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特許7185630感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20221130BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20221130BHJP
   C08F 220/36 20060101ALI20221130BHJP
   C08F 220/58 20060101ALI20221130BHJP
   C08F 12/24 20060101ALI20221130BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/038 601
C08F220/36
C08F220/58
C08F12/24
G03F7/20 521
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019539365
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2018030541
(87)【国際公開番号】W WO2019044547
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2019-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2017167768
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】米久田 康智
(72)【発明者】
【氏名】畠山 直也
(72)【発明者】
【氏名】吉村 務
(72)【発明者】
【氏名】東 耕平
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-198724(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057288(WO,A1)
【文献】特開2011-186247(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002545(WO,A1)
【文献】特開2009-198962(JP,A)
【文献】特開2003-162060(JP,A)
【文献】特開2005-326580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜厚が1μm以上のパターンの形成に用いられる、ネガ型の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
下記一般式(ZI-3)で表される化合物の酸発生剤と、
架橋剤と、
前記架橋剤と反応可能な反応基を含む繰り返し単位、及び、前記反応基が酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造を含む繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有するアルカリ可溶性樹脂である樹脂と、を含み、
前記樹脂が、さらに、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

一般式(ZI-3)中、R1c~R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
なお、R1c~R5cのうちいずれか2以上、R5c及びR6c、R6c及びR7c、R5c及びR、並びにR及びRは、各々独立して、互いに結合して環を形成していてもよく、前記環は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル結合、又はアミド結合を含んでいてもよい。
Zcは、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を含む基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、又は、下記一般式(3)で表されるスルホン酸アニオンを表す。
【化2】

一般式(3)中、Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、複数存在する場合のR及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Lは、2価の連結基を表す。
Wは、環状構造を含む有機基を表す。
oは、1~3の整数を表す。
pは、0~10の整数を表す。
qは、0~10の整数を表す。
【化3】

一般式(3)中、R 23 は、水素原子、又はアルキル基を表す。
は、非酸分解性の多環式脂環構造を含む基を表す。
Ar は、(m+1)価の芳香環基を表す。
mは、1以上の整数である。
【請求項2】
膜厚が1~100μmのパターンの形成に用いられる、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
波長248nm以上に吸収波長を有する光に感光してパターンを形成する、請求項1又は2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂が、フェノール性水酸基を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化4】

式(I)中、R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42は、Arと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は、単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香族炭化水素基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
【請求項6】
前記架橋剤が、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上含む化合物である、請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
前記架橋剤として、アルコキシメチル基を分子内に2個以上含む化合物を2種以上含む、請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成されたレジスト膜。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜厚が1μm以上のレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜を露光する露光工程と、
露光された前記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含むパターン形成方法。
【請求項10】
請求項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補うためにレジストの画像形成方法として化学増幅という画像形成方法が用いられている。例えば、ポジ型の化学増幅の画像形成方法としては、エキシマレーザー、電子線、及び極紫外光等の露光により、露光部の光酸発生剤が分解し酸を生成させ、露光後のベーク(PEB:Post Exposure Bake)でその発生酸を反応触媒として利用してアルカリ不溶性の基をアルカリ可溶性の基に変化させ、アルカリ現像液により露光部を除去する画像形成方法が挙げられる。
このようなレジスト組成物として、例えば、特許文献1にはp-ヒドロキシスチレン系繰り返し単位を有する樹脂を含むポジ型のレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-147772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、現在、露光光源の波長を利用した微細化は限界を迎えつつあり、特にインプラプロセス工程用途及びNANDメモリ(NOT ANDメモリ)においては、大容量化を目的としてメモリ層の三次元化が主流となりつつある。メモリ層の三次元化には縦方向への加工段数の増加が必要となるため、レジスト膜には、従来のナノ寸法からミクロン寸法への厚膜化が求められている。
本発明者らは、特許文献1に記載されるp-ヒドロキシスチレン系繰り返し単位を有する樹脂を含むポジ型のレジスト組成物を用いて厚膜(1μm以上)のレジスト膜を作製し、露光現像後のパターンの性能について検討していたところ、解像性及び形状特性が必ずしも十分ではなく、更に改善する余地があることを明らかとした。
【0005】
そこで、本発明は、厚膜用途に適用した際にも、形成されるパターンの解像性及び形状特性に優れる、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、所定構造の酸発生剤を含むネガ型の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によれば、本発明の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記目的を達成できることを見出した。
【0007】
〔1〕 膜厚が1μm以上のパターンの形成に用いられる、ネガ型の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
後述する一般式(ZI-3)で表される化合物及び後述する一般式(ZI-4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸発生剤と、
架橋剤と、
上記架橋剤と反応可能な反応基を含む繰り返し単位、及び、上記反応基が酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造を含む繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する樹脂と、を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔2〕 膜厚が1~100μmのパターンの形成に用いられる、〔1〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔3〕 波長248nm以上に吸収波長を有する光に感光してパターンを形成する、〔1〕又は〔2〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔4〕 上記樹脂が、アルカリ可溶性樹脂である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔5〕 上記樹脂が、フェノール性水酸基を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔6〕 上記樹脂が、一般式(I)で表される繰り返し単位を含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔7〕 上記樹脂が、さらに、一般式(3)で表される繰り返し単位を含む、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔8〕 上記架橋剤が、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上含む化合物である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔9〕 上記架橋剤として、アルコキシメチル基を分子内に2個以上含む化合物を2種以上含む、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔10〕 〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成されたレジスト膜。
〔11〕 〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜厚が1μm以上のレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
上記レジスト膜を露光する露光工程と、
露光された上記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含むパターン形成方法。
〔12〕 〔11〕に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、厚膜用途に適用した際にも、形成されるパターンの解像性及び形状特性に優れる、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
