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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】揮発性物質放散用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20221130BHJP
   A01N 25/18 20060101ALI20221130BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
C09K3/00 110A
C09K3/00 110B
A01N25/18
A01N25/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019558193
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2018044339
(87)【国際公開番号】W WO2019111839
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2017232966
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 剛
(72)【発明者】
【氏名】西口 英明
(72)【発明者】
【氏名】河田 洋嗣
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-132779(JP,A)
【文献】特開昭63-150202(JP,A)
【文献】特開2003-096155(JP,A)
【文献】特表2009-541571(JP,A)
【文献】特表2009-542831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
A01N 25/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)数平均分子量5000~50000のポリアルキレンオキシド化合物、ジオール化合物、及びジイソシアネート化合物を反応させて得られるポリアルキレンオキシド変性物、
(B)フィラー、及び
(C)揮発性物質
を含有する、揮発性物質放散用組成物(ただし、シリカにより表面が被覆された組成物を除く)
【請求項2】
前記ポリアルキレンオキシド化合物が、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、エチレンオキシド/ブチレンオキシド共重合体、プロピレンオキシド/ブチレンオキシド共重合体、及びエチレンオキシド/プロピレンオキシド/ブチレンオキシド共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の揮発性物質放散用組成物。
【請求項3】
前記ジオール化合物が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び1,9-ノナンジオールからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の揮発性物質放散用組成物。
【請求項4】
前記ジイソシアネート化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネ-ト(HMDI)、3-イソシアナ-トメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネ-ト(IPDI)、1,8-ジメチルベンゾール-2,4-ジイソシアネート、及び2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれかに記載の揮発性物質放散用組成物。
【請求項5】
(B)フィラーが、シリカ、炭酸マグネシウム、粘土、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、珪藻土、シクロデキストリン、及び修飾シクロデキストリンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれかに記載の揮発性物質放散用組成物。
【請求項6】
(C)揮発性物質が、香料並びに害虫又は害獣フェロモン及び駆除剤からなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項1~5のいずれかに記載の揮発性物質放散用組成物。
【請求項7】
揮発性物質配合液体組成物を吸液させるための、以下の(A)成分及び(B)成分を含有する組成物(ただし、シリカにより表面が被覆された組成物を除く)
(A)数平均分子量5000~50000のポリアルキレンオキシド化合物、ジオール化合物、及びジイソシアネート化合物を反応させて得られるポリアルキレンオキシド変性物
(B)フィラー
【請求項8】
以下の(A)成分及び(B)成分を含有する組成物(ただし、シリカにより表面が被覆された組成物を除く)に、揮発性物質配合液体組成物を吸液させる工程を含む、揮発性物質配合液体組成物中の揮発性物質の大気中への放出持続性を高める方法。
(A)数平均分子量5000~50000のポリアルキレンオキシド化合物、ジオール化合物、及びジイソシアネート化合物を反応させて得られるポリアルキレンオキシド変性物
(B)フィラー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性物質放散用組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂ゲル中に有用揮発性物質を含ませた組成物が、様々な用途に用いられている。例えば、当該揮発性物質が芳香性物質である場合には、室内によい香りを放散させることができる。あるいは、当該揮発性物質が害虫又は害獣誘因物質である場合には、害虫又は害獣を誘引することができ、これにより容易に駆除できるようになる。
【0003】
このような揮発性物質含有組成物においては、揮発性物質が長時間持続して放出されること(すなわち、放出持続性が高いこと)が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-32863号公報
【文献】特開平6-140052号公報
【文献】特開平8-12871号公報
【文献】特開平6-98627号公報
【文献】特開2001-172358号公報
【文献】特開2002-265780号公報
【文献】特開2002-331023号公報
【文献】特開2007-254363号公報
【文献】特表2017-517611号公報
【文献】国際公開第2013/084983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、揮発性物質の放出持続性に優れる揮発性物質含有組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定のポリアルキレンオキシド変性物、フィラー、及び揮発性物質を含有する組成物が、当該揮発性物質の放出持続性に優れることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(A)ポリアルキレンオキシド化合物、ジオール化合物、及びジイソシアネート化合物を反応させて得られるポリアルキレンオキシド変性物、
(B)フィラー、及び
(C)揮発性物質
を含有する、揮発性物質放散用組成物。
項2.
前記ポリアルキレンオキシド化合物が、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、エチレンオキシド/ブチレンオキシド共重合体、プロピレンオキシド/ブチレンオキシド共重合体、及びエチレンオキシド/プロピレンオキシド/ブチレンオキシド共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1に記載の揮発性物質放散用組成物。
項3.
前記ジオール化合物が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び1,9-ノナンジオールからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1又は2に記載の揮発性物質放散用組成物。
項4.
前記ジイソシアネート化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネ-ト(HMDI)、3-イソシアナ-トメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネ-ト(IPDI)、1,8-ジメチルベンゾール-2,4-ジイソシアネート、及び2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1~3のいずれかに記載の揮発性物質放散用組成物。
項5.
(B)フィラーが、シリカ、炭酸マグネシウム、粘土、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、珪藻土、シクロデキストリン、及び修飾シクロデキストリンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1~4のいずれかに記載の揮発性物質放散用組成物。
項6.
(C)揮発性物質が、香料並びに害虫又は害獣フェロモン及び駆除剤からなる群より選択される1種又は2種以上である、項1~5のいずれかに記載の揮発性物質放散用組成物。
項7.
揮発性物質配合液体組成物を吸液させるための、以下の(A)成分及び(B)成分を含有する組成物。
(A)ポリアルキレンオキシド化合物、ジオール化合物、及びジイソシアネート化合物を反応させて得られるポリアルキレンオキシド変性物
(B)フィラー
項8.
