(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】スピンナ洗浄装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221130BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01L21/304 651B
H01L21/304 651L
H01L21/304 622Q
B24B55/06
(21)【出願番号】P 2019023352
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 信
(72)【発明者】
【氏名】大波 豪
(72)【発明者】
【氏名】中塚 敦
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222016(JP,A)
【文献】特開2001-156032(JP,A)
【文献】国際公開第2007/132609(WO,A1)
【文献】特開2015-88734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を保持する保持面を有するスピンナテーブルと、該スピンナテーブルを回転させる回転手段と、該スピンナテーブルに保持される被洗浄物に洗浄水とエアとの混合液を噴射する洗浄ノズルと、該洗浄ノズルを該スピンナテーブルの上方において水平移動させる水平移動手段と、該洗浄ノズルから被洗浄物に噴射した混合液に該スピンナテーブルが回転したことによる遠心力が付与され該スピンナテーブルから放射状に飛び散る混合液を下方に流していくために該スピンナテーブルを囲繞する飛散防止カバーと、該飛散防止カバーを該スピンナテーブルを回転させる回転軸の軸方向に昇降させる昇降手段と、を備えたスピンナ洗浄装置であって、
該飛散防止カバーは、該スピンナテーブルを通過可能とする開口と、該開口から断面が末広がり状に傾斜するように形成されたリング状の囲繞板と、該囲繞板を囲み該スピンナテーブルの昇降方向に延在する側板と、該側板と該囲繞板の下端とを連接する上板と、を備え、
該開口を該スピンナテーブルに保持された被洗浄物の上面より上に位置づけ、該洗浄ノズルから該混合液を噴射して被洗浄物を洗浄後、該洗浄ノズルからエアを噴出させ被洗浄物を乾燥させる一連の洗浄乾燥動作において、
該洗浄後、該洗浄ノズルからエアを噴射させ被洗浄物の外周縁を乾燥させる際に、該飛散防止カバーの該上板の上面に溜まった水がはね飛ばされないようにするために、該洗浄ノズルから噴射したエアの勢いが該上板の上面に溜まった水に作用しないようにする飛散防止部を備えたスピンナ洗浄装置。
【請求項2】
前記飛散防止部は、前記洗浄ノズルの移動軌跡に沿って前記飛散防止カバーの前記開口から外周縁に向かって前記上板上において延在し該開口側が高く該外周縁側が低い斜面板と、該外周縁に形成され該斜面板の下端側の縁から水を落下させる排水口と、を備えた請求項1記載のスピンナ洗浄装置。
【請求項3】
前記飛散防止部は、
前記洗浄ノズルの移動軌跡に沿って前記飛散防止カバーの前記上板上に配設された多孔質部材である請求項1記載のスピンナ洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の被洗浄物を洗浄するスピンナ洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研削砥石で半導体ウェーハ等の被加工物を研削する研削装置や、研磨パッドで被加工物を研磨する研磨装置は、加工後の被加工物を保持したスピンナテーブルを高速回転させ被加工物に洗浄水を供給しつつ洗浄するスピンナ洗浄装置(例えば、特許文献1参照)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被加工物が、サブストレート(支持基板)に支持されていると、サブストレートの外周と被加工物の外周との間に加工屑が堆積するため、積極的に被加工物の外周を洗浄する必要がある。そのため、被加工物の外周に水と洗浄水とが混合した二流体を吹きかけて加工屑を除去している。なお、サブストレートの外周と被加工物の外周との間に加工屑が堆積しやすい理由のひとつは、例えば、被加工物の外周縁が断面円弧状になるように面取りがされており、サブストレートと被加工物との境に窪みが形成されるためである。
【0005】