【0010】
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光:Extreme Ultraviolet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV光等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0011】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを表す。また、(メタ)アクリルは、アクリル及びメタクリルを表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0012】
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
置換基の例としては水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、例えば、以下の置換基群Tから選択することができる。
(置換基T)
置換基Tとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp-トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基及びtert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基及びp-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;ヘテロアリール基;水酸基;カルボキシ基;ホルミル基;スルホ基;シアノ基;アルキルアミノカルボニル基;アリールアミノカルボニル基;スルホンアミド基;シリル基;アミノ基;モノアルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0013】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物〕
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以後、単に「本発明の組成物」ともいう)は、膜厚が1μm以上のパターンの形成に用いられる、ネガ型の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
後述する一般式(ZI-3)で表される化合物及び後述する一般式(ZI-4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸発生剤と、
架橋剤と、
上記架橋剤と反応可能な反応基を含む樹脂、及び、上記反応基が酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造を含む樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、を含む。
本発明の組成物は、典型的には、化学増幅型のレジスト組成物である。
【0014】
上記構成の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によれば、解像性に優れ、且つ、形状特性に優れる(言い換えると、高いアスペクト比(アスペクト比:高さ/線幅)であり、断面形状が矩形状である)パターンが形成できる。
これは、詳細には明らかではないが、以下のように推測される。
一般的に、形成するレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)の厚みが大きくなるほど、露光の際に膜深部にまで光が到達せず、形成されるパターンの解像性及び形状特性が悪化する。
これに対して、本発明者らは、膜厚が1μm以上のレジスト膜でパターンを形成する際においては、上記レジスト膜をネガ型の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成した場合、ポジ型の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成した場合と比較して、解像性がより優れるパターンが形成できることを知見している。また、本発明の組成物が含む上記酸発生剤は、その構造的特徴により、露光の際に膜深部にまで光が到達しやすい。本発明の効果は、上述した作用機序が相乗することにより得られたと考えられる。
以下、本発明の組成物に含まれる成分について詳述する。
【0015】
<酸発生剤(A)>
本発明の組成物は、下記一般式(ZI-3)で表される化合物及び下記一般式(ZI-4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸発生剤を含む。
以下に、下記一般式(ZI-3)で表される化合物、及び下記一般式(ZI-4)で表される化合物について各々説明する。
【0016】
【化1】
【0017】
一般式(ZI-3)中、R1c~R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
Zcは、アニオンを表す。
【0018】
1c~R5cで表されるアルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれも含む。)としては、炭素数1~15が好ましく、炭素数1~10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びt-ブチル基等が挙げられる。
1c~R5cで表されるシクロアルキル基としては、炭素数3~15が好ましく、炭素数3~10がより好ましい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基等が挙げられる。
1c~R5cで表されるアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
1c~R5cで表されるアルコキシ基としては、炭素数1~15が好ましく、炭素数1~10がより好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びt-ブトキシ基等が挙げられる。
1c~R5cで表されるアリールオキシ基としては、炭素数6~14が好ましく、具体的には、フェニルオキシ基、及びナフチルオキシ基等が挙げられる。
1c~R5cで表されるアルコキシカルボニル基としては、炭素数2~15が好ましく、炭素数2~10がより好ましい。具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、及びt-ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
1c~R5cで表されるアルキルカルボニルオキシ基としては、炭素数2~15が好ましく、炭素数2~10がより好ましい。具体的には、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、sec-ブチルカルボニルオキシ基、及びt-ブチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
1c~R5cで表されるシクロアルキルカルボニルオキシ基としては、炭素数4~15が好ましく、炭素数4~10がより好ましい。具体的には、シクロプロピルカルボニルオキシ基、シクロブチルカルボニルオキシ基、及びシクロヘキシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
1c~R5cで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
1c~R5cで表されるアルキルチオ基としては、炭素数1~15が好ましく、炭素数1~10がより好ましい。具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、及びt-ブチルチオ基等が挙げられる。
1c~R5cで表されるアリールチオ基としては、炭素数6~14が好ましい。具体的には、フェニルチオ基、及びナフチルチオ基等が挙げられる。
【0019】
6c及びR7cで表されるアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、及びアリール基としては、R1c~R5cで表されるアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、及びアリール基と同義であり、好適態様も同じである。
【0020】
及びRで表されるアルキル基及びシクロアルキル基としては、R1c~R5cで表されるアルキル基及びシクロアルキル基と同義であり、好適態様も同じである。
及びRで表される2-オキソアルキル基としては、炭素数1~15が好ましく、炭素数1~10がより好ましい。具体的には、2-オキソプロピル基、及び2-オキソブチル基等が挙げられる。
及びRで表される2-オキソシクロアルキル基としては、炭素数3~15が好ましく、炭素数6~10がより好ましい。具体的には、2-オキソシクロヘキシル基等が挙げられる。
及びRで表されるアルコキシカルボニルアルキル基としては、炭素数3~15が好ましく、炭素数3~10がより好ましい。具体的には、エトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
【0021】
1c~R7c、R、及びRは、更に、置換基を有してもよい。置換基としては、例えば上記置換基群Tに例示されるものが挙げられる。
【0022】
上記一般式(ZI-3)中、R1c~R5cのうちいずれか2つ以上、R5c及びR6c、R6c及びR7c、R5c及びR、並びにR及びRは、各々独立して、互いに結合して環を形成していてもよく、上記環は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル結合、又はアミド結合を含んでいてもよい。
【0023】
上記環としては、芳香族性若しくは芳香族性を有していない炭化水素環、芳香族性若しくは芳香族性を有していない複素環、又は、これらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環が挙げられる。上記環としては、3~10員環が挙げられ、4~8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
【0024】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6c及びR7c、並びに、R及びRが結合して形成する基としては、ブチレン基、及びペンチレン基等が挙げられる。
5c及びR6c、並びに、R5c及びRが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基が好ましい。上記アルキレン基としては、メチレン基、及びエチレン基等が挙げられる。
【0025】
1c~R5cとしては、形成されるパターンの解像性及び形状特性がより優れる点で、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、若しくはアルコキシ基であるか、又は、R1c~R5cのいずれか2つが互いに結合して、酸素原子を含む脂環構造(好ましくは6員環)を形成することが好ましい。なかでも、R3cが、アルキル基、シクロアルキル基、又はアルコキシ基であり、R1c、R2c、R4c、及びR5cが水素原子であることが好ましい。
6c及びR7cとしては、形成されるパターンの解像性及び形状特性がより優れる点で、水素原子、又はアルキル基が好ましく、R6c及びR7cの少なくとも1つがアルキル基であることがより好ましい。
及びRとしては、形成されるパターンの解像性及び形状特性がより優れる点で、R及びRが互いに結合して脂環構造を形成することが好ましい。なお、上記脂環構造は、上記一般式(ZI-3)中の硫黄原子を含む。上記脂環構造は、5~6員環が好ましく、5員環がより好ましい。
【0026】
一般式(ZI-3)におけるカチオンとして、例えば、米国特許出願公開第2012/0076996号明細書の段落<0036>以降に記載のカチオンも本発明の態様に含まれる。
【0027】
Zcは、アニオンを表す。
Zcとしては、非求核性アニオンが好ましい。
非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及びトリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン等が挙げられる。
【0028】