以下の(A)成分及び(B)成分を含有する組成物に、揮発性物質配合液体組成物を吸液させる工程を含む、揮発性物質配合液体組成物中の揮発性物質の大気中への放出持続性を高める方法。
(A)ポリアルキレンオキシド化合物、ジオール化合物、及びジイソシアネート化合物を反応させて得られるポリアルキレンオキシド変性物
(B)フィラー
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、揮発性物質の放出持続性を高めることができる。本発明の揮発性物質放散用組成物は、含まれる揮発性物質が徐々に放散されることにより、揮発性物質が有する効果が長持ちする(つまり、徐放性にも優れる)。そのうえ、本発明の揮発性物質放散用組成物は、通常の樹脂が含有することができる揮発性物質量よりも、さらに多くの量の揮発性物質を含有することができる。このため、放出開始から一定時間(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24時間、あるいは1、2、3、4、5、6、又は7日)経過後までに放出できる揮発性物質量や、放出できる揮発性物質総量も、通常の樹脂に比べて多い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0010】
本発明に包含される揮発性物質放散用組成物は、(A)特定のポリアルキレンオキシド変性物、(B)フィラー、及び(C)揮発性物質を含有する。これらの成分を、それぞれ、(A)成分、(B)成分、(C)成分ということがある。また、当該揮発性物質放散用組成物を本発明の揮発性物質放散用組成物ということがある。
【0011】
前記特定のポリアルキレンオキシド変性物((A)成分)は、ポリアルキレンオキシド化合物、ジオール化合物、及びジイソシアネート化合物を反応(重合)させて得られる化合物である。
【0012】
前記ポリアルキレンオキシド化合物としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、エチレンオキシド/ブチレンオキシド共重合体、プロピレンオキシド/ブチレンオキシド共重合体、及びエチレンオキシド/プロピレンオキシド/ブチレンオキシド共重合体等を例示できる。ポリアルキレンオキシド化合物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ここでの「/」は各オキシドの共重合体であることを示すため用いた記号である。例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体を表す。
【0013】
特に制限はされないが、数平均分子量5000~50000のポリアルキレンオキシド化合物が好ましく、数平均分子量10000~30000のポリアルキレンオキシド化合物がより好ましい。
【0014】
なお、ここでの数平均分子量の値は、次の記載の測定方法により求められる値である。数平均分子量測定方法:ポリアルキレンオキシド変性物の濃度が1質量%のジメチルホルムアミド溶液を調整し、高速液体クロマトグラフを用いて測定する。そして、分子量が既知の分子量マーカー(ポリエチレンオキシド)を同一条件で測定し、較正曲線を作成して、数平均分子量(Mn)を算出する。なお測定条件は以下の通りである。
【0015】
測定機:HLC-8220(東ソー株式会社製)
カラム:東ソー株式会社製 TSK GEL Multipore HXL-M カラム温度:40℃
溶出液:ジメチルホルムアミド
流速:0.6ml/min
また、エチレンオキシド基を90質量%以上有するポリアルキレンオキシド化合物が好ましく、エチレンオキシド基を95質量%以上有するポリアルキレンオキシド化合物がより好ましい。
【0016】
前記ジオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び1,9-ノナンジオール等が例示できる。これらのジオール化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前記ジオール化合物に、前記ポリアルキレンオキシド化合物は含まれない。すなわち、前記ジオール化合物は、前記ポリアルキレンオキシド化合物以外のジオール化合物である。
【0017】
前記ジオール化合物の使用割合は、前記ポリアルキレンオキシド化合物1モルに対して、好ましくは0.8~2.5モル、より好ましくは1.0~2.0モルである。なお、ポリアルキレンオキシド化合物のモル数は、その質量を数平均分子量で除することにより求めることができる。
【0018】
前記ジイソシアネート化合物としては、同一分子内にイソシアネート基(-NCO)を2個有する化合物であれば特に限定されず、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネ-ト(HMDI)、3-イソシアナ-トメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネ-ト(IPDI)、1,8-ジメチルベンゾール-2,4-ジイソシアネート、及び2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物の中でも、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネ-ト(HMDI)および1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が好適に用いられる。これらのジイソシアネート化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
前記ポリアルキレンオキシド化合物、ジオール化合物、及びジイソシアネート化合物のそれぞれの使用割合は、ポリアルキレンオキシド化合物の末端水酸基およびジオール化合物の水酸基の合計モル数に対する、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数の比[R値=(-NCO基/-OH基)]が、好ましくは0.7~1.2程度、より好ましくは0.8~1.05程度である。
【0020】
