(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ラミネート積層体、冊子類及びラミネート積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221201BHJP
B42D 15/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B32B27/00 G
B42D15/00 341B
(21)【出願番号】P 2019159246
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇
(72)【発明者】
【氏名】新免 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】藏野 昌彦
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-217596(JP,A)
【文献】特開2016-190446(JP,A)
【文献】特表2004-503404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B42D 1/00-25/485
B41M 1/00- 3/18,
7/00- 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の熱可塑性樹脂から成る基材上に、
印刷層が形成され、
前記印刷層は、前記基材の外周から0.5mm以内の領域に、
網点又は画線の面積率が0.1%から10%までの範囲の少なくとも1色以上の色彩から成る断裁許容領域と、前記断裁許容領域の内周に形成され、
前記網点又は画線の面積率が前記断裁許容領域より高いことで、前記断裁許容領域より濃い色彩から成るデザイン印刷領域と、から成り、
前記断裁許容領域から前記デザイン印刷領域に跨って、連続的に諧調が変化し、前記印刷層上に第二の熱可塑性樹脂から成る透明樹脂層を積層して成ることを特徴とするラミネート積層体。
【請求項2】
前記断裁許容領域は、前記基材の外周から前記断裁許容領域の境界線に向かって連続的に色彩が変化することを特徴とする請求項1記載のラミネート積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明フィルムシートを積層したラミネート積層体、冊子類及びラミネート積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本格的カード時代の到来により、日常生活において様々な種類のカードが用いられている。例えば、プラスチック基材表面に特定情報等が印刷されたカード、テレフォンカード等の磁気カードあるいはICメモリを内蔵したクレジットカードに代表されるICカード、プラスチック基材に個人情報等を印刷したデータページを使用したパスポートなど、身分証明等の用途で顔写真等の画像が印刷されたものもある。
【0003】
このような各種カードは、表面に傷や汚れをつきにくくするために、あるいは、印刷された情報の改ざんを防止するために、表面に透明な保護膜をラミネート又は透明オーバープリント層を印刷する方法により作製される。ラミネート加工の例として、約10μm~30μm厚の帯状の透明フィルムと印刷済みのカードの表面とを熱圧着することで、その表面にフィルムを貼着し保護膜とするラミネート加工方法がある。
【0004】
また、オーバープリント層の例として、カード表裏面に対して透明オフセットアンカー層及び絵柄を印刷した後、表裏面にオーバーシートを積層しない状態で、1枚ごとのカードに打ち抜いて製造するカードであって、少なくとも打ち抜きする抜き刃に接触する部分の網点部分の占める面積率が10~30%の範囲になるように絵柄を構成することを特徴とするコアシートの印刷方法が特許文献1開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、面積率を10~30%の範囲に形成しているため、複数のカードサイズを有する多面化シートを断裁して単一のシートにする際、単一のシートとした場合に、断裁位置がずれた場合に断裁ずれが容易に認識されるため、高い加工精度が求められていた。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、断裁ずれが目立ちにくいラミネート積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第一の熱可塑性樹脂から成る基材上に、基材の外周に隣接する領域に、網点又は画線の面積率が0.1%から10%までの範囲の少なくとも1色以上の色彩から成る断裁許容領域と、断裁許容領域の内周に形成されたデザイン印刷領域から成る印刷層と、印刷層上に第二の熱可塑性樹脂から成る透明樹脂層を積層して成ることを特徴とするラミネート積層体である。
