3を備える。制御手段3は、少なくとも加工手段2、切削送り手段、割り出し送り手段、切込み送り手段等を制御する。
【0016】
加工装置1は、撮像手段7を備える。撮像手段7は、顕微鏡70や照明手段等を備えており、例えば、切削加工の実施前に被加工物Wの表面Waに形成された分割予定ラインLを撮像し、被加工物Wとブレードとの位置合わせを行うために用いられるほか、被加工物の複数の分割予定ラインを切削加工する間に、切削加工によって被加工物Wに形成された切削溝を撮像し、撮像された画像を解析することで切削加工が適切に行われたかどうかを確認する、いわゆるカーフチェック等のためにも用いられる。
【0017】
撮像手段7には、例えば、図示しないアライメント手段が接続され、アライメント手段は、加工手段2と被加工物Wとの位置合わせにおいて用いられる。
【0018】
撮像手段7には、また、例えば、カーフチェックにおいて撮像された画像を解析するための図示しない画像解析手段が接続されており、
図4に示すように、切削加工によって被加工物Wに形成された切削溝を被加工物Wの上方(+Z側)から撮像手段7によって撮像し、その後、撮像された画像の解析を行い、形成された切削溝の溝幅等を測定する。尚、本実施形態においては、カーフチェック時に2枚の画像が撮像され、撮像された2枚の被加工物Wの撮像画像をもとにカーフチェックが行われることとなる。
【0019】
図2に示すように、加工装置1は、加工条件の入力やエラーに対する対応を行うための入力手段4を備える。
図5は、入力手段4がタッチパネル4Aである場合の画面表示の一例を示している。タッチパネル4Aは、エラーの警告の発信を停止する警告停止ボタン40や、エラーに対する対応後に装置を再稼働させる復旧処理完了ボタン41を備えている。
【0020】
タッチパネル4Aには、撮像された2枚の切削溝Wgの画像43a及び画像43bが表示される。画像43a及び画像43bは、それぞれ第1切削ブレード200及び第2切削ブレード210によって被加工物Wに形成された切削溝Wgを撮像したものである。画像43a及び画像43bを基に、上記の図示しない画像解析手段により、切削加工によって形成される溝幅(
図5におけるWidth)と、予定されていた分割予定ラインLから実際に切削された位置までのずれの量を表すカット位置ずれ(
図5におけるHair Line Offset)と、切削時に生じたチップの欠損の最大値であるチッピングサイズ(
図5におけるChipping Max)とが測定され、それらの測定結果が測定結果44a及び測定結果44bとして、画像43a中及び画像43b中の左上にそれぞれ表示される。タッチパネル4Aに記載されているZ1は、第1切削ブレード200による切削加工であることを識別する記号であり、同様に、Z2は第2切削ブレード210による切削加工であることを識別するものである。タッチパネル4Aの中央辺りには、予め設定された余裕幅の許容値と、溝幅の許容値と、カット位置ずれの許容値と、チッピングサイズの許容値とが設定許容値45a~45gとして表示されている。カーフチェックの際は、測定結果44a及び測定結果44bが予め設定された許容値45a~45gの範囲内にあるかどうかを基準として、その値の適否が判断される。
【0021】
エラー発生時にオペレータにエラーの発生を警告するためのエラー表示欄47が、タッチパネル4Aの上部に設けられている。このエラー表示欄47においては、エラーの内容を表す文字を点滅させる方式にてエラー表示を行ってもよい。例えば、同一の原因によるエラーを繰り返すとその度に表示される文字が大きくなっていくような仕組みを備えていてもよい。
【0022】
図1に示すように、加工装置1は、警告発信手段5を備える。警告発信手段5は、表示灯50とスピーカー51とを備える。表示灯50は、例えば、エラー発生時にオペレータにエラーの発生等を視覚的に通知・警告するために点灯・点滅等を行う。表示灯50は、多様な色の光を放つことができる構成が望ましい。スピーカー51は、同様にエラー発生時、エラーの発生を警告するために、例えば、図示しない音源等から電気信号等を受けて警告音を発信する。スピーカー51は、警告音として複数種類の音を発信することができ、発信された警告の回数等に応じて音の大きさ、高さ、音色等、音の要素を変化させることができればなおよい。
【0023】
警告発信手段5は、エラー発生時に発信された警告音をオペレータが停止するために、
図5に示した警告停止ボタン40を押した後、所定時間、例えば10分経過しても復旧処