そして、スピンナ洗浄装置においては、吹きかけた二流体が被加工物の上面に巻き上がって被加工物に再度付着しないようにするために、被加工物を囲繞する斜面をスピンナテーブルの周囲に備え、スピンナテーブルの回転による遠心力を受けた洗浄廃液が被加工物から外側に向かって放射されたときに、該斜面を下り排水タンク等に落下して排水されるようにしている。つまり、スピンナ洗浄装置は、被加工物を保持するスピンナテーブルを囲繞する飛散防止カバーを備えている。
【0006】
また、二流体による洗浄後に、サブストレートの外周と被加工物の外周との境に水滴が溜まりやすいため、洗浄された被加工物の外周にエアを積極的に吹きかけ、サブストレートの外周と被加工物の外周との境を乾燥させている。
【0007】
しかし、被加工物の外周部分を積極的に二流体で洗浄すると、飛散防止カバーの上に水たまりを作ってしまうことがある。さらに、被加工物の外周部分を乾燥させるために、外周部分に噴射させたエアで飛散防止カバーの上に溜まっていた水を跳ね飛ばし、乾燥した被加工物を再び濡らしてしまうという問題がある。
【0008】
よって、スピンナ洗浄装置においては、洗浄後に乾燥させた被加工物(被洗浄物)を再度濡らさないようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、被洗浄物を保持する保持面を有するスピンナテーブルと、該スピンナテーブルを回転させる回転手段と、該スピンナテーブルに保持される被洗浄物に洗浄水とエアとの混合液を噴射する洗浄ノズルと、該洗浄ノズルを該スピンナテーブルの上方において水平移動させる水平移動手段と、該洗浄ノズルから被洗浄物に噴射した混合液に該スピンナテーブルが回転したことによる遠心力が付与され該スピンナテーブルから放射状に飛び散る混合液を下方に流していくために該スピンナテーブルを囲繞する飛散防止カバーと、該飛散防止カバーを該スピンナテーブルを回転させる回転軸の軸方向に昇降させる昇降手段と、を備えたスピンナ洗浄装置であって、該飛散防止カバーは、該スピンナテーブルを通過可能とする開口と、該開口から断面が末広がり状に傾斜するように形成されたリング状の囲繞板と、該囲繞板を囲み該スピンナテーブルの昇降方向に延在する側板と、該側板と該囲繞板の下端とを連接する上板と、を備え、該開口を該スピンナテーブルに保持された被洗浄物の上面より上に位置づけ、該洗浄ノズルから該混合液を噴射して被洗浄物を洗浄後、該洗浄ノズルからエアを噴出させ被洗浄物を乾燥させる一連の洗浄乾燥動作において、該洗浄後、該洗浄ノズルからエアを噴射させ被洗浄物の外周縁を乾燥させる際に、該飛散防止カバーの該上板の上面に溜まった水がはね飛ばされないようにするために、該洗浄ノズルから噴射したエアの勢いが該上板の上面に溜まった水に作用しないようにする飛散防止部を備えたスピンナ洗浄装置である。
【0010】
前記飛散防止部は、前記洗浄ノズルの移動軌跡に沿って前記飛散防止カバーの前記開口から外周縁に向かって前記上板上において延在し該開口側が高く該外周縁側が低い斜面板と、該外周縁に形成され該斜面板の下端側の縁から水を落下させる排水口と、を備えると好ましい。
【0011】
前記飛散防止部は、前記洗浄ノズルの移動軌跡に沿って前記飛散防止カバーの前記上板上に配設された多孔質部材であると好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るスピンナ洗浄装置は、被洗浄物を保持する保持面を有するスピンナテーブルと、スピンナテーブルを回転させる回転手段と、スピンナテーブルに保持される被洗浄物に洗浄水とエアとの混合液を噴射する洗浄ノズルと、洗浄ノズルをスピンナテーブルの上方において水平移動させる水平移動手段と、洗浄ノズルから被洗浄物に噴射した混合液にスピンナテーブルが回転したことによる遠心力が付与されスピンナテーブルから放射状に飛び散る混合液を下方に流していくためにスピンナテーブルを囲繞する飛散防止カバーと、飛散防止カバーをスピンナテーブルを回転させる回転軸の軸方向に昇降させる昇降手段と、を備え、飛散防止カバーは、スピンナテーブルを通過可能とする開口と、開口から断面が末広がり状に傾斜するように形成されたリング状の囲繞板と、囲繞板を囲みスピンナテーブルの昇降方向に延在する側板と、側板と囲繞板の下端とを連接する上板と、を備え、開口をスピンナテーブルに保持された被洗浄物の上面より上に位置づけ、洗浄ノズルから混合液を噴射して被洗浄物を洗浄後、洗浄ノズルからエアを噴出させ被洗浄物を乾燥させる一連の洗浄乾燥動作において、洗浄後、洗浄ノズルからエアを噴射させ被洗浄物の外周縁を乾燥させる際に、飛散防止カバーの上板の上面に溜まった水がはね飛ばされないようにするために、洗浄ノズルから噴射したエアの勢いが上板の上面に溜まった水に作用しないようにする飛散防止部を備えることで、エアの勢いを飛散防止部で吸収して飛散防止カバーの上板の上面に溜まった水をエアではね飛ばさせないようにすることが可能となる。そのため、乾いた被洗浄物にエアではね飛ばされた水滴が再付着してしまうことを防ぐことができる。
