(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】仕切弁
(51)【国際特許分類】
F16K 27/12 20060101AFI20221130BHJP
F16K 51/02 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
F16K27/12
F16K51/02 A
(21)【出願番号】P 2019018961
(22)【出願日】2019-02-05
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(73)【特許権者】
【識別番号】000101710
【氏名又は名称】アルバック成膜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康正
(72)【発明者】
【氏名】前川 幸介
(72)【発明者】
【氏名】河西 新
(72)【発明者】
【氏名】中畦 修
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168878(WO,A1)
【文献】特開2000-337553(JP,A)
【文献】特開平07-293744(JP,A)
【文献】特開2005-076845(JP,A)
【文献】特開2010-161169(JP,A)
【文献】特開2018-098377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
39/00-51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を真空処理する内部空間を備えた真空槽どうしを接続する位置に配され、接続する真空槽の内部空間どうしを連通させる開口部に対して、弁板を押し付けて該開口部を塞ぐ仕切弁であって、
前記開口部に対する前記弁板の開閉動作に伴い擦れる状態が発生する部位を内在し、該部位を取り囲むように筐体を配置し
、
前記仕切弁は、前記開口部の周縁域に当設させる一面を有する弁板部と、前記弁板部の他面に接して配される一面を有するクレビス部と、前記クレビス部を介して前記弁板部の他面を支持して該弁板部を移動可能とするアーム部と、前記開口部の周縁域に対して前記弁板の開状態と閉状態を制御するために、前記アーム部を回転動作させるシャフト部と、を含み、
前記開閉動作に伴って擦れる状態が発生する部位が、
前記クレビス部の他面に配され該クレビス部の一部である突起部を前記アーム部の穴部に嵌め合わせた状態において、該クレビス部と該アーム部を連結するためのピン部が前記アーム部の穴部と接触する箇所である
ことを特徴とする仕切弁。
【請求項2】
前記筐体はその一部が弁板部に固定され、かつ、前記ピン部の周囲を取り囲む状態で、該筐体と前記アーム部の間には隙間を設け、前記開閉動作が行われることを特徴とする請求項
1に記載の仕切弁。
【請求項3】
前記筐体の内側にあって、該筐体と前記アーム部との隙間の近傍に磁石を配したことを特徴とする請求項
1又は
2に記載の仕切弁。
【請求項4】
前記筐体は、前記磁石の吸着力で前記弁板部に固定する構造であることを特徴とする請求項
3に記載の仕切弁。
【請求項5】
前記筐体は、前記磁石の吸着力で固定した際に、位置ずれを防止するための位置決めピンを備える
ことを特徴とする請求項
4に記載の仕切弁。
【請求項6】
前記筐体は、内部から外部へ向けて通気可能とするフィルターを備えることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の仕切弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空槽(チャンバ)間の雰囲気分離のために使用される仕切弁に係る。より詳細には、仕切弁の内部構造に起因して発生した塵埃が飛散し、真空槽の内部空間へ誘導され、被処理体へ影響が及ぶのを、抑制可能な仕切弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の真空槽を連結してなる真空処理装置であって、各真空槽の内部空間を真空雰囲気(減圧雰囲気)とし、各真空槽の内部空間において各種プロセス(成膜やエッチング等)を行うことが可能な真空処理装置が公知である(特許文献1)。
【0003】
このような真空処理装置では、各真空槽の内部空間どうしを連通するために、真空槽を連結する部位に開口部が設けられ、この開口部を通じて被処理体である基板がチャンバ間を移動可能とされている。
【0004】