ポリアルキレンオキシド化合物、ジオール化合物、及びジイソシアネート化合物を反応させる方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、これらをトルエン、キシレン、又はジメチルホルムアミド等の反応溶媒に溶解あるいは分散させて反応させる方法;粉末状または固体状のこれらを均一に混合した後、所定の温度に加熱して反応させる方法;等が挙げられる。工業的実施の見地からは、各原料を溶融状態で連続的に供給し多軸押出機中で混合して反応させる方法が好ましい。この場合、前記反応の温度としては、70~210℃であることが好ましい。
【0021】
また、ポリアルキレンオキシド変性物を製造する際、反応を促進させる観点から、反応系内に、触媒を添加してもよい。例えば、触媒として、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、2-エチルヘキサン酸スズ、トリエチレンジアミン等を適当量添加することができる。
【0022】
このような方法により、ポリアルキレンオキシド変性物を得ることができる。このような方法によれば、ポリアルキレンオキシド変性物は、通常、例えばペレット、シート、又はフィルム等の形態で得られる。これらをそのまま本発明の揮発性物質放散用組成物に用いてもよいし、例えば粉砕機等により粉砕してから、本発明の揮発性物質放散用組成物に用いてもよい。粉砕方法は、特に限定されないが、粉砕時の剪断発熱による融着を防ぐために冷凍粉砕することが好ましい。例えば液体窒素を用いて冷凍粉砕することができる。
【0023】
なお、ポリアルキレンオキシド変性物を製造する際、反応系内に(B)フィラーを加えてもよい。この場合には、得られたポリアルキレンオキシド変性物含有組成物には(A)成分及び(B)成分が既に含まれているため、当該組成物に(C)成分を加えることにより、本発明の揮発性物質放散用組成物を調製することができる。なお、反応系内に(B)フィラーを加えて得られたポリアルキレンオキシド変性物含有組成物についても、そのまま本発明の揮発性物質放散用組成物に用いてもよいし、例えば粉砕機等により粉砕してから、本発明の揮発性物質放散用組成物に用いてもよい。粉砕方法は、特に限定されないが、粉砕時の剪断発熱による融着を防ぐために冷凍粉砕することが好ましい。例えば液体窒素を用いて冷凍粉砕することができる。
【0024】
当該ポリアルキレンオキシド変性物は、吸水性である(つまり、吸水能を有する)ことが好ましい。特に、本発明の揮発性物質放散用組成物を調製するにあたり、(C)揮発性物質を当該ポリアルキレンオキシド変性物に含ませることが好ましく、この場合、例えば、揮発性物質を水に加え、溶解又は分散させたうえで、あるいは揮発性物質と水とが層分離(2層分離)している状態とし、当該揮発性物質配合液体を当該ポリアルキレンオキシド変性物に吸液させる方法を好ましく用いることができる。特に限定されないが、ポリアルキレンオキシド変性物の吸水能は、好ましくは10~40g/g、より好ましくは15~35g/gである。なお、本発明において吸水能とは、1.0gのポリアルキレンオキシド変性物を秤量(A[g])した後、100mLのイオン交換水に、室温下(22℃)で、24時間浸漬してゲル化させ、200mesh(孔径:75μm)の金網にてゲルを濾過した後の、濾物(残渣)である当該ゲルの質量(B[g])を測り、次式により、算出される値(Aが1なので、つまるところ、B)である。
【0025】
吸水能(g/g)=B/A
また、特に限定されないが、当該ポリアルキレンオキシド変性物の水溶出分は、好ましくは10~40質量%であり、より好ましくは15~35%である。なお、本発明における水溶出分とは、上記吸水能測定後のゲルを、50℃の熱風乾燥機にて8時間乾燥させた後の質量を秤量し(C[g])、次式により求められる値である。
【0026】
水溶出分(質量%)={(A-C)/A}×100
【0027】
前記フィラー((B)成分)としては、本発明の効果を損なわない限り、樹脂に使われることが知られているフィラーを適宜選択して用いることができる。フィラーは無機フィラーであっても有機フィラーであってもよい。
【0028】
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、炭酸マグネシウム、粘土、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、珪藻土等が挙げられる。
【0029】
シリカは、比表面積が40m/g以上のものが好ましく、50m/g以上、60m/g以上、70m/g以上、80m/g以上、90m/g以上、100m/g以上、又は110m/g以上のものがより好ましい。比表面積の上限は特に制限されないが、例えば400m/g以下、380m/g以下、350m/g以下、又は300m/g以下が例示される。また、シリカは、吸油量が100mL/100g以上のものが好ましく、150mL/100g以上のものがより好ましく、190mL/100g以上のものがさらに好ましい。吸油量の上限は特に制限されないが、例えば400mL/100g以下、380mL/100g以下、350mL/100g以下、又は300mL/100g以下が例示される。なお、当該吸油量は、JIS K5101-13-2:2004に記載の方法で測定した値である。
【0030】
粘土は、具体的には、例えばベントナイト、スメクタイト等が挙げられる。本明細書において、ベントナイトには、有機化ベントナイト(トリメチルステアリルアンモニウムベントナイト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムベントナイト、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト等)が包含される。また、本明細書において、スメクタイトには、有機化スメクタイト(例えば、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、珪酸リチウム・ナトリウム・マグネシウムトリオクチルメチルアンモニウム、珪酸リチウム・ナトリウム・マグネシウム塩化ジポリオキシエチレンヤシアルキル(C8~C18)メチルアンモニウム等)、が包含される。
【0031】
また有機フィラーとしては、例えば、シクロデキストリン(例えばα-、β-、又はγ-シクロデキストリン等)、修飾シクロデキストリン(例えばメチル修飾-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル修飾-シクロデキストリン等)、等が挙げられる。中でも、シリカ、炭酸マグネシウム、粘土、シクロデキストリン、修飾シクロデキストリン等が好ましい。