【0009】
また、本発明のラミネート積層体は、断裁許容領域が、基材の外周から断裁許容領域の境界線に向かって連続的に色彩が変化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、断裁位置がずれた場合であっても、断裁ずれが目立ちにくいラミネート積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のラミネート積層体及びその多面版を示す図。
【
図2】本発明のラミネート積層体の平面図及び断面図。
【
図4】本発明の第一の実施形態の印刷層を示す一例図。
【
図5】本発明の第一の実施形態の印刷層の構成例を示す一例図。
【
図7】本発明の第二の実施形態の印刷層の構成例を示す一例図。
【
図8】本発明のラミネート積層体を作製する方法を示す一例図。
【
図9】本発明のラミネート積層体をデータページに使用した場合の一例図。
【
図10】本発明のラミネート積層体をパスポートとして使用した場合の一例図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
【0013】
図1(a)に、本発明のラミネート積層体(1)をカードとして複数配列されている多面版(Q)の状態を示す。多面版(Q)は、後に1枚毎のラミネート積層体(1)にするために、1枚毎のラミネート積層体(1)の境界となる断裁位置(P)によって区分けされている。
図1(a)の多面板(Q)から1枚のラミネート積層体(1)を取り出したのが
図1(b)である。
図1(b)に示すように、ラミネート積層体(1)の外周となる断裁位置(P)から中央に向かって断裁許容領域(20)を備えている。さらに、その断裁許容領域(20)から内側には印刷模様等を形成したデサイン印刷領域(3)を備えている。
【0014】
この断裁許容領域(20)は、本発明の特徴点であり、多面版(Q)を断裁位置(P)に従って断裁する際に、仮に断裁ずれが生じても、ラミネート積層体(1)を構成している印刷層(2)の色が目立たないように、デザイン印刷領域(3)の色彩濃度よりも淡い色彩濃度で形成されている。したがって、図面上では、
図1(b)に示すように、1枚のラミネート積層体(1)は、外周の断裁位置(P)の内側に薄い色彩濃度の断裁許容領域(20)を備え、更にその内側に断裁許容領域(20)よりも色彩濃度が濃いデザイン印刷領域(3)を備えた構成となっている。なお、図面上では、デザイン印刷領域(3)及び断裁許容領域(20)がベタ模様で形成されているが、領域の説明を分かり易くするためであり、デザインについては特に限定はない。
【0015】
本発明の特徴点である断裁許容領域(20)は、
図1(a)に示すように、多面版(Q)の際には、断裁位置(P)を挟んで縦横の両側に配置されている。この断裁許容領域(20)の幅(w1)は、断裁装置の性能による断裁ずれを考慮した範囲で適宜設定すればよく、断裁位置(P)に隣接する範囲を断裁許容領域(20)とすればよい。1枚のラミネート積層体(1)で言えば、断裁位置(P)は、ラミネート積層体(1)の基材(4)の外周となるため、外周に隣接する領域が断裁許容領域(20)となる。この「隣接する」とは、具体的には、断裁位置(P)を挟んで±0.5mm(多面版での幅(W)で1mm)程度を有していればよい。
【0016】
また、断裁許容領域(20)の色彩濃度は、網点又は画線の面積率を0.1%から10%までの範囲で形成する。面積率が、0.1%未満の場合は、断裁許容領域(20)への印刷が困難であり、10%を超えた場合は、大判サイズで形成された印刷層(2)を有する基材(4)をカードとする場合に、断裁加工によりカードサイズに一枚ずつ加工する際の断裁ずれ(断裁の位置ずれ)が目立つこととなる。さらに、面積率が0.1%から10%の範囲内であれば、後述する透明フィルムシート(5)と印刷層(2)のインキが付与されていない箇所(基材(4))との密着性が良好となる。
【0017】
図2(a)は、
図1(b)で示した1枚のラミネート積層体(1)と同じ平面図、
図2(b)は、そのAA´断面図である。