【0013】
飛散防止部は、洗浄ノズルの移動軌跡に沿って飛散防止カバーの開口から外周縁に向かって上板上において延在し開口側が高く外周縁側が低い斜面板と、外周縁に形成され斜面板の下端側の縁から水を落下させる排水口と、を備えることで、被洗浄物の外周縁を乾燥させる際に、洗浄ノズルから噴射したエアの勢いが上板の上面に溜まった水に作用しないようにすることで、上板の上面に溜まった水をエアではね飛ばさせないようにすることが可能となる。そのため、乾いた被洗浄物にエアではね飛ばされた水滴が再付着してしまうことを防ぐことができる。
【0014】
飛散防止部が、洗浄ノズルの移動軌跡に沿って飛散防止カバーの上板上に配設された多孔質部材であることで、被洗浄物の外周縁を乾燥させる際に、洗浄ノズルから噴射したエアの勢いが上板の上面に溜まった水に作用しないようにすることで、上板の上面に溜まった水をエアではね飛ばさせないようにすることが可能となる。そのため、乾いた被洗浄物にエアではね飛ばされた水滴が再付着してしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】飛散防止部が斜面板と排水口とを備えるスピンナ洗浄装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】飛散防止カバーが引き下げられた状態のスピンナ洗浄装置の一例を示す斜視図である。
【
図3】飛散防止部が飛散防止カバーの上板上に配設された多孔質部材であるスピンナ洗浄装置の一例を示す斜視図である。
【
図4】飛散防止部が斜面板と排水口とを備えるスピンナ洗浄装置において、洗浄ノズルからエアを噴射させ被洗浄物の外周縁を乾燥させている状態を説明する断面図である。
【
図5】飛散防止部が飛散防止カバーの上板上に配設された多孔質部材であるスピンナ洗浄装置において、洗浄ノズルからエアを噴射させ被洗浄物の外周縁を乾燥させている状態を説明する断面図である。
【
図6】従来のスピンナ洗浄装置において洗浄ノズルから混合液を噴射して被洗浄物を洗浄している状態を説明する断面図である。
【
図7】従来のスピンナ洗浄装置においてエアを噴射させ被洗浄物の外周縁を乾燥させている状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すスピンナ洗浄装置1は、被洗浄物Wを保持する保持面300aを有するスピンナテーブル30と、スピンナテーブル30を回転させる回転手段32と、スピンナテーブル30に保持される被洗浄物Wに洗浄水とエアとの混合液(二流体)を噴射する洗浄ノズル60と、洗浄ノズル60をスピンナテーブル30の上方において水平移動させる水平移動手段40と、洗浄ノズル60から被洗浄物Wに噴射した混合液にスピンナテーブル30が回転したことによる遠心力が付与されスピンナテーブル30から放射状に飛び散る混合液を下方に流していくためにスピンナテーブル30を囲繞する飛散防止カバー5と、飛散防止カバー5をスピンナテーブル30を回転させる回転軸320の軸方向(Z軸方向)に昇降させる昇降手段16と、を備えている。スピンナ洗浄装置1は、これ単独で用いることができ、また、研削装置、研磨装置、切削装置、又は、これらの装置の機能を複数備えるクラスター型装置等に組み込んで使用することもできる。
【0017】
被洗浄物Wは、例えば所謂貼り合わせウェーハである。貼り合わせウェーハは、円形の半導体ウェーハW1と略同径のサブストレート(支持基板)W2とを接着剤等で貼り合わせたものであり、半導体ウェーハW1とサブストレートW2と一体として扱い加工をすることで、薄い半導体ウェーハW1のハンドリング性が向上し、また、加工時の半導体ウェーハW1の反りや破損が防止可能となるものである。
【0018】
半導体ウェーハW1は、例えば、シリコン母材等からなる円形のウェーハであり、