【0032】
また、フィラーは粒子(粉体)であることが好ましい。
【0033】
フィラーは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
前記揮発性物質((C)成分)は、(A)成分と共に使用された場合に、常温常圧(25℃、1気圧)で全く揮発しないことがないのであれば、特に制限されない。特に揮発することにより芳香性が優れる物質(香料)や、あるいは害虫又は害獣を誘因及び/又は駆除できる物質(例えばフェロモンや駆除剤)が好ましい。すなわち、香料、並びに害虫フェロモン、害獣フェロモン、害虫駆除剤、及び害獣駆除剤からなる群より選択される1種又は2種以上が好ましい。害虫としては特に制限はされないが、例えば衛生害虫や食品害虫が挙げられ、より具体的にはゴキブリ、ハエ、アブ、カ、ムカデ、ノミ、シラミ、ダニ、ハチ、ケムシ、ムカデ、ヤスデ、ガ、アリ、シロアリ等が挙げられる。また害獣としては特に制限はされないが、例えば小型哺乳類(特に小型げっ歯類)が挙げられ、マウス、ラット等が挙げられる。
【0035】
特に限定はされないが、香料としては、例えば、アロオシメン、カプロン酸アリル、ヘプトン酸アリル、プロピオン酸アミル、アネソール、アニスアルデヒド、アニソール、ベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、ベンジルアセトン、ベンジルアルコール、酪酸ベンジル、ギ酸ベンジル、イソ吉草酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、β γ-ヘキセノール、カンフェン、樟脳、カルバクロール、左旋性-カルベオール、d-カルボン、左旋性-カルボン、ギ酸シンナミル、シトラール(ネラール)、シトロネロール、酢酸シトロネリル、イソ酪酸シトロネリル、シトロネリルニトリル、プロピオン酸シトロネリル、クミンアルコール、クミンアルデヒド、Cyclal C、酢酸シクロヘキシルエチル、デシルアルデヒド、ジヒドロミルセノール、ジメチルベンジルカルビノール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、ジメチルオクタノール、ジフェニルオキシド、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、エチルアミルケトン、安息香酸エチル、酪酸エチル、エチルヘキシルケトン、酢酸エチルフェニル、オイカリプトール、オイゲノール、酢酸フェンキル、フェンキルアルコール、酢酸フロール(酢酸トリシクロデセニル)、フルテン(frutene)(プロピオン酸トリシクロデセニル)、γ-メチルイオノン、γ-n-メチルイオノン、γ-ノナラクトン、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ギ酸ゲラニル、イソ酪酸ゲラニル、ゲラニルニトリル、ヘキセノール、酢酸ヘキセニル、酢酸cis-3-ヘキセニル、イソ酪酸ヘキセニル、チグリン酸cis-3-ヘキセニル、酢酸ヘキシル、ギ酸ヘキシル、ネオペンタン酸ヘキシル、チグリン酸ヘキシル、ヒドロアトロパアルコール、ヒドロキシシトロネラール、インドール、イソアミルアルコール、α-イオノン、β-イオノン、γ-イオノン、α-イロン、酢酸イソボルニル、安息香酸イソブチル、イソブチルキノリン、イソメントール、イソメントン、酢酸イソノニル、イソノニルアルコール、p-イソプロピルフェニルアセトアルデヒド、イソプレゴール、酢酸イソプレギル、イソキノリン、cis-ジャスモン、ラウリンアルデヒド(ドデカナール)、リグストラール、リモネン、リナロール、リナロオールオキシド、酢酸リナリル、ギ酸リナリル、メントン、酢酸メンチル、メチルアセトフェノン、メチルアミルケトン、アントラニル酸メチル、安息香酸メチル、酢酸メチルベンジル、メチルカビコール、メチルオイゲノール、メチルヘプテノン、炭酸メチルヘプチン、メチルヘプチルケトン、メチルヘキシルケトン、α-イソ(γ)メチルイオノン、メチルノニルアセトアルデヒド、メチルオクチルアセトアルデヒド、酢酸メチルフェニルカルビニル、サリチル酸メチル、ミルセン、ネラール、ネロール、酢酸ネリル、酢酸ノニル、ノニルアルデヒド、オクタラクトン、オクチルアルコール(オクタノール-2)、オクチルアルデヒド、オレンジテルペン類(d-リモネン)、p-クレゾール、p-クレジルメチルエーテル、p-シメン、p-メチルアセトフェノン、フェノキシエタノール、フェニルアセトアルデヒド、酢酸フェニルエチル、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルジメチルカルビノール、ピネン(α-ピネン、β-ピネン)、酢酸プレニル、酪酸プロピル、プレゴン、ローズオキサイド、サフロール、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピネオール(4-テルピネオール、α-テルピネオール)、テルピノレン、酢酸テルピニル、テトラヒドロリナロオール、テトラヒドロミルセノール、トナリド、ウンデセナール、ベラトロール、ベルドックス、ベルテネックス、ビリジン等が挙げられる。
【0036】
また、フェロモンとしては、性フェロモン、集合フェロモン、警報フェロモン等が挙げられる。具体的な物質としては、誘因物質(特に昆虫誘因物質)が挙げられ、より具体的には、例えば(Z)-9-トリコセン、(Z)-11-ベキ1ノデセン-1-アルデヒド、(Z)-5-へキサデセン、1-クロル-3-メチル-ブド-2-エン、3-クロル-3-メチル-ブド-1-エン、テルピネオ-ル、フアルネソ-ル、ゲラニオ-ル、酢酸、イソバレリアン酸、トリメチルアミン、インド-ル、ピペリジン、フェニルエタノ-ル、炭酸アンモニウム、スカト-ル、ホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、カルバミン酸アンモニウム、パパイン、酪酸、イソバレルアルデヒド、エチルアミン、塩素化されたアルケンポリオ-ルの脂肪族モノエステル、パンクレアチン、バニリン等が挙げられる。
【0037】
駆除剤としては、例えば、サリチル酸、安息香酸、ソルビン酸、p-クロロ-m-キシレノ-ル、2-(4’-チアゾイル)ベンズイミダゾ-ル等が挙げられる。
【0038】