基板が開口部を通過して、一方の真空槽から他方の真空槽へ移動した後、開口部を仕切弁で閉じることにより、真空槽間の雰囲気を分離する。これにより、各々の真空槽において、個別のプロセス(たとえば、成膜処理やエッチング処理、加熱処理など)を実行することができる。
【0005】
ところが、仕切弁の内部構造に起因して塵埃が発生した場合、この塵埃が飛散して、真空槽の内部空間へ誘導され、真空槽間を移動中の基板に塵埃が付着するという課題があった。このような塵埃の付着は、その後に行われる各種プロセス(成膜やエッチング等)に悪影響を及ぼすことから、上記課題が解消される仕切弁の開発が期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、仕切弁の内部構造に起因して発生した塵埃が飛散し、真空槽の内部空間へ誘導され、被処理体(基板)へ影響が及ぶのを、抑制可能な仕切弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の仕切弁は、被処理体を真空処理する内部空間を備えた真空槽どうしを接続する位置に配され、接続する真空槽の内部空間どうしを連通させる開口部に対して、弁板を押し付けて該開口部を塞ぐ仕切弁であって、前記開口部に対する前記弁板の開閉動作に伴って擦れる状態が発生する部位を内在し、該部位を取り囲むように筐体(カバー)を配置し、前記開口部の周縁域に当設させる一面を有する弁板部と、前記弁板部の他面に接して配される一面を有するクレビス部と、前記クレビス部を介して前記弁板部の他面を支持して該弁板部を移動可能とするアーム部と、前記開口部の周縁域に対して前記弁板の開状態と閉状態を制御するために、前記アーム部を回転動作させるシャフト部と、を含み、前記開閉動作に伴って擦れる状態が発生する部位が、前記クレビス部の他面に配され該クレビス部の一部である突起部(クレビス挿入体)を前記アーム部の穴部に嵌め合わせた(挿入した)状態において、該クレビス部と該アーム部を連結するためのピン部が前記アーム部の穴部と接触する箇所であることを特徴とする。
【0010】
本発明の仕切弁は、前記筐体の一部が弁板部に固定され、かつ、前記ピン部の周囲を取り囲む状態で、該筐体と前記アーム部の間には隙間を設け、前記開閉動作が行われることが好ましい。
【0011】
本発明の仕切弁は、前記筐体の内側にあって、該筐体と前記アーム部との隙間の近傍に(複数の)磁石を配することが好ましい。
【0012】
本発明の仕切弁は、前記筐体が、前記磁石の吸着力で前記弁板部に固定する構造であることが好ましい。
【0013】
本発明の仕切弁は、前記筐体が、前記磁石の吸着力で固定した際に、位置ずれを防止するための位置決めピンを備えることが好ましい。
【0014】
本発明の仕切弁は、前記筐体が、内部から外部へ向けて通気可能とするフィルターを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、真空槽どうしを接続する位置に配され、接続する真空槽の内部空間どうしを連通させる開口部に対して、弁板を押し付けて該開口部を塞ぐ仕切弁である。この仕切弁は、前記開口部に対する前記弁板の開閉動作に伴って擦れる状態が発生する部位を内在している。本発明の仕切弁では、開閉動作に伴って擦れる状態が発生する部位を取り囲むように筐体(カバー)を配置した。
この構成によれば、仕切弁の内部構造(擦れる状態が発生する部位)に起因して発生した塵埃が飛散しても、筐体(カバー)が存在するため、真空槽の内部空間へ向けて、その塵埃が一気に拡散することはない。
よって、本発明は、仕切弁の内部構造(擦れる状態が発生する部位)から真空槽の内部空間へ進行する塵埃の総量を大幅に低減できることから、真空槽の内部空間へ誘導され、被処理体(基板)へ影響が及ぶのを、抑制可能な仕切弁の提供に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る仕切弁が搭載された真空処理装置の一例を示す断面図。
【
図2】
図1において被処理体(基板)の進行方向から見た仕切弁の平面図。
【
図3A】
図1において開状態にある仕切弁の断面図。
【
図3B】
図3Aの開状態から閉状態へ移行中の仕切弁の断面図。
【
図3C】
図3Aの開状態から閉状態へ移行した仕切弁の断面図。
【
図5】筐体(カバー)を設けた仕切弁を示す斜視図。
【
図6】
図5の仕切弁において筐体の内部を示す透過斜視図。
【
図7】筐体を磁石で固定する構造を有する仕切弁を示す斜視図。
【
図8】筐体内に集塵用マグネットを設けた仕切弁の内部を示す透過斜視図。