理完了ボタン41が押されないと、追加警告として第1追加警告を発信する。かかる所定時間は、例えば制御手段3に備えるメモリ等の記憶素子に記憶させておく。そして、その記憶させた時間が経過すると、制御手段3による制御の下で警告発信手段5から第1追加警告を発信させる。この第1追加警告の警告音は、初めの警告音と同じ音であっても異なる音であってもよい。第1追加警告の発信後、再び警告停止ボタン40が押され、所定時間経過後なおも復旧処理完了ボタン41が押されない場合、第2追加警告が発信される。上記のように、警告停止から追加警告を行うというサイクルが、復旧処理完了ボタン41が押されるまで継続されるような構成をとり得る。
【0024】
このとき、ある警告発信から次の警告発信までの時間間隔は、上記のような所定時間をとる他、例えば、警告発信回数ごとに10分、8分、6分、・・・というように短くなっていってもよい。
【0025】
また、警告回数ごとに異なる警告音を発信する仕様に関して、例えば、警告音はすべての警告回数ごとに異なるようなものであってもよいし、一度目の警告音と第1追加警告の警告音とが同じで第2追加警告の警告音が異なるというようなものであってもよい。その場合、例えば、警告回数が増すほど危機感が増すように警告音や曲を設定するのが一層好ましい。このとき、制御手段3は、上記の警告発信手段5から追加警告として再度警告を発信させる役割を担う。
【0026】
加工装置1に備えられた制御手段3は、上限回数記憶部30と警告停止ボタン作動回数カウント部32と警告停止キャンセル部34とを備えている。上限回数記憶部30は、同一のエラーに対して警告を停止できる警告停止の上限回数を記憶することができる。警告停止ボタン作動回数カウント部32は、警告発信手段5が警告を発信した後、復旧処理完了ボタン41が押されるまでの間に、警告停止ボタン40が押された回数をカウントすることができる。警告停止キャンセル部34では、警告停止ボタン作動回数カウント部32でカウントされた回数が、上限回数記憶部30で記憶された上限回数に達した場合に、以降は警告停止ボタン40を押しても警告の発信を停止させないように制御することができる。
【0027】
上記のように、加工装置1に備えられた制御手段3に、上限回数記憶部30が備えられているため、例えば、上限回数記憶部30に記憶された警告音の上限回数の情報を警告発信手段5に伝達させることで、警告音の発信回数が上限回数に到達したときのみ異なる警告音を発信させることも可能となる。
【0028】
また、制御手段3に警告停止ボタン40の作動回数をカウントする警告停止ボタン作動回数カウント部32が備えられているため、例えば、警告発信手段5により警告を発信させながら、警告停止ボタン作動回数カウント部32でカウントされた警告停止ボタン40の作動回数の情報をタッチパネル4Aまで伝達させることで、該警告は該切削加工が始まってから数えて何度目のものなのかをタッチパネル4A上に表示することもできるようになる。
【0029】
エラー発生時、表示灯50による点滅等の表示と、スピーカー51から発信される警告音と、タッチパネル4A上部に表示される警告表示とが適宜組み合わされ、オペレータに警告を行う構成を採り得る。
【0030】
2 加工装置の動作
上記の構成の加工装置1を用いて、被加工物Wを切削加工する際の加工装置1の動作について記す。
【0031】
(位置合わせ)
例えば、半導体ウェーハである被加工物Wに、図示しないテープ貼着手段等により
図1に示すように裏面WbにダイシングテープTを貼着し、ダイシングテープTを介して環状フレームFに支持する。その後、同じく図示しない搬送手段等により、
図2に示した加工装置1のチャックテーブル60の上に載置する。チャックテーブル60の上に載置された被加工物Wを、チャックテーブル60の四方に配設された4つのクランプ61により、環状フレームFが把持することでチャックテーブル60の上に固定する。
【0032】
次いで、チャックテーブル60の上に保持された被加工物Wと、加工手段2との位置合わせを行う。位置合わせは、撮像手段7と、撮像手段7に接続されたアライメント手段とを用いて行われる。撮像手段7によって被加工物Wの上方(+Z側)から被加工物Wの分割予定ラインLを撮像し、撮像された画像の情報をもとに、撮像手段7に接続されたアライメント手段によってパターンマッチングを行う。アライメント手段がパターンマッチング等の画像処理を実行し、第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とを切り込ませるべき分割予定ラインLの座標位置が検出されるのに伴って、第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とが割り出し送り手段によってY軸方向に移動する。これによって、切削すべき分割予定ラインLと加工手段2との位置合わせが完了する。
【0033】
(切削加工)