図1(b)に示すように、ラミネート積層体(1)は、第一の熱可塑性樹脂から成る基材(4)上にデザイン印刷領域(3)と断裁許容領域(20)を有する印刷層(2)が積層され、さらに、印刷層(2)上に第二の熱可塑性樹脂から成る透明フィルムシート(5)を積層して成る。
【0018】
したがって、前述した断裁許容領域(20)及びデザイン印刷領域(3)は、印刷層(2)に印刷されることとなるが、実際の印刷においては、大判サイズで
図1(a)に示した多面版(Q)の模様として印刷する。
【0019】
デザイン印刷領域(3)及び前述の断裁許容領域(20)は、画線及び画素のいずれか又はそれらの組合せで形成することができる。なお、本明細書で言う「画線」とは、印刷画像を形成する最小単位である印刷網点を特定の方向に連続して配置したものであり、点線や破線の分断線、直線、曲線及び波線を言う。一方、本明細書で言う「画素」とは、少なくとも一つの印刷網点又は印刷網点を一塊にしたものであり、円や三角形、四角形を含む多角形、星型等の各種図形、あるいは文字や記号、数字等も含まれる。また、画線面積率又は網点面積率とは、印刷物の単位面積当たりの画線又は網点の面積率(以下「面積率」という。)である。
【0020】
デザイン印刷領域(3)と断裁許容領域(20)の作製は、凸形状を形成する印刷方式でなければ特に限定されず、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷法等の公知の印刷方法を使用できる。また、断裁許容領域(20)については、濃淡をハイライトから中間調を経てシャドーに至るまで、段階的に変化させることで、連続的な階調表現を形成することができる。使用するインキは、デザイン印刷領域(3)及び断裁許容領域(20)とも、限定されず、蛍光インキ、赤外線透過・吸収インキ、メタメリックインキ、カラーシフトインキ、パールインキ、金属光沢インキ等を使用してもよい。なお、デザイン印刷領域(3)は、基材(4)と異なる有色であれば良く、異なる複数色により形成してもよい。
【0021】
透明フィルムシート(5)を形成する第二の熱可塑性樹脂シートは、透明であれば特に限定されず、単層又は複数の第二の熱可塑性樹脂シートを積層して構成される。第二の熱可塑性樹脂シートの材料は、ポリカーボネート(PC)又はポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリビニル塩化物(PVC)、アクリロニトリル-ブタジェン-スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等の公知の熱可塑性樹脂シートを使用することができる。複数の第二の熱可塑性樹脂シートとして単一の材料を使用してもよいし、異なる材料を組み合わせて使用してもよい。また、第二の熱可塑性樹脂シート1枚1枚が複数の材料を混合した材料から成っていてもよい。第二の熱可塑性樹脂シートの例としては、ICシート、レーザ発色シート、保護シート、コアシート、印刷シートやホログラムシート(光学変化素子層)等の公知の熱可塑性樹脂シートを使用することができる。なお、第二の熱可塑性樹脂シートと前述の第一の熱可塑性樹脂シートは、互いに同じ材料にすることが熱溶着上好ましいが、熱溶着で互いに溶着できる範囲であれば、異なる材料を使用してもよい。
【0022】
基材(4)を形成する第一の熱可塑性樹脂シートは、単層又は複数の第一の熱可塑性樹脂シートを積層して構成される。第一の熱可塑性樹脂シートの材料は、ポリカーボネート(PC)又はポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリビニル塩化物(PVC)、アクリロニトリル-ブタジェン-スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等の公知の熱可塑性樹脂シートを使用することができる。複数の第一の熱可塑性樹脂シートとして単一の材料を使用してもよいし、異なる材料を組み合わせて使用してもよい。また、第一の熱可塑性樹脂シート1枚1枚が複数の材料を混合した材料から成っていてもよい。なお、色彩については、印刷層(2)の色彩に影響を与えなければ特に限定されず、透明、白色又はその他の有色の色彩であってもよい。
【0023】
次に、ラミネート積層体(1)の作製方法について、
図8により説明する。本発明のラミネート積層体(1)の作製方法は、第一の熱可塑性樹脂から成る基材(4)上に少なくとも1色以上の色彩が基材(4)の外周に近接する領域の面積率が0.1%から10%までの範囲の少なくとも一つの断裁許容領域(20)とデザイン印刷領域(3)を印刷する印刷工程(S1)と、印刷層上に、第二の熱可塑性樹脂から成る透明フィルムシート(5)を積層し、印刷層上に透明フィルムシート(5)を熱圧着により溶着する溶着工程(S2)を少なくとも有する。