【
図9】筐体に位置合わせ用のピンを設けた仕切弁を示す斜視図。
【
図10】筐体内に集塵用マグネットを設けた仕切弁の他の一例を示す透過斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る仕切弁の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の仕切弁が搭載された真空処理装置の一例を示す断面図であり、真空処理装置を構成する真空槽(チャンバ)と仕切弁との関係を説明する図である。
図1の真空処理装置10は、5つの真空槽C1~C5が順に接続されており、隣接する真空槽(たとえば、真空槽C2と真空槽C3)の内部空間は、隣接する真空槽を隔てる側壁W23に設けられた開口部A23により連通するように構成されている。
【0018】
開口部A23を通して、被処理体(基板)Sは、不図示の移動手段により、真空槽C2の内部空間から真空槽C3の内部空間へ移動可能とされている(
図1において、点線矢印SVは基板Sの移動方向を表す)。開口部A23の開閉状態を作り出す手段が、本発明の仕切弁50である。
【0019】
換言すると、仕切弁50は、被処理体Sを真空処理する内部空間を備えた真空槽(たとえば、真空槽C2と真空槽C3)どうしを接続する位置(たとえば、隣接する真空槽を隔てる側壁W23)に配される。仕切弁50は、接続する真空槽の内部空間どうしを連通させる開口部A23のシール面に対して、弁板51を押し付けて開口部A23を塞ぐ。
【0020】
仕切弁50は、前記開口部A12の周縁域(シール部)に当設させる一面を有する弁板部51と、弁板部51の他面に接して配される一面を有するクレビス部52と、クレビス部52を介して弁板部51の他面を支持して該弁板部51を移動可能とするアーム部53と、前記開口部A12の周縁域(シール部)に対して前記弁板部51の開状態と閉状態を制御するために、前記アーム部53を回転動作させるシャフト部55と、を含んでいる。
【0021】
図2は、
図1において被処理体(基板)の進行方向(x軸方向、左側から右側へ向かう点線矢印の方向)から見た仕切弁の平面図である。
仕切弁50は、
図2に示すように、開口部A23に対する弁板51の「開閉動作に伴って擦れる状態が発生する部位」を内在している。
【0022】
クレビス部52は、その本体52Aの他面(
図2では手前の面)に配され該クレビス部52の一部である突起部(クレビス挿入体)52Bを、前記アーム部53の本体53Aの穴部53Wに嵌め合わせた(挿入した)状態にある。この状態において、該クレビス部52と該アーム部53を連結するためのピン部54が前記アーム部53の穴部53Wと接触する箇所が、上述した「開閉動作に伴って擦れる状態が発生する部位」である。
アーム部53の付根部53Cは、シャフト部55に接続されている。シャフト部55は、シャフト部55の長手方向を、矢印CL方向あるいは矢印OP方向へ回転移動させる回転手段Mに接続されている。
【0023】
以上の構成により、回転手段Mを用いてシャフト部55をCL方向へ回転させることにより、開口部A23の周縁域(シール部)に対して弁板部51を閉状態とすることができる。逆に、回転手段Mを用いてシャフト部55をCL方向へ回転させることにより、開口部A12の周縁域(シール部)に対して弁板部51を閉状態とすることができる。
【0024】
本発明の仕切弁50は、開口部A23に対する弁板51の「開閉動作に伴って擦れる状態が発生する部位」を内在し、後述するように、該部位を取り囲むように筐体(カバー)を配置したことを特徴とする(
図5参照)。
【0025】
図3A~
図3Cは、本発明の仕切弁50の開閉動作を説明する図であり、
図2に示した線分x-xの位置における断面図である。
図3Aは
図1において開状態にある仕切弁の断面図である。
図3Bは
図3Aの開状態から閉状態へ移行中の仕切弁の断面図である。
図3Cは
図3Aの開状態から閉状態へ移行した仕切弁の断面図である。
【0026】
図3Aに示すように、開状態にある仕切弁50は、矢印OPの方向に傾斜した位置にある。仕切弁50がこの位置に退避することにより、左側から右側へ直進する被処理体Sは、左方の真空槽C2の内部空間において傾斜した位置にある仕切弁50の上空を進行することができる。次いで、被処理体Sは、隣接する真空槽C2、C3を隔てる側壁W23に設けられた開口部A23を通過する。これにより、左方の真空槽C2の内部空間から右方の真空槽C3の内部空間へ被処理体Sは移動することができる。