図1においては下方を向いている半導体ウェーハW1の表面Waは、複数のデバイスが形成されており、サブストレートW2が貼着されて保護されている。表面Waとは反対側の半導体ウェーハW1の裏面Wbは、研削加工が施された面であり、被洗浄物Wの洗浄が施される上面Wbとなる。なお、被洗浄物Wはシリコン以外にガリウムヒ素、サファイア、セラミックス、樹脂、窒化ガリウム又はシリコンカーバイド等で構成されていてもよい。
【0019】
なお、被洗浄物Wは、例えば、シリコン母材等からなる円形の半導体ウェーハW1のみであってもよい。
また、被洗浄物Wは、表面Waにデバイスが形成された半導体ウェーハW1の裏面Wb中のデバイス領域に対応する領域が研削され円形状の凹部が形成され、デバイス領域を囲繞する外周余剰領域に対応する裏面Wbの領域に補強用の環状の凸部が形成された所謂TAIKOウェーハであってもよい。
【0020】
スピンナ洗浄装置1は、前記構成要素を収容する容器部2を備えている。容器部2は、その外形が、例えば平面視多角形状のケーシング20と、ケーシング20の後部側(+X方向側)の上端面から立設するブラケットカバー21と、ブラケットカバー21に接続されケーシング20を上方から覆う上部カバー22と、を備えている。
上部カバー22は、+Z方向から見た場合にケーシング20と同じ平面形状を有しており、その+Y方向側の端がブラケットカバー21の上端部にボルト等の止め具で固定されている。
ケーシング20は、外周板200と、
図4に示す内周板201と、外周板200の下端及び内周板201の下端に連接された底板202とにより構成されている。外周板200と内周板201と底板202とによって囲繞された縦断面凹状の空間は、使用済みの洗浄液を一時的に溜めておくことができる空間となっている。底板202には、例えばドレンホース等の排水管が接続されており、配水管は図示しない排水タンクに連通していてもよい。
【0021】
飛散防止カバー5は、スピンナテーブル30を通過可能とする開口50と、
図4に示すように開口50から断面が末広がり状に傾斜するように形成されたリング状の囲繞板51と、囲繞板51を囲みスピンナテーブル30の昇降方向(Z軸方向)に延在する側板52と、側板52と囲繞板51の下端とを連接する上板53と、を備えている。
図1においては、側板52が被洗浄物Wを洗浄するために上昇し、上部カバー22の下面にその上端面が接触した状態を示している。
【0022】
側板52は、ケーシング20よりも小さくケーシング20と相似の平面視多角形状の筒体であって、+Z方向から見た場合にケーシング20の内側に位置している。
図2に示すように、側板52は、被洗浄物Wをスピンナテーブル30に対して着脱する際はケーシング20内に下降して開状態となり、被洗浄物Wを洗浄・乾燥する際は
図1に示すようにケーシング20内から上昇して閉状態となり、混合液等の飛散を防止する。側板52や上部カバー22は、例えば、洗浄中の被洗浄物Wの状態を作業者が確認するためにアクリル板等の透明部材で構成されていてもよい。
側板52の上端面には、例えば図示しないゴム等のシーリング部材が配設されており、側板52が上昇して閉状態となると、上部カバー22の周縁部の底面がシーリング部材に接触し、側板52と上部カバー22との間が密閉されるものとしてもよい。
【0023】
飛散防止カバー5の開口50は、スピンナテーブル30の円形の外形に合わせて円形に形成されている。囲繞板51は、
図4に示すように、開口50から断面が末広がり状に傾斜するように形成され、平面視がリング状となっている。囲繞板51の面積は、
図1に示す例においては上板53の面積よりも小さく設定されているが、これに限定されるものではない。また、囲繞板51の傾斜角度等は、洗浄ノズル60から噴射される混合液の噴出量等を鑑みて適切な値に設定されている。
図1、4に示すように、側板52と囲繞板51の下端とを上板53が連結することで、囲繞板51及び上板53によって飛散防止カバー5の底部分が形成される。
【0024】
容器部2内に配設され被洗浄物Wを保持するスピンナテーブル30は、例えば、その外形が円形状であり、ポーラス部材等からなり被洗浄物Wを吸着する吸着部300と、吸着部300を支持する枠体301とを備える。吸着部300は図示しない吸引源に連通し、吸着部300の露出面であり枠体301の上端面と面一の平坦な保持面300a上で被洗浄物Wを吸引保持する。
【0025】