非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制できるアニオンである。これにより組成物の経時安定性が向上する。
スルホン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、及びカンファースルホン酸アニオン等が挙げられる。
カルボン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、及びアラルキルカルボン酸アニオン等が挙げられる。
【0029】
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位は、アルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、炭素数1~30のアルキル基及び炭素数3~30のシクロアルキル基が好ましい。
芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、炭素数6~14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、及びナフチル基等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸アニオン及び芳香族スルホン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、フッ素化燐(例えば、PF )、フッ素化硼素(例えば、BF )、及びフッ素化アンチモン等(例えば、SbF )が挙げられる。
【0030】
Zcの非求核性アニオンとしては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を含む基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、又は、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。なかでも、炭素数4~8のパーフルオロ脂肪族スルホン酸アニオン、又は、フッ素原子を含むベンゼンスルホン酸アニオンがより好ましく、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、パーフルオロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、又は3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンが更に好ましい。
【0031】
また、Zcの非求核性アニオンとしては、下記一般式(3)で表されるアニオンも好ましい。
【0032】
【化2】
【0033】
一般式(3)中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、複数存在する場合のR及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
Wは、環状構造を含む有機基を表す。
oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。
【0034】
Xfは、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfとしては、なかでも、フッ素原子、又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基が好ましく、フッ素原子又はCFがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0035】
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、複数存在する場合のR及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
及びRとしてのアルキル基としては、置換基を有していてもよく、炭素数1~4が好ましい。R及びRとしては、水素原子が好ましい。
少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例及び好適な態様は一般式(3)中のXfの具体例及び好適な態様と同じである。
【0036】
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、-COO-(-C(=O)-O-)、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6)、ヘテロ原子(例えば、酸素原子、及び窒素原子等)を含んでいてもよいシクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~10)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。これらのなかでも、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-SO-、-アルキレン基-COO-、-COO-アルキレン基-、-アルキレン基-OCO-、-OCO-アルキレン基-、-SO-ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキレン基-COO-アルキレン基-、-CONH-アルキレン基-又は-NHCO-アルキレン基-が好ましく、-COO-、-OCO-、-CONH-、-SO-、-アルキレン基-COO-、-COO-アルキレン基-、-OCO-アルキレン基-、-OCO-アルキレン基-、又は-SO-ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキレン基-COO-アルキレン基-がより好ましい。
【0037】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。なかでも環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が挙げられる。なかでも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の炭素数7以上のかさ高い構造を含む脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性の抑制及びMEEF(Mask Error Enhancement Factor)の向上の観点から好ましい。
【0038】
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。なかでも、193nmにおける光吸光度が比較的低いナフチル基が好ましい。
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよいが、多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及びピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環、ピぺリジン環、及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピぺリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が好ましい。
【0039】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐のいずれであってもよく、炭素数1~12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3~20が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0040】
oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。
【0041】
次に、一般式(ZI-4)で表される化合物について説明する。
【0042】
【化3】
【0043】
一般式(ZI-4)中、
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を含む基を表す。
14は、複数存在する場合は各々独立して、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を含む基を表す。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、又はナフチル基を表す。
13~R15は、更に、置換基を有してもよい。置換基としては、例えば上記置換基群Tに例示されるものが挙げられる。
なお、2つのR15は、互いに結合して環を形成してもよく、上記環は、酸素原子、及び窒素原子等ヘテロ原子を含んでいてもよい。一態様において、2つのR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造(好ましくは5員環)を形成することが好ましい。
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
は、アニオンを表す。
【0044】
一般式(ZI-4)において、R13及びR14で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、及びアルコキシカルボニル基としては、一般式(ZI-3)中のR1c~R5cで表されるアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、及びアルコキシカルボニル基と同義であり、好適態様も同じである。
一般式(ZI-4)において、R15で表されるアルキル基、及びシクロアルキル基としては、一般式(ZI-3)中のR1c~R5cで表されるアルキル基、及びシクロアルキル基と同義であり、好適態様も同じである。
【0045】
一般式(ZI-4)において、R13及びR14で表されるシクロアルキル基を含む基としては、例えば、下記一般式(4)で表される基が挙げられる。
一般式(4) -L11-Y11
一般式(4)中、L11は、単結合又は2価の連結基を表す。Y11は、シクロアルキル基を表す。
上記L11で表される2価の連結基としては、例えば、-CO-、-NH-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(炭素数1~6が好ましい)からなる群より選ばれる1種、又は2種以上を組み合わせた基が挙げられる。
なかでも、-O-アルキレン基-、又は-アルキレン基-O-が好ましい。
11で表されるシクロアルキル基としては、R13で表されるシクロアルキル基と同義であり、好適態様も同じである。
【0046】
一般式(ZI-4)において、R14で表されるアルキルカルボニル基としては、炭素数2~15が好ましく、炭素数2~10がより好ましい。具体的には、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、n-ブチルカルボニル基、sec-ブチルカルボニル基、及びt-ブチルカルボニル基等が挙げられる。
【0047】
一般式(ZI-4)において、R14で表されるアルキルスルホニル基としては、炭素数1~15が好ましく、炭素数1~10がより好ましい。具体的には、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、sec-ブチルスルホニル基、及びt-ブチルスルホニル基等が挙げられる。
【0048】
一般式(ZI-4)において、R14で表されるシクロアルキルスルホニル基としては、炭素数3~15が好ましく、炭素数3~10がより好ましい。具体的には、シクロプロピルスルホニル基、シクロブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、及びノルボルニルスルホニル基等が挙げられる。
【0049】
一般式(ZI-4)で表される化合物のカチオンとしては、特開2010-256842号公報の段落<0121>、<0123>、及び<0124>、並びに特開2011-76056号公報の段落<0127>、<0129>、及び<0130>等に記載のカチオンが挙げられる。
【0050】
一般式(ZI-4)中、Zは、アニオンを表す。Zは、一般式(ZI-3)中のZcと同義であり、好適態様も同じである。
【0051】
酸発生剤の分子量は、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下が更に好ましい。
酸発生剤は、公知の方法で合成でき、例えば、特開2007-161707号公報に記載の方法に準じて合成できる。
【0052】
酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、酸発生剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分に対して、1~35質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
【0053】
<架橋剤(B)>
本発明の組成物は、架橋剤を含む。
上記架橋剤は、樹脂を架橋し得る架橋性基を含んでいる化合物を意図する。上記架橋剤としては、なかでも、酸の作用により上記樹脂を架橋する化合物であることが好ましい。
【0054】
架橋性基としては特に制限されないが、例えば、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基、アルコキシメチルエーテル基、オキシラン環、及びオキセタン環等が挙げられる。これらの架橋性基は、樹脂に含まれる水酸基等の反応基と反応する。
架橋性基としては、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、オキシラン環、又はオキセタン環が好ましく、ヒドロキシメチル基、又はアルコキシメチル基がより好ましく、アルコキシメチル基が更に好ましい。
【0055】
上記架橋剤は、架橋性基を分子内に2個以上含む化合物が好ましく、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上含む化合物がより好ましい。なお、架橋性基の上限は特に制限されないが、典型的には、分子内に6個以下含まれる。
【0056】
架橋剤としては、架橋性基を有する、フェノール誘導体、ウレア系化合物(ウレア構造を有する化合物)、又はメラミン系化合物(メラミン構造を有する化合物)が好ましい。
【0057】
上記架橋剤としては、上述した架橋剤の他に、米国特許出願公開2016/0147154A1号明細書の段落<0379>~<0431>、及び米国特許出願公開2016/0282720A1号明細書の段落<0064>~<0141>に開示された公知の化合物を使用できる。
【0058】
架橋剤の分子量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、100~2000が好ましく、100~1200がより好ましい。
【0059】
架橋剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、架橋剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分に対して、1~65質量%が好ましく、3~60質量%がより好ましく、5~50質量%が更に好ましい。
【0060】
<樹脂(C)>
本発明の組成物は、架橋剤と反応可能な反応基を含む繰り返し単位、及び、上記反応基が酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造を含む繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する樹脂(以下、「樹脂(C1)」ともいう。)を含む。
樹脂(C1)としては、架橋剤と反応可能な反応基を含む繰り返し単位を有する樹脂が好ましく、また、架橋剤と反応可能な反応基が保護基で保護された構造を含む繰り返し単位を有する樹脂も好ましい。
【0061】
樹脂(C1)の主骨格としては、例えば、ノボラック系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、及びスチレン/(メタ)アクリル共重合体等が挙げられる。
【0062】
架橋剤と反応可能な反応基としては、本発明の組成物が含む架橋剤に応じて適宜選択されるが、例えば、水酸基、重合性エチレン性不飽和基、及び環重合性基が挙げられる。重合性エチレン性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びビニル基等が挙げられる。環重合性基としては、例えば、オキシラニル基、及びオキセタニル基が挙げられる。また、架橋剤と反応可能な反応基(特に水酸基)は、酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護されていてもよい。
なかでも、反応基としては、フェノール性水酸基が好ましい。
なお、本明細書において、フェノール性水酸基とは、芳香族炭化水素基の水素原子をヒドロキシル基で置換してなる基である。芳香族炭化水素基の芳香環は単環又は多環の芳香環であり、ベンゼン環及びナフタレン環等が挙げられる。
【0063】
また、樹脂(C1)は、分子中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(酸基)を含むアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。酸基としては特に制限されない。
なお、上述したフェノール性水酸基は反応基として機能するが、酸基としての機能も併せ持つ。
【0064】
樹脂(C1)としては、なかでも、フェノール性水酸基を含む樹脂が好ましく、フェノール性水酸基を含む繰り返し単位(a1)を含む樹脂であることがより好ましい。
【0065】
フェノール性水酸基を含む繰り返し単位(a1)としては、例えば、下記一般式(I)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0066】
【化4】
【0067】
式(I)中、
41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42は、Arと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は、単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香族炭化水素基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
一般式(I)で表される繰り返し単位を高極性化する目的では、nが2以上の整数、又はXが-COO-、又は-CONR64-であることも好ましい。
【0068】
一般式(I)におけるR41、R42、及びR43で表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及びドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基が更に好ましい。
【0069】
一般式(I)におけるR41、R42、及びR43で表されるシクロアルキル基としては、単環でも、多環でもよい。置換基を有していてもよい、シクロプロピル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の炭素数3~8で単環のシクロアルキル基が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及びR43で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及びR43で表されるアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42、及びR43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0070】
上記各基における好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、及びニトロ基等が挙げられ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0071】
Arは、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表す。nが1である場合における2価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、及びアントラセニレン基等の炭素数6~18のアリーレン基、又は、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、及びチアゾール環等のヘテロ環を含む芳香族炭化水素基が好ましい。
【0072】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香族炭化水素基の具体例としては、2価の芳香族炭化水素基の上記した具体例から、(n-1)個の任意の水素原子を除してなる基を好適に挙げられる。
(n+1)価の芳香族炭化水素基は、更に置換基を有していてもよい。
【0073】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基及び(n+1)価の芳香族炭化水素基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42、及びR43で挙げたアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、及びブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基;等が挙げられる。
Arとしては、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、又はビフェニレン環基がより好ましい。なかでも、一般式(I)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位であることが好ましい。即ち、Arは、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0074】
により表される-CONR64-(R64は、水素原子又はアルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、置換基を有していてもよい、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及びドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましい。
としては、単結合、-COO-、又は-CONH-が好ましく、単結合、又は-COO-がより好ましい。
【0075】
としての2価の連結基としては、アルキレン基が好ましく、アルキレン基としては、置換基を有していてもよい、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、及びオクチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基が好ましい。
【0076】
以下、フェノール性水酸基を含む繰り返し単位(a1)の具体例を示すが、本発明は、これに制限されるものではない。式中、aは1又は2を表す。
【0077】
【化5】
【0078】
フェノール性水酸基を含む繰り返し単位(a1)としては、なかでも、下記一般式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0079】
【化6】
【0080】
一般式(1)中、R1は、水素原子、又はアルキル基を表す。
Arは、2価の芳香族炭化水素基を表す。
【0081】
一般式(1)中、Rで表されるアルキル基としては、上記一般式(I)中のR41で表されるアルキル基と同義であり、また好適態様も同じである。
一般式(1)中、Arで表される2価の芳香族炭化水素基としては、上記一般式(I)中のArで表される2価の芳香族炭化水素基と同義である。
【0082】
また、樹脂(C1)中のフェノール性水酸基は、酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造であってもよい。
酸の作用により分解して脱離する脱離基としては、例えば、式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられる。
式(Y1):-C(Rx)(Rx)(Rx
式(Y2):-C(=O)OC(Rx)(Rx)(Rx
式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38
式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
【0083】
式(Y1)、(Y2)中、Rx~Rxは、各々独立に、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。但し、Rx~Rxの全てがアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)である場合、Rx~Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