図3Aにおいて点線矢印SVは、被処理体Sの移動方向を表す。
仕切弁50が開状態にある場合は、側壁W23における開口部A12の周縁域(シール部)W23Sは露呈した状態にある。
【0027】
図3Bに示すように、左方の真空槽C2の内部空間から右方の真空槽C3の内部空間へ被処理体(基板)Sが移動した後、仕切弁50は開状態から閉状態へ移行するために、矢印CLの方向に移動する。
図3Bに示した仕切弁50は、隣接する真空槽C2、C3を隔てる側壁W23に向けて、矢印CLの方向に移動中にある。仕切弁50の移動は、シャフト部55の長手方向を、矢印CL方向あるいは矢印OP方向へ、回転手段Mを用いて回転移動させることにより行われる。この際、シャフト部55に接続されたアーム部53、ピン部54によってアーム部53と連結されたクレビス部52、および、クレビス部52と面接触した状態にある他面を備える弁板部51は、シャフト部55の回転移動に伴い同様に移動する。すなわち、弁板部51の一面は、側壁W23における開口部A12の周縁域(シール部)W23Sへ向けて移動する。
【0028】
上述した
図3Aおよび
図3Bの状態では未だ、「クレビス部52とアーム部53を連結するためのピン部54がアーム部53の穴部53Wと接触する箇所」が、本発明の課題である「開閉動作に伴って擦れる状態が発生する部位」として顕在化していない。
図3Cは
図3Aの開状態から閉状態へ移行した仕切弁の断面図である。上述した顕在化は、
図3Cに示す状態において発生する。すなわち、
図3Cに示す状態は、
図3Bの状態からアーム部53をさらに矢印CLの方向に移動することにより得られる。特に、弁板部51の一面が、側壁W23における開口部A12の周縁域(シール部)W23Sへ向けて移動し、押し付けられた状態となるタイミングで、「開閉動作に伴って擦れる状態が発生する部位」において塵埃が発生する。
【0029】
以下では、塵埃が発生する状況について、より詳細に説明する。
仕切弁50は、
図3Cに示すとおり、隣接する真空槽C2、C3を隔てる側壁W23の開口部A23の周縁域(シール部)に対して弁板部51を閉状態とする。このように、仕切弁50の弁板部51で開口部A23を塞ぐことにより、隣接する真空槽C2と真空槽C3との間の雰囲気を分離する。
【0030】
この際に、弁板部51はアーム部53を介してシャフト部55に固定され、シャフト部55の回転に合わせて開閉する。また、弁板部51はピン部54を中心に回転方向に動作可能となっている。これにより、隣接する真空槽C2、C3を隔てる側壁W23に向けて弁板部51を移動させ、側壁W23の開口部A23の周縁域(シール部)に対して弁板部51を密着させることができる。すなわち、安定した閉状態を構築する。
【0031】
ピン部54を中心に弁板部51とクレビス部52が回転移動するため、ピン部の軸部とクレビスの穴部が擦れて塵埃が発生する。この現象は、隣接する真空槽C2、C3を隔てる側壁W23の開口部A23の周縁域(シール部)W23Sに対して弁板部51を閉状態とする際に、弁板部51のうち移動半径の小さい部位が先に、
図3Cにおいて下方に位置する周縁域(シール部)W23Sに接触するのに対して、弁板部51のうち移動半径の大きい部位が後に、
図3Cにおいて上方に位置する周縁域(シール部)W23Sに接触する、という動作に起因して生じる。
【0032】
上述した動作により発生した塵埃が、真空槽C3へ移動した被処理体(基板)Sの上に載り(付着し)、製品不良が発生する虞があった。従来は、この課題を回避するため、ピン部の近傍に発生し付着した塵埃は、真空槽内をメンテナンスする毎に分解、清掃を行う必要があった。
【0033】
図4は
図3Cに示した仕切弁の斜視図である。
図4に示すように、仕切弁50は、弁板部51と、弁板部51に接して配されるクレビス部52(52A,52B)と、クレビス部52を介して弁板部51を支持して弁板部51を移動可能とするアーム部53と、
図4には不図示の前記開口部A23の周縁域(シール部)に対して弁板部51の開状態と閉状態を制御するために、アーム部53を回転動作させるシャフト部55とを含んで構成されている。
【0034】
この構成において、クレビス部52は、2本のピン(52P1、52P2)により弁板部51に固定されている。アーム部53の本体53Aは、2本のピン(53P1、53P2)によりクレビス部52の本体52Aに固定されている。
【0035】
また、この構成において、クレビス部52は、その本体52Aの他面(
図4では手前の面)に配されクレビス部52の一部である突起部(クレビス挿入体)52Bを、アーム部53の本体53Aの穴部53Wに嵌め合わせた(挿入した)状態にある。