その後、第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とを切込み送り手段によって-Z方向に下降させ、切削加工の開始位置に位置付ける。そして、
図3に示す切削加工の開始位置から、チャックテーブル60を切削送り手段によって+X方向に移動させ、第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とを被加工物Wの表面Waに形成された分割予定ラインLに切り込ませる。1つのラインの切削が完了した後、一度第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とを+Z方向に上昇させ被加工物Wから退避させる。その後、割り出し送り手段により第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とをY軸方向に移動させ、例えば、前に切り込んだラインの隣のラインに切り込むための位置に位置付ける。その後再び、同様に第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とを-Z方向に下降させ、切削加工の開始位置に位置付け、チャックテーブル60を+X方向に移動させて切削加工を行う。分割予定ラインLの間隔ずつ第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とをY軸方向に割り出し送りしながら同様の切削を行うことにより、同方向の分割予定ラインLが全て切削される。
【0034】
同方向の分割予定ラインLを全て切削した後、チャックテーブル60を90度回転させ、上記の一連の切削加工の工程を再度経ることで、全ての分割予定ラインLに沿って切削し、例えば、被加工物Wを極小の略直方体状のチップに分割する。このとき、第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とを被加工物Wの表面Waから裏面Wbに至るまで切り込ませて、個々のチップを完全に切断する切削加工の方法だけでなく、第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とを完全には切り込ませずに、所定の深さまで切り込ませることで所定の深さの切削溝Wgを形成し、その後に裏面Wbを薄化研削することによって個々のチップを製造する等の加工方法も考えられる。
【0035】
(カーフチェック)
例えば何本かの分割予定ラインLの切削加工毎に、被加工物Wの表面Waに形成された切削溝Wgを撮像手段7によって撮像し、撮像された画像を解析することで、適切に切削加工がなされたかどうかを確認する。
【0036】
第1切削ブレード200によって形成された切削溝Wg及び第2切削ブレード210によって形成された切削溝Wgのそれぞれ一か所が、撮像手段7によって撮像される。
図5に示したタッチパネル4Aには、第1切削ブレード200及び第2切削ブレード210に
よって形成された切削溝Wgの画像43a及び画像43bが表示される。前述のように、タッチパネル4Aの画面上では、第1切削ブレード200と第2切削ブレード210とを識別するための符号としてそれぞれZ1とZ2とが用いられている。
【0037】
撮像手段7による撮像の後、画像解析手段によって、例えば、形成された切削溝Wgの溝幅、カット位置ずれ、チッピングサイズを測定する。測定結果が画像43a中及び画像43b中の左上に44a及び44bとして表示される。
【0038】
(エラーの発生)
図5に示すように、第2切削ブレード210で形成された切削溝Wgのチッピングサイズに関して、測定結果44bをみれば、チッピングサイズ(Chipping Max)の値が0.012mmであるのに対し、その許容値はZ2のチッピングサイズの設定許容値45gをみれば、0.010mmであり、測定された結果が予め設定された許容値を超えている。従って、エラーの発生をオペレータに通知しエラーに対する対応を促すために、警告発信手段5による警告や、タッチパネル4Aのエラー表示欄47へのエラーの表示が行われる。以下に、切削加工に関するエラーが発生し、そのエラー発生の警告が発信される場合の加工装置1の動作について詳述する。
【0039】
(警告の発信)
例えば、エラーの発生を受けて、警告発信手段5に備えられた表示灯50が点灯・点滅する。また、同じく警告発信手段5に備えられたスピーカー51が音源から電気信号を受けて警告音(例えば、ピヨ、ピヨ、ピヨ・・・)を発信する。さらに、タッチパネル4Aのエラー表示欄47にエラーの内容が表示される。例えば、発信された該警告に気づいたオペレータがタッチパネル4Aの右上の警告停止ボタン40を押すと、例えば、点灯されていた表示灯50の灯りが消灯し、または、スピーカー51からの警告の発信が停止し、そしてタッチパネル4Aのエラー表示欄47の表示が消える。