【0024】
印刷工程は、第一の熱可塑性樹脂から成る基材(4)上に、公知の印刷機であるオフセット印刷機、インキジェット印刷機により1色以上の色彩で、面積率が0.1%から10%までの範囲の断裁許容領域(20)と、デザイン印刷領域(3)を有する印刷層(2)を印刷する。
【0025】
溶着工程では、印刷層(2)上に、第二の熱可塑性樹脂から成る透明フィルムシート(5)を積層して、通常の熱硬化性樹脂板等の製造における熱圧成型と同様に、ジュラルミン、ステンレス等の金属製の平滑な金属板を使用し、金属板の温度を熱板により樹脂の軟化点以上である約100~200℃程度に加熱し、約10~100kgf/cm2程度の圧力を、第二の熱可塑性樹脂の溶融特性に応じた時間により加え、印刷層(2)に透明フィルムシート(5)を熱溶着する。
【0026】
(第一の実施形態)
次に、本発明の第一の実施形態を説明する。第一の実施形態は、ラミネート積層体(1)をカードとして形成した例である。
図3(a)は、ラミネート積層体(1)の平面図であり、
図3(b)は、ラミネート積層体(1)のAA´断面図である。
図3(b)に示すように、ラミネート積層体(1)は、第一の熱可塑性樹脂から成る基材(4)上にデザイン印刷領域(3)と断裁許容領域(20)を有する印刷層(2)が積層され、さらに、印刷層(2)上に第二の熱可塑性樹脂から成る透明フィルムシート(5)を積層して成る。
【0027】
図4(a)に、印刷層(2)の平面図と一部拡大図を示す。本第一の実施形態の印刷層(2)は、基材(4)の外周(S)から基材(4)の中央方向に、画線面積率が0.1%から10%までの間で連続的に変化する単色の色彩から成る断裁許容領域(20)と、断裁許容領域(20)の内周(G)に形成されたデザイン印刷領域(3)から成る。
【0028】
断裁許容領域(20)は、基材(4)の外周(S)から基材(4)の中心(O)に対する方向である中央方向(T1)に向けて、面積率が0.1%から10%まで連続的に階調が変化して成る一例である。なお、本明細書における断裁許容領域(20)の中央方向(T1)とは、基材(4)の外周(S)から基材(4)の中心(O)に対する方向と定義する。しかしながら、厳密に基材の中心(O)に限らず、デザイン印刷領域(3)内であれば、中央方向はずれてもよい。
【0029】
断裁許容領域(20)における階調の連続方向は、基材(4)の外周(S)から中央方向(T1)に向けて形成されることが好ましいが、一定の方向に連続的に変化していれば良く、厳密に基材(4)の中心に対する方向に限らない。例えば、
図4(b)に示すように、階調の連続方向を基材(4)の外周から基材(4)の中央からややずれた方向(T2)にかけて形成してもよく、
図4(c)に示すように、階調の連続方向を基材(4)の外周の特定の辺から基材(4)の中央方向(T3)に向けて連続して変化させる構成であってもよい。
【0030】
例えば、
図12(a)に示すカードサイズ4個分相当の大判印刷層(18)を有する基材(4)を
図12(b)に示すように断裁加工して、印刷層(2)を有する一個分のカードサイズにする場合に、正規規格の断裁位置(P)が、
図12(c)に示すようにずれた場合であっても、余白との断裁の位置ずれを目立たなくさせることができる。一方、
図12(d)に示す、面積率が10%から50%まで連続的に階調が変化した比較大判印刷層(19)を有する基材(4)を、
図12(e)に示す比較印刷層(16)を有する比較カード(15)のカードサイズとして断裁加工した場合に、正規規格の断裁位置(P)が、
図12(f)に示すようにずれた場合には、余白との断裁の位置ずれが目立つこととなる。
【0031】
デザイン印刷領域(3)は、断裁許容領域(20)の内周に形成される。本第一の実施形態では、デザイン印刷領域(3)は、断裁許容領域(20)の内周(G)から基材(4)の中心(O)に対する方向である中央方向(T1)に向けて、面積率が10%から50%まで連続的に階調が変化して成る一例である。本第一の実施形態では、デザイン印刷領域(3)の面積率が10%から50%としているが、0.1%から50%の間で連続して階調が変化、あるいは一定の面積率で形成してもよい。なお、階調の連続方向は、特に限定されず、適宜設定の範囲である。面積率が0.1%未満の場合は、デザイン印刷領域(3)の印刷が困難であり、面積率が50%を超えた場合は、後述する透明フィルムシート(5)と印刷層(2)のインキが付与されていない箇所(基材(4))との密着性が不良と成り、透明フィルムシート(5)が印刷層(2)から剥がれるおそれがある。