回転手段32は、スピンナテーブル30の底面側に上端が連結された回転軸320、及び回転軸320の下端側に接続され回転駆動力を生み出すモータ321等を備えている。スピンナテーブル30を回転させる回転軸320の軸方向は、Z軸方向(鉛直方向)となっている。
例えば、
図4に示すように、回転軸320は、その外周面から水平方向に延在しさらに-Z方向に向かって垂下するスカート部325を備えており、スカート部325によって、回転軸320と内周板201との間に、スピンナテーブル30上から流下する混合液を入り込ませないようにしている。
【0026】
飛散防止カバー5をスピンナテーブル30を回転させる回転軸320の軸方向(Z軸方向)に昇降させる昇降手段16は、エアシリンダ、電動シリンダ、又はボールネジ機構等であり、例えば、側板52の下端側や囲繞板51の下面に接続されており、
図1においては簡略化して示している。
【0027】
図1に示す水平移動手段40は、例えば、図示しないベアリングやシーリング材等を介して飛散防止カバー5の上板53を貫通して上板53上において立設する回転軸部400と、回転軸部400の上端側から水平方向に延在するアーム部401と、回転軸部400の下端側にそのシャフトが連結された回転モータ402とを備えている。そして、アーム部401の先端に洗浄ノズル60が固定されている。
よって、回転モータ402が回転軸部400をZ軸方向の軸心周りに回転させると、これに伴いアーム部401と洗浄ノズル60とが水平方向において水平移動(旋回移動)する。したがって、洗浄ノズル60の移動軌跡は平面視円弧状となり、洗浄ノズル60はその下端部分に形成された噴射口600を退避位置からスピンナテーブル30の保持面300a上方に位置づけることができる。例えば、洗浄ノズル60の移動軌跡下にスピンナテーブル30の回転中心が位置すると好ましい。
【0028】
洗浄ノズル60は、継手690及び可撓性を有する樹脂チューブ等の水流路691を介して、ポンプ等からなり洗浄水として例えば純水を供給する水源69に接続されている。水流路691上には水路開閉バルブ692が配設されている。また、洗浄ノズル60は、継手680及び可撓性を有する樹脂チューブ等のエア流路681を介して、コンプレッサー等からなり圧縮エアを供給するエア源68に連通している。エア流路681上にはエア流路開閉バルブ682が配設されている。水源69から供給された洗浄水とエア源68から供給されたエアとは、洗浄ノズル60内で混合されて噴射口600から混合液となって下方に噴射される。
【0029】
図1に示すスピンナ洗浄装置1は、開口50をスピンナテーブル30に保持された被洗浄物Wの上面Wbより上に位置づけ、洗浄ノズル60から水とエアとの混合液を噴射して被洗浄物Wを洗浄した後、洗浄ノズル60からエアを噴出させ被洗浄物Wを乾燥させる一連の洗浄乾燥動作において、洗浄後、洗浄ノズル60からエアを噴射させ被洗浄物Wの外周縁Wdを乾燥させる際に、飛散防止カバー5の上板53の上面に溜まった水がはね飛ばされないようにするために、洗浄ノズル60から噴射したエアの勢いが上板53の上面に溜まった水に作用しないようにする飛散防止部7(以下、実施形態1の飛散防止部7とする)を備えている。
【0030】
図1に示す例においては、飛散防止部7は、洗浄ノズル60の円弧状の移動軌跡に沿って飛散防止カバー5の開口50から上板53の外周縁に向かって上板53上において延在し開口50側が高く上板53の外周縁側が低い斜面板70と、上板53の外周縁に形成され斜面板70の下端側の縁から水を落下させる排水口71と、を備える。
【0031】
斜面板70は、例えば、略矩形状の外形を備えており、その上端側が囲繞板51の上端側に架けられた状態で図示しないボルト等で固定されている。斜面板70の下端側は、例えば斜めに切り欠かれており、
図1に示す例においては斜面板70の下端の片側が上板53の外周縁まで到達している。斜面板70の下端側は、図示しないボルト等によって上板53の上面に固定されている。
【0032】
排水口71は、例えば、飛散防止カバー5の上板53を上板53の外周縁の一部がその一辺となるように三角形状に切り欠いて形成されており、斜面板70の下端とつながっている。そして、排水口71は、ケーシング20の縦断面凹状で使用済みの混合液を溜めておける空間に連通している。
なお、斜面板70及び排水口71の外形は、図示の例に限定されるものではなく、例えば、斜面板70は、洗浄ノズル60の円弧状の移動軌跡に沿って飛散防止カバー5の開口50から上板53の外周縁に向かって上板上において円弧状に延在するものであってもよい。