なかでも、Rx~Rxは、各々独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す繰り返し単位であることがより好ましく、Rx~Rxが、各々独立に、直鎖状のアルキル基を表す繰り返し単位であることが更に好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して、単環若しくは多環を形成してもよい。
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。なかでも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
式(Y1)及び(Y2)で表される基は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0084】
式(Y3)中、R36及びR37は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R38は、1価の有機基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。R36は、水素原子であることが好ましい。
【0085】
式(Y4)中、Arは、芳香族炭化水素基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arとしては、アリール基が好ましい。
【0086】
以下に、樹脂(C1)が、フェノール性水酸基が酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造を含む繰り返し単位(a2)を有する態様を一例として説明する。
繰り返し単位(a2)としては、フェノール性水酸基における水素原子が式(Y1)~(Y4)で表される脱離基によって保護された構造を有するものが好ましい。
【0087】
繰り返し単位(a2)としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0088】
【化7】
【0089】
一般式(AII)中、
61、R62及びR63は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R62はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR62は、単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表す。R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、R62と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香族炭化水素基を表す。
は、n≧2の場合には各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Yの少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。Yとしての酸の作用により脱離する基は、式(Y1)~(Y4)であることが好ましい。
nは、1~4の整数を表す。
【0090】
一般式(AII)中のR61、R62、R63、X、L、Ar、及びnの好適態様としては、上記一般式(I)中のR41、R42、R43、X、L、Ar、及びnと同じである。
上記各基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及びアルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられ、炭素数8以下のものが好ましい。
【0091】
以下、フェノール性水酸基が酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造を含む繰り返し単位(a2)の具体例を示すが、本発明は、これに制限されるものではない。
【0092】
【化8】
【0093】
【化9】
【0094】
樹脂(C1)は、フェノール性水酸基を含む繰り返し単位(a1)を1種単独で有していてもよく、2種以上を併用して有していてもよい。
また、樹脂(C1)は、フェノール性水酸基が酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造を含む繰り返し単位(a2)を、1種単独で有していてもよく、2種以上を併用して有していてもよい。
【0095】
樹脂(C1)中、フェノール性水酸基を含む繰り返し単位(a1)及び/又はフェノール性水酸基が酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造を含む繰り返し単位(a2)の含有量(複数種含む場合にはその合計)は、上記樹脂(C1)中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、30~97モル%がより好ましく、45~95モル%が更に好ましい。
【0096】
樹脂(C1)は、更に、フェノール性水酸基を含む繰り返し単位(a1)及びフェノール性水酸基が酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造を含む繰り返し単位(a2)以外の、芳香族炭化水素基を含む繰り返し単位(a3)を含むことが好ましい。
芳香族炭化水素基を含む繰り返し単位(a3)としては特に制限されないが、溶解促進性がより優れ、結果として解像性及び形状特性がより優れる点で、例えば、下記一般式(2)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0097】
【化10】
【0098】
一般式(2)中、R21、R22、及びR23は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R22は、Arと結合して環を形成していてもよく、その場合のR22は、単結合又はアルキレン基を表す。
11は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
11は、単結合又は2価の連結基を表す。
Arは、(m+1)価の芳香環基を表し、R22と結合して環を形成する場合には(m+2)価の芳香環基を表す。
24は、各々独立に、アルキル基、ハロゲン原子、又は、-O-X基を表し、Xは、非酸分解性の多環式脂環構造を含む基を表す。
mは、0以上の整数である。
【0099】
一般式(2)中、R21、R22、R23、X11、及びL11は、上記一般式(I)中のR41、R42、R43、X、及びLと各々同義であり、好適態様も同じである。
【0100】
一般式(2)中、Arは、(m+1)価の芳香環基を表す。上記芳香環基としては、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が挙げられる。なかでも、芳香族炭化水素基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、又はビフェニレン環基がより好ましく、ベンゼン環基が更に好ましい。上記芳香環基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42、及びR43で挙げたアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、及びブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基;等が挙げられる。
【0101】
一般式(2)中、R24は、各々独立に、アルキル基、ハロゲン原子、又は-O-X基を表す。
24で表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及びドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が好ましい。
24で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
24で表される-O-X基において、Xは、非酸分解性の多環式脂環構造を含む基を表す。
【0102】
ここで「非酸分解性」とは、酸の作用により分解又は脱離しないことを意図する。上記Xとしては、例えば、下記一般式(2a)で表される基が好ましい。
一般式(2a) -L22-Y22
一般式(2a)中、L22は、2価の連結基を表す。Y22は、多環式脂肪族炭化水素基を表す。
上記L22で表される2価の連結基としては、例えば、カルボニル基、チオカルボニル基、アルキレン基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5)、スルホニル基、-COCH-、-NH-、又はこれらを組合せた2価の連結基(好ましくは総炭素数1~20、より好ましくは総炭素数1~10)であり、カルボニル基、-COCH-、スルホニル基、-CONH-、又は-CSNH-がより好ましく、カルボニル基、又は-COCH-が更に好ましく、カルボニル基が特に好ましい。
22は多環式脂肪族炭化水素基を表し、非酸分解性である。多環式脂肪族炭化水素基の総炭素数は5~40が好ましく、7~30がより好ましい。多環式脂肪族炭化水素基は、環内に不飽和結合を有していてもよい。
このような多環式脂肪族炭化水素基は、単環型の脂環炭化水素基を複数含む基、又は、多環型の脂環炭化水素基であり、有橋式であってもよい。単環型の脂環炭化水素基としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部が、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。また、単環型の脂環炭化水素基を複数含む基は、上記炭素数3~8のシクロアルキル基を複数含むことが好ましい。また、単環型の脂環炭化水素基を複数含む基は、単環型の脂環炭化水素基を2~4個含むことが好ましく、2個含むことがより好ましい。
多環型の脂環炭化水素基としては、炭素数5以上のビシクロ、トリシクロ、又はテトラシクロ構造等を有する基が挙げられ、炭素数6~30の多環シクロ構造を有する基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトシクロドデシル基、及びアンドロスタニル基が挙げられる。なお、多環のシクロアルキル基中の炭素原子の一部が、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0103】
上記Y22の多環式脂肪族炭化水素基としては、アダマンチル基、デカリン基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、セドロール基、シクロヘキシル基を複数有する基、シクロヘプチル基を複数有する基、シクロオクチル基を複数有する基、シクロデカニル基を複数有する基、シクロドデカニル基を複数有する基、又はトリシクロデカニル基が好ましく、ドライエッチング耐性がより優れる点で、アダマンチル基がより好ましい。
【0104】
下記一般式(2)で表される繰り返し単位としては、溶解促進性がより優れ、結果として解像性及び形状特性がより優れる点で、下記一般式(3)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0105】
【化11】
【0106】
一般式(3)中、R23は、水素原子、又はアルキル基を表す。
は、非酸分解性の多環式脂環構造を含む基を表す。
Arは、(m+1)価の芳香環基を表す。
mは、1以上の整数である。
【0107】
一般式(3)中、R23で表されるアルキル基は、上記一般式(2)中のR23と同義であり、好適態様も同じである。
一般式(3)中、X、及びArは、上記一般式(2)中のX、及びArと各々同義であり、好適態様も同じである。
【0108】
以下、芳香族炭化水素基を含む繰り返し単位(a3)の具体例を示すが、本発明は、これに制限されるものではない。なお、Rxは、水素原子又はアルキル基を表す。なお、以下に示す繰り返し単位は、一般式(2)で表される繰り返し単位に該当する。
【0109】
【化12】
【0110】
樹脂(C1)中、芳香族炭化水素基を含む繰り返し単位(a3)の含有量(複数種含む場合にはその合計)は、上記樹脂(C1)中の全繰り返し単位に対して1~40モル%が好ましく、1~30モル%がより好ましく、2~30モル%が更に好ましい。
また、芳香族炭化水素基を含む繰り返し単位(a3)が上記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む場合、上記一般式(3)で表される繰り返し単位の含有量(複数種含む場合にはその合計)は、上記芳香族炭化水素基を含む繰り返し単位(a3)に対して1~100モル%が好ましく、1~90モル%がより好ましく、5~60モル%が更に好ましい。