【0032】
例えば、
図5(a)に示すデザイン印刷領域(3)と断裁許容領域(20)は、画線又は網点により形成した例であり、
図5(b)の一部拡大図に示すように画線又は網点を集中して階調を断裁許容領域(20)からデザイン印刷領域(3)まで連続して形成してもよい。また、デザイン印刷領域(3)と断裁許容領域(20)は、
図5(c)に示す画線幅の太さを異ならせた画線、
図5(d)及び
図5(e)に示すように印刷網点の大小により形成してもよい。
【0033】
なお、ここまでは、断裁許容領域(20)からデザイン印刷領域(3)まで連続階調を有する例を挙げているが、デザイン印刷領域(3)が断裁許容領域(20)の階調とは関係しない別なデザインでも構わない。また、印刷層(2)は、
図6に示すように複数のデザイン印刷領域(3)を配置して形成してもよい。
【0034】
連続的に階調を変化させる方法としては、一例としてオフセット印刷機において、一定のインキ濃度に到達後、インキつぼ部のダクトローラの回転角度を変化させ、指定した時間又は通紙枚数によりダクトローラの最初の回転角度まで戻す。この間、ダクトローラから転移しているインキ量は変化していくが、印刷される用紙までには、複数のローラやブランケットを介して印刷されるため、瞬時に色彩が変化するものではなく、徐々に色彩が変化していく。したがって、複数の用紙に印刷されていく色彩は、連続的に濃度が変化していくこととなる。
【0035】
ダクトローラの回転角度を変化させるには、制御部によりダクトローラと後述する呼び出しローラとの接触時間により決定する。ダクトローラの回転角度を大きくするには、ダクトローラの回転速度を速くすればよく、そうすることによりインキの転移量は多くなり、用紙には濃い濃度で印刷される。逆にダクトローラの回転角度を小さくするには、ダクトローラの回転速度を遅くすればよく、そうすることによりインキの転移量は少なくなり、用紙には淡い濃度で印刷されることとなる。
【0036】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、断裁許容領域(20)とデザイン印刷領域(3)を単色により形成した場合で説明してきたが、本第二の実施形態では、印刷層(2)を連続的に色彩変化させたグラデーションで形成した断裁許容領域(20)とデザイン印刷領域(3)の例である。なお、本発明における「色彩」とは、色相及び色彩を含めたものであることに加え、濃度の濃い及び淡いも含めた広い意味である。
【0037】
本第二の実施形態では、
図7に示すように、断裁許容領域(20)の内周(G)から中央方向(T1)に連続的に緑(G)、青(B)、赤(R)に色彩が変化するデザイン印刷領域(3)の例である。
【0038】
連続的に色彩を変化させる方法(グラデーション)としては、オフセット印刷機のインキつぼ部内においてグラデーションを形成させるためのインキ仕切り板を設け、このインキ仕切り板を境に異なる2色以上のインキを投入する。このインキ仕切り板によって仕切られた異なる色のインキについては、インキつぼ部からインキを転移させていくための呼び出しローラを経て、練りローラがオフセット印刷機の搬送方向に対して左右方向にストロークしているため、異なる色のインキが練りローラ上において混色した状態となる。この練りローラのストローク幅を適宜変更することで、混色領域は広くなったり、狭くなったりする。なお、このインキ仕切り板によって、異なる色のインキを混色させる印刷技術は、一般的には、レインボー印刷と言われている。レインボー印刷と言われているように、印刷物上では、単純な2色のインキが混色するものではなく、1色目の色から2色目の色まで徐々に色彩が変化し、その状態は、虹色を示すような違和感の無い色彩変化となっている。
【0039】
なお、断裁許容領域(20)とデザイン印刷領域(3)のグラデーションについては、版面上、網点面積率を異ならせて、濃度を変更することで形成することができる。
【0040】
(第三の実施の形態)
図9は、ラミネート積層体(1)をヒンジ付データページ(8)として形成した一例図である。
図9(a)に示すように、ヒンジ付データページ(8)は、ヒンジシート(6)を有し、