また、飛散防止部7は
図1に示す例においては1つだけ上板53上に配設されているが、例えば、飛散防止部7と同様の飛散防止部が、洗浄ノズル60の円弧状の移動軌跡下においてスピンナテーブル30の中心を挟んで飛散防止部7の配置位置と対称となる位置にもう1つ配設されていてもよい。
【0033】
本発明に係るスピンナ洗浄装置1は、
図1に示す飛散防止部7に代えて、
図3に示す飛散防止部7A(以下、実施形態2の飛散防止部7Aとする)を備えていてもよい。
飛散防止部7Aは、洗浄ノズル60の移動軌跡に沿って飛散防止カバー5の上板53上に配設された多孔質部材である。多孔質部材としては、例えば、ポーラスセラミックス、ポーラスメタル、ポーラスカーボン、または、金属ネットもしくは樹脂ネットを丸めたり複数層に折畳んだりした物等を用いることができる。飛散防止部7Aは、例えば、略三角柱状の外形を備えており、例えば、洗浄ノズル60の移動軌跡に沿って飛散防止カバー5の開口50から上板53の外周縁に向かって囲繞板51及び上板53の上面に跨って延在しており、上板53の上面に接着剤等で固定されている。
図3に示す例においては、飛散防止部7Aの洗浄ノズル60に対向する上面は上板53の外周縁に向かって低くなっていく傾斜面となっているが、これに限定されるものではなく、外周縁に向かって平坦な面となっていてもよい。また、飛散防止部7Aの外形も略三角柱状に限定されるものではない。また、飛散防止部7Aは
図3に示す例においては1つだけ上板53上に配設されているが、例えば、飛散防止部7Aと同様の飛散防止部が、洗浄ノズル60の円弧状の移動軌跡下においてスピンナテーブル30の中心を挟んで飛散防止部7Aの配置位置と対称となる位置にもう1つ配設されていてもよい。
例えば、
図5に示すように、上板53における飛散防止部7Aの下方となる位置には、排水口75が貫通形成されており、排水口75は、ケーシング20の縦断面凹状で使用済みの混合液を溜めておける空間に連通している。なお、排水口75の配設位置は、本実施形態に示す例に限定されるものではない。
【0034】
以下に、スピンナ洗浄装置1を用いて、被洗浄物Wの上面Wbをエアと洗浄水との混合液(2流体)で洗浄した後に、洗浄ノズル60からエアを噴出させ被洗浄物Wを乾燥させる場合のスピンナ洗浄装置1の動作について説明する。
【0035】
まず、
図2に示すようにスピンナ洗浄装置1の昇降手段16が作動して飛散防止カバー5を下降させて側板52が開いた状態になる。即ち、スピンナ洗浄装置1は、上部カバー22とケーシング20とのZ軸方向における間が開放され、被洗浄物Wがその内部に進入可能な状態になる。
【0036】
被洗浄物Wがスピンナテーブル30上に搬送され、被洗浄物Wが上面Wbが上側になるように保持面300a上に載置される。そして、スピンナテーブル30に接続された図示しない吸引源により生み出される吸引力が保持面300aに伝達されることにより、スピンナテーブル30が保持面300a上で被洗浄物Wを吸引保持する。
【0037】
次いで、
図1に示すように、昇降手段16が作動して飛散防止カバー5がケーシング20内から上昇し、側板52の上端面が上部カバー22の周縁部下面に当接して停止する。上部カバー22とケーシング20との間が側板52によって塞がれることで、上部カバー22と飛散防止カバー5とによって被洗浄物Wを洗浄及び乾燥するための閉鎖された空間が形成される。
また、飛散防止カバー5の開口50がスピンナテーブル30に保持された被洗浄物Wの上面Wbより上に位置づけられる。即ち、囲繞板51の上端面より下方の位置に被洗浄物Wの上面Wbが位置づけられる。
【0038】
次いで、水平移動手段40によって洗浄ノズル60が旋回移動し、洗浄ノズル60の噴射口600がスピンナテーブル30により中心を一致させ吸引保持された被洗浄物Wの上面Wbの中心上方に位置づけられる。この状態で、水源69から洗浄水が洗浄ノズル60に供給され、かつ、エア源68から圧縮エアが洗浄ノズル60に供給され、洗浄ノズル60の噴射口600から被洗浄物Wの上面Wbの中心に向かってエアと洗浄水との混合液(二流体)が噴射される。さらに、混合液を噴射する洗浄ノズル60が、被洗浄物Wの上方をZ軸方向の軸心周りに所定角度で往復するように旋回移動する。また、回転手段32によってスピンナテーブル30が所定の回転速度で回転することで、被洗浄物Wの上面Wb全面に洗浄ノズル60から混合液が噴射される。
なお、洗浄ノズル60は、旋回移動でなく、水平方向に直線移動してもよい。