【0111】
樹脂(C1)の重量平均分子量は、1,000~200,000が好ましく、2,000~30,000がより好ましく、3,000~25,000が更に好ましい。分散度(Mw/Mn)は、通常1.0~3.0であり、1.0~2.6が好ましく、1.0~2.0がより好ましく、1.1~2.0が更に好ましい。
【0112】
樹脂(C1)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、樹脂(C1)の含有量は、全固形分を基準にして、20~99質量%が好ましく、30~99質量%がより好ましく、40~99質量%が更に好ましい。
本発明の組成物は、樹脂(C1)以外の樹脂を更に含んでいてもよい。
上記樹脂(C1)の含有量は、樹脂全質量に対して80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、99.5質量%以上が更に好ましい。
【0113】
<酸拡散制御剤(D)>
本発明の組成物は、酸拡散制御剤(D)を含むことが好ましい。酸拡散制御剤(D)は、露光時に光酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における樹脂の架橋反応を抑制するクエンチャーとして作用する。例えば、塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)、又はカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)等を酸拡散制御剤として使用できる。本発明の組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0627>~<0664>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0095>~<0187>、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0403>~<0423>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0259>~<0328>に開示された公知の化合物を酸拡散制御剤(D)として好適に使用できる。
【0114】
塩基性化合物(DA)としては、下記式(A)~(E)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0115】
【化13】
【0116】
一般式(A)及び(E)中、
200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(炭素数6~20)を表す。R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0117】
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、置換基を有していても無置換であってもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0118】
塩基性化合物(DA)としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、又はピペリジン等が好ましく、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造若しくはピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0119】
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)(以下、「化合物(DB)」ともいう。)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0120】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又は、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0121】
【化14】
【0122】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられる。
【0123】
化合物(DB)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失し、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(DB)とプロトンとからプロトン付加体が生成するとき、その化学平衡における平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認できる。
【0124】
活性光線又は放射線の照射により化合物(DB)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaは、pKa<-1を満たすことが好ましく、-13<pKa<-1を満たすことがより好ましく、-13<pKa<-3を満たすことが更に好ましい。
【0125】
酸解離定数pKaとは、水溶液中での酸解離定数pKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に定義される。酸解離定数pKaの値が低いほど酸強度が大きいことを示す。水溶液中での酸解離定数pKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測できる。あるいは、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0126】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0127】
本発明の組成物では、光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)を酸拡散制御剤として使用できる。
光酸発生剤と、光酸発生剤から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により光酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0128】
光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、下記一般式(d1-1)~(d1-3)で表される化合物が好ましい。
【0129】
【化15】
【0130】
式中、R51は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(但し、Sに隣接する炭素については、フッ素原子は置換されていないものとする)であり、R52は有機基であり、Yは直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、Mは各々独立に、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
【0131】
で表されるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例としては、一般式(ZI)で例示したスルホニウムカチオン及び一般式(ZII)で例示したヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0132】
光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)は、カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、カチオン部位とアニオン部位が共有結合により連結している化合物(以下、「化合物(DCA)」ともいう。)であってもよい。
化合物(DCA)としては、下記一般式(C-1)~(C-3)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0133】
【化16】
【0134】
一般式(C-1)~(C-3)中、
、R、及びRは、各々独立に炭素数1以上の置換基を表す。
は、カチオン部位とアニオン部位とを連結する2価の連結基又は単結合を表す。
-Xは、-COO、-SO 、-SO 、-O、及び-N-Rから選択されるアニオン部位を表す。Rは、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基(-C(=O)-)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)のうち少なくとも1つを有する1価の置換基を表す。
、R、R、R、及びLは、互いに結合して環構造を形成してもよい。また、一般式(C-3)において、R~Rのうち2つを合わせて1つの2価の置換基を表し、N原子と2重結合により結合していてもよい。
【0135】
~Rにおける炭素数1以上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、及びアリールアミノカルボニル基等が挙げられる。好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基である。
【0136】
2価の連結基としてのLは、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。Lは、好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの2種以上を組み合わせてなる基である。
【0137】
窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)(以下、「化合物(DD)」ともいう。)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又はヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
化合物(DD)の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が更に好ましい。
化合物(DD)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d-1)で表される。
【0138】
【化17】
【0139】
一般式(d-1)において、
は、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、アリール基(好ましくは炭素数3~30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。Rは相互に連結して環を形成していてもよい。
が示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立に水酸基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0140】
としては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はシクロアルキル基がより好ましい。
2つのRが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素環、芳香族炭化水素環、複素環式炭化水素環及びその誘導体等が挙げられる。
一般式(d-1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許公報US2012/0135348A1号明細書の段落<0466>に開示された構造が挙げられるが、これに制限されない。
【0141】
化合物(DD)は、下記一般式(6)で表される構造を有することが好ましい。
【0142】
【化18】
【0143】
一般式(6)において、
lは0~2の整数を表し、mは1~3の整数を表し、l+m=3を満たす。
は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRは同じでも異なっていてもよく、2つのRは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。この複素環は、式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