またあるいは、昆虫フェロモンとしては、炭素数12~20の脂肪族直鎖状アルデヒド、飽和又は二重結合を一つ又は二つ以上有する炭素数12~20の脂肪族直鎖状アセテート、炭素数7~20の脂肪族直鎖状アルコール、炭素数7~15のスピロアセタール、炭素数10~25の脂肪族直鎖状ケトン、炭素数10~30の脂肪族炭化水素、炭素数10~20のカルボン酸等が挙げられ、特に、炭素数12~20の脂肪族直鎖状アルデヒド、飽和又は二重結合を一つ又は二つ以上有する炭素数12~20の脂肪族直鎖状アセテート、炭素数7~20の脂肪族直鎖状アルコール及び炭素数7~15のスピロアセタールが好ましい。具体的には、ピンクボールワーム(ワタアカミムシ)の性フェロモン物質であるZ7Z11-ヘキサデカジエニルアセテート及びZ7E11-ヘキサデカジエニルアセテート、オリエンタルフルーツモス(ナシヒメシンクイ)の性フェロモン物質であるZ-8-ドデセニルアセテート、ピーチツイッグボーラー(モモキバガ)の性フェロモン物質であるE-5-デセニルアセテート、グレープベリーモス(ホソヒメハマキ)の性フェロモン物質であるZ-9-ドデセニルアセテート、ヨーロピアングレープヴァインモス(ブドウホソハマキ)の性フェロモン物質であるE7Z9-ドデカジエニルアセテート、ライトブラウンアップルモス(リンゴウスチャイロハマキ)の性フェロモン物質であるE-11-テトラデセニルアセテート、コドリングモス(コドリンガ)の性フェロモン物質であるE8E10-ドデカジエノール、リーフローラー(ハマキガ)の性フェロモン物質であるZ-11-テトラデセニルアセテート、ピーチツリーボーラー(コスカシバ)の性フェロモン物質であるZ3Z13-オクタデカジエニルアセテート及びE3Z13-オクタデカジエニルアセテート、アメリカンボールワーム(オオタバコガ)の性フェロモン物質であるZ-11-ヘキサデセナール、オリエンタルタバコバッドワーム(タバコガ)の性フェロモン物質であるZ-9-ヘキサデセナール、ソイビーンポッドボーラー(マメシンクイガ)の性フェロモン物質であるE8E10-ドデカジエニルアセテート、ダイアモンドバックモス(コナガ)の性フェロモン物質であるZ-11-ヘキサデセニルアセテート及びZ-11-ヘキサデセナール、キャベッジアーミーワーム(ヨトウガ)の性フェロモン物質であるZ-11-ヘキサデセニルアセテート、Z-11-ヘキサデセノール及びn-ヘキサデシルアセテート、ビートアーミーワーム(シロイチモジヨトウ)の性フェロモン物質であるZ9E12-テトラデカジエニルアセテート及びZ-9-テトラデセノール、コモンカットワーム(ハスモンヨトウ)の性フェロモン物質であるZ9E11-テトラデカジエニルアセテート及びZ9E12-テトラデカジエニルアセテート、フォールアーミーワームの性フェロモン物質であるZ-9-テトラデセニルアセテート、トマトピンワームの性フェロモン物質であるE-4-トリデセニルアセテート、ライスステムボーラー(ニカメイガ)の性フェロモン物質であるZ-11-ヘキサデセナール及びZ-13-オクタデセナール、コーヒーリーフマイナーの性フェロモン物質である5,9-ジメチルペンタデカン及び5,9-ジメチルヘキサデカン、ピーチリーフマイナー(モモハモグリガ)の性フェロモン物質である14-メチル-1-オクタデセン、ピーチフルーツモス(モモシンクイガ)の性フェロモン物質であるZ-13-イコセン-10-オン、ジプシーモス(マイマイガ)の性フェロモン物質である7,8-エポキシ-2-メチルオクタデカン、パインプロセッショナリーモスの性フェロモン物質であるZ-13-ヘキサデセン-11-イニルアセテート、ケブカアカチャコガネの性フェロモン物質である2-ブタノール、イエローウィッシュエロンゲイトチェイファー(ナガチャコガネ)の性フェロモン物質であるZ-7,15-ヘキサデカジエン-4-オリド、シュガーケインワイヤーワーム(オキナワカンシャクシコメツキ)の性フェロモン物質であるn-ドデシルアセテート、シュガーケインワイヤーワーム(サキシマカンシャクシコメツキ)の性フェロモン物質であるE-9,11-ドデカジエニルブチレート及びE-9,11-ドデカジエニルヘキサネート、カプレアスチェイファー(ドウガネブイブイ)の性フェロモン物質である(R)-Z-5-(オクト-1-エニル)-オキサシクロペンタン-2-オン、ライスリーフバグ(アカヒゲヒソミドリカスミカメ)の性フェロモン物質であるヘキシルヘキサノエート、E-2-ヘキセニルヘキサノエート及びオクチルブチレート、ソルガムプラントバグ(アカスジカスミカメ)の性フェロモン物質であるヘキシルブチレート、E-2-ヘキセニルブチレート及びE-4-オキソ-2-ヘキセナール、ホワイトピーチスケール(クワシロカイガラムシ)の性フェロモン物質である(6R)-Z-3,9-ジメチル-6-イソプロペニル-3,9-デカジエニルプロピオネート及び(6R)-Z-3,9-ジメチル-6-イソプロペニル-3,9-デカジエノール、バインミリーバグ(ブドウコナカイガラムシ)の性フェロモン物質である(S)-5-メチル-2-(1-プロペン-2-イル)-4-ヘキセニル3-メチル-2-ブテノエート、ハウスフライ(イエバエ)の性フェロモン物質であるZ-9-トリコセン、ジャーマンコックローチ(チャバネゴキブリ)の性フェロモン物質であるジェンティシルキノンイソバレレート、オリーブフルーツフライ(オリーブミバエ)の性フェロモン物質である1,7-ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0039】
揮発性物質は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。香料である物質と害虫又は害獣フェロモン又は駆除剤である物質とを組み合わせて用いることもできるが、特に、香料である物質を1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いるか、あるいは、害虫フェロモン、害獣フェロモン、害虫駆除剤、及び害獣駆除剤からなる群から選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることが、好ましい。
【0040】
なお、本発明の揮発性物質放散用組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の成分が含まれていてもよい。当該その他成分として、例えば不揮発性成分が含まれていてもよい。その他成分としては、例えば殺虫成分が好ましく挙げられる。殺虫成分としては、例えばネオニコチノイド系のジノテフランやアセタミプリド、ピロール系のクロルフェナピル、フェニルピラゾール系のフィプロニル、マクロライドラクトン系のエマメクチン安息香酸塩、有機リン系のトリクロフォン等が好適に挙げられる。これらのなかでも水溶性の殺虫剤が好ましく、ジノテフランが特に好ましい。