また、洗浄ノズル60は、被洗浄物Wの中心上方に位置させなくてもよい。つまり、被洗浄物Wの中心および中心部分を洗浄しないで、外周縁Wd部分のみを洗浄してもよい。
【0039】
これにより、被洗浄物Wの上面Wbに付着している研削屑等の付着物が混合液によって洗浄除去されていく。その後、スピンナテーブル30の回転により発生する遠心力が付与された混合液が、被洗浄物Wの上面Wb上を中心側から外周側に向けて流れていき、上面Wb上からケーシング20の外周板200と内周板201(
図4参照)と底板202とによって囲繞された縦断面凹状の空間に流下し、該空間に溜められる。
【0040】
また、洗浄ノズル60から被洗浄物Wに噴射された混合液にスピンナテーブル30が回転したことによる遠心力が付与されスピンナテーブル30や被洗浄物Wから放射状に飛び散る混合液は、
図4に示す飛散防止カバー5の囲繞板51の下面側にぶつかり、該下面を伝って下方に流れていき、ケーシング20の外周板200と内周板201と底板202(
図1参照)とによって囲繞された縦断面凹状の空間に流下する。
【0041】
被洗浄物Wの上面Wb全面を所定時間洗浄した後、貼り合わせウェーハである被洗浄物Wの外周縁Wdを積極的に混合液で洗浄する。貼り合わせウェーハの外周縁Wdには研削屑等の付着物が堆積していることが多いためである。
水平移動手段40によって洗浄ノズル60が旋回移動し、洗浄ノズル60の噴射口600がスピンナテーブル30により吸引保持された被洗浄物Wの外周縁Wdの上方に位置づけられて、洗浄ノズル60の移動が停止する。
【0042】
この状態で、洗浄ノズル60の噴射口600からエアと洗浄水との混合液が噴射される。そして、スピンナテーブル30が所定の回転速度で回転することで、被洗浄物Wの外周縁Wd全周に混合液が噴射される。外周縁洗浄においても、飛散防止カバー5の囲繞板51によって混合液の多くは、ケーシング20の縦断面凹状の空間に流下することになるが、洗浄ノズル60から噴射された混合液の一部が上板53の上面に流れたり、遠心力が付与されスピンナテーブル30や被洗浄物Wから放射状に飛び散る混合液が上板53の上面に飛んでいってしまったりする。そのため、上板53の上面には水が溜まって、
図4又は
図5に示す水溜まりVができてしまうことがある。
【0043】
次に、スピンナ洗浄装置1において、被洗浄物Wの乾燥が行われる。被洗浄物Wの乾燥では、例えば、まず上面Wbの乾燥が行われる。水平移動手段40によって洗浄ノズル60が旋回移動し、洗浄ノズル60の噴射口600がスピンナテーブル30により吸引保持された被洗浄物Wの中心部の上方に位置づけられて、洗浄ノズル60の移動が停止する。なお、洗浄ノズル60を被洗浄物Wの上方で水平方向に往復するように旋回移動させてもよい。エア源68から圧縮エアが洗浄ノズル60に供給され、洗浄ノズル60の噴射口600から被洗浄物Wの上面Wbの中心部に向かってエアが噴射される。また、スピンナテーブル30が所定の回転速度で回転することで、被洗浄物Wの上面Wbに残っている洗浄水が、被洗浄物Wの上面Wbにおいて中心から径方向に流れるエアとスピンナテーブル30の回転により付与される遠心力とによって、上面Wb上からケーシング20の外周板200と内周板201(
図4、5参照)と底板202とによって囲繞された縦断面凹状の空間に流下する。
【0044】
被洗浄物Wの上面Wb全面を所定時間乾燥した後、貼り合わせウェーハである被洗浄物Wの外周縁Wdを積極的にエアで乾燥させる。貼り合わせウェーハの外周縁Wdには洗浄水が多く溜まっている場合が多いためである。
図4、又は
図5に示すように、水平移動手段40によって洗浄ノズル60が旋回移動し、洗浄ノズル60の噴射口600が、飛散防止部7が位置する側で、かつ、スピンナテーブル30により吸引保持された被洗浄物Wの外周縁Wdの上方に位置づけられて、洗浄ノズル60の移動が停止する。そして、洗浄ノズル60の噴射口600からエアが噴射される。また、スピンナテーブル30が所定の回転速度で回転することで、被洗浄物Wの外周縁Wd全周にエアが噴射される。
【0045】
ここで、被洗浄物Wの外周縁Wdを積極的にエアで乾燥させる場合の従来のスピンナ洗浄装置1Bにおける問題点について、
図6、7を用いて簡潔に説明する。
図6、7に示すスピンナ洗浄装置1Bは、本発明に係るスピンナ洗浄装置1とは異なり、
図4に示す実施形態1の飛散防止部7、又は
図5に示す実施形態2の飛散防止部7Aを備えない構成となっている。