は、上記一般式(d-1)におけるRと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(6)において、Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にRとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0144】
上記Rのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらの基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(DD)の具体例としては、米国特許出願公開2012/0135348A1号明細書の段落<0475>に開示された化合物が挙げられるが、これに制限されない。
【0145】
カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)(以下、「化合物(DE)」ともいう。)は、カチオン部に窒素原子を含む塩基性部位を有する化合物であることが好ましい。塩基性部位は、アミノ基であることが好ましく、脂肪族アミノ基であることがより好ましい。塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であることが更に好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子等)が直結していないことが好ましい。
化合物(DE)の好ましい具体例としては、米国特許出願公開2015/0309408A1号明細書の段落<0203>に開示された化合物が挙げられるが、これに制限されない。
【0146】
酸拡散制御剤(D)の好ましい例を以下に示す。
【0147】
【化19】
【0148】
【化20】
【0149】
本発明の組成物において、酸拡散制御剤(D)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が酸拡散制御剤(D)を含む場合、酸拡散制御剤(D)の組成物中の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.01~10質量%が好ましく、0.03~5質量%がより好ましい。
【0150】
<溶剤(E)>
本発明の組成物は、溶剤を含むことが好ましい。
本発明の組成物においては、公知のレジスト溶剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0665>~<0670>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0210>~<0235>、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0424>~<0426>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0357>~<0366>に開示された公知の溶剤を好適に使用できる。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0151】
有機溶剤として、構造中に水酸基を有する溶剤と、水酸基を有さない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を有する溶剤、及び水酸基を有さない溶剤としては、前述の例示化合物を適宜選択できるが、水酸基を含む溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、又は乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を有さない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を有していてもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は酢酸アルキル等が好ましく、これらのなかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は2-ヘプタノンが更に好ましい。水酸基を有さない溶剤としては、プロピレンカーボネートも好ましい。
水酸基を有する溶剤と水酸基を有さない溶剤との混合比(質量比)は、1/99~99/1であり、10/90~90/10が好ましく、20/80~60/40がより好ましい。水酸基を有さない溶剤を50質量%以上含む混合溶剤が、塗布均一性の点で好ましい。
【0152】
<界面活性剤(F)>
本発明の組成物は、界面活性剤を含むことが好ましい界面活性剤を含む場合、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(具体的には、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、又はフッ素原子とケイ素原子との両方を有する界面活性剤)が好ましい。
【0153】
本発明の組成物が界面活性剤を含むことにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないパターンを得られる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0276>に記載の界面活性剤が挙げられる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0280>に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。
【0154】
これらの界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.0001~3質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
【0155】
<その他の添加剤>
本発明の組成物は、更に、酸増殖剤、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、溶解阻止剤、又は溶解促進剤等を含んでいてもよい。
【0156】
<調製方法>
本発明の組成物の固形分濃度は、通常1.0~50質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、30~50質量%が更に好ましい。固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の質量の質量百分率である。
【0157】
なお、本発明の組成物からなる感活性光線性又は感放射線性膜の膜厚は、1μm以上であり、加工段数を増やす目的として、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、例えば100μm以下である。
なお、後述するように、本発明の組成物からパターンを形成できる。
形成されるパターンの膜厚は、1μm以上であり、加工段数を増やす目的として、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、例えば100μm以下である。
【0158】
本発明の組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは上記混合溶剤に溶解し、これをフィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。このフィルターは、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば日本国特許出願公開第2002-62667号明細書(特開2002-62667)に開示されるように、循環的な濾過を行ってもよく、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ってもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
【0159】
本発明の組成物は、粘度が100~500mPa・sであることが好ましい。本発明の組成物の粘度は、塗布性により優れる点で、100~300mPa・sがより好ましい。
なお、粘度は、E型粘度計により測定できる。
【0160】
<用途>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化するネガ型の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明の組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。本発明において形成されるパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用できる。
【0161】
〔パターン形成方法〕
本発明は上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法にも関する。以下、本発明のパターン形成方法について説明する。また、パターン形成方法の説明と併せて、本発明の感活性光線性又は感放射線性膜についても説明する。
【0162】
本発明のパターン形成方法は、
(i)上述した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって膜厚が1μm以上のレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)を支持体上に形成する工程(レジスト膜形成工程)、
(ii)上記レジスト膜を露光する(活性光線又は放射線を照射する)工程(露光工程)、及び、
(iii)上記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程(現像工程)、
を有する。
【0163】
本発明のパターン形成方法は、上記(i)~(iii)の工程を含んでいれば特に制限されず、更に下記の工程を有していてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の前に、(iv)前加熱(PB:PreBake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の後、かつ、(iii)現像工程の前に、(v)露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(iv)前加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(v)露光後加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
【0164】
本発明のパターン形成方法において、上述した(i)成膜工程、(ii)露光工程、及び(iii)現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
また、必要に応じて、レジスト膜と支持体との間にレジスト下層膜(例えば、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、及び、反射防止膜)を形成してもよい。レジスト下層膜を構成する材料としては、公知の有機系又は無機系の材料を適宜使用できる。
レジスト膜の上層に、保護膜(トップコート)を形成してもよい。保護膜としては、公知の材料を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開第2007/0178407号明細書、米国特許出願公開第2008/0085466号明細書、米国特許出願公開第2007/0275326号明細書、米国特許出願公開第2016/0299432号明細書、米国特許出願公開第2013/0244438号明細書、国際特許出願公開第2016/157988A号明細書に開示された保護膜形成用組成物を好適に使用できる。保護膜形成用組成物としては、上述した酸拡散制御剤を含むものが好ましい。
【0165】
支持体は、特に制限されるものではなく、IC等の半導体の製造工程、又は液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造工程のほか、その他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程等で一般的に用いられる基板を使用できる。支持体の具体例としては、シリコン、SiO、及びSiN等の無機基板等が挙げられる。
【0166】
加熱温度は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、70~130℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。
加熱時間は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、30~300秒が好ましく、30~180秒がより好ましく、30~90秒が更に好ましい。