【0041】
本発明の揮発性物質放散用組成物においては、(A)成分及び(B)成分の質量比が、1:0.0001~0.2程度であることが好ましく、1:0.001~0.15程度であることがより好ましく、1:0.01~0.1程度であることがさらに好ましい。これらの範囲において、(B)成分質量比下限は、0.0001、0.0005、0.001、0.005、又は0.01であってもよい。また、これらの範囲において、(B)成分質量比上限は、0.2、0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、又は0.1であってもよい。
【0042】
本発明の揮発性物質放散用組成物の製造方法は、特に制限されない。例えば、まず(A)成分と(B)成分を含む組成物((A)及び(B)含有組成物)を調製し、これに(C)成分を含ませることにより、製造することができる。また、その他成分を含ませる場合には、例えば、(C)成分を含ませるときに、あわせてその他成分を含ませることができる。
【0043】
(A)及び(B)含有組成物を調製する場合、まず(A)成分を調製した後、これに(B)成分を混合してもよいし、上述したように、(A)成分調製時(重合反応時)に当該反応系に予め(B)成分を加えておいてもよい。(A)成分を調製した後、これに(B)成分を混合する方法としては、樹脂にフィラーを加える際に使用される公知の方法を用いることができる。より具体的には、例えば、ローラー、ニーダー、又はエクストルーダー等を用いて、必要に応じて加熱しながら、(A)成分及び(B)成分を混合することで、(A)及び(B)含有組成物を調製することができる。
【0044】
(A)及び(B)含有組成物に(C)成分を含ませる方法としては、例えば、(C)成分を配合した液体組成物を、(A)及び(B)含有組成物に吸液させる方法が挙げられる。(C)成分配合液体組成物の溶媒としては、水、有機溶媒(例えばエタノール等)、及びこれらの混合液が例示でき、特に水が好ましい。(C)成分配合液体組成物としては、溶媒及び(C)成分を含む組成物が好ましく、溶媒及び(C)成分のみからなる組成物がより好ましい。(C)成分配合液体組成物において、溶媒は80~99質量%含まれることが好ましく、90~98質量%含まれることがより好ましい。当該範囲の下限は、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、又は94質量%程度であってもよい。また、当該範囲の上限は、99、98、97、又は96質量%程度であってもよい。また、(C)成分配合液体組成物において、(C)成分は1~20質量%含まれることが好ましく、2~10質量%含まれることがより好ましく、3~6質量%含まれることがより好ましい。当該範囲の下限は、1、2、3、又は4質量%であってもよい。また当該範囲の上限は、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、又は6質量%であってもよい。
【0045】
(C)成分配合液体組成物には、溶媒及び(C)成分以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば界面活性剤が挙げられ、非イオン性界面活性剤が好ましい。より具体的には例えばノニルフェノール系界面活性剤を挙げることができる。(C)成分配合液体組成物における界面活性剤の含有量としては、例えば0.05~0.5質量%を挙げることができ、0.06~0.4質量、0.07~0.3質量%、0.08~0.2質量%、又は0.09~0.15質量%程度であってもよい。
【0046】
(C)成分を配合した液体組成物を、(A)及び(B)含有組成物に吸液させる場合において、(A)及び(B)含有組成物、並びに、(A)及び(B)含有組成物が吸液する(C)成分配合液体組成物の、質量比は、1:1~30程度であることが好ましく、1:1~25程度であることがより好ましく、1:1~20程度であることがさらに好ましい。当該質量上限は、1:2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30程度であってもよい。
【0047】
本発明は、(A)及び(B)含有組成物を、特に揮発性物質配合液体組成物を吸液させる用途に用いる実施形態も包含する。すなわち、揮発性物質配合液体組成物を吸液させるための、(A)成分及び(B)成分を含有する組成物も本発明に包含される。また、本発明は、(A)及び(B)含有組成物に揮発性物質配合液体組成物を吸液させる工程を含む、揮発性物質配合液体組成物中の揮発性物質の大気中への放出持続性を高める方法も包含する。これらの実施形態についての各種条件は、上記の説明と同様である。
【0048】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、上述した本発明の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本発明に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本発明には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例
【0049】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0050】
[評価方法]
下記製造例に記載のポリアルキレンオキシド変性物について、吸水能、水溶出分、及び中位径(製造後更に粉砕した場合)を次の方法に従って測定した。
(1)吸水能
ポリアルキレンオキシド変性物の吸水能については、以下の方法により測定した。
【0051】
1.0gのポリアルキレンオキシド変性物を秤量(A[g])した後、200mL容のビーカーに計りとった100mLのイオン交換水に、室温下(22℃)で、24時間浸漬してゲル化させた。その後、200mesh(孔径:75μm)の金網にてゲルをろ過し、その質量(B[g])を測り、次式により、吸水能を算出した。
【0052】
吸水能(g/g)=B/A
(2)水溶出分