【0036】
この状態において、該クレビス部52と該アーム部53を連結するためのピン部54が前記アーム部53の穴部53Wと接触する箇所が、上述した「開閉動作に伴って擦れる状態が発生する部位」である。
【0037】
アーム部53の本体53Aは、付根部53Cを介して周胴部53Dと一体化されており、周胴部53Dは、シャフト部55に接続されている。シャフト部55は、前述したとおり、シャフト部55の長手方向を、
図2に示すように、矢印CL方向あるいは矢印OP方向へ回転移動させる回転手段Mに接続されている。
【0038】
図5は、筐体(カバー)を設けた仕切弁を示す斜視図である。
本発明の仕切弁50では、
図5に示すように、上述した「開閉動作に伴って擦れる状態が発生する部位」を内在し、該部位を取り囲むように筐体(カバー)Kを配置した。この筐体Kは、たとえば、
図5に示すように、複数のボルトBによって弁板部51に固定される構成が用いられる。この際は、筐体Kをなす金具と弁板部51を共締めする形で弁板部51の側に筐体Kを固定した。
ただし、上述したボルトBによる固定方法は、メンテナンスの際に取り外しを容易にするため、磁石(マグネット)による吸着や、クランプによる固定へ置き換えた方がより好ましい。
【0039】
この構成を備えることにより、仕切弁の内部構造(擦れる状態が発生する部位)に起因して発生した塵埃が飛散しても、筐体(カバー)が存在するため、真空槽の内部空間へ向けて、その塵埃が一気に拡散することはない。
【0040】
ゆえに、本発明は、仕切弁の内部構造(擦れる状態が発生する部位)から真空槽の内部空間へ進行する塵埃の総量を大幅に低減できるので、真空槽の内部空間へ誘導され、被処理体(基板)へ及ぶ影響の度合いを、抑制することが可能な仕切弁をもたらす。
【0041】
また、筐体Kを配置する構成においては、
図5に示すように、必要に応じて、たとえば、筐体Kの側面KSWにフィルターFを設置しても構わない。これにより、筐体Kの内部から真空槽の内部空間へ向けて、その塵埃が一気に拡散する度合いを低減できるので、より好ましい。
【0042】
図5は、
図4に示した筐体(カバー)を設けた仕切弁を示す斜視図である。
図6は、
図5の仕切弁において筐体の内部を示す透過斜視図である。
図5に示すように、筐体Kの側面KSWにフィルターFを設置する場合は、仕切弁の内部構造(擦れる状態が発生する部位)から真空槽の内部空間へ進行する塵埃を濾し取るために、フィルターFは外向きに配置する。
【0043】
しかしながら、
図6に示すように、弁板部51はピン部54を中心に回転動作が可能となっているので、金具と筐体Kの隙間N1を0(ゼロ)にすると、両者が接触することになる。ゆえに、この隙間N1を埋めることは困難である。そこで、本発明者らでは、以下に示す対策を採用した。ただし、この隙間N1の存在は、筐体Kの内部と外部(真空槽の内部空間)と間で差圧が発生するのを防ぐ役目がある。
【0044】
図7は、筐体を磁石で固定する構造を有する仕切弁を示す斜視図である。
図7に示す仕切弁では、筐体Kの側面KSWにフィルターFを設置せず、筐体Kは仕切弁の内部構造(擦れる状態が発生する部位)から真空槽の内部空間へ進行する塵埃を、基本的に密閉する構造とした。この際、筐体Kの位置ずれを回避するため、たとえば、位置決めピンPを2ヶ所に設けた。また、位置決めピンPと重なる位置に磁石KNGを配置することにより、筐体Kが磁石KNGの吸着力により固定する構造とした。これにより、筐体Kの位置ずれが回避されると共に、メンテナンス時における筐体Kの着脱作業が容易となる。
【0045】
図8は、筐体内に集塵用マグネットを設けた仕切弁の内部を示す透過斜視図である。
図8にも示すように、弁板部51はピン部54を中心に回転動作が可能となっているので、金具と筐体Kの隙間N1を0(ゼロ)にすると、両者が接触することになる。この隙間N1を埋めることは困難である。
そこで、本発明者らは、この問題を解消するために、
図8に示すように、隙間N1の近傍に集塵用の磁石(マグネット)を内包するケースDMを配置する構成を採用した。これにより、筐体Kの内部において、仕切弁の内部構造(擦れる状態が発生する部位)から真空槽の内部空間へ進行する塵埃は、集塵用の磁石(マグネット)を内包するケースDMの表面に吸着される。ゆえに、真空槽の内部空間へ進行する塵埃の量をさらに抑制することが可能となる。
【0046】
図9は、筐体に位置合わせ用のピンを設けた仕切弁を示す斜視図である。