加熱は、露光装置及び現像装置に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0167】
露光工程に用いられる光源波長に制限はないが、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光(EUV)、X線、及び電子線等が挙げられる。これらのなかでも波長248nm以上に吸収波長を有する光が好ましく、KrFエキシマレーザー(248nm)がより好ましい。
【0168】
(iii)現像工程においては、アルカリ現像液を用いた現像を行う。
【0169】
アルカリ現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩が用いられるが、これ以外にも無機アルカリ、1~3級アミン、アルコールアミン、及び環状アミン等のアルカリ水溶液も使用可能である。
更に、上記アルカリ現像液は、アルコール類、及び/又は界面活性剤を適当量含んでいてもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1~20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常10~15である。
アルカリ現像液を用いて現像を行う時間は、通常10~300秒である。
アルカリ現像液のアルカリ濃度、pH、及び現像時間は、形成するパターンに応じて、適宜調整できる。
【0170】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、及び、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0171】
(iii)現像工程の後に、リンス液を用いて洗浄する工程(リンス工程)を含むことが好ましい。
【0172】
アルカリ現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、例えば純水を使用できる。純水は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。この場合、現像工程又はリンス工程の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を追加してもよい。更に、リンス処理又は超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行ってもよい。
【0173】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、又はトップコート形成用組成物等)は、金属成分、異性体、及び残存モノマー等の不純物を含まないことが好ましい。上記の各種材料に含まれるこれらの不純物の含有量としては、1ppm以下が好ましく、100ppt以下がより好ましく、10ppt以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
【0174】
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過が挙げられる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。フィルターとしては、日本国特許出願公開第2016-201426号明細書(特開2016-201426)に開示されるような溶出物が低減されたものが好ましい。
フィルター濾過のほか、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル及びゼオライト等の無機系吸着材、並びに活性炭等の有機系吸着材を使用できる。金属吸着剤としては、例えば、日本国特許出願公開第2016-206500号明細書(特開2016-206500)に開示されるものが挙げられる。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、又は装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
【0175】
上記の各種材料は、不純物の混入を防止するために、米国特許出願公開第2015/0227049号明細書、及び日本国特許出願公開第2015-123351号明細書(特開2015-123351)等に記載された容器に保存されることが好ましい。
【0176】
本発明のパターン形成方法により形成されるパターンに、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、米国特許出願公開第2015/0104957号明細書に開示された、水素を含むガスのプラズマによってパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、日本国特許出願公開第2004-235468号明細書(特開2004-235468)、米国特許出願公開第2010/0020297号明細書、Proc. of SPIE Vol.8328 83280N-1“EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されるような公知の方法を適用してもよい。
また、上記の方法によって形成されたパターンは、例えば日本国特許出願公開第1991-270227号明細書(特開平3-270227)及び米国特許出願公開第2013/0209941号明細書に開示されたスペーサープロセスの芯材(Core)として使用できる。
【0177】
〔電子デバイスの製造方法〕
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。本発明の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び通信機器等)に、好適に搭載される。
【実施例
【0178】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0179】
以下に、第1表に示す感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に含まれる各種成分を示す。
<樹脂>
第1表に示される樹脂(樹脂P-1~P-6)の構造を以下に示す。
なお、樹脂P-1~P-6の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)はGPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定した(ポリスチレン換算量である)。また、樹脂の組成比(モル%比)は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
【0180】
【化21】
【0181】
<酸発生剤>
第1表に示される酸発生剤(PAG-1~PAG-12)の構造を以下に示す。
なお、PAG-1~PAG-5、PAG-7、及びPAG-8は、一般式(ZI-3)で表される化合物に該当する。また、PAG-6は、一般式(ZI-4)で表される化合物に該当する。
【0182】
【化22】
【0183】
<酸拡散制御剤>
第1表に示される酸拡散制御剤(D-1~D-4)の構造を以下に示す。
【0184】
【化23】
【0185】
<架橋剤>
第1表に示される架橋剤(A-1~A-8)の構造を以下に示す。
【0186】
【化24】
【0187】
<界面活性剤>
第1表に示される界面活性剤を以下に示す。
W-1:PF6320(OMNOVA(株)製)
W-2:メガファックF176(DIC(株)製;フッ素系)
W-3:ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業(株)製;シリコン系)
【0188】
<溶剤>
第1表に示される溶剤を以下に示す。
SL-1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(1-メトキシ-2-プロパノール)
SL-2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1-メトキシ-2-アセトキシプロパン)
SL-3:2-ヘプタノン
SL-4:シクロヘキサノン
SL-5:γ-ブチロラクトン
SL-6:プロピレンカーボネート
【0189】
<感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の調製>
第1表に示す各成分を、パターン形成後の膜厚が11μmとなるように固形分を調整して混合した。次いで、得られた混合液を、最初に孔径50nmのポリエチレン製フィルター、次に孔径10nmのナイロン製フィルター、最後に孔径5nmのポリエチレン製フィルターの順番で濾過することにより、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、樹脂組成物ともいう)を調液した。なお、樹脂組成物において、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味する。得られた樹脂組成物を、実施例及び比較例で使用した。
なお、各組成物に含まれる25種(Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Al、Li、Cr、Ni、Sn、Zn、Ag、As、Au、Ba、Cd、Co、Pb、Ti、V、W、Mo、Zr)の金属不純物成分量をAgilent Technologies社製ICP-MS装置(誘導結合プラズマ質量分析計)「Agilent 7500cs」にて測定したところ、各金属種の含有量はそれぞれ10ppb未満であった。
【0190】
【表1】
【0191】
〔パターン形成及び各種評価〕
<ネガ型パターン形成:KrF露光、アルカリ現像>
東京エレクトロン製スピンコーターACT-8を用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したSi基板(Advanced Materials Technology社製)上に、反射防止層を設けることなく、調製したレジスト組成物を基板が静止した状態で滴下した。滴下した後、基板を回転し、その回転数を、3秒間500rpmで維持し、その後2秒間100rpmで維持し、さらに3秒間500rpmで維持し、再び2秒間100rpmで維持した後、膜厚設定回転数(1200rpm)に上げて60秒間維持した。その後、ホットプレート上で130℃で60秒間加熱乾燥を行い、膜厚11μmのレジスト膜を形成した。このレジスト膜に対し、KrFエキシマレーザースキャナー(ASML製、PAS5500/850C波長248nm)を用いて露光した。照射後に110℃、90秒ベークし、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間浸漬した後、30秒間、純水でリンスして乾燥した。
【0192】
<性能評価>
以下に示す方法にて、得られたパターンの評価を行った。
(解像限界CD(Critical Dimension)(nm))
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S-4300)を用いて観察し、形成されたレジストパターン中の非レジスト部(ライン/スペース=4:1)の断面における、基板界面のスペース幅を解像限界CDとし、評価した。
結果を第2表に示す。
【0193】
(アスペクト比)
アスペクト比は、下記式(1)により求めた。
式(1): パターン形成後の膜厚(11μm)/得られた解像限界CD(nm)
結果を第2表に示す。
【0194】
(形状評価)
現像後のウェーハの断面SEM(Scanning Electron Microscope)の結果より、基板まで解像できており、パターンの直線性が良いもの(矩形状のもの)をA、基板まで解像できているがパターンの直線性が悪いもの(ボトム部が張り出しているもの)をBとして評価した。
結果を第2表に示す。
【0195】
【表2】
【0196】
実施例1~10の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いた場合、解像性及び形状特性が優れることが確認された。
また、実施例1~10の対比から、フェノール性水酸基を含む繰り返し単位(a1)と、一般式(3)で表される繰り返し単位とを含む樹脂を用いた場合(樹脂P-1に該当)、解像性及び形状特性がより優れることが確認された。
一方、比較例1~4の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いた場合、解像性及び形状特性のいずれについても所望の効果が得られないことが確認された。