図9(a)のXX´断面図に示すように、ヒンジ付データページ(8)は、保護層(7)、ICシート(9)、第一の熱可塑性樹脂から成る基材(4)上に、ヒンジシート(6)と、断裁許容領域(20)及びデザイン印刷領域(3)を有する印刷層(2)、印刷層(2)上に第二の熱可塑性樹脂から成る透明フィルムシート(5)と透明性の保護層(10)の順に積層して形成した一例である。
【0041】
なお、ヒンジ付データページ(8)の積層順は、本実施形態に限定されず、基材(4)の下にヒンジシート(6)を配置してもよい。
【0042】
図10は、前述のヒンジ付データページ(8)のヒンジシート(6)を糸綴じして形成したパスポート(P1)の一例図である。
図10(a)に示すように、パスポート(P1)は、ヒンジ付きデータページ(8)と各ページ(12)により形成され、
図10(b)のYY´断面図に示すように、ヒンジ付きデータページ(8)は、各ページ(12)と表紙又は表紙に貼り付けられる見返し紙(13)とが、ヒンジシート(6)を糸(11)によって縫い合わされることで構成されている。
【0043】
本第三の実施形態では、ヒンジシート(6)を、表紙又は見返し紙(13)にミシン綴により糸綴じしてパスポート(P1)を形成しているが、接着剤又は熱圧着により冊子の紙とヒンジシート(6)と一体化するか、又はそれらと糸綴じを併用してもよい。
【実施例】
【0044】
(実施例)
本発明の実施例について、前述の実施の形態と同様に図を用いて説明をする。なお、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
本実施例1は、製造例として、
図9に示すヒンジ付データページ(8)を透明性の保護層(7)、ICシート(9)、第一の熱可塑性樹脂から成る基材(4)上にヒンジシート(6)、断裁許容領域(20)及びデザイン印刷領域(3)を有する印刷層(2)、印刷層(2)上に第二の熱可塑性樹脂から成る透明フィルムシート(5)と透明性の保護層(10)の順に積層して形成したものである。
【0046】
(印刷層)
印刷層(2)は、青色の紫外線硬化型インキ(DICグラフィック社製:ダイキュアRTXインキ)を使用し、オフセット印刷機により第一の熱可塑性樹脂から成る基材(4)として白色の印刷用熱可塑性樹脂シート(株式会社三菱ケミカル社製ディアフィクス:寸法300mm(縦)×100mm(横))に、
図4に示す断裁許容領域(20)を外周(S)から画線面積率を0.1%から10%まで連続的に階調を変化させて形成し、デザイン印刷領域(3)を断裁許容領域(20)の内周(G)から中央方向(O)に向かって画線面積率を10%から50%まで連続的に階調が変化させて形成した。
【0047】
ヒンジシート(6)には、メッシュシート(厚さ90μm、品番100S:日本特殊織物株式会社製)を使用した。メッシュシートは、CO2レーザ加工機を用いて矩形状に切断し、寸法を300mm(縦)×50mm(横)とした。
【0048】
第二の熱可塑性樹脂から成る透明フィルムシート(5)には、透明ポリカーボネート(PC:商品名「WC-020」、厚さ0.10mm、寸法100mm(縦)×300mm(横):三菱ガス化学社製)を使用した。ICシート(9)には、IC内蔵ポリカーボネート(厚さ0.40mm、寸法300mm(縦)×100mm(横))を使用した。
【0049】
透明性の保護層(7、10)は、第二の熱可塑性樹脂から成る透明フィルムシート(5)として、透明ポリカーボネート(PC:商品名「WC-020」、厚さ0.10mm、寸法300mm(縦)×100mm(横):三菱ガス化学社製)を使用した。
【0050】
ヒンジ付データページ(8)の作製は、前述の保護層(7)、ICシート(9)、基材(4)、ヒンジシート(6)、印刷層(2)、透明フィルムシート(5)、保護層(10)を形成する各シートを積層し、SD型成形プレス機(株式会社ダンベル社製「SDOP-1042-2HC-AT-WC1V-PG3」)を使用して、160℃から185℃まで、300秒、2.5MPaの機械設定で熱圧着を行い、熱溶着後50℃まで冷却して作製した。
【0051】
(実施例2)
本実施例2は、
図6に示すように、連続的に色彩が変化するグラデーションのようなデザイン印刷領域(3)を形成し、
図9に示すヒンジ付データページ(8)を構成した例である。なお、実施例1と同様な箇所については省略し、異なる箇所である印刷層(2)の構成のみ説明する。
【0052】
印刷層(2)は、青色、赤色及び黄色の紫外線硬化型インキ(DICグラフィック社製:ダイキュアRTXインキ)を使用して、オフセット印刷機により第一の熱可塑性樹脂から成る基材(4)として白色の印刷用熱可塑性樹脂シート(株式会社三菱ケミカル社製ディアフィクス:寸法300mm(縦)×100mm(横))に、