【0040】
今回の切削加工において発生したエラーの原因として、例えば、被加工物Wの表面Waに引き起こされたハレーション等によりチッピングサイズが実際のサイズよりも大きく検出されてしまう等が挙げられる。このようなエラーの場合の対応としては、例えば、Z2のおけるチッピングサイズの許容値45gの変更等を行えばよい。
【0041】
(第1追加警告の発信)
しかし、オペレータが加工装置1に発生している上記のようなエラーに対する対応を行わず、警告停止ボタン40が押されてから例えば所定時間の10分が経過したとする。すると、表示灯50が再び点灯・点滅する。このとき点灯・点滅する灯りの色や点灯パターンは最初の警告の際と同一でもよいし、異なっていてもよい。また、警告発信手段5に備えるスピーカー51から第1追加警告の警告音(例えば、ピヨヨ、ピヨヨ、ピヨヨ・・・)が発信される。第1追加警告の警告音は、最初の警告音と同じであっても異なっていてもよい。さらに、タッチパネル4Aのエラー表示欄47にエラーの内容が再び表示される。このとき、例えば、該第1追加警告におけるエラー表示欄47におけるエラー表示を、例えば最初の警告時に表示された表示よりも大きな文字を用いたものにすると、最初の警告時の表示より強調されてなおよい。その後、例えば、発信された該第1追加警告に気づいたオペレータが同様にタッチパネル4Aの右上の警告停止ボタン40を押すと、同様に、表示灯50は消灯し、第1追加警告の発信が停止し、そしてエラー表示欄47におけるエラー表示が消える。
【0042】
(第2追加警告の発信)
そして、上記同様に再度、オペレータが加工装置1のエラー対応を行わず、警告停止ボタン40が押されてから所定時間が経過したとする。すると、同様に第2追加警告が発信
される。第2追加警告の警告音(例えば、ピーッ、ピーッ、ピーッ、・・・)は、第1追加警告の警告音や、最初の警告音と同じでも異なっていてもよい。例えば、警告の回数が増すにつれて、警告音の音量が大きくなり、危機感を与えるような音色・曲調になる等、警告回数ごとに警告音の音量、音程、音色その他を変化させてもよい。
【0043】
(復旧処理完了まで警告停止しない)
予め、警告を停止させることができる上限回数を上限回数記憶部30に記憶させておく。そして、警告発信手段5により警告が発信された後から、復旧処理完了ボタン41が押されるまでの間に、警告停止ボタン作動回数カウント部32でカウントされた警告回数が、上限回数記憶部30で記憶させた上限回数に達した場合において、その後追加の警告が発信されたときは、警告停止ボタン40を作動させても、警告停止キャンセル部34の効果により、警告が停止されない。
【0044】
例えば、予め定めた上限回数を3回とする。第2追加警告が最初の警告から数えて合計3回目の警告となるため、警告停止ボタン40によって第2追加警告の発信を停止させた後、第3追加警告が発信された場合、警告停止ボタン40を押しても警告が停止しない。
【0045】
例えば、上限回数記憶部30に記憶された警告音の上限回数の情報を警告発信手段5に伝達させることで、警告発信手段5は、警告音の発信回数が上限回数に到達したときのみ異なる警告音を発信する。
【0046】
例えば、警告停止ボタン作動回数カウント部32とタッチパネル4Aとを連動させて、タッチパネル4Aの上方のエラー表示欄47に該警告が何度目のものかを表示する。
【0047】
加工装置1がこのような制御を行うことで、オペレータに対してエラーの発生を断続的に警告し、発生したエラーへの対応を促すことができるため、エラー発生時に加工装置1が長時間放置される事態を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0048】
1:加工装置 2:加工手段
20:第1切削ユニット 200:第1切削ブレード
21:第2切削ユニット 210:第2切削ブレード
Z1:タッチパネル上における第1切削ブレードの表示
Z2:タッチパネル上における第2切削ブレードの表示
3:制御手段 4:入力手段 4A:タッチパネル
40:警告停止ボタン 41:復旧処理完了ボタン(実行ボタン)
43a:第1切削ブレードによって形成された切削溝の画像
43b:第2切削ブレードによって形成された切削溝の画像
44a:測定結果 44b:測定結果
45a~45g:設定許容値 47:エラー表示
5:警告発信手段 50:表示灯 51:スピーカー
6:保持手段 60:チャックテーブル 61:クランプ 62:カバー
63:蛇腹カバー 7:撮像手段 70:顕微鏡
W:被加工物 Wa:表面 Wb:裏面 Wg:切削溝
D:デバイス L:分割予定ライン T:ダイシングテープ F:環状フレーム