上記吸水能測定後のゲルを、50℃の熱風乾燥機にて8時間乾燥させた後の質量を秤量し(C[g])、次式により水溶出分を求めた。
【0053】
水溶出分(質量%)={(A-C)/A}×100
(3)中位径
乾式篩分け法(JIS Z8815)により中位径を求めた。具体的には、得られたサンプル50gを秤量し、これをJIS標準篩(JIS Z8801)を使用して篩分けした後に篩毎に秤量し、その結果に基づいて積算質量が50%になる中位径を求めた。
【0054】
製造例I:ポリアルキレンオキシド変性物の製造
80℃に保温された攪拌機を備えた貯蔵タンクAに、十分に脱水した数平均分子量20000のポリエチレンオキシド100質量部、1,4-ブタンジオール0.9質量部およびジオクチルスズジラウレート0.1質量部の割合で投入し、窒素ガス雰囲気下で攪拌して均一な混合物とした。これとは別に、30℃に保温された貯蔵タンクBにジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートを投入し、窒素ガス雰囲気下で貯蔵した。
【0055】
定量ポンプを用いて、貯蔵タンクAの混合物を500g/分の速度にて、貯蔵タンクBのジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートを19.4g/分の速度にて、110~140℃に設定した2軸押出機に連続的に供給し(R値=1.00)、押出機中で混合して反応を行い、押出機出口からストランドを出し、ペレタイザーによりペレット化して、ポリアルキレンオキシド変性物を得た。当該製造例Iで得られたポリアルキレンオキシド変性物ペレットを、以下の例にポリアルキレンオキシド変性物として用いた。
【0056】
なお、得られたポリアルキレンオキシド変性物の吸水能は25g/g、水溶出分は19質量%であった。
【0057】
製造例II:ポリアルキレンオキシド変性物の製造
数平均分子量15000のエチレンオキシド/プロピレンオキシド(質量比:90/10)共重合体を250g/分の速度にて、また、40℃に加熱したエチレングリコールを2.1g/分の速度にて、それぞれ40mmφ単軸押出機(L/D=40、設定温度:90℃)に供給して両者を溶融混合した。なお、φはスクリューの直径を意味する。
【0058】
吐出口から得られる混合物(均一な溶融状態で吐出されており、HPLCにて分析して仕込み比で混合されていることを確認した)を、30mmφの2軸押出機(L/D=41.5)のホッパー口(設定温度:80℃)へ連続的に供給した。同時に2軸押出機のホッパー口にはジオクチルスズジラウレートを0.5g/分の速度にて供給した。
【0059】
さらに、前記2軸押出機のホッパー口の下流側に位置するスクリューバレル部に、30℃に調整したジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートをも12.4g/分の速度にて供給し(R値=0.95)、窒素雰囲気下で連続的に反応させた(設定温度:180℃)。2軸押出機出口から得られるストランドを冷却後、ペレタイザーによりペレット化してポリアルキレンオキシド変性物を得た。
【0060】
なお、得られたポリアルキレンオキシド変性物の吸水能は20g/g、水溶出分は15質量%であった。
【0061】
製造例1~16
ポリアルキレンオキシド変性物(製造例Iで調製したもの)50gに各種フィラーを0.5g(1重量部:表1)、1.5g(3重量部:表2)、2.5g(5重量部:表3)、又は5g(10重量部:表4)配合した組成物を、4インチロール((株)安田精機製作所製(型式:No.191-TM TEST MIXING ROLL))によりローラー温度設定45~55℃にて溶融・混練して作製した。その組成物を68tホットプレス((株)東海機器製作所製(TYPE:VH6-5A-120B))により、熱板温度設定150℃、熱板圧力設定30kgf/cm条件下にて3分間加圧することで、厚さ2mmのシートを作製した。
用いた各種フィラーについて、表1~表4に示す。なお、以下の表では、ポリアルキレンオキシド変性物を「樹脂」とも記載する。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
なお、各種フィラーは市販品を購入して用いた。各種フィラーの詳細情報は次の通りである。なお、シリカの比表面積は窒素ガス吸着法で、吸油量はJIS K5101-13-2:2004に記載の方法で、それぞれ測定した値である。
フィラー(1):有機化スメクタイト スメクトンSAN [クニミネ工業株式会社製]
フィラー(2):有機化スメクタイト スメクトンSTN [クニミネ工業株式会社製]
フィラー(3):シリカビーズ ニップシールEL [東ソー・シリカ株式会社製](比表面積:48m/g、吸油量:180mL/100g)
フィラー(4):シリカ カープレックス 80 [エボニック・ジャパン株式会社製](比表面積:200m/g、吸油量:245mL/100g)
フィラー(5):α-シクロデキストリン CAVAMAX W6 Food[株式会社シクロケム製]
フィラー(6):β-シクロデキストリン CAVAMAX W7 Food[株式会社シクロケム製]
フィラー(7):γ-シクロデキストリン CAVAMAX W8 Food[株式会社シクロケム製]
フィラー(8):メチル修飾-シクロデキストリン CAVASOL W7M[株式会社シクロケム製]
フィラー(9):ヒドロキシプロピル修飾-シクロデキストリン CAVASOL W7HP[株式会社シクロケム製]
フィラー(10):塩基性炭酸マグネシウム(軽質)[林純薬製]
【0067】
実施例1~17
製造例1~16で得られた組成物をスーパーストレートカッター((株)ダンベル製(型式:SSK-1000S-D 打ち抜き寸法(L):100mm))にて、縦、横4mm角のペレット状に成形し、各種組成物のペレット(縦、横、厚み:4mm、4mm、2mm)を得た。これらを実施例1~16にそれぞれ使用した。また、これらペレットのうち、製造例16で得られた組成物から得られたペレットを液体窒素に浸漬した後に、中位径が60μmになるように粉砕して組成物の粉体を得た。この粉体を実施例17に使用した。
【0068】
得られた各種組成物のペレット又は粉体1g(ペレットの場合、個数:約20個)を、揮発性物質配合液体A、B、又はC 10gに浸漬し、24時間吸液させた後、組成物のペレット又は粉体に吸液されなかった余剰の揮発性物質配合液体だけを分離して、ペレット状又は粉体状の吸液組成物(すなわち、揮発性物質放散用組成物)を得た(実施例1~17)。得られた各種吸液組成物について、表5にまとめて示す。