図6に示す断裁許容領域(20)を外周(S)から画線面積率を0.1%から10%まで連続的に階調が変化させて形成し、デザイン印刷領域(3)を断裁許容領域(20)の内周(G)から基材中心(O)に向かって画線面積率を10%から50%まで連続的に階調が変化させて形成した。
【0053】
(実施例3)
本実施例3は、実施例1と異なる構成の
図13に示すヒンジ付データページ(8)の例である。有色の保護層(7)、ヒンジシート(6)、ICシート(9)、第一の熱可塑性樹脂から成る基材(4)上に、第二の熱可塑性樹脂から成る透明フィルムシート(5)、断裁許容領域(20)及びデザイン印刷領域(3)を有する印刷層(2)、そして、透明性の保護層(10)の順に積層して形成したものである。
【0054】
なお、実施例1と同様な箇所については省略し、異なる箇所である有色の保護層(7)、第二の熱可塑性樹脂から成る透明フィルムシート(5)、断裁許容領域(20)及びデザイン印刷領域(3)を有する印刷層(2)の構成のみ説明する。
【0055】
有色の保護層(7)は、白色のポリカーボネート(株式会社三菱ケミカル社製ディアフィクス:寸法300mm(縦)×100mm(横))を使用した。有色を利用したのは、ヒンジシート(6)が
図13(b)に示す断面図の下側から見たときに、保護層(7)と重なっている部分でヒンジシート(6)を隠蔽するためである。
【0056】
第二の熱可塑性樹脂から成る透明フィルムシート(5)は、レーザ発色ポリカーボネート(株式会社三菱ケミカル株式会社製DPI-TR: 寸法を300mm(縦)×100mm(横))を使用した。
【0057】
断裁許容領域(20)及びデザイン印刷領域(3)を有する印刷層(2)は、透明ポリカーボネート(PC:商品名「WC-020」、厚さ0.10mm、寸法300mm(縦)×100mm(横):三菱ガス化学社製)上にオフセット印刷機により形成した。透明ポリカーボネートを使用することで、レーザ印字によって、透明フィルムシート(5)のレーザ発色ポリカーボネートを発色させるとともに、発色させて印字した情報を、ヒンジ付データページ(8)の表層から認識できるようにするためである。
【0058】
(はく離評価)
実施例1、実施例2及び実施例3のヒンジ付データページ(8)の透明フィルムシート(5)のはく離についてピンセットを用いて行った。各実施例とも、透明フィルムシート(5)が、熱プレスによって印刷層(2)に形成された断裁許容領域(20)とデザイン印刷領域(3)において基材(4)にインキが付与されていない個所と溶着し、一体化している様子が確認された。さらに、指やピンセットを用いて、透明フィルムシート(5)をはく離することはできなかった。
【0059】
次に、実施例1、実施例2及び実施例3のヒンジ付データページ(8)の透明フィルムシート(5)のはく離について、
図9に示すテンシロン万能試験機(14)を使用して、JIS-X-6305-1(ISO/IEC 10373-1)に準拠したはく離試験方法を行うこととした。
【0060】
図11に示すように、テンシロン万能試験機(14)を用いて、透明フィルムシート(5)をクランプ(14c)により挟みながら鉛直方向(Z1)に対して、300mm/minの速度で引っ張ることによりT型はく離試験を行った。発明者らは透明フィルムシート(5)の密着性を、透明フィルムシート(5)の破壊の有無によって目視評価した。
【0061】
はく離試験の結果、透明フィルムシート(5)は、印刷層(2)との間にはく離が起こらず、透明フィルムシート(5)の破壊を確認することができた。なお、透明フィルムシート(5)と印刷層(2)との間におけるはく離の確認はできなかった。
【符号の説明】
【0062】
1 ラミネート積層体
2 印刷層
3 デザイン印刷領域
4 基材
5 透明フィルムシート
6 ヒンジシート
7 保護層
8 ヒンジ付データページ
9 ICシート
10 保護層
11 糸
12 ページ
13 見返し紙
14 テンシロン万能試験機
14a 裏当て板
14b ロール
14c クランプ
15 比較カード
16 比較印刷層
17 比較デザイン印刷領域
18 大判印刷層
19 比較大判印刷層
20 断裁許容領域
T1 中央方向
T2 中央からややずれた方向
T3 中央方向
Z1 鉛直方向
S 基材外周
P 断裁位置
O 基材中心
P1 パスポート
G 内周
Q 多面版
w1 断裁許容領域の幅
W 多面版における断裁許容領域の幅