先に説明した本発明に係るスピンナ洗浄装置1を用いた被洗浄物Wの外周縁Wdの積極的な混合液による洗浄を行った場合と同様に、
図6に示す従来のスピンナ洗浄装置1Bを用いた被洗浄物Wの外周縁Wdの積極的な混合液による洗浄を行うと、洗浄ノズル60から噴射された混合液の一部が上板53の上面に流れたり、遠心力が付与されスピンナテーブル30や被洗浄物Wから放射状に飛び散る混合液が上板53の上面に飛んでいってしまったりする。そのため、上板53の上面には水が溜まって、
図6に示す水溜まりVができてしまうことがある。
【0046】
さらに、先に説明した本発明に係るスピンナ洗浄装置1を用いた洗浄後の被洗浄物Wの外周縁Wdの積極的なエア乾燥を行う場合と同様に、
図7に示す従来のスピンナ洗浄装置1Bを用いた被洗浄物Wの外周縁Wdの積極的なエア乾燥を行うと、
図7に示すように、洗浄ノズル60の噴射口600から噴射されたエアが、飛散防止カバー5の上板53の上面の水溜まりVの水をはね飛ばし、該はね飛ばされた水が飛沫となって巻き上がり、さらに乾燥した被洗浄物Wの上面Wbに落下して上面Wbを再び濡らしてしまうという問題があった。
【0047】
一方、
図4示す本発明に係るスピンナ洗浄装置1においては、洗浄ノズル60から噴射したエアの勢いが上板53の上面に溜まった水に作用しないようにする飛散防止部7を備え、飛散防止部7は、洗浄ノズル60の移動軌跡に沿って飛散防止カバー5の開口50から上板53の外周縁に向かって上板53上において延在し開口50側が高く上板53の外周縁側が低い斜面板70と、上板53の外周縁に形成され斜面板70の下端側の縁から水を落下させる排水口71と、を備えることで、被洗浄物Wの外周縁Wdを乾燥させる際に、洗浄ノズル60から噴射したエアの勢いが、斜面板70の斜面(上面)に沿って流されていき上板53の上面の水溜まりVに作用しないようにすることで、上板53の上面に溜まった水をエアではね飛ばさせないようにすることが可能となる。そのため、乾いた被洗浄物Wにエアではね飛ばされた水滴が再付着してしまうことを防ぐことができる。なお、斜面板70の上面は、斜面であり、そのため、混合液による被洗浄物Wの洗浄時に斜面板70の上面に付着した水滴等は下方に流れて排水口71から排水されているので、被洗浄物Wの外周縁Wdのエア乾燥時において斜面板70の斜面上に水滴は残っておらず、水をエアではね飛ばしてしまうことはない。
【0048】
また、
図5示す本発明に係るスピンナ洗浄装置1においては、洗浄ノズル60から噴射したエアの勢いが上板53の上面に溜まった水に作用しないようにする飛散防止部7Aを備え、飛散防止部7Aが、洗浄ノズル60の移動軌跡に沿って飛散防止カバー5の上板53上に配設された多孔質部材であることで、被洗浄物Wの外周縁Wdを乾燥させる際に、洗浄ノズル60から噴射したエアの勢いが多孔質部材である飛散防止部7Aを通過することで弱められ、上板53の上面の水溜まりVに勢いよくエアが作用しないようにすることで、上板53の上面に溜まった水をエアではね飛ばさせないようにすることが可能となる。そのため、乾いた被洗浄物Wにエアではね飛ばされた水滴が再付着してしまうことを防ぐことができる。
【0049】
本発明に係るスピンナ洗浄装置1は上記実施形態1の飛散防止部7や実施形態2の飛散防止部7Aを備える例に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。また、添付図面に図示されているスピンナ洗浄装置1の各構成の形状等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
W:被洗浄物 Wb:被洗浄物の上面 Wd:被洗浄物の外周縁 W1:半導体ウェーハ W2:サブストレート
1:スピンナ洗浄装置
16:昇降手段
30:スピンナテーブル 300:吸着部 300a:保持面 301:枠体
32:回転手段 320:回転軸 321:モータ 325:スカート部
2:容器部 20:ケーシング 200:外周板 201:内周板 202:底板 21:ブラケットカバー 22:上部カバー
40:水平移動手段 400:回転軸部 401:アーム部 402:回転モータ
60:洗浄ノズル 600:噴射口
69:水源 68:エア源
5:飛散防止カバー 50:開口 51:囲繞板 52:側板 53:上板
7:飛散防止部 70:斜面板 71:排水口
7A:多孔質部材からなる飛散防止部
1B:従来のスピンナ洗浄装置