【0069】
【表5】
【0070】
実施例等に用いた揮発性物質配合液体A、B、又はCの各組成を表6に示す。なお、実施例1~16において、揮発性物質配合液体Aを用いた例を実施例1a~16a、揮発性物質配合液体Bを用いた例を実施例1b~16b、揮発性物質配合液体Cを用いた例を実施例1c~16cとする。また、実施例17において、揮発性物質配合液体Aを用いた例を実施例17aとする。
【0071】
【表6】
【0072】
実施例1~16で得られた吸液組成物のうち、揮発性物質配合液体Aを吸液させて調製した組成物のペレット3個を、25mLバイアル瓶に採取した後、40℃のヘッドスペースオーブン内で17分間維持し、25mLバイアル瓶内の気相部のガスを、GC分析(ヘッドスペース法)にて定量分析することで、吸液組成物から放出された揮発性成分の量を分析した。また、実施例17で得られた吸液組成物のうち、揮発性物質配合液体Aを吸液させて調製した組成物については、0.1gをバイアル瓶に採取し、同様にして吸液組成物から放出された揮発性成分の量を分析した。
【0073】
(GC条件 ・装置本体:GC-2014(島津製作所製)、・オートサンプラー装置:HT-2800T(アルファ・モス・ジャパン(株)製)、・カラム:G-250、・キャリア:He(流量:50mL/min)、・検出器:FID、・INJ温度:230℃、・検出器温度:250℃)
【0074】
そのGC分析により揮発性物質配合液体Aを吸液した吸液組成物から検出されるリモネンのエリア値(ピークの面積値)は表7の通りである。
【0075】
揮発性物質配合液体Aを吸液させて調製した組成物においては、揮発性物質配合液体成分の経時による放出量変化の評価において、種々の揮発性成分がある中、ほぼすべての揮発性成分の放出量が、リモネンと同様の挙動(放出量変化)を示したことから、代表的な成分として、リモネンを選定して評価した。また、そのエリア値は、最終的にペレット3個を完全乾燥により実質重量を確認することで、補正したエリア値(「エリア値/ペレット3個分の実質重量」又は「エリア値/用いた粉体の実質重量(0.1g)」、すなわち、ペレット又は粉体1gあたり放出されたリモネンのエリア値)とした。以下、ペレット又は粉体1gあたり放出されたリモネンのエリア値のことをリモネン補正エリア値と呼ぶことがある。
【0076】
また、実施例1~17で得られた吸液組成物のうち、揮発性物質配合液体Aを吸液させて調製した組成物のペレット又は粉体を、40℃設定の送風乾燥機内に入れ6時間又は12時間静置し、吸液した揮発性成分を蒸散させた。その後、当該吸液組成物のペレット3個を、25mLバイアル瓶に採取し、40℃のヘッドスペースオーブン内で17分間維持し、当該25mLバイアル瓶内の気相部のガスを、GC分析(ヘッドスペース法)にて定量分析することで、蒸散した揮発性成分の量を分析した。当該GC分析により検出されたリモネン補正エリア値を表7に示す。
【0077】
【表7】
【0078】
実施例1~16で得られた吸液組成物のうち、揮発性物質配合液体Bを吸液させて調製した組成物のペレットについて、上記と同様にして、GC分析にて検出されるリモネン補正エリア値を求めた。結果を表8に示す。なお、揮発性物質配合液体Bを吸液させて調製した組成物においては、揮発性物質配合液体Aを吸液させて調製した組成物と同様に、揮発性物質配合液体成分の経時による放出量変化の評価において、種々の揮発性成分がある中、ほぼすべての揮発性成分の放出量が、リモネンと同様の挙動(放出量変化)を示したことから、代表的な成分として、リモネンを選定して評価した。
【0079】
また、実施例1~16で得られた吸液組成物のうち、揮発性物質配合液体Cを吸液させて調製した組成物のペレットについて、上記と同様にして、GC分析を行った。
なお、揮発性物質配合液体Cを吸液させて調製した組成物においては、揮発性物質配合液体成分の経時による放出量変化の評価において、種々の揮発性成分がある中、ほぼすべての揮発性成分の放出量が、Z-9-トリコセンと同様の挙動(放出量変化)を示したことから、代表的な成分として、Z-9-トリコセンを選定して評価した。揮発性物質配合液体Aを吸液させて調製した組成物への評価と同様にして、揮発性物質配合液体Cを吸液させて調製した組成物については、ペレット1gあたり放出されたZ-9-トリコセンのエリア値(Z-9-トリコセン補正エリア値)を算出した。結果を表9に示す。
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
比較例1~3
ポリアルキレンオキシド変性物にフィラーを加えることなく調製したペレット(縦、横、厚み:4mm、4mm、2mm)1g(ペレット個数:約20個)を、揮発性物質配合液体A、B、又はC 10gに浸漬し、24時間吸液させた後、当該ペレットに吸液されなかった余剰の揮発性物質配合液体だけを分離することで、ペレット状の吸液ポリアルキレンオキシド変性物を得た。当該吸液ポリアルキレンオキシド変性物のペレット3個を、25mLバイアル瓶に採取した後、40℃のヘッドスペースオーブン内で17分間維持し、25mLバイアル瓶内の気相部のガスを、上記と同様の条件でGC分析(ヘッドスペース法)にて定量分析することで、吸液ポリアルキレンオキシド変性物から蒸散した揮発性成分の量を分析した。
【0083】
また、吸液ポリアルキレンオキシド変性物のペレットを、40℃設定の送風乾燥機内に入れ、吸液した疎水性成分を6時間又は12時間静置し、吸液した揮発性成分を蒸散させた。その後、吸液ポリアルキレンオキシド変性物のペレット3個を、25mLバイアル瓶に採取した後、40℃のヘッドスペースオーブン内で17分間維持し、当該25mLバイアル瓶内の気相部のガスを、GC分析(ヘッドスペース法)にて定量分析することで、蒸散した揮発性成分の量を分析した。
【0084】
その揮発性物質配合液体A、Bを吸液したポリアルキレンオキシド変性物からGC分析により検出されるリモネン補正エリア値は表10の通りである。
【0085】
【表10】
【0086】
また、揮発性物質配合液体Cを吸液したポリアルキレンオキシド変性物からGC分析により検出されるZ-9-トリコセン補正エリア値は表11の通りである。
【0087】
【表11】