図9の仕切弁では、
図7に示した、筐体Kの位置ずれを回避するために2ヶ所に設けた位置決めピンPの間に、位置合わせ用のピンP1を設ける構造とした。また、筐体Kの反対側にも同様に、位置合わせ用のピンP2を設けた。これにより、筐体Kを設置する際に、位置合わせが容易となり、メンテナンス時の作業短縮をもたらす。
【0047】
図10は、筐体内に集塵用マグネットを設けた仕切弁の他の一例を示す透過斜視図である。
図10の仕切弁では、
図8の構成例に比べて、隙間N1の近傍に集塵用の磁石(マグネット)を内包するケースDM(DM1、DM2、DM3)の数を増やし、隙間N1の近傍を取り囲むように配置する構成を採用した。
これにより、筐体Kの内部において、仕切弁の内部構造(擦れる状態が発生する部位)から真空槽の内部空間へ進行する塵埃が、集塵用の磁石(マグネット)を内包するケースDM(DM1、DM2、DM3)の表面に吸着される可能性が高まる。ゆえに、真空槽の内部空間へ進行する塵埃の量を、
図8の構成例に比べて、一段と抑制することが可能となるので、より好ましい。
【0048】
図11は、本発明に係る仕切弁の効果(欠陥数)を示すグラフである。
図11のグラフにおいて横軸の「カバー無し」とは、
図4に示した仕切弁の構成例(筐体なし)による評価結果である。
図11のグラフにおいて横軸の「カバー有り」とは、
図10に示した仕切弁の構成例(筐体あり、集塵マグネットあり)による評価結果である。
図11のグラフにおいて縦軸は、被処理体として152cm角のガラス基板を用い、真空雰囲気(圧力0.2Pa)とした3つの真空槽(C2→C3→C4)の内部空間を、基板搬送した際に、ガラス基板の主表面に付着した微小欠陥(凹欠陥、凸欠陥)の欠陥数(塵埃数)を評価した結果である。この評価には、欠陥検査装置(レーザーテック社製:MAGICS6640)を用いた。なお、「カバー無し」と「カバー有り」の各評価結果は、おのおの8枚のガラス基板を搬送して計測した結果の平均値である。
【0049】
以下に示す表1は、欠陥検査装置を用いた評価結果であり、「欠陥サイズ[μm]」と「Total」の2項目を表している。
表1において、たとえば、「0.05-0.15」とは、欠陥サイズが0.05より大きく、かつ、0.15μm以下に含まれる欠陥の数である。「2.0up」とは、欠陥サイズが2.0μmより大きな欠陥の数である。
表1における「Total」欄の数字は、カバー無の場合におけるTotal欠陥数を1として表記したものである。
【0050】
【0051】
図11は、表1の欠陥数をグラフ化したものである。
図11および表1より、以下の点が明らかとなった。
(1)本発明の仕切弁(カバー有)は、従来の仕切弁(カバー無)に比べて、欠陥サイズが0.15μmより大きく、かつ、0.30μm以下の欠陥数が減少する(0.46→0.35)。
(2)本発明の仕切弁(カバー有)では、従来の仕切弁(カバー無)に比べて、欠陥サイズが0.05μmより大きく、かつ、0.15μm以下の欠陥数が激減する(0.46→0.15)。
(3)本発明の仕切弁(カバー有)では、従来の仕切弁(カバー無)に比べて、欠陥サイズが2.0μmより大きな欠陥数も激減し皆無となった(0.04→0.00)。
(4)本発明の仕切弁(カバー有)では、従来の仕切弁(カバー無)に比べて、「Total」の数字がほぼ半減する(1→0.54)。
以上の評価結果より、本発明の仕切弁は、仕切弁の内部構造(擦れる状態が発生する部位)から真空槽の内部空間へ進行する塵埃の総量を大幅に低減できる。ゆえに、本発明は、真空槽の内部空間へ誘導され、被処理体(基板)へ影響が及ぶのを抑制可能な仕切弁をもたらすことが確認された。
【0052】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、真空槽どうしの間に設置される仕切弁に広く適用可能である。このような仕切弁は、たとえば、基板上への欠陥の付着がデバイス製造に与える影響が大きな分野、すなわち、マスクブランクスやフォトマスクの製造分野、液晶や有機ELなどのパネルの製造分野、各種半導体デバイスの製造分野などにおいて好適に用いられる。
【符号の説明】
【0054】
A12、A23、A34、A45 開口部、
C1、C2、C3、C4、C5 真空槽、
CL、OP 回転方向、
M 回転手段、
S 被処理体(基板)、
W12、W23、W34、W45 側壁、
W23S 開口部の周縁域(シール部)、
10 真空処理装置、
50 仕切弁、
51 弁板部、
52 クレビス部、
53 アーム部、
54 ピン部、
55 シャフト部。